説明

パルス検出回路、包絡線検出回路、および、電子装置、ならびに、パルス検出方法

【課題】IRのような素子性能の限界に及ぶ超高周波域で良好に動作し消費電力が少なく安価で信頼性が高く且つ通常のCMOS半導体プロセスで製造可能な新たなルス検出回路、包絡線検出回路および電子装置ならびにパルス検出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタ103(108)が介挿された負帰還路を有する増幅回路20a(20b)と、増幅回路の入力端に一端側が接続され他端側が被検出信号が供給される信号入力端として設定されたコンデンサ105(110)とを含み、信号入力端に供給される被検出信号(Vs)の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅変化を呈する波形に変換する信号波形変換部と、信号波形変換部10a(10b)の出力信号から被検出信号が担うパルスを検出するパルス検出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルス検出回路、包絡線検出回路およびそれらを使用する電子装置、特にUWB(Ultra Wide Band)信号を受信する電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受信された信号の包絡線を検出してベースバンド信号を復調する回路は古くから使用されており様々な回路が考え出されている。UWB信号、とくに搬送波を用いないIR(Impulse Radio)によるUWB通信においても特許文献1または特許文献2等においてその有効性が示されている。これらの先行資料では整流回路と積分回路が用いられているがこれは包絡線検出の回路に他ならない。以下、本願では変調された搬送波(経時的に振幅が変化する高周波の信号)についてその包絡線を検出する作用を「包絡線検出」と呼ぶことにする。
【特許文献1】特開2004−320083
【特許文献2】特開2005―252740
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記何れの特許文献においても、UWB通信についての原理的な提案が開示されているに留まり、現実の実施に当たって克服することが不可避である種々の課題や、それらの解決策については何等開示されていない。
従来の技術における問題点は、第一に、UWB通信に適用されるような高周波信号(急峻で瞬時的なパルス)に対して有効に機能する包絡線検出回路が実現できなかった点である。
【0004】
上掲の特許文献2には、演算増幅回路とPN接合ダイオードによる包絡線検出回路を使った回路例が例示されている。しかしながら、PN接合ダイオードを使用する回路はUWBのアナログフロントエンドのワンチップ化において多用されるCMOS半導体プロセスによりオンチップ化することが困難であり、何よりも、このような回路ではIRに用いられるような極めて細いパルスを全波整流してその包絡線を検出することは現実には不可能に近い。
【0005】
なぜならUWBでは素子性能の限界に及ぶ高周波が用いられるのに対し、演算増幅回路の動作可能最高速度は素子性能の限界周波数の数分の一程度であり、動作速度が絶対的に不足するためである。更に、この種の従来の全波整流回路では、入力信号が受信機で受信される信号レベルに比較し十分に大きくないと良好に動作しない。アンテナから得られる受信信号を前置低雑音増幅回路で増幅して得られる波高値数mV程度の信号を良好に検出することは不可能に近く、前置増幅の増幅度を上げるなどの対策が必要であるが、これも周波数が高いことやシステムの複雑さや消費電力の増大等々の困難を伴う。
第二に、従来技術では検出した包絡線を所定の基準レベルと比較しその基準レベルより大か小かによって受信データの値を判断しているが、この所定の基準レベルを如何に設定するかは困難な課題である。
【0006】
なぜなら良好な受信特性を得るための基準レベルの最適値は受信信号のレベルによって変動するからである。通常、無線通信においては受信信号のレベルが大きく変動するのが一般的であり、常に良好な受信特性を得ようとすると、この基準レベルを受信信号のレベルによって適応的に変更しなければならず、厳密に行おうとするとその制御特性や回路構成の選択が極めて困難な課題となる。
そこで本発明は、これら従来残置されていた未解決の課題を克服し、IRのような素子性能の限界に及ぶ超高周波域で良好に動作し消費電力が少なく安価で信頼性が高く且つ通常のCMOS半導体プロセスで製造可能な新たなパルス検出回路、包絡線検出回路、および、電子装置、ならびに、パルス検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するべく、本願では次に列記するような技術を提案する。
(1)コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力される増幅回路と、前記増幅回路の負帰還路にゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタと、前記増幅回路の出力から前記信号が担うパルスを検出する検出回路と、を含んで構成されることを特徴とするパルス検出回路。
上記(1)のパルス検出回路では、回路はPN接合を用いないためにCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能である。しかも、MOSトランジスタの限界周波数程度の高周波高速動作が可能でありIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
【0008】
(2)コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力される増幅回路と、前記増幅回路の出力信号から該信号に含まれる高周波成分を低減または除去する濾波手段と、前記増幅回路の負帰還路にゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタを含み、前記濾波手段の出力として前記信号の包絡線を得るように構成されることを特徴とする包絡線検出回路。
上記(2)の包絡線検出回路では、回路はPN接合を用いないためにCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能である。しかも、MOSトランジスタの限界周波数程度の高周波高速動作が可能でありIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易な包絡線検出回路が実現できる。
【0009】
(3)コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力されるPチャネルおよびNチャネルMOSトランジスタの相補接続による増幅回路と、前記増幅回路の負帰還路に介挿されゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタとをそれぞれ含む複数の回路ユニットを縦続接続して構成され各個の前記回路ユニットにおける前記帰還路のMOSトランジスタの向きは当該縦続接続における隣接する前記回路ユニット毎に逆方向となるように接続された信号波形変換部と、
前記信号波形変換部の出力から前記入力信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、
を備えて構成されることを特徴とするパルス検出回路。
【0010】
上記(3)のパルス検出回路では、各回路ユニットにおいて信号パルスのピーク位置を検出しつつ増幅するように回路定数の設定が可能であり、この回路ユニットを縦続接続することによって微弱な信号でも増幅しつつピーク位置の検出が可能となる。しかも使用される素子はいずれもCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能であり、素子の限界周波数程度の高周波高速動作も可能なのでIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
【0011】
(4)コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力されるPチャネルおよびNチャネルMOSトランジスタの相補接続による増幅回路と、前記増幅回路の負帰還路に介挿されゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタとをそれぞれ含む複数の回路ユニットを縦続接続して構成され各個の前記回路ユニットにおける前記帰還路のMOSトランジスタの向きは当該縦続接続における隣接する前記回路ユニット毎に逆方向となるように接続された信号波形変換部と、
前記信号波形変換部の出力から前記入力信号の包絡線を検出する包絡線検出部と、
を備えて構成されることを特徴とする包絡線検出回路。
【0012】
上記(4)の包絡線検出回路では、各回路ユニットにおいて信号を増幅しつつ信号の包絡線を検出するように回路定数の設定が可能であり、この回路ユニットを縦続接続することによって微弱な信号でも増幅しつつ包絡線の検出が可能となる。しかも使用される素子はいずれもCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能であり、素子の限界周波数程度の高周波高速動作も可能なのでIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易な包絡線検出回路が実現できる。
【0013】
(5)差動入力信号の双方の系統に各対応して、コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力される増幅回路と、前記増幅回路の負帰還路にゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタを設け、前記双方の系統の各増幅回路の出力を合成する合成手段を備えていることを特徴とする包絡線検出回路。
上記(5)の包絡線検出回路では、差動入力信号の半サイクル毎に包絡線を検出することができ、それらの包絡線を合成することによって能率よく包絡線を検出することができる。
【0014】
(6)差動入力信号の双方の系統に各対応して、コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力される増幅回路と、前記増幅回路の負帰還路に介挿されゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタとをそれぞれ含む複数の回路ユニットを縦続接続して構成され各個の前記回路ユニットにおける前記帰還路のMOSトランジスタの向きは当該縦続接続における隣接する前記回路ユニット毎に逆方向となるように接続された信号波形変換部と、前記双方の系統の各増幅回路の出力を合成する合成手段とを備え、
前記合成手段の出力から前記入力信号の包絡線を検出する包絡線検出部と、
を備えて構成されることを特徴とする包絡線検出回路。
【0015】
上記(6)の包絡線検出回路では、各回路ユニットにおいて信号を増幅しつつ信号の包絡線を検出するように回路定数の設定が可能であり、この回路ユニットを縦続接続することによって微弱な信号でも増幅しつつ包絡線の検出が可能となる。また、差動入力信号の半サイクル毎に包絡線を検出することができ、それらの包絡線を合成することによって能率よく包絡線を検出することができる。更に、使用される素子はいずれもCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能であり、素子の限界周波数程度の高周波高速動作も可能なのでIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易な包絡線検出回路が実現できる。
【0016】
(7)前記増幅回路は相補接続されたPチャネルおよびNチャネルMOSトランジスタにより構成されることを特徴とする(1)および(3)の何れか一のパルス検出回路。
上記(7)のパルス検出回路では(1)および(3)の何れか一のパルス検出回路において適用される増幅回路は簡単なCMOSインバータ回路によって構成できるためCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能であるという特徴の上に、特に、インバータ回路を構成するMOSトランジスタの限界周波数程度の高周波高速動作が可能なのでIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
【0017】
(8)前記増幅回路は相補接続されたPチャネルおよびNチャネルMOSトランジスタにより構成されることを特徴とする(2)、(4)、(5)、および、(6)の何れか一の包絡線検出回路。
上記(8)の包絡線検出回路では、(2)、(4)、および、(5)の何れか一の包絡線検出回路において適用される増幅回路は簡単なCMOSインバータ回路によって構成できるためCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能である。しかも、インバータ回路を構成するMOSトランジスタの限界周波数程度の高周波高速動作が可能なのでIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易な包絡線検出回路が実現できる。
【0018】
(9)供給されたUWB信号が担うパルスを検出する信号処理部を備えた電子装置であって、前記信号処理部は(1)、(3)、および、(7)の何れか一のパルス検出回路を含んで構成されていることを特徴とする電子装置。
上記(9)の電子装置では、UWB受信信号の包絡線を検出した後、所定の基準レベルと比較し受信データを判断するのではなく、包絡線の尖頭値の位置を検出してそのデータを判断することが可能となる。これによって、従来困難であったパルス判定の基準レベルを設定する必要が無くなりシステムの簡略化が計れることになる。
【0019】
(10)供給されたUWB信号の包絡線を検出する信号処理部を備えた電子装置であって、前記信号処理部は(2)、(4)乃至(6)、および、(8)の何れか一の包絡線検出回路を含んで構成されていることを特徴とする電子装置。
上記(10)の電子装置では、UWB受信信号の包絡線を検出した後、所定の基準レベルと比較し受信データを判断するのではなく、包絡線の尖頭値を検出してそのデータを判断することが可能となる。これによって、従来困難であったパルス判定の基準レベルを設定する必要が無くなりシステムの簡略化が計れることになる。
【0020】
(11)ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタが介挿された負帰還路を有する増幅回路と、前記増幅回路の入力端に一端側が接続され他端側が被検出信号が供給される信号入力端として設定されたコンデンサとを含み、前記信号入力端に供給される被検出信号の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅変化を呈する波形に変換する信号波形変換部と、
前記信号波形変換部の出力信号から前記被検出信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、
を備えていることを特徴とするパルス検出回路。
上記(11)のパルス検出回路では、回路はPN接合を用いないためにCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能である。しかも、MOSトランジスタの限界周波数程度の高周波高速動作が可能でありIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
【0021】
(12)ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタが介挿された負帰還路を有する増幅回路と前記増幅回路の入力側に設けられたコンデンサとをそれぞれ含む複数の回路ユニットを縦続接続して構成され各個の前記回路ユニットにおける前記帰還路のMOSトランジスタの向きは当該縦続接続における隣接する前記回路ユニット毎に逆方向となるように接続され、初段の前記回路ユニットの入力端に供給される入力信号の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅変化を呈する波形に変換する信号波形変換部と、
前記信号波形変換部の出力信号から前記入力信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、
を備えていることを特徴とするパルス検出回路。
【0022】
上記(12)のパルス検出回路では、各回路ユニットにおいて信号パルスのピーク位置を検出しつつ増幅するように回路定数の設定が可能であり、この回路ユニットを縦続接続することによって微弱な信号でも増幅しつつピーク位置の検出が可能となる。しかも使用される素子はいずれもCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能であり、素子の限界周波数程度の高周波高速動作も可能なのでIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
【0023】
(13)入力端に供給されるUWB信号の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅の変化を呈する波形に変換する信号波形変換部と、前記信号波形変換部の出力信号から前記UWB信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、を備えた電子装置であって、
前記信号波形変換部は、ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタが介挿された負帰還路を有する増幅回路と前記増幅回路の入力側に設けられたコンデンサとを含んで構成されていることを特徴とする電子装置。
上記(13)の電子装置では、信号波形変換部はPN接合を用いないためにCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能である。しかも、MOSトランジスタの限界周波数程度の高周波高速動作が可能でありIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
【0024】
(14)入力端に供給されるUWB信号の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅の変化を呈する波形に変換する信号波形変換部と、前記信号波形変換部の出力信号から前記UWB信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、を備えた電子装置であって、
前記信号波形変換部は、ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタが介挿された負帰還路を有する増幅回路と前記増幅回路の入力側に設けられたコンデンサとを含む回路ユニットが複数縦続接続されて構成され各個の前記回路ユニットにおける前記帰還路のMOSトランジスタの向きは当該縦続接続における隣接する前記回路ユニット毎に逆方向となるように接続され、初段の前記回路ユニットの入力端に前記UWB信号が供給されるように構成されていることを特徴とする電子装置。
【0025】
上記(14)の電子装置では、各回路ユニットにおいて信号パルスのピーク位置を検出しつつ増幅するように回路定数の設定が可能であり、この回路ユニットを縦続接続することによって微弱な信号でも増幅しつつピーク位置の検出が可能となる。しかも使用される素子はいずれもCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能であり、素子の限界周波数程度の高周波高速動作も可能なのでIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
【0026】
(15)供給される信号の波形をその変動における一方の極性側のピークが略一定レベルとなるように揃え、且つ、他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅の変化を呈する波形を成すように変換し、前記波形を変換した信号から前記供給される信号が担うパルスを検出することを特徴とするパルス検出方法。
上記(15)のパルス検出方法によれば、IRのような素子性能の限界に及ぶ超高周波域で確実にパルス検出を行うことができる。
【0027】
(16)前記ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタに替えてPN接合ダイオードを前記負帰還回路に介挿したことを特徴とする(1)、(3)、(7)、(11)、および、(12)の何れか一のパルス検出回路。
上記(16)のパルス検出回路では、(1)、(3)、(7)、(11)、および、(12)の何れか一のパルス検出回路において特に、ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタに替えてPN接合ダイオードを負帰還回路に介挿することにより上述のMOSトランジスタを適用した場合と同様に作用する。わずかなプロセスの変更によってPN接合ダイオードもCMOS基板上に形成することが可能である。
【0028】
(17)前記ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタに替えてPN接合ダイオードを前記負帰還回路に介挿したことを特徴とする(2)、および、(4)乃至(6)の何れか一の包絡線検出回路。
上記(17)の包絡線検出回路では、(2)、および、(4)乃至(6)の何れか一の包絡線検出回路において特に、ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタに替えてPN接合ダイオードを負帰還回路に介挿することにより上述のMOSトランジスタを適用した場合と同様に作用する。わずかなプロセスの変更によってPN接合ダイオードもCMOS基板上に形成することが可能である。
【0029】
(18)前記ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタに替えてPN接合ダイオードを前記負帰還回路に介挿したことを特徴とする(9)、(10)、(13)、および、(14)の何れか一の電子装置。
上記(18)の電子装置では(9)、(10)、(13)、および、(14)の何れか一の電子装置において特に、ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタに替えてPN接合ダイオードを負帰還回路に介挿することにより上述のMOSトランジスタを適用した場合と同様に作用する。わずかなプロセスの変更によってPN接合ダイオードもCMOS基板上に形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例としての包絡線検出回路およびパルス検出回路の要部である信号波形変換部の構成例を表す回路図である。
図1(a)は入力信号の負側の包絡線を検出するために適用する信号波形変換部10aを表し、図1(b)は入力信号の正側の包絡線を検出するために適用する信号波形変換部10bを表している。
【0031】
図1(a)の信号波形変換部10aは、Pチャネルトランジスタ101およびNチャンネルトランジスタ102のコンプリメンタリ接続回路に該コンプリメンタリ接続回路に係る負帰還路を構成するトランジスタ103(そのゲートおよびドレインが短絡されて所謂MOSダイオードとして機能する)が設けられて増幅回路(本例ではインバータ回路)20aが構成されている。
【0032】
また、増幅回路20aの入力端にコンデンサ105の一端側が接続され、且つ、コンデンサ105の他端側は信号波形変換部10aへの被検出信号が供給される信号入力端として設定されている。
更に、上述のトランジスタ101のソースとゲートとの間に電流源104が接続されている。
【0033】
また、図1(b)の信号波形変換部10bは、Pチャネルトランジスタ106およびNチャンネルトランジスタ107のコンプリメンタリ接続回路に該コンプリメンタリ接続回路に係る負帰還路を構成するトランジスタ108(そのソースおよびドレインが短絡されて上述のトランジスタ103とは逆極性のMOSダイオードとして機能する)が設けられて増幅回路(本例ではインバータ回路)20bが構成されている。
【0034】
また、増幅回路20bの入力端にはコンデンサ110の一端側が接続され、且つ、コンデンサ110の他端側は信号波形変換部10bへの被検出信号が供給される信号入力端として設定されている。
更に、上述のトランジスタ107のソースとゲートとの間に電流源109が接続されている。
【0035】
尚、図示の例では、それぞれMOSダイオードとして機能するトランジスタ103およびトランジスタ108にはNチャネルトランジスタを適用しているが、極性を逆にして適用すればPチャネルトランジスタに置換した構成を採ることも可能である。
上述の構成において、電流源104は図1(a)の信号波形変換部10aにおける動作点を決めるために電流バイアスを与える電源である。また、109は図1(b)の信号波形変換部10bにおける動作点を決めるために電流バイアスを与える電源である。
上述の信号波形変換部10aまたは10bに供給される被検出信号は、インバータ回路20aまたは20bによって反転増幅されるため、入力時とは逆極性であるが大振幅の信号が上記インバータ回路の出力信号に基づいて得られる。
【0036】
図1(a)および図1(b)の回路の動作原理を図2を参照しつつ以下に説明する。
図2は、図1(a)および図1(b)の回路の動作原理を説明するための図である。
図2(a)は図1(a)の回路から入力のコンデンサ105およびバイアスの電流源104を取り除いた回路である。
また、図2(c)は図1(b)の回路から入力のコンデンサ110およびバイアスの電流源109を取り除いた回路である。
図2(a)の回路および図2(c)の回路の、入力電圧Vi対出力電圧Vo、および、入力電圧Vi対入力電流Ii、ならびに、入力電圧Vi対電源電流Iddを一定の条件においてプロットしてみる。
【0037】
図では0.18μCMOSプロセスを用いた場合の例であり、P、Nチャネルともスレッショルド電圧Vt=0.4〜0.6V、電源電圧Vdd=1.8Vの場合を例に説明している。
よく知られているようにMOSトランジスタに流れるドレイン電流Idは
【0038】
Id=(1/2)μC(W/L)(Vg−Vt)2 …………………………(1)
(Vd≧Vg−Vtのとき)
【0039】
Id=(1/2)μC(W/L)Vd[2(Vg−Vt)−Vd]]…………(2)
(Vd≦Vg−Vtのとき)
【0040】
ここで、μ:トランジスタのキャリアの移動度
C:単位面積あたりのゲート容量
W:トランジスタのチャネル幅
L:トランジスタのチャネル長
Vd:ソースドレイン間印加電圧
Vg:ソースゲート間印加電圧
Vt:スレッショルド電圧
である。
【0041】
PチャネルとNチャネルではキャリア移動度が異なるため同じサイズのトランジスタでは同じ印加電圧に対して流せるドレイン電流はNチャネルトランジスタの方が多いのが普通である。W/Lを調整することによりPチャネルのトランジスタとNチャネルのトランジスタとのバランスをとることが可能である。印加電圧に対して流せるドレイン電流の能力は以下の式で定義されるβで決まる。
【0042】
β=μC(W/L)…………………………(3)
【0043】
Pチャネルトランジスタ101、106のβをβp、Nチャネルトランジスタ102、107のβをβnとするとその比k=βp/βnによってトランジスタ101および102によるインバータ回路またはトランジスタ106および107によるインバータ回路の伝達特性(Vo/Vi)が変化するとともにIddやIiの特性も変化する。トランジスタ103または108のβの回路特性に与える影響は少ないがここでは上記でk=1としたときのβnに合わせている。
図2(b)は図2(a)の回路のViに対するIi、Vo、Iddの特性を示す。また、図2(d)は図2(c)の回路のViに対するIi、Vo、Iddの特性を示す。それぞれの特性曲線は付番し、そのパラメータを表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
先ず、Vo対Vi特性について説明する。図2(b)と図2(d)ではVo対Vi特性については同じである。Viを徐々に上げていくとVi<VtのうちはVo=Vddの状態が維持される。Viを更に上げていくとVoは徐々に下がり始め、これより更に上げていくと、Voは急激に下がりVi>Vdd−Vtの領域ではVo=0となる。
小さなViの変化に対してVoが大きく変化する領域があり、この領域では、図2(a)および図2(c)の回路は、Viの変化をVoの変化に増幅する増幅回路として動作する。
【0046】
kの値によってこの動作域を変更することが可能でありkを大きくするほど動作域はViの高い側に移動する(特性曲線201〜203および210〜212参照)。
なお、図2(b)ではViが比較的高い領域でもVoが完全には0になっておらず、また図2(d)ではViが比較的低い領域でもVoが完全にはVddになっていないが、これはトランジスタ103または108に電流が流れ分圧が起こるためである。
これらのトランジスタ103または108がなければ、上述のとおりViが低い領域ではVoは完全にVddとなり、Viが高い領域ではVoは完全に0となる。
【0047】
Iddは上述のインバータ回路が増幅回路として動作する動作域で多く流れる。Viの高い側(図2(b))あるいは低い側(図2(d))でIddが0になっていないのはトランジスタ103または108に流れる電流も加算されているからである。
次いでトランジスタ103または108の働きとIi対Vi特性を説明するために、まず図2(a)の回路でk=1のときについて説明する。
【0048】
Vi=0のときはVo=1.8Vであり、トランジスタ103には電流が流れない。トランジスタ103のチャネルはトランジスタ101、102によるインバータ回路の入力側がソース、出力側がドレインとして動作し、該トランジスタのゲートはソースに接続されているのでこのトランジスタには電流が流れない。
Viを0Vから徐々に上げていくとVi=600mV程度からVoが下がり始める。更にViを上げていくと、Voは更に下がりVi=Voとなった時点からトランジスタ103のソースとドレインが入れ替わる。
【0049】
即ち、インバータの入力側の電位(Vi)のほうが出力側の電位(Vo)より高くなるので入力側がドレイン、出力側がソースとして働くようになる。
更にViを上げていくとVi−Vo>VtとなったところからIiが流れ始める。Iiは数式1においてVg=Vi−Voを代入して求めることができる。トランジスタ103にはViだけでなくVoも加算(減算)されて印加されることになり、Viの微小変化が大きな変化に変換されて印加される。これによって、信号のレベルが小さいときでも増幅回路特性を利用し良好な動作を行うことが可能となる。
【0050】
上述においてはk=1のときの説明を行ったが、k=1でないときの動作も同様である。図2(b)の特性曲線を更に注意してみるとトランジスタ103に電流が流れ始める(Iiが流れ始める)点でのVoの変化、即ち、VoのViによる微分値(dVo/dVi:その絶対値を以下Aとする)は、kが相対的に大きいほうが大きく取れる事がわかる。AはViに微小変化する信号が入力されたとき出力側に大きな変化となって現れる度合い、即ち増幅度である。
【0051】
図2(d)の特性曲線についても、トランジスタ108の極性がトランジスタ103と逆になっている以外は同じであり基本的には変わりがない。トランジスタ108がトランジスタ103と逆に接続されているのでIiはViが低い側で回路から流れ出す、即ち、電流値は流れ込む方向を正に取っているのでIiの値は負となる。また、Iiが流れ始める点でのA(dVo/dVi)はkが小さいときに大きく取れる。
【0052】
次に、図1(a)にもどって本発明によるパルス検出回路および包絡線検出回路について説明する。
図1(a)の回路は、上述の図2(a)の回路の入力端にコンデンサ105を介して入力信号を供給し、また回路(本例ではトランジスタ101のソースとゲートとの間)にバイアス電流Ibを流し込むための電流源104を付加したものである。
【0053】
信号源電圧をVs、図2での説明と同様にインバータ回路の入出力の電圧をそれぞれVi、Voとする。
先ず、Vsが変化しない定常状態にあるときには、コンデンサ105は電流源104から充電され定常状態のViとVsの差に相当する電圧Vseを保持する。
説明を簡単にするためにIbをごく小さいと仮定すれば、このときVi−Vo=Vtとなっている。
【0054】
以下、このような定常状態におけるViおよびVoの値をそれぞれVieおよびVoeとする。
Vsを△Vs1だけプラス方向に変化させると、Viも△Vs1だけプラス方向に変化しようとするが、コンデンサ105は蓄えられた電荷をトランジスタ103を通して放電するためViの変化はわずかなものとなる。少しでも変化するとインバータの増幅度によってトランジスタ103に印加される電圧は△Vs1(1+A)と非常に大きくなりその変化は打ち消すように入力に帰還される。即ち、トランジスタ103はインバータ増幅回路の負帰還回路として動作し、インバータの入力は仮想接地点の電位となる。
【0055】
従って、Viは殆ど変化せず、△Vs1の変化分はコンデンサ105に吸収される。このときコンデンサ105両端の電圧はVse+△Vs1となる。
この状態からVsを△Vs2下げると、その変化分はコンデンサ105を通してインバータの入力に伝えられるがViがVieより下がろうとするときはトランジスタ103は電流を流さないのでコンデンサ105に充電する閉路はバイアス電流源104のみとなる。Ibは小さいと仮定しているのでコンデンサ105に蓄えられた電荷は放電せず従って両端の電圧をVse+△Vs1に保持したままとなる。故にVsが△Vs2下がるとその変化分はそのままViに伝えられViはVie−△Vs2となる。このときVoはViの変化分がインバータ回路の増幅動作によって大きく増幅され出力される。
以上の現象を踏まえてVsが変化するときの動作について図3を参照して詳述する。
【0056】
図3は、図2を参照して動作原理を説明した図1の回路の作用を説明するための信号波形図である。
図3において、参照符号301で示した特性曲線は入力信号Vsを表している。また、参照符号302、303で示した特性曲線は何れもViの変化を表しているが、特に302はIb≒0のときの様子を表し、303は適当なバイアス電流を流したときの様子をそれぞれ表している。
Voはここに図示するViを反転増幅した波形を示すことになる。
【0057】
図4は、本発明の包絡線検出回路の構成例を表すブロック図である。図4において、図1(a)または図1(b)の信号波形変換部が適用される信号波形変換部405の後段に積分手段(またはローパスフィルタ)406が設けられ、信号波形変換部405の出力信号波形を積分し、あるいはローパスフィルタ処理によって低周波成分を通過させ高周波成分を除去すると包絡線が検出できる。
【0058】
本発明に適用される信号波形変換部の回路は従来の技術のように入力信号の上半分または下半分を切り取っているのではなく、一つ前の正のピークから続く負のピークまでの電圧差である△Vs2を検出している点を一つの要点としている。この場合、Viの上昇分△Vs1は無視され、その上昇した電圧値からの下降分△Vs2がVieに基準レベルを移動して検出されている。
【0059】
即ち、図1(a)の信号波形変換部において、Vsの値が「Vie+それまでコンデンサ105が保持していた電圧」よりも高くなるとトランジスタ103がオンして電流が流れるため、Viの値はVieより高くはなり得ず、電圧Vsの上昇分はコンデンサ105の両端電圧の上昇分となり、コンデンサはVsのピーク値とVieの差の電圧を常に保持するようになる。この状態からVsが下降するとViの電位も下がろうとするが、このときにはトランジスタ103はオフするためコンデンサは放電されず、既に充電された電圧値が保持されたままでViが下降する。
【0060】
以上の結果302のような波形が得られるが、この場合、定電流源104によって適当にコンデンサ105を放電することによって303のような波形が現出する。この波形303は図2(b)に示すMOSインバータ回路のVo/Vi特性によって増幅されて更に大信号となって出力される。
信号波形変換部(10(a),10(b))から得られる波形は、換言すれば、入出力端に供給される被検出信号の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅変化を呈する波形である。
【0061】
図3の特性曲線302に示すように、Ibが殆ど0のときは過去に起きた最大の極大値(あるいは最小の極小値)がコンデンサ105に保存されるため、包絡線の基準レベルが移動し正しく包絡線を検出することが出来ない。
そこで、IbをViの基準点が包絡線の変化に追従する程度まで増やしてやることによってVoを特性曲線303として示すような波形にすることができる。
【0062】
こうして得られた電圧波形はインバータによる増幅回路の入力信号であり,この信号は増幅回路の増幅作用によって増幅され出力される。この場合、Viの値がVieを下回っていると、トランジスタ103による帰還路は高インピーダンスとなっており増幅回路は殆どオープンループで動作する。
このような本発明における作用は、特許文献1などに示された従来の包絡線検出回路におけるように多量の帰還がかかった閉ループで動作し入力信号の半サイクルが切り取られた信号が出力されるような作用とは大きく様相を異にしている。上述のような従来の回路ではせっかくの増幅回路のゲインを無駄にしているだけでなく増幅回路に求められるスルーレート特性や高周波特性が厳しくなり実現が困難にしてしまう。本発明では、このような無駄や特性の劣化が顕著に低減される。
【0063】
一方、図1(b)の回路はトランジスタ108による帰還路の極性を図1(a)と逆にしたものであり、Vsが負の方向に△Vs1下がろうとするときトランジスタ108に電流が流れコンデンサ110が充電されるためにViは殆ど変化しない。
その状態からVsが正の方向に△Vs2上昇するとトランジスタ108には電流が流れないのでViも△Vs2上昇する。
【0064】
これによってVsが下がるときに基準レベルが揃えられ、そこからの変化分△Vs2が検出できる。△Vs2はインバータの増幅作用によって増幅され大信号を得ることができる。バイアス電流源109に流すバイアス電流の値も図1(a)の場合と同様に決めればよい。
結果的に、図1(b)の回路における各部の信号波形は、図3に示す各部波形を上下反転させたような波形となる(図示省略)。
図3の信号波形303を更に説明すると、入力波形Vi301の正側のピークがVie付近に揃えられていると見ることもできる。
【0065】
図5は、既述のような信号波形変換部を用いて、供給された信号に係るピーク位置を検出する本発明のパルス検出回路の構成例を表すブロック図である。図5に示すような回路、即ちコンパレータ508によってVieよりもわずかに低い電圧と比較することによって信号のレベルが変動する場合においてもそのピークの位置を検出することができる。ここで507は図1(a)に示した回路であり、509は上記基準電圧を供給する電圧源である。なお507に図1(b)で示した回路を使うと負側のピークを検出することができる。この場合基準電圧はVieよりもわずかに高い電圧を与えることはいうまでもないだろう。
図1(a)および図1(b)の回路は検出する包絡線の極性に応じて選択すればよい。また帰還路に用いたトランジスタはPチャネルのトランジスタでもゲートドレインをショートして用いることにより同様に動作させることが可能である。
【0066】
図6は、種々条件を設定した場合の図1の回路の作用を説明するための図である。
図6はIbをある程度流した場合に、入力信号の振幅値の変化によって出力信号がどのように変わるかを示している。
例として図1(a)の回路でIb=0.1μA、k=4のときを示す。
図6(a)、図6(c)はViを表し、図6(b)、図6(d)はそれぞれのViが入力されたときのVoを表している。
【0067】
図6(a)、図6(b)は入力信号Viの振幅値が比較的大きいときの代表的な振幅値3種について同じ尺度でプロットしたものである。
図6(c)、図6(d)は入力信号Viの振幅値が比較的小さいときの代表的な振幅値3種について同じ尺度でプロットしたものである。
それぞれVie=1.05V、Voe=0.56VでありViの振幅値が20mVpp以上のときはIbが0になるようなViが存在し、それ以上の振幅値のときは出力の負のピークがVoe付近に揃えられる。
【0068】
尚、ピークが完全にVoeまたはVieに揃わないのは、Iiが0付近ではトランジスタ103に流れる電流も少なくコンデンサ105が瞬時には充電されないためである。
Viの振幅値が20mVpp以下であるときには多少の偏よりはあるものの出力のピークがVieに達しないために信号は線形増幅されて出力される(図6(c)、(d)参照)。
【0069】
図6(e)、図6(f)は入力信号の周波数が高いときのVi、Voを示す。
周波数が高くなってくるとインバータの増幅度が落ち、更に、トランジスタ103に流れる電流によってコンデンサ105を充電する速度が入力信号の変化に対して十分な速度でないためにViが図6(a)のように偏ることが出来ない。
それでも出力VoはVoe付近を基準として正方向にのみ波形が切り取られ、この信号を積分することにより包絡線検出をすることができる。
【0070】
このようにViがVieに偏ることがなくてもVoで波形に偏りが生じ包絡線検出が可能になるのは、コンデンサ105へのトランジスタ103による充放電が上述のように非対称を呈するからではなく、トランジスタ101、102によるインバータ増幅回路の増幅度の比直線性によるものである。
現に、図6に示した例ではインバータ増幅回路のVi対Vo特性は、図2(b)の特性曲線203であり、その動作点はトランジスタ103に電流が流れ始めるVi=1.05V付近に設定されておりViがこの電圧より高いときの増幅度(dVo/dVi)(の絶対値)はViがその電圧より低いときよりも小さくVi=1.05Vを中心に正の半サイクルは小さく増幅され負の半サイクルは大きく増幅されることになる。
【0071】
よって、本実施例における入力信号の周波数が高いときの動作は上述の△Vs2を検出するものというよりもVsの波形の一部を切り取る動作となる。このような切り取り動作においても包絡線の検出が可能である。また同様にピークの検出も可能である。
図6(f)に示すVoで575mV付近を基準にレベル判定を行えばピーク位置を検出できることは明らかであろう。
【0072】
既述の△Vs2を検出する方法とこの波形の一部を切り取る方法を比較すると、前者は出力信号が大きく取れる利点があるが高い周波数の動作に向かない。他方後者は比較的高い周波数まで動作が可能である。
本発明による本実施例はその両者を入力される周波数によって各々の利点を生かす動作モードが選択されシームレスに自動的に動作モードが移り変わり包絡線やピーク位置の検出ができる。
【0073】
上述の切り取り動作のときは、増幅回路の非直線性を適切に利用できるようにバイアス点を決めなければならないが、本実施例の回路によればIbとトランジスタ103、または108によって自動的に最適なバイアス点が選ばれる。
所要のIbを流すためにはトランジスタのサイズの選択によって設定が可能であり、同じプロセスの同じチップ上にあるトランジスタ101、102、103のサイズ比を一旦決めてしまえば製造上のばらつきや電源電圧、温度等のばらつきによる変動は自動的に吸収され安定性の高い回路を設計することが可能である。
また回路はトランジスタ3個で構成され極めて簡素であり消費電力も従来の演算増幅回路を用いる場合等に比較して極めて少ない。
【0074】
尚、以上の説明において、図3における特性曲線301は図1のコンデンサ105への入力信号Vsを表し、特性曲線302、303は何れも増幅回路の入力信号Viの変化を表しているものとして説明したが、これらの特性曲線301、302、303の変化形状は、図3における時間軸の尺度を入力信号Viに相応する所定値倍に拡大したものとすれば、これらの特性曲線301、302、303は、コンデンサ105への入力信号Vsとこれに対応する増幅回路の入力信号Viに替えて、それらの包絡線であると解しても、そのまま適用可能な変化傾向を呈している。
【0075】
以上、図1ないし図6を参照して説明した実施例に関する特徴を以下に要約する。
コンデンサ105(110)と、コンデンサ105(110)を介して信号(Vs)が入力される増幅回路20a(20b)と、増幅回路20a(20b)の負帰還路にゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタ103(108)と、増幅回路20a(20b)の出力から信号(Vs)が担うパルスを検出する検出回路(508)と、を含んでパルス検出回路が構成される。
【0076】
この構成は、ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタ103(108)が介挿された負帰還路を有する増幅回路20a(20b)と、増幅回路20a(20b)の入力端に一端側が接続され他端側が被検出信号が供給される信号入力端として設定されたコンデンサ105(110)とを含み、信号入力端に供給される被検出信号(Vs)の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅変化を呈する波形に変換する信号波形変換部10a(10b)と、信号波形変換部10a(10b)の出力信号(Vo)から被検出信号(Vs)が担うパルスを検出するパルス検出部(508)と、を備えているパルス検出回路の構成であると換言される。
【0077】
このパルス検出回路では、回路はPN接合を用いないためにCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能である。しかも、MOSトランジスタの限界周波数程度の高周波高速動作が可能でありIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
また、コンデンサ105(110)と、コンデンサ105(110)を介して信号が入力される増幅回路20a(20b)と、増幅回路20a(20b)の出力信号を積分する積分手段(406)と、増幅回路20a(20b)の負帰還路にゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタ103(108)を含み、積分手段(406)の出力として信号(Vs)の包絡線を得るように包絡線検出回路が構成される。
【0078】
この包絡線検出回路では、回路はPN接合を用いないためにCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能である。しかも、MOSトランジスタの限界周波数程度の高周波高速動作が可能でありIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易な包絡線検出回路が実現できる。
また、このようなパルス検出回路および包絡線検出回路における増幅回路20a(20b)は相補接続されたPチャネルおよびNチャネルMOSトランジスタにより構成され得る。
【0079】
この構成では適用される増幅回路は簡単なCMOSインバータ回路によって構成できるためCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能であるという特長の上に、特に、インバータ回路を構成するMOSトランジスタの限界周波数程度の高周波高速動作が可能なのでIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
【0080】
(実施例2)
図7に本発明の他の実施例としての包絡線検出回路またはパルス検出回路に適用する信号波形変換部の構成例を示す。この信号波形変換部は実施例1の図1(a)に示した回路10(a)と図1(b)に示した回路10(b)を縦続接続したものである。この図7では、これらの回路10(a)および回路10(b)について改めて参照符号701および702を附しているが、これらの回路701,702の構成要素については図1(a)および図1(b)において用いたものと同じ参照符号を用いている。
【0081】
図8は図7の回路(信号波形変換部)の作用を説明するための信号波形図である。
入力信号レベルVs(図8(a))が大きくないとき初段の回路701は信号を線形増幅して出力Vo1を出力する(図8(b))。
次段の回路702ではこの増幅された信号Vo1から尖頭値位置検出または包絡線検出するために偏りのある信号Vo2を出力する(図8(c))。
【0082】
入力信号Vsのレベルが十分に大きいときはVo1にも偏りが生じる。
図1(a)、(b)に示した互いに逆特性の回路を縦続接続すると偏りの方向は反転しながら増強されるため正しく検出することが可能となる。
回路を更に多数縦続接続することによって更に小さいレベルの信号からの包絡線やピーク位置の検出は可能となる。この場合も一段おきに検出の極性の異なる回路を互い違いに接続していくことが必要である。
【0083】
図7の初段の回路701と次段の回路702の接続順序を入れ替え、即ち701の部分に図1(b)の回路を適用し、702の部分に図1(a)の回路を適用すると、検出する極性を反転させることができる。
また多くの場合、回路に付随する寄生容量などによって高周波成分が抜けて図4に示した積分回路あるいはローパスフィルタが不要になることも多い。寄生容量を積極的に利用することで回路の簡略化が可能である。
以上の回路を図4または図5の信号波形変換部405または507として使用することによりパルス検出回路または包絡線検出回路を構成することができる。
【0084】
以上、図7ないし図8を参照して説明した実施例に関する特徴を以下に要約する。
コンデンサ105(110)と、コンデンサ105(110)を介して信号(Vs)が入力されるPチャネルおよびNチャネルMOSトランジスタの相補接続による増幅回路20a(20b)と、増幅回路20a(20b)の負帰還路に介挿されゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタ103(108)とをそれぞれ含む複数の回路ユニット701,702を縦続接続して構成され各個の回路ユニット701,702における帰還路のMOSトランジスタ105、108の向きは当該縦続接続における隣接する回路ユニット701,702毎に逆方向となるように接続された信号波形変換部(701+702)と、信号波形変換部(701+702)の出力から入力信号(Vs)が担うパルスを検出するパルス検出部(509)と、を備えてパルス検出回路が構成される。
【0085】
このパルス検出回路は、ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタ103(108)が介挿された負帰還路を有する増幅回路20a(20b)と増幅回路20a(20b)の入力側に設けられたコンデンサ105(110)とをそれぞれ含む複数の回路ユニット701,702を縦続接続して構成され各個の回路ユニット701,702における帰還路のMOSトランジスタ103(108)の向きは当該縦続接続における隣接する回路ユニット701,702毎に逆方向となるように接続され、初段の回路ユニット701の入力端に供給される入力信号(Vs)の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅変化を呈する波形に変換する信号波形変換部(701+702)と、信号波形変換部(701+702)の出力信号から入力信号(Vs)が担うパルスを検出するパルス検出部(509)と、を備えているものであると換言される。
【0086】
このパルス検出回路では、各回路ユニット701,702において信号パルスを増幅しつつピーク位置を検出するように回路定数の設定が可能であり、この回路ユニット701,702を縦続接続することによって微弱な信号でも増幅しつつピーク位置の検出が可能となる。しかも使用される素子はいずれもCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能であり、素子の限界周波数程度の高周波高速動作も可能なのでIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
【0087】
また、コンデンサ105(110)と、コンデンサ105(110)を介して信号(Vs)が入力されるPチャネルおよびNチャネルMOSトランジスタの相補接続による増幅回路20a(20b)と、増幅回路20a(20b)の負帰還路に介挿されゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタ103(108)とをそれぞれ含む複数の回路ユニット701,702を縦続接続して構成され各個の回路ユニット701,702における帰還路のMOSトランジスタ105、108の向きは当該縦続接続における隣接する回路ユニット701,702毎に逆方向となるように接続された信号波形変換部(701+702)と、信号波形変換部(701+702)の出力から入力信号(Vs)が担うパルスを検出するパルス検出部(509)と、を備えて包絡線検出回路が構成される。
【0088】
この包絡線検出回路では、各回路ユニット701,702において信号パルスの包絡線を検出しつつ増幅するように回路定数の設定が可能であり、この回路ユニット701,702を縦続接続することによって微弱な信号でも増幅しつつ包絡線の検出が可能となる。しかも使用される素子はいずれもCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能であり、素子の限界周波数程度の高周波高速動作も可能なのでIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
【0089】
(実施例3)
図9は、本発明の包絡線検出回路およびパルス検出回路を適用したUWB受信機の構成を表すブロック図である。
アンテナ901によって受信されたUWB信号は差動の低雑音増幅回路902によって増幅され差動信号VspおよびVsmを出力する。
【0090】
これら差動信号VspおよびVsmは振幅が同じで位相が180度異なる平衡の差動信号である。これらの信号は既述の形態の信号波形変換部903,904に入力される。上述の実施例1および実施例2では、検出する極性の異なる2種の回路を説明したが、この実施例3では、信号波形変換部903,904として極性の異なる回路を適用するのではなく、同一の極性の同一の構成の回路を適用する。この信号波形変換部は上記に説明した図1または図7の回路が適用される。
【0091】
本実施例については、説明の便宜上、包絡線検出回路903および904として実施例2(図7)で説明した2段構成の信号波形変換部を適用して負側に包絡線を出力する信号波形変換部を用たものを例示してその動作を説明する。
信号波形変換部903ではVspの負方向の包絡線を検出してVop2として出力し、信号波形変換部904はVsmの負方向の包絡線を検出してVom2として出力する。Vop2およびVom3は包絡線に高周波成分が重畳された図10(c)に示すような波形となっている。ここに、VspとVsmは極性が反転しているので高周波成分は互いに位相が180度ことなっており、結局半サイクルずつVspの負方向の包絡線を検出する。
【0092】
図10は、図9の装置(UWB受信機)の各部の動作を示すタイム図である。図10では受信信号のレベルが変動してもパルス検出が良好に行われることを示すために受信パルスのレベルを3dBずつ減少させた4つのパルスについて示している。
図10(a)にVsp、Vsmを示し、図10(c)にVop2、Vom2を示す。
図10(b)は、信号波形変換部903,904の初段の出力であり、図7におけるVo1に相当する。図10(b)では、信号名を改めてそれぞれVop1、Vom1とする。
【0093】
尚、図10(a)、図10(b)、および、図10(c)において、Vsm、Vom1、および、Vom2は破線で表されている。Vop1、Vom1は信号のレベルが小さいため、既述のような偏りのある信号となっていない。2段重ねることによりVop2、Vom2のように偏りのある信号となりそれぞれ半サイクルずつ交互に包絡線を出力する。
これらの両出力をコンデンサ907、908により結合し加算する。この加算された信号をVaiとする。Vaiは位相が180度異なる二つの高周波成分が加算されるため,高周波成分はキャンセルされることに成り大幅に低減され同図(d)のような波形となる。
【0094】
また、Vaiは回路の寄生容量によって高い周波数成分が取り除かれ図10(d)に示すように滑らかな波形になっている。Vaiは増幅回路905によって増幅され出力Vaoが出力される(図10(e))。
この増幅回路905として図2に示した回路を用いると、信号の正または負の一方のピークのレベルがそろった信号が出力される。本実施例では図2(a)のインバータ増幅回路を用いた場合を示している。
【0095】
増幅回路905は、図1(a)においてコンデンサ105に相当するコンデンサが2個ついた加算増幅回路となっている他は既述の実施例1と同様に動作するが、本実施例ではVaiの正側がレベル固定される。
図10ではVai(図10(d))の正側がほぼ1.05Vに固定されVao(図10(e))には0.5V付近に基準レベルが固定された信号が出力されていることが判読される。コンパレータ906によってこのレベルを基準にレベル判定を行えばパルスの有無、或いはその位置を良好に検出でき、通信に利用することができる。
【0096】
尚、増幅回路905として図1(b)の回路を用いるとVaiの負側を検出できる。こちらの回路の方がVaiの負側の急峻な変化を示す部分の検出ができるのでより正確なパルスの位置検出ができる。パルス位置変調など正確なパルス位置検出が必要な場合など、必要に応じて使い分けることができる。
以上、図9ないし図10を参照して説明した実施例に関する特徴を以下に要約する。
【0097】
差動入力信号(Vsp、Vsm)の双方の系統に各対応して図1(a) 、図1(b)または図7の回路を図4の如く接続して構成された包絡線検出回路を設け、前記双方の系統の各包絡線検出回路の出力を合成する合成手段を備えていることを特徴とする包絡線検出装置が構成される。
この包絡線検出装置では、差動信号のそれぞれに同一の図1(a) 、図1(b)または図7の回路を図4の如く接続して構成された何れか一の包絡線検出回路を接続することによって差動信号の半サイクルごとに包絡線を検出することが出来それらを合成することによって能率よく包絡線の検出を行うことが可能となる。
【0098】
また、供給されたUWB信号が担うパルスを検出する信号処理部を備えた電子装置であって、この信号処理部は図1(a) 、図1(b)、図7、および、図9の一部の何れか一のパルス検出回路を含んで構成されていることを特徴とする電子装置が構成される。
この電子装置では、UWB受信信号の包絡線を検出した後、所定の基準レベルと比較し受信データを判断するのではなく、包絡線の尖頭値を検出してそのデータを判断することが可能となる。これによって、従来困難であったパルス判定の基準レベルを設定する必要が無くなりシステムの簡略化が計れることになる。
【0099】
さらに、供給されたUWB信号の包絡線を検出する信号処理部を備えた電子装置であって、この信号処理部は図1(a) 、図1(b)、図7、および、図9の一部の何れか一の包絡線検出回路を含んで構成されていることを特徴とする電子装置が構成される。
この電子装置では、UWB受信信号の包絡線を検出した後、所定の基準レベルと比較し受信データを判断するのではなく、包絡線の尖頭値を検出してそのデータを判断することが可能となる。これによって、従来困難であったパルス判定の基準レベルを設定する必要が無くなりシステムの簡略化が計れることになる。
【0100】
また、図1ないし図10を参照して説明したところから理解される一つの電子装置に係る技術思想は、次のように要約される。
電子装置を、入力端に供給されるUWB信号の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅の変化を呈する波形に変換する信号波形変換部(図1(a) 、図1(b)または図7)と、信号波形変換部(図1(a) 、図1(b)または図7)の出力信号からUWB信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、を備え、信号波形変換部(図1(a) 、図1(b)または図7)は、ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタ103(108)が介挿された負帰還路を有する増幅回路とこの増幅回路の入力側に設けられたコンデンサ105(110)とを含んで構成する。
【0101】
この電子装置では、信号波形変換部はPN接合を用いないためにCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能である。しかも、MOSトランジスタの限界周波数程度の高周波高速動作が可能でありIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
また、他の、一つの電子装置に係る技術思想は、次のように要約される。
【0102】
電子装置を、入力端に供給されるUWB信号の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅の変化を呈する波形に変換する信号波形変換部(図1(a) 、図1(b)または図7)と、信号波形変換部(図1(a) 、図1(b)または図7)の出力信号からUWB信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、を備え、信号波形変換部(図1(a) 、図1(b)または図7)は、ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタ103(108)が介挿された負帰還路を有する増幅回路とこの増幅回路の入力側に設けられたコンデンサ105(110)とを含む回路ユニット701,702が複数縦続接続されて構成され各個の回路ユニット701,702における帰還路のMOSトランジスタ103(108)の向きは当該縦続接続における隣接する回路ユニット701,702毎に逆方向となるように接続され、初段の回路ユニット701の入力端にUWB信号が供給されるように構成する。
【0103】
この電子装置では、各回路ユニットにおいて信号パルスのピーク位置を検出しつつ増幅するように回路定数の設定が可能であり、この回路ユニットを縦続接続することによって微弱な信号でも増幅しつつピーク位置の検出が可能となる。しかも使用される素子はいずれもCMOS半導体プロセスによるオンチップ化が可能であり、素子の限界周波数程度の高周波高速動作も可能なのでIR通信などの高速動作が必要なシステムへの応用が可能となる。これによってシステム一体化が容易なパルス検出回路が実現できる。
【0104】
以上、主として、本発明の装置(回路)について説明したが、既述の本発明の技術思想は、供給される信号の波形をその変動における一方の極性側のピークが略一定レベルとなるように揃え、且つ、他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅の変化を呈する波形を成すように変換し、前記波形を変換した信号から前記供給される信号が担うパルスを検出することを特徴とするパルス検出方法としても要約される。
【0105】
このパルス検出方法によれば、従来、パルス検出のための基準レベルを一律に設定することが難しく、確実な検出が困難であったIRのような素子性能の限界に及ぶ超高周波域で確実にパルス検出を行うことができる。
以上、実施例1〜3では増幅回路の帰還路にソースとドレインを短絡したMOSトランジスタを配する場合を例に説明したが、この帰還路に配するトランジスタに替えてPN接合ダイオードを配しても全く同様に動作させることが可能である。CMOS半導体プロセスにおいてPN接合ダイオードは古くから入出力の静電気保護回路に使用されておりわずかな製造プロセスの変更で作りこむことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上本発明による包絡線検出回路をUWB受信機に用いる場合を例に説明したがこれに限定されるものではなく、包絡線検出の必要なAM受信機や尖頭値検出が必要なパルス位置変調(PPM)を用いる通信機などに幅広く応用することが可能である。
本発明による包絡線検出回路またはパルス検出回路は通常のCMOSプロセスにより搭載が可能でありUWB受信機のようなシステムも1チップ集積回路化を可能とし極めて有用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明による包絡線検出回路およびパルス検出回路の要部である信号波形変換部の構成を示す図である。
【図2】本発明による包絡線検出回路およびパルス検出回路の要部の動作を説明するための図である。
【図3】図1の回路の作用を説明するための信号波形図である。
【図4】本発明の包絡線検出回路の構成例を表すブロック図である。
【図5】本発明のパルス検出回路の構成例を表すブロック図である。
【図6】種々条件を設定した場合の図1の回路の作用を説明するための図である。
【図7】本発明の他の実施例としての包絡線検出回路またはパルス検出回路に適用する信号波形変換部の構成例を示す図である。
【図8】図7の回路の作用を説明するための信号波形図である。
【図9】本発明の包絡線検出回路およびパルス検出回路を適用したUWB受信機の構成を表すブロック図である。
【図10】図9の装置の各部の動作を示すタイム図である。
【符号の説明】
【0108】
10a,10b………………………信号波形変換部
101、105…Pチャネルトランジスタ
102、103、108、107………………………Nチャネルトランジスタ
105、110………………………コンデンサ
104、109………………………バイアス電流源
406…………………………………積分手段(またはローパスフィルタ)
508…………………………………コンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力される増幅回路と、前記増幅回路の負帰還路に介挿されゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタと、前記増幅回路の出力から前記信号が担うパルスを検出する検出回路と、を含んで構成されることを特徴とするパルス検出回路。
【請求項2】
コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力される増幅回路と、前記増幅回路の出力信号から該信号に含まれる高周波成分を低減または除去する濾波手段と、前記増幅回路の負帰還路にゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタを含み、前記濾波手段の出力として前記信号の包絡線を得るように構成されることを特徴とする包絡線検出回路。
【請求項3】
コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力される増幅回路と、前記増幅回路の負帰還路に介挿されゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタとをそれぞれ含む複数の回路ユニットを縦続接続して構成され各個の前記回路ユニットにおける前記帰還路のMOSトランジスタの向きは当該縦続接続における隣接する前記回路ユニット毎に逆方向となるように接続された信号波形変換部と、
前記信号波形変換部の出力から前記入力信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、
を備えて構成されることを特徴とするパルス検出回路。
【請求項4】
コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力される増幅回路と、前記増幅回路の負帰還路に介挿されゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタとをそれぞれ含む複数の回路ユニットを縦続接続して構成され各個の前記回路ユニットにおける前記帰還路のMOSトランジスタの向きは当該縦続接続における隣接する前記回路ユニット毎に逆方向となるように接続された信号波形変換部と、
前記信号波形変換部の出力から前記入力信号の包絡線を検出する包絡線検出部と、
を備えて構成されることを特徴とする包絡線検出回路。
【請求項5】
差動入力信号の双方の系統に各対応して、コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力される増幅回路と、前記増幅回路の負帰還路にゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタを設け、前記双方の系統の各増幅回路の出力を合成する合成手段を備えていることを特徴とする包絡線検出回路。
【請求項6】
差動入力信号の双方の系統に各対応して、コンデンサと、前記コンデンサを介して信号が入力される増幅回路と、前記増幅回路の負帰還路に介挿されゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタとをそれぞれ含む複数の回路ユニットを縦続接続して構成され各個の前記回路ユニットにおける前記帰還路のMOSトランジスタの向きは当該縦続接続における隣接する前記回路ユニット毎に逆方向となるように接続された信号波形変換部と、前記双方の系統の各増幅回路の出力を合成する合成手段とを備え、
前記合成手段の出力から前記入力信号の包絡線を検出する包絡線検出部と、
を備えて構成されることを特徴とする包絡線検出回路。
【請求項7】
前記増幅回路は相補接続されたPチャネルおよびNチャネルMOSトランジスタにより構成されることを特徴とする請求項1および3の何れか一項に記載のパルス検出回路。
【請求項8】
前記増幅回路は相補接続されたPチャネルおよびNチャネルMOSトランジスタにより構成されることを特徴とする請求項2、4、5、および、6の何れか一項に記載の包絡線検出回路。
【請求項9】
供給されたUWB信号が担うパルスを検出する信号処理部を備えた電子装置であって、前記信号処理部は請求項1、3、および、7の何れか一項に記載のパルス検出回路を含んで構成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項10】
供給されたUWB信号の包絡線を検出する信号処理部を備えた電子装置であって、前記信号処理部は請求項2、4乃至6、および、8の何れか一項に記載の包絡線検出回路を含んで構成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項11】
ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタが介挿された負帰還路を有する増幅回路と、前記増幅回路の入力端に一端側が接続され他端側が被検出信号が供給される信号入力端として設定されたコンデンサとを含み、前記信号入力端に供給される被検出信号の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅変化を呈する波形に変換する信号波形変換部と、
前記信号波形変換部の出力信号から前記被検出信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、
を備えていることを特徴とするパルス検出回路。
【請求項12】
ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタが介挿された負帰還路を有する増幅回路と前記増幅回路の入力側に設けられたコンデンサとをそれぞれ含む複数の回路ユニットを縦続接続して構成され各個の前記回路ユニットにおける前記帰還路のMOSトランジスタの向きは当該縦続接続における隣接する前記回路ユニット毎に逆方向となるように接続され、初段の前記回路ユニットの入力端に供給される入力信号の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅変化を呈する波形に変換する信号波形変換部と、
前記信号波形変換部の出力信号から前記入力信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、
を備えていることを特徴とするパルス検出回路。
【請求項13】
入力端に供給されるUWB信号の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅の変化を呈する波形に変換する信号波形変換部と、前記信号波形変換部の出力信号から前記UWB信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、を備えた電子装置であって、
前記信号波形変換部は、ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタが介挿された負帰還路を有する増幅回路と前記増幅回路の入力側に設けられたコンデンサとを含んで構成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項14】
入力端に供給されるUWB信号の波形をその変動における一方の極性側のピークレベルが略一定に揃い且つ他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅の変化を呈する波形に変換する信号波形変換部と、前記信号波形変換部の出力信号から前記UWB信号が担うパルスを検出するパルス検出部と、を備えた電子装置であって、
前記信号波形変換部は、ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタが介挿された負帰還路を有する増幅回路と前記増幅回路の入力側に設けられたコンデンサとを含む回路ユニットが複数縦続接続されて構成され各個の前記回路ユニットにおける前記帰還路のMOSトランジスタの向きは当該縦続接続における隣接する前記回路ユニット毎に逆方向となるように接続され、初段の前記回路ユニットの入力端に前記UWB信号が供給されるように構成されていることを特徴とする電子装置。
【請求項15】
供給される信号の波形をその変動における一方の極性側のピークが略一定レベルとなるように揃え、且つ、他方の極性側に向けて当該変動に相応する振幅の変化を呈する波形を成すように変換し、前記波形を変換した信号から前記供給される信号が担うパルスを検出することを特徴とするパルス検出方法。
【請求項16】
前記ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタに替えてPN接合ダイオードを前記負帰還回路に介挿したことを特徴とする請求項1、3、7、11、および、12の何れか一項に記載のパルス検出回路。
【請求項17】
前記ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタに替えてPN接合ダイオードを前記負帰還回路に介挿したことを特徴とする請求項2、および、4乃至6の何れか一項に記載の包絡線検出回路。
【請求項18】
前記ゲートおよびドレインを短絡したMOSトランジスタに替えてPN接合ダイオードを前記負帰還回路に介挿したことを特徴とする請求項9、10、13、および、14の何れか一項に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−199493(P2008−199493A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35016(P2007−35016)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】