パワーモジュールの冷却装置
【課題】ベース板上に半導体パワーチップを複数個搭載してなるパワーモジュールの冷却特性を改善した冷却装置を提供する。
【解決手段】ヒートシンク21におけるヒートパイプ15の埋設位置を半導体パワーチップ11aなどの搭載位置から外れた位置に設け、同様に、ヒートパイプ17の埋設位置を半導体パワーチップ11dなどの搭載位置から外れた位置に設け、さらに、ヒートパイプ16の埋設位置を半導体パワーチップ11bなどと、半導体パワーチップ11cなどとのほぼ中間位置に設けたことにより、半導体パワーチップ11a〜11dなどの温度上昇値それぞれの差をより小さくすることができるとともに、これらの温度上昇値もより小さくすることができる。
【解決手段】ヒートシンク21におけるヒートパイプ15の埋設位置を半導体パワーチップ11aなどの搭載位置から外れた位置に設け、同様に、ヒートパイプ17の埋設位置を半導体パワーチップ11dなどの搭載位置から外れた位置に設け、さらに、ヒートパイプ16の埋設位置を半導体パワーチップ11bなどと、半導体パワーチップ11cなどとのほぼ中間位置に設けたことにより、半導体パワーチップ11a〜11dなどの温度上昇値それぞれの差をより小さくすることができるとともに、これらの温度上昇値もより小さくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベース板上に半導体パワーチップを複数個搭載してなるパワーモジュールをヒートシンク上に固着することにより、パワーモジュールが発する熱をヒートシンクが吸収して外部に放熱するパワーモジュールの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8,9は、下記特許文献1,2の構成を含む一般的なパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図を示し、図8はこの上部の平面図,図9はその側面図である。
すなわち図8の平面図において、11は半導体パワーチップ11a〜11hそれぞれを搭載したベース板、12は半導体パワーチップ11a〜11hと同様配置で半導体パワーチップ12a〜12hそれぞれを搭載したベース板、13は半導体パワーチップ11a〜11hと同様配置で半導体パワーチップ13a〜13hをそれぞれ搭載したベース板、14はアルミニウムなどを素材にしたヒートシンクを示し、この図において、ベース板11と半導体パワーチップ11a〜11hとでパワーモジュールを形成し、同様に、ベース板12と半導体パワーチップ12a〜12hとでパワーモジュールを、ベース板13と半導体パワーチップ13a〜13hとでパワーモジュールをそれぞれ形成している。
【0003】
また、図9の側面図において、14aはヒートシンク14のフィン部、15〜17は伝熱管としての丸棒形のヒートパイプをそれぞれ示し、これらのヒートパイプ15〜17はベース板11〜13とヒートシンク14とが接するヒートシンク14の面側に設けられた溝に埋め込まれている。
【0004】
図10は、従来のパワーモジュールの冷却装置における図9の部分詳細構成図を示し、ヒートパイプ15をヒートシンク14に埋め込むための前記溝が半導体パワーチップ11aなどのほぼ真下に位置し、また、ヒートパイプ15が埋め込まれた前記溝とベース板11〜13それぞれとの隙間には熱伝導性のグリース18が充填されている。
【0005】
また、図11は従来のパワーモジュールの冷却装置における図10とは異なった部位の部分詳細構成図を示し、ヒートパイプ16をヒートシンク14に埋め込むための前記溝が半導体パワーチップ11bなどと半導体パワーチップ11cなどとのほぼ中間に位置し、さらに、ヒートパイプ16が埋め込まれた前記溝とベース板11〜13それぞれとの隙間には熱伝導性のグリース19が充填されている。
【特許文献1】実開平5−36897号公報。
【特許文献2】特開2004−96074号公報。
【特許文献3】特開2003−48533号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8,9に示した従来のパワーモジュールの冷却装置では、ヒートシンク14のフィン部14aの長手方向に沿ってヒートシンク14のベース板11〜13側に埋め込まれたヒートパイプ15〜17により、ヒートシンク14の長手方向に沿い放熱効果を均一化する方式が採用されている。
【0007】
しかしながら、図10に示した如く、半導体パワーチップ11a,11eなどのほぼ真下に設けられたヒートパイプ15の溝により、半導体パワーチップ11b,11fなどの温度上昇値に比して、半導体パワーチップ11a,11eなどの温度上昇値が大きくなるという難点があり、これらの温度上昇値の差をより小さくするために、ヒートパイプ15が埋め込まれた前記溝とベース板11〜13との隙間には熱伝導性のグリース18を充填している。
【0008】
この発明の目的は、前記半導体パワーチップ間の温度上昇値の差をより小さくしつつ、上記放熱効果を改善できるパワーモジュールの冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この第1の発明は、ベース板上に1または2以上の半導体パワーチップからなる複数の半導体パワーチップ群を搭載してなるパワーモジュールをヒートシンク上に固着することにより、パワーモジュールが発する熱をヒートシンクが吸収して外部に放熱するパワーモジュールの冷却装置において、前記パワーモジュールのベース板と接する範囲の前記ヒートシンク面内であって、前記ベース板に搭載された複数の半導体パワーチップ群の中間位置と、前記複数の半導体パワーチップ群の搭載位置の両外側の位置とに溝を設け、この溝に丸棒形の伝熱管を埋設したことを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記溝は、前記半導体パワーチップの搭載位置と重ならないように設けられていることを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記溝の位置が前記半導体パワーチップの搭載位置と重なるとき、その重なり幅は前記半導体パワーチップの幅の1/2未満であることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記ヒートシンク上の何れかの溝の設置位置の両側に前記ベース板上の半導体パワーチップが搭載され、前記溝の設置位置が該溝に対向した2個の前記半導体パワーチップそれぞれの搭載位置と重なるとき、それぞれの重なり幅の和を前記半導体パワーチップそれぞれの幅の1/2未満にしてなることを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、ベース板上に1または2以上の半導体パワーチップからなる複数の半導体パワーチップ群を搭載してなるパワーモジュールをヒートシンク上に固着することにより、パワーモジュールが発する熱をヒートシンクが吸収して外部に放熱するパワーモジュールの冷却装置において、前記パワーモジュールのベース板と接する範囲の前記ヒートシンク内であって、前記複数の半導体パワーチップ群の中間位置に貫通穴を設け、この貫通穴に丸棒形の伝熱管を埋設したことを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第5の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記貫通穴の位置は、前記半導体パワーチップの搭載位置と重ならないように設けられていることを特徴とする。
【0014】
第7の発明は、第5の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記貫通穴の位置が前記半導体パワーチップの搭載位置と重なるとき、その重なり幅は前記半導体パワーチップの幅の1/2未満であることを特徴とする。
【0015】
第8の発明は、第5〜第7の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記貫通穴と前記伝熱管との間に熱伝導性グリースもしくははんだを充填している、または前記伝熱管を拡管して該伝熱管が前記貫通穴に密着していることを特徴とする。
【0016】
第9の発明は、第1〜第4の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記パワーモジュールと前記ヒートシンクとの間に熱伝導板を挿設したことを特徴とする。
第10の発明は前記第1〜第9の発明のパワーモジュールの冷却装置において、車両走行時の走行風を利用して前記ヒートシンクが吸収した熱を放熱させるために、前記車両の下部から前記ヒートシンクのフィン部が露出するように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係るパワーモジュールの冷却装置によれば、前記パワーモジュールとヒートシンクとが接するヒートシンク面内に設けた溝にヒートパイプなどの伝熱管を埋設し、前記パワーモジュールを形成するベース板上の半導体パワーチップの搭載位置の中心線と、前記ヒートシンク上の溝の設置位置の中心線とが互いに異なるように配置することにより前記半導体パワーチップ間の温度上昇値の差をより小さくすることができる。さらに、上述の構成に加えて前記熱伝導板やヒートシンクの内部に設置したヒートパイプによっても、前記半導体パワーチップ間の温度上昇値の差をより小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1,2は、この発明の第1の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図を示し、図1はこの上部の平面図,図2はその側面図である。これらの図において、図8,9に示した従来例構成と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0019】
すなわち図1,2に示した構成図では、ヒートシンク21におけるヒートパイプ15,ヒートパイプ17それぞれの埋設位置が図8,9に示した構成図におけるヒートシンク14での埋設位置とは大きく異なり、全ての半導体パワーチップに重ならないようにヒートパイプの溝が設けられており、図のとおり半導体パワーチップ11a,11eなどの搭載位置から外れた位置(図1,2の例では重ならない位置)にヒートパイプ15の溝が設けられ、同様に、半導体パワーチップ11d,11hなどの搭載位置から外れた位置にヒートパイプ17の溝が設けられている。
【0020】
その結果、図1,2に示したパワーモジュールの冷却装置の構成では、半導体パワーチップ11a〜11hなどの温度上昇値それぞれの差をより小さくすることができるとともに、後述の図3〜7に示すこの発明の第1〜第4の実施例構成のようにパワーモジュールの冷却装置を形成することにより、これらの温度上昇値もより小さくすることができる。
【0021】
図3は、この発明の第1の実施例を示す構成図であり、図1,2に示したパワーモジュールの冷却装置における部分詳細構成図を示している。
すなわち、図3に示した如く、半導体パワーチップ11b,11fなどと、半導体パワーチップ11c,11gなどとのほぼ中間位置に設けられたヒートパイプ16の溝とベース板11〜13との隙間には、例えば、ヒートシンク21と同一素材の熱拡散板31が挿入され、この熱拡散板31を図4に示すように形成することにより、ベース板11〜13からのヒートパイプ16への直接の熱伝導を改善することができ、また、前記溝に段差を持たせたことによりベース板11〜13から熱拡散板31を経由してヒートシンク21に放熱する経路ができ、その結果、これらの半導体パワーチップでの温度上昇値をより小さくなり、従って、その温度差もより少なくすることができる。なお、熱拡散板31と、ヒートパイプ16およびベース板11〜13との間の僅かな隙間には熱伝導性のグリースを充填することが望ましい。
【0022】
図4は図3に示した熱拡散板の詳細構成図を示し、この図のように、熱拡散板31のベース板11〜13側に凸状の僅かな湾曲を、また、熱拡散板31のヒートハイプ16側に凹状の僅かな湾曲をそれぞれ持たせることに持たせることにより、ベース板11〜13と熱拡散板31との接触部および熱拡散板31とヒートパイプ16との接触部それぞれの熱抵抗をより低減することができる。
【0023】
図5は、この発明の第2の実施例を示す構成図であり、図1,2に示したパワーモジュールの冷却装置における図3とは異なった部位での部分詳細構成図を示している。
すなわち、図5に示した如く、半導体パワーチップ11a,11eなどの搭載位置に対して外れた位置にヒートパイプ15の溝を設け、また、ベース板11〜13との隙間には、図3に示した熱拡散板31と同一素材,形状の熱拡散板32を挿入することにより、ベース板11〜13からのヒートパイプ15への直接の熱伝導を改善できるともに、半導体パワーチップ11a,11eなどと、半導体パワーチップ11a,11fなどとの温度上昇値の差をより少なくすることができる。なお、図3と同様に、熱拡散板32と、ヒートパイプ15およびベース板11〜13との間の僅かな隙間には熱伝導性のグリースを充填することが望ましい。また、ヒートパイプ17に対しても、図5に示した構成を用いることができる。
【0024】
図6は、この発明の第3の実施例を示す構成図であり、図1,2に示したパワーモジュールの冷却装置における部分詳細構成図を示している。
すなわち、図6に示した如く、半導体パワーチップ11b,11fなどと、半導体パワーチップ11c,11gなどとのほぼ中間位置に設けられたヒートパイプ16の溝とベース板11〜13との隙間には、例えば、ヒートシンク21と同一素材の熱拡散板33が挿入される。この熱拡散板33の断面形状は、ヒートパイプ16と接する側にはヒートパイプ16の外周とほぼ同一形状の湾曲を持たせるとともにベース板11と接する側は平らとすることにより、熱拡散板33からヒートパイプ16への熱伝導をより改善することができ、また、前記溝に段差を持たせたことによりベース板11〜13から熱拡散板33を経由してヒートシンク21に放熱する経路ができ、その結果、これらの半導体パワーチップでの温度上昇値を小さくしつつ、その差を少なくすることができる。なお、熱拡散板33と、ヒートパイプ16およびベース板11〜13との間の僅かな隙間には熱伝導性のグリースを充填することが望ましい。また、ヒートパイプ15,17に対しても、図6に示した構成を用いることができる。
【0025】
図7は、この発明の第4の実施例を示す構成図であり、図1,2に示したパワーモジュールの冷却装置における部分詳細構成図を示している。
すなわち、図7に示した如く、半導体パワーチップ11b,11fなどと、半導体パワーチップ11c,11gなどとのほぼ中間位置に設けられたヒートパイプ16の溝とベース板11〜13との隙間には、例えばヒートシンク21と同一素材、且つ2分割されたそれぞれの断面形状が略三角形状の勝手違いの熱拡散板34,35それぞれを挿入することにより、熱拡散板34,35からヒートパイプ16への熱伝導をより改善することができ、また、前記溝に段差を持たせたことによりベース板11〜13から熱拡散板34,35を経由してヒートシンク21に放熱する経路ができ、その結果、これらの半導体パワーチップでの温度上昇値を小さくしつつ、その差を少なくすることができる。
【0026】
さらに、図7に示したような構成にすることにより、ベース板15〜17と熱拡散板34,35および熱拡散板34,35とヒートパイプ16との接触を確実なものとすると同時に、ヒートパイプ16に無理な力が加わらないようにするこができる。なお、熱拡散板34,35と、ヒートパイプ16およびベース板11〜13との間の僅かな隙間には熱伝導性のグリースを充填することが望ましい。また、ヒートパイプ15,17に対しても、図7に示した構成を用いることができる。
【0027】
図12は、この発明の第2の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図を示し、図12(a)はこの上部の部分平面図,図12(b)はその部分側面図である。
【0028】
すなわち図12に示した構成では、ヒートシンク22の溝に埋設されたヒートパイプ23は、パワーモジュールのベース板26での半導体パワーチップCp1A,1BとCp2A,2Bとのほぼ中間位置に、前記双方のチップの搭載位置には重ならないように配置され、また、ヒートシンク22の溝に埋設されたヒートパイプ24,25それぞれは、パワーモジュールのベース板26での半導体パワーチップCp4A,4Bや、Cp6A,6Bの搭載位置に重なっているが、その重なり幅をそれぞれの半導体パワーチップの幅の1/2未満にしている。なお、ヒートパイプ23〜25それぞれとベース板26との間の隙間には熱伝導性のグリースを充填している。
【0029】
図13は、パワーモジュールの冷却装置の実験モデルを用いた解析により得られた温度上昇値の特性グラフであり、その実線グラフは上述の図12に示したパワーモジュールの冷却装置の構成での値であり、また、破線グラフはヒートパイプ23が半導体パワーチップCp1A,1BおよびCp2A,2Bの搭載位置に重ならない中間位置、ヒートパイプ24が半導体パワーチップCp3A,3BおよびCp4A,4Bの搭載位置に重ならない中間位置、ヒートパイプ25が半導体パワーチップCp5A,5Bの搭載位置にほぼ一致する位置にそれぞれ配置されたときの値である。
【0030】
すなわち、図13に示した実線グラフの特性から明らかなように、破線グラフにおける半導体パワーチップCp5A,5Bの温度上昇値が62.4Kと他のチップに比して極端に高くなっており、これを解消して各チップ間の温度上昇値を均一化するためにも、半導体パワーチップとヒートパイプとの重なり幅を最大1/2チップ幅に抑える必要があり、実線グラフで示した図12に示したパワーモジュールの冷却装置の構成では半導体パワーチップCp1A,Cp1B〜Cp6A,Cp6Bの温度上昇値それぞれの差がより小さくなっている。なお、図12に示した構成図においても、図3〜図7に示した熱拡散板31〜35の何れかを挿入することにより、熱伝導性を改善することができる。
【0031】
図14は、この発明の第3の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図としての部分側面図である。
すなわち図14に示した構成は、一つの溝に対して2個の半導体パワーチップが重なる例を示したものであり、ヒートシンク27におけるヒートパイプ28,29それぞれの埋設位置が、図示の如く、パワーモジュールのベース板30での半導体パワーチップCp2,Cp3およびCp5,Cp6の搭載位置に重なっているが、半導体パワーチップCp2,Cp3それぞれの幅をaとし、Cp2での重なり幅をbとし、Cp3での重なり幅をcとすると、a/2>b+cの関係を持たせた配置にしている。同様に、半導体パワーチップCp5,Cp6それぞれの幅をkとし、Cp5での重なり幅をmとし、Cp6での重なり幅をnとすると、k/2>m+nの関係を持たせた配置にしている。なお、ヒートパイプ28,29とベース板30との間の隙間には熱伝導性のグリースを充填している。また、図14に示した構成図においても、図3〜図7に示した熱拡散板31〜35の何れかを挿入することにより、熱伝導性を改善することができる。
【0032】
図15は、この発明の第4の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図としての部分側面図である。
すなわち、図15に示した構成が上述の図14に示した構成と異なる点は、ヒートシンク27とベース板30との間に銅板などの熱伝導板37を挿設していることである。
【0033】
図16は、パワーモジュールの冷却装置の実験モデルを用いた解析により得られた温度上昇値の特性グラフであり、その実線グラフは上述の図15に示したパワーモジュールの冷却装置の構成での値であり、また、破線グラフは上述の図14に示したパワーモジュールの冷却装置の構成での値である。
【0034】
すなわち、図16に示した実線グラフの特性から明らかなように、図15に示したパワーモジュールの冷却装置の構成では半導体パワーチップCp1〜Cp6それぞれの温度上昇値の差を、図14に示したパワーモジュールの冷却装置の構成に比して、より小さくすることができる。なお、図15に示した構成図においても、図3〜図7に示した熱拡散板31〜35の何れかを挿入することにより、熱伝導性を改善することができる。
【0035】
なお、先述の図13に示した特性グラフと上述の図16に示した特性グラフと温度上昇値が異なるのは、図13の構成では半導体パワーチップがIGBTであるのに対して、図14,図15の構成では半導体パワーチップが比較的温度上昇値の大きいダイオードチップであることやヒートパイプの本数の差に起因している。
【0036】
図17は、この発明の第5の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図としての部分側面図である。
すなわち、図17に示した構成が上述の図14に示した構成と異なる点は、ヒートシンク27に代えて、貫通穴を有するヒートシンク27aとし、この貫通穴にヒートパイプ28,29を挿設していることであり、このような構成にすることにより、上述の図15に示した構成と同様の効果を得ることができる。このとき、温度上昇値を小さくするために、前記貫通穴とヒートパイプとの隙間に熱伝導性のグリースや半田を充填する、または、ヒートパイプを拡管して貫通穴に密着させることなどが行われる。
【0037】
なお、図17に示した構成の場合にも、図12や図13に示した構成のように、半導体パワーチップとヒートパイプとの重なり幅を半導体パワーチップ幅の1/2未満とすることにより、半導体パワーチップ間の温度上昇値の差をより小さくすることが可能となる。
【0038】
図18は、この種のパワーモジュールの冷却装置が使用される鉄道車両用電力変換装置の回路構成図であり、主変圧器(MTr)の二次巻線から得られる単相交流電圧を3レベルコンバータ(Converter)により直流電圧に変換し、この直流電圧を3レベルインバータ(Inverter)により所望の周波数,振幅の三相交流電圧に変換し、この三相交流電圧により電動機(IM)を可変速駆動する回路構成である。
【0039】
また図19は、上述の鉄道車両用電力変換装置が搭載される鉄道車両の模式的断面構成図であり、Converter,Inverterをパワーユニットとし、車両走行時の走行風を利用して前記パワーユニットのヒートシンク(冷却体)が吸収した熱を放熱させるために、前記車両の下部からヒートシンクのフィン部(冷却フィン)が露出するように配置している。
【0040】
図20は、この発明の第6の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図であり、上述の図18,図19に示したConverterの一部を形成する半導体パワーモジュール41〜46、ヒートシンク50、ヒートパイプ51〜53などから構成されている。このとき、ヒートパイプ50のフィン部50aは走行風に沿うように設置されている。
【0041】
図21は、図20に示した構成において、走行風の入口の空気温度と発熱している半導体パワーモジュール41〜46それぞれの表面温度との差(実測値)を示す特性グラフであり、実線グラフはヒートパイプ51〜53を設置したときの値を示し、破線グラフはヒートパイプ51〜53を省略したときの値を示している。
【0042】
すなわち、ヒートパイプ51〜53を設けたことにより、図21に示した実線グラフと破線グラフとから明らかなように、半導体パワーモジュール41〜46それぞれの温度差の違いがより小さくすることができ、また、実線グラフから明らかなように、風上と風下での半導体パワーモジュール間の値の違いもより小さくすることができる。
【0043】
なお、図20に示した構成ではヒートパイプをパワーモジュール各列に対して3本ずつ設けた場合について示しているが、ヒートパイプの本数は適宜決定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の平面図
【図2】図1の側面図
【図3】この発明の第1の実施例を示す図2の部分詳細構成図
【図4】図3の部分詳細構成図
【図5】この発明の第2の実施例を示す図2の部分詳細構成図
【図6】この発明の第3の実施例を示す図2の部分詳細構成図
【図7】この発明の第4の実施例を示す図2の部分詳細構成図
【図8】一般的なパワーモジュールの冷却装置の平面図
【図9】図8の側面図
【図10】従来例を示す図9の部分詳細図
【図11】従来例を示す図9の部分詳細図
【図12】この発明の第2の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の構成図
【図13】図12の動作を説明する特性グラフ
【図14】この発明の第3の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の断面図
【図15】この発明の第4の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の断面図
【図16】図14,図15の動作を説明する特性グラフ
【図17】この発明の第5の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の断面図
【図18】鉄道車両用電力変換装置の回路構成図
【図19】鉄道車両の模式的断面構成図
【図20】この発明の第6の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の構成図
【図21】図20の動作を説明する特性グラフ
【符号の説明】
【0045】
11〜13…ベース板、14…ヒートシンク、15〜17…ヒートパイプ、18,19…グリース、21,22…ヒートシンク、23〜25…ヒートパイプ、26…ベース板、27…ヒートシンク、28,29…ヒートパイプ、30…ベース板、31〜35…熱拡散板、37…熱伝導板、41〜46…パワーモジュール、50…ヒートシンク、51〜53…ヒートパイプ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベース板上に半導体パワーチップを複数個搭載してなるパワーモジュールをヒートシンク上に固着することにより、パワーモジュールが発する熱をヒートシンクが吸収して外部に放熱するパワーモジュールの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8,9は、下記特許文献1,2の構成を含む一般的なパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図を示し、図8はこの上部の平面図,図9はその側面図である。
すなわち図8の平面図において、11は半導体パワーチップ11a〜11hそれぞれを搭載したベース板、12は半導体パワーチップ11a〜11hと同様配置で半導体パワーチップ12a〜12hそれぞれを搭載したベース板、13は半導体パワーチップ11a〜11hと同様配置で半導体パワーチップ13a〜13hをそれぞれ搭載したベース板、14はアルミニウムなどを素材にしたヒートシンクを示し、この図において、ベース板11と半導体パワーチップ11a〜11hとでパワーモジュールを形成し、同様に、ベース板12と半導体パワーチップ12a〜12hとでパワーモジュールを、ベース板13と半導体パワーチップ13a〜13hとでパワーモジュールをそれぞれ形成している。
【0003】
また、図9の側面図において、14aはヒートシンク14のフィン部、15〜17は伝熱管としての丸棒形のヒートパイプをそれぞれ示し、これらのヒートパイプ15〜17はベース板11〜13とヒートシンク14とが接するヒートシンク14の面側に設けられた溝に埋め込まれている。
【0004】
図10は、従来のパワーモジュールの冷却装置における図9の部分詳細構成図を示し、ヒートパイプ15をヒートシンク14に埋め込むための前記溝が半導体パワーチップ11aなどのほぼ真下に位置し、また、ヒートパイプ15が埋め込まれた前記溝とベース板11〜13それぞれとの隙間には熱伝導性のグリース18が充填されている。
【0005】
また、図11は従来のパワーモジュールの冷却装置における図10とは異なった部位の部分詳細構成図を示し、ヒートパイプ16をヒートシンク14に埋め込むための前記溝が半導体パワーチップ11bなどと半導体パワーチップ11cなどとのほぼ中間に位置し、さらに、ヒートパイプ16が埋め込まれた前記溝とベース板11〜13それぞれとの隙間には熱伝導性のグリース19が充填されている。
【特許文献1】実開平5−36897号公報。
【特許文献2】特開2004−96074号公報。
【特許文献3】特開2003−48533号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8,9に示した従来のパワーモジュールの冷却装置では、ヒートシンク14のフィン部14aの長手方向に沿ってヒートシンク14のベース板11〜13側に埋め込まれたヒートパイプ15〜17により、ヒートシンク14の長手方向に沿い放熱効果を均一化する方式が採用されている。
【0007】
しかしながら、図10に示した如く、半導体パワーチップ11a,11eなどのほぼ真下に設けられたヒートパイプ15の溝により、半導体パワーチップ11b,11fなどの温度上昇値に比して、半導体パワーチップ11a,11eなどの温度上昇値が大きくなるという難点があり、これらの温度上昇値の差をより小さくするために、ヒートパイプ15が埋め込まれた前記溝とベース板11〜13との隙間には熱伝導性のグリース18を充填している。
【0008】
この発明の目的は、前記半導体パワーチップ間の温度上昇値の差をより小さくしつつ、上記放熱効果を改善できるパワーモジュールの冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この第1の発明は、ベース板上に1または2以上の半導体パワーチップからなる複数の半導体パワーチップ群を搭載してなるパワーモジュールをヒートシンク上に固着することにより、パワーモジュールが発する熱をヒートシンクが吸収して外部に放熱するパワーモジュールの冷却装置において、前記パワーモジュールのベース板と接する範囲の前記ヒートシンク面内であって、前記ベース板に搭載された複数の半導体パワーチップ群の中間位置と、前記複数の半導体パワーチップ群の搭載位置の両外側の位置とに溝を設け、この溝に丸棒形の伝熱管を埋設したことを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記溝は、前記半導体パワーチップの搭載位置と重ならないように設けられていることを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記溝の位置が前記半導体パワーチップの搭載位置と重なるとき、その重なり幅は前記半導体パワーチップの幅の1/2未満であることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記ヒートシンク上の何れかの溝の設置位置の両側に前記ベース板上の半導体パワーチップが搭載され、前記溝の設置位置が該溝に対向した2個の前記半導体パワーチップそれぞれの搭載位置と重なるとき、それぞれの重なり幅の和を前記半導体パワーチップそれぞれの幅の1/2未満にしてなることを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、ベース板上に1または2以上の半導体パワーチップからなる複数の半導体パワーチップ群を搭載してなるパワーモジュールをヒートシンク上に固着することにより、パワーモジュールが発する熱をヒートシンクが吸収して外部に放熱するパワーモジュールの冷却装置において、前記パワーモジュールのベース板と接する範囲の前記ヒートシンク内であって、前記複数の半導体パワーチップ群の中間位置に貫通穴を設け、この貫通穴に丸棒形の伝熱管を埋設したことを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第5の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記貫通穴の位置は、前記半導体パワーチップの搭載位置と重ならないように設けられていることを特徴とする。
【0014】
第7の発明は、第5の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記貫通穴の位置が前記半導体パワーチップの搭載位置と重なるとき、その重なり幅は前記半導体パワーチップの幅の1/2未満であることを特徴とする。
【0015】
第8の発明は、第5〜第7の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記貫通穴と前記伝熱管との間に熱伝導性グリースもしくははんだを充填している、または前記伝熱管を拡管して該伝熱管が前記貫通穴に密着していることを特徴とする。
【0016】
第9の発明は、第1〜第4の発明に係るパワーモジュールの冷却装置において、前記パワーモジュールと前記ヒートシンクとの間に熱伝導板を挿設したことを特徴とする。
第10の発明は前記第1〜第9の発明のパワーモジュールの冷却装置において、車両走行時の走行風を利用して前記ヒートシンクが吸収した熱を放熱させるために、前記車両の下部から前記ヒートシンクのフィン部が露出するように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係るパワーモジュールの冷却装置によれば、前記パワーモジュールとヒートシンクとが接するヒートシンク面内に設けた溝にヒートパイプなどの伝熱管を埋設し、前記パワーモジュールを形成するベース板上の半導体パワーチップの搭載位置の中心線と、前記ヒートシンク上の溝の設置位置の中心線とが互いに異なるように配置することにより前記半導体パワーチップ間の温度上昇値の差をより小さくすることができる。さらに、上述の構成に加えて前記熱伝導板やヒートシンクの内部に設置したヒートパイプによっても、前記半導体パワーチップ間の温度上昇値の差をより小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1,2は、この発明の第1の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図を示し、図1はこの上部の平面図,図2はその側面図である。これらの図において、図8,9に示した従来例構成と同一機能を有するものには同一符号を付している。
【0019】
すなわち図1,2に示した構成図では、ヒートシンク21におけるヒートパイプ15,ヒートパイプ17それぞれの埋設位置が図8,9に示した構成図におけるヒートシンク14での埋設位置とは大きく異なり、全ての半導体パワーチップに重ならないようにヒートパイプの溝が設けられており、図のとおり半導体パワーチップ11a,11eなどの搭載位置から外れた位置(図1,2の例では重ならない位置)にヒートパイプ15の溝が設けられ、同様に、半導体パワーチップ11d,11hなどの搭載位置から外れた位置にヒートパイプ17の溝が設けられている。
【0020】
その結果、図1,2に示したパワーモジュールの冷却装置の構成では、半導体パワーチップ11a〜11hなどの温度上昇値それぞれの差をより小さくすることができるとともに、後述の図3〜7に示すこの発明の第1〜第4の実施例構成のようにパワーモジュールの冷却装置を形成することにより、これらの温度上昇値もより小さくすることができる。
【0021】
図3は、この発明の第1の実施例を示す構成図であり、図1,2に示したパワーモジュールの冷却装置における部分詳細構成図を示している。
すなわち、図3に示した如く、半導体パワーチップ11b,11fなどと、半導体パワーチップ11c,11gなどとのほぼ中間位置に設けられたヒートパイプ16の溝とベース板11〜13との隙間には、例えば、ヒートシンク21と同一素材の熱拡散板31が挿入され、この熱拡散板31を図4に示すように形成することにより、ベース板11〜13からのヒートパイプ16への直接の熱伝導を改善することができ、また、前記溝に段差を持たせたことによりベース板11〜13から熱拡散板31を経由してヒートシンク21に放熱する経路ができ、その結果、これらの半導体パワーチップでの温度上昇値をより小さくなり、従って、その温度差もより少なくすることができる。なお、熱拡散板31と、ヒートパイプ16およびベース板11〜13との間の僅かな隙間には熱伝導性のグリースを充填することが望ましい。
【0022】
図4は図3に示した熱拡散板の詳細構成図を示し、この図のように、熱拡散板31のベース板11〜13側に凸状の僅かな湾曲を、また、熱拡散板31のヒートハイプ16側に凹状の僅かな湾曲をそれぞれ持たせることに持たせることにより、ベース板11〜13と熱拡散板31との接触部および熱拡散板31とヒートパイプ16との接触部それぞれの熱抵抗をより低減することができる。
【0023】
図5は、この発明の第2の実施例を示す構成図であり、図1,2に示したパワーモジュールの冷却装置における図3とは異なった部位での部分詳細構成図を示している。
すなわち、図5に示した如く、半導体パワーチップ11a,11eなどの搭載位置に対して外れた位置にヒートパイプ15の溝を設け、また、ベース板11〜13との隙間には、図3に示した熱拡散板31と同一素材,形状の熱拡散板32を挿入することにより、ベース板11〜13からのヒートパイプ15への直接の熱伝導を改善できるともに、半導体パワーチップ11a,11eなどと、半導体パワーチップ11a,11fなどとの温度上昇値の差をより少なくすることができる。なお、図3と同様に、熱拡散板32と、ヒートパイプ15およびベース板11〜13との間の僅かな隙間には熱伝導性のグリースを充填することが望ましい。また、ヒートパイプ17に対しても、図5に示した構成を用いることができる。
【0024】
図6は、この発明の第3の実施例を示す構成図であり、図1,2に示したパワーモジュールの冷却装置における部分詳細構成図を示している。
すなわち、図6に示した如く、半導体パワーチップ11b,11fなどと、半導体パワーチップ11c,11gなどとのほぼ中間位置に設けられたヒートパイプ16の溝とベース板11〜13との隙間には、例えば、ヒートシンク21と同一素材の熱拡散板33が挿入される。この熱拡散板33の断面形状は、ヒートパイプ16と接する側にはヒートパイプ16の外周とほぼ同一形状の湾曲を持たせるとともにベース板11と接する側は平らとすることにより、熱拡散板33からヒートパイプ16への熱伝導をより改善することができ、また、前記溝に段差を持たせたことによりベース板11〜13から熱拡散板33を経由してヒートシンク21に放熱する経路ができ、その結果、これらの半導体パワーチップでの温度上昇値を小さくしつつ、その差を少なくすることができる。なお、熱拡散板33と、ヒートパイプ16およびベース板11〜13との間の僅かな隙間には熱伝導性のグリースを充填することが望ましい。また、ヒートパイプ15,17に対しても、図6に示した構成を用いることができる。
【0025】
図7は、この発明の第4の実施例を示す構成図であり、図1,2に示したパワーモジュールの冷却装置における部分詳細構成図を示している。
すなわち、図7に示した如く、半導体パワーチップ11b,11fなどと、半導体パワーチップ11c,11gなどとのほぼ中間位置に設けられたヒートパイプ16の溝とベース板11〜13との隙間には、例えばヒートシンク21と同一素材、且つ2分割されたそれぞれの断面形状が略三角形状の勝手違いの熱拡散板34,35それぞれを挿入することにより、熱拡散板34,35からヒートパイプ16への熱伝導をより改善することができ、また、前記溝に段差を持たせたことによりベース板11〜13から熱拡散板34,35を経由してヒートシンク21に放熱する経路ができ、その結果、これらの半導体パワーチップでの温度上昇値を小さくしつつ、その差を少なくすることができる。
【0026】
さらに、図7に示したような構成にすることにより、ベース板15〜17と熱拡散板34,35および熱拡散板34,35とヒートパイプ16との接触を確実なものとすると同時に、ヒートパイプ16に無理な力が加わらないようにするこができる。なお、熱拡散板34,35と、ヒートパイプ16およびベース板11〜13との間の僅かな隙間には熱伝導性のグリースを充填することが望ましい。また、ヒートパイプ15,17に対しても、図7に示した構成を用いることができる。
【0027】
図12は、この発明の第2の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図を示し、図12(a)はこの上部の部分平面図,図12(b)はその部分側面図である。
【0028】
すなわち図12に示した構成では、ヒートシンク22の溝に埋設されたヒートパイプ23は、パワーモジュールのベース板26での半導体パワーチップCp1A,1BとCp2A,2Bとのほぼ中間位置に、前記双方のチップの搭載位置には重ならないように配置され、また、ヒートシンク22の溝に埋設されたヒートパイプ24,25それぞれは、パワーモジュールのベース板26での半導体パワーチップCp4A,4Bや、Cp6A,6Bの搭載位置に重なっているが、その重なり幅をそれぞれの半導体パワーチップの幅の1/2未満にしている。なお、ヒートパイプ23〜25それぞれとベース板26との間の隙間には熱伝導性のグリースを充填している。
【0029】
図13は、パワーモジュールの冷却装置の実験モデルを用いた解析により得られた温度上昇値の特性グラフであり、その実線グラフは上述の図12に示したパワーモジュールの冷却装置の構成での値であり、また、破線グラフはヒートパイプ23が半導体パワーチップCp1A,1BおよびCp2A,2Bの搭載位置に重ならない中間位置、ヒートパイプ24が半導体パワーチップCp3A,3BおよびCp4A,4Bの搭載位置に重ならない中間位置、ヒートパイプ25が半導体パワーチップCp5A,5Bの搭載位置にほぼ一致する位置にそれぞれ配置されたときの値である。
【0030】
すなわち、図13に示した実線グラフの特性から明らかなように、破線グラフにおける半導体パワーチップCp5A,5Bの温度上昇値が62.4Kと他のチップに比して極端に高くなっており、これを解消して各チップ間の温度上昇値を均一化するためにも、半導体パワーチップとヒートパイプとの重なり幅を最大1/2チップ幅に抑える必要があり、実線グラフで示した図12に示したパワーモジュールの冷却装置の構成では半導体パワーチップCp1A,Cp1B〜Cp6A,Cp6Bの温度上昇値それぞれの差がより小さくなっている。なお、図12に示した構成図においても、図3〜図7に示した熱拡散板31〜35の何れかを挿入することにより、熱伝導性を改善することができる。
【0031】
図14は、この発明の第3の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図としての部分側面図である。
すなわち図14に示した構成は、一つの溝に対して2個の半導体パワーチップが重なる例を示したものであり、ヒートシンク27におけるヒートパイプ28,29それぞれの埋設位置が、図示の如く、パワーモジュールのベース板30での半導体パワーチップCp2,Cp3およびCp5,Cp6の搭載位置に重なっているが、半導体パワーチップCp2,Cp3それぞれの幅をaとし、Cp2での重なり幅をbとし、Cp3での重なり幅をcとすると、a/2>b+cの関係を持たせた配置にしている。同様に、半導体パワーチップCp5,Cp6それぞれの幅をkとし、Cp5での重なり幅をmとし、Cp6での重なり幅をnとすると、k/2>m+nの関係を持たせた配置にしている。なお、ヒートパイプ28,29とベース板30との間の隙間には熱伝導性のグリースを充填している。また、図14に示した構成図においても、図3〜図7に示した熱拡散板31〜35の何れかを挿入することにより、熱伝導性を改善することができる。
【0032】
図15は、この発明の第4の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図としての部分側面図である。
すなわち、図15に示した構成が上述の図14に示した構成と異なる点は、ヒートシンク27とベース板30との間に銅板などの熱伝導板37を挿設していることである。
【0033】
図16は、パワーモジュールの冷却装置の実験モデルを用いた解析により得られた温度上昇値の特性グラフであり、その実線グラフは上述の図15に示したパワーモジュールの冷却装置の構成での値であり、また、破線グラフは上述の図14に示したパワーモジュールの冷却装置の構成での値である。
【0034】
すなわち、図16に示した実線グラフの特性から明らかなように、図15に示したパワーモジュールの冷却装置の構成では半導体パワーチップCp1〜Cp6それぞれの温度上昇値の差を、図14に示したパワーモジュールの冷却装置の構成に比して、より小さくすることができる。なお、図15に示した構成図においても、図3〜図7に示した熱拡散板31〜35の何れかを挿入することにより、熱伝導性を改善することができる。
【0035】
なお、先述の図13に示した特性グラフと上述の図16に示した特性グラフと温度上昇値が異なるのは、図13の構成では半導体パワーチップがIGBTであるのに対して、図14,図15の構成では半導体パワーチップが比較的温度上昇値の大きいダイオードチップであることやヒートパイプの本数の差に起因している。
【0036】
図17は、この発明の第5の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図としての部分側面図である。
すなわち、図17に示した構成が上述の図14に示した構成と異なる点は、ヒートシンク27に代えて、貫通穴を有するヒートシンク27aとし、この貫通穴にヒートパイプ28,29を挿設していることであり、このような構成にすることにより、上述の図15に示した構成と同様の効果を得ることができる。このとき、温度上昇値を小さくするために、前記貫通穴とヒートパイプとの隙間に熱伝導性のグリースや半田を充填する、または、ヒートパイプを拡管して貫通穴に密着させることなどが行われる。
【0037】
なお、図17に示した構成の場合にも、図12や図13に示した構成のように、半導体パワーチップとヒートパイプとの重なり幅を半導体パワーチップ幅の1/2未満とすることにより、半導体パワーチップ間の温度上昇値の差をより小さくすることが可能となる。
【0038】
図18は、この種のパワーモジュールの冷却装置が使用される鉄道車両用電力変換装置の回路構成図であり、主変圧器(MTr)の二次巻線から得られる単相交流電圧を3レベルコンバータ(Converter)により直流電圧に変換し、この直流電圧を3レベルインバータ(Inverter)により所望の周波数,振幅の三相交流電圧に変換し、この三相交流電圧により電動機(IM)を可変速駆動する回路構成である。
【0039】
また図19は、上述の鉄道車両用電力変換装置が搭載される鉄道車両の模式的断面構成図であり、Converter,Inverterをパワーユニットとし、車両走行時の走行風を利用して前記パワーユニットのヒートシンク(冷却体)が吸収した熱を放熱させるために、前記車両の下部からヒートシンクのフィン部(冷却フィン)が露出するように配置している。
【0040】
図20は、この発明の第6の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の模式的概念構成図であり、上述の図18,図19に示したConverterの一部を形成する半導体パワーモジュール41〜46、ヒートシンク50、ヒートパイプ51〜53などから構成されている。このとき、ヒートパイプ50のフィン部50aは走行風に沿うように設置されている。
【0041】
図21は、図20に示した構成において、走行風の入口の空気温度と発熱している半導体パワーモジュール41〜46それぞれの表面温度との差(実測値)を示す特性グラフであり、実線グラフはヒートパイプ51〜53を設置したときの値を示し、破線グラフはヒートパイプ51〜53を省略したときの値を示している。
【0042】
すなわち、ヒートパイプ51〜53を設けたことにより、図21に示した実線グラフと破線グラフとから明らかなように、半導体パワーモジュール41〜46それぞれの温度差の違いがより小さくすることができ、また、実線グラフから明らかなように、風上と風下での半導体パワーモジュール間の値の違いもより小さくすることができる。
【0043】
なお、図20に示した構成ではヒートパイプをパワーモジュール各列に対して3本ずつ設けた場合について示しているが、ヒートパイプの本数は適宜決定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の平面図
【図2】図1の側面図
【図3】この発明の第1の実施例を示す図2の部分詳細構成図
【図4】図3の部分詳細構成図
【図5】この発明の第2の実施例を示す図2の部分詳細構成図
【図6】この発明の第3の実施例を示す図2の部分詳細構成図
【図7】この発明の第4の実施例を示す図2の部分詳細構成図
【図8】一般的なパワーモジュールの冷却装置の平面図
【図9】図8の側面図
【図10】従来例を示す図9の部分詳細図
【図11】従来例を示す図9の部分詳細図
【図12】この発明の第2の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の構成図
【図13】図12の動作を説明する特性グラフ
【図14】この発明の第3の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の断面図
【図15】この発明の第4の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の断面図
【図16】図14,図15の動作を説明する特性グラフ
【図17】この発明の第5の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の断面図
【図18】鉄道車両用電力変換装置の回路構成図
【図19】鉄道車両の模式的断面構成図
【図20】この発明の第6の実施の形態を示すパワーモジュールの冷却装置の構成図
【図21】図20の動作を説明する特性グラフ
【符号の説明】
【0045】
11〜13…ベース板、14…ヒートシンク、15〜17…ヒートパイプ、18,19…グリース、21,22…ヒートシンク、23〜25…ヒートパイプ、26…ベース板、27…ヒートシンク、28,29…ヒートパイプ、30…ベース板、31〜35…熱拡散板、37…熱伝導板、41〜46…パワーモジュール、50…ヒートシンク、51〜53…ヒートパイプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース板上に1または2以上の半導体パワーチップからなる複数の半導体パワーチップ群を搭載してなるパワーモジュールをヒートシンク上に固着することにより、パワーモジュールが発する熱をヒートシンクが吸収して外部に放熱するパワーモジュールの冷却装置において、
前記パワーモジュールのベース板と接する範囲の前記ヒートシンク面内であって、前記ベース板に搭載された複数の半導体パワーチップ群の中間位置と、前記複数の半導体パワーチップ群の搭載位置の両外側の位置とに溝を設け、この溝に丸棒形の伝熱管を埋設したことを特徴とするパワーモジュールの冷却装置。
【請求項2】
前記溝は、前記半導体パワーチップの搭載位置と重ならないように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項3】
前記溝の位置が前記半導体パワーチップの搭載位置と重なるとき、その重なり幅は前記半導体パワーチップの幅の1/2未満であることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項4】
前記ヒートシンク上の何れかの溝の設置位置の両側に前記ベース板上の半導体パワーチップが搭載され、前記溝の設置位置が該溝に対向した2個の前記半導体パワーチップそれぞれの搭載位置と重なるとき、それぞれの重なり幅の和を前記半導体パワーチップそれぞれの幅の1/2未満にしてなることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項5】
ベース板上に1または2以上の半導体パワーチップからなる複数の半導体パワーチップ群を搭載してなるパワーモジュールをヒートシンク上に固着することにより、パワーモジュールが発する熱をヒートシンクが吸収して外部に放熱するパワーモジュールの冷却装置において、
前記パワーモジュールのベース板と接する範囲の前記ヒートシンク内であって、前記複数の半導体パワーチップ群の中間位置に貫通穴を設け、この貫通穴に丸棒形の伝熱管を埋設したことを特徴とするパワーモジュールの冷却装置。
【請求項6】
前記貫通穴の位置は、前記半導体パワーチップの搭載位置と重ならないように設けられていることを特徴とする請求項5に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項7】
前記貫通穴の位置が前記半導体パワーチップの搭載位置と重なるとき、その重なり幅は前記半導体パワーチップの幅の1/2未満であることを特徴とする請求項5に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項8】
前記貫通穴と前記伝熱管との間に熱伝導性グリースもしくははんだを充填している、または前記伝熱管を拡管して該伝熱管が前記貫通穴に密着していることを特徴とする請求項5乃至請求項7に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項9】
前記パワーモジュールと前記ヒートシンクとの間に熱伝導板を挿設したことを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載のパワーモジュールの冷却装置において、
車両走行時の走行風を利用して前記ヒートシンクが吸収した熱を放熱させるために、前記車両の下部から前記ヒートシンクのフィン部が露出するように配置したことを特徴とするパワーモジュールの冷却装置。
【請求項1】
ベース板上に1または2以上の半導体パワーチップからなる複数の半導体パワーチップ群を搭載してなるパワーモジュールをヒートシンク上に固着することにより、パワーモジュールが発する熱をヒートシンクが吸収して外部に放熱するパワーモジュールの冷却装置において、
前記パワーモジュールのベース板と接する範囲の前記ヒートシンク面内であって、前記ベース板に搭載された複数の半導体パワーチップ群の中間位置と、前記複数の半導体パワーチップ群の搭載位置の両外側の位置とに溝を設け、この溝に丸棒形の伝熱管を埋設したことを特徴とするパワーモジュールの冷却装置。
【請求項2】
前記溝は、前記半導体パワーチップの搭載位置と重ならないように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項3】
前記溝の位置が前記半導体パワーチップの搭載位置と重なるとき、その重なり幅は前記半導体パワーチップの幅の1/2未満であることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項4】
前記ヒートシンク上の何れかの溝の設置位置の両側に前記ベース板上の半導体パワーチップが搭載され、前記溝の設置位置が該溝に対向した2個の前記半導体パワーチップそれぞれの搭載位置と重なるとき、それぞれの重なり幅の和を前記半導体パワーチップそれぞれの幅の1/2未満にしてなることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項5】
ベース板上に1または2以上の半導体パワーチップからなる複数の半導体パワーチップ群を搭載してなるパワーモジュールをヒートシンク上に固着することにより、パワーモジュールが発する熱をヒートシンクが吸収して外部に放熱するパワーモジュールの冷却装置において、
前記パワーモジュールのベース板と接する範囲の前記ヒートシンク内であって、前記複数の半導体パワーチップ群の中間位置に貫通穴を設け、この貫通穴に丸棒形の伝熱管を埋設したことを特徴とするパワーモジュールの冷却装置。
【請求項6】
前記貫通穴の位置は、前記半導体パワーチップの搭載位置と重ならないように設けられていることを特徴とする請求項5に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項7】
前記貫通穴の位置が前記半導体パワーチップの搭載位置と重なるとき、その重なり幅は前記半導体パワーチップの幅の1/2未満であることを特徴とする請求項5に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項8】
前記貫通穴と前記伝熱管との間に熱伝導性グリースもしくははんだを充填している、または前記伝熱管を拡管して該伝熱管が前記貫通穴に密着していることを特徴とする請求項5乃至請求項7に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項9】
前記パワーモジュールと前記ヒートシンクとの間に熱伝導板を挿設したことを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載のパワーモジュールの冷却装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載のパワーモジュールの冷却装置において、
車両走行時の走行風を利用して前記ヒートシンクが吸収した熱を放熱させるために、前記車両の下部から前記ヒートシンクのフィン部が露出するように配置したことを特徴とするパワーモジュールの冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−84907(P2012−84907A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273956(P2011−273956)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【分割の表示】特願2006−50021(P2006−50021)の分割
【原出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【分割の表示】特願2006−50021(P2006−50021)の分割
【原出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]