説明

パターン検査装置およびパターン検査方法

【課題】微細なパターンのサイズエラーの検出を可能とするパターン検査装置を提供する。
【解決手段】設計データに基づきパターンが形成された試料を撮像する画像取得部10と、設計データから展開画像を生成する展開画像生成部22と、展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成する参照画像生成部24であって、モデルパラメータを被検査画像と参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成部と、参照画像の基準パターンの測定値と、被検査画像の基準パターンの測定値から求められた基準パターンの変換差を用いて、参照画像と被検査画像のいずれか一方の被検査パターンの測定値を補正し、補正された参照画像の被検査パターンの測定値と、被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体リソグラフィ用マスクの欠陥検査に適用されるパターン検査装置およびパターン検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます微細化している。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるスキャナあるいはステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンを露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
パターン欠陥を検査する方法には、大きく分けて、ダイとダイとの比較(Die to Die比較:DD比較)検査と、ダイとデータベースとの比較(Die to Database比較:DB比較)検査がある。DD比較検査は、レチクル上の2つのダイの測定データ(検査基準画像のデータと被検査画像のデータ)を比較して欠陥を検出する方法である。また、DB比較検査は、ダイの測定データ(被検査画像のデータ)とLSI設計用CADデータから発生させたダイの設計データ(参照画像のデータ)を比較して欠陥を検出する方法である。
【0005】
DB比較検査では、試料はパターン検査装置のステージ上に載置され、ステージが動くことによって光束が試料上を走査し、検査が行われる。試料には、光源及び照明光学系によって光束が照射される。試料を透過あるいは反射した光は光学系を介して、センサ上に結像される。センサで撮像されたセンサ画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと設計データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0006】
半導体素子の微細化に伴い、マスク欠陥がパターン転写に与える影響度であるMEEF(Mask Error Enhancement Factor)が大きくなり、マスク上の欠陥が小さくても、半導体基板上には強調されて転写される現象が生じている。このため、より高い検査感度が要求されるようになった。
【0007】
DB比較検査では、被検査画像であるセンサ画像とCADデータから発生させた参照画像とを比較するため、参照画像の精度が検査感度に大きく影響を与える。コンタクトホールパターンやラインパターンの径や線幅等のサイズエラーの検出には参照画像の精度の寄与が特に大きく、微細なサイズエラー検出の課題となっている。
【0008】
参照画像の精度を上げるために、参照画像を生成する際のモデルパラメータの最適化が行われている。最適化の手法としては、参照画像と被検査画像との画素の階調値の差を最小にするパラメータ推定手法が一般的である。しかし、このような手法が、コンタクトホールパターンやラインパターン等のサイズエラー(寸法欠陥)の検出に最適であるとは限らない。
【0009】
特許文献1には、パターン検査用データに寸法変化に基づく補正を加える位相シフトマスクの検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−11169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、参照画像の測定値と検査画像の測定値の差を補正し、微細なパターンのサイズエラーの検出を可能とするパターン検査装置およびパターン検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様のパターン検査装置は、設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得する画像取得部と、前記設計データから、前記被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成する展開画像生成部と、前記展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成する参照画像生成部であって、前記参照画像生成モデルのモデルパラメータを前記被検査画像と前記参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成部と、前記参照画像の基準パターンの測定値と、前記被検査画像の基準パターンの測定値から求められた前記基準パターンの変換差を記憶する変換差記憶部と、前記変換差記憶部に記憶された前記変換差を用いて、前記参照画像と前記被検査画像のいずれか一方の被検査パターンの測定値を補正する測定値補正部と、前記測定値補正部において前記参照画像を補正した場合には、補正された前記参照画像の被検査パターンの測定値と、前記被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し、前記測定値補正部において前記被検査画像を補正した場合には、補正された前記被検査画像の被検査パターンの測定値と、前記参照画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する測定値比較部と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記態様のパターン検査装置において、前記変換差は、複数のサイズの前記基準パターンについて得られた変換差であることが望ましい。
【0014】
上記態様のパターン検査装置において、前記測定値は、画素の階調値の積分値であることが望ましい。
【0015】
上記態様のパターン検査装置において、前記測定値は、寸法値であることが望ましい。
【0016】
上記態様のパターン検査装置において、前記基準パターンおよび前記被検査パターンはコンタクトホールであることが望ましい。
【0017】
上記態様のパターン検査装置において、前記基準パターンおよび前記被検査パターンはラインパターンであることが望ましい。
【0018】
本発明の一態様のパターン検査装置は、設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得する画像取得部と、前記設計データから、前記被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成し、かつ、変換差測定用の基準パターンを有するテスト設計データから、前記被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成されるテスト展開画像を生成する展開画像生成部と、前記展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成し、かつ、前記テスト展開画像を前記参照画像生成モデルに入力してテスト参照画像を生成する参照画像生成部であって、前記参照画像生成モデルのモデルパラメータを前記被検査画像と前記参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成部と、前記テスト参照画像の基準パターンの測定値から求められる前記参照画像と前記被検査画像の基準パターンの変換差を記憶する変換差記憶部と、前記変換差記憶部に記憶された前記変換差を用いて、前記参照画像と前記被検査画像のいずれ一方の被検査パターンの測定値を補正する測定値補正部と、前記測定値補正部において前記参照画像を補正した場合には、補正された前記参照画像の被検査パターンの測定値と、前記被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し、前記測定値補正部において前記被検査画像を補正した場合には、補正された前記被検査画像の被検査パターンの測定値と、前記参照画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する測定値比較部と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様のパターン検査装置は、設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得し、かつ、変換差測定用の基準パターンを有するテスト設計データに基づき前記試料と同一のプロセスでパターンが形成されたテスト試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被テスト画像を取得する画像取得部と、前記設計データから、前記被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成し、かつ、前記テスト設計データから、前記被テスト画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成されるテスト展開画像を生成する展開画像生成部と、前記展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成し、かつ、前記テスト展開画像を前記参照画像生成モデルに入力してテスト参照画像を生成する参照画像生成部であって、前記参照画像生成モデルのモデルパラメータを前記被検査画像と前記参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成部と、前記テスト参照画像の基準パターンの測定値と、前記被テスト画像の基準パターンの測定値から求められた前記基準パターンの変換差を記憶する変換差記憶部と、前記変換差記憶部に記憶された前記変換差を用いて、前記参照画像と前記被検査画像のいずれ一方の被検査パターンの測定値を補正する測定値補正部と、前記測定値補正部において前記参照画像を補正した場合には、補正された前記参照画像の被検査パターンの測定値と、前記被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し、前記測定値補正部において前記被検査画像を補正した場合には、補正された前記被検査画像の被検査パターンの測定値と、前記参照画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する測定値比較部と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様のパターン検査方法は、設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得する画像取得工程と、前記設計データから、前記被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成する展開画像生成工程と、前記展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成する参照画像生成部であって、前記参照画像生成モデルのモデルパラメータを前記被検査画像と前記参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成工程と、前記参照画像の基準パターンの測定値と、前記被検査画像の基準パターンの測定値から求められた前記基準パターンの変換差を記憶する変換差記憶工程と、前記変換差記憶部に記憶された前記変換差を用いて、前記参照画像と前記被検査画像のいずれ一方の被検査パターンの測定値を補正する測定値補正工程と、前記測定値補正部において前記参照画像を補正した場合には、補正された前記参照画像の被検査パターンの測定値と、前記被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し、前記測定値補正部において前記被検査画像を補正した場合には、補正された前記被検査画像の被検査パターンの測定値と、前記参照画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する測定値比較工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、参照画像の測定値と検査画像の測定値の差を補正し、微細なパターンのサイズエラーの検出を可能とするパターン検査装置およびパターン検査方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態のパターン検査装置の主要部の構成を示すブロック図である
【図2】第1の実施の形態のパターン検査装置のブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の光学画像の取得手順を説明するための図である。
【図4】第1の実施の形態のパターン検査方法の工程図である。
【図5】第1の実施の形態の設計データおよび参照画像の一例を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の図5(b)に示した参照画像のパターンの階調値のプロファイルである。
【図7】第1の実施の形態の参照画像と設計データの変換差の寸法依存性を示す図である。
【図8】第1の実施の形態の設計データ、被検査画像、参照画像のパターンの変換差の説明図である。
【図9】第2の実施の形態の図5(b)に示した参照画像のパターンの階調値のプロファイルである。
【図10】第3の実施の形態の測定値の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本実施の形態について説明する。
【0024】
本明細書中、設計値とは試料等に形成されるパターンについてCADデータや設計データ等の基データで定められる値を意味する。
【0025】
また、本明細書中、設計データとは試料に描画されるパターン等のCADデータが、パターン検査装置に入力されるファーマットに変換されたデータを意味する。例えば、パターン中の図形のサイズや位置が座標値等で定められたデータである。
【0026】
また、本明細書中、被検査画像とは検査の対象となる画像を意味し、画素毎の階調値情報である画素データで構成される。本明細書では被検査画像は、画像センサにより取得される画像であるためセンサ画像とも称する。
【0027】
また、本明細書中、展開画像とは、設計データが変換された画像であり、被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される画像である。
【0028】
また、本明細書中、参照画像とは、パターン検査において被検査画像の比較対象となる検査基準画像を意味する。特定のモデルに展開画像を入力して生成することで、被検査画像との一致性を高めている。展開画像同様、被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される。
【0029】
また、本明細書中、被検査パターンとは、検査において具体的に比較の対象となるパターンであり、被検査画像、参照画像双方に存在するパターンである。
【0030】
また、本明細書中、基準パターンとは、参照画像のパターンと被検査画像のパターンとの間の変換差を取得するために用いられるパターンを意味する。被検査画像内に基準パターンが存在する場合と、存在しない場合の2通りが考えられる。
【0031】
(第1の実施の形態)
本実施の形態のパターン検査装置は、設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得する画像取得部と、設計データから、被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成する展開画像生成部と、展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成する参照画像生成部であって、参照画像生成モデルのモデルパラメータを被検査画像と参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成部と、参照画像の基準パターンの測定値と、被検査画像の基準パターンの測定値から求められた基準パターンの変換差を記憶する変換差記憶部と、変換差記憶部に記憶された変換差を用いて、参照画像と被検査画像のいずれか一方の被検査パターンの測定値を補正する測定値補正部と、測定値補正部において参照画像を補正した場合には、補正された参照画像の被検査パターンの測定値と、被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し、測定値補正部において被検査画像を補正した場合には、補正された被検査画像の被検査パターンの測定値と、参照画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する測定値比較部と、を有する。
【0032】
以下、半導体装置に用いられるマスクを試料とし、このマスクに可視光または紫外光等の光線(以下、単に光ともいう)を照射して、マスク上のパターン検査を行うパターン検査装置を例に説明する。
【0033】
本実施の形態のパターン検査装置は、参照画像と被検査画像との間の変換差についての情報をあらかじめ取得しておき、参照画像のパターンと被検査画像のパターンの測定値を比較する際に、この変換差を用いて測定値を補正して比較する。これにより精度の高いパターン検査を実現する。特に、設計データから参照画像を生成する際に生ずる変換差について補償することが可能となる。
【0034】
図2は、第1の実施の形態のパターン検査装置の構成を示すブロック図である。図2において、パターンが形成された露光用マスクやウェハ等の基板を試料として、かかる試料の欠陥を検査するパターン検査装置100は、光学画像取得部150と制御系回路160を備えている。光学画像取得部150は、XYθテーブル102、光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105、センサ回路106、レーザ測長システム122、オートローダ130、照明光学系170を備えている。制御系回路160では、コンピュータとなる制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較回路108、展開回路111、参照回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレシキブルディスク装置(FD)116、ディスプレイ117、パターンモニタ118、プリンタ119に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。
【0035】
図2では、本実施の形態を説明する上で必要な構成部分以外については記載を省略している。パターン検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれることは言うまでもない。
【0036】
図1は、本実施の形態のパターン検査装置の主要部の構成を示すブロック図である。本実施の形態のパターン検査装置は、画像取得部10、演算処理部20、測定値比較部30を備えている。そして、演算処理部20は、展開画像生成部22、参照画像生成部24、変換差記憶部26、測定値補正部28を備えている。
【0037】
画像取得部10は、設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得する。画像取得部10は、図2における、光学画像取得部150に対応する。
【0038】
演算処理部20は、測定値比較部30で必要な情報の準備を行う。展開画像生成部22では、設計データから、上記被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成する。展開画像生成部22は、図2における、展開回路111に相当する。
【0039】
参照画像生成部24では、展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成する。参照画像生成部24では、参照画像生成モデルのモデルパラメータを被検査画像と参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する。参照画像生成部24は、図2における、参照回路112に相当する。
【0040】
変換差記憶部26は、参照画像の基準パターンの測定値と、被検査画像の基準パターンの測定値から求められた基準パターンの変換差を記憶する。測定値補正部28は、変換差記憶部に記憶された変換差を用いて、参照画像の被検査パターンの測定値を補正する。変換差記憶部26と、測定値補正部28は、図2の構成要素とは、別途設けられても、参照回路112または比較回路108内に設けられるものでえあっても構わない。
【0041】
測定値比較部30は、補正された参照画像の被検査パターンの測定値と、被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する。測定値比較部30は、図2における、比較回路108に相当する。
【0042】
図1では、本実施の形態を説明する上で必要な構成部分以外については記載を省略している。演算処理部20は、展開画像生成部22、参照画像生成部24、測定値補正部28、測定値比較部30に、その他の構成が含まれても構わない。また、演算処理部20は、展開画像生成部22、参照画像生成部24、測定値補正部28、測定値比較部30の各機能は、例えば、コンピュータで実行可能なソフトウェアで構成してもよい。但し、これに限るものではない。例えば、電気的な回路によるハードウェアにより実施させても構わない。或いは、電気的な回路によるハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、かかるハードウェアとファームウェアとの組合せでも構わない。
【0043】
また、変換差記憶部26は情報が記憶できる媒体であれば、特に限定されるものではない、例えば、磁気ディスクや半導体メモリ等で構成される。
【0044】
図3は、光学画像の取得手順を説明するための図である。また、図4は、本実施の形態のパターン検査方法の工程図である。以下、本実施の形態のパターン検査装置の動作および本実施の形態のパターン検査方法について、図1〜図4を参照しつつ詳述する。
【0045】
まず、画像取得工程S10(図4)として、光学画像取得部150(画像取得部10)は、設計データに基づいてパターンが形成された試料となるマスク101の光学画像である被検査画像を取得する。具体的には、光学画像は、以下のように取得される。
【0046】
被検査試料となるマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上に載置される。そして、マスク101に形成されたパターンには、XYθテーブル102の上方に配置されている適切な光源103によって光が照射される。光源103から照射される光束は、照明光学系170を介してマスク101を照射する。マスク101の下方には、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105及びセンサ回路106が配置されており、マスク101を透過した光は拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像し、入射する。拡大光学系104は、図示しない自動焦点機構により自動的に焦点調整がなされていてもよい。
【0047】
被検査領域は、図3に示すように、Y方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプに仮想的に分割され、更にその分割された各検査ストライプが連続的に走査されるようにXYθテーブル102(図2)の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。
【0048】
フォトダイオードアレイ105(図2)では、図3に示されるようなスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第1の検査ストライプにおける画像を取得した後、第2の検査ストライプにおける画像を今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第3の検査ストライプにおける画像を取得する場合には、第2の検査ストライプにおける画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプにおける画像を取得した方向に移動しながら画像を取得する。このように、連続的に画像を取得していくことで、無駄な処理時間を短縮することができる。
【0049】
フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、例えば、TDI(タイムディレイインテグレータ)センサのようなセンサが設置されている。ステージとなるXYθテーブル102をX軸方向に連続的に移動させることにより、TDIセンサは試料となるマスク101のパターンを撮像する。これらの光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105、センサ回路106により高倍率の検査光学系が構成されている。
【0050】
XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータは、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。また、XYθテーブル102上のマスク101はオートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後に自動的に排出されるものとなっている。
【0051】
センサ回路106から出力された測定データ(被検査画像:光学画像)は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるマスク101の位置を示すデータとともに比較回路108に送られる。測定データは例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を表現している。
【0052】
一方、マスク101のパターン形成時に用いた設計データは、記憶装置の一例である磁気ディスク装置109に記憶される。そして、設計データは、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して展開回路111に読み出される。
【0053】
そして、展開画像生成工程S12において、展開回路111は、読み出された被検査試料となるマスク101の設計データを2値ないしは多値のイメージデータである展開画像に変換して、このイメージデータが参照回路112に送られる。
【0054】
ここで、設計データは長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の2つの頂点位置における座標(x、y)や、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。かかる図形データとなる設計データが展開回路111に入力されると、図形ごとのデータにまで展開される。そして、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の図形パターンデータに展開される。
【0055】
言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計データにおける図形データが示す図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データが生成され、内部のパターンメモリに出力される。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして生成され、内部のパターンメモリに格納される。
【0056】
そして、参照画像生成工程S14において、参照回路112は、展開回路111から送られてきた図形のイメージデータでる展開画像から測定データである被検査画像と比較するための参照画像を作成する。参照回路は、例えば、マスク製造過程におけるパターン形状の変化、欠陥検査の光学系のMTF(像伝達関数)、収差などを模擬し、被検査画像にできるだけ近付けるよう参照画像を生成する。
【0057】
具体的には、参照画像は、展開画像を参照画像生成モデルに入力することで生成する。参照回路は、例えば、パターンの寸法変化を補正するリサイズ回路、パターンのコーナー部の丸まりを補正するコーナー丸め回路、光学系を模擬する光学系模擬回路からなり、それぞれに参照画像生成モデルのモデルパラメータを有している。
【0058】
参照回路では、上記モデルパラメータの最適化処理が行われる。具体的には、被検査対象であるマスクの代表的なパターンのセンサ画像を複数取得する。そして、取得したセンサ画像に対応する領域の展開画像を準備する。モデルパラメータの最適化は、準備した展開画像を参照画像生成モデルに入力した結果が、取得したセンサ画像(被検査画像)にできるだけ一致するよう行われる。
【0059】
この最適化は、さらに具体的には、参照画像生成モデルのモデルパラメータをセンサ画像(被検査画像)と参照画像との間で、画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する。階調値の差を最小化するために、例えば、階調値差の二乗和を最小にする最小二乗法や、階調値差の絶対値の和を最小にする方法、最尤法等を用いることが可能である。このように、被検査画像と参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する手法をとることで、参照画像生成のための処理時間を大幅に増大させることなく、被検査画像と参照画像の一致度を上げることができる。
【0060】
このように、最適化されたモデルパラメータを用いて、展開画像から参照画像が生成される。参照画像は、展開画像、被検査画像と同一のフォーマットである。
【0061】
上記手法により最適化されたモデルパラメータを用いて生成された参照画像は、被検査画像との一致度が高く、例えば、異物の存在や、パターンの欠損、特異なパターンの変形等の欠陥検出には極めて有効である。しかしながら、例えば、コンタクトホールパターンやラインパターン等のサイズエラー(寸法誤差)に対しては、必ずしも最適であるとはいえない。特に、パターンの寸法やパターンの密度が変化する場合に、参照画像生成時に生ずる変換差が、予期せぬ挙動を示す場合があるため問題となる。
【0062】
図5は、設計データおよび参照画像の一例を示す図である。図5(a)は設計データのパターン、図5(b)は、図5(a)の設計データから作成された参照画像のパターンである。このパターンは、同じ線幅のラインが一定間隔に並べられたラインパターンであり、ラインアンドスペースパターンと称される。以下、このラインの線幅の寸法値を測定値として検査する場合を例説明する。
【0063】
図6は、図5(b)に示した参照画像のパターンの階調値のプロファイルである。図の四角い点は、各画素における階調値を示している。各画素の間は連続した曲線で補間されている。ここでは、3次関数で補間している。
【0064】
ここで、仮に階調値で60にあたる領域を基準に線幅を測定とする。曲線上で階調値が60となる部分をパターンのエッジとし、図6の両矢印で示すようにエッジ間の距離をライン幅として算出する。曲線は3次関数であるため、ライン幅の算出は容易である。
【0065】
図7は、前述のように最適化された参照モデルパラメータに対して、参照画像と設計データの変換差のライン寸法依存性を示す図である。図5に示したようなラインアンドスペースのパターンで、設計データ上のライン幅が振れているパターンを参照画像で測定し、設計データ上のライン寸法との差を変換差としてプロットしている。
【0066】
図7から明らかなように、変換差は一定ではなく、ライン寸法に対して不規則に変化していることがわかる。このように、設計データを参照画像に変換する過程で、変換差が予期せぬ挙動を示す場合がある。
【0067】
図8は、設計データ、被検査画像、参照画像のパターンの変換差の説明図である。図8(a)は設計値寸法と画像測定値寸法との関係、図8(b)は設計値寸法と、被検査画像−参照画像間の変換差との関係を示す。
【0068】
ここで、パターンの設計値寸法をLd、参照画像の寸法測定値をLr、被検査画像の寸法測定値をLsとする。また、参照画像と設計値寸法の変換差Lr−Ldをαとし、被検査画像と設計値寸法との変換差Ls−Ldをβ、また、被検査画像と参照画像との変換差Ls−Lrをγとする。γ=−α+βとなる。
【0069】
図7に示す変換差はαに相当する。なお、理想的には、γがゼロとなり、図8(a)の点線上に被検査画像の寸法測定値Lsがのることが望ましい。例えばγが一定値であれば測定値の補正も容易となる。しかし実際は、参照画像と設計値寸法の変換差αが予測しにくく、かつ、図7、8に示すように予期できない特異な挙動をする場合があるため補正が困難である。
【0070】
そこで、変換差記憶工程S16において、変換差記憶部26では、参照画像の基準パターンの測定値と、被検査画像の基準パターンの測定値から求められた基準パターンの変換差γを記憶する。
【0071】
変換差は、基準パターンに対応するパターンのラインの寸法値を、参照画像と被検査画像それぞれについて評価することによって求める。ここで基準パターンは、例えば、ライン線幅の異なる複数のラインアンドスペースパターンである。このように複数のサイズの基準パターンについて変換差を取得することが望ましい。
【0072】
変換差記憶部26には、例えば、図8(b)に示すような設計値のライン寸法値と、被検査画像と設計値寸法との変換差γの関係が、参照容易なテーブル形式で保存される。ここで、変換差γが測定されていないライン寸法についても、回帰法や補間法などの適切な方法により変換差γを求めておくことが望ましい。
【0073】
測定値補正工程S18では、測定値補正部28において、変換差記憶部26に記憶された変換差を用いて、参照画像の被検査パターンの測定値を補正する。まず、被検査画像および参照画像上で、寸法検査の対象となる被検査パターンが特定される。ここでは、例えば、ある設計値寸法を有するラインパターンであるとする。そして、寸法検査の対象となる被検査パターンを含む、参照画像と被検査画像が呼び出され、それぞれについてライン寸法が算出され測定値として取得される。
【0074】
そして、このラインパターンの設計値寸法に相当する変換差γが、変換差記憶部26から呼びだされ、参照画像の被検査パターンの測定値Lrに加えられることで、参照画像の被検査パターンの測定値Lrが補正される。補正された参照画像の被検査パターンの測定値をLr’とすると、Lr’=Lr+γである。
【0075】
測定値比較工程S20では、測定値比較部30(比較回路108)において、補正された参照画像の被検査パターンの測定値Lr’と、被検査画像の被検査パターンの測定値Lsとを比較し欠陥の有無を検出する。すなわち、例えば、Lr’とLsの差が所定の閾値を超えた場合、寸法欠陥と判定する。
【0076】
本実施の形態によれば、特に、被検査画像と参照画像のパターンの寸法値の比較検査において、設計データから参照画像を生成する際に生ずる寸法値の変換差の補正が可能になり、高精度な検査を行うことが可能となる。
【0077】
なお、ここではライン寸法の変換差の寸法設計値幅依存性について説明したが、例えば、同一の設計値寸法であってもパターン密度によって、ライン寸法が異なることがあり得る。したがって、基準パターンとしてパターン密度の異なるラインパターンのライン寸法を評価し、ライン寸法のパターン密度依存性を評価して、変換差記憶部26に記憶させてもよい。
【0078】
また、変換差記憶部26には、あらかじめ検査が予想される、すべての基準パターン、例えば、サイズ(ライン幅や間隔)の異なるラインパターン、パターン密度の異なるラインアンドスペースパターン、サイズの異なるコンタクトホール、パターン密度の異なるコンタクトホール等の変換差を情報としてすべて記憶させておき、適宜、被検査パターンに適合する変換差を呼び出す構成であっても構わない。
【0079】
また、被検査パターンに適合する変換差の有無を判断し、適合する変換差が存在する場合に、変換差記憶部26に変換差を呼び出す指令を出す、変換差情報判断部または変換差情報判断工程を別途設けても構わない。
【0080】
また、一般に参照回路で行われるデータ処理では、同じ形のパターンであっても、パターンの画像に対する位置関係(画素に対するパターン境界のかかり具合)が異なれば、参照画像上で異なったパターンが形成され、寸法変換差が異なってくる場合がある。そこで、基準パターンとして画素との位置関係が異なる同一のパターンを複数測定し、算出された各変換差を平均する処理を行うことが望ましい。
【0081】
また、ここではラインパターンまたはラインアンドスペースパターンを基準パターンおよび被測定パターンとする場合を例に説明したが、コンタクトホールについても同様に本実施の形態を適用可能である。
【0082】
また、測定値補正部では、変換差を用いて、参照画像の被検査パターンの測定値を補正する場合を例に説明したが、参照画像の被検査パターンにかえて被検査画像の被検査パターンの測定値を補正しても構わない。この場合、測定値比較部は、補正された被検査画像の被検査パターンと参照画像の被検査パターンの測定値とを比較する。この場合も、参照画像の被検査パターンの測定値を補正する場合とまったく同様の効果が得られる。
【0083】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、第1の実施の形態の測定値が寸法値であったのに対し、測定値が画素の階調値の積分値であること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0084】
図9は、図5(b)に示した参照画像のパターンの階調値のプロファイルである。図6同様、図の四角い点は、各画素における階調値を示している。各画素の間は連続した曲線で補間されている。ここでは、3次関数で補間している。
【0085】
ここで、ラインの測定値として、曲線の指定した階調値以上の部分の面積を求める。なお、ここでは、指定する階調値を40とすると、図9で白抜きの部分が測定する面積である。第1の実施の形態と同様、曲線は3次曲線であるため、積分値を容易に得ることができる。なお、画素の階調値を補間して得られる曲線の積分値も、「画素の階調値の積分値」と称するものとする。
【0086】
ラインの幅が変化すると、パターンを透過または反射する光量が変化する。このため、上記、画素の階調値の積分値も変化する。したがって、この積分値を求めて比較することにより、パターンの寸法エラーを検出することができる。
【0087】
本実施の形態の場合、基準パターン、被検査パターンともに、画素の階調値の積分値を測定値として評価する。
【0088】
半導体製造用のマスクの場合、このマスクを使って、例えば、半導体ウェハ上のレジストに光を照射しパターンを転写する。この時、実際に転写されるレジストのライン幅が、マスクの寸法値であるライン幅よりも、上記積分値により強い相関を示す場合が考えられる。このような場合は、マスクのラインパターンについて、寸法値よりも画素の階調値の積分値を測定する方が、望ましい。
【0089】
しかし、本実施の形態の参照画像を生成する際のモデルパラメータの最適化手法、すなわち、画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する手法では、寸法値に対する変換差よりも、画素の階調値の積分値に対する変換差の方が、さらに特異な挙動をすると考えられる。
【0090】
本実施の形態は、ラインパターンの寸法検査において、寸法値を測定する代わりに画素の階調値の積分値を測定する場合であっても、変換差を適切に補正することができるため、有効である。
【0091】
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、第2の実施の形態の基準パターンおよび被検査パターンがラインパターンであるのに対し、基準パターンおよび被検査パターンがコンタクトホールであること、2次元的に積分値を求めること以外は、第2の実施の形態と同様である。したがって、第2の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0092】
図10は、本実施の形態の測定値の説明図である。図10(a)は、設計データの検査対象画像領域のパターン、図10(b)は、図10(a)の参照画像を画素毎の階調値で示した図、図10(c)は図10(b)のA−A面における参照画像のパターンの階調値のプロファイルである。
【0093】
ここで、図10(b)のコンタクトホールの測定において、図10(c)のように、各画素の間の階調を補完する。図10(c)はコンタクトホールの一断面であるが、図10(b)に示す2次元的な画素の分布を補完するため実際は各画素間を曲面で補間することにする。
【0094】
そして、この補間されてできた階調値の曲面に対し、一定値、例えば、図10(c)の場合では20を超える部分の体積を面積分によって算出し、このコンタクトホールの測定値とする。
【0095】
コンタクトホールの場合は、実際に半導体ウェハに転写されるコンタクトホールサイズが、マスクの寸法値であるコンタクトホール幅よりも、上記積分値により強い相関を示す場合が考えられる。このような場合は、コンタクトホールの寸法値よりも画素の階調値の積分値を測定する方が、望ましい。
【0096】
また、ラインパターンの場合同様、本実施の形態の参照画像を生成する際のモデルパラメータの最適化手法、すなわち、画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する手法では、寸法値に対する変換差よりも、画素の階調値の積分値に対する変換差の方が、さらに特異な挙動をすると考えられる。
【0097】
本実施の形態は、コンタクトホールの寸法検査において、寸法値を測定する代わりに画素の階調値の積分値を測定する場合であっても、変換差を適切に補正することができるため、有効である。
【0098】
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、第1ないし第3の実施の形態が、基準パターンが被検査画像内に存在する場合であったのに対し、基準パターンが被検査画像にない場合の形態である。第1ないし第3の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0099】
本実施の形態のパターン検査装置は、設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得する画像取得部と、設計データから、被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成し、かつ、変換差測定用の基準パターンを有するテスト設計データから、被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成されるテスト展開画像を生成する展開画像生成部と、展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成し、かつ、テスト展開画像を参照画像生成モデルに入力してテスト参照画像を生成する参照画像生成部であって、参照画像生成モデルのモデルパラメータを被検査画像と参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成部と、テスト参照画像の基準パターンの測定値から求められる参照画像と被検査画像の基準パターンの変換差を記憶する変換差記憶部と、変換差記憶部に記憶された変換差を用いて、参照画像と被検査画像のいずれ一方の被検査パターンの測定値を補正する測定値補正部と、測定値補正部において参照画像を補正した場合には、補正された参照画像の被検査パターンの測定値と、被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し、測定値補正部において被検査画像を補正した場合には、補正された被検査画像の被検査パターンの測定値と、参照画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する測定値比較部と、を有する。
【0100】
参照画像と被検査画像の変換差を求めるための基準パターンが、被検査画像内に存在しない場合、図8(a)に示す、参照画像Lrと被検査画像Lsの変換差である変換差γを直接求めることができない。
【0101】
そこで、あらかじめ変換差測定用の基準パターンが配置された別の設計データ(テスト設計データ)を準備する。そして、被検査画像に対応する参照画像を作成した際に使った参照画像生成モデルと、その際に最適化されたモデルパラメータを用い、テスト設計データからテスト参照画像を生成する。
【0102】
そして、テスト参照画像の基準パターンを測定し、設計値寸法との変換差、すなわち、図8(a)における参照画像Lrと設計値寸法Ldの変換差である変換差αを求める。その後、被検査画像内に存在する別のパターンと対応する参照画像のパターンとの変換差、すなわち、図8(a)における被検査画像Lsと参照画像Lrの変換差である変換差βを求める。求めた変換差βの値を用いて、先に求めた変換差αを補正し、変換差γに相当する変換差を算出し、被検査画像と参照画像との変換差γとみなして、変換差記憶部に記憶する。
【0103】
その他の、パターン検査装置の構成およびパターン検査方法については、第1ないし第3の実施の形態と同様である。
【0104】
本実施の形態によれば、被検査画像を作成した設計データ内に、変換差を求めるに適当な基準パターンがない場合であっても、高精度なパターン検査が実現可能である。
【0105】
また、一般に参照回路で行われるデータ処理では、同じ形のパターンであっても、パターンの画像に対する位置関係(画素に対するパターン境界のかかり具合)が異なれば、参照画像上で異なったパターンが形成され、寸法変換差が異なってくる場合がある。そこで、基準パターンとして画素との位置関係が異なる同一のパターンを複数個テスト設計データに備えておくことが望ましい。
【0106】
(第5の実施の形態)
本実施の形態は、基準パターンが被検査画像内にない場合であって、変換差測定用に、被検査用マスクとは別個の、基準パターンを有するテストマスクを作成して変換差を求める形態である。第1ないし第4の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0107】
本実施の形態のパターン検査装置は、設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得し、かつ、変換差測定用の基準パターンを有するテスト設計データに基づき試料と同一のプロセスでパターンが形成されたテスト試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被テスト画像を取得する画像取得部と、設計データから、被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成し、かつ、テスト設計データから、被テスト画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成されるテスト展開画像を生成する展開画像生成部と、展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成し、かつ、テスト展開画像を参照画像生成モデルに入力してテスト参照画像を生成する参照画像生成部であって、参照画像生成モデルのモデルパラメータを被検査画像と参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成部と、テスト参照画像の基準パターンの測定値と、被テスト画像の基準パターンの測定値から求められた基準パターンの変換差を記憶する変換差記憶部と、変換差記憶部に記憶された変換差を用いて、参照画像と被検査画像のいずれ一方の被検査パターンの測定値を補正する測定値補正部と、測定値補正部において参照画像を補正した場合には、補正された参照画像の被検査パターンの測定値と、被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し、測定値補正部において被検査画像を補正した場合には、補正された被検査画像の被検査パターンの測定値と、参照画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する測定値比較部と、を有する。
【0108】
参照画像と被検査画像の変換差を求めるための基準パターンが、被検査画像内に存在しない場合、図8(a)に示す、参照画像Lrと被検査画像Lsの変換差である変換差γを直接求めることができない。
【0109】
そこで、あらかじめ変換差測定用の基準パターンが配置された別の設計データ(テスト設計データ)を準備する。そして、被検査画像を取得するマスク(試料)と同一のプロセスでパターンが形成されたテストマスク(テスト試料)を準備し、このテストマスクについて、被テスト画像を取得する。同一のプロセスで作成するのは、マスク製造プロセスによる変換差が同等になることを保証するためである。
【0110】
一方、被検査画像に対応する参照画像を作成した際に使った参照画像生成モデルと、最適化されたモデルパラメータを用い、テスト設計データからテスト参照画像を生成する。
【0111】
そして、被テスト画像とテスト参照画像の基準パターンを測定し、被テスト画像とテスト参照画像の基準パターンの変換差を求め、被検査画像と参照画像との変換差とみなして変換差記憶部に記憶する。そして、この変換差を用いて、測定値補正部で参照画像の被検査パターンの測定値を補正する。
【0112】
その他の、パターン検査装置の構成およびパターン検査方法については、第1ないし第3の実施の形態と同様である。
【0113】
本実施の形態によれば、被検査画像を作成した設計データ内に、変換差を求めるに適当な基準パターンがない場合であっても、高精度なパターン検査が実現可能である。また、第4の実施の形態と異なり、基準パターンの変換差について、被検査画像と参照画像との変換差γに相当する変換差を直接求めることが可能となる。
【0114】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。また、各実施の形態に記載した要素を適宜組み合わせることが可能である。
【0115】
例えば、光線にかえて電子線を試料に照射して撮像することも可能である。
【0116】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置、パターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0117】
10 画像取得部
20 演算処理部
22 展開画像生成部
24 参照画像生成部
26 変換差記憶部
28 測定値補正部
30 測定値比較部
100 パターン検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得する画像取得部と、
前記設計データから、前記被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成する展開画像生成部と、
前記展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成する参照画像生成部であって、前記参照画像生成モデルのモデルパラメータを前記被検査画像と前記参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成部と、
前記参照画像の基準パターンの測定値と、前記被検査画像の基準パターンの測定値から求められた前記基準パターンの変換差を記憶する変換差記憶部と、
前記変換差記憶部に記憶された前記変換差を用いて、前記参照画像と前記被検査画像のいずれか一方の被検査パターンの測定値を補正する測定値補正部と、
前記測定値補正部において前記参照画像を補正した場合には、補正された前記参照画像の被検査パターンの測定値と、前記被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し、前記測定値補正部において前記被検査画像を補正した場合には、補正された前記被検査画像の被検査パターンの測定値と、前記参照画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する測定値比較部と、
を有することを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
前記変換差は、複数のサイズの前記基準パターンについて得られた変換差であることを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項3】
前記測定値は、画素の階調値の積分値であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパターン検査装置。
【請求項4】
前記測定値は、寸法値であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパターン検査装置。
【請求項5】
前記基準パターンおよび前記被検査パターンはコンタクトホールであることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載のパターン検査装置。
【請求項6】
前記基準パターンおよび前記被検査パターンはラインパターンであることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載のパターン検査装置。
【請求項7】
設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得する画像取得部と、
前記設計データから、前記被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成し、かつ、変換差測定用の基準パターンを有するテスト設計データから、前記被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成されるテスト展開画像を生成する展開画像生成部と、
前記展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成し、かつ、前記テスト展開画像を前記参照画像生成モデルに入力してテスト参照画像を生成する参照画像生成部であって、前記参照画像生成モデルのモデルパラメータを前記被検査画像と前記参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成部と、
前記テスト参照画像の基準パターンの測定値から求められる前記参照画像と前記被検査画像の基準パターンの変換差を記憶する変換差記憶部と、
前記変換差記憶部に記憶された前記変換差を用いて、前記参照画像と前記被検査画像のいずれか一方の被検査パターンの測定値を補正する測定値補正部と、
前記測定値補正部において前記参照画像を補正した場合には、補正された前記参照画像の被検査パターンの測定値と、前記被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し、前記測定値補正部において前記被検査画像を補正した場合には、補正された前記被検査画像の被検査パターンの測定値と、前記参照画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する測定値比較部と、
を有することを特徴とするパターン検査装置。
【請求項8】
設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得し、かつ、変換差測定用の基準パターンを有するテスト設計データに基づき前記試料と同一のプロセスでパターンが形成されたテスト試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被テスト画像を取得する画像取得部と、
前記設計データから、前記被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成し、かつ、前記テスト設計データから、前記被テスト画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成されるテスト展開画像を生成する展開画像生成部と、
前記展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成し、かつ、前記テスト展開画像を前記参照画像生成モデルに入力してテスト参照画像を生成する参照画像生成部であって、前記参照画像生成モデルのモデルパラメータを前記被検査画像と前記参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成部と、
前記テスト参照画像の基準パターンの測定値と、前記被テスト画像の基準パターンの測定値から求められた前記基準パターンの変換差を記憶する変換差記憶部と、
前記変換差記憶部に記憶された前記変換差を用いて、前記参照画像と前記被検査画像のいずれか一方の被検査パターンの測定値を補正する測定値補正部と、
前記測定値補正部において前記参照画像を補正した場合には、補正された前記参照画像の被検査パターンの測定値と、前記被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し、前記測定値補正部において前記被検査画像を補正した場合には、補正された前記被検査画像の被検査パターンの測定値と、前記参照画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する測定値比較部と、
を有することを特徴とするパターン検査装置。
【請求項9】
設計データに基づきパターンが形成された試料に電子線または光線を照射し、画像センサにより透過像または反射像を撮像することで、画素毎の階調値情報である画素データで構成される被検査画像を取得する画像取得工程と、
前記設計データから、前記被検査画像と同一のフォーマットであって、画素毎の階調値情報である画素データで構成される展開画像を生成する展開画像生成工程と、
前記展開画像を参照画像生成モデルに入力して参照画像を生成する参照画像生成部であって、前記参照画像生成モデルのモデルパラメータを前記被検査画像と前記参照画像との間で画素の階調値の差が最小化されるよう最適化する参照画像生成工程と、
前記参照画像の基準パターンの測定値と、前記被検査画像の基準パターンの測定値から求められた前記基準パターンの変換差を記憶する変換差記憶工程と、
前記変換差記憶部に記憶された前記変換差を用いて、前記参照画像と前記被検査画像のいずれか一方の被検査パターンの測定値を補正する測定値補正工程と、
前記測定値補正部において前記参照画像を補正した場合には、補正された前記参照画像の被検査パターンの測定値と、前記被検査画像の被検査パターンの測定値とを比較し、前記測定値補正部において前記被検査画像を補正した場合には、補正された前記被検査画像の被検査パターンの測定値と、前記参照画像の被検査パターンの測定値とを比較し欠陥の有無を検出する測定値比較工程と、
を有することを特徴とするパターン検査方法。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−2663(P2012−2663A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137823(P2010−137823)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】