説明

パターン電極の製造方法及びパターン電極

【課題】導電性及び透明性、パターニング性、平滑性に優れた電極の製造方法及びその製造方法により製造したパターン電極を提供する。
【解決手段】第一の支持体上に液相法により形成された金属微粒子を含有する導電層を、接着層を介して第二の支持体上に接着させて硬化処理を施した後に、第一の支持体を剥離することで該導電層を第二の支持体上に転写し、さらに、該導電層に金属微粒子除去液をパターン印刷し、次いで水洗を行うことによって形成するパターン電極の製造方法であって、該接着層が少なくとも水系ポリマー樹脂と液状の架橋剤とを含有することを特徴とするパターン電極の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性及び透明性、パターニング性、平滑性に優れ、また、パターン電極上に設けられた電子デバイス層との導通性に優れたパターン電極の製造方法及びパターン電極に関する。
【背景技術】
【0002】
透明電極は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパー等の電子デバイスに用いられている。
【0003】
従来、透明電極として、Au、Ag、Pt、Cu等の各種金属薄膜や、錫や亜鉛をドープした酸化インジウム(ITO、IZO)、アルミニウムやガリウムをドープした酸化亜鉛(AZO、GZO)、フッ素やアンチモンをドープした酸化錫(FTO、ATO)等の金属酸化物薄膜、TiN、ZrN、HfN等の導電性窒化物薄膜、LaB等の導電性ホウ素化物薄膜が知られており、またこれらを組み合わせたBi/Au/Bi、TiO/Ag/TiO等の各種電極も知られている。上述した透明電極以外にも、CNT(カーボンナノチューブ)や導電性高分子を使用した透明電極も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上述した金属薄膜、窒化物薄膜、ホウ素物薄膜及び導電性高分子薄膜は、高い光透過性と導電性の特性が両立し得ないため、電磁波シールド等の特殊な技術分野や、比較的高い抵抗値でも許容されるようなタッチパネル分野においてのみ使用されている。
【0005】
一方、金属酸化物薄膜は高い光透過性と導電性との両立が可能で耐久性にも優れるため、透明電極の主流となりつつある。特にITOは光透過性と導電性とのバランスがよく、スパッタ法等の真空プロセスのみならず、溶液を用いたウェットプロセスによっても微細な電極パターン形成が容易であることから、各種オプトエレクトロニクス用の透明電極として多用されている。しかしながら、スパッタ法等の真空プロセスで透明導電膜を形成するには、高価な設備が必要である。一方、ウェットプロセスでは、高い導電性を得るためには500℃以上の高温によるアニール処理が必要である。
【0006】
それ以外の透明電極としては、自己組織化銀微粒子によるランダムな網目状構造からなる導電性基板(例えば、特許文献1参照)や、金属ナノワイヤを用いた微細メッシュからなる透明電極が開示されている(例えば、特許文献2参照)。特に銀を用いた金属ナノワイヤでは、銀本来の高い導電率により良好な導電性と透明性を両立することができる。
【0007】
また、金属ナノワイヤを用いた透明電極のパターン形成方法としては、電気伝導性マイクロワイヤを含む印刷インキを用いる方法(例えば、特許文献4参照)、フォトリソグラフィーを用いたナノワイヤのパターニング方法(例えば、特許文献5、6参照)等が挙げられる。
【0008】
しかし、印刷インキを用いる方法では、バインダーに起因する金属ナノワイヤ間の接触抵抗増大により導電性が低下することがあった。また、フォトリソグラフィーを用いた方法では、工程が煩雑で生産性に劣るだけでなく、金属ナノワイヤの微細メッシュ間に入り込んだレジスト樹脂の除去が不十分で透過率が低下したり、またレジスト除去する際に金属微粒子も一緒に脱離したりすることがあった。このように、従来のパターン形成方法では満足いくものではなかった。
【0009】
一方、LCDや有機エレクトロルミネッセンス素子用の電極には、表面が平滑な透明電極が必要とされている。平滑な透明電極を作製する方法としては、平滑な表面を有する仮支持板上に気相堆積法により電極層を形成し、この電極層を熱硬化性もしくは紫外線硬化性の樹脂層を備えた樹脂フィルムを用いて仮支持板から引き剥がすことにより平滑性の高い電極層付き可撓性樹脂フィルムを作製する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、本発明のような液相法により形成された金属微粒子を含有するような電極層の場合、粒子の保持性が悪く、脱落することがあったり、粒子の凹凸により平滑性がえられないことがあった。また、本発明で利用する金属微粒子除去液を用いたパターン形成においては除去液がうまく浸透せず、パターン形成できないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許出願公開第2007/114076号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0074316号明細書
【特許文献3】特開2006−236626号公報
【特許文献4】特表2003−515622号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0196707号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0143906号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「透明導電膜の技術」第80頁(オーム社出版局)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、前記事情に鑑みてなされたものであり、導電性及び透明性、パターニング性、平滑性に優れた電極の製造方法及び前記製造方法により製造したパターン電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0014】
1.第一の支持体上に液相法により形成された金属微粒子を含有する導電層を、接着層を介して第二の支持体上に接着させて硬化処理を施した後に、第一の支持体を剥離することで該導電層を第二の支持体上に転写し、さらに、該導電層に金属微粒子除去液をパターン印刷し、次いで水洗を行うことによって形成するパターン電極の製造方法であって、該接着層が少なくとも水系ポリマー樹脂と液状の架橋剤とを含有することを特徴とするパターン電極の製造方法。
【0015】
2.前記水系ポリマー樹脂が水溶性樹脂であることを特徴とする前記1に記載のパターン電極の製造方法。
【0016】
3.前記水系ポリマー樹脂が架橋剤と反応する基を有することを特徴とする前記1または2に記載のパターン電極の製造方法。
【0017】
4.前記接着層がさらに疎水性ポリマー樹脂を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のパターン電極の製造方法。
【0018】
5.前記金属微粒子が金属ナノワイヤであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のパターン電極の製造方法。
【0019】
6.前記金属微粒子除去液が、写真用漂白定着液を含有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のパターン電極の製造方法。
【0020】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載のパターン電極の製造方法により製造されたことを特徴とするパターン電極。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、導電性及び透明性、パターニング性、平滑性に優れた電極の製造方法とパターン電極を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明は、接着層が少なくとも水系ポリマー樹脂と液状の架橋剤とを含有することにより、接着層が適度に変形でき、その結果、接着時に金属微粒子を接着層に適度に埋没させて硬化するので保持性と平滑性を発現できる。また、必要以上の接着層の金属微粒子への回りこみが抑えられることで、接着層が完全に金属粒子を被覆してしまうことを防ぐことができ、ポリマー電極上に設けられる電子デバイス層への導通が確保できると考えている。さらに、水系ポリマー樹脂によって、金属微粒子除去液を用いたパターン形成においても、除去液の浸透性を確保できていると考えている。
【0024】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態等について詳細な説明をする。
【0025】
(導電層)
本発明における導電層は、金属微粒子を含有することを特徴とする。本発明における導電層の形成方法は、金属微粒子を含む分散液を塗布、乾燥して膜形成する液相法であれば特に制限はなく、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等の塗布法を用いることが好ましい。また必要に応じて、導電性高分子または金属酸化物を含有する導電層またはバインダー樹脂を設置してもよい。
【0026】
金属微粒子を含有する導電層は、金属微粒子の分散性を確保するために、また、塗布乾燥後の膜において金属微粒子を保持するために何らかの透明樹脂と併用しても良く、こうした樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂等を単独あるいは複数併用して用いることができる。
【0027】
金属微粒子を含有する塗布液に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、エーテル類等)、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0028】
(金属微粒子)
本発明の金属微粒子とは、粒子径が原子スケールからnmサイズの微粒子状の金属のことをいう。金属微粒子の平均粒径としては10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。本発明の金属微粒子において、粒子径の短径がnmサイズであれば、形状として粒子状であってもよく、ロッド状やワイヤ状であってもよいが、導電性及び透明性の観点からワイヤ状の金属ナノワイヤであることが好ましい。
【0029】
(金属ナノワイヤ)
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする繊維状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmサイズの短径を有する多数の繊維状構造体を意味する。
【0030】
本発明に用いられる金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径には特に制限はないが、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均短径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0031】
本発明に係る金属ナノワイヤに用いられる金属としては銅、鉄、コバルト、金、銀等を用いることができるが、導電性の観点から銀が好ましい。また、本発明に係る金属ナノワイヤに用いられる金属は単一で用いてもよいが、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、主成分となる金属と1種類以上の他の金属を任意の割合で含んでもよい。
【0032】
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した銀ナノワイヤの製造方法は、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
【0033】
(接着層)
(水系ポリマー樹脂)
本発明の接着層に用いる水系ポリマー樹脂とは、水溶性のポリマー樹脂、あるいは、吸水性のあるポリマー樹脂を表し、吸水性のあるポリマー樹脂とは水に浸漬した時に、樹脂に対して質量で10%以上吸水する樹脂を表す。中でも、金属微粒子除去液を用いたパターン形成においても、除去液の浸透性をより確保できることから水溶性樹脂であることがより好ましい。また、後述する架橋剤と反応する基を有する化合物であれば、より強固な膜を形成することでパター処理時の耐性がより向上することから、より好ましい。架橋剤と反応する基としては架橋剤によって異なるが、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などをあげることができる。
【0034】
本発明における水系ポリマー樹脂はこうした化合物であれば特に制限はないが、例えば、具体的な化合物としては、ポリビニルアルコールPVA−203、PVA−224、PVA−420(クレハ社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−06、60SH−50、60SH−4000、90SH−100(信越化学工業社製)、メチルセルロースSM−100(信越化学工業社製)、酢酸セルロースL−20、L−40、L−70(ダイセル化学工業社製)、カルボキシメチルセルロースCMC−1160(ダイセル化学工業社製)、ヒドロキシエチルセルロースSP−200、SP−600(ダイセル化学工業社製)、アクリル酸アルキル共重合体ジュリマーAT−210、AT−510(東亞合成社製)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレートなどをあげることができる。
【0035】
(疎水性ポリマー樹脂)
本発明の接着層においては、水系ポリマー樹脂、架橋剤に加えて、さらに、疎水性ポリマー樹脂を併用することもでき、併用することで、パターン処理時の処理耐性をより向上させることができ、より好ましい。疎水性ポリマー樹脂としては、特に、制限はないが、水系ポリマー樹脂と併用することから、疎水性樹脂を水に分散した水分散ポリマーを利用することが好ましい。例えば、公知のポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系、アクリルウレタン系の水分散ポリマーを利用できる。水分散ポリマーの合成方法は、W.R.Sorenson,T.W.Cambell共著、「高分子合成実験法」星野敏雄、依田直也共訳144,152頁(東京化学同人)(1965年)に記載の方法によって合成することが出来る。また、市販の水分散ポリマーも使用できる。
【0036】
こうしたポリマーラテックスの中でも、水系ポリマー樹脂と反応する基、または、架橋剤と反応する基を有する水分散ポリマーであると、より強固な膜を形成できることからより好ましい。
【0037】
(架橋剤)
本発明の接着層に用いる液状の架橋剤とは、溶剤等を含まない剤単独の状態で流動性を有する架橋剤であれば特に制限はなく、公知の架橋剤を使用できる。硬化処理としては熱硬化や紫外線硬化をあげることができるが、第一の支持体と第二の支持体を貼り合わせた状態で硬化処理することから、支持体に紫外線吸収性がある場合にも容易に適用できる熱硬化がより好ましい。さらに、支持体の耐熱性からの制限を考えると100℃から150℃で1から60分程度の加熱処理で反応する剤であることがより好ましい。
【0038】
架橋剤の使用量は架橋剤の種類や併用する水系ポリマー樹脂によっても異なるが、水系ポリマー樹脂に対して10質量%から400質量%であることが好ましく、50質量%から300質量%であることがより好ましい。
【0039】
こうした架橋剤としては、エポキシ系、カルボジイミド系、メラミン系、イソシアネート系、シクロカーボネート系、ヒドラジン系、ホルマリン系等の公知の架橋剤をあげることができる。また、反応促進するために触媒を併用することも好ましい。
【0040】
これらの架橋剤のうち、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤を特に好ましく用いることができる。
【0041】
本発明に用いられるエポキシ系架橋剤としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ系架橋剤の例としては、例えばデナコールEX313、EX614B、EX521、EX512、EX1310、EX1410、EX610U、EX212、EX622、EX721(ナガセケムテックス製)等がある。
【0042】
本発明に用いられるメラミン系架橋剤としては、分子内に2つ以上のメチロール基を有する化合物であり、メラミン架橋剤の例としては、ヘキサメチロールメラミンが挙げられる。また、市販のメラミン系架橋剤の例としては、ベッカミンM−3、ベッカミンFM−180、ベッカミンNS−19(大日本インキ化学工業製)が挙げられる。
【0043】
本発明に用いられるイソシアネート系架橋剤としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。イソシアネート系架橋剤の例としては、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等がある。市販のイソシアネートはスミジュールNN3300(住化バイエルウレタン製)、コロネートL、ミリオネートMR−400(日本ポリウレタン工業製)等があり、これらを利用することも可能である。
【0044】
本発明においては、架橋触媒を併用しても良く、例えば、エポキシ系架橋剤に対してはトリエチレンジアミン、2−メチルイミダゾールなどを利用できる。また、メラミン系架橋剤に対しては、金属塩系触媒、例えば、キャタリストM(大日本インキ化学工業製)、アミン塩系触媒、例えば、キャタリストACX、キャタリスト376(大日本インキ化学工業製)、複合金属塩系触媒、例えば、キャタリストGT(大日本インキ化学工業製)などを利用できる。
【0045】
また、硫酸や硫酸アンモニウム等によりpHを調整することによって架橋反応を促進させても良い。
【0046】
接着層の厚みは、転写後の平滑性が得られるように、適宜決めればよいが、目安としては金属粒子層の厚みの0.1倍から100倍、より好ましくは0.5倍から50倍程度である。
【0047】
(支持体)
本発明に用いられる支持体としては、特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、高い光透過性を有していることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0048】
本発明に用いられる第一の支持体には、転写した導電層の剥離面を平滑にするため、表面の平滑性に優れているものが好ましい。第一の支持体の表面の平滑性(凹凸)は算術平均粗さRaが5nm以下、かつ最大高さRzが50nm以下であることが好ましく、Raが2nm以下、かつRzが30nm以下であることがより好ましく、さらに好ましくはRaが1nm以下、かつRzが20nm以下である。
【0049】
第一の支持体の表面は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等の下塗り層を付与して平滑化してもよいし、研磨等の機械加工によって平滑にすることもできる。また剥離を容易にするために離型層を形成してもよく、離型層の形成材は、公知の離型層を形成するポリマーやワックス等を適宜選択使用でき、例えばパラフィンワックス、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、メラミン系、尿素系、尿素−メラミン系、セルロース系、ベンゾグアナミン系等の樹脂及び界面活性剤を、単独またはこれらの混合物を主成分とした有機溶剤もしくは水に溶解させた塗料をグラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の通常の印刷法で前記支持体上に塗布、乾燥(熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等硬化性塗膜には硬化)させて形成したものがあげられる。離型層の厚さとしては特に制限はなく、0.1〜3μm程度の範囲から適宜採用される。
【0050】
ここで、表面の平滑性(凹凸)は、原子間力顕微鏡(AFM)等による測定から、表面粗さ規格(JIS B 0601−2001)に従い求めることができる。
【0051】
本発明に用いられる第二の支持体には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。フィルム基材が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基材と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。また、フィルム基材には必要に応じてバリアコート層が予め形成されていてもよいし、ハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0052】
(パターン印刷)
本発明における金属微粒子除去液をパターン印刷する方法としては、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法を用いることができる。本発明における金属微粒子除去液を、本発明における金属微粒子を含有する導電層にパターン電極を形成する上で不要となる部分にパターン印刷する。次いで水洗処理を行うことで、パターン電極を形成する上で不要となる部分の金属微粒子を除去し、パターン電極を形成することができる。
【0053】
(金属微粒子除去液)
本発明に用いられる金属微粒子除去液の組成としては、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の現像処理に使用する漂白定着液を好ましく用いることができる。溶液は水溶液であることが好ましいが、下記に記載される漂白剤や定着剤等を溶解することができれば、エタノール等の有機溶媒でもよい。
【0054】
漂白定着液において用いられる漂白剤としては、公知の漂白剤も用いることができ、特に鉄(III)の有機錯塩(例えばアミノポリカルボン酸類の錯塩)、またはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸、過硫酸塩、過酸化水素等が好ましい。
【0055】
これらのうち、鉄(III)の有機錯塩は迅速処理と環境汚染防止の観点から特に好ましい。鉄(III)の有機錯塩を形成するために有用なアミノポリカルボン酸、またはそれらの塩を列挙すると、生分解性のあるエチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、メチルイミノジ酢酸をはじめ、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸等のほか、欧州特許0789275号公報の一般式(I)または(II)で表される化合物を挙げることができる。
【0056】
これらの化合物はナトリウム、カリウム、チリウムまたはアンモニウム塩のいずれでもよい。これらの化合物の中で、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、メチルイミノ二酢酸はその鉄(III)錯塩が好ましい。これらの第2鉄イオン錯塩は錯塩の形で使用してもよいし、第2鉄塩、例えば硫酸第2鉄、塩化第2鉄、硝酸第2鉄、硫酸第2鉄アンモニウム、燐酸第2鉄等とアミノポリカルボン酸等のキレート剤とを用いて溶液中で第2鉄イオン錯塩を形成させてもよい。また、キレート剤を、第2鉄イオン錯塩を形成する以上に過剰に用いてもよい。鉄錯体の中でもアミノポリカルボン酸鉄錯体が好ましく、その添加量は0.01〜1.0モル/リットル、好ましくは0.05〜0.50モル/リットル、さらに好ましくは0.10〜0.50モル/リットル、さらに好ましくは0.15〜0.40モル/リットルである。
【0057】
漂白定着液に使用される定着剤は、公知の定着剤、即ちチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム等のチオシアン酸塩、エチレンビスチオグリコール酸、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール等のチオエーテル化合物及びチオ尿素類等の水溶性のハロゲン化銀溶解剤であり、これらを1種あるいは2種以上混合して使用することができる。また、特開昭55−155354号公報に記載された定着剤と多量の沃化カリウムの如きハロゲン化物等の組み合わせからなる特殊な漂白定着剤等も用いることができる。本発明においては、チオ硫酸塩特にチオ硫酸アンモニウム塩の使用が好ましい。1リットル当たりの定着剤の量は、0.3〜2モルが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.0モルの範囲である。
【0058】
本発明に使用される漂白定着液のpH領域は、3〜8が好ましく、さらには4〜7が特に好ましい。pHを調整するためには、必要に応じて塩酸、硫酸、硝酸、重炭酸塩、アンモニア、苛性カリ、苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を添加することができる。
【0059】
本発明の漂白定着液は、各印刷法に適した粘性を付与するために、増粘剤を添加するのが好ましい。増粘剤としては、水溶性バインダーや微粒子シリカなどが挙げられる。水溶性バインダーの分子量は必要粘度に応じ任意に選択することができる。
【0060】
また、漂白定着液には、水溶性バインダーの他にも各種の消泡剤あるいは界面活性剤、ポリビニルピロリドン、メタノール等の有機溶媒を含有させることができる。漂白定着液は、保恒剤として亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等)、重亜硫酸塩(例えば、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム等)、メタ重亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸アンモニウム等)等の亜硫酸イオン放出化合物や、p−トルエンスルフィン酸、m−カルボキシベンゼンスルフィン酸等のアリールスルフィン酸等を含有するのが好ましい。これらの化合物は亜硫酸イオンやスルフィン酸イオンに換算して約0.02〜1.0モル/リットル含有させることが好ましい。
【0061】
保恒剤としては、上記のほか、アスコルビン酸やカルボニル重亜硫酸付加物、あるいはカルボニル化合物等を添加してもよい。さらには緩衝剤、キレート剤、消泡剤、防カビ剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0062】
(パターン電極)
本発明のパターン電極におけるパターン部の全光線透過率は、60%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であることが望ましい。全光透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0063】
本発明のパターン電極におけるパターン部の電気抵抗値としては、表面比抵抗として10Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257、等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0064】
本発明のパターン電極には、アンカーコートやハードコート等を付与することもできる。また必要に応じて、導電性高分子または金属酸化物を含有する導電層を設置してもよい。
【0065】
本発明のパターン電極は、LCD、エレクトロルミネッセンス素子、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネル等の透明電極、電子ペーパーならびに電磁波遮蔽材等に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0067】
《パターン電極の作製》
パターン電極TC−10の作製(発明例)
金属微粒子として、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、PVP K30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、水洗処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
【0068】
調製した銀ナノワイヤ分散液を、ハードコート加工を施したポリエチレンテレフタレートフィルム支持体のハードコート面に、銀ナノワイヤの目付け量が0.06g/mとなるように、銀ナノワイヤ分散液をスピンコーターを用いて塗布、乾燥させて銀ナノワイヤ塗布フィルムを作製した。
【0069】
次に、易接着加工を施された二軸延伸PETフィルムA4100(東洋紡社製)の易接着加工を施された面に、下記接着層塗布液−1を、バーコーターを用いて乾燥膜厚が1.5μmの厚みになるように塗布して90℃−20秒の乾燥処理を施した後、接着層と、先に準備した銀ナノワイヤ塗布フィルムの塗布面側とが対面するように圧着し、120℃、20分の熱処理を施して硬化させ、その後ハードコートフィルム支持体を剥離し、銀ナノワイヤ転写フィルムを得た。
【0070】
接着層塗布液−1
ベッカミンFM−180(大日本インキ化学工業製) 5.45g
キャタリストGT(大日本インキ化学工業製) 1.64g
PVA−224(クレハ製) 4.00g
純水 88.91g
得られた銀ナノワイヤ転写フィルムに、10mmのストライプ状パターンを形成したスクリーン印刷用ポリエステルメッシュ(ミタニマイクロニクス株式会社製;255T)を用いて、下記、金属微粒子除去液BF−1の粘度をカルボキシメチルセルロースナトリウム(SIGMA−ALDRICH社製;C5013 以下、CMCと略記する)で10Pa・s(10000cP)に調整し、転写された銀ナノワイヤを含む導電性層の上に塗布膜厚30μmとなるようスクリーン印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで30秒水に浸漬して水洗処理を行い、ストライプ状のパターン電極TC−10を作製した。
【0071】
〈金属微粒子除去液BF−1の作製〉
エチレンジアミン4酢酸第2鉄アンモニウム 60g
エチレンジアミン4酢酸 2.0g
メタ重亜硫酸ナトリウム 15g
チオ硫酸アンモニウム 70g
マレイン酸 5.0g
純水で1Lに仕上げ、硫酸またはアンモニア水でpHを5.5に調整し金属ナノワイヤ除去剤BF−1を作製した。
【0072】
パターン電極TC−11の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−2とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−11を作製した。
【0073】
接着層塗布液−2
ベッカミンFM−180(大日本インキ化学工業製) 10.9g
キャタリストGT(大日本インキ化学工業製) 3.27g
PVA−224(クレハ製) 4.00g
純水 81.83g
パターン電極TC−12の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−3とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−12を作製した。
【0074】
接着層塗布液−3
ベッカミンM−3(大日本インキ化学工業製) 7.5g
キャタリストACX(大日本インキ化学工業製) 0.75g
PVA−224(クレハ製) 4.0g
純水 87.75g
パターン電極TC−13の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−4とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−13を作製した。
【0075】
接着層塗布液−4
ベッカミンFM−180(大日本インキ化学工業製) 10.9g
キャタリストGT(大日本インキ化学工業製) 3.27g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業製) 8.00g
純水 81.83g
パターン電極TC−14の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−5とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−14を作製した。
【0076】
接着層塗布液−5
デナコールEX521(ナガセケムテックス製) 8.00g
硫酸アンモニウム 0.25g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業製) 8.00g
純水 83.75g
パターン電極TC−15の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−6とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−15を作製した。
【0077】
接着層塗布液−6
デナコールEX810(ナガセケムテックス製) 8.00g
硫酸アンモニウム 0.25g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業製) 8.00g
純水 83.75g
パターン電極TC−16の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−7とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−16を作製した。
【0078】
接着層塗布液−7
デナコールEX810(ナガセケムテックス製) 8.00g
硫酸アンモニウム 0.25g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業製) 8.00g
純水 83.75g
パターン電極TC−17の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−8とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−17を作製した。
【0079】
接着層塗布液−8
デナコールEX521(ナガセケムテックス製) 2.00g
硫酸アンモニウム 0.05g
PVA−224(クレハ製) 2.00g
ブチルアクリレート30質量%、t−ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%、2−ヒドロキシエチルアクリレート25質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%) 20.0g
純水 75.95g
パターン電極TC−18の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−9とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−18を作製した。
【0080】
接着層塗布液−9
デナコールEX521(ナガセケムテックス製) 2.00g
硫酸アンモニウム 0.05g
PVA−224(クレハ製) 3.00g
ブチルアクリレート30質量%、t−ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%、グリシジルメタクリレート25質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)
16.67g
純水 78.28g
パターン電極TC−19の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−10とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−19を作製した。
【0081】
接着層塗布液−10
デナコールEX521(ナガセケムテックス製) 0.50g
硫酸アンモニウム 0.05g
ポリヒドロキシエチルアクリレート 1.50g
ブチルアクリレート30質量%、t−ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%、グリシジルメタクリレート25質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)
26.67g
純水 71.28g
パターン電極TC−20の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−11とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−20を作製した。
【0082】
接着層塗布液−11
グリオキサール40質量%水溶液 2.50g
硫酸アンモニウム 0.05g
PVA−224(クレハ製) 2.00g
ブチルアクリレート30質量%、t−ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%、グリシジルメタクリレート25質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)
23.33g
純水 72.12g
パターン電極TC−21の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−12とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−21を作製した。
【0083】
接着層塗布液−12
ベッカミンFM−180(大日本インキ化学工業製) 3.64g
キャタリストGT(大日本インキ化学工業製) 1.09g
PVA−224(クレハ製) 4.00g
ブチルアクリレート30質量%、t−ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%、グリシジルメタクリレート25質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)
13.33g
純水 77.94g
パターン電極TC−22の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−13とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−22を作製した。
【0084】
接着層塗布液−13
デナコールEX521(ナガセケムテックス製) 2.00g
硫酸アンモニウム 0.05g
PVA−224(クレハ製) 2.00g
バイロナールMD−1400(東洋紡績製) 40.0g
純水 55.95g
パターン電極TC−23の作製(発明例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−14とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−23を作製した。
【0085】
接着層塗布液−14
酢酸セルロースL−70(ダイセル化学工業製) 2.0g
スミジュールNN3300(住化バイエルウレタン製) 4.0g
トルエン 20g
メチルエチルケトン 74g
パターン電極TC−24の作製(発明例)
金属微粒子含有導電層として、銀ナノワイヤを用いた代わりに、銀粉末(最大粒径が0.12ミクロン未満)4g、1,2−ジクロロエタンの30g、分子量が100,000〜200,000のエチルセルロースの尿素変性セルロースの結合剤0.2gを混合し、出力180Wの超音波で1.5分間均質化し、蒸留水を15g混合し、得られた乳濁液を出力180Wの超音波で30秒間均質化したものを用いた。これを用いて、ガラス基板に銀粒子の自己組織化膜を作製した以外はパターン電極TC−11と同様にしてパターン電極TC−24を作製した。
【0086】
パターン電極TC−30の作製(比較例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−20とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−30を作製した。
【0087】
接着層塗布液−20
ベッカミンM−3(大日本インキ化学工業製) 11.22g
キャタリストACX(大日本インキ化学工業製) 1.12g
純水 87.66g
パターン電極TC−31の作製(比較例)
接着層塗布液を下記接着塗布液−21とし、熱硬化処理の代わりにUV硬化処理とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−31を作製した。
【0088】
接着層塗布液−20
SP−1 3.0g
EP−1 20.0g
OXT−221(東亞合成社製) 40.4g
OXT−212(東亞合成社製) 25.0g
OXT−101(東亞合成社製) 3.0g
プロピレンカーボネート 3.0g
トリイソプロパノールアミン 0.10g
X−22−4272(信越シリコーン社製:変性シリコンオイル) 0.50g
アセトン 900g
【0089】
【化1】

【0090】
パターン電極TC−32の作製(比較例)
接着層塗布液を下記接着層塗布液−22とした以外はパターン電極TC−10と同様にしてパターン電極TC−32を作製した。しかしながら、銀ナノワイヤ層を転写することができなかった。
【0091】
接着層塗布液−22
PVA−224(クレハ製) 6.0g
純水 94g
得られた、各パターン電極TC−10〜24、30〜32について以下の評価を行い、結果を表1に示す。
【0092】
(転写性評価)
○:金属粒子層が転写できた
×:金属粒子層が転写できなかった。
【0093】
(パターニング適性評価)
○:除去液を印刷した部分の金属が除去できた
×:除去液を印刷した部分の金属が除去できなかった
(耐水性評価)
1:0.30秒の超音波洗浄処理で問題あり
2:30秒の超音波洗浄処理で問題ない
3:10分間の超音波洗浄処理で問題なし。
【0094】
セミコクリーン56(フルイチ化学社製)にフィルムを浸漬し、超音波洗浄器ブランソニック3510J−MT(日本エマソン社製)により0.30秒、30秒及び10分間の超音波洗浄処理を施した後、流水により3分間水洗処理した。
【0095】
超音波洗浄処理前後の表面抵抗をダイアインスツルメンツ製抵抗率計ロレスタGPを用いて測定し、前後の変化10%以内を問題なしとした。1以上が必要で、2がより好ましく、3が最も好ましい。
【0096】
(導通性評価)
各透明導電性フィルムを電流測定可能なAFMにより、表面の導通性を確認した。
【0097】
電流測定可能なAFMとして、エスアイアイナノテクノロジー社製S−Imageを用いて、銀ペーストにより試料と試料台との導通を確保し、感知レバー側にマイナス5Vの電圧を印加し、80μm四方の範囲をスキャンして、その領域の電流像と形状像とを同時に測定した。
【0098】
○;少なくとも一部の金属ナノワイヤに対応した電流像が見られる
×;ほとんど電流が流れず、金属ナノワイヤに対応した電流像が見られない。
【0099】
なお、下記、金属微粒子除去液E−2をCMCで10Pa・s(10000cP)に調整して用いた場合も上記と同様の結果が得られた。
【0100】
〈金属微粒子除去液E−2の調製〉
純水を溶媒として硫酸及び硫酸第二鉄の濃度が、硫酸5質量%、硫酸第二鉄10質量%となるように金属微粒子除去液E−2を調製した。
【0101】
(有機EL素子の作製)
得られた、各パターン電極TC−10〜24、30〜32の上に下記層を形成して有機EL素子を作製した。
【0102】
〈面電極化兼正孔注入層の形成〉
正孔注入材料としてH.C.Starck社製、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(CLEVIOS P AI4083)をスピンコート装置で塗布した後、80℃、60分間乾燥して、厚さ200nmの正孔注入層を形成した。なお、この正孔注入層はパターン電極の窓部にも電気を運ぶ面電極化層としても働く。
【0103】
〈正孔輸送層の形成〉
正孔注入層上に、1,2−ジクロロエタン中に1質量%となるように正孔輸送材料の4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)を溶解させた正孔輸送層形成用塗布液をスピンコート装置で塗布した後、80℃、60分間乾燥して、厚さ40nmの正孔輸送層を形成した。
【0104】
〈発光層の形成〉
正孔輸送層が形成された各フィルム上に、ホスト材のポリビニルカルバゾール(PVK)に対して、赤ドーパント材BtpIr(acac)が1質量%、緑ドーパント材Ir(ppy)が2質量%、青ドーパント材FIr(pic)が3質量%にそれぞれなるように混合し、PVKと3種ドーパントの全固形分濃度が1質量%となるように1,2−ジクロロエタン中に溶解させた発光層形成用塗布液をスピンコート装置で塗布した後、100℃、10分間乾燥して、厚さ60nmの発光層を形成した。
【0105】
【化2】

【0106】
〈電子輸送層の形成〉
形成した発光層上に、電子輸送層形成用材料としてLiFを5×10−4Paの真空下にて蒸着し、厚さ0.5nmの電子輸送層を形成した。
【0107】
〈カソード電極の形成〉
形成した電子輸送層の上に、Alを5×10−4Paの真空下にて蒸着し、厚さ100nmのカソード電極を形成した。
【0108】
〈封止膜の形成〉
形成した電子輸送層の上に、ポリエチレンテレフタレートを基材とし、Alを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を使用した。アノード電極及びカソード電極の外部取り出し端子が形成できるように端部を除きカソード電極の周囲に接着剤を塗り、可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ、パターン電極TC−10〜24、30〜32にそれぞれ対応する有機EL素子TC−10〜24、30〜32を作製した。
【0109】
(EL発光評価)
得られた、各有機EL素子TC−10〜24、30〜32について、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を印加して発光させ以下の基準で評価し、結果を表1に示す。
【0110】
○:5V以下の電圧で発光
×:5V印加では発光せず。
【0111】
【表1】

【0112】
水系樹脂を含まない架橋剤のみの接着層(TC−30、31)では、転写性や耐水性は良いが、金属ナノワイヤが架橋樹脂に埋没するために金属除去液ではパターニングできず、また、導通も不良で、結果としてEL素子の電極として利用した時の発光も不良であることが分かる。一方、本発明のTC−10から24では、転写性も良好で、耐水性も最低限のレベルをクリアし、導通性も問題なく、EL素子の電極として利用した時の発光も問題ないことが分かる。特に、接着層として水系ポリマー樹脂と架橋剤に加えて疎水性ポリマー樹脂も含有するTC−17から22はより高い耐水性を有していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の支持体上に液相法により形成された金属微粒子を含有する導電層を、接着層を介して第二の支持体上に接着させて硬化処理を施した後に、第一の支持体を剥離することで該導電層を第二の支持体上に転写し、さらに、該導電層に金属微粒子除去液をパターン印刷し、次いで水洗を行うことによって形成するパターン電極の製造方法であって、該接着層が少なくとも水系ポリマー樹脂と液状の架橋剤とを含有することを特徴とするパターン電極の製造方法。
【請求項2】
前記水系ポリマー樹脂が水溶性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のパターン電極の製造方法。
【請求項3】
前記水系ポリマー樹脂が架橋剤と反応する基を有することを特徴とする請求項1または2に記載のパターン電極の製造方法。
【請求項4】
前記接着層がさらに疎水性ポリマー樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン電極の製造方法。
【請求項5】
前記金属微粒子が金属ナノワイヤであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン電極の製造方法。
【請求項6】
前記金属微粒子除去液が、写真用漂白定着液を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン電極の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のパターン電極の製造方法により製造されたことを特徴とするパターン電極。

【公開番号】特開2010−263067(P2010−263067A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112599(P2009−112599)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】