説明

ヒトBPLPタンパク質由来のペプチド、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド及び該ペプチドに対する抗体

【課題】ヒトBPLPタンパク質由来のペプチド、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド及び該ペプチドに対する抗体の提供。
【解決手段】本発明は、塩基性のプロリンに富んだ涙液タンパク質(BPLP)の成熟生成物であるペプチド、又は該成熟生成物のペプチド誘導体若しくは模倣体に関し、前記ペプチド又はペプチド誘導若しくは模倣体は、金属−エクトペプチダーゼ、特にNEP及び/又はAPNに対する阻害特性を提示する。本発明はまた、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び前記ペプチドに対する抗体に関する。さらに、本発明は、ヒトBPLPタンパク質及びそれから誘導された阻害性ペプチド、ヒトBPLPタンパク質又はそれから誘導されたペプチドをコードするポリペプチド、並びにBPLPタンパク質又はそれから誘導されたペプチドに対する抗体の診断的及び治療的使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−エクトペプチダーゼの新規阻害剤としてのヒトBPLPタンパク質由来のペプチドに関する。本発明はまた、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び該ペプチドに対する抗体に関する。さらに、本発明は、ヒトBPLPタンパク質、それに由来するペプチド及びその模倣体、ヒトBPLPタンパク質若しくはそれに由来するペプチドをコードするポリペプチド、並びにBPLPタンパク質若しくはそれに由来するペプチドに対する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノムアプローチにおいて、アンドロゲン制御遺伝子は、成熟ラットの顎下腺(SMG)及び前立腺に主に発現しており、同定されている(Rosinski−Chupinら、1988及び欧州特許第0394424号)。その遺伝子は、対をなした塩基性アミノ酸を変換する酵素による複数の塩基性部位での開裂によって、インビボで前駆体から選択的に成熟する3つの構造的に関連したペプチドを生じる前駆体タンパク質、顎下ラット1ubandibular at1)タンパク質(SMR1)をコードする(Rougeotら、1994)。
【0003】
ポストゲノム及びフィジオームのアプローチにおいて、哺乳動物における細胞間コミュニケーションのホルモン伝達物質、即ち、SMR1プレプロホルモンから発生する最終成熟ペプチド:(配列QHNPRの)シアロルフィン(Sialorphin)と現在命名されたSMR1−ペンタペプチドの存在に関する証拠を提供する分子的及び機能的基準が確立された。それ故に、シアロルフィンは、外分泌性及び内分泌性ペプチドシグナルであり、雄性ラットでは、その発現は、活性なアンドロゲン制御下にあり、そして、分泌は、環境ストレスに対するアドレナリンが仲介する応答下で引き起こされる(Rougeotら、1997)。
【0004】
性的に成熟した雄性ラットでは、アンドロゲン制御のシアロルフィンが環境の急性ストレスに応答して急速に分泌されるという事実は、このシグナリング仲介物が繁殖と連結したある生理的及び行動的統合における役割を果たすかもしれないという前提へと導いた。つまり、同著者らは、マウント、挿入及び射精の頻度及び待ち時間、並びに社会的な性的相互作用を含む、雄の性行動パターンに関するシアロルフィンによって誘導される効果を調査した。得られたデータは、シアロルフィンが、生理的な血中濃度に関連した投与量で、雄性ラットの交配パターン、即ち、投与量に依存した方法で、性的パフォーマンスにおける二元的な促進/阻害効果を発揮すること、その一方で、全ての投与量で、見せ掛けの性的興奮又は欲求を刺激することを調節する能力を有することを示した。つまり、内因性のアンドロゲン制御のシアロルフィンは、状況に応じて、適切な雄性ラットの性的応答に役立つ興奮性と阻害性メカニズムとの間の適応均衡を調節する手助けとなることが提案されている。
【0005】
国際特許出願WO01/00221は、性的欠陥を含む損なわれた対人関係及び行動障害を治療するためのSMR1の成熟生成物の使用を記載する。
【0006】
さらに、これらの著者らは、SMR1成熟生成物が、無機イオン濃度に深く関係する臓器における特定の標的部位を認識することを発見した。国際特許出願WO98/37100は、ヒト又は動物の体内における無機イオン不均衡と関連した疾患を予防し又は治療するためのSMR1の成熟生成物の治療的使用を記載する。
【0007】
ストレス状況に応答して、シアロルフィンは、急性に放出され、急速に分布され、そして、その全身の膜関連の標的物によって持続的に利用される(Rougeotら、1997)。著者らは、シアロルフィンがインビボで結合する主要な細胞表面分子は膜に結合した金属エクト−エンドペプチダーゼ、NEP(中性エンドペプチダーゼ(Neutral Endopeptidase);ネプリライシン(Neprilysin)EC3.4.24.11)、又はエンケファリナーゼ(enkephalinase)であることを示している(Rougeotら、2003)。さらに、シアロルフィンは、エクスビボでNEP活性の生理的なアンタゴニストであることが示され;そして、可溶性の精製した腎性NEPと基質としての人工的な蛍光性DGNPA(ダンシル−Gly−(pNO2)Phe−βAla)を用いるインビトロのアッセイにおいて評価したNEPとシアロルフィンとの直接的な相互作用は、シアロルフィンがNEP活性を阻害した(シアロルフィンのIC50:0.6μM)という直接的な証拠を提供した。シアロルフィンは、現在までにげっ歯類において同定されたNEP−エンケファリナーゼ活性の第一の生理学的阻害剤である(Rougeotら、2003及び欧州特許出願EP1216707)。
【0008】
NEPは、神経組織及び全身組織における細胞表面に局在しており、多くの神経ペプチド及び制御性ペプチドの分泌後のプロセッシング又は代謝を触媒する外酵素として重要な機能を果たす。NEPに対する主要な生理学的な関連基質は、エンケファリン、サブスタンスP及び心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)である。これらの哺乳動物のシグナルペプチドは、中心性及び末梢性疼痛の認識、炎症性現象、動脈緊張及びミネラルの恒常性の調整に関係する。それらの機能的能力の調節におけるそれらの生理的な重要性及びNEP外酵素の重大な役割は、生理学的並びに生理病理学的な治療的観点から内因性の阻害剤によってそれらの可能な保護を調査し知ることを重要なものにさせる。
【0009】
分子薬理学及び行動薬理学の異なったモデルを使用することによって、著者らは、生理学的仲介物質であるシアロルフィンが、インビトロでその2種の生理学的な関連基質、サブスタンスP及びMet−エンケファリンを分解することから脊髄性及び腎性NEPを妨げることを示した。シアロルフィンは、サブスタンスPの分解を0.4−1μMのIC50で阻害し、神経組織(脊髄)又は全身組織(腎臓、骨、歯、胎盤、前立腺、GSM、腸)に由来する膜結合のNEPの競合阻害剤として作用した。インビボでは、静脈内のシアロルフィンは、傷害によって誘導される急性及び緊張性疼痛の2つのラット行動モデル、ピンによる疼痛試験(機械的痛覚)及びホルマリン試験(化学的痛覚)における強い抗侵害受容応答を引き出した。シアロルフィンによって誘導された無痛覚は、μ−及びδ−オピオイド受容体の活性化を要求し、エンケファリン作用の伝達における内因性のオピオイド受容体の関与と一致する。実際には、これらの受容体は、内因性のオピオイド作用のシグナル、例えばNEP及びアミノペプチダーゼAPNによって不活化されるエンケファリンの伝達、また、外因性の鎮静剤であるμ−オピオイド受容体と主に相互作用するモルヒネの伝達に関与する。シアロルフィンは、インビボにおいてエクト−エンケファリナーゼを阻害することによって侵害受容の刺激に続いて放出される内因性のエンケファリンを保護し、つまりそれらの鎮痛効果の可能性をもたらすと結論付けられた。別に、内因性のオピオイド系、特にδ−オピオイドが仲介する経路はまた、抑うつ行動の病因に連結しており;例えば、行動的落胆の解析モデル(強制の水泳試験)を用いて、著者らは、シアロルフィンが雄性ラットで有意な抗抑うつ活性を提示することを示した。シアロルフィンは、現在までに哺乳動物において同定されたNEP活性の第一の天然の全身性活性制御因子である。さらに、それは、傷害に続く疼痛認識の新規な生理学的調節因子であり、推定される新規な抗侵害受容剤及び抗抑うつ剤として、新規なクラスの治療用分子の先駆者となるかもしれないという証拠が提供された(Rougeotら、2003;欧州特許第1,343,519号及び欧州特許第1,343,520号)。
【0010】
シアロルフィンの強力な鎮痛効果は、エンケファリンを分解する外酵素による不活化からエンケファリンを完全に保護する能力に関連付けられる。インビボでは、エンケファリンは、NEP及びAPNの両者のエクトペプチダーゼによって非常な効率で(ほとんど数秒とかからないで)不活化される。一致して、はじめに開発された合成阻害剤は、NEPのみ特異的であるか(例えば、チオールファン(Thiorphan))、又はAPN特異的であるか(例えば、ベスタチン(Bestatin))のいずれかであり、有意でないか又は弱い抗侵害受容効果を提示する。つまり、ラットのシアロルフィンは、生理学的にNEP及びAPN金属−エクトペプチダーゼの二元的阻害剤であり;さらに、ストレスに対する適応性応答のこの内分泌性シグナル伝達物質は、ラットにおける疼痛認識の強力な阻害剤であり、そして、その鎮痛効果は、モデル方法によって他に開発されたケラトルファン(kelatorphan)のような合成の二元的NEP/APN阻害剤よりも強力である。そのため、シアロルフィンは、その標的物の立体構造的及び分布的特徴に対する特異性及び生物学的利用能の点から顕著に適応され、結果として、統合の観点からより効果的である。これらの観察を考慮すると、機能的並びに生理病理学的及び治療的観点から、ラットのシアロルフィンによって制御される機能の生物学的重要性は、ヒトにおいて、ラットのシアロルフィンの内因性の機能的ホモロガスを調査し同定することを重要なものにさせる。
【0011】
シアロルフィンは、哺乳動物において、膜結合のエンケファリナーゼ活性の唯一同定された生理学的な全身性活性の制御因子である。これは、ヒトの唾液及び血中にそのような内因性のNEP−エクトペプチダーゼ阻害剤が存在するという疑問を投げかける。免疫反応性ではないQHNPRペプチド(シアロルフィン)は、感度の高い特異的なラジオイムノアッセイを用いて、男性ヒトの唾液において検出された(Rougeotら、1994)。しかしながら、文献的データは、ヒト、顕著にはヒトの唾液中のNEPエクトペプチダーゼ活性を阻害する低分子量の物質(3000Da以下)の存在を想定させる。この(これらの)唾液成分(又は複数)は、生化学的には特徴付けられていないが、性に関連した差異がヒトのエンケファリンを分解する外酵素のこの(これらの)阻害剤(又は複数)の唾液生成物において観察された(Marini及びRoda、2000)。顕著に、その状況は、雄性ラットにおける阻害剤によって同定されたものと非常に類似しており、顎下腺及び唾液は、それぞれシアロルフィンの主要な合成及び分泌の区分を示した。
【0012】
シアロルフィンのSMR1前駆体をコードする遺伝子は、メンバーがヒトで同定されている多重遺伝子族に属する。しかしながら、ラットSMR1遺伝子(SMR1をコードするVCSA1)の狭義のホモロガスなヒト遺伝子は、ヒト(cDNAクローニング及びヒトゲノム解析)において見出されなかった。さらに、膜に結合したヒトNEPに対するラットのシアロルフィンの阻害能力は、ヒトの前立腺細胞株(LNCaP)によって発現され、存在するが、げっ歯類(ラット、ウサギ)のNEPに対して観察されたものより約10倍低い。ラットのシアロルフィン及びNEP外酵素との間の機能的相互作用における見せ掛けの選択性は、ラット及びヒトのNEPが相対的に高いアミノ酸配列の類似性(約85%)を有するという事実を考慮して、少なくとも驚くことである。別に、ラットのシアロルフィンの前駆体(SMR1)をコードする遺伝子に属する多重遺伝子族のヒト遺伝子の特徴付けは、それが同じ染色体領域である第4染色体のq13−21に凝集される3つの遺伝子、即ちhPB、hPBI及びBPLPが特徴付けられたうちのこの族のヒトのいくつかの遺伝子中に存在することを示した(Isemura、2000)(Isemura及びSaitoh、1997)(Dickinson及びThiesse、1996)。
【発明の概要】
【0013】
本発明者らは、SMR1−ペンタペプチドのシアロルフィンの機能的ヒトホモロガスとして考えられる新規ペプチドを現在同定している。
【0014】
本発明者らによって回収された無数のデータは、配列QRFSRの新規ペプチドがBPLPタンパク質(「塩基性のプロリンに富んだ涙液タンパク質」)から誘導されることを支持する。
【0015】
ヒト遺伝子BPLPは、Dickinsonらによってクローニングされ特徴付けられたcDNAから予測される201個のアミノ酸のポリペプチド配列(潜在的な分泌のシグナルペプチドを含む)をコードする(Dickinson及びThiesse、1996)。遺伝子BPLPは、ヒトの涙腺及び顎下腺に発現する。添付した配列表において;配列番号1は、BPLPをコードするcDNA配列を示し、そして、配列番号2はBPLPアミノ酸配列を示す。
【0016】
本発明者らは、SMR1前駆体由来のラットのシアロルフィンの成熟プロセッシングに基づいて、分泌したBPLPタンパク質の(ラット、マウス及びヒトの間で)最も保存されたN末端領域におけるコンセンサス部位を定義した。
【0017】
例えば、これらのコンセンサス部位は、シグナルペプチダーゼに対して要求される配列を有する領域内で、そして、対をなした塩基性アミノ酸変換酵素に対してプロセッシングシグナルとして認識されるR−R結合を有する対をなした塩基性残基でシグナルペプチド開裂部位として定義された。
【0018】
そのようなコンセンサス部位で、次いで、本発明者らは、ラットのQHNPRシアロルフィンに構造的に密接に関連した配列QRFSRを見出した。
【0019】
このペプチドは合成され、生理学的なNEP基質、即ちサブスタンスPの分解を阻害する能力に対して解析された。
次いで、このペプチドは、シアロルフィンのヒトの機能的ホモロガスとして同定された。
【0020】
本発明は、金属−エクトペプチダーゼの新規阻害剤としてヒトBPLPタンパク質から誘導されるペプチドに関する。
【0021】
より具体的には、本発明は、侵害受容伝達を調整する神経内分泌ペプチド伝達物質(例えば、エンケファリン)の効果、健康、及び/又は主にNa/Pi/Ca/H20の恒常的交換(例えば、ナトリウム利尿ペプチド)を可能にするのに有用なBPLPタンパク質の成熟生成物、特にQRFSRペプチド、並びにそのペプチド誘導体及び模倣体に関する。
【0022】
本発明はまた、前記ペプチド及びペプチド誘導体をコードするポリヌクレオチド、並びに前記ペプチド及びそのペプチド誘導体に対する抗体に関する。
【0023】
さらに、本発明は、ヒトBPLPタンパク質、ヒトBPLPタンパク質によって誘導されたペプチド、及びそのペプチド誘導体及び模倣体の診断的及び治療的使用、並びにヒトBPLPタンパク質、ヒトBPLPタンパク質によって誘導されたペプチド及びそのペプチド誘導体をコードするポリヌクレオチドの診断的及び治療的使用、及びヒトBPLPタンパク質、ヒトBPLPタンパク質によって誘導されたペプチド及びそのペプチド誘導体の診断的及び治療的使用に関する。
【0024】
本発明のペプチド、タンパク質、又は核酸は単離された形態又は精製された形態であることは理解されるべきである。
【0025】
《精製した》及び《単離した》によって、タンパク質若しくはペプチド(抗体を含む)又はヌクレオチド配列に言及する場合、他の生物学的分子が実質的にない状態で同定された分子が存在することが意味される。本明細書で使用される用語「精製した」は、好ましくは重量で少なくとも75%、より好ましくは重量で少なくとも85%、より好ましくはさらに重量で少なくとも95%、そして最も好ましくは重量で少なくとも98%の同型の生物学的分子が存在することを意味する。特定のポリペプチドをコードする「単離された」又は「精製された」核酸分子は、対象とするポリペプチドをコードしない他の核酸分子が実質的にない核酸分子を意味する。しかしながら、その分子は、組成物の基本的な特徴に有害的に影響を与えないいくつかの追加の塩基又は部分を含んでいてもよい。
【0026】
ペプチド
本発明の目的のために、「ペプチド」は、ペプチド結合によって直線配列で互いに連結した直線配列のアミノ酸残基から構成される分子である。そのような直線配列は、場合によっては環状であってもよく、即ち、直線状ペプチドの両端又はそのペプチド内のアミノ酸の側鎖が、例えば化学結合によって接続していてもよい。本発明に係るそのようなペプチドは、約3個ないし約500個のアミノ酸、好ましくは約3個ないし約100個のアミノ酸、及び最も好ましくは約3個ないし約50個のアミノ酸、そして特に約3ないし15個のアミノ酸を含むことができ、さらに、二次、三次又は四次構造、並びに他のペプチド又は他の非ペプチド性分子との分子間結合を含んでもよい。そのような分子間結合は、限定なしに、共有結合(例えば、ジスルフィド連結を通じて)、キレート化、静電的相互作用、疎水性相互作用、水素結合、イオン双極子相互作用、双極子間相互作用又は上記の任意の組み合わせを通じてでもよい。
【0027】
これらのペプチドにおいて、N末端環状化/脱環状化により、Glp及びGlnは相互変換する。
本発明の課題は、ヒトBPLPタンパク質から誘導され、金属−エクトペプチダーゼにおける調節活性、特に阻害活性を有するペプチドである。
【0028】
「ヒトBPLPタンパク質から誘導される」とは、BPLPタンパク質断片を含む、それから本質的になる、又はそれからなることを含む。好ましい態様において、前記ペプチドは、3個ないし約150個のアミノ酸からなる。最も好ましくは、前記ペプチドは、100個未満のアミノ酸からなる。
【0029】
具体的には、本発明の課題は、BPLPタンパク質の成熟生成物、並びにそのペプチド誘導体である。
より具体的には、塩基性のプロリンに富んだ涙液タンパク質(BPLP)の成熟生成物又は前記成熟生成物のペプチド誘導体であるペプチドに関し、そのペプチド又はペプチド誘導体は、金属−エクトペプチダーゼ、特にNEP及び/又はAPN、そしてより具体的にはNEPに対する阻害的性質を提示する。
【0030】
「成熟生成物」は、天然の成熟酵素若しくは酵素を変換するプロホルモン、又はフリン(furin)、PC変換酵素若しくはPACE4(Seidah、1995)のような関連した単一の若しくは対をなした塩基性アミノ酸を開裂する酵素によってBPLPタンパク質前駆体の開裂を通じて得られるペプチドである。
【0031】
本発明のペプチドは、「ペプチド誘導体」を含む。
「ペプチド誘導体」は、元のペプチドからアミノ酸置換、好ましくは、具体的に元のアミノ酸が15個未満のアミノ酸、好ましくは10個未満のアミノ酸を含む場合、元のペプチドから1個ないし2個のアミノ酸置換を有するペプチドであるが、元のペプチドの結合特異性及び/又は生理学的活性を保持しているペプチドである。本明細書で使用されるように、「元のペプチドの結合特異性を保持している」とは、BPLP成熟生成物の1つに、又はBPLP成熟生成物の受容体に、BPLP成熟生成物であるペプチドの1つと少なくとも10分の1、より好ましくは2分の1、そして最も好ましくは少なくとも同じ大きさである親和性を有して結合するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体に結合することができることを意味する。そのような親和性の決定は、標準的な競合結合的イムノアッセイの条件下で好ましくは行われる。「元のペプチドの生理学的活性を保持している」とは、BPLP成熟ペプチドの任意の1つが結合する能力、そして、金属−エクトペプチダーゼ、特にNEP及び/又はAPN、そしてより具体的にはNEPの活性を調節する能力、そして、他に、局所性及び全身性侵害受容、炎症、抗抑うつ、及び/又はストレスに対するイオン恒常的応答を最適化する能力を保持することを意味する。そのような活性が調節されるかどうかの決定は、本明細書において下記にさらに記載される。
【0032】
本発明のペプチドは、配列X1−X2−Arg−Phe−Ser−Argを含み、それから本質的になり、又はそれからなるペプチド又はペプチド誘導体を含み、ここでX1はH原子又はTyrアミノ酸を表し、X2は、X1がHである場合、Gln若しくはGlpを表し、又はX2は、X1がTyr若しくはCysである場合、Glnを表す。本発明のペプチドが配列X1−X2−Arg−Phe−Ser−Argを含み、又はそれから本質的になる場合には、前記配列は本発明のペプチドのC末端部分である。
【0033】
本発明に係る好ましいペプチドは、配列QRFSRを含み、それから本質的になり、又はそれからなる。
より具体的には、本発明のペプチドは、配列QRFSR(配列番号:3)からなるペプチドである。
本発明の別のペプチドは、配列YQRFSR(配列番号:4)からなるペプチドである。
【0034】
本発明のさらに別のペプチドは、配列CQRFSRからなるペプチドである。
本明細書を通じて、
Glpはピログルタミン酸であり、
Tyr又はYはチロシンであり、
Gln又はQはグルタミンであり、
Arg又はRはアルギニンであり、
Phe又はFはフェニルアラニンであり、
Ser又はSはセリンであり、
Cys又はCはシステインである。
【0035】
本発明に係るペプチドは、慣用的な方法で、(液相でN末端からC末端に、又は固相でC末端からN末端に)導入されるべき異なるアミノ酸残基の連続的カップリングによる液相又は固相におけるペプチド合成によって調製することができ、ここで、N末端及び反応性側鎖は予め慣用的な基によってブロックされる。
【0036】
固相合成に関して、Merrifieldによって説明される手法は、特に使用することができる。その代わりに、Houbenweyl(1974年)によって説明される手法もまた使用することができる。
【0037】
より詳細には、参照は、WO98/37100にされてもよい。
本発明に係るペプチドはまた、遺伝子工学的方法を用いて得ることができる。
好ましい模倣体は、ペプチド模倣体を含み、上述したように、ペプチド誘導体を含む元のペプチドの結合特異性及び/又は生理学的活性を保持する。本明細書で使用されるように、「模倣体」は、天然のペプチドのいくつかの性質、好ましくはそれらの結合特異性及び生理学的活性を模倣する分子である。好ましい模倣体は、本発明に係るペプチドの構造的修飾によって、好ましくは非天然アミノ酸、Lアミノ酸の代わりにDアミノ酸、立体構造の抑制、等比体積の置換、環状化、又は他の修飾を用いて得られる。他の好ましい修飾は、限定されないが、1若しくはそれ以上のアミド結合が非アミド結合によって置換され、及び/又は1若しくはそれ以上のアミノ酸側鎖が異なった化学的部分によって置換され、あるいは1又はそれ以上のN末端、C末端又は1若しくはそれ以上の側鎖が保護基で保護され、及び/又は二重結合及び/又は環状化及び/又は立体特異性が強度及び/又は結合親和性を増加するためにアミノ酸鎖に導入されるものを含む。
本発明のペプチドによって標的とされる金属−エクトペプチダーゼの結合ドメインの結晶構造に基づいて、模倣体はまた、コンピューター支援の薬物設計開発の手段によって得ることができる(Oefnerら(2000);Gomeniら(2001);Jonesら(2002);Kan(2002))。
【0038】
さらに他の好ましい修飾は、酵素分解に対する耐性、特に神経組織及び生殖腺組織による生物学的利用能における改善、より一般的には薬物速度論的性質における改善を増強することを意図するものを含み、特に、下記:
−脂溶性アルコールを用いるエステル化(COOH)若しくはアミド化(COOH)によって、及び/又はアセチル化(NH2)又はNH2末端でのカルボキシアリール若しくは芳香族疎水性鎖を添加することによって、NH2及びCOOH親水性基を保護すること;
−CO−NHアミド結合の逆反転異性体、又はアミド官能基のメチル化(若しくはケトメチレン、メチレンオキシ、ヒドロキシエチレン);
−Lアミノ酸からDアミノ酸への置換
を含む。
【0039】
これら全ての変形体は、当該技術分野において周知である。即ち、本明細書に開示されるペプチド配列が与えられれば、当業者は、そのようなペプチドに類似した又は優れた結合特性及び/又は生理学的活性を有する模倣体を設計し生成することができる(例えば、Horwellら、(1996);Liskampら、(1994);Ganteら、(1994);Seebachら、(1996)を参照されたい)。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「BPLP−ペプチド」は、本発明のBPLPタンパク質、BPLPから誘導されたペプチド、BPLP成熟ペプチド、及びペプチド誘導体及び模倣体(ペプチド模倣体を含む)を意味する。
【0041】
本発明はまた、下記:
−金属−エクトペプチダーゼ受容体、特にNEP受容体又はAPN受容体、特にNEP受容体、BPLP−タンパク質又はその成熟生成物の結合部位、例えばQRFSR;
−BPLP−タンパク質又はその成熟生成物、例えばQRFSR
を含む分子複合体に関する。
【0042】
核酸、発現方法及び検出方法
核酸は、ポリヌクレオチドとも称し、例えば、DNA又はRNA分子であり、上記で定義されるペプチド誘導体を含むペプチドをコードし、本発明の部分でもあり、一方、遺伝子コードの縮重を考慮する。
したがって、本発明は、ヒトBPLPタンパク質から誘導されるペプチド、及びそのペプチド誘導体をコードする核酸を提供する。
【0043】
具体的には、本発明は、上記で定義される配列X1−X2−Arg−Phe−Ser−Argを含み、それから本質的になり、又はそれからなるペプチドをコードする核酸を提供する。本発明のペプチドが配列X1−X2−Arg−Phe−Ser−Argを含み、又はそれから本質的になる場合、前記配列は本発明のペプチドのC末端部分である。好ましい態様において、本発明は、配列QRFSRを含み、それから本質的になり、又はそれからなるペプチドをコードする核酸を提供する。最も好ましい態様では、本発明は、QRFSRをコードする核酸又はYQRFSRをコードする核酸を提供する。
【0044】
本発明の核酸は、標準的なハイブリダイゼーション条件、好ましくは高ストリンジェントな条件下で任意の上記の配列又はそれらの相補的な配列にハイブリダイズする配列を含む。
【0045】
核酸分子は、核酸分子の一本鎖形態が温度及び溶液のイオン強度の適切な条件下で他の核酸分子にアニールすることができる場合、別の核酸分子に「ハイブリダイズできる」(Sambrookら、1989を参照されたい)。温度及びイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。ホモロガスな核酸に対する予備のスクリーニングについては、55℃のTm(融解温度)に対応する低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を使用することができ、例えば、5×SSC、0.1%SDS、0.25%ミルク、及びホルムアミドなし;又は30%ホルムアミド、5×SSC、0.5%SDSである。中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、より高いTm、例えば5×又は6×SCCを有する40%ホルムアミドに対応する。高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、最も高いTm、例えば50%ホルムアミド、5×又は6×SCCに対応する。SCCは、0.15M NaCl、0.015M クエン酸Naである。ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに依存して、塩基間のミスマッチが起こり得るけれども、2つの核酸が相補的な配列を含有することを要求する。核酸をハイブリダイズするための適切なストリンジェンシーは、当該技術分野において周知な変数である核酸の長さ及び相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性又は相同性の程度が大きくなれば、それらの配列を有する核酸のハイブリッドのためのTm値も大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの(より高いTmに対応する)相対的な安定性は、次の順番:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNAで減少する。100ヌクレオチドよりも大きな長さのハイブリッドについては、Tmを計算するための式が導かれている(Sambrookら、上述、9.50−9.51を参照されたい)。より短い核酸、即ちオリゴヌクレオチドを伴うハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さはその特異性を決定する(Smbrookら、上述、11.7−11.8を参照されたい)。ハイブリダイズ可能な核酸の最小の長さは、少なくとも約10ヌクレオチド;好ましくは少なくとも約15ヌクレオチドである。
【0046】
特定の態様において、用語「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、55℃のTmを意味し、前述される条件を利用する。好ましい態様において、Tmは60℃である。より好ましい態様において、Tmは65℃である。特定の態様において、「高ストリンジェンシー」は、0.2×SSCで68℃、50%ホルムアミド、4×SSCで42℃、又はこれら2つの条件のいずれかで観察されるレベルに等しいハイブリダイゼーションのレベルを提供する条件下でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件を意味する。
【0047】
本発明は、さらに、本発明の核酸配列を含むクローニング及び/又は発現用ベクター、及び本発明の核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞、即ちこれらのベクターのうち少なくとも1つが移入された宿主細胞に関する。本発明に係る発現ベクターは、本発明のペプチド誘導体を含むペプチド、又はタンパク質をコードする核酸配列を含み、前記核酸配列は、その発現を可能にする構成要素に操作的に連結している。前記ベクターは、プロモーター配列、翻訳開始及び終止シグナル、並びに翻訳制御のための適切な領域を好都合に含有する。宿主細胞へのその挿入は、一時的又は安定的であってもよい。前記ベクターはまた、翻訳されたタンパク質を分泌するための特異的なシグナルを含有してもよい。
【0048】
これら様々な調節シグナルは、宿主細胞に従って選択され、選択された宿主細胞中で自己複製するベクターに、又は前記宿主のゲノムを組み込むベクター中に挿入することができる。
【0049】
宿主細胞は、原核生物又は真核生物であってもよく、限定されないが、商業的に利用できる細胞株を含む細菌、酵母、植物細胞、昆虫細胞、哺乳動物の細胞を含む。宿主細胞の好ましい例は、COS−1、HEK細胞、293細胞、又はCHO細胞である。
【0050】
本発明の課題はまた、組換えBPLP−ペプチドを生産する方法であり、前記宿主細胞は前記発現ベクターで導入され、BPLP−ペプチドの発現を可能にする条件下で培養される。宿主細胞の遺伝子導入は、任意の標準的な手法、例えばエレクトロポレーション又はリン酸塩カルシウム沈殿又はリポフェクチン(登録商標)を用いて実行することができる。
【0051】
次に、タンパク質又はペプチドは、精製のための周知な方法を用いて回収し、そして精製することができる:組換えペプチド又はタンパク質は、HPLCクロマトグラフィー、特異的な抗体を用いた免疫親和性手法などの方法によって、溶解物又は細胞抽出物、培養液の上清から精製することができる。
【0052】
本発明は、さらに、インビトロでの予測及び/又は診断の方法に関し、本発明の核酸配列、又はそれから誘導されるプローブ若しくはプライマーは、異常に高いか若しくは低い合成を含む異常合成、又はBPLP遺伝子レベルでのゲノムの異常性を検出するために使用される。
【0053】
つまり、本発明は、BPLP生産若しくは任意のその成熟生成物の変更に関係する状態の予測及び/診断のためのインビトロの方法を提供し、該方法は、試験患者の生物学的試料における、BPLP遺伝子又はその転写物における質及び/又は量に関する異常性を検出することを含む。
【0054】
用語「予測」は、生じる疾患又は状態の可能性の決定又は確認を意味する。
本発明は、より具体的には、BPLP遺伝子における異常性を検出する方法に指向し、下記の工程:
−DNAを含有する生物学的試料と、BPLP遺伝子の全部又は一部の増幅を可能にする特異的なオリゴヌクレオチドとを接触させること(試料中に含有されるDNAは、プライマーと生物学的試料に含有されるDNAとのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、適切である場合に、ハイブリダイゼーションし易くされている);
−前記DNAを増幅すること;
−増幅生成物を検出すること;
−得られた増幅された生成物と、正常な対照の生物学的試料を用いて得られた増幅された生産物とを比較し、それによってBPLP遺伝子における可能な異常性を検出すること;
を含む。
【0055】
本発明の方法はまた、生物学的試料に含有されるmRNAを増幅することによって、例えばRT−PCRによって、BPLP遺伝子の転写における異常性の検出に応用することができる。
【0056】
つまり、本発明の別の課題は、前記で定義されるように、BPLP転写における異常性を検出する方法であり、下記の工程:
−生物学的試料に含有されるRNAからcDNAを生成すること;
−プライマーと前記cDNAのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、前記cDNAと、BPLP遺伝子の転写物の全部又は一部の増幅を可能にする特異的なオリゴヌクレオチドとを接触させること;
−前記cDNAを増幅すること;
−増幅生成物を検出すること;
−得られた増幅された生産物と、正常な対照の生物学的試料を用いて得られた増幅された生産物とを比較し、それによってBPLP遺伝子の転写における可能な異常性を検出すること
を含む。
【0057】
生物学的試料から得られた増幅された生産物と、正常な生物学的試料を用いて得られた増幅された生産物とのこの比較は、定量的な比較及び/又は定性的比較である。この後者の場合では、比較は、例えば、特異的なプローブ・ハイブリダイゼーション、配列決定又は制限部位解析によって実行することができる。
【0058】
当業者は、生物学的試料に含有されるDNAの解析、及び遺伝的障害の診断のための標準的な方法を非常に良く知っている。遺伝子型解析に対する多くの戦略が利用可能である。
【0059】
好ましくは、誰でも、BPLP遺伝子における異常性を検出するためにDGGE法(変性濃度勾配ゲル電気泳動)(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)、又はSSCP法(一本鎖構造多型)(Single Strand Conformation Polymorphism)を使用することができる。そのような方法は、好ましくは、その後に直接配列決定が続く。RT−PCR法は、暗号部位の活性化により、エクソンスキッピング又は異常スプライシングのようなスプライシング突然変異の結果を視覚化することを可能にするので、BPLP転写物における異常性を検出するために好都合に使用することができる。同様に、この方法は、好ましくは、その後に直接配列決定が続く。より最近に開発されたDNAクリップを用いる手法はまた、BPLP遺伝子における異常性を検出するために好都合に実施することができる。
【0060】
BPLP遺伝子又はその転写物における異常性を検出するこれらの方法は、機能しないBPLPタンパク質又は突然変異生成物の原因となる突然変異を同定するのに特に有用であり、そして、BPLP遺伝子が関与する場合、疾患のインビトロでの予測及び/又は診断に好都合である。
そのような疾患の例は、「治療への応用」の節で引用した疾患である。
【0061】
抗体及び検出方法
本発明は、さらに、BPLPタンパク質に対して特異的に指向する(即ち、特異的に認識する)抗体を提供する。本発明は、さらに、ペプチド誘導体を含む、上記で定義されるペプチドに対して特異的に指向する(即ち、特異的に認識する)抗体を提供する。
したがって、本発明は、ヒトBPLPタンパク質から誘導されるペプチド、及びそのペプチド誘導体に対する抗体を提供する。
【0062】
より具体的には、本発明は、上記で定義される配列X1−X2−Arg−Phe−Ser−Argを含む、それから本質的になる、又はそれからなるペプチドに対する抗体を提供する。本発明のペプチドが配列X1−X2−Arg−Phe−Ser−Argを含む又はそれから本質的になる場合、前記配列は、本発明のペプチドのC末端部分である。好ましい態様において、本発明は、配列QRFSRを含む、それから本質的になる、又はそれからなるペプチドに対して指向される(即ち、特異的に認識する)抗体を提供する。最も好ましい態様において、本発明は、QRFSRに対して指向される(即ち、特異的に認識する)抗体、又はYQRFSRに対して指向される(即ち、特異的に認識する)抗体、又はCQRFSRに対して指向される(即ち、特異的に認識する)抗体を提供する。
【0063】
用語「抗体」は様々な文法的な形で本明細書で使用され、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち、抗体結合部位又はパラトープを含有する分子を意味する。典型的な抗体分子は、原型の免疫グロブリン分子、実質的に原型の免疫グロブリン分子、及びFab、Fab’、F(ab’)2及びF(v)として当該技術分野において既知の部分を含む免疫グロブリン分子の部分である。
【0064】
BPLP成熟生成物又はそのペプチド誘導体とその受容体との相互作用を阻害する抗体は、より特に有用である。
ポリクローナル抗体が使用できる一方で、モノクローナル抗体は、長期に渡ってより再生産可能であるために好ましい。
【0065】
ポリクローナル抗体を発生する方法はまた周知である。典型的には、そのような抗体は、本発明のタンパク質、又は結合ペプチドを含むペプチドを、免疫前血清を得るためにまず飼育されているニュージーランドのシロウサギに皮下に投与することによって発生させることができる。抗原を少なくとも異なる10箇所又は少なくとも異なる5箇所に1箇所当たり全量50μlで注射することができる。次に、ウサギを最初の注射後5週間飼育し、6週ごとに3回免疫応答の質に応じて、最大で最初の注射よりも5倍低い濃度で、皮下に投与した同抗原で定期的にブーストする。次に、血清試料を各ブースト後10日ごとに回収した。次いで、ポリクローナル抗体を捕捉するために対応する抗原を用いたアフィニティー・クロマトグラフィーによって血清から抗体を回収する。ポリクローナル抗体を発生するこの方法及び他の方法は、E.Harlowら編集、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1988)に開示される。
【0066】
「モノクローナル抗体」は、様々な文法的な形で、特定のエピトープで免疫反応することができる部位を結合するただ1種の抗体を含有する一群の抗体分子を意味する。つまり、モノクローナル抗体は、典型的には、免疫反応する任意のエピトープに対する単一の結合アフィニティーを提示する。したがって、モノクローナル抗体は、複数の抗体結合部位を有し、それぞれが異なるエピトープに対して免疫特異的であり、例えば二重特異性のモノクローナル抗体を含有してもよい。
【0067】
モノクローナル抗体を製造する実験室的方法は、当該技術分野において周知である(例えば、上述のHarlowらを参照されたい)。モノクローナル抗体(Mab)は、哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒトなどを精製したBPLPタンパク質、BPLP成熟生成物、又は結合したBPLP−ペプチドを含むそのペプチド誘導体に対して免疫することによって製造することができる。免疫した哺乳動物における抗体産生細胞を単離し、ミエローマ又はヘテロミエローマ細胞と融合し、ハイブリッド細胞(ハイブリドーマ)を生産する。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、所望のモノクローナル抗体の供給源として使用される。
【0068】
Mabはハイブリドーマの培養によって生産することができるが、本発明はそれほど限定されるべきではない。また、ハイブリドーマからクローニングされた発現している核酸によって生産されたMabの使用が意図される。つまり、ハイブリドーマによって分泌される分子を発現する核酸は、別の細胞株に導入され、形質転換体を生産することができる。形質転換体は、元々のハイブリドーマとは遺伝子型で区別されるが、ハイブリドーマによって分泌される抗体に対応する抗体分子全体の免疫学的に活性な断片を含む本発明の抗体分子を生産することもできる。加えて、文献は、キメラ抗体、ヒト化した抗体、一本鎖抗体など、基本的な免疫反応性の抗体断片に関する変異体を形成する方法を提供する。これら全ては、抗体のクラス及び特異性が開示され請求される限りでは、当業者が構築してもよい正確な変異構造にかまわずに、本発明の範囲内であると考えられる。
【0069】
本発明は、さらに、BPLP又は任意のその成熟生成物の生産の変更(即ち、対照患者と比較した生産の減少又は増加)に関係する状態の発生の診断、予測又は決定のインビトロの方法に関する。該方法は、試験患者の生物学的試料中のBPLPタンパク質又はその成熟生成物、特にQRFSRを、対照患者の生物学的試料中の同じものと比較して、検出し、又は定量することを含む。
【0070】
そのような状態の例は、「治療への応用」の節で引用した疾患である。
「生物学的試料」は、患者からの流体物であり、血清、血液、髄液、脳脊髄液、尿、ミルク、唾液、又は例えば脳、脊髄、骨組織、腎臓、前立腺、胎盤、象牙組織、胃の腺粘膜、腸、唾液腺組織のような組織抽出物又は組織生検若しくは臓器生検を含む。
【0071】
「対象」又は「患者」は脊椎動物であり、例えば哺乳動物、好ましくはヒトであり、彼/彼女の年齢、性及び一般的状態を問わない。子供及び幼児もまた包含される。試験患者は無症候であってもよく、疾患又は状態を発症する可能性があると考えられてもよい。標的障害の疑いがある患者、又は疾患若しくは状態の症状を既に示している患者はまた、試験され得る。
【0072】
「対照患者」は、健康な患者であってもよく、又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の1つと関係があり得る任意の見せ掛けの障害のない患者であってもよい。BPLPタンパク質又はその成熟生成物の1つに関係する状態の発生を決定するために、BPLPタンパク質又はその成熟生成物の発現について患者を試験すること、そして彼/彼女を2度に渡り、例えば、数週間後に試験することによって薬物の効果若しくは状態のまん延を監視することが非常に有用であるかもしれない。その場合には、2度目の試験の結果は、1度目の試験の結果と比較され、そして、一般的には「健康な」患者で得られた結果とも比較される。次に、「対照患者」は、同じ試験患者又は「健康な患者」のいずれかを意味する。
【0073】
用語「診断」は、患者における疾患又は状態の決定又は確認を意味する。
用語「予測」は、生じる疾患又は状態の可能性を決定又は確認を意味する。
「BPLPタンパク質又はその成熟生成物の発現又は生成」は、BPLPタンパク質又はその成熟生成物をアッセイすることによって決定することができる。
【0074】
そのようなアッセイ方法は、生物学的試料を、該試料に存在するBPLPタンパク質又はその成熟生成物、特にQRFSRと選択的に相互作用することが可能な結合パートナーと接触させることを含む。結合パートナーは、一般的には抗体であり、ポリクローナル若しくはモノクローナル、好ましくはモノクローナルであってもよい。
【0075】
治療に従って、上記で記載される抗体を生産する方法はまた、本発明に従って診断又は予測方法に有用な抗体を生産するために容易に適合させることができる。
例えば、BPLPタンパク質又は任意のその成熟生成物、又は該タンパク質若しくは成熟生成物の突然変異した形態の存在又は生成は、生物学的試料を、BPLPタンパク質を特異的に認識する抗体、又はその成熟生成物、特にQRSFRを特異的に認識する抗体とともにインキュベーションして、例えば、標準的な電気泳動手法、及び競合的、直接反応、若しくはサンドイッチ型のアッセイのようなイムノアッセイを含む液体若しくは固体の免疫診断手法を使用することによって検出することができる。そのようなアッセイは、限定されないが、ウェスタンブロット;凝集試験;酵素標識及び仲介のイムノアッセイ、例えばELISA;ビオチン/アビジン型のアッセイ;ラジオイムノアッセイ、例えば放射性ヨウ化した又はトリチウム化したBPLPタンパク質若しくは任意のその成熟生成物、特にQRSFRを用いるアッセイ;免疫電気泳動;免疫沈降などを含む。反応物は、一般的に、蛍光、化学ルミネッセント、放射活性、酵素標識体若しくは染色分子のような標識を示すことを含み、又は抗原と抗体若しくはそれと反応した抗体(複数)との間の複合体の形成を検出する他の方法を含む。
【0076】
前述したアッセイは、一般的に、固相上に固定される特異的抗体に結合したBPLPタンパク質又は成熟生成物、特にQHNPRから、結合していないBPLPタンパク質又は結合していないその成熟生成物、特に結合していないQRFSRの分離と関係する。本発明の実施に使用することができる固体支持体は、ニトロセルロース(例えば、メンブレン若しくはマイクロタイターウェルの形で);ポリ塩化ビニル(例えば、シート若しくはマイクロタイターウェル);ポリスチレン・ラテックス(例えば、ビーズ若しくはマイクロタイタープレート);ポリフッ化ビニリジン;ジアゾ化ペーパー;ナイロン・メンブレン;活性化ビーズ、磁気に反応性のビーズなどのような支持体を含む。
【0077】
つまり、1つの特定の態様において、生物学的試料からの結合したBPLPタンパク質又はその成熟生成物、特にQRFSRの存在は、当業者に既知の方法を用いて、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ又はウレアーゼのような検出可能な酵素標識に容易に結合することができる別の抗体を含む第2の結合剤を用いて容易に検出することができる。次に、適切な酵素基質は、検出可能なシグナル、例えば発色性又は蛍光性シグナルを発生するために使用される。他の関連した態様において、競合型のELISA手法は、当業者に既知の方法を用いて実施することができる。
【0078】
抗体を含む上述したアッセイ試薬は、上記で記載されるイムノアッセイを行うために、適した指示書及び他の必要な試薬と一緒にキットで提供することができる。キットはまた、使用される特定のイムノアッセイに依存して、適した標識及び他に包装された試薬及び材料(即ち、洗浄バッファーなど)を含有することができる。標準的な免疫アッセイ、例えば上記で記載したものは、これらのキットを用いて行うことができる。
【0079】
遺伝子治療
本発明に従って、膜金属ペプチダーゼ活性の調節は、患者の細胞のBPLPタンパク質、その成熟生成物の量、及びそこからの放出を変更(即ち、増加又は減少)することによって、又は上記で定義されるペプチド誘導体を含むペプチドを発現及び可能に放出することによって達成することができる。患者の細胞のBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の量及びそこからの可能な放出を増加すること、ペプチド誘導体を含む上記で定義されるペプチドを発現し及び可能に放出することは、BPLP発現ベクター又はBPLPタンパク質、BPLP成熟生成物若しくは上記で定義されるペプチド誘導体を含むペプチドを発現するベクターを用いて、例えば、裸のDNAの形で、ウイルスベクターとして、細胞に導入することによって実行することができる。
【0080】
好ましくは、本発明の核酸は、ベクターの部分を形成する。そのようなベクターは、ベクターで遺伝子導入された細胞においてタンパク質又はペプチドの発現を調節する配列と操作的に関連したコード配列を含む核酸である。
【0081】
実際に、そのようなベクターの使用は、患者の細胞及び特に処置されるべき細胞への核酸の投与を改善し、そして、前記細胞におけるその安定性を増加することを可能にし、永続的な治療効果を得ることを可能にする。さらに、いくつかの核酸配列を同ベクターへ導入することが可能であり、それはまた治療の効果を増加させる。
【0082】
使用されるベクターは、それが動物細胞、好ましくはヒト細胞を形質転換することができる限り、異なった起源のものであってよい。本発明の好ましい態様において、ウイルスベクターを使用し、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ワクシニアウイルスなどから選択することができる。アデノウイルス、レトロウイルス若しくはAAV由来のベクター、HIV誘導レトロウイルスベクターは、異種の核酸を導入し、文献に記載されている。
したがって、本発明はまた、ゲノム中に挿入された、BPLPタンパク質、BPLP成熟生成物又はペプチド誘導体を含む上記で定義されるペプチドをコードする核酸を含む任意の組換えベクターに関する。
【0083】
好都合には、本発明に係る組換えウイルスは、感染した細胞においてウイルスの複製に少なくとも必要な配列を欠いている不完全なウイルスである。
アデノウイルス、AAV又は不完全な組換えレトロウイルスに導入された形で本発明の核酸配列を使用することが特に好都合である。
【0084】
標的遺伝子の輸送は、1995年10月に公開された国際特許出願公開WO95/28494に記載される。
その代わりに、ベクターは、インビボでリポフェクションによって導入することができる。過去10年間で、インビトロでの核酸のカプセル化及び導入のためにリポゾームの使用が増加している。リポゾームに関する情報は、同様に本出願の「医薬組成物」の節で提供される。
【0085】
ベクターをインビボで裸のDNAプラスミドとして導入することも可能である。遺伝子治療のための裸のDNAベクターは、当該技術分野において既知の方法、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、トランスダクション、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクタミン(登録商標)、遺伝子銃の使用、又はDNAベクター・トランスポーターの使用によって所望の宿主細胞に導入することができる。
【0086】
医薬組成物
BPLP−ペプチド(換言すれば、BPLPタンパク質、BPLP由来のペプチド、成熟生成物、ペプチド誘導体及び模倣体を含む上記で定義したペプチド)、又はそのようなBPLP−ペプチドをコードする核酸、及び前記BPLP−ペプチドに対する抗体は、薬学的に許容される担体と併せて、医薬組成物に製剤化することができる。例えば、医薬組成物は、局所的、経口的、舌下、非経口的、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮又は眼内投与などに適している。
【0087】
本発明の主題はまた、前記BPLP−ペプチド又はその模倣体のポリマーを含む医薬組成物である。
好ましくは、核酸は、該核酸を発現するベクターの部分を形成する。
好ましくは、医薬組成物は、注射可能な製剤に医薬的に許容されるベヒクルを含有する。
【0088】
適した医薬組成物は、特に、等張、無菌、塩溶液(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウムなど、又はそのような塩の混合物)、又は乾燥の状態であってよく、特に、場合に応じて、無菌の水若しくは生理食塩水の添加により注射可能な溶液の構成を可能にする凍結乾燥した組成物であってよい。
【0089】
投与のために使用されるBPLP−ペプチド、抗体又は核酸の投与量は、様々なパラメータの関数として、特に、使用される投与法、関連する病理学、又はその代わりに治療の所望の持続時間の関数として適合させることができる。
ペプチド治療用の医薬組成物を製造するために、有効量のBPLP−ペプチドは、薬学的に許容される担体又は水性媒体に溶解させ又は分散させることができる。
医薬製剤の例は、下記に提供される。
【0090】
医薬組成物は、薬学的に許容される担体又は水性媒体中に、有効量のBPLP−ペプチド、核酸又は抗体を含む。
「医薬的に」又は「薬学的に許容される」は、ヒトを含む動物に適切に投与した場合、反対の、アレルギー性の又は他の予期せぬ反応を生じない分子的実体及び組成物を意味する。
【0091】
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容される担体」は、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、被覆剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤などを含む。医薬的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の慣用的な媒体又は薬剤が活性成分と適合しない限度を除いて、治療用組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性成分はまた、組成物中に導入することができる。
【0092】
注射可能な使用に適した医薬的形態は、無菌の水溶液又は分散剤;ゴマ油、ピーナッツ油又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び、無菌の注射可能な溶液又は分散剤の即座の調製のための無菌粉末剤を含む。全ての場合において、形態は、無菌でなければならいし、容易な注入性が存在する範囲内で液体でなければならない。それは、製造及び保存の条件下で安定でなければならないし、細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。
【0093】
遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性成分の溶液は、界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースと適切に混合した水中で調製することができる。分散剤はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びその混合物中で、そして油中で調製することができる。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を妨げるために防腐剤を含有する。
【0094】
担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適した混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体であることができる。適当な流動性は、例えば、レシチンのような被覆剤の使用、分散する場合の要求される粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の阻害は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって成し遂げることができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の吸収の引き延ばしは、吸収を遅延する薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物における使用によって成し遂げることができる。
【0095】
無菌の注射可能な溶液は、要求される量の活性化合物を上記で列挙した様々な他の成分と一緒に適切な溶媒に取り込み、必要に応じて続くろ過による無菌によって調製される。一般的に、分散剤は、様々な無菌の活性成分を、塩基性分散媒体、及び上記で列挙したものから要求される必要とされる他の成分を含有する無菌のベヒクル中に取り込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌の粉末剤の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥の手法であり、活性成分に加えたその予め無菌的にろ過した溶液からの任意の追加の所望される成分の粉末を生じる。
【0096】
製剤化に応じて、溶液は、投与製剤に適合した方法で、そして、治療的に有効なそのような量で投与されるであろう。製剤は、様々な投与形態、例えば上記で記載した注射可能な溶液の型で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなどもまた使用することができる。
水溶液での非経口投与については、例えば、溶液は、もし必要であれば、適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤はまず十分な塩又はグルコースで等張にすべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用することができる無菌の水性媒体は、本開示の観点から当業者に知られるであろう。例えば、1回の投与量は、等張のNaCl溶液の1ml中に溶解し、1000mlの皮下注入液に添加されるか、又は予定の注入部位で注射されるかのいずれかであり得る(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、1035−1038及び1570−1580ページを参照されたい)。投与量のいくつかの変形は、治療を受けるべき患者の状態に応じて必然的に起こるであろう。投与に責任のある者は、いずれにしても、個々の患者のために適切な投与量を決定するであろう。
【0097】
関心のあるBPLP−ペプチドは、1回の投薬当たり約0.0001ないし100ミリグラム、又は約0.001ないし0.1ミリグラム、又は約0.1ないし1.0、又はさらに約1ミリグラムないし10ミリグラム、又はさらに約10ないし100ミリグラムなどを含むように治療用混合物内に製剤化することができる。複数回投薬はまた投与することができる。好ましい投与量は、約0.1μg/kgないし約1mg/kg、より好ましくは約1μg/kgないし約100μg/kg、そして、最も好ましくは約10μg/kgないし約100μg/kgである。
【0098】
非経口投与、例えば静脈内又は筋肉内注射のための製剤に加えて、他の薬学的に許容される形態は、例えば錠剤又は経口投与用の固形物;リポゾーム製剤;徐放性カプセル;及び、クリームを含む現在使用される任意の他の形態を含む。
他の投与経路が意図され、点鼻液若しくはスプレイ、噴霧剤若しくは吸入剤、又は膣内若しくは肛門坐剤及びペッサリー若しくはクリーム、及び長期に作用する輸送ポリマーを含む。
【0099】
ある態様において、リポゾーム及び/又はナノ粒子の使用は、BPLP−ペプチド剤、並びに核酸ベクター又は抗体の宿主細胞への導入のために意図される。
本発明はまた、上記で定義され、さらに、BPLP−ペプチドと相乗的に作用する第二の医薬的試薬を含む医薬組成物に関する。
【0100】
治療への応用
上記で記載されるBPLP−ペプチド、前記BPLP−ペプチドに対する抗体、又は前記BPLP−ペプチドをコードする核酸は、膜金属−エクトペプチダーゼ、より好ましくは膜−亜鉛金属ペプチダーゼ、例えばNEP及びAPNの活性の調節が要求される疾患及び障害の予防又は治療に有用である。
【0101】
天然のNEP基質は、主にペプチドホルモン:エンケファリン、サブスタンスP、ブラジキニン、アンジオテンシンII及び心房性ナトリウム利尿ペプチドであり、中心性及び末梢性疼痛認識、炎症性現象、ミネラル交換及び/又は動脈緊張の調節における鍵となる役割を果たす(Roquesら、1993)。
【0102】
より具体的には、天然のエンドペプチダーゼ、NEP24−11は、哺乳動物の神経組織及び末梢組織の両方に分布され、そして、末梢においては、腎臓及び胎盤において特に豊富にある。これらの組織において、細胞表面金属ペプチダーゼNEPは、神経ペプチド、全身性免疫制御性ペプチド及びペプチドホルモンの分泌後のプロセッシング及び代謝に関与する。循環している又は分泌された制御性ペプチドの活性レベルを調節することによって、NEPは、それらの生理学的な受容体を介した作用を調節する。したがって、膜に結合したNEPは、強力な血管作用ペプチド、例えばサブスタンスP、ブラジキニン(BK)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、及びアンジオテンシンII(AII);強力な炎症性/免疫制御性ペプチド、例えばサブスタンスP及びBK及びfMet−Leu−Phe(fMLP);強力なオピオイド神経ペプチド、例えばMet及びLeu−エンケファリン(Enk);及び強力なミネラル交換及び体液恒常性制御ペプチド、例えばANP、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)及びB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の活性の制御に関係する。しかしながら、これらのペプチドのレベルは、それらが持続的に放出される領域、又はそれらの放出が刺激によって誘発される領域にのみNEP誘導の形成/分解を通じて変化する。
【0103】
統合的な観点から、NEPの生物学的活性は、動脈圧制御、炎症性現象及び水−ミネラル恒常性、並びに疼痛プロセッシングの調節に関係するペプチド作用性シグナルの活性レベルを調節することである。臨床の観点から、これは、NEPが様々な疾患状態における重要な薬物標的であるという事実を立証する。例えば、NEPを阻害することによって、それによって中心性の又は末梢性の内因性オピオイドのレベル及びその作用の持続を増加することで、鎮痛効果又は抗抑うつ効果が得られ、又は内因性AII形成及びサブスタンスPを阻害することによって、BK及びANP不活化、抗高血圧、ナトリウム利尿剤及び利尿剤が得られる。NEP阻害剤の使用によって、内因性ペプチドの濃度を調節する主な利点は、薬理学的な効果が天然のエフェクターによって刺激された受容体でのみ誘導され、そして、環境、行動及び生理病理学的ストレス性の状況に応じて起こる天然のエフェクターの持続的又は刺激によって引き起こされる放出に明らかにに依存している(Roquesら、1993)。
【0104】
NEPの他に、哺乳動物の膜金属ペプチダーゼの例は、ECE(エンドセリン変換酵素)、特にECE1及びECE2、赤血球細胞表面抗原KELL及びX連結低リン酸血症性くる病と関連したPEX遺伝子の生成物、並びにACE(アンジオテンシン変換酵素)及びAPN(アミノペプチダーゼN)である。
【0105】
ACE及び/又はECEの阻害は、高血圧の治療、及びアテローム性動脈硬化症の予防及び治療に有意な応用を有する。
NEPと併せてAPNの阻害は、疼痛及び抑うつの治療に有意な応用を有する。
関連する膜金属ペプチダーゼの阻害は、腫瘍、主に卵巣、結腸直腸、脳、肺、膵臓、胃及びメラノーマの癌の治療、及び転移、アテローム性動脈硬化症及び/又は高血圧の発生の減少において治療的効果を有する。関連する膜金属ペプチダーゼの阻害はまた、疼痛の調節に治療的効果を有する。急性な疼痛におけるそのような抗侵害受容効果は、鎮痛効果であるが、関節炎又は炎症性腸疾患のような慢性炎症性疼痛に対する効果もある。
さらに、細菌性又はウイルス性金属ペプチダーゼの阻害は、抗感染効果を有することが期待される。
【0106】
金属ペプチダーゼは、病原体宿主組織侵入、及び免疫学的及び炎症性過程、例えばストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、シュードモナス・アエルジギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、ポルフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)及びレジオネラ・ニューモフィラ(Leginonella pneumophila)のそれらにおいて重要な役割を果たす。
さらに、細菌性金属ペプチダーゼ、特に亜鉛金属ペプチダーゼは、タンパク質分解毒素、例えば炭疽菌(B.anthracis)(炭疽菌の致死因子)の毒素及び破傷風菌(C.tetanum)及びボツリヌス菌の神経毒素によって引き起こされる疾患において重要な役割を果たす。
【0107】
他の金属ペプチダーゼは、HIVによって引き起こされる感染のような様々な感染において重要な役割を果たす(FR2707169)。
【0108】
細菌性又はウイルス性疾患の治療のためのプロテイナーゼ阻害剤の重要性が、J.Potempa及びJ.Travisに見出すことができる。
金属ペプチダーゼの異なった役割は、Turnerら、2001;Kennyら、1977;Kennyら、1987;Beaumontら、1996に開示される。
【0109】
本発明の目的の1つは、末梢、脊髄及び/又は脊柱レベルでのNEP及びAPNを阻害し、それによって、エンケファリンを含む中心性又は末梢性の内因性オピオイドのレベル及びその作用の持続を増加することによる鎮痛剤又は抗抑うつ剤としての上記で記載した治療用ペプチド又は核酸の使用である。
疼痛、特に急性及び慢性疼痛、内臓の炎症性及び神経障害性疼痛の予防又は治療が意図される。
【0110】
任意の水素−ミネラル不均衡の予防又は治療はまた、本発明の目的でもある。標的となる障害の中で、誰でも、水素−ミネラル不均衡によって引き起こされる骨、歯、腎臓、副甲状腺、膵臓、腸、胃の粘膜、前立腺、及び唾液腺障害を引用することができる。
特に、障害は、副甲状腺機能亢進症又は副甲状腺機能低下症、骨粗鬆症、膵炎、顎下腺結石症、腎結石症及び骨異栄養症からなる群から選択されることができる。
損なわれた対人関係及び行動障害の予防又は治療は、さらに関心がある。様々な精神障害はWO02/051434に記載される。
【0111】
特に、本発明は、逃避障害、減少した認知障害、自閉性障害、注意欠陥多動性障害、覚醒障害、ホスピタリズム、損なわれた対人関係機能及び外界に対する関係、分裂病質人格障害、統合失調症、抑うつ障害、環境への関心の減少、性欲に連結した損なわれた社会活動、及び早すぎる射精や活動過多の性欲を含む損なわれた性行動からなる群から選択される任意の障害に関心がある。
膜金属ペプチダーゼの調節が要求される疾患はまた、高血圧、アテローム性動脈硬化症、腫瘍、炎症性関節炎及び腸疾患を含む。
【0112】
感染の治療もまた包含される。特に、細菌性又はウイルス性疾患の治療のためのプロテイナーゼ阻害剤の重要性は、J.Potempa及びTravisに見出すことができる。
上記で定義されるBPLP−ペプチド、抗体又は核酸はまた、免疫炎症性応答を調節するために有用である。
上記で定義されるBPLP−ペプチド、抗体又は核酸はまた、ナトリウム利尿剤又は利尿剤として有用である。
【0113】
本発明の別の目的は、薬物乱用、特にモルヒネの薬物乱用の治療において代わるものとして上記で定義されるペプチド又は核酸の使用である。
実際に、研究は、薬物乱用に対する脆弱性、及び報酬及び薬物依存の発生は、少なくとも部分的には、内因性オピオイド系の先在の若しくは誘導された変更及び/又は欠損の結果であることを示唆している。これに関連して、内因性エンケファリンの効果を可能にするためにBPLP−ペプチド又は核酸を使用することは、慢性的なモルヒネ又はヘロイン投与の中断によって生じる様々な副作用(全身の離脱兆候)を減少するであろう。
【0114】
本発明によれば、NEPにおけるBPLP−ペプチドの阻害効果を減少することは、例えば、BPLP−タンパク質又はペプチドに対する抗体を用いることによって望むことができる。NEP活性の増強は、アミロイドーシスと関連した疾患又は障害のような神経変性障害の治療に特に有効である。実際に、ネプリライシンの阻害剤(中性エンドペプチダーゼ、NEP又はエンケファリナーゼ)は、合成阻害剤によって、アミロイドβレベルを上昇させることが示されている(Newellら、2003)。Leissringら(2003)は、さらに、ニューロンにおいてネプリライシンのトランスジェニック的な過剰発現は、脳のAβレベルを有意に減少させ、アミロイドプラーク形成及びその関連する細胞病理学を遅らせ又は完全に阻害し、そして、アミロイド前駆体タンパク質のトランスジェニックマウスに存在する早産の致死率を救うことを報告している。
【0115】
疾患に影響された組織中若しくはその近辺でアミロイドが堆積し、又はアミロイドプラークが見られる場合、又は、疾患が不溶性である若しくは不溶になる可能性があるタンパク質の過剰生産によって特徴付けられる場合、疾患又は障害は、アミロイドーシスと関連する。アミロイドプラークは、既知の又は未知のメカニズムによって直接的に又は間接的に病理学的な効果を引き起こすことができる。アミロイドーシスの例は、限定されないが、慢性炎症性疾病、多発性ミエローマ、マクログロブリン血症、家族性アミロイド多発性神経障害(ポルトガル人)及び心筋症(デンマーク人)、全身性老人性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発性腎症(ロワ(lowa))、家族性アミロイドーシス(フィンランド人)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、蕁麻疹及び難聴を伴う家族性アミロイド腎症(マックル・ウェルズ症候群)、甲状腺髄様癌、単独の心房性アミロイド、及び血液透析関連アミロイドーシス(HAA)のような全身疾患;及び神経変性疾患を含む。
【0116】
用語「神経変性疾患」は、例えば、短期記憶若しくは長期記憶喪失又は記憶障害、痴呆、認識欠如、均衡及び協調問題、及び情緒的及び行動的欠如の脳又は神経機能障害の特徴的症状をもって現れる特に脳と関係する神経系の疾患又は障害を意味する。本発明は、より具体的には、アミロイドーシスと関連する神経変性障害と関わりがある。そのような疾患は、そのような症状を示す患者からの脳組織の組織病理学的(生検)試料がアミロイドプラーク形成を表す場合、「アミロイドーシスと関連」している。脳、特にヒトの脳からの生検試料は、非常な困難さを伴って、生きている患者から得られるか、又は全く利用することができないかもしれないので、しばしば、アミロイドーシスを伴う神経変性疾患の症状又は複数の症状の関連は、生検試料中のプラーク又は原線維のようなアミロイド堆積物の存在以外の基準に基づく。
【0117】
特定の態様において、本発明によれば、神経変性障害は、アルツハイマー病(AD)である。他の態様において、疾患は、APPのβAP部分のアミノ末端に近いアミロイド前駆体タンパク質(APP)におけるNL突然変異に対する二重のKMによって特徴付けられる稀なスウェーデン人病であるかもしれない。別のそのような疾患は、アミロイドーシス(HCHA又はHCHWA)−オランダ人型を伴う遺伝性脳出血である。当該技術分野において既知の、及び本発明の範囲内である他のそのような疾患は、限定されないが、散発性脳アミロイド血管障害、遺伝性脳アミロイド血管障害、ダウン症候群、グアムのパーキンソン痴呆、及び年齢に関連した無症性アミロイド血管障害を含む。
【0118】
更なる側面において、神経変性疾患は、亜急性の海綿状脳疾患、例えば、限定されないが、スクレピー、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー病、クル、ミュールジカ及びヘラジカの慢性消耗病、畜牛のウシ海綿状脳疾患、及びミンクの伝染性脳疾患である。
本発明は、さらに、膜金属ペプチダーゼの活性の調節が要求される疾患を予防し又は治療するための治療的組成物の製造のための、内因性のBPLPタンパク質又は成熟生産物、例えばQRFSR、及び膜金属ペプチダーゼとの相互作用を調節する薬物の使用に関する。
【0119】
スクリーニング法
当業者が、同標的物に結合し、BPLPタンパク質又はその成熟生成物、例えばQRFSRペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの生物学的活性を有する候補化合物を選択し精製することができるようにする方法は、下記に記載される。
候補化合物は、タンパク質、ペプチド、ホルモン、抗体、又は有機化学の慣用的な方法によって合成することができる任意の化合物のようなペプチド又は非ペプチド性分子である合成化合物であってもよい。
【0120】
本発明は、BPLPタンパク質又はその成熟生成物、例えばQRFSRペプチドに対するNEP結合部位に結合する化合物の能力についてその化合物をスクリーニングするインビトロの方法を提供し、下記の工程:
a)BPLPタンパク質若しくはその成熟生成物、例えばQRFSRペプチド、又はBPLPタンパク質又はその成熟生成物の結合特異性若しくは生理学的な活性を保持している任意のペプチド、例えばペプチドYQRFSRの存在下で、候補化合物とNEP発現細胞とをインキュベートすること;
b)NEPへの結合について、BPLPタンパク質若しくはその成熟生成物、例えばQRFSRペプチド、又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の結合特異性若しくは生理学的な活性を保持しているペプチド、例えばペプチドYQRFSRと競合する候補化合物の能力を決定すること
を含む。
【0121】
候補化合物の結合アッセイは、一般的に4℃ないし25℃、又は37℃で実行される。
NEP発現細胞は、BPLPタンパク質又はその成熟生成物、例えばQRFSRペプチドに対するNEP結合部位を含有する、細胞培養物、例えばコンフルエントな標的細胞培養の単層、又は標的臓器標本若しくは組織試料(例えば、凍結切片、薄片、膜調製物又は粗ホモジネート)中のあってよい。
【0122】
本発明に係るスクリーニング法に使用される好ましい組織試料は、哺乳動物からの脊髄の膜調製物又は薄片、NEP活性測定に充当されることが知られている組織である。
本発明に係るスクリーニング法に使用することができる他の好ましい組織試料は、NEP−ペプチダーゼに豊富であり、及び/又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物、例えばQRFSRペプチドに対して標的物となることが知られている全ての末梢組織調製物である。例えば、誰でも、哺乳動物の腎臓の外髄質、胎盤、精巣、前立腺及び骨を使用することができる。例えば、そのような方法は、マウス、ラット又はヒト起源の組織及び/又は細胞、又は金属−エクトペプチダーゼcDNA、具体的にはNEP cDNA、特にヒトNEP cDNAを用いて導入した細胞株に応用することができる。
【0123】
BPLP−タンパク質又はその成熟生成物(又はBPLPタンパク質又はその成熟生成物の結合特異性又は生理学的活性を保持するペプチド)は、好ましくは、例えば、放射性標識(32P、35S、3H、125Iなど)又は非放射性標識(ジゴキシゲニン、CyDye−ユーロピウム、フルオレセインなど)によって標識される。次に、NEP発現細胞と一緒に、特異的な結合が生じるのに十分な時間及び条件下でインキュベートされる。
【0124】
細胞に特異的に結合した標識は、次いで、様々な濃度、例えば10-10ないし10-5Mの前記候補化合物の存在下で定量することができる。
したがって、本発明は、さらに、BPLPタンパク質、又はその成熟生成物に対するNEP結合部位に特異的に結合する化合物をスクリーニングする方法を提供し、下記の工程:
a)BPLPタンパク質若しくはその成熟生成物に対するNEP結合部位を含有する細胞培養物、又は臓器標本若しくは組織試料(例えば、凍結切片又は薄片又は膜調製物又は粗ホモジネート)を調製すること;
b)半飽和濃度の標識したタンパク質若しくはその成熟生成物(又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の結合特異性若しくは生理学的活性を保持するペプチド)と競合して、試験されるべき候補化合物を添加すること;
c)特異的な結合が生じるのに十分な時間及び条件下で、候補化合物の存在下で、工程a)の細胞培養物、臓器標本又は組織試料をインキュベートすること;
d)様々な濃度(好ましくは10-10ないし10-5M)の候補化合物の存在下で、細胞培養物、臓器標本又は組織試料に特異的に結合した標識を定量すること
を含む。
【0125】
上記の前記方法において、半飽和濃度は、NEP結合部位の50%と結合する、標識したBPLPタンパク質又はその成熟生成物、例えばQRFSRペプチド(又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の結合特異性若しくは生理学的活性を保持するペプチド)の濃度である。
【0126】
この方法はまた、BPLPタンパク質、又は成熟生成物、例えばQRFSR(又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の結合特異性若しくは生理学的活性を保持するペプチド)の親和性と比較して、候補化合物の相対的親和性を定義することもできる。
本発明の別の目的は、BPLPタンパク質、又は成熟生成物(又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の結合特異性又は生理学的活性を保持するペプチド)に対するNEP結合部位に特異的に結合するリガンド化合物の相対的親和性を測定する方法であり、それぞれの候補化合物についての上記方法の工程a)、b)、c)及びd)を含み、そして、さらに、工程d)において定量された各候補化合物の親和性とその他の候補化合物の親和性とを比較する工程e)を含む。
【0127】
本発明の別の目的は、BPLPタンパク質又はその成熟生成物に対するNEP結合部位に特異的に結合する化合物の親和性を決定する方法であり、下記の工程:
a)BPLPタンパク質又はその成熟生成物に対するNEP結合部位を含有する細胞培養物を調製し、又は臓器標本若しくは組織試料(例えば、凍結切片又は薄片又は膜調製物又は粗ホモジネート)を調製すること;
b)放射性又は非放射性標識で予め標識した候補化合物を添加すること;
c)特異的結合が生じるのに十分な時間及び条件下で、標識した候補化合物の存在下で、工程a)の細胞培養物、臓器標本又は組織試料をインキュベートすること;そして
d)様々な濃度(好ましくは10-10ないし10-5M)の標識した候補化合物の存在下で、細胞培養物、臓器標本又は組織試料に特異的に結合した標識を定量すること
を含む。
【0128】
候補化合物は、好ましくは、例えば、放射性標識(32P、32S、3H、125Iなど)又は非放射性標識(ジゴキシゲニン、CyDye−ユーロピウム、フルオレセインなど)によって標識される。次に、特異的結合が生じるのに十分な時間及び条件下で、NEP発現細胞とインキュベートする。
【0129】
誰でも、さらに、BPLPタンパク質又はその成熟生成物、例えばQRFSRペプチドに対するNEP結合部位に特異的に結合する候補化合物の相対的親和性を決定するために、定量した各候補化合物の親和性とその他の候補化合物の親和性を比較することができる。
【0130】
本発明は、さらに、NEP活性に対して、BPLPタンパク質又はその成熟生成物のアゴニスト又はアンタゴニストとして作用する化合物の能力についてその化合物をスクリーニングするインビトロの方法を提供し、下記の工程:
a)(i)BPLPタンパク質又はその成熟生成物、例えばQRFSRペプチド、又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の結合特異性若しくは生理学的活性を保持している任意のペプチド、及び(ii)NEP基質の存在下で、候補化合物とNEP発現細胞とをインキュベートすること;
b)NEPによるNEP基質の細胞内タンパク質分解を測定し、候補化合物がない場合ける細胞内タンパク質加水分解と比較して、候補化合物の存在下での細胞内タンパク質加水分解の増加は、アンタゴニスト活性を指示し;一方、候補化合物がない場合における細胞内タンパク質加水分解と比較して、候補化合物の存在での細胞内質加水分解の減少は、アゴニスト活性を指示する
ことを含む。
【0131】
本明細書で使用されるように、BPLPタンパク質又はその成熟生成物のアゴニストは、金属−エクトペプチダーゼ活性、特にNEP又はAPN活性を阻害する活性を有する分子である。
本明細書で使用されるように、BPLPタンパク質又はその成熟生成物のアンタゴニストは、金属−ペプチダーゼ活性、特にNEP又はAPN活性を増加する活性を有する分子である。
【0132】
さらに、候補化合物のアゴニスト又はアンタゴニスト活性は、その標的に対するこの候補化合物によって誘導された代謝性変化、例えば、プロテインキナーゼ又はアデニル酸シクラーゼを介した情報伝達シグナルの結果として第一又は第二の伝達物質の代謝産物の合成及び/又は放出、及びGファミリーのタンパク質の活性化を決定することで評価することができる。
【0133】
特定の態様において、本発明はまた、BPLPタンパク質又はその成熟生成物のアゴニストである化合物をスクリーニングするための方法に関連し、下記の工程:
a)BPLPタンパク質又はその成熟生成物に対するNEP結合部位を含有する細胞培養物を調製すること、又は臓器標本若しくは組織試料(例えば、凍結切片又は薄片又は膜調製物又は粗ホモジネート)を調製すること;
b)初速度の条件下でNEP基質の細胞内タンパク質分解が生じるのに十分な時間で、候補化合物(好ましくは10-10ないし10-5M)、半飽和濃度のBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物(又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の結合特異性若しくは生理学的活性を保持している任意のペプチド)及びNEP基質の存在下で、NEPの酵素活性を測定することができる濃度で、工程a)の細胞培養物、臓器標本又は組織試料をインキュベートすること;
c)NEP基質の細胞内タンパク質加水分解のレベルを、それぞれ、候補化合物の有無で、及びBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物、又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の結合特異性若しくは生理学的活性を保持しているペプチドの有無で測定することによって、工程a)の生物学的材料中に存在するNEPの活性を定量すること
を含む。
【0134】
前記の上記方法において、半飽和濃度は、NEP基質の分解が結果として半分まで減少するBPLPタンパク質又はその成熟生成物の濃度である。
本発明の別の目的は、BPLPタンパク質又はその成熟生成物のアンタゴニストである化合物をスクリーニングする方法を含み、下記の工程:
a)BPLPタンパク質又はその成熟生成物に対するNEP結合部位を含有する細胞培養物を調製すること、又は臓器標本若しくは組織試料(凍結切片又は薄片又は膜調製物又は粗ホモジネート)を調製すること;
b)最大下の濃度のBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物(又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の結合特異性若しくは生理学的活性を保持している任意のペプチド)、及びNEP基質の存在下で、初速度の条件下でNEP基質の細胞内タンパク質分解が生じるのに十分な時間で候補化合物の存在下で、初速度の条件下でNEPの酵素活性を測定することができる濃度で、工程a)の細胞培養物、臓器標本又は組織試料をインキュベートすること;
c)NEP基質の細胞内タンパク質分解のレベルを、それぞれ、候補化合物の有無で、及びBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物、又はBPLPタンパク質若しくはその成熟生成物の結合特異性又は生理学的活性を保持しているペプチドの有無で測定することによって、工程a)の生物学的材料中に存在するNEPの活性を定量すること
を含む。
【0135】
前記の上記方法の好ましい態様において、最大下の濃度は、基質の分解の少なくとも50%まで、及び好ましくは少なくとも75%まで結果として減少するペプチドの濃度である。
下記の実施例及び図は、本発明の範囲を限定することなしに本発明を例証する。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、2.5mlのヒト唾液に対応する2.5mlの唾液のメタノール−酸抽出物に添加した3H−YQRFSRマーカーの代表的な陽イオン交換HPLCプロフィールを示す。主要な放射活性ピークは75−84%で評価された(点線のバー)。
【図2】図2は、7mlのヒト唾液から得た唾液のメタノール−酸抽出物の代表的な陽イオン交換HPLCプロフィールである。ヒトエクトエンドペプチダーゼ活性(LNCaP細胞株)によるサブスタンスPの細胞内タンパク質加水分解の阻害能力について分画を解析した。
【図3】図3は、主要なHPLC−EC活性の13−14分画の代表的な逆相HPLCプロフィールである(点線のバー)。ヒトエクトエンドペプチダーゼ活性(LNCaP細胞株)によるサブスタンスPの細胞内タンパク質分解の阻害能力について分画を解析した。
【図4】図4は、主要なHPLC−RP活性分画の代表的な逆相HPLCプロフィールである。ヒトエクトエンドペプチダーゼ活性(黒色バー)によるサブスタンスPの細胞内タンパク質分解の阻害能力について分画を解析し、それらの吸光度は274nmであった(黒線)。
【図5】図5は、ヒトエクト−エンドペプチダーゼ活性(LNCaP細胞株)によるサブスタンスPの分解におけるBPLP−QRFSRペプチドの効果を示し、QRFSRペプチドの有効濃度は1ないし25μMの範囲であり、最大の半分は11μMである。
【図6】図6は、ヒトエクト−エンドペプチダーゼ活性(LNCaP細胞株)によるサブスタンスPの分解におけるhBPLP−QRFSRペプチドのYQRFSR誘導体の効果を示し、YQRFSRペプチドの有効濃度は5ないし50μMの範囲であり、最大の半分は30μMである。
【図7】図7は、ラットNEPエクト−エンドペプチダーゼ活性(腎組織)によるサブスタンスPの分解におけるhBPLP−QRFSRペプチドのYQRFSR誘導体の効果を示し、YQRFSRペプチドの有効濃度は5ないし75μMの範囲であり、最大の半分は38μMである。
【図8】図8は、YQRFSRペプチドのRP−HPLCクロマトグラフィー解析である。YQRFSRペプチド(175μM)は、インビトロでヒト細胞表面エンドペプチダーゼによって代謝されなかったが、ヒトNEPエクトエンドペプチダーゼによって仲介されたサブスタンスPの細胞内タンパク質分解の70%まで阻害した。RP−HPLCクロマトグラフィーの特徴は、下記:1/YQRFSRペプチドは、NEPを含有するヒト細胞膜によって代謝されず;代謝膜がない場合の94%に対してそのままのペプチドとして93%が回収された。2/同じ実験条件で、YQRFSRペプチドは、これらのヒト細胞膜によってサブスタンスPの細胞内タンパク質分解を70%まで阻害することを示した。
【図9】図9は、組換えヒトNEPによるサブスタンスPの分解におけるQRFSR−ペプチドの阻害効果を示す。可溶性組換えヒトNEP活性におけるQRFSR−ペプチドの濃度依存的な阻害効果、及び可溶性組換えhDPPIV活性のサブスタンスPの細胞内タンパク質分解におけるQRFSR−ペプチドの効果なし。
【図10】図10は、細胞表面ヒトAPNによるAPN合成基質の分解におけるQRFSR−ペプチドの阻害効果を示す。細胞表面HEK−hAPNによるAla−pNA発色基質の開烈のQRFSR−ペプチドによる濃度依存的な阻害。
【図11】図11は、細胞表面ヒトNEPによるNEP合成基質の分解におけるQRFSR−ペプチドの阻害効果を示す。細胞表面HEK−hNEPによるMca−BK2蛍光基質の開烈のQRFSR−ペプチドによる濃度依存的な阻害。
【図12】図12は、ホルマリン注射した後足の足をなめることにおけるラットによる時間経過におけるYQRFSR−ペプチドのインビボの効果を示す;平均±SEM。
【図13】図13は、後足へのホルマリン注射に続く足の疼痛痙攣の回数におけるYQRFSR−ペプチドのインビボの効果を示す;平均±SEM。
【図14】図14は、ホルマリンの注射後60分間の足の疼痛痙攣の指標におけるYQRFSR−ペプチドのインビボの効果を示す。QRFSR誘導のペプチドによって導入された無痛覚は、内因性オピオイド受容体の活性化を必要とする。
【実施例】
【0137】
実施例
研究は、特にヒトの唾液分泌物中の天然の金属−エクトペプチダーゼ、特にNEP及び/又はAPN阻害剤を探索するために設計された。この生成物の検出及び単離のための戦略は、膜に結合したヒトNEPを発現しているヒト細胞によるNEP感受性基質の細胞内タンパク質分解を阻害する唾液の低分子量化合物の単離に基づいている。本発明者らは、ヒトにおける天然の内因性NEPエクトペプチダーゼ阻害剤(又は複数)、即ち、ラットシアロルフィンの内因性の唾液機能的ホモログ(又は複数)の配列解析による同定のために、機能的検出モデル(NEPを発現しているLNCaP及びHEKヒト細胞の膜調製物)及び分子単離モデル(HPLCクロマトグラフィーシステム)を開発した。
【0138】
実施例1:ヒト唾液調製
パスツール研究所の「centre de recherche Vaccinale et Biomedicale」で確立した臨床研究のプロトコール、受入番号:2045は、CCPPRB委員会の承認を受領し、及び10人の健常な男性ボランティアからのヒト唾液のサンプリングは、2003年5月に開始し、2003年10月まで継続した。唾液は、アプロチニン(1000KIU/ml)、ペファブロック(Pefabloc)(0.4mM)及びHCl(0.1N)(最終濃度)を含有する、予め冷却した「ミクロソープ(microsorp)」管に回収し;この媒体はタンパク質分解活性を阻害するものと推測される。このようにして、唾液試料は、メタノール抽出法を実行するまで−80℃で保存した。
【0139】
実施例2:NEP阻害のための材料及び実験モデル
1−ヒトエクトペプチダーゼNEP及びAPNの供給源
いくつかのヒト細胞株は、金属エクト−ペプチダーゼファミリーの他のメンバーと同様にNEPを発現するように説明されている;それらの中には、骨芽細胞株、MG−63(骨肉腫)、トロホブラスト細胞株、BeWo(胎盤絨毛癌)、前立腺上皮細胞株、LNCaP(腺癌)及び腸細胞株、Caco−2(結腸直腸腺癌)がある。細胞薬理学的解析に有用な合成培地の培養条件をまず開発した。第二に、発明者らは、LNCaP及びBeWoが合成培地の培養条件(即ち、インスリン、トランスフェリン及びセレニウムを含有するRPMI、GIBCO)で、DHT(ジヒドロテストステロン)及びホルスコリンによってそれぞれ誘導後、NEP(ARNm及び細胞表面タンパク質)を発現することができる唯一の細胞株であることをノーザンブロット及び免疫細胞化学的解析を用いることによって確かめた。そして、最後に、これらの細胞を起源とする膜調製物の静置なインキュベーションの実験モデルにおいて、本発明者らは、初速度の測定の条件、即ち、100pM/分/μg LNCaP細胞膜タンパク質(BeWoに対して10倍低い特異的活性)で、サブスタンスPのヒトNEPを介した細胞内タンパク質分解を解析するために許容されるパラメータを定義した。LNCaP膜活性は、特異的な合成NEP阻害剤、例えばチオールファン(500nMで最大の阻害能力に対する62%)の存在下で阻害された。対照的に、アミノペプチダーゼ(APN、APB)を妨げるベスタチン(25μM)及びカプトプリル(10μM)、及びアンジオテンシン変換酵素(ACE)活性は、それぞれ、細胞表面エクトペプチダーゼによってサブスタンスPの加水分解を阻害しなかった;つまり、実験条件では、サブスタンスPの細胞外分解は、これらの細胞の表面に局在したNEPエンドペプチダーゼ活性によって主に引き起こされた。
加えて、ヒトNEP cDNA又はヒトAPN cDNAを用いて導入したHEK細胞(HEK細胞はこれらの金属エクトペプチダーゼを発現しない)の膜調製物、及び可溶性組換えヒトNEP又は可溶性組換えヒトDPP IV(ジペプチジルアミノペプチダーゼIV)(N末端細胞質及び膜貫通部分を含まない)を用いたインビトロモデルをも開発した。
【0140】
2−基質及び阻害剤:
インビトロにおいて、ヒト細胞膜の膜アミノ−及びエンド−エクトペプチダーゼ活性は、下記の合成基質及び天然基質の分解を測定することによってインビトロで検査した:
a/合成特異的蛍光性基質又は発色性基質:
−Mca−R−P−P−G−F−S−A−F−K(Dnp)−OH及び/又はSuc−A−A−F−Amc(NEP)(R&D systems及びBachem)
−Ac−A−Amc又はAla−pNA(APN)(Bachem)
b/生理学的基質:
−修飾したトリチウム化サブスタンスP[(3,43H)Pro2−Sar9−Met(O211]−サブスタンスP(DuPont−NEN)及び天然のサブスタンスP:R−P−K−P−Q−Q−F−F−G−L−M(NEP−DPPIV−ACE)(Peninsula−Biovalley)
−天然のMet−エンケファリン:Y−G−G−F−M(NEP−APN)(Peninsula−Biovalley)
異なる利用可能な選択的合成ペプチダーゼ阻害剤の有無における細胞膜ペプチダーゼによるこれらの基質の加水分解の測定することは、ペプチダーゼアッセイの特異性を評価した:
−チオールファン、ホスホラミドン(NEP)(Sigma及びRoche)
−ベスタチン、アマスタチン(APN)(Calbiochem)
−DPPIVインヒビターII(DPPIV)(Calbiochem)
−カプトプリル(ACE)(Sigma)
【0141】
3−ペプチダーゼ活性の測定
エクトペプチダーゼ活性は、ラットシアロルフィンの機能的特徴付けのために開発され確立したプロトコールに従って測定した(Rougeotら、2003)。簡単には、膜調製物については、pH7.1で緩衝化した50mM Tris/HClの10体積(体積/重量)中で4℃で細胞をホモジネートした。1000×g及び5℃で5分間の最初の遠心は、ペレット中の細胞破壊堆積物及び細胞核を取り除くために許される。100000×g及び5℃で30分の2回目の遠心は、ペレット中の膜画分を濃縮させ、冷却したTris/HCl緩衝液中で3回表面的に洗浄し、新鮮な緩衝液中に再懸濁し、等分し、酵素供給源として使用されるまで待つ間、−80℃で保存した。タンパク質定量は、標準としてウシ血清アルブミン(BSA)でBio−Rad DCタンパク質アッセイを用いて実行した。
【0142】
基質の加水分解は、特異的阻害剤の有無で、初速度の測定の条件で代謝率を監視することによって測定した。プレインキュベーション培地にこれらを添加した。標準的な反応混合物は、最終体積の200μl Tris−HCl 50mM pH6.5−7.2中の細胞膜からなった。基質は、10分間のプレインキュベーション後に添加され、そして、消化は、一定に振とうする水浴中で20分間25℃で実行した。反応物は、4℃まで冷却し、HCl(0.3N最終濃度)を添加することによって停止させた。次に、反応管を遠心(4℃で15分間4700×g)し、残ったそのままの基質及びその代謝産物を測定した。
【0143】
天然の基質、サブスタンスP又はMet−エンケファリンを使用する場合、反応の生産物は、それらの異なる疎水的特徴に従って単離し定量する:
−C−18 Sep−Pakカートリッジ(Waters)は、放射標識したサブスタンスPの加水分解を解析するために使用した。3H代謝産物は、H2O−0.1%TFA、次いで25%メタノール−0.1%TFA(それぞれ4ml)を用いる溶出によって単離した。そのままのトリチウム化基質は、75−100%メタノール−0.1%TFA(4ml)を用いて溶出した。
【0144】
−分光光度計に連結したRP−HPLCは、Met−エンケファリンの加水分解を解析するために使用した(C−18 LUNAカラム、AIT)。水中の0.1% TFAから100%アセトニトリル中の0.1% TFAの30分の直線勾配による1ml/分での溶出は、2つのMet−エンケファリン代謝産物(YGG:5.8±0.2;FM:12.8±0.1分の保持時間)及びそのままの基質(YGGFM:18.8±0.2分)を分離した。それらの同定及び相対量(ピークの高さ)を264nmでカラム流出(L3000、Merck)を監視することによって調べた。
【0145】
−最初のMet−エンケファリン基質の消失はまた、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって定量した。アッセイは、抗Met−エンケファリン抗血清(Grosら、1978)及び125I−Met−エンケファリン(80TBq/mmol、NEN)を使用した;μM濃度のTyr−Gly−Gly及びPhe−Met代謝産物の存在下で、nM濃度のMet−エンケファリンを検出した。各分画の放射活性は、液体シンチレーションスペクトロメトリーによって決定した。
合成基質を使用した場合は、蛍光シグナル(強度及び偏光)の出現の動力学は、マルチウェルの蛍光分光計を用いて直接的に解析し;シグナルの強度は、反応中に形成した代謝産物の量に直接的に比例する。
【0146】
実施例3:ヒト唾液の精製及びクロマトグラフィー
ヒト唾液成分の抽出及び精製のプロトコールは、ラット唾液からのシアロルフィンの分子的特徴付けについて開発し確立したものを模倣し(Rougeotら、1994)、そして抽出物及びクロマトグラフィーの分画は、NEPを含有するヒト細胞膜によって、生理学的基質、サブスタンスPの加水分解を阻害するそれらの能力について解析した。
ヒト唾液成分の抽出及び精製は、エンケファリナーゼ活性を潜在的に制御する。簡単には、+4℃で解凍後、唾液試料を下記の方法に従って処理した:
【0147】
−メタノール−酸抽出方法:4℃でのメタノール−酸中の低分子量成分の抽出;唾液の1体積に、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)溶液を含有するメタノールの4体積を添加した。この第一工程は、酸及びメタノール培地中でそれぞれ不活化し沈殿させる高分子量のタンパク質(分解酵素を含む)の除去を実現し、そして小さな分子量(10Kda以下)の唾液構成物質の可溶化を可能にする。メタノール混合物は、急激に振とうし、4℃で15分間12000gで遠心し;メタノールを上清から除去した後、−110℃で凍結乾燥した。
【0148】
HPLC陽イオン交換クロマトグラフィー(HPLC−EC):メタノールで抽出した唾液を溶媒A、即ち、酢酸アンモニウム10mM、pH4.3中に溶解させ、HEMA−IEC BIO−1000カルボキシメチルカラム(Alltech)中に注入した。成分をそれらの陽イオンの特徴に従って、2工程の直線勾配、それぞれ10−500mM及び500−900mM酢酸アンモニウム、pH4.7で、そして、1ml/分の流速で溶出し単離した。2mlの分画を回収し、ヒトエクトペプチダーゼ活性(LNCaP)の阻害能力について試験した後に凍結乾燥させた。
【0149】
抽出及び一連のクロマトグラフィーの質及び回収は、図1に図示されるように、代表的な唾液試料に添加した内部標準(トリチウム化ペプチド:3H−YQFRSR)を用いて推定した;2.5mlのヒト唾液に対応する、抽出した試料に添加したマーカーの回収は、75−84%で評価した。メタノール抽出した唾液のHPLC陽イオン交換クロマトグラフィー(図2;7mlのヒト唾液に対応する唾液抽出物の代表的なプロフィール)は、2つの主要分子の唾液成分の存在を明確に表し、それぞれ26−28及び36−38分の保持時間で第一工程の酢酸アンモニウムの勾配プロフィール(10−500mM)内に抽出され、ヒトの膜に結合したペプチダーゼによるサブスタンスPの90%以上の細胞内タンパク質分解によって阻害した(保持時間の6及び48分の図2に視覚化された2つの活性ピークは、それぞれカラムの排除体積と全体積に対応する)。
【0150】
HPLC逆相クロマトグラフィー(RP−HPLC)。前回のHPLC−ECの活性分画を溶媒A[水中の0.1%TFA]に溶解させ、Synergi Max−RPカラム(Phenomenex)中に注入した。試料成分を1−99%の溶媒B[アセトニトリル−TFA、100−0.1、体積比で]の直線勾配で溶出(1ml/分)した。1mlの分画を回収し、細胞表面のヒトエクトペプチダーゼ活性(LNCaP)に対する阻害能力について凍結後に解析した。内部マーカーの回収は、61%で評価した。前回のHPLC−ECの分画13−14(26−28分の保持時間)から単離した活性分子の形成体のRP−HPLCによる分画(図3)は、ヒトエンドペプチダーゼ活性を阻害する2つの主要な分子群の存在を示し、それぞれ23−25及び28−30分の保持時間でアセトニトリルの勾配プロフィール内で溶出された。
【0151】
これらの分画は、1−99%の溶媒B[100%メタノール−0.1%TFA]の直線勾配による溶出を通じて新しいsynergi Max−RP−HPLCカラム上で更なる精製処理を受けた。カラム溶出物は、1分の間隔でミクロソルブ(microsorb)管に回収し、そして分画をNEP阻害活性について凍結後に試験した。図4に示されるように、2つの主要な分子形態は、ヒトエクトペプチダーゼによるサブスタンスPの細胞内タンパク質分解を阻害し、このように、それぞれ20−21及び29−30分の保持時間で単離し、それらのアミノ酸配列を決定した。
【0152】
サイファージェン・プロテインチップ及びアミノ酸配列解析。N末端配列解析は、Applied Biosystemsのペプチドシークエンサーを用いて自動化エドマン分解によって実行した(plate−forme d’Analyse et de Microsequencage des proteines,Institut Pasteur)。18分の保持時間(分画20)での最終的なRP−HPLCから溶出する分子形態は、690及び769.5Daの分子量に対応し、下記の5個のアミノ酸残基の配列:QRFSRに対応した。26分の保持時間(分画28)で溶出するものは、それぞれ622−666Da及び6495Daの2つの分子成分に対応し;最大の分子量のアミノ酸の決定は、唾液の塩基性のプロリンに富んだポリペプチド配列、61個のアミノ酸配列のヒトPRP−Eに対応することを示した(Isemuraら、1982)。
【0153】
ラット唾液シアロルフィンの類似性によって、これらのデータは、ラットQHNPRペンタペプチドに密接に関連した構造及び機能であって、ヒト唾液の分泌物中に分泌されるヒト唾液シアロルフィン様のQRFSRペンタペプチドの存在に関する直接的な証拠を提供する;それらは、QRSFRがSMR1及びペプチド−ホルモン前駆体の成熟経路に一応は類似した前駆体タンパク質からタンパク質分解的に処理された成熟生成物であることを支持する。さらに、QHNPRラットペプチドに関しては、分泌されたQRFSRペプチドは、おそらくは酢酸塩の形態を含む遊離形態、及び唾液のPRP−Eとの高い疎水性相互作用を含む複合体形態のうち、異なる形態でヒト唾液の分泌物に蓄積されるようである。
【0154】
実施例4:QRFSRペプチドの合成及び試験
QRFSRペプチドは合成され、ヒトLNCaP細胞膜の静置のインキュベーションの実験モデルにおいて、インビトロで、生理学的なNEP基質、サブスタンスPの分解を阻害する能力について解析した。ペプチドQRFSRは、ヒト前立腺上皮細胞の表面に発現したヒトNEPによって仲介されたサブスタンスPの細胞外の細胞内タンパク質分解を阻害した。QRFSRの有効濃度は、1ないし25μMの範囲であり、最大の半分(IC50)は11μMであった(図5)。驚くべきことに、しかし、ヒトNEPに対するラットシアロルフィンを用いて観察したものに関連した重複した方法で、ラット腎のNEP活性に対するQRFSRヒトペプチドの阻害効率は、ヒト細胞表面のNEP(LNCaP)に対して観察したものより少なくとも10倍低い。驚くことに、誘導ペプチドYQRFSRは、抗体及びイムノアッセイ検出システムの開発用にトリチウム標識及び免疫原性結合のために合成されており、ヒト及びラットのエクト−エンドペプチダーゼ活性の両方に対して相対的に類似した阻害効果を提示するようであった(図6及び7)。
【0155】
表:ヒト及びラットのエクトエンドペプチダーゼ活性に対する天然及び誘導のヒト及びラットのペプチドの阻害能力:
【0156】
【表1】

【0157】
その上、QRGPRペプチド(20−90μM)は、hPB遺伝子産物から潜在的に成熟される可能性があり、LNCaPヒト細胞膜によって誘導されるサブスタンスPの細胞内タンパク質分解における効果は有しなかった;この結果は、発明者らに、天然のNEP−阻害性ペンタペプチダーゼ(共通のQ−N末端及びR−C末端)の3つの中心的なアミノ酸の性質がNEPエクトエンドペプチダーゼとの機能的相互作用のアフィニティー及び/又は特異性に対する決定的な特徴であることを提案させる。さらに、ラットとヒトNEPとの間の強い一次アミノ酸配列の類似性(85%でない)にもかかわらず、発明者らは、天然の阻害性ペンタペプチダーゼ、それぞれラットQHNPR及びヒトQRFSRの両方の機能的相互作用における相対的特異性を観察した。これら全ての結果は、両方の外酵素の二次及び三次における立体構造の特異性の存在に関する証拠を提供するものであり;シアロルフィン若しくはその誘導体及びヒトNEPとで形成した二元複合体の結晶構造の決定は、これらの天然の競合阻害剤の結合形態を見抜くことができる。
【0158】
成熟雄性ラットのインビボでのラットシアロルフィンのヒト機能的ペプチド模倣薬の薬理動態及薬力学的パラメータを確立(生体内分布−生物学的利用能−一掃)し、並びにインビボ及びインビトロでのその代謝メカニズム及び代謝回転を決定するためにトリチウム化した3H−YQRFSRを使用した(図8)。RP−HPLCクロマトグラフィーの特徴付けは、下記を示した:
−YQRFSRペプチドはNEPを含有するヒト細胞膜によって代謝されず、実際に93%が、代謝膜がない場合の94%に対してそのままのペプチドとして回収され、
−同じ実験条件で、YQRFSRペプチドはこれらのヒト細胞膜によるサブスタンスPの細胞内タンパク質分解を70%まで阻害する。
【0159】
したがって、YQRFSRは、インビボでのシアロルフィンの機能的特徴付けについて研究された急性疼痛、例えば、ピンによる疼痛試験及びホルマリン試験(Rougeotら、2003)の行動的ラットモデルにおけるBPLP成熟生成物の鎮痛活性を調査するために有用である。
【0160】
実施例5:インビトロでのQRFSRペプチドの更なる特徴付け
QRFSR−ペプチドの阻害特異性は、精製した可溶性ヒトNEP及びヒトDPPIV(N末端細胞質及び膜貫通部分なし)を用いてインビトロで酵素−アッセイでサブスタンスP(SP)の細胞内タンパク質分解を測定することによって評価した。選択的組換えhNEPアッセイを用いて、ヒトQRFSR−ペプチドとhNEPとの分子相互作用が確立され、そのペプチドがhNEP活性を阻害したという直接的な証拠を提供する:図9に示されるように、QRFSR−ペプチドは、90%までNEPを介したSPの細胞内タンパク質分解を阻害した;その阻害能力は、5ないし50μMの範囲で、顕著に濃度依存的(r2=0.99、n=18)であり、最大の半分は29±1μMであった。対照的に、組換えhDPPIVによるSPの分解は、25又は50μMのQRFSR−ペプチドによっては阻害されず、インビトロでのSPを異化する細胞表面の外酵素におけるQRFSR−ペプチドの阻害能力は、NEP−エクトペプチダーゼとの特異的相互作用に単に起因していることを示す。さらに、SPのインビボでの代謝を監視する研究から、QRFSR−ペプチドは、ラットQHNPR−シアロルフィンのように、脊髄のSP−不活化エクトペプチダーゼによる開烈から内因性のSPを完全には保護せず、したがって、インビボではSPを介した侵害受容を可能にしないであろうように思われる。
【0161】
エンケファリンは、両エクトペプチダーゼ、NEP及びAPNによって顕著な効率(数秒以内)でインビボでは不活化される。エンケファリン不活化におけるNEP及びAPNの相補的な役割のせいで、混合したNEP−APN合成阻害剤だけが、様々な疼痛モデルにおける抗侵害受容応答を誘導する。
【0162】
つまり、QRFSR−ペプチドの阻害特異性は、ヒト膜を結合したNEP又はAPNのいずれかを選択的に発現する組換えHEKヒト細胞の膜調製物を用いて酵素−アッセイで評価した。これらを遺伝子導入した細胞モデルは、研究室で開発された。ヒト細胞膜の膜アミノ−及びエンド−エクトペプチダーゼ活性は、人工的な特異的な蛍光基質の分解を測定することによってインビトロで評価し、使用したNEP基質は:Mca−R−P−P−G−F−S−A−−K−(Dnp)−OH(Mca−BK2)であり、APN基質は:Ala−pNAであった。選択的な膜に結合したhNEPアッセイを用いて、発明者らは、NEPによるMca−BK2細胞内タンパク質分解のQRFSR−ペプチドによる阻害は、濃度依存的であり(r2=0.88、n=29決定点)、有効な投与量は5ないし50μMの範囲であったことを見出した。選択的な膜に結合したhAPNアッセイを用いて、発明者らは、QRFSR−ペプチドが10ないし90μMの有効投与量(r2=0.93、n=22決定点)でのhAPNによるAla−pNA開烈を阻害することを示した(図10及び11を参照されたい)。
【0163】
【表2】

【0164】
これらの結果は、ヒトQRFSR−ペンタペプチドがインビトロにおいてNEP及びAPNエクトペプチダーゼ活性の効果的な二重の阻害剤であることを示す。さらに、エンケファリン不活化におけるNEP及びAPNの相補的な役割のせいで、強力な鎮痛作用を発揮するラットシアロルフィンとの類似によって、得られた組み合わせた生物学的及び遺伝的情報が、発明者らを、QRFSR−ペプチドが、エンケファリンを不活化するNEP−APNエクトペプチダーゼを阻害することによって、インビボでエンケファリン依存の抗侵害受容メカニズムを可能にすることを提案させた。
【0165】
実施例6:インビボにおけるQRFSRペプチドの機能的特徴付け
ラット及びヒトNEPとの間の強力な一次アミノ酸配列の類似性(85%ではない)にもかかわらず、発明者らは、両阻害性−ペンタペプチダーゼ、それぞれラットQHNPR及びヒトQRFSRの阻害能力における相対的な種選択性を観察した。驚くべきことに、誘導ペプチドYQRFSRは、トリチウム標識のために合成され、ヒト及びラットのエクトエンドペプチダーゼに対する相対的に類似する阻害効果(5及び50μMの間の有効濃度の範囲)を提示すようであった。つまり、QRFSR誘導のペプチドの抗侵害受容能力は、急性疼痛、例えば、ラットシアロルフィン作用のインビボでの特徴付けのために使用されたホルマリン試験(Rougeotら、2003)の行動ラットモデルにおいて調査された。0.5及び1mg/kgのYQRFSR−ペプチドの全身投与は、ホルマリンを注射した後足の足をなめることの初期段階(ホルマリン注射後の最初の20分)を阻害した。例えば、144±17秒、n=8(ベヒクル)から97±14秒、n=8(0.5mg/kg)(p=0.05)まで及び84±13秒、n=8(1mg/kg)(p=0.02、Dunnett t−Testによる)まで、足をなめることにおける処置したラットによる経過時間を顕著に減少させた。驚くべきことに、ラットシアロルフィンで処理したラットとは対照的に、YQRFSRペプチドで処理したラットは、ホルマリン試験の後期段階(ホルマリン注射後の40ないし60分)で足をなめることの費やした時間が有意に少なくなった(ベヒクルで処理したラット:63±13秒、対1mg/kgで処理したラット:9±3秒、p=0.001)。ラットシアロルフィンより少ない能力であるが、有効投与量の範囲で(100−200μg/kg、iv)、QRFSR誘導ペプチドは、ホルマリン誘導の疼痛モデルにおける合成的に混合したNEP−APN阻害剤RB101(2.5−5mg/kg、iv)と同様の疼痛抑制能力に効果的(1mg/kg、iv)であるように思われる。
【0166】
これらのデータは(図12、13及び14に提示されるように)、YQRFSR−ペプチドが急性及び長期に作用する化学的刺激によって誘導した侵害受容を阻害することを明確に示す。
【0167】
その鎮痛効力は、3mg/kgのモルヒネ投与量とほとんど同じ効果である。
さらに、化学的に誘発した疼痛の行動におけるQRFSR誘導のペプチドによって誘導された無痛覚は、オピオイド受容体アンタゴニスト、ナラキソン(nalaxone)の存在下で全体的に反対となり、その鎮静効果における内因性のオピオイド経路の関与と一致する。
【0168】
【化1】

【0169】
【化2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性のプロリンに富んだ涙液タンパク質(BPLP)の断片であるペプチド、又は該断片のペプチド誘導体であって、ここで、
(i)該ペプチド又はペプチド誘導体は、金属−エクトペプチダーゼ阻害剤であり;
(ii)該ペプチド又はペプチド誘導体は、最大で15個のアミノ酸長であり;
(iii)該ペプチド又はペプチド誘導体は、配列X1−X2−Arg−Phe−Ser−Argを含み、ここで、
−X1は、H原子、又はTyrアミノ酸若しくはCysアミノ酸を表し、
−X2は、X1がHである場合にはGln若しくはGlpを表し、又はX2は、X1がTyr若しくはCysである場合にはGlnを表し、
ここで、前記配列X1−X2−Arg−Phe−Ser−Argは前記ペプチド又はペプチド誘導体のC末端部分であり;そして
(iv)該ペプチド誘導体は、1個又は2個のアミノ酸の置換により前記ペプチドから誘導体化されたものである;
前記ペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項2】
前記金属−エクトペプチダーゼがNEP又はAPNである、請求項1に記載のペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項3】
配列X1−X2−Arg−Phe−Ser−Argからなる、請求項1又は2に記載のペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項4】
前記ペプチド又はペプチド誘導体は、配列QRFSRを含み、ここで、該配列QRFSRは、該ペプチド又はペプチド誘導体のC末端部分である、請求項1〜のいずれか1項に記載のペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項5】
前記ペプチド又はペプチド誘導体は、QRFSR、YQRFSR、又はCQRFSRを含む、請求項に記載のペプチド又はペプチド誘導体。
【請求項6】
配列CQRFSRからなる、請求項に記載のペプチド誘導体。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のペプチド又はペプチド誘導体をコードする核酸。
【請求項8】
請求項に記載の核酸を含む、クローニング及び/又は発現用ベクター。
【請求項9】
請求項に記載の核酸又は請求項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のペプチド又はペプチド誘導体を特異的に認識する抗体。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載のペプチド又はペプチド誘導体を、薬学的に許容される担体とともに含む、疼痛の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか1項に記載のペプチド又はペプチド誘導体のポリマーを、薬学的に許容される担体とともに含む、疼痛の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項13】
請求項に記載の核酸又は前記核酸を発現するベクターを含む、疼痛の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項14】
請求項10に記載の抗体を含む、疼痛の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項15】
請求項1〜のいずれか1項に記載のペプチド又はペプチド誘導体と相乗的に作用する第二の医薬的作用物質を含む、請求項11又は12に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記疼痛が慢性、急性、内臓炎症性又は神経障害性の疼痛である、請求項11〜15のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項17】
前記疼痛が急性の疼痛である、請求項16に記載の医薬組成物
【請求項18】
試験患者の生物学的試料中の、塩基性のプロリンに富んだ涙液タンパク質(BPLP)ペプチドの断片であり、かつ、該BPLPペプチドのC末端部分である配列QRFSRを含むものを検出又は定量し、そして該BPLPペプチドの生産と対照患者の生物学的試料中の同生産とを比較することを含む、疼痛の発生を測定するためにインビトロ方法
【請求項19】
前記BPLPペプチドの生産の検出が、生物学的試料と請求項10に記載の抗体とを接触させることによって実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疼痛が急性の疼痛である、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
試験患者の生物学的試料中のBPLP遺伝子又はその転写物における定量的及び/又は定性的異常性を検出することを含む、疼痛の発生を測定するためにインビトロ方法
【請求項22】
NEPへの結合に関して請求項1〜のいずれか1項に記載のBPLPペプチドと競合する能力について化合物をスクリーニングするインビトロの方法であって、下記の工程:
a)候補化合物とNEP発現細胞とを請求項1〜のいずれか1項に記載のBPLPペプチドの存在下でインキュベートすること;
b)NEPへの結合に関して該候補化合物が該BPLPペプチドと競合するか否かを測定すること
を含む、前記方法。
【請求項23】
下記の工程:
a)NEPを発現している細胞培養物を調製すること、又はNEPを発現している臓器標本若しくは組織試料を調製すること;
b)半飽和濃度の標識した請求項1〜のいずれか1項に記載のBPLPペプチドとの競合を試験されるべき候補化合物を添加すること;
c)候補化合物の存在下で、特異的結合が生じるのに十分な時間及び条件で、工程a)の細胞培養物、臓器標本若しくは組織試料をインキュベートすること;
d)様々な濃度の候補化合物の存在下で、細胞培養物、臓器標本若しくは組織試料に特異的に結合した標識を定量すること
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜のいずれか1項に記載のBPLPペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストとしてNEP活性に作用する化合物の能力についてその化合物をスクリーニングするインビトロの方法であって、下記の工程:
a)(i)請求項1〜のいずれか1項に記載のBPLPペプチド、及び(ii)NEP基質の存在下で、候補化合物とNEP発現細胞とをインキュベートすること;
b)NEPによるNEP基質の細胞内タンパク質分解を測定すること、ここで、候補化合物の存在下での細胞内タンパク質分解の増加は、候補化合物がない場合の細胞内タンパク質分解と比較して、アンタゴニスト活性を示し;一方、候補化合物の存在下での細胞内タンパク質分解の減少は、候補化合物がない場合の細胞内タンパク質分解と比較して、アゴニスト活性を示す、
ことを含む、前記方法。
【請求項25】
請求項1〜のいずれか1項に記載のBPLPペプチドのアゴニストである化合物をスクリーニングするための請求項24に記載の方法であって、下記の工程:
a)NEPを発現している細胞培養物を調製すること、又はNEPを発現している臓器標本若しくは組織試料を調製すること;
b)(i)候補化合物、(ii)半飽和濃度の請求項1〜のいずれか1項に記載のBPLPペプチド、及び(iii)NEP基質の存在下で、初速度の条件下でNEP基質の細胞内タンパク質分解が起こるのに十分な時間で、NEPの酵素活性を測定することができる濃度で、工程a)の細胞培養物、臓器標本又は組織試料をインキュベートすること;
c)候補化合物の有無で、及び該BPLPペプチドの有無で、それぞれ、NEP基質の細胞内タンパク質分解のレベルを測定することによって、工程a)の生物学的材料中で発現されているNEPの活性を定量すること
を含む、前記方法。
【請求項26】
請求項1〜のいずれか1項に記載のBPLPペプチドのアンタゴニストである化合物をスクリーニングするための請求項24に記載の方法であって、下記の工程:
a)NEPを発現している細胞培養物を調製すること、又はNEPを発現している臓器標本若しくは組織試料を調製すること;
b)最大下の濃度の請求項1〜のいずれか1項に記載のBPLPペプチド、及びNEP基質の存在下で、NEP基質の細胞内タンパク質分解が初速度の条件下で生じるのに十分な時間で候補化合物の存在下で、初速度の条件下でNEP酵素活性を測定することができる濃度で、工程a)の細胞培養物、臓器標本若しくは組織試料をインキュベートすること;
c)候補化合物の有無で、及び該BPLPペプチドの有無で、それぞれ、NEP基質の細胞内タンパク質分解のレベルを測定することによって、工程a)の生物学的材料中で発現されているNEPの活性を定量すること
を含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−120533(P2012−120533A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3564(P2012−3564)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【分割の表示】特願2007−503441(P2007−503441)の分割
【原出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(591282984)アンスティテュ パストゥール (17)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【Fターム(参考)】