説明

パーキンソン病の治療方法

被験体において正常な活動パターンが実質的に回復されるように、有効な定常状態濃度のドーパミン調節化合物を長期間に渡って連続的に投与することを含む、パーキンソン病に罹っている被験体において正常な活動パターンを回復する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2009年11月2日に出願された米国仮出願第61/257,418号および2010年8月24日に出願された米国仮出願第61/376,522号に関連し、優先権を主張する。これらの出願の内容全体はこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
パーキンソン病は中枢神経系の進行性変性疾患である。パーキンソン病を発病するリスクは年齢と共に増加し、この病気に苦しむ人は通常40歳以上の成人である。パーキンソン病は世界のすべての地域で起こっており、米国だけでも100万人以上の人がこの病気に罹っている。
【0003】
パーキンソン病の主な原因は知られていないが、この病気は黒質のドーパミン作動性ニューロンの変性を特徴とする。黒質は、随意運動の制御を助ける脳底部または脳幹の一部である。これらのニューロンの損失により引き起こされる脳内のドーパミンの欠乏が、観察し得る病徴の原因であると考えられている。
【0004】
パーキンソン病の症状は患者により異なる。最も一般的な症状は運動の不足、例えば、随意骨格筋のこわばりの増大を特徴とする硬直である。さらなる症状としては、安静時振戦、動作緩慢(運動の遅さ)、バランスの悪さ、および歩行の問題が挙げられる。一般的な二次症状としては、抑うつ、睡眠障害、めまい、前かがみの姿勢、痴呆、ならびに発語、呼吸、および嚥下の問題が挙げられる。症状は進行的に悪化し、最終的には死に至る。
【0005】
パーキンソン病に有効な外科的治療としては、淡蒼球破壊術、脳組織移植、および脳深部刺激が挙げられる。このような治療は、通常の脳手術のリスク(例えば、卒中、視力の部分的喪失、発語および嚥下困難、ならびに錯乱)を伴う高度な侵襲的方法である。
【0006】
ドーパミン前駆体であるレボドパを含むパーキンソン病のためのさまざまな化学療法も利用できる。レボドパの投与は症状の劇的改善をもたらし得るが、患者が吐き気および嘔吐を含む重大な副作用を経験する可能性がある。カルビドパのレボドパとの同時投与は、カルビドパを加えることにより胃腸、肝臓および他の組織におけるレボドパ代謝が阻害されて、より多くのレボドパが脳に到達するので、著しい改善となる。さらなる治療的アプローチとしては、ロピニロール、ペルゴリドおよびアポモルフィンなどのドーパミンアゴニストの使用が挙げられる。
【0007】
すべての最近のパーキンソン病(PD)の治療は、1日1回以上の投薬を必要とする。この投与パターンは、動作緩慢およびジスキネジアの期間の間に散在する相対的な寛解の期間を有する寛解と症状の再発とのサイクルをもたらす。しかしながら、いくつかの研究により、ドーパミンアゴニストを含む抗パーキンソン薬の連続的送達がこれらのいわゆる「オン」および「オフ」の時間の間の転移を緩和する可能性があることが示唆されている。これまで、このアプローチにおいて、注入ポンプによりL-ドーパまたはアポモルフィンを送達することに努力が注がれており、動作緩慢およびジスキネジアの両方の減少を含む良好な治療効果が得られている。しかしながら、小腸内または皮下ポンプはしばしば許容が困難である。
【発明の概要】
【0008】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、パーキンソン病に罹っている被験体において正常な活動パターンを回復させる方法を提供する。該方法は、被験体において正常な活動パターンが実質的に回復されるように、有効な定常状態濃度のドーパミン調節化合物を長期間に渡って連続的に投与することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、パーキンソン病に罹っている被験体においてオンの時間を増加させる方法を提供する。該方法は、被験体においてオンの時間を増加させるように、有効な定常状態濃度のドーパミン調節化合物を、単独でまたは別の療法と組み合わせて、長期間に渡って連続的に投与することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、被験体においてオフの時間が減少する。いくつかの実施形態において、被験体においてオフの時間の症状の重症度が減少する。いくつかの実施形態において、被験体においてオフの時間の症状の頻度が減少する。いくつかの実施形態において、被験体において運動反応合併症の発生率が減少する。いくつかの実施形態において、被験体において著しいおよび/または長期間の運動亢進が存在しない。いくつかの実施形態において、被験体において運動亢進が存在しない。いくつかの実施形態において、被験体が睡眠から目覚めた直後にオンの時間の期間を経験する。いくつかに実施形態において、被験体が麻痺を経験しない。
【0011】
いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物を、ポンプ注入による投与に伴う副作用なして投与する。
【0012】
いくつかの実施形態において、被験体における持続性効果が30日を超えて達成される。
【0013】
いくつかの実施形態において、承認された経口投与量と同じ薬物動態プロファイルを達成するために必要な送達用量は、承認された経口投与量の1/9または1/18である。
【0014】
いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は植込錠により送達される。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、ドーパミン調節化合物および第1の生物分解性ポリマーを含むコア;ならびに第2の生物分解性ポリマーを含む鞘を含む植込錠により送達される。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物はデポ剤により送達される。
【0015】
いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、ドーパミン代謝阻害剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、ドーパミン作動薬、ドーパミンアゴニストまたはアデノシン受容体アンタゴニストより選択される別の治療薬と共投与される。いくつかの実施形態において、共投与される治療薬の投与量は、時間と共に著しく減少する。いくつかの実施形態において、共投与される治療薬に対応する副作用は著しく減少する。いくつかの実施形態において、共投与される治療薬はドーパミン作動薬、例えば、L-ドーパである。
【0016】
いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、4-アルキルアミノ-2(3H)-インドロン化合物である。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、ブロモクリプチン(bromocriptine)、ペルゴリド(pergolide)、プラミペキソール(pramipexole)、ロピニロール(ropinirole)、ピリベジル(piribedil)、カベルゴリン(cabergoline)、およびリスリド(lisuride)より選択される。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物はロピニロールである。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明は治療を必要とする患者におけるパーキンソン病の治療方法を提供する。該方法は、L-ドーパと組み合わせて、植込錠により連続的かつ持続的に送達されるロピニロールを投与することを含み、そこではオンの時間が増加し、オフの時間が減少する。
【0018】
いくつかの実施形態において、被験体は睡眠中に正常な活動が可能である。いくつかの実施形態において、患者は連続的に正常な運動が可能である。
【0019】
いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、被験体において睡眠から目覚めた直後に正常な活動パターンが実質的に回復されるように投与される。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、被験体において正常な活動パターンが1日18時間以上に渡って実質的に回復されるように投与される。
【0020】
いくつかの実施形態において、パーキンソン病は、軽いパーキンソン病から中程度のパーキンソン病である。
【0021】
いくつかの態様において、本発明は、ドーパミン関連状態について被験体を治療する方法であって、該被験体に先行する請求項のいずれか1項の1以上の生物分解性植込錠切断片から構成される植込錠を投与することを含み、ここで、該植込錠が、該被験体が該ドーパミン関連状態を治療されるように、治療期間に渡って有効量のドーパミン調節化合物を放出する、前記方法を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態において、ドーパミン関連状態は、パーキンソン病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症、広播性発達障害(PDD)、アスペルガー症候群(Asberger's syndrome)、毒物誘発性パーキンソン症候群、疾病誘発性パーキンソン症候群、勃起障害、むずむず脚症候群、または高プロラクチン血症である。
【0023】
いくつかの実施形態において、放出される前記ドーパミン調節化合物の量は、前記治療期間中に、約±20%未満または約±10%未満しか変動しない。
【0024】
いくつかの実施形態において、治療期間は約40日〜約80日である。
【0025】
いくつかの実施形態において、放出されるドーパミン調節化合物の量は、副作用が減少する量である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、パーキンソン病の霊長類モデルにおいて実施例の植込錠(NP201)により得られた平均薬物動態プロファイルを示すグラフである。
【図2】図2は、NP201と経口ロピニロールとを比較した平均薬物動態の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、繰り返しおこなった測定分析のベースライン標準化ランクからの臨床評価尺度(CRS)の変動を示すグラフである。
【図4】図4は、MPTP以前のベースライン活動(水〜金および土〜日)を示すグラフである。
【図5】図5は、10〜42日(水〜金)の活動データを示すグラフである。
【図6】図6は、10〜42日(水〜金)およびMPTP以前のベースライン(水〜金)の活動データを示すグラフである。
【図7】図7は、10〜42日(土〜日)の活動データを示すグラフである。
【図8】図8は、10〜42日(土〜日)およびMPTP以前のベースライン(土〜日)の活動データを示すグラフである。
【図9】図9は、10〜42日(水〜金および土〜日)のプラセボの活動データを示すグラフである。
【図10】図10は、10〜42日(水〜金および土〜日)の経口投与の活動データを示すグラフである。
【図11】図11は、10〜42日(水〜金および土〜日)のNP201の活動データを示すグラフである。
【図12】図12は、24時間の時間枠内(水、木、金)の総活動を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例の生物分解性持続放出ロピニロール植込錠(NP201)を描く図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、例えば本明細書に記載される植込錠によるドーパミン調節化合物の長期間の持続送達により被験体が正常な活動パターンを維持することが可能になるという発見に、少なくとも部分的に基づいている。パーキンソン病などのドーパミン関連状態は、動作緩慢および/またはジスキネジアを特徴とする。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、ドーパミン調節化合物の持続送達(例えば、少なくとも15、30、45、60日またはそれ以上に渡る送達)により、これらの症状を最小化する血中の化合物量が実現できると考えられる。例えば、ロピニロール(ropinerole)を用いる経口投与はしばしば朝に動作緩慢を引き起こす。これはトイレに行くことや薬を飲むことなどの簡単な作業を非常に困難にする。本明細書に記載される方法により、朝のみでなく、1日中に渡って、正常な活動パターンが可能になる。
【0028】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、ドーパミン関連状態、例えばパーキンソン病に罹っている被験体において正常な活動パターンを回復するための方法を提供する。このような方法は、被験体において正常な活動パターンが実質的に回復されるように、有効な定常状態濃度のドーパミン調節化合物を長期間に渡って連続的に投与することを含む。本明細書において使用される場合、用語「長期間」とは、約15日以上、約30日以上、約45日以上、約60日以上、約75日以上、約90日以上またはそれ以上の期間を指す。本明細書において使用される場合、「正常な活動パターン」という表現は、動作緩慢またはジスキネジアを全くまたはほとんど含まない活動パターンを指す。いくつかの実施形態において、「正常な活動パターン」は、約7未満の臨床評価尺度を有する被験体における活動パターンを含む。臨床評価尺度の議論は実施例に記載されている。
【0029】
他の実施形態において、本発明は、ドーパミン関連状態、例えばパーキンソン病に罹っている被験体において、オンの時間を増加させる方法を提供する。このような方法は、被験体においてオンの時間が増加するように、有効な定常状態濃度のドーパミン調節化合物を、単独でまたは他の療法と組み合わせて、長期間に渡って連続的に投与することを含む。本明細書において使用される場合、ドーパミン関連状態、例えばパーキンソン病に罹っている被験体において、用語「オンの時間」とは、被験体において投与されたドーパミン調節化合物が治療的に有効である時間を指す。いくつかの実施形態において、オンの時間は、被験体が動作緩慢またはジスキネジアを全くまたはほとんど有しない時間帯を含む。別の実施形態において、オンの時間は、被験体が約7未満の臨床評価尺度を有する時間帯を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、オフの時間が減少するか、オフの時間の症状の重症度が減少するか、かつ/またはオフの時間の症状の頻度が減少する。本明細書において使用される場合、ドーパミン関連状態、例えばパーキンソン病に罹っている被験体において、用語「オフの時間」とは、被験体において投与されたドーパミン調節化合物が治療的に有効でない時間を指す。いくつかの実施形態において、オフの時間は、被験体が容易に気付く動作緩慢またはジスキネジアを有する時間帯を含む。別の実施形態において、オフの時間は、被験体が約7よりも大きい臨床評価尺度を有する時間帯を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、運動反応合併症の発生率が減少する。さらに別の実施形態において、運動亢進の期間が存在しないか、または著しいおよび/または長期間の運動亢進が存在しない。いくつかの実施形態において、被験体が運動亢進症状または障害を経験しない。いくつかに実施形態において、被験体が麻痺を経験しない。
【0032】
いくつかの実施形態において、本発明は、ポンプ注入によるドーパミン調節化合物の投与に伴う副作用なしでパーキンソン病または関連疾患を治療する方法を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、被験体において正常な活動パターンが1日12時間以上に渡って実質的に回復されるように投与される。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、被験体において正常な活動パターンが1日14時間以上に渡って実質的に回復されるように投与される。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、被験体において正常な活動パターンが1日16時間以上に渡って実質的に回復されるように投与される。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、被験体において正常な活動パターンが1日18時間以上に渡って実質的に回復されるように投与される。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、被験体において正常な活動パターンが1日20時間以上に渡って実質的に回復されるように投与される。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、被験体において正常な活動パターンが1日22時間以上に渡って実質的に回復されるように投与される。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、被験体において正常な活動パターンが1日24時間に渡って実質的に回復されるように投与される。
【0034】
いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、被験体において正常な活動パターンが睡眠から目覚めた直後に実質的に回復されるように投与される。いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、被験体において正常な活動パターンが睡眠から目覚めた直後に実質的に回復され、その正常な活動パターンが約18時間以上に渡って継続するように投与される。本発明の一実施形態において、被験体は睡眠中に正常な活動が可能である。本発明のさらに別の実施形態において、患者は連続して正常な運動または活動が可能である。
【0035】
いくつかの実施形態において、被験体は睡眠から目覚めた直後にオンの時間を経験する。いくつかの実施形態において、被験体は睡眠から目覚めた直後にオンの時間を経験し、オンの時間は12時間以上、14時間以上、16時間以上、18時間以上、20時間以上、22時間以上、または24時間に渡って持続する。
【0036】
いくつかの実施形態において、持続性効果は、被験体において、15日よりも長く、30日よりも長く、45日よりも長く、60日よりも長く、75日よりも長く、90日よりも長く、またはそれ以上に渡って達成される。一実施形態において、持続性効果は、被験体において約30日よりも長く達成される。一実施形態において、持続性効果は、被験体において約60日よりも長く達成される。
【0037】
一般に、本明細書に記載される方法を実施する際に必要な投与量は、典型的な経口用量よりも少ない。いくつかの実施形態において、経口投与される用量と同じ薬物動態プロファイルを達成するために必要な送達用量は、承認された経口投与量の1/9〜1/18である。
【0038】
本発明の一実施形態において、ドーパミン調節化合物は植込錠またはデポ剤により送達される。いくつかの実施形態において、植込錠は、本明細書により詳細に記載される通りのコアおよび鞘を含む。
【0039】
さらなる実施形態において、本発明はまた、被験体のドーパミン関連状態を治療する方法を特徴とする。この方法は、本発明の生物分解性植込錠を被験体に投与することを含む。生物分解性植込錠は、1以上の生物分解性植込錠切断片から構成され、前記被験体がドーパミン関連状態を治療されるように、治療期間に渡って有効量のドーパミン調節化合物を放出する。
【0040】
用語「ドーパミン関連状態」は、ドーパミン調節化合物の投与により治療することができる状態、あるいはドーパミンの存在または不在に関連する状態を含む。ドーパミン関連状態の例としては、パーキンソン病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症、広播性発達障害(PDD)、アスペルガー症候群(Asberger's syndrome)、毒物誘発性パーキンソン症候群、疾病誘発性パーキンソン症候群、勃起障害、むずむず脚症候群、および高プロラクチン血症があげられる。用語「パーキンソン症候群」は、中枢神経系への損傷の結果として起こる状態であって、個体にパーキンソン病と類似した症状を引き起こす可能性があるものを含む。パーキンソン症候群は、例えば、毒物への曝露(例えば一酸化炭素もしくはマンガン中毒または1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(「MPTP」)投与)または脳炎などの病気により引き起こされる可能性がある。いくつかの実施形態において、ドーパミン関連状態はパーキンソン病である。いくつかの実施形態において、ドーパミン関連状態は軽度から中程度のパーキンソン病である。
【0041】
ドーパミン調節化合物の濃度は、放出期間に依存して、植込錠中に、約5%〜約95%、約10%〜約80%、約20%〜約60%、約40%〜約60%、約45%〜約55%の範囲、または約50%である。
【0042】
用語「被験体」は、ドーパミン関連状態に罹ることができる(または現在罹っている)動物(例えば、哺乳動物、例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、齧歯類、ウサギ、リス、クマ、霊長類(例えば、チンパンジー、ゴリラ、およびヒト))を含む。この用語は、トランスジェニック動物モデルも含む。さらなる実施形態において、被験体は、パーキンソン病または疾病誘発性もしくは毒物誘発性パーキンソン症候群に罹っているヒトである。
【0043】
用語「治療」(「treated」「treating」または「treatment」)は、ドーパミン関連状態の治療的および/または予防的処置を含む。治療は、ドーパミン関連状態に関連するまたは起因する少なくとも1つの症状の減弱または緩和を含む。例えば、治療は、ドーパミン関連状態の1つまたはいくつかの症状の減弱または完全な根絶であり得る。
【0044】
ドーパミン調節化合物の「有効量」という用語は、被験体におけるドーパミン関連状態を治療または予防する(例えば、被験体におけるドーパミン関連状態のさまざまな形態学的および身体的症状を予防する)のに必要または十分な量である。有効量は、被験体の大きさおよび体重、病気のタイプ、または特定のドーパミン調節化合物などの要因に依存して変化し得る。例えば、ドーパミン調節化合物の選択が、「有効量」を構成するものに影響を与え得る。
【0045】
用語「有効量」はまた、所望の治療結果を与えるドーパミン調節化合物の量、例えばパーキンソン病などのドーパミン関連状態の症状を減少させるのに有効なレベルまたは量、および/または特発性パーキンソン病または毒素もしくは疾病誘発性パーキンソン症候群に対する慢性ドーパミン治療をおこなっている患者において治療上有効な期間(「オン」の期間)を増大させるのに有効なレベルまたは量、あるいは有益な治療、すなわち、ドーパミンアゴニストにより治療可能な状態(例えば、勃起障害、むずむず脚症候群、または高プロラクチン血症)の有害なもしくは望まれない症状の軽減または緩和を与えるドーパミン調節化合物の量を含む。パーキンソン病またはパーキンソン症候群の治療に関して、有効性は、しばしば、例えば慢性レボドパ投与などの特定のパーキンソン病治療レジメンに伴う「オン」/「オフ」変動の減少を伴う。特定の被験体に対して「治療上有効」である量は、被験体の年齢、体重、生理学、および/または治療すべき特定の症状もしくは状態などの要因に依存する可能性があり、医療専門家により確定され得る。
【0046】
さらなる実施形態において、ドーパミン調節化合物の有効量は、約0.5 ng/mL〜約100 ng/mL、約0.5 ng/mL〜約90 ng/mL、約0.5 ng/mL〜約80 ng/mL、約0.5 ng/mL〜約70 ng/mL、約0.5 ng/mL〜約60 ng/mL、約0.5 ng/mL〜約50 ng/mL、約1 ng/mL〜約40 ng/mL、約1 ng/mL〜約30 ng/mL、約1 ng/mL〜約20 ng/mL、約1 ng/mL〜約15 ng/mL、または約2.5 ng/mL〜約10 ng/mLのドーパミン調節化合物の血漿中濃度を達成するのに必要な量である。さらなる実施形態において、有効量は、前記の血漿中濃度を、少なくとも1日以上、1週間以上、2間以上、3週間以上、4週間以上、6週間以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、7か月以上、8か月以上、9か月以上、10か月以上、11か月以上、12か月以上、または1年以上に渡って維持するのに有効である。いくつかの実施形態において、放出期間は、約40〜約80日間、約50〜約70日間、または約60日間である。
【0047】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の植込錠切断片は、約5 ng/mL以上の血漿中濃度を約30日以上に渡って維持することができる。いくつかの実施形態において、本発明の植込錠切断片は、約5 ng/mL以上の血漿中濃度を、約35日以上に渡って、例えば、約35日以上、約40日以上、約45日以上、約50日以上、約55日以上、約60日以上、約65日以上、約70日以上、約75日以上、または約80日以上に渡って維持することができる。いくつかの実施形態において、本発明の植込錠切断片は、約10 ng/mL以上の血漿中濃度を、約25日以上に渡って、例えば、約30日以上、約35日以上、約40日以上、約45日以上に渡って維持することができる。
【0048】
用語「投与する」は、被験体中への植込錠(またはその切断片)の外科的投与、植込み、挿入、または注入を含む。植込錠(または切断片)は、皮下、筋肉内に位置することができ、または植込錠が意図される機能を果たすことができる別の体の位置に位置することができる。一般に、植込錠(または切断片)は、被験体の上腕、背中、または腹部を含むがこれらに限定されない部位への皮下植込みにより投与される。他の投与に好適な部位は、医療の専門家により容易に決定され得る。治療のために望まれる投与量を達成するために複数の植込錠または切断片を投与してもよい。
【0049】
本発明はまた、本発明の生物分解性植込錠と組み合わせて第2の薬剤を投与することを含む方法に関する。第2の薬剤は、例えば、ドーパミン関連状態の治療の有効性を強化または増大する薬剤および/または生物分解性植込錠の投与の部位の炎症を減少させる薬剤、またはドーパミン調節化合物の酸化を防止するまたは遅らせる薬剤であってよい。例えば、ステロイド(例えば、デキサメタゾン(dexamethasone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、ベタメタゾン(betamethasone)、クロベタゾール(clobetasol)、コルチゾン(cortisone)、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、またはそれらの製薬上許容される塩)、または非ステロイド抗炎症薬(「NSAID」、例えば、ジクロフェナクカリウム(diclofenac potassium)、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクナトリウムとミソプロストール(misoprostol)、ジフルニサル(diflunisal)、エトドラック(etodolac)、フェノプロフェンカルシウム(fenoprofen calcium)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、イブプロフェン(ibuprofen)、インドメタシン(indomethacin)、ケトプロフェン(ketoprofen)、メクロフェナメートナトリウム(meclofenamate sodium)、メフェナム酸(mefenamic acid)、メロキシカム(meloxicam)、ナブメトン(nabumetone)、ナプロキセン(naproxen)、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン(oxaprozin)、ピロキシカム(piroxicam)、スリンダク(sulindac)、トルメチン(tolmetin)、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ(celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、バルデコキシブ(valdecoxib))、アセチル化されたサリチル酸(例えば、アスピリン(aspirin))、アセチル化されていないサリチル酸(例えば、コリン(choline)、サリチル酸マグネシウムおよびナトリウム、サリチル酸塩))、および/または抗ヒスタミン剤(例えば、ロラタジン(loratadine)(「LT」)、アステミゾール(astemizole)、二塩酸セトリジン(cetrizine dihydrochloride)、クロルフェニラミン(chlorpheniramine)、デオキソクロルフェニラミン(dexochlorpheniramine)、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、ナパジシル酸メブヒドロリン(mebhydrolin napadisylate)、マレイン酸フェニラミン(pheniramine maleate)、プロメタジン(promethazine)、またはテルフェナジン(terfenadine))などの抗炎症薬である。第2の薬剤は、投与の部位における局所的炎症を予防または軽減するために生物分解性植込錠の中にカプセル化されてもよい。第2の薬剤は、第2の薬剤がそれらの意図される機能を果たすことができる任意の経路により、別々に被験体に投与されてもよい。第2の薬剤は、経口、非経口(parentally)、局所、皮下、舌下等で投与されてよい。第2の薬剤またはそれらの組合せはいずれも、ドーパミン調節化合物と同じ植込錠(例えば、コア中および/または1以上の鞘層中)に含まれてもよいし、あるいは、ドーパミン調節化合物を含まない1以上の別の植込錠またはその切断片に組み入れられてもよい。植込錠またはその切断片の調製、貯蔵、および/または投与中のドーパミン調節化合物の酸化を防止または低減するために、ドーパミン調節化合物と同じ植込錠またはその切断片に、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、グルタチオンを加えてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、ドーパミン調節化合物は、ドーパミン代謝阻害剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、ドーパミン作動薬、ドーパミンアゴニストまたはアデノシン受容体アンタゴニストより選択される別の治療薬と共投与される。いくつかの実施形態において、共投与される治療薬は、ドーパミン作動薬、すなわちL-ドーパである。
【0051】
本発明のさらに別の実施形態において、効果を得るために必要な共投与される治療薬の量は著しく少なく、および/または、共投与される治療薬に対応する副作用は著しく減少する。
【0052】
さらに別の実施形態において、本発明は治療を必要とする患者におけるパーキンソン病の治療方法を提供する。このような方法は、L-ドーパと組み合わせて植込錠により連続的かつ持続的に送達されるロピニロールを投与することを含み、そこでは、オンの時間が増加し、オフの時間が減少する。
【0053】
用語「植込錠」は、1以上の切断片を含む外科的に植込み可能な装置を含む。切断片は、植込錠がその意図される機能を果たすことができるいかなる大きさであってもよい。一実施形態において、切断片および/または植込錠は被験体から取り外し可能である。別の実施形態において、植込錠は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の分離した切断片を含む。
【0054】
別の実施形態において、切断片は、棒状または植込錠がその意図される機能を果たすことができる他の形状であってよい。用語「棒状」は、おおよそ円柱状である形状を含む。本発明の切断片は、任意の断面形状、例えば円形、楕円形、葉形、正方形、または三角形に形作ることができる。一実施形態において、切断片は肉眼で見える大きさ(例えば、直径1 mm以上)である。さらなる実施形態において、切断片は棒状である。
【0055】
一実施形態において、本発明は円柱状の棒状生物分解性植込錠切断片に関する。該植込錠切断片はコアおよび少なくとも1つの鞘を含む。いくつかの実施形態において、コアはドーパミン調節化合物および生物分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、鞘は生物分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、鞘は本質的に生物分解性ポリマーからなる。場合により、棒状植込錠切断片のそれぞれの末端も生物分解性ポリマーによりコーティングされる。
【0056】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、ドーパミン調節化合物および第1の生物分解性ポリマーを含むコア、ならびに第2の生物分解性ポリマーを含む鞘を含む棒状生物分解性植込錠切断片に関する。いくつかの実施形態において、本発明の切断片は、さらに、切断片の一方または両方の末端に第3の生物分解性ポリマーを含む。このような第3の生物分解性ポリマーは、例えば浸漬コーティングにより、切断片の一方または両方の末端にコーティングすることができる。
【0057】
本明細書において使用される場合、用語「コア」は、断面を調べた時の植込錠の中心部を指す。本明細書において使用される場合、用語「鞘」は、コア材料の周りに位置する外側コーティング材料を指す。鞘は、植込錠の外側周囲から、植込錠切断片の断面積全体の一部分の中に内側に拡がっている。いくつかの実施形態において、鞘は連続的なコーティング、例えば、1つまたは複数の層である。いくつかの実施形態において、鞘はコアの周囲全体を取り囲む均一で連続的なコーティングを提供する。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明の植込錠切断片はまた、優れたin vivoおよびin vitro放出特性を示す。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の切断片は生物媒体または水性媒体と接触した際に初期バーストをほとんどまたは全く示さない。本明細書において使用される場合、「初期バーストをほとんどまたは全く示さない」という表現は、最初の定量化できる放出の後24時間に放出される化合物の量が、植込錠の有効使用期間に渡って放出される化合物の定常状態の量よりも多くないことを指す。他の実施形態において、本発明の切断片は、生物媒体または水性媒体と接触した際にほとんどまたは全く遅延を示さない。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の植込錠切断片は、植込錠の有効使用期間の間に実質的にすべてのドーパミン調節化合物を放出する。いくつかの実施形態において、切断片は生物媒体または水性媒体と接触した際に、約60%以上のドーパミン調節化合物を放出する。いくつかの実施形態において、切断片は生物媒体または水性媒体と接触した際に、約70%以上、例えば、約80%以上、約85%以上、約90%以上または約95%以上のドーパミン調節化合物を放出する。いくつかの実施形態において、切断片は生物媒体または水性媒体と接触した際に、約100%のドーパミン調節化合物を放出する。さらに別の実施形態において、本発明の植込錠切断片は、生物媒体または水性媒体と接触した際に、実質的に直線的なドーパミン調節化合物の放出を示す。
【0060】
本発明の製剤を使用して、被験体中に放出されるドーパミン調節化合物の最初の量は低く(例えば、有効量よりも低く)、定常状態の間に達成される目的とする量よりも低いことが見いだされた。本出願において記載される植込錠切断片は、被験体にドーパミン調節化合物を確実に放出する。投与量の変動は非常に低い(例えば、約±20%未満、約±10%未満、または約±5%未満)。変動量が少ないこと(および初期バーストが実質的にないこと)により、本発明の植込錠は、著しい望まれない副作用(例えば、精神運動性激越または精神病)を起こすことなく、治療効果(例えば、動作緩慢の減少またはドーパミン関連状態の治療)を達成するのに十分な量のドーパミン調節化合物を投与することが可能である。
【0061】
本発明の切断片、例えば連続押出加工により調製されたものは、例えば投薬および/または取り扱いの容易さのために望まれる長さに切断するか、または他の方法により望まれる長さに加工することができる。さらに、押し出された材料の長い片を、例えば、巻き枠に巻き付けるか、コイル状に巻くかの形で保持し、または、より長いあらかじめ決められた長さで保持し、その後、材料を植込みに適した大きさに切断してもよい。また、切断片は、例えば薬物の総容量に依存して、さまざまな直径で調製することができる。別の実施形態において、切断片は約0.5 mm〜約5 mmの直径および約0.5 cm〜約10 cmの長さを有する。さらなる実施形態において、切断片は約0.5 mm〜約5 mmの直径および約0.5 cm〜約5 cmの長さを有する。別のさらなる実施形態において、切断片は約1 mm〜約3 mmの直径および約1 cm〜約3 cmの長さを有する。
【0062】
さらなる実施形態において、植込錠切断片は生物適合性および/または生物分解性ポリマーから構成される。好ましくは、植込錠切断片はドーパミン調節化合物が治療レベルで被験体に放出されている期間中ずっと除去可能である。
【0063】
用語「生物分解性」は、身体的過程により分解して(例えば、化学的、物理的、酵素的等)、身体により容易に排泄される生成物を与え、有利には、身体に蓄積されないポリマーを含む。生物分解の生成物は、ポリマーマトリックスが身体に生物適合性であるのと同じ意味で、身体に生物適合性でなければならない。好適な生物分解性ポリマーの例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸(PLA)、前記ポリマーのコポリマー(例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、例えば、85:15 PLGA、75:25 PLGA、50:50 PLGA等)、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキソノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリエーテルエステル、ポリエチレングリコール、ポリエステルアミド、ポリホスファジン、ポリカーボネート、ポリアミドならびにそれらのコポリマーおよび混合物、ならびに多糖、タンパク質、アルブミン、カゼインならびにグリセロールモノステアレートおよびグリセロールジステアレートなどの蝋を含む天然ポリマー等が挙げられる。さらに、いくつかのポリマーはアルキルキャップなどの末端キャップ修飾により修飾されてもよい。このような末端キャップは、Journal of Controlled Release 52 (1998) 53-62およびJournal of Controlled Release 67 (2000) 281-292に記載されており、これらそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、生物分解性ポリマーは生物分解性脂肪族ポリエステルである。いくつかの実施形態において、生物分解性ポリマーは非糖ポリマーである。
【0064】
一実施形態において、植込錠は生物適合性であるポリマーから構成される。用語「生物適合性」は、人の身体に有毒でなく、発癌性でなく、身体組織に著しく炎症を引き起こすことのないポリマーを含む。
【0065】
一実施形態において、ポリマーは、ポリラクチドまたはポリラクチドを含むコポリマー、例えば、dl(ポリラクチド-co-グリコリド)を含む。このような生物分解性ポリマーの例としては、約30モル%〜約100モル%のポリラクチドおよび約0モル%〜約70モル%のポリグリコリドを含むものが挙げられる。記載された範囲の間にあるすべての値および範囲が本発明に包含されることが意図されている。例えば、いくつかの実施形態において、生物分解性ポリマーは約30%のポリラクチドおよび約70%のポリグリコリドを含む。さらなる実施形態において、生物分解性ポリマーは、約40%、例えば、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約95%のポリラクチドを含む。さらに別の実施形態において、生物分解性ポリマーは、約60%、例えば、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%または約5%のポリグリコリドを含む。さらなる実施形態において、生物分解性ポリマーは100% PLAである。
【0066】
本発明の植込錠切断片は、棒状の植込錠切断片のそれぞれの末端に生物分解性コーティング(場合により疎水性)を含んでもよい。生物分解性末端コーティングは第3の生物分解性ポリマーを含み、これは本明細書に記載される任意の生物分解性ポリマーであってよい。このような生物分解性ポリマーの非限定的な例としては、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)(85:15 PLGA、75:25 PLGA、50:50 PLGA等を含むが、これらに限定されない)、ポリカプロラクトン(PCL)、PLA、ならびにそれらの組合せおよびコポリマー(PLGA-co-PCLおよびPLA-co-PCLを含むが、これらに限定されない)が挙げられる。生物分解性コーティングは、植込錠切断片のそれぞれの末端をポリマーの溶液(例えば、10% PLA溶液)中で浸漬コーティングすることにより植込錠切断片のそれぞれの末端に適用することができる。生物分解性コーティングは、場合により、下により詳細に説明する方法を含む当業者に公知の任意の方法により一方または両方の末端に形成することができる。さらなる実施形態において、生物分解性コーティングはPLAである。
【0067】
したがって、いくつかの実施形態において、第1の生物分解性ポリマー(例えば「コア」ポリマー)は、PLA、例えば0.55〜0.85 dL/gの目標固有粘度(IV)範囲を有する100モル%ポリ-DL-ラクチドを含む。いくつかの実施形態において、第2の生物分解性ポリマー(例えば、「鞘」ポリマー)は、PLA、例えば、0.35〜0.65 dL/gの目標IV範囲を有する100モル%ポリ-DL-ラクチドを含む。いくつかの実施形態において、第3の生物分解性ポリマー(例えば、「末端」ポリマー)は、PLAおよび場合によりPLGA、例えば、約50〜100重量%の0.35〜0.65 dL/gの目標IV範囲を有する100モル%ポリ-DL-ラクチドおよび約0〜50重量%の約0.50〜約0.76 dL/gの目標IV範囲を有するポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)を含む。いくつかの実施形態において、目標IVは約0.50 dL/gである。いくつかの他の実施形態において、目標IVは約0.76 dL/gである。
【0068】
当業者は、通常の実験により、例えばガラスキャピラリー粘度計により、生物分解性ポリマーの目標固有粘度を測定することができるであろう。いくつかの実施形態において、目標固有粘度の測定は、30℃で、クロロホルム中、500 mgのポリマーを100 mLの溶媒中に溶解した濃度で実施する。
【0069】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に、コアおよび2以上のコーティング層を含む生物分解性植込錠切断片に関する。いくつかの実施形態において、コアはドーパミン調節化合物および生物分解性ポリマーを含み、鞘は、独立して選択される量のドーパミン調節化合物および生物分解性ポリマーを含む。
【0070】
これらの鞘のそれぞれにおいて使用されるポリマーは異なっていてよく、同時に、それぞれの層におけるドーパミン調節化合物の量も異なっている。植込錠切断片に入っているドーパミン調節化合物は、約0.1重量%〜約80重量%の間、例えば約1重量%〜約70重量%の間、例えば約10重量%〜約60重量%の間、例えば約20重量%〜約50重量%の間であってよい。いくつかの実施形態において、それぞれの個別の鞘におけるドーパミン調節化合物の量は、約0重量%〜約50重量%の範囲で変えることができる。いくつかの実施形態において、1以上の鞘がドーパミン調節化合物を含まない。それぞれの層におけるポリマーの種類および薬物の量は、特定の送達プロファイルが達成されるように独立して選択され得る。好ましくは、本発明の植込錠切断片は、被験体に投与した時にドーパミン調節化合物の著しい「初期バースト」が存在しないように製剤される。
【0071】
用語「ドーパミン調節化合物」は、ドーパミンアゴニストおよびアンタゴニストの両方を含む。さらなる実施形態において、ドーパミン調節化合物はドーパミンアゴニストである。ドーパミンアゴニストの例には、1以上のドーパミン受容体サブグループに結合して、該アゴニストにより治療される個体に有益な治療効果をもたらすことが可能な化合物が含まれる。ドーパミンアゴニストは、少なくともドーパミン受容体のD2サブグループのアゴニストであってよく、ならびにD1および/またはD3受容体のアゴニストであってもよい。本発明のドーパミン調節化合物の例としては、アポモルフィン(apomorphine)、リスリド、ペルゴリド、ブロモクリプチン、プラミペキソール、4-アルキルアミノ-2(3H)-インドロン化合物(例えば、ロピニロール)、ロチゴチン(rotigotine)、ドカルパミン(docarpamine)、テルグリド(terguride)、カベルゴリン、レボドパ(levodopa)、スフェラミン(spheramine)、ロメルゴリン(romergoline)、カルモキシロール(carmoxirole)、ゼランドパム(zelandopam)、スマニロール(sumanirole)、シベナデット(sibenadet)、およびこれらのドーパミンアゴニストの2種以上の組合せが挙げられる。これらの化合物の製薬上許容される塩、エステル、プロドラッグ、および代謝物も含まれる。1つのさらなる実施形態において、ドーパミンアゴニストはロピニロールである。いくつかの実施形態において、ドーパミンアゴニストはアポモルフィンではない。
【0072】
用語「4-アルキルアミノ-2(3H)-インドロン化合物」は、式(I):
【化1】

【0073】
[式中、
Rは、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミノ、ジアルケニルアミノ、N-アルキル-N-アルケニルアミノ、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノ、アリールアルキルアミノ、またはジアリールアルキルアミノであり;
R1、R2およびR3はそれぞれ独立して、水素またはアルキルであり;かつ
nは、1、2、または3である]
の化合物およびそれらの製薬上許容される塩を含む。
【0074】
さらなる実施形態において、Rは、4-ヒドロキシフェネチルアミノまたはジ-(4-ヒドロキシフェネチルアミノ)である。別のさらなる実施形態において、Rは、アミノ、ジ-n-プロピルアミノ、n-プロピル-n-ブチルアミノまたは4-ヒドロキシフェネチルアミノである。一実施形態において、R1、R2、およびR3はそれぞれ低級アルキル(例えば、1〜6炭素)である。別のさらなる実施形態において、R1、R2、およびR3はそれぞれ水素である。さらに別のさらなる実施形態において、nは2である。一実施形態において、式(I)の化合物は、4-(2-ジ-n-プロピルアミノエチル)-2(3H)-インドロン(「ロピニロール」)またはその製薬上許容される塩である。
【0075】
用語「低級アルキル」は分枝鎖基および直鎖基を含み、Rにおけるそれぞれのアルキルについては1〜6個の炭素を有し、好ましくはメチル、エチル、プロピル、またはブチルであり、R1、R2およびR3のそれぞれについては1〜4個の炭素を有し、好ましくはメチルである。
【0076】
ドーパミン調節化合物の製薬上許容される酸付加塩も本発明の一部である。該塩は当業者に公知の方法により調製され、無機酸または有機酸の両方、例えば、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、シクロヘキシルスルファミン酸、リン酸および硝酸により形成される。ハロゲン化水素酸も使用し得る。
【0077】
用語「アルキル」は、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、分枝鎖アルキル基(イソプロピル、tert-ブチル、イソブチル等)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換されたシクロアルキル基、およびシクロアルキル置換されたアルキル基を含む飽和脂肪族基を含む。用語アルキルは、さらに、炭化水素骨格の1個以上の炭素に換えてさらに酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含み得るアルキル基を含む。ある実施形態において、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格中に6個以下(例えば、直鎖に関してはC1〜C6、分枝鎖に関してはC3〜C6)、より好ましくは4個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルはその環構造中に3〜8個の炭素原子を有し、より好ましくは環構造中に5または6個の炭素原子を有する。用語C1〜C6は、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を含む。
【0078】
さらに、用語アルキルは、「無置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含み、後者は、炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素原子を置換する置換基を有するアルキル部分を指す。このような置換基としては、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシ、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。シクロアルキルは、さらに、例えば上記の置換基により置換されていてもよい。「アルキルアリール」または「アリールアルキル」部分は、アリールにより置換されたアルキル(例えば、フェニルメチル(ベンジル))である。用語「アルキル」は天然および非天然アミノ酸の側鎖も含む。
【0079】
用語「アリール」は、0〜4個のヘテロ原子を含んでもよい5または6員単環芳香族基、例えば、ベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン等を含む基を含む。さらに、用語「アリール」は、多環アリール基、例えば三環アリール基、二環アリール基、例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキソフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンを含む。また、環構造中にヘテロ原子を有するアリール基は、「アリール複素環」、「複素環」、「ヘテロアリール」、または「ヘテロ芳香族」と呼ばれる。芳香環は、1以上の環の位置において上記の置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族複素環部分により置換されていてもよい。アリール基は芳香族でない脂環または複素環により縮合または架橋されて多環(例えば、テトラリン)を形成してもよい。
【0080】
用語「アルケニル」は、上記のアルキルと長さおよびあり得る置換に関して類似であるが、少なくとも1個の二重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。
【0081】
例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル基(例えば、エチレニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等)、分枝鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニル置換されたシクロアルケニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換されたアルケニル基を含む。用語アルケニルはさらに、炭化水素骨格の1個以上の炭素原子に換えて酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含むアルケニル基を含む。ある実施形態において、直鎖または分枝鎖アルケニル基はその骨格中に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてはC2〜C6、分枝鎖についてはC3〜C6)。同様に、シクロアルケニル基は、それらの環構造中に3〜8個の炭素原子を有し、より好ましくは環構造中に5または6個の炭素を有する。用語C2〜C6は、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
【0082】
さらに、用語アルケニルは、「無置換アルケニル」および「置換アルケニル」の両方を含み、後者は、炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルケニル部分を指す。このような置換基としては、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシ、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。
【0083】
用語「アルキニル」は、上記のアルキルと長さおよびあり得る置換に関して類似であるが、少なくとも1個の三重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。
【0084】
例えば、用語「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、へプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等)、分枝鎖アルキニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換されたアルキニル基を含む。用語アルキニルはさらに、炭化水素骨格の1個以上の炭素に換えて酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含むアルキニル基を含む。ある実施形態において、直鎖または分枝鎖アルキニル基はその骨格中に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてはC2〜C6、分枝鎖についてはC3〜C6)。用語C2〜C6は、2〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。
【0085】
さらに、用語アルキニルは、「無置換アルキニル」および「置換アルキニル」の両方を含み、後者は、炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキニル部分を指す。このような置換基としては、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシ、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。
【0086】
炭素の数を他に特定しない限り、本明細書において使用される「低級アルキル」は、上に定義した通りであるが、その骨格構造中に1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、例えば、2〜5個の炭素原子からなる鎖長を有する。
【0087】
用語「アルコキシ」は、共有結合により酸素原子に結合する置換および無置換アルキル、アルケニル、およびアルキニルを含む。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびペントキシ基が挙げられる。置換アルコキシ基の例としては、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシ、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分などの基により置換されていてもよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
用語「アミン」または「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1個の炭素またはヘテロ原子と共有結合している化合物を含む。用語「アルキルアミノ」は、窒素が少なくとも1個のさらなるアルキル基と結合している基および化合物を含む。用語「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が少なくとも2個のさらなるアルキル基と結合している基を含む。用語「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」は、窒素がそれぞれ少なくとも1個または2個のアリール基と結合している基を含む。
【0089】
用語「アミド」または「アミノカルボニル」は、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素に結合している窒素原子を含む化合物または部分を含む。この用語には、カルボニル基に結合するアミノ基に結合するアルキル、アルケニル、アリールまたはアルキニル基を含む「アルカミノカルボニル」または「アルキルアミノカルボニル」基が含まれる。これには、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素に結合するアミノ基に結合するアリールまたはヘテロアリール部分を含むアリールアミノカルボニル基が含まれる。用語「アルキルアミノカルボニル」、「アルケニルアミノカルボニル」、「アルキニルアミノカルボニル」、「アリールアミノカルボニル」、「アルキルカルボニルアミノ」、「アルケニルカルボニルアミノ」、「アルキニルカルボニルアミノ」、および「アリールカルボニルアミノ」は、用語「アミド」に含まれる。アミドには尿素基(アミノカルボニルアミノ)およびカルバメート(オキシカルボニルアミノ)も含まれる。
【0090】
用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、-OHまたは-O-を有する基を含む。
【0091】
用語「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素等を含む。用語「過ハロゲン化」は、一般にすべての水素がハロゲン原子により置換されている部分を指す。
【0092】
用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を含む。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄およびリンである。
【0093】
用語「環状」は、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族の環部分を含む。飽和環状部分の例としては、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、シクロヘキシル、シクロブチル、シクロペンチル等が挙げられる。
【0094】
アルキル化生成物は、Rがアミノまたは第2級アミノである式Iの親アミノ化合物のアルキル化により調製し得る。例えば、Rが第2級または第3級アミノである式Iの N-アルキル化生成物は、例えば、還元条件下で(例えば、パラジウムもしくは白金触媒による触媒水素化条件下で、または例えばRがジメチルアミノである場合にはホルムアルデヒド-ギ酸を使用して)、1または2モル等量のアルデヒドを用いる還元的アルキル化により便利に調製される。
【0095】
N-アルキル化、例えば、酸結合剤の存在下でのハロゲン化アリルまたはハロゲン化ベンジルを用いるN-アルキル化は、標準的な穏やかな条件下でおこなうことができる。アルキル化の間の環のアミド水素の保護も、必要に応じて当業者に公知の方法で使用される。インドロン環の1または3位のアルキル置換基は、例えばブチルリチウムを用いて環の該位置にリチオ誘導体を形成した後、ハロゲン化低級アルキル、特にヨウ化アルキルと反応させることにより、導入される。
【0096】
別の実施形態において、本発明はまた、約45重量%〜55重量%のロピニロールおよび約45重量%〜55重量%のPLAを含む棒状生物分解性植込錠切断片を特徴とする。いくつかの実施形態において、前記棒状生物分解性植込錠切断片のそれぞれの末端はPLAによりコーティングされている。
【0097】
さらに別の実施形態において、本発明はまた、本質的に約45重量%〜55重量%のロピニロールおよび約45重量%〜55重量%のPLAからなる棒状生物分解性植込錠切断片を含み、前記棒状生物分解性植込錠切断片のそれぞれの末端はPLAによりコーティングされている。
【0098】
植込錠(およびその切断片)は当業者に公知の方法を用いて製造することができる。例えば、米国特許出願第20030007992号;米国特許出願第20060159721号;Cowsar and Dunn, Chapter 12 “Biodegradable and Nonbiodegradable Delivery Systems” pp. 145-162; Gibson, et al., Chapter 31 “Development of a Fibrous IUD Delivery System for Estradiol/Progesterone” pp. 215-226; Dunn, et al., “Fibrous Polymers for the Delivery of Contraceptive Steroids to the Female Reproductive Tract” pp. 125-146; およびDunn, et al., “Fibrous Delivery Systems for Antimicrobial Agents” from Polymeric Materials in Medication ed. C. G. Gebelein and Carraher (Plenum Publishing Corporation, 1985) pp 47-59を参照されたい。
【0099】
例えば、いくつかの実施形態において、本発明の植込錠は押出成形により製造される。一実施形態において、押出成形は高圧押出成形である。それぞれの製造方法は1つ以上の有益な特性、例えば、密度の増大、均一性、形状の多様性、材料の損失の低さ等を提供し得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明の植込錠および/または切断片は同軸押出により形成される。同軸押出により、第1のポリマーマトリックス(例えば、1種以上のドーパミン調節化合物を含む)がコアとして押し出され、実質的に同時に、第2のポリマーマトリックスが膜/鞘として押し出される。典型的な同軸装置は2以上の同心円状のリングからなる。第1のポリマーマトリックスを内側のリングを通してポンプで押し出し、これがコアを形成する。第2のポリマーマトリックス(および他の付加的なポリマーマトリックス)を外側のリング(場合により複数)を通してポンプで押し出し、鞘(場合により複数)を形成する。コアおよび鞘の相対的な直径は、例えば、鋳型の直径、押出条件、二つの押出機の相対的押出速度、および相対的取り出し速度により制御することができる。したがって、いくつかの実施形態において、コアの直径および膜の厚さは独立して制御される。同軸植込錠のさらなる調製方法は当業者に公知である。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明の切断片は同軸棒状生物分解性植込錠切断片である。すなわち、いくつかの実施形態において、本発明の切断片は同軸押出技術を用いて製造される。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、同軸植込錠切断片は、本明細書に記載されるものなどの特定の表面特性を示すと考えられている。このような特性が、望ましい放出特性につながると考えられる。
【0102】
いくつかの実施形態において、本発明の植込錠は、例えばコーティングされていない植込錠または浸漬コーティングされた植込錠と比較して、増大した表面荒さ特性を示す。本明細書において使用される場合、「表面粗さ」という表現は、本発明の植込錠の表面の微細な不規則さの尺度を指す。表面粗さは、例えば、平均平面からの表面のずれの絶対値の平均として計算することができる。いくつかの実施形態において、本発明の植込錠切断片は約1.5μmよりも大きい表面荒さを示す。例えば、いくつかの実施形態において、切断片の表面粗さは、約2.0μmよりも大きく、約2.5μmよりも大きく、約3.0μmよりも大きく、約3.5μmよりも大きく、約4.0μmよりも大きく、または約4.5μmよりも大きい。いくつかの実施形態において、切断片の表面粗さは、約1.5μm〜約4.5μmの間、例えば約2.0μm〜約3.5μmの間である。
【0103】
いくつかの実施形態において、本発明の植込錠は、例えばコーティングされていない植込錠または浸漬コーティングされた植込錠と比較して、増大したパーセント多孔性を示す。本明細書において使用される場合、「パーセント多孔性」という表現は、空隙または細孔により占められる本発明の植込錠の内部空間の平均パーセントを指す。それによれば、いくつかの実施形態において、本発明の植込錠切断片は、約1.5%〜約3.5%のパーセント多孔性を示す。いくつかの実施形態において、本発明の植込錠切断片は、約1.75%〜約3.25%、例えば、約2.0%〜約3.0%のパーセント多孔性を有する。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明の植込錠は、例えばコーティングされていない植込錠または浸漬コーティングされた植込錠と比較して、増大した表面細孔深さを示す。本明細書において使用される場合、「表面細孔深さ」という表現は、植込錠切断片の表面上の最高点から谷までの距離の平均を指す。本明細書において使用される場合、「表面細孔」は、植込錠切断片の表面上に開いた細孔を指す。それによれば、いくつかの実施形態において、本発明の植込錠切断片は、約60μm以上、例えば約65μm以上の平均表面細孔深さを示す。いくつかの実施形態において、本発明の切断片は、約60μm〜約100μmの間の平均表面細孔深さを有する。いくつかの実施形態において、本発明の切断片は、約60μm〜約90μmの間、例えば約65μm〜約90μmの間、例えば約65μm〜約80μmの間の平均表面細孔深さを有する。
【0105】
いくつかの実施形態において、露出したコアの末端は、例えば第3のポリマーマトリックス(鞘に使用される第2のポリマーマトリックスと同じであっても異なっていてもよい)によりシールされる。第3のポリマーマトリックスにおいて利用されるポリマーは、例えば、本明細書に記載される任意の生物分解性ポリマーであってよい。しかしながら、いくつかの実施形態において、例えば、コアから初回負荷量が放出されるように、露出した末端の一方または両方はシールされない。植込錠の末端をシールするためにいくつかの方法を使用することができる。これらの方法としては、鞘ポリマーの溶液のコーティング、溶融した鞘ポリマーの適用、熱したナイフまたは針金で植込錠を切断して、切断する際に熱シールすること、および/または植込錠の末端にポリマーの栓を付けることが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
いくつかの実施形態において、鞘の厚さは、植込錠全体の直径の約2%〜約40%の間、例えば全体の直径の約5%〜約30%の間である。鞘ポリマーは、密度が高く、ほとんどまたは全く多孔性を持たないか、または約1〜約30ミクロンの細孔および約5%〜約70%の間の孔容積を有する高度の多孔性である。鞘ポリマーもドーパミン調節化合物を、コアに含まれるものよりも低い量で含んでよく、または鞘ポリマーはコアに含まれるものとは異なる活性成分を含んでもよい。しかしながら、いくつかの実施形態において、鞘の中にはドーパミン調節化合物がほとんどまたは全く含まれない。
【0107】
ドーパミン調節化合物は、例えば、混合してスラリーを形成することにより、ポリマーマトリックスとの溶媒混合、乾式混合、および/または溶融混合により、製剤に加えることができる。薬物-マトリックスを2回押し出すことにより均一な混合が得られる。いくつかの実施形態において、コアは、ドーパミン調節化合物とポリマーとの乾式混合、混合物の溶融押出、および押出物を粉砕して2回目の押出に使用することにより製剤される。
【0108】
60〜80℃の加工温度において粘性の液体であるポリマー(例えば、ポリカプロラクトン等)から構成される植込錠を得るためには、ポリマーをオーブン、オイルバスまたは当業者に公知の他の方法により溶融し、ドーパミン調節化合物を電動ミキサーにより溶融したポリマー中に混合する。次に、ドーパミン調節化合物とポリマーとの均質な混合物を押出により植込錠に形作る。
【0109】
加工温度において流動させるために圧力が必要なポリマーから構成される植込錠(またはその切断片)を得るためには、ドーパミン調節化合物およびポリマーを、その中で押出の前に薬物およびポリマーを加熱し、練ることができるシングルまたはツインスクリューミキサー/押出機中で溶融混合する。次に、押出単独で、または圧縮成型と組み合わせて、植込錠(またはその切断片)を形作る。植込錠を、さらにポリマー溶液(例えば、100% PLA)により浸漬コーティングしてもよい。植込錠は全体を浸漬コーティングしてもよいし、図13に示されるように、棒状のそれぞれの末端のみを浸漬コーティングしてもよい。
【0110】
ポリマーおよび/またはドーパミン調節化合物から構成され、溶媒混合した後に、例えば押出加工される植込錠(またはその切断片)を得るための工程に使用される溶媒の選択は、一般に選択されたポリマーおよび活性成分、ならびに使用される溶媒除去の特定の手段に依存する。このような溶媒は当業者に公知であるが、非限定的な例としては、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、乳酸エチル、酢酸エチル、ジクロロメタン、および酢酸エチル/アルコール混合物などの有機溶媒が挙げられる。
【0111】
発明の実施例
D2シナプス後受容体に作用するD2ドーパミンアゴニストであるロピニロールは、無作為化プラセボ対照試験においてパーキンソン病症状の治療に有効であることが示されている。この研究は、1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(「MPTP」)により処理されたサルにロピニロールを投与する2つの異なる方法を比較する。仮説は、ロピニロールを経口投与されたサルは、本発明の実施例のロピニロール皮下植込錠(「NP201」)を投与されたサルよりも早くパーキンソン病様状態(例えば、動作緩慢、すくみ(freezing)、前かがみの姿勢および振戦)に戻るであろうというものであった。MPTPによりパーキンソン病様症状を誘発した後、サルを経口ロピニロールまたは植込みロピニロールのいずれかにより治療し、薬物動態パラメーターおよび症状の抑制を比較した。目的には、パーキンソン病の霊長類モデルであるパーキンソン病のアカゲザルの治療におけるNP201と経口ロピニロールとの有効性の比較、1日3回(「TID」)の経口ロピニロールおよびNP201の血漿中濃度の評価、ならびに経口投与およびNP201投与における動作緩慢およびジスキネジアの減少の程度の測定が含まれた。
【0112】
研究は4つの相:隔離相、訓練相、MPTP誘発相、および用量設定相/実験相で実施した。隔離相において、サルを30日間収容して隔離した。隔離の間、サルを、食物摂取、全般的行動および外観について毎日モニターした。サルは、到着後少なくとも48時間気候順応させた。訓練相において、サルを微細運動ピックアップ試験(Fine Motor Pick-up Test)をおこなうように訓練した。ベースラインデータを得るために臨床評価尺度(Clinical Rating Scale)を完成させた。
【0113】
MPTP誘発相において、MPTPを用いてサルを両側性パーキンソン病にした。サルに、片側頸動脈内注射により0.3 mg/kgのMPTP初回投与量を、次いで0.3 mg/kgのMPTP静脈内(i.v.)注射を週2回投与し、これを、サルが、臨床評価尺度において中程度の両側性パーキンソン症候群の得点である7.0〜20.5(例えば、12以上)を達成するまで続けた。静脈内MPTPを3〜5日間隔で投与した。静脈内MPTP注射の実際の累積数は、安定な両側性症状の開始により決定された。この静脈内MPTP投与のゆっくりしたタイムコースにより、それぞれのMPTP投与の後の新しいパーキンソン病様症状の発症および評価が可能になった。MPTPの96時間後、隔離からの解放の前に、それぞれのサルについてパーキンソン様障害の評価をおこなった。投与を終了する終点基準は、12以上の臨床評価尺度(「CRS」)の得点を特徴とする両側性パーキンソン症候群であった。MPTP静脈内投与後に臨床評価の得点が12〜20の間であることにより証明される、適切に両側性パーキンソン病になったサルを研究に使用した。臨床評価の得点が11以下または21以上であったサルは除外された。研究の過程中にその体重が20%減少したサルは研究を中止した。体重は毎週検査した。
【0114】
用量設定相において、サルあたりのロピニロールの最低有効量を決定するために、すべてのサルに投薬した。最低有効量は、臨床評価尺度の得点を50%減少させる用量であると定義された。それぞれの動物の経口投与による最低有効量を決定するために、すべてのサルに以下の漸増する用量の経口ロピニロールを投与した:午前に1.0 mg/kg、次いでPK血液サンプル(1日目);0.25 mg/kg TIDを3日間(2〜4日目);0.50 mg/kg TIDを3日間(5〜7日目);1.00 mg/kg TIDを3日間(8〜10日目);2.00 mg/kg TIDを3日間(11〜13日目);および午前に1.0 mg/kg、次いでPK血液サンプル(14日目)。
【0115】
どの用量も臨床評価の得点の50%減少を達成しなかった場合、次の週も用量設定を続けた。植込錠の試験比較用量を決定するために平均用量を使用した。実験相の群1に研究の期間を通して最低有効量をTID投与した。
【0116】
実験相において、サルを3つの処理群に分けた:群1 - 用量設定相において決定した平均最低有効量を用いる経口ロピニロールTID。群2 - 経口TIDの合計1日量の約1/9または1/18のいずれかの用量のロピニロールを放出するNP201、例えば、1回1.00 mg/kg経口投与の場合、1日量は3.00 mg/kg/日となり、この場合の植込錠の用量は、それぞれ、0.33 mg/kg/日または0.17 mg/kg/日となる。群3 - 対照群は皮下プラセボ植込錠および経口プラセボTIDの両方を投与される。
【0117】
植込みの効果、皮下の植込錠の存在、果物に入れての経口投与の対照とするために、また、研究者を盲検化するために、すべての被験体に毎日の経口処理および植込みをダブルダミー法で投与した。
【0118】
どちらの測定にも群の間に統計的に有意な違いがないように、処理群を臨床評価尺度および微細運動ピックアップ試験の重症度について一致させた。サルを重症度を一致させた4つの群(各群にn=4のサル)のうちの1つに割り当てた。得られた3つの群を無作為に処理条件に割り当てた。ロピニロールの経口投与およびプラセボは、週1日BIDで、サルが採血、現地調査および活動モニターデータの回収のために麻酔を受ける時におこなった。
【0119】
実験相の間、サルを微細運動ピックアップ試験により週3回試験した。臨床評価尺度および総合霊長類ジスキネジア尺度(Global Primate Dyskinesia Scale)は、週1日、経口投与の前および後に完了した。すべてのサルは、研究の期間中ずっと、連続的に活動モニタリングジャケットを身につけていた。
【0120】
薬物動態(「PK」)サンプルを集めるために、サルをケタミン(7〜10 mg/kg筋肉内)により沈静化させ、伏在静脈から1 ccの血液を採集した。血漿サンプルを適切なラベルを付けた採集管に集めた。1 ccの血液サンプルをカテーテルまたは静脈穿刺により採集してEDTA採集管に入れ、検証されたHPLCにより、MS/MS検出を用いてロピニロール血漿濃度を測定した。血漿サンプルは採集後2時間以内に凍結し、分析まで凍結させておいた。用量設定相(経口投与)のためのPKサンプルは、1日目および14日目に、1.0 mg/kgの1回の経口投与の60、120、180、240および360分後に採取した。実験相(NP201植込み)のためのPKサンプルは、4つの試験群のすべてにおいて採取して、ロピニロールの血中濃度を試験した。連続的PKのための血漿サンプルは、すべてのサル(ロピニロールおよびプラセボ植込み)において以下の間隔で採取した:植込み後30〜60分および6時間±30分(記録時間)、およびNP201の植込みの8、15、22、29、36、43、50、57および64日後。
【0121】
神経行動学的試験のための臨床評価尺度を、正常、MPTP、およびMPTP+治療の条件下のサルの臨床状態を評価するために、先に公表されたプロトコールに従って週1回使用した。治療条件について盲検化された訓練された観察者が、研究の期間(4〜82日の研究期間)全体に渡って評価を実施した。週1回被験体を評価した。すべての群を投与の1時間後に評価した。尺度は以下の評価:振戦(それぞれの腕について0〜3);姿勢(0〜3);足取り(0〜5);動作緩慢(0〜5);バランス(0〜3);全般的運動技能(それぞれの腕について0〜4);防御反応(0〜2);およびすくみ(0〜2) からなる。得点は特徴の合計として得られた。合計34点のうち、0は正常の得点に相当し、34は非常に重篤な障害に相当する。ジスキネジア、精神的混乱および嘔吐の発生も記録した。
【0122】
活動モニターシステム(「AMS」)は、12時間明/暗サイクルを記録する。それぞれのサルは、背中部分内側のポケットに活動モニター(Actitrac 1M Systems, Baltimore, MD)が入ったサル用ジャケットを身に付けた。この活動モニターは、垂直および水平軸方向の動きについて、40 Hertzのサンプリング速度で加速信号をデジタル化して測定し、それぞれの連続的時間間隔の間に計算された平均加速値を保存した。あらかじめ選択された時間内(1分間)のパルスの数を表した。データを、1分ごとに区切って(in 1-minute bins)連続的に14日間に渡って集めた。期間の終わりに、サルを再度ケタミン(15 mg/kg筋肉内)により鎮静化させ、活動モニターをはずして、コンピューターとインターフフェイスで接続し、データをダウンロードした。データをそれぞれの12時間明/暗サイクルの平均活動として表した。
【0123】
微細運動ピックアップ試験において、それぞれのサルを、食物ピックアップ作業の修正形を用いることにより両上腕における微細運動の能力について試験した。試験は修正された住居ケージ中でおこなった。サルにプレキシグラス(Plexiglas)板の中に埋め込まれた3×3マトリックスの凹状に形成した食物ウェルを与えた。リンゴの立方体の切片(0.5 cm)をそれぞれの食物ウェルの中に置いた。それぞれの試験の間、6個の切片を同じ6個の食物ウェルの中に置き、サルが6個の切片のすべてを回収するのにかかる時間を記録した。試験用の板は、サルが評価を行っている腕を用いることによってのみ食物の報酬を回収することができるような形状に作られた。サルは、各試験セッションにおいて片腕につき10回の試験をおこない、腕は各試験ごとに交互に試験した。それぞれのサルは、研究の過程を通して、週3日、同じ時間に同じ研究者により試験された。サルを試験する科学者は処理群に対して盲検化された。
【0124】
総合霊長類ジスキネジア評価尺度(「GPDRS」)において、総合非ヒト霊長類ジスキネジア評価尺度(Global Non-Human Primate Dyskinesia Rating Scale)を用いて、週1日、経口投与の前および後にジスキネジアの存在についてそれぞれのサルを観察した。ジスキネジアの位置を記録した。週1回、検証されたジスキネジア尺度を使用して、それぞれの群のサルのジスキネジアの発症の程度を決定した。この研究に使用した総合霊長類ジスキネジア評価尺度は、表1に示す採点システムを有するジスキネジアの重症度を評価する0〜4点の単項目尺度であった。
【0125】
表1:GPDRSの採点
【表1】

【0126】
皮膚刺激評価において、NP201植込錠の部位を、毎週、血液採取が完了すると同時に刺激の存在の有無について評価した。植込みの部位における局所的刺激を、表2の皮膚刺激の採点に従って採点した。
【0127】
表2:皮膚刺激評価の採点
【表2】

【0128】
すべての棒状体の植込みは無菌条件下でおこなった。植込錠の大きさはおよそ幅2 mmおよび長さ2 cmであった。サルに麻酔のために3 mg/kgのケタミンおよび0.3 mg/kgのドルモトル(dormotor)を投与した。サルの肩甲骨の間の毛を剃った後、皮膚をベタジン溶液およびアルコールで洗浄した。10〜12ゲージの套管針またはメスを用いて約2 cmの切開を作って植込錠を挿入した。次に、植込錠を皮膚の下に置き、皮膚を3.0バイクリル(vicrol)縫合糸により閉じた。
【0129】
主要有効性エンドポイントは、臨床評価尺度の得点の減少、微細運動ピックアップ試験の得点の改善、およびAMSを用いてモニターした活動におけるMPTP誘発性の混乱の反転であった。二次有効性エンドポイントには、6〜8週での経口ロピニロールと比較したジスキネジアの減少が含まれる。
【0130】
NP201は80日間に渡って検出できるレベルのロピニロールを送達し(図1参照)、0日目〜58日目の間は1 ng/mlを超える濃度であった。NP201の血清中濃度は、7日目から44日目まで4〜11 ng/mlの間を維持し、それ以後は一定の減少を示した。経口ロピニロールは、最初の30日間に渡って3〜8 ng/mlの間の濃度をもたらし、次いで37日目から57日目まで8〜20 ng/mlの間に増加した(図2参照)。
【0131】
ベースラインからの臨床評価尺度の変化(図3参照)は、4日目〜60日目の間、経口ロピニロールがプラセボよりも優れていたことを示した。NP201は、11日目〜46日目の間プラセボよりも優れていた。
【0132】
活動は以下のように要約することができる:水曜日〜金曜日の間、経口ロピニロールは、覚醒サイクルの間の各投与の約1時間後に、ベースラインのMPTP以前のレベル(図4参照)を越えるピーク(図5参照)活動レベルをもたらした。週末の間(土〜日)、経口群はベースラインと比較して減少した活動を有し、プラセボと似ていた(図6、図7、図8、図9および図10参照)。NP201は、水曜日〜金曜日および土曜日〜日曜日の両方の期間について、MPTP以前のベースラインレベルと一致する活動の正常なレベルおよびパターンを回復させた(図11参照)。
【0133】
ロピニロール植込錠は、運動障害の緩和に関して経口ロピニロールと同等の有効性を達成する。経口ロピニロールおよび経口用量の1/9のNP201の両方が、プラセボよりも十分に優れたCRS測定を示した(p<0.05)。血清中濃度が同程度であった期間中には、NP201と経口ロピニロールとの間に有意な相違はなかった(p>0.05)。これは植込みの後11〜53日目に相当した。
【0134】
AMS(l2時間明/暗サイクル)により集められたデータをグラフに表して、サルの全般的活動を示す。対照群のサルは連続的に動作緩慢であるのに対して、経口群のサルは経口ロピニロールが全身的に有効である間の活動とその後の有効でない時の動作緩慢の期間とのサイクルを示す。ロピニロール植込錠群は、パーキンソン病でない健康なサルと同様のl2時間明/暗サイクルを示す。活動(mG)の測定値は暗サイクルの間に正常なものよりも若干高かったが、NP201により治療されたサルの睡眠がいかなる形でも妨げられたという証拠はない。すなわち、活動データは、NP201では正常な、MPTP以前の活動レベルを回復したのに対して、経口ロピニロールでは、非常に高い活動の期間とその間に散在する正常レベルが交互に現れた。さらに、経口ロピニロールにより治療された動物は、活性薬剤を投与されていない週末にはプラセボと区別が付かなかったが、NP201動物は研究の活動相の間中、連続して正常な活動を示した。
【0135】
CRSの得点、活動および血漿中濃度については、経口ロピニロール群ではNP201と比較して非常に大きい変動性が存在した。NP201またはポリマー単独でおこなったプラセボ植込錠のいずれの後にも、植込みの部位に刺激の兆候はなかった。
【0136】
要約して言えば、NP201は、80日間に渡ってロピニロールを送達し、約2か月に渡って臨床的に適用可能なレベルでロピニロールを送達した。NP201は、経口用量の1/9または1/18を投与しているにもかかわらず、CRSにおいてプラセボよりも優れていた。経口ロピニロールによる活動亢進は、刺激誘発性精神病の動物モデルと矛盾がなく、また、臨床的に適切な用量のドーパミンアゴニストによるPD患者における薬剤誘発性精神病の発症の観察と矛盾がない。NP201は、MPTP以前のベースライン期間において見られた活動のパターンおよびレベルを再現したが、経口ロピニロールは非常に高い活動の期間と正常な活動の期間を交互にもたらした。動物におけるドーパミンアゴニスト誘発性活動亢進はヒトにおける精神病効果を予測するものであるので、低用量のNP201は、「オフ」の時間がより短く、薬剤誘発性精神病のリスクがより低い、動作緩慢の臨床的改善を提供する可能性を有する。このデータは、NP201が正常な活動パターンを回復し、活動亢進を伴わずに臨床評価の得点を改善することを示唆している。
【0137】
同等物
当業者は、本明細書に記載された特定の方法と同等の多くの方法を認識するであろうし、または通常の実験を用いて確認することができるであろう。このような同等の方法は本発明の範囲に含まれるものと見なされ、以下の特許請求の範囲に含まれる。本出願全体において引用したすべての参照文献、特許、および特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。それらの特許、出願および他の文書の適切な構成要素、工程および方法を本発明およびその実施形態のために選択し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において正常な活動パターンが実質的に回復されるように、有効な定常状態濃度のドーパミン調節化合物を長期間に渡って連続的に投与することを含む、パーキンソン病に罹っている被験体において正常な活動パターンを回復する方法。
【請求項2】
被験体においてオンの時間が増加するように、有効な定常状態濃度のドーパミン調節化合物を、単独でまたは他の療法と組み合わせて、長期間に渡って連続的に投与することを含む、パーキンソン病に罹っている被験体においてオンの時間を増加させる方法。
【請求項3】
被験体においてオフの時間が減少する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
被験体においてオフの時間の症状の重症度が軽減される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
被験体においてオフの時間の症状の頻度が減少する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
被験体において運動反応合併症の発生率が減少する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
被験体において著しいおよび/または長期間の運動亢進が存在しない、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
被験体において運動亢進の期間が存在しない、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ドーパミン調節化合物が、ポンプ注入による投与に伴う副作用なしで投与される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
被験体が睡眠から目覚めた直後にオンの時間の期間を経験する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
被験体において30日よりも長く持続効果が達成される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
承認された経口投与量と同じ薬物動態プロファイルを達成するのに必要な送達量が、承認された経口投与量の1/9または1/18である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
被験体が麻痺を経験しない、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ドーパミン調節化合物が植込錠により送達される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ドーパミン調節化合物が、
ドーパミン調節化合物および第1の生物分解性ポリマーを含むコア;ならびに
第2の生物分解性ポリマーを含む鞘
を含む植込錠により送達される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ドーパミン調節化合物がデポ剤により送達される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ドーパミン調節化合物が、ドーパミン代謝阻害剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、ドーパミン作動薬、ドーパミンアゴニストまたはアデノシン受容体アンタゴニストより選択される別の治療薬と共投与される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
共投与される治療薬の投与量が、時間と共に著しく減少する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
共投与される治療薬に対応する副作用が著しく減少する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
共投与される治療薬がドーパミン作動薬である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ドーパミン作動薬がL-ドーパである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ドーパミン調節化合物が4-アルキルアミノ-2(3H)-インドロン化合物である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ドーパミン調節化合物が、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリベジル、カベルゴリン、およびリスリドより選択される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ドーパミン調節化合物がロピニロールである、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
L-ドーパと組み合わせて、植込錠により連続的かつ持続的に送達されるロピニロールを投与することを含み、オンの時間が増加し、オフの時間が減少する、治療を必要とする患者においてパーキンソン病を治療する方法。
【請求項26】
被験体が睡眠中に正常な活動をおこなうことができる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
患者が連続的に正常な運動をおこなうことができる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
被験体において睡眠から目覚めた直後に正常な活動パターンが実質的に回復されるようにドーパミン調節化合物を投与する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
患者において1日18時間以上に渡って正常な活動パターンが実質的に回復されるようにドーパミン調節化合物を投与する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
パーキンソン病が軽いパーキンソン病から中程度のパーキンソン病である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−509448(P2013−509448A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537192(P2012−537192)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/055127
【国際公開番号】WO2011/053979
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(510331652)ニューパス インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】