バルブポートおよび血管アクセス方法
【課題】血液透析および他の体外血液処置のために、患者の血管系への一時的アクセスを確立するためのインプラント可能ポートの設計および使用法における従来技術における課題を解決する。
【解決手段】身体管腔に経皮的にアクセスする方法であって、インプラントされたアクセスポート10と身体管腔との間に導管14を維持する工程を包含し、導管14は外部的にクランプされ、アクセスポート10にアクセス管を経皮的に挿入する工程をさらに包含し、挿入工程が、外的クランプを軽減して、導管14を通る流体の流れを可能にする。
【解決手段】身体管腔に経皮的にアクセスする方法であって、インプラントされたアクセスポート10と身体管腔との間に導管14を維持する工程を包含し、導管14は外部的にクランプされ、アクセスポート10にアクセス管を経皮的に挿入する工程をさらに包含し、挿入工程が、外的クランプを軽減して、導管14を通る流体の流れを可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1997年1月21日に出願された仮出願第60/036,124号の一部継続出願であり、仮出願第60/036,124号の全開示を参考として本明細書に援用する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、概して医療装置の設計および使用法に関し、より具体的には、血液透析および他の体外血液処置のために、患者の血管系への一時的アクセスを確立するためのインプラント可能ポートの設計および使用法に関する。患者の血管系へのアクセスは、様々な一時的および永久的にインプラントされた装置によって確立され得る。最も単純には、一時的アクセスが、患者の皮膚を介した血管内への針の直接的な経皮的導入によってもたらされ得る。このような直接的アプローチは、比較的単純で、静脈内栄養補給、静脈内薬物送達、および時間的に限定されている他の適用等の適用には適しているが、定期的に(しばしば、患者の一生の間)繰り返されなければならない血液透析および他の体外処置には適していない。
【0003】
血液透析および他の体外処置養生法のために、様々なインプラント可能ポートが長い年月にわたって提案されてきた。典型的には、ポートには、中隔等のアクセス領域上のチャンバが含まれ、チャンバは、インプラントされたカテーテルに取付けられ、インプラントされたカテーテルは、次に血管に固定される。静脈の場合には、カテーテルは、典型的には内在しており、動脈の場合には、カテーテルは、従来の吻合によって取付けられ得る。
【0004】
本発明にとって特に興味深いのは、インプラント可能ポートが、典型的に、内部チャンバ内への針の経皮的貫入を可能とする針貫入可能中隔を備えることである。このチャンバは次に、カテーテルの一端に接続され、カテーテルの他方の端は、血管に内在している。このような設計は、活用できるが、多数の問題を被る。中隔への繰り返しの貫入は、しばしば、時間が経つにつれて劣化につながり、微粒子が血流に入る多大な危険性および/またはポートを定期的に取替える必要性を提示する。第2に、チャンバまたはプレナムを通る血液の通過は、しばしば、乱流または低流の領域に遭遇し、そのどちらも、時間が経つにつれて、血液の質を劣化させ得る。第3に、以前の血管アクセスポートの多くが、ポートが使用されていない場合に、ポートの内部をインプラントされたカテーテルの管腔から分離する内部バルブ構造を提供できなかった。第4に、バルブを用いる以前のポートにおいては、ポートによって破損される、および/またはポートに破損を引起こすので、自己貫入針が使用されていない。このような場合には、頻繁に、除去可能探り針と一体化したカテーテルを使用することが必要であり、これは、単純な針の使用と比較して、より高価で、より不便である。第5に、中隔またはバルブのいずれかを用いるポートでは、針または他のアクセス装置が、偶発的に除去される傾向がある。血液戻りポートからの針の紛失は、針が同時にその周囲へと紛失されている間に血液が引き出され続け得るので、特に危険である。針およびポートの設計が、このような偶発的除去を防止するために提案されてきたが、そのような設計のほとんどが、複雑で、それ自体がフェイルセイフではない。
【0005】
問題点の少なくとも幾つかに取り組む多数の血管アクセスの設計が提案されてきた。具体的には、William Ensmingerを発明者として指名する、一連の発行された米国特許が、経皮的に導入されたアクセス装置(例えば、針またはカテーテル/探り針の組み合わせ)を受取るための内部管腔を持つアクセスポートと、ポートを関連のインプラントされたカテーテルから分離するための内部バルブ構造とを開示している。本明細書中で以下にリストされるこれらの特許は、アクセスポート内に組込まれ得る多数の具体的なバルブの種類(リーフレットバルブ、ボールバルブ、フラッパバルブ、「関節バルブ(articulating valve)」と呼ばれる他の具体的な構成を含む)を開示する。しかし、このような構造の全ては、バルブを開かせるために、アクセス装置がバルブ自体(すなわち、バルブを通る血流路を閉鎖する部分)を通されることを一般的に必要とする。このような要件は、アクセス装置と直接接触することによって、繰り返し使用された後にバルブが劣化し、その結果、バルブの部分が劣化し、血液循環に放出され得る危険性を提示する。このようなバルブはまた、繰り返し使用された後、または鋭い針との接触後に故障するという多大な危険性を提示する。さらに、このようなバルブ構造は、アクセス装置がそこを通って導入される際に、アクセス装置を破損し得る。その結果、後続の治療プロトコル中に、針を通したバルブの流れが潜在的に乱される。
【0006】
Ensmingerのバルブに関するさらなる問題点は、入口ポートが、通常、アクセス装置が導入される皮膚表面に対してかなりの角度で傾斜していることである。このような角度のあるアクセスにより、アクセス装置を導入する作業者が、角度を推測し、患者の皮膚上の最適な挿入点を推定することが必要となる。装置の貫入に関するこのような不確実性は、おそらく、Ensmingerの全ての設計が、針が導入される際に、針を受け取り、整合させるための拡張「漏斗」の使用を必要とする理由である。従って、概ね「垂直に」(すなわち、そこを通って針が導入される皮膚表面に対して実質的に法線の角度で)配置される入口通路を持つアクセスポートを提供することは利点である。針を「まっすぐ中に」貫入させることによって、標的開口部に針を整合させることがずっと簡単で、開口部(針の貫入)領域の大きさが、縮小され得る。
【0007】
これらの理由から、患者の血管(動脈および静脈の両方を含む)に経皮的にアクセスするための改良型インプラント可能アクセスポートを提供することが望ましい。アクセスポートは、好適には、ポートが使用されていない場合に、ポートを関連のインプラントされたカテーテルから分離するためのバルブ構造を備える。バルブは、好適には、アクセスポートの血流管腔内において、構造体をほとんど、または全く設けず、より好適には、バルブを開くために、バルブのシート部分を通る針または他のアクセス管の通路を必要としない。さらに、内部にバルブの部品を備えたポート構造体は、実質的に均一な断面積を持ち、そこを通る流体の流れを乱す著しい収縮または拡張を示さない。好適には、ポートの設計により、瘻管針等の従来の針を用いた経皮的アクセスが、ポートまたは針を破損することなく可能となる。さらにより好適には、ポートにアクセスするために使用される針または他の装置が、多大な余分の構造または追加の構成要素を必要とすることなく、ポートからの偶発的除去に耐える。本発明によるポートおよびバルブは、これらの目的の少なくとも幾つかを満たす。
【背景技術】
【0008】
2.背景技術の説明
本願と同一譲受人の米国特許第5,562,617号およびWO 95/19200号には、ポートへの逆流を防止するための内部スリットまたはダックビルバルブを持つアクセスポートを備えたインプラント可能血管アクセスシステムが記載される。ポートに対して外部経皮的接続が無い場合に、ポートを血管系から分離するための様々な関節接合バルブを備えた血管アクセスポートが、William Ensmingerを発明者として指名する以下の米国特許第5,527,278号、第5,527,277号、第5,520,643号、第5,503,630号、第5,476,451号、第5,417,656号、第5,350,360号、第5,281,199号、第5,263,930号、第5,226,879号、第5,180,365号、第5,057,084号および第5,053,013号に記載されている。針の挿入によって開かれるバルブ構造を持つインプラント可能ポートを示す他の特許および公開された出願には、米国特許第4,569,675号、第4,534,759号、第4,181,132号、第3,998,222号、およびWO 96/31246号が含まれる。米国特許第5,637,088号には、除去を防止する補助をする二重針を用いた中隔型のインプラント可能ポートが記載される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明によって以下が提供される:
(1)身体管腔に経皮的にアクセスする方法であって、
インプラントされたアクセスポートと該身体管腔との間に導管を維持する工程を包含し、該導管は外部的にクランプされ、
該アクセスポートにアクセス管を経皮的に挿入する工程をさらに包含し、該挿入工程が、該外的クランプを軽減して、該導管を通る流体の流れを可能にする、方法。
(2)身体管腔に経皮的にアクセスする方法であって、
インプラントされたアクセスポートと該身体管腔との間に導管を維持する工程と、
該アクセスポートにアクセス管を経皮的に挿入する工程と、を包含し、該アクセス管が、該アクセス管が挿入されている該アクセスポートの部分から離れて配置される該導管のバルブ構造を開くリンク機構を係合する、方法。
(3)身体管腔に経皮的にアクセスする方法であって、
インプラントされたアクセスポートと該身体管腔との間に導管を維持する工程と、
該ポートの管のシートにアクセス管を経皮的に挿入し、該ポートとほぼ液密(fluid tight)のシールを確立する工程と、を包含し、
該アクセス管の挿入が、リンク機構を作動させ、該管のシートの遠位に配置されるバルブを開き、該導管への流れを可能にする、方法。
(4)身体管腔に経皮的にアクセスする方法であって、
インプラントされたアクセスポートと該身体管腔との間に導管を維持する工程と、
該アクセスポートの通路に、アクセス管をほぼ垂直方向の向きで経皮的に挿入する工程と、を包含し、該通路が、75°〜105°のエルボーを通して該導管に接続される、方法。
(5)前記導管の近位端が前記アクセスポート内に配置され、該導管の遠位端が前記身体管腔に取り付けられる、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(前記導管が、単一の連続する管である、項目5に記載の方法。
(7)前記導管が、少なくとも2つの異なる軸方向の部分を有する複合構造を含む、項目5に記載の方法。
(8)前記導管の近位端が、前記アクセスポート内に配置され、該導管の遠位端が、別個のカテーテルへの取り付けのためのコネクタで終わる、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(9)前記導管を通る流れが、前記身体管腔から前記アクセスポートおよびアクセス管への血流である、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(10)血液が、少なくとも250ml/分の割合で前記アクセスポートから引き出される、項目9に記載の方法。
(11)前記血流が、少なくとも300ml/分である、項目10に記載の方法。
(12)前記血流が、少なくとも400ml/分である、項目11に記載の方法。
(13)前記血流が、少なくとも500ml/分である、項目12に記載の方法。
(14)前記導管を通る流れが、前記アクセス管から前記アクセスポートを通って前記身体管腔に流れる流体の流れである、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(15)前記身体管腔への前記流体の流れが、血流を含む、項目14に記載の方法。
(16)前記身体管腔への前記流体の流れが、薬物を含む、項目14に記載の方法。
(17)前記血液を外部血液処理回路に通過させる工程と、処理された該血液またはその部分を患者に戻す工程と、をさらに包含する、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(18)前記外部血液処理回路が、血液透析回路、血液濾過ユニット、またはアフェレーシス回路を含む、項目17に記載の方法。
(19)前記導管の可撓性のある部分が、ばね上げ式(spring-loaded)クランプ機構によりクランプされ、前記アクセス管の挿入が、ばね力を克服して該クランプ機構を開くリンク機構を作動させる、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(20)前記アクセス管が、患者の皮膚に対してほぼ垂直な方向に挿入され、前記導管が、該患者の皮膚にほぼ平行な平面において、前記アクセスポートから前記身体管腔に延びる、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(21)身体管腔にアクセスする方法であって、
少なくとも2mmの外径を有するアクセス管を受けるように適合された入口を有するポートを皮下にインプラントする工程と、
1つの端部が該ポートの出口に取り付けられ且つ別の端部が該身体管腔に取り付けられた少なくとも2.5mmの管腔径を有する導管を皮下にインプラントする工程と、を包含する、方法。
(22)少なくとも2mmの外径を有するアクセス管で、該インプラントされたポートに経皮的にアクセスする工程をさらに包含する、項目21に記載の方法。
(23)少なくとも200mmHgの、前記身体管腔と前記アクセス管の出口端との間の差圧を確立する工程をさらに包含し、アクセス針を通る流体の流れが、少なくとも250ml/分で確立される、項目22に記載の方法。
(24)前記血流が、少なくとも300ml/分である、項目23に記載の方法。
(25)前記血流が、少なくとも400ml/分である、項目24に記載の方法。
(26)前記血流が、少なくとも500ml/分である、項目25に記載の方法。
(27)前記身体管腔が血管であり、前記流体が血液である、項目23に記載の方法。
(28)インプラントされたポートにアクセス管を経皮的に導入する方法であって、
対称に構成されたインプラントされたポートの周囲の位置を手動で配置する工程を包含し、該ポートは、該アクセス管を受けるための中央開口部を有し、
該アクセス管を垂直方向に維持する工程と、
該アクセス管を該ポートの中心に挿入する工程と、をさらに包含する、方法。
(29)インプラントされたポートにアクセスする方法であって、
該ポートの通路にアクセス管を経皮的に挿入する工程を包含し、該通路を横切って配置される一対の対向するボールが、該アクセス管に係合し且つ該アクセス管を適切な場所に固定する、方法。
(30)前記アクセス管を回転させながら引っ張ることにより、前記ポートから該管を引き出す工程をさらに包含する、項目29に記載の方法。
(31)(a)アクセス管を受けるための入口および(b)出口を備える通路を有する基部と、
該入口へのアクセス管の挿入により作動されるリンク機構と、
アクセス管による該リンク機構の作動に応答して、該入口から下流に該通路を開くバルブ構造と、を含む、インプラント可能なポート。
(32)アクセス管を受けるための通路を有する基部と、
該通路を通って挿入されるアクセス管とともに流体の流れを確立するように配置される可撓性のある導管と、
該可撓性のある導管の外側の周りに配置されるクランプと、を含み、該クランプは、アクセス管が該通路に挿入されると、該導管の周りを開いて、該導管を通る流体の流れを可能にし、該アクセス管が該通路から取り出されると、該導管の上を閉じる、インプラント可能なポート。
(33)アクセス管を受けるための第1の通路を有する基部と、
該基部の第2の通路を通るように配置される可撓性のある導管と、
該第1の通路と整列され、該アクセス管を受けるためのボアを有する該基部に往復運動可能に受け入れられるアクチュエータアセンブリと、を含み、該可撓性のある導管の近位端は、該アクチュエータアセンブリの該ボアに機械的に結合され、
該アクチュエータアセンブリを該基部の第1の位置に付勢するためのばねをさらに含み、該アクチュエータアセンブリと該第2の通路との相対位置が、該可撓性のある導管を閉じ、該第1の通路への該アクセス管の挿入が、該アクチュエータアセンブリを、該可撓性のある導管を開く第2の位値に移動させる、インプラント可能なポート。
(34)前記バルブ構造が、可撓性のある導管と、前記リンク機構の作動に応答して、該導管の周りを開閉するクランプと、を含む、項目31に記載のインプラント可能なポート。
(35)前記通路および前記導管が結合され、停滞領域のない実質的に連続した流れ管腔を形成する、項目32、33および34のいずれかに記載のインプラント可能なポート。
(36)前記可撓性のある導管が、前記基部内に配置される近位端と、該基部の外側に配置される遠位端とを有する、項目32、33および34のいずれかに記載のインプラント可能なポート。
(37)前記導管の前記遠位端が、身体管腔への直接の接続のために適合される、項目42に記載のインプラント可能なポート。
(38)前記導管の前記遠位端が、カテーテルの1つの端部への接続のために適合される、項目42に記載のインプラント可能なポート。
(39)前記導管の前記遠位端が、下方コネクタで終わる、項目42に記載のインプラント可能なポート。
(40)前記可撓性のある導管が、前記基部内に配置される近位端と、該基部の外面上のコネクタで終わる遠位端とを有する、項目32、33および34のいずれかに記載のインプラント可能なポート。
(41)結合アセンブリが、完全に前記基部内に配置される、項目34に記載のインプラント可能なポート。
(42)前記リンク機構が、前記可撓性のある導管の外的クランプの解放を引き起こす、通路内への前記アクセス管の通過により作動される、項目34に記載のインプラント可能なポート。
(43)前記通路が、テーパ状のボアを含み、該ボアは、前記アクセス管が該ボアに挿入されると該管を封止する、項目31から43のいずれかに記載のインプラント可能なポート。
(44)前記可撓性のある導管が、前記テーパ状のボアの小さい直径の端部に取り付けられる、項目43に記載のインプラント可能なポート。
(45)前記可撓性のある導管が、75°〜105°の角度で前記テーパ状のボアに取り付けられる、項目44に記載のインプラント可能なポート。
(46)前記バルブ構造が、スライドバルブを含む、項目31に記載のインプラント可能なポート。
(47)前記スライドバルブが、往復運動するブロックに形成される前記通路の前記入口部を有するブロックを含み、該往復運動するブロックが、前記リンク機構を含む、項目46に記載のインプラント可能なポート。
(48)前記往復運動するブロックにおけるアクセス管の挿入は、該ブロックをスライドさせ、該ブロック内の前記通路が、前記基部の該通路の下流部と整列される、項目47に記載のインプラント可能なポート。
(49)インプラント可能なポートであって
アクセス管を受けるための通路を有する基部と、
該基部内のバルブアセンブリであって、該通路と整列され且つ該アクセス管を受けるボアを有するバルブアセンブリと、
該基部の該通路と、該バルブの該ボアとの間に配置される一対のボールと、を含み、該ボールが、該アクセス管が該通路および該ポートを通って挿入されると、ばねにより付勢されて、該アクセス装置を閉じ且つ固定する、インプラント可能なポート。
(50)アクチュエータアセンブリが下側リップを含み、前記基部の第2の通路が上側リップを含み、該上側リップおよび下側リップは、可撓性のある導管の対向する側で対向し、前記ばねが、該リップをともに閉じて、該導管内の管腔を閉じる、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(51)可撓性のある導管が、前記基部内に配置される近位端と、該基部の外側に配置される遠位端とを有する、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(52)前記遠位端が、身体管腔への直接の接続のために適合される、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(53)前記導管の遠位端が、カテーテルの1つの端部への接続のために適合される、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(54)前記導管の遠位端が、下方コネクタで終わる、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(55)可撓性のある導管が、前記基部内に配置される近位端と、該基部の外面上のコネクタで終わる遠位端とを有する、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(56)前記アクチュエータアセンブリおよびばねが、完全に前記基部内に配置される、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(57)前記ボアが、テーパ状のボアを含み、該テーパ状のボアは、前記アクセス管が該ボアに挿入されると該管をシールする、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(58)可撓性のある導管が、前記テーパ状のボアの小さい直径の端部に取り付けられる、項目57に記載のインプラント可能なポート。
(59)前記可撓性のある導管が、75°〜105°の角度で前記テーパ状のボアに取り付けられる、項目58に記載のインプラント可能なポート。
(60)アクセス管を受けるための入口通路を有する基部と、
該入口通路を通して挿入されるアクセス管から流体の流れを受けるように配置される出口通路と、を含み、
該入口通路が、垂直方向の軸に沿った向きにされ、該出口通路が、ほぼ水平方向の軸に沿って配置される、インプラント可能なポート。
(61)前記入口通路および前記出口通路が結合され、停滞領域のない実質的に連続する流れ管腔を形成する、項目60に記載のインプラント可能なポート。
(62)前記出口通路が、可撓性のあるカテーテルと、剛性の管により規定される垂直方向の通路と、を含む、項目61に記載のインプラント可能なポート。
(63)前記可撓性のあるカテーテルが、75°〜105°の角度を有するエルボーで、前記剛性の管に結合される、項目62に記載のインプラント可能なポート。
(64)前記出口通路が、前記基部内に配置される近位端と、該基部の外側に配置される遠位端とを含む、項目60に記載のインプラント可能なポート。
(65)少なくとも2mmの外径を有するアクセス管を受けるように適合される入口通路と、出口通路とを有する基部と、
該基部において、該入口通路と該出口通路との間に配置されるバルブであって、該入口通路への該アクセス管の挿入に応答して開くように適合されるバルブと、
少なくとも2.5mmの管腔径を有するインプラント可能な導管を、該基部の該出口通路に取り付けるための手段と、を含む、インプラント可能なポート。
(66)項目66に記載のインプラント可能なポートと、
少なくとも2.5mmの管腔径を有するインプラント可能な導管と、を含む、システム。
(67)基部と、アクセス管を受けるための通路と、該通路へのアクセス管の導入に応答して開閉される内部バルブとを含むタイプの改良されたインプラント可能なポートであって、改良が、対称に構成された基部であって、該基部の頂部の中央位置に配置される通路を有する基部を含む、改良されたインプラント可能なポート。
(68)前記通路が、3mm2〜20mm2の範囲の面積を有する入口開口部を有する、項目68に記載の改良されたインプラント可能なポート。
(69)前記バルブが、前記基部内に往復運動可能に装着されるアセンブリと、該アセンブリを該基部の前記通路に向かって付勢するばねと、を含み、前記ボールが、該アセンブリの上に配置され、該ボールが前記アクセス管の挿入に応答して下方向に動くとき、該ボールが、半径方向に外側に移動して、該通路の拡張領域に入る、項目67に記載のインプラント可能なポート。
(70)(a)基部と、アクセス管を受けるための通路と、アクセス管の導入に応答して開閉する内部バルブとを含むインプラント可能なポートと、
(b)アクセス管と、を含み、
該通路は円筒形であり、該アクセス管をよりも硬い、該アクセス管を受ける表面を有する、システム。
(71)前記アクセス管が、尖った先端を有する針である、項目70に記載のシステム。
(72)前記円筒形の通路がテーパ状にされ、針が、該テーパ状の通路を分割するように選択される均一の断面積を有する、項目70に記載のシステム。
【0010】
発明の要旨
本発明により、改良型アクセスポート、具体的には、特に血液透析、血液ろ過、ヘモダイアフィルトレーション(hemodiafiltration)、またはアフェレーシス等の体外血液治療を受ける患者のために、血液または他の流体の多量回収および/または戻りのために使用され得る血管アクセスポートが提供される。血管アクセスポートにより、そこを通る血液または他の流体の流れの高容積の率が可能となる(単一の針または他のアクセス装置を用いて、典型的には250ml/分を越える率、通常は300ml/分を越える率、好適には少なくとも400ml/分の率、そしてしばしば500ml/分以上の率が可能となる)。このような高流量率は、体外血液処置を行うために必要とされる時間を減少させるのにかなり有利である(特に、血液ろ過等の、大きな総容積の処置された血液を必要とする、高流量率でなければ時間のかかる処置に関する)。アクセスポートは、血管アクセスを確立するために特に有用であるが、ポートは、腹腔等の他の身体の管腔および腔にアクセスするためにも有用である。
【0011】
高容量に加えて、本発明のアクセスポートは、多数の他の有利な特徴を持つ。具体的には、アクセスポートは、大径の瘻管針を含む標準型の鋭いアクセス針を、ポートまたは針のどちらも実質的に破損することなく受取るように適応する。ポートの設計はまた、以下により詳細に説明されるように、針またはアクセス装置が挿入され、ポートから除去される際に、針またはアクセス装置の単純な「ロッキング」および「ロック解除」を提供する。アクセスポートの上記および他の設計の局面が、以下の詳細な説明に関連してより完全に説明される。
【0012】
本発明の方法の第1の局面によれば、血管への経皮的アクセスが、インプラントされたアクセスポートと血管との間に導管を維持することによって提供される。体外処置回路に接続されていない場合には、アクセスポートは、典型的には、少なくとも部分的に弾性材料(シリコーンゴム等)から形成される導管を外的にクランプすることによって血管から分離される。アクセス管のアクセスポート内への経皮的挿入により、流体がそこを通って流れることを可能とするために、導管の外的クランプが緩められる。アクセスポートを分離するための外的クランプの使用は、流れ管腔内でバルブシートを規定するために内部のバルブ構造が必要とされないので、特に有利である。
【0013】
典型的には、導管の近位端は、アクセスポート内に配置され、導管の遠位端は、アクセスポートの外部に配置され、通常、血管または他の身体管腔に取付けられる、あるいは、インプラントされたカテーテルまたは他の導管に接続され、次に、インプラントされたカテーテルまたは他の導管が血管に取付けられる。導管は、通常、単一の連続した管を含むが、代わりに、例えばハウジング上のポートで共に結合される異なる組成または構造特性を持つ多数の別個の軸方向部分を含み得る。例えば、導管の長さの一部は、硬質プラスチックまたは金属等の比較的剛性の材料から成り得るが、外的クランプに供される部分だけは、クランプによってシールされ得る可撓性材料から成る必要がある。さらに、導管は、1つを越える身体管腔部位への接続のために分岐され得る。代替の実施形態では、導管は、アクセスポート内に完全に配置され、次に血管に接続され得る別個のカテーテルに取付けるために、接続がアクセスポート上に設けられる。
【0014】
一旦インプラントされ、血管に接続されると、アクセスポートが、血管(典型的には動脈)から血流を受取る、または他の流体の流れ(例えば、腹膜透析の透析液)を提供するために用いられ得る。そのような場合には通常、第2のアクセスポートが、患者へ血液を戻すための静脈への接続のために設けられる。上記の体外処置様式の何れも、動脈アクセスポートと静脈アクセスポートとの間の血流と共に用いられ得る。さらに別の代替では、本発明のアクセスポートが、患者への注入流体、薬物、および他の物質のために別々に使用され得る。
【0015】
本発明の方法の第2の局面では、導管が、インプラントされたアクセスポートと患者の血管との間に維持される。アクセス管がポートまたは導管内のバルブ構造を開くリンク機構に嵌合するように、アクセス管が経皮的にアクセスポートに挿入される。バルブ構造は、アクセス管が挿入されたアクセスポートの部分から離れて配置され、導管自体または別個のピンチ管またはポート内のアセンブリに存在し得る。リンク機構は、機械的または水圧式であり得、通常、リンク機構がアクセス管により係合されていない場合に導管の可撓性(折りたたみ可能な)部分を収縮させるバネ式クランプに機械的に接続されている。あるいは、水圧式リンク機構が、管に対する閉鎖力が水圧式に緩められる、またはバルブがアクセス管の挿入によって開かれる場所に設けられ得る。
【0016】
本発明の方法の第3の局面においては、患者の血管への経皮的アクセスが、インプラントされたアクセスポートと血管との間に導管を維持することによって提供される。アクセス管は、アクセスポート内の管のシート(tube seat)内へ経皮的に挿入され、それによって、内部で概ね液密のシールが確立される。挿入されると、アクセス管は、リンク機構を作動させ、それによって、流れが導管を通ることを可能とするためにバルブ構造が開かれる。バルブ構造は、通常、ポートの内部にあるが、時には、ポート自体の外側に位置し得る。好適には、管のシートは、管がボアに挿入される際に外側のアクセス管と摩擦的に係合するアクセスポート内のテーパー状ボアを含む。より好適には、管のシート内へのアクセス管の挿入により、導管を開くリンク機構を作動させるために、アクセスポートの基部に対して管のシートが押し下げられる。リンク機構は、上記のようなクランプバルブを含む様々な形態をとり得る。リンク機構は、アクセス管が、そこを通る流れの通路を整合させ、それによってポート内で流路を開かせるようにバルブコンポーネントを前進させるスライドバルブアセンブリの形態でもよい。
【0017】
管のシートは、アクセス管が基部から除去されるまで、押し下げられた状態にロックされたままである。管のシートを硬質材料(好適には、使用されるべき針または他のアクセス装置より硬質な材料)から形成する(あるいは、管のシートを硬質材料で裏打ちする)ことによって、バルブに対する損傷の可能性が大幅に低減され得る。さらに、テーパー状管のシートの設計は、針がポートに挿入された際に針を破損する傾向を持たない。従って、本発明のポートは、従来技術の多くのポートとは異なり、瘻管針等の自己貫入の鋭い針を用いた使用に特に適している。
【0018】
本発明の方法の第4の局面においては、患者の血管への経皮的アクセスが、インプラントされたアクセスポートと血管との間に導管を維持することによって提供される。アクセス管は、概ね垂直の向きで、すなわち、そこを通してアクセス管が導入される患者の皮膚表面に対して法線すなわち垂直の方向で、アクセスポート内に経皮的に挿入される。アクセスポート内の通路は、75°〜105°の角度でエルボを介して導管に接続される。アクセス管を垂直に導入する能力により、アクセス管とポート内の通路との整合が大幅に単純化される。
【0019】
本発明による装置は、針、剛性カテーテル、カニューレ、または血流または他の流体を受取るまたは戻すための他の従来の装置等のアクセス管を受取るための通路を備えた基部を持つインプラント可能ポートを備える。ある実施形態では、可撓性導管が、基部内に配置され、それによって、通路を介して挿入されたアクセス管と共に流体の流れを確立する。アクセス管が通路中に存在する場合に、典型的には導管上から外部クランプを緩めることによって可撓性導管を開くリンク機構が、さらに設けられる。リンク機構はさらに、アクセス管が通路にない場合に可撓性導管を閉じる。別の実施形態では、リンク機構は、バルブアセンブリの一部であるか、あるいは、バルブアセンブリに接続されている。例えば、バルブアセンブリは、スライドバルブでもよく、リンク機構は、バルブ内部にスライドを備える。全ての場合に、リンク機構は、アクセス管の挿入によって作動され、導管、バルブ、またはアクセス管から離れた位置にある流路の他の部分を開く。
【0020】
インプラント可能ポートの導管は、通常、基部内に配置される近位端と、基部の外に配置される遠位端とを持つ。基部の外に配置される場合には、遠位端は、典型的には、例えば、端側吻合によって血管に接続され得るカフ、または血管の管腔内にインプラントされ得るT型カテーテルを備えることによって、血管への直接的接続に適応する。あるいは、導管は、血管に接続され得る別個のインプラント可能カテーテルの一端に除去可能に接続されるように適応したコネクタにおいて終端し得る。さらなる代替として、可撓性導管が、基部の内部に配置された近位端と、基部の外部表面上に配置されるルアーまたは他の従来のコネクタ上で終端する遠位端とを有し得る。このような場合には、アクセスポートは、基部の表面上のコネクタを介して別個のインプラント可能カテーテルに接続され得る。
【0021】
本発明の装置の好適な局面においては、基部中の通路が、管がボアに挿入される際に、針または他のアクセス管に対して外的にシールするテーパー状ボアを備える。ある実施形態では、可撓性導管が、テーパー状ボアの端に接続され、典型的には、ほぼ直角(すなわち、75°と105°との間)で湾曲され、それによって、基部の外部に導管が向けられる。別の実施形態では、テーパー状ボアが、スライドバルブのスライドに形成される。
【0022】
本発明の装置の第2の局面では、インプラント可能ポートが、概ね上記のような、通路および可撓性導管を備えた基部を含む。クランプが、可撓性導管上で外的に配置され、クランプは、導管上で閉じられるが、アクセス管が基部内の通路に挿入されると、流体の流れが導管を通ることを可能とするために開く。逆に、クランプは、アクセス管が通路から除去される際に、導管上で閉じる。好適には、そのようなインプラント可能ポートはさらに、通路内へのアクセス管の侵入に反応し、そのような通路に反応してクランプを開くアクチュエータを含むリンク機構アセンブリ備える。同様に、アクチュエータは、基部中の通路からのアクセス管の除去に反応し、そのような除去に反応してクランプを閉じる。
【0023】
本発明の装置のさらなる局面では、インプラント可能ポートが、概ね上記のような基部および導管を備える。基部内の通路は、概ね垂直なアクセスに沿って、すなわち、そこを通ってアクセス管が導入されるべき患者の皮膚部分に対して法線に配向され、導管は、概ね水平のアクセスに沿って配置される。
【0024】
本発明の装置のより具体的な局面では、インプラント可能ポートが、アクセス管を受取るための第1の通路を備えた基部と、基部の第2の通路を介して配置される可撓性導管とを備える。アクチュエータアセンブリは、基部内に往復可能に取付けられ、アクセス管を受取るための第1の通路と整合されたボアを含む。導管の近位端は、アクチュエータアセンブリのボアに機械的に接続され、可撓性導管が閉じられ、第1の通路内へのアクセス管の挿入によって開かれる基部中の第1の位置へと、バネによってアクチュエータアセンブリが付勢される。好適には、アクチュエータアセンブリが下部リップを備え、基部の第2の通路が上部リップを備え、アクセス管がアクチュエータの管受取りボアの中に挿入される際に、可撓性バネが、導管内の管腔を閉じるために2つのリップを一緒に閉じるように、上部リップおよび下部リップが、可撓性導管の両側で相対する。
【0025】
本発明のまたさらに具体的な局面においては、インプラント可能ポートが、アクセス管を受取るための通路を持つ基部を備える。バルブアセンブリが、基部中に配置され、基部中の通路と整合され、アクセス管を受取るボアを含む。1対のボール(典型的には、小さなボール軸受に類似した相対するステンレス鋼のボール)が、基部の通路と、バルブのボアとの間に配置される。ボールは、アクセス装置が通路およびポートを介して挿入される際に、アクセス装置に対して閉鎖または係合するようにバネ付勢されている。具体的には、ボールは、摩擦係合によってアクセス管を適所にロックし、それによって、特定の除去手順を行うことなく、アクセス管を偶発的に除去することが非常に困難である。驚くべきことに、アクセス管が、ロッキングボールによって適所にしっかりと保持され、インプラントされたポートからアクセス管を直接引っ張る非常に強い力にさえ耐えるにもかかわらず、アクセス管は、優しく引っ張りながら、アクセス管を単にねじる、またはその長手方向軸の回りで回転させることによって簡単に除去され得る。従って、アクセス管が、偶発的除去の可能性が最小限に抑えられるように適所にしっかりとロックされていながら、なお、アクセス管は、アクセス管またはポートに損傷を与えることなく、または患者に多大な不快感を与えることなく、単純なねじりおよび引っ張りの手順によって簡単に除去され得る。
【0026】
本発明のさらに別の局面では、インプラント可能ポートには、基部と、針または他のアクセス管を受取るための基部中の通路と、通路内へのアクセス管の挿入に反応して開閉する内部バルブとが含まれる。インプラント可能ポートは、通路がポートの上面の中央の位置に配置される対称構成を持つ。好適には、通路は、3mm2〜20mm2(より好適には、5mm2〜15mm2)の範囲の面積を持つ入口開口部を持つ。このようなポート構成により、ポート内への針または他のアクセス管の経皮的導入が容易になる。使用者は、ポート基部の周囲を手で(通常片手を用いて)探し出せる。次に他方の手を用いて、使用者は、概ね垂直の向きで、入口開口部が位置するポートの中央に直接アクセス管を挿入し得る。従って、ポートへのアクセスが、非対称のポート構成、特に、患者の皮膚に対して非垂直の向きで針を入れる必要があるポートを用いた場合と比較してずっと単純である。
【0027】
本発明による改良された身体管腔アクセスシステムは、インプラント可能ポートおよびアクセス管を備える。アクセス管を受取るための通路を持つポート(ここでは、通路は、ポートより硬質の材料から成る)を設けることにより、ポートの通路に対する摩耗が大幅に低減され、その結果、ポートの耐用寿命が増す。これは、ポートが鋭い先端部を持つ針を用いて直接アクセスされる場合に特に重要である。好適な実施形態では、通路は、概ね円柱状で、その内部の針または他のアクセス管の外部に対してシールするテーパー状部分を持つ。
【0028】
本発明はまたさらに、ポートを皮下にインプラントすることと、導管を皮下にインプラントすることとを含む、身体管腔にアクセスするための方法を提供する。ポートは、少なくとも2mmの外径を持つアクセス管を受取るように適応したインレットを持つ。導管が、ポートのアウトレットに取付けられ、少なくとも2.5mmの管腔直径を持つ。通常、この方法は、少なくとも2mmの外径を持つアクセス管を備えたインプラントされたポートにアクセスすることをさらに含む。このような方法により、身体管腔とアクセス管のアウトレット端部との間に、少なくとも200mmHgの差圧が存在する場合に、少なくとも250ml/分の流量が確立されることが可能となる。通常、上に記載したような、より高い流量も達成され得る。本方法は、他の身体管腔(例えば、腹膜または腹膜透析)にアクセスするためにも有用であるが、好適には、身体管腔は血管であり、流体は血液である。
【0029】
さらに別の局面では、本発明は、少なくとも2mmの外径を持つアクセス管を受取るように適応したインレット通路と、アウトレット通路とを備えた基部を含むインプラント可能ポートを提供する。バルブが、インレット通路とアウトレット通路との間の基部中に配置され、バルブは、インレット通路内へのアクセス管の挿入に反応して開くように適応される。少なくとも2.5mmの管腔直径を持つインプラント可能導管を、基部のアウトレット通路に取付けるための手段(例えば、基部または基部から延長し、その遠位端にコネクタを有する導管上のコネクタ)が設けられる。インプラント可能ポートは、いま説明したばかりの方法において特に有用である。本システムは、少なくとも2.5mmの管腔直径を持つインプラント可能導管をさらに備え得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
具体的な実施形態の説明
本発明は、患者の身体管腔への経皮的アクセスを容易にするための方法および装置を提供する。身体管腔の例には、血管および腹膜腔等が含まれる。本方法は、動脈血管および静脈血管の両方を含む血管にアクセスするために特に有用である。残りの説明は、特に血管に向けられるが、本発明は、選択的な経皮的アクセスが所望され得る全ての身体管腔および腔に適用されることが理解される。例えば、ポートは、腹膜透析手順において透析物の導入および除去に使用され得る。本発明によるアクセスポートは皮下にインプラントされ、それによって、その内部の通路が、患者の皮膚表面下の短い距離(典型的には皮膚表面の3mm〜20mm以内)に位置する。アクセス管が、次に、アクセスポートを介した血管または他の身体管腔との連絡を提供するために、アクセスポートの通路内に経皮的に挿入され得る。このようなアクセスは、様々な目的(通常、血液の回収、回収された血液の体外的処置、および/または処置済みの血液を患者に戻すことに関与する)のために提供され得る。このような体外的な血液の処置は、最も頻繁には血液透析のためであるが、血液ろ過、血液ダイアフィルトレーション、およびアフェレーシス等のためでもあり得る。体外処置に加えて、本発明のアクセスポートは、様々な目的のために患者の血液循環に薬物、流体、および他の材料を直接灌流させるために使用され得る。
【0031】
本発明は、アクセスポートのインプラントと、標的血管または他の身体管腔への導管(少なくとも、導管の一部は可撓性である)を介したポートの接続とに依存する。「可撓性」とは、導管が、弾性で、折りたたみ可能であり、それによって、アクセスポートが使用されていない場合に血流が導管を通ることを防止するために、導管が外的にクランプされ得る、またはそうでなければ変形され得ることを意味する。導管を閉じるために外的クランプを用いることは、血流および/または導管内への針または他のアクセス管の挿入を妨害し得る内部構造が導管内に設けられる必要がないので、特に有利である。
【0032】
アクセス管は、通常、患者の皮膚を通ってインプラントされたポート内へと直接貫通(経皮的導入)され得る針である。従って、針は、通常、皮膚を通って針が自己導入されることが可能となるように、鋭い先端部を持つ。もちろん、尖っていない遠位端を持つアクセス管は、別の刃、探り針、または針等を用いてまず皮膚に穴をあけ、次に、その結果生じた切開または穴にアクセス管を導入することによって使用され得る。アクセス管はまた、後に回収され、管をポート中の適所に残す内部探り針を用いて導入され得る。本発明のポートは、いろいろな異なるアクセス管を許容するが、標準皮下注射針、標準瘻管針、および例えば16ゲージ、14ゲージまたはそれ以上の大型瘻管針等を用いて使用され得ることが意義深い。中隔を用いる従来技術のポート設計は、中隔への多大な損傷を避けるために、比較的小さなノンコアリングヒューバー針の使用、または管/探り針の組み合わせの使用を必要とする。上記のEnsmingerの多くの設計のように、管が通過しなければならないスリットバルブを用いるポートにも同様のことが当てはまる。全ての場合に、針または他のアクセス管は、剛性であり、以下により詳細に説明されるように、導管のクランプを緩めるためのリンク機構を作動させるために十分な柱強度を持つ。
【0033】
本発明のポートは概して、不適切な大きさの針またはその他のアクセス管の使用により損傷を受けないため、本発明のポートはまた有利である。ほとんどの従来技術のポートは、誤った種類またはサイズの針の使用により損傷を受け得るが、本発明のポートは、より大きい針(アクセス開口部を嵌合するだけで、ポート内を通らない)またはより小さい針(アクセス開口部には入るが、損傷を与えずに基部の内部を通る)により損傷を受けない。特に、針またはその他のアクセス管を受けるアクセスポート内の通路は概して、より小さい針により嵌合される表面を与える少なくとも1つのベンド、通常は90°のエルボーを有する。針よりも硬い材料、例えばステンレス鋼、で通路を形成または裏打ちすることにより、ポートは、小さい針の不適切な挿入によるいかなる損傷からも保護される。
【0034】
基部12と可撓性のある導管14とを含む例示的なアクセスポート10が、図1、図2、図2A、図3、および図3Aに示される。図1に示されるように、可撓性のある導管14は、基部12から延び、血管への直接吻合(縫合)に適した遠位端16で終わる。適切な導管構造は、米国特許第5,562,617号に示されており、本明細書において、上記特許の開示全体を参考として援用する。例示的な導管構造は、シリコーンゴムからなり得る。以下、異なる遠位端を有する導管構造が、図4〜図8を参照して説明される。
【0035】
アクセスポート10の基部12は、上側シェル18、ベースプレート20、内部シリンダ22、および、アクチュエータブロック24内に配置される垂直方向に往復運動するプランジャ23を含み、プランジャのアセンブリおよびアクチュエータブロックはともに、シリンダ22内に配置される。図2および図2Aに示されるように、ばね26は、プランジャ23およびアクチュエータブロック24を基部20に関して上方向に付勢する。プランジャ23およびアクチュエータブロック24が上方向の位置にあるとき、導管14は、シリンダ22の壁の部分である上側リップ28と、アクチュエータブロック24の部分である下側リップ30との間に、閉じられた状態ではさまれる。導管14の近位端は、アクチュエータブロック24の内部体積内に垂れ下がる(depends)管32の下端に接続される。図3および図3Aに示されるように、垂れ下がる管32は、針Nを受けるための軸方向のボア34を提供する。図3に最良に示されるように、テーパ状領域33は、軸方向のボア34の上端付近に形成され、ボアに導入される針またはその他のアクセス管の外側壁を嵌合し且つ封止するような大きさにされる。
【0036】
針Nは、軸方向のボア34の上端の開口部36を通って導入される。典型的には、開口部36は、針Nがボア34に導入されるときに針Nの整列を容易にするために、わずかな面取り部(円錐形)を有するが、必ずしもそうである必要はない。図2に示されるように、ボール40の対が、管32の上部に配置され、アクチュエータブロック24が高くなった配置のとき、アクチュエータブロック24の上の、シェル18の円形開口部42内に封入される。図3に示されるように、針Nが開口部36を通って導入されると、針Nは、ボール40に遭遇し、ブロックがその下方の構成に達するまで、プランジャ23およびアクチュエータブロック24を下方向に押し下げる。そのとき、ボール40は、半径方向に外側に移動して、開口部42の拡張部44に入る。従って、ボール40は、拡張領域44内で固定され、針Nが適切な場所にある限り、アクチュエータブロック24を、下がった位置に保持する。
【0037】
アクチュエータブロック24が下げられているとき、図3および図3Aに示されるように、対向するリップ28および30は、導管14に対する外的クランプを軽減するために開かれる。従って、針Nがアクセスポート10に挿入されると、以前に可撓性のある導管14を閉じていたクランプ機構が開かれる。針Nが取り出されると、ばね26が、アクチュエータブロック24を上方向に付勢し、アクセスポートは、図2および図2Aに示される配置に戻る。
【0038】
好ましくは、アクセスポートのインプラントを容易にするために、アクセスポート10の基部付近に、シリコーンオーバーモールディング(overmolding)50が設けられる。ベースプレート20から半径方向に外側に延びるフランジ52は、組織に縫合するための孔(示されていない)を含む。シリコーンオーバーモールディング50を含むことにより、孔内への組織成長が防がれる。好ましくは、上側シェル18の内面と管32の上部との間に、シリコーンシール54が設けられる。シリコーンシール54は、周囲の組織からの血液もしくはその他の流体、および/または、針Nからアクセスポート10の内部に漏れ得る血液もしくはその他の流体の侵入を防ぐ。
【0039】
本発明のアクセスポート10の好適な局面では、軸方向のボア34は、下方向にテーパ状にされる。ボアのサイズおよびテーパの程度は、アクセス管が軸方向のボア34に挿入されたときに密閉シールが形成されるように、従来の針またはその他のアクセス管を摩擦的に嵌合するように選択される。テーパはまた、針Nが導管14により規定される水平方向の管腔に侵入しないように、ストップを提供する。
【0040】
従って、針、アクセスポート10、および可撓性のある導管14の組み合わせが、患者の脈管系からおよび/または脈管系への流体のための、実質的に連続した円滑な流路を提供することが分かる。特に、導管14を通る流れを閉鎖するために外的クランプを使用することにより、バルブシートを規定するための、導管内の内部バルブ構造、または、アクセスポート内のその他の場所の内部バルブ構造の必要性がなくなる。即ち、導管を通る流れを妨げるように閉じる、バルブの部分の必要性がなくなる。可撓性のある導管からクランプを軽減するための示された特定のリンク機構は、単純で、信頼性が高く、そして、比較的安価に製造される。必要とされる移動部品は非常に少ないが、針Nがアクセスポート10から引き出されるたびに、明確な(positive)シールが確実に達成される。さらに、一旦針Nがアクセスポート10に導入されると、クランプ機構は、その開いた配置で固定され、可撓性のある管の管腔およびアクセスポートのその他の部分を通る完全な流れが維持されることを確実にする。
【0041】
ここで図4を参照して、アクセスポート10は、別個のインプラント可能なカテーテルCへの相互接続のための遠位取り付け具116を有する可撓性のある導管114を含むように改変され得る。取り付け具116は、典型的には、カテーテルCの近位端の雄取り付け具118とかみ合うように適合される雌取り付け具である。カテーテルCは、血管への取り付けのために意図されたいかなる公知のカテーテルCであってもよい。例えば、カテーテルCは、静脈への取り付けのための留置カテーテルであってもよく、または、カテーテルCは、任意の公知の態様での動脈への直接的な取り付けのために適合され得る。ポートと脈管構造または身体管腔との中間にコネクタを設けることには、多数の利益がある。ポートをカテーテルとは別個にインプラントする能力は、インプラントを簡略化する。例えば、ポートをインプラントするためおよびカテーテルを取り付けるためのそれぞれ2つの比較的小さい別個の切り口を作り、次いで、皮下に通して相互接続を可能にすることが可能である。そのようなアプローチは、患者の外傷を低減する。ポートおよび/またはカテーテルの取り付けの取り替えは、簡略化される。なぜなら、これら2つは切り離され得、一方が妨害されないままで、他方が取り替えられるからである。そのような中間の接続部は、好ましくは、ポートまたは管腔の接続部のいずれかに比較的近い位置に間隔をあけて配置され、典型的には、10cm以内の間隔で配置され、5cm以内の間隔で配置されることが多い。
【0042】
アクセスシステム10のさらに他の構造が、図5に示される。ここでは、可撓性のあるカテーテル214は、Tコネクタ216で終わる。同時係属中の米国出願番号第08/724,948号に示されるように、Tコネクタは、動脈血管へのインプラントに特に適している。本明細書において、上記出願の開示全体を参考として援用する。
【0043】
ここで図6および図7を参照して、アクセスポート10の基部12に取り付けられ得る、さらに他の可撓性のある導管314が示される。可撓性のある導管314は、シリコーンオーバーモールディング350と一体に形成され、これにより、導管を基部12にしっかりと係留する。導管314の内部は、導管14の内部および以前の実施態様と同じであるが、導管の外部は、導管のフープ強度を高めるために、リブ構造318を含む。さらに、カテーテルC’の近位端の雄コネクタ320への接続のために、遠位コネクタ316が設けられる。コネクタ320は、シリコーン導管314の管腔内に受け入れられる金属取り付け具を含む。この金属は、通常チタンである。ポート312およびカテーテルC’がともにインプラントされ且つ接続された後にコネクタ316および320の上で固定するために、クリップ330が設けられる。図6に示されるカテーテル接続機構が特に有利である。なぜなら、カテーテルC’は、アクセスポートの基部12のインプラントを妨げる必要なく、可撓性のある導管314から切り離され得るからである。
【0044】
ここで図8を参照して、ベースユニット412は、可撓性のある導管416が上側シェル418を通る開口部で終わることを除いて、以前に説明されたベースユニット12と実質的に同様である。ベースユニット12へのカテーテルの外部接続を可能にするために、金属取り付け具420が設けられる。取り付け具420は、可撓性のある導管416の管腔と整列される管腔422を規定する。
【0045】
内部ピンチ管がポートハウジングのチタンニップルに適合する現在好ましい導管接続が、図8に示される。導管は、チタンニップルの外部に取り付けられ、以前に説明された構成のうちのいずれかの構成において、(ハウジングから離れた)遠隔端で終わり得る。
【0046】
ここで図9Aおよび図9Bを参照して、本発明の原理に従って構成されるアクセスポート500のさらなる実施態様は、ボディ512を含み、ボディ512は、ボディ512から横方向に外側に延びるニップル514を有する。ニップル514は、可撓性のある導管(図示せず)への接続に適している。ボディ512は、上側シェル518、ベースプレート520、内部シリンダ522、垂直方向に往復運動するプランジャ23、およびアクチュエータブロック524を含む。プランジャ23/アクチュエータブロック524の、垂直方向に高くされた位置が図9Aに示され、垂直方向に押し下げられたまたは低くされた構成が図9Bに示される。
【0047】
導管は基部512内には延びていないため、図9Aおよび図9Bのポートの実施態様500は、別個のピンチ管525を使用し、ピンチ管は、シリンダ522の部分である上側リップ528と、往復運動するアクチュエータブロック524の部分である下側リップ530との間に、閉じられた状態ではさまれる。アクチュエータブロック524が下げられると、図9Bに示されるように、ピンチ管525の外的クランプは、軽減される。
【0048】
図9Bに示されるように、アクチュエータブロック524は、ピン527を覆って装着されるばね526により上方向に付勢され、プランジャ523は、針Nを受けるための軸方向のボア534を含む。針Nは、開口部536を通過して、プランジャ523内の通路534に入る。図9Bに示されるように、針が通路534に入ると、針は、対向するボール540を通過し、これらのボール540はまず、プランジャ523およびアクチュエータブロック524の降下を引き起こし、次いで、通路545の拡張部544に捕らえられる。
【0049】
通路534へのおよび対向するボール540を介しての針Nの侵入は、単に針を垂直方向に下方に挿入することにより行われ得るが、一旦針が完全に下げられ、そして、通路534のテーパ状の壁により嵌合されると(図9Bに示されるように)、針は、ボール540により適切な場所に「固定」される。驚くことに、針をボール540から引き出すことは非常に困難であることが分かっており、これにより、患者を、針の不慮の損失から守る。同様に驚くことに、単に針Nをその軸を中心にねじることにより、針が、大きな支障を伴わずにポートから引っ張られることが可能になることが分かっている。従って、対向するボール540と、ボールを捕らえるための拡張領域544との組み合わせは、バルブを開いた状態に固定するだけではなく、針を取り出すことが望まれるまで針を適切な場所に固定する。
【0050】
ここで図10Aおよび図10Bを参照して、本発明のインプラント可能なポートにおいて使用される別のバルブ構造が示される。以前に説明されたようにピンチバルブを使用する代わりに、ポートがスライドバルブ600を使用し得るか、または、往復運動するブロック602が基部囲い604(一部分しか示されていない)内に形成される。往復運動するブロック602は、ポートを通る通路の入口部606を規定する。ポートには、通路の出口部608もまた設けられる。最初に、針が存在していないとき、ばね610は、往復運動するブロック602を上方向に付勢し、通路の側部612が、出口部608と整列しなくなる。これにより、スライドバルブ構造600が閉じられる。図10Bに示されるように、バルブ構造600に針Nまたはその他のアクセス管を導入することにより、往復運動するブロック602は下げられ、通路の側分岐部612は、出口部608と整列される。これにより、バルブが開く。以前の実施態様に関して一般に説明されたように、バルブは、拡大された窪み622に受け入れられる対向する一対のボール620により開位置に保持され得る。
【0051】
以上、本発明を、明瞭な理解の目的のために、例示および実施例により幾らか詳細に説明してきたが、添付の請求の範囲の範囲内で、特定の変更および改変が実施され得ることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の原理に従って構築された、そこから延長する可撓性導管を持つアクセスポートの斜視図である。
【図2】図2は、閉じられた内部クランプ構造と共に示される、図1のアクセスポートの側断面図である。図2Aは、図2の線2A−2Aに沿って切り取られた部分断面図である。
【図3】図3は、アクセス針の挿入に反応して開かれた内部クランプ構造と共に示されるような、図1のアクセスポートの側断面図である。図3Aは、図3の線3A−3Aに沿って切り取られた部分断面図である。
【図4】図4は、可撓性導管が別のカテーテルへの接続に適応する、本発明の原理に従って構築されたアクセスポートを示す。
【図5】図5は、可撓性導管の遠位端が、血管の管腔への直接的挿入に適応した、本発明の原理に従って構築されたアクセスポートを示す。
【図6】図6は、インプラント可能カテーテルの近位端に接続するための遠位コネクタを持つ具体的な可撓性導管の部分断面図である。
【図7】図7は、図6の線7−7に沿って切り取られた端面図である。
【図8】図8は、可撓性導管がポート内で内部的に終端し、別のインプラント可能カテーテルへの接続のために外的コネクタが設けられること以外は、図1〜図3のものに類似したインプラント可能アクセスポートを示す。
【図9A】図9Aおよび図9Bは、代替のピンチ管接続設計を示す。
【図9B】図9Aおよび図9Bは、代替のピンチ管接続設計を示す。
【図10】図10Aおよび図10Bは、本発明のインプラント可能ポートのスライドバルブの実施形態を示す。
【技術分野】
【0001】
本願は、1997年1月21日に出願された仮出願第60/036,124号の一部継続出願であり、仮出願第60/036,124号の全開示を参考として本明細書に援用する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、概して医療装置の設計および使用法に関し、より具体的には、血液透析および他の体外血液処置のために、患者の血管系への一時的アクセスを確立するためのインプラント可能ポートの設計および使用法に関する。患者の血管系へのアクセスは、様々な一時的および永久的にインプラントされた装置によって確立され得る。最も単純には、一時的アクセスが、患者の皮膚を介した血管内への針の直接的な経皮的導入によってもたらされ得る。このような直接的アプローチは、比較的単純で、静脈内栄養補給、静脈内薬物送達、および時間的に限定されている他の適用等の適用には適しているが、定期的に(しばしば、患者の一生の間)繰り返されなければならない血液透析および他の体外処置には適していない。
【0003】
血液透析および他の体外処置養生法のために、様々なインプラント可能ポートが長い年月にわたって提案されてきた。典型的には、ポートには、中隔等のアクセス領域上のチャンバが含まれ、チャンバは、インプラントされたカテーテルに取付けられ、インプラントされたカテーテルは、次に血管に固定される。静脈の場合には、カテーテルは、典型的には内在しており、動脈の場合には、カテーテルは、従来の吻合によって取付けられ得る。
【0004】
本発明にとって特に興味深いのは、インプラント可能ポートが、典型的に、内部チャンバ内への針の経皮的貫入を可能とする針貫入可能中隔を備えることである。このチャンバは次に、カテーテルの一端に接続され、カテーテルの他方の端は、血管に内在している。このような設計は、活用できるが、多数の問題を被る。中隔への繰り返しの貫入は、しばしば、時間が経つにつれて劣化につながり、微粒子が血流に入る多大な危険性および/またはポートを定期的に取替える必要性を提示する。第2に、チャンバまたはプレナムを通る血液の通過は、しばしば、乱流または低流の領域に遭遇し、そのどちらも、時間が経つにつれて、血液の質を劣化させ得る。第3に、以前の血管アクセスポートの多くが、ポートが使用されていない場合に、ポートの内部をインプラントされたカテーテルの管腔から分離する内部バルブ構造を提供できなかった。第4に、バルブを用いる以前のポートにおいては、ポートによって破損される、および/またはポートに破損を引起こすので、自己貫入針が使用されていない。このような場合には、頻繁に、除去可能探り針と一体化したカテーテルを使用することが必要であり、これは、単純な針の使用と比較して、より高価で、より不便である。第5に、中隔またはバルブのいずれかを用いるポートでは、針または他のアクセス装置が、偶発的に除去される傾向がある。血液戻りポートからの針の紛失は、針が同時にその周囲へと紛失されている間に血液が引き出され続け得るので、特に危険である。針およびポートの設計が、このような偶発的除去を防止するために提案されてきたが、そのような設計のほとんどが、複雑で、それ自体がフェイルセイフではない。
【0005】
問題点の少なくとも幾つかに取り組む多数の血管アクセスの設計が提案されてきた。具体的には、William Ensmingerを発明者として指名する、一連の発行された米国特許が、経皮的に導入されたアクセス装置(例えば、針またはカテーテル/探り針の組み合わせ)を受取るための内部管腔を持つアクセスポートと、ポートを関連のインプラントされたカテーテルから分離するための内部バルブ構造とを開示している。本明細書中で以下にリストされるこれらの特許は、アクセスポート内に組込まれ得る多数の具体的なバルブの種類(リーフレットバルブ、ボールバルブ、フラッパバルブ、「関節バルブ(articulating valve)」と呼ばれる他の具体的な構成を含む)を開示する。しかし、このような構造の全ては、バルブを開かせるために、アクセス装置がバルブ自体(すなわち、バルブを通る血流路を閉鎖する部分)を通されることを一般的に必要とする。このような要件は、アクセス装置と直接接触することによって、繰り返し使用された後にバルブが劣化し、その結果、バルブの部分が劣化し、血液循環に放出され得る危険性を提示する。このようなバルブはまた、繰り返し使用された後、または鋭い針との接触後に故障するという多大な危険性を提示する。さらに、このようなバルブ構造は、アクセス装置がそこを通って導入される際に、アクセス装置を破損し得る。その結果、後続の治療プロトコル中に、針を通したバルブの流れが潜在的に乱される。
【0006】
Ensmingerのバルブに関するさらなる問題点は、入口ポートが、通常、アクセス装置が導入される皮膚表面に対してかなりの角度で傾斜していることである。このような角度のあるアクセスにより、アクセス装置を導入する作業者が、角度を推測し、患者の皮膚上の最適な挿入点を推定することが必要となる。装置の貫入に関するこのような不確実性は、おそらく、Ensmingerの全ての設計が、針が導入される際に、針を受け取り、整合させるための拡張「漏斗」の使用を必要とする理由である。従って、概ね「垂直に」(すなわち、そこを通って針が導入される皮膚表面に対して実質的に法線の角度で)配置される入口通路を持つアクセスポートを提供することは利点である。針を「まっすぐ中に」貫入させることによって、標的開口部に針を整合させることがずっと簡単で、開口部(針の貫入)領域の大きさが、縮小され得る。
【0007】
これらの理由から、患者の血管(動脈および静脈の両方を含む)に経皮的にアクセスするための改良型インプラント可能アクセスポートを提供することが望ましい。アクセスポートは、好適には、ポートが使用されていない場合に、ポートを関連のインプラントされたカテーテルから分離するためのバルブ構造を備える。バルブは、好適には、アクセスポートの血流管腔内において、構造体をほとんど、または全く設けず、より好適には、バルブを開くために、バルブのシート部分を通る針または他のアクセス管の通路を必要としない。さらに、内部にバルブの部品を備えたポート構造体は、実質的に均一な断面積を持ち、そこを通る流体の流れを乱す著しい収縮または拡張を示さない。好適には、ポートの設計により、瘻管針等の従来の針を用いた経皮的アクセスが、ポートまたは針を破損することなく可能となる。さらにより好適には、ポートにアクセスするために使用される針または他の装置が、多大な余分の構造または追加の構成要素を必要とすることなく、ポートからの偶発的除去に耐える。本発明によるポートおよびバルブは、これらの目的の少なくとも幾つかを満たす。
【背景技術】
【0008】
2.背景技術の説明
本願と同一譲受人の米国特許第5,562,617号およびWO 95/19200号には、ポートへの逆流を防止するための内部スリットまたはダックビルバルブを持つアクセスポートを備えたインプラント可能血管アクセスシステムが記載される。ポートに対して外部経皮的接続が無い場合に、ポートを血管系から分離するための様々な関節接合バルブを備えた血管アクセスポートが、William Ensmingerを発明者として指名する以下の米国特許第5,527,278号、第5,527,277号、第5,520,643号、第5,503,630号、第5,476,451号、第5,417,656号、第5,350,360号、第5,281,199号、第5,263,930号、第5,226,879号、第5,180,365号、第5,057,084号および第5,053,013号に記載されている。針の挿入によって開かれるバルブ構造を持つインプラント可能ポートを示す他の特許および公開された出願には、米国特許第4,569,675号、第4,534,759号、第4,181,132号、第3,998,222号、およびWO 96/31246号が含まれる。米国特許第5,637,088号には、除去を防止する補助をする二重針を用いた中隔型のインプラント可能ポートが記載される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明によって以下が提供される:
(1)身体管腔に経皮的にアクセスする方法であって、
インプラントされたアクセスポートと該身体管腔との間に導管を維持する工程を包含し、該導管は外部的にクランプされ、
該アクセスポートにアクセス管を経皮的に挿入する工程をさらに包含し、該挿入工程が、該外的クランプを軽減して、該導管を通る流体の流れを可能にする、方法。
(2)身体管腔に経皮的にアクセスする方法であって、
インプラントされたアクセスポートと該身体管腔との間に導管を維持する工程と、
該アクセスポートにアクセス管を経皮的に挿入する工程と、を包含し、該アクセス管が、該アクセス管が挿入されている該アクセスポートの部分から離れて配置される該導管のバルブ構造を開くリンク機構を係合する、方法。
(3)身体管腔に経皮的にアクセスする方法であって、
インプラントされたアクセスポートと該身体管腔との間に導管を維持する工程と、
該ポートの管のシートにアクセス管を経皮的に挿入し、該ポートとほぼ液密(fluid tight)のシールを確立する工程と、を包含し、
該アクセス管の挿入が、リンク機構を作動させ、該管のシートの遠位に配置されるバルブを開き、該導管への流れを可能にする、方法。
(4)身体管腔に経皮的にアクセスする方法であって、
インプラントされたアクセスポートと該身体管腔との間に導管を維持する工程と、
該アクセスポートの通路に、アクセス管をほぼ垂直方向の向きで経皮的に挿入する工程と、を包含し、該通路が、75°〜105°のエルボーを通して該導管に接続される、方法。
(5)前記導管の近位端が前記アクセスポート内に配置され、該導管の遠位端が前記身体管腔に取り付けられる、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(前記導管が、単一の連続する管である、項目5に記載の方法。
(7)前記導管が、少なくとも2つの異なる軸方向の部分を有する複合構造を含む、項目5に記載の方法。
(8)前記導管の近位端が、前記アクセスポート内に配置され、該導管の遠位端が、別個のカテーテルへの取り付けのためのコネクタで終わる、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(9)前記導管を通る流れが、前記身体管腔から前記アクセスポートおよびアクセス管への血流である、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(10)血液が、少なくとも250ml/分の割合で前記アクセスポートから引き出される、項目9に記載の方法。
(11)前記血流が、少なくとも300ml/分である、項目10に記載の方法。
(12)前記血流が、少なくとも400ml/分である、項目11に記載の方法。
(13)前記血流が、少なくとも500ml/分である、項目12に記載の方法。
(14)前記導管を通る流れが、前記アクセス管から前記アクセスポートを通って前記身体管腔に流れる流体の流れである、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(15)前記身体管腔への前記流体の流れが、血流を含む、項目14に記載の方法。
(16)前記身体管腔への前記流体の流れが、薬物を含む、項目14に記載の方法。
(17)前記血液を外部血液処理回路に通過させる工程と、処理された該血液またはその部分を患者に戻す工程と、をさらに包含する、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(18)前記外部血液処理回路が、血液透析回路、血液濾過ユニット、またはアフェレーシス回路を含む、項目17に記載の方法。
(19)前記導管の可撓性のある部分が、ばね上げ式(spring-loaded)クランプ機構によりクランプされ、前記アクセス管の挿入が、ばね力を克服して該クランプ機構を開くリンク機構を作動させる、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(20)前記アクセス管が、患者の皮膚に対してほぼ垂直な方向に挿入され、前記導管が、該患者の皮膚にほぼ平行な平面において、前記アクセスポートから前記身体管腔に延びる、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(21)身体管腔にアクセスする方法であって、
少なくとも2mmの外径を有するアクセス管を受けるように適合された入口を有するポートを皮下にインプラントする工程と、
1つの端部が該ポートの出口に取り付けられ且つ別の端部が該身体管腔に取り付けられた少なくとも2.5mmの管腔径を有する導管を皮下にインプラントする工程と、を包含する、方法。
(22)少なくとも2mmの外径を有するアクセス管で、該インプラントされたポートに経皮的にアクセスする工程をさらに包含する、項目21に記載の方法。
(23)少なくとも200mmHgの、前記身体管腔と前記アクセス管の出口端との間の差圧を確立する工程をさらに包含し、アクセス針を通る流体の流れが、少なくとも250ml/分で確立される、項目22に記載の方法。
(24)前記血流が、少なくとも300ml/分である、項目23に記載の方法。
(25)前記血流が、少なくとも400ml/分である、項目24に記載の方法。
(26)前記血流が、少なくとも500ml/分である、項目25に記載の方法。
(27)前記身体管腔が血管であり、前記流体が血液である、項目23に記載の方法。
(28)インプラントされたポートにアクセス管を経皮的に導入する方法であって、
対称に構成されたインプラントされたポートの周囲の位置を手動で配置する工程を包含し、該ポートは、該アクセス管を受けるための中央開口部を有し、
該アクセス管を垂直方向に維持する工程と、
該アクセス管を該ポートの中心に挿入する工程と、をさらに包含する、方法。
(29)インプラントされたポートにアクセスする方法であって、
該ポートの通路にアクセス管を経皮的に挿入する工程を包含し、該通路を横切って配置される一対の対向するボールが、該アクセス管に係合し且つ該アクセス管を適切な場所に固定する、方法。
(30)前記アクセス管を回転させながら引っ張ることにより、前記ポートから該管を引き出す工程をさらに包含する、項目29に記載の方法。
(31)(a)アクセス管を受けるための入口および(b)出口を備える通路を有する基部と、
該入口へのアクセス管の挿入により作動されるリンク機構と、
アクセス管による該リンク機構の作動に応答して、該入口から下流に該通路を開くバルブ構造と、を含む、インプラント可能なポート。
(32)アクセス管を受けるための通路を有する基部と、
該通路を通って挿入されるアクセス管とともに流体の流れを確立するように配置される可撓性のある導管と、
該可撓性のある導管の外側の周りに配置されるクランプと、を含み、該クランプは、アクセス管が該通路に挿入されると、該導管の周りを開いて、該導管を通る流体の流れを可能にし、該アクセス管が該通路から取り出されると、該導管の上を閉じる、インプラント可能なポート。
(33)アクセス管を受けるための第1の通路を有する基部と、
該基部の第2の通路を通るように配置される可撓性のある導管と、
該第1の通路と整列され、該アクセス管を受けるためのボアを有する該基部に往復運動可能に受け入れられるアクチュエータアセンブリと、を含み、該可撓性のある導管の近位端は、該アクチュエータアセンブリの該ボアに機械的に結合され、
該アクチュエータアセンブリを該基部の第1の位置に付勢するためのばねをさらに含み、該アクチュエータアセンブリと該第2の通路との相対位置が、該可撓性のある導管を閉じ、該第1の通路への該アクセス管の挿入が、該アクチュエータアセンブリを、該可撓性のある導管を開く第2の位値に移動させる、インプラント可能なポート。
(34)前記バルブ構造が、可撓性のある導管と、前記リンク機構の作動に応答して、該導管の周りを開閉するクランプと、を含む、項目31に記載のインプラント可能なポート。
(35)前記通路および前記導管が結合され、停滞領域のない実質的に連続した流れ管腔を形成する、項目32、33および34のいずれかに記載のインプラント可能なポート。
(36)前記可撓性のある導管が、前記基部内に配置される近位端と、該基部の外側に配置される遠位端とを有する、項目32、33および34のいずれかに記載のインプラント可能なポート。
(37)前記導管の前記遠位端が、身体管腔への直接の接続のために適合される、項目42に記載のインプラント可能なポート。
(38)前記導管の前記遠位端が、カテーテルの1つの端部への接続のために適合される、項目42に記載のインプラント可能なポート。
(39)前記導管の前記遠位端が、下方コネクタで終わる、項目42に記載のインプラント可能なポート。
(40)前記可撓性のある導管が、前記基部内に配置される近位端と、該基部の外面上のコネクタで終わる遠位端とを有する、項目32、33および34のいずれかに記載のインプラント可能なポート。
(41)結合アセンブリが、完全に前記基部内に配置される、項目34に記載のインプラント可能なポート。
(42)前記リンク機構が、前記可撓性のある導管の外的クランプの解放を引き起こす、通路内への前記アクセス管の通過により作動される、項目34に記載のインプラント可能なポート。
(43)前記通路が、テーパ状のボアを含み、該ボアは、前記アクセス管が該ボアに挿入されると該管を封止する、項目31から43のいずれかに記載のインプラント可能なポート。
(44)前記可撓性のある導管が、前記テーパ状のボアの小さい直径の端部に取り付けられる、項目43に記載のインプラント可能なポート。
(45)前記可撓性のある導管が、75°〜105°の角度で前記テーパ状のボアに取り付けられる、項目44に記載のインプラント可能なポート。
(46)前記バルブ構造が、スライドバルブを含む、項目31に記載のインプラント可能なポート。
(47)前記スライドバルブが、往復運動するブロックに形成される前記通路の前記入口部を有するブロックを含み、該往復運動するブロックが、前記リンク機構を含む、項目46に記載のインプラント可能なポート。
(48)前記往復運動するブロックにおけるアクセス管の挿入は、該ブロックをスライドさせ、該ブロック内の前記通路が、前記基部の該通路の下流部と整列される、項目47に記載のインプラント可能なポート。
(49)インプラント可能なポートであって
アクセス管を受けるための通路を有する基部と、
該基部内のバルブアセンブリであって、該通路と整列され且つ該アクセス管を受けるボアを有するバルブアセンブリと、
該基部の該通路と、該バルブの該ボアとの間に配置される一対のボールと、を含み、該ボールが、該アクセス管が該通路および該ポートを通って挿入されると、ばねにより付勢されて、該アクセス装置を閉じ且つ固定する、インプラント可能なポート。
(50)アクチュエータアセンブリが下側リップを含み、前記基部の第2の通路が上側リップを含み、該上側リップおよび下側リップは、可撓性のある導管の対向する側で対向し、前記ばねが、該リップをともに閉じて、該導管内の管腔を閉じる、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(51)可撓性のある導管が、前記基部内に配置される近位端と、該基部の外側に配置される遠位端とを有する、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(52)前記遠位端が、身体管腔への直接の接続のために適合される、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(53)前記導管の遠位端が、カテーテルの1つの端部への接続のために適合される、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(54)前記導管の遠位端が、下方コネクタで終わる、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(55)可撓性のある導管が、前記基部内に配置される近位端と、該基部の外面上のコネクタで終わる遠位端とを有する、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(56)前記アクチュエータアセンブリおよびばねが、完全に前記基部内に配置される、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(57)前記ボアが、テーパ状のボアを含み、該テーパ状のボアは、前記アクセス管が該ボアに挿入されると該管をシールする、項目49に記載のインプラント可能なポート。
(58)可撓性のある導管が、前記テーパ状のボアの小さい直径の端部に取り付けられる、項目57に記載のインプラント可能なポート。
(59)前記可撓性のある導管が、75°〜105°の角度で前記テーパ状のボアに取り付けられる、項目58に記載のインプラント可能なポート。
(60)アクセス管を受けるための入口通路を有する基部と、
該入口通路を通して挿入されるアクセス管から流体の流れを受けるように配置される出口通路と、を含み、
該入口通路が、垂直方向の軸に沿った向きにされ、該出口通路が、ほぼ水平方向の軸に沿って配置される、インプラント可能なポート。
(61)前記入口通路および前記出口通路が結合され、停滞領域のない実質的に連続する流れ管腔を形成する、項目60に記載のインプラント可能なポート。
(62)前記出口通路が、可撓性のあるカテーテルと、剛性の管により規定される垂直方向の通路と、を含む、項目61に記載のインプラント可能なポート。
(63)前記可撓性のあるカテーテルが、75°〜105°の角度を有するエルボーで、前記剛性の管に結合される、項目62に記載のインプラント可能なポート。
(64)前記出口通路が、前記基部内に配置される近位端と、該基部の外側に配置される遠位端とを含む、項目60に記載のインプラント可能なポート。
(65)少なくとも2mmの外径を有するアクセス管を受けるように適合される入口通路と、出口通路とを有する基部と、
該基部において、該入口通路と該出口通路との間に配置されるバルブであって、該入口通路への該アクセス管の挿入に応答して開くように適合されるバルブと、
少なくとも2.5mmの管腔径を有するインプラント可能な導管を、該基部の該出口通路に取り付けるための手段と、を含む、インプラント可能なポート。
(66)項目66に記載のインプラント可能なポートと、
少なくとも2.5mmの管腔径を有するインプラント可能な導管と、を含む、システム。
(67)基部と、アクセス管を受けるための通路と、該通路へのアクセス管の導入に応答して開閉される内部バルブとを含むタイプの改良されたインプラント可能なポートであって、改良が、対称に構成された基部であって、該基部の頂部の中央位置に配置される通路を有する基部を含む、改良されたインプラント可能なポート。
(68)前記通路が、3mm2〜20mm2の範囲の面積を有する入口開口部を有する、項目68に記載の改良されたインプラント可能なポート。
(69)前記バルブが、前記基部内に往復運動可能に装着されるアセンブリと、該アセンブリを該基部の前記通路に向かって付勢するばねと、を含み、前記ボールが、該アセンブリの上に配置され、該ボールが前記アクセス管の挿入に応答して下方向に動くとき、該ボールが、半径方向に外側に移動して、該通路の拡張領域に入る、項目67に記載のインプラント可能なポート。
(70)(a)基部と、アクセス管を受けるための通路と、アクセス管の導入に応答して開閉する内部バルブとを含むインプラント可能なポートと、
(b)アクセス管と、を含み、
該通路は円筒形であり、該アクセス管をよりも硬い、該アクセス管を受ける表面を有する、システム。
(71)前記アクセス管が、尖った先端を有する針である、項目70に記載のシステム。
(72)前記円筒形の通路がテーパ状にされ、針が、該テーパ状の通路を分割するように選択される均一の断面積を有する、項目70に記載のシステム。
【0010】
発明の要旨
本発明により、改良型アクセスポート、具体的には、特に血液透析、血液ろ過、ヘモダイアフィルトレーション(hemodiafiltration)、またはアフェレーシス等の体外血液治療を受ける患者のために、血液または他の流体の多量回収および/または戻りのために使用され得る血管アクセスポートが提供される。血管アクセスポートにより、そこを通る血液または他の流体の流れの高容積の率が可能となる(単一の針または他のアクセス装置を用いて、典型的には250ml/分を越える率、通常は300ml/分を越える率、好適には少なくとも400ml/分の率、そしてしばしば500ml/分以上の率が可能となる)。このような高流量率は、体外血液処置を行うために必要とされる時間を減少させるのにかなり有利である(特に、血液ろ過等の、大きな総容積の処置された血液を必要とする、高流量率でなければ時間のかかる処置に関する)。アクセスポートは、血管アクセスを確立するために特に有用であるが、ポートは、腹腔等の他の身体の管腔および腔にアクセスするためにも有用である。
【0011】
高容量に加えて、本発明のアクセスポートは、多数の他の有利な特徴を持つ。具体的には、アクセスポートは、大径の瘻管針を含む標準型の鋭いアクセス針を、ポートまたは針のどちらも実質的に破損することなく受取るように適応する。ポートの設計はまた、以下により詳細に説明されるように、針またはアクセス装置が挿入され、ポートから除去される際に、針またはアクセス装置の単純な「ロッキング」および「ロック解除」を提供する。アクセスポートの上記および他の設計の局面が、以下の詳細な説明に関連してより完全に説明される。
【0012】
本発明の方法の第1の局面によれば、血管への経皮的アクセスが、インプラントされたアクセスポートと血管との間に導管を維持することによって提供される。体外処置回路に接続されていない場合には、アクセスポートは、典型的には、少なくとも部分的に弾性材料(シリコーンゴム等)から形成される導管を外的にクランプすることによって血管から分離される。アクセス管のアクセスポート内への経皮的挿入により、流体がそこを通って流れることを可能とするために、導管の外的クランプが緩められる。アクセスポートを分離するための外的クランプの使用は、流れ管腔内でバルブシートを規定するために内部のバルブ構造が必要とされないので、特に有利である。
【0013】
典型的には、導管の近位端は、アクセスポート内に配置され、導管の遠位端は、アクセスポートの外部に配置され、通常、血管または他の身体管腔に取付けられる、あるいは、インプラントされたカテーテルまたは他の導管に接続され、次に、インプラントされたカテーテルまたは他の導管が血管に取付けられる。導管は、通常、単一の連続した管を含むが、代わりに、例えばハウジング上のポートで共に結合される異なる組成または構造特性を持つ多数の別個の軸方向部分を含み得る。例えば、導管の長さの一部は、硬質プラスチックまたは金属等の比較的剛性の材料から成り得るが、外的クランプに供される部分だけは、クランプによってシールされ得る可撓性材料から成る必要がある。さらに、導管は、1つを越える身体管腔部位への接続のために分岐され得る。代替の実施形態では、導管は、アクセスポート内に完全に配置され、次に血管に接続され得る別個のカテーテルに取付けるために、接続がアクセスポート上に設けられる。
【0014】
一旦インプラントされ、血管に接続されると、アクセスポートが、血管(典型的には動脈)から血流を受取る、または他の流体の流れ(例えば、腹膜透析の透析液)を提供するために用いられ得る。そのような場合には通常、第2のアクセスポートが、患者へ血液を戻すための静脈への接続のために設けられる。上記の体外処置様式の何れも、動脈アクセスポートと静脈アクセスポートとの間の血流と共に用いられ得る。さらに別の代替では、本発明のアクセスポートが、患者への注入流体、薬物、および他の物質のために別々に使用され得る。
【0015】
本発明の方法の第2の局面では、導管が、インプラントされたアクセスポートと患者の血管との間に維持される。アクセス管がポートまたは導管内のバルブ構造を開くリンク機構に嵌合するように、アクセス管が経皮的にアクセスポートに挿入される。バルブ構造は、アクセス管が挿入されたアクセスポートの部分から離れて配置され、導管自体または別個のピンチ管またはポート内のアセンブリに存在し得る。リンク機構は、機械的または水圧式であり得、通常、リンク機構がアクセス管により係合されていない場合に導管の可撓性(折りたたみ可能な)部分を収縮させるバネ式クランプに機械的に接続されている。あるいは、水圧式リンク機構が、管に対する閉鎖力が水圧式に緩められる、またはバルブがアクセス管の挿入によって開かれる場所に設けられ得る。
【0016】
本発明の方法の第3の局面においては、患者の血管への経皮的アクセスが、インプラントされたアクセスポートと血管との間に導管を維持することによって提供される。アクセス管は、アクセスポート内の管のシート(tube seat)内へ経皮的に挿入され、それによって、内部で概ね液密のシールが確立される。挿入されると、アクセス管は、リンク機構を作動させ、それによって、流れが導管を通ることを可能とするためにバルブ構造が開かれる。バルブ構造は、通常、ポートの内部にあるが、時には、ポート自体の外側に位置し得る。好適には、管のシートは、管がボアに挿入される際に外側のアクセス管と摩擦的に係合するアクセスポート内のテーパー状ボアを含む。より好適には、管のシート内へのアクセス管の挿入により、導管を開くリンク機構を作動させるために、アクセスポートの基部に対して管のシートが押し下げられる。リンク機構は、上記のようなクランプバルブを含む様々な形態をとり得る。リンク機構は、アクセス管が、そこを通る流れの通路を整合させ、それによってポート内で流路を開かせるようにバルブコンポーネントを前進させるスライドバルブアセンブリの形態でもよい。
【0017】
管のシートは、アクセス管が基部から除去されるまで、押し下げられた状態にロックされたままである。管のシートを硬質材料(好適には、使用されるべき針または他のアクセス装置より硬質な材料)から形成する(あるいは、管のシートを硬質材料で裏打ちする)ことによって、バルブに対する損傷の可能性が大幅に低減され得る。さらに、テーパー状管のシートの設計は、針がポートに挿入された際に針を破損する傾向を持たない。従って、本発明のポートは、従来技術の多くのポートとは異なり、瘻管針等の自己貫入の鋭い針を用いた使用に特に適している。
【0018】
本発明の方法の第4の局面においては、患者の血管への経皮的アクセスが、インプラントされたアクセスポートと血管との間に導管を維持することによって提供される。アクセス管は、概ね垂直の向きで、すなわち、そこを通してアクセス管が導入される患者の皮膚表面に対して法線すなわち垂直の方向で、アクセスポート内に経皮的に挿入される。アクセスポート内の通路は、75°〜105°の角度でエルボを介して導管に接続される。アクセス管を垂直に導入する能力により、アクセス管とポート内の通路との整合が大幅に単純化される。
【0019】
本発明による装置は、針、剛性カテーテル、カニューレ、または血流または他の流体を受取るまたは戻すための他の従来の装置等のアクセス管を受取るための通路を備えた基部を持つインプラント可能ポートを備える。ある実施形態では、可撓性導管が、基部内に配置され、それによって、通路を介して挿入されたアクセス管と共に流体の流れを確立する。アクセス管が通路中に存在する場合に、典型的には導管上から外部クランプを緩めることによって可撓性導管を開くリンク機構が、さらに設けられる。リンク機構はさらに、アクセス管が通路にない場合に可撓性導管を閉じる。別の実施形態では、リンク機構は、バルブアセンブリの一部であるか、あるいは、バルブアセンブリに接続されている。例えば、バルブアセンブリは、スライドバルブでもよく、リンク機構は、バルブ内部にスライドを備える。全ての場合に、リンク機構は、アクセス管の挿入によって作動され、導管、バルブ、またはアクセス管から離れた位置にある流路の他の部分を開く。
【0020】
インプラント可能ポートの導管は、通常、基部内に配置される近位端と、基部の外に配置される遠位端とを持つ。基部の外に配置される場合には、遠位端は、典型的には、例えば、端側吻合によって血管に接続され得るカフ、または血管の管腔内にインプラントされ得るT型カテーテルを備えることによって、血管への直接的接続に適応する。あるいは、導管は、血管に接続され得る別個のインプラント可能カテーテルの一端に除去可能に接続されるように適応したコネクタにおいて終端し得る。さらなる代替として、可撓性導管が、基部の内部に配置された近位端と、基部の外部表面上に配置されるルアーまたは他の従来のコネクタ上で終端する遠位端とを有し得る。このような場合には、アクセスポートは、基部の表面上のコネクタを介して別個のインプラント可能カテーテルに接続され得る。
【0021】
本発明の装置の好適な局面においては、基部中の通路が、管がボアに挿入される際に、針または他のアクセス管に対して外的にシールするテーパー状ボアを備える。ある実施形態では、可撓性導管が、テーパー状ボアの端に接続され、典型的には、ほぼ直角(すなわち、75°と105°との間)で湾曲され、それによって、基部の外部に導管が向けられる。別の実施形態では、テーパー状ボアが、スライドバルブのスライドに形成される。
【0022】
本発明の装置の第2の局面では、インプラント可能ポートが、概ね上記のような、通路および可撓性導管を備えた基部を含む。クランプが、可撓性導管上で外的に配置され、クランプは、導管上で閉じられるが、アクセス管が基部内の通路に挿入されると、流体の流れが導管を通ることを可能とするために開く。逆に、クランプは、アクセス管が通路から除去される際に、導管上で閉じる。好適には、そのようなインプラント可能ポートはさらに、通路内へのアクセス管の侵入に反応し、そのような通路に反応してクランプを開くアクチュエータを含むリンク機構アセンブリ備える。同様に、アクチュエータは、基部中の通路からのアクセス管の除去に反応し、そのような除去に反応してクランプを閉じる。
【0023】
本発明の装置のさらなる局面では、インプラント可能ポートが、概ね上記のような基部および導管を備える。基部内の通路は、概ね垂直なアクセスに沿って、すなわち、そこを通ってアクセス管が導入されるべき患者の皮膚部分に対して法線に配向され、導管は、概ね水平のアクセスに沿って配置される。
【0024】
本発明の装置のより具体的な局面では、インプラント可能ポートが、アクセス管を受取るための第1の通路を備えた基部と、基部の第2の通路を介して配置される可撓性導管とを備える。アクチュエータアセンブリは、基部内に往復可能に取付けられ、アクセス管を受取るための第1の通路と整合されたボアを含む。導管の近位端は、アクチュエータアセンブリのボアに機械的に接続され、可撓性導管が閉じられ、第1の通路内へのアクセス管の挿入によって開かれる基部中の第1の位置へと、バネによってアクチュエータアセンブリが付勢される。好適には、アクチュエータアセンブリが下部リップを備え、基部の第2の通路が上部リップを備え、アクセス管がアクチュエータの管受取りボアの中に挿入される際に、可撓性バネが、導管内の管腔を閉じるために2つのリップを一緒に閉じるように、上部リップおよび下部リップが、可撓性導管の両側で相対する。
【0025】
本発明のまたさらに具体的な局面においては、インプラント可能ポートが、アクセス管を受取るための通路を持つ基部を備える。バルブアセンブリが、基部中に配置され、基部中の通路と整合され、アクセス管を受取るボアを含む。1対のボール(典型的には、小さなボール軸受に類似した相対するステンレス鋼のボール)が、基部の通路と、バルブのボアとの間に配置される。ボールは、アクセス装置が通路およびポートを介して挿入される際に、アクセス装置に対して閉鎖または係合するようにバネ付勢されている。具体的には、ボールは、摩擦係合によってアクセス管を適所にロックし、それによって、特定の除去手順を行うことなく、アクセス管を偶発的に除去することが非常に困難である。驚くべきことに、アクセス管が、ロッキングボールによって適所にしっかりと保持され、インプラントされたポートからアクセス管を直接引っ張る非常に強い力にさえ耐えるにもかかわらず、アクセス管は、優しく引っ張りながら、アクセス管を単にねじる、またはその長手方向軸の回りで回転させることによって簡単に除去され得る。従って、アクセス管が、偶発的除去の可能性が最小限に抑えられるように適所にしっかりとロックされていながら、なお、アクセス管は、アクセス管またはポートに損傷を与えることなく、または患者に多大な不快感を与えることなく、単純なねじりおよび引っ張りの手順によって簡単に除去され得る。
【0026】
本発明のさらに別の局面では、インプラント可能ポートには、基部と、針または他のアクセス管を受取るための基部中の通路と、通路内へのアクセス管の挿入に反応して開閉する内部バルブとが含まれる。インプラント可能ポートは、通路がポートの上面の中央の位置に配置される対称構成を持つ。好適には、通路は、3mm2〜20mm2(より好適には、5mm2〜15mm2)の範囲の面積を持つ入口開口部を持つ。このようなポート構成により、ポート内への針または他のアクセス管の経皮的導入が容易になる。使用者は、ポート基部の周囲を手で(通常片手を用いて)探し出せる。次に他方の手を用いて、使用者は、概ね垂直の向きで、入口開口部が位置するポートの中央に直接アクセス管を挿入し得る。従って、ポートへのアクセスが、非対称のポート構成、特に、患者の皮膚に対して非垂直の向きで針を入れる必要があるポートを用いた場合と比較してずっと単純である。
【0027】
本発明による改良された身体管腔アクセスシステムは、インプラント可能ポートおよびアクセス管を備える。アクセス管を受取るための通路を持つポート(ここでは、通路は、ポートより硬質の材料から成る)を設けることにより、ポートの通路に対する摩耗が大幅に低減され、その結果、ポートの耐用寿命が増す。これは、ポートが鋭い先端部を持つ針を用いて直接アクセスされる場合に特に重要である。好適な実施形態では、通路は、概ね円柱状で、その内部の針または他のアクセス管の外部に対してシールするテーパー状部分を持つ。
【0028】
本発明はまたさらに、ポートを皮下にインプラントすることと、導管を皮下にインプラントすることとを含む、身体管腔にアクセスするための方法を提供する。ポートは、少なくとも2mmの外径を持つアクセス管を受取るように適応したインレットを持つ。導管が、ポートのアウトレットに取付けられ、少なくとも2.5mmの管腔直径を持つ。通常、この方法は、少なくとも2mmの外径を持つアクセス管を備えたインプラントされたポートにアクセスすることをさらに含む。このような方法により、身体管腔とアクセス管のアウトレット端部との間に、少なくとも200mmHgの差圧が存在する場合に、少なくとも250ml/分の流量が確立されることが可能となる。通常、上に記載したような、より高い流量も達成され得る。本方法は、他の身体管腔(例えば、腹膜または腹膜透析)にアクセスするためにも有用であるが、好適には、身体管腔は血管であり、流体は血液である。
【0029】
さらに別の局面では、本発明は、少なくとも2mmの外径を持つアクセス管を受取るように適応したインレット通路と、アウトレット通路とを備えた基部を含むインプラント可能ポートを提供する。バルブが、インレット通路とアウトレット通路との間の基部中に配置され、バルブは、インレット通路内へのアクセス管の挿入に反応して開くように適応される。少なくとも2.5mmの管腔直径を持つインプラント可能導管を、基部のアウトレット通路に取付けるための手段(例えば、基部または基部から延長し、その遠位端にコネクタを有する導管上のコネクタ)が設けられる。インプラント可能ポートは、いま説明したばかりの方法において特に有用である。本システムは、少なくとも2.5mmの管腔直径を持つインプラント可能導管をさらに備え得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
具体的な実施形態の説明
本発明は、患者の身体管腔への経皮的アクセスを容易にするための方法および装置を提供する。身体管腔の例には、血管および腹膜腔等が含まれる。本方法は、動脈血管および静脈血管の両方を含む血管にアクセスするために特に有用である。残りの説明は、特に血管に向けられるが、本発明は、選択的な経皮的アクセスが所望され得る全ての身体管腔および腔に適用されることが理解される。例えば、ポートは、腹膜透析手順において透析物の導入および除去に使用され得る。本発明によるアクセスポートは皮下にインプラントされ、それによって、その内部の通路が、患者の皮膚表面下の短い距離(典型的には皮膚表面の3mm〜20mm以内)に位置する。アクセス管が、次に、アクセスポートを介した血管または他の身体管腔との連絡を提供するために、アクセスポートの通路内に経皮的に挿入され得る。このようなアクセスは、様々な目的(通常、血液の回収、回収された血液の体外的処置、および/または処置済みの血液を患者に戻すことに関与する)のために提供され得る。このような体外的な血液の処置は、最も頻繁には血液透析のためであるが、血液ろ過、血液ダイアフィルトレーション、およびアフェレーシス等のためでもあり得る。体外処置に加えて、本発明のアクセスポートは、様々な目的のために患者の血液循環に薬物、流体、および他の材料を直接灌流させるために使用され得る。
【0031】
本発明は、アクセスポートのインプラントと、標的血管または他の身体管腔への導管(少なくとも、導管の一部は可撓性である)を介したポートの接続とに依存する。「可撓性」とは、導管が、弾性で、折りたたみ可能であり、それによって、アクセスポートが使用されていない場合に血流が導管を通ることを防止するために、導管が外的にクランプされ得る、またはそうでなければ変形され得ることを意味する。導管を閉じるために外的クランプを用いることは、血流および/または導管内への針または他のアクセス管の挿入を妨害し得る内部構造が導管内に設けられる必要がないので、特に有利である。
【0032】
アクセス管は、通常、患者の皮膚を通ってインプラントされたポート内へと直接貫通(経皮的導入)され得る針である。従って、針は、通常、皮膚を通って針が自己導入されることが可能となるように、鋭い先端部を持つ。もちろん、尖っていない遠位端を持つアクセス管は、別の刃、探り針、または針等を用いてまず皮膚に穴をあけ、次に、その結果生じた切開または穴にアクセス管を導入することによって使用され得る。アクセス管はまた、後に回収され、管をポート中の適所に残す内部探り針を用いて導入され得る。本発明のポートは、いろいろな異なるアクセス管を許容するが、標準皮下注射針、標準瘻管針、および例えば16ゲージ、14ゲージまたはそれ以上の大型瘻管針等を用いて使用され得ることが意義深い。中隔を用いる従来技術のポート設計は、中隔への多大な損傷を避けるために、比較的小さなノンコアリングヒューバー針の使用、または管/探り針の組み合わせの使用を必要とする。上記のEnsmingerの多くの設計のように、管が通過しなければならないスリットバルブを用いるポートにも同様のことが当てはまる。全ての場合に、針または他のアクセス管は、剛性であり、以下により詳細に説明されるように、導管のクランプを緩めるためのリンク機構を作動させるために十分な柱強度を持つ。
【0033】
本発明のポートは概して、不適切な大きさの針またはその他のアクセス管の使用により損傷を受けないため、本発明のポートはまた有利である。ほとんどの従来技術のポートは、誤った種類またはサイズの針の使用により損傷を受け得るが、本発明のポートは、より大きい針(アクセス開口部を嵌合するだけで、ポート内を通らない)またはより小さい針(アクセス開口部には入るが、損傷を与えずに基部の内部を通る)により損傷を受けない。特に、針またはその他のアクセス管を受けるアクセスポート内の通路は概して、より小さい針により嵌合される表面を与える少なくとも1つのベンド、通常は90°のエルボーを有する。針よりも硬い材料、例えばステンレス鋼、で通路を形成または裏打ちすることにより、ポートは、小さい針の不適切な挿入によるいかなる損傷からも保護される。
【0034】
基部12と可撓性のある導管14とを含む例示的なアクセスポート10が、図1、図2、図2A、図3、および図3Aに示される。図1に示されるように、可撓性のある導管14は、基部12から延び、血管への直接吻合(縫合)に適した遠位端16で終わる。適切な導管構造は、米国特許第5,562,617号に示されており、本明細書において、上記特許の開示全体を参考として援用する。例示的な導管構造は、シリコーンゴムからなり得る。以下、異なる遠位端を有する導管構造が、図4〜図8を参照して説明される。
【0035】
アクセスポート10の基部12は、上側シェル18、ベースプレート20、内部シリンダ22、および、アクチュエータブロック24内に配置される垂直方向に往復運動するプランジャ23を含み、プランジャのアセンブリおよびアクチュエータブロックはともに、シリンダ22内に配置される。図2および図2Aに示されるように、ばね26は、プランジャ23およびアクチュエータブロック24を基部20に関して上方向に付勢する。プランジャ23およびアクチュエータブロック24が上方向の位置にあるとき、導管14は、シリンダ22の壁の部分である上側リップ28と、アクチュエータブロック24の部分である下側リップ30との間に、閉じられた状態ではさまれる。導管14の近位端は、アクチュエータブロック24の内部体積内に垂れ下がる(depends)管32の下端に接続される。図3および図3Aに示されるように、垂れ下がる管32は、針Nを受けるための軸方向のボア34を提供する。図3に最良に示されるように、テーパ状領域33は、軸方向のボア34の上端付近に形成され、ボアに導入される針またはその他のアクセス管の外側壁を嵌合し且つ封止するような大きさにされる。
【0036】
針Nは、軸方向のボア34の上端の開口部36を通って導入される。典型的には、開口部36は、針Nがボア34に導入されるときに針Nの整列を容易にするために、わずかな面取り部(円錐形)を有するが、必ずしもそうである必要はない。図2に示されるように、ボール40の対が、管32の上部に配置され、アクチュエータブロック24が高くなった配置のとき、アクチュエータブロック24の上の、シェル18の円形開口部42内に封入される。図3に示されるように、針Nが開口部36を通って導入されると、針Nは、ボール40に遭遇し、ブロックがその下方の構成に達するまで、プランジャ23およびアクチュエータブロック24を下方向に押し下げる。そのとき、ボール40は、半径方向に外側に移動して、開口部42の拡張部44に入る。従って、ボール40は、拡張領域44内で固定され、針Nが適切な場所にある限り、アクチュエータブロック24を、下がった位置に保持する。
【0037】
アクチュエータブロック24が下げられているとき、図3および図3Aに示されるように、対向するリップ28および30は、導管14に対する外的クランプを軽減するために開かれる。従って、針Nがアクセスポート10に挿入されると、以前に可撓性のある導管14を閉じていたクランプ機構が開かれる。針Nが取り出されると、ばね26が、アクチュエータブロック24を上方向に付勢し、アクセスポートは、図2および図2Aに示される配置に戻る。
【0038】
好ましくは、アクセスポートのインプラントを容易にするために、アクセスポート10の基部付近に、シリコーンオーバーモールディング(overmolding)50が設けられる。ベースプレート20から半径方向に外側に延びるフランジ52は、組織に縫合するための孔(示されていない)を含む。シリコーンオーバーモールディング50を含むことにより、孔内への組織成長が防がれる。好ましくは、上側シェル18の内面と管32の上部との間に、シリコーンシール54が設けられる。シリコーンシール54は、周囲の組織からの血液もしくはその他の流体、および/または、針Nからアクセスポート10の内部に漏れ得る血液もしくはその他の流体の侵入を防ぐ。
【0039】
本発明のアクセスポート10の好適な局面では、軸方向のボア34は、下方向にテーパ状にされる。ボアのサイズおよびテーパの程度は、アクセス管が軸方向のボア34に挿入されたときに密閉シールが形成されるように、従来の針またはその他のアクセス管を摩擦的に嵌合するように選択される。テーパはまた、針Nが導管14により規定される水平方向の管腔に侵入しないように、ストップを提供する。
【0040】
従って、針、アクセスポート10、および可撓性のある導管14の組み合わせが、患者の脈管系からおよび/または脈管系への流体のための、実質的に連続した円滑な流路を提供することが分かる。特に、導管14を通る流れを閉鎖するために外的クランプを使用することにより、バルブシートを規定するための、導管内の内部バルブ構造、または、アクセスポート内のその他の場所の内部バルブ構造の必要性がなくなる。即ち、導管を通る流れを妨げるように閉じる、バルブの部分の必要性がなくなる。可撓性のある導管からクランプを軽減するための示された特定のリンク機構は、単純で、信頼性が高く、そして、比較的安価に製造される。必要とされる移動部品は非常に少ないが、針Nがアクセスポート10から引き出されるたびに、明確な(positive)シールが確実に達成される。さらに、一旦針Nがアクセスポート10に導入されると、クランプ機構は、その開いた配置で固定され、可撓性のある管の管腔およびアクセスポートのその他の部分を通る完全な流れが維持されることを確実にする。
【0041】
ここで図4を参照して、アクセスポート10は、別個のインプラント可能なカテーテルCへの相互接続のための遠位取り付け具116を有する可撓性のある導管114を含むように改変され得る。取り付け具116は、典型的には、カテーテルCの近位端の雄取り付け具118とかみ合うように適合される雌取り付け具である。カテーテルCは、血管への取り付けのために意図されたいかなる公知のカテーテルCであってもよい。例えば、カテーテルCは、静脈への取り付けのための留置カテーテルであってもよく、または、カテーテルCは、任意の公知の態様での動脈への直接的な取り付けのために適合され得る。ポートと脈管構造または身体管腔との中間にコネクタを設けることには、多数の利益がある。ポートをカテーテルとは別個にインプラントする能力は、インプラントを簡略化する。例えば、ポートをインプラントするためおよびカテーテルを取り付けるためのそれぞれ2つの比較的小さい別個の切り口を作り、次いで、皮下に通して相互接続を可能にすることが可能である。そのようなアプローチは、患者の外傷を低減する。ポートおよび/またはカテーテルの取り付けの取り替えは、簡略化される。なぜなら、これら2つは切り離され得、一方が妨害されないままで、他方が取り替えられるからである。そのような中間の接続部は、好ましくは、ポートまたは管腔の接続部のいずれかに比較的近い位置に間隔をあけて配置され、典型的には、10cm以内の間隔で配置され、5cm以内の間隔で配置されることが多い。
【0042】
アクセスシステム10のさらに他の構造が、図5に示される。ここでは、可撓性のあるカテーテル214は、Tコネクタ216で終わる。同時係属中の米国出願番号第08/724,948号に示されるように、Tコネクタは、動脈血管へのインプラントに特に適している。本明細書において、上記出願の開示全体を参考として援用する。
【0043】
ここで図6および図7を参照して、アクセスポート10の基部12に取り付けられ得る、さらに他の可撓性のある導管314が示される。可撓性のある導管314は、シリコーンオーバーモールディング350と一体に形成され、これにより、導管を基部12にしっかりと係留する。導管314の内部は、導管14の内部および以前の実施態様と同じであるが、導管の外部は、導管のフープ強度を高めるために、リブ構造318を含む。さらに、カテーテルC’の近位端の雄コネクタ320への接続のために、遠位コネクタ316が設けられる。コネクタ320は、シリコーン導管314の管腔内に受け入れられる金属取り付け具を含む。この金属は、通常チタンである。ポート312およびカテーテルC’がともにインプラントされ且つ接続された後にコネクタ316および320の上で固定するために、クリップ330が設けられる。図6に示されるカテーテル接続機構が特に有利である。なぜなら、カテーテルC’は、アクセスポートの基部12のインプラントを妨げる必要なく、可撓性のある導管314から切り離され得るからである。
【0044】
ここで図8を参照して、ベースユニット412は、可撓性のある導管416が上側シェル418を通る開口部で終わることを除いて、以前に説明されたベースユニット12と実質的に同様である。ベースユニット12へのカテーテルの外部接続を可能にするために、金属取り付け具420が設けられる。取り付け具420は、可撓性のある導管416の管腔と整列される管腔422を規定する。
【0045】
内部ピンチ管がポートハウジングのチタンニップルに適合する現在好ましい導管接続が、図8に示される。導管は、チタンニップルの外部に取り付けられ、以前に説明された構成のうちのいずれかの構成において、(ハウジングから離れた)遠隔端で終わり得る。
【0046】
ここで図9Aおよび図9Bを参照して、本発明の原理に従って構成されるアクセスポート500のさらなる実施態様は、ボディ512を含み、ボディ512は、ボディ512から横方向に外側に延びるニップル514を有する。ニップル514は、可撓性のある導管(図示せず)への接続に適している。ボディ512は、上側シェル518、ベースプレート520、内部シリンダ522、垂直方向に往復運動するプランジャ23、およびアクチュエータブロック524を含む。プランジャ23/アクチュエータブロック524の、垂直方向に高くされた位置が図9Aに示され、垂直方向に押し下げられたまたは低くされた構成が図9Bに示される。
【0047】
導管は基部512内には延びていないため、図9Aおよび図9Bのポートの実施態様500は、別個のピンチ管525を使用し、ピンチ管は、シリンダ522の部分である上側リップ528と、往復運動するアクチュエータブロック524の部分である下側リップ530との間に、閉じられた状態ではさまれる。アクチュエータブロック524が下げられると、図9Bに示されるように、ピンチ管525の外的クランプは、軽減される。
【0048】
図9Bに示されるように、アクチュエータブロック524は、ピン527を覆って装着されるばね526により上方向に付勢され、プランジャ523は、針Nを受けるための軸方向のボア534を含む。針Nは、開口部536を通過して、プランジャ523内の通路534に入る。図9Bに示されるように、針が通路534に入ると、針は、対向するボール540を通過し、これらのボール540はまず、プランジャ523およびアクチュエータブロック524の降下を引き起こし、次いで、通路545の拡張部544に捕らえられる。
【0049】
通路534へのおよび対向するボール540を介しての針Nの侵入は、単に針を垂直方向に下方に挿入することにより行われ得るが、一旦針が完全に下げられ、そして、通路534のテーパ状の壁により嵌合されると(図9Bに示されるように)、針は、ボール540により適切な場所に「固定」される。驚くことに、針をボール540から引き出すことは非常に困難であることが分かっており、これにより、患者を、針の不慮の損失から守る。同様に驚くことに、単に針Nをその軸を中心にねじることにより、針が、大きな支障を伴わずにポートから引っ張られることが可能になることが分かっている。従って、対向するボール540と、ボールを捕らえるための拡張領域544との組み合わせは、バルブを開いた状態に固定するだけではなく、針を取り出すことが望まれるまで針を適切な場所に固定する。
【0050】
ここで図10Aおよび図10Bを参照して、本発明のインプラント可能なポートにおいて使用される別のバルブ構造が示される。以前に説明されたようにピンチバルブを使用する代わりに、ポートがスライドバルブ600を使用し得るか、または、往復運動するブロック602が基部囲い604(一部分しか示されていない)内に形成される。往復運動するブロック602は、ポートを通る通路の入口部606を規定する。ポートには、通路の出口部608もまた設けられる。最初に、針が存在していないとき、ばね610は、往復運動するブロック602を上方向に付勢し、通路の側部612が、出口部608と整列しなくなる。これにより、スライドバルブ構造600が閉じられる。図10Bに示されるように、バルブ構造600に針Nまたはその他のアクセス管を導入することにより、往復運動するブロック602は下げられ、通路の側分岐部612は、出口部608と整列される。これにより、バルブが開く。以前の実施態様に関して一般に説明されたように、バルブは、拡大された窪み622に受け入れられる対向する一対のボール620により開位置に保持され得る。
【0051】
以上、本発明を、明瞭な理解の目的のために、例示および実施例により幾らか詳細に説明してきたが、添付の請求の範囲の範囲内で、特定の変更および改変が実施され得ることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の原理に従って構築された、そこから延長する可撓性導管を持つアクセスポートの斜視図である。
【図2】図2は、閉じられた内部クランプ構造と共に示される、図1のアクセスポートの側断面図である。図2Aは、図2の線2A−2Aに沿って切り取られた部分断面図である。
【図3】図3は、アクセス針の挿入に反応して開かれた内部クランプ構造と共に示されるような、図1のアクセスポートの側断面図である。図3Aは、図3の線3A−3Aに沿って切り取られた部分断面図である。
【図4】図4は、可撓性導管が別のカテーテルへの接続に適応する、本発明の原理に従って構築されたアクセスポートを示す。
【図5】図5は、可撓性導管の遠位端が、血管の管腔への直接的挿入に適応した、本発明の原理に従って構築されたアクセスポートを示す。
【図6】図6は、インプラント可能カテーテルの近位端に接続するための遠位コネクタを持つ具体的な可撓性導管の部分断面図である。
【図7】図7は、図6の線7−7に沿って切り取られた端面図である。
【図8】図8は、可撓性導管がポート内で内部的に終端し、別のインプラント可能カテーテルへの接続のために外的コネクタが設けられること以外は、図1〜図3のものに類似したインプラント可能アクセスポートを示す。
【図9A】図9Aおよび図9Bは、代替のピンチ管接続設計を示す。
【図9B】図9Aおよび図9Bは、代替のピンチ管接続設計を示す。
【図10】図10Aおよび図10Bは、本発明のインプラント可能ポートのスライドバルブの実施形態を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書等に記載されるような、バルブポートおよび血管アクセス方法。
【請求項1】
本願明細書等に記載されるような、バルブポートおよび血管アクセス方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公開番号】特開2008−100084(P2008−100084A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291366(P2007−291366)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【分割の表示】特願平10−534589の分割
【原出願日】平成10年1月20日(1998.1.20)
【出願人】(500024252)プロヴィフロ (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【分割の表示】特願平10−534589の分割
【原出願日】平成10年1月20日(1998.1.20)
【出願人】(500024252)プロヴィフロ (3)
【Fターム(参考)】
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