説明

パーキングブレーキシステム

【課題】デュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムにおいて、パーキングブレーキの作用中にトルクが加えられた場合に、ケーブルの緩みを小さくする。
【解決手段】車両の停止状態において、車輪に加えられると予測されるトルクの向きが前進回転方向Pである場合には、ソレノイド166bが励磁され、ピン160bがトルクが加えられた場合にセカンダリシューとなるもの110bに係合させられる。その後、押付機構120が作動させられても、ブレーキシュー110bは移動せず、ブレーキシュー110aが移動させられる。それによって、円周方向の力がアジャスタを介してブレーキシュー110bに伝達され、アンカ部材106に押し付けられる。この状態で、前進回転方向のトルクが加えられても、ブレーキシュー110bはアンカ部材106に当接しているため、一対のブレーキシュー110a,bおよび押付機構120の円周方向の移動が抑制され、ブレーキ力の低下が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュオサーボ式のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のパーキングドラムブレーキは、(a)非回転体と、(b)車両の車輪と共に回転し、内周面が摩擦面であるドラムと、(c)そのドラムの内周側に配設され、外周面に摩擦材を有する一対のブレーキシューと、(d)非回転体の一対のブレーキシューの間において、固定されたアンカと、(e)一対のブレーキシューのうちの一方に、それのアンカ側の端部においてピンを介して回動可能に設けられたブレーキレバーと、(f)ブレーキレバーのアンカとは反対側の端部を引っ張る状態で設けられたケーブルと、(g)他方のブレーキシューに、それの中間部において回動可能に設けられた中間レバーと、(h)ブレーキレバーと中間レバーとのアンカ側端部同士の間に設けられたストラットと、(i)一方のブレーキシューと、他方のブレーキシューおよび中間レバーとの、アンカとは反対側の端部同士の間に設けられたアジャスタとを含むものであり、中間レバーの回動中心からストラットまでの距離がアジャスタまでの距離より大きくされている。
ケーブルが引っ張られると、ブレーキレバーがピンを中心に回動させられ、ストラットを介して中間レバーが回動させられる。中間レバーの回動が、アジャスタを介して一方のブレーキシューに伝達されて、一方のブレーキシューがドラムに押し付けられる。また、ストラットを介して中間レバーに加えられた力によって、他方のブレーキシューがドラムに押し付けられる。なお、上述の中間レバーの回動により、アジャスタと他方のブレーキシューとの間に隙間が生じる。
このパーキングブレーキの作用状態において、一方のブレーキシューをアンカから離れさせるトルクが加えられると、上述の隙間を小さくするように、一方のブレーキシュー、ブレーキレバーが円周方向に移動させられ、アジャスタを介して中間レバーがブレーキ作動時とは逆向きに回動させられる。この中間レバーの回動によりストラットがブレーキレバーを押し戻す。中間レバーの回動中心からストラットまでの距離が、アジャスタまでの距離より大きくされているため、ストラットがブレーキレバーを、トルクに起因する移動の向きとは逆向きに移動させるのである。その結果、ブレーキレバーに係合させられたケーブルの経路が長くなり、ケーブルの緩みが抑制される。
他方のブレーキシューをアンカから離れさせるトルクが加えられると、他方のブレーキシューが円周方向に沿って移動する。他方の中間レバーが回動し、アジャスタを介して一方のブレーキシュー、ブレーキレバーをアンカに向かう方向に移動させる。この移動によって、ケーブルが緩むことはない。
【0003】
特許文献2に記載のパーキングブレーキは、前述の(a)非回転体、(b)ドラム、(c)一対のブレーキシュー、(d)アンカ、(e)ブレーキレバーおよび(f)ケーブルと、(j)ブレーキレバーと、他方のブレーキシューとのアンカ側端部同士の間に設けられたストラットとを含むものであり、ストラットとブレーキレバーとの第1連結点P1が、ブレーキシューとブレーキレバーとの第2連結点P2と、ドラムブレーキの中心点Oとを結ぶ線上、あるいは、その線より他方のブレーキシューに近い側(アンカ側)に位置するようにされる。
ケーブルが引っ張られると、第2連結点P2は、中心点Oの回りに円弧に沿って移動させられ、第1連結点P1が半径方向外方へ移動させられる。他方のブレーキシューはアンカに向かって付勢され、一対のブレーキシューがドラムに押し付けられる場合に、一方のブレーキシューはアンカから離間して他方のブレーキシューはアンカから離れないことになる。
このパーキングブレーキの作用状態において、一方のブレーキシューをアンカから離れさせるトルクが加えられても、他方のブレーキシューはアンカに当接しているため、ブレーキ力が小さくなることが回避される。
また、他方のブレーキシューをアンカから離れさせるトルクが加えられて、一方のブレーキシューが円周方向に移動させられ、アンカに当接しても、ケーブルの経路が長くなるため、ケーブルが緩むことが回避される。
特許文献2には、また、アンカと他方のブレーキシューとの間に設けられたリターンスプリングの弾性力を、一方のブレーキシューとの間に設けられたリターンスプリングの弾性力より大きくすることが記載されている。それによって、押付力が加えられる際に、他方のブレーキシューをアンカから離れ難くすることができる。
【0004】
特許文献3に記載のパーキングブレーキは、前述の(a)非回転体、(b)ドラム、(c)一対のブレーキシューおよび(d)アンカと、(m)一対のブレーキシューの各々に、各々の中間部において回動可能に設けられた一対の中間レバーと、(n)一対の中間レバーのうちの一方のアンカ側の端部にピンの回りに回動可能に設けられたブレーキレバーと、(o)そのブレーキレバーのアンカとは反対側の端部に引っ張り力を付与するケーブルと、(p)一対のブレーキシュー、一対の中間レバーのアンカとは反対側の端部同士の間に設けられたアジャスタと、(q)他方の中間レバーと、一方の中間レバーおよびブレーキレバーとの間に設けられたストラットと、(r)一対のブレーキシューのアンカ側の端部同士の間に設けられた第1リターンスプリングと、(s)一対のブレーキシューのアジャスタ側の端部同士の間に設けられた第2リターンスプリングとを含むものであり、第1リターンスプリングの弾性力F1と、中間レバーの回動中心と第1リターンスプリングとの間の距離L1とで決まるモーメント(F1×L1)が第2リターンスプリングの弾性力F2と中間レバーの回動中心との間の距離L2とで決まるモーメント(F2×L2)より大きくされている。
ケーブルに張力が加えられると、一対の中間レバーがアジャスタを支点として拡開させられ、それによって、一対のブレーキシューがドラムに押し付けられる。この場合に、第1リターンスプリングの弾性力によるモーメントが第2リターンスプリングの弾性力によるモーメントより大きいため、一対のブレーキシューは、アンカ側端部においてアンカに当接し、アジャスタ側の端部においてアジャスタから離間する状態となる。
このパーキングブレーキの作用状態において、アンカから他方のブレーキシューを離れさせるトルクが加えられると、他方のブレーキシューが円周方向に沿って移動させられ、アジャスタに当接する。それによって一方の中間レバーが回動し、ストラットを支点としてブレーキレバーが半径方向外方へ回動させられる。また、アジャスタが一方の中間レバーを円周方向に押すことによっても、ブレーキレバーは半径方向外方へ回動する。ブレーキレバーが、半径方向外方へ回動させられれば、ケーブルの経路が長くなり、ケーブルが緩むことが防止される。
アンカから一方のブレーキシューを離れさせるトルクが加えられると、一方のブレーキシューが円周方向に移動し、アジャスタに当接する。他方の中間レバーが回動し、ストラットを介して一方の中間レバー、ブレーキレバーを半径方向外方に回動させる。また、一方のブレーキシューの円周方向の移動により、一方の中間レバーが回動し、ブレーキレバーを半径方向外方へ回動させる。そのため、ケーブルの経路が長くなり、緩みが防止される。
【特許文献1】特開平10−110758号公報
【特許文献2】特開平10−103391号公報
【特許文献3】特開2001−165207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上述の特許文献1〜3に記載の方法とは異なる方法で、車両の停止状態において車輪にトルクが加えられた場合に、ブレーキ力の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0006】
請求項1に記載のパーキングブレーキシステムは、デュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムであり、(1)非回転体と、(2)車両の車輪と共に回転し、内周面が摩擦面である回転ドラムと、(3)その回転ドラムの内周側に配設され、外周面に摩擦材を有する一対のブレーキシューと、(4)それら一対のブレーキシューの一端部の間において、前記非回転体に固定されたアンカ部材と、(5)前記一対のブレーキシューの前記アンカ部材が設けられた側とは反対側の端部同士を連結し、前記一対のブレーキシューの一方の前記回転ドラムに加えられる円周方向の力を他方のブレーキシューの入力として伝達する伝達部材と、(6)前記一対のブレーキシューの前記一端部側に設けられ、前記一対のブレーキシューの摩擦材を前記ドラムの内周面に押し付ける押付装置と、(7)(a)電気駆動源と、(b)その電気駆動源により作動させられ、前記一対のブレーキシューの各々と係合することにより、前記一対のブレーキシューの各々の前記非回転体と前記アンカ部材との少なくとも一方に対する相対移動を抑制する少なくとも1つの移動抑制部材と、(c)前記車両の停止状態において前記車輪に加えられるトルクの向きを予測し、その予測に基づいて、前記押付装置の作動以前に、前記電気駆動源を制御して、前記少なくとも1つの移動抑制部材のうちの1つを前記トルクが加えられた場合にセカンダリシューとなるものに係合させて、前記押付装置の作動時に、前記セカンダリシューとなるものの前記アンカ部材から離間する向きの移動を抑制する移動抑制制御部とを備えた移動抑制装置とを含む。
本パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキにおいて、押付装置の作動により、一対のブレーキシューの両方に押付力が加えられて、ブレーキが作動させられる。しかし、何らかの原因によって、一対のブレーキシューのうちの一方が他方より移動し易い状態にある場合には、他方のブレーキシューは移動しないで、一方のブレーキシューのみが移動させられる。この状態において、車輪に、他方のブレーキシューをアンカ部材から離れさせるトルクが加えられると、他方のブレーキシューがアンカ部材から離れて円周方向に移動し、その他方のブレーキシューの連れ回り力が伝達部材を介して一方のブレーキシューに伝達され、一方のブレーキシューがアンカ部材に当接する。このように、押付装置の作用状態が保持された状態で、一対のブレーキシューが円周方向に移動させられると、押付装置の構造によっては、ブレーキ力が低下する場合がある。
それに対して、本請求項1に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、車両の停止状態において、車輪に加えられるトルクの向きを予測し、押付装置の作動以前に、そのトルクが加えられた場合にセカンダリシューとなるもの(以下、単に、セカンダリシューと略称する)に移動抑制部材を係合させて、セカンダリシューのアンカ部材から離れる向きの移動を抑制する。予測されるトルクの向きが、前進回転方向であっても、後退回転方向であっても、セカンダリシューに移動抑制部材が係合させられるのである。したがって、一対のブレーキシューの両方に押付力が加えられた場合に、プライマリシューとなるもの(以下、単に、プライマリシューと略称する)の方が必ず、セカンダリシューより移動させられ易い状態にある。その結果、押付装置の作動により、プライマリシューが必ず移動させられ、円周方向の力が伝達部材を介してセカンダリシューに伝達される。セカンダリシューは、アンカ部材に押し付けられる。
この状態で予測した向きのトルクが加えられても、セカンダリシューは、すでにアンカ部材に当接しているため、一対のブレーキシューの円周方向の移動が抑制されて、ブレーキ力の低下が抑制される。
このように、本請求項1に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、車両の停止状態において車輪に加えられるトルクの向きを予測し、移動抑制部材をセカンダリシューに係合させることにより、押付装置の作動時に、セカンダリシューの移動を抑制して、ブレーキ力の低下が抑制される。この方法は、特許文献1〜3の記載の方法と異なる。
なお、セカンダリシューは、移動抑制部材との係合により、アンカ部材から離間する向きの移動は抑制されるが、伝達部材を介してプライマリシューから伝達された円周方向力によって、アンカ部材に接近する向きの移動が許容される状態とされることが望ましい。このようにすれば、セカンダリシューと移動抑制部材との係合状態において、トルクが加えられても、セカンダリシューのアンカ部材に向かう移動が良好に許容される。
押付装置は、電動モータにより作動させられるものとすることができる。例えば、ケーブルが電動モータによって引っ張られることによって、ブレーキレバーが作動させられ、そのブレーキレバーとストラットとにより、一対のブレーキシューを回転ドラムに押し付ける構造のものとすることができる。その場合には、請求項9に記載のように、電動モータに電流が供給されなくても、摩擦材押付力を保持し得る保持機構を備えたものとすることが望ましい。
車両の停止状態において、車輪に加えられるトルクの向きは、車両が存する路面の傾斜の向きや、トランスミッションのシフト位置に基づいて予測することができる。車両はサービスブレーキの作動により停止し、その後、パーキングブレーキが作動させられ、パーキングブレーキの作用後に、サービスブレーキが解除されることが多い。サービスブレーキが解除されると、車輪に重力に起因するトルクが加えられたり、車両駆動源からの駆動トルクが加えられたりする。
車両の停止状態において、車輪に加えられるトルクの向きは、請求項2に記載のように、車両が停止している路面の傾斜の向きに基づいて予測することができる。路面の傾斜の向きは傾斜検出装置によって検出される。車両が登り坂に停止している場合には、後退回転方向のトルクが加えられ、降り坂に停止している場合には、前進回転方向のトルクが加えられると予測される。傾斜検出装置は、車両の前後方向の傾きを検出する姿勢検出装置であると考えることもできる。傾斜検出装置は、前後加速度センサを含むものとすることができ、さらに、車高センサを含むものとすることもできる。
また、車両駆動源が作動状態にあり、シフト位置がパーキング以外の位置にある場合においても、パーキングブレーキが作動させられることがある。その場合には、シフト位置がニュートラル以外の位置にあれば、そのシフト位置に基づいて車輪に加えられるトルクの向きを予測することができる。シフト位置が前進を指示する位置である場合には前進回転方向のトルクが加えられると予測され、後退を指示する位置である場合には後退回転方向のトルクが加えられると予測される。
移動抑制装置への作動開始指令が出された後に、押付装置への作動開始指令が出されるようにしても、押付装置への作動開始指令が先に出されるようにしてもよい。押付装置の実際の作動開始時に、移動抑制部材がセカンダリシューに係合していればよいのであり、押付装置の遅れが大きい(作動開始指令から実際の作動開始までの時間が長い)場合には、押付装置への作動開始指令が先に出されるようにすることができる。
請求項3に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記移動抑制制御部が、パーキングブレーキ作動指令に応じて、前記電気駆動源を制御する駆動源制御部を含み、当該パーキングブレーキシステムが、前記駆動源制御部によって前記電気駆動源が制御された後に、前記押付装置を作動させる押付装置制御部を含む。本項に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、移動抑制装置の電気駆動源の制御がパーキングブレーキ作動指令に応じて開始され、その後に、押付装置の作動が開始される。押付装置の作動は、移動抑制部材がセカンダリシューに係合したことを確認した後に開始されるようにしても、セカンダリシューに係合したと推定される時間が経過した後に開始されるようにしても、電気駆動源の始動後、直ちに、開始されるようにしてもよい。いずれにしても、押付装置の作動開始より前に、移動抑制部材がセカンダリシューに係合させられるようにした方が、より確実に、セカンダリシューのアンカ部材からの離間を抑制することができる。押付装置がマニュアルで作動させられる構造のものである場合には、運転者に、パーキングブレーキ操作部材の操作を遅らせる指令が出力されるようにすることが望ましい。
また、移動抑制部材とセカンダリシューとの係合状態は、ドラムブレーキの作用中、維持されるようにしたり、ドラムブレーキの作動後(作用中)の、予め定められた条件が満たされる時まで維持されるようにしたりすることができる。例えば、それらの係合状態を、ドラムブレーキの作動終了時(押付装置の作動終了時)に解除したり、トルクが加えられる時(例えば、サービスブレーキが解除された時)に解除したり、押付装置の作動終了から設定時間が経過した時に解除したりすることができる。押付装置が浮動型(押付装置の本体が非回転体に固定的に設けられていない型)のものである場合には、トルクが加えられるまでの間、移動抑制部材とセカンダリシューとの係合状態が維持されるようにすることが望ましい。押付装置の回転方向の移動を抑制するためである。
移動抑制装置において、移動抑制部材は1つであっても、2つであってもよい。移動抑制部材が1つである場合には、その1つの移動抑制部材が、一対のブレーキシューの両方にそれぞれ選択的に係合する。移動抑制部材が2つである場合には、移動抑制部材の一方が一対のブレーキシューのうちの一方に係合し、他方の移動抑制部材が他方のブレーキシューに係合する。移動抑制部材が2つである場合には、2つの移動抑制部材に共通に1つの電気駆動源を設けても、2つの移動抑制部材に対応して、それぞれ、電気駆動源を設けてもよい。
移動抑制部材は、係合ロッド(ピン、スライド部材と称することもある)としたり、係合爪としたりすることができる。いずれにしても、ブレーキシューと係合することにより、そのブレーキシューのアンカ部材から離間する向きの移動を抑制する。
ブレーキシューには係合部が形成されることが多いが不可欠ではない。係合部は、例えば、切欠、係合穴、係合凹部、係合突部等とすることができる。
また、移動抑制部材は、非回転体とアンカ部材とのいずれか一方に、直線的に移動可能に保持される場合、回動可能(曲線的に移動可能)に保持される場合等がある。本明細書において、移動とは、直線的な移動と曲線的な移動とを含み、曲線的な移動には、回動、回転等が含まれる。
電気駆動源は、電動モータとしたり、圧電素子等を有する電気的変形部材としたり、ソレノイドとしたりすること等ができる。
移動抑制装置(移動抑制部材の大きさ、形状、移動抑制部材を保持する保持装置の設置位置等)は、移動抑制部材とセカンダリシューとの係合状態において、セカンダリシューのアンカ部材から離間する向きの移動を抑制し、アンカ部材に接近する向きの移動を許容し得るように設計することが望ましい。また、ブレーキシューに係合部が形成され、その係合部が切欠である場合には、その切欠を、その切欠に移動抑制部材が係合した状態で、セカンダリシューのアンカ部材から離れる向きの移動を抑制し、アンカ部材に接近する向きへの移動を許容する形状、大きさとすることができる。さらに、係合部が係合突部である場合には、セカンダリシューの係合突部よりアンカ部材から離れた側において移動抑制部材と係合するように、移動抑制部材の形状、移動抑制部材保持装置の設置位置等を決めることが望ましい。
なお、移動抑制装置は、アンカ部材に接近する向きの移動も抑制し得るように設計することもできる。ブレーキシューに係合部が設けられる場合に、その係合部の設計についても同様である。
【0007】
以下、移動抑制装置の具体的態様について説明する。
請求項4に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記移動抑制部材が、前記一対のブレーキシューの各々に対応してそれぞれ設けられ、前記移動抑制装置が、前記非回転体と前記アンカ部材とのいずれか一方に固定的に設けられ、前記ドラムブレーキの非作用状態において、前記移動抑制部材の各々を、それぞれ、前記ブレーキシューに係合する係合位置と、前記ブレーキシューから外れた非係合位置との間で移動可能に保持する移動抑制部材保持装置を含む。
移動抑制部材保持装置は、移動抑制部材を相対移動可能に保持するものであり、非回転体とアンカ部材とのいずれか一方に固定的に設けられる。
また、移動抑制部材保持装置は、ドラムブレーキの非作用状態において、移動抑制部材をブレーキシューの予め定められた部分(ブレーキシューに係合部が設けられている場合には、その係合部)と係合可能な位置に設けられる。換言すれば、本項に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、ドラムブレーキの非作用状態において、移動抑制部材がブレーキシューに係合させられるのであり、押付装置の作動開始時には、移動抑制部材とセカンダリシューとは係合状態にある。移動抑制部材とセカンダリシューとの係合状態においては、非回転体とアンカ部材とのいずれか一方と、セカンダリシューとが連結された状態にあると考えることができる。
請求項5に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記移動抑制部材の各々が、係合ロッドであり、前記一対のブレーキシューの各々が、前記移動抑制部材と係合可能な係合部を有し、前記移動抑制部材保持装置が、前記非回転体の、前記ドラムブレーキの非作用状態において前記一対のブレーキシューの各々の前記係合部に対応する位置にそれぞれ設けられ、前記係合ロッドを、前記係合位置と前記非係合位置との間で直線的に移動可能に保持する直線移動型保持部を含み、前記移動抑制装置が、それら直線移動型保持部の各々と前記係合ロッドの各々との間にそれぞれ設けられ、前記係合ロッドを非係合位置に付勢する付勢部材を含み、前記電気駆動源が、前記係合ロッドの各々に対応してそれぞれ設けられ、前記係合ロッドを前記付勢部材の付勢力に抗して前記非係合位置から前記係合位置に移動させる電磁駆動力を加えるソレノイドを含む。
一対のブレーキシューに対応して、それぞれ、係合ロッドが設けられ、係合ロッドが、係合位置と非係合位置との間で直線的に移動させられる。係合ロッドの係合位置において、そのブレーキシューのアンカ部材から離れる向きの移動が抑制され、非係合位置において、ブレーキシューのアンカ部材から離れる向きの移動が許容される。本項に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、付勢手段により、係合ロッドが非係合位置に付勢される。ソレノイドに電流が供給されない状態においては、係合ロッドは非係合位置にある。
移動抑制部材保持装置は、係合ロッドを、非回転体としてのバッキングプレートに平行な姿勢で、平行な向きに移動可能に保持するものであっても、バッキングプレートに対して垂直な姿勢で、垂直な向きに移動可能に保持するものであってもよい。また、係合部が係合突部である場合に、係合突部は、ブレーキシューのウェブのバッキングプレートに対向する面に設けても、バッキングプレートとは反対側の面に設けてもよい。
請求項6に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記移動抑制部材の各々が、係合爪であり、前記一対のブレーキシューの各々が、前記係合爪と係合可能な係合部を有し、前記移動抑制部材保持装置が、前記ドラムブレーキの非作用状態において前記一対のブレーキシューの各々の前記係合部に対応する位置にそれぞれ設けられ、前記係合爪の各々を、それぞれ、前記ブレーキシューの係合部に係合する係合位置と、前記係合部から外れた非係合位置との間で回動可能に保持する回動型保持部を含み、前記電気駆動源が、前記係合爪の各々に対応してそれぞれ設けられ、前記係合爪を、前記係合位置と前記非係合位置との間で回動させる電動モータを含む。
係合爪は、係合位置と非係合位置との間で回動させられる。係合爪とブレーキシューの係合部との係合により、そのブレーキシューのアンカ部材から離間する向きの移動が抑制される。
移動抑制装置には、係合爪を非係合位置に付勢する付勢手段を設けることができる。その場合には、電動モータに電流が供給されない場合に、係合爪が非係合位置に保持される。
請求項7に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記移動抑制部材の各々が、係合爪であり、前記一対のブレーキシューの各々が、前記係合爪と係合可能な係合部を有し、前記移動抑制部材保持装置が、前記ドラムブレーキの非作用状態において前記一対のブレーキシューの各々の前記係合部に対応する位置にそれぞれ設けられ、前記係合爪の各々を、それぞれ、前記ブレーキシューの係合部に係合する係合位置と、前記係合部から外れた非係合位置との間で回動可能に保持する回動型保持部を含み、前記電気駆動源が、前記2つの係合爪の一方に対応して設けられ、その一方を、前記係合位置と前記非係合位置との間で回動させる電動モータを含み、前記移動抑制装置が、その電動モータの回転を他方の係合爪に伝達する駆動伝達機構を含む。
2つの係合爪が1つの電動モータにより回動させられる。駆動伝達機構は、電動モータの回転を他方の係合爪に伝達するものであり、例えば、一対のプーリ(歯車とすることもできる)とベルト(ワイヤ、チェーンとすることもできる)とを含むものとすることができる。また、駆動伝達機構は、一方の係合爪の回動を他方の係合爪に直接伝達するものとすることもできる。電動モータおよび駆動伝達機構により、一方の係合爪が係合位置にあり、他方の係合爪が非係合位置にある第1状態と、一方の係合爪が非係合位置にあり、他方の係合爪が係合位置にある第2状態とに切り換えられる。
請求項8に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記移動抑制部材の各々が係合爪であり、それら2つの係合爪が軸方向に一体的に移動可能とされ、前記移動抑制制御部が、前記2つの係合爪の一方が前記一対のブレーキシューの一方に係合し、他方の係合爪が他方のブレーキシューに係合しない第1状態と、他方の係合爪が前記他方のブレーキシューに係合し、前記一方の係合爪が前記一方のブレーキシューに係合しない第2状態との間で切り換える手段を含む。
2つの係合爪を保持する部材は、移動抑制部材保持装置の軸方向に直線的に移動可能に保持される。一方の係合爪が一方のブレーキシューに係合する場合には、他方の係合爪が他方のブレーキシューから外れることになり、第1状態と第2状態とのいずれか一方が選択的に実現される。一対のブレーキシューに、係合部(係合突部、切欠、係合穴、係合凹部等)を設けることができるが不可欠ではない。
【0008】
パーキングブレーキシステムは、また、前記移動抑制部材が、前記一対のブレーキシューに共通に設けられ、前記一対のブレーキシューの各々が、前記移動抑制部材との係合部をそれぞれ有し、前記移動抑制装置が、前記非回転体と前記アンカ部材とのいずれか一方に固定的に設けられ、前記移動抑制部材を回動可能に保持する移動抑制部材保持装置を含み、前記移動抑制制御部が、前記移動抑制部材を回動させることより、前記一対のブレーキシューの一方の係合部に選択的に係合させる手段を含むものとすることができる。
1つの移動抑制部材が、それの回動により、一対のブレーキシューの係合部のいずれか一方に選択的に係合させられる。
【実施例】
【0009】
本発明の一実施例であるパーキングブレーキシステムを図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、符号10は電動モータを示し、符号12はクラッチ付き運動変換機構を示す。クラッチ付き運動変換機構12は、電動モータ10の出力軸の回転を出力部材の直線運動に変換するとともに、出力部材に加えられる力によって電動モータ10が回転させられることを防止する。また、符号14,16は左右後輪を示し、符号18,20は車輪14,16にそれぞれ設けられたパーキングブレーキを示す。パーキングブレーキ18,20とクラッチ付き運動変換機構12とは、それぞれ、ケーブル22,24によって連結されている。ケーブル22,24が、電動モータ10の作動により引っ張られると、パーキングブレーキ18,20が作用する状態とされる。本実施例においては、電動モータ10,クラッチ付き運動変換機構12,ケーブル22,24、パーキングブレーキ18,20等により電動パーキングブレーキ機構30が構成されている。
【0010】
クラッチ付き運動変換機構12は、図2に示すように、ギヤ列40,クラッチ42,ねじ機構44等を含む。
ギヤ列40は、複数のギヤ46,48,50から成る。電動モータ10の出力軸52にはギヤ46が噛合され、ギヤ46の回転が、ギヤ48を経てギヤ50に伝達される。ギヤ50の電動モータ10とは反対側の端面には、軸線方向と平行に突出する駆動伝達部54が設けられている。
クラッチ42は、一方向クラッチであり、図3に示すように、ハウジング60と、そのハウジング60の内周側に設けられたコイルスプリング62と、クラッチ42の出力軸64と一体的に回転可能なロータ66とを含む。コイルスプリング62は、巻径が弾性的に僅かに収縮させられた状態でハウジング60に嵌合されており、それの外周面がハウジング60の内周面に密着し、素線の端部68,70が、それぞれ、内周側に向かって突出させられた状態で設けられている。また、ギヤ50の駆動伝達部54が2つの端部68,70で挟まれた2つの空間の一方に位置し、ロータ66が他方に位置する。
【0011】
電動モータ10の回転に伴ってギヤ50が回転すると、駆動伝達部54が端部68,70のいずれか一方に当接し、コイルスプリング62が巻き締められてハウジング60の内周面とスプリング62の外周面との間の摩擦力が小さくなる。それによって、コイルスプリング62,ロータ66が回転可能となり、出力軸64を回転させる。出力軸64はギヤ50と一体的に回転させられるのであり、クラッチ42によって、電動モータ10の回転が出力軸64に伝達されることになる。
電動モータ10に電流が供給されない状態において、出力軸64にトルクが加わると、ロータ66が端部68,70のいずれか一方に当接し、それによって、コイルスプリング62が拡径させられる。コイルスプリング62の外周面とハウジング60の内周面との間の摩擦力が大きくなり、コイルスプリング62の回転は阻止される。クラッチ42によって、出力軸64のトルクのギヤ50への伝達が阻止され、電動モータ10に電流が供給されない状態において、出力軸64に加えられるトルクによって電動モータ10が回転させられることはないのである。
【0012】
ねじ機構44は、ハウジング80と、軸線Lと平行な方向に延びた雄ねじ部材82と、雄ねじ部材82に螺合させられた図示しないナットと、ナットにM軸線回りに相対回動可能に取り付けられたイコライザ84とを含む。雄ねじ部材82は、一対のラジアルベアリング85(他方は図示は省略する)、ニードルスラストベアリング86を介して、ハウジング80に相対回転可能に支持される。イコライザ84の両アームには、それぞれ、ケーブル22,24のインナケーブル87が連結されている。イコライザ84の本体には係合突部88が設けられ、図示は省略するが、ハウジング80に、軸線Lと平行な方向に設けられたガイドに係合させられる。その結果、イコライザ84は、ハウジング80に、軸線Lを中心とした相対回転不能、軸線Lと平行な方向に相対移動可能、かつ、係合突部88の回り(軸線Mの回り)に相対回動可能となっている。
【0013】
イコライザ84は、図2に実線で示す位置と二点鎖線で示す位置との間で、ハウジング80に対して相対移動可能とされており、イコライザ84の相対移動に伴ってケーブル22,24のインナケーブル87が引っ張られたり、緩められたりする。また、イコライザ84は、2つのケーブル22,24のインナケーブル87に加えられる張力(以下、単にケーブル22,24の張力という)が同じになるように、係合突部88の回り(軸線Mの回り)に回動させられる。
なお、ハウジング80の内部には、ケーブル24の張力を検出する張力センサ90が設けられている。イコライザ84により、ケーブル22,24に加えられる張力は同じ大きさとされるため、張力センサ90によって検出されたケーブル24に加えられた張力は、ケーブル22に加えられた張力でもある。
また、符号92は異常時解除装置を示す。異常時解除装置92は、電動モータ10の異常時等に、パーキングブレーキ18,20を解除するための装置である。ケーブル93をギヤ95の内部に押し込み、手動で、図示しないグリップ部を回転させると、ギヤ95が回転させられる。そのギヤ95の回転がギヤ46、48を介してギヤ50に伝達され、ギヤ50の回転により、イコライザ84がケーブル22,24を緩める向きに移動させられる。それによって、パーキングブレーキ18,20が解除される。
【0014】
パーキングブレーキ18,20は、図4,5に示すように、本実施例においては、デュオサーボ型のドラムブレーキである。したがって、以下、必要に応じて、パーキングブレーキ18,20をドラムブレーキと称することがある。また、図4において、符号97はブレーキディスクを示し、符号98はキャリパを示し、これらブレーキディスク97とキャリパ98とは、共同してサービスブレーキとしてのディスクブレーキ99を構成する。パーキングブレーキ18,20としてのドラムブレーキは、ブレーキディスク97の内周側に設けられているのであり、本実施例においては、ドラムインディスクブレーキとなっている。ドラムブレーキ18,20は、それそれ、構造が同じものであるため、ドラムブレーキ18について説明し、ドラムブレーキ20についての説明を省略する。
【0015】
ドラムブレーキ18は、図示しない車体に取り付けられた非回転部材としてのバッキングプレート100と、内周面に摩擦面102を備えて車輪14と共に回転するドラム104とを備えている。バッキングプレート100の一直径方向に隔たった2箇所には、それぞれアンカ部材106と中継リンクとしてのアジャスタ108とが設けられている。アンカ部材106はバッキングプレート100に固定されており、アジャスタ108はフローティング式とされている。それらアンカ部材106とアジャスタ108との間には、各々円弧状を成す一対のブレーキシュー110a,110bがドラム104の内周面に対面するように取り付けられている。一対のブレーキシュー110a,110bは、シューホールドダウン装置112a,112bによってバッキングプレート100にそれの面に沿って移動可能に取り付けられている。なお、バッキングプレート100の中央に設けられた貫通穴は、図示しないアクスルシャフトの貫通を許容するためのものである。
【0016】
一対のブレーキシュー110a,110bは、一端部同士がアジャスタ108により作動的に連結される一方、各他端部がアンカ部材106と当接して回動可能に支持されるようになっている。一対のブレーキシュー110a,110bの一端部同士は、アジャスタスプリング114によりアジャスタ108に当接する向きに付勢されており、各他端部はリターンスプリング115によりアンカ部材106に向かって付勢されている。各ブレーキシュー110a,110bの外周面に摩擦材としてのブレーキライニング116a,116bが保持され、それら一対のブレーキライニング116a,116bがドラム104の摩擦面102に接触させられることにより、それらブレーキライニング116a,116bとドラム104との間に摩擦力が発生する。アジャスタ108は、一対のブレーキシュー110a,110bの摩耗に応じて一対のブレーキライニング116a,116bとドラム104との隙間を調整するために操作される。
【0017】
図5に押付機構120を示す。押付機構120は、ブレーキレバー122と、ストラット124とを含み、アンカ部材106をバッキングプレート100に固定するボルト138、140の頭部に相対移動可能に支持されている。ブレーキレバー122,ストラット124は、それぞれ、板状部材であり、ストラット124を構成する2枚の板材の間にブレーキレバー122が挟まれた状態で、ブレーキレバー122とストラット124とがそれらの一端部において連結軸126の回りに相対回動可能に連結されている。ブレーキレバー122において、連結軸126からバッキングプレート100側に隔たった部分に設けられた係合部128にブレーキシュー110aが係合させられ、連結軸126からバッキングプレート100に平行な方向において隔たった端部に設けられた係合部130にケーブル22のインナケーブル87が連結されている。インナケーブル87は、バッキングプレート100に設けられた貫通孔132に一端が固定されたアウタチューブ134に案内されて、バッキングプレート100のブレーキシュー110等が配設された側とは反対側に伸び出させられている。
また、ストラット124において、連結軸126とは反対側の端部に設けられた係合部135にブレーキシュー110bが係合させられている。
なお、係合部130は、図示する状態においては、貫通穴132の(ケーブル22のバッキングプレート100への固定端の)中心線Nより、後退回転方向側に位置する。また、後述するように、押付機構120が円周方向に相対移動させられると、それに伴って係合部130も相対移動させられるが、設計上、中心線Nより前進回転方向側の位置まで相対移動させられることがないようにされている。
【0018】
押付機構120は、被支持部136,137においてボルト138、140の頭部に支持されており、インナケーブル87が引っ張られると、ブレーキレバー122が被支持部136とボルト138の頭部との接触点まわりに回動し、その結果、連結軸126およびストラット124が図5において右方へ移動させられ、ストラット124がブレーキシュー110bを右方へ押す。その際、ブレーキシュー110bからの反力がストラット124,連結軸126およびブレーキレバー122を介してブレーキシュー110aに伝達され、ブレーキシュー110aが図5において左方へ押される。ブレーキシュー110a,110bには、それぞれ、同じ大きさの拡開力が加えられて、拡開させられるのであり、その結果、ブレーキライニング116a,116bがドラム104の内周面102に互いに同じ大きさの力で押し付けられる。なお、ケーブル22に加えられた引張力は、ブレーキレバー122のレバー比に応じて倍力され、その倍力された力から、被支持部136,137とボルト138,140の頭部との間の摩擦力に応じた力を差し引いた大きさの拡開力として、ブレーキシュー110a,110bに加えられる。
この場合の押付力と制動可能トルクとの間には、図6に示す関係が成立する。この関係から、ケーブル22,24の引張力と、制動可能トルクとの関係が取得され、ケーブル張力が目標張力になるように、電動モータ10への供給電流が制御される。
【0019】
アンカ部材106の近傍に移動抑制機構150が設けられる。移動抑制機構150は、一対のブレーキシュー110a,bのうちのいずれか一方のシューのアンカ部材106から離れる向きの移動を選択的に抑制するものである。一対のブレーキシュー110a,bのウェブ151a,bには、それぞれ、係合部としての係合穴152a,bが設けられる。移動抑制機構150は、それら係合穴152a,bに対応して、それぞれ設けられた一対の移動抑制部材としてのピン160a,bと、ピン160a,bをバッキングプレート100と垂直な方向に直線的に相対移動可能に保持するハウジング162 a,bと、ハウジング162a,bとピン160a,bとの間に設けられ、ピン160a,bを非係合位置(後退端)に付勢する付勢部材としてのスプリング164a,bと、ソレノイド166a,bとを含む。
ハウジング162a,bは、それぞれ、バッキングプレート100の、ドラムブレーキ18,20の非作用状態において、一対のブレーキシュー110a,bの係合穴152a,bに対応する位置に、固定的に設けられる。
ソレノイド166a,bは、ピン160a,bに、スプリング164a,bの付勢力に抗して、係合位置に向かって移動(前進)させる電磁駆動力を付与するものである。ピン160a,bは、ソレノイド166a,bに電流が供給されない間(OFF)、スプリング164a,bの付勢力によって非係合位置にあるが、電流が供給される(ON)と、係合位置に移動させられる。
係合穴152a,bは、ピン160a,bが係合している状態において、ブレーキシュー110a,bがアンカ部材106から離れる向きの移動を抑制し、アンカ部材106に接近する向きの移動を許容するの形状、大きさとされている。その結果、ピン160a,bが係合穴152a,bに係合している状態で、トルクが加えられても、ブレーキシュー110a,bのアンカ部材106に接近する向きの移動が良好に許容されることになる。
【0020】
なお、係合穴152a,bのアンカ側を傾斜面とするとともに、ピン160a,bのアンカ側を傾斜面とすることができる。その結果、ピン160a,bが係合穴152a,bに係合した状態で、ブレーキシュー110a,bのアンカ部材106からの離間を良好に抑制することが可能となる。
【0021】
電動モータ10、移動抑制機構150の電気駆動源(ソレノイド166a,b)等は、図1に示すように、電動パーキングブレーキECU200からの指令に基づいて制御される。電動パーキングブレーキECU200は、コンピュータを主体とするものであり、入出力部202,実行部204,記憶部206等を含む。入出力部202には、パーキングブレーキスイッチ(以下、単に、パーキングスイッチと略称する)210,張力センサ90(図2参照)が接続されるとともに、電動モータ10が駆動回路212を介して接続され、ソレノイド166a,bが、それぞれ、駆動回路213を介して接続される。電動モータ10が電動パーキングブレーキのアクチュエータである。
電動パーキングブレーキECU200は、CAN(Car Area Network)214を介して、車両に設けられた他のコンピュータ、例えば、スリップ制御ECU(VSCECU)220,エンジン・トランスミッションECU(ETCECU)222等に接続される。スリップ制御ECU220には前後加速度センサ226、サービスブレーキスイッチ227等が接続され、エンジン・トランスミッションECU222にはシフト位置センサ228等が接続されており、前後加速度、サービスブレーキスイッチ227のON/OFF、シフト位置等の情報がスリップ制御ECU220,エンジン・トランスミッションECU222,CAN214を介して、電動パーキングブレーキECU200に供給される。
【0022】
パーキングスイッチ210は、パーキングブレーキ18,20の作動(以下、パーキングブレーキ18,20の作動をロックと称することがある)を指示する場合、解除(以下、パーキングブレーキ18,20の解除をリリースと称することがある)を指示する場合に、操作されるスイッチであり、例えば、ロック側操作部とリリース側操作部とを有するものとすることができる。ロック側操作部が操作された場合(以下、ロック指示操作が行われた場合と略称する)にはロック要求があるとされ、リリース側操作部が操作された場合(以下、リリース指示操作が行われた場合と略称する)にはリリース要求があるとされる。
前後加速度センサ226は、車両の前後方向の加速度を検出するものであり、サービスブレーキスイッチ227は、図示しないサービスブレーキ操作部材が操作状態にある場合にON状態となり、非操作状態にある場合にOFF状態となるスイッチである。サービスブレーキ操作部材が操作状態にある場合には、サービスブレーキ99は作用状態にあるとすることができる。このことから、サービスブレーキスイッチ227は、実際のサービスブレーキ99の作用状態を検出するスイッチとすることもできる。例えば、キャリパ98にブレーキシリンダが保持されている場合には、ブレーキシリンダの液圧を検出して、ブレーキシリンダの液圧に基づいてON/OFFを検出するものとし、キャリパ98に電動モータが保持されている場合には、電動モータに流れる電流、押付力を検出して、これらに基づいてON/OFFを検出するものとすることができる。
シフト位置センサ228は、本実施例においては、トランスミッションの状態(例えば、ソレノイドバルブのソレノイドへの電流供給状態:シフト位置に対応)に基づいてシフト位置を検出するものであるが、シフト操作部材の位置を検出するものであってもよい。車両の停止状態においては、これらは対応すると考えることができるからである。
【0023】
車両は、通常、サービスブレーキ99の作動によって停止させられ、その後に、パーキングブレーキ18,20が作動させられ、パーキングブレーキ18,20の作用状態において、サービスブレーキ99が解除されるのが普通である。この場合に、車両が坂道に停止している場合には、車輪に重力に起因するトルクが加えられる。また、トランスミッションのシフト位置がパーキングや、ニュートラル以外の位置である場合には、そのシフト位置に応じた駆動トルク(車両駆動源のトルク)が加えられる。
パーキングブレーキ18,20の作動時には、押付機構120は、前述のように、一対のブレーキシュー110a,bに同じ大きさの押付力を付与する。しかし、何らかの原因で、ブレーキシュー110aがブレーキシュー110bより移動し易い状態にある場合には、押付機構120から加えられた押付力によってブレーキシュー110bは拡開させられないで、ブレーキシュー110aが拡開させられる。ブレーキシュー110aに加えられる円周方向力はアジャスタ108を介してブレーキシュー110bに伝達されて、ブレーキシュー110bがアンカ部材106に押し付けられる。このブレーキの作用状態において、前進回転方向Pのトルクが加えられても、ケーブル22,24の緩みは小さいが、後退回転方向Qのトルクが加えられると、ブレーキシュー110bがアンカ部材106から離間して、円周方向に移動させられ、円周方向の力がアジャスタ108を介してブレーキシュー110aに伝達されて、ブレーキシュー110aがアンカ部材106に当接する。一対のブレーキシュー110a,bが円周方向に移動させられるのであり、押付機構120も円周方向に移動し、ケーブル22,24が緩み、ブレーキ力が低下することになる。
しかし、ブレーキシュー110a,bのいずれが移動し易く、いずれが移動し難いかは、わからないのが普通である。そこで、本実施例においては、一対のブレーキシュー110a,bのうち一方を、選択的に、移動し難くして、押付機構120の作動により、必ず、他方のブレーキシューが移動させられるようにするのである。
【0024】
車両の停止状態において、車輪14,16に加えられるトルクの向きは、車両が存する路面が下り勾配の路面(降坂)である場合には、前進回転方向Pとなり、上り勾配の路面(登坂)である場合には、後退回転方向Qとなる。図7に示すように、前後加速度Gと路面の傾斜角度θとの間には、式
G=g・sinθ
が成立する。この式から、下り勾配である場合には、前後加速度Gが正の値、θが正の値となり、上り勾配である場合には、前後加速度Gが負の値、θが負の値となることが明らかとなる。このことから、前後加速度Gの正、負に基づけば、路面の傾斜の向きを取得することができる。また、傾斜角度の絶対値が予め定められた設定値以上である場合には、路面が傾斜しており、設定値より小さい場合に、ほぼ水平であると取得される。
さらに、車両駆動源が作動状態にあり、シフト位置がパーキング位置、ニュートラル位置以外の位置で、パーキングスイッチ210が操作された場合には、パーキングブレーキ18,20が作動させられるが、その後に、サービスブレーキ99が解除された場合には、シフト位置に応じたトルクが加えられる。シフト位置が前進指示位置である場合には前進回転方向Pのトルクが加えられ、後退指示位置である場合には後退回転方向Qのトルクが加えられる。
本実施例においては、車両が停止している路面が傾斜している場合には、その傾斜の向きに基づいてトルクが向きが予測され、車両が停止している路面がほぼ水平である場合には、駆動トルクの向きに基づいてトルクの向きが予測される。
なお、予測されるトルクの向きは、路面の傾斜角度の大きさ、向きと駆動トルクの大きさ、向きとの両方に基づいて取得することもできる。
【0025】
本実施例において、図8のフローチャートで表されるパーキングブレーキ制御プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、パーキングスイッチ210が操作されたか否かが判定され、操作された場合には、S2において、ロック指示であるか否かが判定される。ロック指示である場合には、S3,4において、上述のように、前後加速度センサ226による検出値に基づいて路面の傾斜の向きが取得され、シフト位置センサ228による検出結果に基づいて駆動トルクの向きが取得される。そして、S5において、サービスブレーキ99が解除された場合に加えられるトルクの向きが予測され、トルクが加えられた場合にセカンダリシューとなるものに対応するソレノイドが選択される。例えば、加えられるトルクの向きが前進回転方向Pであると予測された場合には、ブレーキシュー110bに対応するソレノイド166bが選択され、後退回転方向Qであると予測された場合には、ブレーキシュー110aに対応するソレノイド166aが選択される。S6において、その選択されたソレノイド166b(例えば、前進回転方向Pのトルクが加えられると予測された場合)に電流が供給されて、ピン160bが前進し、ブレーキシュー110bに係合する。S7において、ケーブル22,24が引っ張られ、押付機構120が作動させられる。
【0026】
S7の実行を、図9のフローチャートで示す。S31において、電動モータ10が一方向に回転させられ、S32において、張力センサ90によって張力が検出され、S33において、検出張力が目標張力に達したか否かが判定される。目標張力は、本実施例においては、車両を停止状態に保ち得る大きさに決定される。例えば、車両が停止している路面の傾斜角度が大きい場合は小さい場合より大きい値に決定され、降り坂に停止している場合に、シフト位置が前進指示位置である場合には、そうでない場合より大きい値に決定される。また、登り坂に停止している場合に、シフト位置が後退指示位置である場合には、そうでない場合より大きい値に決定される。いずれにしても、目標張力に達した場合には、S34において、電動モータ10が停止させられる。
ケーブル22,24が引っ張られる際に、ピン160bがブレーキシュー110bに係合しており、ブレーキシュー110bがアンカ部材106から離間し難くされている。そのため、押付機構120によって、ブレーキシュー110aが移動させられ、ブレーキシュー110bが移動させられることはない。ブレーキシュー110aに加えられる円周方向の力は、アジャスタ108を介してブレーキシュー110bに伝達されて、ブレーキシュー110bがアンカ部材106に押し付けられる。
【0027】
図8のフローチャートのS1において、パーキングスイッチ210の操作が検出されない場合には、S8において、パーキングブレーキ18,20が作用状態にあるか否かが判定される。パーキングブレーキ18,20が作用状態にある場合には、S8の判定がYESとなり、S9において、サービスブレーキスイッチ227がON状態にある(サービスブレーキ99が作用状態にある)か否かが判定され、S10において、パーキングブレーキ18,20が作動させられてから(ケーブル張力が目標張力に達して、電動モータ10が停止させられてから)設定時間が経過したか否かが判定される。設定時間は、運転者が、通常、パーキングスイッチ210のロック操作を行ってから、図示しないサービスブレーキ操作部材の操作を解除するまでの時間に基づいて決まる時間である。
パーキングブレーキ18,20の作用状態において、サービスブレーキ99が作用状態にあり、設定時間が経過する前においては、S1,8〜10が繰り返し実行されて、ソレノイド166bはON状態に維持される。S1,8〜10が繰り返し実行されるうちに、サービスブレーキ99が解除された場合には、S9の判定がNOとなって、S11において、ソレノイド166bがOFFにされる。予測されたトルクが加えられ、セカンダリシュー110bは、アンカ部材106にさらに強く押し付けられる。この状態においては、ピン160bをブレーキシュー110bに係合させておく必要はない。
また、サービスブレーキ99が解除されなくても、設定時間が経過した場合には、ソレノイド166bがOFFにされる。ソレノイド166bへの通電時間が長くなり過ぎることは望ましくないからである。
このように、パーキングブレーキ18,20において、実際にトルクが加えられるまでの間、ピン160とブレーキシュー110との係合状態が維持されるため、その間に、押付機構120の円周方向の移動を良好に回避することができ、ケーブル22,24の緩みを良好に抑制することができる。
さらに、スプリング164によってピン160が非係合位置に付勢されているため、電気系統の故障が生じても、一対のブレーキシュー110a,bを確実に拡開させることができる。
【0028】
それに対して、パーキングスイッチ210の解除指示操作が行われた場合には、S2の判定がNOとなり、S12において、パーキングブレーキ18,20が解除される。図10のフローチャートで示すように、S51において、電動モータ10が逆方向に回転させられ、S52において、張力センサ90による検出値が読み込まれ、S53において、検出値がほぼ0であるとみなし得る設定値以下となったか否かが判定される。設定値より大きい間は、S52,53が繰り返し実行されるが、設定値以下になると、S54において、電動モータ10への供給電流が0とされる。一対のブレーキシュー110a,bは、リターンスプリング115等により、縮径させられ、予め定められた非作用位置に戻される。
また、S55において、ソレノイド166bへの電流供給がOFFにされる。たいていの場合には、パーキングスイッチ210のリリース操作が行われる以前に、ソレノイド166bへの電流供給はOFFにされているが、ソレノイド166bへの電流供給がOFFにされる以前にリリース操作が行われた場合に、ソレノイド166bに電流が供給され続けることは望ましくない。S55は、それを回避するために設けたステップである。
【0029】
以上のように、本実施例においては、電動パーキングブレーキECU200の図8のフローチャートで表されるパーキングブレーキ制御プログラムのS1〜6を記憶する部分、実行する部分等により移動抑制制御部が構成され、移動抑制制御部、移動抑制機構(電気駆動源としてのソレノイド166,移動抑制部材としてのピン160等)150により移動抑制装置が構成される。ピン160は係合ロッドの一態様である。
また、移動抑制制御部のうちのS1,2,6を記憶する部分、実行する部分等により駆動源制御部が構成され、S3〜5を記憶する部分、実行する部分等によりトルク方向予測部が構成される。
さらに、電動パーキングブレーキECU200のS5,6を記憶する部分、実行する部分等により押付装置制御部が構成される。
また、移動抑制装置のうちの、ハウジング162a,bにより移動抑制部材保持装置、直線移動型保持部が構成される。
【0030】
なお、ソレノイド166への電流供給は、ケーブル張力が目標張力に達した後にOFFにすることもできる。そのようにすれば、より一層、ソレノイド166における消費電力の低減を図ることができる。押付機構120がバッキングプレート100に固定的に設けられたものである場合に、有効である。
また、移動抑制機構の構造は、上記実施例におけるそれに限らない。例えば、上記実施例においては、スプリング164がピン160を非係合位置に付勢する状態で配設されていたが、係合位置に付勢する状態で配設することもできる。その場合には、パーキングブレーキ18,20の作用状態において、ソレノイド166への電流供給をOFFにしておけばよい。さらに、ハウジング162,ソレノイド166等は、バッキングプレート100の一対のブレーキシュー110a,bが設けられた側とは反対側に設けることもできる。
【0031】
また、移動抑制機構は、図11、12に示す構造のものとすることができる。本実施例においては、一対のブレーキシュー110a,bのウェブ151a,bの中央よりアンカ部材側の部分に、それぞれ係合部としての切欠298a,bが形成されている。移動抑制機構300は、一対の移動抑制部材としての係合爪302a,bと、係合爪302a,bをそれぞれ保持する本体(ハウジング)303a,bと、係合爪302a,bの各々に対応して設けられた電気駆動源としての電動モータ304a,bと、係合爪302a,bを、それぞれ、非係合位置に付勢するスプリング306a,b(306bの図示は省略する)とを含む。
ハウジング303a,bは、バッキングプレート100の、パーキングブレーキ18,20の非作用状態において、係合爪302a,bの各々が、一対のブレーキシュー110a,bの切欠298a,bに係合可能な位置に、それぞれ設けられる。ハウジング303a,bは、電動モータ304a,bの出力軸316a,bに、それぞれ、相対回転不能に設けられ、係合爪302a,bは、ハウジング303a,bと一体的に回動可能に設けられる。
スプリング306a,bは、それぞれ、係合爪302a,bとバッキングプレート100との間に設けられ、電動モータ304a,bは、バッキングプレート100の一対のブレーキシュー110a,bが配設された側とは反対側に固定的に設けられる。
切欠298a,bの形状、大きさは、係合爪302a,bが係合した状態で、ブレーキシュー110a,bのアンカ部材106から離間する向きの移動を抑制し、アンカ部材106へ接近する向きの移動を許容する大きさ、形状とされる。
【0032】
移動抑制機構300は、上記実施例における場合と同様に制御される。上記実施例の図8,10のフローチャートのS6,11,55において、選択されたソレノイドを、選択された電動モータに置き換えればよい。
車両の停止状態において、車輪に加えられると予測されるトルクの向きが前進回転方向Pである場合には、電動モータ304bが選択される。電動モータ304bにより、係合爪302bが、スプリング306bの付勢力に抗して図11の時計回りに回動させられ、切欠298bに係合する。それによって、セカンダリシュー110bのアンカ部材106からの離間が抑制される。また、パーキングブレーキ18,20の作動後、サービスブレーキ99が解除された場合に、上記電動モータ304への電流供給がOFFにされる。係合爪302bは、スプリング306bの付勢力により非係合位置に戻される。
予測されるトルクの向きが後退回転方向Qである場合には、電動モータ304aが選択される。係合爪302aがスプリング306aの付勢力に抗して、図11の反時計回りに回動させられ、爪部314aが切欠298aに係合する。それによって、セカンダリシュー110aのアンカ部材106から離間する向きの移動が抑制され、トルクが加えられた場合の、ブレーキ力の低下を抑制することができる。
本実施例においては、本体303a,bが移動抑制部材保持装置に対応する。移動抑制部材保持装置は、回動型保持部でもある。
【0033】
なお、スプリング306a,bを設けることは不可欠ではない。その場合には、係合爪302a,bがセカンダリシュー110a,bの切欠298a,bに係合した状態で、電動モータ304a,bへの供給電流が0とされても、それらの係合状態を維持することができる。
【0034】
移動抑制機構は、図13,14に示す構造を成したものとすることができる。本実施例における移動抑制機構350と上述の図11,12に示す移動抑制機構300とを比較すると、移動抑制機構350が、一対の係合爪302a,bの本体(ハウジング)303a,b同士を連結するワイヤ352を含む点、係合爪302aに対応する電動モータが設けられておらず、ハウジング303aが支持ピン354に相対回転可能に保持されている点、係合爪302bに対応するスプリング306bが設けられていない点が異なる。ワイヤ352は、ハウジング303a,bの各々に相対回転不能に巻き付けられる、本実施例においては、ワイヤ352は、ハウジング303a,bの各々に、それぞれ、少なくとも1箇所ずつ固定されている。
本実施例においては、スプリング306aの付勢力により、電動モータ304bに電流が供給されない状態で、係合爪302bが係合位置、係合爪302aが非係合位置にある第1状態にある。
【0035】
予測されるトルクの向きが前進回転方向Pである場合には、電動モータ304bに電流が供給されない第1状態に保たれる。係合爪302bがブレーキシュー110bに係合した状態にあるため、押付機構120の作動時に、ブレーキシュー110bのアンカ部材106からの離間が抑制される。この場合には、パーキングブレーキ18,20の作用中においても、パーキングブレーキ18,20が解除された後においても、第1状態に維持される。パーキングブレーキ18,20の作用の有無とは関係なく、係合爪302bとブレーキシュー110bとの係合状態は保たれることになるが、それによって問題が生じることはない。移動抑制機構350においては、第2状態に切り換える必要が生じるまで、第1状態に保たれる。
【0036】
予測されるトルクの向きが後退回転方向Qである場合には、電動モータ304bが作動させられる。係合爪302bが非係合位置に回動させられ、係合爪302aがスプリング306aの付勢力に抗して、係合位置に回動させられる。係合爪302aが切欠298aに係合し、係合爪302bが切欠298bに係合しない第2状態とされる。その結果、ブレーキシュー110aのアンカ部材106から離間する向きの移動が抑制される。第2状態において、電動モータ304bには保持電流が供給され続ける。
この場合には、サービスブレーキ99が解除された場合等に、電動モータ304への供給電流が0にされる。スプリング306aの付勢力によって、一対の係合爪302a,bは図13の時計回りに回動させられるが、係合爪302bと切欠298bとは係合しない。しかし、パーキングブレーキ18,20が解除され、リターンスプリング115によってブレーキシュー110a,bが非作用位置(パーキングブレーキ18,20が非作用状態にある場合の位置)に戻されれば、切欠298bに係合し、第1状態となる。
【0037】
図15のフローチャートで表されるパーキングブレーキ制御プログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。図8のフローチャートで表されるパーキングブレーキ制御プログラムにおける場合と、同じ実行が行われるステップについては、同じステップ番号を付して説明を省略する。
S5aにおいて、トルクの向きが予測され、S6aにおいて、予測されたトルクの向きが前進回転方向Pであるか否かが判定される。前進回転方向Pである場合には、S7において、ケーブル22,24が引っ張られるのであるが、後退回転方向Qである場合には、S6bにおいて、電動モータ304bが作動させられて、第2状態に切り換えられた後に、ケーブル22,24が引っ張られる。
パーキングブレーキ18,20の作用中においては、S8aにおいて、第2状態にあるか否かが判定される。第1状態にある場合には、S9,10が実行されることはないが、第2状態にある場合には、S9,10が実行され、サービスブレーキ99が解除された場合、あるいは、パーキングブレーキ18,20が作動させられてから設定時間が経過した場合に、S11aにおいて、電動モータ304bがOFFにされる。
このように、本実施例においては、予測されるトルクの向きが前進回転方向Pである場合には、電動モータ304bを作動させる必要がないという利点がある。しかも、水平な路面に停止している状態で、パーキングブレーキ18,20が作動させられた場合においては、シフト位置が前進指示位置にある確率は、後退指示位置にある確率より高いと考えられる。そのため、予測されるトルクの向きが前進回転方向Pである頻度は、後退回転方向Qである頻度より高くなる。このことから、電動モータ304bに電流が供給されないで、第1状態に維持されるようにすれば、消費電力の低減を図ることが可能となる。また、第1状態にある場合において、電気系統の故障が生じても、ブレーキシュー110aを円周方向に移動させることができるため、パーキングブレーキ18,20を作用させることができる。
【0038】
なお、ブレーキシュー110のウェブ151に設けられた係合部は、切欠ではなく、係合突部とすることができる。例えば、ブレーキシュー110の、係合爪302との係合状態において、係合爪302よりアンカ部材106側の部分に係合突部を形成する。係合突部と係合爪302との係合により、ブレーキシュー110のアンカ部材106から離間する向きの移動が抑制される。
【0039】
移動抑制機構は、図16に概念的に示す構造を成したものとすることができる。本実施例においては、一対のブレーキシュー110a,bのウェブ151a,bのアンカ側端部に、それぞれ、係合突部398a,bが形成されている。係合突部398a,bは、ウェブ151a,bのバッキングプレート100に対向する側とは反対側の面に設けられる。一方、移動抑制機構400は、アンカ部材106に固定的に設けられたハウジング(保持部)402(アンカ部材106をハウジングとして利用ても、アンカ部材106に固定的に設けてもよい)と、両端部にそれぞれ係合爪404a,bが一体的に形成された1つの係合ロッド406とを含み、係合ロッド406は、ハウジング402に、それの軸方向に相対移動可能に保持される。係合ロッド406は、図示しない電気駆動源により作動させられる。電気駆動源は、例えば、係合ロッド406に図16の右方(Qの接線方向であるが、以下、Q方向と略称する。)の駆動力を付与するソレノイドや圧電素子等と、左方(以下、P方向と略称する。)の駆動力を付与するソレノイドや圧電素子等とを含むものとすることができる。係合ロッド406の軸方向の移動により、係合爪404a,bのいずれか一方が、ブレーキシュー110a,bの係合突部398a,bのいずれか一方に選択的に係合可能とされる。
係合ロッド406において、係合爪404a,bは、それぞれ、ブレーキシュー110a,bに向かって突出した状態(ブレーキシュー110a,bに対向する状態)で設けられ、一対の係合爪404a,bの間の軸方向の長さは、パーキングブレーキ18,20の非作用状態における(リターンスプリング115により戻された状態)一対のブレーキシュー110a,bの係合突部398a,bの間の長さより長くされており、一方の係合爪404aが一方のブレーキシュー110aの係合突部398aに係合した状態で、他方の係合爪404bが他方のブレーキシュー110bの係合突部398bから外れ、他方のブレーキシュー110bのアンカ部材106から離れる向きの移動が許容される。
【0040】
例えば、予測されるトルクの向きが前進回転方向Pである場合には、電気駆動源により係合ロッド406にP方向の駆動力が付与される。係合ロッド406は、P方向に直線的に軸方向に移動させられ、係合爪404bが係合突部398bに係合し、係合爪402aが係合突部398aから外れた第1状態となる。係合ロッド406によりアンカ部材106とブレーキシュー110bとが連結され、ブレーキシュー110bのアンカ部材106から離間する向きの移動が抑制される。押付機構120の作動により、ブレーキシュー110aが移動させられて、パーキングブレーキ18,20が作用状態とされる。その後、サービスブレーキスイッチ227がOFFにされると、電気駆動源への電流供給がOFFにされ、係合ロッド406には駆動力が加えられなくなる。
予測されるトルクの向きが後退回転方向Qである場合には、電気駆動源により、係合ロッド406にQ方向の駆動力が加えられる。係合ロッド406がQ方向に移動させられ、係合爪404aが係合突部398aに係合し、係合爪404bが係合突部398bから外れた第2状態とされる。ブレーキシュー110aのアンカ部材106から離れる向きの移動が抑制される。
本実施例においては、移動抑制部材としての係合ロッド406が一対のブレーキシュー110a,bに共通に設けられる。
なお、係合ロッド406は、係合ロッド406と本体402との間に設けられたスプリングによって第1状態に付勢され、ソレノイドによる電磁駆動力が、そのスプリングの付勢力に抗して前記係合ロッドに付与されることにより、第2状態に移動させられるようにすることができる。
【0041】
移動抑制機構は、図17(a),(b)に概念的に示す構造を成したものとすることができる。本実施例において、移動抑制機構450において、アンカ部材106がハウジング452とされ、ハウジング452に係合ロッド454が軸方向に相対移動可能に保持される。係合ロッド454の軸方向の両端部には、一対の溝部460a,bが形成されるとともに、一対の係合爪462a,bが、それぞれ、回動軸464a,bの回りに回動可能に保持される。係合爪462a,bは、それぞれ、図示しないスプリングによって非係合位置に付勢されている。溝部460a,bは、軸方向に延びたものであり、一対のブレーキシュー110a,bが収容可能な大きさ、および長さとされており、一対のブレーキシュー110a,b各々の溝部460a,bに対する相対移動が許容される。
溝部460a,bは、それぞれ、一対の突部466a,bおよび突部468a,bによって形成されるが、一方の突部468a,bは他方の突部466a,bより軸方向に長くされている。他方の突部466a,bに係合爪462a,bが保持され、係合爪462a,bが一方の突部468a,bに対向し、これら係合爪462a,bと突部468a,bとによって、ブレーキシュー110a,bが挟み込まれる。
一方、アンカ452の軸方向の両端部には、それぞれ、押圧部(カム)470a,bが形成され、軸方向の外方へ向かうにつれて、ブレーキシュー110から離間する形状とされている。
電気駆動源としては、上記図16に示す実施例における場合と同様のものを採用することができる。
【0042】
非ブレーキ作用状態においては、一対のブレーキシュー110a,bの両端部は、それぞれ、アンカ452に当接している。予測されるトルクの向きがP方向である場合には、係合ロッド454がP方向へ移動させられる。ブレーキシュー110aは溝部460aに対して相対移動させられるが、ブレーキシュー110aは溝部460aの底部に当接することがないため、押付け力が加えられることはない。一方、係合爪462bが押圧部470bにより係合位置まで回動させられる。ブレーキシュー110bは、係合爪462bと突部468bとにより把持されて、円周方向の移動が抑制される。
押付装置120により、一対のブレーキシュー110a,bに拡開方向の押付力が加えられた場合に、ブレーキシュー110bのアンカ452から離間する方向の移動が抑制されるため、ブレーキシュー110bはアンカ452に当接する状態に保持される。ブレーキシュー110aが円周方向に移動させられ、アジャスタ108を介してブレーキシュー110bに伝達され、アンカ452に押し付けられる。本実施例においては、この状態でソレノイド等への供給電流をOFFにしても(電気駆動力をOFFにしても)、ブレーキシュー110bの円周方向の移動が抑制される。そのため、サービスブレーキ99が解除されるまで、ソレノイドに電力を供給する必要がないという利点がある。
予測されるトルクの向きがQ方向である場合には、係合ロッド454がQ方向へ移動させられる。ブレーキシュー110bは溝部460bに対して相対移動させられ、ブレーキシュー110aが係合爪464aと突部468aとにより把持される。それによって、ブレーキシュー110aのアンカ452から離間する向きの移動が抑制される。押付装置120により、ブレーキシュー110a,bに押付力が加えられた場合に、ブレーキシュー110aの移動が抑制され、ブレーキシュー110aがアンカ454に押し付けられる。
【0043】
なお、上記実施例においては、ブレーキシュー110a,bに係合部が設けられていなかったが、ウェブ151a,bの係合爪462a,bと対向する部分に係合部としての凹部、あるいは、係合穴を形成することもできる。また、凹部、あるいは、係合穴は、円周方向に延びた形状を成したものとすることができる。それらの場合には、突部468a,bを対向突部466a,bより長くすることは不可欠ではない。
【0044】
以上のように、本発明の複数の実施例について説明したが、上述の記載の態様の他、本発明は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例であるパーキングブレーキシステム全体を概念的に示す図である。
【図2】上記電動パーキングブレーキシステムに含まれる電動モータおよび運動変換機構を表す一部断面図である。
【図3】上記運動変換機構のAA断面図(クラッチの断面図)である。
【図4】上記パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキの平面図である。
【図5】上記ドラムブレーキの押付機構と移動抑制機構とを表す正面図(一部断面)である。
【図6】上記パーキングブレーキシステムにおいて、ケーブル張力と制動可能トルクとの関係を示す図である。
【図7】車両が停止している路面の勾配と前後加速度との関係を示す図である。
【図8】上記パーキングブレーキシステムの電動パーキングブレーキECUの記憶部に記憶されたパーキングブレーキ制御プログラムを表すフローチャートである。
【図9】上記プログラムの一部(ブレーキ作動)を表すフローチャートである。
【図10】上記プログラムの他の一部(ブレーキ解除)を表すフローチャートである。
【図11】上記移動抑制機構とは別の移動抑制機構を示す平面図である。
【図12】上記移動抑制機構の正面図(一部断面)である。
【図13】上記移動抑制機構とはさらに別の移動抑制機構を示す平面図である。
【図14】上記移動抑制機構の正面図(一部断面)である。
【図15】上記電動パーキングブレーキECUの記憶部に記憶された別のパーキングブレーキ制御プログラムを表すフローチャートである。
【図16】上記移動抑制機構とは別の移動抑制機構を概念的に示す図である。
【図17】(a)上記移動抑制機構のはさらに別に移動抑制機構を概念的に示す図である。(b)図17(a)のAA断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10:電動モータ 12:運動変換機構 18,20:ドラムブレーキ(パーキングブレーキ) 22,24:ケーブル 104:ドラム 106:アンカ部材 108:アジャスタ 110a,b:ブレーキシュー 120:押付機構 122:ブレーキレバー 124:ストラット 150、300、350、400、450:移動抑制機構 151a,b:ウェブ 152a,b:切欠 160a,b:ハウジング 162a,b:ピン 164a,b:スプリング 166a,b:ソレノイド 298a,b:切欠 302a,b:係合爪 303a,b:ハウジング 304a,b:電動モータ 306a,b:スプリング 352:ワイヤ 398a,b、448a,b:係合突部 404a,b、462a,b:係合爪 406,454:係合ロッド 468a,b:対向突部 470a,b:押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非回転体と、
車両の車輪と共に回転し、内周面が摩擦面である回転ドラムと、
その回転ドラムの内周側に配設され、外周面に摩擦材を有する一対のブレーキシューと、
それら一対のブレーキシューの一端部の間において、前記非回転体に固定されたアンカ部材と、
前記一対のブレーキシューの前記アンカ部材が設けられた側とは反対側の端部同士を連結し、前記一対のブレーキシューの一方に加えられる円周方向の力を他方のブレーキシューの入力として伝達する伝達部材と、
前記一対のブレーキシューの前記一端部側に設けられ、前記一対のブレーキシューの摩擦材を前記ドラムの内周面に押し付ける押付装置と
を含むデュオサーボ型のドラムブレーキを備えたパーキングブレーキシステムに、
(a)電気駆動源と、(b)その電気駆動源により作動させられ、前記一対のブレーキシューの各々と係合することにより、前記一対のブレーキシューの各々の前記非回転体と前記アンカ部材との少なくとも一方に対する相対移動を抑制する少なくとも1つの移動抑制部材と、(c)前記車両の停止状態において前記車輪に加えられるトルクの向きを予測し、その予測に基づいて、前記押付装置の作動以前に、前記電気駆動源を制御して、前記少なくとも1つの移動抑制部材のうちの1つを前記トルクが加えられた場合にセカンダリシューとなるものに係合させて、前記押付装置の作動時に、前記セカンダリシューとなるものの前記アンカ部材から離間する向きの移動を抑制する移動抑制制御部とを含む移動抑制装置を設けたことを特徴とするパーキングブレーキシステム。
【請求項2】
前記移動抑制制御部が、(a)前記車両が停止している路面の傾斜の向きを検出する傾斜検出装置と、(b)その傾斜検出装置によって検出された路面の傾斜の向きに基づいて前記車輪に加えられるトルクの向きを予測するトルク方向予測部とを含む請求項1に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項3】
前記移動抑制制御部が、パーキングブレーキ作動指令に応じて、前記電気駆動源を制御する駆動源制御部を含み、当該パーキングブレーキシステムが、前記駆動源制御部によって前記電気駆動源が制御された後に、前記押付装置を作動させる押付装置制御部を含む請求項1または2に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項4】
前記移動抑制部材が、前記一対のブレーキシューの各々に対応してそれぞれ設けられ、前記移動抑制装置が、前記非回転体と前記アンカ部材とのいずれか一方に固定的に設けられ、前記ドラムブレーキの非作用状態において、前記移動抑制部材の各々を、それぞれ、前記一対のブレーキシューに係合する係合位置と、前記ブレーキシューから外れた非係合位置との間で移動可能に保持する移動抑制部材保持装置を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項5】
前記移動抑制部材の各々が係合ロッドであり、前記一対のブレーキシューの各々が前記移動抑制部材との係合部をそれぞれ有し、前記移動抑制部材保持装置が、前記非回転体の、前記ドラムブレーキの非作用状態において前記一対のブレーキシューの各々の係合部に対応する位置にそれぞれ設けられ、前記係合ロッドを、前記係合位置と前記非係合位置との間で直線的に移動可能に保持する直線移動型保持部を含み、前記移動抑制装置が、それら直線移動型保持部の各々と前記係合ロッドの各々との間にそれぞれ設けられ、前記係合ロッドを非係合位置に付勢する付勢部材を含み、前記電気駆動源が、前記係合ロッドの各々に対応してそれぞれ設けられ、前記係合ロッドを、前記付勢部材の付勢力に抗して、前記非係合位置から前記係合位置に移動させる電磁駆動力を加えるソレノイドを含む請求項4に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項6】
前記移動抑制部材の各々が係合爪であり、前記一対のブレーキシューの各々が前記係合爪との係合部をそれぞれ有し、前記移動抑制部材保持装置が、前記ドラムブレーキの非作用状態において前記一対のブレーキシューの各々の係合部に対応する位置にそれぞれ設けられ、前記係合爪の各々を、それぞれ、前記ブレーキシューの係合部と係合する係合位置と、前記係合部から外れた非係合位置との間で回動可能に保持する回動型保持部を含み、前記電気駆動源が、前記係合爪の各々に対応してそれぞれ設けられ、前記係合爪を、前記係合位置と前記非係合位置との間で回動させる電動モータを含む請求項4に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項7】
前記移動抑制部材の各々が係合爪であり、前記一対のブレーキシューの各々が前記係合爪との係合部をそれぞれ有し、前記移動抑制部材保持装置が、前記ドラムブレーキの非作用状態において前記一対のブレーキシューの各々の係合部に対応する位置にそれぞれ設けられ、前記係合爪の各々を、それぞれ、前記ブレーキシューの係合部と係合する係合位置と、前記係合部から外れた非係合位置との間で回動可能に保持する回動型保持部を含み、前記電気駆動源が、前記2つの係合爪の一方に対応して設けられ、その一方を、前記係合位置と前記非係合位置との間で回動させる電動モータを含み、前記移動抑制装置が、その電動モータの回転を他方の係合爪に伝達する駆動伝達機構を含む請求項4に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項8】
前記移動抑制部材の各々が係合爪であり、それら2つの係合爪が軸方向に一体的に移動可能とされ、前記移動抑制制御部が、前記2つの係合爪の一方が前記一対のブレーキシューの一方に係合し、他方の係合爪が他方のブレーキシューに係合しない第1状態と、他方の係合爪が前記他方のブレーキシューに係合し、前記一方の係合爪が前記一方のブレーキシューに係合しない第2状態との間で切り換える手段を含む請求項4に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項9】
前記押付装置が、電動モータによって作動させられるものであり、その電動モータに電流が供給されない状態で、前記摩擦材の前記摩擦面への押付力である摩擦材押付力を保持する保持機構を含む請求項1ないし8のいずれか1つに記載のパーキングブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−103176(P2009−103176A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273994(P2007−273994)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】