説明

パワーモジュールの構造及び成形方法、並びにパワーモジュール成形用モールド金型

【課題】本発明は、パワーモジュールの構造及び成形方法、並びにパワーモジュール成形用モールド金型に係り、半導体素子を挟んだ2つの冷却部材間にモールド樹脂が充填されるパワーモジュールの定寸管理を実現することにある。
【解決手段】半導体素子12と、半導体素子12を挟んで配置される冷却ブロック26a,26bと、2つの冷却ブロック26a,26bの間で半導体素子12を支持するフレーム部材16と、2つの冷却ブロック26a,26bの間に充填されるモールド樹脂32と、を備えるパワーモジュール10において、フレーム部材16に、2つの冷却ブロック26a,26bの間で弾性変形し得るバネ部材20を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュールの構造及び成形方法、並びにパワーモジュール成形用モールド金型に係り、特に、半導体素子の両面側にそれぞれ冷却部材が設けられていると共に、それらの冷却部材間がモールド樹脂で充填されたパワーモジュールの構造及び成形方法、並びにそのパワーモジュール成形用モールド金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を有し、モールド成形されるパワーモジュールが知られている(例えば、特許文献1参照)。このパワーモジュールは、半導体素子の駆動に起因した温度上昇に対して、半導体素子を挟んで上下に配置された冷却部材により冷却される。パワーモジュールは、2つの冷却部材間にモールド樹脂が充填されることにより成形されて製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−49542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の特許文献1記載の如きパワーモジュールの成形は、所定のモールド金型で押さえられた2つの冷却部材間のモールド成形エリア(尚、このモールド成形エリアは、半導体素子や金属ブロック,はんだなどが積層されたエリアである。)にモールド樹脂を充填することにより実現されるが、かかるパワーモジュールを成形するうえでは、上記のモールド成形エリアに常にモールド金型に合致する寸法公差が求められる。
【0005】
しかし、かかる寸法公差を成立させることは困難であるので、モールド成形時にモールド金型から樹脂漏れが生じ、或いは逆に、上記のモールド成形エリアがモールド金型で有効に押さえられないことでそのモールド成形エリア内の半導体素子などがモールド樹脂成形圧で破壊されるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、半導体素子を挟んだ2つの冷却部材間にモールド樹脂が充填されるパワーモジュールの定寸管理を実現できるパワーモジュールの構造及び成形方法、並びにパワーモジュール成形用モールド金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、半導体素子と、前記半導体素子を挟んで配置される第1及び第2の冷却部材と、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間で前記半導体素子を支持するフレーム部材と、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間に充填されるモールド樹脂と、を備え、前記フレーム部材は、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との距離を可変し得る手段を有するパワーモジュールの構造により達成される。
【0008】
上記の目的は、半導体素子と、前記半導体素子を挟んで配置される第1及び第2の冷却部材と、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との距離を可変し得る手段を有し、該第1の冷却部材と該第2の冷却部材との間で前記半導体素子を支持するフレーム部材と、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間に充填されるモールド樹脂と、を備えるパワーモジュールを成形する成形方法であって、前記手段がモールド金型による引っ張り又は圧縮により前記距離を所望距離に維持した状態で前記モールド樹脂が充填されることにより前記パワーモジュールを成形するパワーモジュールの成形方法により達成される。
【0009】
また、上記の目的は、半導体素子と、前記半導体素子を挟んで配置される第1及び第2の冷却部材と、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間で弾性変形し得る弾性部材を有し、該第1の冷却部材と該第2の冷却部材との間で前記半導体素子を支持するフレーム部材と、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間に充填されるモールド樹脂と、を備えるパワーモジュールの成形に用いられるモールド金型であって、前記パワーモジュールのモールド成形時に前記第1の冷却部材を支持する第1の金型本体と、前記パワーモジュールのモールド成形時に前記第2の冷却部材を支持する第2の金型本体と、前記第1の金型本体側から延び、前記第2の冷却部材側に設けられた第2の金属ブロックを押圧する第1の押圧ピンと、前記第2の金型本体側から延び、前記第1の冷却部材側に設けられた第1の金属ブロックを押圧する第2の押圧ピンと、を備え、前記パワーモジュールのモールド成形時、前記第1の押圧ピンが前記第2の金属ブロックを押圧しかつ前記第2の押圧ピンが前記第1の金属ブロックを押圧することにより、前記弾性部材を引っ張って弾性変形させるパワーモジュール成形用モールド金型により達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体素子を挟んだ2つの冷却部材間にモールド樹脂が充填されるパワーモジュールの定寸管理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例であるパワーモジュールの構造を表した図である。
【図2】本実施例のパワーモジュールを製造するうえで必要なモールド金型の構造を表した図である。
【図3】図2に示す構造のA−A断面図及びB−B断面図である。
【図4】本発明の変形例のパワーモジュールを製造するうえで必要なモールド金型の構造を表した図である。
【図5】本発明の変形例のパワーモジュールを製造するうえで必要なモールド金型の構造を表した図である。
【図6】本発明の変形例であるパワーモジュールの構造(モールド金型付)を表した図である。
【図7】本発明の第2実施例であるパワーモジュールの構造(モールド金型付)を表した図である。
【図8】本実施例のパワーモジュールの成形前後におけるフレーム部材の変形を表した図である。
【図9】本発明の変形例であるパワーモジュールの構造(モールド金型付)を表した図である。
【図10】本発明の変形例であるパワーモジュールの構造を表した図である。
【図11】本発明の変形例であるパワーモジュールの構造を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本発明に係るパワーモジュールの構造及び成形方法、並びにパワーモジュール成形用モールド金型の具体的な実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の第1実施例であるパワーモジュール10の構造を表した図を示す。尚、図1にはパワーモジュール10の断面図を示す。本実施例のパワーモジュール10は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される直流電源と電気モータとの間に介在するインバータや昇降圧コンバータに組み込まれるモジュールである。
【0014】
図1に示す如く、パワーモジュール10は、複数(本実施例においては6個とする。)の半導体素子12を備えている。各半導体素子12はそれぞれ、IGBTなどのスイッチング素子やダイオード素子などであり、上アームユニット又は下アームユニットを構成する。半導体素子12としてのスイッチング素子は、電気モータの各相(U相,V相,W相)に流れる電流を生成し又は昇圧制御若しくは降圧制御を行うべくスイッチング駆動される。各半導体素子12はそれぞれ、ボンディングワイヤを介して外部端子に接続されており、外部装置から信号供給され或いは外部装置に向けて信号出力する。
【0015】
パワーモジュール10は、半導体素子12の近傍に配置される金属ブロック14を備えている。金属ブロック14は、銅などの放熱性の良い金属材料により形成されており、半導体素子12の放熱効果を高める放熱板(ヒートシンク)としての機能を有すると共に、裏面配線の機能を有している。金属ブロック14は、比較的大きな表面積を有する金属ブロック14a,14bと、比較的小さな表面積を有する金属ブロック14c,14d,14eと、を有している。各金属ブロック14a〜14eはそれぞれ、所定の形状を有している。
【0016】
比較的表面積の大きい金属ブロック14aと金属ブロック14bとは、所定間隔を空けて互いに対向するように配置されている。また、比較的表面積の小さい金属ブロック14c,14d,14eは、上記した2つの金属ブロック14a,14bの間(具体的には、略その中央)において並列に配置されており、それぞれ金属ブロック14a,14bに対して所定間隔を空けて対向するように配置されている。各金属ブロック14は、半導体素子12を挟んで配置されている。
【0017】
2つの金属ブロック14a,14bの間には、2つの半導体素子12a,12bが直列して配置されており、図1に示す上下方向に積層されている。この構造によれば、上下のアームユニットを同一平面上に配置する構造に比べて実装面積が小さくなり、パワーモジュール10のコンパクト化が図られる。2つの金属ブロック14a,14bの間には、直列配置された2つの半導体素子12a,12bが3組並列して設けられている。金属ブロック14aと金属ブロック14c,14d,14eとの間に半導体素子12aが一つずつ配置されていると共に、金属ブロック14c,14d,14eと金属ブロック14bとの間に半導体素子12bが一つずつ配置されている。
【0018】
パワーモジュール10は、2つの金属ブロック14間において半導体素子12を支持するフレーム部材16を備えている。すなわち、各半導体素子12はそれぞれ、2つの金属ブロック14間においてフレーム部材16により支持されている。各半導体素子12はそれぞれ、金属ブロック14b,14c,14d,14eの表面にはんだ18を介して接合されている。具体的には、半導体素子12aは金属ブロック14c,14d,14eの表面にはんだ18を介して接合されており、また、半導体素子12bは金属ブロック14bの表面にはんだ18を介して接合されている。半導体素子12aは、金属ブロック14c,14d,14eの表面との接合面とは反対の面側においてバネ部材20aを介して金属ブロック14aに接合されている。また、半導体素子12bは、金属ブロック14bの表面との接合面とは反対の面側においてバネ部材20bを介して金属ブロック14c,14d,14eに接合されている。
【0019】
バネ部材20a,20bは、上記のフレーム部材16の一部を構成している。すなわち、フレーム部材16は、バネ機能を有するバネ部材20a,20bを有している。バネ部材20a,20bは、2つの金属ブロック14a,14bの間に直列して配置されている。バネ部材20a,20bは、銅などの放熱性及び導電性を備えた金属材料により形成されている。以下、バネ部材20a,20bを総称する場合は単にバネ部材20と称す。
【0020】
各バネ部材20a,20bはそれぞれ、2つの金属ブロック14(すなわち、後述の2つの冷却ブロック26a,26b)間でそれらの金属ブロック14同士が対向する方向(すなわち、金属ブロック14及び冷却ブロック26と半導体素子12とが積層する積層方向(図1に示す上下方向))に伸縮して弾性変形することが可能な弾性部材であり、例えば板材を曲げた構造やスプリング状の構造を有している。尚、放熱性や導電性を向上させるため、バネ部材20にはんだなどを充填することとしてもよい。
【0021】
バネ部材20a,20bの一端は半導体素子12にはんだ22を介して接合されており、また、その他端は金属ブロック14a,14c,14d,14eにはんだ24を介して接合されている。バネ部材20a,20bは、自身の伸縮により半導体素子12と金属ブロック14a,14c,14d,14eとの間の距離を可変・調整すること、すなわち、金属ブロック14bと金属ブロック14c,14d,14eとの間の距離及び金属ブロック14aと金属ブロック14c,14d,14eとの間の距離を可変・調整することが可能である。
【0022】
パワーモジュール10の両端側の金属ブロック14a,14bの外側には、冷却ブロック26a,26bが配置されている。冷却ブロック26a,26bは、アルミニウムなどの冷却性の良い金属材料により形成されており、金属ブロック14a,14b側から放出されて伝達された熱を冷却媒体(空気など)との熱交換により冷ます機能を有している。上記したバネ部材20aは、半導体素子12aと冷却ブロック26aとの間に介在されており、半導体素子12a及び冷却ブロック26aと熱的、機械的、及び電気的に接続されている。尚、上記したバネ部材20bは、半導体素子12bと金属ブロック14c,14d,14eとの間に介在されている。
【0023】
パワーモジュール10は、2つの冷却ブロック26a,26で金属ブロック14a,14bの間(半導体素子12を含む構造体)を挟んだ構造を有している。かかる構造においては、半導体素子12a,12bの発する熱がパワーモジュール10の両端にある2つの冷却ブロック26a,26bに伝達されるので、片側にのみ冷却ブロックが配置される構造に比べて冷却性能の向上が図られている。
【0024】
また、冷却ブロック26a,26bの外側表面には、外部に突出する複数の冷却フィン28が設けられている。冷却フィン28は、冷却ブロック26a,26b側と冷却媒体との間の熱交換を促進するための部材である。
【0025】
金属ブロック14a,14bと冷却ブロック26a,26bとの間には、絶縁材30が介在している。絶縁材30は、金属ブロック14a,14bと冷却ブロック26a,26bとの電気的絶縁を図るための例えば樹脂絶縁シートである。尚、この絶縁材30は、後述のモールド樹脂32よりも熱伝導率の高い材料により構成されることとするのがよい。パワーモジュール10は、2つの冷却ブロック26a,26bの間に、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及びバネ部材20が積層された形状を有している。
【0026】
また、パワーモジュール10は、2つの冷却ブロック26a,26bの間に充填されるモールド樹脂32を備えている。モールド樹脂32は、2つの冷却ブロック26a,26bの間において絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及びバネ部材20を封止する。モールド樹脂32は、例えばエポキシ樹脂により形成されている。モールド樹脂32による上記の封止は、冷却ブロック26a,26bの外側表面が露出するように行われる。パワーモジュール10は、後述のモールド金型34で固定された、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及びバネ部材20が積層された2つの冷却ブロック26a,26bの間にモールド樹脂32が充填されることにより成形されて製造される。
【0027】
次に、図2及び図3を参照して、本実施例のパワーモジュール10の製造方法を説明する。図2は、本実施例のパワーモジュール10を製造するうえで必要なモールド金型34の構造を表した図を示す。また、図3は、図2に示す構造のA−A断面図及びB−B断面図を示す。
【0028】
本実施例において、パワーモジュール10は、モールド金型34を用いて成形・製造される。モールド金型34は、最終的な製品となるパワーモジュール10の形状に合致する型内寸法を有している。パワーモジュール10の成形・製造前(モールド樹脂32の充填前)において、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及びバネ部材20を挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離は、その成形・製造後のもの(すなわち、モールド樹脂32の充填後の最終的なもの(モールド金型34の型内寸法と同じ))よりも小さい。すなわち、バネ部材20は、パワーモジュール10の成形・製造前において、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及びバネ部材20を挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも小さくなるように積層方向における自然長を有している。
【0029】
以下適宜、パワーモジュール10の成形・製造前(具体的にはモールド樹脂32が充填される前)の2つの冷却ブロック26a,26bに挟まれた絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及びバネ部材20からなる構造体を成形前構造体40と称す。
【0030】
モールド金型34は、2分割される形状を有しており、上側モールド金型34aと下側モールド金型34bとからなる。上側モールド金型34aと下側モールド金型34bとは、金型パーティングラインLで互いに合わせられる。上側モールド金型34aは、冷却ブロック26aの外側表面に接してその冷却ブロック26aを支持する上側金型本体34a−1と、その上側金型本体34a−1に接続・連結して反対側の冷却ブロック26b(或いは金属ブロック14b)側に向けて延びる上側押圧ピン34a−2と、からなる。また、下側モールド金型34bは、冷却ブロック26bの外側表面に接してその冷却ブロック26bを支持する下側金型本体34b−1と、その下側金型本体34b−1に接続・連結して反対側の冷却ブロック26a(或いは金属ブロック14a)側に向けて延びる下側押圧ピン34b−2と、からなる。
【0031】
上側押圧ピン34a−2は、成形前構造体40においてバネ部材20の長さが自然長であるときの冷却ブロック26aの外側表面から金属ブロック14bの表面までの距離よりも長い長さを有するように、具体的には、最終的な製品となるパワーモジュール10における冷却ブロック26aの外側表面から金属ブロック14bの表面までの距離と略同じ長さを有するように形成されている。
【0032】
また、下側押圧ピン34b−2は、成形前構造体40においてバネ部材20の長さが自然長であるときの冷却ブロック26bの外側表面から金属ブロック14aの表面までの距離よりも長い長さを有するように、具体的には、最終的な製品となるパワーモジュール10における冷却ブロック26bの外側表面から金属ブロック14aの表面までの距離と略同じ長さを有するように形成されている。
【0033】
押圧ピン34a−2,34b−2は、パワーモジュール10の成形時に対向側の金属ブロック14b,14aを図1に示す上下方向に押圧する機能、具体的には、かかる押圧によりバネ部材20を外側に引っ張って変形させる機能を有している。
【0034】
パワーモジュール10において、冷却ブロック26aと冷却ブロック26bとは、図3に示す如く、互いに略同じ面積を有し略同じ形状・サイズからなる対向面を有している。一方、金属ブロック14aと金属ブロック14bとは、互いに異なる形状・サイズからなる対向面を有している。例えば、金属ブロック14aは図3(A)に示す如く横長に形成され、かつ、金属ブロック14bは図3(B)に示す如く縦長に形成されている。すなわち、金属ブロック14a,14bは、金属ブロック14aの長手方向の長さが金属ブロック14bの長手方向の長さよりも長く、また、金属ブロック14bの短手方向の長さが金属ブロック14aの短手方向の長さよりも長くなるようにサイズ形成されている。
【0035】
また、金属ブロック14a,14bの上記対向面は、冷却ブロック26a,26bの上記対向面に対して小さな面積を有している。更に、絶縁材30は、金属ブロック14a,14bよりも僅かに大きく形成されている。すなわち、金属ブロック14a,14bと絶縁材30とは、絶縁材30の対向面が金属ブロック14a,14bの対向面に対して大きな面積を有するように形成されている。
【0036】
冷却ブロック26aには、上側モールド金型34aの上側押圧ピン34a−2が貫通する貫通孔36aが設けられている。貫通孔36aは、冷却ブロック26aにおいて、金属ブロック14aと対向する領域を外れる一方で金属ブロック14bと対向する領域に含まれる位置に形成されている。また、冷却ブロック26bには、下側モールド金型34bの上下側押圧ピン34b−2が貫通する貫通孔36bが設けられている。貫通孔36bは、冷却ブロック26bにおいて、金属ブロック14bと対向する領域を外れる一方で金属ブロック14aと対向する領域に含まれる位置に形成されている。
【0037】
すなわち、貫通孔36a,36bは、自己の冷却ブロック26a,26bと同じ側にある金属ブロック14a,14bと干渉しないように、かつ、自己の冷却ブロック26a,26bと反対側にある金属ブロック14b,14aと干渉するように位置している。貫通孔36a,36bはそれぞれ、冷却ブロック26a,26bや金属ブロック14a,14bの表面(対向面)に対して直交する方向(図1における上下方向)に延びている。金属ブロック14a,14bは、冷却ブロック26a,26bの貫通孔36a,36bが上記の位置に形成されるようにサイズ形成されている。
【0038】
パワーモジュール10の成形・製造工程において、モールド樹脂32が充填される前、金属ブロック14に半導体素子12及びバネ部材20がはんだ18,24により半田付けされかつ半導体素子12とバネ部材20とがはんだ22により半田付けされると共に、金属ブロック14a,14bと冷却ブロック26a,26bとの間に絶縁材30が仮固定され、2つの冷却ブロック26a,26bの間に絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及びバネ部材20が配置されることで、成形前構造体40が構成される。そして、2つの冷却ブロック26a,26bに挟まれた絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及びバネ部材20からなる成形前構造体40が、モールド金型34内に装着されて固定される。
【0039】
上記の如く、成形前構造体40においてバネ部材20の長さが自然長であるときの2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離は、モールド金型34の型内寸法よりも小さい。また、モールド金型34の押圧ピン34a−2,34b−2は、成形前構造体40においてバネ部材20の長さが自然長であるときの冷却ブロック26a,26bの外側表面から金属ブロック14b,14aの表面までの距離よりも長くかつ最終的な製品となるパワーモジュール10における冷却ブロック26a,26bの外側表面から金属ブロック14b,14aの表面までの距離と略同じ長さを有するように形成されている。
【0040】
このため、上側モールド金型34aの上側金型本体34a−1が成形前構造体40の冷却ブロック26aの外側表面に接しつつその上側モールド金型34aの上側押圧ピン34a−2がその冷却ブロック26aの貫通孔36aに貫通されると、その上側押圧ピン34a−2が成形前構造体40の下側にある金属ブロック14bの表面に当接してその金属ブロック14bを下方(その金属ブロック14bに絶縁材30を介して接する冷却ブロック26b側)へ押圧する押圧力が発生する。
【0041】
また同様に、下側モールド金型34bの下側金型本体34b−1が成形前構造体40の冷却ブロック26bの外側表面に接しつつその下側モールド金型34bの下側押圧ピン34b−2がその冷却ブロック26bの貫通孔36bに貫通されると、その下側押圧ピン34b−2が成形前構造体40の上側にある金属ブロック14aの表面に当接してその金属ブロック14aを上方(その金属ブロック14aに絶縁材30を介して接する冷却ブロック26a側)へ押圧する押圧力が発生する。
【0042】
モールド金型34の上側モールド金型34aと下側モールド金型34bとが金型パーティングラインLで互いに合わせられると、上側押圧ピン34a−2が成形前構造体40の下側にある金属ブロック14bを下方へ押圧する押圧力、及び、下側押圧ピン34b−2が成形前構造体40の上側にある金属ブロック14aを下方へ押圧する押圧力が同時に発生する。
【0043】
成形前構造体40に含まれるフレーム部材16には、金属ブロック14同士が対向する方向(図1に示す上下方向)に伸縮して変形するバネ部材20a,20bが設けられている。このため、モールド金型34の上側モールド金型34aと下側モールド金型34bとが金型パーティングラインLで互いに合わせられて上記した2つの押圧力が共に発生すると、冷却ブロック26a,26bが上側モールド金型34aの上側金型本体34a−1及び下側モールド金型34bの下側金型本体34b−1に支持されつつ、バネ部材20a,20bが自然長に対して伸張するように引っ張られて変形する。
【0044】
かかるバネ部材20a,20bの弾性変形が行われると、成形前構造体40における積層方向の厚さがバネ部材20a,20bの自然長時のものに比べて増大することで、2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離が、モールド金型34の型内寸法に一致して、パワーモジュール10において2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間に要求される最終的な距離(所望の距離)に等しくなる。
【0045】
このように成形前構造体40がモールド金型34により固定されると、次に、そのモールド金型34内にモールド樹脂32が所定の成形圧で注入される。かかる注入が行われると、距離が大きくなった2つの冷却ブロック26a,26bの間にモールド樹脂32が充填されることで、2つの冷却ブロック26a,26b間の構造体が所望の形状に形成されたパワーモジュール10が成形・製造される。かかるパワーモジュール10の成形・製造が行われた後、モールド金型34の押圧ピン34a−2,34b−2が冷却ブロック26a,26bの貫通孔36a,36bから引き抜かれてそのモールド金型34が取り外され、成形後のパワーモジュール10が取り出される。
【0046】
従って、本実施例においては、2つの冷却ブロック26a,26bの間の構造体(フレーム部材16)に積層方向に伸縮して弾性変形し得るバネ部材20a,20bを取り付けたうえで、モールド金型34の装着時にそのバネ部材20a,20bをそのモールド金型34により引っ張って変形させ、その変形状態でモールド金型34内にモールド樹脂32を充填することにより、定寸のパワーモジュール10を成形・製造することができる。
【0047】
この点、本実施例によれば、フレーム部材16でのバネ部材20a,20bの存在によりパワーモジュール10の寸法公差を吸収することができるので、半導体素子12を挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの間にモールド樹脂32が充填されるパワーモジュール10の定寸管理を実現することができる。このため、パワーモジュール10のモールド成形時にモールド金型34から樹脂漏れが生ずるのは回避され、また、パワーモジュール10を構成する半導体素子12などがモールド樹脂成形圧で破壊されるのは防止されると共に、モールド樹脂32を余分に充填することは不要であって、寸法調整後に余分なモールド樹脂32を切削することは不要である。
【0048】
また、本実施例においては、パワーモジュール10のモールド成形時、上側モールド金型34aの上側押圧ピン34a−2が反対側(下側)の金属ブロック14bを下方へ押圧する押圧力が発生すると共に、下側モールド金型34bの下側押圧ピン34b−2が反対側(上側)の金属ブロック14aを上方へ押圧する押圧力が発生する。この場合には、金属ブロック14bが冷却ブロック26b側へ押圧されるので、金属ブロック14bと冷却ブロック26bとの間の絶縁材30がそれらの金属ブロック14b及び冷却ブロック26bの双方に密着して挟持される。ブロック14aが冷却ブロック26a側へ押圧されるので、金属ブロック14aと冷却ブロック26aとの間の絶縁材30がそれらの金属ブロック14a及び冷却ブロック26aの双方に密着して挟持される。
【0049】
そして、絶縁材30が金属ブロック14a,14bと冷却ブロック26a,26bとに挟持された状態で、2つの冷却ブロック26a,26bの間にモールド樹脂32が充填される。従って、本実施例によれば、絶縁材30の両面をモールド樹脂成形圧で金属ブロック14a,14b及び冷却ブロック26a,26bに貼り付け固定することが可能である。
【0050】
尚、上記の第1実施例においては、冷却ブロック26a,26b(尚、冷却フィン28を含んでもよい。)が特許請求の範囲に記載した「第1の冷却部材」及び「第2の冷却部材」に、バネ部材20a,20bが特許請求の範囲に記載した「弾性部材」及び「バネ材」に、上側金型本体34a−1及び下側金型本体34b−1が特許請求の範囲に記載した「第1の金型本体」及び「第2の金型本体」に、上側押圧ピン34a−2及び下側押圧ピン34b−2が特許請求の範囲に記載した「第1の押圧ピン」及び「第2の押圧ピン」に、モールド金型34が特許請求の範囲に記載した「パワーモジュール成形用モールド金型」に、それぞれ相当している。
【0051】
ところで、上記の第1実施例においては、パワーモジュール10の成形時に対向側の金属ブロック14b,14aを押圧する押圧ピン34a−2,34b−2を、金型本体34a−1,34b−1に接続・連結するものとし、その金型本体34a−1,34b−1から反対側の冷却ブロック26b,26a(或いは金属ブロック14b,14a)側に向けて延ばすものとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
すなわち、図4に示す如く、モールド金型102の金型本体102a,102bとは別体で、パワーモジュール100の成形時に対向側の金属ブロック14b,14aを図4に示す上下方向に押圧する押圧ピン104a,104bを設け、その押圧ピン104a,104bを金型本体102a,102b側から反対側の冷却ブロック26b,26a(或いは金属ブロック14b,14a)側に向けて延ばすものとしてもよい。この変形例において、押圧ピン104a,104bは、変位機構により金属ブロック14b,14aの押圧及びその押圧解除のために変位可能とすればよい。
【0053】
かかる変形例においては、押圧ピン104a,104bがモールド金型102の金型本体102a,102bとは別体で設けられているため、パワーモジュール100の成形後、金型本体102a,102bを離型する前に押圧ピン104a,104bのみを押圧解除のために引き抜くことができる。このため、かかる変形例によれば、上記した実施例の如く押圧ピン34a−2,34b−2が一体化されたモールド金型34の取り外し時とは異なり、押圧ピン104a,104bの引き抜きに起因したモールド樹脂32の破壊を抑えることができる。
【0054】
また、かかる変形例においては、冷却ブロック26a,26bに押圧ピン104a,104bを貫通させる貫通孔を設けることは不要であると共に、モールド金型34の側壁に斜めに貫く貫通孔を設けたうえで、押圧ピン104a,104bをその貫通孔に挿入して変位機構により変位可能とすることができる。この構造では、押圧ピン104a,104bが金属ブロック14b,14aにその表面に対して斜めに当接することとなる。尚、この構造では、モールド成形後のパワーモジュール100のモールド樹脂32の側面に押圧ピン104a,104bが挿入された穴が残るが、そのパワーモジュール100の側面に空いた穴はそのパワーモジュール100の絶縁性や冷却性能に大きく影響しないので、パワーモジュール100のモールド成形後にその穴を塞ぐことは不要である。
【0055】
更に、かかる変形例においては、上記した実施例の構造とは異なり、押圧ピン104a,104bが、パワーモジュール100のモールド成形時に金属ブロック14a,14bの表面(対向面)に対して直交する方向(図1における上下方向)に延びず、斜めに延びるものとすることができるので、金属ブロック14a,14bを互いに異なる形状・サイズからなるものとすることは不要であって、そのサイズを共通化することができ、パワーモジュール100における無駄なスペースを無くしかつ製造工数の増大を抑えることができる。
【0056】
また、上記の第1実施例においては、パワーモジュール10の成形・製造前におけるバネ部材20a,20bの自然長を、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及びバネ部材20a,20bを挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも小さくなるものとし、パワーモジュール10の成形時にモールド金型34によりバネ部材20a,20bを積層方向に伸張させてその2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離を所望の距離に維持させることとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
すなわち逆に、図5に示す如く、パワーモジュール200の成形・製造前におけるバネ部材202a,202bの自然長を、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及びバネ部材202a,202bを挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも大きくなるものとし、パワーモジュール200の成形時にモールド金型204によりバネ部材202a,202bを積層方向に収縮させてその2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離を所望の距離に維持させることとしてもよい。
【0058】
かかる変形例においては、2つの冷却ブロック26a,26bの間の構造体(フレーム部材16)に伸縮して変形するバネ部材202a,202bを取り付けたうえで、モールド金型204の装着時にそのバネ部材202a,202bをそのモールド金型204により圧縮して変形させ、その変形状態でモールド金型204内にモールド樹脂32を充填することにより、定寸のパワーモジュール200を成形・製造することができる。
【0059】
このため、かかる変形例においても、上記した実施例と同様の効果を得ることができる。また、パワーモジュール200のモールド成形時に、モールド金型204の上側モールド金型204aと下側モールド金型204bとが金型パーティングラインLで互いに合わせられると、そのモールド金型204の押圧力により絶縁材30がその両面で接する金属ブロック14a,14b及び冷却ブロック26a,26bの双方に密着して挟持されるので、その絶縁材30の両面を金属ブロック14a,14b及び冷却ブロック26a,26bに貼り付け固定することができる。尚、かかる変形例においては、モールド金型204に、パワーモジュール200の成形時に対向側の金属ブロック14b,14aを押圧する押圧ピンを設けることは不要であると共に、パワーモジュール200のモールド樹脂32や冷却ブロック26a,26bなどに押圧ピンが挿入される穴が残るのは回避される。
【0060】
また、上記の第1実施例においては、2つの冷却ブロック26a,26b間のフレーム部材16の一部として、2つの金属ブロック14間で積層方向に伸縮して弾性変形するバネ機能を有するバネ部材20a,20bを設けることとした。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、図6に示す如く、2つの冷却ブロック26a,26b間のフレーム部材302の一部として、上記のバネ部材20a,20bに代えて、高い放熱性を有し、かつ、パワーモジュール300のモールド成形時にモールド金型304により引っ張られ又は圧縮されることにより半導体素子12と冷却ブロック26a,26bとの積層方向に弾性変形する導電性樹脂306a,306bを設けることとしてもよい。
【0061】
この導電性樹脂306a,306bは、半導体素子12と金属ブロック14a,14c,14d,14eとの間に介在されている。具体的には、導電性樹脂306aは、半導体素子12aと金属ブロック14a(すなわち、冷却ブロック26a)との間に介在されている。また、導電性樹脂306bは、半導体素子12bと金属ブロック14c,14d,14eとの間に介在されている。導電性樹脂306a,306bは、エポキシ系などの材料によりブロック状に形成されている。導電性樹脂306a,306bは、上記の積層方向に伸縮する弾性を有していると共に、上記したバネ部材20a,20bに比べて高い放熱性を有している。
【0062】
導電性樹脂306a,306bの一端は半導体素子12にはんだ22を介して接合されており、また、その他端は金属ブロック14a,14c,14d,14eにはんだ24を介して接合されている。導電性樹脂306a,306bは、自身の伸縮により半導体素子12と金属ブロック14a,14c,14d,14eとの間の距離を可変・調整すること、すなわち、金属ブロック14bと金属ブロック14c,14d,14eとの間の距離及び金属ブロック14aと金属ブロック14c,14d,14eとの間の距離を可変・調整することが可能である。
【0063】
導電性樹脂306a,306bの、パワーモジュール300の成形・製造前における積層方向の長さ(自然長)は、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及び導電性樹脂306a,306bを挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも大きくなるように設定されている。
【0064】
かかる変形例においても、2つの冷却ブロック26a,26bの間の構造体(フレーム部材302)に積層方向に伸縮して弾性変形する導電性樹脂306a,306bを取り付けたうえで、モールド金型304の装着時にその導電性樹脂306a,306bをそのモールド金型304により圧縮して弾性変形させ、その変形状態でモールド金型304内にモールド樹脂32を充填することにより、定寸のパワーモジュール300を成形・製造することができる。このため、この変形例においても、上記した第1実施例と同様の効果を得ることができる。また、かかる変形例においては、導電性樹脂306a,306bが上記のバネ部材20に比べて高い放熱性を有しているので、半導体素子12側から冷却ブロック26a,26b側への放熱性を上記した第1実施例のものに比べて向上させることが可能である。
【0065】
尚、この変形例においては、導電性樹脂306a,306bの、パワーモジュール300の成形・製造前における積層方向の長さ(自然長)が、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及び導電性樹脂306a,306bを挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも大きくなるように設定されるものとしたが、上記の2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも小さくなるように設定されるものとしてもよい。すなわち、パワーモジュール300の成形時にモールド金型304により導電性樹脂306a,306bを引っ張って或いは圧縮して2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離を所望の距離とすることとすればよい。
【実施例2】
【0066】
図7は、本発明の第2実施例であるパワーモジュール400の構造(モールド金型付)を表した図を示す。尚、図7において、上記図1などに示す構成と同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。また、図8は、本実施例のパワーモジュール400の成形前後におけるフレーム部材402の変形を表した図を示す。尚、図8(A)にはモールド金型による圧縮前のフレーム部材402の状態を、また、図8(B)にはモールド金型による圧縮後のフレーム部材402の状態を、それぞれ示す。
【0067】
本実施例のパワーモジュール400において、各半導体素子12はそれぞれ、2つの金属ブロック14間においてフレーム部材402により支持されている。半導体素子12aは、金属ブロック14c,14d,14eの表面にはんだ18を介して接合されていると共に、金属ブロック14c,14d,14eの表面との接合面とは反対の面側においてブロック部材404aを介して金属ブロック14aに接合されている。また、半導体素子12bは、金属ブロック14bの表面にはんだ18を介して接合されていると共に、金属ブロック14bの表面との接合面とは反対の面側においてブロック部材404bを介して金属ブロック14c,14d,14eに接合されている。
【0068】
ブロック部材404a,404bは、上記のフレーム部材402の一部を構成している。すなわち、フレーム部材402は、金属ブロック14間(すなわち、冷却ブロック26a,26b間)で全高が可変されるブロック部材404a,404bを有している。ブロック部材404a,404bは、2つの金属ブロック14,14bの間に直列して配置されている。ブロック部材404a,404bは、銅などの放熱性及び導電性を備えた金属材料によりブロック状に形成されている。尚、ブロック部材404a,404bの熱容量は、上記した第1実施例のバネ部材20a,20bの熱容量に比して大きい。
【0069】
各ブロック部材404a,404bはそれぞれ、2つの金属ブロック14間で金属ブロック14及び冷却ブロック26と半導体素子12とが積層する積層方向に分割された多層ブロック構造を有しており、その積層方向に積層する複数(図8においては3つ)のスライド片406からなる。以下、ブロック部材404a,404bを多層ブロック部材404a,404bと称す。各スライド片406はそれぞれ、積層方向の厚さが上記の積層方向に直交する方向(以下、面内方向と称す)の位置ごとに異なり、一方の積層方向端部から他方の積層方向端部にかけて大きくなるように形成されている。すなわち、隣接するスライド片406と接する面が上記の積層方向及び上記の面内方向の双方に対して傾斜するように形成されている。
【0070】
例えば、図8に示す如く、各多層ブロック部材404a,404bがそれぞれ積層方向において順に3つのスライド片406a,406b,406cからなる場合、中央のスライド片406bを挟んで上下に位置するスライド片406a,406cはそれぞれ、金属ブロック14a,14c,14d,14e又は半導体素子12a,12bと接合する面(外側面)の垂線が上記の積層方向に向く一方、スライド片406a,406cに挟まれた中央のスライド片406bと接する面(内側面)の垂線が上記の積層方向及び上記の面内方向の双方に対して傾斜して向くように形成されている。
【0071】
また、中央に位置するスライド片406bは、一方のスライド片406aと接する面(上側面)の垂線が上記の積層方向及び上記の面内方向の双方に対して傾斜して向き、かつ、他方のスライド片406cと接する面(下側面)の垂線が上記の積層方向及び上記の面内方向の双方に対して傾斜して向くように形成されている。スライド片406bの上側面の傾斜方向と下側面の傾斜方向とは互いに異なり、また、スライド片406aの内側面の傾斜方向とスライド片406cの内側面の傾斜方向とは互いに異なる。
【0072】
各スライド片406はそれぞれ、隣接するスライド片406に対して上記の積層方向に直交する面内方向に相対変位可能である。具体的には、例えば、図8に示す如く、各多層ブロック部材404a,404bがそれぞれ積層方向において順に3つのスライド片406a,406b,406cからなる場合、上下のスライド片406a,406cは共に、中央のスライド片406bに対して相対的に上記の面内方向にスライドすることが可能である。各スライド片406はそれぞれ、上記の積層方向に加圧された場合に、隣接するスライド片406に対して相対的に上記の面内方向にスライドする。多層ブロック部材404a,404bにおいて、上記の積層方向への加圧によりスライド片406が面内方向に相対変位すると、上記の積層方向における厚さ(全高)が変化(減少)する。
【0073】
多層ブロック部材404a,404bの積層方向の一端は半導体素子12にはんだ22を介して接合されており、また、その積層方向の他端は金属ブロック14a,14c,14d,14eにはんだ24を介して接合されている。多層ブロック部材404a,404bは、自身の積層方向における厚さ変化により半導体素子12と金属ブロック14a,14c,14d,14eとの間の距離を可変・調整すること、すなわち、金属ブロック14bと金属ブロック14c,14d,14eとの間の距離及び金属ブロック14aと金属ブロック14c,14d,14eとの間の距離を可変・調整することが可能である。
【0074】
多層ブロック部材404aは、半導体素子12aと冷却ブロック26aとの間に介在されており、半導体素子12a及び冷却ブロック26aと熱的、機械的、及び電気的に接続されている。尚、多層ブロック部材404bは、半導体素子12bと金属ブロック14c,14d,14eとの間に介在されている。
【0075】
本実施例において、パワーモジュール400は、モールド金型408を用いて成形・製造される。モールド金型408は、最終的な製品となるパワーモジュール400の形状に合致する型内寸法を有している。パワーモジュール400の成形・製造前(モールド樹脂32の充填前)において、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及び多層ブロック部材404を挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離は、その成形・製造後のもの(すなわち、モールド樹脂32の充填後の最終的なもの(モールド金型408の型内寸法と同じ))よりも大きい。
【0076】
すなわち、多層ブロック部材404は、パワーモジュール400の成形・製造前において、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及び多層ブロック部材404を挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも大きくなるように、比較的大きい積層方向の厚さ(全高)を有している。以下適宜、パワーモジュール400の成形・製造前(具体的にはモールド樹脂32が充填される前)の2つの冷却ブロック26a,26bに挟まれた絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及び多層ブロック部材404からなる構造体を成形前構造体410と称す。
【0077】
モールド金型408は、2分割される形状を有しており、上側モールド金型408aと下側モールド金型408bとからなる。上側モールド金型408aと下側モールド金型408bとは、金型パーティングラインLで互いに合わせられる。上側モールド金型408aは、冷却ブロック26aの外側表面に接してその冷却ブロック26aを支持している。また、下側モールド金型408bは、冷却ブロック26bの外側表面に接してその冷却ブロック26bを支持している。
【0078】
パワーモジュール400の成形・製造工程において、モールド樹脂32が充填される前、金属ブロック14に半導体素子12及び多層ブロック部材404がはんだ18,24により半田付けされかつ半導体素子12と多層ブロック部材404とがはんだ22により半田付けされると共に、金属ブロック14a,14bと冷却ブロック26a,26bとの間に絶縁材30が仮固定され、2つの冷却ブロック26a,26bの間に絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及び多層ブロック部材404が配置されることで、成形前構造体410が構成される。そして、2つの冷却ブロック26a,26bに挟まれた絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及び多層ブロック部材404からなる成形前構造体410が、モールド金型408内に装着されて固定される。
【0079】
成形前構造体410は、モールド金型408内に装着されると、その積層方向端部がそれら上側モールド金型408a及び下側モールド金型408bの内面に当接しつつその積層方向に圧縮される。上記の如く、成形前構造体410を構成する多層ブロック部材404は、自身の積層方向における厚さ変化により半導体素子12と金属ブロック14a,14c,14d,14eとの間の距離を調整することが可能である。このため、モールド金型408の上側モールド金型408aと下側モールド金型408bとが金型パーティングラインLで互いに合わせられて成形前構造体410が上記の如く積層方向に圧縮されると、多層ブロック部材404の複数のスライド片406が面内方向へ相対変位することによってその多層ブロック部材404の積層方向における厚さが小さくなる。
【0080】
かかる多層ブロック部材404の積層方向における厚さが小さくなると、成形前構造体410における積層方向の厚さが吸収されることで、2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離が、モールド金型408の型内寸法に一致して、パワーモジュール400において2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間に要求される最終的な距離(所望の距離)に等しくなる。
【0081】
このように成形前構造体410がモールド金型408により固定されると、次に、そのモールド金型408内にモールド樹脂32が所定の成形圧で注入される。かかる注入が行われると、距離が小さくなった2つの冷却ブロック26a,26bの間にモールド樹脂32が充填されることで、2つの冷却ブロック26a,26b間の構造体が所望の形状に形成されたパワーモジュール400が成形・製造される。かかるパワーモジュール400の成形・製造が行われた後、モールド金型408が取り外され、成形後のパワーモジュール400が取り出される。
【0082】
従って、本実施例においては、2つの冷却ブロック26a,26bの間の構造体(フレーム部材402)に積層方向に積層されかつ面内方向に互いにスライドし得る複数のスライド片406からなる多層ブロック部材404a,404bを取り付けたうえで、モールド金型408の装着時にその多層ブロック部材404a,404bをそのモールド金型408により積層方向に圧縮して変形させ、その変形状態でモールド金型408内にモールド樹脂32を充填することにより、定寸のパワーモジュール400を成形・製造することができる。
【0083】
この点、本実施例によれば、フレーム部材402での多層ブロック部材404a,404bの存在によりパワーモジュール400の寸法公差を吸収することができるので、半導体素子12を挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの間にモールド樹脂32が充填されるパワーモジュール400の定寸管理を実現することができる。このため、パワーモジュール400のモールド成形時にモールド金型408から樹脂漏れが生ずるのは回避され、また、パワーモジュール400を構成する半導体素子12などがモールド樹脂成形圧で破壊されるのは防止されると共に、モールド樹脂32を余分に充填することは不要であって、寸法調整後に余分なモールド樹脂32を切削することは不要である。
【0084】
また、本実施例においては、パワーモジュール400の2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離を要求される最終的な距離(所望の距離)に等しくするうえで、フレーム部材402として、上記の面内方向に相対的にスライド可能な複数のスライド片406が積層方向に積層された多層ブロック部材404a,404bが設けられている。上記の如く、多層ブロック部材404a,404bの熱容量は、上記した第1実施例のバネ部材20a,20bの熱容量に比して大きい。このため、本実施例の構造によれば、半導体素子12側から冷却ブロック26a,26b側への放熱性を高めることが可能である。
【0085】
尚、上記の第2実施例においては、多層ブロック部材404a,404bが特許請求の範囲に記載した「多層ブロック部材」に、また、スライド片406a,406b,406cが特許請求の範囲に記載した「ブロック片」に、それぞれ相当している。
【0086】
ところで、上記の第2実施例においては、パワーモジュール400の成形・製造前における多層ブロック部材404a,404bの積層方向の厚さ(全高)を、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、及び多層ブロック部材404を挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも大きくなるものとし、パワーモジュール400の成形時にモールド金型408により多層ブロック部材404a,404bを積層方向に収縮させてその2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離を所望の距離とすることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、逆に、パワーモジュールの成形・製造前におけるブロック部材の積層方向の厚さ(全高)を、2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも小さくなるものとし、パワーモジュールの成形時にモールド金型によりブロック部材を積層方向に伸張させてその2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離を所望の距離とすることとしてもよい。
【0087】
また、上記の第2実施例においては、多層ブロック部材404の3つのスライド片406がそれぞれ、隣接するスライド片406に対して上記の積層方向に直交する面内方向に相対変位可能であるが、中央のスライド片406bを挟んで上下に位置するスライド片406a,406cを金属ブロック14a〜14eに対して固定することとし、中央のスライド片406bをスライド片406a,406c及び金属ブロック14a〜14eに対して面内方向にスライド可能とすることとしてもよい。また、逆に、中央のスライド片406bを金属ブロック14a〜14eに対して固定することとし、中央のスライド片406bを挟んで上下に位置するスライド片406a,406cをスライド片406b及び金属ブロック14a〜14eに対して面内方向にスライド可能とすることとしてもよい。
【0088】
尚、上記の第1及び第2実施例においては、半導体素子12を支持するフレーム部材16,402の一部として伸縮・変形するバネ部材20a,20b又は多層ブロック部材404a,404bを金属ブロック14とは別体で設けることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、金属ブロック14と一体化することとしてもよい。すなわち、金属ブロック14を半導体素子12などを含む構造体の積層方向に伸縮・変形可能な構造としてもよい。
【0089】
また、上記の第1及び第2実施例においては、パワーモジュール10,400における2つの冷却ブロック26a,26bの間すなわち2つの金属ブロック14a,14bの間に2つの半導体素子12a,12bを直列して配置した多段構造において、その間でそれらの半導体素子12a,12bを支持するフレーム部材16,402として2つのバネ部材20a,20b又は多層ブロック部材404a,404bを設け(すなわち、各半導体素子12a,12bそれぞれに対応して一つずつバネ部材20a,20b又は多層ブロック部材404a,404bを設け)、2つの金属ブロック14a,14bの間で2つのバネ部材20a,20b又は多層ブロック部材404a,404bを直列して配置することとした。
【0090】
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、多段構造においても2つの冷却ブロック26a,26bの間すなわち2つの金属ブロック14a,14bの間に両者の対向方向(積層方向)でバネ部材20又は多層ブロック部材404が一つ設けられていればよい。すなわち、2つの金属ブロック14a,14bの間で複数の半導体素子12が直列配置される場合にも、それら2つの金属ブロック14a,14bの間にバネ部材20又は多層ブロック部材404を2つ以上直列配置することなく、唯一つ設けることとすればよい。また、2つの金属ブロック14a,14bの間に、直列配置された2つの半導体素子12a,12bの組ごとに一つずつバネ部材20又は多層ブロック部材404を設けることとしてもよい。
【0091】
例えば、図9に示す如く、金属ブロック14a,14bの間に2つの半導体素子12a,12bが直列配置された多段構造のパワーモジュール500において、各半導体素子12a,12bはそれぞれ、2つの金属ブロック14a,14b間においてフレーム部材502により支持される。2つの金属ブロック14a,14bの間で直列接続される半導体素子12a,12bを支持するフレーム部材502として一つのバネ部材又はブロック部材504(以下、バネ部材等504と称す。)が設けられる。バネ部材等504は、フレーム部材502ごとにすなわち2つの金属ブロック14a,14bの間で直列配置された2つの半導体素子12a,12bの組ごとに一つずつ設けられる。
【0092】
金属ブロック14bの表面にはんだ18を介して接合された半導体素子12bは、その接合面とは反対の面側においてバネ部材等504を介して金属ブロック14c,14d,14eに接合されると共に、金属ブロック14c,14d,14eの表面にはんだ18を介して接合された半導体素子12aは、その接合面とは反対の面側においてブロック部材506を介して金属ブロック14aに接合される。
【0093】
バネ部材等504は、上記のバネ部材20又は多層ブロック部材404と同様の構成を有する。また、ブロック部材506は、銅などの放熱性の良い金属材料によりブロック状に形成されている。ブロック部材506は、積層方向に分割されることのない非分割の単層ブロック構造を有しており、その熱容量は、上記した第1実施例のバネ部材20a,20bや多層ブロック部材404a,404bの熱容量に比して大きい。ブロック部材506は、半導体素子12aごとに設けられており、金属ブロック14a〜14eよりも小さな表面積を有する。
【0094】
バネ部材等504の一端は半導体素子12bにはんだ22を介して接合されており、また、その他端は金属ブロック14c,14d,14eにはんだ24を介して接合されている。バネ部材等504は、自身の積層方向における伸縮や厚さ変化により半導体素子12と金属ブロック14c,14d,14eとの間の距離を可変・調整することが可能である。また、ブロック部材506の一端は半導体素子12aにはんだ22を介して接合されており、また、その他端は金属ブロック14aにはんだ24を介して接合されている。更に、バネ部材等504は、パワーモジュール500の成形・製造前において、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、バネ部材等504、及びブロック部材506を挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも小さくなるように積層方向における自然長を有している。
【0095】
かかる変形例においても、2つの冷却ブロック26a,26bの間の構造体(フレーム部材502)に積層方向に伸縮して変形するバネ部材等504を取り付けたうえで、モールド金型34の装着時にそのバネ部材等504をそのモールド金型34により引っ張って変形させ、その変形状態でモールド金型34内にモールド樹脂32を充填することにより、定寸のパワーモジュール500を成形・製造することができる。このため、この変形例においても、上記した第1実施例などと同様の効果を得ることができる。
【0096】
また、かかる変形例においては、フレーム部材502の一部であるブロック部材506が、積層方向に分割されることのない非分割の単層ブロック構造を有し、かつ、そのブロック部材506の熱容量が、上記した第1実施例のバネ部材20a,20bの熱容量に比して大きい。このため、半導体素子12a,12bが直列に配置される2つの冷却ブロック26a,26bの間でバネ部材等504とブロック部材506とが一つずつ配置されるフレーム部材502の構造によれば、2つのバネ部材20a,20bが直列配置されるフレーム部材16の構造やスライド片406が積層方向に分割されているフレーム部材402の構造に比べて高い放熱性が実現されるので、半導体素子12側から冷却ブロック26a,26b側への放熱性を上記した第1実施例や第2実施例のものに比べて向上させることが可能である。
【0097】
尚、この変形例においては、バネ部材等504が、パワーモジュール500の成形・製造前において、絶縁材30、金属ブロック14、半導体素子12、はんだ18,22,24、バネ部材等504、及びブロック部材506を挟んだ2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも小さくなるように積層方向における自然長(厚さ)を有するものとしたが、パワーモジュール500の成形・製造前における2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離がその成形・製造後の所望のものよりも大きくなるように積層方向における自然長(厚さ)を有するものとしてもよい。
【0098】
また、この変形例の如く、2つの冷却ブロック26a,26bの間で2つの半導体素子12a,12bが直列配置される多段構造のパワーモジュールにおいて、半導体素子12a,12bと積層方向両端の金属ブロック14a,14bとの間にフレーム部材として特に板状やスプリング状のバネ部材が配置されると、その半導体素子12a,12bで発生した熱の金属ブロック14a,14bへの伝達がそのバネ部材を介して行われるので、放熱特性が低下するおそれがある。一方、半導体素子12a,12bがはんだ18を介して金属ブロック14a,14bに接合される構造では、その接合面とは反対の面側にフレーム部材としてのバネ部材が設けられても、その半導体素子12a,12bで発生した熱がバネ部材を介することなく直接に金属ブロック14a,14bに伝達されるので、高い放熱特性が確保される。
【0099】
そこで、上記の変形例の如くバネ部材等504とブロック部材506とが一つずつ配置される構造においては、はんだ18を介して積層方向両端の金属ブロック14a,14bに接合される半導体素子12bと中央の金属ブロック14c,14d,14eとの間にバネ部材等504を配置し、一方、はんだ18を介して中央の金属ブロック14c,14d,14eに接合される半導体素子12aと積層方向両端の金属ブロック14a,14bとの間にブロック部材506を配置することとすれば、高い放熱特性を確保することが可能となる。
【0100】
また、上記の第1及び第2実施例においては、バネ部材20や多層ブロック部材404を半導体素子12の一方の面側に配置することとしているが、その半導体素子12の表面側及び裏面側の双方に配置することとしてもよい。
【0101】
また、上記の第1及び第2実施例においては、一つのパワーモジュール10等において2つの金属ブロック14a,14bの間に直列配置された2つの半導体素子12を3組並列して設けることとしているが、2つの金属ブロック14a,14bの間において積層方向に唯一つの半導体素子12を配置することとしてもよいし、また、積層方向に3つ以上の半導体素子12を直列配置することとしてもよい。また、2つの金属ブロック14a,14bの間において積層方向に配置された半導体素子12を一組として、2つの金属ブロック14a,14bの間に一組の半導体素子12を設けることとしてもよいし、また、複数組の半導体素子12を並列して設けることとしてもよい。
【0102】
例えば、図10に示す如く、パワーモジュール600において、2つの金属ブロック14a,14bの間に唯一つの半導体素子12を2組並列して設けることとしてもよい。かかる構造においては、半導体素子12が、金属ブロック14bにはんだ18を介して接合されており、その接合面とは反対の面側においてフレーム部材602としてのバネ部材等604を介して金属ブロック14aに接合されている。バネ部材等604の一端は半導体素子12にはんだ22を介して接合されており、また、その他端は金属ブロック14aにはんだ24を介して接合されている。
【0103】
尚、2つの金属ブロック14a,14bの間に配置された半導体素子12が2組並列して設けられる場合は、両列の半導体素子12の表面側及び裏面側の少なくとも何れか一方にバネ部材20等を配置することが望ましい。また、3組以上並列して設けられる場合は、両端列の半導体素子12の表面側及び裏面側の少なくとも何れか一方にバネ部材20等を配置したうえで、両端列間の列の半導体素子12については必要に応じてバネ部材20等を配置することとすればよい。
【0104】
また、上記の第1及び第2実施例においては、フレーム部材が有する2つの冷却ブロック26a,26bの外側表面間の距離を可変する手段として、積層方向に弾性変形するバネ部材20や、積層方向に積層されかつ面内方向に相対的にスライドし得る複数のスライド片406からなる多層ブロック部材404を用いることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、積層方向に塑性変形する塑性部材を用いることとしてもよい。
【0105】
かかる変形例において、塑性部材は、モールド成形時にモールド金型により積層方向に引っ張り又は圧縮されることにより塑性変形する。この塑性部材は、自身の塑性変形により半導体素子12と金属ブロック14a,14c,14d,14eとの間の距離を可変・調整すること、すなわち、金属ブロック14bと金属ブロック14c,14d,14eとの間の距離及び金属ブロック14aと金属ブロック14c,14d,14eとの間の距離を可変・調整することが可能である。かかる変形例においても、モールド金型34の装着時にその塑性部材をモールド金型により引っ張って又は圧縮して変形させ、その変形状態でモールド金型内にモールド樹脂32を充填することにより、定寸のパワーモジュールを成形・製造することが可能となる。
【0106】
また、上記の第1及び第2実施例においては、2つの金属ブロック14a,14bの間に直列配置された2つの半導体素子12のうち、半導体素子12bを下端の金属ブロック14bの表面にはんだ18を介して接合しかつバネ部材20b又は導電性部材404bを介して2つの金属ブロック14a,14bの間に配置された金属ブロック14c,14d,14eに接合すると共に、半導体素子12aをその金属ブロック14c,14d,14eの表面にはんだ18を介して接合しかつバネ部材20a又は導電性部材404aを介して上端の金属ブロック14aに接合することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、両半導体素子12a,12bを共に、上下端の金属ブロック14a,14bの表面に接合しかつバネ部材又は導電性部材を介して2つの金属ブロック14a,14bの間に配置された金属ブロック14c,14d,14eに接合することとしてもよい。また、両半導体素子12a,12bを共に、2つの金属ブロック14a,14bの間に配置された金属ブロック14c,14d,14eに接合しかつバネ部材又は導電性部材を介して上下端の金属ブロック14a,14bの表面に接合することとしてもよい。
【0107】
更に、上記の第1及び第2実施例においては、パワーモジュール10,400を、冷却ブロック26a,26bでの冷却を空気を用いて行う空冷モジュールに適用することとしたが、図11に示す如く、冷却ブロック26a,26bでの冷却を流路700を流れる水を用いて行う水冷モジュールに適用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0108】
10,100,200,300,400,500,600 パワーモジュール
12a,12b 半導体素子
14a〜14e 金属ブロック
16,302,402,502,602 フレーム部材
18,22,24 はんだ
20a,20b,202a,202b バネ部材
26a,26b 冷却ブロック
28 冷却フィン
30 絶縁材
32 モールド樹脂
34,102,204,304,408 モールド金型
34a−1,34b−1,102a,102b 金型本体
34a−2,34b−2,104a,104b 押圧ピン
306a,306b 導電性樹脂
404a,404b 多層ブロック部材
406 スライド片
504,604 バネ部材等


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子を挟んで配置される第1及び第2の冷却部材と、
前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間で前記半導体素子を支持するフレーム部材と、
前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間に充填されるモールド樹脂と、を備え、
前記フレーム部材は、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との距離を可変し得る手段を有することを特徴とするパワーモジュールの構造。
【請求項2】
前記手段は、前記半導体素子と前記第1又は第2の冷却部材との間に介在され、該半導体素子及び該第1又は第2の冷却部材と少なくとも熱的及び機械的に接続されていることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュールの構造。
【請求項3】
前記手段は、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間で弾性変形し得る弾性部材であることを特徴とする請求項1又は2記載のパワーモジュールの構造。
【請求項4】
前記弾性部材は、モールド成形時にモールド金型により引っ張られ又は圧縮されることにより前記半導体素子と前記第1及び第2の冷却部材との積層方向に弾性変形するバネ材であることを特徴とする請求項3記載のパワーモジュールの構造。
【請求項5】
前記弾性部材は、放熱性を有し、かつ、モールド成形時にモールド金型により引っ張られ又は圧縮されることにより前記半導体素子と前記第1及び第2の冷却部材との積層方向に弾性変形する導電性樹脂であることを特徴とする請求項3記載のパワーモジュールの構造。
【請求項6】
前記手段は、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間で前記半導体素子と該第1及び第2の冷却部材との積層方向に積層され、かつ、該積層方向に直交する直交方向に互いにスライドし得る複数のブロック片からなる多層ブロック部材であることを特徴とする請求項1又は2記載のパワーモジュールの構造。
【請求項7】
前記複数のブロック片は、モールド成形時にモールド金型により前記積層方向に圧縮されることにより前記直交方向に互いにスライドすることを特徴とする請求項6記載のパワーモジュールの構造。
【請求項8】
前記手段は、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間で塑性変形し得る塑性部材であることを特徴とする請求項1又は2記載のパワーモジュールの構造。
【請求項9】
前記塑性部材は、モールド成形時にモールド金型により圧縮されることにより前記半導体素子と前記第1及び第2の冷却部材との積層方向に塑性変形することを特徴とする請求項8記載のパワーモジュールの構造。
【請求項10】
半導体素子と、前記半導体素子を挟んで配置される第1及び第2の冷却部材と、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との距離を可変し得る手段を有し、該第1の冷却部材と該第2の冷却部材との間で前記半導体素子を支持するフレーム部材と、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間に充填されるモールド樹脂と、を備えるパワーモジュールを成形する成形方法であって、
前記手段がモールド金型による引っ張り又は圧縮により前記距離を所望距離に維持した状態で前記モールド樹脂が充填されることにより前記パワーモジュールを成形することを特徴とするパワーモジュールの成形方法。
【請求項11】
前記手段は、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間で弾性変形し得る弾性部材であり、
前記モールド金型は、モールド成形時に前記第1の冷却部材を支持する第1の金型本体と、モールド成形時に前記第2の冷却部材を支持する第2の金型本体と、前記第1の金型本体側から延び、前記第2の冷却部材側に設けられた第2の金属ブロックを押圧する第1の押圧ピンと、前記第2の金型本体側から延び、前記第1の冷却部材側に設けられた第1の金属ブロックを押圧する第2の押圧ピンと、を有し、
前記弾性部材は、モールド成形時に前記第1の金属ブロックが前記第2の押圧ピンにより押圧されかつ前記第2の金属ブロックが前記第1の押圧ピンにより押圧されることにより引っ張られて弾性変形し、
前記距離が所望距離に維持されるように前記弾性部材が弾性変形した状態で前記モールド樹脂が充填されることにより前記パワーモジュールを成形することを特徴とする請求項10記載のパワーモジュールの成形方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の金属ブロックは、前記第1及び第2の押圧ピン同士が干渉しないように互いに異なるサイズを有することを特徴とする請求項11記載のパワーモジュールの成形方法。
【請求項13】
前記第1及び第2の押圧ピンは、前記第1及び第2の金型本体とは別体で設けられていることを特徴とする請求項11又は12記載のパワーモジュールの成形方法。
【請求項14】
前記手段は、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間で前記半導体素子と該第1及び第2の冷却部材との積層方向に積層され、かつ、該積層方向に直交する直交方向に互いにスライドし得る複数のブロック片からなる多層ブロック部材であり、
前記複数のブロック片は、モールド成形時に前記モールド金型により前記積層方向に圧縮されることにより前記直交方向に互いにスライドし、
前記距離が所望距離に維持されるように前記複数のブロック片が前記直交方向に互いにスライドした状態で前記モールド樹脂が充填されることにより前記パワーモジュールを成形することを特徴とする請求項10記載のパワーモジュールの成形方法。
【請求項15】
前記手段は、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間で塑性変形し得る塑性部材であり、
前記塑性部材は、モールド成形時に前記モールド金型により圧縮されることにより前記半導体素子と前記第1及び第2の冷却部材との積層方向に塑性変形し、
前記距離が所望距離に維持されるように前記塑性部材が塑性変形した状態で前記モールド樹脂が充填されることにより前記パワーモジュールを成形することを特徴とする請求項10記載のパワーモジュールの成形方法。
【請求項16】
半導体素子と、前記半導体素子を挟んで配置される第1及び第2の冷却部材と、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間で弾性変形し得る弾性部材を有し、該第1の冷却部材と該第2の冷却部材との間で前記半導体素子を支持するフレーム部材と、前記第1の冷却部材と前記第2の冷却部材との間に充填されるモールド樹脂と、を備えるパワーモジュールの成形に用いられるモールド金型であって、
前記パワーモジュールのモールド成形時に前記第1の冷却部材を支持する第1の金型本体と、
前記パワーモジュールのモールド成形時に前記第2の冷却部材を支持する第2の金型本体と、
前記第1の金型本体側から延び、前記第2の冷却部材側に設けられた第2の金属ブロックを押圧する第1の押圧ピンと、
前記第2の金型本体側から延び、前記第1の冷却部材側に設けられた第1の金属ブロックを押圧する第2の押圧ピンと、を備え、
前記パワーモジュールのモールド成形時、前記第1の押圧ピンが前記第2の金属ブロックを押圧しかつ前記第2の押圧ピンが前記第1の金属ブロックを押圧することにより、前記弾性部材を引っ張って弾性変形させることを特徴とするパワーモジュール成形用モールド金型。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−62483(P2013−62483A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130772(P2012−130772)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】