説明

パワーデバイス及びパワーデバイス用パッケージ

【課題】絶縁性に優れる端子保持部材を有するパワーデバイスを提供する。
【解決手段】端子保持部材の材料として、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位と芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位と芳香族ジオールに由来する繰返し単位とを有し、イソフタル酸に由来する繰返し単位の含有量が全繰返し単位の合計量に対して0〜7モル%である液晶ポリエステルを用いる。液晶ポリエステルにはガラス繊維が配合されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルから構成される端子保持部材を有するパワーデバイスに関する。また、本発明は、このパワーデバイスのパッケージとして用いられるパワーデバイス用パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスは、通常、パワー素子と、パワー素子と電気的に接続された端子と、端子を保持する端子保持部材とを有しており、図1及び2にその例を示す。図1の例では、パワー素子1,1がプリント配線板2に固定され、パワー素子1、1の電極とプリント配線板2の配線とがワイヤーで接続されてなるパワーモジュールが、端子3,3と端子保持部材4と放熱板5とを有するパワーデバイス用パッケージの放熱板5に固定され、プリント配線板2の配線と端子3,3とがワイヤーで接続されており、封止材6でパワーモジュールが封止されている。また、図2の例では、パワー素子1がパッド7に固定され、パワー素子1の電極と端子3,3とがワイヤーで接続されており、端子保持部材兼封止材8で端子3,3が保持されると共に、パワー素子1が封止されている。
【0003】
端子保持部材の材料として、耐熱性に優れることから、液晶ポリエステルが検討されている。例えば、特許文献1には、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位80モル%と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位20モル%とを有する液晶ポリエステル(ヘキスト社の「ベクトラC950」)から構成される端子保持部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−126765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の如き、従来の液晶ポリエステルから構成される端子保持部材を有するパワーデバイスは、端子保持部材の絶縁性が必ずしも十分でなく、特に隣り合う端子間の距離が短いと絶縁破壊が生じ易いという問題がある。そこで、本発明の目的は、液晶ポリエステルから構成され、絶縁性に優れ、隣り合う端子間の距離が短くても絶縁破壊が生じ難い端子保持部材を有するパワーデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、パワー素子と、端子と、液晶ポリエステルから構成される端子保持部材とを有し、前記液晶ポリエステルが、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位(1)と、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位(2)と、芳香族ジオールに由来する繰返し単位(3)とを有する液晶ポリエステルであり、前記液晶ポリエステル中のイソフタル酸に由来する繰返し単位の含有量が、前記液晶ポリエステルが有する全繰返し単位の合計量に対して、0〜7モル%であるパワーデバイスを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記パワーデバイスのパッケージとして用いられるパワーデバイス用パッケージであって、端子と、液晶ポリエステルから構成される端子保持部材とを有し、前記液晶ポリエステルが、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位(1)と、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位(2)と、芳香族ジオールに由来する繰返し単位(3)とを有する液晶ポリエステルであり、前記液晶ポリエステル中のイソフタル酸に由来する繰返し単位の含有量が、前記液晶ポリエステルが有する全繰返し単位の合計量に対して、0〜7モル%であるパワーデバイス用パッケージを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパワーデバイス及びパワーデバイス用パッケージは、端子保持部材の絶縁性に優れ、隣り合う端子間の距離が短くても絶縁破壊が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】パワーデバイスの例を模式的に示す断面図である。
【図2】パワーデバイスの例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のパワーデバイスは、パワー素子と端子と端子保持部材とを有している。そして、端子部材が所定の液晶ポリエステルから構成されている。
【0011】
パワー素子は、電力機器向けの半導体素子であり、電流を交流から直流又は直流から交流に変換したり、電流や電圧や周波数を制御したりする機能を有しており、一般に200V以上の電圧や20A以上の電流を制御する半導体素子である。パワー素子の例としては、整流ダイオード、パワートランジスタ、パワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)及びトライアックが挙げられる。
【0012】
パワー素子は、図1に示す如くその複数をプリント配線板に実装したり、制御回路や駆動回路や保護回路と共にプリント配線板に実装したりして、所謂パワーモジュールとして用いてもよい。なお、パワー素子のプリント配線板への実装は、パワー素子をはんだや接着剤等によりプリント配線板に固定し、パワー素子の電極とプリント配線板の配線とを接続することにより行われ、この接続は、図1に示す如くアルミニウムや銅等の金属製のワイヤーで結ぶことにより行ってもよいし、はんだ等で直接接合することにより行ってもよい。
【0013】
端子は、パワーデバイスと電源や他の機器との接続に用いられ、通常、アルミニウムや銅等の金属から構成される。通常2〜20個の端子がパワーデバイスに備えられる。パワー素子の電極と端子との接続や、パワー素子が実装されたプリント配線板の配線と端子との接続は、図1及び2に示す如くアルミニウムや銅等の金属製のワイヤーで結ぶことにより行ってもよいし、はんだ等で直接接合することにより行ってもよい。
【0014】
端子保持部材を構成する液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。そして、本発明では、液晶ポリエステルとして、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位(1)と、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位(2)と、芳香族ジオールに由来する繰返し単位(3)とを有し、かつ、繰返し単位(2)であるイソフタル酸に由来する繰返し単位の含有量が、全繰返し単位の合計量に対して、0〜7モル%であるものを用いる。これにより、絶縁性に優れ、隣り合う端子間の距離が短くても絶縁破壊が生じ難い端子保持部材を得ることができる。イソフタル酸に由来する繰返し単位の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは6モル%以下、より好ましくは4モル%以下、さらに好ましくは3モル%以下であり、また通常1モル%以上である。この含有量が少ないほど、端子保持部材の絶縁性が向上し易いが、あまり少ないと、液晶ポリエステルが成形し難くなる。
【0015】
繰返し単位(1)は、p−ヒドロキシ安息香酸又は6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位であることが好ましく、繰返し単位(2)は、テレフタル酸、イソフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位であることが好ましく、繰返し単位(3)は、ヒドロキノン又は4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位であることが好ましい。
【0016】
繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、通常30モル%以上、好ましくは30〜80モル%、より好ましくは40〜70モル%、さらに好ましくは45〜65モル%である。繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%である。繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%である。繰返し単位(1)の含有量が多いほど、溶融流動性や耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
【0017】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、通常0.9/1〜1/0.9、好ましくは0.95/1〜1/0.95、より好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0018】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
【0019】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)を与えるモノマー、すなわち芳香族ヒドロキシカルボン酸と、繰返し単位(2)を与えるモノマー、すなわち芳香族ジカルボン酸と、繰返し単位(3)を与えるモノマー、すなわち芳香族ジオールとを、芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸の量が、全モノマーの合計量に対して、0〜7モル%になるようにして、重合(重縮合)させることにより、製造することができる。その際、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールのそれぞれの一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体を用いてもよい。芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基やアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの、カルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるものが挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるものが挙げられる。
【0020】
また、液晶ポリエステルは、モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や溶融張力が高い液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0021】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは280℃以上、より好ましくは290℃以上、さらに好ましくは295℃以上であり、また、通常380℃以下、好ましくは350℃以下である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や溶融張力が向上し易いが、あまり高いと、溶融させるために高温を要し、成形時に熱劣化し易くなる。
【0022】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下において、4℃/分の昇温速度で液晶ポリエステルの加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48,000ポイズ)を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0023】
液晶ポリエステルは、これに充填材、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を1種以上配合して、液晶ポリエステル組成物として用いてもよい。
【0024】
充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、繊維状及び板状以外で、球状その他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。充填材の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜100質量部である。
【0025】
中でも液晶ポリエステルにガラス繊維を配合することにより、端子保持部材にガラス繊維を含ませると、端子保持部材の強度が向上し易いので、好ましい。ガラス繊維の量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは30〜100質量部、さらに好ましくは30〜80質量部である。ガラス繊維の量があまり少ないと、強度向上効果が不十分であり、あまり多いと、異方性が生じ易くなる。また、ガラス繊維は、その数平均繊維径が好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下であり、その数平均繊維長が好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。ガラス繊維の数平均繊維径及び数平均繊維長は、電子顕微鏡で観察することにより測定できる。
【0026】
添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられる。添加剤の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜5質量部である。
【0027】
液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。液晶ポリエステル以外の樹脂の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜20質量部である。
【0028】
液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル及び必要に応じて用いられる他の成分を、押出機を用いて溶融混練し、ペレット状に押し出すことにより調製することが好ましい。押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリュウと、シリンダーに設けられた1箇所以上の供給口とを有するものが、好ましく用いられ、さらにシリンダーに設けられた1箇所以上のベント部を有するものが、より好ましく用いられる。
【0029】
液晶ポリエステルの端子保持部材への成形は、溶融成形法により行うことが好ましく、射出成形法により行うことがより好ましい。特に、端子を金型にインサートし、液晶ポリエステルを射出する方法、すなわちインサート成形法により行うと、液晶ポリエステルを端子保持部材に成形すると同時に、端子と端子保持部材とを一体化することができる。
【0030】
端子と端子保持部材とを一体化することにより、図1に示す如きパワーデバイス用パッケージが得られる。パワーデバイス用パッケージは、端子及び端子保持部材以外の部材を有していてもよく、例えば、図1に示す如くパワーモジュールが固定される部分を放熱板とすることにより、パワーモジュールから発生する熱を効果的に除去することができ、例えば、自動車用パワーデバイスとして、エンジンルーム内等に設置され、高温下で稼動される場合に、有利である。
【0031】
また、端子保持部材は、図2に示す如くパワーデバイスの封止材を兼ねてもよく、この端子保持部材兼封止材を有するパワーデバイスは、パワーデバイスと端子とを電気的に接続し、金型にインサートし、液晶ポリエステルを射出する方法、すなわちインサート成形法により、有利に製造される。パワーデバイスは、パワー素子、端子及び端子保持部材以外の部材を有していてもよく、例えば、図2に示す如くパワー素子が固定される部分が端子と共にリードフレームを構成するパッドであってもよく、このパッドを放熱板として機能させてもよい。
【0032】
こうして得られるパワーデバイスは、その端子保持部材の耐熱性及び絶縁性が生かされて、例えば、自動車や電車等の車両、産業機械、OA機器及び家電製品における電力機器として用いられ、特に自動車用の電力機器として好適に用いられる。
【実施例】
【0033】
〔液晶ポリエステルの流動開始温度の測定〕
フローテスター((株)島津製作所の「CFT−500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0034】
〔液晶ポリエステル(1)の製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸828.8g(6.0モル)、テレフタル酸473.4g(2.85モル)、イソフタル酸24.9g(0.15モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル558.6g(3.0モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで15分かけて昇温し、150℃で3時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕し、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から320℃まで5時間かけて昇温し、320℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(1)を得た。この液晶ポリエステル(1)は、全繰返し単位の合計量に対して、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位を50モル%、テレフタル酸に由来する繰返し単位を23.75モル%、イソフタル酸に由来する繰返し単位を1.25モル%、4,4’−4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位を25モル%有し、その流動開始温度は、380℃であった。
【0035】
〔液晶ポリエステル(2)の製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、無水酢酸1347.6g(13.2モル)及び1−メチルイミダゾール0.18gを入れ、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分還流させた。次いで、1−メチルイミダゾール2.4gを加え、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕し、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(2)を得た。この液晶ポリエステル(2)は、全繰返し単位の合計量に対して、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位を60モル%、テレフタル酸に由来する繰返し単位を15モル%、イソフタル酸に由来する繰返し単位を5モル%、4,4’−4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位を20モル%有し、その流動開始温度は、330℃であった。
【0036】
〔液晶ポリエステル(3)の製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、無水酢酸1347.6g(13.2モル)及び1−メチルイミダゾール0.18gを入れ、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分還流させた。次いで、1−メチルイミダゾール2.4gを加え、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕し、窒素ガス雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで30分かけて昇温し、240℃で10時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(3)を得た。この液晶ポリエステル(3)は、全繰返し単位の合計量に対して、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位を60モル%、テレフタル酸に由来する繰返し単位を12モル%、イソフタル酸に由来する繰返し単位を8モル%、4,4’−4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位を20モル%有し、その流動開始温度は、290℃であった。
【0037】
〔ガラス繊維〕
ガラス繊維として、次のものを用いた。
ガラス繊維(1):日本板硝子(株)の「REV8」(数平均繊維径13μm、数平均繊維長70μm)
ガラス繊維(2):セントラルガラス(株)の「EFH75−01」(数平均繊維径11μm、数平均繊維長75μm)
【0038】
実験例1、2、比較実験例1
液晶ポリエステル(1)、(2)又は(3)とガラス繊維(1)又は(2)とを表1に示す割合で混合し、2軸押出機(池貝鉄工(株)の「PCM−30」)を用いて、シリンダー温度390℃(液晶ポリエステル(1))、340℃(液晶ポリエステル(2))又は300℃(液晶ポリエステル(3))で造粒して、ペレット状の液晶ポリエステル組成物を得た。得られた液晶ポリエステル組成物を射出成形して、64mm×64mm×厚さ0.5mmの成形体、100mm×100mm×厚さ1.0mmの成形体及び100mm×100mm×厚さ1.6mmの成形体を得た。得られた成形体について、JIS C2110に従って、短時間破壊試験法で絶縁破壊電圧を室温にて測定した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【符号の説明】
【0040】
1・・・パワー素子、2・・・プリント配線板、3・・・端子、4・・・端子保持部材、
5・・・放熱板、6・・・封止材、7・・・パッド、8・・・端子保持部材兼封止材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー素子と、端子と、液晶ポリエステルから構成される端子保持部材とを有し、前記液晶ポリエステルが、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位(1)と、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位(2)と、芳香族ジオールに由来する繰返し単位(3)とを有する液晶ポリエステルであり、前記液晶ポリエステル中のイソフタル酸に由来する繰返し単位の含有量が、前記液晶ポリエステルが有する全繰返し単位の合計量に対して、0〜7モル%であるパワーデバイス。
【請求項2】
前記繰返し単位(1)が、p−ヒドロキシ安息香酸又は6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位であり、前記繰返し単位(2)が、テレフタル酸、イソフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位であり、前記繰返し単位(3)が、ヒドロキノン又は4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位である請求項1に記載のパワーデバイス。
【請求項3】
前記液晶ポリエステルが、それが有する全繰返し単位の合計量に対して、前記繰返し単位(1)を30〜80モル%、前記繰返し単位(2)を10〜35モル%、前記繰返し単位(3)を10〜35モル%有する液晶ポリエステルである請求項1又は2に記載のパワーデバイス。
【請求項4】
前記端子保持部材が、ガラス繊維を含む部材である請求項1〜3のいずれかに記載のパワーデバイス。
【請求項5】
前記端子保持部材中の前記ガラス繊維の含有量が、前記液晶ポリエステル100質量部に対して、10〜100質量部である請求項4に記載のパワーデバイス。
【請求項6】
隣り合う前記端子間の距離が、0.2〜1.5mmである請求項1〜5のいずれかに記載のパワーデバイス。
【請求項7】
端子と、液晶ポリエステルから構成される端子保持部材とを有し、前記液晶ポリエステルが、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位(1)と、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位(2)と、芳香族ジオールに由来する繰返し単位(3)とを有する液晶ポリエステルであり、前記液晶ポリエステル中のイソフタル酸に由来する繰返し単位の含有量が、前記液晶ポリエステルが有する全繰返し単位の合計量に対して、0〜7モル%であるパワーデバイス用パッケージ。
【請求項8】
前記繰返し単位(1)が、p−ヒドロキシ安息香酸又は6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位であり、前記繰返し単位(2)が、テレフタル酸、イソフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位であり、前記繰返し単位(3)が、ヒドロキノン又は4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位である請求項7に記載のパワーデバイス用パッケージ。
【請求項9】
前記液晶ポリエステルが、それが有する全繰返し単位の合計量に対して、前記繰返し単位(1)を30〜80モル%、前記繰返し単位(2)を10〜35モル%、前記繰返し単位(3)を10〜35モル%有する液晶ポリエステルである請求項7又は8に記載のパワーデバイス用パッケージ。
【請求項10】
前記端子保持部材が、ガラス繊維を含む部材である請求項7〜9のいずれかに記載のパワーデバイス用パッケージ。
【請求項11】
前記端子保持部材中の前記ガラス繊維の含有量が、前記液晶ポリエステル100質量部に対して、10〜100質量部である請求項10に記載のパワーデバイス。
【請求項12】
隣り合う前記端子間の距離が、0.2〜1.5mmである請求項7〜11のいずれかに記載のパワーデバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−156434(P2012−156434A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16247(P2011−16247)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】