説明

ヒドロキシアルキルデンプンとタンパク質とのコンジュゲート

本発明は、活性物質およびヒドロキシアルキルデンプンが、式(I)[式中、Yは、OおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子であり、XはSHおよび式(F)からなる群から選択される]で示される構造を有する化学部分により連結され、コンジュゲートが、式(IV)[式中、HAS’は、チオエステル基に連結したヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体の残基であり、AS’は、アルファ−Xベータ−アミノ基に連結した活性物質またはその誘導体の残基である]または式(V)[式中、HAS’は、アルファ−Xベータ−アミノ基に連結したヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体の残基であり、AS’は、チオエステル基に連結した活性物質またはその誘導体の残基であり、−(C=Y)基は、チオエステル基−(C=Y)−S−R’に由来し、HN−CH−CH2−X基は、アルファ−Xベータ−アミノ基に由来する]で示される構造を有する、活性物質およびヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートに関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質とヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはヒドロキシエチルデンプンとのコンジュゲート(ここに、コンジュゲートは、チオエステル基とアルファ−Xベータ−アミノ基(ここに、Xは−SHおよび式:
【化1】

で示される基からなる群から選択される)との反応により、ヒドロキシアルキルデンプンと活性物質との共有結合を経由したネイティブ化学ライゲーションにより製造される)に関する。本発明はまた、これらのコンジュゲートを製造する方法およびコンジュゲートの使用に関する。
【0002】
ネイティブ化学ライゲーションは、ペプチドチオエステルがN−末端システイン残基を有するペプチドとカップリングしてライゲーション部位にてアミド結合を含む生成物を提供する、大分子ペプチドおよび小分子タンパク質を製造する高効率的方法である。
【背景技術】
【0003】
国際公開番号WO 03/031581 A2は、N末端にシステインまたはヒスチジン残基を有するポリペプチドにポリマー誘導体をコンジュゲートさせる方法(ここに、該方法は、N末端にシステインまたはヒスチジン残基を有するポリペプチドの提供、チオエステル末端ポリマーの提供を含み、該ポリマーは、水溶性および非ペプチド性ポリマー骨格、好ましくはポリエチレングリコールポリマーを含み、ポリマー誘導体およびポリペプチドを反応させる)を開示する。ポリマーとして、ポリ(アルキレングリコール)、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィン性アルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルファヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、多糖類、ならびにその共重合体、三元重合体および混合物が挙げられる。すべての明示的に開示されているポリマーは、ポリエチレングリコールポリマーである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単官能性PEG分子のカップリング方法および使用の発展にもかかわらず、PEG化剤の一般的不利は、非天然ポリマーとしてのPEGの代謝経路が詳細に知られていないことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
それゆえ、活性物質と、化学ライゲーションにより形成されるポリマー(ここに、ポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールはポリマーとして使用されない)との新規コンジュゲートを提供することが本発明の目的であった。
【0006】
それにより、これらのコンジュゲートを製造する方法を提供することは本発明の別の目的であった。
【0007】
従って、本発明は、活性物質およびヒドロキシアルキルデンプンが式(I):
【化2】

(I)
[式中、YはOおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子であり、Xは−SHおよび式:
【化3】

で示される基からなる群から選択される]
で示される化学残基により連結される、活性物質とヒドロキシアルキルデンプンとのコンジュゲートに関する。
【0008】
それにより、本発明は、チオエステル基−(C=Y)−S−R’と式:
【化4】

[式中、R’は水素、適宜適切に置換されていてもよい、直鎖、環状および/または分枝鎖の、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキル基からなる群から選択され、好ましくはベンジルである]
で示されるアルファ−Xベータ−アミノ基とを反応させることを特徴とする、活性物質およびヒドロキシアルキルデンプンが式(I):
【化5】

(I)
[式中、YはOおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子である]
で示される化学残基により連結される、活性物質とヒドロキシアルキルデンプンとの共有結合したコンジュゲートを製造する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
それゆえ本明細書において用語「アルファ−Xベータ−アミノ基」は、Xが炭素原子に結合し、第一級アミノ基が隣接する炭素原子に結合する、エチレン基を意味する。
【0010】
上記式(I)で示される化学部分にて、−(C=Y)基はチオエステル基−(C=Y)−S−R’に由来し、HN−CH−CH2−X基はアルファ−Xベータ−アミノ基に由来する。
【0011】
本明細書において用語「活性物質」は、ウィルス、バクテリア、菌類、植物体、動物体およびヒトを含むが、これらに限定されない、生物有機体のいずれかの物理的特性または生化学的特性に影響を及ぼすことができる物質に関する。特に本明細書において用語「活性物質」は、ヒトもしくは動物における疾患の診断、治療緩和、治療もしくは予防を対象とした物質、またはそうでなければヒトもしくは動物の肉体的もしくは精神的健康を増強するための物質に関する。生物学的に有効な分子の例としては、ペプチド、タンパク質、酵素、小分子薬剤、色素、脂質、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、細胞、ウィルス、リポソーム、微小粒子およびミセルが挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質の例としては、組換えヒトEPO(rhEPO)などのエリスロポエチン(EPO)、G−CSF様組換えヒトG−CSF(rhG−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF)、IFNアルファおよびIFNベータ様組換えヒトIFNアルファまたはIFNベータ(rhIFNアルファまたはrhIFNベータ)などのアルファ−インターフェロン(IFNアルファ)、ベータ−インターフェロン(IFNベータ)またはガンマ−インターフェロン(IFNガンマ)、インターロイキン、例えばIL−2またはIL−3様組換えヒトIL−2またはIL−3(rhIL−2またはrhIL−3)などのIL−1〜IL−18、凝固因子II−XIII様因子VIIIなどの血清タンパク質、アルファ1−アンチトリプシン(A1AT)、活性化タンパク質C(APC)、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(hTPA)などの組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)などのプラスミノーゲン活性化因子、組換えヒトAT III(rhAT III)などのAT III、ミオグロビン、ウシ血清アルブミン(BSA)などのアルブミン、上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板増殖因子(PDGF)、線維芽増殖因子(FGF)、脳由来増殖因子(BDGF)、神経成長因子(NGF)、B細胞増殖因子(BCGF)、脳由来神経栄養増殖因子(BDNF)などの成長因子、毛様体神経栄養因子(CNTF)、TGFアルファまたはTGFベータなどの形質転換成長因子、BMP(骨形態形成タンパク質)、ヒト成長ホルモンなどの成長ホルモン、TNFアルファまたはTNFベータなどの腫瘍壊死因子、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、ヘモグロビン、インスリン、ゴナドトロピン、メラニン細胞刺激ホルモン(アルファ−MSH)、トリプトレリンなどのホルモンまたはプロホルモン、抗利尿ホルモン(ADHおよびオキシトシン)ならびに放出ホルモンおよび放出阻害ホルモンなどの視床下部(hypthalamic)ホルモン、副甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン、例えばチロキシン、チロトロピン、チロリベリン、プロラクチン、カルシトニン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP−1、GLP−2など)、エキセンディン−4などのエキセンディン、レプチン、バソプレシン、ガストリン、セクレチン、インテグリン、糖タンパク質ホルモン(例えばLH、FSHなど)、メラノシド(melanoside)刺激ホルモン、apo−B、apo−E、apo−Laなどのリポタンパク質およびアポリポタンパク質、IgG、IgE、IgM、IgA、IgDおよびそのフラグメントなどのイムノグロブリン、ヒルジン、組織経路阻害剤、レクチンまたはリシンなどの植物性タンパク質、ハチ毒、ヘビ毒、抗毒素、抗原E、アルファ−プロテイナーゼ阻害剤、ブタクサ・アレルゲン、メラニン、オリゴリジンタンパク質、RGDタンパク質またはこれらのタンパク質のうちの一つについての適宜対応するレセプター;またはこれらいずれかのタンパク質もしくはレセプターの官能基性誘導体もしくはフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。酵素の例としては、炭水化物特異的酵素、タンパク分解酵素、酸化酵素、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、キナーゼおよびリガーゼが挙げられるが、これらに限定されない。具体的な限定されない例は、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニン・デアミナーゼ、アデノシン・デアミナーゼ、グルタミナーゼ、グルタミナーゼ−アスパラギナーゼ、フェニルアラニン、トリプトファナーゼ、チロシナーゼ、スーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD)、エンドトキシナーゼ(endotoxinase)、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、カリクレイン、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、サーモリシン、リパーゼ、ウリカーゼ、アデノシン・ジホスファターゼ、プリン・ヌクレオシド・ホスホリラーゼ、ビリルビン酸化酵素、グルコース酸化酵素、グルコダーゼ(glucodase)、グルコン酸酸化酵素、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼ、ヒアルロニダーゼ、組織因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、MAP−キナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、ラクトフェリンおよびその官能基性誘導体またはフラグメントである。
【0012】
本発明のある別法によれば、活性物質は、小分子薬剤、ペプチドおよび/またはタンパク質である。
【0013】
他のもののうち、次のタンパク質が明示的に示されている: 組換えヒトEPO(rhEPO)などのエリスロポエチン(EPO)、G−CSF様組換えヒトG−CSF(rhG−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF)、凝固因子II−XIII様因子VII、因子VIIIまたは因子IXなどの血清タンパク質、アルファ1−アンチトリプシン(A1AT)、活性化タンパク質C(APC)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(hTPA)などのプラスミノーゲン活性化因子、組換えヒトAT III(rhAT III)などのAT III。
【0014】
本明細書において用語「ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)」は、少なくとも一つのヒドロキシアルキル基により置換されているデンプン誘導体を意味する。本発明の好ましいヒドロキシアルキルデンプンは、式(II):
【化6】

(II)
[式中、デンプン分子の還元末端は、非酸化体にて示され、HASの末端糖単位は、例えば溶媒に応じてアルデヒド体と平衡状態にあることができる、アセタール体にて示される]
で示される構造を有する。本明細書において略語HAS”は、HAS分子の還元末端における末端単糖類単位を有さないHAS分子を意味する。
【0015】
本明細書において用語ヒドロキシアルキルデンプンは、末端炭水化物部分が簡潔のために式(II)に示されるヒドロキシアルキル基R1、R2および/またはR3を含有する化合物に限定されないが、少なくとも一つのヒドロキシアルキル基がどこかに存在し、末端炭水化物部分および/またはデンプン分子の残りの部分のいずれかにて、HAS”がヒドロキシアルキル基R1、R2またはR3で置換されている化合物をも意味する。
【0016】
二以上の異なるヒドロキシアルキル基を含有するヒドロキシアルキルデンプンもまた可能である。
【0017】
HASに含まれる少なくとも一つのヒドロキシアルキル基は、二以上のヒドロキシ基を含むことができる。好ましい具体的態様によれば、HASに含まれる少なくとも一つのヒドロキシアルキル基は、一つのヒドロキシ基を含む。
【0018】
表現「ヒドロキシアルキルデンプン」はまた、アルキル基がモノ置換または多置換である誘導体を含む。本明細書において、アルキル基がハロゲン、特にフッ素、またはアリール基で置換されていることが好ましい。さらに、ヒドロキシアルキル基のヒドロキシ基は、エステル化またはエーテル化することができる。
【0019】
さらにアルキルの代わりに、直鎖または分枝鎖の置換または非置換アルケン基もまた使用することができる。
【0020】
ヒドロキシアルキルデンプンはデンプンのエーテル誘導体である。該エーテル誘導体に加えて、他のデンプン誘導体もまた本明細書にて用いることができる。例えば、エステル化ヒドロキシ基を含有する誘導体が有用である。これらの誘導体は例えば、2〜12の炭素原子を有する非置換のモノカルボン酸もしくはジカルボン酸の誘導体またはその置換誘導体であることができる。特に有用なものは、2〜6の炭素原子を有する非置換モノカルボン酸の誘導体、特に酢酸の誘導体である。本明細書において、アセチルデンプン、ブチリルデンプンおよびプロピオニルデンプンが好ましい。
【0021】
さらに2〜6の炭素原子を有する非置換ジカルボン酸の誘導体が好ましい。
【0022】
ジカルボン酸の誘導体の場合、ジカルボン酸の第二カルボキシ基もまたエステル化されることが有用である。さらに、ジカルボン酸のモノアルキルエステルの誘導体もまた、本明細書において適切である。
【0023】
置換モノカルボン酸またはジカルボン酸について、好ましい置換基は、置換アルキル残基についての上記のものと同じであることができる。
【0024】
デンプンのエステル化についての技術は、当分野において知られている(例えば文献(Klemm D. et al, Comprehensive Cellulose Chemistry Vol. 2, 1998, Whiley-VCH, Weinheim, New York)、特に4.4章セルロースのエステル化(ISBN 3-527-29489-9)を参照のこと)。
【0025】
本発明の好ましい具体的態様によれば、上記式(II)記載のヒドロキシアルキルデンプンを用いる。HAS”に含まれる他の糖環構造は、糖環に明示的に記載のものと同一または異なることができる。
【0026】
式(II)記載の残基R1、R2およびR3に関しては、特別な限定はない。好ましい具体的態様によれば、R1、R2およびR3は、独立して水素、またはアルキル残基にそれぞれ2〜10の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基、ヒドロキシアラルキル基またはヒドロキシアルカリル基、または(CH2CH2O)n−H基(ここに、nは整数、好ましくは1、2、3、4、5または6である)である。水素、および2〜10を有するヒドロキシアルキル基が好ましい。より好ましくは、ヒドロキシアルキル基は、2〜6の炭素原子、より好ましくは2〜4の炭素原子、およびさらにより好ましくは2〜4の炭素原子を有する。それゆえ好ましい「ヒドロキシアルキルデンプン」は、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンおよびヒドロキシブチルデンプンを含み、ヒドロキシエチルデンプンおよびヒドロキシプロピルデンプンが特に好ましく、ヒドロキシエチルデンプンが最も好ましい。
【0027】
アルキル、アリール、アラルキルおよび/またはアルカリル基は、直鎖または分枝鎖であり、適切に置換されていてもよい。
【0028】
それゆえ本発明はまた、R1、R2およびR3が独立して水素、または2〜6の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシアルキル基である、上記方法およびコンジュゲートに関する。
【0029】
従って、好ましいR1、R2およびR3は、ヒドロキシヘキシル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシイソプロピル、2−ヒドロキシエチルなどのヒドロキシエチル、水素であることができ、2−ヒドロキシエチル基が特に好ましい。
【0030】
それゆえ本発明はまた、R1、R2およびR3が、独立して水素または2−ヒドロキシエチル基である、上記の方法およびコンジュゲートに関し、少なくとも一つのR1、R2およびR3残基が2−ヒドロキシエチルである具体的態様が特に好ましい。
【0031】
ヒドロキシエチルデンプン(HES)が、本発明のすべての具体的態様について最も好ましい。
【0032】
それゆえ本発明は、ポリマーがヒドロキシエチルデンプンであり、ポリマー誘導体がヒドロキシエチルデンプン誘導体である、上記の方法およびコンジュゲートに関する。
【0033】
ヒドロキシエチルデンプン(HES)は、天然アミロペクチンの誘導体であり、体内にてアルファ−アミラーゼにより分解される。HESは炭水化物ポリマーアミロペクチンの置換誘導体であり、これはコーンスターチ中に95重量%までの濃度にて存在する。HESは、有利な生物学的特性を示し、臨床において血液量置換剤として用いられ、血液希釈治療に用いられる(文献(Sommermeyer et al., 1987, Krankenhauspharmazie, 8(8), 271-278、およびWeidler et al., 1991, Arzneim.-Forschung/Drug Res., 41, 494-498))。
【0034】
アミロペクチンは、主鎖においてアルファ−1,4−グリコシド結合が存在し、分枝鎖部位においてアルファ−1,6−グリコシド結合が見られるグルコース部分からなる。この分子の物理化学的特性は主に、グリコシド結合の型により測定される。ギザギザの(nicked)アルファ−1,4−グリコシド結合のために、1回転あたり約6つのグルコースモノマーを有するらせん構造が作られる。ポリマーの物理化学的特性ならびに生化学的特性は、置換により改変し得る。ヒドロキシエチル基の導入は、アルカリ性ヒドロキシエチル化により達成することができる。反応条件を適合させることにより、ヒドロキシエチル化に関して非置換グルコースモノマーにおけるそれぞれのヒドロキシ基の異なる反応性を活用することが可能である。この事実により、当業者は限定される程度まで置換パターンに影響を及ぼすことができる。
【0035】
HESは主に、分子量分布および置換度により特徴付けられる。置換度を記載する二つの可能性がある:
1. 置換度は、すべてのグルコース部分に関する置換グルコースモノマーの割合を相対的に記載することができる。
2. 置換度は、グルコース部分あたりのヒドロキシエチル基の数が記載されるモル置換として記載することができる。
本明細書において、DSとして示される置換度は、上記のモル置換に関する(文献(Sommermeyer et al., 1987, Krankenhauspharmazie, 8(8), 271-278、上記引用のように特にp. 273)もまた参照のこと)。
【0036】
HES溶液は、各分子が重合度、分枝部位の数およびパターン、および置換パターンに関して他のものと異なる、多分散系組成物として存在する。それゆえHESは、異なる分子量を有する化合物の混合物である。その結果として、特定のHES溶液は、統計的平均を用いた平均分子量により測定する。本明細書において、Mnは分子の数に応じて相加平均として計算する。あるいはMw(またはMW)、平均分子量はHESの質量に応じた単位を意味する。
【0037】
本明細書において、好ましいヒドロキシエチルデンプンは、1〜300kDの平均分子量(平均分子量の重量)を有することができる。ヒドロキシエチルデンプンはさらに、ヒドロキシエチル基に関して0.1〜0.8の好ましいモル置換度および2〜20の範囲にてC2:C6置換の間の好ましい比を示すことができる。
【0038】
本明細書において用語「平均分子量」は、文献(Sommermeyer et al., 1987, Krankenhauspharmazie, 8(8), 271-278; and Weidler et al., 1991, Arzneim.-Forschung/Drug Res., 41, 494-498)に記載されるLALLS−(低アングルレーザー光散乱)−GPC法により測定される重量に関する。さらに10kD以下の平均分子量について、LALLS−GPCにより先に定量される基準により計算した。
【0039】
本発明の好ましい具体的態様によれば、用いられるヒドロキシエチルデンプンの平均分子量は、1〜300kD、より好ましくは2〜200kD、より好ましくは4〜130kD、より好ましくは4〜100kDおよびさらにより好ましくは4〜70kDである。
【0040】
それゆえ本発明はまた、ヒドロキシアルキルデンプンが4〜70kDの平均分子量を有するヒドロキシエチルデンプンである、上記方法およびコンジュゲートに関する。
【0041】
平均分子量の好ましい範囲は、例えば4〜70kDまたは10〜70kDまたは12〜70kDまたは18〜70kDまたは50〜70kDまたは4〜50kDまたは10〜50kDまたは12〜50kDまたは18〜50kDまたは4〜18kDまたは10〜18kDまたは12〜18kDまたは4〜12kDまたは10〜12kDまたは4〜10kDである。
【0042】
本発明の特に好ましい具体的態様によれば、用いられるヒドロキシエチルデンプンの平均分子量は、4kDより大きく70kD未満の範囲であり、例えば約10kDであるか、または9〜10kDまたは10〜11kDまたは9〜11kDの範囲、または約12kDであるか、または11〜12kDまたは12〜13kDまたは11〜13kDの範囲、または約18kDであるか、または17〜18kDまたは18〜19kDまたは17〜19kDの範囲、または約50kDであるか、または49〜50kDまたは50〜51kDまたは49〜51kDの範囲である。
【0043】
モル置換度(DS)の上限について、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2.0などの2.0までの値もまた可能であり、2.0未満の値が好ましく、1.5未満の値がより好ましく、0.7、0.8または0.9などの1.0未満の値がさらにより好ましい。
【0044】
それゆえモル置換度の好ましい範囲は、0.1〜2または0.1〜1.5または0.1〜1.0または0.1〜0.9または0.1〜0.8である。モル置換度のより好ましい範囲は、0.2〜2または0.2〜1.5または0.2〜1.0または0.2〜0.9または0.2〜0.8である。モル置換度のさらにより好ましい範囲は、0.3〜2または0.3〜1.5または0.3〜1.0または0.3〜0.9または0.3〜0.8である。モル置換度のさらにより好ましい範囲は、0.4〜2または0.4〜1.5または0.4〜1.0または0.4〜0.9または0.4〜0.8である。
【0045】
置換度(DS)に関して、DSは、好ましくは少なくとも0.1、より好ましくは少なくとも0.2、より好ましくは少なくとも0.3およびより好ましくは少なくとも0.4である。DSの好ましい範囲は、0.1〜0.8、より好ましくは0.2〜0.8、より好ましくは0.3〜0.8およびさらにより好ましくは0.4〜0.8、さらにより好ましくは0.1〜0.7、より好ましくは0.2〜0.7、より好ましくは0.3〜0.7およびより好ましくは0.4〜0.7である。DSの特に好ましい値は、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8であり、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8がより好ましく、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8がさらにより好ましく、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8がさらにより好ましく、例えば0.4および0.7が特に好ましい。
【0046】
本明細書において0.8などの与えられた値のモル置換度は、正確な値であるか、または0.75〜0.84の範囲にあるものとして理解することができる。それゆえ例えば、0.1の与えられた値は、正確な値の0.1であるか、もしくは0.05〜0.14の範囲であることができ、0.4の与えられた値は、正確な値の0.4であるか、もしくは0.35〜0.44の範囲であることができ、または0.7の与えられた値は、正確な値の0.7であるか、もしくは0.65〜0.74の範囲であることができる。
【0047】
ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはヒドロキシエチルデンプンの分子量およびその置換度DSの特に好ましい組合せは、例えば10kDおよび0.4または10kDおよび0.7または12kDおよび0.4または12kDおよび0.7または18kDおよび0.4または18kDおよび0.7または50kDおよび0.4または50kDおよび0.7または100kDおよび0.7である。
【0048】
約130kDの平均分子量を有するHESの例は、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8などの0.2〜0.8、好ましくは0.4、0.5、0.6または0.7などの0.4〜0.7の置換度を有するHESである。
【0049】
約130kDの平均分子量を有するHESについての例は、FreseniusからのVoluven(登録商標)である。Voluven(登録商標)は、例えば血液量不足症の治療および予防のための治療指標に用いる容積置換に用いられる人工(artifical)コロイドである。Voluven(登録商標)の特徴は、130,000+/−20,000Dの平均分子量、0.4のモル置換および約9:1のC2:C6比である。
【0050】
2:C6置換の比に関して、該置換は、好ましくは2〜20の範囲、より好ましくは2〜15の範囲、さらにより好ましくは3〜12の範囲である。
【0051】
本発明のさらなる具体的態様によれば、異なる平均分子量および/または異なる置換度および/またはC2:C6置換の異なる比を有するヒドロキシエチルデンプンの混合物もまた、用いることができる。それゆえ異なる平均分子量および異なる置換度およびC2:C6置換の異なる比を有するか、または異なる平均分子量および異なる置換度およびC2:C6置換の同じもしくはほぼ同じ比を有するか、または異なる平均分子量および同じもしくはほぼ同じ置換度およびC2:C6置換の異なる比を有するか、または同じもしくはほぼ同じ平均分子量および異なる置換度およびC2:C6置換の異なる比を有するか、または異なる平均分子量および同じもしくはほぼ同じ置換度およびC2:C6置換の同じもしくはほぼ同じ比を有するか、または同じもしくはほぼ同じ平均分子量および異なる置換度およびC2:C6置換の同じもしくはほぼ同じ比を有するか、または同じもしくはほぼ同じ平均分子量および同じもしくはほぼ同じ置換度およびC2:C6置換の異なる比を有するか、またはほぼ同じ平均分子量およびほぼ同じ置換度およびほぼ同じC2:C6置換の比を有するヒドロキシエチルデンプンの混合物を用いることができる。
【0052】
本発明による異なるコンジュゲートおよび/または異なる方法において、異なるヒドロキシアルキルデンプン、好ましくは異なるヒドロキシエチルデンプンおよび/または異なるヒドロキシアルキルデンプン混合物、好ましくは異なるヒドロキシエチルデンプン混合物を用いることができる。
【0053】
本明細書において用語「反応性カルボキシ基」は、反応性エステルを意味し、無水カルボン酸、イソチオシアネートまたはイソシアネートを示すことができる。好ましい反応性エステルは、N−ヒドロキシスクシンイミドまたはスルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドなどのN−ヒドロキシスクシンイミド、p−ニトロフェノール、o,p−ジニトロフェノール、o,o’−ジニトロフェノールなどの適切に置換されたフェノール、2,4,6−トリクロロフェノールまたは2,4,5−トリクロロフェノールなどのトリクロロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノールまたは2,4,5−トリフルオロフェノールなどのトリフルオロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール、またはヒドロキシベンゾトリアゾールなどのヒドロキシアゾールに由来する。特に好ましくは、N−ヒドロキシスクシンイミドであり、N−ヒドロキシスクシンイミドおよびスルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドが特に好ましい。すべてのアルコールはそれのみで、またはその二以上の適切な組合せとして用いることができる。反応性エステルとして、ペンタフルオロフェニルエステルおよびN−ヒドロキシスクシンイミドエステルが特に好ましい。
【0054】
チオエステル基−(C=Y)−S−R’、好ましくは−(C=O)−S−R’のR’基について、−S−R’基はアルファ−Xベータ−アミノ基と反応するときの置換に適切な求電子性脱離基を形成する場合に、非特異的限定が存在する。好ましいSR’残基としては、置換または非置換のチオフェノール、チオピリジン、ベンジルメルカプタン、エタンチオール、メタンチオール、2−メルカプトエタンスルホン酸、2−メルカプト酢酸、2−メルカプト酢酸メチルエステルまたはエチルエステル、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチルエステルまたはエチルエステル、4−メルカプト酪酸、4−メルカプト酪酸メチルエステルまたはエチルエステルに由来する置換基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の最初の代替によれば、チオエステル基はヒドロキシアルキルデンプンに含まれ、アルファ−Xベータ−アミノ基は活性物質に含まれる。
【0056】
それゆえ本発明はまた、チオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプンが活性物質のアルファ−Xベータ−アミノ基と反応する、上記方法にも関する。
【0057】
チオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはヒドロキシエチルデンプンは、すべての適切な方法により提供することができる。
【0058】
本発明のある具体的態様によれば、本発明の方法は、ヒドロキシアルキルデンプンをその還元末端にて選択的に酸化させて式(IIIa):
【化7】

(IIIa)
および/または式(IIIb):
【化8】

(IIIb)
で示されるヒドロキシアルキルデンプンを得、その還元末端にて選択的に酸化されたヒドロキシアルキルデンプンと少なくとも一つの適切な化合物とを反応させてチオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプンを得ることを含む。
【0059】
ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはヒドロキシエチルデンプンの酸化は、上記の構造(IIIa)および/または(IIIb)を有する化合物を生じる各方法または方法の組合せにより行うことができる。酸化はヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端を生じるすべての適切な方法により行うことができるが、好ましくは、本明細書に引用される文献(例えばDE 196 28 705 A1)の各内容(実施例A、9段落目、6〜24行目)に記載されるアルカリ性ヨウ素溶液を用いて行う。
【0060】
本発明の別法により、ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくは還元末端にて選択的に酸化されたものは、官能基M(ここに、官能基Mはヒドロキシアルキルデンプンと、好ましくは酸化された還元末端にて反応する)、および官能基Q(ここに、官能基Qはチオエステル基であるか、または改変されてチオエステル基を与えることができる官能基である)を含有する、少なくとも二官能性の化合物と反応する。
【0061】
ヒドロキシアルキルデンプンと反応する少なくとも二官能性の化合物の官能基Mとして、特に基は、R’が、水素、またはアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルもしくはシクロアルキルアリール残基(ここに、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルまたはシクロアルキルアリール残基はNH基に直接連結することができるか、または別の具体的態様により酸素架橋によりNH基に連結することができる)である、構造R’−NH−を有するものが示される。アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルまたはシクロアルキルアリール残基は適切に置換することができる。好ましい置換基としては、F、ClまたはBrなどのハロゲンを示すことができる。特に好ましいR’残基は、水素、アルキルおよびアルコキシ基であり、さらに好ましくは、水素および非置換アルキルおよびアルコキシ基である。
【0062】
アルキルおよびアルコキシ基のうち、1、2、3、4、5または6の炭素原子を有する基が好ましい。より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシ基である。特に好ましくは、メチル、エチル、メトキシ、エトキシであり、特に好ましくはメチルまたはメトキシである。
【0063】
本発明の別の具体的態様により、官能基Mは、R”が、好ましくは構造単位−NH−および/または構造単位−(C=G)−(ここに、GはOまたはSである)、および/または構造単位−SO2−を含有する、構造R’−NH−R”−を有する。官能基R”についての具体的な例は、
【化9】

[式中、Gが二つ存在する場合、独立してOまたはSである]
で示される基である。
【0064】
それゆえ本発明はまた、官能基Mが以下の式:
【化10】

[式中、GはOまたはSであり、二つ存在する場合、独立してOまたはSであり、R’はメチルである]
で示される基からなる群から選択される、上記の方法およびコンジュゲートに関する。
【0065】
本発明の特に好ましい具体的態様により、官能基Mはアミノ基−NH2である。
【0066】
チオエステル基であるか、または化学的に修飾されてチオエステル基を与えることができる官能基である、Q基により、他の中で次の官能基が示される:
− C−C−二重結合またはC−C−三重結合または芳香族C−C−結合;
− チオ基またはヒドロキシ基;
− アルキルスルホン酸ヒドラジド、アリールスルホン酸ヒドラジド;
− 1,2−ジオール;
− 1,2−アミノ−チオアルコール;
− アジド;
− 1,2−アミノアルコール;
− アミノ基−NH2、またはアミノアルキル基、アミノアリール基、アミノアラルキル基もしくはアルカリルアミノ基などの構造単位−NH−を含有するアミノ基の誘導体;
− ヒドロキシルアミノ基−O−NH2、またはヒドロキシルアルキルアミノ基、ヒドロキシルアリールアミノ基、ヒドロキシルアラルキルアミノ基、もしくはヒドロキサル(hydroxal)アルカリルアミノ基などの構造単位−O−NH−を含有するヒドロキシルアミノ基の誘導体;
− それぞれ構造単位−NH−O−を含有する、アルコキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、アラルキルオキシアミノ基またはアルカリルオキシアミノ基;
− −Q−C(=G)−M
[式中、GはOまたはSであり、Mは例えば、
−− −OHまたは−SH;
−− アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基またはアルカリルオキシ基;
−− アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基またはアルカリルチオ基;
−− アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、アルカリルカルボニルオキシ基;
−− N−ヒドロキシスクシンイミドなどのイミド構造または構造単位O−N(ここに、Nはヘテロアリール化合物の一部である)を有するヒドロキシルアミンのエステルなどの活性化エステル、またはG=Oであり、Qが存在しない場合、ペンタフルオロフェニル、パラニトロフェニルまたはトリクロロフェニルなどの置換アリール残基を有するアリールオキシ化合物など;
(ここに、Qは存在しないか、またはNHまたはSもしくはOなどのヘテロ原子である);
である]
で示されるカルボニル基を有する残基;
− −NH−NH2または−NH−NH−;
− −NO2
− ニトリル基;
− アルデヒド基またはケト基などのカルボニル基;
− カルボキシ基;
− −N=C=O基または−N=C=S基;
− ヨウ化ビニルもしくは臭化ビニル基などのハロゲン化ビニル基またはビニルトリフレート;
− −C≡C−H;
− −(C=NH2Cl)−Oアルキル
− −(C=O)−CH2−Hal基(ここに、HalはCl、BrまたはIである);
− −CH=CH−SO2−;
− −S−S−構造を含有するジスルフィド基;
− 以下の式:
【化11】

で示される基;
− 以下の式:
【化12】

で示される基。
【0067】
第一の別法により、官能基Qはチオエステル基である。
【0068】
第二の別法により、官能基Qはさらに改変されてチオエステル基を与える基である。この具体的態様により、ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくは還元末端にて選択的に酸化されたものと少なくとも二官能性の化合物との反応により得られるヒドロキシアルキルデンプン誘導体は、ヒドロキシアルキルデンプン誘導体の官能基Qおよびチオエステル基と反応する官能基を含有する少なくとも二官能性の化合物とさらに反応する。
【0069】
官能基Qと反応するさらなる化合物の官能基として、官能基Qについての上記の官能基のリストからのすべての適切な官能基がQと反応しうるものとして示される。
【0070】
本発明のある具体的態様により、官能基Qは化学構造−NH−を含有する。
【0071】
本発明の好ましい具体的態様により、官能基Qは、R’が水素またはアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルまたはシクロアルキルアリール残基(ここに、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルまたはシクロアルキルアリール残基は、NH基に直接連結することができるか、または別の具体的態様により酸素架橋によりNH基に連結することができる)である、R’−NH−構造を有する基である。アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルまたはシクロアルキルアリール残基は適切に置換することができる。好ましい置換基として、F、ClまたはBrなどのハロゲンを示すことができる。特に好ましいR’残基は、水素、アルキルおよびアルコキシ基であり、さらにより好ましくは、水素および非置換アルキルおよびアルコキシ基である。
【0072】
アルキルおよびアルコキシ基の中で、1、2、3、4、5または6の炭素原子を有する基が好ましい。より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシ基である。特に好ましくは、メチル、エチル、メトキシ、エトキシであり、特に好ましくは、メチルまたはメトキシである。
【0073】
本発明の別の具体的態様により、官能基Qは、構造R’−NH−R”−[式中、R”は好ましくは、構造単位−NH−および/または構造単位−(C=G)−(ここに、GはOまたはSである)、および/または構造単位−SO2−を含有する]を有する。より好ましい具体的態様により、官能基R”は以下の式:
【化13】

[式中、Gが二つ存在する場合、Gは独立してOまたはSである]
で示される基からなる群から選択される。
【0074】
それゆえ本発明はまた、官能基Qが以下の式:
【化14】

[式中、GはOまたはSであり、二つ存在する場合、独立してOまたはSであり、R’はメチルである]
で示される基からなる群から選択される、上記の方法およびコンジュゲートに関する。
【0075】
本発明の特に好ましい具体的態様により、官能基Qはアミノ基−NH2である。
【0076】
本発明のある具体的態様により、MおよびQの両方は、アミノ基−NH−を含有する。好ましい具体的態様により、MおよびQの両方は、アミノ基−NH2である。
【0077】
本発明の好ましい具体的態様により、MおよびQを含有する化合物は、ホモ二官能性化合物、より好ましくは官能基としてMおよびQを、最も好ましくはアミノ基−NH2を、または他の具体的態様により、ヒドロキシルアミノ基−O−NH2または以下の式:
【化15】

[式中、Gは好ましくはOである]
で示される基を含有する二官能性化合物である。これらのMおよびQを含有する化合物の具体的な例は、
【化16】

である。
【0078】
好ましい場合、MおよびQの両方は、アミノ基−NH2であり、MおよびQはいずれかの適切なスペーサーにより分離されていることがある。他のもののうちで、スペーサーは適宜置換されていてもよい、直鎖、分枝鎖および/または環状炭化水素残基であることができる。一般に炭化水素残基は、1〜60、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜20、より好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6であり、特に好ましくは2〜4の炭素原子を有する。ヘテロ原子が存在する場合、分離基は一般に、1〜20、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4のヘテロ原子を含有する。炭化水素残基は、例えば5〜7の炭素原子を有する適宜分岐していてもよいアルキル鎖またはアリール基またはシクロアルキル基、またはアルキル部分が直鎖および/または環状アルキル基であることができるアラルキル基、アルカリル基を含有することができる。さらにより好ましい具体的態様により、炭化水素残基は、1〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4の炭素原子のアルキル鎖である。
【0079】
それゆえ本発明はまた、ヒドロキシアルキルデンプンが1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノプロパンまたは1,2−ジアミノエタンと反応してアミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を与える、上記方法およびコンジュゲートにも関する。
【0080】
本発明の別法により、ヒドロキシアルキルデンプンは、酸化された還元末端にて行う。本発明の別法により、ヒドロキシアルキルデンプンは非酸化還元末端にて行う。本発明のさらなる別法により、ヒドロキシアルキルデンプンは選択的に酸化された還元末端により官能基Mと反応する。本発明のさらなる別法により、ヒドロキシアルキルデンプンは非酸化還元末端により官能基Mと反応する。本発明のさらなる別法により、ヒドロキシアルキルデンプンはHAS分子の適切な化学部分にて官能基Mと反応する。さらなる別法により、ヒドロキシアルキルデンプンは非酸化還元末端およびHAS分子の少なくとも一つのさらなる化学部分にて、または選択的に酸化された還元末端およびHAS分子の少なくとも一つのさらなる化学部分にて、官能基Mと反応することができる。
【0081】
本明細書において用語「ヒドロキシアルキルデンプンは、還元末端により反応する」、または「ヒドロキシアルキルデンプンは、選択的に酸化された還元末端により反応する」は、ヒドロキシアルキルデンプンがその(選択的に酸化された)還元末端により主に反応するような工程に関する。
【0082】
用語「主にその(選択的に酸化された)還元末端により」は、与えられた反応に用いられるヒドロキシアルキルデンプン分子の、統計的には50%より多く、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、そしてさらにより好ましくは95%、96%、97%、98%または99%など少なくとも95%は、ヒドロキシアルキルデンプン分子あたり少なくとも一つの(選択的に酸化された)還元末端により反応する工程に関し、ここに、少なくとも一つの還元末端により反応する与えられたヒドロキシアルキルデンプン分子は、該ヒドロキシアルキルデンプン分子に含まれるが、還元末端ではない少なくとも一つのさらなる適切な官能基により同じ与えられた反応中に、反応することができる少なくとも一つの還元末端により反応することができる。一つ以上のヒドロキシアルキルデンプン分子は少なくとも一つの還元末端により反応し、そして同時にこのヒドロキシアルキルデンプン分子に含まれるが、還元末端ではない少なくとも一つのさらなる適切な官能基により反応する場合、このヒドロキシアルキルデンプン分子のすべての反応した官能基(ここに、該官能基は還元末端を含む)の、統計的に好ましくは50%より多く、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、そしてさらにより好ましくは95%、96%、97%、98%または99%など少なくとも95%は、還元末端である。
【0083】
本明細書において用語「還元末端」は、アルデヒド基および/または対応するアセタール体として存在することができるヒドロキシアルキルデンプン分子の末端アルデヒド基に関する。還元末端が酸化される場合、アルデヒドまたはアセタール基はカルボキシ基および/または対応するラクトンの形態である。
【0084】
上記のように、アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体は好ましくは、アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体のアミノ基、およびチオエステル基と反応する官能基を含有する少なくとも二官能性の化合物とさらに反応する。
【0085】
アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体と反応しうる好ましい化合物としては、アミノ基と反応する反応性カルボキシ基、およびチオエステル基を含有するものが挙げられる。反応性カルボキシ基としては、反応性エステル、イソチオシアネートまたはイソシアネートを挙げることができる。好ましい反応性エステルは、N−ヒドロキシスクシンイミドもしくはスルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドなどのN−ヒドロキシスクシンイミド、p−ニトロフェノール、o,p−ジニトロフェノール、o,o’−ジニトロフェノールなどの適切に置換されたフェノール、2,4,6−トリクロロフェノールもしくは2,4,5−トリクロロフェノールなどのトリクロロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノールもしくは2,4,5−トリフルオロフェノールなどのトリフルオロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール、またはヒドロキシベンゾトリアゾールなどのヒドロキシアゾールに由来する。
【0086】
反応性カルボキシ基およびチオエステルは、いずれかの適切なスペーサーにより分離することができる。他の中で、スペーサーは、適宜置換されていてもよい、直鎖、分枝鎖および/または環状炭化水素残基であることができる。一般に炭化水素残基は、1〜60、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜20、より好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4の炭素原子を有する。ヘテロ原子が存在する場合、分離基は一般に、1〜20、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4のヘテロ原子を含有する。炭化水素残基は、例えば5〜7の炭素原子を有する適宜分岐していてもよいアルキル鎖またはアリール基またはシクロアルキル基、またはアルキル部分が直鎖および/または環状アルキル基であることができるアラルキル基、アルカリル基を含有することができる。本発明のある具体的態様により、反応性カルボキシ基およびチオエステル基は、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基などの2、3または4の炭素原子を有するアルキル残基により分離する。
【0087】
例として、ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはヒドロキシエチルデンプンがその酸化された還元末端により1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノプロパンまたは1,2−ジアミノエタンなどのジアミノアルカンと反応し、得られたヒドロキシアルキルデンプン誘導体が、チオエステル基−S−R’および反応性カルボキシ基(ここに、チオエステル基および反応性カルボキシ基は、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基により分離される)を含有する化合物とさらに反応する場合、式:
【化17】

[式中、n、mは独立して2、3、4である]
で示されるチオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプンを得ることができる。
【0088】
それゆえ本発明はまた、その還元末端にてヒドロキシアルキルデンプンを酸化し、酸化された還元末端と二つのアミノ基を含有する少なくとも二官能性の化合物とを反応させてアミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得、該誘導体のアミノ基と該誘導体のアミノ基と反応する少なくとも一つの官能基、好ましくは反応性カルボキシ基、および少なくとも一つのチオエステル基、好ましくは一つのチオエステル基−SR’を含有する少なくとも二官能性の化合物とを反応させることを特徴とする、上記の方法およびコンジュゲートに関する。
【0089】
本発明の別の具体的態様により、チオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプンは、上記のように、その還元末端にてヒドロキシアルキルデンプンを選択的に酸化させることにより製造し、
− ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端を、例えば対応するカルボン酸と例えばN,N−カルボニルジイミダゾールとの反応により製造されるカルボン酸のイミダゾリドに、相対的に酸性のチオールを用いて変換することにより(文献(Masamune, S., et al., J. Am. Chem. Soc. 98 (1976) 7874))、または
− ジスルフィドおよびトリフェニルホスフィンを用いてヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端を対応するチオエステルに変換することにより(文献(Mukaiyama, T., et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 43 (1970) 1271))、または
− ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端とアリールチオイソシアネートとを反応させることにより(文献(Grieco, P., et al., Tetrahedron Lett. 43 (1979) 1283))、または
− ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端とクロロギ酸チオピリジルとを反応させることにより(文献(Corey, E.J., et al., Tetrahedron Lett. (1979), 2875))、または
− ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端と2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトシレートおよびチオールとを反応させることにより(文献(Watanabe, Y., et al., Chem. Lett. (1976) 741))、または
− ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端と、固体担体担持EDC上のジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などのカルボジイミド、およびチオールとを反応させることにより(文献(C.E-Lin et al. Tetrahedron Lett. 43 (2002) 4531-34; M. Adamczyk, Tetrahedron Lett. 37 (1996) 4305-8, J. Hovinen, Nucleosides Nucleotides 18 (1999) 1263-4))、製造する。
【0090】
それゆえ本発明はまた、その還元末端にてヒドロキシアルキルデンプンを酸化し、酸化された還元末端とジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、好ましくは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などのカルボジイミドおよびチオールとを反応させてチオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプンを得ることを特徴とする、上記の方法およびコンジュゲートにも関する。
【0091】
次いで上記チオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体は、活性物質のアルファ−Xベータ−アミノ基と反応する。
【0092】
それゆえ本発明はまた、式(IV):
【化18】

(IV)
[式中、チオエステル基に連結したHAS’は、ヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体の残基であり、アルファ−Xベータ−アミノ基に連結したAS’は、活性物質またはその誘導体の残基である]
で示される、上記コンジュゲートにも関する。
【0093】
本発明の好ましい具体的態様により、アルファ−Xベータ−アミノ基は、活性物質、好ましくは小分子薬剤、ペプチドまたはタンパク質のシステイン残基またはヒスチジン残基に含まれる。
【0094】
それゆえ本発明はまた、アルファ−Xベータ−アミノ基が活性物質のシステイン残基またはヒスチジン残基に含まれる、上記方法およびコンジュゲートにも関する。
【0095】
より好ましくは、活性物質のシステインまたはヒスチジン残基は、ペプチドまたはタンパク質のN−末端システインまたはヒスチジンである。N−末端システインまたはヒスチジン残基は、天然のN−末端システインもしくはヒスチジン残基であることができるか、またはペプチドもしくはタンパク質配列の適切な改変によりペプチドもしくはタンパク質にN−末端にて導入することができる。ペプチドにて、上記アミノ酸は合成中に導入することができる。ペプチド合成は当分野に知られている(文献(W. Chang, P. D. White ; Fmoc固相ペプチド合成、実践的アプローチ; Oxford University Press, Oxford, 2000, ISBN 0199637245))。
【0096】
組換えポリペプチドは、例えば文献(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Eds. Sambrook et al., CSHL Press 2001)に記載の標準的分子生物学的技術により得られうる。簡潔に、ポリペプチドは、所望のポリペプチドをコードする核酸を含有する組換え発現ベクターから発現することができ、この核酸は所望のポリペプチドを発現させる少なくとも一つのレギュレーター配列に操作可能であるように連結する。例えば所望のポリペプチドをコードする核酸配列は、単離し、発現ベクターにクローン化することができ、次いで該ベクターは所望のポリペプチドの発現のために適切なホスト細胞に変換することができる。そのようなベクターはプラスミド、ファージミドまたはコスミドであることができる。例えば核酸分子は、原核生物または真核生物の発現ベクターに適切な形態でクローン化することができる(文献(Molecular Cloning、上記参照))。そのような発現ベクターは少なくとも一つのプロモーターを含み、翻訳の開始のためのシグナルを含むことができ、原核生物の発現ベクターの場合、翻訳の終了のためのシグナルをも含むことができる一方、真核生物の発現ベクターの場合、好ましくは転写終了およびポリアデニル化のための発現シグナルを含む。原核生物の発現ベクターのための例は、大腸菌における発現については例えば米国特許US 4,952,496に記載のT7 RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターに基づく発現ベクター、サッカロマイセス・セレヴィシエにおける真核性発現については例えばG426/Met25またはP526/Gal1ベクター(文献(Mumberg et al., (1994) Nucl. Acids Res., 22, 5767-5768))、昆虫細胞における発現については例えばEP-B1-0127839もしくはEP-B1-0549721またはCiccaroneらの文献(「バキュロ・ウィルス・シャトル・ベクターを用いた大腸菌における組換えバキュロ・ウィルスDNAの生成」(1997) Volume 13, U. Reischt, ed. (Totowa, NJ: Humana Press Inc.))に記載のバキュロ・ウィルス・ベクター、および哺乳類の細胞については例えばベクターRc/CMWおよびRc/ASWおよびSW40−ベクター(これらは一般に知られ、市販されている)、または実施例4記載のEBNA系、シンドビス・レプリコンから作られたpCytTS(Boorsma et al. (2002) Biotechnol. Bioeng. 79(6): 602-609)、シンドビス・ウィルス発現系(Schlesinger (1993) Trends Biotechnol. 11(1):18-22)またはアデノ・ウィルス発現系(He et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:2509-2514)である。これらの発現ベクターの製造のための分子生物学的方法ならびにホスト細胞をトランスフェクトし、そのトランスフェクトされたホスト細胞を培養する方法、ならびに本発明のポリペプチドを該トランスフェクトされたホスト細胞から製造し、得るための条件は、当業者によく知られている。
【0097】
所望のN−末端CysまたはHis残基を有するポリペプチドは、上記のように、所望のN−末端CysまたはHis残基を有するポリペプチドを得るために除去できるN−末端リーダー配列の後ろに興味のポリペプチドをクローン化することにより、発現および精製されるポリペプチドから生成することができる。
【0098】
これは例えば、上記のように発現および精製されたポリペプチドのタンパク分解性開裂により達成することができる。そのような場合、融合ポリペプチドは、クローン化され、発現され、精製された(ここに、CysまたはHis残基は、高選択的プロテアーゼ開裂部位に直接続き、例えば因子Xa開裂部位:Ile(Glu/Asp)GlyArg|(Cys/His)の直後のHisもしくはCys残基、またはエンテロキナーゼ開裂部位:AspAspAspAspLys|(Cys/His)の直後のHisもしくはCys残基である)(ここに、|はプロテアーゼによる開裂部位を示す)。
【0099】
これは、例えば発現中のポリペプチドの開裂、例えばシグナル・ペプチダーゼによりER転位の段階における開裂によりさらに達成することができる。そのような場合、CysまたはHis残基が組換えポリペプチドを分泌経路に向けさせるシグナルペプチドに直接続く、融合ポリペプチドをクローン化し、発現した(文献(Rapoport et al., Annu Rev Biochem. 1996;65:271-303)を参照のこと)。
【0100】
所望の位置に所望のCysまたはHis残基を有するポリペプチドについてのコード配列が生成するように組換えポリペプチドのコード配列を操作する分子生物学的方法は、当業者によく知られている(上記Sambrook)。
【0101】
本発明によるネイティブ化学ライゲーション反応によれば、チオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプンおよびアルファ−Xベータ−アミノ官能基化活性物質、好ましくはペプチドまたはタンパク質とシステインまたはヒスチジン残基、好ましくはN−末端システインまたはヒスチジン残基との反応の中間体生成物は、アミド結合により活性物質に連結するヒドロキシアルキルデンプン誘導体を含有する本発明のコンジュゲートに、分子内トランスアセチル化により不可逆的に変換されるチオエステルである。
【0102】
別法により、本発明はまた、チオエステル官能基化活性物質がヒドロキシアルキルデンプン誘導体のアルファ−Xベータ−アミノ基と反応する、上記方法にも関する。
【0103】
従って、本発明はまた、式(V):
【化19】

(V)
[式中、HAS’はアルファ−Xベータ−アミノ基に連結したヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体の残基であり、AS’はチオエステル基に連結した活性物質またはその誘導体の残基である]
で示される構造を有する上記コンジュゲートにも関する。
【0104】
アルファ−Xベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプンは、いずれかの適切な方法により製造することができる。本発明のある具体的態様により、アルファ−Xベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプンは、その還元末端にてヒドロキシアルキルデンプンを選択的に酸化し、酸化された還元末端を適切に化学的に改変してアルファ−Xベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得ることを特徴とする方法により製造する。
【0105】
それゆえ本発明のある具体的態様により、本発明の方法は、その還元末端にてヒドロキシアルキルデンプンを選択的に酸化し、式(IIIa):
【化20】

(IIIa)
および/または式(IIIb):
【化21】

(IIIb)
で示されるヒドロキシアルキルデンプンを得、その還元末端にて選択的に酸化されたヒドロキシアルキルデンプンを適切に反応させてチオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプンを得ることを含む。
【0106】
ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはヒドロキシエチルデンプンの酸化は、上記構造(IIIa)および/または(IIIb)を有する化合物を生じる各方法または方法の組合せにより行うことができる。酸化は、ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端を生じるすべての適切な方法により行うことができるが、好ましくは、例えば各内容(実施例A、9段落目、6〜24行目)が本明細書に引用されるDE 196 28 705 A1に記載のアルカリ性ヨウ素溶液を用いて行う。
【0107】
本発明のある具体的態様により、その還元末端にて選択的に酸化されるヒドロキシアルキルデンプンは、酸化された還元末端と反応する官能基Z、およびWと反応する官能基Vおよびアルファ−Xベータ−アミノ基を含有する化合物とさらに反応する官能基Wを含有する、少なくとも二官能性の化合物と反応する。
【0108】
それゆえ、本発明はまた、その還元末端にてヒドロキシアルキルデンプンを酸化し、酸化された還元末端とZに加えてさらに官能基Wを含有する化合物の官能基Zとを反応させて第一のヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得、第一のヒドロキシアルキルデンプン誘導体の官能基WとVに加えてアルファ−Xベータ−アミノ基を含有する化合物の官能基Vとを反応させてアルファ−Xベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得ることを特徴とする上記方法にも関する。
【0109】
ある具体的態様により、ZおよびWの両方は化学構造−NH−を含有する。
【0110】
本発明の好ましい具体的態様により、官能基ZおよびWは、構造R’−NH−(ここに、R’は水素またはアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルまたはシクロアルキルアリール残基(ここに、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルまたはシクロアルキルアリール残基は、NH基に直接連結するか、または別の具体的態様により、酸素架橋によりNH基に連結することができる)である)を有する基である。アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルまたはシクロアルキルアリール残基は、適切に置換することができる。好ましい置換基としては、F、ClまたはBrなどのハロゲンを挙げることができる。特に好ましいR’残基は、水素、アルキルおよびアルコキシ基であり、さらにより好ましくは、水素および非置換アルキルおよびアルコキシ基である。
【0111】
アルキルおよびアルコキシ基の中で、1、2、3、4、5または6の炭素原子を有する基が好ましい。より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシ基である。特に好ましくは、メチル、エチル、メトキシ、エトキシであり、特に好ましくは、メチルまたはメトキシである。
【0112】
本発明の別の具体的態様により、官能基ZおよびWは、構造R’−NH−R”−(ここに、R”は好ましくは、構造単位−NH−および/または構造単位−(C=G)−(ここに、GはOまたはSである)および/または構造単位−SO2−を含有する)を有する。より好ましい具体的態様により、官能基R”は以下の式:
【化22】

[式中、Gは、二つ存在する場合、独立してOまたはSである]
で示される基からなる群から選択される。
【0113】
それゆえ本発明はまた、官能基ZおよびWは、独立して以下の式:
【化23】

[式中、GはOまたはSであり、二つ存在する場合、独立してOまたはSであり、R’はメチルである]
で示される基からなる群から選択される、上記方法およびコンジュゲートに関する。
【0114】
ZおよびWを含有するこれらの化合物についての具体的な例は、以下の式:
【化24】

で示される化合物である。
【0115】
本発明の特に好ましい具体的態様により、官能基ZおよびWの両方は、アミノ基−NH2である。
【0116】
それゆえ本発明はまた、ZおよびWを含有する化合物がジアミノ官能基化化合物である、上記方法に関する。
【0117】
ZおよびWの両方がアミノ基−NH2である場合、ZおよびWはいずれかの適切なスペーサーにより分離していてもよい。他の中で、スペーサーは、適宜置換されていてもよい、直鎖、分枝鎖および/または環状炭化水素残基であることができる。一般に炭化水素残基は、1〜60、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜20、より好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4の炭素原子を有する。ヘテロ原子が存在する場合、分離基は一般に、1〜20、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4のヘテロ原子を含有する。炭化水素残基は、例えば5〜7の炭素原子を有する、適宜分岐していてもよい、アルキル鎖またはアリール基またはシクロアルキル基、またはアルキル部分が直鎖および/または環状アルキル基であることができるアラルキル基、アルカリル基を含有することができる。さらにより好ましい具体的態様により、炭化水素残基は、1〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4の炭素原子のアルキル鎖である。
【0118】
それゆえ本発明はまた、ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはその酸化された還元末端にて、1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノプロパンまたは1,2−ジアミノエタンと反応してアミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得る、上記の方法およびコンジュゲートにも関する。
【0119】
従って、第一の別法により、アミノ基NH2である官能基Zは、ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端と反応し、ヒドロキシアルキルデンプンを連結するアミド基を生じ、ZおよびWを含有する化合物を生じる。
【0120】
第二の別法により、アミノ基NH2である官能基Zは、次いで好ましくは水素化されてアミノ基を得るイミノ基を生じる還元的アミノ化によりヒドロキシアルキルデンプンの非酸化還元末端と反応し、イミノ基およびアミノ基はそれぞれ、ヒドロキシアルキルデンプン、およびZおよびアミノ基Wを含有する化合物に連結している。この場合、ZおよびWを含有する化合物が−官能基として−一つのアミノ基のみを含む第一級アミンであることが好ましい。この具体的な場合において、化合物は一つの官能基のみを含むが、ZおよびWを含有する二官能性化合物(ここに、Zは、ポリマーの還元末端と還元的アミノ化する化合物に含まれるアミノ基であり、Wは、還元的アミノ化および続く水素化から生じる第二級アミノ基である)としてみなされる。
【0121】
第三の別法により、ポリマーの非酸化還元末端は、還元的アミノ化によりアンモニアと反応し、次いで好ましくは水素化されてポリマーの末端アミノ基、従って末端第一級アミノ基を与えるポリマーの末端イミノ基を生じる。この具体的な場合において、アンモニアは、ZおよびWを含有する二官能性化合物(ここに、Zは用いられるアンモニアに含まれるNH2であり、Wは還元的アミノ化、続く水素化により生じる第一級アミノ基である)としてみなされる。
【0122】
本発明により、好ましいアミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体は、Wと反応する官能基Vおよびアルファ−Xベータ−アミノ基を含有する化合物とさらに反応する。
【0123】
好ましい具体的態様により、Wと反応する官能基Vおよびアルファ−Xベータ−アミノ基を含有する化合物は、システインまたはヒスチジン誘導体である。
【0124】
さらに好ましい具体的態様により、システイン誘導体またはヒスチジン誘導体は、適切な活性化剤により前活性化される。適切な活性化剤は、他の中で、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などのカルボジイミドであり、特にジイソプロピルカルボジイミド(DIC)が好ましい。
【0125】
システイン誘導体のSH基およびアミノ基は、システイン誘導体がヒドロキシアルキルデンプン誘導体のアミノ基と反応するとき、適切に保護すべきである。それぞれの保護基について、当分野に知られているすべての適切な化合物を用いることができる。従って以下の式:
【化25】

で示される基は適切に保護すべきである。
【0126】
SH基についての保護基として、アセトアミドメチル−(Acm)、tert−ブチルチオ−(StBu)、4−メトキシベンジル−(4−MeOBzl)、4−メトキシルトリチル−(Mmt)、トリチル(Trt)−および4−メチルトリチル−(Mtt)が好ましく、StBuが特に好ましい。
【0127】
アミノ基についての保護基として、tert−ブチルオキシカルボニル−(Boc)、フルオレニルオキシカルボニル−(Fmoc)、4−メトキシルトリチル−(Mmt)、トリチル(Trt)−および4−メチルトリチル−(Mtt)が好ましく、Fmocが特に好ましい。
【0128】
以下の式:
【化26】

で示される基についての保護基として、tert−ブチルオキシカルボニル−(Boc)、ベンジルオキシメチル(Bom)、ジニトロフェニル−(Dnp)、4−メチルトリチル−(Mtt)、トシル−(Tos)およびトリチル(Trt)−が好ましく、4−メチルトリチル−(Mtt)およびトリチル(Trt)が特に好ましい。
【0129】
それゆえ本発明はまた、Vおよびアルファ−Xベータ−アミノを含有する化合物がシステインまたはヒスチジンまたはその誘導体(ここに、Vはカルボキシ基である)である、上記方法にも関する。
【0130】
それゆえ本発明はまた、式(VIc):
【化27】

(VIc)
[式中、
Lは、適宜置換されていてもよい、それぞれのアルキル残基にて2〜10の炭素原子を有する直鎖、環状および/または分枝鎖の、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルまたはヘテロアラルキル残基であり、
HAS”は、還元末端における末端単糖類単位なしでHAS分子を意味し、
1、R2およびR3は、独立して水素またはヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシエチル基である]
で示されるアルファ−Xベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体にも関する。
【0131】
別の具体的態様により、本発明はまた、ヒドロキシアルキルデンプンが、好ましくは上記方法により、その還元末端にて選択的に酸化され、得られたヒドロキシアルキルデンプンがZに加えてアルファ−Xベータ−アミノ基を含有する化合物の官能基Zと反応する、上記方法にも関する。
【0132】
それゆえ本発明はまた、その還元末端にてヒドロキシアルキルデンプンを酸化し、酸化された還元末端と、Zに加えてアルファ−Xベータ−アミノ基を含有する化合物の官能基Zとを反応させることを特徴とする、上記方法にも関する。
【0133】
好ましい具体的態様により、Zは化学構造−NH−を含有する。
【0134】
本発明の好ましい具体的態様により、官能基Zは、構造R’−NH−(ここに、R’は水素またはアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルまたはシクロアルキルアリール残基(ここに、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルまたはシクロアルキルアリール残基は、NH基に直接連結するか、または別の具体的態様により酸素架橋によりNH基に連結することができる)である)を有する基である。アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリルまたはシクロアルキルアリール残基は適切に置換することができる。好ましい置換基として、F、ClまたはBrなどのハロゲンを挙げることができる。特に好ましいR’残基は、水素、アルキルおよびアルコキシ基であり、さらにより好ましくは、水素および非置換アルキルおよびアルコキシ基である。
【0135】
アルキルおよびアルコキシ基の中で、1、2、3、4、5または6の炭素原子を有する基が好ましい。より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシ基である。特に好ましくは、メチル、エチル、メトキシ、エトキシであり、特に好ましくは、メチルまたはメトキシである。
【0136】
本発明の別の具体的態様により、官能基Zは、構造R’−NH−R”−(ここに、R”は好ましくは、構造単位−NH−および/または構造単位−(C=G)−(ここに、GはOまたはSである)および/または構造単位−SO2−を含有する)を有する。より好ましい具体的態様により、官能基R”は以下の式:
【化28】

[式中、Gは、二つ存在する場合、独立してOまたはSである]
で示される基からなる群から選択される。
【0137】
本発明の特に好ましい具体的態様により、官能基Zは、アミノ基−NH2である。
【0138】
アミノ基Zおよびアルファ−チオールベータ−アミノ基は、いずれかの適切なスペーサーにより分離されていてもよい。他の中で、スペーサーは、適宜置換されていてもよい、直鎖、分枝鎖および/または環状炭化水素残基であることができる。一般に炭化水素残基は、1〜60、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4の炭素原子を有する。ヘテロ原子が存在する場合、分離基は一般に、1〜20、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4のヘテロ原子を含有する。炭化水素残基は、例えば5〜7の炭素原子を有する、適宜分岐していてもよい、アルキル鎖またはアリール基またはシクロアルキル基、またはアルキル部分が直鎖および/または環状アルキル基であるアラルキル基、アルカリル基を含有することができる。さらにより好ましい具体的態様により、炭化水素残基は、メチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン残基などの1〜4のアルキル鎖である。特に好ましくは、メチレン残基である。
【0139】
それゆえ本発明はまた、Zおよびアルファ−Xベータ−アミノ基を含有する化合物が1,3−ジアミノ−2−チオールプロパンまたは2,3−ジアミノ−1−チオールプロパン(ここに、チオール基は以下の式:
【化29】

で示される基により置換することができる)である、上記方法にも関する。
【0140】
従って、本発明はまた、式(VIa):
【化30】

(VIa)
または式(VIb):
【化31】

(VIb)
[式中、HAS”は、還元末端にて末端単糖類単位を有さないHAS分子を意味し、R1、R2およびR3は、独立して水素またはヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシエチル基である]
で示されるアルファ−チオールベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体にも関する。
【0141】
次いでアルファ−Xベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体をチオエステル官能基化活性物質と反応させる。
【0142】
本発明によるネイティブ化学ライゲーション反応によれば、チオエステル官能基化活性物質およびアルファ−Xベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプンの反応の中間体生成物は、アミド結合によりヒドロキシアルキルデンプン誘導体に連結された活性物質を含有する本発明のコンジュゲートに、分子内トランスアセチル化により不可逆的に変換されるチオエステルである。
【0143】
チオエステル官能基化化合物、すなわちチオエステル官能基化活性物質またはチオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体と、アルファ−Xベータ−アミノ官能基化化合物、すなわちアルファ−Xベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプンもしくはその誘導体またはアルファ−Xベータ−アミノ官能基化活性物質との反応は、少なくとも二つの溶媒のうちのいずれか適切な溶媒または混合物中にて、適切なpHおよび適切な反応温度にて行うことができる。
【0144】
反応温度は、好ましくは0〜40℃、またはより好ましくは10〜30℃、例えば20℃、21℃、22℃、23℃、24℃または25℃などの約20〜25℃の範囲である。
【0145】
反応のpHは、好ましくは5〜9、好ましくは6〜8、より好ましくは6.5〜7.5の範囲にて行う。
【0146】
緩衝媒体として、例えば約0.1Mの濃度を有する酢酸ナトリウム緩衝液などの酢酸塩緩衝液、例えば約0.5Mの濃度を有する炭酸水素アンモニウム緩衝液などの炭酸水素塩緩衝液、および/または例えば約0.1Mの濃度を有するリン酸ナトリウム緩衝液などのリン酸塩緩衝液を挙げることができる。
【0147】
反応時間は、好ましくは48時間まで、より好ましくは1〜48時間、より好ましくは8〜32時間、より好ましくは20〜24時間の範囲である。
【0148】
反応は、いずれか適切な溶媒中にて行うことができる。好ましい溶媒は水である。チオエステル官能基化化合物および/またはアルファ−Xベータ−アミノ官能基化化合物の溶液に、少なくとも一つの適切な触媒および/または少なくとも一つのアジュバントを加えることができる。
【0149】
他の中で好ましい触媒は、例えば2〜6%v/v、好ましくは3〜5%v/vの濃度のチオフェノール、またはベンジルメルカプタン、または例えば約0.5Mなどの約0.4〜0.6Mの濃度のMESNA、および/またはトリス(カルボキシエチル)ホスフィン、またはその二以上の混合物である。
【0150】
他の中で好ましいアジュバントは、約1〜8M、好ましくは1〜7M、より好ましくは1〜6M、より好ましくは1〜5M、より好ましくは1〜4M、より好ましくは1〜3M、例えば約2Mの濃度の尿素、または約4〜8M、好ましくは5〜7M、例えば約6Mの濃度のグアニジン塩酸塩、約20〜40%v/v、好ましくは約25〜35%v/vの濃度のDMFもしくはアセトニトリルなどの適切な有機溶媒、または約2〜8%v/v、好ましくは3〜7%v/v、より好ましくは4〜6%v/v、例えば約5%v/vの濃度の3−[(3−クロルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、または約0.1〜0.5M、好ましくは0.2〜0.4M、例えば約0.3Mの濃度の塩化ナトリウムである。
【0151】
反応溶液中のチオエステル官能基化化合物およびアルファ−Xベータ−アミノ官能基化化合物の濃度は、それぞれ好ましくは0.001〜0.5M、より好ましくは0.02〜0.4M、より好ましくは0.05M〜0.3M、より好ましくは0.1〜0.2Mの範囲である。
【0152】
本発明のある具体的態様により、活性物質は、カルボキシ基を含有する小分子薬剤である。この場合、活性物質のカルボキシ基は、例えば、
− ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端を酸塩化物に適切に変換し、該酸塩化物とメルカプタンR’−SHとをアルキルチオ脱ハロゲン化により反応させること(文献(J. March, Advanced Organic Chemistry, 4th edition, John Wiley and Sons, New York (1992) 409)または該文献に引用される他の方法(段落0〜37))、または
− ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端をチオレートのタリウム(I)塩との反応により酸塩化物に変換すること(文献(Spessard, G., et al., Organic Synthesis Collection, vol. 7, 87))、または
− 酸とジアルキルまたはジフェニルホスホロクロリデートとの反応によりカルボン酸末端ヒドロキシアルキルデンプンを反応させ、次いで対応するチオエステルに変換することができる無水物を形成させること(文献(Masamune, S., et al., Can. J. Chem. 53 (1975) 3693))、または
− ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端を、例えば対応するカルボン酸(例えばN,N−カルボニルジイミダゾール)と相対的に酸性のチオールとの反応により製造されるカルボン酸のイミダゾリドに変換すること(文献(Masamune, S., et al., J. Am. Chem. Soc. 98 (1976) 7874))、または
− ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端をジスルフィドおよびトリフェニルホスフィンを用いて対応するチオエステルに変換すること(文献(Mukaiyama, T., et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 43 (1970) 1271))、または
− ヒドロキシアルキルの酸化された還元末端とアリールチオイソシアネートとを反応させること(文献(Grieco, P., et al., Tetrahedron Lett. 43 (1979) 1283))、または
− ヒドロキシアルキルの酸化された還元末端とクロロギ酸チオピリジルとを反応させること(文献(Corey, E.J., et al., Tetrahedron Lett. (1979), 2875))、または
− ヒドロキシアルキルの酸化された還元末端と2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトシレートとを反応させること(文献(Watanabe, Y., et al., Chem. Lett. (1976) 741))、または
− ヒドロキシアルキルの酸化された還元末端と1−ヒドロキシベンゾトリアゾールとを反応させること(文献(Pelter, A., et al., J. Chem Soc., Perkin trans I (1977) 1672))
により、適切にチオエステル基−S−R’に変換する。
【0153】
活性物質のカルボキシ基を、
− ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端を酸塩化物に適切に変換し、該酸塩化物とメルカプタンR’−SHとをアルキルチオ脱ハロゲン化により反応させること(文献(J. March, Advanced Organic Chemistry, 4th edition, John Wiley and Sons, New York (1992) 409)または該文献に引用される他の方法(段落0〜37))、または
− ヒドロキシアルキルデンプンの酸化された還元末端と、固体担体担持EDC上のジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などのカルボジイミドおよびチオールとを反応させること(文献(C.E-Lin et al. Tetrahedron Lett. 43 (2002) 4531-34; M. Adamczyk, Tetrahedron Lett. 37 (1996) 4305-8, J. Hovinen, Nucleosides Nucleotides 18 (1999) 1263-4))
によりチオエステル基−S−R’に変換することが好ましい。
【0154】
本発明の別の具体的態様により、活性物質は、人工ペプチドである。本発明のある好ましい別法により、チオエステル官能基化ペプチドは、チオエステル官能基化ペプチドを得ることができる適切な合成樹脂を用いて製造する。
【0155】
チオエステル官能基化ペプチドは、Boc化学ならびにFmoc化学を用いて合成することができる。Tamらは、酸不安定Trt−メルカプト−プロピオニル−MBHA樹脂上にてBoc化学を用いたチオエステル官能基化ペプチドの合成を記載する(文献(Tam., J.P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995) 12485))。特に好ましい具体的態様により、Trt基はTFA/ジクロロメタンにより除去する。DIPEAによる洗浄および中和の後、DIPCDI/HOBt活性化を用いてペプチドのC−末端残基を樹脂に充填することができる。未反応チオール部位は次いで、ジクロロメタン中にて塩化アセチル/DIPEAでキャップすることが好ましい。標準的Bocプロトコールを用いた鎖延長の後、HF開裂は、側鎖脱保護チオエステル官能基化ペプチドを提供する。
【0156】
Liらは、Fmoc化学を用いたチオエステル官能基化ペプチドの合成を記載する(文献(Li, X. et al., (1998) Tetrahedron Letters 39(47):8669-8672))。好ましい具体的態様により、1−メチルピロリジン、ヘキサメチレンイミンおよびHOBtの混合物を、Fmocの除去のための脱ブロック剤として、好ましくはNMPおよびDMSOの混合物、より好ましくはNMPおよびDMSOのモル比が1:10〜10:1、さらにより好ましくは1:5〜5:1、最も好ましくは1:2〜2:1である混合物中にて用いる。用いる樹脂は、例えばLiらの引用する樹脂または文献(Goldstein and Gelb (2000) Tetrahedron Letters 41(16):2797-2800)に引用される樹脂であることができる。
【0157】
チオエステル官能基化ペプチドを製造する別の可能性はまた、Fmoc化学にも基づき、チオール開裂を用いるスルファミルブチリル・セーフティー・キャッチリンカー(例えば4−スルファミルブチリルNovaSynTG樹脂に由来(文献(Shin, Y., et al., J. Am. Chem. Soc. 121 (1999), 11684、Ingenito, R., et al., J. Am. Chem Soc. 121 (1999) 11369)))をも活用する。上記リンカーにより修飾された合成樹脂は、Boc化学およびFmoc化学の両方用に市販されている(例えばNovabiochem、Merck Biosciences GmbH、Schwalbach、Germanyより)。
【0158】
それゆえ本発明はまた、側鎖脱保護後、固体担体を形成する最終開裂工程においてC−末端チオエステル形成を可能にする、合成樹脂上における化学的固相ペプチド合成によりペプチドを製造することを特徴とする、チオエステル官能基化ペプチドを製造する方法にも関する。
【0159】
本発明のさらなる具体的態様により、活性物質はタンパク質である。
【0160】
タンパク質は、化学的合成手順により製造することができるか、またはいずれかのヒトもしくは別の哺乳動物源であることができ、ヒトもしくは動物などの天然源からの精製により得ることができる。この場合、タンパク質の少なくとも一つの官能基と、タンパク質の官能基と反応する少なくとも一つの官能基、およびチオエステル基または化学修飾してチオエステル基を得ることができるG基である、他の少なくとも一つの官能基を含有する適切な化合物とを反応させることにより、タンパク質の誘導体を製造することが可能である。そのような化学修飾は、Gおよびチオエステル基−S−R’である別の官能基と反応する官能基を含有するさらなる化合物とこの官能基Gとの反応であることができる。
【0161】
タンパク質の官能基として、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシ基、ケト基、アルデヒド基またはヘミアセタール基を挙げることができる。ケト基またはアルデヒド基またはヘミアセタール基は、グリコシル化タンパク質の炭水化物側鎖の単糖類単位などのタンパク質の単糖類単位を化学的または酵素的に酸化することにより、製造することができる。
【0162】
タンパク質の官能基の化学的性質に応じて、タンパク質の官能基と反応する適切な化合物の官能基は、例えば:
− C−C−二重結合またはC−C−三重結合または芳香族C−C−結合;
− チオ基またはヒドロキシ基;
− アルキルスルホン酸ヒドラジド、アリールスルホン酸ヒドラジド;
− 1,2−ジオール;
− 1,2−アミノ−チオアルコール;
− アジド;
− 1,2−アミノアルコール;
− アミノ基−NH2、またはアミノアルキル基、アミノアリール基、アミノアラルキル基もしくはアルカリルアミノ基などの構造単位−NH−を含有するアミノ基の誘導体;
− ヒドロキシルアミノ基−O−NH2、またはヒドロキシルアルキルアミノ基、ヒドロキシルアリールアミノ基、ヒドロキシルアラルキルアミノ基もしくはヒドロキサル(hydroxal)アルカリルアミノ基などの構造単位−O−NH−を含有するヒドロキシルアミノ基の誘導体;
− それぞれ構造単位−NH−O−を含有する、アルコキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、アラルキルオキシアミノ基またはアルカリルオキシアミノ基;
− カルボニル基−Q−C(=G)−M(ここに、GはOまたはSであり、Mは例えば、
−− −OHまたは−SH;
−− アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基またはアルカリルオキシ基;
−− アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基またはアルカリルチオ基;
−− アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、アルカリルカルボニルオキシ基;
−− N−ヒドロキシスクシンイミドなどのイミド構造またはNがヘテロアリール化合物の一部である構造単位O−Nを有するヒドロキシルアミンのエステルなどの活性化エステル、またはG=Oであり、Qが存在しない場合、ペンタフルオロフェニル、パラニトロフェニルまたはトリクロロフェニルなどの置換アリール残基を有するアリールオキシ化合物など;
であり、Qは存在しないか、またはNHまたはSもしくはOなどのヘテロ原子である)を有する残基;
− −NH−NH2または−NH−NH−;
− −NO2
− ニトリル基;
− アルデヒド基またはケト基などのカルボニル基;
− カルボキシ基;
− −N=C=O基または−N=C=S基;
− ヨウ化ビニルもしくは臭化ビニル基などのハロゲン化ビニル基またはトリフレート;
− −C≡C−H;
− −(C=NH2Cl)−Oアルキル;
− −(C=O)−CH2−Hal基(ここに、HalはCl、BrまたはIである);
− −CH=CH−SO2−;
− −S−S−構造を含有するジスルフィド基;
− 以下の式:
【化32】

で示される基;
− 以下の式:
【化33】

で示される基である。
【0163】
適切な化合物の官能基およびチオエステル基またはG基は、いずれかの適切なスペーサーにより分離されていてもよい。他の中で、スペーサーは適宜置換されていてもよい、直鎖、分枝鎖および/または環状炭化水素残基であることができる。一般に炭化水素残基は、1〜60、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜20、より好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4の炭素原子を有する。ヘテロ原子が存在する場合、分離基は一般に、1〜20、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4のヘテロ原子を含有する。炭化水素残基は、例えば5〜7の炭素原子を有する、適宜分岐していてもよい、アルキル鎖またはアリール基またはシクロアルキル基、またはアルキル部分が直鎖および/または環状アルキル基であるアラルキル基、アルカリル基を含有することができる。
【0164】
G基が、Gおよびチオエステル基−S−R’である別の官能基と反応する官能基を含有するさらなる化合物で化学的に修飾されている場合、Gと反応する官能基は、Qに関して上記の官能基の群から適切に選択することができる。チオエステル基、およびGと反応する基はいずれかの適切なスペーサーにより分離されていてもよい。他の中で、スペーサーは適宜置換されていてもよい、直鎖、分枝鎖および/または環状炭化水素残基であることができる。一般に炭化水素残基は、1〜60、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜20、より好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4の炭素原子を有する。ヘテロ原子が存在する場合、分離基は一般に、1〜20、好ましくは1〜8であり、特に好ましくは1〜4のヘテロ原子を含有する。炭化水素残基は、例えば5〜7の炭素原子を有する、適宜分岐していてもよい、アルキル鎖またはアリール基またはシクロアルキル基、またはアルキル部分が直鎖および/または環状アルキル基であるアラルキル基、アルカリル基を含有することができる。
【0165】
好ましくは、タンパク質は、組換え的に製造される。これは、遺伝子クローニングもしくはcDNAクローニングまたはDNA合成により得られる外因性DNA配列の真核性または原核性ホスト発現を含む。タンパク質の組換え製造は当分野に知られている。一般にこれは、適当な発現ベクターを有するホスト細胞のトランスフェクション、タンパク質の製造およびホスト細胞からのタンパク質の精製を可能にする条件下における、ホスト細胞の培養を含む。
【0166】
さらに好ましい具体的態様により、チオエステル官能基化タンパク質、好ましくはC末端ポリペプチド−チオエステルを生じる発現ベクターを用いる。ある具体的態様にて、チオエステル官能基化タンパク質は、インテイン(intein)ポリペプチドに、好ましくはインテイン親和性タグ化融合ポリペプチドに結合したC末端チオエステルにより結合する。そのようなチオエステル官能基化タンパク質は例えば、例えば市販のpCYBまたはpTYBなどのIMPACT(TM)−CN系(New England Biolabs, Frankfurt/Main, Germany)のベクターの内容にて、好ましくは突然変異体のインテイン−CBDポリペプチドを有する骨格にて興味のタンパク質を融合することにより得ることができる。チオエステル結合によりインテインに結合したチオエステル官能基化タンパク質(TFPI)は好ましくは、インテインのC末端に融合した親和性タグを含有し、より好ましくは親和性タグは、キチン結合ドメイン(CBD)、ポリヒスチジンタグ、連鎖球菌タグまたはGSTであることができる。ある具体的態様にて、TFPIはさらに、親和性タグにより対応する親和性樹脂に結合、例えばインテインに融合したCBDによりキチン樹脂に結合する(例えば文献(Muir et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6705-6710)を参照のこと)。好ましい具体的態様にて、TFPIは、チオエステル結合を無傷のままにする条件下、親和性樹脂上にて精製する(Muirらの上記文献を参照のこと)。次いで親和性樹脂に結合したTFPIは、アルファ−Xベータ−アミノ官能基化HES、好ましくは約10kDの平均分子量を有するアルファ−Xベータ−アミノ官能基化HESなどのアルファ−Xベータ−アミノ官能基化HESと反応することができる。
【0167】
チオエステル結合によりアルキル−、アリール−またはアラルキル−残基(TFPA)に結合したチオエステル官能基化タンパク質は、例えばTFPIをアルキルチオール、アリールチオールまたはアラルキルチオールと反応させることにより生成することが好ましい。好ましい具体的態様にて、アルキルチオールは、ジチオールではなく、メチル−、エチル−、プロピル−またはブチルチオールから選択され;エチルチオールが特に好ましい。アルキルチオールはまた、メルカプトアルキル炭酸またはメルカプトアルキルスルホン酸であることができる。2−メルカプトエタンスルホン酸が特に好ましい。別の具体的態様にて、アリールチオールは、ジチオールではなく、例えばチオフェノール、1−チオ−2−ニトロフェノール、2−チオ安息香酸、2−チオピリジン、4−チオ−2−ピリジンカルボン酸または4−チオ−2−ニトロピリジンであることができる。TFPAは、例えばUS 2002/0151006A1に記載のAbl−SH3 エチル−チオエステルについての実施例3のように単離することができ、アルファ−Xベータ−アミノ官能基化HESとの反応について直接用いるか、またはさらに精製した後反応に用いるか、または保存した後、後の反応に用いることができる。TFPAのさらなる実施例は文献(Iakovenko, A., et al., FEBS Letters 468 (2000) 155-158)に示され、ここに、チオエステル官能基化Rab7ΔC6は、2.2項にて生成し(2−メルカプトエタンスルホン酸を有するチオエステル)、精製して保存した後、最終カップリング工程に用いられる。
【0168】
それゆえ本発明はまた、活性物質がチオエステル官能基化タンパク質を生じる発現ベクターを用いて製造したタンパク質である、上記方法にも関する。
【0169】
別の態様により、本発明はまた、上記方法により得られうるコンジュゲートにも関する。
【0170】
本発明に記載の方法は、化学選択的方法、すなわち上記の別法に応じたヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体、好ましくはヒドロキシエチルデンプンまたはその誘導体のカップリングが、上記のように活性物質がN末端システイン残基を有する場合、活性物質のN末端にて活性物質の特定部位にて選択的に起こるか、または活性物質がそれぞれチオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体およびアルファ−チオールベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体と反応する、上記のC末端チオエステル基を活性物質が有する場合、活性物質のC末端にて選択的に起こる方法であると考えられる。
【0171】
本明細書に用いられる用語「末端にて選択的に」は、統計的には50%より多く、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは95%、96%、97%、98%または99%など、少なくとも95%の活性物質分子がそれぞれの末端により独占的に反応する工程に関する。
【0172】
本発明はまた、アルファ−チオールベータ−アミノ基のチオール基が式:
【化34】

で示される基により置換されている具体的態様も含む。
【0173】
それゆえシステインの代わりに、ヒスチジン、好ましくはN末端システインまたはヒスチジンを用いることができる。
【0174】
本発明のコンジュゲートを製造する方法において、上記方法の変換割合は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは、少なくとも98%または99%など95%またはそれ以上であることができる。
【0175】
さらに別の態様により、本発明はまた、ヒトまたは動物体の治療のための方法における使用のための上記方法により得られうる、コンジュゲートまたは上記コンジュゲートに関する。
【0176】
本発明によるコンジュゲートは、少なくとも50%純度、さらにより好ましくは少なくとも70%純度、さらにより好ましくは少なくとも90%、特に少なくとも95%または少なくとも99%純度であることができる。最も好ましい具体的態様にて、コンジュゲートは、100%純度、すなわち他に副生成物が存在しないものであることができる。
【0177】
それゆえ別の態様により、本発明はまた、コンジュゲートの量が少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%または少なくとも99重量%であることができる、本発明のコンジュゲートを含有することができる組成物に関する。最も好ましい具体的態様にて、組成物はコンジュゲートからなる、すなわちコンジュゲートの量が100重量%であることができる。
【0178】
従って本発明はまた、上記方法により得られうる、コンジュゲートまたは上記コンジュゲートを含有する医薬組成物にも関する。
【0179】
さらに本発明はまた、少なくとも一つの医薬的に許容される希釈剤、アジュバントまたはキャリアをさらに含有する、上記方法により得られうるコンジュゲートまたは上記コンジュゲートを含有する医薬組成物にも関する。
【実施例】
【0180】
実施例1.官能基化HESの合成:
実施例1.1 酸化HESからのアミノ−HESの合成
DE 196 28 705 A1に記載の、還元末端にて選択的に酸化されたHES5.122g(MW = 14,500 D, DS = 0.41, Supramol Parenteral Colloids GmbH, Rosbach-Rodheim, D)を15.5時間減圧下80℃にて加熱し、窒素雰囲気下、乾燥DMSO(Fluka, Sigma-Aldrich Chemie GmbH, Taufkirchen, D)25mLに溶解させた。得られた溶液に、1,4−ジアミノブタン(Fluka, Sigma-Aldrich Chemie GmbH, Taufkirchen, D)51.22mmolを加えた。40℃にて17時間インキュベーションした後、反応混合物を氷冷エタノール(DAB, Sonnenberg, Braunschweig, D)とアセトン(Carl Roth GmbH + Co. KG, Karlsruhe, D)の1:1混合物(v/v)150mLに加え、1時間−20℃にてインキュベーションした。析出した生成物を4℃における遠心分離により集め、同じ混合物40mlで洗浄し、水80mLに再溶解させ、水に対して40時間透析し(SnakeSkin透析チューブ、3.5kDカットオフ、Perbio Sciences Deutschland GmbH, Bonn, D)、凍結乾燥した。生成物を67%収率で単離した。
【0181】
実施例1.2 実施例1.1のアミノ−HESからのH−Cys(S−tBu)−HESの合成
Fmoc−Cys(S−tBu)−OH(Fluka, Sigma-Aldrich Chemie GmbH, Taufkirchen, D)86.3mgおよび1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(Aldrich, Sigma-Aldrich Chemie GmbH, Taufkirchen, D)45.9mgをN,N−ジメチルホルムアミド(Peptide synthesis grade, Biosolve, Valkenswaard, NL)2mLに溶解させ、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(Fluka, Sigma-Aldrich Chemie GmbH, Taufkirchen, D)40.7μLを加えた。
【0182】
21℃にて30分間インキュベーションした後、実施例1.1に記載のように合成したアミノ−HES206mgを加えた。22℃にて19時間撹拌した後、反応混合物を氷冷2−プロパノール(Carl Roth GmbH, Karlsruhe, D)14mLに加えた。析出した生成物を4℃における遠心分離により集め、2−プロパノール8mlに再懸濁させ、上記のように遠心分離した。析出物を水20mLに溶解させ、ジクロロメタン(Carl Roth GmbH, Karlsruhe, D)20mlを加え、混合物をボルテックスした。遠心分離後、上層の水層を分離し、水に対して43時間透析し(SnakeSkin透析チューブ、3.5kDカットオフ、Perbio Sciences Deutschland GmbH, Bonn, D)、凍結乾燥した。Fmoc−Cys(S−tBu)−HESを67%収率で単離した。
【0183】
Fmoc−Cys(S−tBu)−HES100.7mgをDMF(v/v)中の20%ピペリジン(Acros Organics, Geel, B)1mLに溶解させた。22℃にて15分間撹拌した後、反応混合物をtert−ブチルメチルエーテル(Acros Organics, Geel, B)20mLに加えた。析出した生成物を4℃における遠心分離により集め、tert−ブチルメチルエーテル10mlに再懸濁させ、遠心分離した。乾燥後、析出物を水10mLに溶解させ、水に対して31時間透析し(SnakeSkin透析チューブ、3.5kDカットオフ、Perbio Sciences Deutschland GmbH, Bonn, D)、凍結乾燥した。H−Cys(S−tBu)−HESを80%収率で単離した。
【0184】
実施例1.3 実施例1.1のアミノ−HESからのチオエステル−HESの合成
ペンタフルオロフェニルS−ベンジルチオスクシネート(Link technologies, Bellshill, UK)29.3mgおよび1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(Aldrich, Sigma-Aldrich Chemie GmbH, Taufkirchen, D)10.1mgをN,N−ジメチルホルムアミド(Peptide synthesis grade, Biosolve, Valkenswaard, NL)1.5mLに溶解させ、実施例1.1に記載のように合成したアミノ−HES75mgを加えた。22℃にて15時間撹拌した後、反応混合物をtert−ブチルメチルエーテル(Acros Organics, Geel, B)15mLに加えた。析出した生成物を4℃における遠心分離により集め、tert−ブチルメチルエーテル8mlに再懸濁させ、遠心分離した。析出物を窒素雰囲気下、乾燥した。
【0185】
実施例2 化学ライゲーションによるタンパク質−HESコンジュゲートの合成:
実施例2.1 H−Cys(S−tBu)−HESおよびペプチド−チオエステルAからのペプチド−チオエステルA−HESコンジュゲートの合成
N,N−ジメチルホルムアミド(ペプチド合成グレード, Biosolve, Valkenswaard, NL)とpH7.2の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液の1:1混合物(v/v)中のペプチドチオエステルペプチド−チオエステルA(GBF, Braunschweig, D, アミノ酸配列:
H−SPFGADTTVCCFNYSVRKLPQNHVKDYFYTSSK−チオプロピオン酸エチルエステル;MW = 3,920 g/mol)の10mg/mL溶液5μLに、実施例1.2に記載のように合成したH−Cys(S−tBu)−HESのDMF中の255mg/mL溶液5μLおよびDMF中の1.5M触媒溶液5μLを22℃にて加えた。触媒として、チオフェノール(図1、レーンB)またはベンジルメルカプタン(図1、レーンC)のいずれかを用いた。反応対照として、触媒溶液の代わりに緩衝液5μLをHES誘導体およびペプチドの混合物に加えた(図1、レーンE)。
【0186】
混合物を室温にて一晩インキュベーションし、ゲル電気泳動法により分析した(図1)。
【0187】
実施例2.2 チオエステル−HESおよびGM−CSFペプチド性インヒビターからのGM−CSFペプチド性インヒビター−HESコンジュゲートの合成
150mM塩化ナトリウムおよび5mM EDTAを含む、pH7.2の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液中の、N末端Cys−ペプチドGM−CSFペプチド性インヒビター(54〜78)(Bachem AG, Order-No. H-3438, Bubendorf, CH、アミノ酸配列:
H−Cys-Leu-Gln-Thr-Arg-Leu-Glu-Leu-Tyr-Lys-Gln-Gly-Leu-Arg-Gly-Ser-Leu-Thr-Lys-Leu-Lys-Gly-Pro-Leu-Thr−OH; MW = 2,816.4 g/mol)の2.82mg/mL溶液10μLに、同じ緩衝液中の実施例1.3に記載のように合成したチオエステル−HESの156mg/mL溶液32μLおよびチオフェノール1.7μL(図2、レーンB)を22℃にて加えた。
【0188】
混合物を室温にて一晩インキュベーションし、ゲル電気泳動法により分析した(図2)。
【0189】
実施例2.3 反応対照−EPOのチオエステル−HESによるインキュベーション
150mM塩化ナトリウムを含むpH7.2の10mMリン酸ナトリウム緩衝液中の、EPO(ヒトEPOのアミノ酸配列および市販のErypo(登録商標、Ortho Biotech, Jansen-Cilag)またはNeoRocormon(登録商標、Roche)として本質的に同じ特性を有する組換え的に製造されたEPO(EP 0 148 605、EP 0 205 564、EP 0 411 678を参照のこと))の0.78mg/mL溶液19.2μLに、チオフェノール1.7μLおよび150mM塩化ナトリウムおよび50mM EDTAを含むpH7.2の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液中の、実施例1.3のように合成したチオエステル−HESの10または50mg/mL溶液の5μL(図3、レーンBおよびC)を22℃にて加えた。反応対照として、チオエステル−HESなしの同じ反応を行った(図3、レーンD)。
【0190】
混合物を室温にて一晩インキュベーションし、ゲル電気泳動法により分析した。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】図1は、実施例2.1記載の粗製のペプチド−チオエステルCys−HESコンジュゲートのゲル電気泳動法による分析を示す。 ゲル電気泳動法について、XCell Sure Lock Mini Cell(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, D)およびConsort E143 power supply(CONSORTnv, Turnhout, B)を用いた。還元条件下、MES SDSランニング緩衝液と一緒に12%ビス−トリスゲル(ともにInvitrogen GmbH, Karlsruhe, D)をメーカーの使用説明書に従って用いた:レーンA: Roti(登録商標)−Mark STANDARD(Carl Roth GmbH + Co. KG, Karlsruhe, D)上から下までの分子量マーカー: 200 KD, 119 KD, 66 KD, 43 KD, 29 KD, 20 KD, 14.3 KD;レーンB: 触媒としてチオフェノールを用いたペプチド−チオエステルAのH−Cys(S−tBu)−HES10/0.4へのコンジュゲーション;レーンC: 触媒としてベンジルメルカプタンを用いたペプチド−チオエステルAのH−Cys(S−tBu)−HES10/0.4へのコンジュゲーション;レーンD: Roti(登録商標)−Mark STANDARD;レーンE: 触媒なしのペプチド−チオエステルAのH−Cys(S−tBu)−HES10/0.4へのコンジュゲーション。
【0192】
【図2】図2は、実施例2.2記載の粗製のCys−ペプチドチオエステル−HESコンジュゲートのゲル電気泳動法による分析を示す。 ゲル電気泳動法について、XCell Sure Lock Mini Cell(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, D)およびConsort E143 power supply(CONSORTnv, Turnhout, B)を用いた。還元条件下、MES SDSランニング緩衝液と一緒に12%ビス−トリスゲル(ともにInvitrogen GmbH, Karlsruhe, D)をメーカーの使用説明書に従って用いた:レーンA: Roti(登録商標)−Mark STANDARD(Carl Roth GmbH + Co. KG, Karlsruhe, D)上から下までの分子量マーカー: 200 KD, 119 KD, 66 KD, 43 KD, 29 KD, 20 KD, 14.3 KD;レーンB: 触媒としてチオフェノールを用いたチオエステル−HES10/0.4のGM-CSF阻害剤ペプチド(54〜78)へのコンジュゲーション;レーンC: GM-CSF阻害剤ペプチド(54〜78)。
【0193】
【図3】図3は、実施例2.3記載の粗製のEPOチオエステル−HESコンジュゲートのゲル電気泳動法による分析を示す。 ゲル電気泳動法について、XCell Sure Lock Mini Cell(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, D)およびConsort E143 power supply(CONSORTnv, Turnhout, B)を用いた。還元条件下、MOPS SDSランニング緩衝液と一緒に10%ビス−トリスゲル(ともにInvitrogen GmbH, Karlsruhe, D)をメーカーの使用説明書に従って用いた:レーンA: Roti(登録商標)−Mark STANDARD(Carl Roth GmbH + Co. KG, Karlsruhe, D)上から下までの分子量マーカー: 200 KD, 119 KD, 88 KD, 43 KD, 29 KD, 20 KD, 14.3 KD;レーンB: 触媒としてチオフェノールを用いた6.9当量のチオエステル−HESのEPOへのコンジュゲーション;レーンC: 触媒としてチオフェノールを用いた34.5当量のチオエステル−HESのEPOへのコンジュゲーション;レーンD: 触媒としてチオフェノールを用いたチオエステル−HESなしのEPO。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)チオエステル基を含有するヒドロキシアルキルデンプン誘導体のチオエステル基−(C=Y)−S−R’とアルファ−Xベータアミノ基を含有する活性物質誘導体のアルファ−Xベータアミノ基:
【化1】

とを反応させること、または
(ii)チオエステル基を含有する活性物質誘導体のチオエステル基−(C=Y)−S−R’とアルファ−Xベータアミノ基を含有するヒドロキシアルキルデンプン誘導体のアルファ−Xベータアミノ基:
【化2】

とを反応させること
を特徴とする、活性物質およびヒドロキシアルキルデンプンが式(I):
【化3】

(I)
[式中、YはOおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子である]
で示される構造を有する化学残基により共有的に連結される(ここに、R’は水素、適宜適切に置換されていてもよい、直鎖、環状および/または分枝鎖アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキル基からなる群から選択され、好ましくはベンジルであり、XはSHおよび式:
【化4】

で示される基からなる群から選択され、−(C=Y)基はチオエステル基−(C=Y)−S−R’に由来し、HN−CH−CH2−X基はアルファ−Xベータアミノ基に由来する)、活性物質とヒドロキシアルキルデンプンとのコンジュゲートを製造する方法。
【請求項2】
チオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプンが、アルファ−Xベータ−アミノ基が活性物質のシステインまたはヒスチジン残基に含まれる活性物質のアルファ−Xベータ−アミノ基と反応する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヒドロキシアルキルデンプンをその還元末端にて酸化し、
(i)酸化された還元末端を活性カルボン酸誘導体に変換し、活性カルボン酸誘導体とR’−SH化合物とを反応させること;または
(ii)酸化された還元末端とカルボジイミドおよびチオールR’SHとを反応させてチオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプンを得ること
を特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ヒドロキシアルキルデンプンをその還元末端にて酸化し、その酸化された還元末端と、二つのアミノ基を含有する少なくとも二官能性の化合物とを反応させてアミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得、該誘導体のアミノ基と、該誘導体のアミノ基と反応する少なくとも一つの官能基および少なくとも一つのチオエステル基を含有する少なくとも二官能性の化合物とを反応させることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
ヒドロキシアルキルデンプンをその還元末端にて酸化し、その酸化された還元末端と、Zに加えてアルファ−Xベータ−アミノ基を含有する化合物の官能基Zとを反応させることを特徴とする、チオエステル官能基化活性物質がヒドロキシアルキルデンプン誘導体のアルファ−Xベータ−アミノ基と反応する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
Zおよびアルファ−Xベータ−アミノ基を含有する化合物が1,3−ジアミノ−2−チオプロパンまたは2,3−ジアミノ−1−チオプロパンである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ヒドロキシアルキルデンプンをその還元末端にて酸化し、その酸化された還元末端と、Zに加えてさらに官能基Wを含有する化合物の官能基Zとを反応させて第一ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得、そして第一ヒドロキシアルキルデンプン誘導体の官能基Wと、Vに加えてアルファ−Xベータ−アミノ基を含有する化合物の官能基Vとを反応させてアルファ−Xベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得ることを特徴とする、チオエステル官能基化活性物質がヒドロキシアルキルデンプン誘導体のアルファ−Xベータ−アミノ基と反応する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ZおよびWを含有する化合物がジアミノ官能基化化合物である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Vおよびアルファ−Xベータ−アミノを含有する化合物がシステインもしくはその誘導体またはヒスチジンもしくはその誘導体であり、Vがカルボキシ基または反応性カルボキシ基、好ましくは反応性エステルまたはカルボン酸無水物である、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
(i)アルキルチオ脱ハロゲン化を経由し、カルボキシ基をR’−SH化合物を有する酸塩化物に変換すること、または
(ii)カルボキシ基とカルボジイミドおよびチオールR’SHとを反応させてチオエステル官能基化活性物質を得ること
を特徴とする、活性物質がカルボキシ基を含有する小分子薬剤である、請求項5〜9のいずれか記載の方法。
【請求項11】
活性物質がチオエステル官能基化ペプチドを得ることができる合成樹脂を用いて製造されたペプチドである、請求項5〜9のいずれか記載の方法。
【請求項12】
活性物質がチオエステル官能基化タンパク質につながる発現ベクターを用いて製造されたタンパク質である、請求項5〜9のいずれか記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか記載の方法により得られうる、活性物質とヒドロキシアルキルデンプンとのコンジュゲート。
【請求項14】
活性物質およびヒドロキシアルキルデンプンが式(IV):
【化5】

(IV)
[式中、
YはOおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子であり、
XはSHおよび式:
【化6】

で示される基からなる群から選択される]
で示される構造を有する化学的部分により連結される、活性物質とヒドロキシアルキルデンプンとのコンジュゲートであって、式(II):
【化7】

(II)
[式中、
HAS’はチオエステル基に連結したヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体の残基であり、
AS’はアルファ−Xベータ−アミノ基に連結した活性物質またはその誘導体の残基である]
で示される構造、または式(V):
【化8】

(V)
[式中、
HAS’はアルファ−Xベータ−アミノ基に連結したヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体の残基であり、
AS’はチオエステル基に連結した活性物質またはその誘導体の残基であり、
−(C=Y)基はチオエステル基−(C=Y)−S−R’に由来し、
HN−CH−CH2−X基はアルファ−Xベータ−アミノ基に由来する]
で示される構造を有するコンジュゲート。
【請求項15】
式(VIIa):
【化9】

(VIIa)
または式(VIIb):
【化10】

(VIIb)
または式(VIIc):
【化11】

(VIIc)
[式中、
n=0または1
Lは、それぞれのアルキル残基中に2〜10の炭素原子を有する、適宜適切に置換されていてもよい、直鎖、環状および/または分枝鎖アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキル残基であり、
1、R2およびR3は、独立して水素またはヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシエチル基であり、
HAS”は還元末端にて末端単糖類単位を有さないHAS分子を意味する]
で示される構造を有する、請求項14記載のコンジュゲート。
【請求項16】
活性物質がタンパク質、ペプチドおよび小分子薬剤からなる群から選択される、請求項14または15記載のコンジュゲート。
【請求項17】
ヒドロキシアルキルデンプンが1〜300kD、好ましくは2〜200kD、より好ましくは4〜130kDの平均分子量を有し、0.1〜0.8の範囲における置換度を有するヒドロキシエチルデンプンである、請求項14〜16のいずれか記載のコンジュゲート。
【請求項18】
式(VIIIa):
【化12】

(VIIIa)
または式(VIIIb):
【化13】

(VIIIb)
または式(VIIIc):
【化14】

(VIIIc)
[式中、
Lはそれぞれのアルキル残基中に2〜10の炭素原子を有する、適宜適切に置換されていてもよい、直鎖、環状および/または分枝鎖の、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキル残基であり、
HAS”は還元末端にて末端単糖類単位を有さないHAS分子を意味し、
1、R2およびR3は、独立して水素またはヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシエチル基であり、
XはSHおよび式:
【化15】

で示される基からなる群から選択され、
HAS”は還元末端にて末端単糖類単位を有さないHAS分子を意味する]
で示される、アルファ−Xベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体。
【請求項19】
式(IX):
【化16】

(IX)
[式中、
1、R2およびR3は、独立して水素またはヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシエチル基であり、
HAS”は還元末端にて末端単糖類単位を有さないHAS分子を意味し、
S−R’は求電子性脱離基であり、好ましくは置換または非置換チオフェノール、チオピリジン、ベンジルメルカプタン、エタンチオール、メタンチオール、2−メルカプトエタンスルホン酸、2−メルカプト酢酸、2−メルカプト酢酸メチルエステルまたはエチルエステル、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチルエステルまたはエチルエステル、4−メルカプト酪酸、および4−メルカプト酪酸メチルエステルまたはエチルエステルからなる群から選択される]
で示されるチオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体。
【請求項20】
式(X):
【化17】

(X)
[式中、
1、R2およびR3は、独立して水素またはヒドロキシアルキル基、好ましくはヒドロキシエチル基であり、
HAS”は還元末端にて末端単糖類単位を有さないHAS分子を意味し、
S−R’は求電子性脱離基であり、好ましくは置換または非置換チオフェノール、チオピリジン、ベンジルメルカプタン、エタンチオール、メタンチオール、2−メルカプトエタンスルホン酸、2−メルカプト酢酸、2−メルカプト酢酸メチルエステルまたはエチルエステル、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチルエステルまたはエチルエステル、4−メルカプト酪酸、および4−メルカプト酪酸メチルエステルまたはエチルエステルからなる群から選択され、
1およびL2は独立して、適宜少なくとも一つのヘテロ原子を含んでいてもよく、アルキル、アリール、アラルキルヘテロアルキルおよび/またはヘテロアラルキル部分を含む、適宜置換されていてもよい、直鎖、分枝鎖および/または環状炭化水素残基であり、該残基は1〜60、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10の炭素原子を有し、
Dは連結基、好ましくはL1に連結した適切な官能基F2およびL2に連結した適切な官能基F3により形成された共有結合基である]
で示されるチオエステル官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体。
【請求項21】
1およびL2が独立して、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10、好ましくは2、3、4、5、6、より好ましくは2、3、4、特に好ましくは4である−(CH2n−である、請求項20記載のコンジュゲート。
【請求項22】
2が以下:
C−C二重結合またはC−C三重結合または芳香族C−C結合;
チオ基またはヒドロキシ基;
アルキルスルホン酸ヒドラジド、アリールスルホン酸ヒドラジド;
1,2−ジオール;
1,2−アミノ−チオアルコール;
アジド;
1,2−アミノアルコール;
アミノアルキル基、アミノアリール基、アミノアラルキル基またはアルカリルアミノ基などの、アミノ基−NH2、または構造単位−NH−を含有するアミノ基の誘導体;
ヒドロキシルアルキルアミノ基、ヒドロキシルアリールアミノ基、ヒドロキシルアラルキルアミノ基またはヒドロキサルアルカリルアミノ基などの、ヒドロキシルアミノ基−O−NH2−、または構造単位−O−NH−を含有するヒドロキシルアミノ基の誘導体;
それぞれ構造単位−NH−O−を含有する、アルコキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、アラルキルオキシアミノ基またはアルカリルオキシアミノ基;
カルボニル基を有する残基−Q−C(=G)−M(ここに、GはOまたはSであり、Mは例えば、
−OHまたは−SH;
アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基またはアルカリルオキシ基;
アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基またはアルカリルチオ基;
アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、アルカリルカルボニルオキシ基;
N−ヒドロキシスクシンイミドなどのイミド構造を有するか、もしくは構造単位O−N(ここに、Nはヘテロアリール化合物の一部である)を有するヒドロキシルアミンのエステルなどの活性化エステル、またはG=Oであり、Qが存在しない場合には、ペンタフルオロフェニル、パラニトロフェニルもしくはトリクロロフェニルなどの置換アリール残基を有するアリールオキシ化合物(ここに、Qは存在しないか、またはNH、またはSもしくはOなどのヘテロ原子である);
−NH−NH2または−NH−NH−;
−NO2
ニトリル基;
アルデヒド基またはケト基などのカルボニル基;
カルボキシ基;
−N=C=O基または−N=C=S基;
ヨウ化ビニルもしくは臭化ビニル基などのハロゲン化ビニル基またはトリフレート;
−C≡C−H;
−(C=NH2Cl)−Oアルキル
−(C=O)−CH2−Hal基(ここに、HalはCl、BrまたはIである);
−CH=CH−SO2−;
−S−S−構造を含むジスルフィド基;
式:
【化18】

で示される基;
式:
【化19】

で示される基;
からなる群から選択され、
3がF2と化学結合を形成することができる官能基であり、好ましくは上記の基から選択され、F2は好ましくは−NH−部分を含有し、より好ましくはアミノ基を含有し、F3は好ましくは−(C=G)−部分を含有し、より好ましくは−(C=O)−部分、より好ましくは−(C=G)−G−部分、さらにより好ましくは−(C=O)−G−部分、特に好ましくは−(C=O)−Oであり、Dは特に好ましくはアミド結合である、請求項20または21記載のコンジュゲート。
【請求項23】
ヒトまたは動物体の治療のための方法における使用のための請求項13〜17のいずれか記載のコンジュゲート。
【請求項24】
請求項13〜17のいずれか記載のコンジュゲートを含有する医薬組成物。
【請求項25】
少なくとも一つの医薬的に許容される希釈剤、アジュバントまたは担体をさらに含有する、請求項24記載の医薬組成物。
【請求項26】
請求項14〜17のいずれか記載の活性物質およびヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを含有する組成物。
【請求項27】
請求項18記載のアルファ−Xベータ−アミノ官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を含有する組成物。
【請求項28】
請求項19記載の官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を含有する組成物。
【請求項29】
請求項20〜22のいずれか記載の官能基化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を含有する組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−527943(P2007−527943A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502305(P2007−502305)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002640
【国際公開番号】WO2005/092391
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(505344029)フレゼニウス・カビ・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】FRESENIUS KABI DEUTSCHLAND GmbH
【Fターム(参考)】