説明

パターン化有機薄膜の堆積方法および堆積システム

比較的短い遅延時間での堆積を可能にするために、異なる伝導率を有する多数の流路を使用しうる高−スループットOVJPシステムおよび方法が提供される。高−スループットOVJPシステムが、堆積の間にソース材料が排出されうる1つまたはそれ以上の開口の直径よりも極めて大きな断面積を有する流管を含みうる。このような構造の使用により、低減された遅延時間での堆積が可能になりうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜の堆積に関するものであり、より具体的には、低減された遅延時間および/または増加された堆積効率を有する有機薄膜の堆積方法および堆積システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用するオプトエレクトロニクスデバイスが、多くの理由により、益々望ましいものとなってきている。このようなデバイスを製造するために使用される多くの材料が、比較的に安価であり、有機オプトエレクトロニクスデバイスが、無機デバイスに勝るコスト優位性に関する可能性を有する。さらに、それらの柔軟性等の有機材料の本来備わっている特性が、それらを、柔軟性基板上における製造等の特定の用途に特に適したものとしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例は、有機発光デバイス(OLED)、有機フォトトランジスタ、有機光電池、および有機光検出器を含む。OLEDにおいて、有機材料が、従来の材料に勝る性能の利点を有しうる。例えば、有機放出層が光を放出する波長が、通常、適当なドーパントを用いて、容易に調整されうる。
【0003】
OLEDは、デバイスにわたって電圧が印加された場合に光を放出する薄い有機膜を使用する。フラットパネルディスプレイ、照明、およびバックライト等の用途における使用に対し、OLEDは、ますます興味深い技術となっている。いくつかのOLED材料および構造が、参照によりそれらの全体が本願明細書に組み込まれる特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
燐光放出分子に対する1つの用途が、フルカラーディスプレイである。このようなディスプレイに対する工業規格が、“飽和”色と称される特定の色を放出するように適合されたピクセルを必要とする。具体的には、これらの規格が、飽和赤色、緑色、および青色ピクセルを必要とする。色は、当業界において周知であるCIE座標を使用して測定されうる。
【0005】
本願明細書において使用されるものとして、“有機”との用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製造するために使用されうる小分子有機材料および高分子材料を含む。“小分子(small molecule)”とは、高分子ではない任意の有機材料を言い、“小分子(small molecules)”は、実際には、極めて大きなものでありうる。小分子は、いくつかの環境下で、繰り返しの単位を含みうる。例えば、置換基として、長鎖アルキル基を使用することは、“小分子”クラスから分子を除外しない。また、例えば、ポリマー骨格上のペンダント基として、または、該骨格の一部として、小分子が、高分子に組み込まれうる。また、小分子が、デンドリマーの主要な部分(core moiety)として機能してよく、該主要な部分上に設けられた一連の化学的なシェルから構成される。デンドリマーの主要な部分が、蛍光性(fluorescent)または燐光性(phosphorescent)小分子エミッタでありうる。デンドリマーが、“小分子”であってよく、OLEDの分野で現在使用される全てのデンドリマーが、小分子であると考えられる。
【0006】
本願明細書において使用されるものとして、“上部”とは、基板ら最も遠いことを意味し、一方、“底部”とは、基板に最も近いことを意味する。第一層が、第二層“上に配置される”として記載される場合、第一層が、基板からさらに離れて配置される。第一層が、第二層と“接触すること”が規定されない場合、第一および第二層の間に他の層が存在しうる。例えば、その間に様々な有機層が存在するとしても、カソードが、アノード“上に配置される”として記載されうる。
【0007】
OLEDについてのさらなる詳細、および上記の定義が、参照によりそれらの全体が本願明細書に組み込まれる特許文献4において見出されることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5844363号明細書
【特許文献2】米国特許第6303238号明細書
【特許文献3】米国特許第5707745号明細書
【特許文献4】米国特許第7279704号明細書
【特許文献5】米国特許第4769292号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0230980
【特許文献7】米国特許第5703436号明細書
【特許文献8】米国特許第6097147号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0174116
【特許文献10】米国特許第5247190号明細書
【特許文献11】米国特許第6091195号明細書
【特許文献12】米国特許第5834893号明細書
【特許文献13】米国特許第6013982号明細書
【特許文献14】米国特許第6087196号明細書
【特許文献15】米国特許第6337102号明細書
【特許文献16】米国特許第7404862号明細書
【特許文献17】米国特許第7431968号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2005/0087131
【特許文献19】米国特許第6294398号明細書
【特許文献20】米国特許第6468819号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第12/729479
【特許文献22】米国特許出願公開第12/729448
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Baldoら、“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”、Nature,vol.395,151−154,1998
【非特許文献2】Baldoら、“Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence”、Appl.Phys.Lett.,vol.75,No.3,4−6(1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
比較的短い遅延時間での堆積を可能にするために、異なる伝導率を有する多数の流路を使用しうる高−スループットOVJPシステムおよび方法が提供される。高−スループットOVJPシステムが、堆積の間にソース材料が排出されうる1つまたはそれ以上の開口の直径よりも極めて大きな断面積を有する流管を含みうる。
【0011】
例えば、高−スループットOVJPデバイスまたはシステムが、第一端部、第二端部、および該第一端部と第二端部との間に配置された少なくとも1つの開口を有する流管等の筐体と、筐体と流体で連結された有機分子のソースと、有機分子のソースと流体で連結されたキャリアガスのソースと、バイパスバルブと、バイパスバルブを介するソースからの第一流路と、少なくとも1つの開口を介するソースからの第二流路と、を備えうる。第二流路が、筐体内の複数の開口を介する有機ソースからの流路でありうる。各開口が、少なくとも5〜10μm、〜約100μmの幅を有しうる。各開口が、約3000μm以下の断面積を有しうる。開口が、約3×10μm〜約3×10μmの総断面積を有しうる。筐体の断面積が、開口の断面積よりも極めて大きく、前記筐体の総断面積の少なくとも約100倍でありうる。バイパスバルブが開放された場合に、第一流路の伝導率が、第二流路の伝導率の少なくとも約100、200、500、1000倍、またはそれ以上であり、すなわち、第一および第二流路間の伝導率比が、100:1、200:1、500:1、1000:1、またはそれ以上でありうる。バイパスバルブが閉鎖された場合に、第一流路の伝導率が、0またはおよそ0でありうる。有機分子のソースが、第二端部よりも、密閉容積の第一端部の近くに配置され、バイパスバルブが、密閉容積の第二端部に配置されうる。1つまたはそれ以上のノズルが、筐体内の少なくとも1つの開口に接続されうる。ノズルの長さが、約0.1cm以上であり、約0.5cm以上であり、または約0.1〜1cmの範囲でありうる。バイパスバルブが開放された場合に、ソースによって製造された有機分子の少なくとも95%若しくはそれ以上、または実質的に全てが、第一流路をたどりうる。バイパスバルブが閉鎖された場合に、ソースによって製造された有機分子の95%若しくはそれ以上、または実質的に全てが、第二流路をたどりうる。システムが、筐体の第二端部と流体で連結された真空ソースを備えうる。システムが、遮断機構を備え、該遮断機構は、該遮断機構が少なくとも1つの開口を覆う第一位置から、少なくとも1つの開口が覆われない第二位置まで移動可能でありうる。遮断機構が、例えば、少なくとも1つのシャッターを備え、各シャッターが、少なくとも1つの開口を覆うように配置されうる。OVJPシステムまたはデバイスが、作動時に、例えば、最大で約1秒または約1分の比較的短い遅延時間を有しうる。
【0012】
OVJPシステムまたはデバイスの操作方法は、キャリアガス流が、バイパスバルブを介するソースからの第一流路を介してソースから有機材料を輸送するように、バイパスバルブを開放するステップであって、バイパスバルブが開放された場合に、第一流路が、第一伝導率を有する、ステップと、キャリアガス流が、少なくとも1つの開口を介するソースからの第二流路を介して有機材料を輸送するように、バイパスバルブを閉鎖するステップであって、第二流路が、第二伝導率を有する、ステップと、を含んでよく、第一伝導率が、第二伝導率の少なくとも約100、200、または500倍である。システムが、上記の任意のまたは全ての機構を有しうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】有機発光デバイスを示す。
【図2】分離電子輸送層を有さない反転有機発光デバイスを示す。
【図3】直径1mmのノズルを使用する試験的な堆積における時間に伴う膜厚のプロットを示す。
【図4A】例示的な高−スループットOVJPシステムの略図を示す。
【図4B】希釈バルブおよび流路を備えた例示的な高−スループットOVJPシステムの略図を示す。
【図5A】充填モードにおける例示的な高−スループットOVJPシステムの略図を示す。
【図5B】堆積モードにおける例示的な高−スループットOVJPシステムの略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
通常、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され、アノードとカソードとに電気的に接続された少なくとも1つの有機層を備える。電流が印加された場合、有機層内に、カソードが電子を注入し、アノードがホールを注入する。注入されたホールおよび電子の各々が、反対に帯電された電極に向かって移動する。電子およびホールが同じ分子上に集まった場合、励起されたエネルギー状態を有する局所的電子−ホールのペアである“励起子”が、形成される。励起子が、光電子放出機構により緩和するとき、光が放出される。いくつかの場合、励起子が、エキシマ―またはエキシプレックス上に局所化されうる。また、熱緩和等の非−放射機構が生じうるが、通常、望ましくないと考えられる。
【0015】
例えば、参照によりそれらの全体が本願明細書に組み込まれる特許文献5において開示されているように、初期のOLEDは、それらの一重項状態から光(“蛍光”)を放出する放射性分子を使用した。通常、蛍光発光が、10ナノ秒未満の時間枠内で生じる。
【0016】
より最近になって、三重項状態から光(“燐光”)を放出する発光材料を有するOLEDが、実証されている。非特許文献1(Baldo−I)および2(Baldo−II)が、参照によりそれらの全体が本願明細書に組み込まれる。参照により込み込まれる特許文献4の第5−6欄に、燐光が、さらに詳細に記載されている。
【0017】
図1が、有機発光デバイス100を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりに描かれていない。デバイス100が、基板110、アノード115、ホール注入層120、ホール輸送層125、電子遮断層130、放出層135、ホール遮断層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を備えうる。カソード160が、第一導電層162および第二導電層164を備える複合カソードである。デバイス100が、上記層を順に堆積することにより製造されうる。これらの様々な層の特性および機能、並びに例示的な材料が、参照により組み込まれる特許文献4の第6−10欄にさらに詳細に記載されている。
【0018】
これらの各層のさらなる例が、入手可能である。例えば、柔軟でおよび透明な基板−アノードの組み合わせが、参照によりその全体が組み込まれる特許文献1に開示されている。p−ドープされたホール輸送層の例が、参照によりその全体が組み込まれる特許文献6に開示されているような、モル比50:1のF−TCNQでドープされたm−MTDATAである。放射性のホスト材料の例が、参照によりその全体が組み込まれるThompsonらの特許文献2に開示されている。n−ドープされた電子輸送層の例が、参照によりその全体が組み込まれる特許文献6に開示されているような、モル比1:1のLiでドープされたBPhenである。参照によりそれらの全体が組み込まれる特許文献3および7が、上を覆う、透明な、電気−伝導性、スパッタ−堆積ITO層を備えたMg:Ag等の金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示する。遮断層の理論および使用が、参照によりそれらの全体が組み込まれる特許文献6および8にさらに詳細に記載されている。注入層の例が、参照によりその全体が組み込まれる特許文献9に提供されている。保護層の記載が、参照によりその全体が組み込まれる特許文献9に見出され得る。
【0019】
図2が、反転したOLED200を示す。このデバイスが、基板210、カソード215、放出層220、ホール輸送層225、およびアノード230を備える。デバイス200が、上記の層を順に堆積することにより製造されうる。最も一般的なOLED構造が、アノード上に堆積されたカソードを備え、デバイス200が、アノード230の下に堆積されたカソード215を備えるため、デバイス200が、“反転した”OLEDと称されうる。デバイス100に関して記載されたそれらと似た材料が、デバイス200の対応する層に使用されうる。図2は、どのようにいくつかの層がデバイス100の構造から除外されうるのかの一例を提供する。
【0020】
図1および2に図示された単純な積層構造が、非−制限的な例として提供され、本発明の実施形態が、幅広い様々な他の構造と関連して使用されうると理解される。上記の特定の材料および構造が、事実上は例示的なものであり、他の材料および構造が使用されうる。実用的なOLEDが、異なる方法で、上記の様々な層を組み合わせることにより達成されうる、または、設計、性能、およびコスト要因に基づいて、層が、全体に除外されうる。また、具体的に記載されていない他の層が、含まれうる。具体的に記載されたそれら以外の材料が、使用されうる。本願明細書において提供された多くの例が、単一の材料を含むものとして様々な層を説明しているが、ホストおよびドーパントの混合物、またはさらに一般的な混合物等の材料の組み合わせが使用されうることが理解される。また、層が、様々な副層を有しうる。本願明細書において様々な層に与えられた名前が、厳密に制限されることが意図されない。例えば、デバイス200において、ホール輸送層225が、ホールを輸送し、放出層内にホールを注入するが、ホール輸送層またはホール注入層として記載されてよい。一実施形態において、OLEDが、カソードとアノードとの間に配置された“有機層”を有するものとして記載されうる。この有機層が、単一の層を備え、または、例えば、図1および2に関する上記のような異なる有機材料の多層をさらに備えうる。
【0021】
また、参照によりその全体が組み込まれるFriendらによる特許文献10に開示されているような高分子材料(PLED)から成るOLED等の、具体的に記載されていない構造および材料が使用されうる。さらなる例として、単一の有機層を備えたOLEDが、使用されうる。例えば、参照によりその全体が組み込まれるForrestらによる特許文献3に記載されているように、OLEDが積層されうる。OLED構造が、図1および2に図示されている単純な積層構造から逸脱しうる。例えば、参照によりそれらの全体が組み込まれるForrestらによる特許文献11に記載されているようなメサ構造、および/またはBulovicらによる特許文献12に記載されているようなピット構造のように、アウト−カップリングを改善するために傾斜した反射表面を、基板が備えうる。
【0022】
他の規定がない限り、様々な実施形態の任意の層が、任意の適当な方法によって堆積されうる。有機層に対して、好ましい方法が、参照によりそれらの全体が組み込まれる特許文献13および14に記載されているような熱蒸着、インク−ジェット、参照によりその全体が組み込まれるForrestらによる特許文献15に記載されているような有機気相蒸着(OVPD)、および各々が参照によりそれらの全体が組み込まれる特許文献16および17、並びに参照によりその全体が組み込まれるShteinらの特許文献18に記載されているような有機蒸気ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適当な堆積方法が、スピンコーティングおよび他の溶液ベースプロセスを含む。溶液ベースプロセスが、好ましくは、窒素または不活性雰囲気下で実施される。他の層に対して、好ましい方法が、熱蒸着を含む。好ましいパターニング方法が、マスクを介した堆積、参照によりそれらの全体が組み込まれる特許文献19および20に記載されているような冷間圧接、並びにインクジェット、OVJD、および/またはOVJPのような堆積方法のいくつかと関連するパターニングを含む。他の方法が使用されてもよい。堆積される材料は、それらが特定の堆積方法に適合するように修正されうる。
【0023】
OVJP技術が、OLEDまたは他の有機デバイス内の様々な層の堆積を含む様々な用途に使用されうる。いくつかのOVJPシステムは、1)有機材料をるつぼ内で加熱し、それを蒸発させるステップと、2)熱い有機材料上に窒素等の不活性キャリアガスを通過させ、これによって有機蒸気をキャリアガス内に取り込むステップと、および3)有機蒸気を含むキャリアガスを管に流すステップであって、ここで、薄い、横方向にパターン化された有機膜を形成するようにノズルを介して基板上にそれが排出される、ステップと、含む堆積プロセスを使用する。例えば、一連のピクセルまたは他の隆起した形が、基板上に堆積され、基板に平行な面にわたってパターン化されうる。ここで、有機分子を取り込み、輸送しおよび排出するこのプロセスが、準最適なまたは受け入れ難いほど大きな“遅延時間(lag time)”を招くことが分かっている。本願明細書で使用されるものとして、OVJPシステムの“遅延時間”とは、システムが堆積モードまたは構造に第一に配置されたときと、システムが一定若しくは実質的に一定の速度で有機材料を作り出すまたは堆積するために十分な平衡状態に達したときと、の間の遅れを言う。いくつかの構造において、“遅延時間”は、キャリアガスの流速または有機材料の温度が変化したときと、その変化に応じて新たな値でノズルでの堆積速度が安定するときと、の間の遅れと同等でありうる。一般的には、輸送ラインの長さが増加されるにつれて、または、輸送ライン若しくはノズルの直径が低減される場合には、遅延時間が増加しうる。さらにまた、有機材料が、堆積動作の間で分離された(すなわち、2つのバルブ間)場合、比較的高い温度に維持され、その時間の間、ソースチャンバ内の圧力が、ソース温度でのソース材料の蒸気圧と等しくなりうる。堆積するために、バルブが、典型的には低圧である流管に対して素早く開放される。これが、結果として、ソース容器内の急速な圧力低下、有機蒸気の急速な膨張および冷却を生じうる。これが、ノズルからの堆積速度のかなりの過渡状態(transients)を招きうる。
【0024】
これらの望ましくない過渡状態を制限するために、本願明細書に記載されるような高−スループットOVJPシステムが、堆積アウトプットからバイパスシステムへのシステムを介した蒸気の流れの急速な切り替えを可能にする一方、ほとんど過渡状態を生じないかまたは全く過渡状態を生じない。
【0025】
例のように、OVJP技術が、ディスプレイまたは堆積動作あたり多数回、有機材料の流れを開始および停止する必要がありうる高解像度ディスプレイ用等のピクセル構造を堆積するために使用されうる。いくつかの使用が、直径が最大で約30μmまでまたはそれ以下の出口を有するノズル等の比較的小さなノズルを必要とし、または比較的小さなノズルからの利益をうけうる。しかしながら、小さなノズルが、ノズルを介した、従って、OVJP流管を介したガスの流れを著しく制限する場合があり、システムの操作における遅延時間を悪化させる。例えば、図3は、1mmの直径を有するノズルを使用する実験的な堆積における、時間に対する膜厚を示す。図示されているように、比較的大きな1mmの直径のノズルに対してさえ、堆積速度が、容認できるほど高くおよび比較的一定である平衡状態に達するために、システムが、2時間を超える時間を要している。
【0026】
いくつかの場合において、1mm未満の直径のノズルを使用することが望ましいものとなりうる。しかしながら、小さな直径のノズルが、ソースからノズルへの伝導率をさらに減少させ、結果として、システムを高解像度の堆積に効率的でないまたは適切でない状態にしうる比較的極めて長い遅延時間を生じうる。また、小さなノズルが、比較的低いキャリアガス流速を引き起こす場合があり、ガス流に対する有機蒸気の拡散およびソースの二次汚染を許容する。
【0027】
これらの課題を減らすまたはなくすために、有機ソースから1つまたはそれ以上の比較的小さな堆積開口への比較的に極めて高い伝導経路を提供する高−スループットOVJPシステムが使用されうる。高−スループットOVJPシステムの例が、図4Aに示されている。このシステムが、高スループットポンプまたは他の真空ソース415と流体で連結された筐体410を備え、該高スループットポンプまたは他の真空ソース415が、バイパスバルブ450によって筐体410から分離されうる。筐体410が、流管と呼ばれうるが、筐体が、一定若しくは均一な断面を有するまたは円筒状である必要はないと理解されうる。例えば、筐体410に好ましい形状が、半−円筒状断面または実質的に平坦な部分を有する他の断面を有する形状でありうる。ソース435が、筐体410の一端に配置され、バイパスバルブ450が他端に配置されうる。バイパスバルブが、開放時にポンプ415に材料の流れを移動させるまたはこれを可能にし、閉鎖時に、ポンプ415への流れを遮るまたは防ぎうる。ポンプ415が駆動され、ソースバルブ445が開放された場合に、ソース分子を1つまたはそれ以上のソース435から輸送させうる質量流量コントローラー430を介して流れるキャリアガスが、筐体410を流れうる。また、筐体410を介して流れるキャリアガスを制御するために、システムが、1つまたはそれ以上の質量流量コントローラー430を備えうる。筐体410が、1つまたはそれ以上の比較的小さな開口420を有し、これを介して、ソース材料が、基板上の堆積のために排出されうる。開口が、比較的小さく、例えば、直径若しくは幅が最大で約5〜10μmであり、または、面積が最大で約18〜75μmでありうる。通常、各開口が、約5〜約100μmの範囲の幅を有しうる。丸または円形の開口が使用される場合等には、幅が直径であり、正方形または長方形の開口が使用される場合等には、幅が、開口の最長のまたは他の寸法でありうる。好ましい構造において、筐体410は、開口が配置される平坦または実質的に平坦な部分を有し、有機材料が堆積されることになる基板に平行に配置されうる。開口420が、開口の直線配列を有することが好ましいが、これは、このような構造により、材料の2次元配列の堆積において基板が開口に対して移動されることが可能となりうるためである。直線状に図示されているが、筐体410が、曲線状、直線状、またはそれらの任意の組み合わせでありうることが、当業者によって理解されうる。基板に最も近い筐体410の部分が、基板に実質的に若しくは完全に平行である、および/または実質的に若しくは完全に平面的であることが好ましいものとなりうる。流管が、様々な断面を有しうるが、開口420を含む端部が、実質的に平坦であることが好ましいものとなりうる。開口420を含む領域内に、筐体410が、比較的薄い壁を有する部分を備えうる。集められるまたはリサイクルのためにシステム内に戻される過度の有機材料を集めるために、冷却板455または他の冷却された表面が、バイパスバルブとポンプとの間に配置されうる。
【0028】
図4Bが、希釈バルブ440および質量流量コントローラー425によって制御されるガス入口を含む高−スループットOVJPシステムの他の例を示す。希釈バルブ440が、流管410中のキャリアガスの流れ中のソース材料の濃度を制御するために使用され、ソース制御バルブ445と同時に操作されうる。本願明細書に記載のように、特に別の指示がない限り、希釈質量体積コントローラー425および希釈バルブ440を含むシステムの希釈ブランチが、ソース流の操作と同時にまたは、ソース流の操作を強化するために操作され、または全体的に除外されうると理解される。
【0029】
図4Aおよび4Bに図示された例示的なシステム等の高−スループットOVJPシステムを操作する方法が、ポンプ415を駆動するステップ、並びにバイパスバルブ450およびソースバルブ445を開放するステップを含みうる。この構造において、バイパスバルブ450を介したソース435からの流路が、1つまたはそれ以上の開口420を介したソースからの流路よりも、極めて高い伝導率を有し、従って、比較的極めてわずかな材料が開口420を流れうるか、好ましくは実質的に材料が開口420を流れないまたは全く材料が流れえない。キャリアガスおよび輸送された蒸気が、ソースバルブ445およびバイパスバルブ450を介して流管410を横切りうる。次に、バイパスバルブ450が閉じられ、キャリアガスおよび輸送された材料が、開口420を介した流路に流され、その後、材料が、基板上に堆積されうる。以下においてさらに詳細に記載されるように、バイパスバルブ450が開放された場合、バイパスバルブを介したソースからの流路の伝導率が、開口を介したソースからの流路の伝導率よりも極めて大きくなりうる。ソース−バイパスバルブ流路の伝導率が、ソース−開口流路の伝導率の少なくとも100、200、500、または1000倍となりうる。結果として、バイパスバルブが開放された場合に、キャリアガスおよびソース材料が、開口をほとんど流れないまたは全く流れない。好ましくは、バイパスバルブが開放された場合、ソースによって製造されたおよび/またはキャリアガスによって輸送された有機分子の少なくとも約95%の、さらに好ましくは実質的に全てのまたは約100%が、バイパスバルブを介した流路をたどる。同様に、バイパスバルブが閉鎖された場合、輸送された有機分子の好ましくは少なくとも約95%の、さらに好ましくは実質的に全てのまたは約100%が、少なくとも1つの開口を介した流路をたどる。
【0030】
本願明細書において使用されるものとして、“流路”とは、キャリアガス等のガス、およびガスによって輸送されるソース材料の分子等のガスの流れ内で運ばれる他の材料がたどりうる経路を言う。流路は、流路が複数の隣接する開口を介した個々の経路を有するような特定のガス分子または他の物理的に分離されたエンティティが横切りうる多数の特有の経路を有しうる。特定の流路が、関連する伝導率を有し、これは、ガスまたは他の流れが、流路を横切りうることに支障がないことを示す。流路の伝導率は、流路が通過する最小の断面積におおよそ比例しうる。同じ表面内の複数の開口等の、多数の、比較的密集した開口を介した経路を含む流路に対して、開口は、流路が通過する単一の断面積と考えられうる。この場合、流路の伝導率を決定するために、開口の総断面積は、流れが通過する単一の断面積として処理されうる。
【0031】
高−スループットOVJPシステムの操作方法の特定の例が、図5に図示されている。図5Aが、第一の、またはバイパスバルブが開放されかつキャリアガスが流れるバイパスモードの高−スループットOVJPシステムを示す。キャリアガスおよび有機蒸気が、流管を急速に満たし、動的平衡が達成されるまで、バイパスバルブを介してキャリアガスソースおよび有機ソースから流路510(斜線領域)を連続的に横切りうる。バイパスバルブ450と開口420との間の大きな伝導率差のため、材料が、開口をほとんど通過しえないまたは全く通過しえない。この段階の間に、基板が配置され、または開口から離隔され、または、開口を介したキャリアガスおよび有機蒸気の任意の移動を完全に防ぐために、遮断機構が使用されうる。例えば、カバー、シャッター、プラグ、キャップ、または他の機構が、開口上または開口内に配置されることが可能であり、開口を介したガスの流れを完全にブロックし、これによって、堆積をやめさせる。微小機械シャッターが使用されるように、遮断機構が、微小機械部品を含みうる。単一のデバイスが、多数の開口を覆うために使用され、または遮断機構は、その各々が1つまたはそれ以上の開口を覆う多数のデバイスを含みうる。例えば、個々のシャッターが、各開口を覆うために使用され、または単一のキャップまたはシャッターが、多数の開口を覆うために使用されうる。遮断機構が、凝縮を防ぐために加熱されうる。
【0032】
図5Bが、堆積モードで作動中の図5Aに図示されたOVJPシステムを示す。このモードにおいて、バイパスバルブが閉鎖され、有機蒸気およびキャリアガスが、開口420を介してソースから流路520を流れ、その後、ソース材料が、基板上に堆積されうる。流管内において一定のまたは実質的に一定の圧力を維持するために、バイパスバルブが閉鎖された場合にキャリアガスの流速を低減させることが好ましいものとなりうる。
【0033】
他のOVJPシステムとは対照的に、図4および5に示されたような高−スループットOVJPシステムが、流管410と基板上に配置されたノズルとの間等の、長い蒸気配送ラインを除外しうることに留意する。関連するバルブ445を開放すること等により、ソースが、蒸気ストリームに対して第一に開放された場合に、このような蒸気配送ラインが、配送ラインへの蒸気の流れを制限し、望ましくない圧力過渡状態および他の効果を生じうる。
【0034】
図5Aおよび5Bの各々に図示されたような充填モードと堆積モードとの間の切り替えにより、流管が、必要とされる異なる有機材料で満たされ、または“充填され”うる。これにより、例えば、流管と平行で、開口と隣接する方向に基板を移動させることにより、システムが、管内の開口の位置と対応する有機薄膜のラインを堆積することが可能となりうる。
【0035】
いくつかの構造において、1つまたはそれ以上のノズルが、1つまたはそれ以上の開口420に取り付けられうる。本願明細書において使用されるものとして、“ノズル”とは、それが1つまたはそれ以上の開口420を出た後で、材料の流れを案内し、誘導し、または他の方法で制御する機構を言う。例えば、ノズルが、開口に沿った比較的短い管でありうる。ノズルが、均一な管のような一定の断面積を有し、または、これが、非均一な断面積を有しうる。例えば、断面積が、流管からの距離に比例して減少しうる。減少した直径および/または断面積を有するノズルが、“テーパーノズル”と称されうる。ノズルは、該ノズルが設置される開口よりも小さな断面積を有し、この場合、ノズル内の領域を含む流路が、ノズルの断面積によって少なくとも部分的に定義されうる。通常、高−スループットOVJPシステム内で使用される各ノズルが、最小の長さを有することが好ましいものとなりうる。本願明細書において使用されるものとして、ノズルの長さとは、ノズルが設置される流管内の開口を出た後に、ノズルを出るために流れが横切らなければならない付加的な距離を言う。本願明細書で記載されるような高−スループットOVJPシステム内で使用されるノズルが、約0.1、0.5cm、または任意の間の長さの最小長さを有しうる。通常、付加的な遅延時間を招かないように、ノズルが十分に短いことが好ましいものとなりうる。例えば、ノズルが、最大で約1cmであることが好ましいものとなりうる。いくつかの構造において、ノズルが、ノズルの直径の約10倍よりも長くないことが好ましいものとなりうる。様々な組み合わせのノズルが、1つまたはそれ以上の開口とともに使用されうる。例えば、多数の開口が使用される場合、単一のノズルが各開口に設置され、または、ノズルを介した流路が、多数の開口を介した流路を含みうるように、ノズルが1つまたはそれ以上の開口に設置されうる。いくつかの構造において、2010年3月23日に出願されたタイトルが“Compact Organic Vapor Jet Printing Print Head”である特許文献21および2010年3月23日に出願されたタイトルが“Nozzle Geometry for Organic Vapor Jet Printing”である特許文献22に記載されたそれらのようなノズルおよびノズル構造が使用されうる。これらの各出願の開示が、参照により、その全体が本願明細書に組み込まれる。
【0036】
ソースから堆積領域への有機蒸気の輸送の速度が遅いために実質的な遅延を有しうる他のOVJPシステムとは対照的に、本願明細書に記載されたような高−スループットOVJPシステムが比較的短い遅延時間で操作されうる。本願明細書で記載されるような高−スループットOVJPシステムが、最大で約1分の、好ましくは最大で約1秒の遅延時間を達成しうるが、特定のシステムが使用される特有の構造または用途に応じて、他の遅延時間が許容可能でありうると考えられる。
【0037】
通常、流管が、OVJPシステムの操作空間等の実際の所定の他の物理的制限と同じだけ広いものでありうる。好ましくは、バイパスと堆積流路との間の所望の伝導率の比を維持するために十分な断面積を、流管が有する。例えば、100のノズルのアレイを有し、各々が、約750μmの断面積を有する開口を有するシステムにおいて、約500:1の伝導率の比を維持するために、流管が、約3.75×10μmの断面積を有することが好ましいものとなりうる。他の例として、100の正方形の開口を有し、各々が、約30μmの幅を有する構造において、約500:1の伝導率の比を維持するために、少なくとも約4.5×10μmの断面積を有する流管が使用されうる。1000:1またはそれ以上の伝導率の比も、使用されうる。この例が、実例として提供され、異なる数または異なる大きさのノズルが使用されるような他の構造が使用されうることが理解される。通常、流管が、約1500μmから約5×10μmまたはそれ以上の範囲の断面積を有しうる。特有の例として、1000のラインを有するディスプレイを堆積するように構成されたシステムが、21mmの管と等しい、または、約1150〜1200mmの断面積を有する流管を使用しうる。シリコン若しくはMEMSを使用する他の適当な材料内へのエッチング、マイクロ流体および/または当業者に周知である他の製造スキーム等によって、OVJPシステムの全体構造またはその部分が、小型化されうる。
【0038】
図5A−Bに図示された各モードにおいて、システムによって有機材料アウトプットの濃度を調節するために、希釈バルブが、開放または閉鎖され、希釈ガスが、システム内に提供されうる。特に他の具体的な指示がない限り、希釈ソースおよび関連するバルブの使用が、流れレジームまたは本願明細書において記載されたような異なる流れレジーム間の差への実質的な影響を有さない。本願明細書に記載されたOVJPシステムおよび方法における希釈ソースの通常の使用および操作が、当業者によって容易に理解されうる。
【0039】
本願明細書に記載されるような高−スループットOVJPシステムの様々な部品および部分が、部品上の濃縮を防ぐために加熱されうる。例えば、図4−5を参照すると、ソースバルブ445、バイパスバルブ450、および筐体410のいずれかまたは全てが、加熱されうる。筐体410が、非均一に加熱されてよく、筐体内で温度勾配を形成するように加熱される等である。
【0040】
上記のように、流路が、単一面内の複数の開口を通過しうる。例えば、本願明細書に記載されたような高−スループットOVJPシステムにおいて、流路が、流管内の複数の比較的小さな開口を通過しうる。このような流路の伝導率を推測するまたは計算することを目的として、開口が処理されてよく、単一の開口が、個々の開口の断面積の合計と等しい断面積を有する。通常、開口がより密集しているため、この近似法が、より正確でありうるものであり、開口を介したガスの流れが、実質的に介在する材料によって影響を受けない。
【0041】
図4−5に関して記載された1つまたはそれ以上の開口、およびそれに設置される任意のノズルが、基板上に堆積される有機材料の膜内の所望の特性と適合するまたはこれを生じるように選択された寸法を有しうる。例えば、本願明細書に記載されたようなOVJPシステムが、ディスプレイまたは他の発光デバイス用のピクセル等の、有機膜内の、複数の独立した、物理的に分離された機構を堆積するために使用されうる。開口および結果として生じる機構が、約5〜10μmから約100μmの範囲の幅および直径を有しうる。適当な開口の寸法の特有の例が、5〜100μmの直径を有する円形状開口、5〜100μmの幅を有する正方形開口、並びに5〜100μmの幅および5〜100μmの長さを有する長方形開口を含む。特有の例として、同じまたはおおよそ同じ寸法を有するピクセルを堆積するために、約30×100μmの寸法を有する長方形開口が使用されうる。上記のように、開口を介した経路の伝導率を決定することを目的として、多数の開口が使用され、開口の総断面積と等しいまたはこれに相当する断面積を有する単一の開口としてモデル化されうる。例えば、上記のようにピクセル等の機構を堆積するために多数の開口を使用する場合、線形のまたは2次元のアレイの開口が使用されうる。いくつかの構造において、約100〜1000の開口が使用されうる。特定の構造において、ピクセルまたは他の機構のアレイを堆積するために、30×100μmの寸法を有する100〜1000の開口が使用されうる(従って、約3×10〜3×10μmの総断面積を提供する)。他の寸法が使用されうる。
【0042】
通常、開口を介した伝導率が、“ガス スループット”、すなわち、ガスの体積が、流路を横切る速度の、開口の両側上の領域間の圧力差に対する比としてモデル化されうる。短期的には、ほぼ円形の開口および分子の流れレジーム内の圧力(1未満のクヌーセン数)、伝導率Cが、vAに比例し、vが平均分子速度であり、Aが開口の断面積である。開口の厚さが増加するにつれて、断面積が、伝導率への大きな影響を有する。長期的には、実質的に円形の管および分子の流れ条件、伝導率は、vd/Lに比例し、dが管の直径であり、Lが長さである。本願明細書に記載されたようなOVJPシステムが、典型的には、分子の流れレジーム内で作動するため、流路が通過する最小の断面積が、1つの流路の他の流路に対する相対的な伝導率の信頼性のある指標として使用されうる。従って、高−スループットOVJPシステムが、流管の断面積とアウトプット開口の断面積との間の関係に関して記載されうる。流管が、1つまたはそれ以上の開口の断面積の少なくとも約100倍、さらに好ましくは開口の断面積の少なくとも約200倍、さらに好ましくは少なくとも約500倍である断面積を有することが好ましいものとなりうる。比較目的のため、特定の流路が通過する最小の開口が、流路の伝導率の制限要因として機能しうる。従って、上記のように、本願明細書に記載されたような流路の伝導率とは、流路が通過する最小の開口または開口の組を介した伝導率を言う。対象の他のバルブが、各開口または流路が通過する他の筐体に対して推測または計算された伝導率の平均を言う流路の平均伝導率を有してよく、;計算された伝導率とは、流路の正確にモデル化されまたは計算された伝導率を言う。
【0043】
本発明の実施形態に従って製造されたデバイスが、フラットパネルディスプレイ、コンピューターのモニター、テレビ、ビルボード、屋内若しくは屋外照明および/若しくはシグナル用のライト、警告用ディスプレイ、完全透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)、ラップトップ型コンピューター、デジタルカメラ、カムコーダ、ファインダー、マイクロ−ディスプレイ、乗り物、大面積壁面、シアターまたはスタジアムスクリーン、または標識を含む幅広い様々な消費者製品に組み込まれうる。本発明に従って製造されたデバイスを制御するために、パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含む様々な制御機構が使用されうる。多くのデバイスが、18℃から30℃、さらに好ましくは室温(20〜25℃)等の人間にとって快適な温度範囲での使用を対象とする。
【0044】
本願明細書に記載された材料および構造が、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、有機太陽電池および有機光検出器等の他のオプトエレクトロニクスデバイスが、この材料および構造を利用しうる。さらに一般的には、有機トランジスタ等の有機デバイスが、この材料および構造を利用しうる。
【0045】
本願明細書に記載された様々な実施形態が、例示のみを目的とし、本発明の範囲を制限することが意図されないことが理解される。例えば、本発明の精神から逸脱することなく、本願明細書に記載された多くの材料および構造が、他の材料および構造で置換されうる。従って、当業者には明らかなように、特許請求の範囲に記載されたような本発明が、本願明細書に記載された特定の例および好ましい実施形態のバリエーションを有しうる。本発明がなぜ機能するのかについての様々な理論が制限されることが意図されないということが理解される。
【符号の説明】
【0046】
415 ポンプ
420 開口
425 質量流量コントローラー
430 質量流量コントローラー
435 ソース
440 希釈バルブ
445 ソースバルブ
450 バイパスバルブ
455 冷却板
520 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端部、第二端部、および該第一端部と第二端部との間に配置された少なくとも1つの開口を有する筐体;
前記筐体と流体で連結された有機分子のソース;
前記有機分子のソースと流体で連結されたキャリアガスのソース;
バイパスバルブ;
前記バイパスバルブを介する前記ソースからの第一流路であって、第一伝導率を有する第一流路;並びに
前記少なくとも1つの開口を介する前記ソースからの第二流路であって、第二伝導率を有する第二流路;
を備え、
前記バイパスバルブが開放された場合に、前記第一伝導率が、前記第二伝導率の少なくとも約100倍であることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記バイパスバルブが閉鎖された場合に、前記第一伝導率が、約0であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記有機分子のソースが、前記第二端部よりも、密閉容積の前記第一端部の近くに配置され、
前記バイパスバルブが、密閉容積の前記第二端部に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記バイパスバルブが開放された場合に、前記ソースによって製造された有機分子の少なくとも95%が、前記第一流路をたどることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記バイパスバルブが開放された場合に、前記ソースによって製造された実質的に全ての有機分子が、前記第一流路をたどることを特徴とする請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記バイパスバルブが閉鎖された場合に、前記ソースによって製造された実質的に全ての有機分子が、前記第二流路をたどることを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第一伝導率が、前記第二伝導率の少なくとも200倍であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第一伝導率が、前記第二伝導率の少なくとも500倍であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第一伝導率が、前記第二伝導率の少なくとも1000倍であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの開口に設置された1つまたはそれ以上のノズルをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記1つまたはそれ以上のノズルの各々が、約0.5cm以上の長さを有することを特徴とする請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記1つまたはそれ以上のノズルの各々が、約0.1cm以上の長さを有することを特徴とする請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記1つまたはそれ以上のノズルの各々が、約0.1cm〜約1cmの範囲の長さを有することを特徴とする請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1つの開口が、複数の開口を備え、
前記第二流路が、前記複数の開口を介する前記有機ソースからの流路であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記複数の開口が、約3×10μm〜約3×10μmの範囲の総断面積を有することを特徴とする請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記筐体が、前記複数の開口の総断面積の少なくとも約100倍の断面積を有することを特徴とする請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記開口の各々が、少なくとも約5〜10μmの幅を有することを特徴とする請求項14に記載のデバイス。
【請求項18】
前記開口の各々が、少なくとも約5μm〜約100μmの範囲の幅を有することを特徴とする請求項14に記載のデバイス。
【請求項19】
前記開口の各々が、約3000μm以下の断面積を有することを特徴とする請求項14に記載のデバイス。
【請求項20】
前記筐体の第二端部と流体で連結された真空ソースをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
遮断機構をさらに備え、
前記遮断機構は、該遮断機構が前記少なくとも1つの開口を覆う第一位置から、前記少なくとも1つの開口が覆われない第二位置まで移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
前記遮断機構が、少なくとも1つのシャッターを備え、各シャッターが、少なくとも1つの開口を覆うように配置されたことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記デバイスが、作動時に、最大で約1分の遅延時間を有することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記デバイスが、作動時に、最大で約1秒の遅延時間を有することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
筐体、有機ソース、バイパスバルブ、および前記筐体内のバイパスバルブと有機ソースとの間に配置された少なくとも1つの開口を備えたOVJPシステムの操作方法であって、
キャリアガス流が、前記バイパスバルブを介する前記ソースからの第一流路を介して前記ソースから有機材料を輸送するように、前記バイパスバルブを開放するステップであって、前記バイパスバルブが開放された場合に、前記第一流路が、第一伝導率を有する、ステップ;および
前記キャリアガス流が、前記少なくとも1つの開口を介する前記ソースからの第二流路を介して有機材料を輸送するように、前記バイパスバルブを閉鎖するステップであって、前記第二流路が、第二伝導率を有する、ステップ;
を含み、
前記第一伝導率が、前記第二伝導率の少なくとも約100倍であることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−503978(P2013−503978A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528844(P2012−528844)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/047780
【国際公開番号】WO2011/031631
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(503055897)ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション (61)
【Fターム(参考)】