パーキングブレーキシステム
【課題】パーキングブレーキシステムに含まれるデュオサーボ型のドラムブレーキの新規な押付装置を提供する。
【解決手段】車両の停止状態において、車輪に加えられるトルクの向きが予測される。予測されたトルクの向きが前進回転方向Pである場合には、シュー押付ロッド56が左方へ移動させられ、そのトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるブレーキシュー40aに押付力を加える。ブレーキシュー40aに加えられた円周方向の力は、アジャスタを介してブレーキシュー40bに伝達されて、アンカ36に当接する。そのため、パーキングブレーキの作動後に、予測されたトルクが実際に加えられた場合に、一対のブレーキシュー40a,bの円周方向の移動が抑制されて、ブレーキ力の低下を抑制することができる。このように、デュオサーボ型のドラムブレーキにおいて、一対のブレーキシュー40a,bのうちプライマリシューに押付力を付与する押付装置は新規なものである。
【解決手段】車両の停止状態において、車輪に加えられるトルクの向きが予測される。予測されたトルクの向きが前進回転方向Pである場合には、シュー押付ロッド56が左方へ移動させられ、そのトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるブレーキシュー40aに押付力を加える。ブレーキシュー40aに加えられた円周方向の力は、アジャスタを介してブレーキシュー40bに伝達されて、アンカ36に当接する。そのため、パーキングブレーキの作動後に、予測されたトルクが実際に加えられた場合に、一対のブレーキシュー40a,bの円周方向の移動が抑制されて、ブレーキ力の低下を抑制することができる。このように、デュオサーボ型のドラムブレーキにおいて、一対のブレーキシュー40a,bのうちプライマリシューに押付力を付与する押付装置は新規なものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムにおいて、ブレーキシューを回転ドラムに押し付ける押付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3に記載のデュオサーボ型のパーキングブレーキにおいて、ケーブルが引っ張られると、ブレーキレバー、ストラットを介して、一対のブレーキシューが回転ドラムに押し付けられて、パーキングブレーキが作用させられる。
特許文献4に記載のデュオサーボ型のドラムブレーキを含む電動パーキングパーキングブレーキシステムは、(a)電動モータと、(b)一対のスライド部材と、(c)それら一対のスライド部材と電動モータとの間に設けられ、電動モータの回転を一対のスライド部材の互いに逆方向の直線運動に変換する運動変換機構と、(d)パーキングブレーキ作動指令に応じて、電動モータを作動させて、一対のスライド部材を、互いに逆方向に前進させることにより、一対のブレーキシューの両方にそれぞれ押付力を付与して、パーキングブレーキを作用させるモータ制御部とを備えた押付装置を含む。
特許文献5に記載のデュオサーボ型のドラムブレーキを含む電動パーキングパーキングブレーキシステムは、(a)電動モータと、(b)偏心カムと、(c)その偏心カムの外周面と係合させられた一対のスライド部材と、(c)パーキングブレーキ作動指令に応じて、電動モータを作動させて偏心カムを回転させ、一対のスライド部材を互いに逆向きに移動させて、一対のブレーキシューの両方にそれぞれ押付力を付与し、パーキングブレーキを作用させるモータ制御部とを備えた押付装置を含む。
【特許文献1】特開平10−110758号公報
【特許文献2】特開2001−165207号公報
【特許文献3】特開平10−103391号公報
【特許文献4】特開2001−82517号公報
【特許文献5】特開2006−336868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、デュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムに設けられる新規な押付装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0004】
請求項1に記載のパーキングブレーキシステムは、(i)非回転体と、(ii)車両の車輪と共に回転し、内周面が摩擦面である回転ドラムと、(iii)その回転ドラムの内周側に配設され、外周面に摩擦材を有する一対のブレーキシューと、(iv)それら一対のブレーキシューの一端部の間において、前記非回転体に固定されたアンカ部材と、(v)前記一対のブレーキシューの前記アンカ部材が設けられた側とは反対側の端部同士を連結し、前記一対のブレーキシューの一方に加えられた円周方向の力を他方のブレーキシューの入力として伝達する伝達部材と、(vi)前記一対のブレーキシューの前記一端部側に設けられ、前記一対のブレーキシューの摩擦材を前記ドラムの内周面に押し付ける押付装置とを含むデュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムであって、前記押付装置が、(a)電気駆動源と、(b)前記一対のブレーキシューの各々に、それぞれ直接作用する少なくとも1つの作用部材を有し、その少なくとも1つの作用部材のうちの1つを前記電気駆動源により作動させて、前記一対のブレーキシューのうちの、その1つの作用部材に作用するものに選択的に押付力を付与する押付機構と、(c)前記車両の停止状態において前記車輪に加えられるトルクの向きを予測し、その予測に基づいて前記電気駆動源を制御することにより、前記1つの作用部材に、前記一対のブレーキシューのうち、そのトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるものに前記押付力を付与させる押付力制御部とを含むものとされる。
本項に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、パーキングブレーキの作用後(すなわち、パーキングブレーキの作用中)に車輪に加えられるトルクの向きが予測され、ブレーキの作動時に、そのトルクが加えられたと仮定した場合にプライマリシューとなるもの(以下、単にプライマリシューと称する)のみに押付力が加えられる。
トルクの向きが前進回転方向であっても後退回転方向であっても、電気駆動源により、作用部材がプライマリシューに直接作用して押付力を加えるのであり、トルクが加えられたと仮定した場合にセカンダリシューとなるもの(以下、単に、セカンダリシューと称する)に、作用部材が押付力を加えることはない。このブレーキ作用状態において(電気駆動源によって押付力の制御が行われない状態)、予測されたトルクが実際に加えられても、既に、セカンダリシューがアンカ部材に当接しているため、プライマリシューおよびセカンダリシューの円周方向の移動が抑制され、ブレーキ力の低下が抑制される。
このように、本項に記載のパーキングブレーキシステムに含まれるデュオサーボ型のドラムブレーキの押付装置は、車両の停止状態において車輪に回転トルクが加えられた場合にプライマリシューとなるもののみに押付力を加えるものであり、係る押付装置は、特許文献1〜5のいずれにも記載されておらず、新規なものである。
一方、特許文献4,5には、電動アクチュエータによって一対のブレーキシューの両方に押付力を加える押付装置が記載されている。このパーキングブレーキにおいては、一対のブレーキシューのうちいずれが移動するか一義的に決まらず、パーキングブレーキの作用中にトルクが加えられると、そのトルクの方向に一対のブレーキシューが回転させられることがあり、セカンダリシューがスライド部材の一方に当接し、スライド部材に大きな力が加えられる。それに対して、本項に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、セカンダリシューがアンカ部材に当接しているため、アンカ部材が円周方向の力を受けるのであり、作用部材が受けるのではない。その結果、作用部材を、強度の小さいものとすることができ、押付装置の小形化を図ったり、コストダウンを図ったりすることができる。あるいは、作用部材に大きな力が加えられる頻度を低くすることができるため、作用部材の寿命を長くすることができる。
車両の停止状態において、車輪に加えられるトルクの向きは、車両が停止している路面の傾斜や、トランスミッションのシフト位置に基づいて予測することができる。車両はサービスブレーキの作動により停止し、その後、パーキングブレーキが作用させられ、パーキングブレーキの作用後に、サービスブレーキが解除されることが多い。サービスブレーキが解除されると、車輪に重力に起因するトルクが加えられたり、車両駆動源からの駆動トルクが加えられたりする。
車両の停止状態において車輪に加えられると予測されるトルクの向きは、請求項2に記載のように、車両が停止している路面の傾斜の向きに基づいて取得することができる。路面の傾斜の向きは傾斜検出装置によって検出される。車両が登り坂に停止している場合には、後退回転方向のトルクが加えられ、降り坂に停止している場合には、前進回転方向のトルクが加えられると予測される。傾斜検出装置は、車両の前後方向の傾きを検出する姿勢検出装置であると考えることもできる。傾斜検出装置は、前後加速度センサを含むものとすることができ、さらに、車高センサを含むものとすることもできる。
また、車両駆動源が作動状態にあり、シフト位置がパーキング以外の位置にある場合においても、パーキングブレーキが作動させられることがある。その場合には、シフト位置がニュートラル以外の位置にあれば、そのシフト位置に基づいて車輪に加えられると予測されるトルクの向きを取得することができる。シフト位置が前進を指示する位置である場合には前進回転方向のトルクが加えられると予測され、後退を指示する位置である場合には後退回転方向のトルクが加えられると予測される。
押付機構において、作用部材は1つであっても、2つであってもよい。作用部材が1つである場合には、その1つの作用部材が、一対のブレーキシューの両方にそれぞれ作用する。作用部材が2つである場合には、作用部材の一方が一対のブレーキシューのうちの一方に作用し、作用部材の他方が他方のブレーキシューに作用する。作用部材が2つの場合には、2つの作用部材に共通に1つの電気駆動源を設けても、2つの作用部材に、それぞれ、対応して設けてもよい。
作用部材は、ロッド(スライド部材、ピストンと称することもある)としたり、カム、回動レバー等としたりすることができる。カム、回動レバーは運動変換機構として機能することもあり、その場合には、カム、回動レバーと作用部材(例えば、ロッド)との両方が設けられることもある。また、作用部材、運動変換機構の構成要素は剛体であり、ケーブルのように可撓性を有しないものと考えることができる。
電気駆動源は、電動モータとしたり、圧電素子等を有する電気的変形部材としたりすることができる。電気駆動源が電動モータであり、作用部材がロッド等の直線的に移動可能なものである場合には、電動モータの回転を直線運動に変換して、作用部材に伝達する運動変換機構が設けられるのが普通である。運動変換機構は、駆動力伝達機構であると考えることもできる。電気駆動源が電気的変形部材である場合には、作用部材毎に設けることが望ましい。
以下、押付装置の具体的な態様について説明する。
請求項3に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(a)前記一対のブレーキシューの各々に作用する1つの作用部材と、(b)前記電動モータの回転を前記1つの作用部材の直線運動に変換する運動変換機構とを含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記作用部材の移動方向を制御するモータ制御部を含むものとされる。
電動モータが一方向に回転させられた場合には、作用部材は、一対のブレーキシューのうちの一方に向かって前進し、その一方のブレーキシューに作用して、押付力を付与する。逆の方向に回転させられた場合には、その作用部材は一対のブレーキシューのうちの他方に向かって前進し、その他方のブレーキシューに作用して、押付力を付与する。
したがって、電動モータの回転方向を制御することにより、一対のブレーキシューのうちのいずれか一方に、選択的に、作用部材を作用させて、押付力を付与することができる。
請求項4に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記運動変換機構が、(a)ハウジングと、(b)そのハウジングに軸方向に相対移動不能かつ相対回転可能に保持されるとともに、第1ねじ部を備えた第1ねじ部材と、(c)前記ハウジングに軸方向に相対移動可能に保持されるとともに、前記第1ねじ部と螺合する第2ねじ部を備えた第2ねじ部材とを含み、前記第1ねじ部材が、前記電動モータにより回転させられ、前記第2ねじ部材が、前記1つの作用部材と一体的に移動可能なものとされる。
電動モータの回転に伴って第1ねじ部材が回転させられると、第2ねじ部材が軸方向に直線的に移動させられる。そして、第2ねじ部材の軸方向の移動に伴って作用部材が移動させられる。例えば、第1ねじ部を第1ねじ部材の内周面に設け、第2ねじ部を第2ねじ部材の外周面に設けることができる。
運動変換機構は、(a)ハウジングと、(b)そのハウジングに軸方向に相対移動不能かつ相対回転可能に保持されたピニオンと、(c)前記ハウジングに軸方向に相対移動可能に保持されたラックとを含み、前記ピニオンが、前記電動モータの回転に伴って回転可能に設けられ、前記ラックが、前記1つの作用部材と一体的に移動可能に設けられたものとすることもできる。
請求項5に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(a)前記一対のブレーキシューの各々に、それぞれ、直接作用する2つの作用部材と、(b)(i)前記電動モータにより回転させられ、前記2つの作用部材の各々に作用するカムと、(ii)前記電動モータの回転により回動させられ、前記2つの作用部材の各々に作用するレバーとのいずれか一方を含む運動変換機構とを含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記2つの作用部材のうちの1つを選択的に移動させるモータ制御部を含むものとされる。
電動モータの一方向の回転によりカムが一方向に回転させられると、2つの作用部材のうちの一方が一方のブレーキシューに向かって前進して、一方のブレーキシューに作用して、押付力を加える。電動モータの逆方向の回転によりカムが逆方向に回転させられると、他方の作用部材が他方のブレーキシューに作用して、押付力を加える。
同様に、電動モータの一方向の回転によりレバーが一方向に回動させられると、一方の作用部材が一方のブレーキシューに向かって前進し、作用して、押付力を加える。電動モータの逆方向の回転によりレバーが逆方向に回動させらえると、他方の作用部材が他方のブレーキシューに作用して、押付力を加える。
カムは、一方の作用部材に作用している状態で他方の作用部材に接触している場合があるが、他方の作用部材には押付力が加えられることはない。
請求項6に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(i)前記電動モータにより回転させられ、前記一対のブレーキシューの各々に作用するカムと、(ii)前記電動モータにより回動させられ、前記一対のブレーキシューの各々に作用するレバーとのいずれか一方を前記1つの作用部材として含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記一対のブレーキシューのうちのいずれか一方に選択的に押付力を付与するモータ制御部を含むものとされる。
本項に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、カムやレバーが作用部材であり、作用状態においては、カム面やレバーの係合部がブレーキシューに直接作用する。専用の作用部材が不要となるため、その分、押付装置の部品点数を少なくすることができる。
また、請求項7に記載のように、押付装置には、電気駆動源に電力が供給されなくても、摩擦材押付力を保持する保持機構を設けることが望ましい。例えば、(i)運動変換機構を、保持機構としての機能を備えたものとしたり、(ii)電気駆動源を、保持機構としての機能を備えたものとしたり、(iii)運動変換機構、電気駆動源とは別個に保持機構を設けたりすることができる。保持機構は、電気駆動源が電動モータである場合に、その電動モータの出力軸と同軸状に設けても、そうでなくてもよい。
(i)運動変換機構が保持機構としての機能を有する場合としては、運動変換機構がねじ機構である場合において、そのねじを、リード角が小さい形状としたり、台形ねじとしたりしたりする場合等が該当する。(ii)電気駆動源が保持機構としての機能を有する場合としては、電気駆動源が電動モータと減速機とを有する場合に、減速機を、非可逆特性を有する歯車機構を備えものとすることができる。非可逆特性を有する歯車機構としては、ウォームギヤを含むものとしたり、遊星歯車を含むものとしたり、ハーモニックドライブ(登録商標)を含むものとしたりすることができる。非可逆特性を有する歯車機構は、逆効率(電気駆動源に外力が加えられた場合に、その外力によって電動モータが回転させられないようにするために必要なモータの力を、その外力で割った値)が0である歯車機構と称することもできる。また、電気駆動源に含まれる電動モータを超音波モータとすることもできる。
例えば、請求項8に記載のように、(a)前記電動モータにより回転させられるウォームと、(b)前記作用ロッドに前記運動変換機構を介して連結されたウォームホイールとを含むものとすることが望ましい。
さらに、押付機構は、一対のブレーキシューのアンカ側の端部付近に設けられる。そのため、押付機構の本体は、アンカ部材に固定的に設けたり、請求項9に記載のように、前記アンカ部材を、前記押付機構の本体としたりすることが望ましい。アンカ部材を押付機構の本体とすれば、押付装置のハウジングを別途設ける必要がなくなるという利点がある。
また、押付力制御部は、請求項10に記載のように、パーキングブレーキの作動指令に応じて電気駆動源を作動させるものとすることができる。デュオサーボ型のドラムブレーキは、パーキングブレーキとして使用されることが多い。
請求項11に記載のパーキングブレーキシステムは、(a)非回転体と、(b)車両の車輪と共に回転し、内周面が摩擦面である回転ドラムと、(c)その回転ドラムの内周側に配設され、外周面に摩擦材を有する一対のブレーキシューと、(d)それら一対のブレーキシューの一端部の間において、前記非回転体に固定されたアンカ部材と、(e)前記一対のブレーキシューの前記アンカ部材が設けられた側とは反対側の端部同士を連結し、前記一対のブレーキシューの一方に加えられた円周方向の力を他方のブレーキシューの入力として伝達する伝達部材と、(f)前記一対のブレーキシューの前記一端部側に設けられ、前記一対のブレーキシューの摩擦材を前記ドラムの内周面に押し付ける押付装置とを含むデュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムであって、前記押付装置が、(a)電気駆動源と、(b)前記一対のブレーキシューのうちの一方に作用する軸方向移動部材を有し、その軸方向移動部材を前記電気駆動源により前記一方のブレーキシューに直接作用させることにより、その一方のブレーキシューに押付力を付与する押付機構とを含むものとされる。
本項に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、デュオサーボ型のドラムブレーキにおいて、軸方向移動部材の前進により予め定められた一方のブレーキシューにのみ押付力が付与される。それによって、パーキングブレーキが作用させられる。軸方向移動部材は、例えば、ロッド状を成し、可撓性を有しないものであり、直線的に移動させられるものである。可撓性を有するケーブルや回動させられるレバーではない。
車両の停止状態において、パーキングブレーキの作用中に、トルクが加えられた場合において、その一方のブレーキシューがプライマリシューである場合には、セカンダリシューがアンカ部材に当接しているため、ブレーキ力の低下を良好に抑制することができる。一方のブレーキシューがセカンダリシューである場合には、プライマリシューが軸方向移動部材に当接しているため、それによって、ブレーキ力の低下を抑制することができる。
また、本項に記載のデュオサーボ型のドラムブレーキにおいて、一方のブレーキシューを車輪に前進回転方向のトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるものとすれば、車両の前進走行中にドラムブレーキが作用させられた場合に、大きなブレーキ力を付与できるという利点がある。この場合に、軸方向移動部材に大きな力が加えられることがないため、軸方向移動部材の強度を小さくし得、かつ、大きなブレーキ力を加えることができる。
特許文献1〜5のいずれにも、本願請求項7に記載のように、パーキングブレーキシステムに含まれるデュオサーボ型のドラムブレーキにおいて、軸方向移動部材を前進させることにより、予め決められた一方のブレーキシューのみに押付力を付与する押付装置についての記載はなく、本願請求項7に記載のの押付装置は新規なものである。
なお、請求項11に記載のパーキングブレーキシステムには、請求項1〜10のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
【実施例】
【0005】
本発明の一実施例であるデュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムを図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、符号14,16は、左右後輪を示し、符号18,20は、車輪14,16にそれぞれ設けられたドラムブレーキを示す。ドラムブレーキ18,20は、図2に示すように、デュオサーボ型のドラムブレーキであり、パーキングブレーキとして作用させられる。以下、必要に応じて、ドラムブレーキ18,20をパーキングブレーキと称することがある。
また、図2において、符号22はブレーキディスクを示し、符号23はキャリパを示し、これらブレーキディスク22とキャリパ23とで共同してサービスブレーキとしてのディスクブレーキ24を構成する。パーキングブレーキ18,20としてのドラムブレーキは、ブレーキディスク22の内周側に設けられているのであり、本実施例においては、ドラムインディスクブレーキとなっている。ドラムブレーキ18,20は、それそれ、構造が同じものである。
【0006】
ドラムブレーキ18,20は、それぞれ、図示しない車体に取り付けられた非回転体としてのバッキングプレート30と、内周面に摩擦面32を備えて車輪14と共に回転するドラム(回転ドラム)34とを備えている。バッキングプレート30の一直径方向に隔たった2箇所には、それぞれアンカ部材36と伝達部材としてのアジャスタ38とが設けられている。アンカ部材36はバッキングプレート30に固定されており、アジャスタ38はフローティング式とされている。それらアンカ部材36とアジャスタ38との間には、各々円弧状を成す一対のブレーキシュー40a,40bがドラム34の内周面に対面するように取り付けられている。一対のブレーキシュー40a,40bは、シューホールドダウン装置42a,42bによってバッキングプレート30にそれの面に沿って移動可能に取り付けられている。なお、バッキングプレート30の中央に設けられた貫通穴は、図示しないアクスルシャフトの貫通を許容するためのものである。
【0007】
一対のブレーキシュー40a,40bは、一端部同士がアジャスタ38により作動的に連結される一方、各他端部がアンカ部材36と当接して回動可能に支持されるようになっている。一対のブレーキシュー40a,40bの一端部同士は、アジャスタスプリング44によりアジャスタ38に当接する向きに付勢されており、各他端部はリターンスプリング45によりアンカ部材36に向かって付勢されている。各ブレーキシュー40a,40bの外周面に摩擦材としてのブレーキライニング46a,46bが保持され、それら一対のブレーキライニング46a,46bがドラム34の摩擦面32に接触させられることにより、それらブレーキライニング46a,46bとドラム34との間に摩擦力が発生する。アジャスタ38は、一対のブレーキシュー40a,40bの摩耗に応じて一対のブレーキライニング46a,46bとドラム34との隙間を調整するために操作される。アジャスタ38は、一対のブレーキシュー40a,40bの一方の円周方向の力を他方のブレーキシューに伝達する伝達部材として機能する。
【0008】
押付装置50は、図3,4に示すように、電気駆動源としての電動モータ52と、運動変換機構54と、1つの作用部材としてのシュー押付ロッド56と、保持機構58とを含む。電動モータ52の回転が運動変換機構54により直線運動に変換されて、シュー押付ロッド56に伝達される。シュー押付ロッド56は、ケーブルのように可撓性を有するものではなく、剛体である。本実施例におけるドラムブレーキは、レバーを含まず、ケーブルによって作動させられるものではない。
運動変換機構54は、図3に示すように、ハウジング60と、ハウジング60に、一対のベアリング66を介して相対回転可能に保持されたねじ部材64と、ねじ部材64の内周側に軸方向に相対移動可能に保持されたシュー押付ロッド56とを含む。ねじ部材64の内周面には第1ねじ部(雌ねじ部)70が形成されている。一方、シュー押付けロッド56の中間部の外周面には第2ねじ部(雄ねじ部)72が形成されており、ねじ部材64の第1ねじ部70と螺合する。シュー押付ロッド56の両端部には、シュー係合部74a,bが設けられている。シュー係合部74a,bは、ブレーキシュー40a,bのウェブ76a,bをそれぞれ挟み込む形状とされており、シュー押付ロッド56の回り止めとして機能する。なお、シュー係合部74a,bの大きさ、形状は、シュー押付ロッド56が図3において右方向、あるいは、左方向に移動させられても、ウェブ76a,bを両側から挟み得る大きさ、形状とされている(移動させられてもウェブ76a,bが外れない大きさ、形状とされている)。
本実施例においては、ねじ部材64が第1ねじ部材に対応し、シュー押付ロッド56が第2ねじ部材に対応する。シュー押付ロッド56と第2ねじ部材とが一体的に形成されているのである。
【0009】
電動モータ52と運動変換機構54との間には、保持機構としてのウォームギヤ58が設けられる。ウォームギヤ58は、ウォーム80とウォームホイール82とを含む。ウォーム80は、電動モータ52の出力軸83に一体的に回転可能に設けられている。ウォームホイール82の内周側には、ねじ部材64がキー84を介して一体的に回転可能に保持され、ウォームホイール82は、ハウジング60に、軸方向の相対移動が阻止された状態で保持される。その結果、運動変換機構54において、ねじ部材64の軸方向の相対移動も阻止され、ねじ部材64の回転がシュー押付ロッド56の軸方向の相対移動に変換されることになる。
ウォームギヤ58により、電動モータ52に電流が供給されない状態において、シュー押付ロッド56に大きな力が加えられても、その力によって、電動モータ52が回転させられないようにされている。ウォームギヤ58は、また、減速機としても機能する。
ハウジング60は、アンカ部材36に固定的に保持されており、アンカ部材36の、ハウジング60の軸方向に直交する面に対向する対向面90,92に、それぞれ、押付力センサ94,96が取り付けられる。押付力センサ94,96は、感圧式のものであり、押付力センサ94は、シュー押付ロッド56がブレーキシュー40bに加えた押付力(厳密にいえば、押付力の反力)を検出するものであり、押付力センサ96は、シュー押付ロッド56がブレーキシュー40aに加えた押付力を検出するものである。
なお、ハウジング60,アンカ部材36は、複数の部材から構成されるものとすることができる。
【0010】
本実施例において、電動モータ52は、図1に示すように、電動パーキングブレーキECU(PKBECU)200の指令によって制御される。パーキングブレーキECU200は、コンピュータを主体とするものであり、入出力部202,実行部204,記憶部206等を含む。入出力部202には、押付力センサ94,96、電動モータ52に流れる電流を検出する電流計210,電動モータ52の回転数を検出する回転数センサ212,パーキングブレーキスイッチ(以下、単に、パーキングスイッチと略称する)214等が接続されるとともに、駆動回路216を介して電動モータ52が接続される。
電動パーキングブレーキECU200は、CAN(Car Area Network)218を介して、車両に設けられた他のコンピュータ、例えば、スリップ制御ECU(VSCECU)220,エンジン・トランスミッションECU(ETCECU)222等に接続される。スリップ制御ECU220には傾斜検出装置としての前後加速度センサ226等が接続され、エンジン・トランスミッションECU222にはシフト位置センサ228等が接続されており、前後加速度、シフト位置等の情報がスリップ制御ECU220,エンジン・トランスミッションECU222,CAN218を介して、パーキングブレーキECU200に供給される。前後加速度センサ226は、車両の前後方向に対して45°傾斜した向きの加速度を検出する2つの検出部を含むものであり、これら2つの検出部による検出値に基づいて車両の前後方向の加速度が取得される。そのため、2つの検出部のうちの一方に異常が生じても他方によって前後方向の加速度を取得することが可能となる。
【0011】
なお、押付力センサは、シュー押付ロッド56のシュー係合部74a,74bのブレーキシュー40a,bと当接する部分に取り付けることができる。その場合には、ブレーキシュー40a,bに加えられた押付力が直接検出されることになる。特に、ハウジング60がアンカ部材36と一体的に設けられた場合には、シュー係合部74a,74bに取り付けることが望ましい。
また、アンカ部材36の、ブレーキシュー40a,bと当接する部分に取り付けることもできる。この場合には、サーボ効果により得られた押付力を検出することもできる。
【0012】
パーキングスイッチ214は、パーキングブレーキ18,20の作動(以下、パーキングブレーキ18,20の作動をロックと称することがある)を指示する場合、解除(以下、パーキングブレーキ18,20の解除をリリースと称することがある)を指示する場合に、操作されるスイッチであり、例えば、ロック側操作部とリリース側操作部とを有するものとすることができる。ロック側操作部が操作された場合(以下、ロック指示操作が行われた場合と略称する)にはロック要求があるとされ、リリース側操作部が操作された場合(以下、リリース指示操作が行われた場合と略称する)にはリリース要求があるとされる。
シフト位置センサ228は、シフト操作部材の位置を検出するものであっても、トランスミッションのシフト位置を検出するものであってもよい。
【0013】
以上のように構成されたパーキングブレーキシステムにおける作動について説明する。
パーキングブレーキ18,20の非作用状態において、シュー押付ロッド56は図示する中立位置にある。中立位置において、シュー係合部74a,bにブレーキシュー40a,bがわずかに接触するか、接触しないかのいずれかである。
パーキングブレーキスイッチ214のロック指示操作が行われると、電動モータ52が作動させられて、パーキングブレーキ18,20が作動させられる。その場合に、パーキングブレーキ18,20の作用中(作動後)に、車輪14,16に加えられると予測されるトルクの向きが取得される。そして、その予測されるトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるシュー(トルクによって、一対のブレーキシュー40a,bが回転ドラム34の内周面に沿って移動させられた場合に、アンカ部材36に当接するシューとは反対側のシュー:以下、単に、プライマリシューと称する)に向かってシュー押付ロッド56が前進させられる。シュー押付ロッド56は、プライマリシューに直接作用して(プライマリシューに直接接触して)、押付力を加える。中立位置においては、シュー押付ロッド56にブレーキシュー40が接触していなくても、前進させられることにより、確実に接触し、直接作用し得る状態となる。
例えば、予測されるトルクの向きが前進回転方向Pであると取得された場合には、シュー押付ロッド56が図3の左方へ移動させられ、ブレーキシュー40aに押付力が加えられる。ブレーキシュー40aに作用する円周方向の力が、アジャスタ38によってブレーキシュー40bに伝達され、ブレーキシュー40bがアンカ部材36に押し付けられる。
予測されるトルクの向きが後退回転方向Qである場合には、シュー押付ロッド56が図3の右方へ移動させられ、ブレーキシュー40bに押付力が加えられる。ブレーキシュー40bに加えられた押付力がアジャスタ38を介してブレーキシュー40aに伝達され、ブレーキシュー40aがアンカ部材36に押し付けられる。
【0014】
車両の停止状態において、車輪14,16に加えられるトルクの向きは、車両が停止している路面の傾斜や、トランスミッションのシフト位置に基づいて予測することができる。車両はサービスブレーキ24の作動により停止し、その後、パーキングブレーキ18,20が作用させられ、パーキングブレーキ18,20の作用後に、サービスブレーキ24が解除されることが多い。サービスブレーキ24が解除されると、車輪に重力に起因するトルクが加えられたり、車両駆動源からの駆動トルクが加えられたりする。
車両が傾斜した路面に停止している場合には、図8に示すように、前後加速度G,重力加速度g,傾斜角度θとした場合に、これらの間には、式
G=g・sinθ
が成立する。そのため、前後加速度Gに基づけば、傾斜角度θ(大きさ、向き)を取得することができる。上式から、加速度の向きが前進方向(G>0)である場合には、車両は降り坂(sinθ>0,θ>0)に停止しており、加速度の向きが後退方向(G<0)である場合には登り坂(sinθ<0,θ<0)に停止していることがわかる。車両が停止している路面が登り坂である場合には、サービスブレーキ24が解除されると、車輪14,16には後退回転方向Qのトルクが作用すると予測され、降り坂である場合には、前進回転方向Pのトルクが作用すると予測される。また、前後加速度Gに基づいて傾斜角度θの絶対値を取得し、傾斜角度θの絶対値が予め定められた設定値より大きい場合には、路面が傾斜しており、設定値以下である場合にはほぼ水平な路面に停止しているとすることができる。
また、車両駆動源が作動状態にあり、シフト位置がパーキング以外の位置にある場合においても、パーキングスイッチ214のロック指示操作により、パーキングブレーキ18,20が作用させられることがある。その場合には、シフト位置がニュートラル以外の位置にあれば、そのシフト位置に基づいて車輪に加えられると予測されるトルクの向きを取得することができる。シフト位置が前進を指示する位置(例えば、ドライブ位置、1st位置、2nd位置等)である場合には、サービスブレーキ24が解除されると前進回転方向Pのトルクが加えられ、後退を指示する位置(例えば、リバース位置等)である場合には、後退回転方向Qのトルクが加えられると予測される。
本実施例においては、車両が停止している路面が傾斜している場合には、その傾斜の向きに基づいてトルクが向きが予測され、車両が停止している路面がほぼ水平である場合には、駆動トルクの向きに基づいてトルクの向きが予測される。
なお、予測されるトルクの向きは、路面の傾斜角度の大きさ、向きと駆動トルクの大きさ、向きとの両方に基づいて取得することもできる。
【0015】
本実施例において、図5のフローチャートで表されるパーキングブレーキ制御プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、パーキングスイッチ214が操作されたか否かが判定され、操作された場合には、S2において、ロック指示であるか否かが判定される。ロック指示である場合には、S3,4において、上述のように、前後加速度センサ226による検出値に基づいて傾斜の向きが取得され、シフト位置センサ228による検出結果に基づいて駆動トルクの向きが取得される。そして、S5において、サービスブレーキ24が解除された場合に加えられるトルクの向きが予測され、電動モータ52の回転方向、すなわち、シュー押付ロッド56の移動方向が決定される。
S6において、電動モータ52への供給電流が制御され、パーキングブレーキ18,20が作動させられる。シュー押付ロッド56が移動させられて、プライマリシューに押付力が加えられる。
それに対して、ロック指示ではなく、リリース指示である場合には、S2の判定がNOとなり、S7において、電動モータ52への供給電流の制御により、パーキングブレーキ18,20が解除される。シュー押付ロッド56が中立位置に戻される。
【0016】
S6のブレーキ作動の実行を、図6のフローチャートに示す。
本実施例において、ブレーキ作動時に加えられる押付力の大きさは予め定められた設定値(目標押付力)とされており、実際の押付力が目標押付力となるように電動モータ52が作動させられる。押付力と、出力可能なブレーキ力(路面とタイヤとの間に加えられる力)との間には予め定められた関係が成立するため、押付力が目標押付力とされれば、所望の大きさのブレーキ力が得られる。また、電動モータ52が直流モータ等である場合には、押付力が大きい場合は小さい場合より電動モータ52に加えられる負荷が大きくなり、流れる電流値が大きくなる。電動モータ52に流れる電流と押付力との間には予め決められた関係が成立し、電流値が決まれば押付力が決まる。このことから、電動モータ52に流れる電流が目標電流値に達した場合に、押付力が目標押付力に達したとすることができる。
S31において、電動モータ52をS5で決定された向きに回転させる始動指令が出力される。S32において、電動モータ52の回転数が検出され(回転数カウンタのカウント値が読み込まれ)、S33において、電流値が検出され、S34において、電流値が予め定められた目標電流値に達したか否かが判定される。目標電流値に達する前においては、S34の判定がNOとなり、S32,33が繰り返し実行される。回転数が検出され、電流値が検出されるのであり、電流値が目標電流値に達すると、S35において、電動モータ52が停止させられ、供給電流が0とされる。S36において、中立位置から作用位置に至るまでの間の電動モータ52の回転数が記憶される。
シュー押付ロッド56が、プライマリシューに作用して、押付力を加える。この状態で、電動モータ52への供給電流が0とされても、保持機構58により、電動モータ52が回転させられることが防止され、摩擦材押付力が保持される。
また、この状態で(保持機構58により摩擦材押付力が保持された状態で)、予測されたトルクが実際に加えられても、既に、セカンダリシューがアンカ部材36に当接しているため、一対のブレーキシュー40a,bの回転ドラム34の内周面に沿った移動を抑制し得、ブレーキ力の低下を抑制することができる。
さらに、セカンダリシューがアンカ部材36に当接しているため、シュー押付ロッド56に大きな力が加えられることが少ない。そのため、シュー押付ロッド56の強度を小さくすることができ、コストダウンを図ったり、押付装置50の小型化を図ったりすることができる。あるいは、シュー押付ロッド56に、ブレーキシュー40を介して大きな力が加えられたとしても、その回数は少なくなる。そのため、シュー押付ロッド56の寿命を長くすることができる。
【0017】
S7のブレーキ解除の実行を、図7のフローチャートに示す。
S51において、電動モータ52をS6の作動時とは逆方向に回転させる始動指令が出力される。S52において、回転数が検出される(回転数カウンタのカウント値が読み込まれる)。S52において検出される回転数は、電動モータ52のブレーキの作動時とは逆方向の回転数である。この検出された回転数が、ブレーキ作動時の回転数と同じになれば、シュー押付ロッド56が中立位置に戻されたことがわかる。
S53において、逆方向の回転数が、S36において記憶された回転数と等しくなったか否かが判定され、記憶された回転数より小さい場合には、S52、53が繰り返し実行され、記憶値と等しくなった場合に、S53の判定がYESとなり、S54において、電動モータ52の回転が停止させられる。それによって、シュー押付ロッド56が中立位置に戻される。リターンスプリング45により、一対のブレーキシュー40a,40bが縮径させられ、ブレーキが解除される。
【0018】
なお、車両の走行中にパーキングスイッチ214のロック指示操作が検出された場合には、ブレーキ作動時に実際に車輪14,16に加えられているトルクの向きが取得され、プライマリシューに押付力が加えられる。
【0019】
本実施例においては、運動変換機構54,シュー押付ロッド56等により押付機構が構成され、パーキングブレーキECU200の図5のフローチャートで表されるパーキングブレーキ制御プログラムのS1〜6を記憶する部分、実行する等により押付力制御部が構成され、そのうちの、S3,5を記憶する部分、実行する部分等によりトルク方向予測部が構成される。また、押付力制御部は、パーキングブレーキ制御部、モータ制御部でもある。
【0020】
なお、上記実施例においては、電動モータ52の回転数をカウントするカウンタが、シュー押付ロッド56を中立位置から前進させる場合にも、中立位置に戻す場合にも、同様にカウントするようにされていたが、中立位置から前進させる場合には、カウント数を増加させ、中立位置に戻す場合には、カウント数を減少させるようにすることもできる。その場合には、S53において、カウント値が0(中立位置に対応するカウント数)に達したか否かが判定されることになる。また、ブレーキ作動時に、電動モータ52の回転数をカウントして、記憶する必要がなく、S32,36が不要となる。
また、上記実施例において、ブレーキ作動時には、電動モータ52に流れる電流が予め定められた目標電流値に達するように、電動モータ52への供給電流が制御されるようにされていたが、押付力センサ94,96による検出値が予め定められた目標押付力に達するように、供給電流が制御されるようにすることもできる。ブレーキ解除時には、押付力センサ94,96による検出値がほぼ0(中立位置にあるとみなし得る大きさ)となるまで、電動モータ52が逆方向に回転させられる。
その場合の一例を図9,10に示す。図6,7に示す実施例における場合と同じ実行のステップについては同じステップ番号を付して説明を省略する。
ブレーキ作動時において、電動モータ52が始動させられた後、S33aにおいて、押付力センサ96(例えば、シュー押付ロッド56が図3の左方へ移動させられた場合)によって押付力が検出され、S34aにおいて、目標押付力に達したか否かが判定される。目標押付力に達する前においては、S33a,34aが繰り返し実行されるが、目標押付力に達すると、S35において、電動モータ52が停止させられる。
ブレーキ解除時において、電動モータ52が逆方向に始動させられた後、S52aにおいて、押付力センサ94,96によって押付力が検出され、S53aにおいて、両方の検出値がほぼ0であるか否かが判定される。実際の押付力が、押付力が0であるとみなし得る設定値以下であるか否かが判定されるのであり、押付力センサ94,96の両方の検出値が設定値以下であれば、中立位置に戻されたとされて、S54において、電動モータ52が停止させられる。
この場合に、押付力センサ96による検出値のみに基づいて中立位置であるか否かが判定されるようにすると、戻し過ぎること(シュー押付ロッド56が右方へ行き過ぎること)がある。それに対して、両方のセンサ94,96による検出値に基づけば(押付力センサ94による検出値が設定値以上にならないように)、シュー押付ロッド56をより確実に中立位置に戻すことができる。
【0021】
なお、シュー押付ロッド56を中立位置に戻す場合には、押付力センサ96による検出値が設定値以下になり、かつ、その設定値以下の状態が設定時間以上続いた場合に、中立位置にあるとされて、電動モータ52が停止させられるようにすることもできる。
また、シュー押付ロッド56のストロークを検出するストロークセンサを設け、ストロークが目標値に達するように、電動モータ52が作動させられるようにすることもできる。 さらに、押付機構50の構造は、上記実施例におけるそれに限らない。
例えば、電動モータ52は、設置スペースがあれば、バッキングプレート30の押付機構が設けられる側と同じ側に設けることができる。また、ねじ部70,72の形状は問わない。例えば、リード角が小さい形状としたり、台形ねじとしたりすることができる。その場合には、運動変換機構に保持機能を備えさせることができる。
【0022】
また、押付装置は、図11,12に示す構造を成したものとすることができる。押付装置300は、ラックアンドピニオン(平歯車)機構を有する運動変換機構302と、電気駆動源としての減速機付きモータ304とを含み、ハウジングがアンカ部材36と一体的に設けられる(アンカ部材36がハウジングとしての機能を果たす)。
運動変換機構302は、減速機付きモータ304の出力軸310と一体的に回転可能なピニオン312と、そのピニオン312と螺合するラック314とを含み、ラック314がアンカ部材36に軸方向に相対移動可能に保持される。ラック314とシュー押付ロッドとは一体的に形成される。
減速機付きモータ304は、電動モータ320と、減速機322とを含む。減速機322は、ハーモニックドライブ機構(登録商標)を備えたものとしたり、遊星歯車機構を備えたものとしたりすることができ、保持機構としての機能を有する。遊星歯車機構を備える場合には、サンギヤに電動モータ320の出力軸が連結され、プラネタリギヤ(遊星キャリア)に減速機付きモータ302の出力軸310が連結される状態で使用されることが多い。遊星歯車機構は複数段に設けられることもある。
減速機322を、ハーモニックドライブ機構、遊星歯車機構等を備えたものとすれば、電動モータ320に電流が供給されていない状態で、ブレーキシュー40a,b、シュー押付ロッド314を介して大きな力が加えられても、電動モータ320が回転させられないようにすることができる。
なお、本実施例においては、回り止め機構が不可欠ではないため、上記実施例において設けられていたシュー係合部74a,bも不可欠ではない。
本実施例においては、運動変換機構302、シュー押付ロッド314等により押付機構が構成される。シュー押付ロッド314は運動変換機構302の構成要素でもある。
【0023】
なお、電動モータ320を超音波モータとすることができ、その場合には、電動モータ320が保持機能を有することになる。
【0024】
また、押付装置は、図13,14に示す構造を成したものとすることができる。押付装置350は、偏心カム352を備えた運動変換機構354と、一対のシュー押付ロッド360a,360bとを含む。
アンカ部材36には、厚み方向(バッキングプレート30に対して垂直な方向、アクスルシャフトと平行な方向)の貫通穴372が形成され、その貫通穴372にベアリングを介して減速機付きモータ304の出力軸310が相対回転可能に保持される。出力軸310には、偏心カム352が一体的に回転可能に保持されるが、偏心カム352の中心Cは、出力軸310の中心軸線Mから距離d隔たった位置にある。
偏心カム356のカム面(本実施例においては外周面)に対向して一対のシュー押付ロッド360a,bが配設される。一対のシュー押付ロッド360a,bは、アンカ部材36に軸方向に相対移動可能に保持される。
【0025】
図13に示すように、パーキングブレーキ18,20の非作用状態において、偏心カム356は実線で示す中立位置にある。偏心カム352の中心C0が運動変換機構354の軸方向の中心線上に位置するのであり、中心Mと、シュー押付ロッド360a,bの後退端面380a,bとの間の距離が互いに等しくなる位置にある。
ブレーキの作動時において、予測されるトルクの向きが前進回転方向Pである場合には、減速機付きモータ304の回転により、偏心カム352が破線で示す位相まで回転させられる(中心がC1の位置にある)。シュー押付ロッド360aが左方へ移動させられ、ブレーキシュー40aに直接作用し、押付力が加えられる。この場合に、シュー押付ロッド360bの後退端面380bには偏心カム352の外周面が接することがあるが、シュー押付ロッド360bが右方へ移動させられることはなく、シュー押付ロッド360bがブレーキシュー40bに押付力を加えることはない。
予測されるトルクの向きが後退回転方向Qである場合には、減速機付きモータ304が逆方向に回転させられ、偏心カム352が一点鎖線に示す位相(中心がC2の位置)まで回転させられる。シュー押付ロッド360bが右方へ移動させられ、ブレーキシュー40bに押付力が加えられる。
ブレーキの解除時には、偏心カム352が実線に示す中立位置まで戻される。一対のブレーキシュー40a,b、シュー押付ロッド360a,bは、リターンスプリング45により非作用位置(中立位置)に戻される。
本実施例においては、減速機付きモータ304の出力軸310がアンカ部材36に形成された貫通穴372を貫通して取り付けられるため、スペースが小さくても、バッキングプレート30のブレーキシュー40a,b側に、運動変換機構354等を設置することができる。
本実施例においては、運動変換機構354,シュー押付ロッド360a,b、アンカ36等により押付機構が構成される。運動変換機構354は、偏心カム352,シュー押付ロッド360a,bを軸方向に直線移動可能に保持する構造等により構成される。
【0026】
なお、上記実施例において、一対のシュー押付ロッド360a,bは不可欠ではなく、偏心カム352の外周面が一対のブレーキシュー40a,bに直接作用し、押付力を加えるようにすることができる。
また、カム面を外周面とすることは不可欠ではない。
【0027】
また、押付装置は、図15に示す構造を成したものとすることができる。本実施例において、押付装置400は、レバー部材402を備えた運動変換機構404を含む。レバー部材402はセクタギヤ(ウォームホイール)406と一体的に形成されたものであり、先端部408に対向して2つのシュー押付ロッド360a,bが配設される。また、レバー部材402は、中間部において、バッキングプレート30,アンカ部材36に形成された長穴412,414を貫通しており、バッキングプレート30のブレーキシュー40が配設された側とは反対側において、レバー支持部材416によって回動中心点Rの回りに回動可能に保持される。長穴412,414は、レバー部材402のガイド部としての機能を有する。
レバー部材402のセクタギヤ406は、減速機付きモータ304の出力軸310と一体的に回転可能なウォーム418に螺合する。
ブレーキ作動時には、減速機付きモータ304の回転によってレバー部材402が回動させられ、それによって、シュー押付ロッド360a,bのいずれか一方が選択的に移動させられる。レバー部材402が図15の反時計回りに回転させられると、シュー押付ロッド360aが移動させられ、ブレーキシュー40aに押付力が加えられる。レバー部材402が時計回りに回転させられると、シュー押付ロッド360bが移動させられ、ブレーキシュー40bに押付力が加えられる。
ブレーキ解除時には、減速機付きモータ304の逆方向の回転によりレバー部材402が中立位置(姿勢)に戻される。リターンスプリング45により、一対のブレーキシュー40a,b、シュー押付ロッド360a,bが中立位置まで戻される。
本実施例においては、運動変換機構404,シュー押付ロッド360a,b、アンカ部材36等により押付機構が構成される。
【0028】
なお、シュー押付ロッド360a,bは、一体的に移動可能な1つのロッドとすることもできる。
また、シュー押付ロッド360a,bは不可欠ではなく、レバー部材402の先端部408によってブレーキシュー40a,bに直接押付力が加えられるようにすることもできる。
さらに、ウォーム418、セクタギヤ406が非可逆特性を有する場合には、これらウォーム418とセクタギヤ406とが保持機構として機能する。その場合には、減速機322を、非可逆特性を有する歯車装置を含むものとする必要がなくなる。また、減速機自体も不可欠ではない。
【0029】
さらに、押付装置は、図16、17に示す構造のものとすることができる。押付装置500においては、シュー押付ロッド(軸方向移動部材)502のシュー係合部504がブレーキシュー40a側の端部に設けられ、ブレーキシュー40b側の端部には設けられていないが、その他の構造については、図3、4に示す押付装置50と同じである。
本実施例においては、シュー押付ロッド502がブレーキシュー40bに直接作用して押付力を加えることがない。
パーキングスイッチ214のロック指示操作が検出されると、トルクの向きが予測されることなく、電動モータ52の作動により、シュー押付ロッド502が左方へ移動させられる。シュー押付ロッド502がブレーキシュー40aに直接作用(当接)して、押付力を加える。ブレーキシュー40aの円周方向の力はアジャスタ38を介してブレーキシュー40bに伝達され、ブレーキシュー40bがアンカ部材36に押し付けられる。
この状態で、前進回転方向Pのトルクが加えられた場合には、セカンダリシュー40bがアンカ部材36に当接しているため、一対のブレーキシュー40a,bの円周方向の移動が抑制され、ブレーキ力の低下を良好に抑制することができる。また、後退回転方向Qのトルクが加えられた場合には、セカンダリシュー40aがシュー押付ロッド502に当接しているため、それによって、ブレーキ力の低下を抑制することができる。
さらに、押付力が加えられるブレーキシュー40aは、前進回転方向Pにトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるシューである。そのため、走行中にパーキングブレーキ18,20が作動させられた場合に、大きなブレーキ力を付与することができる。
本実施例における押付装置500には、上記各実施例における押付装置を適用することができる。
【0030】
なお、上記各実施例におけるデュオサーボ型のドラムブレーキを含むブレーキシステムは、サービスブレーキに適用することができる。例えば、サービスブレーキの作動指令に応じて電動モータ等を作動させて、プライマリシューに押付力を加えることが可能である。
以上、本発明の複数の実施例について説明したが、前述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例であるパーキングブレーキシステム全体を示す概念図である。
【図2】上記パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキの平面図である。
【図3】上記ドラムブレーキの押付装置の断面図である。
【図4】図3のAA断面図である。
【図5】上記パーキングブレーキシステムの電動パーキングブレーキECUの記憶部に記憶されたパーキングブレーキ制御プログラムを表すフローチャートである。
【図6】上記プログラムの一部を表すフローチャートである(ブレーキ作動)。
【図7】上記プログラムの別の一部を表すフローチャートである(ブレーキ解除)。
【図8】車両が停止している路面の傾きと前後加速度との関係を示す図である。
【図9】上記記憶部に記憶された別のパーキングブレーキ制御プログラムの一部を表すフローチャートである(ブレーキ作動)。
【図10】上記パーキングブレーキ制御プログラムの別の一部を表すフローチャートである(ブレーキ解除)。
【図11】上記パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキの別の押付装置を概念的に示す断面図である。
【図12】図11のBB断面図である。
【図13】上記パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキのさらに別の押付装置を概念的に示す断面図である。
【図14】図13のDD断面図である。
【図15】上記パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキの別の押付装置を概念的に示す断面図である。
【図16】上記パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキのさらに別の押付装置を概念的に示す断面図である。
【図17】図16のEE断面図である。
【符号の説明】
【0032】
18,20:ドラムブレーキ(パーキングブレーキ) 30:バッキングプレート 36:アンカ部材 40a,b:ブレーキシュー 50,300,350,400,500:押付装置 52,320:電動モータ 54,302,354,402:運動変換機構 56,360a,b,502:シュー押付ロッド 58,322:保持機構 60:ハウジング 64:ねじ部材 74a,b:シュー係合部 80:ウォーム 82:ウォームホイール 94,96:押付力センサ 200:パーキングブレーキECU 210:電流計 212:回転数センサ 214:パーキングスイッチ 226:前後加速度センサ 228:シフト位置センサ 312:ピニオン 314:ラック 322:減速機 352:偏心カム 402:レバー部材 406;セクタギヤ 412,414:長穴 418:ウォーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムにおいて、ブレーキシューを回転ドラムに押し付ける押付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3に記載のデュオサーボ型のパーキングブレーキにおいて、ケーブルが引っ張られると、ブレーキレバー、ストラットを介して、一対のブレーキシューが回転ドラムに押し付けられて、パーキングブレーキが作用させられる。
特許文献4に記載のデュオサーボ型のドラムブレーキを含む電動パーキングパーキングブレーキシステムは、(a)電動モータと、(b)一対のスライド部材と、(c)それら一対のスライド部材と電動モータとの間に設けられ、電動モータの回転を一対のスライド部材の互いに逆方向の直線運動に変換する運動変換機構と、(d)パーキングブレーキ作動指令に応じて、電動モータを作動させて、一対のスライド部材を、互いに逆方向に前進させることにより、一対のブレーキシューの両方にそれぞれ押付力を付与して、パーキングブレーキを作用させるモータ制御部とを備えた押付装置を含む。
特許文献5に記載のデュオサーボ型のドラムブレーキを含む電動パーキングパーキングブレーキシステムは、(a)電動モータと、(b)偏心カムと、(c)その偏心カムの外周面と係合させられた一対のスライド部材と、(c)パーキングブレーキ作動指令に応じて、電動モータを作動させて偏心カムを回転させ、一対のスライド部材を互いに逆向きに移動させて、一対のブレーキシューの両方にそれぞれ押付力を付与し、パーキングブレーキを作用させるモータ制御部とを備えた押付装置を含む。
【特許文献1】特開平10−110758号公報
【特許文献2】特開2001−165207号公報
【特許文献3】特開平10−103391号公報
【特許文献4】特開2001−82517号公報
【特許文献5】特開2006−336868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、デュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムに設けられる新規な押付装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0004】
請求項1に記載のパーキングブレーキシステムは、(i)非回転体と、(ii)車両の車輪と共に回転し、内周面が摩擦面である回転ドラムと、(iii)その回転ドラムの内周側に配設され、外周面に摩擦材を有する一対のブレーキシューと、(iv)それら一対のブレーキシューの一端部の間において、前記非回転体に固定されたアンカ部材と、(v)前記一対のブレーキシューの前記アンカ部材が設けられた側とは反対側の端部同士を連結し、前記一対のブレーキシューの一方に加えられた円周方向の力を他方のブレーキシューの入力として伝達する伝達部材と、(vi)前記一対のブレーキシューの前記一端部側に設けられ、前記一対のブレーキシューの摩擦材を前記ドラムの内周面に押し付ける押付装置とを含むデュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムであって、前記押付装置が、(a)電気駆動源と、(b)前記一対のブレーキシューの各々に、それぞれ直接作用する少なくとも1つの作用部材を有し、その少なくとも1つの作用部材のうちの1つを前記電気駆動源により作動させて、前記一対のブレーキシューのうちの、その1つの作用部材に作用するものに選択的に押付力を付与する押付機構と、(c)前記車両の停止状態において前記車輪に加えられるトルクの向きを予測し、その予測に基づいて前記電気駆動源を制御することにより、前記1つの作用部材に、前記一対のブレーキシューのうち、そのトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるものに前記押付力を付与させる押付力制御部とを含むものとされる。
本項に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、パーキングブレーキの作用後(すなわち、パーキングブレーキの作用中)に車輪に加えられるトルクの向きが予測され、ブレーキの作動時に、そのトルクが加えられたと仮定した場合にプライマリシューとなるもの(以下、単にプライマリシューと称する)のみに押付力が加えられる。
トルクの向きが前進回転方向であっても後退回転方向であっても、電気駆動源により、作用部材がプライマリシューに直接作用して押付力を加えるのであり、トルクが加えられたと仮定した場合にセカンダリシューとなるもの(以下、単に、セカンダリシューと称する)に、作用部材が押付力を加えることはない。このブレーキ作用状態において(電気駆動源によって押付力の制御が行われない状態)、予測されたトルクが実際に加えられても、既に、セカンダリシューがアンカ部材に当接しているため、プライマリシューおよびセカンダリシューの円周方向の移動が抑制され、ブレーキ力の低下が抑制される。
このように、本項に記載のパーキングブレーキシステムに含まれるデュオサーボ型のドラムブレーキの押付装置は、車両の停止状態において車輪に回転トルクが加えられた場合にプライマリシューとなるもののみに押付力を加えるものであり、係る押付装置は、特許文献1〜5のいずれにも記載されておらず、新規なものである。
一方、特許文献4,5には、電動アクチュエータによって一対のブレーキシューの両方に押付力を加える押付装置が記載されている。このパーキングブレーキにおいては、一対のブレーキシューのうちいずれが移動するか一義的に決まらず、パーキングブレーキの作用中にトルクが加えられると、そのトルクの方向に一対のブレーキシューが回転させられることがあり、セカンダリシューがスライド部材の一方に当接し、スライド部材に大きな力が加えられる。それに対して、本項に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、セカンダリシューがアンカ部材に当接しているため、アンカ部材が円周方向の力を受けるのであり、作用部材が受けるのではない。その結果、作用部材を、強度の小さいものとすることができ、押付装置の小形化を図ったり、コストダウンを図ったりすることができる。あるいは、作用部材に大きな力が加えられる頻度を低くすることができるため、作用部材の寿命を長くすることができる。
車両の停止状態において、車輪に加えられるトルクの向きは、車両が停止している路面の傾斜や、トランスミッションのシフト位置に基づいて予測することができる。車両はサービスブレーキの作動により停止し、その後、パーキングブレーキが作用させられ、パーキングブレーキの作用後に、サービスブレーキが解除されることが多い。サービスブレーキが解除されると、車輪に重力に起因するトルクが加えられたり、車両駆動源からの駆動トルクが加えられたりする。
車両の停止状態において車輪に加えられると予測されるトルクの向きは、請求項2に記載のように、車両が停止している路面の傾斜の向きに基づいて取得することができる。路面の傾斜の向きは傾斜検出装置によって検出される。車両が登り坂に停止している場合には、後退回転方向のトルクが加えられ、降り坂に停止している場合には、前進回転方向のトルクが加えられると予測される。傾斜検出装置は、車両の前後方向の傾きを検出する姿勢検出装置であると考えることもできる。傾斜検出装置は、前後加速度センサを含むものとすることができ、さらに、車高センサを含むものとすることもできる。
また、車両駆動源が作動状態にあり、シフト位置がパーキング以外の位置にある場合においても、パーキングブレーキが作動させられることがある。その場合には、シフト位置がニュートラル以外の位置にあれば、そのシフト位置に基づいて車輪に加えられると予測されるトルクの向きを取得することができる。シフト位置が前進を指示する位置である場合には前進回転方向のトルクが加えられると予測され、後退を指示する位置である場合には後退回転方向のトルクが加えられると予測される。
押付機構において、作用部材は1つであっても、2つであってもよい。作用部材が1つである場合には、その1つの作用部材が、一対のブレーキシューの両方にそれぞれ作用する。作用部材が2つである場合には、作用部材の一方が一対のブレーキシューのうちの一方に作用し、作用部材の他方が他方のブレーキシューに作用する。作用部材が2つの場合には、2つの作用部材に共通に1つの電気駆動源を設けても、2つの作用部材に、それぞれ、対応して設けてもよい。
作用部材は、ロッド(スライド部材、ピストンと称することもある)としたり、カム、回動レバー等としたりすることができる。カム、回動レバーは運動変換機構として機能することもあり、その場合には、カム、回動レバーと作用部材(例えば、ロッド)との両方が設けられることもある。また、作用部材、運動変換機構の構成要素は剛体であり、ケーブルのように可撓性を有しないものと考えることができる。
電気駆動源は、電動モータとしたり、圧電素子等を有する電気的変形部材としたりすることができる。電気駆動源が電動モータであり、作用部材がロッド等の直線的に移動可能なものである場合には、電動モータの回転を直線運動に変換して、作用部材に伝達する運動変換機構が設けられるのが普通である。運動変換機構は、駆動力伝達機構であると考えることもできる。電気駆動源が電気的変形部材である場合には、作用部材毎に設けることが望ましい。
以下、押付装置の具体的な態様について説明する。
請求項3に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(a)前記一対のブレーキシューの各々に作用する1つの作用部材と、(b)前記電動モータの回転を前記1つの作用部材の直線運動に変換する運動変換機構とを含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記作用部材の移動方向を制御するモータ制御部を含むものとされる。
電動モータが一方向に回転させられた場合には、作用部材は、一対のブレーキシューのうちの一方に向かって前進し、その一方のブレーキシューに作用して、押付力を付与する。逆の方向に回転させられた場合には、その作用部材は一対のブレーキシューのうちの他方に向かって前進し、その他方のブレーキシューに作用して、押付力を付与する。
したがって、電動モータの回転方向を制御することにより、一対のブレーキシューのうちのいずれか一方に、選択的に、作用部材を作用させて、押付力を付与することができる。
請求項4に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記運動変換機構が、(a)ハウジングと、(b)そのハウジングに軸方向に相対移動不能かつ相対回転可能に保持されるとともに、第1ねじ部を備えた第1ねじ部材と、(c)前記ハウジングに軸方向に相対移動可能に保持されるとともに、前記第1ねじ部と螺合する第2ねじ部を備えた第2ねじ部材とを含み、前記第1ねじ部材が、前記電動モータにより回転させられ、前記第2ねじ部材が、前記1つの作用部材と一体的に移動可能なものとされる。
電動モータの回転に伴って第1ねじ部材が回転させられると、第2ねじ部材が軸方向に直線的に移動させられる。そして、第2ねじ部材の軸方向の移動に伴って作用部材が移動させられる。例えば、第1ねじ部を第1ねじ部材の内周面に設け、第2ねじ部を第2ねじ部材の外周面に設けることができる。
運動変換機構は、(a)ハウジングと、(b)そのハウジングに軸方向に相対移動不能かつ相対回転可能に保持されたピニオンと、(c)前記ハウジングに軸方向に相対移動可能に保持されたラックとを含み、前記ピニオンが、前記電動モータの回転に伴って回転可能に設けられ、前記ラックが、前記1つの作用部材と一体的に移動可能に設けられたものとすることもできる。
請求項5に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(a)前記一対のブレーキシューの各々に、それぞれ、直接作用する2つの作用部材と、(b)(i)前記電動モータにより回転させられ、前記2つの作用部材の各々に作用するカムと、(ii)前記電動モータの回転により回動させられ、前記2つの作用部材の各々に作用するレバーとのいずれか一方を含む運動変換機構とを含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記2つの作用部材のうちの1つを選択的に移動させるモータ制御部を含むものとされる。
電動モータの一方向の回転によりカムが一方向に回転させられると、2つの作用部材のうちの一方が一方のブレーキシューに向かって前進して、一方のブレーキシューに作用して、押付力を加える。電動モータの逆方向の回転によりカムが逆方向に回転させられると、他方の作用部材が他方のブレーキシューに作用して、押付力を加える。
同様に、電動モータの一方向の回転によりレバーが一方向に回動させられると、一方の作用部材が一方のブレーキシューに向かって前進し、作用して、押付力を加える。電動モータの逆方向の回転によりレバーが逆方向に回動させらえると、他方の作用部材が他方のブレーキシューに作用して、押付力を加える。
カムは、一方の作用部材に作用している状態で他方の作用部材に接触している場合があるが、他方の作用部材には押付力が加えられることはない。
請求項6に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、前記電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(i)前記電動モータにより回転させられ、前記一対のブレーキシューの各々に作用するカムと、(ii)前記電動モータにより回動させられ、前記一対のブレーキシューの各々に作用するレバーとのいずれか一方を前記1つの作用部材として含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記一対のブレーキシューのうちのいずれか一方に選択的に押付力を付与するモータ制御部を含むものとされる。
本項に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、カムやレバーが作用部材であり、作用状態においては、カム面やレバーの係合部がブレーキシューに直接作用する。専用の作用部材が不要となるため、その分、押付装置の部品点数を少なくすることができる。
また、請求項7に記載のように、押付装置には、電気駆動源に電力が供給されなくても、摩擦材押付力を保持する保持機構を設けることが望ましい。例えば、(i)運動変換機構を、保持機構としての機能を備えたものとしたり、(ii)電気駆動源を、保持機構としての機能を備えたものとしたり、(iii)運動変換機構、電気駆動源とは別個に保持機構を設けたりすることができる。保持機構は、電気駆動源が電動モータである場合に、その電動モータの出力軸と同軸状に設けても、そうでなくてもよい。
(i)運動変換機構が保持機構としての機能を有する場合としては、運動変換機構がねじ機構である場合において、そのねじを、リード角が小さい形状としたり、台形ねじとしたりしたりする場合等が該当する。(ii)電気駆動源が保持機構としての機能を有する場合としては、電気駆動源が電動モータと減速機とを有する場合に、減速機を、非可逆特性を有する歯車機構を備えものとすることができる。非可逆特性を有する歯車機構としては、ウォームギヤを含むものとしたり、遊星歯車を含むものとしたり、ハーモニックドライブ(登録商標)を含むものとしたりすることができる。非可逆特性を有する歯車機構は、逆効率(電気駆動源に外力が加えられた場合に、その外力によって電動モータが回転させられないようにするために必要なモータの力を、その外力で割った値)が0である歯車機構と称することもできる。また、電気駆動源に含まれる電動モータを超音波モータとすることもできる。
例えば、請求項8に記載のように、(a)前記電動モータにより回転させられるウォームと、(b)前記作用ロッドに前記運動変換機構を介して連結されたウォームホイールとを含むものとすることが望ましい。
さらに、押付機構は、一対のブレーキシューのアンカ側の端部付近に設けられる。そのため、押付機構の本体は、アンカ部材に固定的に設けたり、請求項9に記載のように、前記アンカ部材を、前記押付機構の本体としたりすることが望ましい。アンカ部材を押付機構の本体とすれば、押付装置のハウジングを別途設ける必要がなくなるという利点がある。
また、押付力制御部は、請求項10に記載のように、パーキングブレーキの作動指令に応じて電気駆動源を作動させるものとすることができる。デュオサーボ型のドラムブレーキは、パーキングブレーキとして使用されることが多い。
請求項11に記載のパーキングブレーキシステムは、(a)非回転体と、(b)車両の車輪と共に回転し、内周面が摩擦面である回転ドラムと、(c)その回転ドラムの内周側に配設され、外周面に摩擦材を有する一対のブレーキシューと、(d)それら一対のブレーキシューの一端部の間において、前記非回転体に固定されたアンカ部材と、(e)前記一対のブレーキシューの前記アンカ部材が設けられた側とは反対側の端部同士を連結し、前記一対のブレーキシューの一方に加えられた円周方向の力を他方のブレーキシューの入力として伝達する伝達部材と、(f)前記一対のブレーキシューの前記一端部側に設けられ、前記一対のブレーキシューの摩擦材を前記ドラムの内周面に押し付ける押付装置とを含むデュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムであって、前記押付装置が、(a)電気駆動源と、(b)前記一対のブレーキシューのうちの一方に作用する軸方向移動部材を有し、その軸方向移動部材を前記電気駆動源により前記一方のブレーキシューに直接作用させることにより、その一方のブレーキシューに押付力を付与する押付機構とを含むものとされる。
本項に記載のパーキングブレーキシステムにおいては、デュオサーボ型のドラムブレーキにおいて、軸方向移動部材の前進により予め定められた一方のブレーキシューにのみ押付力が付与される。それによって、パーキングブレーキが作用させられる。軸方向移動部材は、例えば、ロッド状を成し、可撓性を有しないものであり、直線的に移動させられるものである。可撓性を有するケーブルや回動させられるレバーではない。
車両の停止状態において、パーキングブレーキの作用中に、トルクが加えられた場合において、その一方のブレーキシューがプライマリシューである場合には、セカンダリシューがアンカ部材に当接しているため、ブレーキ力の低下を良好に抑制することができる。一方のブレーキシューがセカンダリシューである場合には、プライマリシューが軸方向移動部材に当接しているため、それによって、ブレーキ力の低下を抑制することができる。
また、本項に記載のデュオサーボ型のドラムブレーキにおいて、一方のブレーキシューを車輪に前進回転方向のトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるものとすれば、車両の前進走行中にドラムブレーキが作用させられた場合に、大きなブレーキ力を付与できるという利点がある。この場合に、軸方向移動部材に大きな力が加えられることがないため、軸方向移動部材の強度を小さくし得、かつ、大きなブレーキ力を加えることができる。
特許文献1〜5のいずれにも、本願請求項7に記載のように、パーキングブレーキシステムに含まれるデュオサーボ型のドラムブレーキにおいて、軸方向移動部材を前進させることにより、予め決められた一方のブレーキシューのみに押付力を付与する押付装置についての記載はなく、本願請求項7に記載のの押付装置は新規なものである。
なお、請求項11に記載のパーキングブレーキシステムには、請求項1〜10のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
【実施例】
【0005】
本発明の一実施例であるデュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムを図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、符号14,16は、左右後輪を示し、符号18,20は、車輪14,16にそれぞれ設けられたドラムブレーキを示す。ドラムブレーキ18,20は、図2に示すように、デュオサーボ型のドラムブレーキであり、パーキングブレーキとして作用させられる。以下、必要に応じて、ドラムブレーキ18,20をパーキングブレーキと称することがある。
また、図2において、符号22はブレーキディスクを示し、符号23はキャリパを示し、これらブレーキディスク22とキャリパ23とで共同してサービスブレーキとしてのディスクブレーキ24を構成する。パーキングブレーキ18,20としてのドラムブレーキは、ブレーキディスク22の内周側に設けられているのであり、本実施例においては、ドラムインディスクブレーキとなっている。ドラムブレーキ18,20は、それそれ、構造が同じものである。
【0006】
ドラムブレーキ18,20は、それぞれ、図示しない車体に取り付けられた非回転体としてのバッキングプレート30と、内周面に摩擦面32を備えて車輪14と共に回転するドラム(回転ドラム)34とを備えている。バッキングプレート30の一直径方向に隔たった2箇所には、それぞれアンカ部材36と伝達部材としてのアジャスタ38とが設けられている。アンカ部材36はバッキングプレート30に固定されており、アジャスタ38はフローティング式とされている。それらアンカ部材36とアジャスタ38との間には、各々円弧状を成す一対のブレーキシュー40a,40bがドラム34の内周面に対面するように取り付けられている。一対のブレーキシュー40a,40bは、シューホールドダウン装置42a,42bによってバッキングプレート30にそれの面に沿って移動可能に取り付けられている。なお、バッキングプレート30の中央に設けられた貫通穴は、図示しないアクスルシャフトの貫通を許容するためのものである。
【0007】
一対のブレーキシュー40a,40bは、一端部同士がアジャスタ38により作動的に連結される一方、各他端部がアンカ部材36と当接して回動可能に支持されるようになっている。一対のブレーキシュー40a,40bの一端部同士は、アジャスタスプリング44によりアジャスタ38に当接する向きに付勢されており、各他端部はリターンスプリング45によりアンカ部材36に向かって付勢されている。各ブレーキシュー40a,40bの外周面に摩擦材としてのブレーキライニング46a,46bが保持され、それら一対のブレーキライニング46a,46bがドラム34の摩擦面32に接触させられることにより、それらブレーキライニング46a,46bとドラム34との間に摩擦力が発生する。アジャスタ38は、一対のブレーキシュー40a,40bの摩耗に応じて一対のブレーキライニング46a,46bとドラム34との隙間を調整するために操作される。アジャスタ38は、一対のブレーキシュー40a,40bの一方の円周方向の力を他方のブレーキシューに伝達する伝達部材として機能する。
【0008】
押付装置50は、図3,4に示すように、電気駆動源としての電動モータ52と、運動変換機構54と、1つの作用部材としてのシュー押付ロッド56と、保持機構58とを含む。電動モータ52の回転が運動変換機構54により直線運動に変換されて、シュー押付ロッド56に伝達される。シュー押付ロッド56は、ケーブルのように可撓性を有するものではなく、剛体である。本実施例におけるドラムブレーキは、レバーを含まず、ケーブルによって作動させられるものではない。
運動変換機構54は、図3に示すように、ハウジング60と、ハウジング60に、一対のベアリング66を介して相対回転可能に保持されたねじ部材64と、ねじ部材64の内周側に軸方向に相対移動可能に保持されたシュー押付ロッド56とを含む。ねじ部材64の内周面には第1ねじ部(雌ねじ部)70が形成されている。一方、シュー押付けロッド56の中間部の外周面には第2ねじ部(雄ねじ部)72が形成されており、ねじ部材64の第1ねじ部70と螺合する。シュー押付ロッド56の両端部には、シュー係合部74a,bが設けられている。シュー係合部74a,bは、ブレーキシュー40a,bのウェブ76a,bをそれぞれ挟み込む形状とされており、シュー押付ロッド56の回り止めとして機能する。なお、シュー係合部74a,bの大きさ、形状は、シュー押付ロッド56が図3において右方向、あるいは、左方向に移動させられても、ウェブ76a,bを両側から挟み得る大きさ、形状とされている(移動させられてもウェブ76a,bが外れない大きさ、形状とされている)。
本実施例においては、ねじ部材64が第1ねじ部材に対応し、シュー押付ロッド56が第2ねじ部材に対応する。シュー押付ロッド56と第2ねじ部材とが一体的に形成されているのである。
【0009】
電動モータ52と運動変換機構54との間には、保持機構としてのウォームギヤ58が設けられる。ウォームギヤ58は、ウォーム80とウォームホイール82とを含む。ウォーム80は、電動モータ52の出力軸83に一体的に回転可能に設けられている。ウォームホイール82の内周側には、ねじ部材64がキー84を介して一体的に回転可能に保持され、ウォームホイール82は、ハウジング60に、軸方向の相対移動が阻止された状態で保持される。その結果、運動変換機構54において、ねじ部材64の軸方向の相対移動も阻止され、ねじ部材64の回転がシュー押付ロッド56の軸方向の相対移動に変換されることになる。
ウォームギヤ58により、電動モータ52に電流が供給されない状態において、シュー押付ロッド56に大きな力が加えられても、その力によって、電動モータ52が回転させられないようにされている。ウォームギヤ58は、また、減速機としても機能する。
ハウジング60は、アンカ部材36に固定的に保持されており、アンカ部材36の、ハウジング60の軸方向に直交する面に対向する対向面90,92に、それぞれ、押付力センサ94,96が取り付けられる。押付力センサ94,96は、感圧式のものであり、押付力センサ94は、シュー押付ロッド56がブレーキシュー40bに加えた押付力(厳密にいえば、押付力の反力)を検出するものであり、押付力センサ96は、シュー押付ロッド56がブレーキシュー40aに加えた押付力を検出するものである。
なお、ハウジング60,アンカ部材36は、複数の部材から構成されるものとすることができる。
【0010】
本実施例において、電動モータ52は、図1に示すように、電動パーキングブレーキECU(PKBECU)200の指令によって制御される。パーキングブレーキECU200は、コンピュータを主体とするものであり、入出力部202,実行部204,記憶部206等を含む。入出力部202には、押付力センサ94,96、電動モータ52に流れる電流を検出する電流計210,電動モータ52の回転数を検出する回転数センサ212,パーキングブレーキスイッチ(以下、単に、パーキングスイッチと略称する)214等が接続されるとともに、駆動回路216を介して電動モータ52が接続される。
電動パーキングブレーキECU200は、CAN(Car Area Network)218を介して、車両に設けられた他のコンピュータ、例えば、スリップ制御ECU(VSCECU)220,エンジン・トランスミッションECU(ETCECU)222等に接続される。スリップ制御ECU220には傾斜検出装置としての前後加速度センサ226等が接続され、エンジン・トランスミッションECU222にはシフト位置センサ228等が接続されており、前後加速度、シフト位置等の情報がスリップ制御ECU220,エンジン・トランスミッションECU222,CAN218を介して、パーキングブレーキECU200に供給される。前後加速度センサ226は、車両の前後方向に対して45°傾斜した向きの加速度を検出する2つの検出部を含むものであり、これら2つの検出部による検出値に基づいて車両の前後方向の加速度が取得される。そのため、2つの検出部のうちの一方に異常が生じても他方によって前後方向の加速度を取得することが可能となる。
【0011】
なお、押付力センサは、シュー押付ロッド56のシュー係合部74a,74bのブレーキシュー40a,bと当接する部分に取り付けることができる。その場合には、ブレーキシュー40a,bに加えられた押付力が直接検出されることになる。特に、ハウジング60がアンカ部材36と一体的に設けられた場合には、シュー係合部74a,74bに取り付けることが望ましい。
また、アンカ部材36の、ブレーキシュー40a,bと当接する部分に取り付けることもできる。この場合には、サーボ効果により得られた押付力を検出することもできる。
【0012】
パーキングスイッチ214は、パーキングブレーキ18,20の作動(以下、パーキングブレーキ18,20の作動をロックと称することがある)を指示する場合、解除(以下、パーキングブレーキ18,20の解除をリリースと称することがある)を指示する場合に、操作されるスイッチであり、例えば、ロック側操作部とリリース側操作部とを有するものとすることができる。ロック側操作部が操作された場合(以下、ロック指示操作が行われた場合と略称する)にはロック要求があるとされ、リリース側操作部が操作された場合(以下、リリース指示操作が行われた場合と略称する)にはリリース要求があるとされる。
シフト位置センサ228は、シフト操作部材の位置を検出するものであっても、トランスミッションのシフト位置を検出するものであってもよい。
【0013】
以上のように構成されたパーキングブレーキシステムにおける作動について説明する。
パーキングブレーキ18,20の非作用状態において、シュー押付ロッド56は図示する中立位置にある。中立位置において、シュー係合部74a,bにブレーキシュー40a,bがわずかに接触するか、接触しないかのいずれかである。
パーキングブレーキスイッチ214のロック指示操作が行われると、電動モータ52が作動させられて、パーキングブレーキ18,20が作動させられる。その場合に、パーキングブレーキ18,20の作用中(作動後)に、車輪14,16に加えられると予測されるトルクの向きが取得される。そして、その予測されるトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるシュー(トルクによって、一対のブレーキシュー40a,bが回転ドラム34の内周面に沿って移動させられた場合に、アンカ部材36に当接するシューとは反対側のシュー:以下、単に、プライマリシューと称する)に向かってシュー押付ロッド56が前進させられる。シュー押付ロッド56は、プライマリシューに直接作用して(プライマリシューに直接接触して)、押付力を加える。中立位置においては、シュー押付ロッド56にブレーキシュー40が接触していなくても、前進させられることにより、確実に接触し、直接作用し得る状態となる。
例えば、予測されるトルクの向きが前進回転方向Pであると取得された場合には、シュー押付ロッド56が図3の左方へ移動させられ、ブレーキシュー40aに押付力が加えられる。ブレーキシュー40aに作用する円周方向の力が、アジャスタ38によってブレーキシュー40bに伝達され、ブレーキシュー40bがアンカ部材36に押し付けられる。
予測されるトルクの向きが後退回転方向Qである場合には、シュー押付ロッド56が図3の右方へ移動させられ、ブレーキシュー40bに押付力が加えられる。ブレーキシュー40bに加えられた押付力がアジャスタ38を介してブレーキシュー40aに伝達され、ブレーキシュー40aがアンカ部材36に押し付けられる。
【0014】
車両の停止状態において、車輪14,16に加えられるトルクの向きは、車両が停止している路面の傾斜や、トランスミッションのシフト位置に基づいて予測することができる。車両はサービスブレーキ24の作動により停止し、その後、パーキングブレーキ18,20が作用させられ、パーキングブレーキ18,20の作用後に、サービスブレーキ24が解除されることが多い。サービスブレーキ24が解除されると、車輪に重力に起因するトルクが加えられたり、車両駆動源からの駆動トルクが加えられたりする。
車両が傾斜した路面に停止している場合には、図8に示すように、前後加速度G,重力加速度g,傾斜角度θとした場合に、これらの間には、式
G=g・sinθ
が成立する。そのため、前後加速度Gに基づけば、傾斜角度θ(大きさ、向き)を取得することができる。上式から、加速度の向きが前進方向(G>0)である場合には、車両は降り坂(sinθ>0,θ>0)に停止しており、加速度の向きが後退方向(G<0)である場合には登り坂(sinθ<0,θ<0)に停止していることがわかる。車両が停止している路面が登り坂である場合には、サービスブレーキ24が解除されると、車輪14,16には後退回転方向Qのトルクが作用すると予測され、降り坂である場合には、前進回転方向Pのトルクが作用すると予測される。また、前後加速度Gに基づいて傾斜角度θの絶対値を取得し、傾斜角度θの絶対値が予め定められた設定値より大きい場合には、路面が傾斜しており、設定値以下である場合にはほぼ水平な路面に停止しているとすることができる。
また、車両駆動源が作動状態にあり、シフト位置がパーキング以外の位置にある場合においても、パーキングスイッチ214のロック指示操作により、パーキングブレーキ18,20が作用させられることがある。その場合には、シフト位置がニュートラル以外の位置にあれば、そのシフト位置に基づいて車輪に加えられると予測されるトルクの向きを取得することができる。シフト位置が前進を指示する位置(例えば、ドライブ位置、1st位置、2nd位置等)である場合には、サービスブレーキ24が解除されると前進回転方向Pのトルクが加えられ、後退を指示する位置(例えば、リバース位置等)である場合には、後退回転方向Qのトルクが加えられると予測される。
本実施例においては、車両が停止している路面が傾斜している場合には、その傾斜の向きに基づいてトルクが向きが予測され、車両が停止している路面がほぼ水平である場合には、駆動トルクの向きに基づいてトルクの向きが予測される。
なお、予測されるトルクの向きは、路面の傾斜角度の大きさ、向きと駆動トルクの大きさ、向きとの両方に基づいて取得することもできる。
【0015】
本実施例において、図5のフローチャートで表されるパーキングブレーキ制御プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、パーキングスイッチ214が操作されたか否かが判定され、操作された場合には、S2において、ロック指示であるか否かが判定される。ロック指示である場合には、S3,4において、上述のように、前後加速度センサ226による検出値に基づいて傾斜の向きが取得され、シフト位置センサ228による検出結果に基づいて駆動トルクの向きが取得される。そして、S5において、サービスブレーキ24が解除された場合に加えられるトルクの向きが予測され、電動モータ52の回転方向、すなわち、シュー押付ロッド56の移動方向が決定される。
S6において、電動モータ52への供給電流が制御され、パーキングブレーキ18,20が作動させられる。シュー押付ロッド56が移動させられて、プライマリシューに押付力が加えられる。
それに対して、ロック指示ではなく、リリース指示である場合には、S2の判定がNOとなり、S7において、電動モータ52への供給電流の制御により、パーキングブレーキ18,20が解除される。シュー押付ロッド56が中立位置に戻される。
【0016】
S6のブレーキ作動の実行を、図6のフローチャートに示す。
本実施例において、ブレーキ作動時に加えられる押付力の大きさは予め定められた設定値(目標押付力)とされており、実際の押付力が目標押付力となるように電動モータ52が作動させられる。押付力と、出力可能なブレーキ力(路面とタイヤとの間に加えられる力)との間には予め定められた関係が成立するため、押付力が目標押付力とされれば、所望の大きさのブレーキ力が得られる。また、電動モータ52が直流モータ等である場合には、押付力が大きい場合は小さい場合より電動モータ52に加えられる負荷が大きくなり、流れる電流値が大きくなる。電動モータ52に流れる電流と押付力との間には予め決められた関係が成立し、電流値が決まれば押付力が決まる。このことから、電動モータ52に流れる電流が目標電流値に達した場合に、押付力が目標押付力に達したとすることができる。
S31において、電動モータ52をS5で決定された向きに回転させる始動指令が出力される。S32において、電動モータ52の回転数が検出され(回転数カウンタのカウント値が読み込まれ)、S33において、電流値が検出され、S34において、電流値が予め定められた目標電流値に達したか否かが判定される。目標電流値に達する前においては、S34の判定がNOとなり、S32,33が繰り返し実行される。回転数が検出され、電流値が検出されるのであり、電流値が目標電流値に達すると、S35において、電動モータ52が停止させられ、供給電流が0とされる。S36において、中立位置から作用位置に至るまでの間の電動モータ52の回転数が記憶される。
シュー押付ロッド56が、プライマリシューに作用して、押付力を加える。この状態で、電動モータ52への供給電流が0とされても、保持機構58により、電動モータ52が回転させられることが防止され、摩擦材押付力が保持される。
また、この状態で(保持機構58により摩擦材押付力が保持された状態で)、予測されたトルクが実際に加えられても、既に、セカンダリシューがアンカ部材36に当接しているため、一対のブレーキシュー40a,bの回転ドラム34の内周面に沿った移動を抑制し得、ブレーキ力の低下を抑制することができる。
さらに、セカンダリシューがアンカ部材36に当接しているため、シュー押付ロッド56に大きな力が加えられることが少ない。そのため、シュー押付ロッド56の強度を小さくすることができ、コストダウンを図ったり、押付装置50の小型化を図ったりすることができる。あるいは、シュー押付ロッド56に、ブレーキシュー40を介して大きな力が加えられたとしても、その回数は少なくなる。そのため、シュー押付ロッド56の寿命を長くすることができる。
【0017】
S7のブレーキ解除の実行を、図7のフローチャートに示す。
S51において、電動モータ52をS6の作動時とは逆方向に回転させる始動指令が出力される。S52において、回転数が検出される(回転数カウンタのカウント値が読み込まれる)。S52において検出される回転数は、電動モータ52のブレーキの作動時とは逆方向の回転数である。この検出された回転数が、ブレーキ作動時の回転数と同じになれば、シュー押付ロッド56が中立位置に戻されたことがわかる。
S53において、逆方向の回転数が、S36において記憶された回転数と等しくなったか否かが判定され、記憶された回転数より小さい場合には、S52、53が繰り返し実行され、記憶値と等しくなった場合に、S53の判定がYESとなり、S54において、電動モータ52の回転が停止させられる。それによって、シュー押付ロッド56が中立位置に戻される。リターンスプリング45により、一対のブレーキシュー40a,40bが縮径させられ、ブレーキが解除される。
【0018】
なお、車両の走行中にパーキングスイッチ214のロック指示操作が検出された場合には、ブレーキ作動時に実際に車輪14,16に加えられているトルクの向きが取得され、プライマリシューに押付力が加えられる。
【0019】
本実施例においては、運動変換機構54,シュー押付ロッド56等により押付機構が構成され、パーキングブレーキECU200の図5のフローチャートで表されるパーキングブレーキ制御プログラムのS1〜6を記憶する部分、実行する等により押付力制御部が構成され、そのうちの、S3,5を記憶する部分、実行する部分等によりトルク方向予測部が構成される。また、押付力制御部は、パーキングブレーキ制御部、モータ制御部でもある。
【0020】
なお、上記実施例においては、電動モータ52の回転数をカウントするカウンタが、シュー押付ロッド56を中立位置から前進させる場合にも、中立位置に戻す場合にも、同様にカウントするようにされていたが、中立位置から前進させる場合には、カウント数を増加させ、中立位置に戻す場合には、カウント数を減少させるようにすることもできる。その場合には、S53において、カウント値が0(中立位置に対応するカウント数)に達したか否かが判定されることになる。また、ブレーキ作動時に、電動モータ52の回転数をカウントして、記憶する必要がなく、S32,36が不要となる。
また、上記実施例において、ブレーキ作動時には、電動モータ52に流れる電流が予め定められた目標電流値に達するように、電動モータ52への供給電流が制御されるようにされていたが、押付力センサ94,96による検出値が予め定められた目標押付力に達するように、供給電流が制御されるようにすることもできる。ブレーキ解除時には、押付力センサ94,96による検出値がほぼ0(中立位置にあるとみなし得る大きさ)となるまで、電動モータ52が逆方向に回転させられる。
その場合の一例を図9,10に示す。図6,7に示す実施例における場合と同じ実行のステップについては同じステップ番号を付して説明を省略する。
ブレーキ作動時において、電動モータ52が始動させられた後、S33aにおいて、押付力センサ96(例えば、シュー押付ロッド56が図3の左方へ移動させられた場合)によって押付力が検出され、S34aにおいて、目標押付力に達したか否かが判定される。目標押付力に達する前においては、S33a,34aが繰り返し実行されるが、目標押付力に達すると、S35において、電動モータ52が停止させられる。
ブレーキ解除時において、電動モータ52が逆方向に始動させられた後、S52aにおいて、押付力センサ94,96によって押付力が検出され、S53aにおいて、両方の検出値がほぼ0であるか否かが判定される。実際の押付力が、押付力が0であるとみなし得る設定値以下であるか否かが判定されるのであり、押付力センサ94,96の両方の検出値が設定値以下であれば、中立位置に戻されたとされて、S54において、電動モータ52が停止させられる。
この場合に、押付力センサ96による検出値のみに基づいて中立位置であるか否かが判定されるようにすると、戻し過ぎること(シュー押付ロッド56が右方へ行き過ぎること)がある。それに対して、両方のセンサ94,96による検出値に基づけば(押付力センサ94による検出値が設定値以上にならないように)、シュー押付ロッド56をより確実に中立位置に戻すことができる。
【0021】
なお、シュー押付ロッド56を中立位置に戻す場合には、押付力センサ96による検出値が設定値以下になり、かつ、その設定値以下の状態が設定時間以上続いた場合に、中立位置にあるとされて、電動モータ52が停止させられるようにすることもできる。
また、シュー押付ロッド56のストロークを検出するストロークセンサを設け、ストロークが目標値に達するように、電動モータ52が作動させられるようにすることもできる。 さらに、押付機構50の構造は、上記実施例におけるそれに限らない。
例えば、電動モータ52は、設置スペースがあれば、バッキングプレート30の押付機構が設けられる側と同じ側に設けることができる。また、ねじ部70,72の形状は問わない。例えば、リード角が小さい形状としたり、台形ねじとしたりすることができる。その場合には、運動変換機構に保持機能を備えさせることができる。
【0022】
また、押付装置は、図11,12に示す構造を成したものとすることができる。押付装置300は、ラックアンドピニオン(平歯車)機構を有する運動変換機構302と、電気駆動源としての減速機付きモータ304とを含み、ハウジングがアンカ部材36と一体的に設けられる(アンカ部材36がハウジングとしての機能を果たす)。
運動変換機構302は、減速機付きモータ304の出力軸310と一体的に回転可能なピニオン312と、そのピニオン312と螺合するラック314とを含み、ラック314がアンカ部材36に軸方向に相対移動可能に保持される。ラック314とシュー押付ロッドとは一体的に形成される。
減速機付きモータ304は、電動モータ320と、減速機322とを含む。減速機322は、ハーモニックドライブ機構(登録商標)を備えたものとしたり、遊星歯車機構を備えたものとしたりすることができ、保持機構としての機能を有する。遊星歯車機構を備える場合には、サンギヤに電動モータ320の出力軸が連結され、プラネタリギヤ(遊星キャリア)に減速機付きモータ302の出力軸310が連結される状態で使用されることが多い。遊星歯車機構は複数段に設けられることもある。
減速機322を、ハーモニックドライブ機構、遊星歯車機構等を備えたものとすれば、電動モータ320に電流が供給されていない状態で、ブレーキシュー40a,b、シュー押付ロッド314を介して大きな力が加えられても、電動モータ320が回転させられないようにすることができる。
なお、本実施例においては、回り止め機構が不可欠ではないため、上記実施例において設けられていたシュー係合部74a,bも不可欠ではない。
本実施例においては、運動変換機構302、シュー押付ロッド314等により押付機構が構成される。シュー押付ロッド314は運動変換機構302の構成要素でもある。
【0023】
なお、電動モータ320を超音波モータとすることができ、その場合には、電動モータ320が保持機能を有することになる。
【0024】
また、押付装置は、図13,14に示す構造を成したものとすることができる。押付装置350は、偏心カム352を備えた運動変換機構354と、一対のシュー押付ロッド360a,360bとを含む。
アンカ部材36には、厚み方向(バッキングプレート30に対して垂直な方向、アクスルシャフトと平行な方向)の貫通穴372が形成され、その貫通穴372にベアリングを介して減速機付きモータ304の出力軸310が相対回転可能に保持される。出力軸310には、偏心カム352が一体的に回転可能に保持されるが、偏心カム352の中心Cは、出力軸310の中心軸線Mから距離d隔たった位置にある。
偏心カム356のカム面(本実施例においては外周面)に対向して一対のシュー押付ロッド360a,bが配設される。一対のシュー押付ロッド360a,bは、アンカ部材36に軸方向に相対移動可能に保持される。
【0025】
図13に示すように、パーキングブレーキ18,20の非作用状態において、偏心カム356は実線で示す中立位置にある。偏心カム352の中心C0が運動変換機構354の軸方向の中心線上に位置するのであり、中心Mと、シュー押付ロッド360a,bの後退端面380a,bとの間の距離が互いに等しくなる位置にある。
ブレーキの作動時において、予測されるトルクの向きが前進回転方向Pである場合には、減速機付きモータ304の回転により、偏心カム352が破線で示す位相まで回転させられる(中心がC1の位置にある)。シュー押付ロッド360aが左方へ移動させられ、ブレーキシュー40aに直接作用し、押付力が加えられる。この場合に、シュー押付ロッド360bの後退端面380bには偏心カム352の外周面が接することがあるが、シュー押付ロッド360bが右方へ移動させられることはなく、シュー押付ロッド360bがブレーキシュー40bに押付力を加えることはない。
予測されるトルクの向きが後退回転方向Qである場合には、減速機付きモータ304が逆方向に回転させられ、偏心カム352が一点鎖線に示す位相(中心がC2の位置)まで回転させられる。シュー押付ロッド360bが右方へ移動させられ、ブレーキシュー40bに押付力が加えられる。
ブレーキの解除時には、偏心カム352が実線に示す中立位置まで戻される。一対のブレーキシュー40a,b、シュー押付ロッド360a,bは、リターンスプリング45により非作用位置(中立位置)に戻される。
本実施例においては、減速機付きモータ304の出力軸310がアンカ部材36に形成された貫通穴372を貫通して取り付けられるため、スペースが小さくても、バッキングプレート30のブレーキシュー40a,b側に、運動変換機構354等を設置することができる。
本実施例においては、運動変換機構354,シュー押付ロッド360a,b、アンカ36等により押付機構が構成される。運動変換機構354は、偏心カム352,シュー押付ロッド360a,bを軸方向に直線移動可能に保持する構造等により構成される。
【0026】
なお、上記実施例において、一対のシュー押付ロッド360a,bは不可欠ではなく、偏心カム352の外周面が一対のブレーキシュー40a,bに直接作用し、押付力を加えるようにすることができる。
また、カム面を外周面とすることは不可欠ではない。
【0027】
また、押付装置は、図15に示す構造を成したものとすることができる。本実施例において、押付装置400は、レバー部材402を備えた運動変換機構404を含む。レバー部材402はセクタギヤ(ウォームホイール)406と一体的に形成されたものであり、先端部408に対向して2つのシュー押付ロッド360a,bが配設される。また、レバー部材402は、中間部において、バッキングプレート30,アンカ部材36に形成された長穴412,414を貫通しており、バッキングプレート30のブレーキシュー40が配設された側とは反対側において、レバー支持部材416によって回動中心点Rの回りに回動可能に保持される。長穴412,414は、レバー部材402のガイド部としての機能を有する。
レバー部材402のセクタギヤ406は、減速機付きモータ304の出力軸310と一体的に回転可能なウォーム418に螺合する。
ブレーキ作動時には、減速機付きモータ304の回転によってレバー部材402が回動させられ、それによって、シュー押付ロッド360a,bのいずれか一方が選択的に移動させられる。レバー部材402が図15の反時計回りに回転させられると、シュー押付ロッド360aが移動させられ、ブレーキシュー40aに押付力が加えられる。レバー部材402が時計回りに回転させられると、シュー押付ロッド360bが移動させられ、ブレーキシュー40bに押付力が加えられる。
ブレーキ解除時には、減速機付きモータ304の逆方向の回転によりレバー部材402が中立位置(姿勢)に戻される。リターンスプリング45により、一対のブレーキシュー40a,b、シュー押付ロッド360a,bが中立位置まで戻される。
本実施例においては、運動変換機構404,シュー押付ロッド360a,b、アンカ部材36等により押付機構が構成される。
【0028】
なお、シュー押付ロッド360a,bは、一体的に移動可能な1つのロッドとすることもできる。
また、シュー押付ロッド360a,bは不可欠ではなく、レバー部材402の先端部408によってブレーキシュー40a,bに直接押付力が加えられるようにすることもできる。
さらに、ウォーム418、セクタギヤ406が非可逆特性を有する場合には、これらウォーム418とセクタギヤ406とが保持機構として機能する。その場合には、減速機322を、非可逆特性を有する歯車装置を含むものとする必要がなくなる。また、減速機自体も不可欠ではない。
【0029】
さらに、押付装置は、図16、17に示す構造のものとすることができる。押付装置500においては、シュー押付ロッド(軸方向移動部材)502のシュー係合部504がブレーキシュー40a側の端部に設けられ、ブレーキシュー40b側の端部には設けられていないが、その他の構造については、図3、4に示す押付装置50と同じである。
本実施例においては、シュー押付ロッド502がブレーキシュー40bに直接作用して押付力を加えることがない。
パーキングスイッチ214のロック指示操作が検出されると、トルクの向きが予測されることなく、電動モータ52の作動により、シュー押付ロッド502が左方へ移動させられる。シュー押付ロッド502がブレーキシュー40aに直接作用(当接)して、押付力を加える。ブレーキシュー40aの円周方向の力はアジャスタ38を介してブレーキシュー40bに伝達され、ブレーキシュー40bがアンカ部材36に押し付けられる。
この状態で、前進回転方向Pのトルクが加えられた場合には、セカンダリシュー40bがアンカ部材36に当接しているため、一対のブレーキシュー40a,bの円周方向の移動が抑制され、ブレーキ力の低下を良好に抑制することができる。また、後退回転方向Qのトルクが加えられた場合には、セカンダリシュー40aがシュー押付ロッド502に当接しているため、それによって、ブレーキ力の低下を抑制することができる。
さらに、押付力が加えられるブレーキシュー40aは、前進回転方向Pにトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるシューである。そのため、走行中にパーキングブレーキ18,20が作動させられた場合に、大きなブレーキ力を付与することができる。
本実施例における押付装置500には、上記各実施例における押付装置を適用することができる。
【0030】
なお、上記各実施例におけるデュオサーボ型のドラムブレーキを含むブレーキシステムは、サービスブレーキに適用することができる。例えば、サービスブレーキの作動指令に応じて電動モータ等を作動させて、プライマリシューに押付力を加えることが可能である。
以上、本発明の複数の実施例について説明したが、前述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例であるパーキングブレーキシステム全体を示す概念図である。
【図2】上記パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキの平面図である。
【図3】上記ドラムブレーキの押付装置の断面図である。
【図4】図3のAA断面図である。
【図5】上記パーキングブレーキシステムの電動パーキングブレーキECUの記憶部に記憶されたパーキングブレーキ制御プログラムを表すフローチャートである。
【図6】上記プログラムの一部を表すフローチャートである(ブレーキ作動)。
【図7】上記プログラムの別の一部を表すフローチャートである(ブレーキ解除)。
【図8】車両が停止している路面の傾きと前後加速度との関係を示す図である。
【図9】上記記憶部に記憶された別のパーキングブレーキ制御プログラムの一部を表すフローチャートである(ブレーキ作動)。
【図10】上記パーキングブレーキ制御プログラムの別の一部を表すフローチャートである(ブレーキ解除)。
【図11】上記パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキの別の押付装置を概念的に示す断面図である。
【図12】図11のBB断面図である。
【図13】上記パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキのさらに別の押付装置を概念的に示す断面図である。
【図14】図13のDD断面図である。
【図15】上記パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキの別の押付装置を概念的に示す断面図である。
【図16】上記パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキのさらに別の押付装置を概念的に示す断面図である。
【図17】図16のEE断面図である。
【符号の説明】
【0032】
18,20:ドラムブレーキ(パーキングブレーキ) 30:バッキングプレート 36:アンカ部材 40a,b:ブレーキシュー 50,300,350,400,500:押付装置 52,320:電動モータ 54,302,354,402:運動変換機構 56,360a,b,502:シュー押付ロッド 58,322:保持機構 60:ハウジング 64:ねじ部材 74a,b:シュー係合部 80:ウォーム 82:ウォームホイール 94,96:押付力センサ 200:パーキングブレーキECU 210:電流計 212:回転数センサ 214:パーキングスイッチ 226:前後加速度センサ 228:シフト位置センサ 312:ピニオン 314:ラック 322:減速機 352:偏心カム 402:レバー部材 406;セクタギヤ 412,414:長穴 418:ウォーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非回転体と、
車両の車輪と共に回転し、内周面が摩擦面である回転ドラムと、
その回転ドラムの内周側に配設され、外周面に摩擦材を有する一対のブレーキシューと、
それら一対のブレーキシューの一端部の間において、前記非回転体に固定されたアンカ部材と、
前記一対のブレーキシューの前記アンカ部材が設けられた側とは反対側の端部同士を連結し、前記一対のブレーキシューの一方に加えられた円周方向の力を他方のブレーキシューの入力として伝達する伝達部材と、
前記一対のブレーキシューの前記一端部側に設けられ、前記一対のブレーキシューの摩擦材を前記ドラムの内周面に押し付ける押付装置と
を含むデュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムであって、
前記押付装置が、(a)電気駆動源と、(b)前記一対のブレーキシューの各々に、それぞれ直接作用する少なくとも1つの作用部材を有し、その少なくとも1つの作用部材のうちの1つを前記電気駆動源により作動させて、前記一対のブレーキシューのうちの、その1つの作用部材に作用するものに選択的に押付力を付与する押付機構と、(c)前記車両の停止状態において前記車輪に加えられるトルクの向きを予測し、その予測に基づいて前記電気駆動源を制御することにより、前記1つの作用部材に、前記一対のブレーキシューのうち、そのトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるものに前記押付力を付与させる押付力制御部とを含むことを特徴とするパーキングブレーキシステム。
【請求項2】
前記押付力制御部が、(a)前記車両が停止している路面の傾斜の向きを検出する傾斜検出装置と、(b)その傾斜検出装置によって検出された路面の傾斜の向きに基づいて前記車輪に加えられるトルクの向きを予測するトルク方向予測部とを含む請求項1に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項3】
前記電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(a)前記一対のブレーキシューの各々と直接作用する1つの作用部材と、(b)前記電動モータの回転を前記1つの作用部材の直線運動に変換する運動変換機構とを含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記1つの作用部材の移動方向を制御するモータ制御部を含む請求項1または2に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項4】
前記運動変換機構が、(a)ハウジングと、(b)そのハウジングに軸方向に相対移動不能かつ相対回転可能に保持されるとともに、第1ねじ部を備えた第1ねじ部材と、(c)前記ハウジングに軸方向に相対移動可能に保持されるとともに、前記第1ねじ部と螺合する第2ねじ部を備えた第2ねじ部材とを含み、前記第1ねじ部材が、前記電動モータにより回転させられ、前記第2ねじ部材が、前記1つの作用部材と一体的に移動可能な請求項3に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項5】
前記電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(a)前記一対のブレーキシューの各々に、それぞれ、直接作用する2つの作用部材と、(b)(i)前記電動モータにより回転させられ、前記2つの作用部材の各々に作用するカムと、(ii)前記電動モータの回転により回動させられ、前記2つの作用部材の各々に作用するレバーとのいずれか一方を含む運動変換機構とを含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記2つの作用部材のうちの1つを選択的に移動させるモータ制御部を含む請求項1または2に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項6】
前記電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(i)前記電動モータにより回転させられ、前記一対のブレーキシューの各々に作用するカムと、(ii)前記電動モータにより回動させられ、前記一対のブレーキシューの各々に作用するレバーとのいずれか一方を前記1つの作用部材として含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記一対のブレーキシューのうちのいずれか一方に選択的に押付力を付与するモータ制御部を含む請求項1または2に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項7】
前記押付装置が、前記電動モータに電流が供給されない状態で、前記摩擦材の前記摩擦面への押付力である摩擦材押付力を保持する保持機構を含む請求項1ないし6のいずれか1つに記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項8】
前記保持機構が、(a)前記電動モータにより回転させられるウォームと、(b)前記少なくとも1つの作用部材に前記運動変換機構を介して連結されたウォームホイールとを含む請求項7に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項9】
前記アンカ部材が、前記押付機構の本体を構成している請求項1ないし8のいずれか1つに記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項10】
前記押付力制御部が、パーキングブレーキ作動指令に応じて前記電気駆動源を作動させるパーキングブレーキ制御部を含む請求項1ないし9のいずれか1つに記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項11】
非回転体と、
車両の車輪と共に回転し、内周面が摩擦面である回転ドラムと、
その回転ドラムの内周側に配設され、外周面に摩擦材を有する一対のブレーキシューと、
それら一対のブレーキシューの一端部の間において、前記非回転体に固定されたアンカ部材と、
前記一対のブレーキシューの前記アンカ部材が設けられた側とは反対側の端部同士を連結し、前記一対のブレーキシューの一方に加えられた円周方向の力を他方のブレーキシューの入力として伝達する伝達部材と、
前記一対のブレーキシューの前記一端部側に設けられ、前記一対のブレーキシューの摩擦材を前記ドラムの内周面に押し付ける押付装置と
を含むデュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムであって、
前記押付装置が、(a)電気駆動源と、(b)前記一対のブレーキシューのうちの一方に作用する軸方向移動部材を有し、その軸方向移動部材を前記電気駆動源により前記一方のブレーキシューに作用させることにより、その一方のブレーキシューに押付力を付与する押付機構とを含むことを特徴とするパーキングブレーキシステム。
【請求項1】
非回転体と、
車両の車輪と共に回転し、内周面が摩擦面である回転ドラムと、
その回転ドラムの内周側に配設され、外周面に摩擦材を有する一対のブレーキシューと、
それら一対のブレーキシューの一端部の間において、前記非回転体に固定されたアンカ部材と、
前記一対のブレーキシューの前記アンカ部材が設けられた側とは反対側の端部同士を連結し、前記一対のブレーキシューの一方に加えられた円周方向の力を他方のブレーキシューの入力として伝達する伝達部材と、
前記一対のブレーキシューの前記一端部側に設けられ、前記一対のブレーキシューの摩擦材を前記ドラムの内周面に押し付ける押付装置と
を含むデュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムであって、
前記押付装置が、(a)電気駆動源と、(b)前記一対のブレーキシューの各々に、それぞれ直接作用する少なくとも1つの作用部材を有し、その少なくとも1つの作用部材のうちの1つを前記電気駆動源により作動させて、前記一対のブレーキシューのうちの、その1つの作用部材に作用するものに選択的に押付力を付与する押付機構と、(c)前記車両の停止状態において前記車輪に加えられるトルクの向きを予測し、その予測に基づいて前記電気駆動源を制御することにより、前記1つの作用部材に、前記一対のブレーキシューのうち、そのトルクが加えられた場合にプライマリシューとなるものに前記押付力を付与させる押付力制御部とを含むことを特徴とするパーキングブレーキシステム。
【請求項2】
前記押付力制御部が、(a)前記車両が停止している路面の傾斜の向きを検出する傾斜検出装置と、(b)その傾斜検出装置によって検出された路面の傾斜の向きに基づいて前記車輪に加えられるトルクの向きを予測するトルク方向予測部とを含む請求項1に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項3】
前記電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(a)前記一対のブレーキシューの各々と直接作用する1つの作用部材と、(b)前記電動モータの回転を前記1つの作用部材の直線運動に変換する運動変換機構とを含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記1つの作用部材の移動方向を制御するモータ制御部を含む請求項1または2に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項4】
前記運動変換機構が、(a)ハウジングと、(b)そのハウジングに軸方向に相対移動不能かつ相対回転可能に保持されるとともに、第1ねじ部を備えた第1ねじ部材と、(c)前記ハウジングに軸方向に相対移動可能に保持されるとともに、前記第1ねじ部と螺合する第2ねじ部を備えた第2ねじ部材とを含み、前記第1ねじ部材が、前記電動モータにより回転させられ、前記第2ねじ部材が、前記1つの作用部材と一体的に移動可能な請求項3に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項5】
前記電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(a)前記一対のブレーキシューの各々に、それぞれ、直接作用する2つの作用部材と、(b)(i)前記電動モータにより回転させられ、前記2つの作用部材の各々に作用するカムと、(ii)前記電動モータの回転により回動させられ、前記2つの作用部材の各々に作用するレバーとのいずれか一方を含む運動変換機構とを含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記2つの作用部材のうちの1つを選択的に移動させるモータ制御部を含む請求項1または2に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項6】
前記電気駆動源が1つの電動モータを含み、前記押付機構が、(i)前記電動モータにより回転させられ、前記一対のブレーキシューの各々に作用するカムと、(ii)前記電動モータにより回動させられ、前記一対のブレーキシューの各々に作用するレバーとのいずれか一方を前記1つの作用部材として含み、前記押付力制御部が、前記1つの電動モータの回転方向を制御することにより、前記一対のブレーキシューのうちのいずれか一方に選択的に押付力を付与するモータ制御部を含む請求項1または2に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項7】
前記押付装置が、前記電動モータに電流が供給されない状態で、前記摩擦材の前記摩擦面への押付力である摩擦材押付力を保持する保持機構を含む請求項1ないし6のいずれか1つに記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項8】
前記保持機構が、(a)前記電動モータにより回転させられるウォームと、(b)前記少なくとも1つの作用部材に前記運動変換機構を介して連結されたウォームホイールとを含む請求項7に記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項9】
前記アンカ部材が、前記押付機構の本体を構成している請求項1ないし8のいずれか1つに記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項10】
前記押付力制御部が、パーキングブレーキ作動指令に応じて前記電気駆動源を作動させるパーキングブレーキ制御部を含む請求項1ないし9のいずれか1つに記載のパーキングブレーキシステム。
【請求項11】
非回転体と、
車両の車輪と共に回転し、内周面が摩擦面である回転ドラムと、
その回転ドラムの内周側に配設され、外周面に摩擦材を有する一対のブレーキシューと、
それら一対のブレーキシューの一端部の間において、前記非回転体に固定されたアンカ部材と、
前記一対のブレーキシューの前記アンカ部材が設けられた側とは反対側の端部同士を連結し、前記一対のブレーキシューの一方に加えられた円周方向の力を他方のブレーキシューの入力として伝達する伝達部材と、
前記一対のブレーキシューの前記一端部側に設けられ、前記一対のブレーキシューの摩擦材を前記ドラムの内周面に押し付ける押付装置と
を含むデュオサーボ型のドラムブレーキを含むパーキングブレーキシステムであって、
前記押付装置が、(a)電気駆動源と、(b)前記一対のブレーキシューのうちの一方に作用する軸方向移動部材を有し、その軸方向移動部材を前記電気駆動源により前記一方のブレーキシューに作用させることにより、その一方のブレーキシューに押付力を付与する押付機構とを含むことを特徴とするパーキングブレーキシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−92092(P2009−92092A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260734(P2007−260734)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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