説明

パターン形成方法、液滴吐出装置、電気光学装置、配向膜形成方法、配向膜装置及び液晶表示装置

【課題】液滴からなるパターンの膜厚均一性を向上させたパターン形成方法、液滴吐出装置、電気光学装置、配向膜形成方法、配向膜形成装置及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】各ノズルNからの液滴Fbの吐出方向Aを、対向基板15の法線に対して傾斜させるとともに、対向基板15の法線方向から見て、対向基板15の搬送方向(X矢印方向)が吐出方向Aと交差するようにした。そして、着弾する液滴Fbの形状を、搬送方向に対して傾斜した長径を有する楕円形状にして、各液滴Fbの長径RLを、液滴Fbの吐出間隔(搬送吐出ピッチWx)を規定する方向に対して傾斜させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法、液滴吐出装置、電気光学装置、配向膜形成方法、配向膜装置及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置や半導体装置の製造工程には、基板上に堆積した膜を所望の形状にパターニングして膜パターンを形成するパターン形成工程が数多く含まれる。
近年、この種のパターン形成工程では、生産性を向上させるために、基板上に吐出した液滴を固化させて自己整合的に膜パターンを形成させるインクジェット法が利用されている。インクジェット法は、液滴形状に対応した膜パターンを基板上に形成できるために、パターニングするためのマスク形成を不要にして、パターン形成工程の工程数を削減させることができる。
【0003】
しかし、インクジェット法を利用して膜パターンを形成させる場合、着弾した液滴が基板表面で濡れ広がらないと、液滴の凹凸形状がパターン形状に反映されて、膜パターンの平坦性や膜厚均一性を損なう虞があった。
【0004】
そこで、こうしたインクジェット法では、従来、着弾した液滴の濡れ広がりを拡大させる提案がなされている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、液滴の吐出方向を基板の法線に対して傾斜させて、吐出する液滴に、基板の接線方向に沿う速度成分を付与している。これによれば、基板の法線方向と吐出方向とのなす角度(傾斜角)分だけ、着弾する液滴を、基板の接線方向に沿って濡れ広がらせることができる。
【特許文献1】特開2005−131498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記インクジェット法では、異なる膜厚の膜パターンを形成する場合、すなわち単位面積当たりの総吐出量を変更する場合、図11に示すように、各液滴Fbの容量を一定に維持させて、液滴Fbの吐出間隔(吐出ピッチW)を増減させている。例えば、薄膜の膜パターンFPを形成する場合には、1滴当りの液滴容量を一定に維持させるとともに、基板Sbの搬送速度を増加させたり、吐出動作の動作周期を長くしたりして、液滴Fbの吐出ピッチWを拡大させる。これによって、液滴吐出動作の安定化を図り、総吐出量の再現性、すなわち薄膜パターンの膜厚再現性を確保させている。
【0006】
しかしながら、基板Sbの法線方向(Z矢印方向)から見て、液滴Fbの吐出方向Aが基板Sbの搬送方向(X矢印方向)と平行になると、着弾する各液滴Fbの形状が、搬送方向(X矢印方向)に沿って延びる長径と、ノズルNの配列方向(Y矢印方向)に沿う短径を有した略楕円形状を呈するようになる。そのため、以下の問題を招いていた。
【0007】
すなわち、吐出方向Aに沿って楕円形状に広がる各液滴Fbは、その厚さが薄いために流動性が低くなる。そして、短径方向(Y矢印方向)での接合が浅くなり、隣接するノズルN間に相対する領域で、液滴Fbのない部分(凹部B)を形成するようになる。その結果、膜パターンFPは、凹部Bに対応する領域の膜厚が極端に薄くなり、その膜厚均一性を著しく損なう問題を招いていた。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、液滴からなる
パターンの膜厚均一性を向上させたパターン形成方法、液滴吐出装置、電気光学装置、配向膜形成方法、配向膜装置及び液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパターン形成方法は、基板の一面に沿って配列された複数の吐出口を前記基板に対して相対移動させて、前記複数の吐出口から前記基板の法線に対して傾斜する吐出方向に沿ってパターン形成材料の液滴を吐出し、前記基板にパターンを形成するようにしたパターン形成方法において、前記複数の吐出口の配列方向を前記相対移動方向に対して傾斜させるようにした。
【0010】
本発明のパターン形成方法によれば、吐出口の配列方向を基板の相対移動方向に対して傾斜させる分だけ、液滴の吐出方向を相対移動方向に対して傾斜させることができる。従って、各液滴の長径を、基板の相対移動方向、すなわち吐出ピッチを規定する方向に対して傾斜させることができる。その結果、先行して着弾した液滴の間の領域に、後続する液滴の長径部分を相対させることができる。そのため、隣接する液滴間の接合領域を後続する液滴で拡大させることができ、パターンの膜厚均一性を向上させることができる。
【0011】
また、このパターン形成方法において、前記基板の法線方向から見て、前記相対移動方向が前記吐出方向に沿う成分を有するように、前記複数の吐出口を前記基板に対して相対移動させるようにしてもよい。
【0012】
このパターン形成方法によれば、基板に対する各吐出口の相対移動速度の分だけ、着弾した液滴を、相対移動方向に沿って濡れ広がらせることができる。従って、隣接する液滴間の相対移動方向に沿う接合領域を拡大させることができる。
【0013】
また、このパターン形成方法において、前記複数の吐出口の形成された吐出口形成面を前記基板の法線に沿う回動軸を中心にして回動して前記相対移動方向を設定するようにしてもよい。
【0014】
このパターン形成方法によれば、吐出口形成面の回動によって、各液滴の吐出方向を相対移動方向に対して傾斜させることができる。従って、各液滴の濡れ広がる方向を、吐出口形成面の回動によって規格化させることができる。その結果、液滴ごとの着弾形状のバラツキを低減させることができる。そのため、パターンの膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
【0015】
また、このパターン形成方法において、前記複数の吐出口の形成された吐出口形成面を前記一面方向に沿う傾動軸を中心にして傾動して前記吐出方向を設定するようにしてもよい。
【0016】
このパターン形成方法によれば、吐出口形成面の傾動によって、各液滴の濡れ広がる量を規格化させることができる。従って、液滴ごとの着弾形状のバラツキを低減させることができる。そのため、パターンの膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
【0017】
本発明の液滴吐出装置は、パターン形成材料の液滴を基板に吐出して前記基板にパターンを形成する液滴吐出装置において、前記液滴を吐出する複数の吐出口を列状に有した吐出口形成面と、前記液滴の吐出方向が前記基板の法線に対して傾斜するように、前記吐出口の配列方向に沿う傾動軸を中心にして前記吐出口形成面を傾動する傾動機構と、前記基板を前記吐出口形成面に対して相対移動する移動手段と、前記配列方向が前記基板の相対移動方向に対して傾斜するように、前記基板の法線に沿う回動軸を回動中心にして前記吐出口形成面を回動する回動機構と、を備えた。
【0018】
本発明の液滴吐出装置によれば、吐出口の配列方向を基板の相対移動方向に対して傾斜させる分だけ、液滴の吐出方向を相対移動方向に対して傾斜させることができる。従って、各液滴の長径を、基板の相対移動方向、すなわち吐出ピッチを規定する方向に対して傾斜させることができる。その結果、先行して着弾した液滴の間の領域に、後続する液滴の長径部分を相対させることができる。そのため、隣接する液滴間の接合領域を後続する液滴で拡大させることができ、パターンの膜厚均一性を向上させることができる。
【0019】
また、この液滴吐出装置において、前記傾動機構は、前記基板の法線方向から見て、前記吐出方向が前記相対移動方向に沿う成分を有するように、前記吐出口形成面を傾動するようにしてもよい。
【0020】
この液滴吐出装置によれば、吐出口形成面に対する基板の相対移動速度の分だけ、着弾する液滴を、相対移動方向側に沿って濡れ広がらせることができる。従って、隣接する液滴間の相対移動方向に沿う接合領域を拡大させることができる。
【0021】
また、この液滴吐出装置において、前記移動手段は、前記基板を載置して、載置した前記基板を前記相対移動方向に沿って移動する基板ステージであってもよい。
この液滴吐出装置によれば、基板ステージの移動によって、各液滴の濡れ広がる方向を、それぞれ液滴の吐出間隔を規定する方向に対して傾斜させることができる。
【0022】
また、この液滴吐出装置において、前記複数の吐出口からの液滴の吐出方向が前記基板の法線に対して傾斜するように前記吐出口形成面を傾動するための傾動情報を生成する傾動情報生成手段と、前記基板の法線方向から見た前記配列方向が前記基板の相対移動方向に対して傾斜するように前記吐出口形成面を回動するための回動情報を生成する回動情報生成手段と、前記回動情報と前記傾動情報に基づいて、前記回動機構と前記傾動機構を駆動制御する制御手段と、を備えるようにしてもよい。
【0023】
この液滴吐出装置によれば、液滴の吐出方向を、回動情報と傾動情報に基づいて制御させることができる。従って、着弾する各液滴の濡れ広がる方向を、より確実に、吐出間隔を規定する方向に対して傾斜させることができる。その結果、隣接する液滴間の接合領域を拡大させることができる。
【0024】
また、この液滴吐出装置において、前記回動情報生成手段と前記傾動情報生成手段は、前記液滴の吐出間隔に基づいて、それぞれ前記回動情報と前記傾動情報を生成するようにしてもよい。
【0025】
この液滴吐出装置によれば、液滴の吐出方向を、液滴の吐出間隔に基づいて規定させることができる。従って、吐出間隔に対応した濡れ広がりを、各液滴に付与することができる。その結果、パターンの膜厚均一性を、より確実に、向上させることができる。
【0026】
本発明の電気光学装置は、上記する液滴吐出装置によって形成されたパターンを備えた。
本発明の電気光学装置によれば、膜厚均一性を向上させた液滴からなるパターンを備えることができる。
【0027】
本発明の配向膜形成方法において、基板の一面に沿って配列された複数の吐出口を前記基板に対して相対移動させて、前記複数の吐出口から前記基板の法線に対して傾斜する吐出方向に沿って配向膜形成材料の液滴を吐出し、前記基板に配向膜を形成するようにした配向膜形成方法であって、前記複数の吐出口の配列方向を前記基板の相対移動方向に対し
て傾斜させるようにした。
【0028】
本発明の配向膜形成方法によれば、吐出口の配列方向を基板の相対移動方向に対して傾斜させる分だけ、液滴の吐出方向を相対移動方向に対して傾斜させることができる。従って、各液滴の長径を、基板の相対移動方向、すなわち吐出ピッチを規定する方向に対して傾斜させることができる。その結果、先行して着弾した液滴の間の領域に、後続する液滴の長径部分を相対させることができる。そのため、隣接する液滴間の接合領域を後続する液滴で拡大させることができ、配向膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0029】
本発明の配向膜形成装置は、配向膜形成材料の液滴を基板に吐出して前記基板に配向膜を形成する配向膜形成装置であって、前記液滴を吐出する複数の吐出口を列状に有した吐出口形成面と、前記液滴の吐出方向が前記基板の法線に対して傾斜するように、前記吐出口の配列方向に沿う傾動軸を中心にして前記吐出口形成面を傾動する傾動機構と、前記基板を前記吐出口形成面に対して相対移動する移動手段と、前記配列方向が前記基板の相対移動方向に対して傾斜するように、前記基板の法線に沿う回動軸を回動中心にして前記吐出口形成面を回動する回動機構と、を備えた。
【0030】
本発明の配向膜形成装置によれば、吐出口の配列方向を基板の相対移動方向に対して傾斜させる分だけ、液滴の吐出方向を相対移動方向に対して傾斜させることができる。従って、各液滴の長径を、基板の相対移動方向、すなわち吐出ピッチを規定する方向に対して傾斜させることができる。その結果、先行して着弾した液滴の間の領域に、後続する液滴の長径部分を相対させることができる。そのため、隣接する液滴間の接合領域を後続する液滴で拡大させることができ、配向膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0031】
本発明の液晶表示装置は、上記記載の配向膜形成装置によって形成された配向膜を表示パネルに備えた。
本発明の液晶表示装置によれば、膜厚均一性を向上させた液滴からなる配向膜を備えることができ、表示品位の高い表示ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図10に従って説明する。まず、本発明のパターン形成方法によって形成した配向膜を有する電気光学装置としての液晶表示装置10について説明する。図1は、液晶表示装置10の斜視図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。
【0033】
図1において、液晶表示装置10の下側には、LEDなどの光源11を有して四角板状に形成されたエッジライト型のバックライト12が備えられている。バックライト12の上方には、バックライト12と略同じサイズに形成された四角板状の液晶パネル13が備えられている。そして、光源11から出射される光が、液晶パネル13に向かって照射されるようになっている。
【0034】
液晶パネル13には、相対向する素子基板14と対向基板15が備えられている。これら素子基板14と対向基板15は、図2に示すように、光硬化性樹脂からなる四角枠状のシール材16を介して貼り合わされている。そして、これら素子基板14と対向基板15との間の間隙に、液晶17が封入されている。
【0035】
素子基板14の下面(バックライト12側の側面)には、偏光板や位相差板などの光学基板18が貼り合わされている。光学基板18は、バックライト12からの光を直線偏光にして液晶17に出射するようになっている。素子基板14の上面(対向基板15側の側面:素子形成面14a)には、一方向(X矢印方向)略全幅にわったって延びる複数の走
査線Lxが配列形成されている。各走査線Lxは、それぞれ素子基板14の一側に配設される走査線駆動回路19に電気的に接続されるとともに、走査線駆動回路19からの走査信号が、所定のタイミングで入力されるようになっている。また、素子形成面14aには、Y矢印方向略全幅にわたって延びる複数のデータ線Lyが配列形成されている。各データ線Lyは、それぞれ素子基板14の他側に配設されるデータ線駆動回路21に電気的に接続されるとともに、データ線駆動回路21からの表示データに基づくデータ信号が、所定のタイミングで入力されるようになっている。素子形成面14aであって、走査線Lxとデータ線Lyの交差する位置には、対応する走査線Lx及びデータ線Lyに接続されてマトリックス状に配列される複数の画素22が形成されている。各画素22には、それぞれTFTなどの図示しない制御素子や、透明導電膜などからなる光透過性の画素電極23が備えられている。
【0036】
図2において、各画素22の上側全体には、ラビング処理などによる配向処理の施された配向膜24が積層されている。配向膜24は、配向性ポリイミドなどの配向性高分子からなる薄膜パターンであって、対応する画素電極23の近傍で、液晶17の配向を所定の配向に設定するようになっている。この配向膜24は、インクジェット法によって形成されている。すなわち、配向膜24は、配向性高分子を所定の溶媒に溶解したパターン形成材料としての配向膜形成材料F(図7参照)を液滴Fb(図8参照)として各画素22の上側全体に吐出し、着弾した液滴Fbを乾燥させることによって形成されている。
【0037】
前記対向基板15の上面には、光学基板18からの光と直交する直線偏光の光を外方(図2における上方)に出射する偏光板25が配設されている。対向基板15の下面(素子基板14側の側面:電極形成面15a)全体には、各画素電極23と相対向するように形成された光透過性の導電膜からなる対向電極26が積層されている。対向電極26は、前記データ線駆動回路21に電気的に接続されるとともに、そのデータ線駆動回路21からの所定の共通電位が付与されるようになっている。対向電極26の下面全体には、ラビング処理などによる配向処理の施された配向膜27が積層されている。この配向膜27は、前記配向膜24と同じく、インクジェット法によって形成されるとともに、前記対向電極26の近傍で、液晶17の配向を所定の配向に設定するようになっている。
【0038】
そして、各走査線Lxを線順次走査に基づいて1本ずつ所定のタイミングで選択して、各画素22の制御素子を、それぞれ選択期間中だけオン状態にする。すると、各制御素子に対応する各画素電極23に、対応するデータ線Lyからの表示データに基づくデータ信号が出力される。各画素電極23にデータ信号が出力されると、各画素電極23と対向電極26との間の電位差に基づいて、対応する液晶17の配向状態が変調される。すなわち、光学基板18からの光の偏光状態が画素22ごとに変調される。そして、変調された光が偏光板25を通過するか否かによって、表示データに基づく画像が、液晶パネル13の上側に表示される。
【0039】
次に、上記配向膜27(配向膜24)を形成するための液滴吐出装置30を図3〜10に従って説明する。
図3において、液滴吐出装置30は配向膜形成装置であって、液滴吐出装置30には、直方体形状に形成された基台31が備えられるとともに、その基台31の上面には、その長手方向(X矢印方向)に沿って延びる一対の案内溝32が形成されている。その基台31の上方には、基台31に設けられたX軸モータMX(図10の左上参照)の出力軸に駆動連結される移動手段としての基板ステージ33が備えられるとともに、その基板ステージ33が、前記案内溝32に沿って、所定の速度(搬送速度V)でX矢印方向及び反X矢印方向に往復動する(X矢印方向に沿って搬送される)ようになっている。
【0040】
基板ステージ33の上面には、前記対向電極26を上側にした対向基板15を載置可
能にする載置面34が形成されて、載置された状態の対向基板15を基板ステージ33に対して位置決め固定するようになっている。尚、本実施形態では、載置面34に対向基板15を載置する構成にしているが、これに限らず、前記各画素電極23を上側にした素子基板14を載置する構成にしてもよい。
【0041】
基台31のY矢印方向両側には、門型に形成されたガイド部材35が配設されるとともに、そのガイド部材35には、Y矢印方向に延びる上下一対のガイドレール36が形成されている。また、ガイド部材35には、ガイド部材35に設けられたY軸モータMY(図10の左下参照)の出力軸に駆動連結されるキャリッジ37が備えられるとともに、そのキャリッジ37が、ガイドレール36に沿ってY矢印方向及び反Y矢印方向に往復動する(Y矢印方向に沿って走査される)ようになっている。キャリッジ37の内部には、前記配向膜形成材料F(図7参照)を導出可能に収容するインクタンク38が配設されるとともに、そのインクタンク38の収容する配向膜形成材料Fが、キャリッジ37の下方に搭載される液滴吐出ヘッド41まで導出されるようになっている。
【0042】
図4は、キャリッジ37(液滴吐出ヘッド41)を下方(対向基板15)から見た概略斜視図であって、図5は、液滴吐出ヘッド41を上方から見た平面図である。また、図6及び図7は、キャリッジ37及び液滴吐出ヘッド41をそれぞれY矢印方向から見た概略側面図である。
【0043】
図4において、キャリッジ37の下側(図4における上側)には、Y矢印方向に延びる直方体形状に形成された回動機構を構成する回動ステージ39aが備えられるとともに、その回動ステージ39aの下側(図4における上側)には、回動ステージ39aと略同じサイズのガイドステージ39bが備えられている。
【0044】
回動ステージ39aは、キャリッジ37に内設される回動モータMR(図10参照)の出力軸に駆動連結されるとともに、その回動モータMRの駆動力を受けて、ガイドステージ39bを、対向基板15の法線方向(Z矢印方向)に沿う軸(回動軸C)を中心にして回動させるようになっている。ガイドステージ39bの下面(図4における上面)には、断面円弧状の凹曲面(ガイド面39s)が、そのY矢印方向略全幅にわたって形成されている。ガイド面39sは、その曲率中心39C(図6の下側中央参照)の位置が、ガイドステージ39bの直下であって、かつ、基板ステージ33に載置された状態の対向電極26の上面に沿うように形成されている。
【0045】
そして、ガイドステージ39bを回動させるための信号を回動モータMRに供給する。すると、回動モータMRが所定の回転数だけ正転駆動又は逆転駆動して、ガイドステージ39bをXY平面に沿って回動させる。
【0046】
尚、本実施形態では、図5の実線で示すように、ガイドステージ39bの配置位置であって、前記曲率中心39C(図5の一点鎖線)をY矢印方向にする配置位置を、「初期位置」という。また、図5の二点鎖線で示すように、ガイドステージ39bの配置位置であって、前記曲率中心39C(図5の一点鎖線)を、Y矢印方向に対して左回りに所定の角度(回動角θr)だけ回転する配置位置を、「回動位置」という。
【0047】
図4において、ガイドステージ39bには、Y矢印方向に延びる蒲鉾状に形成された傾動機構を構成する傾動ステージ40が配設されている。傾動ステージ40の一側面であって、そのガイドステージ39b側の側面(図4における下面)には、前記ガイド面39sに対応する凸曲面(摺動面40a)が形成されている。また、傾動ステージ40の他側面であって、その摺動面40aと相対向する側面(図4における上面)には、対向基板15に沿う平面(取着面40b)が形成されている。
【0048】
この傾動ステージ40は、キャリッジ37に内設される傾動モータMD(図10参照)の出力軸に駆動連結されるとともに、その傾動モータMDの駆動力を受けて、その摺動面40aを前記ガイド面39sに沿って摺動(回動)させるようになっている。つまり、この傾動ステージ40は、その摺動面40aと前記ガイド面39sが面一になるように、対向電極26上に位置する曲率中心39Cを傾動軸にして、その取着面40bを対向基板15に対して傾動させるようになっている。
【0049】
そして、取着面40bを傾動させるための信号を傾動モータMDに供給する。すると、傾動モータMDが所定の回転数だけ正転駆動又は逆転駆動して、傾動ステージ40の取着面40bを、曲率中心39Cを中心にして傾動させる。
【0050】
尚、本実施形態では、図6の実線で示すように、傾動ステージ40の配置位置であって、取着面40bの法線方向(以下単に、吐出方向Aという。)と対向基板15の法線方向(Z矢印方向)が平行になる配置位置を、「初期位置」という。また、図6の二点鎖線で示すように、傾動ステージ40の配置位置であって、吐出方向AがZ矢印方向に対して右回りに所定の角度(傾斜角θd)だけ傾斜する状態の配置位置を、「傾斜位置」という。
【0051】
図4において、取着面40bには、Y矢印方向に沿って延びる直方体形状に形成された液滴吐出ヘッド(以下単に、吐出ヘッドという。)41が備えられている。吐出ヘッド41の下側(図4において上側)には、ノズルプレート42が備えられるとともに、そのノズルプレート42の対向基板15側(図4における上側)には、取着面40bと平行な吐出口形成面としてのノズル形成面42aが形成されている。そのノズル形成面42aには、吐出口としての複数のノズルNが、Y矢印方向に沿って等ピッチに配列形成されている。
【0052】
図6において、各ノズルNは、ノズル形成面42a(取着面40b)の法線方向、すなわち前記吐出方向Aに沿ってノズルプレート42に貫通形成されている。このノズルNは、傾動ステージ40が「初期位置」に位置するときに、前記曲率中心39CのZ矢印方向(吐出方向Aの反対側)に位置するように配設されている。本実施形態では、前記曲率中心39Cであって、かつ、各ノズルNの吐出方向Aに対応する位置を、それぞれ着弾位置PFという。
【0053】
そして、傾動モータMDを正転駆動して、傾動ステージ40を「初期位置」から「傾斜位置」に配置移動する。すると、各ノズルNは、図6に示すように、それぞれ曲率中心39C(対応する着弾位置PF)を回動中心にして右回りに回動する。そして、各ノズルNは、その形成方向を、対向基板15の法線(Z矢印方向)に対して傾斜角θdだけ傾斜させる。
【0054】
これによって、各ノズルNは、その形成方向を傾斜させる際に、対応する着弾位置PFの位置を維持させることができ、対応する着弾位置PFとの間の距離を、所定の距離(飛行距離L)に維持させることができる。すなわち、液滴吐出装置30は、吐出方向Aを変更させる場合に、各ノズルNから吐出する液滴Fbの着弾精度を維持できるように構成されている。
【0055】
図7において、各ノズルNの吐出方向Aの反対側には、前記インクタンク38に連通するキャビティ43が形成されて、インクタンク38からの配向膜形成材料Fを、対応するノズルNに供給させるようになっている。各キャビティ43の吐出方向Aの反対側には、吐出方向A及びその反対方向に振動可能な振動板44が貼り付けて、キャビティ43内の容積を拡大・縮小させるようになっている。振動板44の上側には、各ノズルNに対応す
る複数の圧電素子PZが配設されている。各圧電素子PZは、それぞれ圧電素子PZを駆動制御するための信号(圧電素子駆動信号COM:図10の左下参照)を受けて収縮・伸張し、対応する振動板44を吐出方向A及びその反対方向に振動させるようになっている。
【0056】
尚、本実施形態の圧電素子駆動信号COMは、予め試験等に基づいて設定された波形データWD(図10参照)に基づいて生成されて、メニスカスを円滑に振動させるとともに、液滴Fbの重量を所定重量に安定させるように設定されている。
【0057】
そして、傾動モータMDを駆動制御して、傾動ステージ40を所定の「傾斜位置」に配置移動するとともに、各圧電素子PZに対して圧電素子駆動信号COMを供給する。すると、各キャビティ43の容積が拡大・縮小して、各ノズルN内のメニスカス(配向膜形成材料Fの界面)が振動する。各ノズルN内のメニスカスが振動すると、図8に示すように、圧電素子駆動信号COMに対応する所定重量の配向膜形成材料Fが、対応するノズルNから、液滴Fbとして吐出される。吐出される各液滴Fbは、それぞれノズルNの形成方向、すなわち吐出方向Aに沿って、所定の速度(吐出速度Vf)で飛行するようになっている。
【0058】
ここで、図9に示すように、対向電極26上であって、前記配向膜27を形成する領域に、液滴Fbを着弾させるための複数の格子点(目標位置P)を設定する。
詳述すると、本実施形態では、まず、配向膜27の目標膜厚と液滴Fbの重量に基づいて、吐出する液滴Fbの数量、すなわち目標位置Pの数量を設定する。そして、前記数量分の目標位置Pが対向電極26上の領域に配置されるように、隣接する目標位置P間のX矢印方向及びY矢印方向の間隔(搬送吐出ピッチWx及び配列吐出ピッチWy)を設定する。この際、配列吐出ピッチWyが、ノズルNの形成ピッチよりも短くなるように設定する。
【0059】
そして、回動モータMRを駆動制御して、X矢印方向から見たノズルNの間隔が前記配列吐出ピッチWyに対応するように、ガイドステージ39bを「回動位置」に回動する。また、傾動モータMDを駆動制御して、傾動ステージ40を所定の「傾斜位置」に配置移動する。続いて、基板ステージ33を搬送速度VでX矢印方向に搬送し、各着弾位置PFが、それぞれ対応する目標位置Pに位置するタイミングで、対応する圧電素子PZに、順次、圧電素子駆動信号COMを供給する。
【0060】
すると、各ノズルNからの液滴Fbが、回動角θrと傾斜角θdによって規定される吐出方向Aに沿って飛行して、順次、目標位置P(着弾位置PF)の領域に着弾する。
着弾する各液滴Fbには、図9に示すように、対向基板15の面方向(XY平面方向)に沿って、前記吐出速度Vfに対応する速度成分(吐出接線速度Vxy)と、対向基板15の搬送速度Vに対応する相対速度(搬送接線速度Va)が付与されている。そのため、着弾する各液滴Fbは、これら吐出接線速度Vxyと搬送接線速度Vaを合成した方向(長径方向D1)の速度成分によって濡れ広がる。
【0061】
つまり、対向電極26に着弾する各液滴Fbは、それぞれ対向基板15の搬送方向(X矢印方向)に対して傾斜する方向(長径方向D1)に延びる楕円形状を呈する。そして、対向電極26に着弾する各液滴Fbは、それぞれ長径方向D1に沿う長径RLを有した略楕円形状を呈して、その長径部分の領域を、先行して吐出した液滴Fb(先行液滴Fb0:図9の破線)の間の領域、すなわち先行して吐出した液滴Fbの短径方向の接合領域に相対させるようになる。
【0062】
その結果、対向電極26に着弾する各液滴Fbは、それぞれ長径方向D1が対向基板1
5の搬送方向に対して傾斜する分だけ、対応する短径方向の接合領域を隣接する液滴Fbの長径部分によって拡大させることができる。そして、着弾する各液滴Fbは、それぞれ短径方向の接合領域を拡大させる分だけ、配向膜27の膜厚均一性を向上させることができる。
【0063】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置30の電気的構成を図10に従って説明する。
図10において、傾動情報生成手段及び回動情報生成手段を構成する制御装置51には、制御手段を構成するCPU、RAM、ROMなどが備えられている。そして、制御装置51は、RAMやROMなどに格納された各種データ及び各種プログラムに従って、基板ステージ33を搬送させてキャリッジ37を走査させるとともに、吐出ヘッド41の各圧電素子PZを駆動制御させるようになっている。
【0064】
制御装置51には、入力装置52、X軸モータ駆動回路53、Y軸モータ駆動回路54、吐出ヘッド駆動回路55、傾動機構駆動回路56及び回動機構駆動回路57が接続されている。
【0065】
入力装置52は、起動スイッチ、停止スイッチなどの操作スイッチを有して各種操作信号を制御装置51に入力するとともに、対向基板15に形成する配向膜27の目標膜厚に関する情報を、既定形式の膜厚情報Itとして制御装置51に入力するようになっている。
【0066】
そして、膜厚情報Itを入力装置52から制御装置51に入力する。すると、制御装置51は、入力装置52からの膜厚情報Itを受けて、対向電極26上に吐出する配向膜形成材料Fの総重量を演算する。また、制御装置51は、演算した総重量と、波形データWDに対応する液滴Fbの重量に基づいて、吐出する液滴Fbの数量、すなわち各目標位置Pの位置座標(搬送吐出ピッチWx及び配列吐出ピッチWy)を演算するようになっている。この際、配列吐出ピッチWyは、ノズルNの形成ピッチよりも短く設定されるようになっている。
【0067】
続いて、制御装置51は、各目標位置Pの位置座標を演算すると、液滴Fbを吐出させるためのビットマップデータBMD、傾動データDD及び回動データRDを生成して格納するようになっている。
【0068】
ビットマップデータBMDは、対向電極26上の各目標位置Pに、それぞれ各ビットの値(0あるいは1)を対応させたデータであって、各ビットの値に応じて、圧電素子PZのオンあるいはオフを規定したものである。そして、ビットマップデータBMDは、各着弾位置PFが、対応する目標位置Pに位置するたびに、液滴Fbを吐出させるように規定される。
【0069】
傾動データDD及び回動データRDは、それぞれ前記傾斜角θd及び回動角θrを傾動モータMD及び回動モータMRの回転数に対応させたデータである。
詳述すると、回動データRDは、配列吐出ピッチWyに基づいて生成されるデータであって、X矢印方向から見たノズルNの間隔を配列吐出ピッチWyに対応させるようになっている。
【0070】
また、傾動データDDは、搬送吐出ピッチWx、配列吐出ピッチWy及び回動データRDに基づいて生成されるデータである。その傾動データDDは、着弾する液滴Fbの長径RL及び短径を、それぞれ搬送吐出ピッチWx及び配列吐出ピッチWyよりも長くして、かつ、その長径部分の領域を、先行して吐出した液滴Fbの短径方向の接合領域に相対さ
せるようになっている。
【0071】
X軸モータ駆動回路53は、制御装置51からのX軸モータ駆動回路53に対応する駆動制御信号に応答して、基板ステージ33を往復移動させるX軸モータMXを正転又は逆転させるようになっている。そのX軸モータ駆動回路53には、X軸モータ回転検出器MEXが接続されて、X軸モータ回転検出器MEXからの検出信号が入力されるようになっている。X軸モータ駆動回路53は、X軸モータ回転検出器MEXからの検出信号に基づいて、基板ステージ33(対向基板15)の移動方向及び移動量を演算するとともに、基板ステージ33の現在位置に関する情報を基板位置情報SPIとして生成するようになっている。そして、制御装置51は、X軸モータ駆動回路53からの基板位置情報SPIを受けて、各種信号を出力するようになっている。
【0072】
Y軸モータ駆動回路54は、制御装置51からのY軸モータ駆動回路54に対応する駆動制御信号に応答して、キャリッジ37を往復移動させるY軸モータMYを正転又は逆転させるようになっている。そのY軸モータ駆動回路54には、Y軸モータ回転検出器MEYが接続されて、Y軸モータ回転検出器MEYからの検出信号が入力されるようになっている。Y軸モータ駆動回路54は、Y軸モータ回転検出器MEYからの検出信号に基づいて、キャリッジ37(液滴吐出ヘッド41)の移動方向及び移動量を演算するとともに、キャリッジ37の現在位置に関する情報をキャリッジ位置情報CPIとして生成するようになっている。そして、制御装置51は、Y軸モータ駆動回路54からのキャリッジ位置情報CPIを受けて、各種駆動信号を出力するようになっている。
【0073】
詳述すると、制御装置51は、基板位置情報SPI及びキャリッジ位置情報CPIに基づいて、対向基板15がキャリッジ37の直下に侵入する前に、対向基板15の搬送分(往動もしくは復動)に対応するビットマップデータBMDに基づいて所定のクロック信号に同期させた吐出制御信号SIを生成するようになっている。そして、制御装置51は、キャリッジ37を走査するたびに、生成した吐出制御信号SIを、吐出ヘッド駆動回路55に順次シリアル転送するようになっている。
【0074】
また、制御装置51は、基板位置情報SPIに基づいて、各着弾位置PFが、それぞれ対応する目標位置Pに位置するたびに、波形データWDに基づく圧電素子駆動信号COMを、対応する圧電素子PZに出力させるための信号(吐出タイミング信号LP)を生成するようになっている。そして、制御装置51は、生成した吐出タイミング信号LPを、吐出ヘッド駆動回路55に順次出力するようになっている。
【0075】
吐出ヘッド駆動回路55には、吐出ヘッド41が接続されるとともに、制御装置51からの波形データWD、吐出制御信号SI及び吐出タイミング信号LPが供給されるようになっている。吐出ヘッド駆動回路55は、制御装置51からの吐出制御信号SIを受けて、その吐出制御信号SIを、それぞれ各圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換するようになっている。そして、吐出ヘッド駆動回路55は、制御装置51からの吐出タイミング信号LPを受けるたびに、シリアル/パラレル変換した吐出制御信号SIに基づいて、波形データWDに基づく圧電素子駆動信号COMを、各圧電素子PZに供給するようになっている。すなわち、吐出ヘッド駆動回路55は、各着弾位置PFが目標位置Pに位置するたびに、対応する圧電素子PZに圧電素子駆動信号COMを供給するようになっている。
【0076】
傾動機構駆動回路56は、制御装置51からの傾動データDDに応答して、傾動ステージ40を傾動させる傾動モータMDを正転又は逆転させるようになっている。その傾動機構駆動回路56には、傾動モータ回転検出器MEDが接続されて、傾動モータ回転検出器MEDからの検出信号が入力されるようになっている。傾動機構駆動回路56は、傾動モ
ータ回転検出器MEDからの検出信号に基づいて、傾動ステージ40の傾斜角θd(実傾斜角)を演算するようになっている。また、傾動機構駆動回路56は、演算した実傾斜角に関する情報を傾斜位置情報DPIとして生成して、制御装置51に出力するようになっている。
【0077】
回動機構駆動回路57は、制御装置51からの回動データRDに応答して、ガイドステージ39bを回動させる回動モータMRを正転又は逆転させるようになっている。その回動機構駆動回路57には、回動モータ回転検出器MERが接続されて、回動モータ回転検出器MERからの検出信号が入力されるようになっている。回動機構駆動回路57は、回動モータ回転検出器MERからの検出信号に基づいて、ガイドステージ39bの回動角θr(実回動角)を演算するようになっている。また、回動機構駆動回路57は、演算した実回動角に関する情報を回動位置情報RPIとして生成して、制御装置51に出力するようになっている。
【0078】
次に、上記する液滴吐出装置30を使用して配向膜27を形成する方法について説明する。
まず、図3に示すように、基板ステージ33上に、対向基板15を載置する。このとき、基板ステージ33は、キャリッジ37よりも反X矢印方向側に配置されて、キャリッジ37は、ガイド部材35の最も反Y矢印方向に配置されている。また、ガイドステージ39b及び傾動ステージ40は、前記「初期位置」に配置されている。
【0079】
この状態から、入力装置52を操作して膜厚情報Itを制御装置51に入力する。すると、制御装置51は、膜厚情報Itに基づくビットマップデータBMD、傾動データDD及び回動データRDを生成して格納する。
【0080】
ビットマップデータBMD、傾動データDD及び回動データRDを生成すると、制御装置51は、傾動データDD及び回動データRDを傾動機構駆動回路56及び回動機構駆動回路57に出力して、傾動ステージ40及びガイドステージ39bを、それぞれ「傾斜位置」及び「回動位置」に配置移動させる。傾動ステージ40を配置移動させると、制御装置51は、傾動機構駆動回路56からの傾斜位置情報DPIを受けて、実傾斜角が傾斜位置情報DPIに基づく傾斜角θdであるか否かを判断する。また、ガイドステージ39bを配置移動させると、制御装置51は、回動機構駆動回路57からの回動位置情報RPIを受けて、実回動角が回動位置情報RPIに基づく回動角θrであるか否かを判断する。
【0081】
そして、実傾斜角が傾動データDDに対応する傾斜角θdであって、実回動角が回動データRDに対応する回動角θrであると判断する(傾動ステージ40及びガイドステージ39bをセットする)。すると、制御装置51は、Y軸モータMYを駆動制御して、対向基板15がX矢印方向に搬送されるときに、各着弾位置PFが、対応する目標位置Pの経路上に位置するように、キャリッジ37(各ノズルN)をセットする。キャリッジ37をセットすると、制御装置51は、X軸モータMXを駆動制御して、基板ステージ33(対向基板15)のX矢印方向への搬送を開始する。
【0082】
この際、制御装置51は、波形データWDを所定のクロック信号に同期させて、吐出ヘッド駆動回路55に出力する。また、制御装置51は、基板ステージ33の1回の搬送分に対応するビットマップデータBMDを所定のクロック信号に同期させて吐出制御信号SIを生成するとともに、生成した吐出制御信号SIを、吐出ヘッド駆動回路55に順次シリアル転送する。
【0083】
そして、制御装置51は、基板位置情報SPI及びキャリッジ位置情報CPIに基づいて、各着弾位置PFが、対応する目標位置Pに位置するたびに、吐出ヘッド駆動回路55
に対して吐出タイミング信号LPを出力する。吐出タイミング信号LPを出力すると、制御装置51は、吐出ヘッド駆動回路55を介して、吐出制御信号SIに基づく液滴吐出動作を実行する。すなわち、制御装置51は、各着弾位置PFが対応する目標位置Pに位置するたびに、対応する圧電素子PZに、波形データWDに対応する圧電素子駆動信号COMを供給して、対応するノズルNから液滴Fbを吐出させる。
【0084】
この際、吐出される各液滴Fbには、その吐出方向Aに対応した吐出接線速度Vxyと、対向基板15の搬送速度Vに対応した搬送接線速度Vaが付与される。そして、対向電極26に着弾する各液滴Fbは、対向基板15の走査方向(X矢印方向)に対して傾斜する長径方向D1に沿って長径RLを有した略楕円形状を呈し、その長径部分の領域を、先行して吐出した液滴Fbの短径方向の接合領域に相対させる。
【0085】
その結果、対向電極26に着弾した各液滴Fbは、それぞれ後続する液滴Fbの長径部分の領域分だけ、対応する短径方向の接合領域を拡大させることができる。これによって、各液滴Fbの接合領域を拡大させることができ、均一な膜厚の配向膜27を形成することができる。
【0086】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、各液滴Fbの吐出方向Aを、対向基板15の法線に対して傾斜させるとともに、対向基板15の法線方向から見て、対向基板15の搬送方向(X矢印方向)と交差させるようにした。
【0087】
従って、着弾する液滴Fbの形状を、搬送方向に対して傾斜した長径を有する楕円形状にすることができる。すなわち、各液滴Fbの長径RLを、液滴Fbの吐出間隔(搬送吐出ピッチWx)を規定する方向に対して傾斜させることができる。
【0088】
その結果、先行して吐出された液滴Fbの間の領域に、後続する液滴Fbの長径RLの部分を相対させることができる。そのため、隣接する液滴Fbの短径方向の接合領域を、後続する液滴Fbの長径RLの部分によって拡大させることができる。ひいては、配向膜27の膜厚均一性を向上させることができる。そして、表示品位の高い液晶表示装置を実現できる。
(2)上記実施形態によれば、対向基板15の法線方向から見て、対向基板15の搬送方向が吐出方向Aの反対側の成分を有するように、基板ステージ33を搬送移動させるようにした。従って、対向基板15に対する各ノズルNの搬送接線速度Vaの分だけ、着弾した液滴Fbを、対向基板15の搬送方向の反対側に沿って濡れ広がらせることができる。従って、隣接する液滴Fb間の搬送方向に沿う接合領域を拡大させることができる。
(3)上記実施形態によれば、対向基板15の法線に沿う回動軸Cを中心にしてノズル形成面42aを回動するようにした。そして、ノズル形成面42aの回動によって、各ノズルNに共通する対向基板15の搬送方向を設定するようにした。従って、ノズル形成面42aの回動によって、各液滴Fbの長径方向D1を規定させることができる。その結果、液滴Fb間の着弾形状のバラツキを低減させることができ、配向膜27の膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
(4)上記実施形態によれば、曲率中心39Cに沿う傾動軸を中心にしてノズル形成面42aを傾動するようにした。そして、ノズル形成面42aの傾動によって、各液滴Fbに共通する吐出方向Aを設定するようにした。従って、ノズル形成面42aの傾動によって、各液滴Fbの長径RLのサイズを規格化させることができる。その結果、液滴Fbごとの着弾形状のバラツキを低減させることができ、配向膜27の膜厚均一性を、さらに向上させることができる。
(5)上記実施形態によれば、ノズル形成面42aを傾動させるための傾動データDDと、ノズル形成面42aを回動させるための回動データRDを制御装置51に生成させて、
回動データRDと傾動データDDに基づいて、ガイドステージ39bと傾動ステージ40を駆動制御するようにした。従って、液滴Fbの吐出方向Aを、回動データRDと傾動データDDに基づいて制御させることができ、着弾した各液滴の長径方向D1を、より確実に、対向基板15の走査方向(X矢印方向)に対して傾斜させることができる。
(6)上記実施形態によれば、液滴Fbの搬送吐出ピッチWxと配列吐出ピッチWyに基づいて、それぞれ回動データRDと傾動データDDを生成するようにした。従って、液滴Fbの吐出方向Aを、液滴Fbの間隔に基づいて規定させることができる。その結果、搬送吐出ピッチWx及び配列吐出ピッチWyに対応した濡れ広がりを、各液滴Fbに付与することができる。そのため、配向膜27の膜厚均一性を、より確実に、向上させることができる。
【0089】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、対向基板15の法線方向から見て、吐出方向Aの反対側に沿って、基板ステージ33を搬送するようにした。これに限らず、対向基板15の法線から見て、吐出方向Aに沿うように、基板ステージ33を搬送してもよい。
・上記実施形態では、傾動機構を、傾動ステージ40に具体化した。これに限らず、例えば、基板ステージ33を傾動機構として具体化し、基板ステージ33の載置する対向基板15を、ノズル形成面42aに対して傾動させる構成であってもよい。
・上記実施形態では、ノズルNを一列だけ備える構成にした。これに限らず、ノズルNを複数列備える構成にしてもよい。
・上記実施形態では、パターンを、液晶表示装置10の配向膜27に具体化した。これに限らず、例えば、液晶表示装置10や、電子放出素子から放出された電子による蛍光物質の発光を利用した電界効果型装置(FEDやSEDなど)に設けられる各種薄膜、金属配線、カラーフィルタなどに具体化してもよい。すなわち、着弾した液滴Fbによって形成するパターンであればよい。
・上記実施形態では、基板を、液晶表示装置10の対向基板15に具体化した。これに限らず、基板を、シリコン基板やフレキシブル基板、あるいは金属基板などに具体化してもよい。
・上記実施形態では、電気光学装置を、液晶表示装置10に具体化した。これに限らず、例えば、電気光学装置を、エレクトロルミネッセンス装置に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本実施形態における液晶表示装置を示す斜視図。
【図2】同じく、液晶表示装置を示す断面図。
【図3】同じく、液滴吐出装置を示す斜視図。
【図4】同じく、液滴吐出ヘッドを示す斜視図。
【図5】同じく、液滴吐出ヘッドを示す平面図。
【図6】同じく、液滴吐出ヘッドを示す側面図。
【図7】同じく、液滴吐出ヘッドを示す側面図。
【図8】同じく、液滴吐出ヘッドを示す側面図。
【図9】同じく、液滴吐出動作を説明する説明図。
【図10】同じく、液滴吐出装置の電気的構成を示す電気ブロック回路図。
【図11】従来例の液滴吐出装置を示す概略側面図。
【符号の説明】
【0091】
A…吐出方向、C…回動軸、Wx…吐出間隔を構成する搬送吐出ピッチ、Wy…吐出間隔を構成する配列吐出ピッチ、Fb…液滴、F…パターン形成材料としての配向膜形成材料、N…吐出口としてのノズル、DD…傾動情報としての傾動データ、RD…回動情報としての回動データ、10…電気光学装置としての液晶表示装置、15…基板としての対向基板、27…パターンとしての配向膜、30…液滴吐出装置、33…移動手段を構成する
基板ステージ、39a…回動機構を構成する回動ステージ、40…傾動機構を構成する傾動ステージ、42a…吐出口形成面としてのノズル形成面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一面に沿って配列された複数の吐出口を前記基板に対して相対移動させて、前記複数の吐出口から前記基板の法線に対して傾斜する吐出方向に沿ってパターン形成材料の液滴を吐出し、前記基板にパターンを形成するようにしたパターン形成方法であって、
前記複数の吐出口の配列方向を前記基板の相対移動方向に対して傾斜させるようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法において、
前記基板の法線方向から見て、前記相対移動方向が前記吐出方向に沿う成分を有するように、前記複数の吐出口を前記基板に対して相対移動させるようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパターン形成方法において、
前記複数の吐出口の形成された吐出口形成面を前記基板の法線に沿う回動軸を中心にして回動して前記相対移動方向を設定するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のパターン形成方法において、
前記複数の吐出口の形成された吐出口形成面を前記一面方向に沿う傾動軸を中心にして傾動して前記吐出方向を設定するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
パターン形成材料の液滴を基板に吐出して前記基板にパターンを形成する液滴吐出装置であって、
前記液滴を吐出する複数の吐出口を列状に有した吐出口形成面と、
前記液滴の吐出方向が前記基板の法線に対して傾斜するように、前記吐出口の配列方向に沿う傾動軸を中心にして前記吐出口形成面を傾動する傾動機構と、
前記基板を前記吐出口形成面に対して相対移動する移動手段と、
前記配列方向が前記基板の相対移動方向に対して傾斜するように、前記基板の法線に沿う回動軸を回動中心にして前記吐出口形成面を回動する回動機構と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴吐出装置において、
前記傾動機構は、前記基板の法線方向から見て、前記吐出方向が前記相対移動方向に沿う成分を有するように、前記吐出口形成面を傾動することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の液滴吐出装置において、
前記移動手段は、前記基板を載置して、載置した前記基板を前記相対移動方向に沿って移動する基板ステージであることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1つに記載の液滴吐出装置において、
前記複数の吐出口からの液滴の吐出方向が前記基板の法線に対して傾斜するように前記吐出口形成面を傾動するための傾動情報を生成する傾動情報生成手段と、
前記基板の法線方向から見た前記配列方向が前記基板の相対移動方向に対して傾斜するように前記吐出口形成面を回動するための回動情報を生成する回動情報生成手段と、
前記回動情報と前記傾動情報に基づいて、前記回動機構と前記傾動機構を駆動制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液滴吐出装置において、
前記回動情報生成手段と前記傾動情報生成手段は、前記液滴の吐出間隔に基づいて、そ
れぞれ前記回動情報と前記傾動情報を生成することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1つに記載の液滴吐出装置によって形成されたパターンを備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
基板の一面に沿って配列された複数の吐出口を前記基板に対して相対移動させて、前記複数の吐出口から前記基板の法線に対して傾斜する吐出方向に沿って配向膜形成材料の液滴を吐出し、前記基板に配向膜を形成するようにした配向膜形成方法であって、
前記複数の吐出口の配列方向を前記基板の相対移動方向に対して傾斜させるようにしたことを特徴とする配向膜形成方法。
【請求項12】
配向膜形成材料の液滴を基板に吐出して前記基板に配向膜を形成する配向膜形成装置であって、
前記液滴を吐出する複数の吐出口を列状に有した吐出口形成面と、
前記液滴の吐出方向が前記基板の法線に対して傾斜するように、前記吐出口の配列方向に沿う傾動軸を中心にして前記吐出口形成面を傾動する傾動機構と、
前記基板を前記吐出口形成面に対して相対移動する移動手段と、
前記配列方向が前記基板の相対移動方向に対して傾斜するように、前記基板の法線に沿う回動軸を回動中心にして前記吐出口形成面を回動する回動機構と、
を備えたことを特徴とする配向膜形成装置。
【請求項13】
請求項12に記載の配向膜形成装置によって形成された配向膜を表示パネルに備えたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−253146(P2007−253146A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2546(P2007−2546)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】