説明

パケット伝送方法及びパケット受信装置

【課題】ケット通信網では一般に、パケット欠落がバースト的に発生し、近接する複数のパケットをまとめて欠落する可能性が高いため、音声パケットを2重化して伝送しても両方とも欠落してしまい、音声が乱れる問題があった。
【解決手段】重化した音声パケット3と音声パケット4の一方を時間的にずらして伝送することにより、2重化したパケットの両方を欠落する可能性が減る。このため受信装置2Aおいて、2重化したパケットの一方に欠落が発生した場合に他方のパケットを用いることで音とびを回避できる可能性が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネット等の通信網を介し、パケット化された映像データや音声データを伝送するパケット伝送方法、及びこの伝送方法に使用するパケット受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパケット伝送方法としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがあった。図3は特許文献1に記載された従来のパケット伝送方法の概略を示している。
【0003】
図3において、送信側のエンコーダより出力された映像データを含むパケットV1、V2、V5、V7と音声データを含むパケットA1、A2は、それぞれ複製して2重化され、更にパケットは2つに分割され(たとえばパケットA1はA1aとA1bに分割)、通信網を介しRTPに従って送信される。一方、受信側では分割されたパケットが取り出され、元のパケットに再現された後にデコーダに入力される。
【0004】
上記従来の伝送方法において、通信網で音声パケットが欠落しても、A1パケットに示すように、分割されたパケットのうちの一部が欠落した場合には、2重化された欠落がないパケットを用い、またA2に示すように分割されたパケットのうち中の2つのパケットに欠落が生じた場合には、前半の半分と後半の半分を結合することによりパケットを再現することが可能となる。
【0005】
このように、パケットを複製して2重化し、また分割したパケットのうち欠落がないパケットのデータを用いることにより、パケット欠落に起因する音声の途切れを気にならない程度に抑制できる。
【特許文献1】特開2004−32225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パケット通信網では、一般にパケット欠落はバースト的に発生し、近接する複数のパケットをまとめて欠落する可能性が高い。前記従来の方法では2重化した音声パケットを隣接して伝送しているため、2重化した音声パケットを両方とも欠落する恐れがある。そのため、音とびが発生する可能性が少なからず残ってしまうという問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、音とびをできるだけ起こさないようなパケット伝送方法及びそれに用いるパケット受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するため、本発明の第1のパケット伝送方法は、音声データ及び映像データのいずれかを含む第1のパケットと、前記第1のパケットを複製し、かつ前記第1のパケットに対して時間差を与えた第2のパケットを送信する第1のステップと、 前記第1及び第2のパケットを受信した後データの欠落を判定し、データ欠落のないパケットを選択する第2のステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
上記第1のパケット伝送方法において、前記第2のステップで、受信した前記第1及び第2のパケットを一時記憶するようにしてもよい。また前記第1及び第2のパケットは音声データを含むパケットであることが好ましい。
【0010】
また上記本発明の第1のパケット伝送方法を実現するパケット受信装置は、音声データ及び映像データのいずれかを含む第1のパケットと、前記第1のパケットを複製し、かつ前記第1のパケットに対して時間差を与えた第2のパケットを受信する受信手段と、前記受信手段が受信した前記第1及び第2のパケットを一時記憶する第1及び第2のバッファと、前記第1及び第2のバッファに一時記憶された前記第1及び第2のパケットのデータの欠落を判定し、データ欠落のないパケットを選択する選択手段と、前記選択手段で選択されたパケットに含まれるデータをデコードするデコード手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2のパケット伝送方法は、音声データ及び映像データのいずれかを含む第1のパケットと、前記第1のパケットの音声データ又は映像データに対応した映像データ又は音声データを含み、かつ前記第1のパケットに対して時間差を与えた第2のパケットを送信する第1のステップと、前記第1及び第2のパケットを受信した後前記第1のパケットのデータの欠落を判定し、データ欠落がある場合、そのパケットの再送を要求する第2のステップと、前記再送を要求されたパケットを送信する第3のステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
上記本発明の第2のパケット伝送方法において、前記第2のステップで、受信した前記第1及び第2のパケットを一時記憶するようにしてもよい。また前記第1のパケットは音声データを含むパケットであることが好ましい。
【0013】
また上記本発明の第2のパケット伝送方法を実現するパケット受信装置は、音声データ及び映像データのいずれかを含む第1のパケットと、前記第1のパケットの音声データ又は映像データに対応した映像データ又は音声データを含み、かつ前記第1のパケットに対し時間差を与えた第2のパケットとを受信し、ならびに前記第1のパケットのデータ欠落を判定し、データ欠落がある場合、そのパケットの再送を要求する受信手段と、前記受信手段で受信した前記第1及び第2のパケットを一時記憶する第1及び第2のバッファと、前記第1及び第2のバッファに一時記憶されたパケットに含まれる音声データ又は映像データをデコードするデコード手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1のパケット伝送方法によれば、音声パケットが欠落する確率を抑えることが可能であるので、音とびをさらに抑制することができる。
また、本発明の第2のパケット伝送方法によれば、音声パケットを2重化せずパケット再送技術を用いることによって、帯域の増加を抑えながら音とびを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
≪実施の形態1≫
図1は本発明の実施の形態1におけるパケット伝送方法を実現する送信装置及び受信装置の構成図である。
【0017】
図1において、送信装置1Aはインターネット等の通信網を介して受信装置2Aに音声データ及び映像データを含むパケットを伝送する。受信装置2Aは、送信装置1Aから送られてきたパケットを受信する受信手段20と、受信手段20で受信したパケットを一時記憶するバッファ21、22及び23と、バッファ21、22からのパケットのいずれかを選択してデコード手段25に入力する選択手段24、ならびにパケットに含まれる音声データ及び映像データをデコードするデコード手段25で構成されている。
【0018】
以下、上記構成の送信装置1A及び受信装置2Aの動作を説明する。送信装置1Aは通信網を介して映像データを含むパケット(以下映像パケットという)5を送信する。一方、音声データを含むパケット(以下音声パケットという)については、第1の音声パケット3と、この第1の音声パケットを複製して2重化し、かつ時間差Tを与えた第2の音声パケット4を送信する。受信装置2Aでは、受信手段20で第1の音声パケット3、第2の音声パケット4及び映像パケット5を受信した後、それぞれ音声バッファ21、音声バッファ22及び映像バッファ23に一時記憶する。
【0019】
選択手段24は音声バッファ21及び22から音声パケット3、4を読み出してデコード手段25へ渡す。ここで、第2の音声パケット4に欠落があると判断した時は、音声バッファ21から音声パケット3を読み出してデコード手段25に渡す。デコード手段25は音声データをデコードして音声を出力する。なお、音声パケット3、4のいずれにも欠落がない場合には、あらかじめ指定されたいずれかの音声バッファに一時記憶された音声パケットを選択手段24で選択し、デコード手段25に渡す。
【0020】
ここで、時間差Tは送信装置1Aと受信装置2Aで固定的に取り決めた値でもよいし、パケットの伝送前に調停して決めてもよく、また伝送中に変更してもよい。値としては、伝送路のパケット欠落率、伝送遅延時間などの伝送品質に基づいて決めることができる。
【0021】
なお、選択手段24における受信パケット欠落の判定方法として、バッファへの格納方法により以下の2つの方法が利用できる。
【0022】
(1)受信したパケットのペイロード部に格納されている映像データや音声データのみをバッファに書き込む場合のみ、映像データ及び音声データの符号化方式がMPEG2−Transport Stream(TS)である場合は、音声パケットの欠落をTSパケットヘッダのcontinuity_counterの不連続性から判定できる。
【0023】
(2)受信パケットのプロトコルヘッダの全部または一部を含めて映像データや音声データをバッファに書き込む場合は、音声パケットの欠落をTCPヘッダのシーケンスナンバー、RTPヘッダのシーケンスナンバー、またはTSパケットヘッダのcontinuity_counterから判断できる。ここで、受信パケットの形式はインターネット通信で用いられているTCP/IPやRTP/UDP/IPを用いることを前提としている。
【0024】
以上のように実施の形態1の伝送方法によれば、音声パケットに時間差をつけて2重化して伝送することによりバースト的なパケット欠落に対する耐性が高くなるため、受信装置で欠落のないパケットを選択しデコードすることにより、音声パケットの欠落を補償できる確率が高くなり、音とびを抑制することができる。
【0025】
なお、本実施の形態1では音声パケットだけを2重化した例を示したが、映像パケットだけを2重化してもよいし、音声パケットと映像パケットを両方とも2重化してもよい。
また、本実施の形態1の方法は、音声パケットまたは映像パケットのどちらか一方だけを伝送する伝送方法にも同様に適用可能である。
【0026】
≪実施の形態2≫
図2は本発明の実施の形態2におけるパケット伝送方法を実現する送信装置及び受信装置の構成図である。図中、図1と同一機能を有する構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0027】
図2において、受信装置2Bの受信手段26は音声パケット3と、この音声パケット3に対し時間差Tを与えられた映像パケット5を受信し、前記パケットに含まれる音声データ及び映像データを、それぞれ音声バッファ21及び映像バッファ23に一時記憶する。蓄積データ27は音声バッファ21に書き込まれた音声データである。なお、音声パケット3の音声データと映像パケット5の映像データは、同一場面に対応した音声データ及び映像データである。
【0028】
ここで受信手段26は、受信した音声パケット3に欠落があると判断した場合は、送信装置1Bへパケット3の再送を要求する。再送され受信したパケット3の音声データは、音声バッファ21内の当該データの格納領域28に書き込まれる。つまり、パケット欠落が起こった場合は、当該欠落パケットの格納領域を開けて音声バッファ21への書き込みが行われる。
【0029】
一般に、音声データは映像データよりもデータレートが低いため、音声データを時間差Tだけ先に出して映像データよりも長時間分バッファに蓄積しても、受信装置が備えるべきバッファの記憶容量はあまり多くなくてよい利点がある。逆に、映像のコマとびやブロックノイズを避けたいような応用においては、バッファの記憶容量が増大するが、映像パケットを音声パケットよりも先出ししてもよい。
【0030】
以上のように本実施の形態2のパケット伝送方法によれば、音声パケットが欠落した場合においても、再送によって欠落したデータを補償できる確率が高まる。さらに、時間差をつけて音声パケットを先出しすることによって、再送処理にかかる遅延時間を吸収できる確率がより高くなるため、音とびを回避できる可能性が高くなる。
なお、時間差T6の決定方法は実施の形態1と同様とする。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかるパケット伝送方法により、欠落したパケットに含まれる音声データや映像データを補償できる確率が高まるため、音とびや映像のコマとび、ブロックノイズを回避できる可能性がより高くなり、映像や音声データのパケット伝送方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1におけるパケット伝送方法を実現する送信装置及び受信装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態2におけるパケット伝送方法を実現する送信装置及び受信装置の構成図
【図3】従来のパケット伝送方法を説明する概略図
【符号の説明】
【0033】
1A、1B 送信装置
2A、2B 受信装置
3、4 音声パケット
5 映像パケット
20、26 受信手段
21、22 音声バッファ
23 映像バッファ
24 選択手段
25 デコード手段
27 バッファ内の蓄積データ
28 欠落したデータの格納領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声データ及び映像データのいずれかを含む第1のパケットと、前記第1のパケットを複製し、かつ前記第1のパケットに対して時間差を与えた第2のパケットを送信する第1のステップと、
前記第1及び第2のパケットを受信した後データの欠落を判定し、データ欠落のないパケットを選択する第2のステップとを含むパケット伝送方法。
【請求項2】
前記第2のステップにおいて、受信した前記第1及び第2のパケットを一時記憶する請求項1記載のパケット伝送方法。
【請求項3】
前記第1及び第2のパケットは音声データを含むパケットである請求項1又は2記載のパケット伝送方法。
【請求項4】
音声データ及び映像データのいずれかを含む第1のパケットと、前記第1のパケットを複製し、かつ前記第1のパケットに対して時間差を与えた第2のパケットを受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記第1及び第2のパケットを一時記憶する第1及び第2のバッファと、
前記第1及び第2のバッファに一時記憶された前記第1及び第2のパケットのデータの欠落を判定し、データ欠落のないパケットを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択されたパケットに含まれるデータをデコードするデコード手段とを備えたパケット受信装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のパケットは音声データを含むパケットである請求項4記載のパケット受信装置。
【請求項6】
音声データ及び映像データのいずれかを含む第1のパケットと、前記第1のパケットの音声データ又は映像データに対応した映像データ又は音声データを含み、かつ前記第1のパケットに対して時間差を与えた第2のパケットを送信する第1のステップと、
前記第1及び第2のパケットを受信した後前記第1のパケットのデータの欠落を判定し、データ欠落がある場合、そのパケットの再送を要求する第2のステップと、
前記再送を要求されたパケットを送信する第3のステップとを含むパケット伝送方法。
【請求項7】
前記第2のステップにおいて、受信した前記第1及び第2のパケットを一時記憶する請求項6記載のパケット伝送方法。
【請求項8】
前記第1のパケットは音声データを含むパケットである請求項6又は7記載のパケット伝送方法。
【請求項9】
音声データ及び映像データのいずれかを含む第1のパケットと、前記第1のパケットの音声データ又は映像データに対応した映像データ又は音声データを含み、かつ前記第1のパケットに対し時間差を与えた第2のパケットとを受信し、ならびに前記第1のパケットのデータ欠落を判定し、データ欠落がある場合、そのパケットの再送を要求する受信手段と、
前記受信手段で受信した前記第1及び第2のパケットを一時記憶する第1及び第2のバッファと、
前記第1及び第2のバッファに一時記憶されたパケットに含まれる音声データ又は映像データをデコードするデコード手段とを備えたパケット受信装置。
【請求項10】
前記第1のパケットは音声データを含むパケットである請求項9記載のパケット受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−319463(P2006−319463A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137655(P2005−137655)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】