パワーモジュール用絶縁放熱基板
【課題】回路層や熱拡散層等として使用される金属層と高熱伝導絶縁粒子との間の接触熱抵抗の増大を抑制できるパワーモジュール用絶縁放熱基板の提供。
【解決手段】一方の面側に搭載される半導体チップからの発熱を、他方の面側に設置される冷却器へと伝熱させるパワーモジュール用絶縁放熱基板Pであって、少なくとも、絶縁樹脂基板1と、当該絶縁樹脂基板の表裏に積層された金属層3,4と、当該絶縁樹脂基板中に配置された高熱伝導絶縁粒子2とを有し、且つ、当該両金属層と高熱伝導絶縁粒子とが、当該高熱伝導絶縁粒子の絶縁樹脂基板からの露出面に設けられた鉤状の凹部に、当該金属層の一部が噛み合わせ状に食い込んだ状態で接続されていることを特徴とするパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【解決手段】一方の面側に搭載される半導体チップからの発熱を、他方の面側に設置される冷却器へと伝熱させるパワーモジュール用絶縁放熱基板Pであって、少なくとも、絶縁樹脂基板1と、当該絶縁樹脂基板の表裏に積層された金属層3,4と、当該絶縁樹脂基板中に配置された高熱伝導絶縁粒子2とを有し、且つ、当該両金属層と高熱伝導絶縁粒子とが、当該高熱伝導絶縁粒子の絶縁樹脂基板からの露出面に設けられた鉤状の凹部に、当該金属層の一部が噛み合わせ状に食い込んだ状態で接続されていることを特徴とするパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子からの発熱量が非常に大きいパワーモジュール用絶縁放熱基板に関し、特に、放熱性の向上及び薄型化を図ったパワーモジュール用絶縁放熱基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高電圧・大電流での動作が可能なIGBTやMOSFET等の半導体チップを搭載してなるパワーモジュールは、当該半導体チップからの発熱量が非常に大きいため、従来より、冷却器(例えば、水冷式の冷却器)を取り付けて、素早く放熱できるような対策が採られてきた。
このようなパワーモジュールの一例(例えば、特許文献1参照)を、図13に示した概略断面図を用いて説明する。
【0003】
当該パワーモジュールPMは、セラミックスからなる絶縁基板20の一方の面に回路層3、他方の面に熱拡散層4を備えた絶縁放熱基板Pgと、当該回路層3上にはんだ18を介して搭載された半導体チップ19と、当該熱拡散層4の下面にはんだ18を介して接合された放熱体22と、当該放熱体22の下面に取付ねじ23によって取り付けられた冷却器8とを有する構成となっており、半導体チップ19からの発熱を、絶縁放熱基板Pg、放熱体22を伝って冷却器8に伝達し、最終的に当該冷却器8内の冷却水9によって外部に放散するという仕組みになっている。
【0004】
因みに、各部材の具体例は以下の通りである。
即ち、『絶縁基板20』はAlN、Al2O3、Si3N4、SiC等、『回路層3、熱拡散層4、放熱体22』はCu、Al等、『低熱膨張材21』はインバー合金等である。
【0005】
このようなパワーモジュールPMは、近年、特に注目を集めている電気自動車やハイブリッド自動車に使用されるようになり、更なる高出力化と小型化が求められている。
【0006】
そこで、前記要求に応えるための最も簡単な手段としては、単純にセラミックスからなる絶縁基板20の厚さを薄くすることが考えられる。なぜなら、絶縁基板20を薄型化すれば、パワーモジュールPM全体を小型化できるとともに、薄くした分、伝熱抵抗の低抵抗化を図れるからである{即ち、金属からなる回路層3や熱拡散層4よりも伝熱抵抗が高い絶縁基板(セラミックス基板)20が薄くなるため、半導体チップ19からの発熱を素早く冷却器8側に伝えることができる}。
【0007】
しかし、セラミックスは薄くすると非常に割れやすくなるため、薄型化するにも限界があり(例えば、IGBTを搭載する1cm□以上の基板としてAlN基板を採用した場合、最低でも0.6〜0.7mm程度の厚さが必要である)、その結果、絶縁基板20として、熱伝導率の高いAlN(熱伝導率170W/mK)を使用したとしても、期待される程の放熱効果は得られないというものであった。
【0008】
従って、板厚を薄くしても割れにくい絶縁樹脂基板を絶縁基板として用い、当該絶縁樹脂基板の表裏に形成される回路層と熱拡散層との間を、「高熱伝導性」「絶縁性」「硬質性」に優れるセラミックス等からなる粒子(以後これを「高熱伝導絶縁粒子」と呼ぶことにする)で熱的に接続させるというのが、パワーモジュールの薄型化と伝熱抵抗の低抵抗化を図る手段として有効であると考えられ、既にこのような構成のものが特許文献2に開示されている(図14参照)。
【0009】
図14は、パワーモジュールに用いられる絶縁放熱基板Ph(図13に示した「絶縁放熱基板Pg」に相当)の要部拡大断面図を示したものであり、その構成は、エポキシやポリイミドなどの熱硬化性樹脂からなる絶縁樹脂基板1と、当該絶縁樹脂基板1の表裏にそれぞれ積層された回路層3、熱拡散層4(「回路層3」「熱拡散層4」は、特許文献1と同様にCuやAl等からなる)と、当該絶縁樹脂基板1よりも厚く、且つ、当該回路層3、熱拡散層4よりも硬い高熱伝導絶縁粒子2a[ダイヤモンド、SiC、Si3N4、AlN、BN等の熱伝導率がAl2O3よりも高い50W/mK以上の粒子(好ましく150W/mK以上の粒子)]とを有するものである。そして、絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bから突出する高熱伝導絶縁粒子2aの突出部13をそれぞれ回路層3、熱拡散層4に貫入させ、両者の接触熱抵抗を小さくする構造とすることによって(即ち、貫入させることにより、単に両者を接触させる構造よりも接触熱抵抗を小さくできる)、絶縁樹脂基板1の熱伝導率の低さ(例えば、Al2O3などの高熱伝導フィラー入りのエポキシ樹脂の場合でも、熱伝導率は3W/mK程度である)を補い、以て、期待される放熱効果を得ようとするもである。
【0010】
しかし、図14の構成においては、絶縁層全体(高熱伝導絶縁粒子2aを含む絶縁樹脂基板1に相当)の熱伝導率は高いものの、回路層3及び熱拡散層4と、当該高熱伝導絶縁粒子2aとの間に無視できないほどの大きな接触熱抵抗が存在するため、図13に示した絶縁放熱基板Pgと同様に、期待される程の放熱効果は得られないというのが実情であった。
【0011】
その理由は、回路層3及び熱拡散層4と、高熱伝導絶縁粒子2aとの接続構造に原因があった。
この原因について、回路層3と高熱伝導絶縁粒子2aとの接触界面を示した図15を用いて説明する(熱拡散層4についても同様の接続構造となるため、説明の便宜上、熱拡散層4と高熱伝導絶縁粒子2aとの接続構造については説明を省略した)。
【0012】
回路層3と高熱伝導絶縁粒子2aとの貫入接続は、図15(a)に示したように、高熱伝導絶縁粒子2aに対して、後に回路層3となる金属箔3a(図に示した部分は、金属箔3aのマット面、即ち、アンカーパターン6を示したものである)を矢印の方向にプレス加工することによって行われるのであるが、当該金属箔3a(回路層3)と高熱伝導絶縁粒子2aとの接続構造は、図15(b)に示したように、表面状態が単なる凹凸形状24(大判の高熱伝導材を粒子状に粉砕したときの凹凸形状)のままの高熱伝導絶縁粒子2aを、金属箔3a(回路層3)に貫入させるだけの構造であったため、両者間の接続強度は殆どないに等しいものであった。このような接続状態で、絶縁樹脂基板1が半導体チップからの発熱により膨張するため{即ち、回路層3と高熱伝導絶縁粒子2aとの接触界面25(図15(b)参照)を押し広げてしまう}、回路層3と高熱伝導絶縁粒子2aとの接触界面25に図15(c)に示したような剥離部26を発生させ、両者間の接触熱抵抗の増大を引き起こしていたのである。尚、図15(c)においては、剥離現象を分かりやすくするために、実際のものよりも誇張した状態を示した。
【0013】
因みに、特許文献2には、回路層3及び熱拡散層4と、高熱伝導絶縁粒子2aとの接続性を向上させるために、当該高熱伝導絶縁粒子2aの表面に、CuめっきやNiめっきを施すという手段が示されているが、金属同士を熱圧着してもそれほど高い接続強度は得られず、そもそも絶縁樹脂よりもめっきの密着性が低いセラミックス等からなる高熱伝導絶縁粒子2aの表面状態が、上記でも説明したように、単なる凹凸形状24のままであるため、当該高熱伝導絶縁粒子2aとめっきとの接触状態は極めて不安定なものとなり、結局、回路層3及び熱拡散層4と、高熱伝導絶縁粒子2aとの接続強度を満足のいく強度とするには至らなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−153075号公報
【特許文献2】特開2005−236266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、パワーモジュール用絶縁放熱基板の絶縁基板として絶縁樹脂基板を用いた場合においても、金属層(回路層や熱拡散層等として使用される金属層)と高熱伝導絶縁粒子との間の接触熱抵抗の増大を抑制できるパワーモジュール用絶縁放熱基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、一方の面側に搭載される半導体チップからの発熱を、他方の面側に取り付けられる冷却器へと伝熱させるパワーモジュール用絶縁放熱基板であって、少なくとも、絶縁樹脂基板と、当該絶縁樹脂基板の表裏に積層された金属層と、当該絶縁樹脂基板中に配置された高熱伝導絶縁粒子とを有し、且つ、当該両金属層と高熱伝導絶縁粒子とが、当該高熱伝導絶縁粒子の絶縁樹脂基板からの露出面に設けられた鉤状の凹部に、当該金属層の一部が噛み合わせ状に食い込んだ状態で接続されていることを特徴とするパワーモジュール用絶縁放熱基板により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体チップからの発熱が絶縁放熱基板に流入した場合においても、高熱伝導絶縁粒子と金属層との間の接触熱抵抗を常温時とほぼ同じ状態に維持することができ、以て、半導体チップから発せられた熱を素早く冷却器側へ逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための第一の実施の形態を説明するための概略断面製造工程図。
【図2】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板に用いられる高熱伝導絶縁粒子の表面状態を説明するための概略断面図。
【図3】金属箔と高熱伝導絶縁粒子との接続状態を説明するための要部拡大断面図。
【図4】図1(e)と同様のパワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための概略断面製造工程図。
【図5】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板に直接冷却器を取り付けた構成例を説明するための概略断面図。
【図6】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための第二の実施の形態を説明するための概略断面製造工程図。
【図7】金属層としてめっきを析出した場合の金属層と高熱伝導絶縁粒子との接続状態を説明するための要部拡大断面図。
【図8】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための第三の実施の形態を説明するための概略断面製造工程図。
【図9】図8(c)の状態を詳しく説明するための要部拡大断面図。
【図10】図8(e)と同様のパワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための概略断面製造工程図。
【図11】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための第四の実施の形態を説明するための概略断面製造工程図。
【図12】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板の第五の実施の形態を説明するための概略断面図。
【図13】従来のパワーモジュールの構成を説明するための概略断面図。
【図14】従来のパワーモジュールに用いられる絶縁放熱基板の問題点を解決する従来のパワーモジュール用絶縁放熱基板の構成を説明するための概略断面図。
【図15】図14のパワーモジュール用絶縁放熱基板の問題点を説明するための要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第一の実施の形態を図1(e)を用いて説明する。尚、従来技術と同じ部位には同じ符号を付すようにした。
【0020】
図1(e)は、本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板(以降これを単に「絶縁放熱基板」と表記する)Pの概略断面図を示したもので、当該絶縁放熱基板Pは、絶縁樹脂基板1と、当該絶縁樹脂基板1の表面に積層された回路層3及び同基板1の裏面に積層された熱拡散層4と、当該絶縁樹脂基板1中に配置された高熱伝導絶縁粒子2とを有し、且つ、当該回路層3及び熱拡散層4と、高熱伝導絶縁粒子2とが、当該高熱伝導絶縁粒子2の絶縁樹脂基板1表面A及び裏面Bからの突出露出面、すなわち突出部13の表面に設けられた鉤状の凹部5に、当該回路層3及び熱拡散層4の一部が噛み合わせ状に食い込んだ状態で接続されているものである(図3(b)参照)。
【0021】
本発明において、「鉤状の凹部」とは、図2及び図3(a)に示されているように、予め水酸化ナトリウムや弗酸などで処理して高熱伝導絶縁粒子2の表面に形成された凹部5で、その内部において開口部5aの間口エリアから外れた抉れ部5bを有するものを云う。
【0022】
続いて、上記絶縁放熱基板Pの製造方法を図1を用いて説明する。
【0023】
まず、図1(a)に示したように、金属箔4aの一方の面に、大きさをある程度揃えた高熱伝導絶縁粒子2(当該大きさとしては、後に形成される絶縁樹脂基板の厚さよりも厚みがあり、且つ、当該絶縁樹脂基板の表裏に金属層を積層した際に、当該金属層を貫通しない程度の大きさである)で、その表面に鉤状の凹部5(図2,図3(a)参照)が予め形成されたものを、配置位置に偏りが生じないようにマスクなどを介して配置した後、当該金属箔4a上に配置された高熱伝導絶縁粒子2を挟むように金属箔3aを配置し(図1(b)参照)、次いで、後に金属箔3aと金属箔4aとの間に形成される絶縁樹脂基板1の厚さ分のスペースが空くようにスペーサー等(図示省略)を介してプレス加工を行い、当該高熱伝導絶縁粒子2の一部(図1(e)に示した「突出部13」に相当)を金属箔3a、4aに突入させるとともに(図1(c)参照)、当該高熱伝導絶縁粒子2の表面に設けられた鉤状の凹部5に、当該金属箔3a及び金属箔4aの一部を噛み合せ状に食い込ませる(図3(a),(b)参照)。
【0024】
ここで、金属箔3a、4aの材料としては、熱伝導率が高く、高熱伝導絶縁粒子2よりも軟らかいものであれば特に限定されるものではないが、一般的に使用されるCuやAl等(例えば、厚さ150μm〜300μm程度のCu箔やAl箔等)が熱伝導性や電気特性などを考慮した場合に好ましく、また、高熱伝導絶縁粒子2の材料としては、絶縁性と比較的高い熱伝導率を兼ね備えたセラミックスが使用でき、例えば、Al2O3(熱伝導率:20W/mk)、SiC、SiN(熱伝導率:70W/mk)、AlN(熱伝導率:170W/mk)等が挙げられるが、必要とする放熱性能に応じて選択することができる。
【0025】
次に、図1(c)に示した矢印のように、金属箔3a、4aの間に液状絶縁樹脂1aを流し込んだ後、当該液状絶縁樹脂1aを硬化して絶縁樹脂基板1とする(図1(d)参照)。
【0026】
ここで、当該液状絶縁樹脂1a(絶縁樹脂基板1)としては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレン、液晶ポリマー、アクリル、ポリカーボネート、シリコーン等が挙げられるが、特に、耐熱性、応力緩和性がより優れているという点で液晶ポリマーが好ましい。
尚、図には示していないが、上記樹脂中に、高熱伝導絶縁粒子2と同質材料で、且つ、当該高熱伝導絶縁粒子2よりも径が小さいフィラーを、絶縁樹脂基板1の応力緩和性に影響が出ない範囲で充填するのが、高熱伝導粒子2を含む絶縁樹脂基板1の全熱抵抗を下げる(即ち、熱伝導率を上げる)上で好ましい。
【0027】
そして最後に、金属箔3a、4aに対して周知のフォトエッチングプロセス(当該金属箔3a、4aの表面にエッチングレジスト用のドライフィルムをラミネートした後、露光・現像でエッチングレジストパターンを形成し、次いで、エッチングレジストパターンから露出した金属箔3a、4aをエッチング除去して、配線回路を形成する工程)で回路形成を施し、回路層3と熱拡散層4とを形成することによって、図1(e)の絶縁放熱基板Pを得る。
【0028】
本実施の形態の注目すべき点は、金属箔3a、4a(回路層3や熱拡散層4等として使用される金属箔)と熱的に接続される高熱伝導絶縁粒子2として、表面に鉤状の凹部5が形成されたものを用い、当該金属箔3a、4aと、当該高熱伝導絶縁粒子2との接続構造として、当該金属箔3a、4aの一部を当該鉤状の凹部5に噛み合わせ状に食い込ませた点である(図1(b)〜(c)工程で行われるプレス工程の要部拡大断面図を示した図3(a)、(b)参照)。
【0029】
これにより、半導体チップから発せられた熱が絶縁放熱基板Pに流入し、当該絶縁放熱基板Pの絶縁樹脂基板1が膨張した場合においても、高熱伝導絶縁粒子2と金属箔3a,4a(即ち、回路層3及び熱拡散層4)との接触熱抵抗を常温時と略同じ状態に維持することができるため、当該熱を素早く冷却器側へ逃がすことができる(即ち、絶縁樹脂基板1における縦方向の膨張量が高熱伝導絶縁粒子2のそれより大きくても、高熱伝導絶縁粒子2と金属箔3a,4aとの接触部にアンカー効果が働き、両者の接触界面に図15(c)に示したような剥離部26が発生しないため、両者の接触熱抵抗の増大を抑制できる)。
【0030】
次に、図1(e)に示した絶縁放熱基板Pと同様の構造の絶縁放熱基板Paを得るための他の製造方法について図4を用いて説明する(使用される金属箔、高熱伝導絶縁粒子、絶縁樹脂の種類などは図1で説明したのと同じであるため、その説明については省略する)。
【0031】
まず、図4(a)に示したように、金属箔4aの表面に半硬化状態の絶縁樹脂フィルム1bを積層し、次いで、図4(b)に示したように、表面に鉤状の凹部5が形成された高熱伝導絶縁粒子2を当該絶縁樹脂フィルム1b上に配置する(配置方法としては、図1で説明したのと同様にマスクなどを介して行う)。
【0032】
次に、絶縁樹脂フィルム1上に配置された高熱伝導絶縁粒子2を金属箔4aと挟むように金属箔3aを配置し(図4(c)参照)、次いで、プレス加工を行うことによって、当該高熱伝導絶縁粒子2の一部[図4(e)に示した突出部13に相当]を金属箔3a、4aに突入させるとともに、当該高熱伝導絶縁粒子2の表面に設けられた鉤状の凹部5に、当該金属箔3a及び金属箔4aの一部を噛み合せ状に食い込ませ、当該絶縁樹脂フィルム1bを硬化させて絶縁樹脂基板1とする(図4(d)参照)。
【0033】
そして最後に、金属箔3a、4aに回路形成を施し、回路層3及び熱拡散層4を形成することによって、図1(e)のものと同様の構造からなる絶縁放熱基板Paを得る(図4(e)参照)。
【0034】
以上のように、図4の製造方法においては、図1(c)の工程のように、絶縁樹脂基板1を形成する手段として液状絶縁樹脂1aを金属箔3a、4a間に流し込むといった手間のかかる工程が不要になるため、図1の製造工程よりも容易に絶縁放熱基板を得ることができる。
【0035】
次に、本発明の第二の実施の形態を図6(e)を用いて説明する。
【0036】
図6(e)は、本発明絶縁放熱基板Pbの概略断面図を示したもので、当該絶縁放熱基板Pbは、回路層11及び熱拡散層12を、無電解めっき10、電解めっき11a、12aから形成した以外は、図1(e)、図4(e)の構造のものと同様のものである。
【0037】
続いて、上記絶縁放熱基板Pbの製造方法を図6を用いて説明する。
【0038】
まず、図1(a)〜(d)又は図4(a)〜(d)に示した製造工程により、図1(d)又は図4(d)と同じ構造の基板を作製し(図6(a)参照)、次いで、絶縁樹脂基板1の表裏に積層された金属箔3a、4aをエッチングにより除去する(図6(b)参照)。
【0039】
次に、過マンガン酸ナトリウム系あるいは過マンガン酸カリウム系のデスミア処理を行うことによって、絶縁樹脂基板1の表面を粗化処理するとともに、露出している高熱伝導絶縁粒子2の表面に設けられた鉤状の凹部5内に巻き込まれた樹脂を除去する(図6(b)参照)。
【0040】
次に、図6(c)に示したように、厚さ0.3〜3μmの無電解めっき10(例えば「無電解Cuめっき」)を全面に析出させた後、厚さ150μm〜300μm程度の電解めっき11a、12a(例えば、「電解Cuめっき」)を析出させる(図6(d)参照)。
【0041】
そして最後に、無電解めっき10、電解めっき11a及び12aに対して回路形成を施し、回路層11及び熱拡散層12を形成することによって、図6(e)の絶縁放熱基板Pbを得る。
【0042】
本実施の形態の注目すべき点は、回路層11及び熱拡散層12を無電解めっき10及び電解めっき11a、12aで形成した点である。
【0043】
これにより、回路層3及び熱拡散層4を金属箔から形成する図1、図4の構成で見られた鉤状の凹部5内の金属未充填部7(図3(b)参照)を無くすことができるため(図7参照)、絶縁放熱基板P、Paよりも初期接触熱抵抗を小さくすることができる(即ち、熱を素早く冷却器側に逃がすことができる)。
【0044】
また、上記第二の実施の形態では、無電解めっき10として「無電解Cuめっき」を析出する例を示したが、当該無電解Cuめっきよりも結晶粒径が小さい「無電解Niめっき」を析出すれば、無電解Cuめっきよりも緻密なめっき膜を析出できるため、初期接触熱抵抗をより小さくすることができる。
尚、当該無電解Niめっきの種類としては、無電解NiPめっき、無電解NiBめっき等、何れのNiめっきも利用可能であるが、中でも熱伝導率が最も高いNiBめっきを選択するのがより初期接触熱抵抗を小さくできる点で好ましい。
【0045】
因みに、上記第二の実施の形態における回路層11および熱拡散層12の形成手段として、無電解めっき10上に電解めっき11a及び12aを析出させた後、エッチング(フォトエッチングプロセス:サブトラクティブ法)により形成する例を示したが、パターンめっきで回路を形成するアディティブ法(無電解めっき10を全面に形成した後、めっきレジストパターンを形成し、次いで、めっきレジストパターン非形成部に電解めっき11a、12aを析出させた後、めっきレジストパターンの除去及び当該めっきレジストパターンの除去によって露出した無電解めっき10をフラッシュエッチングで除去する回路形成手段)で形成することももちろん可能である。
【0046】
次に、本発明の第三の実施の形態を図8(f)を用いて説明する。
【0047】
図8(f)は、本発明絶縁放熱基板Pcの概略断面図を示したもので、当該絶縁放熱基板Pcは、高熱伝導絶縁粒子2の露出面が、図8(c)に示したように、当該絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bから突出することなく当該表面A及び裏面Bと面一となっている以外は、図6(e)の構造のものと同様のものである。
【0048】
続いて、上記絶縁放熱基板Pcの製造方法を図8を用いて説明する。
【0049】
まず、図8(b)の構造の基板を、図6(a)〜図6(b)と同じ工程により形成する。
【0050】
次に、図8(b)に示したように、絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bから突出した高熱伝導絶縁粒子2の突出部13を、平面研磨やブラスト処理などにより除去することによって、当該絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bと、当該高熱伝導絶縁粒子2の露出面とを平坦な面一にする(図8(c)参照)。
【0051】
次に、デスミア処理を行った後、絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bと平坦な高熱伝導絶縁粒子2の露出面を粗化処理して鉤状の凹部5を形成し(図9に示した要部拡大断面図参照。因みに、符号14は金属箔3a、4aをエッチング除去した際に絶縁樹脂基板1に形成されたアンカーパターン6と同形状の「粗化層」である)、次いで、図8(d)に示した無電解めっき10の析出から図8(f)の回路形成までの工程を図6(c)〜図6(e)と同じ工程で行うことによって、図8(f)の絶縁放熱基板Pcを得る。
【0052】
本実施の形態の注目すべき点は、絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bと、高熱伝導絶縁粒子2の露出面とを面一にし、当該高熱伝導絶縁粒子2を回路層11及び熱拡散層12内に突入させない構造とした点である。
【0053】
これにより、金属よりも熱伝導率の低い高熱伝導絶縁粒子2が、金属からなる回路層11及び熱拡散層12側に突出しないため、当該高熱伝導絶縁粒子2が回路層3及び熱拡散層4側に突出する第一、第二の実施の形態のものよりも熱を素早く逃がすことができる。
【0054】
次に、図8(f)に示した絶縁放熱基板Pcと同様の構造の絶縁放熱基板Pdを得るための他の製造方法について図10を用いて説明する。尚、図10に示した製造工程図は、図8の工程と異なる工程のみを示したため、共通の工程に関しては、図8の製造工程図を用いることにした。また、最終的に得られる絶縁放熱基板Pdの構成も、図8(f)のものと同様の構成となるため、図8(f)を共通図面として用いることにした。
【0055】
まず、図8(a)の基板の金属箔3a、4aにエッチング処理を施し、当該金属箔3a、4aを、例えば1〜5μm程度まで薄層化する(図10(a)の薄層化された金属箔3b、4b参照)。
【0056】
次に、図10(a)の状態の基板に対して、平面研磨を施すことにより、絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bと、当該高熱伝導絶縁粒子2の露出面とを平坦な面一にする(図10(b)参照)。尚、図10(b)に示した絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bの状態は、図10(c)の要部拡大断面図に示したように、金属箔3a、4aのアンカーパターン6が残った状態となっている。
因みに、上記平坦な面一化方法では、金属箔3a、4aを薄層化してから研磨を行う例を示したが、箔層化せずに研磨のみで平坦な面一にすることももちろん可能である。
【0057】
次に、デスミア処理を行った後、図10(d)に示したように、高熱伝導絶縁粒子2の絶縁樹脂基板1からの露出面を粗化して鉤状の凹部5を形成し、次いで、図10(e)に示した無電解めっき10の析出工程以降の工程を、図8(d)〜図8(f){即ち、図6(c)〜図6(e)}と同じ工程で行うことによって、図8(f)の絶縁放熱基板Pdを得る。
【0058】
図10の製造工程で得られた絶縁放熱基板Pdと、図8の製造工程で得られた絶縁放熱基板Pcとは、放熱性能的には同じであるが、絶縁樹脂基板1に直接無電解めっき10を析出させる絶縁放熱基板Pcと比較した場合(図9、図8(d)参照)、無電解めっき10を金属箔3a、4aのアンカーパターン6を介して析出させる絶縁放熱基板Pdの方が、当該無電解めっき10と絶縁樹脂基板1との密着強度を向上できるという点で優れている(図10(c)、(e)参照)。
【0059】
次に、本発明の第四の実施の形態を図11(d)を用いて説明する。
【0060】
図11(d)は、本発明の絶縁放熱基板Peの概略断面図を示したもので、当該絶縁放熱基板Peは、絶縁樹脂基板として補強繊維15入りの絶縁樹脂基板1dを用い(ここでは、半導体チップ19の搭載エリアに対応する絶縁樹脂17のみからなる部分も含んで絶縁樹脂基板1dとする)、また、高熱伝導絶縁粒子2の配置位置を、当該半導体チップ19の搭載エリアに対応する部分にのみ配置した以外は、図1(e)や図4(e)に示したものと同様のものである。
【0061】
続いて、上記絶縁放熱基板Peの製造方法を図11を用いて説明する。
【0062】
まず、金属箔4aの一方の面に、後に搭載される半導体チップ19の搭載エリアに対応した部分に開口部16を有する補強繊維15入りの絶縁樹脂フィルム1c(例えばプリプレグ等)を配置し(図11(a)参照)、次いで、当該開口部16内に、表面に鉤状の凹部5が形成された高熱伝導絶縁粒子2を充填する(図11(b)参照)。
【0063】
次に、当該絶縁樹脂フィルム1cの開口部16内に充填された高熱伝導絶縁粒子2を金属箔4aと挟むように金属箔3aを配置し(図11(b)参照)、次いで、プレス加工を行うことによって、当該高熱伝導絶縁粒子2の一部を金属箔3a、4aに突入させるとともに、当該高熱伝導絶縁粒子2の表面に設けられた鉤状の凹部5に、当該金属箔3a及び金属箔4aの一部を噛み合せ状に食い込ませ、当該絶縁樹脂フィルム1cを硬化させて絶縁樹脂基板1dとする(図11(c)参照)。尚、図11(c)に示した符号17はプレス加工の際に絶縁樹脂フィルム1cから流れ出た「絶縁樹脂」である。
【0064】
そして最後に、金属箔3a、4aに対して回路形成を施し、回路層3と熱拡散層4とを形成することによって、図11(d)の絶縁放熱基板Peを得る。
【0065】
本実施の形態の注目すべき点は、高熱伝導絶縁粒子2を、硬化後に絶縁樹脂基板1dとなる絶縁樹脂フィルム1cに設けた開口部16をガイドにして、半導体チップの搭載エリアに対応する部分にのみ配置するようにした点である。
【0066】
これにより、半導体チップの搭載エリアに対応する部分のみに容易に高熱伝導絶縁粒子を配置することができ、また、高価な高熱伝導絶縁粒子の使用量を大幅に削減できるため、絶縁放熱基板を安価なものとすることができる。
【0067】
更に、絶縁樹脂基板として補強繊維入りの絶縁樹脂基板(例えば、ガラス織布あるいはガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグ等の絶縁樹脂フィルムを硬化させたもの)を用いたことも注目すべき点である。
これにより、パワーモジュールが大型の場合においても反りを抑制することができる。
【0068】
尚、図11の構成においては、絶縁樹脂基板の表裏に形成される回路層3及び熱拡散層4の形成手段として、積層された金属箔をエッチングして回路形成する例のみを説明したが、もちろん、図6の構成と同様に、めっきで形成することも可能である。
【0069】
次に、本発明の第五の実施の形態を図12を用いて説明する。
【0070】
図12は、本発明の絶縁放熱基板Pfの概略断面図を示したもので、当該絶縁放熱基板Pfは、絶縁樹脂基板として補強繊維15入りの絶縁樹脂基板1dを用い(ここでは、半導体チップ19の搭載エリアに対応する絶縁樹脂17のみからなる部分も含んで絶縁樹脂基板1dとする)、また、高熱伝導絶縁粒子2の配置位置を 当該半導体チップ19の搭載エリアに対応する部分にのみ配置した以外は、図8(f)に示した絶縁放熱基板Pc、Pdと同様のものである。
【0071】
尚、図12の絶縁放熱基板Pfの製造方法に関しては、図11(c)の状態の基板を図8(a)の工程に適用すれば、図8、図10の製造工程により容易に得られるため、その説明については省略する。
【0072】
因みに、図11、図12の構成においては、絶縁樹脂フィルムとして、補強繊維入りのものを用いて説明したが、パワーモジュールが大型でなく、反りの懸念が無い場合には、補強繊維が入っていない絶縁樹脂フィルムを用いることも可能である。
【0073】
本発明を説明するに当たって、高熱伝導絶縁粒子と金属層(回路層、熱拡散層等としての金属層)との間の接触熱抵抗の増大を抑制する手段として、高熱伝導絶縁粒子に設けた鉤状の凹部に、金属層の一部を噛み合わせ状に食い込ませる例を説明してきたが、絶縁樹脂基板に用いる絶縁樹脂として、横方向の線膨張係数よりも縦方向の線膨張係数が小さい異方性線膨張樹脂を用いれば、絶縁放熱基板の放熱信頼性をより向上させることができる。
【0074】
また、金属箔3a、4aを回路形成することによって、回路層3及び熱拡散層4を形成する図1、図4、図11の構成において、当該熱拡散層4として、金属層内部に冷却水9を備えた冷却器8を直接積層すれば、回路層3から冷却器8への伝熱距離を短くでき、以て、半導体チップからの発熱をより一層素早く放散できる(図5参照)。
【0075】
尚、高熱伝導絶縁粒子として球状のものを用いて説明してきたが、当該高熱伝導絶縁粒子が塊状であることをイメージし易くするために球状にしただけであって、実際の形状と異なることはいうまでもない。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明の絶縁放熱基板の構成をより詳しく説明する。
尚、実施例としては、図4(e)と図12に示した絶縁放熱基板Pa、Pfの製造例を用いることとし、また、当該絶縁放熱基板Pfの構成における絶縁樹脂基板として、絶縁放熱基板Paと同様に内部に補強繊維が含まれていない場合の構成について説明する。
【0077】
実施例1:図4(e)に示した絶縁放熱基板Paの製造例。
まず、後に熱拡散層として使用される厚さ0.3mm、熱伝導率400W/mKからなる無酸素銅箔(住友金属鉱山伸銅社製)の一方の面に、厚さ0.15mm、熱伝導率3W/mKの絶縁樹脂(エポキシ)フィルム(新神戸電機社製:HTS−3W)を配置し、次いで、当該絶縁樹脂フィルムの表面に、マスクを介して高熱伝導絶縁粒子をムラなく配置した。尚、高熱伝導絶縁粒子としては、大きさが約φ0.35mm、熱伝導率が170W/mKからなるAlNの破砕品(トクヤマ社製)を、濃度1mol/l(常温)の水酸化ナトリウム溶液に30分浸漬処理して、表面に鉤状の凹部を形成せしめたものを用いた。
【0078】
次に、高熱伝導絶縁粒子が配置された絶縁樹脂フィルムの表面に、後に回路層となる銅箔(上記銅箔と同じもの)を配置した後、温度200℃、圧力5MPaの条件で積層プレス加工を行い、次いで、塩化第二銅溶液によるエッチング処理で回路層及び熱拡散層を形成することによって、図4(e)の構成の絶縁放熱基板を得た。
【0079】
上記実施例1の製造方法で得られた絶縁放熱基板の断面観察を行なった結果、僅かに銅箔未充填部が確認されたが、高熱伝導絶縁粒子の表面に設けられた鉤状の凹部に、回路層及び熱拡散層としての銅箔の一部が噛み合わせ状に食い込んでいることが確認できた。
【0080】
実施例2:図12に示した絶縁放熱基板Pfの製造例。
まず、厚さ18μmの銅箔(3EC−III:三井金属社製)の一方の面に、半導体チップの搭載エリアに対応する部分に10mm□の開口部が形成された厚さ0.15mm、熱伝導率3W/mKの絶縁樹脂フィルム(新神戸電機社製:HTS−3W)を配置し、次いで、当該開口部内に堆積比率が約60%となるように高熱伝導絶縁粒子(上記実施例1と同様のもの)を配置した。
【0081】
次に、高熱伝導絶縁粒子が配置された絶縁樹脂フィルムの表面に、厚さ18μmの銅箔(上記と同様の銅箔)を配置した後、温度200℃、圧力5MPaの条件で積層プレス加工を行い、次いで、薄板に適した4軸平面研磨機にて研磨(当該研磨では、セラミックバフ♯800を使用)を行い、高熱伝導絶縁粒子の露出面と絶縁樹脂基板の表面とを平坦な面一にした。
【0082】
次に、過マンガン酸ナトリウム溶液でデスミア処理を行うことによって、高熱伝導絶縁粒子の露出面に付着した樹脂(研磨処理で発生した樹脂)を除去するとともに絶縁樹脂基板の表面を粗化した。
【0083】
次に、上記デスミア処理後の基板を、濃度1mol/l(常温)の水酸化ナトリウム溶液に30分浸漬処理して、高熱伝導絶縁粒子の露出面に鉤状の凹部を形成した。
【0084】
次に、下記の無電解銅めっき工程(1)〜(11)を行なって1μmの無電解銅めっきを析出させた後、硫酸銅めっき浴による電解銅めっき処理で300μmの電解銅めっきを析出させ、次いで、塩化第二銅溶液によるエッチング処理で回路層及び熱拡散層を形成することによって、図12の構成の絶縁放熱基板を得た。
≪無電解銅めっき工程≫
(1)界面活性処理
コンディショナー(OPC−370コンディクリーン:奥野製薬社製)、濃度100ml/l、処理温度65℃、処理時間5分
(2)水洗
(3)ソフトエッチング:過水硫酸系
(4)水洗
(5)酸洗浄
濃度100ml/l(98%濃硫酸)、処理温度25℃、処理時間2分
(6)触媒付与(以下の工程を順次行う)
1)プリディップ{OPC−SALM(奥野製薬社製)、濃度260g/l、処理温度25℃、処理時間2分}
2)触媒付与{OPC−SALM(奥野製薬社製)、濃度260g/l、処理温度25℃、処理時間5分}⇒{OPC−80キャタリスト(奥野製薬社製)、濃度50ml/l}
(7)水洗
(8)触媒活性化処理
アクセラレーター{OPC−555(奥野製薬社製)、濃度100ml/l、処理温度25℃、処理時間7分}
(9)水洗
(10)無電解銅めっき処理
処理温度30℃、処理時間20分、
◎ 薬品名
1)ATSアドカッパーIW−A(濃度50ml/l)
2)ATSアドカッパーIW−M(濃度80ml/l)
3)ATSアドカッパーC(濃度10ml/l)
4)無電解銅R−N(濃度3ml/l)
(11)水洗・乾燥
【0085】
上記実施例2の製造工程で得られた絶縁放熱基板の断面観察を行なった結果、実施例1の構成で見られた銅箔未充填部がなく、鉤状の凹部にめっきが緻密に充填されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0086】
1、1d:絶縁樹脂層
1a:液状絶縁樹脂
1b:絶縁樹脂フィルム
1c:補強基材入り絶縁樹脂フィルム
2、2a:高熱伝導絶縁粒子
3a、4a:金属箔
3b、4b:薄層化された金属箔
3、11:回路層
4、12:熱拡散層
5:鉤状の凹部
6:アンカーパターン
7:金属未充填部
8:冷却器
9:冷却水
10:無電解めっき層
11a、12a:電解めっき層
13:突出部
14:粗化層
15:補強基材
16:開口部
17:絶縁樹脂
18:はんだ
19:半導体チップ
20:絶縁基板
21:低熱膨張材
22:放熱体
23:取付ねじ
24:単なる凹凸形状
25:接触界面
26:剥離部
P、Pa、Pb、Pc、Pd、Pe、Pf、Pg、Ph:パワーモジュール用絶縁放熱基板
PM:パワーモジュール
A:絶縁樹脂層の表面
B:絶縁樹脂層の裏面
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子からの発熱量が非常に大きいパワーモジュール用絶縁放熱基板に関し、特に、放熱性の向上及び薄型化を図ったパワーモジュール用絶縁放熱基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高電圧・大電流での動作が可能なIGBTやMOSFET等の半導体チップを搭載してなるパワーモジュールは、当該半導体チップからの発熱量が非常に大きいため、従来より、冷却器(例えば、水冷式の冷却器)を取り付けて、素早く放熱できるような対策が採られてきた。
このようなパワーモジュールの一例(例えば、特許文献1参照)を、図13に示した概略断面図を用いて説明する。
【0003】
当該パワーモジュールPMは、セラミックスからなる絶縁基板20の一方の面に回路層3、他方の面に熱拡散層4を備えた絶縁放熱基板Pgと、当該回路層3上にはんだ18を介して搭載された半導体チップ19と、当該熱拡散層4の下面にはんだ18を介して接合された放熱体22と、当該放熱体22の下面に取付ねじ23によって取り付けられた冷却器8とを有する構成となっており、半導体チップ19からの発熱を、絶縁放熱基板Pg、放熱体22を伝って冷却器8に伝達し、最終的に当該冷却器8内の冷却水9によって外部に放散するという仕組みになっている。
【0004】
因みに、各部材の具体例は以下の通りである。
即ち、『絶縁基板20』はAlN、Al2O3、Si3N4、SiC等、『回路層3、熱拡散層4、放熱体22』はCu、Al等、『低熱膨張材21』はインバー合金等である。
【0005】
このようなパワーモジュールPMは、近年、特に注目を集めている電気自動車やハイブリッド自動車に使用されるようになり、更なる高出力化と小型化が求められている。
【0006】
そこで、前記要求に応えるための最も簡単な手段としては、単純にセラミックスからなる絶縁基板20の厚さを薄くすることが考えられる。なぜなら、絶縁基板20を薄型化すれば、パワーモジュールPM全体を小型化できるとともに、薄くした分、伝熱抵抗の低抵抗化を図れるからである{即ち、金属からなる回路層3や熱拡散層4よりも伝熱抵抗が高い絶縁基板(セラミックス基板)20が薄くなるため、半導体チップ19からの発熱を素早く冷却器8側に伝えることができる}。
【0007】
しかし、セラミックスは薄くすると非常に割れやすくなるため、薄型化するにも限界があり(例えば、IGBTを搭載する1cm□以上の基板としてAlN基板を採用した場合、最低でも0.6〜0.7mm程度の厚さが必要である)、その結果、絶縁基板20として、熱伝導率の高いAlN(熱伝導率170W/mK)を使用したとしても、期待される程の放熱効果は得られないというものであった。
【0008】
従って、板厚を薄くしても割れにくい絶縁樹脂基板を絶縁基板として用い、当該絶縁樹脂基板の表裏に形成される回路層と熱拡散層との間を、「高熱伝導性」「絶縁性」「硬質性」に優れるセラミックス等からなる粒子(以後これを「高熱伝導絶縁粒子」と呼ぶことにする)で熱的に接続させるというのが、パワーモジュールの薄型化と伝熱抵抗の低抵抗化を図る手段として有効であると考えられ、既にこのような構成のものが特許文献2に開示されている(図14参照)。
【0009】
図14は、パワーモジュールに用いられる絶縁放熱基板Ph(図13に示した「絶縁放熱基板Pg」に相当)の要部拡大断面図を示したものであり、その構成は、エポキシやポリイミドなどの熱硬化性樹脂からなる絶縁樹脂基板1と、当該絶縁樹脂基板1の表裏にそれぞれ積層された回路層3、熱拡散層4(「回路層3」「熱拡散層4」は、特許文献1と同様にCuやAl等からなる)と、当該絶縁樹脂基板1よりも厚く、且つ、当該回路層3、熱拡散層4よりも硬い高熱伝導絶縁粒子2a[ダイヤモンド、SiC、Si3N4、AlN、BN等の熱伝導率がAl2O3よりも高い50W/mK以上の粒子(好ましく150W/mK以上の粒子)]とを有するものである。そして、絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bから突出する高熱伝導絶縁粒子2aの突出部13をそれぞれ回路層3、熱拡散層4に貫入させ、両者の接触熱抵抗を小さくする構造とすることによって(即ち、貫入させることにより、単に両者を接触させる構造よりも接触熱抵抗を小さくできる)、絶縁樹脂基板1の熱伝導率の低さ(例えば、Al2O3などの高熱伝導フィラー入りのエポキシ樹脂の場合でも、熱伝導率は3W/mK程度である)を補い、以て、期待される放熱効果を得ようとするもである。
【0010】
しかし、図14の構成においては、絶縁層全体(高熱伝導絶縁粒子2aを含む絶縁樹脂基板1に相当)の熱伝導率は高いものの、回路層3及び熱拡散層4と、当該高熱伝導絶縁粒子2aとの間に無視できないほどの大きな接触熱抵抗が存在するため、図13に示した絶縁放熱基板Pgと同様に、期待される程の放熱効果は得られないというのが実情であった。
【0011】
その理由は、回路層3及び熱拡散層4と、高熱伝導絶縁粒子2aとの接続構造に原因があった。
この原因について、回路層3と高熱伝導絶縁粒子2aとの接触界面を示した図15を用いて説明する(熱拡散層4についても同様の接続構造となるため、説明の便宜上、熱拡散層4と高熱伝導絶縁粒子2aとの接続構造については説明を省略した)。
【0012】
回路層3と高熱伝導絶縁粒子2aとの貫入接続は、図15(a)に示したように、高熱伝導絶縁粒子2aに対して、後に回路層3となる金属箔3a(図に示した部分は、金属箔3aのマット面、即ち、アンカーパターン6を示したものである)を矢印の方向にプレス加工することによって行われるのであるが、当該金属箔3a(回路層3)と高熱伝導絶縁粒子2aとの接続構造は、図15(b)に示したように、表面状態が単なる凹凸形状24(大判の高熱伝導材を粒子状に粉砕したときの凹凸形状)のままの高熱伝導絶縁粒子2aを、金属箔3a(回路層3)に貫入させるだけの構造であったため、両者間の接続強度は殆どないに等しいものであった。このような接続状態で、絶縁樹脂基板1が半導体チップからの発熱により膨張するため{即ち、回路層3と高熱伝導絶縁粒子2aとの接触界面25(図15(b)参照)を押し広げてしまう}、回路層3と高熱伝導絶縁粒子2aとの接触界面25に図15(c)に示したような剥離部26を発生させ、両者間の接触熱抵抗の増大を引き起こしていたのである。尚、図15(c)においては、剥離現象を分かりやすくするために、実際のものよりも誇張した状態を示した。
【0013】
因みに、特許文献2には、回路層3及び熱拡散層4と、高熱伝導絶縁粒子2aとの接続性を向上させるために、当該高熱伝導絶縁粒子2aの表面に、CuめっきやNiめっきを施すという手段が示されているが、金属同士を熱圧着してもそれほど高い接続強度は得られず、そもそも絶縁樹脂よりもめっきの密着性が低いセラミックス等からなる高熱伝導絶縁粒子2aの表面状態が、上記でも説明したように、単なる凹凸形状24のままであるため、当該高熱伝導絶縁粒子2aとめっきとの接触状態は極めて不安定なものとなり、結局、回路層3及び熱拡散層4と、高熱伝導絶縁粒子2aとの接続強度を満足のいく強度とするには至らなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−153075号公報
【特許文献2】特開2005−236266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、パワーモジュール用絶縁放熱基板の絶縁基板として絶縁樹脂基板を用いた場合においても、金属層(回路層や熱拡散層等として使用される金属層)と高熱伝導絶縁粒子との間の接触熱抵抗の増大を抑制できるパワーモジュール用絶縁放熱基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、一方の面側に搭載される半導体チップからの発熱を、他方の面側に取り付けられる冷却器へと伝熱させるパワーモジュール用絶縁放熱基板であって、少なくとも、絶縁樹脂基板と、当該絶縁樹脂基板の表裏に積層された金属層と、当該絶縁樹脂基板中に配置された高熱伝導絶縁粒子とを有し、且つ、当該両金属層と高熱伝導絶縁粒子とが、当該高熱伝導絶縁粒子の絶縁樹脂基板からの露出面に設けられた鉤状の凹部に、当該金属層の一部が噛み合わせ状に食い込んだ状態で接続されていることを特徴とするパワーモジュール用絶縁放熱基板により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体チップからの発熱が絶縁放熱基板に流入した場合においても、高熱伝導絶縁粒子と金属層との間の接触熱抵抗を常温時とほぼ同じ状態に維持することができ、以て、半導体チップから発せられた熱を素早く冷却器側へ逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための第一の実施の形態を説明するための概略断面製造工程図。
【図2】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板に用いられる高熱伝導絶縁粒子の表面状態を説明するための概略断面図。
【図3】金属箔と高熱伝導絶縁粒子との接続状態を説明するための要部拡大断面図。
【図4】図1(e)と同様のパワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための概略断面製造工程図。
【図5】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板に直接冷却器を取り付けた構成例を説明するための概略断面図。
【図6】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための第二の実施の形態を説明するための概略断面製造工程図。
【図7】金属層としてめっきを析出した場合の金属層と高熱伝導絶縁粒子との接続状態を説明するための要部拡大断面図。
【図8】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための第三の実施の形態を説明するための概略断面製造工程図。
【図9】図8(c)の状態を詳しく説明するための要部拡大断面図。
【図10】図8(e)と同様のパワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための概略断面製造工程図。
【図11】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板を得るための第四の実施の形態を説明するための概略断面製造工程図。
【図12】本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板の第五の実施の形態を説明するための概略断面図。
【図13】従来のパワーモジュールの構成を説明するための概略断面図。
【図14】従来のパワーモジュールに用いられる絶縁放熱基板の問題点を解決する従来のパワーモジュール用絶縁放熱基板の構成を説明するための概略断面図。
【図15】図14のパワーモジュール用絶縁放熱基板の問題点を説明するための要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第一の実施の形態を図1(e)を用いて説明する。尚、従来技術と同じ部位には同じ符号を付すようにした。
【0020】
図1(e)は、本発明パワーモジュール用絶縁放熱基板(以降これを単に「絶縁放熱基板」と表記する)Pの概略断面図を示したもので、当該絶縁放熱基板Pは、絶縁樹脂基板1と、当該絶縁樹脂基板1の表面に積層された回路層3及び同基板1の裏面に積層された熱拡散層4と、当該絶縁樹脂基板1中に配置された高熱伝導絶縁粒子2とを有し、且つ、当該回路層3及び熱拡散層4と、高熱伝導絶縁粒子2とが、当該高熱伝導絶縁粒子2の絶縁樹脂基板1表面A及び裏面Bからの突出露出面、すなわち突出部13の表面に設けられた鉤状の凹部5に、当該回路層3及び熱拡散層4の一部が噛み合わせ状に食い込んだ状態で接続されているものである(図3(b)参照)。
【0021】
本発明において、「鉤状の凹部」とは、図2及び図3(a)に示されているように、予め水酸化ナトリウムや弗酸などで処理して高熱伝導絶縁粒子2の表面に形成された凹部5で、その内部において開口部5aの間口エリアから外れた抉れ部5bを有するものを云う。
【0022】
続いて、上記絶縁放熱基板Pの製造方法を図1を用いて説明する。
【0023】
まず、図1(a)に示したように、金属箔4aの一方の面に、大きさをある程度揃えた高熱伝導絶縁粒子2(当該大きさとしては、後に形成される絶縁樹脂基板の厚さよりも厚みがあり、且つ、当該絶縁樹脂基板の表裏に金属層を積層した際に、当該金属層を貫通しない程度の大きさである)で、その表面に鉤状の凹部5(図2,図3(a)参照)が予め形成されたものを、配置位置に偏りが生じないようにマスクなどを介して配置した後、当該金属箔4a上に配置された高熱伝導絶縁粒子2を挟むように金属箔3aを配置し(図1(b)参照)、次いで、後に金属箔3aと金属箔4aとの間に形成される絶縁樹脂基板1の厚さ分のスペースが空くようにスペーサー等(図示省略)を介してプレス加工を行い、当該高熱伝導絶縁粒子2の一部(図1(e)に示した「突出部13」に相当)を金属箔3a、4aに突入させるとともに(図1(c)参照)、当該高熱伝導絶縁粒子2の表面に設けられた鉤状の凹部5に、当該金属箔3a及び金属箔4aの一部を噛み合せ状に食い込ませる(図3(a),(b)参照)。
【0024】
ここで、金属箔3a、4aの材料としては、熱伝導率が高く、高熱伝導絶縁粒子2よりも軟らかいものであれば特に限定されるものではないが、一般的に使用されるCuやAl等(例えば、厚さ150μm〜300μm程度のCu箔やAl箔等)が熱伝導性や電気特性などを考慮した場合に好ましく、また、高熱伝導絶縁粒子2の材料としては、絶縁性と比較的高い熱伝導率を兼ね備えたセラミックスが使用でき、例えば、Al2O3(熱伝導率:20W/mk)、SiC、SiN(熱伝導率:70W/mk)、AlN(熱伝導率:170W/mk)等が挙げられるが、必要とする放熱性能に応じて選択することができる。
【0025】
次に、図1(c)に示した矢印のように、金属箔3a、4aの間に液状絶縁樹脂1aを流し込んだ後、当該液状絶縁樹脂1aを硬化して絶縁樹脂基板1とする(図1(d)参照)。
【0026】
ここで、当該液状絶縁樹脂1a(絶縁樹脂基板1)としては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレン、液晶ポリマー、アクリル、ポリカーボネート、シリコーン等が挙げられるが、特に、耐熱性、応力緩和性がより優れているという点で液晶ポリマーが好ましい。
尚、図には示していないが、上記樹脂中に、高熱伝導絶縁粒子2と同質材料で、且つ、当該高熱伝導絶縁粒子2よりも径が小さいフィラーを、絶縁樹脂基板1の応力緩和性に影響が出ない範囲で充填するのが、高熱伝導粒子2を含む絶縁樹脂基板1の全熱抵抗を下げる(即ち、熱伝導率を上げる)上で好ましい。
【0027】
そして最後に、金属箔3a、4aに対して周知のフォトエッチングプロセス(当該金属箔3a、4aの表面にエッチングレジスト用のドライフィルムをラミネートした後、露光・現像でエッチングレジストパターンを形成し、次いで、エッチングレジストパターンから露出した金属箔3a、4aをエッチング除去して、配線回路を形成する工程)で回路形成を施し、回路層3と熱拡散層4とを形成することによって、図1(e)の絶縁放熱基板Pを得る。
【0028】
本実施の形態の注目すべき点は、金属箔3a、4a(回路層3や熱拡散層4等として使用される金属箔)と熱的に接続される高熱伝導絶縁粒子2として、表面に鉤状の凹部5が形成されたものを用い、当該金属箔3a、4aと、当該高熱伝導絶縁粒子2との接続構造として、当該金属箔3a、4aの一部を当該鉤状の凹部5に噛み合わせ状に食い込ませた点である(図1(b)〜(c)工程で行われるプレス工程の要部拡大断面図を示した図3(a)、(b)参照)。
【0029】
これにより、半導体チップから発せられた熱が絶縁放熱基板Pに流入し、当該絶縁放熱基板Pの絶縁樹脂基板1が膨張した場合においても、高熱伝導絶縁粒子2と金属箔3a,4a(即ち、回路層3及び熱拡散層4)との接触熱抵抗を常温時と略同じ状態に維持することができるため、当該熱を素早く冷却器側へ逃がすことができる(即ち、絶縁樹脂基板1における縦方向の膨張量が高熱伝導絶縁粒子2のそれより大きくても、高熱伝導絶縁粒子2と金属箔3a,4aとの接触部にアンカー効果が働き、両者の接触界面に図15(c)に示したような剥離部26が発生しないため、両者の接触熱抵抗の増大を抑制できる)。
【0030】
次に、図1(e)に示した絶縁放熱基板Pと同様の構造の絶縁放熱基板Paを得るための他の製造方法について図4を用いて説明する(使用される金属箔、高熱伝導絶縁粒子、絶縁樹脂の種類などは図1で説明したのと同じであるため、その説明については省略する)。
【0031】
まず、図4(a)に示したように、金属箔4aの表面に半硬化状態の絶縁樹脂フィルム1bを積層し、次いで、図4(b)に示したように、表面に鉤状の凹部5が形成された高熱伝導絶縁粒子2を当該絶縁樹脂フィルム1b上に配置する(配置方法としては、図1で説明したのと同様にマスクなどを介して行う)。
【0032】
次に、絶縁樹脂フィルム1上に配置された高熱伝導絶縁粒子2を金属箔4aと挟むように金属箔3aを配置し(図4(c)参照)、次いで、プレス加工を行うことによって、当該高熱伝導絶縁粒子2の一部[図4(e)に示した突出部13に相当]を金属箔3a、4aに突入させるとともに、当該高熱伝導絶縁粒子2の表面に設けられた鉤状の凹部5に、当該金属箔3a及び金属箔4aの一部を噛み合せ状に食い込ませ、当該絶縁樹脂フィルム1bを硬化させて絶縁樹脂基板1とする(図4(d)参照)。
【0033】
そして最後に、金属箔3a、4aに回路形成を施し、回路層3及び熱拡散層4を形成することによって、図1(e)のものと同様の構造からなる絶縁放熱基板Paを得る(図4(e)参照)。
【0034】
以上のように、図4の製造方法においては、図1(c)の工程のように、絶縁樹脂基板1を形成する手段として液状絶縁樹脂1aを金属箔3a、4a間に流し込むといった手間のかかる工程が不要になるため、図1の製造工程よりも容易に絶縁放熱基板を得ることができる。
【0035】
次に、本発明の第二の実施の形態を図6(e)を用いて説明する。
【0036】
図6(e)は、本発明絶縁放熱基板Pbの概略断面図を示したもので、当該絶縁放熱基板Pbは、回路層11及び熱拡散層12を、無電解めっき10、電解めっき11a、12aから形成した以外は、図1(e)、図4(e)の構造のものと同様のものである。
【0037】
続いて、上記絶縁放熱基板Pbの製造方法を図6を用いて説明する。
【0038】
まず、図1(a)〜(d)又は図4(a)〜(d)に示した製造工程により、図1(d)又は図4(d)と同じ構造の基板を作製し(図6(a)参照)、次いで、絶縁樹脂基板1の表裏に積層された金属箔3a、4aをエッチングにより除去する(図6(b)参照)。
【0039】
次に、過マンガン酸ナトリウム系あるいは過マンガン酸カリウム系のデスミア処理を行うことによって、絶縁樹脂基板1の表面を粗化処理するとともに、露出している高熱伝導絶縁粒子2の表面に設けられた鉤状の凹部5内に巻き込まれた樹脂を除去する(図6(b)参照)。
【0040】
次に、図6(c)に示したように、厚さ0.3〜3μmの無電解めっき10(例えば「無電解Cuめっき」)を全面に析出させた後、厚さ150μm〜300μm程度の電解めっき11a、12a(例えば、「電解Cuめっき」)を析出させる(図6(d)参照)。
【0041】
そして最後に、無電解めっき10、電解めっき11a及び12aに対して回路形成を施し、回路層11及び熱拡散層12を形成することによって、図6(e)の絶縁放熱基板Pbを得る。
【0042】
本実施の形態の注目すべき点は、回路層11及び熱拡散層12を無電解めっき10及び電解めっき11a、12aで形成した点である。
【0043】
これにより、回路層3及び熱拡散層4を金属箔から形成する図1、図4の構成で見られた鉤状の凹部5内の金属未充填部7(図3(b)参照)を無くすことができるため(図7参照)、絶縁放熱基板P、Paよりも初期接触熱抵抗を小さくすることができる(即ち、熱を素早く冷却器側に逃がすことができる)。
【0044】
また、上記第二の実施の形態では、無電解めっき10として「無電解Cuめっき」を析出する例を示したが、当該無電解Cuめっきよりも結晶粒径が小さい「無電解Niめっき」を析出すれば、無電解Cuめっきよりも緻密なめっき膜を析出できるため、初期接触熱抵抗をより小さくすることができる。
尚、当該無電解Niめっきの種類としては、無電解NiPめっき、無電解NiBめっき等、何れのNiめっきも利用可能であるが、中でも熱伝導率が最も高いNiBめっきを選択するのがより初期接触熱抵抗を小さくできる点で好ましい。
【0045】
因みに、上記第二の実施の形態における回路層11および熱拡散層12の形成手段として、無電解めっき10上に電解めっき11a及び12aを析出させた後、エッチング(フォトエッチングプロセス:サブトラクティブ法)により形成する例を示したが、パターンめっきで回路を形成するアディティブ法(無電解めっき10を全面に形成した後、めっきレジストパターンを形成し、次いで、めっきレジストパターン非形成部に電解めっき11a、12aを析出させた後、めっきレジストパターンの除去及び当該めっきレジストパターンの除去によって露出した無電解めっき10をフラッシュエッチングで除去する回路形成手段)で形成することももちろん可能である。
【0046】
次に、本発明の第三の実施の形態を図8(f)を用いて説明する。
【0047】
図8(f)は、本発明絶縁放熱基板Pcの概略断面図を示したもので、当該絶縁放熱基板Pcは、高熱伝導絶縁粒子2の露出面が、図8(c)に示したように、当該絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bから突出することなく当該表面A及び裏面Bと面一となっている以外は、図6(e)の構造のものと同様のものである。
【0048】
続いて、上記絶縁放熱基板Pcの製造方法を図8を用いて説明する。
【0049】
まず、図8(b)の構造の基板を、図6(a)〜図6(b)と同じ工程により形成する。
【0050】
次に、図8(b)に示したように、絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bから突出した高熱伝導絶縁粒子2の突出部13を、平面研磨やブラスト処理などにより除去することによって、当該絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bと、当該高熱伝導絶縁粒子2の露出面とを平坦な面一にする(図8(c)参照)。
【0051】
次に、デスミア処理を行った後、絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bと平坦な高熱伝導絶縁粒子2の露出面を粗化処理して鉤状の凹部5を形成し(図9に示した要部拡大断面図参照。因みに、符号14は金属箔3a、4aをエッチング除去した際に絶縁樹脂基板1に形成されたアンカーパターン6と同形状の「粗化層」である)、次いで、図8(d)に示した無電解めっき10の析出から図8(f)の回路形成までの工程を図6(c)〜図6(e)と同じ工程で行うことによって、図8(f)の絶縁放熱基板Pcを得る。
【0052】
本実施の形態の注目すべき点は、絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bと、高熱伝導絶縁粒子2の露出面とを面一にし、当該高熱伝導絶縁粒子2を回路層11及び熱拡散層12内に突入させない構造とした点である。
【0053】
これにより、金属よりも熱伝導率の低い高熱伝導絶縁粒子2が、金属からなる回路層11及び熱拡散層12側に突出しないため、当該高熱伝導絶縁粒子2が回路層3及び熱拡散層4側に突出する第一、第二の実施の形態のものよりも熱を素早く逃がすことができる。
【0054】
次に、図8(f)に示した絶縁放熱基板Pcと同様の構造の絶縁放熱基板Pdを得るための他の製造方法について図10を用いて説明する。尚、図10に示した製造工程図は、図8の工程と異なる工程のみを示したため、共通の工程に関しては、図8の製造工程図を用いることにした。また、最終的に得られる絶縁放熱基板Pdの構成も、図8(f)のものと同様の構成となるため、図8(f)を共通図面として用いることにした。
【0055】
まず、図8(a)の基板の金属箔3a、4aにエッチング処理を施し、当該金属箔3a、4aを、例えば1〜5μm程度まで薄層化する(図10(a)の薄層化された金属箔3b、4b参照)。
【0056】
次に、図10(a)の状態の基板に対して、平面研磨を施すことにより、絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bと、当該高熱伝導絶縁粒子2の露出面とを平坦な面一にする(図10(b)参照)。尚、図10(b)に示した絶縁樹脂基板1の表面A及び裏面Bの状態は、図10(c)の要部拡大断面図に示したように、金属箔3a、4aのアンカーパターン6が残った状態となっている。
因みに、上記平坦な面一化方法では、金属箔3a、4aを薄層化してから研磨を行う例を示したが、箔層化せずに研磨のみで平坦な面一にすることももちろん可能である。
【0057】
次に、デスミア処理を行った後、図10(d)に示したように、高熱伝導絶縁粒子2の絶縁樹脂基板1からの露出面を粗化して鉤状の凹部5を形成し、次いで、図10(e)に示した無電解めっき10の析出工程以降の工程を、図8(d)〜図8(f){即ち、図6(c)〜図6(e)}と同じ工程で行うことによって、図8(f)の絶縁放熱基板Pdを得る。
【0058】
図10の製造工程で得られた絶縁放熱基板Pdと、図8の製造工程で得られた絶縁放熱基板Pcとは、放熱性能的には同じであるが、絶縁樹脂基板1に直接無電解めっき10を析出させる絶縁放熱基板Pcと比較した場合(図9、図8(d)参照)、無電解めっき10を金属箔3a、4aのアンカーパターン6を介して析出させる絶縁放熱基板Pdの方が、当該無電解めっき10と絶縁樹脂基板1との密着強度を向上できるという点で優れている(図10(c)、(e)参照)。
【0059】
次に、本発明の第四の実施の形態を図11(d)を用いて説明する。
【0060】
図11(d)は、本発明の絶縁放熱基板Peの概略断面図を示したもので、当該絶縁放熱基板Peは、絶縁樹脂基板として補強繊維15入りの絶縁樹脂基板1dを用い(ここでは、半導体チップ19の搭載エリアに対応する絶縁樹脂17のみからなる部分も含んで絶縁樹脂基板1dとする)、また、高熱伝導絶縁粒子2の配置位置を、当該半導体チップ19の搭載エリアに対応する部分にのみ配置した以外は、図1(e)や図4(e)に示したものと同様のものである。
【0061】
続いて、上記絶縁放熱基板Peの製造方法を図11を用いて説明する。
【0062】
まず、金属箔4aの一方の面に、後に搭載される半導体チップ19の搭載エリアに対応した部分に開口部16を有する補強繊維15入りの絶縁樹脂フィルム1c(例えばプリプレグ等)を配置し(図11(a)参照)、次いで、当該開口部16内に、表面に鉤状の凹部5が形成された高熱伝導絶縁粒子2を充填する(図11(b)参照)。
【0063】
次に、当該絶縁樹脂フィルム1cの開口部16内に充填された高熱伝導絶縁粒子2を金属箔4aと挟むように金属箔3aを配置し(図11(b)参照)、次いで、プレス加工を行うことによって、当該高熱伝導絶縁粒子2の一部を金属箔3a、4aに突入させるとともに、当該高熱伝導絶縁粒子2の表面に設けられた鉤状の凹部5に、当該金属箔3a及び金属箔4aの一部を噛み合せ状に食い込ませ、当該絶縁樹脂フィルム1cを硬化させて絶縁樹脂基板1dとする(図11(c)参照)。尚、図11(c)に示した符号17はプレス加工の際に絶縁樹脂フィルム1cから流れ出た「絶縁樹脂」である。
【0064】
そして最後に、金属箔3a、4aに対して回路形成を施し、回路層3と熱拡散層4とを形成することによって、図11(d)の絶縁放熱基板Peを得る。
【0065】
本実施の形態の注目すべき点は、高熱伝導絶縁粒子2を、硬化後に絶縁樹脂基板1dとなる絶縁樹脂フィルム1cに設けた開口部16をガイドにして、半導体チップの搭載エリアに対応する部分にのみ配置するようにした点である。
【0066】
これにより、半導体チップの搭載エリアに対応する部分のみに容易に高熱伝導絶縁粒子を配置することができ、また、高価な高熱伝導絶縁粒子の使用量を大幅に削減できるため、絶縁放熱基板を安価なものとすることができる。
【0067】
更に、絶縁樹脂基板として補強繊維入りの絶縁樹脂基板(例えば、ガラス織布あるいはガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグ等の絶縁樹脂フィルムを硬化させたもの)を用いたことも注目すべき点である。
これにより、パワーモジュールが大型の場合においても反りを抑制することができる。
【0068】
尚、図11の構成においては、絶縁樹脂基板の表裏に形成される回路層3及び熱拡散層4の形成手段として、積層された金属箔をエッチングして回路形成する例のみを説明したが、もちろん、図6の構成と同様に、めっきで形成することも可能である。
【0069】
次に、本発明の第五の実施の形態を図12を用いて説明する。
【0070】
図12は、本発明の絶縁放熱基板Pfの概略断面図を示したもので、当該絶縁放熱基板Pfは、絶縁樹脂基板として補強繊維15入りの絶縁樹脂基板1dを用い(ここでは、半導体チップ19の搭載エリアに対応する絶縁樹脂17のみからなる部分も含んで絶縁樹脂基板1dとする)、また、高熱伝導絶縁粒子2の配置位置を 当該半導体チップ19の搭載エリアに対応する部分にのみ配置した以外は、図8(f)に示した絶縁放熱基板Pc、Pdと同様のものである。
【0071】
尚、図12の絶縁放熱基板Pfの製造方法に関しては、図11(c)の状態の基板を図8(a)の工程に適用すれば、図8、図10の製造工程により容易に得られるため、その説明については省略する。
【0072】
因みに、図11、図12の構成においては、絶縁樹脂フィルムとして、補強繊維入りのものを用いて説明したが、パワーモジュールが大型でなく、反りの懸念が無い場合には、補強繊維が入っていない絶縁樹脂フィルムを用いることも可能である。
【0073】
本発明を説明するに当たって、高熱伝導絶縁粒子と金属層(回路層、熱拡散層等としての金属層)との間の接触熱抵抗の増大を抑制する手段として、高熱伝導絶縁粒子に設けた鉤状の凹部に、金属層の一部を噛み合わせ状に食い込ませる例を説明してきたが、絶縁樹脂基板に用いる絶縁樹脂として、横方向の線膨張係数よりも縦方向の線膨張係数が小さい異方性線膨張樹脂を用いれば、絶縁放熱基板の放熱信頼性をより向上させることができる。
【0074】
また、金属箔3a、4aを回路形成することによって、回路層3及び熱拡散層4を形成する図1、図4、図11の構成において、当該熱拡散層4として、金属層内部に冷却水9を備えた冷却器8を直接積層すれば、回路層3から冷却器8への伝熱距離を短くでき、以て、半導体チップからの発熱をより一層素早く放散できる(図5参照)。
【0075】
尚、高熱伝導絶縁粒子として球状のものを用いて説明してきたが、当該高熱伝導絶縁粒子が塊状であることをイメージし易くするために球状にしただけであって、実際の形状と異なることはいうまでもない。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明の絶縁放熱基板の構成をより詳しく説明する。
尚、実施例としては、図4(e)と図12に示した絶縁放熱基板Pa、Pfの製造例を用いることとし、また、当該絶縁放熱基板Pfの構成における絶縁樹脂基板として、絶縁放熱基板Paと同様に内部に補強繊維が含まれていない場合の構成について説明する。
【0077】
実施例1:図4(e)に示した絶縁放熱基板Paの製造例。
まず、後に熱拡散層として使用される厚さ0.3mm、熱伝導率400W/mKからなる無酸素銅箔(住友金属鉱山伸銅社製)の一方の面に、厚さ0.15mm、熱伝導率3W/mKの絶縁樹脂(エポキシ)フィルム(新神戸電機社製:HTS−3W)を配置し、次いで、当該絶縁樹脂フィルムの表面に、マスクを介して高熱伝導絶縁粒子をムラなく配置した。尚、高熱伝導絶縁粒子としては、大きさが約φ0.35mm、熱伝導率が170W/mKからなるAlNの破砕品(トクヤマ社製)を、濃度1mol/l(常温)の水酸化ナトリウム溶液に30分浸漬処理して、表面に鉤状の凹部を形成せしめたものを用いた。
【0078】
次に、高熱伝導絶縁粒子が配置された絶縁樹脂フィルムの表面に、後に回路層となる銅箔(上記銅箔と同じもの)を配置した後、温度200℃、圧力5MPaの条件で積層プレス加工を行い、次いで、塩化第二銅溶液によるエッチング処理で回路層及び熱拡散層を形成することによって、図4(e)の構成の絶縁放熱基板を得た。
【0079】
上記実施例1の製造方法で得られた絶縁放熱基板の断面観察を行なった結果、僅かに銅箔未充填部が確認されたが、高熱伝導絶縁粒子の表面に設けられた鉤状の凹部に、回路層及び熱拡散層としての銅箔の一部が噛み合わせ状に食い込んでいることが確認できた。
【0080】
実施例2:図12に示した絶縁放熱基板Pfの製造例。
まず、厚さ18μmの銅箔(3EC−III:三井金属社製)の一方の面に、半導体チップの搭載エリアに対応する部分に10mm□の開口部が形成された厚さ0.15mm、熱伝導率3W/mKの絶縁樹脂フィルム(新神戸電機社製:HTS−3W)を配置し、次いで、当該開口部内に堆積比率が約60%となるように高熱伝導絶縁粒子(上記実施例1と同様のもの)を配置した。
【0081】
次に、高熱伝導絶縁粒子が配置された絶縁樹脂フィルムの表面に、厚さ18μmの銅箔(上記と同様の銅箔)を配置した後、温度200℃、圧力5MPaの条件で積層プレス加工を行い、次いで、薄板に適した4軸平面研磨機にて研磨(当該研磨では、セラミックバフ♯800を使用)を行い、高熱伝導絶縁粒子の露出面と絶縁樹脂基板の表面とを平坦な面一にした。
【0082】
次に、過マンガン酸ナトリウム溶液でデスミア処理を行うことによって、高熱伝導絶縁粒子の露出面に付着した樹脂(研磨処理で発生した樹脂)を除去するとともに絶縁樹脂基板の表面を粗化した。
【0083】
次に、上記デスミア処理後の基板を、濃度1mol/l(常温)の水酸化ナトリウム溶液に30分浸漬処理して、高熱伝導絶縁粒子の露出面に鉤状の凹部を形成した。
【0084】
次に、下記の無電解銅めっき工程(1)〜(11)を行なって1μmの無電解銅めっきを析出させた後、硫酸銅めっき浴による電解銅めっき処理で300μmの電解銅めっきを析出させ、次いで、塩化第二銅溶液によるエッチング処理で回路層及び熱拡散層を形成することによって、図12の構成の絶縁放熱基板を得た。
≪無電解銅めっき工程≫
(1)界面活性処理
コンディショナー(OPC−370コンディクリーン:奥野製薬社製)、濃度100ml/l、処理温度65℃、処理時間5分
(2)水洗
(3)ソフトエッチング:過水硫酸系
(4)水洗
(5)酸洗浄
濃度100ml/l(98%濃硫酸)、処理温度25℃、処理時間2分
(6)触媒付与(以下の工程を順次行う)
1)プリディップ{OPC−SALM(奥野製薬社製)、濃度260g/l、処理温度25℃、処理時間2分}
2)触媒付与{OPC−SALM(奥野製薬社製)、濃度260g/l、処理温度25℃、処理時間5分}⇒{OPC−80キャタリスト(奥野製薬社製)、濃度50ml/l}
(7)水洗
(8)触媒活性化処理
アクセラレーター{OPC−555(奥野製薬社製)、濃度100ml/l、処理温度25℃、処理時間7分}
(9)水洗
(10)無電解銅めっき処理
処理温度30℃、処理時間20分、
◎ 薬品名
1)ATSアドカッパーIW−A(濃度50ml/l)
2)ATSアドカッパーIW−M(濃度80ml/l)
3)ATSアドカッパーC(濃度10ml/l)
4)無電解銅R−N(濃度3ml/l)
(11)水洗・乾燥
【0085】
上記実施例2の製造工程で得られた絶縁放熱基板の断面観察を行なった結果、実施例1の構成で見られた銅箔未充填部がなく、鉤状の凹部にめっきが緻密に充填されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0086】
1、1d:絶縁樹脂層
1a:液状絶縁樹脂
1b:絶縁樹脂フィルム
1c:補強基材入り絶縁樹脂フィルム
2、2a:高熱伝導絶縁粒子
3a、4a:金属箔
3b、4b:薄層化された金属箔
3、11:回路層
4、12:熱拡散層
5:鉤状の凹部
6:アンカーパターン
7:金属未充填部
8:冷却器
9:冷却水
10:無電解めっき層
11a、12a:電解めっき層
13:突出部
14:粗化層
15:補強基材
16:開口部
17:絶縁樹脂
18:はんだ
19:半導体チップ
20:絶縁基板
21:低熱膨張材
22:放熱体
23:取付ねじ
24:単なる凹凸形状
25:接触界面
26:剥離部
P、Pa、Pb、Pc、Pd、Pe、Pf、Pg、Ph:パワーモジュール用絶縁放熱基板
PM:パワーモジュール
A:絶縁樹脂層の表面
B:絶縁樹脂層の裏面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面側に搭載される半導体チップからの発熱を、他方の面側に設置される冷却器へと伝熱させるパワーモジュール用絶縁放熱基板であって、少なくとも、絶縁樹脂基板と、当該絶縁樹脂基板の表裏に積層された金属層と、当該絶縁樹脂基板中に配置された高熱伝導絶縁粒子とを有し、且つ、当該両金属層と高熱伝導絶縁粒子とが、当該高熱伝導絶縁粒子の絶縁樹脂基板からの露出面に設けられた鉤状の凹部に、当該金属層の一部が噛み合わせ状に食い込んだ状態で接続されていることを特徴とするパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項2】
当該高熱伝導絶縁粒子の露出面が、絶縁樹脂基板からの突出露出面であることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項3】
当該高熱伝導絶縁粒子の露出面が、絶縁樹脂基板から突出することなく当該絶縁樹脂基板面と面一となっていることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項4】
当該金属層が、無電解めっきと電解めっきとを順次析出したものからなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項5】
当該無電解めっきが、Niめっきからなることを特徴とする請求項4に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項6】
当該無電解めっきが、絶縁樹脂基板の表面及び裏面に残された金属箔のアンカーパターンを介して析出されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項7】
当該高熱伝導絶縁粒子が、搭載される半導体チップに対応して部分的に配置されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項8】
当該半導体チップに対応する部分に配置されている高熱伝導絶縁粒子が、硬化後に絶縁樹脂基板となる絶縁樹脂フィルムに設けた開口部をガイドにして配置されたものであることを特徴とする請求項7に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項9】
当該絶縁樹脂基板が、内部に補強繊維を含んでいることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項10】
当該絶縁樹脂基板が、横方向の線膨張係数よりも縦方向の線膨張係数が小さい異方性線膨張樹脂からなることを特徴とする請求項1〜9に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項11】
当該絶縁樹脂基板の表裏に積層される金属層のうち、半導体チップが搭載される面とは反対側の面に積層される金属層が、冷却器であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項1】
一方の面側に搭載される半導体チップからの発熱を、他方の面側に設置される冷却器へと伝熱させるパワーモジュール用絶縁放熱基板であって、少なくとも、絶縁樹脂基板と、当該絶縁樹脂基板の表裏に積層された金属層と、当該絶縁樹脂基板中に配置された高熱伝導絶縁粒子とを有し、且つ、当該両金属層と高熱伝導絶縁粒子とが、当該高熱伝導絶縁粒子の絶縁樹脂基板からの露出面に設けられた鉤状の凹部に、当該金属層の一部が噛み合わせ状に食い込んだ状態で接続されていることを特徴とするパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項2】
当該高熱伝導絶縁粒子の露出面が、絶縁樹脂基板からの突出露出面であることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項3】
当該高熱伝導絶縁粒子の露出面が、絶縁樹脂基板から突出することなく当該絶縁樹脂基板面と面一となっていることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項4】
当該金属層が、無電解めっきと電解めっきとを順次析出したものからなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項5】
当該無電解めっきが、Niめっきからなることを特徴とする請求項4に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項6】
当該無電解めっきが、絶縁樹脂基板の表面及び裏面に残された金属箔のアンカーパターンを介して析出されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項7】
当該高熱伝導絶縁粒子が、搭載される半導体チップに対応して部分的に配置されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項8】
当該半導体チップに対応する部分に配置されている高熱伝導絶縁粒子が、硬化後に絶縁樹脂基板となる絶縁樹脂フィルムに設けた開口部をガイドにして配置されたものであることを特徴とする請求項7に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項9】
当該絶縁樹脂基板が、内部に補強繊維を含んでいることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項10】
当該絶縁樹脂基板が、横方向の線膨張係数よりも縦方向の線膨張係数が小さい異方性線膨張樹脂からなることを特徴とする請求項1〜9に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【請求項11】
当該絶縁樹脂基板の表裏に積層される金属層のうち、半導体チップが搭載される面とは反対側の面に積層される金属層が、冷却器であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のパワーモジュール用絶縁放熱基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図4】
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【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−227271(P2012−227271A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92251(P2011−92251)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000228833)日本シイエムケイ株式会社 (169)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000228833)日本シイエムケイ株式会社 (169)
【Fターム(参考)】
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