説明

パイロット式電磁弁

【課題】弁の安定した動作を維持しながら、弁室の容積を増加させ、圧力損失の小さいパイロット式電磁弁を提供する。
【解決手段】弁室6と、流入口8及び流出口9と、弁室内に配置された弁シート7と、パイロット弁体18を備えたプランジャ19と、プランジャの外周に配置されたソレノイド3と、プランジャと弁シートとの間に配置された主弁体22と、主弁体に穿設され、主弁体とプランジャとの間に形成されるパイロット室26と流出口とを選択的に連通・遮断するようにパイロット弁体により開閉されるパイロットオリフィス25と、パイロット室と弁室とを連通させる均圧穴27と、主弁体をプランジャ側に付勢するコイルばね30とを備え、弁室の内壁の内径を、主弁体から離間するに従って大径になるように形成し、コイルばねを、円錐台状のコイルばねとし、円錐台状のコイルばねの内側に、コイルばねを覆う遮蔽手段29を配置したパイロット式電磁弁1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット式電磁弁に関し、特に、空調機の冷凍サイクル等において膨張弁と蒸発器との間に介装するのに好適なパイロット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用空調機等の膨張弁と蒸発器との間に介装されるパイロット式電磁弁として、特許文献1には、図2に示すようなパイロット式電磁弁が開示されている。
【0003】
このパイロット式電磁弁31は、大別して、弁部2と、この弁部2に螺着される管状取付台4と、管状取付台4を介して弁部2に装着されるソレノイド部3とで構成され、流体として液・ガス混合状態の冷媒を取り扱う。
【0004】
弁部2は、管状取付台4の下方に位置する弁室36と、弁室36の中央部に位置する円筒状の弁シート7と、弁室36に連通する流入口8と、流出口9とを備える。
【0005】
ソレノイド部3は、ヨーク11と、ヨーク11の内側に配置されたコイル12と、コイル12の内側に配置されたステータ13と、ステータ13とヨーク11とを連結する止めねじ14と、ステータ13と一体化された案内スリーブ15と、ステータ13の下部に装着されたゴム製パッキン16と、案内スリーブ15内を上下方向に摺動可能なプランジャ19と、プランジャ19の下部に突設されたパイロット弁体18と、ステータ13とプランジャ19との間に介装されてプランジャ19を常時弁シート7側に付勢する主コイルばね20とを備える。
【0006】
管状取付台4は、円筒状の基部4aと、フランジ部4bとを備え、基部4aに螺設された雄ねじ部4cが弁部2の雌ねじ部2aと螺合して管状取付台4全体が弁部2に螺着される。弁部2の上部の凹部2bと管状取付台4のフランジ部4bとの間には、気密用のパッキン10が装着される。
【0007】
管状取付台4の基部4aの内側空間には、弁シート7とプランジャ19とに接離可能に管状取付台4の内部を上下方向に摺動可能に主弁体22が配置され、主弁体22とプランジャ19との間には、パイロット室26が形成される。
【0008】
主弁体22は、円柱状の基部23と、基部23に外嵌固定された筒状外周部24とからなり、基部23の中央部には、基部23を縦貫してパイロット室26と流出口9とを選択的に連通・遮断するように、パイロット弁体18により開閉されるパイロットオリフィス25が穿設される。筒状外周部24には、パイロット室26と弁室36とを連通させる均圧穴27が穿設される。
【0009】
管状取付台4の下端部の内周面の均圧穴27の下方には、邪魔板としても作用する、縦断面がL字状で全体が円環状のストッパ39が固着され、このストッパ39と主弁体22の筒状外周部24に形成された段部24aとの間に、主弁体22をプランジャ19側に付勢するコイルばね40が介装される。
【0010】
上記構成を有するパイロット式電磁弁31は、ソレノイド部3を通電励磁してON状態とすると、プランジャ19が主コイルばね20の付勢力に抗してステータ13側に引き上げられ、パイロット弁体18が主弁体22から離れてパイロットオリフィス25が開く。これにより、主弁体22とプランジャ19の間に形成されたパイロット室26の冷媒がパイロットオリフィス25を通じて流出口9に排出されてパイロット室26の圧力が低下し、パイロット室26の圧力が流入口8及び弁室36の圧力より小さくなり(流入口8及び弁室36の圧力>パイロット室26の圧力≧流出口9の圧力)、主弁体22は、パイロット室26の圧力と弁室36の圧力との差圧により上方に移動して弁シート7から離間し、開弁状態となる。この開弁状態では、流入口8から弁室36に流入した冷媒が主弁体22と弁シート7との間を通って流出口9に流出する。
【0011】
一方、ソレノイド部3への通電励磁を解除してOFF状態とすると、プランジャ19が主コイルばね20の付勢力によって弁シート7側(下方)に押し下げられ、パイロット弁体18が主弁体22に圧接してパイロットオリフィス25を閉じ、均圧穴27及び主弁体22と管状取付台4の内周面との空隙を通じてパイロット室26に流入する流体の圧力により、主弁体22が弁シート7側に押し下げられて弁シート7に圧接し、閉弁状態となる。この閉弁状態では、弁シート7と流出口9との間が遮断され、冷媒の流出が阻止される。
【0012】
また、このパイロット式電磁弁31には、主弁体22をプランジャ19側に付勢するコイルばね40が設けられるため、コイルばね40が主弁体22を弁シート7から離間する方向、すなわち全開方向に付勢する。そのため、パイロット室26に流入した流体が膨張しても、主弁体22が押し下げられ難くなり、その結果、主弁体22の振動を抑えて、異音の発生を効果的に防止する。
【0013】
さらに、パイロット式電磁弁31には、均圧穴27の下方にストッパ39を固着したため、流入口8より流入した流体が主弁体22に直接当たらず、そのため、主弁体22の振動が抑制され、異音の発生を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−196838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上記従来のパイロット式電磁弁31においては、弁室36の内壁の内径が主弁体22の外径と略々同様に形成されているため、弁室36の容積が小さく、冷媒が流れる際に圧力損失が大きくなるという問題があった。
【0016】
そこで、本発明は、上記従来のパイロット式電磁弁における問題点に鑑みてなされたものであって、主弁体の振動を抑制して弁の安定した動作を維持しながら、弁室の容積を増加させ、圧力損失の小さいパイロット式電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、弁室と、該弁室に連通する流入口及び流出口と、該弁室内に配置された弁シートと、該弁シートに面する端部にパイロット弁体を備えたプランジャと、該プランジャを進退させるために該プランジャの外周に配置されたソレノイドと、前記プランジャと前記弁シートとの間に、該プランジャ及び弁シートに接離可能に配置された主弁体と、該主弁体に穿設され、該主弁体と前記プランジャとの間に形成されるパイロット室と前記流出口とを選択的に連通・遮断するように前記パイロット弁体により開閉されるパイロットオリフィスと、前記パイロット室と前記弁室とを連通させる均圧穴と、前記主弁体を前記プランジャ側に付勢するコイルばねとを備えるパイロット式電磁弁において、前記弁室の内壁の内径を、前記主弁体から離間するに従って大径になるように形成し、前記コイルばねを、円錐台状のコイルばねとして前記弁室の内壁に沿って配置し、該円錐台状のコイルばねの内側に、該コイルばねを覆う遮蔽手段を配置したことを特徴とする。
【0018】
そして、本発明によれば、弁室の内壁の内径を、主弁体から離間するに従って大径になるように形成したため、弁室の内壁の内径が主弁体の外径と略々同様に形成されていた従来のパイロット式電磁弁に比較して弁室の容積を大きくすることが可能となり、圧力損失を小さく抑えることができる。
【0019】
また、弁室の内壁に沿って配置した円錐台状のコイルばねの内側を遮蔽手段で覆ったため、流体が弁室内を流れる際に、円錐台状のコイルばねが流体の流れに煽られることがなく、コイルばねの脱落や変形を防止することができ、パイロット式電磁弁の安定した動作を維持することができる。
【0020】
前記パイロット式電磁弁において、前記遮蔽手段を中空円錐台状の環状部材とし、大径側端部を前記弁室の内壁に固定することができる。これによって、この遮蔽手段に、従来の均圧穴の下方に固着したストッパの機能を併せ持つようにすることができ、主弁体の振動を抑制し、異音の発生を低減させることもできる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、弁の安定した動作を維持しながら、弁室の容積を増加させ、圧力損失の小さいパイロット式電磁弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかるパイロット式電磁弁の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】従来のパイロット式電磁弁の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。本発明にかかるパイロット式電磁弁1の基本構造は、図2に示した従来のパイロット式電磁弁31と同様であるため、従来と同一の構成要素については同一の参照番号を付して詳細説明を省略する。
【0024】
このパイロット式電磁弁1も、大別して、弁部2と、管状取付台4と、ソレノイド部3とで構成され、流体として液・ガス混合状態の冷媒を取り扱う。
【0025】
弁部2は、管状取付台4の下方に位置する弁室6と、弁室6の中央部に位置する円筒状の弁シート7と、弁室6に連通する流入口8と、流出口9とを備える。
【0026】
弁室6は、その内壁の内径が主弁体22から離間するに従って、すなわち下方に向かうにつれて大径になるように、全体的に円錐台状に形成される。これによって、図2に示した従来のパイロット式電磁弁31の弁室36よりも容積が大きくなっている。
【0027】
ソレノイド部3は、従来と同様、ヨーク11と、コイル12と、ステータ13と、止めねじ14と、案内スリーブ15と、ゴム製パッキン16と、プランジャ19と、プランジャ19の下部に突設されたパイロット弁体18と、ステータ13とプランジャ19との間に介装された主コイルばね20とを備える。
【0028】
管状取付台4は、円筒状の基部4aと、フランジ部4bとを備え、基部4aに螺設された雄ねじ部4cが弁部2の雌ねじ部2aと螺合して管状取付台4全体が弁部2に螺着される。弁部2の上部の凹部2bと管状取付台4のフランジ部4bとの間には、気密用のパッキン10が装着される。
【0029】
管状取付台4の基部4aの下部は、上述のように弁室6を円錐台状に形成したことに伴い、下方に向かって拡径する円錐台状の内壁面を有する点が従来と異なる。この円錐台状の内壁面の上方の内側空間には、弁シート7とプランジャ19とに接離可能に管状取付台4の内部を上下方向に摺動可能に主弁体22が配置され、主弁体22とプランジャ19との間には、パイロット室26が形成される。
【0030】
主弁体22は、円柱状の基部23と、筒状外周部24とからなり、基部23の中央部には、基部23を縦貫するパイロットオリフィス25が穿設される。筒状外周部24には、パイロット室26と弁室6とを連通させる均圧穴27が穿設される。
【0031】
弁室6には、円錐台状のコイルばね30が弁室6の内壁(基部4aの内面)に沿って、下方のストッパ29と主弁体22の筒状外周部24に形成された段部24aとの間に介装され、主弁体22をプランジャ19側に付勢する。
【0032】
上記円錐台状のコイルばね30の内側には、コイルばね30を覆う遮蔽手段として、中空円錐台状の環状のストッパ29が設けられ、ストッパ29の大径側端部が弁室6の内壁に固定される。このストッパ29は、従来のストッパ39のように、流入口8より流入した冷媒が主弁体22に直接当たることを防止し、主弁体22の振動を抑制する機能も有する。
【0033】
上記構成を有するパイロット式電磁弁1は、ソレノイド部3を通電励磁してON状態とすると、プランジャ19が主コイルばね20の付勢力に抗してステータ13側に引き上げられ、パイロット弁体18が主弁体22から離れてパイロットオリフィス25が開く。これにより、主弁体22とプランジャ19の間に形成されたパイロット室26の冷媒がパイロットオリフィス25を通じて流出口9に排出されてパイロット室26の圧力が低下し、パイロット室26の圧力が流入口8及び弁室6の圧力より小さくなり、主弁体22は、パイロット室26の圧力と弁室6の圧力との差圧により上方に移動して弁シート7から離間し、開弁状態となる。この開弁状態では、流入口8から弁室6に流入した冷媒が主弁体22と弁シート7との間を通って流出口9に流出する。
【0034】
ここで、上述のように、パイロット式電磁弁1の弁室6は、従来のパイロット式電磁弁31の弁室36よりも容積を増加させたため、冷媒が通過する際の圧力損失を小さく抑えることができる。また、弁室6の形状変更に伴い、コイルばね30を円錐台状に形成し、そのままでは、コイルばね30が冷媒の流れに煽られて脱落したり、変形するおそれもあるが、コイルばね30の内側にストッパ29を配置してコイルばね30を覆っているため、コイルばね30が冷媒の流れに煽られることがなく、コイルばね30の脱落及び変形を防止し、パイロット式電磁弁1の安定した動作を維持することができる。
【0035】
一方、ソレノイド部3への通電励磁を解除してOFF状態とすると、プランジャ19が主コイルばね20の付勢力によって弁シート7側、すなわち下方に押し下げられ、パイロット弁体18が主弁体22に圧接してパイロットオリフィス25を閉じ、均圧穴27及び主弁体22と管状取付台4の内周面との空隙を通じてパイロット室26に流入する流体の圧力により、主弁体22が弁シート7側に押し下げられて弁シート7に圧接し、閉弁状態となる。この閉弁状態では、弁シート7と流出口9との間が遮断され、冷媒の流出が阻止される。
【0036】
また、従来と同様、コイルばね30が主弁体22を弁シート7から離間する方向、すなわち全開方向に付勢するため、パイロット室26に流入した冷媒が膨張しても、主弁体22が押し下げられ難くなり、主弁体22の振動を抑えて、異音の発生を効果的に防止する。
【0037】
さらに、従来と同様、均圧穴27の下方に固着したストッパ29により、流入口8より流入した冷媒が主弁体22に直接当たらず、主弁体22の振動を抑制し、異音の発生を低減させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 パイロット式電磁弁
2 弁部
2a 雌ねじ部
2b 凹部
3 ソレノイド部
4 管状取付台
4a 基部
4b フランジ部
4c 雄ねじ部
6 弁室
7 弁シート
8 流入口
9 流出口
10 パッキン
11 ヨーク
12 コイル
13 ステータ
14 止めねじ
15 案内スリーブ
16 ゴム製パッキン
18 パイロット弁体
19 プランジャ
20 主コイルばね
22 主弁体
23 基部
24 筒状外周部
24a 段部
25 パイロットオリフィス
26 パイロット室
27 均圧穴
29 ストッパ
30 コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室と、該弁室に連通する流入口及び流出口と、該弁室内に配置された弁シートと、該弁シートに面する端部にパイロット弁体を備えたプランジャと、該プランジャを進退させるために該プランジャの外周に配置されたソレノイドと、前記プランジャと前記弁シートとの間に、該プランジャ及び弁シートに接離可能に配置された主弁体と、該主弁体に穿設され、該主弁体と前記プランジャとの間に形成されるパイロット室と前記流出口とを選択的に連通・遮断するように前記パイロット弁体により開閉されるパイロットオリフィスと、前記パイロット室と前記弁室とを連通させる均圧穴と、前記主弁体を前記プランジャ側に付勢するコイルばねとを備えるパイロット式電磁弁において、
前記弁室の内壁の内径を、前記主弁体から離間するに従って大径になるように形成し、
前記コイルばねを、円錐台状のコイルばねとして前記弁室の内壁に沿って配置し、
該円錐台状のコイルばねの内側に、該コイルばねを覆う遮蔽手段を配置したことを特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項2】
前記遮蔽手段は、中空円錐台状の環状部材であって、大径側端部が前記弁室の内壁に固定されることを特徴とする請求項1に記載のパイロット式電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−202443(P2012−202443A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65531(P2011−65531)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】