説明

パラ−アラミドフィブリドフィルム

【課題】本発明は、ポリマーの結合のうちの少なくとも95%がパラ−配向であるパラ−アラミドフィブリドフィルムおよび上記パラ−アラミドフィブリドフィルムを得る下記工程からなる方法に関する。
【解決手段】
a.パラ−配向の芳香族ジアミンおよびパラ−配向の芳香族ジカルボン酸ハライドを、N−メチルピロリドンまたはジメチルアセタミドと塩化カルシウムまたは塩化リチウムとの混合溶媒中で重合してパラ−配向結合のみを有するアラミドポリマーに重合し、上記混合溶媒中にポリマーが濃度2〜6wt%で溶解しているドープを得る工程、ならびに
b.メタ−アラミドフィブリドの製造方法として公知の方法により、上記ドープをパラ−アラミドフィブリドフィルムに変換する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラ−アラミドフィブリドフィルム、それを含有する組成物、上記フィブリドフィルムの製造方法、および上記フィブリドフィルムを含有する紙に関する。
【背景技術】
【0002】
アラミドフィブリドは、当該分野において公知である。例えば米国特許第3,756,908号明細書には、メタ−結合を有するアラミドポリマーのフィブリドの製造方法が開示されている。このフィブリドは、メタ−アラミドフィブリドとして検討され、好ましくはメタ−もしくはパラ−アラミドパルプならびにメタ−もしくはパラ−アラミドフロックとともに製紙工程に使用することができる。
フィブリドは、微小であり、粒状でなく、堅固でない繊維様またはフィルム様の粒子(particle)である。フィルム様のときの寸法のひとつは数ミクロンであり、繊維様のときのふたつの寸法はともにミクロン領域にある。「フィブリド」という語は当業界においてよく知られており、当業者には明確である。当業者は更に、米国特許第2,999,788号明細書を参照できる。同明細書は「フィブリド」という語について正確な定義を与えており、フィブリド粒子は必ず水漉き紙を形成する能力を有するとされている。更に、短繊維の重量のうちの相当部分を結合する能力をも有しているはずである。本発明でいう「フィブリドフィルム」という語は、フィルム様粒子の上記定義を充たし、カナダろ水値が40〜790の間にあるものをいう。「パラ」という語は、フィブリドを構成するポリマーのアラミド結合に関する。
【0003】
米国特許第3,756,908号明細書のほかに、メタ−アラミドフィブリドに関する他の多くの参考文献が利用可能である。しかし、上記で与えられた定義を満足するパラ−アラミドフィブリドについて記載された文献は知られていない。
残念なことに「パラ−アラミドフィブリド」という語は、フィブリル化され、フィルム様構造を持たず、しかも上記要求性能をも充たさないようなパルプを表すものとしてしばしば誤って使用されている。例えば米国特許第6,309,510号明細書は、Kevlar(登録商標)フィブリドに関する。Kevlar(登録商標)は、パラ−アラミドを示すデュポン社の登録商標である。しかし、この材料は高度にフィブリル化されており、定義上はパルプである。
【0004】
「フィブリド」という後を誤って使用した他の例として、国際公開第91/00272号パンフレットが挙げられる。同パンフレットは、その実施例8においてKevlar PPTAのフィブリドに言及している。同実施例の文脈および標題から、フィブリドではなく繊維が使用されていることは明らかである。なおフィブリドは、Kevlarという商品名では商業的に入手できない。
米国特許第4,921,900号明細書が、ここに記載されたパラ−アラミドフィブリドが真のフィブリドか否かが直ちには明らかではない唯一の参考文献である。しかしながら同文献の実施例を追試したところ、重合工程において透明溶液は得られず、この溶液を凝固した場合ポリマー粒子が得られることが分かった。この粒子は、上記したフィブリドの定義を満足しなかった。更に、得られた粒子は高い含有率(60%)で微細粒子を含んでいた。
【特許文献1】米国特許第3,756,908号明細書
【特許文献2】米国特許第2,999,788号明細書
【特許文献3】米国特許第6,309,510号明細書
【特許文献4】国際公開第91/00272号パンフレット
【特許文献5】米国特許第4,921,900号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の定義に従うパラ−アラミドフィブリドはかつて文献に記載されたことはないが、そのようなフィブリドを通常のメタ−アラミドフィブリドの代わりに使用した場合、有利な特性が発現するものと信じられている。特に、強度、多孔性、高温耐性および含水率に関する改善された紙の特性が考えられる。したがって本発明の目的は、パラ−アラミドフィブリドフィルムを製造する方法およびその方法により製造されたフィブリドフィルムならびにそれから製造された製品を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため、本発明は、ポリマーの結合のうちの少なくとも95%がパラ−配向であるパラ−アラミドフィブリドに関する。
フィブリドフィルムの一方向の寸法はマイクロメートルの領域であり、長さおよび幅は更に大きく、好ましくは平均で0.2〜2mmの長さおよび10〜500μmの幅を有する。
更にフィブリドフィルムは40%未満、好ましくは30%未満の量しか微細粒子を含有しないことが好ましい。ここで微細粒子とは、長さ加重長さ(length weighted length)(LL)が250μm未満の粒子(paraticle)と定義される。
【0007】
パラ−配向のアラミド(芳香族アラミド)は、パラ−配向の芳香族ジアミンおよびパラ−配向の芳香族ジカルボン酸ハライドの縮合ポリマー(以下、「パラ−アラミド」と略称する。)であり、その高い強度、高い弾性率および高い耐熱性のため、従来から繊維、パルプ等の様々な分野に有用であることが知られていた。
本発明において「パラ−アラミド」という語は、パラ−配向の芳香族ジアミンとパラ−配向の芳香族カルボン酸ハライドとの重縮合により得られ、その繰り返し単位の有するアミド結合のうちの少なくとも95%が芳香族環のパラ位またはパラ位に近い反対側に位置するような物質を意味する。すなわち、パラ−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、1,5−ナフタレンおよび2,6−ナフタレンの如き同軸または平行配列の位置をいう。アミド結合の少なくとも99%がパラ配向であることがより好ましく、アミド結合の100%がパラ配向であることがもっとも好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
このようなパラ−アラミドの具体例としては、ポリ(パラ−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)。ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)およびポリ(パラ−フェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)の如きポリ−パラ−配向構造またはこれに近い構造を持つアラミドを挙げることができる。これらのうち、ポリ(パラ−フェニレンテレフタルアミド)(以下、「PPTA」と略称する。)がもっとも代表的である。
本発明に使用することのできるパラ−配向の芳香族ジアミンの例としては、例えばパラ−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、2−メチル−パラフェニレンジアミン、2−クロロ−パラ−フェニレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等である。
【0009】
本発明に使用することのできるパラ−配向の芳香族ジカルボン酸ハライドの例としては、例えばテレフタロイルクロライド、4,4’−ジベンゾイルクロライド、2−クロロテレフタロイルクロライド、2,5−ジクロロテレフタロイルクロライド、2−メチルテレフタロイルクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、1,5−ナフタレンジカルボン酸クロライド等を挙げることができる。
従来、PPTAは極性のアミド溶媒/塩系で下記の方法によって製造されていた。例えば、PPTAは極性アミド溶媒中で溶液重合法によって製造される。上記PPTAは沈殿、水で洗浄、乾燥され、一度ポリマーとして単離される。その後ポリマーは溶媒に溶解され、湿式紡糸によりPPTA繊維が製造される。この工程中、PPTAは有機溶媒に簡単には溶解しないので、紡糸ドープの溶媒として濃硫酸が使用される。通常この紡糸ドープは光学異方性を示す。
【0010】
PPTA繊維は、工業的には濃硫酸を溶媒として使用した紡糸ドープから製造され、長繊維として特に強度と硬度に優れる。
従来法によると、メタ−アラミドフィブリドは、ポリマー沈殿剤にポリマー溶液を加える界面形成工程により形成された有形物の液状懸濁物につき、せん断力を発生する回転翼を有するフィブリデイター(fibridator)を使用して叩解することにより製造される。本発明においては、パラ−アラミドフィブリドフィルムを製造するために、ポリマーに有意のせん断力を与えることができる限りどのような方法を用いてもよい。
【0011】
本発明のフィブリドフィルムを製造する方法は、一般に以下の工程を含む:
a. パラ−配向芳香族ジアミンとパラ−配向芳香族ジカルボン酸ハライドとを、N−メチルピロリドンまたはジメチルアセタミドと塩化カルシウムまたは塩化リチウムとからなる溶媒混合物中で、パラ−配向結合のみを有するアラミドポリマーに重合し、ポリマーが濃度2〜6wt%で前記混合物中に溶解したドープを得る工程、および
b. メタ−アラミドフィブリドの製造方法として公知の方法により、上記ドープをパラ−アラミドフィブリドフィルムに変換する工程。
【0012】
パラ−アラミドを製造する多くの重合工程が知られている。しかし、これらのうちのどの方法によっても、パラ−アラミドフィブリドは得られないことに注意すべきである。例えば欧州特許出願公開第572002号明細書には、フィブリドではなくパルプおよび繊維を得る工程しか記載されていない。同明細書は、本発明の方法とは異なる方法に関する。すなわち、繊維を紡糸し、次いで繊維を従来法により短い繊維に切断してパルプとするものである。パルプはその後に精製工程を要する。米国特許出願公開第2001/0006868号明細書には繊維の切断物(chops)を製造する方法が記載されているが、これは非パラ−配向性の結合(すなわち、3,4−ジフェニルエーテル単位)を含むものである。米国特許第6042941号明細書には硫酸中で行われる重合が、欧州特許出願公開第302377号明細書にはDMSO中で行われる重合が、それぞれ記載されているにすぎず、また米国特許第4921900号明細書においては前述のとおり非パラ−アラミドフィブリドを製造しているにすぎない。
【0013】
本発明の別の実施態様では、重合反応を実施し、生成した塩化水素の少なくとも一部を中和して中和ドープとする。
特に好ましい態様において、ドープは下記のようにパラ−アラミドフィブリドに変換される。
i. ジェット紡糸ノズルを通してドープを紡糸しポリマー流とし、該ポリマー流に凝固剤を、凝固剤の速度ベクトルのうちポリマー流に対して垂直なベクトル成分が少なくとも5m/s、好ましくは少なくとも10m/sとなる角度において衝突させて前記ポリマー流をパラ−アラミドフィブリドフィルムに凝固する方法、
または
ii. 動静翼装置の回転翼上の固定翼を通してポリマー溶液を供給し、次いで沈殿したポリマーフィブリドが可塑的で変形しうる状態にあるうちにせん断力を与えることによってドープを凝固する方法。
【0014】
本発明では、0.5〜4wt%のアルカリ金属塩化物またはアルカリ土類金属塩化物が溶解(好ましくは1〜3wt%)した極性アミド溶媒中において、パラ配向芳香族カルボン酸ハライド1モルに対して0.950〜1.050モル、好ましくは0.980〜1.030モル、より好ましくは0.995〜1.010モルのパラ配向芳香族ジアミンが使用され、濃度2〜6wt%、好ましくは3〜4.5wt%のパラ−アラミドが製造される。本発明では、パラ−アラミドの重合温度は−20℃〜70℃、好ましくは0℃〜30℃、より好ましくは5℃〜25℃である。この温度範囲において、動粘度が所望の範囲となり、適当な結晶度および結晶配向度を有するフィブリドが紡糸によって得られることとなる。
【0015】
本発明の重要な特徴は、はじめに重合反応が促進され、その後ポリマー溶液ないしポリマーを組成する溶液を、無機塩基または強い有機塩基、好ましくは酸化カルシウムまたは酸化リチウムを添加して中和することにより停止されることである。ここで、「酸化カルシウム」および「酸化リチウム」とは、それぞれ水酸化カルシウムおよび水酸化リチウムを含むものである。この中和は、重合反応中に生成した塩化水素を除く効果を有する。中和は、動粘度を(中和していない対応溶液と比較して)少なくとも3分の1に減少する。中和後には塩化物が、重縮合反応により生成したアミド基1モル当たり好ましくは0.5〜2.5モル、より好ましくは0.7〜1.4モル存在する。塩化物の総量は、溶媒中に使用されたCaClおよび中和剤(塩基)として使用されたCaOに由来する。塩化カルシウムの量が多すぎるまたは少なすぎると、溶液の動粘度が紡糸溶液として適当な値よりも大きすぎることとなる。上記ドープおよびそれから得られるフィブリドは、Ca2+、LiおよびCl以外の無機イオンを本質的に含まない。
【0016】
液状のパラ−アラミド重合溶液は、加圧容器の助けにより、空気ジェットによるフィブリド紡糸用の100〜1000μmのノズルへ送るための紡糸ポンプへと供給される。液状のパラ−アラミド溶液は、紡糸ノズルを通って低圧領域へと紡糸される。好ましい実施態様では、ポリマー流を分散させる空気を用いずに、紡糸ノズル中で凝固剤のジェットを用いたジェット紡糸が行われる。より好ましくは、凝固剤はポリマー流を実質的に直角の方向から叩く。他の実施態様では、1バールを超える、好ましくは4〜6バールの空気ジェット紡糸が用いられる。空気はリング状のチャネルを通って空気が膨張する前記と同じ領域に独立に供給される。凝固剤流の効果により、液状の紡糸溶液はフィブリドフィルムとされる。凝固剤は、水、水とNMPとCaClとの混合物、および他の適当な凝固剤から選択される。好ましくは水とNMPとCaClとの混合物である。
【0017】
本発明の目的のひとつは、ここまで説明してきたパラ−アラミドフィブリドを含有する組成物を得ることである。
本発明の他の目的は、本発明のパラ−アラミドフィブリドを少なくとも2%含有する組成物を使用して改善された紙を作ることである。製紙用組成物には、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%(重量基準)のパラ−アラミドフィブリドフィルムが使用される。このような組成物中に含まれる他の成分としては、通常のパルプ、フロック、繊維、短繊維、フィラー、無機繊維等の、パラ−および/もしくはメタ−アラミドポリマーまたは他の適当な製紙用ポリマーが含有することのできるものである。
これらおよびその他の目的は、塩酸を少なくとも部分的に中和する工程を含むパラ−アラミドポリマー溶液を製造するプロセスによって達成された。上記中和工程により、その動粘度が中和されていないポリマー溶液の動粘度に比べて少なくとも3分の1小さく、そして溶液中のp−アラミド濃度が2〜6wt%である溶液が得られる。中和は、重合反応中または重合反応後に行われる。
【0018】
本発明の他の実施態様では、NMP/CaCl、NMP/LiClまたはDMAc/LiCl混合物中に相対粘度がηrel>2.2である非繊維状のパラ−アラミドを含有する中和されたポリマー溶液が製造される。
ドープのポリマー濃度により光学異方性または等方性が発現する。ずり速度1000s−1における動粘度ηdynは、10Pa.sよりも小さいことが好ましく、5Pa.sよりも小さいことがより好ましい。中和を行う場合には、アラミドとなるモノマーの重合中または好ましくは重合後に行う。中和剤は、重合開始前のモノマー溶液中には存在しない。中和は、動粘度を少なくとも3分の1に減ずる。中和されたポリマー溶液は、ノズルを用い、ポリマー流を低圧領域にて凝固剤または加圧空気と接触させる直接フィブリドフィルム紡糸に使用することができる。該低圧領域においてポリマー流は、小滴に分断され凝固されてフィブリドフィルムとなる。空気を使用する場合、ポリマー流はその後凝固剤(好ましくは水、NMPおよびCaClの混合物)と接触する。凝固剤の速度ベクトルのうち、ポリマー流に対して垂直なベクトル成分が少なくとも5m/s、好ましくは少なくとも10m/sとなる角度において、凝固されてパラ−アラミドフィブリドフィルムとなる。
【0019】
本発明のアラミドポリマー溶液は、ずり速度100〜10,000s−1の範囲、約60℃以下の温度で低い動粘度を示す。そのため、本発明のポリマー溶液は、60℃未満、好ましくは室温で紡糸することができる、更に、本発明のアラミドドープはピリジン等の余計な成分を含まず、また、従来のドープが溶媒として濃硫酸を使用していたのと比較して、単純化され、濃硫酸による装置の腐食の問題がない工業的に有利な工程で得ることができる。
更に、本発明の工程によると、ポリマー溶液は直接紡糸することができ、製品はフィブリドフィルムとして得ることができるので、その製造工程は極めて単純化されたものである。
極めて強い紙強度(高い引張強度として測定される)を持つパラ−アラミド紙は、本発明のパラ−アラミドフィブリドフィルムを適用して得られた紙を乾燥する前に既に得られている。上記の如き紙は、非常に低い孔性および低い平衡含水率を示す。本発明のフィブリドフィルムはパラ−アラミド紙、自動車のブレーキの如き摩擦材料、種々のガスケット、E−ペーパー(例えば電子用途の紙であり、そのイオン含量は硫酸溶液から作られるパラ−アラミドパルプに比べて極めて低い。)等の原料として有用である。
【実施例】
【0020】
以下に、非限定的な実施例を示して、本発明につき説明する。
実施例および比較例において採用した試験および評価の方法、ならびに判断基準は以下の通りである。
試験方法
相対粘度
試料を、室温にて濃度0.25%(m/v)で硫酸(96%)に溶解した。ウベローデ粘度計を用い、硫酸中、25℃における試料溶液の流下時間を測定した。同じ条件の下、溶媒の流下時間も同様に測定した。これら二つの流下時間の比を計算し、粘度比とした。
動粘度
動粘度は、室温にてキャピラリレオメトリーによって測定した。Powerlaw係数およびRabinowitsch補正を用い、真のせん断速度および粘度を計算した。
【0021】
繊維長さ測定
繊維長さは、Pulp Expert(登録商標) FS(Metso社)を用いて測定した。長さとして、平均長さ(AL)、長さ加重長さ(length weighted length、LL)および重量加重長さ(weight weighted length、LL)を用いた。下付きの0.25は、長さ>250μmの粒子についての値であることを示す。Finesとして示した量は、長さ荷重長さ(LL)<250μmの粒子の占める割合である。
この装置は、既知の繊維長さの試料を用いて基準化することを要する。基準化は、第1表に示した市販品パルプを用いて行った。
【0022】
【表1】

【0023】
比表面積(SSA)測定
Micromeretics社製Gemini 2375を用いて、窒素吸着法によるBET比表面積測定法により比表面積(m/g)を測定した。濡れた状態のパルプ試料は、120℃で終夜乾燥し、次いで200℃において少なくとも1時間窒素フラッシュを行った。
CSF値 Tappi 227
未乾燥パルプ3g(乾燥重量)をローレンツェン アンド ベットレー社製の叩解機中で1000回打撃し、1Lの水に分散させた。よく開いた(well−opened)試料が得られた。カナダ標準ろ水度(CSF)値を測定し、パルプの重量のわずかの差を補正した(Tappi 227)。
紙強度
100%フィブリド材料、または50%フィブリド材料とTwaron(登録商標)の6mm繊維(Twaron 1000)とにより、hand sheet紙(70g/m)を製造した。ASTM D828およびTappi T494 om−96に準じて乾燥紙(120℃)の引張強度(Tensile Index)(Nm/g)を測定した。試料幅は15mm、試料長さは100mm、試験速度は10mm/分であり、21℃/65%RHの条件下で行った。
光学異方性の評価(液晶状態)
偏光顕微鏡(明視野)および/または攪拌中の乳光の観察により光学異方性を調べた。
【0024】
実施例1
160LのDrais反応器を用いてパラ−フェニレンテレフタルアミド(PPTA)の重合を行った。反応器を十分に乾燥後、CaCl濃度が2.5wt%のNMP/CaCl(N−メチルピロリドン/塩化カルシウム)の63Lを反応器に入れた。次いで、1487gのパラ−フェニレンジアミン(PPD)を加え、室温にて溶解した。その後、PPD溶液を10℃に冷却し、2772gのTDCを加えた。TDC添加後、重合反応を45分間行った。そして酸化カルシウム/NMP懸濁液(NMP中に766gのCaO)によりポリマー溶液を中和した。CaO懸濁液を加えた後、ポリマー溶液を少なくとも15分間更に攪拌した。中和は、重合中に生成した塩化水素(HCl)を除去するために行った。PPTA濃度が4.5wt%、相対粘度(0.25%HSO中)が3.5のゲル状のポリマー溶液が得られた。得られた溶液は光学異方性を示し、一月を超える期間の間安定であった。この溶液をNMPで希釈し、ポリマー濃度3.6%の溶液を得た。
上記溶液を、ジェット紡糸ノズル(紡糸孔350ミクロン)により、5kg/時間(室温)の条件下で紡糸した。リング状のチャネルからポリマー流の方向に対して角度を付けて1400L/時間の速度で水を加えた。水の流速は14m/sであった。得られたフィブリドはフィルター上に集めた。このフィブリドは、WL0.25が1.85mmであり、微小粒子率(fines)が18%であり、SSAが2.11m/gであり、CSF値が330mLであった。フィブリド含量100%の紙を製紙したところ、そのTIは10.0Nm/gであった。
【0025】
【表2】

【0026】
実施例2
160LのDrais反応器を用いてパラ−フェニレンテレフタルアミド(PPTA)の重合を行った。反応器を十分に乾燥後、CaCl濃度が2.5wt%のNMP/CaCl(N−メチルピロリドン/塩化カルシウム)の63Lを反応器に入れた。次いで、1506gのパラ−フェニレンジアミン(PPD)を加え、室温にて溶解した。その後、PPD溶液を10℃に冷却し、2808gのTDCを加えた。TDC添加後、重合反応を45分間行った。そして酸化カルシウム/NMP懸濁液(NMP中に776gのCaO)によりポリマー溶液を中和した。CaO懸濁液を加えた後、ポリマー溶液を少なくとも15分間更に攪拌した。中和は、重合中に生成した塩化水素(HCl)を除去するために行った。PPTA濃度が4.5wt%、相対粘度(0.25%HSO中)が3.2のゲル状のポリマー溶液が得られた。得られた溶液は光学異方性を示し、一月を超える期間の間安定であった。この溶液をNMPで希釈し、ポリマー濃度3.6%の溶液を得た。
上記溶液をジェット紡糸ノズルにより、4.3kg/時間の条件下で紡糸した。このノズルは350μmの紡糸孔を持つものであった。リング状のチャネルからポリマー流に対して垂直の方向で、5.9Nm/h(ノルマル立米毎時)(7バール)の空気を吹き付けた。次いで、リング状のチャネルからポリマー流の方向に対して角度を付けて724L/hの速度で水を加えた。水の流速は16m/sであった。得られたフィブリドはフィルター上に集めた。このフィブリドは、WL0.25が1.63mmであり、微小粒子率(fines)が19%であり、SSAが3.6m/gであり、CSF値が215mLであった。
【0027】
【表3】

【0028】
実施例3
2.5mのDrais反応器を用いてパラ−フェニレンテレフタルアミドの重合を行った。反応器を十分に乾燥し、濃度2.5wt%のCaClを含むNMP/CaCl(N−メチルピロリドン/塩化カルシウム)1140Lを反応器に加えた。次いで、27.50kgのパラ−フェニレンジアミン(PPD)を加え室温にて溶解した。その後、PPD溶液を5℃に冷却し、51.10kgのTDCを加えた。TDC添加後、重合反応を45分間行った。そして、酸化カルシウム/NMP懸濁液(28LのNMP中に14.10kgのCaO)によりポリマー溶液を中和した。CaO懸濁液を添加後、ポリマー溶液は少なくとも15分間更に攪拌した。この中和反応は、重合中に生成した塩化水素(HCl)を除去するために行った。PPTA濃度4.5wt%、相対粘度2.2(0.25%HSO中)のゲル状のポリマー溶液が得られた。得られた溶液をNMPで希釈し、ポリマー濃度を3.1wt%とした。得られた溶液は光学異方性を示し、一月を超える期間安定であった。
上記溶液をジェット紡糸ノズル(350ミクロンの孔)により、25kg/時間の条件下で紡糸した。リング状のチャネルからポリマー流に対して垂直の方向で、840L/hの水を吹き付けた。水の流速は30m/sであった。得られたフィブリドはフィルター上に集めた。このフィブリドは、WL0.25が1.09mmであり、微小粒子率(fines)が28%であり、SSAが1.76m/gであり、CSF値が70mLであった。
フィブリド含量100%の紙を製紙したところ、そのTIは24Nm/gであった。Twaron(登録商標) 1000の6mm繊維を50%および上記フィブリドを50%含有する場合のTIは38Nm/gであった。
【0029】
【表4】

【0030】
実施例4、5および6
2.5mのDrais反応器を用いてパラ−フェニレンテレフタルアミドの重合を行った。反応器を十分に乾燥し、濃度2.5wt%のCaClを含むNMP/CaCl(N−メチルピロリドン/塩化カルシウム)1145Lを反応器に加えた。次いで、27.10kgのパラ−フェニレンジアミン(PPD)を加え室温にて溶解した。その後、PPD溶液を5℃に冷却し、50.35kgのTDCを加えた。TDC添加後、重合反応を45分間行った。そして、酸化カルシウム/NMP懸濁液(28LのNMP中に13.90kgのCaO)によりポリマー溶液を中和した。CaO懸濁液を添加後、ポリマー溶液は少なくとも15分間更に攪拌した。この中和反応は、重合中に生成した塩化水素(HCl)を除去するために行った。PPTA濃度4.5wt%、相対粘度2.0(0.25%HSO中)のゲル状のポリマー溶液が得られた。得られた溶液をNMPで希釈し、ポリマー濃度を3.6wt%とした。得られた溶液は光学異方性を示し、一月を超える期間安定であった。
異なった長さのフィブリドを、4穴(350μm)のジェット紡糸ノズルを用いて紡糸した。このとき、リング状チャネルからNMP/CaCl/水(30wt%/1.5wt%/68.5wt%)をポリマー流に対して垂直の方向で噴出した。凝固剤の流速を変えることにより(27〜53m/s)、フィブリドの長さが変わった。Twaron(登録商標) 1000の6mm繊維を50%および上記フィブリドを50%含有する紙を製紙した。この紙の特性を第2表に示した。
【0031】
【表5】

【0032】
実施例7
NMP/CaCl中にPPTAを溶解した溶液を3.1%に希釈した(実施例3と同じ溶液である。)。相対粘度は2.2であった。この溶液を、動静翼凝固機に入れた。フィブリド7aおよび7b(表に記載の回転翼速度による。)のデータを第3表に示した。フィブリド含量100%の紙を製紙し、そのTIは第3表に示したとおりである。
【0033】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの結合のうち少なくとも95%がパラ−配向であることを特徴とする、パラ−アラミドフィブリドフィルム。
【請求項2】
ポリマーがポリ(パラ−フェニレンテレフタルアミド)である、請求項1に記載のフィブリドフィルム。
【請求項3】
フィブリドフィルムの平均長さが0.2〜2mmであり、幅が10〜500μmである、請求項1または2に記載のフィブリドフィルム。
【請求項4】
長さ加重長さ(LL)が250μm未満の粒子として定義される微小粒子の含有率が40%未満、好ましくは30%未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィブリドフィルム。
【請求項5】
Ca2+、LiおよびCl以外の無機イオンを実質的に含有しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィブリドフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のパラ−アラミドフィブリドフィルムを含有する組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のパラ−アラミドフィブリドフィルムを少なくとも2wt%、好ましくは少なくとも5wt%、もっとも好ましくは少なくとも10wt%含有する成分で作られた紙。
【請求項8】
下記の工程を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のパラ−アラミドフィブリドフィルムを製造する方法。
a. パラ−配向の芳香族ジアミンおよびパラ−配向の芳香族ジカルボン酸ハライドを、N−メチルピロリドンまたはジメチルアセタミドと塩化カルシウムまたは塩化リチウムとを含有する混合溶媒中でパラ−配向結合のみを有するアラミドポリマーに重合し、ポリマーが上記混合溶媒中に濃度2〜6wt%で溶解しているドープを得る工程、ならびに
b. メタ−アラミドフィブリドの製造方法として公知の方法により、上記ドープをパラ−アラミドフィブリドフィルムに変換する工程。
【請求項9】
生成した塩酸の少なくとも一部を中和して中和ドープを得る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ドープをパラ−アラミドフィブリドフィルムに変換する方法が下記の方法によるものである、請求項8または9に記載の方法。
i. ジェット紡糸ノズルを通してドープを紡糸しポリマー流とし、該ポリマー流に凝固剤を、凝固剤の速度ベクトルのうちポリマー流に対して垂直なベクトル成分が少なくとも5m/s、好ましくは少なくとも10m/sとなる角度において衝突させて前記ポリマー流をパラ−アラミドフィブリドフィルムに凝固する方法、または
ii. 動静翼装置の回転翼上の固定翼を通してポリマー溶液を供給し、次いで沈殿したポリマーフィブリドが可塑的で変形しうる状態にあるうちにせん断力を与えることによってドープを凝固する方法。
【請求項11】
パラ−アラミドポリマーのηrel(相対粘度)が2.0〜5.0の範囲にある、請求項9または10に記載の方法。

【公表番号】特表2007−514066(P2007−514066A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543428(P2006−543428)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013543
【国際公開番号】WO2005/059247
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(501469803)テイジン・トゥワロン・ビー.ブイ. (48)
【Fターム(参考)】