説明

バンプ付薄膜シートの製造方法

【課題】薄膜フィルムに形成されたバンプや電極部の位置精度を高く保持することが可能なバンプ付薄膜シートの製造方法を提供する。
【解決手段】薄膜フィルム10に対し、先端部がこの薄膜フィルム10の一面から突出すると共に、後端部がこの薄膜フィルム10を貫通して他面側に導出された複数のバンプ38と、このバンプ38の後端部に接続された複数の電極部43を形成する工程と、この薄膜フィルム10を加湿し、膨潤化させる工程と、この薄膜フィルム10を、複数の目印パターン50が表示されたガラス基板46上に載置する工程と、この薄膜フィルム10の任意の箇所の拡大映像を参照し、薄膜フィルム10を必要方向に必要量引き伸ばし、電極部43と目印パターン50との位置合わせを行う工程と、薄膜フィルム10の表面にセラミックリング56を接合する工程と、薄膜フィルム10を乾燥させる工程を備えたバンプ付薄膜シート62の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数のバンプを備えた薄膜フィルムを硬質リングに張り渡したバンプ付薄膜シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、シリコン基板上に形成された集積回路を各段階でチェックし、事前に不良品を排除することが極めて重要となる。
このため、各集積回路が機能していることを単純にチェックするファンクション・テストに始まり、潜在する不良を温度、電圧印加により加速抽出するためのバーンイン・テスト、高速プローブ検査等、レベルの異なる複数の検査(試験)が実施されている。
これらの検査は従来、「G/W(Good chip/Wafer)チェック」等の基礎的な検査を除き、大半はダイシング、マウント、ボンディング、樹脂封入、リード成形等の工程を経てICチップ化された後に実施されていたため、非効率的であった。
【0003】
これに対し最近は、個々の集積回路を切り出す前の段階で、シリコンウェハ上に形成された全集積回路に対し一括あるいは分割して各種検査を実施することが試みられている。
このいわゆるウェハ・レベル・テストを実現するためには、シリコンウェハ上に形成された多数の電極パッドに対してプローブを接触させ、テスタからの電気信号を確実に印加することが求められる。
これを実現するためのプローブ構造として様々なものが提案されているが、その中の有力なものとして図17に示すタイプが存在する。
【0004】
このカード型プローブ80は、セラミックやガラス等の絶縁基板66の表面に導電パターン68を積層形成した配線基板70と、複数の導電粒子部72を備えた局在型異方導電性ゴム板74と、バンプ付薄膜シート82との積層構造を備えている。
【0005】
バンプ付薄膜シート82は、可撓性及び絶縁性を備えたポリイミド等よりなる薄膜フィルム83と、該薄膜フィルム83を貫通する形で配置された多数のバンプ84を備えている。各バンプ84の後端部は、薄膜フィルム24の他面側に配置された電極部85と電気的に接続されている。
また、薄膜フィルム24の周縁には、セラミックリング56が接続されている。
【0006】
配線基板70の導電パターン68と、異方導電性ゴム板74の導電粒子部72、及びバンプ付薄膜シート82のバンプ84間は、それぞれ電気的に接続されている。
【0007】
このプローブ80を用いてシリコンウェハ76に対する検査を実施する際には、プローブとして機能するバンプ84の先端部をシリコンウェハ76上の電極パッド78に圧接させ、導電パターン68を通じて加えられた電気信号を導電粒子部72及びバンプ84を介して電極パッド78に供給する。
【0008】
このような構造を備えたプローブ80を用いることにより、シリコンウェハ76の表面に形成された多数の電極パッド78に対してまとめて検査用信号を印加できると同時に、出力信号を外部に取り出すことができるため、個々の集積回路として切り出す前の段階で、各種検査を効率的に実施することが可能となる。
【0009】
このプローブ80の主要な構成部材であるバンプ付薄膜シート82は、特許文献1に示すように、従来は以下の工程を経て製造されていた。
まず、図18に示すように、薄膜フィルム83と銅箔87を貼り合わせた構造の二層フィルム88を、銅箔87を下にしてシリコンゴムシート89に吸着させ、所定温度で加熱する。そして、シリコンゴムシート89及び薄膜フィルム83を十分に熱膨張させた上で、薄膜フィルム83の表面にセラミックリング56を熱硬化性の接着剤を介して接合させる。
このまま常温に移行すると薄膜フィルム83が収縮し、セラミックリング56で囲まれた領域にテンションが生じる結果、薄膜フィルム83が皺や弛みのない状態でセラミックリング56に張り渡される。
【0010】
つぎに、図19に示すように、シリコンゴムシート89を剥離した後、薄膜フィルム83の表面にレーザを所定のパターンで照射し、銅箔87にまで達する貫通孔90を形成する。
【0011】
つぎに、図20に示すように、薄膜フィルム83の表面側にめっき処理を施し、貫通孔90の底面に露出した銅箔88の表面にニッケル等の金属を必要量析出させることにより、薄膜フィルム83の表面から突出した半球状のバンプ84が形成される。図示は省略したが、このめっき処理に際しては、銅箔87の表面にめっきレジスト層が形成される。
【0012】
つぎに、図21に示すように、めっきレジスト層を剥離した後、エッチング処理によって銅箔87を所定のパターンで部分的に除去することにより、相互に絶縁した複数の電極部85が形成される。各電極部85は、上記の通りバンプ84の後端部に電気的に接続されている。銅箔87の表面には、金めっき層91が形成される。
【特許文献1】特開平11−67856
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この従来の製造方法によれば、薄くて取扱いが容易でない薄膜フィルム83に対して最初に硬質のセラミックリング56が固着されるため、薄膜フィルム83に対して適度なテンションが付与され、皺や弛みを除去できると共に、バンプ形成工程におけるハンドリング性を向上できる利点を有している。
しかしながら、後続のバンプ形成過程においては、レーザー照射による貫通孔90の形成やめっきによるバンプ84の形成等、複雑な処理工程を辿る必要があり、その間に薄膜フィルム83に歪みや位置ずれが生じる可能性が高かった。特に、銅箔87をエッチングする際には、それまで下支えとなっていた銅箔87の大部分が除去されるため、薄膜フィルム83のテンションに変動が生じ、形成されたバンプ84や電極部85の位置精度が大きく狂うという問題が生じていた。
【0014】
この発明は、このような従来の問題を解決するために案出されたものであり、薄膜フィルムに形成されたバンプや電極部の位置精度を高く保持することが可能なバンプ付薄膜シートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載のバンプ付薄膜シートの製造方法は、可撓性及び絶縁性を有する薄膜フィルムに対し、先端部がこの薄膜フィルムの一面から突出すると共に、後端部がこの薄膜フィルムを貫通して他面側に導出された複数のバンプと、このバンプの後端部に接続された複数の電極部を形成する工程と、この薄膜フィルムを加湿し、膨潤化させる工程と、この薄膜フィルムを、複数の目印パターンが表示された基板上に載置する工程と、この薄膜フィルム上の任意の箇所の拡大映像を参照し、薄膜フィルムを必要方向に必要量引き伸ばし、上記の電極部と目印パターンとの位置合わせを行う工程と、薄膜フィルムの表面に、硬質のリングを接合する工程と、薄膜フィルムを乾燥させる工程とからなることを特徴としている。
【0016】
請求項2に記載のバンプ付薄膜シートの製造方法は、請求項1の製造方法であって、さらに、上記基板上に載置された薄膜シートを複数の粘着テープ片で基板に仮止めしておき、上記電極部と目印パターンの位置合わせに際しては、必要な粘着テープ片の外端部を一旦取り外して薄膜フィルムを引き伸ばし、位置が合った時点で再度粘着テープ片の外端部を基板に固定する操作を繰り返すことを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載のバンプ付薄膜シートの製造方法は、請求項1または2の製造方法であって、さらに、上記バンプ及び電極部が以下の工程により形成されることを特徴としている。
(1)薄膜フィルムの一面に導電層を形成した二層フィルムを準備する。
(2)二層フィルムの薄膜フィルム側に第1のドライフィルムレジストを被着させると共に、導電層側に第2のドライフィルムレジストを被着させる。
(3)上記の各ドライフィルムレジストの表面に、それぞれ所定パターンの透光部及び遮光部を備えたフォトマスクを配置させ、露光する。
(4)各ドライフィルムレジストを現像し、それぞれの対応した位置に所定形状の貫通孔を形成する。
(5)第1のドライフィルムレジストの表面に第1の保護フィルムを貼着した後、導電層側にめっき処理を施し、第2のドライフィルムの貫通孔内にめっき金属層を形成する。
(6)第2のドライフィルムレジストの表面に第2の保護フィルムを貼着した後、上記第1の保護フィルムを除去する。
(7)第1のドライフィルムレジストの各貫通孔に向けてレーザビームを照射し、薄膜フィルムに導電層に達する貫通孔を形成する。
(8)薄膜フィルム側にめっき処理を施し、薄膜フィルムの各貫通孔から外部に突出したバンプを形成する。
(9)各バンプの先端部側に第3の保護フィルムを貼着した後、第2の保護フィルム及び第2のドライフィルムレジストを除去する。
(10)導電層側にエッチング処理を施し、めっき金属層で覆われていない導電層を除去することにより、相互に電気的に絶縁されると共に、上記バンプの後端部と電気的に接続された電極部を複数形成する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の製造方法にあっては、薄膜フィルムにバンプや電極部を形成した後に、拡大映像を参照しながら電極部と目印パターンとの位置合わせを行い、最後に硬質のリングを接合して位置関係を固定する方式であるため、バンプや電極部の位置精度を極めて高く維持することが可能であり、従来例のように、バンプや電極部の形成工程を通じて薄膜フィルムに位置ズレや歪みが生じることがない。
【0019】
請求項2の製造方法にあっては、電極部と目印パターンの位置合わせが、粘着テープ片の外端部の取り外しと固定を繰り返すことによって実現できるため、極めて簡易かつ柔軟に「電極部−目印パターン」間の位置関係の調整が可能となる。
【0020】
請求項3の製造方法によれば、バンプ及び電極部の形成に際し、薄膜フィルムに対してドライフィルムレジストや保護フィルムの少なくとも一つが常に装着され、薄膜フィルムの強度が補強されるため、事前にリングを接合していない状態であっても良好なハンドリング性を確保することができる。
また、第1のドライフィルムレジスト及び第2のドライフィルムレジストの対応位置にそれぞれ貫通孔が形成され、一方の貫通孔内に電極部が形成されると共に、他方の貫通孔は薄膜フィルムにバンプ形成用の貫通孔を形成するためのレーザ照射用のアライメントとして機能する。この結果、電極部の形成位置とバンプの形成位置を正確に合わせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜図15に従い、このバンプ付薄膜シートの製造方法について説明する。
まず、図1に示すように、ポリイミド等よりなる可撓性及び絶縁性を備えた薄膜フィルム10(厚さ:10〜50μm)と、銅箔よりなる導電層12(厚さ:5〜35μm)を備えた二層フィルム14を用意する。この二層フィルム14の薄膜フィルム10側には第1のドライフィルムレジスト16が、また導電層12側には第2のドライフィルムレジスト18が貼着される。
【0022】
つぎに、図2に示すように、第1のドライフィルムレジスト16の表面に遮光部20a及び複数の円形透光部20bを備えた第1のフォトマスク20が配置されると共に、第2のドライフィルムレジスト18の表面にも、遮光部22a及び複数の矩形透光部22bを備えた第2のフォトマスク22が配置される。
第1のフォトマスク20の円形透光部20bと、第2のフォトマスク22の矩形透光部22bは、それぞれが対となるように(第1のドライフィルムレジスト16、薄膜フィルム10、導電層12、第2のドライフィルムレジスト18を間に挟んだ状態で相互に重複するように)、位置決め配置されている。
【0023】
この状態で、第1のフォトマスク20及び第2のフォトマスク22の表面に紫外線(UV)を照射した後、第1のドライフィルムレジスト16及び第2のドライフィルムレジスト18に対して現像処理を施す。
この結果、図3に示すように、上記露光処理によって感光した部分が除去され、第1のドライフィルムレジスト16には円筒状の貫通孔24が多数形成される。また、第2のドライフィルムレジスト18には、各貫通孔24と対応する位置に、角柱状の貫通孔26が多数形成される。
ここで、第1のドライフィルムレジスト16の表面には、保護フィルムとしてのキャリアフィルム(熱剥離タイプ)28が貼着される。
【0024】
つぎに、図4に示すように、第2のドライフィルムレジスト18側に電解めっきを施し、貫通孔26の底面に露出した導電層12の表面にニッケルを析出させ、矩形状のニッケル層30を形成する。
【0025】
つぎに、図5に示すように、ニッケル層30の表面に金めっきを施し、金めっき層32を形成する。この金めっき層32は、異方導電性ゴム板の導電粒子部との接触抵抗を低減する目的で形成されるものであり、金を蒸着やスパッタリング等の手法を用いて被着させてもよい。また、金以外の金属(例えばロジウム、パラジウム等)をめっき、蒸着、スパッタリング等の手法によってニッケル層30の表面に被着させてもよい。
この後、第2のドライフィルムレジスト18の表面には、保護フィルムとしての第2のキャリアフィルム(紫外線剥離タイプ)34が貼着される。
【0026】
つぎに、図6に示すように、所定の温度に加熱して第1のキャリアフィルム28を剥離した後、第1のドライフィルムレジスト16の貫通孔24にレーザを照射し、薄膜フィルム10に導電層12にまで達する貫通孔36を多数形成する。
【0027】
この際、第1のドライフィルムレジスト16の貫通孔24は、レーザ照射のアライメントとして機能する。
すなわち、薄膜フィルム10の表面から観察した場合、本来であれば導電層12に遮られるため、その背後に形成されたニッケル層30に対応した位置にレーザ照射を行うことは極めて困難となる。これに対し、上記のように第2のドライフィルムレジスト18側に第2のフォトマスク22を配置させて貫通孔26を形成する際に、第1のドライフィルムレジスト16側にも第1のフォトマスク20を配置させて、貫通孔26と対応する位置に貫通孔24を形成しているため、貫通孔24を目印にしてレーザ照射を行うことにより、ニッケル層30に対応した位置に正確に貫通孔36を形成することが可能となる。
【0028】
つぎに、図7に示すように、第1のドライフィルムレジスト16を薄膜フィルム10の表面から除去した後、薄膜フィルム10側に無電解ニッケルめっきを施す。この結果、図8に示すように、各貫通孔36内にニッケルが析出し、これが成長して貫通孔36から突出した半球状のバンプ38が形成される。
【0029】
つぎに、図9に示すように、薄膜フィルム10の表面に第3のドライフィルムレジスト40を配置させて各バンプ38の表面を保護した上で、粘着性PETフィルム42を第3のドライフィルムレジスト40の表面に貼り付ける。
そして、紫外線照射により第2のキャリアフィルム34を剥離した後、第2のドライフィルムレジスト18を導電層12から除去する。
【0030】
つぎに、図10に示すように、導電層12側に銅除去用のエッチング処理を施し、金めっき層32及びニッケル層30で覆われていない導電層12を除去する。この結果、導電層12−ニッケル層30−金めっき層32の積層構造を備え、相互に絶縁した多数の電極部43が形成される。各電極部43は、バンプ38と電気的に接続されている。
【0031】
つぎに、粘着性PETフィルム42及びバンプ38を覆っている第3のドライフィルムレジスト40を除去することにより、図11に示すように、バンプ38及び電極部43を多数備えた薄膜フィルム10が得られる。
【0032】
この薄膜フィルム10は、図12に示すように、広げた状態で平坦なガラス基板46の表面に載置され、周囲を複数のPI粘着テープ片48で固定される。
この薄膜フィルム10は、ガラス基板46ごと図示しない調湿ボックス内に移され、湿度60%〜80%、摂氏20〜30度の加湿環境下で3〜5時間放置される。
【0033】
つぎに、この加湿処理によって膨潤化された薄膜フィルム10に対しては、図13に示すように、電極部43の位置調整処理が施される。
すなわち、ガラス基板46の表面には、異方導電性ゴム板の導電粒子部に対応した位置に、当該導電粒子部と同じ寸法・形状の目印パターン50が多数描画されている。また、薄膜フィルム10の表面側には、CCDカメラ52が配置され、薄膜フィルム10の拡大映像(拡大率:500倍)がモニタ54上に映し出されている。
【0034】
ここでオペレータは、薄膜フィルム10の任意の箇所の拡大映像を観察しながら、目印パターン50と電極部43との位置ずれを解消させていく。具体的には、ガラス基板46に貼り付けられた一つのPI粘着テープ片48の外端部を取り外し、必要な方向に引っ張る。薄膜フィルム10は上記の膨潤化処理によって柔軟性を増しているため、引っ張った方向に伸張し、電極部43と目印パターン50との位置合わせが実現される。
一の方向に対する調整が完了すると、PI粘着テープ片48の外端部を再度ガラス基板46に固定し、他のPI粘着テープ片48を取り外して別の方向に対する調整を行う。
【0035】
なお、この位置調整における薄膜フィルム10の引張り操作を見越して、各バンプ38及び各電極部43の形成位置に対しては、最終的に必要とされる位置に対して所定の比率で縮小化を施しておくことが望ましい。具体的には、第1のフォトマスク20の各透光部20b間の位置関係、及び第2のフォトマスク22の各透光部22b間の位置関係に対して、予め所定比率での縮小化を施しておく。
【0036】
薄膜フィルム10の表面の16箇所程度で上記の引張り操作を行うことにより、薄膜フィルム10の各電極部43とガラス基板46の各目印パターン50との位置合わせが概ね完了する。
この後、1時間程度放置し、再度CCDカメラ52及びモニタ54を用いて位置の確認を行う。そして、電極部43と目印パターン50との間に位置ズレが発生している場合には、改めて上記の位置合わせ操作を複数回行い、1時間放置する。
この放置後の位置確認によって位置ズレがなくなるまで、上記の位置合わせ操作が繰り返される。
【0037】
つぎに、図14に示すように、位置調整の完了した薄膜フィルム10の表面に、加水分解型の接着剤を下端面に塗布したセラミック(SiC)リング56が載置される。この後、図15に示すように、セラミックリング56の上端面に一対の枕材58が渡され、その上に50Kgの重石60が載せられた状態で、所定時間放置することにより、セラミックリング56は薄膜フィルム10の表面に接合される。
なお、加水分解型接着剤の代わりに熱硬化型接着剤をセラミックリング56の下端面に塗布した後、所定の温度で加熱することにより、セラミックリング56を薄膜フィルム10の表面に接合させてもよい。
【0038】
つぎに、図示は省略したが、セラミックリング56の外側に延びる薄膜フィルム10の余白部をカッターで切除した後、洗浄処理を施し、表面に付着したゴミや加工屑を除去する。
最後に、摂氏125度で1時間程度の加熱処理を施し、薄膜フィルム10の水分を蒸発させる。この際、薄膜フィルム10の収縮力によって高いテンションがセラミックリング56内に発生し、薄膜フィルム10の皺や歪みが消失する。
【0039】
図16は、完成したバンプ付薄膜シート62を組み入れたカード型プローブ64を示している。このカード型プローブ64は、セラミックやガラス等の絶縁基板66の表面に導電パターン68を積層形成した配線基板70と、複数の導電粒子部72を備えた局在型異方導電性ゴム板74と、バンプ付薄膜シート62との積層構造を備えている。
【0040】
バンプ付薄膜シート62の各電極部43は、異方導電性ゴム板74の各導電粒子部72と電気的に接続されている。また、異方導電性ゴム板74の各導電粒子部72は、配線基板70の導電パターン68と電気的に接続されている。
【0041】
このカード型プローブ64を用いてシリコンウェハ76に対する検査を実施する際には、プローブとして機能するバンプ38をシリコンウェハ76上の電極パッド78に圧接し、導電パターン68を通じて加えられた電気信号を導電粒子部72及びバンプ38を介して電極パッド78に供給する。
【0042】
この製造方法にあっては、薄膜フィルム10にバンプ38や電極部43を形成した後に、モニタ54に映し出された拡大映像に基づいて電極部43と目印パターン50との位置合わせを行い、最後にセラミックリング56を接合して位置関係を固定する方式であるため、バンプ38や電極部43の位置精度を極めて高く維持することが可能であり、従来例のように、バンプや電極部の形成工程を通じて薄膜フィルムに位置ズレや歪みが生じることがない。
【0043】
バンプ38及び電極部43の形成過程においては、常にドライフィルムレジストやキャリアフィルム、粘着性PETフィルムが薄膜フィルム10に装着されているため、そのハンドリング性が向上する。したがって、従来例のように最初にセラミックリングを薄膜フィルムに固着しなくても取扱い上の問題は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図2】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図3】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図4】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図5】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図6】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図7】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図8】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図9】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図10】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図11】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図12】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す平面図である。
【図13】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図14】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図15】この発明に係るバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図16】この発明に係るバンプ付薄膜シートの使用例を示す断面図である。
【図17】従来のバンプ付薄膜シートの使用例を示す断面図である。
【図18】従来のバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図19】従来のバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図20】従来のバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【図21】従来のバンプ付薄膜シートの製造工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 薄膜フィルム
12 導電層
14 二層フィルム
16 第1のドライフィルムレジスト
18 第2のドライフィルムレジスト
20 第1のフォトマスク
20a 遮光部
20b 円形透光部
22 第2のフォトマスク
22a 遮光部
22b 矩形透光部
24 円筒状の貫通孔
26 角柱状の貫通孔
28 第1のキャリアフィルム
30 ニッケル層
32 金めっき層
34 第2のキャリアフィルム
36 貫通孔
38 バンプ
40 第3のドライフィルムレジスト
42 粘着性PETフィルム
43 電極部
46 ガラス基板
48 PI粘着テープ片
50 目印パターン
52 CCDカメラ
54 モニタ
56 セラミックリング
58 枕材
60 重石
62 バンプ付薄膜シート
64 カード型プローブ
66 絶縁基板
68 導電パターン
70 配線基板
72 導電粒子部
74 異方導電性ゴム板
76 シリコンウェハ
78 電極パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性及び絶縁性を有する薄膜フィルムに対し、先端部がこの薄膜フィルムの一面から突出すると共に、後端部がこの薄膜フィルムを貫通して他面側に導出された複数のバンプと、このバンプの後端部に接続された複数の電極部を形成する工程と、
この薄膜フィルムを加湿し、膨潤化させる工程と、
この薄膜フィルムを、複数の目印パターンが表示された基板上に載置する工程と、
この薄膜フィルム上の任意の箇所の拡大映像を参照し、薄膜フィルムを必要方向に必要量引き伸ばし、上記の電極部と目印パターンとの位置合わせを行う工程と、
薄膜フィルムの表面に、硬質のリングを接合する工程と、
薄膜フィルムを乾燥させる工程と、
からなることを特徴とするバンプ付薄膜シートの製造方法。
【請求項2】
上記基板上に載置された薄膜シートを複数の粘着テープ片で基板に仮止めしておき、上記電極部と目印パターンの位置合わせに際しては、必要な粘着テープ片の外端部を一旦取り外して薄膜フィルムを引き伸ばし、位置が合った時点で再度粘着テープ片の外端部を基板に固定する操作を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載のバンプ付薄膜シートの製造方法。
【請求項3】
上記バンプ及び電極部が、以下の工程により形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のバンプ付薄膜シートの製造方法。
(1)薄膜フィルムの一面に導電層を形成した二層フィルムを準備する。
(2)二層フィルムの薄膜フィルム側に第1のドライフィルムレジストを被着させると共に、導電層側に第2のドライフィルムレジストを被着させる。
(3)上記の各ドライフィルムレジストの表面に、それぞれ所定パターンの透光部及び遮光部を備えたフォトマスクを配置させ、露光する。
(4)各ドライフィルムレジストを現像し、それぞれの対応した位置に所定形状の貫通孔を形成する。
(5)第1のドライフィルムレジストの表面に第1の保護フィルムを貼着した後、導電層側にめっき処理を施し、第2のドライフィルムの貫通孔内にめっき金属層を形成する。
(6)第2のドライフィルムレジストの表面に第2の保護フィルムを貼着した後、上記第1の保護フィルムを除去する。
(7)第1のドライフィルムレジストの各貫通孔に向けてレーザビームを照射し、薄膜フィルムに導電層に達する貫通孔を形成する。
(8)薄膜フィルム側にめっき処理を施し、薄膜フィルムの各貫通孔から外部に突出したバンプを形成する。
(9)各バンプの先端部側に第3の保護フィルムを貼着した後、第2の保護フィルム及び第2のドライフィルムレジストを除去する。
(10)導電層側にエッチング処理を施し、めっき金属層で覆われていない導電層を除去することにより、相互に電気的に絶縁されると共に、上記バンプの後端部と電気的に接続された電極部を複数形成する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−288140(P2009−288140A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142464(P2008−142464)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(593074879)株式会社篠崎製作所 (2)
【出願人】(591245141)株式会社渕上ミクロ (26)
【Fターム(参考)】