説明

パケット通信システム

【課題】 無線によるパケット通信システムにおいて,良好な伝送特性を得るために適切なフレーム長を決定する際,通信状況をモニターしている観察者等が推測して決定するのではなく,自動的に適切なフレーム長を決定できるパケット通信システムを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は,無線によるパケット通信システムにおいて,フレームが正常に受信できる受信電界強度の閾値を決定する手段と,前記閾値以上の受信電界強度が連続して保持される時間を求める計時手段と,前記閾値以上の受信電界強度が連続して保持される時間に基づいて,フレーム長を決定する手段と,を備えたことを特徴とするパケット通信システムを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,無線によるパケット通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線によるパケット通信では,データの集まりであるパケットをフレームに形成して電波として送受信する。この無線によるパケット通信では,フェージングによって,信号強度が大きく通信状態が良好なときと,逆に信号強度が小さく通信状態が悪いときが周期的に存在する場合,フレームの長さが伝送特性に大きく影響する。つまり,フェージングによる信号強度の小さいときが現れる平均的な周期に比べて,フレームの長さが長ければ,1つのフレームを送る間に必ず一度は信号強度が小さいときに遭遇することになり,そのときにフレームがエラーとなってしまう。一方,フレームの長さが短いと,1つのフレーム当たりの情報量は少なくなるが,信号強度が小さいときに遭遇しないフレームの数が増えて,通信が可能となる。
したがって,フェージング等による信号強度の周期的な変化が存在する場合は,フレームの長さによってエラーの発生率が変化するので,良好な伝送特性を得るためには,フレームの長さを調整することが有効な手段となり得る。
【0003】
上記したような良好な伝送特性を得るためにフレームの長さを調整する目的で,無線による信号の受信電界強度の波形と,フレームの時間長およびフレームの正誤とをグラフ化して1つの時間軸上に同時に表示することができるモニターが,特開2001−339473号広報(特許文献1)や米国特開2001−046222号広報(特許文献2)に提案されている。
このモニターによれば,フレームの時間長およびエラー発生状況と,受信電界強度とを時系列にビジュアル化してみることができる。したがって,フレームがエラーになる受信電界強度のレベルや,受信電界強度の大きいときと小さいときの平均的な周期を認識し,この周期に基づいて適切なフレーム長を推測することが可能である。
【特許文献1】特開2001−339473号広報
【特許文献2】米国特開2001−046222号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したモニターによれば,フレームがエラーになる受信電界強度のレベルや,受信電界強度の大きいときと小さいときの平均的な周期を認識できるので,適切なフレーム長を推測することが可能である。しかし,上述したモニターでは,適切なフレーム長の決定は自動的には行われず,モニターの観察者が推測して決定しなくてはならないという課題があった。
本発明は,このような課題に鑑みてなされたものであり,無線によるパケット通信システムにおいて,良好な伝送特性を得るために適切なフレーム長を決定する際,自動的に適切なフレーム長を決定できるパケット通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために,本発明は,無線によるパケット通信システムにおいて,フレームが正常に受信できる受信電界強度の閾値を決定する手段と,前記閾値以上の受信電界強度が連続して保持される時間を求める計時手段と,前記閾値以上の受信電界強度が連続して保持される時間に基づいて,フレーム長を決定する手段と,を備えたことを特徴とするパケット通信システムを提供するものである。
【0006】
また,上記パケット通信システムは,フェージングによってエラーとなったエラーフレームの受信開始から,フェージングによって最初にエラーとなったエラーバイトまたはエラービットを検出する手段と,前記エラーフレームの受信開始から前記エラーバイトまたは前記エラービットを受信する直前までの間における最小受信電界強度値を前記閾値に決定する手段と,を備えることができる。
または,上記パケット通信システムは,フェージングによってエラーとなったエラーフレームを検出する手段と,前記エラーフレームの受信開始から受信終了までの間において,正常バイトを受信している間における最小受信電界強度値を前記閾値に決定する手段と,を備えることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるパケット通信システムによれば,フレームが正常に受信できる閾値以上の受信電界強度が連続して保持される時間を検出し,この検出された時間に基づいて,自動的に適切なフレーム長を決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に,添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
まず,本発明の第1の実施形態を,図面を参照して説明する。
図1は,本発明によるパケット通信システム全体の構成を示すブロック図である。すなわち,本発明によるパケット通信システムは無線回線を制御する無線部1と,信号を制御する信号制御部2と,コンピュータ7と,モニター8とを備えている。このパケット通信システムにおいて使用する通信プロトコルは,例えばHDLC(ハイレベルデータリンク制御手順:High level Data Link Control procedures)のようなフレーム同期方式である。また,送信側と受信側の通信速度は一致している。
【0010】
前記パケット通信システムにおいて,無線部1は無線による信号を受信する手段を有する受信部1aと,無線による信号を送信する手段を有する送信部1bとを備えている。信号制御部2はモデム3と,フレーム処理部6とを含むものであり,モデム3は復調器4と,変調器5とを備えており,フレーム処理部6は例えばPAD(Packet Assembly Disassembly)のようなフレーム組立・分解手段(図示せず)と,フレーム検査手段(図示せず)と,フレーム制御手段(図示せず)とを備えている。図2はモニター8の構成を示すブロック図である。図2に示すように,モニター8は電界強度検出器21,フラグ検出器22,フレーム判定器23,制御回路(D)24,制御回路(E)25,カウンタ26,メモリ27,28,29を備えている。
【0011】
図3は本発明のパケット通信システムで使用するフレームの一例を示す図である。図3に示すように,情報を送るIフレーム(情報フレーム:Information Frame)31は,開始フラグ,アドレス,制御,PID(パケット識別子:Pachet IDentifier),情報,FCS(フレームチェックシーケンス:Frame Check Sequence),終了フラグからなり,情報は可変長である。一般に,パケットはIフレーム31において,情報の部分を意味する。
なお,該パケット通信システムにおいては,データの透過性は保証されており,フレームチェックシーケンスに採用する誤り検出符号はCRC(巡回冗長検査符号方式:Cyclic Redundancy Check character)等を用いる。
【0012】
次に,本発明によるパケット通信システムによって,適切なフレーム長を自動的に決定する動作について説明する。
まず,送信側のパケット通信システムにおいて,コンピュータ7に入力されたデータはフレーム処理部6によってフレームに組み立てられた後,変調器5によって変調され,送信部1bによって無線で送信される。
無線によって送信されたフレームの信号は,受信側のパケット通信システムの受信部1aによって受信される。そこで,信号が受信されている間の受信電界強度Sが,電界強度検出器21によって,所定のサンプリング間隔で測定され,ディジタル値として検出される。そして,受信電界強度Sと,受信電界強度Sが検出された時刻におけるカウンタ26のカウント値C1とが制御回路(D)24によって連続的にメモリ27に記録される。ここで,カウンタ26は,所定の時間毎に所定のカウント数を増加していくような時計手段を備えているクロックカウンタであり,カウンタ26が出力するカウント値は時間または時刻を示す。例えば,一定の時間毎にカウンタ26のカウント値が1ずつ増加し,このカウント値が1ずつ増加するタイミングで受信電界強度Sが検出されると,メモリ27に記録されるデータは図4に示すテーブル41のようになる。
【0013】
また,電界強度検出器21は,受信電界強度Sの値が閾値Sk以上か未満かを判定し,受信電界強度Sが閾値Sk未満から以上になった時のカウンタ26のカウント値C2と,閾値Sk以上から未満になった時のカウンタ26のカウント値C3とをメモリ27に記録する(図4のテーブル42参照)。ここで,閾値Skは,フレームが正常に受信できる最小受信電界強度であり,この閾値Skを決定する方法は後述する。
メモリ27に記録されたデータはコンピュータ7の記憶装置に転送される。
コンピュータ7は記憶装置に転送されたテーブル42のデータに基づいて,フレームが正常に受信できる閾値Sk以上の受信電界強度が連続して保持される時間を算出する。すなわち,式1に示すように,カウント値C3からカウント値C2を引いて得られた値が,フレームが正常に受信できる受信電界強度が連続して保持される時間T1とみなされる。
T1=C3−C2 ・・・・・(式1)
次に,コンピュータ7は,算出された複数の時間T1の平均値を求め,この時間T1の平均値より短い時間長となるようにフレーム長を決定する。例えば,式2に示すように,時間T1の平均値を10で割った値をフレーム長L1とする。

フレーム長L1は,フェージングによって信号強度が小さくなる周期の平均値に対して十分短いため,通信を可能とするために適切なフレーム長となる。このフレーム長L1は時間長であるが,例えばこれがバイト長又はビット長に変換され,このバイト長又はビット長の情報が送信側にフィードバックされて,以降の通信のフレーム長として設定される。
【0014】
次に閾値Skの決定方法について説明する。
上述した通り,無線によって送信されたフレームの信号が受信側のパケット通信システムにおいて受信されると,信号が受信されている間の受信電界強度Sと,この受信電界強度Sが検出されたときのカウント値C1とが時系列に連続的にメモリ27に記録される。一方,フラグ検出器22は,フレームの信号が復調器4によってディジタル復調されたシリアルデータを逐次フレーム同期制御を行いながら取り込み,フレームの開始フラグと終了フラグとを検出する。制御回路(E)25は,フラグ検出器22がフレームの開始フラグを検出した時刻と,フレームの終了フラグを検出した時刻とを,夫々,カウンタ26のカウント値として検出する。さらに制御回路(E)25は,前記カウント値に基づいて,フレーム受信開始時刻を示すカウント値C4と,フレーム受信終了時刻を示すカウント値C5とをメモリ28に記録する(図4のテーブル43参照)。また,フレーム判定器23は,フレーム処理部6で行われたフレームの検査結果に基づき,フレーム到着番号rと,フレームが正常であるかエラーであるかを示す正誤データN(r)と,フレームの内容全てを含むフレームデータF(r)とをメモリ29に記録する(図4のテーブル44参照)。なお,正誤データN(r)は,例えば正常を“0”,エラーを“1”で表す。
そして,メモリ27,メモリ28及びメモリ29に記録されたデータはコンピュータ7の記憶装置に転送される。
【0015】
コンピュータ7は記憶装置に転送されたフレームの正誤データN(r)からエラーフレームを検出し,そのエラーフレームに対して再送された正常な再送フレームを検出する。次に,コンピュータ7は,フレームデータF(r)に基づいて,エラーフレームと,正常な再送フレームとを比較して,エラーフレームにおけるエラーバイトを特定し,さらにエラーバイトを受信した時刻を求める。エラーバイトを受信した時刻は,以下の手順で求めることができる。
まず,特定されたエラーバイトがフレームの先頭(開始フラグを除く)から数えて何番目のバイトであるかが検出される。すなわち,フレームの先頭から特定されたエラーバイトまでのバイトの数(特定されたエラーバイトを含む)が検出される。なお,フレームの先頭から特定されたエラーバイトまでのバイトの数をエラーバイト番号By(n)と称する。ここで,添え字nは1フレーム毎のエラーバイトの通し番号を示す。
次に,テーブル43(図4参照)とテーブル44(図4参照)とのデータに基づいて,エラーフレームの受信開始時刻であるカウント値C4が検出される。そして,このエラーフレームの受信開始時刻であるカウント値C4と,1バイト当たりの受信時間であるカウント値Tbyと,エラーバイト番号By(n)とに基づいて,式3により,エラーバイトを受信した時刻を示すカウント値Cby(n)が算出される(図5参照)。すなわち,エラーバイト番号By(n)にカウント値Tbyを掛けて,フレーム受信開始からエラーバイトを受信するまでの時間値が得られ,この時間値にカウント値C4を足してカウント値Cby(n)を求めることができる。
ここで,1バイト当たりの受信時間であるカウント値Tbyは,1バイトの信号を受信する時間におけるカウンタ26のカウント増加数である(本実施形態ではTby=8である)。また,カウント値Cby(n)は,エラーバイトを受信した時のカウンタ26が示すカウント値に相当する。
Cby(n)=By(n)×Tby+C4 ・・・・・(式3)
【0016】
上述した方法により,各エラーフレーム毎に,すべてのエラーバイト受信時のカウント値Cby(n)が得られる。そして,各エラーフレーム毎のカウント値C4及びカウント値C5を記録したテーブル45(図4参照)と,各エラーフレーム毎のエラーバイト受信時のカウント値Cby(n)を記録したテーブル46(図4参照)とがコンピュータ7の記憶装置に記憶される。また,各エラーフレーム毎の,1フレーム中のエラーバイト個数BYがコンピュータ7の記憶装置に記憶される。
【0017】
コンピュータ7はテーブル41,テーブル45及びテーブル46のデータに基づいて閾値Skを決定する。第1の実施形態では,エラーフレームの受信開始からエラーバイトを受信する直前までの期間で,正常バイトを受信している間の最小受信電界強度値より,エラーバイトを受信した時の受信電界強度値の方が小さい場合は,該エラーバイトはフェージングが原因によるものと判断する。そして,エラーフレームの受信開始から,フェージングが原因による最初のエラーバイトを受信する直前までの間における最小受信電界強度値を閾値Skとする。
図6のフローチャートAは,本実施形態において,閾値Skを決定する手順を示すフローチャートである。以下に,閾値Skを決定する手順について,フローチャートAを参照して,さらに詳しく説明する。
【0018】
フローチャートAでは,まず始めに,ステップ61において,エラーフレームの受信開始時から最初にエラーになったエラーバイトの受信時刻に相当するカウント値Cby(1)を参照するために,添え字nに1が代入される。次に,ステップ62において,エラーフレームの受信開始時刻に相当するカウント値C4がカウント値tに代入され,ステップ63に進む。ステップ63において,カウント値tのときの受信電界強度S(t)がSminに代入され,ステップ64に進む。
【0019】
次に,ステップ64において,カウント値tがカウント値Tbyだけ増加して,ステップ65に進み,カウント値tとカウント値Cby(n)とが比較される。カウント値tがカウント値Cby(n)より小さい場合は,Sminと,カウント値tのときの受信電界強度S(t)とが比較される(ステップ66)。その結果,SminがS(t)以下である場合は,直接ステップ64に戻り,SminがS(t)以下でない場合は,ステップ67に進み,S(t)がSminに代入されて,ステップ64に戻る。カウント値tがカウント値Cby(n)より小さい間はステップ64からステップ67までが繰り返される。このようにして,エラーフレームの受信開始時刻(カウント値C4)からエラーフレームのエラーバイト受信時刻(カウント値Cby(n))になる直前までの期間における最小受信電界強度値Sminが検出される。
【0020】
ステップ65において,カウント値tがカウント値Cby(n)に達した場合は,そのときのカウント値t(エラーバイト受信時刻に等しい)における受信電界強度S(t)と,該カウント値tの直前までにおける最小受信電界強度値Sminとが比較される(ステップ68)。ステップ68において,SminがS(t)以下でない場合は,最小受信電界強度値Sminが閾値Skに代入される(ステップ69)。すなわち,該カウント値tの時に受信したエラーバイトは,エラーフレームの受信開始から,フェージングが原因による最初のエラーバイトであると判断され,エラーフレームの受信開始から,このエラーバイトを受信した時刻(カウント値Cby(n))になる直前までの期間における最小受信電界強度値Sminが,信号が正常に受信できる限界の受信電界強度である閾値Skに決定される。
また,SminがS(t)以下である場合は,該カウント値tの時に受信したエラーバイトはフェージング以外の原因によるエラーとみなされ,正常バイトと同様に処理される。そして,ステップ70において,添え字nが1だけ増加し,次のエラーバイトのカウント値Cby(n)が参照される。
【0021】
以上のステップが,閾値Skが決定されるまで繰り返される。nが,1フレーム中のエラーバイト個数BYを超えるまでに閾値Skが決定されない場合は,該エラーフレームには,フェージングが原因によるエラーは無いと判断され,次のエラーフレームが参照される(ステップ71〜ステップ72)。
以上の手順によって,閾値Skが決定される。なお,上述した第1の実施形態のフローチャートAでは,1つの閾値Skが決定されて終了するが,複数のエラーフレームから複数の閾値Skを求めるようにしてもよい。その場合,これら複数の閾値Skの最大値,最小値,平均値等のいずれかの値を最終的な閾値Skに決定することが可能である。
【0022】
上述した手順によって,適切なフレーム長を自動的に決定することができる。すなわち,フレームがフェージングによってエラーとならない最小レベルの受信電界強度を閾値Skとして決定し,この閾値Sk以上の受信電界強度が連続して保持される時間に基づいて,自動的に適切なフレーム長を決定することができる。
【0023】
(第2の実施形態)
第1の実施形態における閾値Skを決定する手順は,バイト単位に処理するものであるが,これらをすべてビット単位で処理することも可能である。すなわち,第1の実施形態では,エラーをバイト単位で処理したが,エラーをビット単位で処理したデータに基づいて,閾値Skを決定することができる。
【0024】
以下に,閾値Skを決定する手順において,ビット単位で処理する第2の実施形態を説明する。
コンピュータ7は,フレームデータF(r)に基づいて,エラーフレームと,正常な再送フレームとを比較して,エラーフレームにおけるエラービットを特定し,さらにエラービットを受信した時刻を求める。エラービットを受信した時刻は,以下の手順で求めることができる。
まず,特定されたエラービットがフレームの先頭(開始フラグを除く)から何番目のビットであるかが検出される。すなわち,フレームの先頭から特定されたエラービットまでのビットの数(特定されたエラービットを含む)が検出される。なお,フレームの先頭から特定されたエラービットまでのビットの数をエラービット番号B(n)と称する。ここで,添え字nは1フレーム毎のエラービットの通し番号を示す。次に,テーブル43(図4参照)とテーブル44(図4参照)とのデータに基づいて,エラーフレームの受信開始時刻であるカウント値C4が検出される。そして,このエラーフレームのフレーム受信開始時刻であるカウント値C4と,1ビット当たりの受信時間であるカウント値Tbと,エラービット番号B(n)とに基づいて,式4により,エラービットを受信した時刻を示すカウント値Cb(n)が算出される(図5参照)。すなわち,エラービット番号B(n)にカウント値Tbを掛けて,エラーフレームの先頭からエラービットまでの時間値が得られ,この時間値にカウント値C4を足してエラービットを受信した時刻を示すカウント値Cb(n)を求めることができる。
ここで,1ビット当たりの受信時間であるカウント値Tbは,1ビットの信号を受信する時間におけるカウンタ26のカウント増加数である(本実施形態ではTb=1である)。また,カウント値Cb(n)は,エラービットを受信した時のカウンタ26が示すカウント値に相当する。
Cb(n)=B(n)×Tb+C4 ・・・・・(式4)
【0025】
上述した方法により,各エラーフレーム毎に,すべてのエラービット受信時のカウント値Cb(n)が得られ,コンピュータ7の記憶装置に記憶される(図4のテーブル47参照)。また,各エラーフレーム毎の,1フレーム中のエラービット個数BNがコンピュータ7の記憶装置に記憶される。
コンピュータ7は,テーブル41,テーブル45及びテーブル47のデータに基づいて,フローチャートAに示した手順によって閾値Skを決定する。ビット単位で処理する場合は,フローチャートAにおけるステップ64の“t←t+Tby”は“t←t+Tb”に置き換え,ステップ65の“t<Cby(n)”は“t<Cb(n)”に置き換え,ステップ71の“n>BY”は“n>BN”に置き換える。
【0026】
(第3の実施形態)
次に,第1の実施形態の閾値Skを決定する方法において,別の方法を用いた第3の実施形態を説明する。第3の実施形態では,エラーフレームの受信開始から受信終了までの間で,正常バイトを受信している間における最小受信電界強度値と,エラーバイトを受信している間における最小受信電界強度値とが比較される。比較した結果,エラーバイトを受信している間における最小受信電界強度値の方が正常バイトを受信している間における最小受信電界強度値より小さい場合は,エラーフレーム中に,フェージングによるエラーが存在すると判断される。そして,正常バイトを受信している間における最小受信電界強度値が閾値Skに決定される。
以下に,第3の実施形態の閾値Skを決定する方法について,フローチャートB(図7参照),フローチャートC(図8参照)及びフローチャートD(図9参照)を参照して,さらに詳しく説明する。
【0027】
図7のフローチャートBは,エラーフレーム中の正常バイト受信期間における最小受信電界強度値Sminを検出する手順を示すフローチャートである。このフローチャートBの流れを以下に説明する。フローチャートBでは,まず始めに,ステップ81において,エラーフレームの最初のエラーバイトを参照するために添え字nに1が代入される。次に,ステップ82において,エラーフレームの受信開始時刻に相当するカウント値C4がカウント値tに代入され,ステップ83に進む。ステップ83において,カウント値tのときの受信電界強度S(t)がSminに代入され,ステップ84に進む。
【0028】
ステップ84において,カウント値tがカウント値Tbyだけ増加し,ステップ85に進み,カウント値tとカウント値Cby(n)とが比較される。カウント値tがカウント値Cby(n)より小さい場合は,Sminと,カウント値tのときの受信電界強度S(t)とが比較される(ステップ86)。ステップ86において,SminがS(t)以下である場合は,直接ステップ84に戻り,SminがS(t)以下でない場合は,ステップ87に進み,カウント値tのときの受信電界強度S(t)がSminに代入されて,ステップ84に戻る。
【0029】
ステップ85において,カウント値tがカウント値Cby(n)に達した場合は,nがBY(1フレーム中のエラーバイト個数)と等しいか判定される(ステップ88)。nがBYと等しくない場合は,ステップ89において,nが1ずつ増加しながら,nがBYに等しくなるまで,ステップ84からステップ89までが繰り返される。
【0030】
ステップ88において,nがBYと等しくなった場合はステップ90に進み,カウント値tがカウント値Tbyだけ増加してからステップ91に進む。ステップ91において,カウント値tと,エラーフレームの受信終了時刻に相当するカウント値C5とが比較される。カウント値tがカウント値C5以下である場合は,Sminと,カウント値tのときの受信電界強度S(t)とが比較される(ステップ92)。ステップ92において,SminがS(t)以下である場合は,直接ステップ90に戻り,SminがS(t)以下でない場合は,ステップ93に進み,カウント値tのときの受信電界強度S(t)がSminに代入されて,ステップ90に戻る。カウント値tがカウント値C5に達するまで,ステップ90からステップ93までが繰り返される。
【0031】
上記したフローチャートBの流れに従って,エラーフレーム中の正常バイト受信期間における最小受信電界強度値Sminが検出される。ステップ91において,カウント値tがカウント値C5を超えた場合は,フロチャートC(図8参照)のステップ94に進む。
【0032】
図8のフローチャートCは,エラーフレーム中のエラーバイト受信期間における最小受信電界強度値SEminを検出する手順を示すフローチャートである。このフローチャートCの流れを以下に説明する。
【0033】
フローチャートCでは,まず始めに,ステップ94において,エラーフレームの最初のエラーバイト受信時刻に相当するカウント値Cby(1)を参照するために,添え字nに1が代入される。ステップ95において,このカウント値Cby(n)がカウント値tに代入され,ステップ96に進み,カウント値tのときの受信電界強度S(t)がSEminに代入される。
次に,ステップ97において,nが1だけ増加し,ステップ98に進み,nとBYとが比較される。nがBYより大きくない場合は,ステップ99に進み,カウント値Cby(n)がカウント値tに代入される。次にステップ100に進み,SEminと,カウント値tのときの受信電界強度S(t)とが比較される。SEminがS(t)以下である場合は,直接ステップ97に戻り,SEminがS(t)以下でない場合は,ステップ101に進み,カウント値tのときの受信電界強度S(t)がSEminに代入されて,ステップ97に戻る。
【0034】
上記したフローチャートCの流れに従って,エラーフレーム中のエラーバイト受信期間における最小受信電界強度値SEminが検出される。ステップ98において,nがBYより大きくなった場合は,フローチャートD(図9参照)のステップ102に進む。
【0035】
図9のフローチャートDは,エラーバイトを受信していた期間における最小受信電界強度値SEminと,正常バイトを受信していた期間における最小受信電界強度値Sminとに基づき,閾値Skを決定する処理の流れを示すフローチャートである。フローチャートDのステップ102では,SEminとSminとが比較される。SEminがSminより小さい場合は,エラーフレームにはフェージングによって発生したエラーバイトが存在すると判断され,Sminが閾値Skに代入される(ステップ103)。また,SEminがSminより小さくない場合は,エラーフレームにはフェージングによって発生したエラーバイトは存在しないと判断され,次のエラーフレームが参照される(ステップ104)。以上のステップが,閾値Skが決定されるまで繰り返される。
なお,上述した第3の実施形態のフローチャートでは1つの閾値Skが決定されて終了するが,複数のエラーフレームから複数の閾値Skを求めるようにしてもよい。その場合,これら複数の閾値Skの最大値,最小値,平均値等のいずれかの値を最終的な閾値Skに決定することが可能である。
【0036】
図10は,受信電界強度の閾値と,受信電界強度と,フレームのエラーとの関係を示す図である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による一実施形態の全体の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明におけるパケット通信システムのモニター部分の一実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明において使用するフレーム構成の一例を示す図である。
【図4】本発明において各データを記録したテーブルの例を示す図である。
【図5】エラーフレームにおいてエラーバイトおよびエラービットを受信したときのカウント値を算出する方法の説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態において閾値Skを決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態において正常バイトの受信期間における最小受信電界強度値Sminを検出する処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態においてエラーバイトの受信期間における最小受信電界強度値SEminを検出する処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態において,SEminとSminとに基づき,閾値Skを決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】受信電界強度と,受信電界強度の閾値と,フレームのエラーとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1:無線部,1a:受信部,1b:送信部,2:信号制御部,3:モデム
4:復調器,5:変調器,6:フレーム処理部,7:コンピュータ
8:モニター
21:電界強度検出器,22:フラグ検出器,23:フレーム判定器
24:制御回路(D),25:制御回路(E),26:カウンタ(時計カウンタ)
27,28,29:メモリ,31:Iフレーム
41,42,43,44,45,46,47:コンピュータの記憶装置に記憶されたテーブル例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線によるパケット通信システムにおいて,
フレームが正常に受信できる受信電界強度の閾値を決定する手段と,前記閾値以上の受信電界強度が連続して保持される時間を求める計時手段と,
前記閾値以上の受信電界強度が連続して保持される時間に基づいて,フレーム長を決定する手段と,を備えたことを特徴とするパケット通信システム。
【請求項2】
フェージングによってエラーとなったエラーフレームの受信開始から,フェージングによって最初にエラーとなったエラーバイトまたはエラービットを検出する手段と,前記エラーフレームの受信開始から前記エラーバイトまたは前記エラービットを受信する直前までの間における最小受信電界強度値を前記閾値に決定する手段と,を備えたことを特徴とする請求項1に記載のパケット通信システム。
【請求項3】
フェージングによってエラーとなったエラーフレームを検出する手段と,前記エラーフレームの受信開始から受信終了までの間において,正常バイトを受信している間における最小受信電界強度値を前記閾値に決定する手段と,を備えたことを特徴とする請求項1に記載のパケット通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−130923(P2009−130923A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329309(P2007−329309)
【出願日】平成19年11月24日(2007.11.24)
【出願人】(500200306)
【Fターム(参考)】