ヒト血管形成遺伝子に対するDNA配列
【課題】血管形成関連障害を処置するための単離された核酸分子を提供する。
【解決手段】特定の配列の1つに示される配列を含む単離された核酸分子。血管形成プロセスにおいて役割を果たすポリペプチドをコードし、かつ特定の配列の1つに示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子と、ストリンジェントな条件のもとでハイブリダイゼーションする単離された核酸分子。ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患(これらに限定されない)を含む血管形成関連疾患において役割を果たすポリペプチドをコードする、上記の単離された核酸分子。
【解決手段】特定の配列の1つに示される配列を含む単離された核酸分子。血管形成プロセスにおいて役割を果たすポリペプチドをコードし、かつ特定の配列の1つに示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子と、ストリンジェントな条件のもとでハイブリダイゼーションする単離された核酸分子。ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患(これらに限定されない)を含む血管形成関連疾患において役割を果たすポリペプチドをコードする、上記の単離された核酸分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管形成のプロセスに関与する新規な核酸配列(「血管形成遺伝子」)に関する。これらの血管形成遺伝子のそれぞれにより、血管形成において役割を有するポリペプチドがコードされる。これらの遺伝子が血管形成において役割を果たしているという認識を考慮して、本発明はまた、血管形成に関連する病理の治療、前血管形成活性または抗血管形成活性についての薬物のスクリーニング、血管形成に関連する病理の診断および予後、そして場合により、全長の血管形成関連遺伝子を同定および取得するための核酸配列の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
既存血管からの新しい血管の形成、すなわち、血管形成と呼ばれるプロセスは、正常な成長には不可欠である。重要な血管形成プロセスには、胚形成、子宮内膜の更新、妊娠期の黄体の形成および成長、創傷治癒、そして傷害後の組織構造および機能の回復において生じる血管形成プロセスが含まれる。
【0003】
新しい毛細血管の形成には、前血管形成活性または抗血管形成活性のいずれかを有し得る多数の遺伝子の発現によって媒介される同調した一連の事象が必要である。このプロセスは、血管内皮細胞増殖因子または塩基性線維芽細胞増殖因子などの増殖因子によって通常の場合には媒介される、存在する血管系に対する血管形成性の刺激とともに始まる。この後には、細胞外マトリックスの分解、細胞接着変化(および破壊)、細胞透過性の増大、内皮細胞(EC)の増殖、そして血管形成部位に向かうECの遊走が続く。その後のプロセスには、毛細管または管腔の形成、遊走ECによる安定化および分化が含まれる。
【0004】
(正常な)健康な成人では、血管形成は事実上停止しており、必要とされるときにだけ生じる。しかし、多数の病理学状況が、増強された制御されない血管形成によって特徴づけられている。これらの状態には、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、そしてアテローム性動脈硬化などの心臓血管疾患が含まれる。虚血性四肢疾患など他の病気および冠状動脈疾患では、拡大する脈管構造を促進することにより新しい血管を成長させることが有益であると考えられる。
【0005】
血管形成を模倣すると考えられる数多くのインビトロアッセイが確立されており、これらにより、血管形成プロセスが生じる機構、および関与する可能性が最も高い遺伝子を調べるための重要な手段が提供されている。
【0006】
管腔形成は、血管形成における重要なステップである。血管形成を受けているEC内に小胞が存在することが報告されており、管腔形成におけるそれらの関与が仮定されている(FolkmanおよびHaudenschild、1980;Gamble他、1993)。FolkmanおよびHaudenschild(1980)によって提唱された管腔形成の一般的機構は、小胞が、多数の整列したECの細胞質内に形成され、その後、それらが管に変換されるということである。隣接する管が合体することにより、連続する単一細胞性の毛細管腔の形成がもたらされる。しかしながら、管腔形成をもたらす細胞形態の変化、またはECがこの特徴を構築するために要求されるシグナルについてはほとんど知られていない。
【0007】
血管形成のインビトロモデルが、3次元コラーゲンマトリックスに置床されたヒト臍静脈ECから作製されている(Gamble他、1993)。ホルボールミリスタートアセタート(PMA)の存在下、これらの細胞は24時間以内に毛細管を形成する。抗インテグリン抗体を加えた場合、通常は単一細胞性の管(これは、未成熟な、分化が不十分な表現型を反映していると考えられる)が、細胞−マトリックス相互作用の阻害および細胞−細胞相互作用の促進によって多細胞性の管腔を形成するように変換される。このモデルにより、管腔形成において生じる形態学的事象の研究が可能になっている。
【0008】
血管形成に関連する疾患を処置する場合、このプロセスの分子遺伝学的機構を理解することが最も重要である。上記に記載されるインビトロモデル(Gamble他、1993)、すなわち、時間に依存した、そして大まかには同時的な様式でインビボでの血管形成時に生じる重要な事象を反映するモデルの使用により、関与する重要な遺伝子を同定するための手段が提供されている。
【0009】
多数の遺伝子が血管形成プロセス時に示差的に発現されることがこのモデルから同定されている。これらの血管形成遺伝子のサブセットの機能的分析、そして内皮細胞の機能および増殖に対するそれらの影響が下記に詳しく記載される。
【0010】
これらの血管形成遺伝子の単離により、血管形成関連障害を処置するための新規な標的が提供された。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、血管形成時に発現が調節されることが示された、単離された核酸分子を提供する(表1および表2を参照のこと)。
【0012】
本発明の第1の局面において、配列番号1〜20によって規定され、そして表1に示されるような単離された核酸分子が提供される。
【0013】
これらの分子および表2に列記された分子が血管形成時にそれらの発現において調節されるという認識に従って、本発明は、血管形成プロセスにおいて役割を果たす、配列番号1〜114により規定され、そして表1および表2に示されるような単離された核酸分子またはそれらのフラグメントを提供する。そのようなプロセスには、胚形成、月経周期、創傷修復、腫瘍の血管形成、および運動により誘導される筋肉肥大が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0014】
また、本発明は、血管形成プロセスに関連する疾患において役割を果たす、配列番号1〜114により規定され、そして表1および表2に示される単離された核酸分子(これらは、以降、便宜上、「血管形成遺伝子」、「血管形成核酸分子」または「血管形成ポリペプチド」として示される)またはそれらのフラグメントを提供する。疾患には、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患、および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0015】
本発明にはまた、本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つに対する同一性が少なくとも70%であり、かつ血管形成プロセスにおいて役割を果たす単離された核酸分子が包含される。
【0016】
そのような変化体は、血管形成遺伝子に対する配列同一性が好ましくは少なくとも約85%であり、最も好ましくは少なくとも約95%である。上記に記載されるポリヌクレオチド変化体のいずれか1つにより、本発明の当該血管形成遺伝子の少なくとも1つの機能的特徴または構造的特徴を含むアミノ酸配列がコードされ得る。
【0017】
配列同一性は、典型的には、Altschul他(1997)に記載されるBLASTアルゴリズムをBLOSUM62デフォルト行列とともに使用して計算される。
【0018】
本発明にはまた、本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つとストリンジェントな条件のもとでハイブリダイゼーションし、かつ血管形成プロセスにおいて役割を果たす単離された核酸分子が包含される。
【0019】
ゲノム配列を含むポリヌクレオチド配列を検出することができるPCRプローブとのハイブリダイゼーションを、当該血管形成遺伝子をコードする核酸配列を同定するために使用することができる。プローブが、非常に特異的な領域、例えば、5’の調節領域から、またはあまり特異的でない領域、例えば、保存されたモチーフから作製されるとしても、プローブの特異性、そしてハイブリダイゼーションまたは増幅のストリンジェンシーは、プローブにより、血管形成遺伝子をコードする天然に存在する配列、対立遺伝子変化体、または関連した配列のみが同定されるかどうかを左右する。
【0020】
プローブはまた、関連した配列を検出するためにも使用することができ、従って、好ましくは、本発明の血管形成遺伝子コード配列のいずれかに対して少なくとも50%の配列同一性を有することが望ましい。本発明のハイブリダイゼーションプローブはDNAまたはRNAであってもよく、そして血管形成遺伝子配列のいずれか1つに由来し得るか、または血管形成遺伝子のプロモーターおよびエンハンサーおよびイントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0021】
血管形成遺伝子のいずれか1つをコードするDNAに対する特異的なハイブリダイゼーションプローブを製造するための手段には、当該血管形成遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列またはその誘導体を、mRNAプローブを製造するためのベクターにクローン化することが含まれる。そのようなベクターはこの分野では知られており、市販されている。ハイブリダイゼーションプローブは、32Pもしくは35Sなどの放射性核種によって、またはアビジン/ビオチン結合系によりプローブに結合されるアルカリホスファターゼなどの酵素標識によって、またはこの分野で知られている他の方法によって標識することができる。
【0022】
ストリンジェントな条件のもと、32P標識プローブとのハイブリダイゼーションが、最も好ましくは、750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム、2%SDS、50%ホルムアミド、1Xデンハルト、10%(w/v)デキストラン硫酸、および100μg/mlの変性サケ精子DNAにおいて、42℃で生じる。これらの条件に対する有用な様々な変化が当業者には容易に明かである。ハイブリダイゼーションに続く洗浄工程は、最も好ましくは、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および1%SDSにおいて、65℃で行われる。これらの条件に対するさらなる様々な変化が当業者には容易に明かである。
【0023】
本発明のヌクレオチド配列は、血管形成遺伝子をコードする配列を様々な目的のために変化させるように、この分野で受け入れられている様々な方法を使用して操作することができる。これらの目的には、遺伝子産物のクローニングおよび/またはプロセシングおよび/または発現の改変が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子フラグメントのPCR再組立て、および合成オリゴヌクレオチドの使用は、血管形成遺伝子ヌクレオチド配列の操作を可能にする。例えば、オリゴヌクレオチド媒介の部位特異的変異誘発により、新しい制限部位をもたらす変異、グリコシル化パターンを変化させる変異、およびスプライス変化体を生じさせる変異などを導入することができる。
【0024】
遺伝暗号の縮重性の結果として、本発明の血管形成遺伝子をコードする多数のポリヌクレオチド配列(この場合、いくつかは、任意の知られている天然に存在する遺伝子のポリヌクレオチド配列に対して最小の類似性を有し得る)を製造することができる。従って、本発明には、可能なコドン選択に基づいた組み合わせを選択することにより作製され得るポリヌクレオチド配列の可能な変化がどれもすべて包含される。これらの組み合わせは、天然に存在する血管形成遺伝子のポリヌクレオチド配列に対して適用されるような標準的なトリプレット遺伝暗号に従って作製され、従って、すべてのそのような変化は具体的に開示されていると見なすことができる。
【0025】
本発明のポリヌクレオチドには、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成された形態、および混合ポリマー(センス鎖およびアンチセンス鎖の両方)が含まれ、そして本発明のポリヌクレオチドは、当業者によって理解されるように、化学的または生化学的に修飾することができる。そのような修飾には、標識、メチル化、インターカレーター、アルキル化剤、および修飾された連結が含まれる。場合により、天然に存在する遺伝子のコドン使用とは実質的に異なるコドン使用を有する血管形成遺伝子をコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を製造することが好都合である。例えば、コドンは、特定のコドンが宿主によって利用される頻度と一致させて、特定の原核生物宿主または真核生物宿主におけるペプチドの発現速度を増大させるために選択することができる。コードされるアミノ酸配列を変化させることなく血管形成遺伝子をコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を変化させる他の理由には、天然に存在する配列から産生される転写物よりも望ましい性質(より大きい半減期など)を有するRNA転写物を産生させることが含まれる。
【0026】
本発明はまた、本発明の核酸分子を完全に合成化学によって製造することを包含する。合成された配列は発現ベクターに挿入することができ、また好適な宿主における挿入されたコード配列の転写および翻訳を制御するための必要なエレメントを含有する細胞システムに挿入することができる。これらのエレメントには、血管形成遺伝子をコードする配列のより効率的な翻訳を可能にする調節配列、プロモーター、5’非翻訳領域および3’非翻訳領域、ならびに特異的な開始シグナル(ATG開始コドンおよびKozakコンセンサス配列など)が含まれ得る。その開始コドンおよび上流の調節配列を含む完全なコード配列が適切な発現ベクターに挿入される場合、さらなる制御シグナルは必要でない場合がある。しかし、コード配列のみ、またはそのフラグメントが挿入される場合、上記に記載されるような外因性の翻訳制御シグナルがベクターによって提供されなければならない。そのようなシグナルは、天然起源および合成起源の両方で、様々な起源に由来し得る。発現効率は、使用される特定の宿主細胞システムに適切なエンハンサーを含めることによって高めることができる(Schart他、1994)。
【0027】
本明細書中に記載される配列の相補体である核酸分子もまた調製することができる。
【0028】
本発明は、精製されたポリペプチドまたはタンパク質の調製を可能にする。これを行うために、宿主細胞を、上記に記載されるような核酸分子でトランスフェクションすることができる。典型的には、前記宿主細胞は、本発明による核酸分子を含む発現ベクターでトランスフェクションされる。様々な発現ベクター/宿主細胞システムを、配列を含有し、かつ発現させるために利用することができる。これらには、プラスミドDNA発現ベクターまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞システム;またはマウスもしくは他の動物もしくはヒトの組織細胞システムが含まれるが、これらに限定されない。哺乳動物細胞もまた、プラスミドシステム、コスミドシステムおよびウイルスシステム(ワクシニアウイルス発現システムなど)を含む様々な発現ベクターを使用して、本発明の特定の血管形成遺伝子によってコードされるタンパク質を発現させるために使用することができる。本発明は、用いられる宿主細胞によって限定されない。
【0029】
本発明のポリヌクレオチド配列またはその変化体を、哺乳動物システムにおける組換えタンパク質の長期間の製造を可能にするために細胞株において安定的に発現させることができる。本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つをコードする配列を、ウイルスの複製起点および/または内因性の発現エレメントを含有し得る発現ベクター、そして同じベクターまたは別個のベクターにおける選択マーカー遺伝子を使用して、細胞株に形質転換することができる。選択マーカーにより、選択薬剤に対する抵抗性が付与され、その存在により、導入された配列を発現することに成功した細胞の成長および回収が可能になる。安定に形質転換された細胞の抵抗性クローンを、細胞タイプに対して適切な組織培養技術を使用して増殖させることができる。
【0030】
形質転換された細胞によって産生されるタンパク質は、使用された配列および/またはベクターに依存して、分泌され得るか、または細胞内に保持され得る。当業者によって理解されるように、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターは、原核生物または真核生物の細胞膜を介したタンパク質の分泌を行わせるシグナル配列を含有するように設計することができる。
【0031】
また、宿主細胞系統を、挿入された配列の発現を調節するその能力、または所望する様式で発現タンパク質をプロセシングするその能力について選ぶことができる。ポリペプチドのそのような修飾には、アセチル化、グリコシル化、リン酸化およびアシル化が含まれるが、これらに限定されない。タンパク質の「プレプロ」形態の翻訳後切断もまた、タンパク質の標的化、折り畳みおよび/または活性を特徴づけるために使用することができる。翻訳後活性のために特定の細胞装置および特徴的な機構を有する種々の宿主細胞(例えば、CHO細胞またはHeLa細胞)をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手することができ、それらは、外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実にするために選ぶことができる。
【0032】
多量のタンパク質が、抗体製造などのために必要とされるときには、高レベルの発現を行わせるベクター、例えば、T5またはT7の誘導性バクテリオファージプロモーターを含有するベクターなどを使用することができる。本発明はまた、タンパク質の重要な機能的ドメインを含有する融合タンパク質を作製および単離することにおける上記に記載される発現システムの使用を包含する。これらの融合タンパク質は、結合、構造および機能に関する研究のために、ならびに適切な抗体を作製するために使用される。
【0033】
タンパク質を融合タンパク質として発現および精製するために、本発明の適切なポリヌクレオチド配列が、別のペプチド(例えば、グルタチオンスクシニルトランスフェラーゼ)をコードするヌクレオチドを含有するベクターに挿入される。融合タンパク質は原核生物細胞または真核生物細胞から発現および回収される。その場合、融合タンパク質は、融合ベクター配列に基づくアフィニティークロマトグラフィーによって精製することができ、そして当該タンパク質を、続いて、融合タンパク質の酵素的切断によって得ることができる。
【0034】
本発明のポリペプチドのフラグメントはまた、固相技術を使用する直接的なペプチド合成によって製造することができる。自動化された合成を、ABI431Aペプチド合成機(Perkin−Elmer)を使用することによって達成することができる。ポリペプチドの様々なフラグメントを別々に合成して、その後、組み合わせて、全長の分子を製造することができる。
【0035】
本発明の単離された核酸分子が部分的な遺伝子配列のみを表す場合、これらの部分配列は、全長型血管形成遺伝子の対応する配列を得るために使用することができる。従って、本発明はさらに、血管形成プロセスに関与する全長型ヒト遺伝子を同定および/または取得するために、配列番号70、72〜73、78、83〜87、89、160または174のいずれか1つによって規定されるヌクレオチド配列を含む本発明の部分核酸分子の使用を提供する。全長の血管形成遺伝子は、当業者にそれ自体は知られている方法によって本発明の部分ヌクレオチド配列を使用してクローン化することができる。例えば、国立バイオテクノロジー情報センターにおいて主宰される配列データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)などの配列データベースのインシリコ分析を、重複するヌクレオチド配列を得るために検索することができる。これにより、全長型遺伝子配列を得ることに対する「ウォーキング」法が提供される。このサイトで検索される適切なデータベースには、発現配列タグ(EST)データベース(GenBank配列、EMBL配列およびDDBJ配列のそれらのEST区分に由来するデータベース)、または非冗長(nr)データベース(GenBank配列、EMBL配列、DDBJ配列およびPDB配列のすべてを含むが、EST配列、STS配列、GSS配列、または第0相もしくは第1相もしくは第2相のHTGS配列を含まない)が含まれる。典型的には、検索は、Altschul他(1997)に記載されるBLASTアルゴリズムをBLOSUM62デフォルト行列とともに使用して行われる。インシリコ「ウォーキング」法により、完全な遺伝子配列を得ることができない場合、さらなる方法を用いることができる。これらには、配列が知られているDNAの一部に隣接する未知の配列を得ることを可能にする「制限部位PCR」の使用が含まれる。この技術では、ユニバーサルプライマーが、未知の配列を得るために使用される。インバースPCRもまた使用することができ、この場合には、既知の配列に基づくプライマーが、隣接する未知の配列を増幅するために設計される。これらの上流配列には、プロモーターおよび調節配列が含まれ得る。また、PCRに基づく様々な他の技術を使用することができ、例えば、Clontech(Palo Alto、California)から入手可能なキットはウォーキングPCR技術を可能にし、5’RACEキット(Gibco−BRL)はさらなる5’遺伝子配列の単離を可能にし、一方、さらなる3’配列は、巧みな技術を使用して得ることができる(例えば、Gecz他(1997)を参照のこと)。
【0036】
本発明のさらなる局面において、配列番号115〜125により規定され、表1に示されるような単離されたポリペプチドが提供される。
【0037】
本発明はまた、血管形成時に発現を調節されることが示されている単離されたポリペプチドを提供する(表1および表2を参照のこと)。
【0038】
より具体的には、これらのポリペプチドが血管形成時にその発現において調節されるという認識に従って、本発明は、血管形成プロセスにおいて役割を果たす、配列番号115〜216により規定され、表1および表2に示されるような単離されたポリペプチドまたはそれらのフラグメントを提供する。そのようなプロセスには、胚形成、月経周期、創傷修復、腫瘍の血管形成、および運動により誘導される筋肉肥大が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0039】
また、本発明は、血管形成プロセスに関連する疾患において役割を果たす、配列番号115〜216により規定され、そして表1および表2に示されるような単離されたポリペプチドまたはそれらのフラグメントを提供する。疾患には、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患、および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0040】
本発明はまた、配列番号115〜216のいずれか1つに対する同一性が少なくとも70%(好ましくは少なくとも85%、より好ましくは95%)であり、かつ血管形成プロセスにおいて役割を果たす単離されたポリペプチドを包含する。
【0041】
配列同一性は、典型的には、Altschul他(1997)に記載されるBLASTアルゴリズムをBLOSUM62デフォルト行列とともに使用して計算される。
【0042】
本発明のさらなる局面において、上記に記載されるポリヌクレオチドを調製する方法で、下記の工程:
(1)ポリペプチドを産生させるために効果的な条件のもとで宿主細胞を培養する工程;および
(2)ポリペプチドを回収する工程
を含む方法が提供される。
【0043】
本発明のさらに別の局面により、上記に記載されるプロセスの生成物であるポリペプチドが提供される。
【0044】
実質的に精製されたタンパク質またはそのフラグメントは、その後、例えば、タンパク質のx線結晶学によって、または核磁気共鳴(NMR)によって二次構造および三次構造を明らかにするために、さらなる生化学的分析において使用することができる。構造を決定することにより、タンパク質と相互作用するための医薬品、またはタンパク質の電荷配置もしくは他のタンパク質との電荷相互作用を変化させるための医薬品、または細胞におけるその機能を変化させるための医薬品の合理的な設計が可能になる。
【0045】
本発明は、血管形成に関与することが考えられる多数の遺伝子を提供する。血管形成は多数の病理学的プロセスにおいて重要であるので、従って、本発明により、すべての血管形成関連障害を処置するための治療的方法が可能になり、そして血管形成遺伝子のいずれか1つの発現および/または機能の異常と関連するすべての血管形成関連障害の診断または予後が可能になる。
【0046】
そのような障害の例には、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患、および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の別の局面により、上記に記載されるような血管形成関連障害を処置する方法が提供され、この場合、この方法は、そのような処置を必要としている対象に、本発明の血管形成遺伝子または血管形成タンパク質の選択的なアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む。
【0048】
なおさらに、上記に記載されるような血管形成関連障害を処置するための、本発明の血管形成遺伝子または血管形成タンパク質の選択的なアゴニストまたはアンタゴニストの使用が提供される。
【0049】
制御されていない血管形成または増強された血管形成をもたらす血管形成関連障害(これには、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、そしてアテローム性動脈硬化などの心臓血管疾患が含まれるが、これらに限定されない)を処置する場合、拡大する脈管構造を阻害する治療法が望ましい。これには、血管形成を促進することができる血管形成遺伝子または血管形成タンパク質のいずれか1つを阻害すること、あるいは血管形成を阻害することができる血管形成遺伝子または血管形成タンパク質のいずれか1つを増強または刺激または再活性化することが伴う。
【0050】
阻害された血管形成または低下した血管形成を特徴とする血管形成関連障害(これには、虚血性四肢疾患および冠状動脈疾患が含まれるが、これらに限定されない)を処置する場合、血管の拡大を増強または促進する治療法が望ましい。これには、血管形成を制限することができる血管形成遺伝子または血管形成タンパク質のいずれか1つを阻害すること、あるいは血管形成を促進することができる血管形成遺伝子または血管形成タンパク質のいずれか1つを増強または刺激または再活性化することが伴う。
【0051】
例えば、BNO69およびBNO96のアンチセンス発現は、内皮細胞の成長および増殖を阻害することが示されている。従って、血管形成が制限される必要がある障害の処置では、これらの遺伝子の機能を阻害することが望ましい。あるいは、血管形成が刺激される必要がある障害の処置では、これらの遺伝子の機能を増強することが望ましい場合がある。
【0052】
これらの場合のそれぞれについて、当該治療法は、血管形成遺伝子に損傷があるか否かにかかわりなく、血管形成関連障害を処置することにおいて有用である。
【0053】
遺伝子またはタンパク質の機能の阻害
遺伝子またはタンパク質の機能を阻害することは様々な方法で達成することができる。アンチセンス核酸法により、変化した発現が障害の原因である遺伝子を不活性化するための1つの方法が表される。本発明の1つの局面において、単離された核酸分子は、上記に記載される当該血管形成核酸分子のいずれか1つの相補体であり、そして本発明の当該血管形成遺伝子によってコードされるmRNAとハイブリダイゼーションするRNA分子をコードしており、そのような処置を必要としている対象に投与することができる。典型的には、血管形成遺伝子の任意の当該遺伝子に対する相補体が、血管形成関連障害を処置または防止するために対象に投与される。
【0054】
本発明のさらなる局面において、本発明の当該核酸分子のいずれか1つの相補体である単離された核酸分子であって、本発明の当該血管形成遺伝子によってコードされるmRNAとハイブリダイゼーションするRNA分子をコードする単離された核酸分子の、血管形成関連障害を処置するための医薬品の製造における使用が提供される。
【0055】
典型的には、当該血管形成遺伝子のいずれか1つをコードするポリヌクレオチドの相補体を発現するベクターを、上記に記載される傷害(これに限定されない)を含む血管形成関連障害を処置または防止するために対象に投与することができる。ベクターを細胞または組織に導入するための多くの方法を利用することができ、これらは、インビボ、インビトロおよびエクスビボにおける使用のために等しく好適である。エクスビボ治療の場合、ベクターを、患者から採取され、その同じ患者に戻される自家移植のためにクローン増殖させた幹細胞に導入することができる。トランスフェクションによる送達、リポソーム注射による送達、またはポリカチオン性アミノポリマーによる送達を、この分野で広く知られている方法を使用して達成することができる(例えば、Goldman他(1997)を参照のこと)。
【0056】
さらなるアンチセンス法または遺伝子標的化サイレンシング法では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用、アンチセンスRNAの注入、アンチセンスRNA発現ベクターのトランスフェクション、およびRNA干渉(RNAi)または短い干渉性RNA(siRNA)の使用が含まれ得るが、これらに限定されない。なおさらに、DNAザイムおよびリボザイムなどの触媒作用核酸分子を遺伝子サイレンシングのために使用することができる(BreakerおよびJoyce、1994;HaseloffおよびGerlach、1988)。これらの分子は、従来のアンチセンス法でのように単に結合するのではなく、それらの標的mRNA分子を切断することによって機能する。
【0057】
さらなる局面において、本発明による精製されたタンパク質を、本発明の任意の当該血管形成タンパク質と特異的に結合する抗体を製造するために使用することができる。これらの抗体は、アンタゴニストとして直接的に使用することができ、あるいは、当該血管形成タンパク質を発現する細胞または組織に薬学的薬剤を導くための標的化機構または送達機構として間接的に使用することができる。そのような抗体には、当業者によって理解されるように、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体および単鎖抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
抗体を製造するために、ウサギ、ラット、ヤギ、マウスおよびヒトなどを含む様々な宿主を、本発明のタンパク質を注射することによって、または免疫原的性質を有するその任意のフラグメントもしくはオリゴペプチドを注射することによって免疫化することができる。様々なアジュバントを、免疫学的応答を増大させるために使用することができ、これには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、およびリソレシチンなどの表面活性物質が含まれるが、これらに限定されない。ヒトにおいて使用されるアジュバントには、BCG(カルメット−ゲラン菌)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)が含まれる。
【0059】
当該血管形成タンパク質に対する抗体を誘導するために使用されるオリゴペプチドまたはペプチドまたはフラグメントは、少なくとも約5アミノ酸からなるアミノ酸配列、より好ましくは少なくとも約10アミノ酸からなるアミノ酸配列を有することが好ましい。これらのオリゴペプチドまたはペプチドまたはフラグメントは、天然タンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であり、そして、天然に存在する小さい分子のアミノ酸配列全体を含有することもまた好ましい。これらのタンパク質に由来するアミノ酸の短い領域を、KLHなどの別のタンパク質の領域と融合させることができ、そしてこのキメラ分子に対する抗体を製造することができる。
【0060】
任意の当該血管形成タンパク質に対するモノクローナル抗体を、培養における連続した細胞株による抗体分子の製造をもたらす任意の技術を使用して調製することができる。これらには、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBVハイブリドーマ技術が含まれるが、これらに限定されない(例えば、Kohler他(1975);Kozbor他(1985);Cote他(1983);Cole他(1984)を参照のこと)。
【0061】
製造されるモノクローナル抗体には、マウス由来抗体、ヒト化抗体、および完全なヒト抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
抗体はまた、文献に開示されるように、リンパ球集団でのインビボ産生を誘導することによって、または免疫グロブリンライブラリー、もしくは非常に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすることによって製造することができる(例えば、Orlandi他(1989);Winter他(1991)を参照のこと)。
【0063】
任意の当該血管形成タンパク質に対する特異的な結合部位を含有する抗体フラグメントもまた作製することができる。例えば、そのようなフラグメントには、抗体分子をペプシン消化することによって製造されるF(ab’)2フラグメント、およびF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFabフラグメントが含まれる。あるいは、Fab発現ライブラリーを、所望する特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定を可能するために構築することができる(例えば、Huse他(1989)を参照のこと)。
【0064】
様々な免疫アッセイを、所望する特異性を有する抗体を同定するためのスクリーニングのために使用することができる。明らかにされた特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用する競合的結合アッセイまたは免疫放射測定アッセイのための非常に多数のプロトコルがこの分野では広く知られている。そのような免疫アッセイでは、典型的には、タンパク質とその特異的な抗体との間における複合体形成を測定することが伴う。2つの非妨害性エピトープに対する反応性を有するモノクローナルを利用する二部位モノクローナル型免疫アッセイが好ましく、しかし、競合的結合アッセイもまた用いることができる。
【0065】
さらなる局面において、アンタゴニストには、ペプチド、ホスホペプチド、または小さい有機化合物もしくは無機化合物が含まれ得る。これらのアンタゴニストは、必要な治療効果をもたらすように、本発明の任意の当該血管形成遺伝子の機能を破壊することが望ましい。
【0066】
治療的適用のために好適なペプチド、ホスホペプチド、または小さい有機化合物もしくは無機化合物は、下記に記載されるような薬物スクリーニング適用において本発明の核酸およびポリペプチドを使用して同定することができる。
【0067】
遺伝子またはタンパク質の機能の増強
遺伝子またはタンパク質の機能を増強または刺激または再活性化することは様々な方法で達成することができる。本発明の1つの局面において、上記に記載されるような単離された核酸分子の、そのような処置を必要としている対象に対する投与を開始することができる。典型的には、本発明の任意の当該血管形成遺伝子を、血管形成関連障害を処置または防止するために対象に投与することができる。
【0068】
さらなる局面において、血管形成関連障害を処置するための医薬品の製造における、上記に記載されるような単離された核酸分子の使用が提供される。
【0069】
典型的には、任意の当該血管形成遺伝子またはそのフラグメントもしくは誘導体を発現することができるベクターを、上記に記載される障害(これに限定されない)を含む障害を処置または防止するために対象に投与することができる。形質導入するためのレトロウイルスベクターもまた、感染ならびに安定な組み込みおよび発現のその効率が大きいために、体細胞遺伝子治療のために使用されることが多い。任意の当該全長遺伝子またはその一部をレトロウイルスベクターにクローン化することができ、そして発現を、その内因性プロモーターから、またはレトロウイルスの長末端反復から、または目的とする標的細胞タイプに対して特異的なプロモーターから行わせることができる。他のウイルスベクターを使用することができ、これには、この分野で知られているように、鳥類起源およびネズミ起源およびヒト起源のアデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、パポバウイルス、レンチウイルスおよびレトロウイルスが含まれる。
【0070】
遺伝子治療を、確立された方法(Friedman、1991;Culver、1996)に従って行うことができる。発現制御エレメントに連結され、そして細胞の内部で複製することができる1コピーの任意の当該血管形成遺伝子を含有するベクターが調製される。あるいは、ベクターは複製欠陥型であってもよく、これは、複製のために、そして遺伝子治療における使用のためにヘルパー細胞を要求し得る。
【0071】
インビトロでの非ウイルス感染方法を使用する遺伝子移入もまた使用することができる。これらの方法では、DNAの直接的な注入、リン酸カルシウムの存在下でのネイクドDNAの取り込み、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合またはリポソーム送達が含まれる。遺伝子移入はまた、ヒト人工染色体の一部として送達することによって、または受容体により媒介される遺伝子移入によって達成することができる。これには、特異的な細胞表面受容体に結合して、エンドサイトーシスおよび哺乳動物細胞内へのDNAの移入を誘導させる標的化分子にDNAを連結することが伴う。1つのそのような技術では、ポリ−L−リシンが、アシアロ糖タンパク質をDNAに連結するために使用される。アデノウイルスもまた、リソソームを破壊し、従って、DNAを分解から回避させ、そして核に移動させるために複合体に加えられる。これらの粒子の静脈内注入により、肝細胞内への遺伝子移入がもたらされている。
【0072】
今日まで同定されていないが、血管形成関連障害を有するある種の個体は、本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つに異常を含むことが考えられる。従って、血管形成遺伝子の発現または活性が低下している罹患した対象では、ダウンレギュレーションの機構は、CpGアイランドを含有する血管形成遺伝子のプロモーター領域の異常なメチル化のためであることがある。従って、治療に対する代替的な方法では、異常なプロモーターメチル化を除去する薬剤の投与により、遺伝子発現を再活性化することができ、そして正常な機能を罹患細胞に回復させることができる。
【0073】
本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つの変異した形態を発現する罹患した対象では、変異型遺伝子と組み換えられるようにその遺伝子の野生型コピーを罹患細胞に導入することによって障害を防止することが可能である場合がある。これには、遺伝子の変異を訂正するための二重組換え事象が必要である。これらの方法で遺伝子を導入するための様々なベクターがこの分野では知られており、そして任意の好適なベクターを使用することができる。あるいは、遺伝子の別のコピーであって、第2の変異をその遺伝子に有するコピーを導入することを、元の遺伝子変異を無効にし、かつ何らかの負の作用を阻止するようにするために用いることができる。
【0074】
さらにさらなる局面において、血管形成関連障害を処置する方法が提供され、この場合、上記に記載されるようなポリペプチドまたはそのアゴニストを、そのような処置を必要としている対象に投与することを含む。
【0075】
別の局面において、本発明は、血管形成関連障害を処置するための医薬品の製造における、上記に記載されるようなポリペプチドまたはそのアゴニストの使用を提供する。そのような障害の例が上記に記載される。
【0076】
さらなる局面において、好適なアゴニストにはまた、任意の当該血管形成遺伝子の機能を模倣し得るペプチド、ホスホペプチド、または小さい有機化合物もしくは無機化合物が含まれ得るか、あるいは機能を正常なレベルに回復させることができる任意の当該血管形成遺伝子に対する抗体が含まれ得る。
【0077】
治療的適用のために好適なペプチド、ホスホペプチド、または小さい有機化合物もしくは無機化合物は、下記に記載されるような薬物スクリーニング適用において本発明の核酸およびポリペプチドを使用して同定することができる。
【0078】
さらなる実施形態において、本発明のアゴニスト、アンタゴニスト、相補的配列、核酸分子、タンパク質、抗体またはベクターはいずれも、他の適切な治療剤との組み合わせで投与することができる。適切な薬剤の選択は、従来の薬学原理に従って当業者によって行うことができる。治療剤の組み合わせは相乗的に作用して、上記に記載される様々な障害の処置または防止をもたらし得る、この方法を使用して、それぞれの薬剤のより少ない用量による治療効力を可能にすることができ、従って、有害な副作用に対する可能性を低下させることができる。
【0079】
上記に記載された治療方法はいずれも、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、そして最も好ましくはヒトなどの哺乳動物を含む、そのような治療を必要としている任意の対象に適用することができる。
【0080】
薬物スクリーニング
本発明のさらに別の局面により、本発明の核酸分子、ならびに本発明のペプチド、特に、任意の精製された当該血管形成ポリペプチドまたはそのフラグメント、そしてこれらを発現する細胞は、血管形成関連障害を処置するための様々な技術における候補薬学的化合物のスクリーニングのために有用である。
【0081】
なおさらに、本発明は、ハイスループットスクリーニング技術が用いられる使用を提供する。
【0082】
本発明に従ってスクリーニングされ得る化合物には、ペプチド(可溶性ペプチドなど)、ホスホペプチド、および小さい有機分子または無機分子(天然物または合成されたケミカルライブラリーおよびペプチドミメティクスなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
1つの実施形態において、スクリーニングアッセイには、当該血管形成ポリペプチドまたはフラグメントを発現させる組換え核酸分子で安定的に形質転換されている真核生物宿主細胞または原核生物宿主細胞を競合的結合アッセイにおいて利用する、細胞に基づくアッセイが含まれ得る。結合アッセイでは、当該ポリペプチドまたはそのフラグメントと、試験されている化合物との間における複合体の形成について測定されるか、あるいは、試験されている化合物が、当該ポリペプチドまたはそのフラグメントとその相互作用因子またはリガンドとの間における複合体の形成を妨げる程度が測定される。
【0084】
細胞に基づかないアッセイもまた、本発明のポリペプチドとその相互作用因子との間の結合を妨害する化合物を同定するために使用することができる。様々なそのようなアッセイがこの分野では知られており、これらには、例えば、AlphaScreen技術(PerkinElmer Life Sciences、MA、米国)が含まれる。この適用は、それぞれの相互作用パートナーが抗体を介して別個のビーズに結合されるようなビーズの使用に依拠している。各パートナーの相互作用はビーズを近くに接近させ、その結果、レーザー励起により、光シグナルを放射する蛍光基を最終的には生じさせる多数の化学反応が開始させられる。当該血管形成ポリペプチドがその相互作用因子と結合することを妨げる候補化合物は、光放射をもたらさないので、応答性化合物の同定および単離を可能にする。
【0085】
ハイスループット薬物スクリーニング技術ではまた、国際特許出願公開WO84/03564に記載されるような方法を用いることができる。固体基体上で合成された小ペプチド試験化合物を当該血管形成ポリペプチドの結合および洗浄によってアッセイすることができる。その場合、結合した当該血管形成ポリペプチドは、この分野で広く知られている方法によって検出される。この技術の1つの変法において、精製された血管形成ポリペプチドを、相互作用する試験化合物を同定するために、プレートに直接コーティングすることができる。
【0086】
薬物スクリーニングに対するさらなる方法では、本発明の任意の当該血管形成遺伝子に変異を有する宿主真核生物細胞株の使用が伴う。宿主細胞株はまた、ポリペプチドレベルで不完全である。当該血管形成遺伝子の遺伝子発現が調節(すなわち、過剰発現または過小発現またはスイッチオフ)され得る他の細胞株を使用することができる。宿主細胞株または宿主細胞は様々な薬物化合物の存在下で成長させられ、そして、その化合物が、不完全な細胞の成長を調節することができるかどうかを明らかにするために、宿主細胞の成長速度が測定される。
【0087】
本発明の血管形成ポリペプチドはまた、コンビナトリアルライブラリー技術の結果として開発された化合物をスクリーニングするために使用することができる。これにより、ポリペプチドの活性を調節するその能力について非常に多数の異なる物質を試験するための方法が提供される。ペプチドライブラリーの使用が好ましく(国際特許出願公開WO97/02048を参照のこと)、そのようなライブラリーおよびその使用はこの分野では知られている。
【0088】
ポリペプチド機能の調節剤として同定される物質は、本質的にはペプチドまたは非ペプチドであり得る。非ペプチドの「小分子」は、多くの場合、多くのインビボ薬学的適用のために好ましい。また、そのような物質の模倣体または模擬体を薬学的使用のために設計することができる。既知の薬学的に活性な化合物(「リード」化合物)に基づく模擬体の設計は、新規な医薬品を開発するための一般的な方法である。これは、元の活性な化合物が合成困難であるか、もしくは合成に費用がかかる場合、または元の活性な化合物が不適当な投与方法をもたらす場合には望ましいことが多い。模擬体の設計において、標的特性を決定する際に重要である元の活性な化合物の特定の部分が同定される。化合物の活性な領域を構成するこれらの部分または残基はそのファルマコアとして知られている。ファルマコアが見出されると、ファルマコアの構造が、x線回折データおよびNMRを含む様々な情報源から得られるデータを使用してその物理的性質に従ってモデル化される。その場合、ファルマコアを模倣する化学基が付加され得るテンプレート分子が選択される。選択は、模擬体が容易に合成され、かつ薬学的に受容可能であることが考えられ、かつリード化合物の生物学的活性をインビボで分解せず、保持するように行うことができる。さらなる最適化または修飾を、インビボでの試験または臨床試験のために有用な1つ以上の最終的な模擬体を選択するために行うことができる。
【0089】
標的特異的な抗体を単離し、その後、その結晶構造を解明することもまた可能である。原理的には、この方法により、その後の薬物設計が上記に記載されるように基づき得るファルマコアが得られる。機能的な、薬理学的に活性な抗体に対する抗イディオタイプ抗体(抗id)を作製することによってタンパク質結晶学を完全に回避することが可能である場合がある。鏡像の鏡像として、抗idの結合部位は、元の結合部位のアナログであることが予想される。その後、抗idは、化学的または生物学的に製造されたペプチドバンクからペプチドを単離するために使用することができる。
【0090】
薬物スクリーニングに対する別の代替的な方法は、構造に基づく合理的な薬物設計に依拠している。本発明のポリペプチドの三次元構造、またはこれらのポリペプチドを含み得るタンパク質複合体の三次元構造を決定することにより、生物学的に活性なリード化合物を同定するための、構造に基づく薬物設計が可能になる。
【0091】
三次元構造モデルは、多数の適用(そのいくつかには、x線結晶学およびNMRなどの実験的モデルが含まれる)によって、かつ/またはタンパク質データバンク(PDB)などの構造データべースから得られる情報を使用するインシリコ研究から作製することができる。また、三次元構造モデルは、ポリペプチドの一次配列に基づく多数の知られているタンパク質構造予測技術(例えば、SYBYL−Tripos Associated、St.Louis、MO)、デノボ(de novo)タンパク質構造設計プログラム(例えば、MODELER(MSI Inc.、San Diego、CA)またはMOE(Chemical Computing Group、Montreal、カナダ)、またはアプイニシオ(ab initio)法(例えば、米国特許第5331573号および同第5579250号を参照のこと)を使用して決定することができる。
【0092】
ポリペプチドまたはポリペプチド複合体の三次元構造が決定されると、構造に基づく薬物発見技術を、これらの三次元構造に基づいて生物学的に活性な化合物を設計するために用いることができる。様々なそのような技術がこの分野で知られており、これらには、DOCK(カリホルニア大学、San Francisco)またはAUTODOCK(Scripps Research Institute、La Jolla、California)が含まれる。コンピューターによるドッキング(docking)プロトコルにより、予測されたタンパク質モデルに基づいて、タンパク質活性のために重要である考えられる活性部位(1つまたは複数)が同定される。分子データベース、例えば、Available Chemicals Directory(ACD)などが、その後、このタンパク質モデルを補う分子についてスクリーニングされる。
【0093】
これらの方法などの方法を使用して、可能性のある臨床薬物候補を同定することができ、そして典型的な「ウエット・ラボ(wet lab)」薬物スクリーニング方法論に伴う時間および費用を削減するためにコンピューターによりランク付けすることができる。
【0094】
上記に記載されるスクリーニング方法から同定された化合物は、これらの化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物が本発明の一部を形成するように、本発明の一部を形成する。
【0095】
薬学的調製物
上記に示されるようなスクリーニングアッセイから同定される化合物は、血管形成に関連する障害を処置または改善するために、治療効果的な用量で患者に投与することができる。治療効果的な用量は、障害の症状の改善をもたらすために十分な化合物の量を示す。
【0096】
そのような化合物の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法によって決定することができる。これらの研究から得られたデータは、その後、ヒトにおいて使用される投薬量の範囲を定める際に使用することができる。
【0097】
本発明に従って使用される薬学的組成物は、広く知られている1つ以上の生理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤または安定化剤を使用して従来の様式で配合することができる。受容可能なキャリアまたは賦形剤または安定化剤は、用いられる投薬量および濃度で非毒性であり、これらには、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマーを含む結合剤;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストランを含む、単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/または、ツイーン、プルロニクスもしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0098】
本発明に従って使用される薬学的組成物の配合は、提案される投与経路に基づく。投与経路には、吸入、吹入(口腔または鼻のいずれかを介する)、経口投与、口内投与、直腸投与または非経口投与が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0099】
診断および予後での適用
本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つに異常が存在し、これにより、遺伝子の活性および/または発現が変化して、血管形成関連障害を生じさせるならば、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、これらの障害の診断もしくは予後のために使用することができるか、またはそのような障害に対する素因である。そのような障害の例には、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患、および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患が含まれるが、これらに限定されない。診断または予後は、適切な治療的介入を開始する目的で疾患状態の重篤度またはタイプまたは段階を決定するために使用することができる。
【0100】
本発明の別の実施形態において、診断目的または予後目的のために使用され得るポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、ゲノムDNA、ならびに相補的なRNA分子およびDNA分子が含まれる。ポリヌクレオチドは、血管形成遺伝子のいずれか1つにおける異常な発現または変異が疾患と相関し得る生検組織における遺伝子発現を検出および定量するために使用することができる。診断または予後のために使用されるゲノムDNAは、血液、組織生検物、手術標本または解剖材料に存在する細胞などの身体細胞から得ることができる。DNAは、特異的な配列を検出するために単離し、直接的に使用することができ、または分析に先立ってポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅することができる。同様に、RNAまたはcDNAもまた、PCR増幅とともに、またはPCR増幅を用いることなく使用することができる。特異的な核酸配列を検出するために、直接的なヌクレオチド配列決定、逆転写酵素PCR(RT−PCR)、特異的なオリゴヌクレオチドを使用するハイブリダイゼーション、制限酵素消化およびマッピング、PCRマッピング、RNAse保護、ならびに様々な他の方法を用いることができる。特定の配列に対して特異的なオリゴヌクレオチドを化学合成して、放射能標識しまたは非放射能的に標識し、そしてメンブランもしくは他の固体支持体に固定化されている個々のサンプルに対して、または溶液中で個々のサンプルに対してハイブリダイゼーションさせることができる。血管形成遺伝子のいずれか1つの存在もしくは非存在またはその過剰な発現を、その後、オートラジオグラフィー、蛍光測定または比色測定などの方法を使用して可視化することができる。
【0101】
特定の局面では、本発明のヌクレオチド配列は、関連する障害の存在、特に、前に言及された障害の存在を検出するアッセイにおいて有用であり得る。ヌクレオチド配列は、標準的な方法によって標識されて、ハイブリダイゼーション複合体を形成させるために好適な条件のもとで患者由来の体液サンプルまたは組織サンプルに加えることができる。好適なインキュベーション期間の後、サンプルは洗浄され、シグナルが定量され、そして標準値と比較される。患者サンプルにおけるシグナルの量が、コントロールのサンプルと比較して著しく変化している場合、変化したレベルのヌクレオチド配列がサンプルに存在することにより、関連する障害の存在が示される。そのようなアッセイはまた、動物研究において、臨床試験において特定の治療的処置法の効力を評価するために、または個々の患者の処置をモニターするために使用することができる。
【0102】
本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つにおける変異に関連する血管形成関連障害の診断または予後のための基礎を提供するために、当該遺伝子のヌクレオチド配列を、患者が変異遺伝子を発現しているかどうかを明らかにするために、正常な組織と疾患組織との間で比較することができる。
【0103】
本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つの異常な発現に関連する障害を診断するための基礎を提供するために、発現について正常または標準的なプロフィルが明らかにされる。これは、正常な対象(動物またはヒトのいずれか)から採取された体液または細胞抽出物を、当該血管形成遺伝子をコードする配列またはそのフラグメントと、ハイブリダイゼーションまたは増幅のために好適な条件のもとで一緒にすることによって達成することができる。標準的なハイブリダイゼーションは、正常な対象から得られた値を、既知量の実質的に精製されたポリヌクレオチドが使用される実験から得られた値と比較することによって定量することができる。血管形成遺伝子のいずれか1つの発現について正常または標準的なプロフィルを同定するための別の方法は、定量的RT−PCR研究によって行われる。正常な個体の身体細胞から単離されたRNA、特に、内皮細胞から単離されたRNAが逆転写され、そして当該遺伝子に対して特異的なオリゴヌクレオチドを使用するリアルタイムPCRが、遺伝子の正常な発現レベルを明らかにするために行われる。これらの例の両方で得られた標準値を、障害について症状を示す患者に由来するサンプルから得られた値と比較することができる。標準値からのずれが、障害の存在を明らかにするために使用される。
【0104】
障害の存在が明らかにされ、そして処置プロトコルが開始されると、ハイブリダイゼーションアッセイまたは定量的RT−PCR研究を、患者における発現レベルが、正常な対象において観測されるレベルの付近に至るかどうかを明らかにするために、定期的に繰り返すことができる。連続したアッセイから得られる結果を、数日から数ヶ月に及ぶ期間にわたる処置の効力を示すために使用することができる。
【0105】
本発明のさらなる局面により、本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つに関連する血管形成関連障害の診断もしくは予後における、またはそのような障害に対する素因としての、上記に記載されるような血管形成ポリペプチドの使用が提供される。
【0106】
診断アッセイまたは予後アッセイが任意の当該血管形成ポリペプチドに基づくことになる場合、様々な方法が可能である。例えば、診断または予後を、正常なタンパク質または変異タンパク質の電気泳動移動度の違いをモニターすることによって達成することができる。そのような方法は、電荷置換が存在する変異体、または挿入、欠失もしくは置換が、生じるタンパク質の電気泳動移動の著しい変化をもたらしている変異体を同定する際には特に有用である。あるいは、診断または予後は、正常なタンパク質または変異タンパク質のタンパク質分解的切断パターンの違い、様々なアミノ酸残基のモル比の違いに基づくことができ、または遺伝子産物の変化した機能を明らかにする機能的アッセイによって行うことができる。
【0107】
別の局面において、当該血管形成遺伝子産物と特異的に結合する抗体を、遺伝子の異常な発現を特徴とする障害の診断または予後のために、あるいは当該血管形成遺伝子もしくは当該血管形成タンパク質、またはアゴニスト、アンタゴニスト、またはその阻害剤で処置されている患者をモニターするためのアッセイにおいて使用することができる。診断目的または予後目的のために有用な抗体は、治療剤に関して上記に記載されたのと同じ様式で調製することができる。診断アッセイまたは予後アッセイには、ヒトの体液における当該タンパク質または細胞もしくは組織の抽出物における当該タンパク質を検出するために抗体および標識を利用する方法が含まれ得る。抗体は、修飾して、または修飾することなく使用することができ、また、レポーター分子を共有結合的または非共有結合的に結合することによって標識することができる。
【0108】
当該血管形成ポリペプチドを測定するための様々なプロトコル(これらには、ELISA、RIAおよびFACSが含まれる)がこの分野では知られており、これらは、変化した発現レベルまたは異常な発現レベルを診断するための基礎を提供する。発現について正常または標準的な値が、正常な哺乳動物対象(好ましくはヒト)から採取された体液または細胞抽出物を、当該タンパク質に対する抗体と、複合体形成のために好適な条件のもとで一緒にすることによって明らかにされる。標準の複合体形成の量を、様々な方法によって、好ましくは、吸光光度法手段によって定量することができる。生検組織に由来する対象サンプル、コントロールサンプルおよび疾患サンプルにおいて発現するタンパク質の量が標準曲線と比較される。標準値と対象値との間におけるずれにより、疾患を診断するためのパラメーターが示される。
【0109】
個体が障害に関して診断または予後判定されると、効果的な処置を上記に記載されるように開始することができる。制御されていない血管形成または増強された血管形成を特徴とする血管形成関連疾患の処置では、拡大する脈管構造を阻害する必要がある。これには、血管形成を促進する本発明の当該血管形成遺伝子または当該血管形成タンパク質を阻害することが伴う。さらに、処置ではまた、血管形成を阻害することがその正常な役割であるが、その活性が罹患個体において低下しているか、または存在していない本発明の当該血管形成遺伝子または当該血管形成タンパク質の発現または機能を刺激する必要がある場合がある。
【0110】
阻害された血管形成または低下した血管形成を特徴とする血管形成関連疾患の処置では、血管の拡大を増強または促進する方法が望ましい。これは、本質的には上記に記載されるような方法を使用して達成することができ、しかし、血管形成を促進することがその正常な役割であるが、その活性が罹患個体において低下しているか、または存在していない当該血管形成遺伝子または当該血管形成タンパク質の発現または機能を刺激することを伴う。あるいは、血管形成を制限する遺伝子またはタンパク質を阻害することもまた、処置に対する方法であり得る。
【0111】
マイクロアレイ
さらなる実施形態において、本明細書中に記載されるポリヌクレオチド配列のいずれかに由来する完全なcDNAまたはオリゴヌクレオチドまたはより長いフラグメントは、マイクロアレイにおけるプローブとして使用することができる。マイクロアレイは、非常に多数の遺伝子の発現レベルを同時にモニターするために、そして遺伝子の変化体および変異および多形を同定するために使用することができる。この情報は、遺伝子の機能を明らかにするために、障害の遺伝的基礎を理解するために、障害を診断または予後判定するために、そして治療剤を開発し、かつその活性をモニターするために使用することができる。マイクロアレイは、この分野で知られている方法を使用して調製し、使用し、そして分析することができる(例えば、Schena他(1996);Heller他(1997)を参照のこと)。
【0112】
形質転換された宿主
本発明はまた、本発明の核酸分子で形質転換された遺伝子改変(ノックアウト、ノックインおよび遺伝子導入)の非ヒト動物モデルの作製を提供する。これらの動物は、当該血管形成遺伝子の機能を研究するために、これらの遺伝子に関連する疾患の機構を研究するために、候補薬学的化合物をスクリーニングするために、タンパク質または変異タンパク質を発現する外植された哺乳動物細胞培養物を作製するために、そして可能性のある治療的介入を評価するために有用である。
【0113】
本発明の動物モデルにおける使用のために好適である動物種には、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、および非ヒト霊長類(サルおよびチンパンジーなど)が含まれるが、これらに限定されない。最初の研究のためには、遺伝子改変されたマウスおよびラットが、これらの動物のノックイン体またはノックアウト体または遺伝子導入体を作製することが比較的容易であるために、それらの管理が容易であるために、そしてそれらの寿命がより短いために、非常に望ましい。ある種の研究のためには、遺伝子導入された酵母または非脊椎動物が、迅速なスクリーニングを可能にし、そしてはるかにより容易な取扱いを提供するために、好適であり、かつ好ましい場合がある。より長期間の研究のためには、非ヒト霊長類が、ヒトとのその類似性のために望ましい場合がある。
【0114】
本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つに基づく動物モデルを作製するために、いくつかの方法を用いることができる。これらには、特異的な変異を相同的な動物遺伝子において生じさせること、野生型のヒト遺伝子および/またはヒト化された動物遺伝子を相同的組換えによって挿入すること、野生型または変異型または人工のプロモーターエレメントを使用するゲノムcDNA構築物またはミニ遺伝子cDNA構築物として変異型ヒト遺伝子(1個または多数)を挿入すること、あるいは内因性遺伝子の人為的に改変されたフラグメントを相同的組換えによって挿入することが含まれる。改変には、変異停止コドンを挿入すること、DNA配列を欠失すること、またはCreリコンビナーゼなどの酵素により認識される組換えエレメント(lox p部位)を含めることが含まれる。
【0115】
インビボでの遺伝子機能の増大を研究する目的で遺伝子導入マウスを作製するために、任意の当該血管形成遺伝子を、卵母細胞顕微注入などの標準的な技術を使用してマウスの生殖系列に挿入することができる。遺伝子機能の増大は、遺伝子およびそのタンパク質産物の過剰発現、または研究中の遺伝子の変異の遺伝的相補を意味し得る。卵母細胞注入の場合、1コピー以上の野生型遺伝子または変異型遺伝子を受精直後のマウス卵母細胞の前核に挿入することができる。この卵母細胞は、その後、偽妊娠の里親に再移植される。その後、生産マウスを、当該ヒト血管形成遺伝子配列の存在についての尾DNAの分析を使用して組み込み体についてスクリーニングすることができる。導入遺伝子は、YACもしくはBACもしくは他の染色体DNAフラグメントとして注入された完全なゲノム配列、または、天然のプロモーターもしくは異種プロモーターのいずれかを有するcDNA、または、コード領域のすべてと、最適な発現のために必要であることが見出されている他のエレメントとを含有するミニ遺伝子のいずれかであり得る。
【0116】
ノックアウトマウスまたはノックインマウスを作製する場合、マウスの胚性幹(ES)細胞における相同的組換えによる遺伝子標的化を適用することができる。ノックアウトマウスが、遺伝子機能の喪失をインビボで研究するために作製され、一方、ノックインマウスにより、機能の増大の研究、または特異的な遺伝子変異の影響を研究することが可能になる。ノックインマウスは遺伝子導入マウスと類似しているが、組み込み部位およびコピー数が前者では明らかにされる。
【0117】
ノックアウトマウスを作製する場合、遺伝子標的化ベクターを、マウスのゲノムにおいて当該血管形成遺伝子のタンパク質コード配列が欠失(ノックアウト)されるように設計することができる。これに対して、ノックインマウスは、当該血管形成遺伝子を含有する遺伝子標的化ベクターがマウスゲノム内の決められた遺伝子座に組み込まれ得ることによって作製することができる。両方の適用の場合、相同的組換えが、相同的なDNA配列を認識し、それらを二重乗換えによって交換する特異的なDNA修復酵素によって触媒される。
【0118】
遺伝子標的化ベクターは、通常的には、エレクトポレーションを使用してES細胞に導入される。ES細胞組み込み体が、その後、標的化ベクターに存在する抗生物質耐性遺伝子によって単離され、続いて、遺伝子型が、研究中の遺伝子が目的とする遺伝子座に組み込まれているES細胞クローンを同定するために決定される。その後、適切なES細胞が、新しいマウス系統を作製するために生殖系列を介して伝達される。
【0119】
遺伝子の除去が早期の胚致死性をもたらす場合には、条件的遺伝子標的化を用いることができる。これにより、遺伝子を時間的かつ空間的に制御された様式で欠失させることができる。上記のように、適切なES細胞は、新しいマウス系統を作製するために生殖系列を介して伝達され、しかしながら、遺伝子の実際の欠失は、組織特異的な様式または時間により制御された様式で成体マウスにおいて行われる。条件的遺伝子標的化は、最も一般的には、cre/loxシステムの使用によって達成される。酵素creは、loxPに接する(またはフロックスする(floxed))DNAがcreによって認識されて切り出されるように34塩基対のloxP配列を認識することができる。遺伝子導入マウスにおける組織特異的なcre発現により、組織特異的なノックアウトマウスの作製が、遺伝子標的化されたフロックスマウスをcre遺伝子導入マウスと交配することによって可能になる。ノックアウトは、「欠失体」マウスを使用して、または誘導可能なcre遺伝子を有する遺伝子導入マウス(テトラサイクリン誘導性cre遺伝子を有する遺伝子導入マウスなど)を使用して、どの組織でも行うことができ(Schwenk他、1995)、あるいは、ノックアウトは、例えば、CD19−creマウスの使用によって組織特異的にすることができる(Rickert他、1997)。
【0120】
本発明のさらに別の局面により、候補薬学的化合物をスクリーニングするための、遺伝子改変された非ヒト動物の使用が提供される。
多数の先行技術刊行物が本明細書中に示されているが、この参照は、これらの文書のいずれかが、この分野またはオーストラリアまたは任意の他国における共通する一般的な知識の一部を形成するということを認めることを意味しないことが理解されることは明かである。本明細書および請求項の全体を通して、用語「含む(“comprise”、“comprises”および“comprising”)」は、文脈が別に要求する場合を除き、非排他的意味で使用される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1はバーチャルノーザン発現分析によって確認されるような、血管形成時における多数の血管形成遺伝子の発現パターンの類別例を示す。各ブロットは、同一のcDNA量がアッセイの示された時点の間でのブロット構築において負荷されたことを確認するためにコントロールGAPDH1遺伝子でプローブされた。
【図2】図2はBNO69遺伝子の詳細なバーチャルノーザン発現分析を示す。上段のパネルは、ホルボールミリスタートアセタート(PMA)±(α2β1)抗体(AC11)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)または腫瘍壊死因子(TNF)でヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を刺激した後のインビトロモデルにおける様々な時点でのBNO69の発現レベルを示す。下段のパネルは、K562(赤白血病)、KG−1a(急性骨髄性白血病)、Jurkat(急性T細胞白血病)、HeLa(子宮頸部腺ガン)、HepG2(肝臓腫瘍)、L1M12−15(結腸直腸ガン)、MDA−MB−231(乳ガン)、DU145(前立腺ガン)、HEK293(胚性腎臓)、HUSMC(初代臍静脈平滑筋細胞)±P(PMA)を含む多数のヒト細胞株におけるBNO69の発現レベルを示す。HUVEC T0およびHUVEC T3は、それぞれ、0時間および3時間の時間で血管形成の3−Dモデルから集められたHUVECを表す。
【図3】図3はBNO96遺伝子の詳細なバーチャルノーザン発現分析を示す。上段のパネルは、ホルボールミリスタートアセタート(PMA)±(α2β1)抗体(AC11)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)または腫瘍壊死因子(TNF)でヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を刺激した後のインビトロモデルにおける様々な時点でのBNO96の発現レベルを示す。下段のパネルは、K562(赤白血病)、KG−1a(急性骨髄性白血病)、Jurkat(急性T細胞白血病)、HeLa(子宮頸部腺ガン)、HepG2(肝臓腫瘍)、L1M12−15(結腸直腸ガン)、MDA−MB−231(乳ガン)、DU145(前立腺ガン)、HEK293(胚性腎臓)、HUSMC(初代臍静脈平滑筋細胞)±P(PMA)を含む多数のヒト細胞株におけるBNO96の発現レベルを示す。HUVEC T0およびHUVEC T3は、それぞれ、0時間および3時間の時間で血管形成の3−Dモデルから集められたHUVECを表す。
【図4】図4はレトロウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)機能のBNO69インビトロ調節を示す。HUVECの増殖が直接的な細胞計数によって3日間の期間にわたって測定された。平均±SEMが示される。HUVECにおけるアンチセンスBNO69(ASBNO69R)の過剰発現はその増殖を阻害する。EV:空ベクターのコントロール。
【図5】図5はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)機能のBNO69インビトロ調節を示す。HUVECにおけるアンチセンスBNO69(ASBNO69A)の過剰発現は細胞増殖に対する阻害効果をもたらす。
【図6】図6はレトロウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)機能のBNO69インビトロ調節を示す。空ベクター(EV)コントロールまたはアンチセンスBNO69(ASBNO69R)のいずれかでレトロウイルスによりトランスフェクションされた内皮細胞の細胞形態学が示される。
【図7】図7はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現に基づく細胞増殖アッセイを示す。細胞には、ベクターのみのコントロール(EV)またはアンチセンスBNO96(ASBNO96)のいずれかが感染させられ、細胞が48時間後に集められた。細胞増殖が、細胞を置床した3日後に行われた比色測定法でのMTTアッセイによって測定された(平均±SEM、n=4)。
【図8】図8はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現の結果としての細胞遊走に対する影響を示す。細胞には、ベクターのみのコントロール(EV)またはアンチセンスBNO96(ASBNO96)のいずれかが感染させられ、そして薬剤無し(nil)または走化性刺激因子フィブロネクチン(Fn)のいずれかに向う細胞の遊走が18時間後〜24時間後に測定された。
【図9】図9はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現の結果としてのMatrigel上での毛細管形成に対する影響を示す。細胞は、ベクターのみのコントロール(EV)またはアンチセンスBNO96(ASBNO96)のいずれかが感染させられ、24時間の期間にわたって管形成についてアッセイされた。写真が20時間後に撮影された。AおよびB:管の低倍率写真;CおよびD:管の高倍率写真。
【図10】図10はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現の結果としてのコラーゲンゲル上での毛細管形成に対する影響を示す。細胞は、ベクターのみのコントロール(EV)またはアンチセンスBNO96(ASBNO96)のいずれかが感染させられ、18時間〜24時間の期間にわたって管形成についてアッセイされた。細胞がゲルの中を遊走していたので、写真が3時間後に撮影された。M:遊走細胞。これらは、非遊走細胞よりも平らで、かつ光屈折が少ないようである。NM:非遊走細胞。これらの細胞は丸く、光屈折性である。
【図11】図11はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現の結果としての腫瘍壊死因子(TNF)誘導によるE−セレクチン発現に対する影響を示す。細胞は、ベクターのみのコントロール(EV)またはアンチセンスBNO96(ASBNO96)のいずれかが感染させられ、48時間成長させられた。TNFは、抗E−セレクチン抗体を使用して細胞表面のE−セレクチン発現について染色する前に4時間にわたって加えられた。検出はフィコエリトリンコンジュゲート化抗マウス抗体によって行われた。平均蛍光強度(MFI)が示される。
【発明を実施するための形態】
【0122】
実施例1: インビトロでの毛細管形成
血管形成のインビトロモデルは、本質的にはGamble他(1993)に記載される通りである。アッセイは、ホルボールミリスタートアセタート(PMA)および抗インテグリン(α2β1)抗体RMACIIの刺激のもと、コラーゲンにおいて行われた。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)が、すべての実験において、2代〜4代の継代の間で使用された。
【0123】
細胞を塊状培養物から集め(t=0)、コラーゲンゲルに刺激とともに再置床し、その後、アッセイ開始後の0.5時間、3.0時間、6.0時間および24時間でコラーゲンゲルから集めた。これらの時点は、大きな形態学的変化がこれらの段階で生じるために選ばれた。簡単に記載すると、0.5時間までに、細胞はコラーゲンマトリックスに接着し、ゲル内への遊走を開始している。3.0時間までに、小さい細胞内小胞が視認される。6.0時間までに、これらの小胞は合体して一緒になり、膜に結合した液胞を形成し、そして短い出芽の形態で細胞がゲルに侵入している。この時間以降、これらの液胞は形質膜と融合し、従って、細胞間空間を拡大して、管腔を生じさせる(Meyer他、1997)。これらのより大きい液胞が形成されることが、管腔形成の必須必要条件である(Gamble他、1999)。24時間までに、毛細管の全体的な吻合ネットワークが形成されており、そして退化し始めている。
【0124】
実施例2: RNA単離、cDNAの合成および増幅
示された時点で集められた細胞は、Trizol試薬(Gibco BRL)を製造者の条件に従って使用して総RNAを単離するために使用された。SMART(RNA転写物の5’端でのスイッチング機構)技術を使用して、少量の総RNAを、cDNAサブトラクションを行うことを可能にするために十分なcDNAに変換した(下記参照)。これは、SMART−PCR cDNA合成キット(Clontech使用者マニュアルPT3041−1)を製造者の推奨法に従って使用して達成された。SMART−PCR cDNA合成プロトコルにより、大多数が全長のcDNAが得られ、これらを、続いて、cDNAサブトラクションのためにPCR増幅した。
【0125】
実施例3: サプレッション・サブトラクティブ・ハイブリダイゼーション(SSH)
SSHを、選択された時点によって規定されるcDNA集団の間においてアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのいずれかが行われたcDNAについて濃縮するために、SMART増幅されたcDNAに対して行った。この技術によりまた、調節されたcDNAの「正規化」を可能にし、それにより、存在量が少ないcDNA(すなわち、発現が十分でないが重要な遺伝子)をより容易に検出可能にした。これを行うために、PCR−Select cDNA合成キット(Clontech使用者マニュアルPT3041−1)およびPCR−Select cDNAサブトラクションキット(Clontech使用者マニュアルPT1117−1)を製造者の条件に基づいて使用した。これらの手法はサブトラクティブハイブリダイゼーションおよびサプレッションPCR増幅に依拠した。SSHを下記の集団の間で行った:0時間〜0.5時間;0.5時間〜3.0時間;3.0時間〜6.0時間;6.0時間〜24.0時間。
【0126】
実施例4: cDNAクローンのディファレンシャルスクリーニング
SSH後、標準的な技術(Sambrook他、1989)を使用して、cDNAフラグメントをEagIで消化し、そしてpBluescriptKS+内の適合し得る唯一のNotI部位にクローン化した。これにより、それぞれの時間期間に対するフォワードサブトラクションライブラリーおよびリバースサブトラクションライブラリーが得られた。PCR−Selectディファレンシャルスクリーニングキット(Clontech使用者マニュアルPT3138−1)に概略されるディファレンシャルスクリーニング法を使用して、調節されたcDNAを非調節cDNAから同定した。これを行うために、cDNAアレイを、クローンのプラスミドDNAを四連でナイロンフィルターに配置することによって作製した。約900個の個々のクローンをcDNAアレイによって分析した。これらのアレイを、続いて、
a)サブトラクションされていない時間1でのcDNA(これは、時間1で存在するmRNAを表す)
b)サブトラクションされていない時間2でのcDNA(これは、時間2で存在するmRNAを表す)
c)フォワードサブトラクションcDNA(これは、時間2でアップレギュレーションされているmRNAを表す)
d)リバースサブトラクションcDNA(これは、時間1でダウンレギュレーションされているmRNAを表す)
でプローブした。
【0127】
すべてのハイブリダイゼーションは42℃でExpressHyb溶液(Clontech)において行われた。メンブランは、キットの説明書に従ってハイブリダイゼーション後に洗浄された。
【0128】
cDNAアレイハイブリダイゼーションに基づいて示差的に発現していることが明らかにされたcDNAクローンを続いて配列決定した。その後、インシリコデータベース分析を、配列決定された各クローンについて情報を得る目的で、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)におけるヌクレオチドデータベースおよび遺伝子データベースに存在する配列に対する相同性を明らかにするために使用した。さらなる分析のためのクローンの選択は、相同性検索から推定されるような予測される機能に基づいた。
【0129】
表1および表2には、配列決定された示差的に発現するクローンに対する情報が提供される。表1には、以前には特徴付けられなかった遺伝子または新規な遺伝子を表すクローンが含まれ、一方、表2には、以前には血管形成と関連していない以前に同定された遺伝子に対応するクローンが含まれる。また、血管形成のプロセスに関与することが以前には示されている多数の遺伝子も同定された。これらのクローンが同定されたことは、用いられた血管形成遺伝子同定法が有効であることの原理的な有効性または証拠を提供しており、そして、表1および表2に示されるクローンがさらなる血管形成遺伝子の候補であることを示唆している。
【0130】
表1からの一例が、655個のアミノ酸からなる新規なタンパク質をコードするBNO69である。このクローンの全長配列の分析により、GTPase活性化タンパク質(GAP)ドメインの存在が示された。GAPドメインは、Ras GTPase、Rho GTPase、Cdc2 GTPaseおよびRac GTPaseを含む、GTP結合タンパク質の重要な調節因子である一群のタンパク質に見出されている。これらのGTPaseは、細胞の運動性、接着、細胞質分裂、増殖、分化およびアポトーシスを含む多くの生理学的プロセスに関係している(Van AelstおよびD’Souza−Schorey(1997);Ridley(2001)に総説される)。Rho様GTPaseは、不活性なGDP結合状態と活性なGTP結合状態との間で循環する。これらの2つの形態の間における変換は、主に、2つのタイプのタンパク質によって調節される。それらは、結合したGDPをGTPに交換することを増強するグアニン交換因子(GEF)によってアップレギュレーションされ、そして結合したGTPを加水分解する固有速度を増大させるGTPase活性化タンパク質(GAP)によってダウンレギュレーションされる。GTPが負荷されたとき、Rho GTPaseは、一組の下流のエフェクターと結合する能力を獲得し、これにより、例えば、様々な細胞骨格再配置を生じさせる。
【0131】
表2からの一例がBNO96遺伝子である。cDNAクローン23(BNO96)を配列決定することにより、このクローンがGタンパク質のガンマ12サブユニット(GNG12)と同一であることが明らかにされた。ヘテロ三量体のGタンパク質は、細胞表面受容体から細胞エフェクターへのシグナル伝達に関与する。Gタンパク質は、アルファ(α)サブユニット、ベータ(β)サブユニットおよびガンマ(γ)サブユニットから構成される。刺激されたとき、αサブユニットが複合体から解離し、そしてαサブユニットおよびβγサブユニットの両方が多数のエフェクターを活性化して、多くの細胞内シグナルを生じさせることができる。
【0132】
現在、6個の異なるβサブユニットおよび12個の異なるγサブユニットが同定されている。βγサブユニットは強固に会合し、非常に安定な二量体を形成しているので、それらは、今日まで、機能的ユニットとして見なされている。
【0133】
GNG12は、広く発現し、線維芽細胞および平滑筋細胞に多いことが報告されている(Ueda他、1999)。GNG12は、プロテインキナーゼCに対する基質であり、そして、PMA、LPA(リゾホスファチジン酸)、増殖因子および血清などの作用因子で刺激された後、リン酸化される(Asano他、1998)。GNG12はまた、F−アクチンと会合する(Ueda他、1997)。
【0134】
以前の報告では、GNG12単独の過剰発現はNIH−3T3線維芽細胞に対して何ら影響しないことが示されている。しかし、β1γ12二量体の過剰発現は、細胞の円形化、ストレス繊維の破壊、および細胞遊走の増強を誘導した。GNG12のリン酸化が、細胞運動性に対するその作用のために要求される(Yasuda他、1998)。
【0135】
BNO69遺伝子およびBNO96遺伝子に関する得られる情報に基づいて、そして、両遺伝子が血管形成時に示差的に発現していることが本発明において示されたということを考えれば、これらの遺伝子は、血管形成と関連する機能をそれらが発揮していることと一致する特徴を有するという示唆がもたらされた。この理由から、これらはさらに分析された。
【0136】
実施例5: バーチャルノーザンブロット分析
選択されたクローンの機能的分析の前に、表1および表2に示されるクローン(BNO69およびBNO96を含む)のcDNAアレイ分析から観測される示差的発現をバーチャルノーザンブ分析によって確認した。
【0137】
各時点に由来する増幅されたcDNAをアガロース/EtBrゲルで電気泳動し、サザン転写を確立された技術(Sambrook他、1989)に従ってcDNAをナイロンメンブランに転写した。すべてのcDNAクローン挿入物を、MegaPrime DNA標識システム(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して32Pで標識し、ハイブリダイゼーションを製造者の説明書に従ってExpressHyb溶液(Clontech)において行った。
【0138】
結果に基づき、クローンを調節パターンのそれらのタイプに従って類別化した(図1ならびに表1および表2)。今日までに同定された20個の新規な遺伝子の中で、9個が血管形成時に調節されることが確認され、4個が、バーチャルノーザンブロットで検出できないシグナルをもたらし、残りのクローンは、バーチャルノーザンブロットに基づく発現の調節を示さなかった。同様に、以前には血管形成と関連しなかった94個の既知遺伝子の中で、59個が、血管形成モデルから示差的に調節されることが確認された。示差的な発現を示さなかったクローン(クラスF)、または検出可能な結果をバーチャルノーザンでもたらさなかったクローンは、それでもなお、血管形成に関与すると考えられ、しかしながら、さらなる特徴づけが必要である。
【0139】
実施例6: 細胞および刺激の特異性
示差的に発現しているクローンをさらに特徴づけ、そして血管形成におけるそれらの役割を確認するために、バーチャルノーザンブロットを再び使用して、特異的な増殖因子を用いて単層培養物における細胞タイプ発現特異性およびそれらの刺激を明らかにした。内皮細胞を2次元(2−D)コラーゲンマトリックスに置床し、そして血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、PMA+ACII、またはPMA単独で、0.5時間、3.0時間、6.0時間および24時間にわたって刺激した。内皮細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞の初代培養物、ならびに腫瘍細胞株を集めた。RNAをすべての細胞から調製し、SMART−PCR cDNA合成キット(Clontech使用者マニュアルPT3041−1)を使用して、cDNAをバーチャルノーザン調製のために作製した。調製されたブロットを、その後、目的とする特異的な血管形成遺伝子の調節についてプローブした。結果が表1および表2に示される。
【0140】
これまでに分析されたクローンの中で、すべてが内皮細胞で発現していることが確認された。表1に示されたクローンの中で、シグナル特異性について分析された6個のクローンのうちの3個が、VEGF、FGFおよびPMAの存在によって影響を受けることが示された。2個のクローンは、培養中の内皮細胞を刺激した後、応答を全く示さず、そして残りのクローンは、示差的な発現が、2次元コラーゲンゲルに対してではなく、3次元コラーゲンゲルに対して特異的であることを示した。表2に示されるクローンの中で、シグナル特異性について分析された6個のクローンのうちの2個がVEGFおよびFGFの存在によって影響を受けることが示され、1個のクローンがPMAのみの存在によって影響を受けた。1個のクローンは、培養中の内皮細胞を刺激した後、応答を全く示さず、そして残る2個のクローンは、示差的な発現が、2次元コラーゲンゲルに対してではなく、3次元コラーゲンゲルに対して特異的であることを示した。
【0141】
図2および図3には、それぞれBNO69遺伝子およびBNO96遺伝子について、細胞および刺激の特異性の結果の詳細なまとめが示される。これらの結果は、両遺伝子が3次元(3−D)インビトロモデルの3時間の時点でアップレギュレーションされていることを示している。BNO69遺伝子は、FGF、VEGFおよびPMAに応答して発現される一方で、BNO96遺伝子の発現は、PMAに応答して生じるのみである。両遺伝子は、内皮細胞を含むいくつかの細胞タイプで発現している。
【0142】
実施例7: 血管形成遺伝子の分析
表1および表2に示されるような、血管形成プロセスに関係することが本研究によって明らかにされた遺伝子は、インビトロでの血管形成におけるそれらの役割を確認する目的でさらなる研究のために使用することができる。これを行うために、遺伝子の全長のコード配列を、レトロウイルスまたはアデノウイルスなどの好適な発現ベクターにセンス配向およびアンチセンス配向の両方でクローン化し、内皮細胞(EC)への感染のために使用することができる。レトロウイルス感染は、目的とする遺伝子を発現する長期のEC株をもたらし、これに対して、アデノウイルス感染は一過性の遺伝子発現をもたらす。感染細胞は、その後、血管形成における各遺伝子の役割を確認するために、増殖および毛細管形成を含む多数のECアッセイに供することができる。
【0143】
一例として、EC機能のインビトロ調節に対するBNO69およびBNO96の作用が明らかにされ、下記に記載される。
【0144】
EC機能のインビトロ調節−BNO69
内皮細胞の機能および血管形成に対するBNO69の作用には、レトロウイルスまたはアデノウイルスにより媒介される遺伝子移入によってBNO69のアンチセンスを内皮細胞にトランスフェクションすることが伴った。継代数が1代または2代であるヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)が過剰発現実験のために使用された。最初に、BNO69遺伝子を複製欠陥レトロウイルスpRufNeo(RaynerおよびGonda、1994)にクローン化した。市販の細胞株BINGを感染およびウイルス上清の製造のために使用した。レトロウイルスを感染させ、アンチセンスBNO69遺伝子を発現するHUVECクローンを、G418を使用してneo抵抗性について選択し、さらなる増殖および分析のためにまとめてプールした。プールされたクローンの増殖を直接的な細胞計数によって3日間の期間にわたって測定した。これらの実験の結果は、BNO69のアンチセンス構築物を感染させた細胞はその増殖能が低下していることを示した(図4)。
【0145】
HUVECにおけるアンチセンスBNO69のアデノウイルス媒介による発現を使用したその後の実験では、レトロウイルスシステムで観測された作用と類似する、細胞増殖に対する作用が示された。HUVECを、ベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO69のいずれかで感染させ、感染後24時間で集め、そして完全増殖培地でマイクロタイタープレートに置床した。細胞増殖を、以前の記載(Xia他、1999)のように、比色測定によるMTTアッセイによって測定した。アッセイを、細胞を置床した3日後に行った。これらの実験の結果は、HUVECの増殖が、アンチセンスBNO69のアデノウイルス媒介による発現によって阻害されることを示した(図5)。
【0146】
また、レトロウイルス感染システムおよびアデノウイルス感染システムではともに、BNO69に対するアンチセンス構築物を感染させた細胞の大きな特徴は細胞形態学の変化であった。細胞は、サイズが大きくなり、細胞質の範囲が増大しているようであった(図6)。細胞サイズの増大が、前方散乱および側方散乱の両方の測定により細胞のサイズおよび粒状性に関する情報がそれぞれ得られる蛍光活性化細胞分取装置での分析によって確認された。レトロウイルスシステムおよびアデノウイルスシステムではともに、これらのパラメーターが変化した。レトロウイルス感染細胞では、前方散乱が385(EV)および522(ASBNO69R)であり、一方、側方散乱が289(EV)および508(ASBNO69R)と測定された。アデノウイルス感染細胞では、前方散乱に対する測定値が444(EV)および533(ASBNO69R)であり、一方、側方散乱が417(EV)および500(ASBNO69R)と測定された。
【0147】
EC機能のインビトロ調節−BNO96
内皮細胞の機能および血管形成に対するBNO96の作用には、アデノウイルス遺伝子移入によってBNO96のアンチセンスを内皮細胞にトランスフェクションすることが伴った。最初に、アンチセンスBNO96を、(本質的には、http://coloncancer.org/protocol.htmに概略されるような)細菌における相同的組換えを用いて組換えアデノウイルスプラスミドとして作製した。得られたプラスミドを、ウイルスを拡大するために哺乳動物パッケージング細胞株293にトランスフェクションし、続いて、ウイルスを塩化セシウムグラジエントによって精製した。トランスフェクション効率を、上記のプロトコルに示されるように、緑色蛍光タンパク質およびプラーク形成ユニットによって評価した。
【0148】
最初に、アンチセンスBNO96の内皮細胞増殖に対する作用を明らかにした。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)をベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO96のいずれかで感染させ、48時間後に集めた。細胞増殖を、以前の記載(Xia他、1999)のように、比色測定によるMTTアッセイによって測定した。アッセイを、細胞を置床した3日後に行った(平均±SEM、n=4)。アンチセンスBNO96によるHUVECの感染は、細胞が完全増殖培地で培養されたとき、細胞増殖を阻害することが見出された(図7)。
【0149】
血管形成インビトロモデルの別の特徴は、マトリックス内への内皮細胞の遊走である。BNO96がこのプロセスに対して果たす作用を調べるために、細胞遊走実験を次に行った。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)をベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO96のいずれかで感染させ、薬剤無しまたは走化性刺激因子フィブロネクチンのいずれかに向う細胞の遊走を測定した。遊走アッセイは以前の記載(Leavesley他、1993)のように行われた。簡単に記載すると、50μg/mlでのフィブロネクチンを、走化性グラジエントとして作用させるための8.0μm Transwellフィルターの下面にコーティングした。細胞遊走を18時間後〜24時間後に評価した。これらの実験から得られる結果は、アンチセンスBNO96感染細胞が、走化性刺激因子としてのフィブロネクチンに向かう遊走から阻害されることを示した(図8)。
【0150】
血管形成プロセスの本質的な特徴の1つに、毛細管の形成がある。BNO96がこのプロセスにおいて果たす役割を、Matrigelモデルおよびコラーゲンゲルモデルを使用して測定した。Matrigelシステムでは、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)をベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO96のいずれかで感染させ、以前の記載(Cockerill他、1994)のように管形成についてアッセイした。簡単に記載すると、140μlの3x105細胞/mlをMatrigelに置床し、細胞再編成および管形成を24時間の期間にわたって評価した。アンチセンスBNO96感染細胞は、Matrigel毛細管アッセイでは毛細管を作ることができなかった(図9)。
【0151】
コラーゲンゲルモデルでは、HUVECをベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO96のいずれかで再び感染させ、以前の記載(Gamble他、1993)のように管形成について18時間〜24時間の期間にわたってアッセイした。アンチセンスBNO96の発現は、コラーゲンゲル内への細胞遊走(およびその後の管形成)の阻害をもたらした(図10)。
【0152】
次の実験では、BNO96の阻害が、血管形成に関連する機能に対して特異的である内皮細胞変化を生じさせるかどうかという疑問が検討された。E−セレクチンは、TNFおよびIL−1などの炎症性サイトカインによって誘導され、好中球−内皮細胞の相互作用を媒介する内皮細胞特異的接着分子である。従って、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現の結果としてのE−セレクチン発現に対する作用を明らかにした。使用された方法は、Litwin他(1997)に記載される通りであった。簡単に記載すると、HUVECをベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO96のいずれかで感染させ、48時間成長させた。この後、細胞を24ウエルトレーに移し、一晩インキュベーションした。0.5ng/mlで腫瘍壊死因子(TNF)を、抗E−セレクチン抗体を使用して細胞表面のE−セレクチン発現について染色する前に4時間にわたって加えた。検出は、フィコエリトリンコンジュゲート化抗マウス抗体によって行われた。これらの実験の結果は、アンチセンスBNO96遺伝子を過剰発現する細胞は、前炎症性刺激因子である腫瘍壊死因子に対して正常な様式で依然として応答して、接着分子E−セレクチンを誘導することを示した(図11)。このことは、内皮細胞の機能に対するアンチセンスBNO96の作用は選択的であることを示唆している。
【0153】
アンチセンスBNO96は、細胞増殖、遊走および毛細管形成を阻害することができ、しかし、TNF誘導によるE−セレクチン発現を阻害することができないということは、BNO96遺伝子のノックダウンが内皮細胞の血管形成能に特異的な影響を及ぼすことを示唆し得る。炎症反応に関係するその能力などの他の細胞機能は、(今日までに測定された機能に関する限り)正常であるようである。従って、BNO96遺伝子は、血管形成プロセスにおいて限定的な役割を果たしていると考えられ、血管形成に関連する病理を処置するために治療法を開発するための標的である。
【0154】
タンパク質相互作用研究
本発明の血管形成タンパク質(これには、BNO69およびBNO96が含まれる)のいずれか1つが既知のタンパク質および未知のタンパク質と結合する能力を調べることができる。酵母ツーハイブリッドシステムなどの手法が、何らかの機能的パートナーを発見および同定するために使用される。酵母ツーハイブリッド手法の基礎となる原理は、酵母における転写活性化因子を含めて、真核生物の転写活性化因子の多くが2つの離れたモジュール状ドメインからなるということである。第1のドメインが、特異的なプロモーター配列に結合するDNA結合ドメインであり、第2のドメインが、RNAポリメラーゼII複合体にDNA結合部位の下流の遺伝子を転写させる活性化ドメインである。いずれのドメインもそれ自身では転写を活性化することができないので、両方のドメインが転写活性化のために要求される。酵母ツーハイブリッド手法では、目的とする遺伝子またはその一部(餌)が、DNA結合ドメインを有するペプチドに対する融合体として発現されるような方法でクローン化される。第2の遺伝子、または多数の遺伝子、例えば、cDNAライブラリーに由来する遺伝子など(標的)が、活性化ドメインに対する融合体として発現されるようにクローン化される。目的とするタンパク質がその結合パートナーと相互作用することにより、DNA結合ペプチドが活性化ドメインと一緒になり、レポーター遺伝子の転写が開始される。第1のレポーター遺伝子は、相互作用タンパク質を含有する酵母細胞について選択される(このレポーターは、通常、選択培地における増殖のために要求される栄養性遺伝子である)。第2のレポーターは確認のために使用され、そして相互作用タンパク質に応答して発現している間は、第2のレポーターは、通常、増殖のために要求されない。
【0155】
相互作用する遺伝子およびタンパク質の性質もまた、これらのパートナーもまた薬物発見のための標的であり得るように調べることができる。
【0156】
構造研究
本発明の組換え血管形成タンパク質は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞および/または哺乳動物細胞において製造することができ、そして結晶学研究およびNMR研究で使用することができる。タンパク質の分子モデル化と一緒になって、構造から導かれる薬物設計が促進され得る。
【表1】
【表2】
【0157】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管形成のプロセスに関与する新規な核酸配列(「血管形成遺伝子」)に関する。これらの血管形成遺伝子のそれぞれにより、血管形成において役割を有するポリペプチドがコードされる。これらの遺伝子が血管形成において役割を果たしているという認識を考慮して、本発明はまた、血管形成に関連する病理の治療、前血管形成活性または抗血管形成活性についての薬物のスクリーニング、血管形成に関連する病理の診断および予後、そして場合により、全長の血管形成関連遺伝子を同定および取得するための核酸配列の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
既存血管からの新しい血管の形成、すなわち、血管形成と呼ばれるプロセスは、正常な成長には不可欠である。重要な血管形成プロセスには、胚形成、子宮内膜の更新、妊娠期の黄体の形成および成長、創傷治癒、そして傷害後の組織構造および機能の回復において生じる血管形成プロセスが含まれる。
【0003】
新しい毛細血管の形成には、前血管形成活性または抗血管形成活性のいずれかを有し得る多数の遺伝子の発現によって媒介される同調した一連の事象が必要である。このプロセスは、血管内皮細胞増殖因子または塩基性線維芽細胞増殖因子などの増殖因子によって通常の場合には媒介される、存在する血管系に対する血管形成性の刺激とともに始まる。この後には、細胞外マトリックスの分解、細胞接着変化(および破壊)、細胞透過性の増大、内皮細胞(EC)の増殖、そして血管形成部位に向かうECの遊走が続く。その後のプロセスには、毛細管または管腔の形成、遊走ECによる安定化および分化が含まれる。
【0004】
(正常な)健康な成人では、血管形成は事実上停止しており、必要とされるときにだけ生じる。しかし、多数の病理学状況が、増強された制御されない血管形成によって特徴づけられている。これらの状態には、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、そしてアテローム性動脈硬化などの心臓血管疾患が含まれる。虚血性四肢疾患など他の病気および冠状動脈疾患では、拡大する脈管構造を促進することにより新しい血管を成長させることが有益であると考えられる。
【0005】
血管形成を模倣すると考えられる数多くのインビトロアッセイが確立されており、これらにより、血管形成プロセスが生じる機構、および関与する可能性が最も高い遺伝子を調べるための重要な手段が提供されている。
【0006】
管腔形成は、血管形成における重要なステップである。血管形成を受けているEC内に小胞が存在することが報告されており、管腔形成におけるそれらの関与が仮定されている(FolkmanおよびHaudenschild、1980;Gamble他、1993)。FolkmanおよびHaudenschild(1980)によって提唱された管腔形成の一般的機構は、小胞が、多数の整列したECの細胞質内に形成され、その後、それらが管に変換されるということである。隣接する管が合体することにより、連続する単一細胞性の毛細管腔の形成がもたらされる。しかしながら、管腔形成をもたらす細胞形態の変化、またはECがこの特徴を構築するために要求されるシグナルについてはほとんど知られていない。
【0007】
血管形成のインビトロモデルが、3次元コラーゲンマトリックスに置床されたヒト臍静脈ECから作製されている(Gamble他、1993)。ホルボールミリスタートアセタート(PMA)の存在下、これらの細胞は24時間以内に毛細管を形成する。抗インテグリン抗体を加えた場合、通常は単一細胞性の管(これは、未成熟な、分化が不十分な表現型を反映していると考えられる)が、細胞−マトリックス相互作用の阻害および細胞−細胞相互作用の促進によって多細胞性の管腔を形成するように変換される。このモデルにより、管腔形成において生じる形態学的事象の研究が可能になっている。
【0008】
血管形成に関連する疾患を処置する場合、このプロセスの分子遺伝学的機構を理解することが最も重要である。上記に記載されるインビトロモデル(Gamble他、1993)、すなわち、時間に依存した、そして大まかには同時的な様式でインビボでの血管形成時に生じる重要な事象を反映するモデルの使用により、関与する重要な遺伝子を同定するための手段が提供されている。
【0009】
多数の遺伝子が血管形成プロセス時に示差的に発現されることがこのモデルから同定されている。これらの血管形成遺伝子のサブセットの機能的分析、そして内皮細胞の機能および増殖に対するそれらの影響が下記に詳しく記載される。
【0010】
これらの血管形成遺伝子の単離により、血管形成関連障害を処置するための新規な標的が提供された。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、血管形成時に発現が調節されることが示された、単離された核酸分子を提供する(表1および表2を参照のこと)。
【0012】
本発明の第1の局面において、配列番号1〜20によって規定され、そして表1に示されるような単離された核酸分子が提供される。
【0013】
これらの分子および表2に列記された分子が血管形成時にそれらの発現において調節されるという認識に従って、本発明は、血管形成プロセスにおいて役割を果たす、配列番号1〜114により規定され、そして表1および表2に示されるような単離された核酸分子またはそれらのフラグメントを提供する。そのようなプロセスには、胚形成、月経周期、創傷修復、腫瘍の血管形成、および運動により誘導される筋肉肥大が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0014】
また、本発明は、血管形成プロセスに関連する疾患において役割を果たす、配列番号1〜114により規定され、そして表1および表2に示される単離された核酸分子(これらは、以降、便宜上、「血管形成遺伝子」、「血管形成核酸分子」または「血管形成ポリペプチド」として示される)またはそれらのフラグメントを提供する。疾患には、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患、および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0015】
本発明にはまた、本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つに対する同一性が少なくとも70%であり、かつ血管形成プロセスにおいて役割を果たす単離された核酸分子が包含される。
【0016】
そのような変化体は、血管形成遺伝子に対する配列同一性が好ましくは少なくとも約85%であり、最も好ましくは少なくとも約95%である。上記に記載されるポリヌクレオチド変化体のいずれか1つにより、本発明の当該血管形成遺伝子の少なくとも1つの機能的特徴または構造的特徴を含むアミノ酸配列がコードされ得る。
【0017】
配列同一性は、典型的には、Altschul他(1997)に記載されるBLASTアルゴリズムをBLOSUM62デフォルト行列とともに使用して計算される。
【0018】
本発明にはまた、本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つとストリンジェントな条件のもとでハイブリダイゼーションし、かつ血管形成プロセスにおいて役割を果たす単離された核酸分子が包含される。
【0019】
ゲノム配列を含むポリヌクレオチド配列を検出することができるPCRプローブとのハイブリダイゼーションを、当該血管形成遺伝子をコードする核酸配列を同定するために使用することができる。プローブが、非常に特異的な領域、例えば、5’の調節領域から、またはあまり特異的でない領域、例えば、保存されたモチーフから作製されるとしても、プローブの特異性、そしてハイブリダイゼーションまたは増幅のストリンジェンシーは、プローブにより、血管形成遺伝子をコードする天然に存在する配列、対立遺伝子変化体、または関連した配列のみが同定されるかどうかを左右する。
【0020】
プローブはまた、関連した配列を検出するためにも使用することができ、従って、好ましくは、本発明の血管形成遺伝子コード配列のいずれかに対して少なくとも50%の配列同一性を有することが望ましい。本発明のハイブリダイゼーションプローブはDNAまたはRNAであってもよく、そして血管形成遺伝子配列のいずれか1つに由来し得るか、または血管形成遺伝子のプロモーターおよびエンハンサーおよびイントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0021】
血管形成遺伝子のいずれか1つをコードするDNAに対する特異的なハイブリダイゼーションプローブを製造するための手段には、当該血管形成遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列またはその誘導体を、mRNAプローブを製造するためのベクターにクローン化することが含まれる。そのようなベクターはこの分野では知られており、市販されている。ハイブリダイゼーションプローブは、32Pもしくは35Sなどの放射性核種によって、またはアビジン/ビオチン結合系によりプローブに結合されるアルカリホスファターゼなどの酵素標識によって、またはこの分野で知られている他の方法によって標識することができる。
【0022】
ストリンジェントな条件のもと、32P標識プローブとのハイブリダイゼーションが、最も好ましくは、750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム、2%SDS、50%ホルムアミド、1Xデンハルト、10%(w/v)デキストラン硫酸、および100μg/mlの変性サケ精子DNAにおいて、42℃で生じる。これらの条件に対する有用な様々な変化が当業者には容易に明かである。ハイブリダイゼーションに続く洗浄工程は、最も好ましくは、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および1%SDSにおいて、65℃で行われる。これらの条件に対するさらなる様々な変化が当業者には容易に明かである。
【0023】
本発明のヌクレオチド配列は、血管形成遺伝子をコードする配列を様々な目的のために変化させるように、この分野で受け入れられている様々な方法を使用して操作することができる。これらの目的には、遺伝子産物のクローニングおよび/またはプロセシングおよび/または発現の改変が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子フラグメントのPCR再組立て、および合成オリゴヌクレオチドの使用は、血管形成遺伝子ヌクレオチド配列の操作を可能にする。例えば、オリゴヌクレオチド媒介の部位特異的変異誘発により、新しい制限部位をもたらす変異、グリコシル化パターンを変化させる変異、およびスプライス変化体を生じさせる変異などを導入することができる。
【0024】
遺伝暗号の縮重性の結果として、本発明の血管形成遺伝子をコードする多数のポリヌクレオチド配列(この場合、いくつかは、任意の知られている天然に存在する遺伝子のポリヌクレオチド配列に対して最小の類似性を有し得る)を製造することができる。従って、本発明には、可能なコドン選択に基づいた組み合わせを選択することにより作製され得るポリヌクレオチド配列の可能な変化がどれもすべて包含される。これらの組み合わせは、天然に存在する血管形成遺伝子のポリヌクレオチド配列に対して適用されるような標準的なトリプレット遺伝暗号に従って作製され、従って、すべてのそのような変化は具体的に開示されていると見なすことができる。
【0025】
本発明のポリヌクレオチドには、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成された形態、および混合ポリマー(センス鎖およびアンチセンス鎖の両方)が含まれ、そして本発明のポリヌクレオチドは、当業者によって理解されるように、化学的または生化学的に修飾することができる。そのような修飾には、標識、メチル化、インターカレーター、アルキル化剤、および修飾された連結が含まれる。場合により、天然に存在する遺伝子のコドン使用とは実質的に異なるコドン使用を有する血管形成遺伝子をコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を製造することが好都合である。例えば、コドンは、特定のコドンが宿主によって利用される頻度と一致させて、特定の原核生物宿主または真核生物宿主におけるペプチドの発現速度を増大させるために選択することができる。コードされるアミノ酸配列を変化させることなく血管形成遺伝子をコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を変化させる他の理由には、天然に存在する配列から産生される転写物よりも望ましい性質(より大きい半減期など)を有するRNA転写物を産生させることが含まれる。
【0026】
本発明はまた、本発明の核酸分子を完全に合成化学によって製造することを包含する。合成された配列は発現ベクターに挿入することができ、また好適な宿主における挿入されたコード配列の転写および翻訳を制御するための必要なエレメントを含有する細胞システムに挿入することができる。これらのエレメントには、血管形成遺伝子をコードする配列のより効率的な翻訳を可能にする調節配列、プロモーター、5’非翻訳領域および3’非翻訳領域、ならびに特異的な開始シグナル(ATG開始コドンおよびKozakコンセンサス配列など)が含まれ得る。その開始コドンおよび上流の調節配列を含む完全なコード配列が適切な発現ベクターに挿入される場合、さらなる制御シグナルは必要でない場合がある。しかし、コード配列のみ、またはそのフラグメントが挿入される場合、上記に記載されるような外因性の翻訳制御シグナルがベクターによって提供されなければならない。そのようなシグナルは、天然起源および合成起源の両方で、様々な起源に由来し得る。発現効率は、使用される特定の宿主細胞システムに適切なエンハンサーを含めることによって高めることができる(Schart他、1994)。
【0027】
本明細書中に記載される配列の相補体である核酸分子もまた調製することができる。
【0028】
本発明は、精製されたポリペプチドまたはタンパク質の調製を可能にする。これを行うために、宿主細胞を、上記に記載されるような核酸分子でトランスフェクションすることができる。典型的には、前記宿主細胞は、本発明による核酸分子を含む発現ベクターでトランスフェクションされる。様々な発現ベクター/宿主細胞システムを、配列を含有し、かつ発現させるために利用することができる。これらには、プラスミドDNA発現ベクターまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞システム;またはマウスもしくは他の動物もしくはヒトの組織細胞システムが含まれるが、これらに限定されない。哺乳動物細胞もまた、プラスミドシステム、コスミドシステムおよびウイルスシステム(ワクシニアウイルス発現システムなど)を含む様々な発現ベクターを使用して、本発明の特定の血管形成遺伝子によってコードされるタンパク質を発現させるために使用することができる。本発明は、用いられる宿主細胞によって限定されない。
【0029】
本発明のポリヌクレオチド配列またはその変化体を、哺乳動物システムにおける組換えタンパク質の長期間の製造を可能にするために細胞株において安定的に発現させることができる。本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つをコードする配列を、ウイルスの複製起点および/または内因性の発現エレメントを含有し得る発現ベクター、そして同じベクターまたは別個のベクターにおける選択マーカー遺伝子を使用して、細胞株に形質転換することができる。選択マーカーにより、選択薬剤に対する抵抗性が付与され、その存在により、導入された配列を発現することに成功した細胞の成長および回収が可能になる。安定に形質転換された細胞の抵抗性クローンを、細胞タイプに対して適切な組織培養技術を使用して増殖させることができる。
【0030】
形質転換された細胞によって産生されるタンパク質は、使用された配列および/またはベクターに依存して、分泌され得るか、または細胞内に保持され得る。当業者によって理解されるように、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターは、原核生物または真核生物の細胞膜を介したタンパク質の分泌を行わせるシグナル配列を含有するように設計することができる。
【0031】
また、宿主細胞系統を、挿入された配列の発現を調節するその能力、または所望する様式で発現タンパク質をプロセシングするその能力について選ぶことができる。ポリペプチドのそのような修飾には、アセチル化、グリコシル化、リン酸化およびアシル化が含まれるが、これらに限定されない。タンパク質の「プレプロ」形態の翻訳後切断もまた、タンパク質の標的化、折り畳みおよび/または活性を特徴づけるために使用することができる。翻訳後活性のために特定の細胞装置および特徴的な機構を有する種々の宿主細胞(例えば、CHO細胞またはHeLa細胞)をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手することができ、それらは、外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実にするために選ぶことができる。
【0032】
多量のタンパク質が、抗体製造などのために必要とされるときには、高レベルの発現を行わせるベクター、例えば、T5またはT7の誘導性バクテリオファージプロモーターを含有するベクターなどを使用することができる。本発明はまた、タンパク質の重要な機能的ドメインを含有する融合タンパク質を作製および単離することにおける上記に記載される発現システムの使用を包含する。これらの融合タンパク質は、結合、構造および機能に関する研究のために、ならびに適切な抗体を作製するために使用される。
【0033】
タンパク質を融合タンパク質として発現および精製するために、本発明の適切なポリヌクレオチド配列が、別のペプチド(例えば、グルタチオンスクシニルトランスフェラーゼ)をコードするヌクレオチドを含有するベクターに挿入される。融合タンパク質は原核生物細胞または真核生物細胞から発現および回収される。その場合、融合タンパク質は、融合ベクター配列に基づくアフィニティークロマトグラフィーによって精製することができ、そして当該タンパク質を、続いて、融合タンパク質の酵素的切断によって得ることができる。
【0034】
本発明のポリペプチドのフラグメントはまた、固相技術を使用する直接的なペプチド合成によって製造することができる。自動化された合成を、ABI431Aペプチド合成機(Perkin−Elmer)を使用することによって達成することができる。ポリペプチドの様々なフラグメントを別々に合成して、その後、組み合わせて、全長の分子を製造することができる。
【0035】
本発明の単離された核酸分子が部分的な遺伝子配列のみを表す場合、これらの部分配列は、全長型血管形成遺伝子の対応する配列を得るために使用することができる。従って、本発明はさらに、血管形成プロセスに関与する全長型ヒト遺伝子を同定および/または取得するために、配列番号70、72〜73、78、83〜87、89、160または174のいずれか1つによって規定されるヌクレオチド配列を含む本発明の部分核酸分子の使用を提供する。全長の血管形成遺伝子は、当業者にそれ自体は知られている方法によって本発明の部分ヌクレオチド配列を使用してクローン化することができる。例えば、国立バイオテクノロジー情報センターにおいて主宰される配列データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)などの配列データベースのインシリコ分析を、重複するヌクレオチド配列を得るために検索することができる。これにより、全長型遺伝子配列を得ることに対する「ウォーキング」法が提供される。このサイトで検索される適切なデータベースには、発現配列タグ(EST)データベース(GenBank配列、EMBL配列およびDDBJ配列のそれらのEST区分に由来するデータベース)、または非冗長(nr)データベース(GenBank配列、EMBL配列、DDBJ配列およびPDB配列のすべてを含むが、EST配列、STS配列、GSS配列、または第0相もしくは第1相もしくは第2相のHTGS配列を含まない)が含まれる。典型的には、検索は、Altschul他(1997)に記載されるBLASTアルゴリズムをBLOSUM62デフォルト行列とともに使用して行われる。インシリコ「ウォーキング」法により、完全な遺伝子配列を得ることができない場合、さらなる方法を用いることができる。これらには、配列が知られているDNAの一部に隣接する未知の配列を得ることを可能にする「制限部位PCR」の使用が含まれる。この技術では、ユニバーサルプライマーが、未知の配列を得るために使用される。インバースPCRもまた使用することができ、この場合には、既知の配列に基づくプライマーが、隣接する未知の配列を増幅するために設計される。これらの上流配列には、プロモーターおよび調節配列が含まれ得る。また、PCRに基づく様々な他の技術を使用することができ、例えば、Clontech(Palo Alto、California)から入手可能なキットはウォーキングPCR技術を可能にし、5’RACEキット(Gibco−BRL)はさらなる5’遺伝子配列の単離を可能にし、一方、さらなる3’配列は、巧みな技術を使用して得ることができる(例えば、Gecz他(1997)を参照のこと)。
【0036】
本発明のさらなる局面において、配列番号115〜125により規定され、表1に示されるような単離されたポリペプチドが提供される。
【0037】
本発明はまた、血管形成時に発現を調節されることが示されている単離されたポリペプチドを提供する(表1および表2を参照のこと)。
【0038】
より具体的には、これらのポリペプチドが血管形成時にその発現において調節されるという認識に従って、本発明は、血管形成プロセスにおいて役割を果たす、配列番号115〜216により規定され、表1および表2に示されるような単離されたポリペプチドまたはそれらのフラグメントを提供する。そのようなプロセスには、胚形成、月経周期、創傷修復、腫瘍の血管形成、および運動により誘導される筋肉肥大が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0039】
また、本発明は、血管形成プロセスに関連する疾患において役割を果たす、配列番号115〜216により規定され、そして表1および表2に示されるような単離されたポリペプチドまたはそれらのフラグメントを提供する。疾患には、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患、および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0040】
本発明はまた、配列番号115〜216のいずれか1つに対する同一性が少なくとも70%(好ましくは少なくとも85%、より好ましくは95%)であり、かつ血管形成プロセスにおいて役割を果たす単離されたポリペプチドを包含する。
【0041】
配列同一性は、典型的には、Altschul他(1997)に記載されるBLASTアルゴリズムをBLOSUM62デフォルト行列とともに使用して計算される。
【0042】
本発明のさらなる局面において、上記に記載されるポリヌクレオチドを調製する方法で、下記の工程:
(1)ポリペプチドを産生させるために効果的な条件のもとで宿主細胞を培養する工程;および
(2)ポリペプチドを回収する工程
を含む方法が提供される。
【0043】
本発明のさらに別の局面により、上記に記載されるプロセスの生成物であるポリペプチドが提供される。
【0044】
実質的に精製されたタンパク質またはそのフラグメントは、その後、例えば、タンパク質のx線結晶学によって、または核磁気共鳴(NMR)によって二次構造および三次構造を明らかにするために、さらなる生化学的分析において使用することができる。構造を決定することにより、タンパク質と相互作用するための医薬品、またはタンパク質の電荷配置もしくは他のタンパク質との電荷相互作用を変化させるための医薬品、または細胞におけるその機能を変化させるための医薬品の合理的な設計が可能になる。
【0045】
本発明は、血管形成に関与することが考えられる多数の遺伝子を提供する。血管形成は多数の病理学的プロセスにおいて重要であるので、従って、本発明により、すべての血管形成関連障害を処置するための治療的方法が可能になり、そして血管形成遺伝子のいずれか1つの発現および/または機能の異常と関連するすべての血管形成関連障害の診断または予後が可能になる。
【0046】
そのような障害の例には、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患、および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の別の局面により、上記に記載されるような血管形成関連障害を処置する方法が提供され、この場合、この方法は、そのような処置を必要としている対象に、本発明の血管形成遺伝子または血管形成タンパク質の選択的なアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む。
【0048】
なおさらに、上記に記載されるような血管形成関連障害を処置するための、本発明の血管形成遺伝子または血管形成タンパク質の選択的なアゴニストまたはアンタゴニストの使用が提供される。
【0049】
制御されていない血管形成または増強された血管形成をもたらす血管形成関連障害(これには、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、そしてアテローム性動脈硬化などの心臓血管疾患が含まれるが、これらに限定されない)を処置する場合、拡大する脈管構造を阻害する治療法が望ましい。これには、血管形成を促進することができる血管形成遺伝子または血管形成タンパク質のいずれか1つを阻害すること、あるいは血管形成を阻害することができる血管形成遺伝子または血管形成タンパク質のいずれか1つを増強または刺激または再活性化することが伴う。
【0050】
阻害された血管形成または低下した血管形成を特徴とする血管形成関連障害(これには、虚血性四肢疾患および冠状動脈疾患が含まれるが、これらに限定されない)を処置する場合、血管の拡大を増強または促進する治療法が望ましい。これには、血管形成を制限することができる血管形成遺伝子または血管形成タンパク質のいずれか1つを阻害すること、あるいは血管形成を促進することができる血管形成遺伝子または血管形成タンパク質のいずれか1つを増強または刺激または再活性化することが伴う。
【0051】
例えば、BNO69およびBNO96のアンチセンス発現は、内皮細胞の成長および増殖を阻害することが示されている。従って、血管形成が制限される必要がある障害の処置では、これらの遺伝子の機能を阻害することが望ましい。あるいは、血管形成が刺激される必要がある障害の処置では、これらの遺伝子の機能を増強することが望ましい場合がある。
【0052】
これらの場合のそれぞれについて、当該治療法は、血管形成遺伝子に損傷があるか否かにかかわりなく、血管形成関連障害を処置することにおいて有用である。
【0053】
遺伝子またはタンパク質の機能の阻害
遺伝子またはタンパク質の機能を阻害することは様々な方法で達成することができる。アンチセンス核酸法により、変化した発現が障害の原因である遺伝子を不活性化するための1つの方法が表される。本発明の1つの局面において、単離された核酸分子は、上記に記載される当該血管形成核酸分子のいずれか1つの相補体であり、そして本発明の当該血管形成遺伝子によってコードされるmRNAとハイブリダイゼーションするRNA分子をコードしており、そのような処置を必要としている対象に投与することができる。典型的には、血管形成遺伝子の任意の当該遺伝子に対する相補体が、血管形成関連障害を処置または防止するために対象に投与される。
【0054】
本発明のさらなる局面において、本発明の当該核酸分子のいずれか1つの相補体である単離された核酸分子であって、本発明の当該血管形成遺伝子によってコードされるmRNAとハイブリダイゼーションするRNA分子をコードする単離された核酸分子の、血管形成関連障害を処置するための医薬品の製造における使用が提供される。
【0055】
典型的には、当該血管形成遺伝子のいずれか1つをコードするポリヌクレオチドの相補体を発現するベクターを、上記に記載される傷害(これに限定されない)を含む血管形成関連障害を処置または防止するために対象に投与することができる。ベクターを細胞または組織に導入するための多くの方法を利用することができ、これらは、インビボ、インビトロおよびエクスビボにおける使用のために等しく好適である。エクスビボ治療の場合、ベクターを、患者から採取され、その同じ患者に戻される自家移植のためにクローン増殖させた幹細胞に導入することができる。トランスフェクションによる送達、リポソーム注射による送達、またはポリカチオン性アミノポリマーによる送達を、この分野で広く知られている方法を使用して達成することができる(例えば、Goldman他(1997)を参照のこと)。
【0056】
さらなるアンチセンス法または遺伝子標的化サイレンシング法では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用、アンチセンスRNAの注入、アンチセンスRNA発現ベクターのトランスフェクション、およびRNA干渉(RNAi)または短い干渉性RNA(siRNA)の使用が含まれ得るが、これらに限定されない。なおさらに、DNAザイムおよびリボザイムなどの触媒作用核酸分子を遺伝子サイレンシングのために使用することができる(BreakerおよびJoyce、1994;HaseloffおよびGerlach、1988)。これらの分子は、従来のアンチセンス法でのように単に結合するのではなく、それらの標的mRNA分子を切断することによって機能する。
【0057】
さらなる局面において、本発明による精製されたタンパク質を、本発明の任意の当該血管形成タンパク質と特異的に結合する抗体を製造するために使用することができる。これらの抗体は、アンタゴニストとして直接的に使用することができ、あるいは、当該血管形成タンパク質を発現する細胞または組織に薬学的薬剤を導くための標的化機構または送達機構として間接的に使用することができる。そのような抗体には、当業者によって理解されるように、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体および単鎖抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
抗体を製造するために、ウサギ、ラット、ヤギ、マウスおよびヒトなどを含む様々な宿主を、本発明のタンパク質を注射することによって、または免疫原的性質を有するその任意のフラグメントもしくはオリゴペプチドを注射することによって免疫化することができる。様々なアジュバントを、免疫学的応答を増大させるために使用することができ、これには、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、およびリソレシチンなどの表面活性物質が含まれるが、これらに限定されない。ヒトにおいて使用されるアジュバントには、BCG(カルメット−ゲラン菌)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)が含まれる。
【0059】
当該血管形成タンパク質に対する抗体を誘導するために使用されるオリゴペプチドまたはペプチドまたはフラグメントは、少なくとも約5アミノ酸からなるアミノ酸配列、より好ましくは少なくとも約10アミノ酸からなるアミノ酸配列を有することが好ましい。これらのオリゴペプチドまたはペプチドまたはフラグメントは、天然タンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であり、そして、天然に存在する小さい分子のアミノ酸配列全体を含有することもまた好ましい。これらのタンパク質に由来するアミノ酸の短い領域を、KLHなどの別のタンパク質の領域と融合させることができ、そしてこのキメラ分子に対する抗体を製造することができる。
【0060】
任意の当該血管形成タンパク質に対するモノクローナル抗体を、培養における連続した細胞株による抗体分子の製造をもたらす任意の技術を使用して調製することができる。これらには、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBVハイブリドーマ技術が含まれるが、これらに限定されない(例えば、Kohler他(1975);Kozbor他(1985);Cote他(1983);Cole他(1984)を参照のこと)。
【0061】
製造されるモノクローナル抗体には、マウス由来抗体、ヒト化抗体、および完全なヒト抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
抗体はまた、文献に開示されるように、リンパ球集団でのインビボ産生を誘導することによって、または免疫グロブリンライブラリー、もしくは非常に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすることによって製造することができる(例えば、Orlandi他(1989);Winter他(1991)を参照のこと)。
【0063】
任意の当該血管形成タンパク質に対する特異的な結合部位を含有する抗体フラグメントもまた作製することができる。例えば、そのようなフラグメントには、抗体分子をペプシン消化することによって製造されるF(ab’)2フラグメント、およびF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFabフラグメントが含まれる。あるいは、Fab発現ライブラリーを、所望する特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定を可能するために構築することができる(例えば、Huse他(1989)を参照のこと)。
【0064】
様々な免疫アッセイを、所望する特異性を有する抗体を同定するためのスクリーニングのために使用することができる。明らかにされた特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを使用する競合的結合アッセイまたは免疫放射測定アッセイのための非常に多数のプロトコルがこの分野では広く知られている。そのような免疫アッセイでは、典型的には、タンパク質とその特異的な抗体との間における複合体形成を測定することが伴う。2つの非妨害性エピトープに対する反応性を有するモノクローナルを利用する二部位モノクローナル型免疫アッセイが好ましく、しかし、競合的結合アッセイもまた用いることができる。
【0065】
さらなる局面において、アンタゴニストには、ペプチド、ホスホペプチド、または小さい有機化合物もしくは無機化合物が含まれ得る。これらのアンタゴニストは、必要な治療効果をもたらすように、本発明の任意の当該血管形成遺伝子の機能を破壊することが望ましい。
【0066】
治療的適用のために好適なペプチド、ホスホペプチド、または小さい有機化合物もしくは無機化合物は、下記に記載されるような薬物スクリーニング適用において本発明の核酸およびポリペプチドを使用して同定することができる。
【0067】
遺伝子またはタンパク質の機能の増強
遺伝子またはタンパク質の機能を増強または刺激または再活性化することは様々な方法で達成することができる。本発明の1つの局面において、上記に記載されるような単離された核酸分子の、そのような処置を必要としている対象に対する投与を開始することができる。典型的には、本発明の任意の当該血管形成遺伝子を、血管形成関連障害を処置または防止するために対象に投与することができる。
【0068】
さらなる局面において、血管形成関連障害を処置するための医薬品の製造における、上記に記載されるような単離された核酸分子の使用が提供される。
【0069】
典型的には、任意の当該血管形成遺伝子またはそのフラグメントもしくは誘導体を発現することができるベクターを、上記に記載される障害(これに限定されない)を含む障害を処置または防止するために対象に投与することができる。形質導入するためのレトロウイルスベクターもまた、感染ならびに安定な組み込みおよび発現のその効率が大きいために、体細胞遺伝子治療のために使用されることが多い。任意の当該全長遺伝子またはその一部をレトロウイルスベクターにクローン化することができ、そして発現を、その内因性プロモーターから、またはレトロウイルスの長末端反復から、または目的とする標的細胞タイプに対して特異的なプロモーターから行わせることができる。他のウイルスベクターを使用することができ、これには、この分野で知られているように、鳥類起源およびネズミ起源およびヒト起源のアデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、パポバウイルス、レンチウイルスおよびレトロウイルスが含まれる。
【0070】
遺伝子治療を、確立された方法(Friedman、1991;Culver、1996)に従って行うことができる。発現制御エレメントに連結され、そして細胞の内部で複製することができる1コピーの任意の当該血管形成遺伝子を含有するベクターが調製される。あるいは、ベクターは複製欠陥型であってもよく、これは、複製のために、そして遺伝子治療における使用のためにヘルパー細胞を要求し得る。
【0071】
インビトロでの非ウイルス感染方法を使用する遺伝子移入もまた使用することができる。これらの方法では、DNAの直接的な注入、リン酸カルシウムの存在下でのネイクドDNAの取り込み、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合またはリポソーム送達が含まれる。遺伝子移入はまた、ヒト人工染色体の一部として送達することによって、または受容体により媒介される遺伝子移入によって達成することができる。これには、特異的な細胞表面受容体に結合して、エンドサイトーシスおよび哺乳動物細胞内へのDNAの移入を誘導させる標的化分子にDNAを連結することが伴う。1つのそのような技術では、ポリ−L−リシンが、アシアロ糖タンパク質をDNAに連結するために使用される。アデノウイルスもまた、リソソームを破壊し、従って、DNAを分解から回避させ、そして核に移動させるために複合体に加えられる。これらの粒子の静脈内注入により、肝細胞内への遺伝子移入がもたらされている。
【0072】
今日まで同定されていないが、血管形成関連障害を有するある種の個体は、本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つに異常を含むことが考えられる。従って、血管形成遺伝子の発現または活性が低下している罹患した対象では、ダウンレギュレーションの機構は、CpGアイランドを含有する血管形成遺伝子のプロモーター領域の異常なメチル化のためであることがある。従って、治療に対する代替的な方法では、異常なプロモーターメチル化を除去する薬剤の投与により、遺伝子発現を再活性化することができ、そして正常な機能を罹患細胞に回復させることができる。
【0073】
本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つの変異した形態を発現する罹患した対象では、変異型遺伝子と組み換えられるようにその遺伝子の野生型コピーを罹患細胞に導入することによって障害を防止することが可能である場合がある。これには、遺伝子の変異を訂正するための二重組換え事象が必要である。これらの方法で遺伝子を導入するための様々なベクターがこの分野では知られており、そして任意の好適なベクターを使用することができる。あるいは、遺伝子の別のコピーであって、第2の変異をその遺伝子に有するコピーを導入することを、元の遺伝子変異を無効にし、かつ何らかの負の作用を阻止するようにするために用いることができる。
【0074】
さらにさらなる局面において、血管形成関連障害を処置する方法が提供され、この場合、上記に記載されるようなポリペプチドまたはそのアゴニストを、そのような処置を必要としている対象に投与することを含む。
【0075】
別の局面において、本発明は、血管形成関連障害を処置するための医薬品の製造における、上記に記載されるようなポリペプチドまたはそのアゴニストの使用を提供する。そのような障害の例が上記に記載される。
【0076】
さらなる局面において、好適なアゴニストにはまた、任意の当該血管形成遺伝子の機能を模倣し得るペプチド、ホスホペプチド、または小さい有機化合物もしくは無機化合物が含まれ得るか、あるいは機能を正常なレベルに回復させることができる任意の当該血管形成遺伝子に対する抗体が含まれ得る。
【0077】
治療的適用のために好適なペプチド、ホスホペプチド、または小さい有機化合物もしくは無機化合物は、下記に記載されるような薬物スクリーニング適用において本発明の核酸およびポリペプチドを使用して同定することができる。
【0078】
さらなる実施形態において、本発明のアゴニスト、アンタゴニスト、相補的配列、核酸分子、タンパク質、抗体またはベクターはいずれも、他の適切な治療剤との組み合わせで投与することができる。適切な薬剤の選択は、従来の薬学原理に従って当業者によって行うことができる。治療剤の組み合わせは相乗的に作用して、上記に記載される様々な障害の処置または防止をもたらし得る、この方法を使用して、それぞれの薬剤のより少ない用量による治療効力を可能にすることができ、従って、有害な副作用に対する可能性を低下させることができる。
【0079】
上記に記載された治療方法はいずれも、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、そして最も好ましくはヒトなどの哺乳動物を含む、そのような治療を必要としている任意の対象に適用することができる。
【0080】
薬物スクリーニング
本発明のさらに別の局面により、本発明の核酸分子、ならびに本発明のペプチド、特に、任意の精製された当該血管形成ポリペプチドまたはそのフラグメント、そしてこれらを発現する細胞は、血管形成関連障害を処置するための様々な技術における候補薬学的化合物のスクリーニングのために有用である。
【0081】
なおさらに、本発明は、ハイスループットスクリーニング技術が用いられる使用を提供する。
【0082】
本発明に従ってスクリーニングされ得る化合物には、ペプチド(可溶性ペプチドなど)、ホスホペプチド、および小さい有機分子または無機分子(天然物または合成されたケミカルライブラリーおよびペプチドミメティクスなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
1つの実施形態において、スクリーニングアッセイには、当該血管形成ポリペプチドまたはフラグメントを発現させる組換え核酸分子で安定的に形質転換されている真核生物宿主細胞または原核生物宿主細胞を競合的結合アッセイにおいて利用する、細胞に基づくアッセイが含まれ得る。結合アッセイでは、当該ポリペプチドまたはそのフラグメントと、試験されている化合物との間における複合体の形成について測定されるか、あるいは、試験されている化合物が、当該ポリペプチドまたはそのフラグメントとその相互作用因子またはリガンドとの間における複合体の形成を妨げる程度が測定される。
【0084】
細胞に基づかないアッセイもまた、本発明のポリペプチドとその相互作用因子との間の結合を妨害する化合物を同定するために使用することができる。様々なそのようなアッセイがこの分野では知られており、これらには、例えば、AlphaScreen技術(PerkinElmer Life Sciences、MA、米国)が含まれる。この適用は、それぞれの相互作用パートナーが抗体を介して別個のビーズに結合されるようなビーズの使用に依拠している。各パートナーの相互作用はビーズを近くに接近させ、その結果、レーザー励起により、光シグナルを放射する蛍光基を最終的には生じさせる多数の化学反応が開始させられる。当該血管形成ポリペプチドがその相互作用因子と結合することを妨げる候補化合物は、光放射をもたらさないので、応答性化合物の同定および単離を可能にする。
【0085】
ハイスループット薬物スクリーニング技術ではまた、国際特許出願公開WO84/03564に記載されるような方法を用いることができる。固体基体上で合成された小ペプチド試験化合物を当該血管形成ポリペプチドの結合および洗浄によってアッセイすることができる。その場合、結合した当該血管形成ポリペプチドは、この分野で広く知られている方法によって検出される。この技術の1つの変法において、精製された血管形成ポリペプチドを、相互作用する試験化合物を同定するために、プレートに直接コーティングすることができる。
【0086】
薬物スクリーニングに対するさらなる方法では、本発明の任意の当該血管形成遺伝子に変異を有する宿主真核生物細胞株の使用が伴う。宿主細胞株はまた、ポリペプチドレベルで不完全である。当該血管形成遺伝子の遺伝子発現が調節(すなわち、過剰発現または過小発現またはスイッチオフ)され得る他の細胞株を使用することができる。宿主細胞株または宿主細胞は様々な薬物化合物の存在下で成長させられ、そして、その化合物が、不完全な細胞の成長を調節することができるかどうかを明らかにするために、宿主細胞の成長速度が測定される。
【0087】
本発明の血管形成ポリペプチドはまた、コンビナトリアルライブラリー技術の結果として開発された化合物をスクリーニングするために使用することができる。これにより、ポリペプチドの活性を調節するその能力について非常に多数の異なる物質を試験するための方法が提供される。ペプチドライブラリーの使用が好ましく(国際特許出願公開WO97/02048を参照のこと)、そのようなライブラリーおよびその使用はこの分野では知られている。
【0088】
ポリペプチド機能の調節剤として同定される物質は、本質的にはペプチドまたは非ペプチドであり得る。非ペプチドの「小分子」は、多くの場合、多くのインビボ薬学的適用のために好ましい。また、そのような物質の模倣体または模擬体を薬学的使用のために設計することができる。既知の薬学的に活性な化合物(「リード」化合物)に基づく模擬体の設計は、新規な医薬品を開発するための一般的な方法である。これは、元の活性な化合物が合成困難であるか、もしくは合成に費用がかかる場合、または元の活性な化合物が不適当な投与方法をもたらす場合には望ましいことが多い。模擬体の設計において、標的特性を決定する際に重要である元の活性な化合物の特定の部分が同定される。化合物の活性な領域を構成するこれらの部分または残基はそのファルマコアとして知られている。ファルマコアが見出されると、ファルマコアの構造が、x線回折データおよびNMRを含む様々な情報源から得られるデータを使用してその物理的性質に従ってモデル化される。その場合、ファルマコアを模倣する化学基が付加され得るテンプレート分子が選択される。選択は、模擬体が容易に合成され、かつ薬学的に受容可能であることが考えられ、かつリード化合物の生物学的活性をインビボで分解せず、保持するように行うことができる。さらなる最適化または修飾を、インビボでの試験または臨床試験のために有用な1つ以上の最終的な模擬体を選択するために行うことができる。
【0089】
標的特異的な抗体を単離し、その後、その結晶構造を解明することもまた可能である。原理的には、この方法により、その後の薬物設計が上記に記載されるように基づき得るファルマコアが得られる。機能的な、薬理学的に活性な抗体に対する抗イディオタイプ抗体(抗id)を作製することによってタンパク質結晶学を完全に回避することが可能である場合がある。鏡像の鏡像として、抗idの結合部位は、元の結合部位のアナログであることが予想される。その後、抗idは、化学的または生物学的に製造されたペプチドバンクからペプチドを単離するために使用することができる。
【0090】
薬物スクリーニングに対する別の代替的な方法は、構造に基づく合理的な薬物設計に依拠している。本発明のポリペプチドの三次元構造、またはこれらのポリペプチドを含み得るタンパク質複合体の三次元構造を決定することにより、生物学的に活性なリード化合物を同定するための、構造に基づく薬物設計が可能になる。
【0091】
三次元構造モデルは、多数の適用(そのいくつかには、x線結晶学およびNMRなどの実験的モデルが含まれる)によって、かつ/またはタンパク質データバンク(PDB)などの構造データべースから得られる情報を使用するインシリコ研究から作製することができる。また、三次元構造モデルは、ポリペプチドの一次配列に基づく多数の知られているタンパク質構造予測技術(例えば、SYBYL−Tripos Associated、St.Louis、MO)、デノボ(de novo)タンパク質構造設計プログラム(例えば、MODELER(MSI Inc.、San Diego、CA)またはMOE(Chemical Computing Group、Montreal、カナダ)、またはアプイニシオ(ab initio)法(例えば、米国特許第5331573号および同第5579250号を参照のこと)を使用して決定することができる。
【0092】
ポリペプチドまたはポリペプチド複合体の三次元構造が決定されると、構造に基づく薬物発見技術を、これらの三次元構造に基づいて生物学的に活性な化合物を設計するために用いることができる。様々なそのような技術がこの分野で知られており、これらには、DOCK(カリホルニア大学、San Francisco)またはAUTODOCK(Scripps Research Institute、La Jolla、California)が含まれる。コンピューターによるドッキング(docking)プロトコルにより、予測されたタンパク質モデルに基づいて、タンパク質活性のために重要である考えられる活性部位(1つまたは複数)が同定される。分子データベース、例えば、Available Chemicals Directory(ACD)などが、その後、このタンパク質モデルを補う分子についてスクリーニングされる。
【0093】
これらの方法などの方法を使用して、可能性のある臨床薬物候補を同定することができ、そして典型的な「ウエット・ラボ(wet lab)」薬物スクリーニング方法論に伴う時間および費用を削減するためにコンピューターによりランク付けすることができる。
【0094】
上記に記載されるスクリーニング方法から同定された化合物は、これらの化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物が本発明の一部を形成するように、本発明の一部を形成する。
【0095】
薬学的調製物
上記に示されるようなスクリーニングアッセイから同定される化合物は、血管形成に関連する障害を処置または改善するために、治療効果的な用量で患者に投与することができる。治療効果的な用量は、障害の症状の改善をもたらすために十分な化合物の量を示す。
【0096】
そのような化合物の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法によって決定することができる。これらの研究から得られたデータは、その後、ヒトにおいて使用される投薬量の範囲を定める際に使用することができる。
【0097】
本発明に従って使用される薬学的組成物は、広く知られている1つ以上の生理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤または安定化剤を使用して従来の様式で配合することができる。受容可能なキャリアまたは賦形剤または安定化剤は、用いられる投薬量および濃度で非毒性であり、これらには、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマーを含む結合剤;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストランを含む、単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/または、ツイーン、プルロニクスもしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0098】
本発明に従って使用される薬学的組成物の配合は、提案される投与経路に基づく。投与経路には、吸入、吹入(口腔または鼻のいずれかを介する)、経口投与、口内投与、直腸投与または非経口投与が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0099】
診断および予後での適用
本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つに異常が存在し、これにより、遺伝子の活性および/または発現が変化して、血管形成関連障害を生じさせるならば、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、これらの障害の診断もしくは予後のために使用することができるか、またはそのような障害に対する素因である。そのような障害の例には、ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患、および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患が含まれるが、これらに限定されない。診断または予後は、適切な治療的介入を開始する目的で疾患状態の重篤度またはタイプまたは段階を決定するために使用することができる。
【0100】
本発明の別の実施形態において、診断目的または予後目的のために使用され得るポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、ゲノムDNA、ならびに相補的なRNA分子およびDNA分子が含まれる。ポリヌクレオチドは、血管形成遺伝子のいずれか1つにおける異常な発現または変異が疾患と相関し得る生検組織における遺伝子発現を検出および定量するために使用することができる。診断または予後のために使用されるゲノムDNAは、血液、組織生検物、手術標本または解剖材料に存在する細胞などの身体細胞から得ることができる。DNAは、特異的な配列を検出するために単離し、直接的に使用することができ、または分析に先立ってポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅することができる。同様に、RNAまたはcDNAもまた、PCR増幅とともに、またはPCR増幅を用いることなく使用することができる。特異的な核酸配列を検出するために、直接的なヌクレオチド配列決定、逆転写酵素PCR(RT−PCR)、特異的なオリゴヌクレオチドを使用するハイブリダイゼーション、制限酵素消化およびマッピング、PCRマッピング、RNAse保護、ならびに様々な他の方法を用いることができる。特定の配列に対して特異的なオリゴヌクレオチドを化学合成して、放射能標識しまたは非放射能的に標識し、そしてメンブランもしくは他の固体支持体に固定化されている個々のサンプルに対して、または溶液中で個々のサンプルに対してハイブリダイゼーションさせることができる。血管形成遺伝子のいずれか1つの存在もしくは非存在またはその過剰な発現を、その後、オートラジオグラフィー、蛍光測定または比色測定などの方法を使用して可視化することができる。
【0101】
特定の局面では、本発明のヌクレオチド配列は、関連する障害の存在、特に、前に言及された障害の存在を検出するアッセイにおいて有用であり得る。ヌクレオチド配列は、標準的な方法によって標識されて、ハイブリダイゼーション複合体を形成させるために好適な条件のもとで患者由来の体液サンプルまたは組織サンプルに加えることができる。好適なインキュベーション期間の後、サンプルは洗浄され、シグナルが定量され、そして標準値と比較される。患者サンプルにおけるシグナルの量が、コントロールのサンプルと比較して著しく変化している場合、変化したレベルのヌクレオチド配列がサンプルに存在することにより、関連する障害の存在が示される。そのようなアッセイはまた、動物研究において、臨床試験において特定の治療的処置法の効力を評価するために、または個々の患者の処置をモニターするために使用することができる。
【0102】
本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つにおける変異に関連する血管形成関連障害の診断または予後のための基礎を提供するために、当該遺伝子のヌクレオチド配列を、患者が変異遺伝子を発現しているかどうかを明らかにするために、正常な組織と疾患組織との間で比較することができる。
【0103】
本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つの異常な発現に関連する障害を診断するための基礎を提供するために、発現について正常または標準的なプロフィルが明らかにされる。これは、正常な対象(動物またはヒトのいずれか)から採取された体液または細胞抽出物を、当該血管形成遺伝子をコードする配列またはそのフラグメントと、ハイブリダイゼーションまたは増幅のために好適な条件のもとで一緒にすることによって達成することができる。標準的なハイブリダイゼーションは、正常な対象から得られた値を、既知量の実質的に精製されたポリヌクレオチドが使用される実験から得られた値と比較することによって定量することができる。血管形成遺伝子のいずれか1つの発現について正常または標準的なプロフィルを同定するための別の方法は、定量的RT−PCR研究によって行われる。正常な個体の身体細胞から単離されたRNA、特に、内皮細胞から単離されたRNAが逆転写され、そして当該遺伝子に対して特異的なオリゴヌクレオチドを使用するリアルタイムPCRが、遺伝子の正常な発現レベルを明らかにするために行われる。これらの例の両方で得られた標準値を、障害について症状を示す患者に由来するサンプルから得られた値と比較することができる。標準値からのずれが、障害の存在を明らかにするために使用される。
【0104】
障害の存在が明らかにされ、そして処置プロトコルが開始されると、ハイブリダイゼーションアッセイまたは定量的RT−PCR研究を、患者における発現レベルが、正常な対象において観測されるレベルの付近に至るかどうかを明らかにするために、定期的に繰り返すことができる。連続したアッセイから得られる結果を、数日から数ヶ月に及ぶ期間にわたる処置の効力を示すために使用することができる。
【0105】
本発明のさらなる局面により、本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つに関連する血管形成関連障害の診断もしくは予後における、またはそのような障害に対する素因としての、上記に記載されるような血管形成ポリペプチドの使用が提供される。
【0106】
診断アッセイまたは予後アッセイが任意の当該血管形成ポリペプチドに基づくことになる場合、様々な方法が可能である。例えば、診断または予後を、正常なタンパク質または変異タンパク質の電気泳動移動度の違いをモニターすることによって達成することができる。そのような方法は、電荷置換が存在する変異体、または挿入、欠失もしくは置換が、生じるタンパク質の電気泳動移動の著しい変化をもたらしている変異体を同定する際には特に有用である。あるいは、診断または予後は、正常なタンパク質または変異タンパク質のタンパク質分解的切断パターンの違い、様々なアミノ酸残基のモル比の違いに基づくことができ、または遺伝子産物の変化した機能を明らかにする機能的アッセイによって行うことができる。
【0107】
別の局面において、当該血管形成遺伝子産物と特異的に結合する抗体を、遺伝子の異常な発現を特徴とする障害の診断または予後のために、あるいは当該血管形成遺伝子もしくは当該血管形成タンパク質、またはアゴニスト、アンタゴニスト、またはその阻害剤で処置されている患者をモニターするためのアッセイにおいて使用することができる。診断目的または予後目的のために有用な抗体は、治療剤に関して上記に記載されたのと同じ様式で調製することができる。診断アッセイまたは予後アッセイには、ヒトの体液における当該タンパク質または細胞もしくは組織の抽出物における当該タンパク質を検出するために抗体および標識を利用する方法が含まれ得る。抗体は、修飾して、または修飾することなく使用することができ、また、レポーター分子を共有結合的または非共有結合的に結合することによって標識することができる。
【0108】
当該血管形成ポリペプチドを測定するための様々なプロトコル(これらには、ELISA、RIAおよびFACSが含まれる)がこの分野では知られており、これらは、変化した発現レベルまたは異常な発現レベルを診断するための基礎を提供する。発現について正常または標準的な値が、正常な哺乳動物対象(好ましくはヒト)から採取された体液または細胞抽出物を、当該タンパク質に対する抗体と、複合体形成のために好適な条件のもとで一緒にすることによって明らかにされる。標準の複合体形成の量を、様々な方法によって、好ましくは、吸光光度法手段によって定量することができる。生検組織に由来する対象サンプル、コントロールサンプルおよび疾患サンプルにおいて発現するタンパク質の量が標準曲線と比較される。標準値と対象値との間におけるずれにより、疾患を診断するためのパラメーターが示される。
【0109】
個体が障害に関して診断または予後判定されると、効果的な処置を上記に記載されるように開始することができる。制御されていない血管形成または増強された血管形成を特徴とする血管形成関連疾患の処置では、拡大する脈管構造を阻害する必要がある。これには、血管形成を促進する本発明の当該血管形成遺伝子または当該血管形成タンパク質を阻害することが伴う。さらに、処置ではまた、血管形成を阻害することがその正常な役割であるが、その活性が罹患個体において低下しているか、または存在していない本発明の当該血管形成遺伝子または当該血管形成タンパク質の発現または機能を刺激する必要がある場合がある。
【0110】
阻害された血管形成または低下した血管形成を特徴とする血管形成関連疾患の処置では、血管の拡大を増強または促進する方法が望ましい。これは、本質的には上記に記載されるような方法を使用して達成することができ、しかし、血管形成を促進することがその正常な役割であるが、その活性が罹患個体において低下しているか、または存在していない当該血管形成遺伝子または当該血管形成タンパク質の発現または機能を刺激することを伴う。あるいは、血管形成を制限する遺伝子またはタンパク質を阻害することもまた、処置に対する方法であり得る。
【0111】
マイクロアレイ
さらなる実施形態において、本明細書中に記載されるポリヌクレオチド配列のいずれかに由来する完全なcDNAまたはオリゴヌクレオチドまたはより長いフラグメントは、マイクロアレイにおけるプローブとして使用することができる。マイクロアレイは、非常に多数の遺伝子の発現レベルを同時にモニターするために、そして遺伝子の変化体および変異および多形を同定するために使用することができる。この情報は、遺伝子の機能を明らかにするために、障害の遺伝的基礎を理解するために、障害を診断または予後判定するために、そして治療剤を開発し、かつその活性をモニターするために使用することができる。マイクロアレイは、この分野で知られている方法を使用して調製し、使用し、そして分析することができる(例えば、Schena他(1996);Heller他(1997)を参照のこと)。
【0112】
形質転換された宿主
本発明はまた、本発明の核酸分子で形質転換された遺伝子改変(ノックアウト、ノックインおよび遺伝子導入)の非ヒト動物モデルの作製を提供する。これらの動物は、当該血管形成遺伝子の機能を研究するために、これらの遺伝子に関連する疾患の機構を研究するために、候補薬学的化合物をスクリーニングするために、タンパク質または変異タンパク質を発現する外植された哺乳動物細胞培養物を作製するために、そして可能性のある治療的介入を評価するために有用である。
【0113】
本発明の動物モデルにおける使用のために好適である動物種には、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、および非ヒト霊長類(サルおよびチンパンジーなど)が含まれるが、これらに限定されない。最初の研究のためには、遺伝子改変されたマウスおよびラットが、これらの動物のノックイン体またはノックアウト体または遺伝子導入体を作製することが比較的容易であるために、それらの管理が容易であるために、そしてそれらの寿命がより短いために、非常に望ましい。ある種の研究のためには、遺伝子導入された酵母または非脊椎動物が、迅速なスクリーニングを可能にし、そしてはるかにより容易な取扱いを提供するために、好適であり、かつ好ましい場合がある。より長期間の研究のためには、非ヒト霊長類が、ヒトとのその類似性のために望ましい場合がある。
【0114】
本発明の血管形成遺伝子のいずれか1つに基づく動物モデルを作製するために、いくつかの方法を用いることができる。これらには、特異的な変異を相同的な動物遺伝子において生じさせること、野生型のヒト遺伝子および/またはヒト化された動物遺伝子を相同的組換えによって挿入すること、野生型または変異型または人工のプロモーターエレメントを使用するゲノムcDNA構築物またはミニ遺伝子cDNA構築物として変異型ヒト遺伝子(1個または多数)を挿入すること、あるいは内因性遺伝子の人為的に改変されたフラグメントを相同的組換えによって挿入することが含まれる。改変には、変異停止コドンを挿入すること、DNA配列を欠失すること、またはCreリコンビナーゼなどの酵素により認識される組換えエレメント(lox p部位)を含めることが含まれる。
【0115】
インビボでの遺伝子機能の増大を研究する目的で遺伝子導入マウスを作製するために、任意の当該血管形成遺伝子を、卵母細胞顕微注入などの標準的な技術を使用してマウスの生殖系列に挿入することができる。遺伝子機能の増大は、遺伝子およびそのタンパク質産物の過剰発現、または研究中の遺伝子の変異の遺伝的相補を意味し得る。卵母細胞注入の場合、1コピー以上の野生型遺伝子または変異型遺伝子を受精直後のマウス卵母細胞の前核に挿入することができる。この卵母細胞は、その後、偽妊娠の里親に再移植される。その後、生産マウスを、当該ヒト血管形成遺伝子配列の存在についての尾DNAの分析を使用して組み込み体についてスクリーニングすることができる。導入遺伝子は、YACもしくはBACもしくは他の染色体DNAフラグメントとして注入された完全なゲノム配列、または、天然のプロモーターもしくは異種プロモーターのいずれかを有するcDNA、または、コード領域のすべてと、最適な発現のために必要であることが見出されている他のエレメントとを含有するミニ遺伝子のいずれかであり得る。
【0116】
ノックアウトマウスまたはノックインマウスを作製する場合、マウスの胚性幹(ES)細胞における相同的組換えによる遺伝子標的化を適用することができる。ノックアウトマウスが、遺伝子機能の喪失をインビボで研究するために作製され、一方、ノックインマウスにより、機能の増大の研究、または特異的な遺伝子変異の影響を研究することが可能になる。ノックインマウスは遺伝子導入マウスと類似しているが、組み込み部位およびコピー数が前者では明らかにされる。
【0117】
ノックアウトマウスを作製する場合、遺伝子標的化ベクターを、マウスのゲノムにおいて当該血管形成遺伝子のタンパク質コード配列が欠失(ノックアウト)されるように設計することができる。これに対して、ノックインマウスは、当該血管形成遺伝子を含有する遺伝子標的化ベクターがマウスゲノム内の決められた遺伝子座に組み込まれ得ることによって作製することができる。両方の適用の場合、相同的組換えが、相同的なDNA配列を認識し、それらを二重乗換えによって交換する特異的なDNA修復酵素によって触媒される。
【0118】
遺伝子標的化ベクターは、通常的には、エレクトポレーションを使用してES細胞に導入される。ES細胞組み込み体が、その後、標的化ベクターに存在する抗生物質耐性遺伝子によって単離され、続いて、遺伝子型が、研究中の遺伝子が目的とする遺伝子座に組み込まれているES細胞クローンを同定するために決定される。その後、適切なES細胞が、新しいマウス系統を作製するために生殖系列を介して伝達される。
【0119】
遺伝子の除去が早期の胚致死性をもたらす場合には、条件的遺伝子標的化を用いることができる。これにより、遺伝子を時間的かつ空間的に制御された様式で欠失させることができる。上記のように、適切なES細胞は、新しいマウス系統を作製するために生殖系列を介して伝達され、しかしながら、遺伝子の実際の欠失は、組織特異的な様式または時間により制御された様式で成体マウスにおいて行われる。条件的遺伝子標的化は、最も一般的には、cre/loxシステムの使用によって達成される。酵素creは、loxPに接する(またはフロックスする(floxed))DNAがcreによって認識されて切り出されるように34塩基対のloxP配列を認識することができる。遺伝子導入マウスにおける組織特異的なcre発現により、組織特異的なノックアウトマウスの作製が、遺伝子標的化されたフロックスマウスをcre遺伝子導入マウスと交配することによって可能になる。ノックアウトは、「欠失体」マウスを使用して、または誘導可能なcre遺伝子を有する遺伝子導入マウス(テトラサイクリン誘導性cre遺伝子を有する遺伝子導入マウスなど)を使用して、どの組織でも行うことができ(Schwenk他、1995)、あるいは、ノックアウトは、例えば、CD19−creマウスの使用によって組織特異的にすることができる(Rickert他、1997)。
【0120】
本発明のさらに別の局面により、候補薬学的化合物をスクリーニングするための、遺伝子改変された非ヒト動物の使用が提供される。
多数の先行技術刊行物が本明細書中に示されているが、この参照は、これらの文書のいずれかが、この分野またはオーストラリアまたは任意の他国における共通する一般的な知識の一部を形成するということを認めることを意味しないことが理解されることは明かである。本明細書および請求項の全体を通して、用語「含む(“comprise”、“comprises”および“comprising”)」は、文脈が別に要求する場合を除き、非排他的意味で使用される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1はバーチャルノーザン発現分析によって確認されるような、血管形成時における多数の血管形成遺伝子の発現パターンの類別例を示す。各ブロットは、同一のcDNA量がアッセイの示された時点の間でのブロット構築において負荷されたことを確認するためにコントロールGAPDH1遺伝子でプローブされた。
【図2】図2はBNO69遺伝子の詳細なバーチャルノーザン発現分析を示す。上段のパネルは、ホルボールミリスタートアセタート(PMA)±(α2β1)抗体(AC11)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)または腫瘍壊死因子(TNF)でヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を刺激した後のインビトロモデルにおける様々な時点でのBNO69の発現レベルを示す。下段のパネルは、K562(赤白血病)、KG−1a(急性骨髄性白血病)、Jurkat(急性T細胞白血病)、HeLa(子宮頸部腺ガン)、HepG2(肝臓腫瘍)、L1M12−15(結腸直腸ガン)、MDA−MB−231(乳ガン)、DU145(前立腺ガン)、HEK293(胚性腎臓)、HUSMC(初代臍静脈平滑筋細胞)±P(PMA)を含む多数のヒト細胞株におけるBNO69の発現レベルを示す。HUVEC T0およびHUVEC T3は、それぞれ、0時間および3時間の時間で血管形成の3−Dモデルから集められたHUVECを表す。
【図3】図3はBNO96遺伝子の詳細なバーチャルノーザン発現分析を示す。上段のパネルは、ホルボールミリスタートアセタート(PMA)±(α2β1)抗体(AC11)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)または腫瘍壊死因子(TNF)でヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を刺激した後のインビトロモデルにおける様々な時点でのBNO96の発現レベルを示す。下段のパネルは、K562(赤白血病)、KG−1a(急性骨髄性白血病)、Jurkat(急性T細胞白血病)、HeLa(子宮頸部腺ガン)、HepG2(肝臓腫瘍)、L1M12−15(結腸直腸ガン)、MDA−MB−231(乳ガン)、DU145(前立腺ガン)、HEK293(胚性腎臓)、HUSMC(初代臍静脈平滑筋細胞)±P(PMA)を含む多数のヒト細胞株におけるBNO96の発現レベルを示す。HUVEC T0およびHUVEC T3は、それぞれ、0時間および3時間の時間で血管形成の3−Dモデルから集められたHUVECを表す。
【図4】図4はレトロウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)機能のBNO69インビトロ調節を示す。HUVECの増殖が直接的な細胞計数によって3日間の期間にわたって測定された。平均±SEMが示される。HUVECにおけるアンチセンスBNO69(ASBNO69R)の過剰発現はその増殖を阻害する。EV:空ベクターのコントロール。
【図5】図5はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)機能のBNO69インビトロ調節を示す。HUVECにおけるアンチセンスBNO69(ASBNO69A)の過剰発現は細胞増殖に対する阻害効果をもたらす。
【図6】図6はレトロウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)機能のBNO69インビトロ調節を示す。空ベクター(EV)コントロールまたはアンチセンスBNO69(ASBNO69R)のいずれかでレトロウイルスによりトランスフェクションされた内皮細胞の細胞形態学が示される。
【図7】図7はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現に基づく細胞増殖アッセイを示す。細胞には、ベクターのみのコントロール(EV)またはアンチセンスBNO96(ASBNO96)のいずれかが感染させられ、細胞が48時間後に集められた。細胞増殖が、細胞を置床した3日後に行われた比色測定法でのMTTアッセイによって測定された(平均±SEM、n=4)。
【図8】図8はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現の結果としての細胞遊走に対する影響を示す。細胞には、ベクターのみのコントロール(EV)またはアンチセンスBNO96(ASBNO96)のいずれかが感染させられ、そして薬剤無し(nil)または走化性刺激因子フィブロネクチン(Fn)のいずれかに向う細胞の遊走が18時間後〜24時間後に測定された。
【図9】図9はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現の結果としてのMatrigel上での毛細管形成に対する影響を示す。細胞は、ベクターのみのコントロール(EV)またはアンチセンスBNO96(ASBNO96)のいずれかが感染させられ、24時間の期間にわたって管形成についてアッセイされた。写真が20時間後に撮影された。AおよびB:管の低倍率写真;CおよびD:管の高倍率写真。
【図10】図10はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現の結果としてのコラーゲンゲル上での毛細管形成に対する影響を示す。細胞は、ベクターのみのコントロール(EV)またはアンチセンスBNO96(ASBNO96)のいずれかが感染させられ、18時間〜24時間の期間にわたって管形成についてアッセイされた。細胞がゲルの中を遊走していたので、写真が3時間後に撮影された。M:遊走細胞。これらは、非遊走細胞よりも平らで、かつ光屈折が少ないようである。NM:非遊走細胞。これらの細胞は丸く、光屈折性である。
【図11】図11はアデノウイルス媒介による遺伝子移入を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現の結果としての腫瘍壊死因子(TNF)誘導によるE−セレクチン発現に対する影響を示す。細胞は、ベクターのみのコントロール(EV)またはアンチセンスBNO96(ASBNO96)のいずれかが感染させられ、48時間成長させられた。TNFは、抗E−セレクチン抗体を使用して細胞表面のE−セレクチン発現について染色する前に4時間にわたって加えられた。検出はフィコエリトリンコンジュゲート化抗マウス抗体によって行われた。平均蛍光強度(MFI)が示される。
【発明を実施するための形態】
【0122】
実施例1: インビトロでの毛細管形成
血管形成のインビトロモデルは、本質的にはGamble他(1993)に記載される通りである。アッセイは、ホルボールミリスタートアセタート(PMA)および抗インテグリン(α2β1)抗体RMACIIの刺激のもと、コラーゲンにおいて行われた。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)が、すべての実験において、2代〜4代の継代の間で使用された。
【0123】
細胞を塊状培養物から集め(t=0)、コラーゲンゲルに刺激とともに再置床し、その後、アッセイ開始後の0.5時間、3.0時間、6.0時間および24時間でコラーゲンゲルから集めた。これらの時点は、大きな形態学的変化がこれらの段階で生じるために選ばれた。簡単に記載すると、0.5時間までに、細胞はコラーゲンマトリックスに接着し、ゲル内への遊走を開始している。3.0時間までに、小さい細胞内小胞が視認される。6.0時間までに、これらの小胞は合体して一緒になり、膜に結合した液胞を形成し、そして短い出芽の形態で細胞がゲルに侵入している。この時間以降、これらの液胞は形質膜と融合し、従って、細胞間空間を拡大して、管腔を生じさせる(Meyer他、1997)。これらのより大きい液胞が形成されることが、管腔形成の必須必要条件である(Gamble他、1999)。24時間までに、毛細管の全体的な吻合ネットワークが形成されており、そして退化し始めている。
【0124】
実施例2: RNA単離、cDNAの合成および増幅
示された時点で集められた細胞は、Trizol試薬(Gibco BRL)を製造者の条件に従って使用して総RNAを単離するために使用された。SMART(RNA転写物の5’端でのスイッチング機構)技術を使用して、少量の総RNAを、cDNAサブトラクションを行うことを可能にするために十分なcDNAに変換した(下記参照)。これは、SMART−PCR cDNA合成キット(Clontech使用者マニュアルPT3041−1)を製造者の推奨法に従って使用して達成された。SMART−PCR cDNA合成プロトコルにより、大多数が全長のcDNAが得られ、これらを、続いて、cDNAサブトラクションのためにPCR増幅した。
【0125】
実施例3: サプレッション・サブトラクティブ・ハイブリダイゼーション(SSH)
SSHを、選択された時点によって規定されるcDNA集団の間においてアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのいずれかが行われたcDNAについて濃縮するために、SMART増幅されたcDNAに対して行った。この技術によりまた、調節されたcDNAの「正規化」を可能にし、それにより、存在量が少ないcDNA(すなわち、発現が十分でないが重要な遺伝子)をより容易に検出可能にした。これを行うために、PCR−Select cDNA合成キット(Clontech使用者マニュアルPT3041−1)およびPCR−Select cDNAサブトラクションキット(Clontech使用者マニュアルPT1117−1)を製造者の条件に基づいて使用した。これらの手法はサブトラクティブハイブリダイゼーションおよびサプレッションPCR増幅に依拠した。SSHを下記の集団の間で行った:0時間〜0.5時間;0.5時間〜3.0時間;3.0時間〜6.0時間;6.0時間〜24.0時間。
【0126】
実施例4: cDNAクローンのディファレンシャルスクリーニング
SSH後、標準的な技術(Sambrook他、1989)を使用して、cDNAフラグメントをEagIで消化し、そしてpBluescriptKS+内の適合し得る唯一のNotI部位にクローン化した。これにより、それぞれの時間期間に対するフォワードサブトラクションライブラリーおよびリバースサブトラクションライブラリーが得られた。PCR−Selectディファレンシャルスクリーニングキット(Clontech使用者マニュアルPT3138−1)に概略されるディファレンシャルスクリーニング法を使用して、調節されたcDNAを非調節cDNAから同定した。これを行うために、cDNAアレイを、クローンのプラスミドDNAを四連でナイロンフィルターに配置することによって作製した。約900個の個々のクローンをcDNAアレイによって分析した。これらのアレイを、続いて、
a)サブトラクションされていない時間1でのcDNA(これは、時間1で存在するmRNAを表す)
b)サブトラクションされていない時間2でのcDNA(これは、時間2で存在するmRNAを表す)
c)フォワードサブトラクションcDNA(これは、時間2でアップレギュレーションされているmRNAを表す)
d)リバースサブトラクションcDNA(これは、時間1でダウンレギュレーションされているmRNAを表す)
でプローブした。
【0127】
すべてのハイブリダイゼーションは42℃でExpressHyb溶液(Clontech)において行われた。メンブランは、キットの説明書に従ってハイブリダイゼーション後に洗浄された。
【0128】
cDNAアレイハイブリダイゼーションに基づいて示差的に発現していることが明らかにされたcDNAクローンを続いて配列決定した。その後、インシリコデータベース分析を、配列決定された各クローンについて情報を得る目的で、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)におけるヌクレオチドデータベースおよび遺伝子データベースに存在する配列に対する相同性を明らかにするために使用した。さらなる分析のためのクローンの選択は、相同性検索から推定されるような予測される機能に基づいた。
【0129】
表1および表2には、配列決定された示差的に発現するクローンに対する情報が提供される。表1には、以前には特徴付けられなかった遺伝子または新規な遺伝子を表すクローンが含まれ、一方、表2には、以前には血管形成と関連していない以前に同定された遺伝子に対応するクローンが含まれる。また、血管形成のプロセスに関与することが以前には示されている多数の遺伝子も同定された。これらのクローンが同定されたことは、用いられた血管形成遺伝子同定法が有効であることの原理的な有効性または証拠を提供しており、そして、表1および表2に示されるクローンがさらなる血管形成遺伝子の候補であることを示唆している。
【0130】
表1からの一例が、655個のアミノ酸からなる新規なタンパク質をコードするBNO69である。このクローンの全長配列の分析により、GTPase活性化タンパク質(GAP)ドメインの存在が示された。GAPドメインは、Ras GTPase、Rho GTPase、Cdc2 GTPaseおよびRac GTPaseを含む、GTP結合タンパク質の重要な調節因子である一群のタンパク質に見出されている。これらのGTPaseは、細胞の運動性、接着、細胞質分裂、増殖、分化およびアポトーシスを含む多くの生理学的プロセスに関係している(Van AelstおよびD’Souza−Schorey(1997);Ridley(2001)に総説される)。Rho様GTPaseは、不活性なGDP結合状態と活性なGTP結合状態との間で循環する。これらの2つの形態の間における変換は、主に、2つのタイプのタンパク質によって調節される。それらは、結合したGDPをGTPに交換することを増強するグアニン交換因子(GEF)によってアップレギュレーションされ、そして結合したGTPを加水分解する固有速度を増大させるGTPase活性化タンパク質(GAP)によってダウンレギュレーションされる。GTPが負荷されたとき、Rho GTPaseは、一組の下流のエフェクターと結合する能力を獲得し、これにより、例えば、様々な細胞骨格再配置を生じさせる。
【0131】
表2からの一例がBNO96遺伝子である。cDNAクローン23(BNO96)を配列決定することにより、このクローンがGタンパク質のガンマ12サブユニット(GNG12)と同一であることが明らかにされた。ヘテロ三量体のGタンパク質は、細胞表面受容体から細胞エフェクターへのシグナル伝達に関与する。Gタンパク質は、アルファ(α)サブユニット、ベータ(β)サブユニットおよびガンマ(γ)サブユニットから構成される。刺激されたとき、αサブユニットが複合体から解離し、そしてαサブユニットおよびβγサブユニットの両方が多数のエフェクターを活性化して、多くの細胞内シグナルを生じさせることができる。
【0132】
現在、6個の異なるβサブユニットおよび12個の異なるγサブユニットが同定されている。βγサブユニットは強固に会合し、非常に安定な二量体を形成しているので、それらは、今日まで、機能的ユニットとして見なされている。
【0133】
GNG12は、広く発現し、線維芽細胞および平滑筋細胞に多いことが報告されている(Ueda他、1999)。GNG12は、プロテインキナーゼCに対する基質であり、そして、PMA、LPA(リゾホスファチジン酸)、増殖因子および血清などの作用因子で刺激された後、リン酸化される(Asano他、1998)。GNG12はまた、F−アクチンと会合する(Ueda他、1997)。
【0134】
以前の報告では、GNG12単独の過剰発現はNIH−3T3線維芽細胞に対して何ら影響しないことが示されている。しかし、β1γ12二量体の過剰発現は、細胞の円形化、ストレス繊維の破壊、および細胞遊走の増強を誘導した。GNG12のリン酸化が、細胞運動性に対するその作用のために要求される(Yasuda他、1998)。
【0135】
BNO69遺伝子およびBNO96遺伝子に関する得られる情報に基づいて、そして、両遺伝子が血管形成時に示差的に発現していることが本発明において示されたということを考えれば、これらの遺伝子は、血管形成と関連する機能をそれらが発揮していることと一致する特徴を有するという示唆がもたらされた。この理由から、これらはさらに分析された。
【0136】
実施例5: バーチャルノーザンブロット分析
選択されたクローンの機能的分析の前に、表1および表2に示されるクローン(BNO69およびBNO96を含む)のcDNAアレイ分析から観測される示差的発現をバーチャルノーザンブ分析によって確認した。
【0137】
各時点に由来する増幅されたcDNAをアガロース/EtBrゲルで電気泳動し、サザン転写を確立された技術(Sambrook他、1989)に従ってcDNAをナイロンメンブランに転写した。すべてのcDNAクローン挿入物を、MegaPrime DNA標識システム(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して32Pで標識し、ハイブリダイゼーションを製造者の説明書に従ってExpressHyb溶液(Clontech)において行った。
【0138】
結果に基づき、クローンを調節パターンのそれらのタイプに従って類別化した(図1ならびに表1および表2)。今日までに同定された20個の新規な遺伝子の中で、9個が血管形成時に調節されることが確認され、4個が、バーチャルノーザンブロットで検出できないシグナルをもたらし、残りのクローンは、バーチャルノーザンブロットに基づく発現の調節を示さなかった。同様に、以前には血管形成と関連しなかった94個の既知遺伝子の中で、59個が、血管形成モデルから示差的に調節されることが確認された。示差的な発現を示さなかったクローン(クラスF)、または検出可能な結果をバーチャルノーザンでもたらさなかったクローンは、それでもなお、血管形成に関与すると考えられ、しかしながら、さらなる特徴づけが必要である。
【0139】
実施例6: 細胞および刺激の特異性
示差的に発現しているクローンをさらに特徴づけ、そして血管形成におけるそれらの役割を確認するために、バーチャルノーザンブロットを再び使用して、特異的な増殖因子を用いて単層培養物における細胞タイプ発現特異性およびそれらの刺激を明らかにした。内皮細胞を2次元(2−D)コラーゲンマトリックスに置床し、そして血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、PMA+ACII、またはPMA単独で、0.5時間、3.0時間、6.0時間および24時間にわたって刺激した。内皮細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞の初代培養物、ならびに腫瘍細胞株を集めた。RNAをすべての細胞から調製し、SMART−PCR cDNA合成キット(Clontech使用者マニュアルPT3041−1)を使用して、cDNAをバーチャルノーザン調製のために作製した。調製されたブロットを、その後、目的とする特異的な血管形成遺伝子の調節についてプローブした。結果が表1および表2に示される。
【0140】
これまでに分析されたクローンの中で、すべてが内皮細胞で発現していることが確認された。表1に示されたクローンの中で、シグナル特異性について分析された6個のクローンのうちの3個が、VEGF、FGFおよびPMAの存在によって影響を受けることが示された。2個のクローンは、培養中の内皮細胞を刺激した後、応答を全く示さず、そして残りのクローンは、示差的な発現が、2次元コラーゲンゲルに対してではなく、3次元コラーゲンゲルに対して特異的であることを示した。表2に示されるクローンの中で、シグナル特異性について分析された6個のクローンのうちの2個がVEGFおよびFGFの存在によって影響を受けることが示され、1個のクローンがPMAのみの存在によって影響を受けた。1個のクローンは、培養中の内皮細胞を刺激した後、応答を全く示さず、そして残る2個のクローンは、示差的な発現が、2次元コラーゲンゲルに対してではなく、3次元コラーゲンゲルに対して特異的であることを示した。
【0141】
図2および図3には、それぞれBNO69遺伝子およびBNO96遺伝子について、細胞および刺激の特異性の結果の詳細なまとめが示される。これらの結果は、両遺伝子が3次元(3−D)インビトロモデルの3時間の時点でアップレギュレーションされていることを示している。BNO69遺伝子は、FGF、VEGFおよびPMAに応答して発現される一方で、BNO96遺伝子の発現は、PMAに応答して生じるのみである。両遺伝子は、内皮細胞を含むいくつかの細胞タイプで発現している。
【0142】
実施例7: 血管形成遺伝子の分析
表1および表2に示されるような、血管形成プロセスに関係することが本研究によって明らかにされた遺伝子は、インビトロでの血管形成におけるそれらの役割を確認する目的でさらなる研究のために使用することができる。これを行うために、遺伝子の全長のコード配列を、レトロウイルスまたはアデノウイルスなどの好適な発現ベクターにセンス配向およびアンチセンス配向の両方でクローン化し、内皮細胞(EC)への感染のために使用することができる。レトロウイルス感染は、目的とする遺伝子を発現する長期のEC株をもたらし、これに対して、アデノウイルス感染は一過性の遺伝子発現をもたらす。感染細胞は、その後、血管形成における各遺伝子の役割を確認するために、増殖および毛細管形成を含む多数のECアッセイに供することができる。
【0143】
一例として、EC機能のインビトロ調節に対するBNO69およびBNO96の作用が明らかにされ、下記に記載される。
【0144】
EC機能のインビトロ調節−BNO69
内皮細胞の機能および血管形成に対するBNO69の作用には、レトロウイルスまたはアデノウイルスにより媒介される遺伝子移入によってBNO69のアンチセンスを内皮細胞にトランスフェクションすることが伴った。継代数が1代または2代であるヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)が過剰発現実験のために使用された。最初に、BNO69遺伝子を複製欠陥レトロウイルスpRufNeo(RaynerおよびGonda、1994)にクローン化した。市販の細胞株BINGを感染およびウイルス上清の製造のために使用した。レトロウイルスを感染させ、アンチセンスBNO69遺伝子を発現するHUVECクローンを、G418を使用してneo抵抗性について選択し、さらなる増殖および分析のためにまとめてプールした。プールされたクローンの増殖を直接的な細胞計数によって3日間の期間にわたって測定した。これらの実験の結果は、BNO69のアンチセンス構築物を感染させた細胞はその増殖能が低下していることを示した(図4)。
【0145】
HUVECにおけるアンチセンスBNO69のアデノウイルス媒介による発現を使用したその後の実験では、レトロウイルスシステムで観測された作用と類似する、細胞増殖に対する作用が示された。HUVECを、ベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO69のいずれかで感染させ、感染後24時間で集め、そして完全増殖培地でマイクロタイタープレートに置床した。細胞増殖を、以前の記載(Xia他、1999)のように、比色測定によるMTTアッセイによって測定した。アッセイを、細胞を置床した3日後に行った。これらの実験の結果は、HUVECの増殖が、アンチセンスBNO69のアデノウイルス媒介による発現によって阻害されることを示した(図5)。
【0146】
また、レトロウイルス感染システムおよびアデノウイルス感染システムではともに、BNO69に対するアンチセンス構築物を感染させた細胞の大きな特徴は細胞形態学の変化であった。細胞は、サイズが大きくなり、細胞質の範囲が増大しているようであった(図6)。細胞サイズの増大が、前方散乱および側方散乱の両方の測定により細胞のサイズおよび粒状性に関する情報がそれぞれ得られる蛍光活性化細胞分取装置での分析によって確認された。レトロウイルスシステムおよびアデノウイルスシステムではともに、これらのパラメーターが変化した。レトロウイルス感染細胞では、前方散乱が385(EV)および522(ASBNO69R)であり、一方、側方散乱が289(EV)および508(ASBNO69R)と測定された。アデノウイルス感染細胞では、前方散乱に対する測定値が444(EV)および533(ASBNO69R)であり、一方、側方散乱が417(EV)および500(ASBNO69R)と測定された。
【0147】
EC機能のインビトロ調節−BNO96
内皮細胞の機能および血管形成に対するBNO96の作用には、アデノウイルス遺伝子移入によってBNO96のアンチセンスを内皮細胞にトランスフェクションすることが伴った。最初に、アンチセンスBNO96を、(本質的には、http://coloncancer.org/protocol.htmに概略されるような)細菌における相同的組換えを用いて組換えアデノウイルスプラスミドとして作製した。得られたプラスミドを、ウイルスを拡大するために哺乳動物パッケージング細胞株293にトランスフェクションし、続いて、ウイルスを塩化セシウムグラジエントによって精製した。トランスフェクション効率を、上記のプロトコルに示されるように、緑色蛍光タンパク質およびプラーク形成ユニットによって評価した。
【0148】
最初に、アンチセンスBNO96の内皮細胞増殖に対する作用を明らかにした。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)をベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO96のいずれかで感染させ、48時間後に集めた。細胞増殖を、以前の記載(Xia他、1999)のように、比色測定によるMTTアッセイによって測定した。アッセイを、細胞を置床した3日後に行った(平均±SEM、n=4)。アンチセンスBNO96によるHUVECの感染は、細胞が完全増殖培地で培養されたとき、細胞増殖を阻害することが見出された(図7)。
【0149】
血管形成インビトロモデルの別の特徴は、マトリックス内への内皮細胞の遊走である。BNO96がこのプロセスに対して果たす作用を調べるために、細胞遊走実験を次に行った。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)をベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO96のいずれかで感染させ、薬剤無しまたは走化性刺激因子フィブロネクチンのいずれかに向う細胞の遊走を測定した。遊走アッセイは以前の記載(Leavesley他、1993)のように行われた。簡単に記載すると、50μg/mlでのフィブロネクチンを、走化性グラジエントとして作用させるための8.0μm Transwellフィルターの下面にコーティングした。細胞遊走を18時間後〜24時間後に評価した。これらの実験から得られる結果は、アンチセンスBNO96感染細胞が、走化性刺激因子としてのフィブロネクチンに向かう遊走から阻害されることを示した(図8)。
【0150】
血管形成プロセスの本質的な特徴の1つに、毛細管の形成がある。BNO96がこのプロセスにおいて果たす役割を、Matrigelモデルおよびコラーゲンゲルモデルを使用して測定した。Matrigelシステムでは、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)をベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO96のいずれかで感染させ、以前の記載(Cockerill他、1994)のように管形成についてアッセイした。簡単に記載すると、140μlの3x105細胞/mlをMatrigelに置床し、細胞再編成および管形成を24時間の期間にわたって評価した。アンチセンスBNO96感染細胞は、Matrigel毛細管アッセイでは毛細管を作ることができなかった(図9)。
【0151】
コラーゲンゲルモデルでは、HUVECをベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO96のいずれかで再び感染させ、以前の記載(Gamble他、1993)のように管形成について18時間〜24時間の期間にわたってアッセイした。アンチセンスBNO96の発現は、コラーゲンゲル内への細胞遊走(およびその後の管形成)の阻害をもたらした(図10)。
【0152】
次の実験では、BNO96の阻害が、血管形成に関連する機能に対して特異的である内皮細胞変化を生じさせるかどうかという疑問が検討された。E−セレクチンは、TNFおよびIL−1などの炎症性サイトカインによって誘導され、好中球−内皮細胞の相互作用を媒介する内皮細胞特異的接着分子である。従って、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)におけるアンチセンスBNO96の過剰発現の結果としてのE−セレクチン発現に対する作用を明らかにした。使用された方法は、Litwin他(1997)に記載される通りであった。簡単に記載すると、HUVECをベクターのみのコントロールまたはアンチセンスBNO96のいずれかで感染させ、48時間成長させた。この後、細胞を24ウエルトレーに移し、一晩インキュベーションした。0.5ng/mlで腫瘍壊死因子(TNF)を、抗E−セレクチン抗体を使用して細胞表面のE−セレクチン発現について染色する前に4時間にわたって加えた。検出は、フィコエリトリンコンジュゲート化抗マウス抗体によって行われた。これらの実験の結果は、アンチセンスBNO96遺伝子を過剰発現する細胞は、前炎症性刺激因子である腫瘍壊死因子に対して正常な様式で依然として応答して、接着分子E−セレクチンを誘導することを示した(図11)。このことは、内皮細胞の機能に対するアンチセンスBNO96の作用は選択的であることを示唆している。
【0153】
アンチセンスBNO96は、細胞増殖、遊走および毛細管形成を阻害することができ、しかし、TNF誘導によるE−セレクチン発現を阻害することができないということは、BNO96遺伝子のノックダウンが内皮細胞の血管形成能に特異的な影響を及ぼすことを示唆し得る。炎症反応に関係するその能力などの他の細胞機能は、(今日までに測定された機能に関する限り)正常であるようである。従って、BNO96遺伝子は、血管形成プロセスにおいて限定的な役割を果たしていると考えられ、血管形成に関連する病理を処置するために治療法を開発するための標的である。
【0154】
タンパク質相互作用研究
本発明の血管形成タンパク質(これには、BNO69およびBNO96が含まれる)のいずれか1つが既知のタンパク質および未知のタンパク質と結合する能力を調べることができる。酵母ツーハイブリッドシステムなどの手法が、何らかの機能的パートナーを発見および同定するために使用される。酵母ツーハイブリッド手法の基礎となる原理は、酵母における転写活性化因子を含めて、真核生物の転写活性化因子の多くが2つの離れたモジュール状ドメインからなるということである。第1のドメインが、特異的なプロモーター配列に結合するDNA結合ドメインであり、第2のドメインが、RNAポリメラーゼII複合体にDNA結合部位の下流の遺伝子を転写させる活性化ドメインである。いずれのドメインもそれ自身では転写を活性化することができないので、両方のドメインが転写活性化のために要求される。酵母ツーハイブリッド手法では、目的とする遺伝子またはその一部(餌)が、DNA結合ドメインを有するペプチドに対する融合体として発現されるような方法でクローン化される。第2の遺伝子、または多数の遺伝子、例えば、cDNAライブラリーに由来する遺伝子など(標的)が、活性化ドメインに対する融合体として発現されるようにクローン化される。目的とするタンパク質がその結合パートナーと相互作用することにより、DNA結合ペプチドが活性化ドメインと一緒になり、レポーター遺伝子の転写が開始される。第1のレポーター遺伝子は、相互作用タンパク質を含有する酵母細胞について選択される(このレポーターは、通常、選択培地における増殖のために要求される栄養性遺伝子である)。第2のレポーターは確認のために使用され、そして相互作用タンパク質に応答して発現している間は、第2のレポーターは、通常、増殖のために要求されない。
【0155】
相互作用する遺伝子およびタンパク質の性質もまた、これらのパートナーもまた薬物発見のための標的であり得るように調べることができる。
【0156】
構造研究
本発明の組換え血管形成タンパク質は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞および/または哺乳動物細胞において製造することができ、そして結晶学研究およびNMR研究で使用することができる。タンパク質の分子モデル化と一緒になって、構造から導かれる薬物設計が促進され得る。
【表1】
【表2】
【0157】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜20の1つに示される配列を含む単離された核酸分子。
【請求項2】
配列番号1〜114の1つに示される配列またはそのフラグメントを含み、血管形成プロセスにおいて役割を果たすポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項3】
配列番号1〜114の1つに示される配列を含む核酸分子に対して少なくとも70%が同一であり、血管形成プロセスにおいて役割を果たすポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項4】
少なくとも85%が同一である、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
少なくとも95%が同一である、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
血管形成プロセスにおいて役割を果たすポリペプチドをコードし、かつ配列番号1〜114の1つに示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子と、ストリンジェントな条件のもとでハイブリダイゼーションする単離された核酸分子。
【請求項7】
ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患(これらに限定されない)を含む血管形成関連疾患において役割を果たすポリペプチドをコードする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
配列番号1〜20に示されるヌクレオチド配列のいずれか1つからなる単離された核酸分子。
【請求項9】
配列番号115〜125の1つに示される配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項10】
配列番号115〜217の1つに示される配列またはそのフラグメントを含み、血管形成プロセスにおいて役割を果たす単離されたポリペプチド。
【請求項11】
血管形成プロセスにおいて役割を果たし、配列番号115〜217に示されるアミノ酸配列との同一性が少なくとも70%である単離されたポリペプチド。
【請求項12】
配列同一性が少なくとも85%である、請求項11に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項13】
配列同一性が少なくとも95%である、請求項11に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項14】
ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化などの心臓血管疾患、虚血性四肢疾患および冠状動脈疾患(これらに限定されない)を含む血管形成プロセス関連疾患において役割を果たす、請求項9〜13のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項15】
配列番号115〜125に示されるアミノ酸配列のいずれか1つからなる単離されたポリペプチド。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載される発現ベクターを含む細胞。
【請求項18】
ポリペプチドを調製する方法であって、
(1)請求項17に記載される細胞を、ポリペプチドを産生させるために効果的な条件のもとで培養する工程;および
(2)ポリペプチドを回収する工程
を含む方法。
【請求項19】
請求項18に記載される方法によって調製されるポリペプチド。
【請求項20】
対象の血管形成関連障害を処置するための医薬品の製造における、請求項1〜8のいずれか一項に示される核酸分子または請求項9〜15もしくは請求項19のいずれか一項に示されるポリペプチドまたはその活性なフラグメントによってコードされるポリペプチドの発現または活性の調節剤の使用。
【請求項21】
ポリペプチドの発現または活性が、対象に以下のもののいずれか一つを導入することによって調節される、請求項20に記載の方法:
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子のアンタゴニストまたはアゴニスト;
(b)請求項9〜15または請求項19のいずれか一項に記載されるポリペプチドのアンタゴニストまたはアゴニスト;
(c)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子に対するアンチセンスである核酸;
(d)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子の少なくとも一部分の相補体である核酸分子であって、核酸分子の発現またはレベルを調節することができる核酸分子;
(e)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子またはその活性なフラグメントもしくは変化体;
(f)請求項9〜15または請求項19のいずれか一項に記載されるポリペプチド;または
(g)前記ポリペプチドと特異的に結合することができる抗体。
【請求項22】
核酸分子相補体が以下の一つ以上のものから選択される、請求項21に記載の使用:
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子によってコードされるmRNAとハイブリダイゼーションするRNA分子;
(b)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子によってコードされるmRNAとハイブリダイゼーションする短い干渉RNA(siRNA);または
(c)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子に対して標的化される触媒核酸分子。
【請求項23】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項20〜22のいずれか一項に示される使用。
【請求項24】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物をスクリーニングするための、請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子、または請求項9〜15もしくは請求項19に記載されるポリペプチドまたはその活性なフラグメントの使用。
【請求項25】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物をスクリーニングするための、請求項17に記載される細胞の使用。
【請求項26】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項24または25に示される使用。
【請求項27】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物についてスクリーニングする方法であって、
(a)請求項9〜15もしくは請求項19のいずれか一項に記載されるポリペプチドまたはその活性なフラグメントを提供する工程、
(b)候補薬学的化合物を前記ポリペプチドに加える工程、および
(c)前記ポリペプチドへの前記候補薬学的化合物の結合を明らかにする工程
を含み、
ポリペプチドに結合する化合物が候補薬学的化合物である、方法。
【請求項28】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物についてスクリーニングする方法であって、
(a)請求項17に記載される細胞を提供する工程、
(b)候補薬学的化合物を前記細胞に加える工程、および
(c)前記細胞の機能的性質に対する前記候補薬学的化合物の作用を明らかにする工程
を含み、
前記細胞の機能的性質を変化させる化合物が候補薬学的化合物である、方法。
【請求項29】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物についてスクリーニングする方法であって、
(a)請求項17に記載される細胞を提供する工程、
(b)候補薬学的化合物を前記細胞に加える工程、および
(c)発現ベクターの一部である核酸分子の前記細胞における発現に対する前記候補薬学的化合物の作用を明らかにする工程
を含み、
発現ベクターの一部である核酸分子の前記細胞における発現を変化させる化合物が候補薬学的化合物である、方法。
【請求項30】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物についてスクリーニングする方法であって、
(a)請求項17に記載される細胞を提供する工程、
(b)候補薬学的化合物を前記細胞に加える工程、および
(c)発現ベクターの一部である核酸分子によってコードされるポリペプチドの前記細胞における発現または活性に対する前記候補薬学的化合物の作用を明らかにする工程
を含み、
発現ベクターの一部である核酸分子によってコードされるポリペプチドの前記細胞における発現または活性を変化させる化合物が候補薬学的化合物である、方法。
【請求項31】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項27〜30のいずれか一項に示される方法。
【請求項32】
請求項9〜15もしくは請求項19のいずれか一項に記載される単離されたポリペプチドまたはその活性なフラグメントとの特異的な免疫学的反応性を有する抗体。
【請求項33】
請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子に対して標的化されるDNAザイムまたはリボザイム。
【請求項34】
血管形成関連障害の診断または予後における、請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子の使用。
【請求項35】
血管形成関連障害の診断または予後における、請求項9〜15または請求項19のいずれか一項に記載されるポリペプチドの使用。
【請求項36】
血管形成関連障害の診断または予後における、請求項32に記載される抗体の使用。
【請求項37】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項34〜36のいずれか一項に示される使用。
【請求項38】
血管形成関連障害の診断または予後のための方法であって、
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子の正常な発現および/または活性に対するプロフィルを非罹患対象において明らかにする工程、
(b)異常な発現および/または活性が疑われる人における前記核酸分子の発現レベルおよび/または活性レベルを測定する工程、および
(c)前記核酸分子の測定された発現レベルおよび/または活性レベルを、正常な発現および/または活性に対するプロフィルと比較する工程
を含み、
前記対象における前記核酸分子の変化した発現レベルおよび/または活性レベルが血管形成関連障害の徴候であるか、またはそれに対する素因である、方法。
【請求項39】
前記核酸分子由来のプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイが、発現レベルを測定するために用いられる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
血管形成関連障害の診断または予後のための方法であって、
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子に対応するDNAを対象から得る工程、および
(b)前記対象から得られたDNAを、対応する野生型核酸分子のDNAと比較する工程
を含み、
前記対象における変化したDNA特性が血管形成関連障害の徴候であるか、またはそれに対する素因である、方法。
【請求項41】
血管形成関連障害の診断または予後のための方法であって、
(a)請求項9〜15または請求項19のいずれか一項に記載される野生型ポリペプチドの物理的性質を明らかにする工程、
(b)前記ポリペプチドを、そのポリペプチドの異常が疑われる人から得る工程、および
(c)前記人によって発現される前記ポリペプチドに対する性質を測定し、その性質を、野生型ポリペプチドに対する明らかにされた性質と比較する工程
を含み、
前記人における変化したポリペプチド性質が血管形成関連障害の徴候であるか、またはそれに対する素因である、方法。
【請求項42】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項38〜41のいずれか一項に示される方法。
【請求項43】
請求項1〜8のいずれか一項に記載される単離された核酸分子を含む遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項44】
請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子の破壊を含む遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項45】
血管形成関連障害を処置するために有用な候補薬学的化合物についてスクリーニングすることにおける、請求項43または44に記載される遺伝子改変非ヒト動物の使用。
【請求項46】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項45に示される使用。
【請求項1】
配列番号1〜20の1つに示される配列を含む単離された核酸分子。
【請求項2】
配列番号1〜114の1つに示される配列またはそのフラグメントを含み、血管形成プロセスにおいて役割を果たすポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項3】
配列番号1〜114の1つに示される配列を含む核酸分子に対して少なくとも70%が同一であり、血管形成プロセスにおいて役割を果たすポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項4】
少なくとも85%が同一である、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
少なくとも95%が同一である、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
血管形成プロセスにおいて役割を果たすポリペプチドをコードし、かつ配列番号1〜114の1つに示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子と、ストリンジェントな条件のもとでハイブリダイゼーションする単離された核酸分子。
【請求項7】
ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化、虚血性四肢疾患および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患(これらに限定されない)を含む血管形成関連疾患において役割を果たすポリペプチドをコードする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
配列番号1〜20に示されるヌクレオチド配列のいずれか1つからなる単離された核酸分子。
【請求項9】
配列番号115〜125の1つに示される配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項10】
配列番号115〜217の1つに示される配列またはそのフラグメントを含み、血管形成プロセスにおいて役割を果たす単離されたポリペプチド。
【請求項11】
血管形成プロセスにおいて役割を果たし、配列番号115〜217に示されるアミノ酸配列との同一性が少なくとも70%である単離されたポリペプチド。
【請求項12】
配列同一性が少なくとも85%である、請求項11に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項13】
配列同一性が少なくとも95%である、請求項11に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項14】
ガン、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、乾癬、アテローム性動脈硬化などの心臓血管疾患、虚血性四肢疾患および冠状動脈疾患(これらに限定されない)を含む血管形成プロセス関連疾患において役割を果たす、請求項9〜13のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項15】
配列番号115〜125に示されるアミノ酸配列のいずれか1つからなる単離されたポリペプチド。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載される発現ベクターを含む細胞。
【請求項18】
ポリペプチドを調製する方法であって、
(1)請求項17に記載される細胞を、ポリペプチドを産生させるために効果的な条件のもとで培養する工程;および
(2)ポリペプチドを回収する工程
を含む方法。
【請求項19】
請求項18に記載される方法によって調製されるポリペプチド。
【請求項20】
対象の血管形成関連障害を処置するための医薬品の製造における、請求項1〜8のいずれか一項に示される核酸分子または請求項9〜15もしくは請求項19のいずれか一項に示されるポリペプチドまたはその活性なフラグメントによってコードされるポリペプチドの発現または活性の調節剤の使用。
【請求項21】
ポリペプチドの発現または活性が、対象に以下のもののいずれか一つを導入することによって調節される、請求項20に記載の方法:
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子のアンタゴニストまたはアゴニスト;
(b)請求項9〜15または請求項19のいずれか一項に記載されるポリペプチドのアンタゴニストまたはアゴニスト;
(c)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子に対するアンチセンスである核酸;
(d)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子の少なくとも一部分の相補体である核酸分子であって、核酸分子の発現またはレベルを調節することができる核酸分子;
(e)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子またはその活性なフラグメントもしくは変化体;
(f)請求項9〜15または請求項19のいずれか一項に記載されるポリペプチド;または
(g)前記ポリペプチドと特異的に結合することができる抗体。
【請求項22】
核酸分子相補体が以下の一つ以上のものから選択される、請求項21に記載の使用:
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子によってコードされるmRNAとハイブリダイゼーションするRNA分子;
(b)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子によってコードされるmRNAとハイブリダイゼーションする短い干渉RNA(siRNA);または
(c)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子に対して標的化される触媒核酸分子。
【請求項23】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項20〜22のいずれか一項に示される使用。
【請求項24】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物をスクリーニングするための、請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子、または請求項9〜15もしくは請求項19に記載されるポリペプチドまたはその活性なフラグメントの使用。
【請求項25】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物をスクリーニングするための、請求項17に記載される細胞の使用。
【請求項26】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項24または25に示される使用。
【請求項27】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物についてスクリーニングする方法であって、
(a)請求項9〜15もしくは請求項19のいずれか一項に記載されるポリペプチドまたはその活性なフラグメントを提供する工程、
(b)候補薬学的化合物を前記ポリペプチドに加える工程、および
(c)前記ポリペプチドへの前記候補薬学的化合物の結合を明らかにする工程
を含み、
ポリペプチドに結合する化合物が候補薬学的化合物である、方法。
【請求項28】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物についてスクリーニングする方法であって、
(a)請求項17に記載される細胞を提供する工程、
(b)候補薬学的化合物を前記細胞に加える工程、および
(c)前記細胞の機能的性質に対する前記候補薬学的化合物の作用を明らかにする工程
を含み、
前記細胞の機能的性質を変化させる化合物が候補薬学的化合物である、方法。
【請求項29】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物についてスクリーニングする方法であって、
(a)請求項17に記載される細胞を提供する工程、
(b)候補薬学的化合物を前記細胞に加える工程、および
(c)発現ベクターの一部である核酸分子の前記細胞における発現に対する前記候補薬学的化合物の作用を明らかにする工程
を含み、
発現ベクターの一部である核酸分子の前記細胞における発現を変化させる化合物が候補薬学的化合物である、方法。
【請求項30】
血管形成関連障害の処置のための候補薬学的化合物についてスクリーニングする方法であって、
(a)請求項17に記載される細胞を提供する工程、
(b)候補薬学的化合物を前記細胞に加える工程、および
(c)発現ベクターの一部である核酸分子によってコードされるポリペプチドの前記細胞における発現または活性に対する前記候補薬学的化合物の作用を明らかにする工程
を含み、
発現ベクターの一部である核酸分子によってコードされるポリペプチドの前記細胞における発現または活性を変化させる化合物が候補薬学的化合物である、方法。
【請求項31】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項27〜30のいずれか一項に示される方法。
【請求項32】
請求項9〜15もしくは請求項19のいずれか一項に記載される単離されたポリペプチドまたはその活性なフラグメントとの特異的な免疫学的反応性を有する抗体。
【請求項33】
請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子に対して標的化されるDNAザイムまたはリボザイム。
【請求項34】
血管形成関連障害の診断または予後における、請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子の使用。
【請求項35】
血管形成関連障害の診断または予後における、請求項9〜15または請求項19のいずれか一項に記載されるポリペプチドの使用。
【請求項36】
血管形成関連障害の診断または予後における、請求項32に記載される抗体の使用。
【請求項37】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項34〜36のいずれか一項に示される使用。
【請求項38】
血管形成関連障害の診断または予後のための方法であって、
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子の正常な発現および/または活性に対するプロフィルを非罹患対象において明らかにする工程、
(b)異常な発現および/または活性が疑われる人における前記核酸分子の発現レベルおよび/または活性レベルを測定する工程、および
(c)前記核酸分子の測定された発現レベルおよび/または活性レベルを、正常な発現および/または活性に対するプロフィルと比較する工程
を含み、
前記対象における前記核酸分子の変化した発現レベルおよび/または活性レベルが血管形成関連障害の徴候であるか、またはそれに対する素因である、方法。
【請求項39】
前記核酸分子由来のプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイが、発現レベルを測定するために用いられる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
血管形成関連障害の診断または予後のための方法であって、
(a)請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子に対応するDNAを対象から得る工程、および
(b)前記対象から得られたDNAを、対応する野生型核酸分子のDNAと比較する工程
を含み、
前記対象における変化したDNA特性が血管形成関連障害の徴候であるか、またはそれに対する素因である、方法。
【請求項41】
血管形成関連障害の診断または予後のための方法であって、
(a)請求項9〜15または請求項19のいずれか一項に記載される野生型ポリペプチドの物理的性質を明らかにする工程、
(b)前記ポリペプチドを、そのポリペプチドの異常が疑われる人から得る工程、および
(c)前記人によって発現される前記ポリペプチドに対する性質を測定し、その性質を、野生型ポリペプチドに対する明らかにされた性質と比較する工程
を含み、
前記人における変化したポリペプチド性質が血管形成関連障害の徴候であるか、またはそれに対する素因である、方法。
【請求項42】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項38〜41のいずれか一項に示される方法。
【請求項43】
請求項1〜8のいずれか一項に記載される単離された核酸分子を含む遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項44】
請求項1〜8のいずれか一項に記載される核酸分子の破壊を含む遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項45】
血管形成関連障害を処置するために有用な候補薬学的化合物についてスクリーニングすることにおける、請求項43または44に記載される遺伝子改変非ヒト動物の使用。
【請求項46】
障害が、ガン;関節炎を含む炎症性疾患;黄斑変性および糖尿病網膜症を含む角膜、網膜または脈絡膜の新生血管形成;乾癬;心臓血管疾患からなる群から選択される請求項45に示される使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−187671(P2010−187671A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37197(P2010−37197)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【分割の表示】特願2003−530854(P2003−530854)の分割
【原出願日】平成14年9月19日(2002.9.19)
【出願人】(502386053)バイオノミックス リミテッド (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【分割の表示】特願2003−530854(P2003−530854)の分割
【原出願日】平成14年9月19日(2002.9.19)
【出願人】(502386053)バイオノミックス リミテッド (13)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]