説明

パワーモジュール

【課題】ケースを固定する接着剤の塗布量を抑え、なおかつパワーデバイスへのはみ出しを防止できるパワーモジュールを提供すること。
【解決手段】パワーデバイス3を載置した複数のベース板5を並べて配置し、これらのベース板5をケース7で囲んだパワーモジュール1において、前記ケース7は、複数の前記ベース板5の全てを囲む外囲壁20と、隣り合う前記ベース板5同士の間に沿って配置される仕切壁21と、を備え、前記外囲壁20、及び前記仕切壁21の底面20A、21Aが前記ベース板5の上面に接着剤40で接着されるとともに、前記仕切壁21の底面21Aには、前記ベース板5同士の間に沿って延在し、隣り合う前記ベース板5同士の間に塗布された接着剤40を封じる溝50を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーデバイスをケースに収めて成るパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーデバイスをケースに収め、ケースにゲル状の合成樹脂を充填して封止した樹脂封止型のパワーモジュールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種のパワーモジュールは、ハイブリッド車や電気自動車等のバッテリーとモーターの間で電力変換を行うインバータ装置に好適に用いられている。インバータ装置に用いられるパワーモジュールでは、上アームおよび下アームの各々にパワー半導体素子を接続してパワーデバイスを構成し、このパワーデバイスをケースに収め封止している。そして、モーターの相数に応じた数のパワーモジュールを備えてインバータ装置が構成されている。
【0003】
一方、ハイブリッド自動車や電気自動車等の高出力化の要求に伴ってインバータ装置には高い出力特性が求められている。インバータ装置の高出力化には、パワーデバイスの数を増やすことが有効である。しかしながら、パワーデバイスの数を増やすと、その分、パワーモジュールの数が増え、パワーモジュールの組み立ての労力やコストが増加する、といった問題がある。
【0004】
そこで、個々のパワーモジュールが備えるパワーデバイスを個別のケースに収めるのでは無く、1つの共有のケースに収めてパワーモジュールを構成する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術によれば、パワーデバイスごとに必要であったケースを1つにできるので、ケースの組み付けの労力を減らし、またコストの増加が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−159692号公報
【特許文献2】特開2010−130015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2のパワーモジュールは、パワーデバイスを載置した複数のベース板を互いに同一平面上に並べて配置し、これら全部のベース板の周囲を1つのケースで囲んで構成されている。さらに、この構成においては、ケースはベース板に固定されるのではなく、各ベース板が載置されるパワーモジュールの設置面(例えばヒートシンク)にネジ止め固定されている。
【0007】
しかしながら、ケースを設置面に固定する構成の場合、パワーモジュールを設置面に固定するまで、パワーデバイスとケースが分離したままとなる。このため、樹脂封止作業は、ケースを設置面にネジ止めした後にしか行うことができず、これに加え、設置面とケースとの間には隙間を密封するためのシール部材が別途に必要になる。
【0008】
そこで、例えば図6、及び図7に示すように、パワーデバイス101を載置したベース板102を横並びに配置し、これらのベース板102を囲むケース103をベース板102の面上に固定してパワーモジュール100を構成することが考えられる。このパワーモジュール100によれば、ベース板102の面上にケース103が固定されていることから、パワーモジュール100を設置面に設置せずとも樹脂封止が可能となる。
ただし、パワーモジュール100の構成においては、樹脂封止する場合、ベース板102同士の間の隙間106から樹脂漏れが生じる虞がある。そこで、前掲図6、及び図7に示すように、ケース103に、ベース板102同士の隙間106に沿って延びる仕切壁105を設けることで、この仕切壁105の底面105Aで隙間106を塞ぐことができる。
【0009】
ところで、このパワーモジュール100においては、ベース板102へのケース103の固定に接着剤104を用いることでネジ止めに比べて組み立て作業を容易にできる。ベース板102へのケース103の接着作業は、簡単には、各ベース板102の縁部107の全周に接着剤104を塗布し、ケース103、及び仕切壁105を上から押し当てて接着、固定する。
【0010】
しかしながら、ベース板102の縁部107の全周に接着剤104を塗布する際に、全て同一の幅Wで塗布すると、仕切壁105の接着箇所においては、接着剤104の実質的な幅が、隣り合うベース板102の両方の縁部107に跨がる長さとなるから、塗布面積が必要以上に大きくなり、また接着剤104の使用量が増えコストが高くなる。さらに、仕切壁105の厚みTも接着剤104の幅に応じて大きくなるためパワーモジュール100が大型化する。また、ベース板102の各々の縁部107の全周に接着剤104を塗布する必要があることから塗布距離が長く、製造時間が長くなる。これに加え、接着剤104の塗布量によっては、図6の囲みA部分に示すように、仕切壁105の底面で押された接着剤104がはみ出してパワーデバイス101に接触してしまうことから、接着剤104の量や幅を正確に制御する必要もある。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ケースを固定する接着剤の塗布量を抑え、なおかつパワーデバイスへのはみ出しを防止できるパワーモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、パワーデバイスを載置した複数のベース板を並べて配置し、これらのベース板をケースで囲んだパワーモジュールにおいて、前記ケースは、複数の前記ベース板の全てを囲む外囲壁と、隣り合う前記ベース板同士の間に沿って配置される仕切壁と、を備え、前記外囲壁、及び前記仕切壁の底面が前記ベース板の上面に接着剤で接着されるとともに、前記仕切壁の底面には、前記ベース板同士の間に沿って延在し、隣り合う前記ベース板同士の間に塗布された接着剤を封じる溝を設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、隣り合うベース板同士の間に沿って配置される仕切壁の底面に、ベース板同士の間に沿って延在し接着剤を封じる溝を設けたため、ケースの固定時に接着剤が仕切壁の底面に押し潰されてベース板の面上にはみ出すことが防止される。
これに加え、隣り合うベース板同士の間では、仕切壁の溝に位置する箇所に接着剤を塗布すれば良く、隣り合うベース板同士で隣接する縁部の各々に接着剤を塗布する必要が無いため、接着剤の塗布工程に要する時間、並びに塗布量を抑えることができる。
また、仕切壁の厚みは、隣り合うベース板同士の間に塗布する接着剤の幅に応じた厚み分必要となる。このとき、各ベース板の縁部の全周に亘り所定幅で接着剤を塗布すると、ベース板同士の間で隣接する縁部の各々にも所定幅の接着剤が塗布されるため、結果として、仕切壁には、接着剤の幅の2倍以上の厚みが必要となる。これに対して、本発明によれば、隣り合うベース板同士の間でも所定幅で接着剤を塗布すれば良いため、仕切壁の厚みを抑えるこができ、またパワーモジュールのサイズを抑えることができる。
【0014】
また本発明は、上記パワーモジュールにおいて、隣り合う前記ベース板同士の間に、前記溝に封じられる接着剤を誘い込む誘込空間部を設けたことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、仕切壁の溝に収まり切れない程の接着剤が塗布された場合でも、ケース固定時には、接着剤が仕切壁の溝に押されて誘込空間部に誘い込まれるため、ベース板の面上にはみ出すことが無い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、隣り合うベース板同士の間に沿って配置される仕切壁の底面に、ベース板同士の間に沿って延在し接着剤を封じる溝を設けたため、ケースの固定時に接着剤が仕切壁の底面に押し潰されてベース板の面上にはみ出すことが防止される。
これに加え、隣り合うベース板同士の間では、仕切壁の溝に位置する箇所に接着剤を塗布すれば良く、隣り合うベース板同士で隣接する縁部の各々に接着剤を塗布する必要が無いため、接着剤の塗布工程に要する時間、並びに塗布量を抑えることができる。
また、仕切壁の厚みは、隣り合うベース板同士の間に塗布する接着剤の幅に応じた厚み分必要となる。このとき、各ベース板の縁部の全周に亘り所定幅で接着剤を塗布すると、ベース板同士の間で隣接する縁部の各々にも所定幅の接着剤が塗布されるため、結果として、仕切壁には、接着剤の幅の2倍以上の厚みが必要となる。これに対して、本発明によれば、隣り合うベース板同士の間でも所定幅で接着剤を塗布すれば良いため、仕切壁の厚みを抑えるこができ、またパワーモジュールのサイズを抑えることができる。
また本発明において、隣り合う前記ベース板同士の間に、前記溝に封じられる接着剤を誘い込む誘込空間部を設けることで、仕切壁の溝に収まり切れない程の接着剤が塗布された場合でも、ケース固定時には、接着剤が仕切壁の溝に押されて誘込空間部に誘い込まれるため、ベース板の面上にはみ出すことが無い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るパワーモジュールの平面、側面、及び正面を共に示す図である。
【図2】パワーモジュールの組立図である。
【図3】図1のI−I線における断面図である。
【図4】ケースの底面図である。
【図5】図3における囲みX部分を拡大して示す図である。
【図6】ケースをベース面に接着した態様のパワーモジュールの一例を示す平面図である。
【図7】図6に示したパワーモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るパワーモジュール1の平面、側面、及び正面を共に示す図である。
パワーモジュール1は、パワーデバイス3をパッケージ化して成るものであり、複数のパワーデバイス3と、各々がパワーデバイス3を載置した複数のベース板5と、これらのベース板5を囲むケース7とを備え、ヒートシンク等の放熱機能を有した設置板9の面上に設置される。
【0019】
パワーデバイス3は、電力の変換や制御を行う半導体デバイスであり、例えばIGBTやパワーMOSFET等のパワー半導体素子を用いて構成されている。本実施形態のパワーモジュール1は、ハイブリッド車や電気自動車等のバッテリーとモーターの間で電力変換を行うインバータ装置に用いられ、モーターの一相分のインバータアームを構成するものである。すなわち、パワーデバイス3は、高電位側に接続される上アーム11A、及び低電位側に接続される下アーム11Bから成るインバータアームを回路基板13の上に実装して成り、当該インバータアームのスイッチング素子には、IGBTやMOSFET等のパワー半導体素子が用いられている。なお、パワーデバイス3は、本実施形態の例示に限定されるものではない。
【0020】
ベース板5は、パワーデバイス3の固定面を形成するパワーデバイス固定構造部材であり、本実施形態では、平面視矩形の板材が用いられている。このベース板5には、パワーデバイス3の冷却を図るために例えば銅板等の高熱伝導性を有する部材が用いられ、面上にパワーデバイス3が固定されている。本実施形態のパワーモジュール1では、2枚のベース板5を備え、これらのベース板5が幅δの隙間52をあけて、同一面上に横並びに配置されている。これらのベース板5は、ケース7によって互いに結合される。
【0021】
ケース7は、全てのベース板5を一纏めに囲み、パワーデバイス3の樹脂封止のためのハウジングを構成するものであり、金属や樹脂等から成形され、外囲壁20と仕切壁21とを一体に備えている。外囲壁20は、併置された全てのベース板5を囲む壁面を構成するものであり、併置されたベース板5を1つの纏まりとしたときの外縁を縁取る縁部35(図2参照)に沿った環形状を成している。仕切壁21は、隣り合うベース板5同士の間に沿って延びて両者を仕切る壁面を構成する。
なお、本実施形態では、ベース板5が2つであることから、これらを仕切る仕切壁21が1つだけ設けられているが、平面視で上下、又は/及び左右にベース板5が並べて配置されている場合には、ベース板5同士の各境界部分に沿って仕切壁21が設けられることとなる。
【0022】
上記ケース7は、ベース板5の面上に固定され、これらベース板5、及びケース7によって、液体状のシリコーン樹脂等の樹脂材を注入可能な有底の容器が構成される。ケース7の内側が上記仕切壁21によって仕切られることで、ケース7の内側には各ベース板5のパワーデバイス3ごとに仕切空間24が形成され、この仕切空間24に樹脂材を注入することで、各々の仕切空間24でパワーデバイス3が樹脂封止される。
なお、ケース7には、図示を省略しているが、パワーデバイス3に電力を供給するための電極等が適宜に設けられている。
【0023】
図2は、パワーモジュール1の組立図である。なお、同図では、パワーデバイス3の図示を省略している。
同図に示すように、設置板9の面上には、ベース板5を位置決めするための複数のボス30が立設されている。またベース板5の各々には、ボス30に対応して貫通孔31が形成され、さらにケース7の外囲壁20にもボス30に対応して貫通孔32が形成されており、これら貫通孔31、32にボス30を貫通させることでベース板5、及びケース7が所定の位置に相互に位置決めされる。
パワーモジュール1の組立においては、先ず、設置板9の面上に各ベース板5を配置し、その後、ベース板5の上からケース7を被せて当該ケース7をベース板5の面上に固定する。ベース板5とケース7は、接着剤40を用いて接着固定されている。
【0024】
図3は、図1のI−I線における断面図である。
ケース7の固定について更に詳述すると、ベース板5を設置板9に配置した後、ケース7を被せる前に、接着剤40を塗布する塗布工程が行われる。塗布工程では、図2、及び図3に示すように、各々のベース板5の縁部35の全周に亘りライン状に接着剤40が塗布され、この接着剤40によってケース7の底面がベース板5の面上に接着される。
【0025】
塗布工程について、より具体的には、図3に示すように、外囲壁20の底面20Aが当接する縁部35、すなわち複数のベース板5を1つの纏まりとしたときの外縁を縁取る縁部35に沿って所定幅Wa(ただし、所定幅Wa>ベース板5同士の隙間52の幅δ)で接着剤40が塗布される。
また仕切壁21の底面21Aが当接する縁部35、すなわち隣り合うベース板5同士の隣接する縁部35には、ベース板5同士の真ん中である中間Oに沿って上記所定幅Waで接着剤40が塗布され、これによって隣接する縁部35に接着剤40が同時に塗布される。このように、ベース板5同士の隣接する縁部35に同時に接着剤40を塗布されることで、個別に接着剤40を塗布する場合に比べて、塗布工程の時間を短縮することができる。これに加え、隣接する縁部35の各々に所定幅Waで接着剤40を塗布する場合に比べて、接着剤40の塗布量も抑えることができコストを低減できる。
【0026】
図4は、ケース7の底面図である。
上記塗布工程の後、ケース7の底面をベース板5の面上に固定する固定工程が行われる。この固定工程においては、設置板9に配置されたベース板5にケース7を被せるように押し当てて接着、固定する。このとき、ベース板5には接着剤40が、ある程度の厚みを有して塗布されるため、ケース7の底面が平面であると、ベース板5との間で接着剤40が押し潰されてはみ出しが生じ、パワーデバイス3に接触する虞がある。
そこで、前掲図3、及び図4に示すように、ケース7の外囲壁20の底面20Aには、内側面20B側の下端縁部20Cに沿って全周に亘り凹部37を形成し、この凹部37に接着剤40を収めることで、過度に接着剤40を押し潰すことが無いようにしている。
【0027】
一方、仕切壁21については、外囲壁20の底面20Aと同様の構成とすると(図7参照)、隣り合うベース板5同士の隣接する縁部35の各々に接着剤40を塗布する必要が生じ、接着剤40の塗布量の増加や仕切壁21の厚みTaの増加を招く。
そこで、本実施形態の仕切壁21については、前掲図3に示すように、底面21Aに、ベース板5同士の中間Oに沿って延びる幅Tb(但しTa>Tb>Wa)の溝50を設け、この溝50で接着剤40を覆って仕切壁21を固定することとしている。
これにより、仕切壁21を所定幅Waの接着剤40で接着できるため、当該仕切壁21の厚みTaを抑えることができ、結果として、パワーモジュール1のサイズを抑えることができる。
【0028】
図5は、図3における囲みX部分を拡大して示す図である。
仕切壁21の接着固定について更に詳述すると、図5に示すように、仕切壁21の溝50の幅Tbが接着剤40の所定幅Waよりも大きいことから、仕切壁21を接着剤40に押し当てたときに、接着剤40の塊が溝50に覆われて封じられる。このとき、接着剤40の塗布量が溝50に収まり切れない程に多いと、仕切壁21の底面21Aから接着剤40がベース板5の面上にはみ出し、パワーデバイス3に接触する虞がある。
そこで、本実施形態では、隣り合うベース板5同士を、その間に幅δの隙間52を設けて配置することで、この隙間52によって、接着剤40を誘い込む誘込空間部を構成している。
これにより、仕切壁21の固定時に溝50に押された接着剤40は、そのまま直下の隙間52に誘い込まれて入り込み、幅方向への過度の拡がりが抑えられ、ベース板5の面上へのはみ出しが防止される。
【0029】
固定工程によりケース7をベース板5に接着固定した後、樹脂注入工程によって、シリコーン樹脂等の樹脂材がケース7に注入され、これにより、樹脂封止型のパワーモジュール1が製造される。
このとき、各々のベース板5にあっては、縁部35の全周に亘り塗布された接着剤40がケース7との間のシール材としても機能し、これにより、ケース7とベース板5によって形成された上述の仕切空間24からの液漏れが防止されている。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、隣り合うベース板5同士の間に沿って配置される仕切壁21の底面21Aに、ベース板5同士の間に沿って延在し接着剤40を封じる溝50を設ける構成とした。
この構成により、ケース7の固定時に接着剤40が仕切壁21の底面21Aに押し潰されて両側のベース板5の面上にはみ出すことが防止される。
これに加え、隣り合うベース板5同士の間では、仕切壁21の溝50に位置する箇所に接着剤40を塗布すれば良く、各ベース板5の縁部35の各々に接着剤40を塗布する必要が無いため、接着剤40の塗布工程に要する時間、並びに塗布量を抑えることができる。
また、仕切壁21の厚みTaは、隣り合うベース板5同士の間に塗布する接着剤40の所定幅Waに応じた厚み分必要となる。このとき、各ベース板5の縁部35の全周に亘り所定幅Waで接着剤40を塗布すると、ベース板5同士の間で隣接する縁部35の各々にも所定幅Waの接着剤40が塗布されるため、結果として、仕切壁21には接着剤40の所定幅Waの2倍以上に亘る厚みTaが必要となる。これに対して、本発明によれば、隣り合うベース板5同士の間でも所定幅Waで接着剤40を塗布すれば良いため、仕切壁21の厚みTaを抑えるこができ、またパワーモジュール1のサイズを抑えることができる。
【0031】
また本実施形態によれば、隣り合うベース板5同士の間に、溝50に封じられる接着剤40を誘い込む誘込空間部としての隙間52を設ける構成とした。
この構成により、仕切壁21の溝50に収まり切れない程の接着剤40が塗布された場合でも、ケース7の固定時には、接着剤40が仕切壁21の溝50に押されて隙間52に誘い込まれるため、ベース板5の面上にはみ出すことが無い。
なお、誘込空間部は、隙間52に限らず、例えばベース板5の面上の縁部35に沿って切り欠いた凹部によって形成しても良い。
【0032】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0033】
例えば、上述した実施形態では、パワーモジュール1が備えるベース板5の数が2つの場合を例示したが、これに限らず、3つ以上であっても良い。この場合、ベース板5を直線状に横並びに配置しても良く、また格子状に縦横に並べて配置しても良い。
【0034】
また例えば、上述した実施形態では、ベース板5の面上に接着剤40を塗布し、ケース7を押し当てて固定する固定工程を例示した。しかしながら、これに限らず、ケース7の底面に接着剤40を塗布し、これをベース板5の面上に押し当てて固定する固定工程としても良い。この固定工程においては、仕切壁21の底面には、溝50の中に接着剤40を塗布することとなる。
【符号の説明】
【0035】
1、100 パワーモジュール
3、101 パワーデバイス
5、102 ベース板
7、103 ケース
9 設置板
20 外囲壁
20A 外囲壁の底面
21、105 仕切壁
21A 仕切壁の底面
24 仕切空間
35、107 縁部
37 凹部
40、104 接着剤
50 溝
52 隙間(誘込空間部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーデバイスを載置した複数のベース板を並べて配置し、これらのベース板をケースで囲んだパワーモジュールにおいて、
前記ケースは、複数の前記ベース板の全てを囲む外囲壁と、隣り合う前記ベース板同士の間に沿って配置される仕切壁と、を備え、
前記外囲壁、及び前記仕切壁の底面が前記ベース板の上面に接着剤で接着されるとともに、前記仕切壁の底面には、前記ベース板同士の間に沿って延在し、隣り合う前記ベース板同士の間に塗布された接着剤を覆って封じる溝を設けたことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
隣り合う前記ベース板同士の間に、前記溝に封じられる接着剤を誘い込む誘込空間部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93502(P2013−93502A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235797(P2011−235797)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】