説明

パッド洗浄装置およびパッド洗浄方法

【課題】多孔質セラミックで構成された保持パッドを従来よりも高い洗浄力で洗浄する。
【解決手段】保持パッド1の多孔質セラミックで構成された保持部3に対し、水とエアとの混合流体である二流体を噴出させて保持部3内の孔に混入する屑を洗い出す二流体噴出洗浄工程と、保持部3を吸引する吸引洗浄工程とを、一定時間ごとに複数回交互に繰り返して保持部3を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの加工装置に具備されワークを負圧作用で吸着して保持した状態で搬送する搬送用保持パッド等のパッドを洗浄するためのパッド洗浄装置およびパッド洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハは、近年の各種電子機器の小型化・薄型化に伴い一層の薄化が求められている。そのため、研削によって半導体ウェーハの厚さが100μm以下と比較的薄く加工された場合、チップ化した後の強度の維持が問題になっている。強度の低下は研削処理によって被加工面に残る機械的ダメージが主な原因であるため、研削処理を行った後に被加工面をポリッシュやエッチングすることで機械的ダメージを除去することが行われている。ところで、研削装置等の半導体ウェーハの加工装置においては、径の大きな半導体ウェーハを安全に次工程に搬送する手段として、セラミック等の多孔質体からなる真空吸着パッドを備えた搬送手段を用いることが知られている(特許文献1等参照)。このようなパッドは、製造の過程で孔の中にセラミックの屑等が混入する場合が多く、したがってパッドは超音波洗浄等の手段で洗浄されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−021952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかして、超音波洗浄ではパッド中の孔に混入している屑を十分に洗い出すことができないという問題があった。屑がパッドの孔の中に残留した状態で半導体ウェーハを吸着して搬送すると微小な傷がついて半導体ウェーハの強度が劣化するおそれがあり、この問題は半導体ウェーハが薄ければ薄いほど顕著となる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その主な技術的課題は、従来よりも洗浄力が高いパッド洗浄装置およびパッド洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパッド洗浄装置は、多孔質セラミックで構成された保持部を備えた保持パッドの該保持部に水を供給する水供給路と、前記保持部にエアを供給するエア供給路と、前記保持部に吸引力を伝達する吸引路とを有し、ウェーハ加工装置に用いられる前記保持パッドを洗浄するパッド洗浄装置であって、前記水供給路に接続される水供給源と、前記エア供給路に接続されるエア供給源と、前記吸引路に接続される吸引源と、前記水供給源から前記水供給路を介して前記保持部に水を供給する水弁と、前記エア供給源から前記エア供給路を介して前記保持部にエアを供給するエア弁と、前記吸引路を介して前記保持部に前記吸引力を伝達させる吸引弁と、前記水弁と前記エア弁とを開放して前記吸引弁を閉じた状態を二流体噴出動作とし、該水弁と該エア弁とを閉じて該吸引弁を開放した状態を吸引動作とした場合に、該二流体噴出動作と該吸引動作を一定時間ごとに複数回交互に繰り返す様に該水弁と該エア弁と該吸引弁とを制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0007】
次に、本発明のパッド洗浄方法は、多孔質セラミックで構成された保持部を備えた保持パッドの該保持部に水を供給する水供給路と、前記保持部にエアを供給するエア供給路と、前記保持部に吸引力を伝達する吸引路とを有する洗浄装置によって、ウェーハ加工装置に用いられる前記保持パッドを洗浄するパッド洗浄方法であって、前記水供給路を介して前記保持部に水を供給するとともに前記エア供給路を介して該保持部にエアを供給することによって二流体噴出洗浄を行う工程と、前記吸引路を介して前記保持部に吸引力を発生させる吸引洗浄を行う工程と、を一定時間ごとに複数回交互に繰り返すことを特徴とする。
【0008】
本発明で洗浄される保持パッドに吸着して保持されるウェーハの種類は特に限定はされないが、例えば、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)等からなる半導体ウェーハや、サファイア(Al)からなるウェーハ等が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来よりも洗浄力が高いパッド洗浄装置およびパッド洗浄方法が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗浄装置の斜視図であって、(a)ケースの蓋体が閉じた状態、(b)ケースの蓋体が開いた状態を示している。
【図2】一実施形態の洗浄装置で洗浄される保持パッドの断面図である。
【図3】一実施形態の洗浄装置で保持パッドの保持部を吸引洗浄している状態を示す断面図である。
【図4】一実施形態の洗浄装置の配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、一実施形態の洗浄装置10、および洗浄装置10で洗浄される保持パッド1を示している。
【0012】
(1)保持パッド
保持パッド1から先に説明すると、図2に示すように、保持パッド1は円板状の枠体2によって外形が形成されている。枠体2は、ステンレス等の中実な材料によって円板状に形成されたものである。枠体2の下面には、多孔質セラミックで構成された円板状の保持部3が嵌合して固定されている。枠体2の上面には、枠体2の中心から径方向に延びて周縁まで延びる直方体状のブロック部4が固着されている。
【0013】
ブロック部4内には、ブロック部4の長手方向に延びる吸引路4aが形成されている。枠体2の上面の中心には吸引孔2aが形成されており、さらに枠体2の保持部3の上方には、吸引孔2aに連通する吸引空間2bが形成されている。ブロック部4の吸引路4aは吸引孔2aに連通しており、したがって吸引空間2bは吸引孔2aを介してブロック部4の吸引路4aに連通している。
【0014】
保持パッド1は、図2に示すように保持部3の下面である保持面3aにウェーハWを吸着して保持し、ウェーハWを搬送するように、例えば、ウェーハWを研削する研削装置等のウェーハ加工装置に設けられた旋回アームにブロック部4が接続されて用いられる。該アームには、ブロック部4の吸引路4aに連通し、かつ、エアの吸引源に連通する吸引路が形成され、該吸引源が作動することにより、吸引路4a、吸引孔2a、吸引空間2bを経て保持部3内の空気が図2の矢印Aのように吸引され、保持面3aに負圧が発生してウェーハWが保持面3aに吸着して保持される。保持パッド1に保持されるウェーハWは、例えば保持パッド1の径と同等の径を有するものとされる。
【0015】
(2)洗浄装置
(2−1)洗浄装置の構成
続いて、図1に示す洗浄装置10の構成を説明する。洗浄装置10は、ケース11と、ケース11内に配設された円板状のテーブル20および供給/吸引管部30を有している。ケース11は直方体状のケース本体12と、ケース本体12にヒンジ結合されてケース本体12の上部開口を開閉する蓋体13とから構成されている。図1(a)は蓋体13が閉じた状態を示し、図1(b)は蓋体13が開けられた状態を示している。
【0016】
図1(b)に示すように、ケース本体12内の上部に、水平なプレート14を介して上記テーブル20が固定されている。そしてテーブル20の周囲の所定箇所に、上下方向に延びる上記供給/吸引管部30が配設されている。
【0017】
図3に示すように、テーブル20の上面には、保持パッド1に対応する凹所21が形成されている。供給/吸引管部30の上端にはジョイント部31が設けられており、このジョイント部31を介して、保持パッド1のブロック部4が着脱可能に接続されるようになっている。すなわち保持パッド1はブロック部4を介して供給/吸引管部30のジョイント部31に接続される。ジョイント部31を介して供給/吸引管部30に接続された保持パッド1は、保持部3がテーブル20の上面に対し同心状に対向配置される。供給/吸引管部30およびジョイント部31には、接続されたブロック部4の吸引路4aに連通する管路30aが形成されている。
【0018】
図1に示すように、ケース本体12の下部には、供給/吸引管部30に接続される水供給管部41とエア供給管部51が挿入されている。図4に示すように、水供給管部41は水供給源40に接続され、エア供給管部51はエア供給源50に接続されている。水供給管部41とエア供給管部51は合流しており、合流点60よりも下流側の合流管部61が供給/吸引管部30に接続している。合流管部61には、ソレノイドバルブ(水弁、エア弁)62が設けられている。水供給管部41とエア供給管部51においては、水供給源40およびエア供給源50の近傍に、開閉バルブ42,52がそれぞれ設けられている。水供給管部41における開閉バルブ42と合流点60との間には上流側より水流量計43とチェックバルブ44が設けられており、エア供給管部51における開閉バルブ52と合流点60との間には上流側よりエア流量計53とチェックバルブ54が設けられている。
【0019】
また、エア供給管部51における開閉バルブ52とエア流量計53との間からは吸引用エア供給管部71が分岐している。この吸引用エア供給管部71は、ケース本体12の下部に挿入されたドレイン管72(図1参照)に接続されている。吸引用エア供給管部71には、供給/吸引管部30から分岐した吸引管部(吸引路)73が合流しており、その合流点が、吸引管部73を経て供給/吸引管部30の管路30a内のエアを吸引する吸引源(エジェクター)70として構成されている。
【0020】
吸引管部73の途中には、ソレノイドバルブ(吸引弁)74が設けられている。このソレノイドバルブ74を開放し、合流管部61のソレノイドバルブ62を閉じた状態で、開閉バルブ52を開けてエア供給源50からエア供給管部51にエアを供給すると、吸引用エア供給管部71を流れてドレイン管72から排出されるエアの流れによって吸引管部73が負圧となり、この吸引管部73の負圧が供給/吸引管部30に伝達して管路30a内のエアが吸引される。
【0021】
図4に示した各バルブ42,52,62,74の開閉動作を含む当該洗浄装置10の動作は制御部80によって制御され、制御部80への制御プログラム等の入力は、蓋体13の上面に設けられた操作パネル81を用いて行われる(図1(a)参照)。
【0022】
図4において示される各管部のうち、水または水とエアを保持パッド1に向けて供給する経路が一点鎖線、エアを保持パッド1に向けて供給する経路が実線、保持パッド1の保持部3を吸引する経路が破線で示されている。本実施形態では、水供給管部41、合流管部61および供給/吸引管部30により本発明の水供給路が構成され、エア供給管部51、合流管部61および供給/吸引管部30により本発明のエア供給路が構成され、供給/吸引管部30と吸引管部73とにより本発明の吸引路が構成されている。
【0023】
(2−2)洗浄装置の動作
次に、上記構成の洗浄装置10によって保持パッド1を洗浄する動作例を説明する。洗浄装置10の動作は上記のように制御部80で制御され、該動作例は、本発明のパッド洗浄方法を含んでいる。
【0024】
はじめに、図3に示すように、オペレータにより保持パッド1のブロック部4を供給/吸引管部30のジョイント部31に接続して保持パッド1を洗浄装置10にセットし、蓋体13を閉じる。なお、この場合には保持パッド1にダミーウェーハW1を吸着して保持しながら洗浄するものとし、そのダミーウェーハW1をテーブル20の凹所21に予め載置しておく。
【0025】
次いで、以下のようにして制御部80による制御が開始される。図4において、合流管部61のソレノイドバルブ62を開放し、かつ吸引管部73のソレノイドバルブ74を閉じてから、水供給管部41とエア供給管部51の各開閉弁42,52を開き、二流体噴出動作が行われる(二流体噴出洗浄を行う工程)。
【0026】
二流体噴出動作では、水供給源40から供給される水が水供給管部41を通って合流管部61のソレノイドバルブ62に至り、エア供給源50から供給されるエアがエア供給管部51を通って合流管部61のソレノイドバルブ62に至る。水とエアは合流点60で合流し、ソレノイドバルブ62を通過することにより混合してミスト状となった流体(水とエアの二つの流体の混合流体、すなわち二流体)となる。この二流体が、供給/吸引管部30を通って保持パッド1のブロック部4の吸引路4a、吸引孔2aから吸引空間2bに至って保持部3に噴出される。保持部3に噴出される二流体は保持部3の孔を通過して保持面3aから排出されるが、保持部3を通過する間に孔に混入しているセラミックの屑等が洗い出されて洗浄される。保持部3から排出される水は、ドレイン管72からケース11の外部に排出される。
【0027】
二流体噴出動作時の、水供給源40から供給される水の圧力および流量と、エア供給源50から供給されるエアの圧力および流量は、適切な二流体が生成されるように適宜に設定されるが、例えば、水は圧力が0.3MPaで流量が1L/min、エアは圧力が0.5MPaで流量が6L/minといった条件とされる。水の流量は水流量計43を確認しながら制御され、エアの流量はエア流量計53を確認しながら制御される。また、水とエアの圧力は、図示せぬそれぞれの圧力計で確認しながら制御される。
【0028】
上記二流体噴出動作が一定時間なされると、合流管部61のソレノイドバルブ62を閉じて二流体噴出動作を一旦停止し、吸引管部73のソレノイドバルブ74を開放して、吸引動作が行われる(吸引洗浄を行う工程)。
【0029】
エア供給源50から供給されたエアは吸引用エア供給管部71に分岐して流入し、吸引源70を通ってドレイン管72からケース11の外部に排出されるが、このエアの流れにより、吸引管部73のソレノイドバルブ74よりも吸引源70側の部分は負圧となっている。吸引動作ではソレノイドバルブ74が開放していることから、該負圧が供給/吸引管部30に伝達する。このため、供給/吸引管部30の管路30a内のエアが吸引され、さらに、保持パッド1のブロック部4の吸引路4a、吸引孔2aから吸引空間2bに負圧が伝達して保持部3に吸引力が発生する。
【0030】
これにより、上記二流体が噴出されることで保持部3内に残存していた水分は吸引されて図3の矢印Bに示すように供給/吸引管部30を流れていき、吸引管部73を経てドレイン管72から排出される。保持パッド1の保持部3の孔に屑が残存していると、その屑は水分とともに吸引され、保持部3が洗浄される。なお、この吸引洗浄の際には、図3に示すようにダミーウェーハW1は保持面3aに吸着する。
【0031】
制御部80は、以上の二流体噴出動作と吸引動作を一定時間ごとに複数回交互に繰り返すように、各ソレノイドバルブ62,74の開閉状態を制御する。各動作に費やす時間および繰り返し回数は任意であるが、例えば、二流体噴出動作を30秒行い、次に吸引動作を30秒行うことを1セットとし、これを1000セット行うといった洗浄動作が行われる。
【0032】
(2−3)洗浄装置の効果
本実施形態の洗浄装置10によれば、保持パッド1の保持部3に水とエアの混合流体である二流体を噴出して保持部3を洗浄する二流体噴出洗浄を行う工程と、保持部3を吸引する吸引洗浄を繰り返し交互に行うことにより、保持部3の孔に混入している屑を効果的に除去して洗浄することができる。そしてその洗浄力は、従来の超音波洗浄等の洗浄方法と比べると高く、多孔質セラミックで構成されたパッドを洗浄するものとして有効である。そして、このように洗浄された保持パッド1を用いた搬送手段においては、ウェーハを傷つけることなく搬送することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…保持パッド
3…保持部
10…パッド洗浄装置
30…供給/吸引管部(水供給路、エア供給路)
40…水供給源
41…水供給管部(水供給路)
50…エア供給源
51…エア供給管部(エア供給路)
61…合流管部(水供給路、エア供給路)
62…ソレノイドバルブ(水弁、エア弁)
70…吸引源
73…吸引管部(吸引路)
74…ソレノイドバルブ(吸引弁)
80…制御部
W…ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質セラミックで構成された保持部を備えた保持パッドの該保持部に水を供給する水供給路と、前記保持部にエアを供給するエア供給路と、前記保持部に吸引力を伝達する吸引路とを有し、ウェーハ加工装置に用いられる前記保持パッドを洗浄するパッド洗浄装置であって、
前記水供給路に接続される水供給源と、
前記エア供給路に接続されるエア供給源と、
前記吸引路に接続される吸引源と、
前記水供給源から前記水供給路を介して前記保持部に水を供給する水弁と、
前記エア供給源から前記エア供給路を介して前記保持部にエアを供給するエア弁と、
前記吸引路を介して前記保持部に前記吸引力を伝達させる吸引弁と、
前記水弁と前記エア弁とを開放して前記吸引弁を閉じた状態を二流体噴出動作とし、該水弁と該エア弁とを閉じて該吸引弁を開放した状態を吸引動作とした場合に、該二流体噴出動作と該吸引動作を一定時間ごとに複数回交互に繰り返す様に該水弁と該エア弁と該吸引弁とを制御する制御部と、
を有することを特徴とするパッド洗浄装置。
【請求項2】
多孔質セラミックで構成された保持部を備えた保持パッドの該保持部に水を供給する水供給路と、前記保持部にエアを供給するエア供給路と、前記保持部に吸引力を伝達する吸引路とを有する洗浄装置によって、ウェーハ加工装置に用いられる前記保持パッドを洗浄するパッド洗浄方法であって、
前記水供給路を介して前記保持部に水を供給するとともに前記エア供給路を介して該保持部にエアを供給することによって二流体噴出洗浄を行う工程と、
前記吸引路を介して前記保持部に吸引力を発生させる吸引洗浄を行う工程と、
を一定時間ごとに複数回交互に繰り返すことを特徴とするパッド洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−4204(P2012−4204A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135884(P2010−135884)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】