説明

パワーステアリング装置

【課題】 アシスト力の過剰付与を回避して、片手操作時における好適な操舵フィーリングを確保することができるパワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】 パワーステアリング装置1は、運転者によるステアリング操作の状態、即ちそのステアリング操作が両手によるもの(両手操作)であるか片手によるもの(片手操作)であるかを検出する操作状態検出装置31と、路面反力Frを検出可能なトルクセンサ14とを備える。そして、EPSECU11は、ステアリング操作が片手で行われており、且つ路面反力Frが所定値よりも大きい場合には、その路面反力Frが大となるほど、操舵系に付与するアシスト力を大とすべくEPSアクチュエータ10の作動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、運転者のステアリング操作を補助すべく、パワーステアリング装置により操舵系にアシスト力を付与するものが一般的である。
ところで、通常、パワーステアリング装置は、運転者が両手でステアリング操作を行うことを前提として、その操舵系に付与するアシスト力の設定がなされている。しかしながら、現実には、必ずしも全ての運転者が常に両手でステアリング操作を行うとは限らず、場合によっては、片手でステアリング操作が行われることもある。そして、このような場合、アシスト力の不足によって運転者の負担が大きくなり、ひいては操舵フィーリングの悪化を招くという問題がある。特に、ステアリングの意匠面側(運転者と対向する側の面)に「手のひら」を押し当てた状態でステアリングを回転させるようなステアリング操作が行われた場合、アシスト力不足によってステアリングから手が滑るおそれもある。
【0003】
従来、こうした片手によるステアリング操作時のアシスト力不足を解決すべく、運転者によるステアリング操作の状態(両手操作か片手操作か)を検出する操作状態検出装置を備え、ステアリング操作が片手で行われている場合には、ステアリング操作が両手で行われている場合よりもアシスト力を大とするものがある(例えば、特許文献1参照)。そして、このようなパワーステアリング装置を採用することにより、片手操作時のアシスト力不足を解消し、その操舵フィーリングの向上を図ることができる。
【0004】
尚、運転者によるステアリング操作の状態を検出する方法は、例えば、ステアリング表面(意匠面を含むその外表面)の複数箇所に感圧素子を配設し、その圧力分布に基づいてステアリング操作の状態を検出することができる(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2002−160658号公報
【特許文献2】特開平06−286629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、片手操作時にはアシスト力の不足が生じやすいとはいえ、路面反力が小さい場合、或いは車速の速い場合等、必ずしもアシスト力は大きい方が好ましいといえない場合がある。このため、上記従来例のごとく片手操作時には一律にアシスト力を大とする構成では、アシスト力の過剰が生じる場合があり、ステアリングが軽すぎる、或いはステアリング剛性感が低下する等、却って操舵フィーリングの低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、アシスト力の過剰付与を回避して、片手操作時における好適な操舵フィーリングを確保することができるパワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、該操舵力補助装置が発生する前記アシスト力を制御する制御手段とを備えたパワーステアリング装置であって、前記ステアリング操作の状態を検出する操作状態検出手段と、路面反力を検出する路面反力検出手段とを備え、前記制御手段は、前記ステアリング操作が片手で行われており、且つ前記路面反力が所定値より大きい場合に、該路面反力が大となるほど前記アシスト力を大とすること、を要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、該操舵力補助装置が発生する前記アシスト力を制御する制御手段とを備えたパワーステアリング装置であって、前記ステアリング操作の状態を検出する操作状態検出手段と、車速を検出する車速検出手段とを備え、前記制御手段は、前記ステアリング操作が片手で行われており、且つ前記車速が所定値より小さい場合に、該車速が小となるほど前記アシスト力を大とすること、を要旨とする。
【0009】
上記各構成によれば、アシスト力不足が生じやすい路面反力が所定値よりも大きい状態、又は車速が所定値よりも小さい状態においてのみ、そのアシスト力が両手操作時よりも大となる。従って、高速走行時等、アシスト要求の低い状態におけるアシスト力の過剰によるステアリングの軽量感、或いはステアリング剛性感の低下等を回避することができる。そして、路面反力が大きい、又は車速が小さい状態においては、アシスト要求の増大に応じたアシスト力を操舵系に付与することができる。その結果、片手操作時の操舵フィーリングをより好適なものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アシスト力の過剰付与を回避して、片手操作時における好適な操舵フィーリングを確保することが可能なパワーステアリング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態のパワーステアリング装置1の概略構成図である。同図に示すように、ステアリングホイール(ステアリング)2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック5に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック5の往復直線運動に変換される。そして、このラック5の往復直線運動により操舵輪6の舵角、即ちタイヤ角が可変することにより、車両の進行方向が変更されるようになっている。
【0012】
本実施形態のパワーステアリング装置1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ10と、該EPSアクチュエータ10の作動を制御する制御手段としてのEPSECU11とを備えた電動パワーステアリング装置(EPS)である。
【0013】
本実施形態のEPSアクチュエータ10は、その駆動源であるモータ12がラック5と同軸に配置された所謂ラック型のEPSアクチュエータであり、モータ12が発生するアシストトルクは、ボール送り機構(図示略)を介してラック5に伝達される。尚、本実施形態のモータ12は、ブラシレスモータであり、EPSECU11から三相(U,V,W)の駆動電力の供給を受けることにより回転する。そして、EPSECU11は、このモータ12が発生するアシストトルクを制御することにより、操舵系に付与するアシスト力を制御する(パワーアシスト制御)。
【0014】
本実施形態では、EPSECU11には、トルクセンサ14及び車速検出手段としての車速センサ15が接続されている。尚、車速センサ15は、車内ネットワーク(CAN:Controller Area Network)13を介してEPSECU11と接続されている。そして、EPSECU11は、これらトルクセンサ14及び車速センサ15によりそれぞれ検出される操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、EPSアクチュエータ10の作動、即ちパワーアシスト制御を実行する。
【0015】
次に、本実施形態におけるパワーステアリング装置の制御態様について説明する。
図2は、本実施形態のパワーステアリング装置の制御ブロック図である。尚、以下に示す各制御ブロックは、後述するマイコン17が実行するコンピュータプログラムにより実現されるものである。
【0016】
同図に示すように、EPSECU11は、モータ制御信号を出力するマイコン17と、モータ制御信号に基づいてモータ12に三相の駆動電力を供給する駆動回路18とを備えている。
【0017】
マイコン17には、モータ12に通電される各相電流値Iu,Iv,Iwを検出するための電流センサ20u,20v、及びモータ12の回転角(電気角)θを検出するための回転角センサ21が接続されている。そして、マイコン17は、これら各センサの出力信号に基づいてモータ12の各相電流値Iu,Iv,Iw及び回転角θを検出し、その各相電流値Iu,Iv,Iw及び回転角θ、並びに上記操舵トルクτ及び車速Vに基づいて駆動回路18にモータ制御信号を出力する。
【0018】
詳述すると、マイコン17は、操舵系に付与するアシスト力の制御目標量である電流指令値Iq*を演算する電流指令値演算部25と、電流指令値演算部25により算出された電流指令値Iq*に基づいてモータ12の各相に印加する電圧の指令値、即ち相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を演算する相電圧指令値演算部26とを備えている。
【0019】
本実施形態では、電流指令値演算部25は、上記トルクセンサ14及び車速センサ15により検出された操舵トルクτ及び車速Vに基づいて電流指令値Iq*を演算し、その電流指令値Iq*を相電圧指令値演算部26に出力する。また、相電圧指令値演算部26には、電流指令値演算部25により算出された電流指令値Iq*とともに、各電流センサ20u,20vにより検出された各相電流値Iu,Iv,Iw及び回転角センサ21により検出された回転角θが入力される。そして、相電圧指令値演算部26は、これら各相電流値Iu,Iv,Iw、回転角θ、及び電流指令値Iq*に基づいて相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を演算する。
【0020】
本実施形態では、相電圧指令値演算部26は、d/q座標系における電流制御により、モータ12に供給する電流量(実電流値)を制御目標量である電流指令値Iq*に追従させるべく相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*の演算を行う。即ち、電流指令値Iq*は、q軸電流指令値として相電圧指令値演算部26に入力され、各相電流値Iu,Iv,Iwは、回転角θに基づいてd/q変換される。そして、相電圧指令値演算部26は、q軸電流指令値、及びd/q変換により算出されたd,q軸電流値に基づいてd,q軸電圧指令値を演算し、そのd,q軸電圧指令値をd/q逆変換することにより各相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を算出する。
【0021】
相電圧指令値演算部26により算出された相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*は、モータ制御信号出力部27に入力される。そして、モータ制御信号出力部27は、その相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に基づいて駆動回路18にモータ制御信号を出力する。
【0022】
一方、駆動回路18は、モータ12の相数に対応する複数(6個)のパワーMOSFET(以下、単にFET)により構成されており、具体的にはFET28a,28dの直列回路、FET28b,28eの直列回路及びFET28c,28fの直列回路を並列接続することにより構成されている。そして、FET28a,28dの接続点29uはモータ12のU相コイルに接続され、FET28b,28eの接続点29vはモータ12のV相コイルに接続され、FET28c,28fの接続点29wはモータ12のW相コイルに接続されている。また、各FET28a〜28fのゲート端子には、マイコン17から出力されるモータ制御信号が印加される。そして、このモータ制御信号に応答して各FET28a〜28fがオン/オフすることにより、直流電源30から供給される直流電圧が三相(U,V,W)の駆動電力に変換され、モータ12に供給されるようになっている。
【0023】
(片手操作時のパワーアシスト制御)
次に、本実施形態のパワーステアリング装置1における片手操作時のパワーアシスト制御の態様について説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のパワーステアリング装置1は、運転者によるステアリング操作の状態、即ちそのステアリング操作が両手によるもの(両手操作)であるか片手によるもの(片手操作)であるかを検出する操作状態検出装置31を備えており、操作状態検出装置31は車内ネットワーク13を介してEPSECU11と接続されている。
【0025】
尚、この操作状態検出手段としての操作状態検出装置31は、ステアリング2の外表面に配設された複数の感圧素子により検出される圧力分布に基づいて運転者の操作状態を検出する公知のものであり、同操作状態検出装置31は、車内ネットワーク13を介して、その検出結果である操作状態信号をEPSECU11に出力する。
【0026】
また、本実施形態のトルクセンサ14は、路面反力Frを検出可能な路面反力検出手段としての機能を有するものであり、EPSECU11は、同トルクセンサ14の出力信号に基づいて路面反力Frを検出する。そして、EPSECU11は、ステアリング操作が片手で行われており、且つ路面反力Frが所定値よりも大きい場合には、その路面反力Frが大となるほど、操舵系に付与するアシスト力を大とすべくEPSアクチュエータ10の作動を制御する。
【0027】
詳述すると、図2に示すように、電流指令値演算部25は、操舵トルクτ及び車速Vに基づいて操舵系に付与するアシスト力の基礎的制御目標量、即ち電流指令値Iq*の基礎成分である基本アシスト量Ias*を演算する基本アシスト量演算部32と、操作状態信号に基づいて片手操作であるか否かを判定する片手操作判定部33と、路面反力Frに基づいて片手操作時の補正成分である片手補正量Ioh*を演算する片手補正量演算部34とを備えている。そして、電流指令値演算部25は、片手操作判定部33において「片手操作である」との判定がなされた場合には、基本アシスト量演算部32により算出された基本アシスト量Ias*に、片手補正量演算部34により算出された片手補正量Ioh*を加算(重畳)した値を電流指令値Iq*として相電圧指令値演算部26に出力する。
【0028】
更に詳述すると、片手補正量演算部34は、片手補正量Ioh*と路面反力Frとが関連付けられたマップ35を有しており(図3参照)、同マップ35において、片手補正量Ioh*は、路面反力Frが所定値F0以下の領域において「0」、路面反力Frが所定値F0より大きい領域において、路面反力Frが大となるほど大となるように設定されている。そして、片手補正量演算部34は、検出された路面反力Frをこのマップ35に照合することにより、片手補正量Ioh*の演算を行う。即ち、片手補正量演算部34は、路面反力Frが所定値F0以下である場合には、片手補正量Ioh*として「0」を算出し、路面反力Frが所定値F0より大きい場合には、路面反力Frが大となるほど大きな値を有する片手補正量Ioh*を算出する。尚、本実施形態では、所定値F0は、実験やシミュレーション等により求めれた「路面反力Frが同所定値F0よりも大となることでアシスト力不足が発生しやすい」とされる値に設定されている。
【0029】
片手補正量演算部34により算出された片手補正量Ioh*は、片手操作判定部33によりオン/オフ制御される切替部36を介して加算器37に入力され、片手操作判定部33は、「片手操作である」と判定した場合に、切替部36に対しオン指令を出力する。そして、加算器37において、基本アシスト量演算部32により算出された基本アシスト量Ias*と片手補正量Ioh*とが重畳されることにより、その重畳された値が電流指令値Iq*として相電圧指令値演算部26へと出力されるようになっている。
【0030】
即ち、本実施形態では、片手補正量演算部34により算出された片手補正量Ioh*は、片手操作判定部33が「片手操作である」と判定した場合にのみ加算器37に入力される。そして、「片手操作ではない」と判定した場合であっても、路面反力Frが所定値F0以下の領域では、その値が「0」となる。
【0031】
従って、片手操作時且つ路面反力Frが所定値F0よりも大きい場合にのみ、基本アシスト量Ias*に路面反力Frが大となるほど大きな値を有する片手補正量Ioh*が加算された値が電流指令値Iq*として出力され、それ以外の場合には、通常の制御目標量である基本アシスト量Ias*が電流指令値Iq*として出力される。そして、これにより、ステアリング操作が片手で行われており、且つ路面反力Frが所定値よりも大きい場合に、その路面反力Frが大となるほど、操舵系に付与するアシスト力を大とすることが可能となっている。
【0032】
以上、本実施形態によれば、以下のような特徴を得ることができる。
パワーステアリング装置1は、運転者によるステアリング操作の状態、即ちそのステアリング操作が両手によるもの(両手操作)であるか片手によるもの(片手操作)であるかを検出する操作状態検出装置31と、路面反力Frを検出可能なトルクセンサ14とを備える。そして、EPSECU11は、ステアリング操作が片手で行われており、且つ路面反力Frが所定値よりも大きい場合には、その路面反力Frが大となるほど、操舵系に付与するアシスト力を大とすべくEPSアクチュエータ10の作動を制御する。
【0033】
このような構成とすれば、アシスト力不足が生じやすい路面反力Frが所定値F0よりも大きい状態においてのみ、そのアシスト力が両手操作時よりも大となる。従って、高速走行時等、アシスト要求の低い状態におけるアシスト力の過剰によるステアリングの軽量感、或いはステアリング剛性感の低下等を回避することができる。そして、路面反力Frが大きい状態においては、アシスト要求の増大に応じたアシスト力を操舵系に付与することができる。その結果、片手操作時の操舵フィーリングをより好適なものとすることができる。
【0034】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、片手操作判定部33は、片手操作であるか否かを判定することとしたが、更に進めて、片手操作のうちの、ステアリングの意匠面側(運転者と対向する側の面)に「手のひら」を押し当てた状態でステアリングを回転させるようなステアリング操作(手のひら操作)が行われているか否かを判定することとしてもよい。そして、「手のひら操作」が行われていることを上記制御の開始条件としてもよい。また、普通の片手操作と「手のひら操作」とを識別し、各々に応じた所定値やアシスト力の増加カーブ等を設定してもよい。尚、「手のひら操作」の検出は、操作状態検出装置31を構成する感圧素子をステアリング2の意匠面側(運転者と対向する側の面)に配置することで容易に具現化することができる。
【0035】
・本実施形態では、EPSECU11は、片手操作時且つ路面反力Frが所定値よりも大きい場合に、その路面反力Frが大となるほど、操舵系に付与するアシスト力を大とすべくEPSアクチュエータ10の作動を制御することとした。しかし、これに限らず、片手操作時且つ車速Vが所定値よりも小さい場合に、車速が小となるほどアシスト力を大とする構成としてもよい。即ち、アシスト力要求は、一般に車速Vが遅いほど強くなり、高速領域において低くなる。従って、路面反力Frに代えて、車速Vを条件としても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
具体的には、片手補正量演算部に、図4に示すような片手補正量Ioh*と車速Vとが関連付けられたマップ38を設けることとし、同マップ38において、片手補正量Ioh*は、車速Vが所定値V0以上の領域において「0」、車速Vが所定値V0より小さい領域において、車速Vが小となるほど大となるように設定する。そして、片手補正量演算部は、このマップ38に車速Vを照合することにより、片手補正量Ioh*の演算を行うこととすればよい。
【0037】
・本実施形態では、本発明を、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてEPSアクチュエータ10を備えた電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した。しかし、これに限らず、図5に示すパワーステアリング装置40のように、油圧ポンプ41と、その油圧に基づいて操舵系にアシスト力を付与するパワーシリンダ42と、前記パワーシリンダに供給する圧油の流量を変更可能な流量制御弁44と、該流量制御弁44を制御するVFCECU43とを備えた流量可変型の油圧式パワーステアリング装置に具体化してもよい。
【0038】
尚、この場合、VFCECU43においては、上記実施形態における電流指令値Iq*に代えて、パワーシリンダ42に供給する圧油の流量を制御目標量として用いればよい。即ち、VFCECU43は、パワーシリンダ42に供給する圧油の流量を大とすることによりアシスト力を大とする構成とすればよい。また、路面反力Frを検出可能なトルクセンサ等を持たない場合には、上記別例のように車速Vをパラメータとして用いればよい。
【0039】
次に、以上の実施形態から把握することのできる請求項以外の技術的思想を記載する。
(イ)請求項1又は請求項2に記載のパワーステアリング装置において、前記操舵力補助装置は、モータを駆動源として前記アシスト力を付与するものであり、前記制御手段は、前記アシスト力を大とする場合には、前記モータに供給する電流量を大とすること、を特徴とするパワーステアリング装置。
【0040】
(ロ)請求項1又は請求項2に記載のパワーステアリング装置において、前記操舵力補助装置は、油圧ポンプと、その油圧に基づいて操舵系にアシスト力を付与するパワーシリンダと、前記パワーシリンダに供給する圧油の流量を変更可能な流量制御装置とを備え、前記制御手段は、前記アシスト力を大とする場合には、前記パワーシリンダに供給する圧油の流量を大とすべく前記流量制御装置を制御すること、を特徴とするパワーステアリング装置。
【0041】
(ハ)請求項1に記載のパワーステアリング装置において、前記制御手段は、前記ステアリング操作が片手で行われているか否かを判定する判定手段と、前記路面反力に基づいて前記アシスト力の補正量を演算する演算手段とを備え、前記ステアリング操作が片手で行われている場合には、前記アシスト力の制御目標量に前記補正量を加算することにより前記アシスト力を大とすること、を特徴とするパワーステアリング装置。
【0042】
(ニ)請求項2に記載のパワーステアリング装置において、前記制御手段は、前記ステアリング操作が片手で行われているか否かを判定する判定手段と、前記車速に基づいて前記アシスト力の補正量を演算する演算手段とを備え、前記ステアリング操作が片手で行われている場合には、前記アシスト力の制御目標量に前記補正量を加算することにより前記アシスト力を大とすること、を特徴とするパワーステアリング装置。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態のパワーステアリング装置の概略構成図。
【図2】本実施形態のパワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】片手補正量と路面反力とが関連付けられたマップの概略構成図。
【図4】片手補正量と車速とが関連付けられたマップの概略構成図。
【図5】別例のパワーステアリング装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0044】
1,40…パワーステアリング装置、2…ステアリング、10…EPSアクチュエータ、11…EPSECU、12…モータ、14…トルクセンサ、15…車速センサ、17…マイコン、18…駆動回路、25…電流指令値演算部、31…操作状態検出装置、32…基本アシスト量演算部、33…片手操作判定部、34…片手補正量演算部、36…切替部、37…加算器、35,38…マップ、41…油圧ポンプ、42…パワーシリンダ、43…VFCECU、44…流量制御弁、Fr…路面反力、V…車速、F0,V0…所定値、Iq*…電流指令値、Ias*…基本アシスト量、Ioh*…片手補正量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、該操舵力補助装置が発生する前記アシスト力を制御する制御手段とを備えたパワーステアリング装置であって、
前記ステアリング操作の状態を検出する操作状態検出手段と、
路面反力を検出する路面反力検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記ステアリング操作が片手で行われており、且つ前記路面反力が所定値より大きい場合に、該路面反力が大となるほど前記アシスト力を大とすること、
を特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項2】
操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、該操舵力補助装置が発生する前記アシスト力を制御する制御手段とを備えたパワーステアリング装置であって、
前記ステアリング操作の状態を検出する操作状態検出手段と、
車速を検出する車速検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記ステアリング操作が片手で行われており、且つ前記車速が所定値より小さい場合に、該車速が小となるほど前記アシスト力を大とすること、
を特徴とするパワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−111109(P2006−111109A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299739(P2004−299739)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】