説明

バンパ取付構造

【課題】 車両後突時にリアバンパからバックドアへ衝撃力が伝達されるのを回避して、バックドアの変形を防ぐことのできるバンパ取付構造を提供する。
【解決手段】 車体の後部に開閉自在に装着されたバックドア2の下端部にリアバンパ15を取り付けたバンパ取付構造であって、リアバンパ15を複数箇所に設けられた衝撃吸収部材18を介してバックドア12に取り付ける一方、リアバンパ15の両端部を車幅方向に延長して延長部13cを形成し、バックドア12の閉状態時に延長部13cを車体側11aに固定する固定機構を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバンパ取付構造に係り、特にリアバンパの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バンタイプの車両は、図7に示すように、車両後部にバックドア1を有している。このバックドア1は、車両後部の上端に設けられたヒンジ(図示省略)を介して取り付けられており、バックドア1の下端部1aを前記ヒンジを中心にして車両後方に回動させることにより、車両後部にはドア開口部が形成され、このドア開口部を介して荷物の積み下ろしを行うことができる。
【0003】
近年、このようなバンタイプの車両において、荷物の積み下ろし時の作業性を改善するために荷室の低床化が進められ、車両後部のドア開口部が低い位置に配置されるようになり、これに伴って、バックドア1も下方に延出した形状に形成されている。
【0004】
一方、バンパの車体への上下方向取付け位置は、他車との関係から、通常、地上から一定の高さに規制されており、上記のようにバックドア1が下方に延出した形状に形成された場合、バックドア1の下端部1aがリアバンパの位置まで達してしまうことになる。
【0005】
そこで、図7のようにリアバンパを上側リアバンパ2と下側リアバンパ3の上下二つのリアバンパに分割し、かつ上側リアバンパ2をバックドア1の下端部1aに取り付ける一方、下側リアバンパ3をドア開口部下方の車体側にそれぞれ取り付けたバンパ取付構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上記バンパ取付構造では、上側リアバンパ2の両端部は車幅方向に延長されて延長部2aが形成され、バックドア1の閉状態時には、延長部2aはサイドバンパ4の横方で車体側に固定されるようになっている。
【特許文献1】特開昭62−137249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術では、リアバンパのバックドアへの取付構造が不明であり、仮にバンパステー等によってリアバンパがバックドアに強固に取り付けられていると、車両が低速で後突しただけでも、そのときの衝撃力がバンパステーを介して上側リアバンパからバックドアに伝達され、バックドアが大きく変形してしまう恐れがある。
【0008】
なお、上記衝撃力がバックドアへ伝達されるのを回避する目的で、バンパステー等に脆弱部を設けることも考えられるが、このような構造にすると、人がリアバンパに手を掛けてバックドアの開閉操作を行ったときに、バンパステーに永久変形が生じたりして好ましくない。
【0009】
本発明の課題は、車両後突時にリアバンパからバックドアへ衝撃力が伝達されるのを回避して、バックドアの変形を防ぐことのできるバンパ取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の特徴部分は、リアバンパを衝撃吸収部材を介してバックドアに取り付けるようにした点にある。すなわち、本発明は、車体の後部に開閉自在に装着されたバックドアの下端部にリアバンパを取り付けたバンパ取付構造であって、前記リアバンパを複数箇所に設けられた衝撃吸収部材を介して前記バックドアに取り付ける一方、前記リアバンパの両端部を車幅方向に延長して延長部を形成し、前記バックドアの閉状態時に前記延長部を車体側に固定する固定機構を設けたことを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、リアバンパは複数箇所に設けられた衝撃吸収部材を介してバックドアに取り付けられているので、車両後突時に、その衝撃力は複数箇所の衝撃吸収部材で吸収されてしまい、リアバンパからバックドアへ伝達されるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両後突時に衝撃力は衝撃吸収部材で吸収されるので、衝撃力がリアバンパからバックドアへ伝達されることがない。その結果、バックドアの変形を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明に係るバンパ取付構造を示す分解斜視図である。車両10は後部にドア開口部11が形成され、このドア開口部11にバックドア12が設けられている。バックドア12は、その上部に設けられたヒンジ(図示省略)を介してドア開口部11上方に取り付けられ、矢印Aのように開閉自在となっている。
【0015】
バックドア12の下端部12aには、バンパレインフォース13とバンパフェイシア14からなるリアバンパ15が取り付けられる。実際には、リアバンパ15はバックドア12の下部に設けられたフィニッシャ12bの下方に取り付けられる。
【0016】
バンパレインフォース13は、角型筒状をなし、バックドア12の下端部12aの形状に倣って形成された直線部13aおよび直線部13a両側の折り曲げ部13bを有している。折り曲げ部13bは直線部13a対して若干車両前方側に折り曲げられている。なお、直線部13aでは、その縦断面形状は「日」の字型に形成されている(図3参照)。
【0017】
バンパレインフォース13の左右両端つまり折り曲げ部13bの先端は、バックドア12の下端部12aよりも車幅方向に延長され、この延長された部分に延長部13cが形成されている。
【0018】
バンパフェイシア14はバンパレインフォース13の形状に合わせて形成されており、バンパレインフォース13の外面側にバンパレインフォース14を覆うように取り付けられる。
【0019】
バックドア12は、図2および図3に示すように、バックドアインナパネル16およびバックドアアウタパネル17を有し、これらバックドアインナパネル16とバックドアアウタパネル17は周辺端部が互いに接合されている。
【0020】
バンパレインフォース13は、衝撃吸収部材18を介してバックドア12に取り付けられている。衝撃吸収部材18は、バックドアインナパネル16とバックドアアウタパネル17に取り付けられた筒状体19と、リアバンパ15のバンパレインフォース13に取り付けられ、かつ筒状体19に挿入されて筒状体19の軸方向に移動自在な可動体20とを備えている。また、筒状体19と可動体20との間にはゴム21が設けられている。
【0021】
筒状体19と可動体20の斜視図を図4に示す。図4のように、筒状体19は縦断面が長円形状をなした筒状の部材で、その両端にはフランジ19a,19bがそれぞれ設けられている。そして、フランジ19aがバックドアインナパネル16に、フランジ19bがバックドアアウタパネル17にそれぞれ固定される(図2および図3参照)。
【0022】
可動体20は、その外壁面が筒状体19の内壁面に合わせて、上下に半円筒面20a,20bが形成され、また中間部に上下の各半円筒面20a,20bに繋がった平面20cが形成されている。可動体20は、図2および図3に示すように、有底筒型形状をなしており、その底部20dの2箇所がボルト22によってバンパレインフォース13に固定されている。
【0023】
また、可動体20の内部には、弾性体としてコイルスプリング23が設けられ、このコイルスプリング23の一端は可動体20の底部20dに、他端は筒状体19のフランジ19a側端部に嵌合された支持板24にそれぞれ固定されている。なお、このコイルスプリング23は、リアバンパ15をバックドア12に近づける方向に付勢して(引っ張って)いる。
【0024】
可動体20の開口端側には、上方向に突出した凸部20eおよび下方向に突出した凸部20fがそれぞれ設けられ、それら凸部20e,20fは、筒状体19に形成された段部19c,19dにそれぞれ係合可能となっている。
【0025】
ドア開口部11付近の車体側11aには、図1および図2に示すように、ダフテイル25が取り付けられている。ダフテイル25は円形基板の中央に車両後部側に向けて突出した凸部25aが設けられ、この凸部25aの先端面に穴25bが形成されている。
【0026】
一方、バンパレインフォース13の延長部13cには、円筒体26を介してダフテイル27が取り付けられている。ダフテイル27は円形基板の中央に車両後部側に向けて凹んだ凹部27aが設けられ、この凹部27aの底面に穴27bが形成されている。そして穴27bには、ゴム28を介してピン29が固定されている。なお、円筒体26はボルト・ナット30によってバンパレインフォース13に固定されている。ここでは、ダフテイル25,27、円筒体26およびピン29等は固定機構を構成している。
【0027】
また、上述したようにバンパレインフォース13は角型筒状をなしており、可動体20をボルト22で取り付ける場合や、円筒体26をボルト・ナット30で取り付ける場合に便利なように、バンパレインフォース13の車両後方側側面にはボルト22やボルト・ナット30に対応する位置に作業穴31,32がそれぞれ設けられている。
【0028】
なお、図2および図3において、33はバックドア12のバックドアインナパネル16の周囲に取り付けられたウエザストリップである。また、図3において、34はフロアパネルを、35は車体メンバをそれぞれ示している。
【0029】
上記構成において、バックドア12を閉めたとき、バンパレインフォース13の延長部13cに取り付けられたダフテイル27のピン29が、ドア開口部11付近の車体側11aに取り付けられたダフテイル25の穴25bに嵌合することにより、リアバンパ15の両端が位置決めされ固定される。
【0030】
また、バックドア12を開けるときは、ダフテイル27のピン29がダフテイル25の穴25bから外れ、リアバンパ15をバックドア12と共に車両斜め後方に容易に回動させることができる。
【0031】
次に、車両後突時の動作について説明する。
【0032】
車両が後突すると、リアバンパ15に衝撃力が加わり、その衝撃力はダフテイル27およびダフテイル25を介してドア開口部11付近の車体側11aへ伝達され、この車体部分で受け止められる。このとき、リアバンパ15は全体がバックドア12に接近する方向へ変位して、衝撃吸収部材18の可動体20が筒状体19の内部に入り込むため、可動体20内部のコイルスプリング23が圧縮され、バックドア12(バックドアインナパネル16)には支持板24を介してコイルスプリング23のバネ力だけが作用することになる。その結果、バックドア12に衝撃力が直接作用することが回避され、バックドア12の変形を防ぐことができる。
【0033】
本実施例によれば、リアバンパ15が衝撃吸収部材18を介してバックドア12に取り付けられているので、車両後突時に、その衝撃力は衝撃吸収部材18で吸収され、衝撃力がバックドア12へ伝達されるのを防ぐことができる。
【0034】
また、本実施例によれば、通常時、コイルスプリング23がリアバンパ15をバックドア12側に近づける方向に付勢して(引っ張って)いるので、リアバンパ15はバックドア12に押し付けられ、リアバンパ15のガタつきを防止できる。
【0035】
また、本実施例によれば、衝撃吸収部材18の可動体20が筒状体19の軸方向に移動自在であるから、リアバンパ15はバックドア12に対して前後方向にのみ移動自在で、リアバンパ15自身の自重による垂れ下がりや、上下方向のガタつきを防ぐことができる。
【0036】
さらに、可動体20の開口端側には凸部20e,20fが、筒状体19側には段部19c,19dがそれぞれ形成されているので、人がリアバンパ15に手を掛けてバックドア12を開ける際には、凸部20e,20fが段部19c,19dにそれぞれ係合する。その結果、衝撃吸収部材18内部のコイルスプリング23が伸びきってしまうのを回避することができる。
【実施例2】
【0037】
図5および図6は実施例2を示している。本実施例の衝撃吸収部材40は、長サイズ円筒体41、短サイズ円筒体42、およびエネルギー吸収体43を備えている。
【0038】
図5に示すように、長サイズ円筒体41は両端にフランジ41a,41bを有し、フランジ41bには3箇所にボルト挿通穴41cが形成されている。短サイズ円筒体42も両端にフランジ42a,42bを有し、フランジ42aには3箇所にボルト挿通穴42cが形成されている。
【0039】
エネルギー吸収体43はゴムまたは合成樹脂等の弾性を有する材料で形成され、円柱状をなしている。このエネルギー吸収体43には、長サイズ円筒体41のボルト挿通穴41cおよび短サイズ円筒体42のボルト挿通穴42cに合わせて3箇所にボルト挿通穴43aが形成されている。
【0040】
上記各ボルト挿通穴41c,42c,43aに挿通されるボルト44は、一端側に小円板状の頭部44aを有し、他端側にはネジ部44bが設けられている。
【0041】
図6は、本実施例による衝撃吸収部材40をリアバンパ15およびバックドア12に設置した様子を示している。図に示すように、長サイズ円筒体41はバックドアインナパネル16とバックドアアウタパネル17間に設置されて、フランジ41aがバックドアインナパネル16に固定され、フランジ41bはバックドアアウタパネル17に対向配置される。
【0042】
短サイズ円筒体42とエネルギー吸収体43はパンパレインフォース13とバックドアアウタパネル17間に設置され、このうち、短サイズ円筒体42のフランジ42bがパンパレインフォース13に固定され、フランジ42aはエネルギー吸収体43に対向配置される。
【0043】
また、長サイズ円筒体41とエネルギー吸収体43とによって挟まれたバックドアアウタパネル17には、長サイズ円筒体41のフランジ41bのボルト挿通穴41cおよびエネルギー吸収体43のボルト挿通穴43aに合わせてボルト挿通穴(図示省略)が形成されている。
【0044】
短サイズ円筒体42のフランジ42bに形成されたボルト挿通穴42bには、図に示すように、ナット44が予め溶着されている。そしてボルト44が、フランジ41bのボルト挿通穴41c、バックドアアウタパネル17のボルト挿通穴、エネルギー吸収体43のボルト挿通穴43a、およびフランジ42aのボルト挿通穴42cに挿通されて、ボルト44先端のネジ部44b(図5参照)がナット44に螺合している。この場合、ボルト44はナット44に堅く締め付けられてはおらず、フランジ41bとバックドアアウタパネル17間、バックドアアウタパネル17とエネルギー吸収体43間、およびエネルギー吸収体43とフランジ42a間には隙間が形成されている。
【0045】
本実施例のように構成した場合も、車両後突時に、その衝撃力はエネルギー吸収体43で吸収され、衝撃力がバックドア12へ伝達されるのを防ぐことができる。
【0046】
また、本実施例によれば、長サイズ円筒体41のフランジ41b、バックドアアウタパネル17、エネルギー吸収体43、および短サイズ円筒体42のフランジ42aの各部材間に隙間が設けられているので、リアバンパ15はバックドア12に対して車両前後方向にのみ移動可能であり、リアバンパ15自身の自重による垂れ下がりや、上下方向のガタつきを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1によるバンパ取付構造の分解斜視図である。
【図2】実施例1によるバンパ取付構造の要部断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図4】衝撃吸収部材の一部である筒状体と可動体の斜視図である。
【図5】実施例2による衝撃吸収部材の分解斜視図である。
【図6】実施例2によるバンパ取付構造の要部断面図である。
【図7】従来技術によるバンパ取付構造を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
11 ドア開口部
11a ドア開口部付近の車体側
12 バックドア
12a バックドアの下端部
13 バンパレインフォース
13c 延長部
14 バンパフェイシア
15 リアバンパ
16 バックドアインナパネル
17 バックドアアウタパネル
18 衝撃吸収部材
19 筒状体
19c,19d 段部
20 可動体
20e,20f 凸部
23 コイルスプリング
40 衝撃吸収部材
43 エネルギー吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後部に開閉自在に装着されたバックドアの下端部にリアバンパを取り付けたバンパ取付構造であって、
前記リアバンパを複数箇所に設けられた衝撃吸収部材を介して前記バックドアに取り付ける一方、
前記リアバンパの両端部を車幅方向に延長して延長部を形成し、前記バックドアの閉状態時に前記延長部を車体側に固定する固定機構を設けたことを特徴とするバンパ取付構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材は、前記バックドアに取り付けられた筒状体と、前記リアバンパに取り付けられ、かつ前記筒状体に挿入されて該筒状体の軸方向に移動自在な可動体と、一側が前記可動体に、他側が前記バックドアにそれぞれ固定された弾性体とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のバンパ取付構造。
【請求項3】
前記弾性体は、前記バックドアの閉状態時に、前記リアバンパを前記バックドア側に付勢することを特徴とする請求項2に記載のバンパ取付構造。
【請求項4】
前記弾性体は、前記リアバンパを前記バックドア側に引っ張るコイルスプリングであることを特徴とする請求項2又は3に記載のバンパ取付構造。
【請求項5】
前記筒状体の内壁面には段部が、前記可動体の外壁面には凸部がそれぞれ形成され、前記凸部が前記段部に係合することにより、前記可動体の移動範囲が規制されていることを特徴とする請求項2に記載のバンパ取付構造。
【請求項6】
前記衝撃吸収部材は、前記リアバンパと前記バックドアとの間に介在されたゴム又は合成樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のバンパ取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−151249(P2006−151249A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346163(P2004−346163)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】