説明

ヒドロキシ芳香族酸の合成方法

ヒドロキシ芳香族酸は、銅源および銅に配位する配位子を含有する反応混合物中のハロゲン化芳香族酸から高収率および高純度(>95%)で製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間体として、またはポリマーを製造するためのモノマーとしての使用などの様々な目的に役立つ、ヒドロキシ芳香族酸の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシ芳香族酸は、医薬品および穀物保護で活性な化合物をはじめとする多くの価値ある物質の製造で中間体および添加物として有用であり、そしてまた、ポリマーの製造でのモノマーとしても有用である。サリチル酸(o−ヒドロキシ安息香酸)は、例えば、アスピリンの製造に使用され、そして他の医薬品用途を有する。「パラベン」として知られる、p−ヒドロキシ安息香酸のエステルは、食品および化粧品防腐剤として使用されている。p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸はそれぞれ、液晶ポリマーの成分として使用されている。
【0003】
2,5−ジヒドロキシテレフタル酸(「DHTA」)をはじめとする、ヒドロキシ安息香酸の様々な製造は公知である。Marzinは、非特許文献1で、銅粉の存在下での2,5−ジブロモテレフタル酸(「DBTA」)からの2,5−ジヒドロキシテレフタル酸(「DHTA」)の合成を教示している。
【0004】
Singhらは、非特許文献2に、KOHおよび銅粉の存在下でのDBTAとフェノールとの縮合によるDHTAを含む生成物の製造を報告している。
【0005】
非特許文献3は、様々な配位子の存在下でCu(I)によって触媒される反応での2−ブロモ安息香酸のサリチル酸、安息香酸、およびジフェン酸への変換を記載している。第三級テトラアミンは、Cu(I)と一緒での使用でジフェン酸の形成を最小限にする。
【0006】
非特許文献4は、2−クロロ安息香酸からのサリチル酸の合成方法を記載している。1モルの2−クロロ安息香酸当たり少なくとも1.0モルのピリジンなどの化学量論量のピリジン(1モルの2−クロロ安息香酸当たり0.5〜2.0モル)が使用される。銅粉がピリジンと一緒に触媒として使用される。
【0007】
非特許文献5、および特許文献1は、5−ブロモイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸と、ジブロモイソフタル酸異性体と、それらの塩との混合物を、100〜270℃の温度で銅触媒の存在下に水性のアルカリ性溶液中で加水分解することによる5−ヒドロキシイソフタル酸の製造方法を記載している。
【0008】
特許文献2は、相当するブロモフタル酸を、100〜160℃の温度で銅触媒の存在下に水性のアルカリ性溶液中で加水分解することによる、4−ヒドロキシフタル酸、ならびに3−および4−ヒドロキシフタル酸の混合物の製造方法を開示している。開示された銅触媒の例には、Cu(0)、CuCl、CuCl、CuO、CuO、CuBr、CuSO、Cu(OH)、および酢酸銅(II)が挙げられる。
【0009】
ヒドロキシ安息香酸を製造するための様々な先行技術方法は、長い反応時間、著しい生産性損失をもたらす限定された転化率、または適度の速度および生産性を得るために圧力下におよび/またはより高温(典型的には140〜250℃)で行う必要性によって特徴付けられる。それ故、固有の運転困難性が低く、かつ、小規模および大規模運転で高収率および高生産性で、そして回分式および連続運転で、ヒドロキシ安息香酸を経済的に製造することができる方法に対するニーズは依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,703,274号明細書
【特許文献2】イスラエル国特許第112,706号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Journal fuer Praktische Chemie、138(1933)、103−106ページ
【非特許文献2】Jour.Indian Chem.Soc.、Vol.34(1957)、No.4、321−323ページ
【非特許文献3】Rusonikら著、Dalton Trans.、2003、2024−2028ページ
【非特許文献4】Comdomら著、Synthetic Communications、32(13)(2002)、2055−59ページ
【非特許文献5】Gelmontら著、Organic Process Research & Development、6(5)(2002)、591−596ページ
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施態様は、
式I
【化1】

(式中、ArはC〜C20アリーレンラジカルであり、nおよびmはそれぞれ独立してゼロではない値であり、そしてn+mは8以下である)
の構造で一般に記載されるヒドロキシ芳香族酸の製造方法であって、
(a)式II
【化2】

(式中、各Xは独立して、Cl、BrまたはIであり、そしてAr、nおよびmは上述の通りである)
の構造で一般に記載されるハロゲン化芳香族酸を水中で塩基と接触させて水中でハロゲン化芳香族酸の相当するm−塩基性塩をそれから形成する工程と、
(b)ハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩を水中で塩基と、および銅に配位する配位子の存在下に銅源と接触させて、少なくとも約8の溶液pHでヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩をハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩から形成する工程と、
(c)場合により、ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩を、それが生じている反応混合物から分離する工程と、
(d)ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩を酸と接触させてn−ヒドロキシ芳香族酸をそれから形成する工程と
による方法を提供する。
【0013】
別の実施態様では、配位子はアミン配位子であってもよく、配位子のモル当量対ヒドロキシル芳香族酸のモル当量の比は、約0.1以下であり、および/または配位子は、それがテトラアミンであるとき、少なくとも1つの第一級もしくは第二級アミノ基を含む。
【0014】
本発明のさらに別の実施態様は、上記の方法でn−ヒドロキシ芳香族酸を製造することと、次にn−ヒドロキシ芳香族酸をn−アルコキシ芳香族酸に転化することとによるn−アルコキシ芳香族酸の製造方法を提供する。
【0015】
本発明のさらに別の実施態様はその結果として、
式VI
【化3】

(式中、ArはC〜C20アリーレンラジカルであり、各Rは独立して、置換または非置換C1-10アルキル基であり、nおよびmはそれぞれ独立してゼロではない値であり、そしてn+mは8以下である)
の構造で一般に記載されるn−アルコキシ芳香族酸の製造方法であって、(a)式II
【化4】

(式中、各Xは独立して、Cl、BrまたはIであり、そしてAr、nおよびmは上述の通りである)
の構造で一般に記載されるハロゲン化芳香族酸を水中で塩基と接触させて水中でハロゲン化芳香族酸の相当するm−塩基性塩をそれから形成する工程と、(b)ハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩を水中で塩基と、および銅に配位する配位子の存在下に銅源と接触させて、少なくとも約8の溶液pHでヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩をハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩から形成する工程と、(c)場合により、ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩を、それが生じている反応混合物から分離する工程と、(d)ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩を酸と接触させて式I
【化5】

(式中、Ar、nおよびmは上述の通りである)
の構造で一般に記載されるn−ヒドロキシ芳香族酸をそれから形成する工程と、(e)n−ヒドロキシ芳香族酸を式VI(式中、Ar、R、nおよびmは上述の通りである)で一般に記載されるn−アルコキシ芳香族酸に転化する工程とによる方法を提供する。
【0016】
本発明のさらに別の実施態様は、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸または2,5−ジアルコキシテレフタル酸を、化合物、モノマー、オリゴマーまたはポリマーがそれから製造される反応に供する工程をさらに含む、上記のような2,5−ジヒドロキシテレフタル酸および/または2,5−ジアルコキシテレフタル酸の製造方法を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の実施態様はその結果として、
式I
【化6】

(式中、ArはC〜C20アリーレンラジカルであり、nおよびmはそれぞれ独立してゼロではない値であり、そしてn+mは8以下である)
の構造で一般に記載されるヒドロキシ芳香族酸を、(a)式II
【化7】

(式中、各Xは独立して、Cl、BrまたはIであり、そしてAr、nおよびmは上述の通りである)
の構造で一般に記載されるハロゲン化芳香族酸を水中で塩基と接触させて水中でハロゲン化芳香族酸の相当するm−塩基性塩をそれから形成する工程、(b)ハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩を水中で塩基と、および銅に配位する配位子の存在下に銅源と接触させて、少なくとも約8の溶液pHでヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩をハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩から形成する工程、(c)場合により、ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩を、それが生じている反応混合物から分離する工程、(d)ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩を酸と接触させてn−ヒドロキシ芳香族酸をそれから形成する工程により製造することと、(e)場合により、n−ヒドロキシ芳香族酸をn−アルコキシ芳香族酸に転化する工程と、(f)n−ヒドロキシ芳香族酸および/またはn−アルコキシ芳香族酸を、化合物、モノマー、オリゴマーまたはポリマーがそれから製造される反応に供する工程とによる化合物、モノマー、オリゴマーまたはポリマーの製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、式I
【化8】

の構造で一般に記載されるようなヒドロキシ芳香族酸を、式II
【化9】

の構造で一般に記載されるようなハロゲン化芳香族酸を塩基と接触させてハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩を形成する工程と、ハロゲン化芳香族酸の塩基性塩を塩基と、および銅に配位する配位子の存在下に銅源と接触させてn−ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩を形成する工程と、次にn−ヒドロキシ芳香族酸の二塩基性塩を酸と接触させてn−ヒドロキシ芳香族酸生成物を形成する工程とにより製造するための高収率および高生産性方法を提供する。
【0019】
両式IおよびIIにおいて、ArはC〜C20アリーレンラジカルであり、nおよびmはそれぞれ独立してゼロではない値であり、そしてn+mは8以下であり、そして式IIにおいて、各Xは独立してCl、BrまたはIである。「−Ar−」で示されるアリーレンラジカルは、芳香環上の、またはその構造が多環であるときは複数芳香環上の異なる炭素原子から2個以上の水素の除去によって形成される多価芳香族ラジカルである。その結果として、例えば、アリーレンラジカルにおいて、水素がベンジル環上の2個から全6個までの炭素原子から除去されてもよい、または水素がナフチルラジカルの1つか両方かのどちらかの環上の任意の2個および8個までの位置から除去されてもよい可能性がある。
【0020】
アリーレンラジカル、「Ar」は、置換されていてもまたは非置換であってもよい。アリーレンラジカルは、非置換であるとき、炭素および水素のみを含有する1価基である。しかしながら、アリーレンラジカルにおいて、生じる構造が−O−O−または−S−S−部分を全く含有しないという条件で、かつ、どの炭素原子も2個以上のヘテロ原子に結合していないという条件で、1つ以上のOまたはS原子が場合により鎖中のまたは環中の炭素原子の任意の1つ以上と置き換えられてもよい。好適なアリーレンラジカルの一例は、下に示されるような、フェニレンである。
【化10】

【0021】
「m−塩基性塩」は、この用語が本明細書に用いられるところでは、交換可能な水素原子を有するm個の酸基を各分子中に含有する酸から形成される塩である。
【0022】
本発明の方法で出発原料として使用されるべき、様々なハロゲン化芳香族酸は、商業的に入手可能である。例えば、2−ブロモ安息香酸は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)から入手可能である。しかしながら、それは、Sassonら著、Journal of Organic Chemistry、51(15)(1986)、2880−2883ページに記載されているようにブロモメチルベンゼンの酸化によって合成することができる。使用することができる他のハロゲン化芳香族酸には、限定なしに2,5−ジブロモ安息香酸、2−ブロモ−5−ニトロ安息香酸、2−ブロモ−5−メチル安息香酸、2−クロロ安息香酸、2,5−ジクロロ安息香酸、2−クロロ−3,5−ジニトロ安息香酸、2−クロロ−5−メチル安息香酸、2−ブロモ−5−メトキシ安息香酸、5−ブロモ−2−クロロ安息香酸、2,3−ジクロロ安息香酸、2−クロロ−4−ニトロ安息香酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、および2−クロロ−5−ニトロ安息香酸が含まれ、それらの全ては商業的に入手可能である。
【0023】
本発明の方法で出発原料として有用な他のハロゲン化芳香族酸には、下の表の左列に示されるものが含まれ、表中で、X=Cl、BrまたはIであり、表中で、本発明の方法によってそれから製造される相当するヒドロキシ芳香族酸は右列に示される。
【0024】
【表1】

【0025】
工程(a)において、ハロゲン化芳香族酸を水中で塩基と接触させてハロゲン化芳香族酸の相当するm−塩基性塩をそれから形成する。工程(b)において、ハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩を水中で塩基と、および銅に配位する配位子の存在下に銅源と接触させてヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩をハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩から形成する。
【0026】
工程(a)および/または工程(b)に使用される塩基は、イオン性塩基であってもよく、そして特に、Li、Na、K、MgまたはCaの1つ以上の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩またはリン酸水素塩の1つ以上であってもよい。使用される塩基は、水溶性、部分水溶性であってもよく、または塩基の溶解度は、反応が進行するにつれて、および/または塩基が消費されるにつれて増大するかもしれない。NaOHおよびNaCOが好ましいが、他の好適な有機塩基が、例えば、トリアルキルアミン(トリブチルアミンなど)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、およびN−アルキルイミダゾール(例えば、N−メチルイミダゾール)からなる群から選択されてもよい。原則として、pHを8より上に維持するおよび/またはハロゲン化芳香族酸の反応中に生成する酸と結合することができるいかなる塩基も好適である。
【0027】
工程(a)および/または(b)に使用されるべき塩基の具体的な量は、塩基の強度に依存する。工程(a)においては、ハロゲン化芳香族酸を、好ましくは、ハロゲン化芳香族酸の1当量当たり少なくとも約m当量の水溶性塩基と接触させる。1「当量」は、この文脈で塩基について用いられるところでは、水素イオンの1モルと反応するであろう塩基のモル数であり;酸については、1当量は、水素イオンの1モルを供給するであろう酸のモル数である。
【0028】
工程(b)において、少なくとも約8、または少なくとも約9、または少なくとも約10、そして好ましくは約9〜約11の溶液pHを維持するのに十分な塩基が使用されるべきである。従って、典型的には工程(b)において、ハロゲン化芳香族酸の二塩基性塩を、ハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩の1当量当たり、少なくとも約n当量の、水溶性塩基などの塩基と接触させる。
【0029】
しかしながら、代わりの実施態様では、反応の開始時に元々使用されるハロゲン化芳香族酸の1当量当たり反応混合物において、合計少なくとも約n+m+1当量の、水溶性塩基などの塩基を使用することが工程(a)および(b)において望ましいかもしれない。上記のような量で使用される塩基は、典型的には強塩基であり、典型的には周囲温度で加えられる。工程(b)に使用される塩基は、工程(a)に使用される塩基と同じものであっても、またはそれとは異なるものであってもよい。
【0030】
上述のように、工程(b)において、ハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩を、また、銅に配位する配位子の存在下に銅源と接触させる。銅源および配位子は、反応混合物に順次加えられてもよいし、または別途組み合わせられ(例えば、水もしくはアセトニトリルの溶液で)、そして一緒に加えられてもよい。銅源は水中で酸素の存在下に配位子と組み合わせられても、または水を含有する溶媒混合物と組み合わせられてもよい。
【0031】
銅源と配位子との反応混合物中に、ハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩の塩基性溶液中に一緒に存在することから、ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩、銅化学種、配位子、およびハロゲン化物塩を含有する水性混合物が得られる。必要ならば、ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩は、この段階でおよび工程(d)における酸性化の前に[任意の工程(c)として]混合物から分離されてもよいし、そして別の反応にまたは他の目的向けにm−塩基性塩として使用されてもよい。
【0032】
ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩を次に、工程(d)においてそれをヒドロキシ芳香族酸生成物に転化するために酸と接触させる。m−塩基性塩をプロトン化するのに十分な強度の任意の酸が好適である。例には、限定なしに塩酸、硫酸およびリン酸が挙げられる。
【0033】
工程(a)および(b)についての反応温度は、好ましくは約40〜約120℃、より好ましくは約75〜約95℃であり、本方法は従って、様々な実施態様で反応混合物を加熱する工程を含む。溶液は典型的には、工程(d)における酸性化が実施される前に放冷される。様々な実施態様では、酸素は反応の間ずっと排除されてもよい。
【0034】
銅源は銅金属[「Cu(0)」]、1つ以上の銅化合物、または銅金属と1つ以上の銅化合物との混合物である。銅化合物は、Cu(I)塩、Cu(II)塩、またはそれらの混合物であってもよい。例には、限定なしにCuCl、CuBr、CuI、CuSO、CuNO、CuCl、CuBr、CuI、CuSO、およびCu(NOが挙げられる。銅源の選択は、使用されるハロゲン化芳香族酸のアイデンティティに関して行われてもよい。例えば、出発ハロゲン化芳香族酸がブロモ安息香酸である場合、CuCl、CuBr、CuI、CuSO、CuNO、CuCl、CuBr、CuI、CuSO、およびCu(NOが有用な選択の中に含められるであろう。出発ハロゲン化芳香族酸がクロロ安息香酸である場合、CuBr、CuI、CuBrおよびCuIが有用な選択の中に含められるであろう。CuBrおよびCuBrが一般に、ほとんどのシステムにとって好ましい選択である。使用される銅の量は典型的には、ハロゲン化芳香族酸のモルを基準として約0.1〜約5モル%である。
【0035】
銅源がCu(0)であるとき、Cu(0)、臭化銅および配位子は、空気の存在下に組み合わせられてもよい。Cu(0)またはCu(I)の場合には、前もって定められた量の金属および配位子が水中で組み合わせられてもよく、そして生じた混合物は、着色溶液が形成されるまで空気または希薄酸素と反応させられてもよい。生じた金属/配位子溶液は、水中にハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩および塩基を含有する反応混合物に加えられる。
【0036】
配位子は、直鎖もしくは分岐鎖または環式の、脂肪族または芳香族の、置換または非置換の、アミン、またはかかる配位子の2つ以上の混合物であってもよい。化合物として形成されていようと、オリゴマーとして形成されていようと、ポリマーとして形成されていようと、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−またはオクタアミンなどのような、配位子中に存在するアミン基の数を記載するために通常の命名法が用いられてもよい。その非置換形態では、配位子は、炭素、窒素および水素のみを含有する有機アミンであってもよい。その置換形態では、アミン配位子は、酸素または硫黄などのヘテロ原子を含有してもよい。様々な実施態様において、特に、しかし排他的でなくテトラアミンに関係するとき、アミンは少なくとも1つの第一級または第二級アミノ基を含有してもよい。
【0037】
配位子として本明細書での使用に好適な第一級または第二級モノアミンには、次式11
【化11】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、
H、
〜C10直鎖もしくは分岐の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル、
〜C12脂環式の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル、または
〜C12芳香族の置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル
から選択される)
で一般に記載されるものが含まれる。
【0038】
ある種の実施態様では、Rおよび/またはRは例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはフェニルラジカルであってもよい。他の実施態様では、RおよびRの少なくとも1つはHではない。配位子として本明細書での使用に好適な特定のモノアミンには、エチルアミン、イソプロピルアミン、第二ブチルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、エチル−n−ブチルアミン、アリルアミン、シクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、アニリン、N−エチルアニリン、トルイジンおよびキシリジンが含まれる。
【0039】
配位子として本明細書での使用に好適な第一級または第二級ジアミンには、次式12
【化12】

(式中、各Rおよび各Rは独立して、
H、
〜C10直鎖もしくは分岐の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル、
〜C12脂環式の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル、または
〜C12芳香族の置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル
であり、
式中、RおよびRはそれぞれ独立して、
H、
〜C10直鎖もしくは分岐の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル、
〜C12脂環式の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル、または
〜C12芳香族の置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル
であるか、または
およびRは一緒になって
〜C12脂肪族の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換ヒドロカルビル環構造、または
〜C12芳香族の置換もしくは非置換ヒドロカルビル環構造
である環構造を形成し、そして
式中、a、b、およびcはそれぞれ独立して0〜4である)
で一般に記載されるものが含まれる。
【0040】
ある種の実施態様では、Rの1つまたは両方がHである。他の実施態様では、Rの1つまたは両方がまたHである。他の実施態様では、R〜Rの任意の1つ以上がメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはフェニル基であってもよい。
【0041】
様々な特定の実施態様では、a、bおよびcは全て0に等しくてもよく、R=R=Hであるか、RおよびRは一緒になって脂肪族環構造を形成するかのどちらかである。特にb=0のとき、脂肪族環構造は、下に示されるような、二価ラジカル、−C10−である、シクロヘキシレン基であってもよく、こうしてシクロヘキシルジアミンを提供する。
【化13】

【0042】
およびRからのシクロヘキシレン基の形成は、次の構造:
【化14】

(式中、R、R、aおよびcは上述の通りである)
で一般に例示されてもよい。しかしながら、代わりの実施態様では、1つのアミノ基、またはアミノ基が置かれているアルキルラジカルは、シクロアルキルまたは芳香環上で他のアミノ基に対してメタまたはパラ位にあってもよい。
【0043】
好適な脂肪族ジアミンには、N,N’−ジ−n−アルキルエチレンジアミンおよびN,N’−ジ−n−アルキルシクロヘキサン−1,2−ジアミンが含まれるかもしれない。具体的な例には、限定なしにN,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、およびN,N’−ジブチルシクロヘキサン−1,2−ジアミンが挙げられる。好適な芳香族ジアミンの例には、限定なしに1,2−フェニレンジアミンならびにN,N’−ジメチル−1,2−フェニレンジアミンおよびN,N’−ジエチル−1,2−フェニレンジアミンなどのN,N’−ジアルキルフェニレンジアミン、ならびにベンジジンが挙げられる。
【0044】
配位子として本明細書での使用に好適な第一級または第二級トリおよびより高次アミンは、次式13:
【化15】

(式中、各R、R、R、R、RおよびRは独立して、
H、
〜C10直鎖もしくは分岐の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル、
〜C12脂環式の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル、または
〜C12芳香族の置換もしくは非置換ヒドロカルビルラジカル
から選択され、かつ、
式中、aは2〜4であり、bおよびcはそれぞれ独立して0〜4であり、そしてm≧0である)
で一般に記載されてもよい。
【0045】
ある種の実施態様では、Rの1つもしくは両方、または少なくとも1つのR、または少なくとも1つのR、またはR、および/またはRはHである。他の特定の実施態様では、m=0、1、2、3、4または5である。さらに他の実施態様では、R=R=R=Hであり、および/またはRおよびRの1つもしくは両方=Hである。さらなる実施態様では、R〜Rの任意の1つ以上は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはフェニルラジカルであってもよい。
【0046】
配位子として本明細書での使用に好適な式13に従ったアミンには、例えば、次式14
【化16】

(式中、xは2〜10である)
で一般に記載されるものが含まれる。式14は、式13で、各R基がHであり、a=2、b=c=0、そしてm=0〜8である様々なポリエチレンアミンを記載する。
【0047】
配位子として本明細書での使用に好適な、式13に従った他のアミン、または他の高次アミンには、次の構造:
【化17】

【0048】
【化18】

で一般に記載されるものだけでなく、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミンが含まれる。
【0049】
配位子はまた、少なくとも1個の環原子が窒素である少なくとも1つの閉環構造を有する分子である環式アミン化合物であってもよい。配位子の形態は従って、窒素原子に加えて、主として炭素および水素であるが、下記のように、また酸素および/または硫黄であってもよい他の原子を環構造が含有するであろうという意味で複素環である。窒素原子は例えば、
〜C12脂肪族の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換ヒドロカルビル環構造、または
〜C12芳香族の、置換もしくは非置換ヒドロカルビル環構造
のメンバーであってもよい。
【0050】
配位子として本明細書での使用に好適な、様々な窒素含有環式化合物には、限定なしに次の構造
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

で記載されるものだけでなく、キノリン、インドール、イミダゾール、エチレンイミンが挙げられる。
【0051】
本明細書での使用に好適な配位子の説明で上に言及される「ヒドロカルビル」基は、非置換であるとき、炭素および水素のみを含有する一価の基である。同様に、非置換アミンは、その構造に窒素、炭素および水素原子のみを含有する化合物である。しかしながら、上記のヒドロカルビルラジカルまたは環構造のいずれにおいても、生じる構造が−O−O−または−S−S−部分を全く含有しないという条件で、かつ、どの炭素原子も2個以上のヘテロ原子に結合していないという条件で、1つ以上のOまたはS原子が場合により鎖中または環中炭素原子の任意の1つ以上と置き換えられてもよい。酸素原子が炭素原子と置き換えられた好適な配位子の例は、式15:
【化27】

(式中、qは、異なる分子量の分子の混合物において、例えば、約3の平均値を有してもよい)
に示される。
【0052】
本明細書での使用に好適な、そして酸素置換を有する配位子の他の例には、次の構造:
【化28】

【化29】

で一般に記載されるものだけでなく、アニシジン、フェネチジンが挙げられる。
【0053】
特に多様性の配位子には、第二級アミン、特に、RNH−(CHRCHR)−NHR10(式中、RおよびR10はそれぞれ独立して、C〜C第一級アルキルラジカルの群から選択され、RおよびRはそれぞれ独立して、HおよびC〜Cアルキ
ルラジカルの群から選択され、および/またはここで、RおよびRは一緒になって環構造を形成してもよい)として記載されてもよいものをはじめとする、N,N’−置換1,2−ジアミンが含まれる。
【0054】
式12において、RおよびRが一緒になって芳香環構造を形成するとき、および/または環式アミン配位子が1つ以上の芳香環構造を含有するとき、より厳しい反応条件(例えば、より高い温度、またはより大量の銅および/または配位子)が反応で高い転化率、選択率、収率および/または純度を達成するために必要とされるかもしれない。
【0055】
本明細書での使用に好適な配位子は、上記の名称または構造で記載された配位子の全集団のメンバーの任意の1つ以上または全てとして選択されてもよい。しかしながら、好適な配位子はまた、全集団のサブグループのメンバーの任意の1つ以上または全てとして選択されてもよく、ここで、サブグループは任意のサイズ(例えば、1、2、6、10または20)であってもよいし、およびここで、サブグループは上記のような全集団のメンバーの任意の1つ以上を除外することによって形成される。結果として、配位子は、かかる場合には、上記のような配位子の全集団から形成されてもよい任意のサイズの任意のサブグループのメンバーの1つ以上または全てとして選択されてもよいのみならず、配位子はまたサブグループを形成するために全集団から除外されたメンバーの不存在下に選択されてもよい。例えば、ある種の実施態様では、本明細書で有用な配位子は、他の配位子をまた全集団から除外してまたは除外せずに、ピリジン、2,5,8,11−テトラメチル−2,5,8,11−テトラアザドデカン、および/または1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミンを全集団から除く配位子のサブグループのメンバーの1つ以上または全てとして選択されてもよい。
【0056】
様々な実施態様では、配位子は、銅の1モル当たり約1〜約8、好ましくは約1〜約2モル当量の配位子の量で提供されてもよい。それらのおよび他の実施態様では、配位子のモル当量対ハロゲン化芳香族酸のモル当量の比は、約0.1以下であってもよい。本明細書で用いるところでは、用語「モル当量」は、1モルの銅と相互作用するであろう配位子のモル数を示唆する。
【0057】
一実施態様では、Cu(I)塩はCuBrとして選択されてもよく、配位子は、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジブチルシクロヘキサン−1,2−ジアミンからなる群から選択され、そしてCuBrは、水および空気の存在下に2モル当量の配位子と組み合わせられる。
【0058】
配位子は、触媒としての銅源の作用を容易にすると考えられ、および/または銅源および配位子は、触媒としての役割を果たすために一緒に機能して反応の1つ以上の属性を改善すると考えられる。
【0059】
上記の本方法はまた、式VI:
【化30】

(式中、Ar、mおよびnは上述の通りに記載され、各Rは独立して、置換または非置換C1〜10アルキル基である)
の構造で一般に記載されてもよい、n−アルコキシ芳香族酸などの、関連化合物の効果的なおよび効率的な合成を可能にする。Rは、非置換であるとき、炭素および水素のみを含有する一価の基である。しかしながら、任意のかかるアルキル基において、生じる構造が−O−O−または−S−S−部分を全く含有しないという条件で、かつ、どの炭素原子も2個以上のヘテロ原子に結合していないという条件で、1つ以上のOまたはS原子が場合により鎖中の炭素原子の任意の1つ以上と置き換えられてもよい。
【0060】
本発明の方法によって製造されるような、n−ヒドロキシ芳香族酸は、n−アルコキシ芳香族酸に転化されてもよく、かかる転化は、例えば、ヒドロキシ芳香族酸を塩基性条件下に式(RSOのn−アルキル硫酸と接触させることによって成し遂げられてもよい。かかる転化反応を行う好適な一方法は、オーストリア国特許第265,244号明細書に記載されている通りである。かかる転化に好適な塩基性条件は、上記のものなどの1つ以上の塩基を使用して、少なくとも約8、または少なくとも約9、または少なくとも約10、好ましくは約9〜約11の溶液pHである。
【0061】
ある種の実施態様では、n−ヒドロキシ芳香族酸を、それをn−アルコキシ芳香族酸に転化する前にそれが形成された反応混合物から分離することが望ましいかもしれない。
【0062】
上記の本方法はまた、化合物、モノマー、またはそれのオリゴマーもしくはポリマーなどの、生じた2,5−ジヒドロキシテレフタル酸または2,5−ジアルコキシテレフタル酸から製造される生成物の効果的なおよび効率的な合成を可能にする。これらの製造される物質は、エステル官能性、エーテル官能性、アミド官能性、イミド官能性、イミダゾール官能性、カーボネート官能性、アクリレート官能性、エポキシド官能性、ウレタン官能性、アセタール官能性、および酸無水物官能性の1つ以上を有してもよい。
【0063】
本発明の方法によって製造された物質、またはかかる物質の誘導体を含む代表的な反応には、例えば、米国特許第3,047,536号明細書(あらゆる目的のために本明細書の一部として全体が援用される)に開示されているような、窒素下に1−メチルナフタレン中0.1%のZn(BOの存在下での2,5−ジヒドロキシテレフタル酸と、ジエチレングリコールかトリエチレングリコールのどちらかとからのポリエステルの製造が含まれる。同様に、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸は、米国特許第3,227,680号明細書(あらゆる目的のために本明細書の一部として全体が援用される)において熱安定化ポリエステルを製造するために二塩基酸とグリコールとの共重合に好適であるとして開示されており、ここで、代表的な条件は、200〜250℃でブタノール中チタンテトライソプロポキシドの存在下にプレポリマーを形成する工程、引き続く0.08mmHgの圧力で280℃での固相重合を含む。
【0064】
2,5−ジヒドロキシテレフタル酸はまた、強ポリリン酸中でテトラアミノピリジンの三塩酸塩一水和物と、米国特許第5,674,969号明細書(あらゆる目的のために本明細書の一部として全体が援用される)に開示されているように、減圧下に100℃より上、約180℃以下でゆっくり加熱すること、引き続く水中での沈殿によって;または国際公開第2006/104974号パンフレットとして公開された、2005年3月28出願の米国仮特許出願第60/665,737号明細書(あらゆる目的のために本明細書の一部として全体が援用される)に開示されているように約50℃〜約110℃、次に145℃の温度でモノマーを混合してオリゴマーを形成し、そして次にこのオリゴマーを約160℃〜約250℃の温度で反応させることによって重合させられてきた。そのように製造されてもよいポリマーは、ポリ(l,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2、3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール)ポリマーなどの、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)ポリマーであってもよい。しかしながら、それのピリドビスイミダゾール部分は、ベンゾビスイミダゾール、ベンゾビスチアゾール、ベンゾビスオキサゾール、ピリドビスチアゾールおよびピリドビスオキサゾールのどれかまたはより多くで置き換えられてもよく;それの2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン部分は、イソフタル酸、テレフタル酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸、および2,6−ビス(4−カルボキシフェニル)ピリドビスイミダゾールの1つ以上の誘導体で置き換えられてもよい。
【実施例】
【0065】
本発明は、以下の実施例でさらに明確にされる。これらの実施例は本発明の好ましい実施態様を示すが、例示の目的のみで与えられることが理解されるべきである。上記の議論およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特性を確認することができ、それの精神および範囲から逸脱することなく、それを様々な使用および条件に適合させるために本発明の様々な変更および修正を行うことができる。
【0066】
原材料。全ての試薬は、受け取ったまま使用した。表1にリストされる配位子(A〜O、およびRで表示される)は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)から入手した。配位子Pは、TCI America(Portland,Oregon)から入手した。
【0067】
【表2】

【0068】
2−ブロモ安息香酸(97%純度),2,5−ジブロモ安息香酸(96%純度)、
2−ブロモ−5−ニトロ安息香酸(98%純度)、4−ブロモ安息香酸(98%純度)、4−クロロ安息香酸(99%純度)、2,4−ジクロロ安息香酸(98%純度)、2,5−ジクロロ安息香酸(97%純度)、2−クロロ−5−ニトロ安息香酸(97%純度)、2−ブロモ−5−メトキシ安息香酸(98%純度)および5−ブロモ−2−クロロ安息香酸(98%純度)は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)から入手した。
【0069】
2,5−ジブロモテレフタル酸(95+%純度)は、Maybridge Chemical Company Ltd.(Cornwall,United Kingdom)から入手した。2−ブロモ−5−メチル安息香酸および2−クロロ−5−メチル安息香酸(98%純度)は、Oakwood Products,Inc.(West Columbia,SouthCarolina,USA)から入手した。2−クロロ−3,5−ジニトロ安息香酸(97%純度)は、Avocado Organics(現在Alfa Aesar,Johnson−Matthey Companyの一部、Ward Hill,Massachusetts,USA)から入手した。
【0070】
臭化銅(I)(「CuBr」)(98%)および臭化銅(II)(「CuBr」)は、Acros Organics(Geel,Belgium)から入手した。硫酸銅(II)(「CuSO」)(98%純度)は、Strem Chemicals,Inc.(Newburyport,Massachusetts,USA)から入手した。
【0071】
アセトニトリル(99.8%)およびNaCO(99.5%)は、EM Science(Gibbstow,New Jersey)から入手した。
【0072】
本明細書で用いるところでは、用語「転化率」は、どれだけ多くの反応体が理論量の分率または百分率として使い尽くされたかを意味する。生成物Pについての用語「選択率」は、最終生成物混合物中のPのモル分率またはモル百分率を意味する。選択率を乗じた転化率は従って、Pの最大「収率」に等しく、実際のまたは「正味」収率は普通、単離、ハンドリング、乾燥などのような活動の過程で被るサンプル損失のためにこれより幾分少ないであろう。用語「純度」は、手持ちの単離サンプルの何パーセンテージが実際に特定の物質であるかを意味する。
【0073】
用語「15%HCl」は、本実施例で用いるところでは、その濃度が100mLの溶液当たり15グラムのHClである水性塩酸を意味する。同様に、「35%HCl」は、その濃度が100mLの溶液当たり35グラムのHClである水性塩酸を意味する。用語「HO」および「水」は、実施例で用いるところでは、蒸留水を意味する。生成物純度は、H NMRによって測定した。
【0074】
省略形の意味は次の通りである:「h」は時間を意味し、「min」は分を意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「M」はモル濃度を意味し、「NMR」は核磁気共鳴分光法を意味し、「CONV」は転化率(パーセント)を意味し、「SEL」は選択率(パーセント)を意味し、「T」は温度を意味し、「t」は時間を意味する。
【0075】
実施例1
窒素下に、2.00g(9.95ミリモル)の2−ブロモ安息香酸を10gのHOと組み合わせた。1.11g(10.45ミリモル)のNaCOを次に加えた。混合物を、窒素雰囲気下のままで、撹拌しながら30分間加熱還流した。別の1.58g(14.92ミリモル)のNaCOを反応混合物に加え、還流を30分間続行した。別に、22mgのCuBrおよび28mgのラセミ−トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(配位子F)を窒素下に2mLのHOと組み合わせて濃紫色溶液を与えた。この溶液を、撹拌される反応混合物に窒素下に80℃でシリンジによって加え、80℃で1時間撹拌した。25℃に冷却した後、反応混合物を15%HClで酸性化し、白色沈殿を生み出した。白色沈殿を濾過し、水で洗浄した。乾燥後に、合計1.34g(9.7ミリモル、98%収率)のサリチル酸が得られた。純度は約99%であるとH NMRによって測定された。
【0076】
実施例2
窒素下に、7.82g(50ミリモル)の2−クロロ安息香酸を31gのHOと組み合わせた。6.62g(62.5ミリモル)のNaCOを次に加えた。混合物を、窒素雰囲気下のままで、撹拌しながら30分間加熱還流した。別に、36mgのCuBrおよび79mgのラセミ−トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(配位子F)を窒素下に1mLのHOと組み合わせた。生じた混合物を、CuBrが溶解して深紫色溶液を与えるまで空気雰囲気下に撹拌した。この溶液を、撹拌される反応混合物に窒素下に80℃でシリンジによって加え、100℃で約3時間撹拌し、反応をH NMRによって監視した。表3は、異なる反応時間での出発原料および生成物の分布を示す。99%超の生成物選択率が観察された。反応完了後に、混合物を25℃に放冷し、反応混合物を15%HClで酸性化し、白色沈殿を生み出した。白色沈殿を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて6.00gの2−ヒドロキシ安息香酸(85%収率)をもたらした。濾液を酢酸エチルで抽出し、蒸発乾固させて別の0.65gの2−ヒドロキシ安息香酸を得て6.65g(48.2ミリモル、96%収率)の合計収量をもたらした。
【0077】
【表3】

【0078】
実施例3(比較)
Comdomら(上記)に記載されている方法に概して従って、窒素下に、7.82g(50ミリモル)の2−クロロ安息香酸を31gのHOと組み合わせた。10.37g(75ミリモル)のKCO、4.04gのピリジン(約51ミリモル)、および0.25gの銅粉を加え、混合物を、撹拌しながら約3時間加熱還流した。反応をH NMRによって監視した。表4は、異なる反応時間での出発原料および生成物の分布を示す。反応時間に依存して82〜92%の生成物選択率が観察された。反応完了後に混合物を25℃に放冷し、反応混合物を15%HClで酸性化し、白色沈殿を生み出した。白色沈殿を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて5.60gの2−ヒドロキシ安息香酸(74%モル)と、2−クロロ安息香酸(19%モル)と安息香酸(7%モル)との混合物をもたらした。濾液を酢酸エチルで抽出し、蒸発乾固させて別の0.72gの同じ生成物を得て6.32gの合計収量の粗生成物をもたらした。2−ヒドロキシ安息香酸の正味収率は合計33.6ミリモル(67%)に達した。
【0079】
【表4】

【0080】
実施例4
窒素下に、2.00g(9.95ミリモル)の2−ブロモ安息香酸を10gのHOと組み合わせた。1.11g(10.45ミリモル)のNaCOを次に加えた。混合物を、窒素雰囲気下のままで、撹拌しながら30分間加熱還流した。別の1.58g(14.92ミリモル)のNaCOを反応混合物に加え、還流を30分間続行した。別に、14mgのCuBrおよび28mgのラセミ−トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(配位子F)を窒素下に1mLアセトニトリルと組み合わせた。生じた混合物を、CuBrが溶解して青色溶液を与えるまで空気雰囲気下に撹拌した。この溶液を、撹拌される反応混合物に窒素下に80℃でシリンジによって加え、80℃で2時間撹拌した。25℃に冷却した後、反応混合物を15%HClで酸性化し、白色沈殿を生み出した。白色沈殿を濾過し、水で洗浄した。乾燥後に、合計1.34g(9.7ミリモル、98%収率)のサリチル酸が得られた。純度は>99%であるとH NMRによって測定された。
【0081】
実施例5
実施例5は、実施例1と同じ手順だがCuBrの代わりに等モル量のCuSOを用いて実施した。乾燥後に、合計1.30g(9.4ミリモル、95%収率)のサリチル酸が得られた。純度は約99%であるとH NMRによって測定された。
【0082】
実施例6、実施例7(比較)
窒素下に、2ミリモルの2−ブロモ安息香酸を3ミリモルNaCOの溶液と、酸の全てが溶解するまで80℃で撹拌した。その後、1mLアセトニトリルに溶解させた0.01ミリモルのCuBrおよび0.02ミリモルのラセミ−トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(実施例6、配位子F)か、0.01ミリモルの1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン[実施例7(比較)、配位子O]かのどちらかを加え、反応混合物を80℃で3時間加熱した。周囲温度に冷却した後、反応混合物を35%水性HClで注意深く酸性化した。生成物を濾過によって単離し、水で洗浄し、減圧下に乾燥させた。濾液を酢酸エチルで抽出し、蒸発乾固させた。粗反応生成物をH NMR(d6−dmso)によって分析した。表5にまとめられた結果は、実施例6に使用されたN,N’−置換1,2−ジアミン配位子(配位子F)と比較して実施例7での第三級テトラアミン[配位子O(比較)]の不満足な性能を実証する。
【0083】
【表5】

【0084】
実施例8〜23
窒素下に、2ミリモルの表6に示されるハロゲン置換安息香酸を3ミリモルNaCOの溶液と、ハロゲン置換安息香酸の全てが溶解するまで50〜75℃で撹拌した。その後、1mL蒸留水に溶解させた0.02ミリモルCuSOおよび0.04ミリモルのラセミ−トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(配位子F)を加え、反応混合物を80〜100℃で4時間加熱した。周囲温度に冷却した後、反応混合物を35%水性HClで注意深く酸性化した。
【0085】
単離方法Aでは、生成物を水性層から酢酸エチルで2回抽出し、酢酸エチルフラクションを組み合わせ、粗反応生成物を、減圧下の酢酸エチルの蒸発によって単離した。単離方法Bでは、生成物を濾過によって単離し、水で洗浄し、減圧下に乾燥させた。粗反応生成物を1H NMR(d6−dmso)によって分析した。結果を表6にまとめる。
【0086】
【表6】

【0087】
実施例24
窒素下に、1.86g(10.0ミリモル)の2−クロロ−4−メチル安息香酸を10gのHOと組み合わせた。1.11g(15ミリモル)のCa(OH)を次に加えた。混合物を、窒素雰囲気下のままで、撹拌しながら85℃で60分間加熱還流した。別に、43mgのCuBrおよび94mgのラセミ−トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(配位子F)を窒素下に1mL脱イオン水と組み合わせた。生じた混合物を、CuBrが溶解して青色溶液を与えるまで空気雰囲気下に撹拌した。この溶液を、撹拌される反応混合物に窒素下に80℃でシリンジによって加え、80℃で24時間撹拌した。25℃に冷却した後、反応混合物を15%HClで酸性化し、白色沈殿を生み出した。白色沈殿を濾過し、水で洗浄した。乾燥後に、合計1.45g(9.5ミリモル、95%収率)の2−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸が得られた。純度は>99%であるとH NMRによって測定された。
【0088】
実施例25
実施例24に記載したのと同じ手順を、しかし基質として2.45g(10.0ミリモル)の4−ブロモイソフタル酸およびCa(OH)の代わりに2.70g(25.5ミリモル)のNaCOを使用して行った。合計1.49g(8.2ミリモル、82%収率)の4−ヒドロキシイソフタル酸が得られた。純度は88%であるとH NMRによって測定された。
【0089】
実施例26
実施例25に記載したのと同じ手順を、しかし基質として2.01g(10.0ミリモル)の4−ブロモ安息香酸および銅源として16mgのCuSOを使用して行った。合計1.13g(7.76ミリモル、81%収率)の4−ヒドロキシ安息香酸が得られた。純度は90%であるとH NMRによって測定された。
【0090】
実施例27
実施例1に記載したのと同じ手順を、しかし基質として12.25g(50.0ミリモル)の2−ブロモ−p−テレフタル酸、31gのHO、合計9.94g(94ミリモル)のNaCO、銅源として35mgのCuBrおよび79mgの配位子Fを使用して行った。合計7.9g(39ミリモル、78%収率)の2−ヒドロキシテレフタル酸が得られた。純度は97%であるとH NMRによって測定された。
【0091】
実施例28
窒素下に、2.00g(8.51ミリモル)の2,5−ジクロロテレフタル酸を10gのHOと組み合わせた。0.938g(8.85ミリモル)のNaCOを次に加えた。混合物を、窒素雰囲気下のままで、撹拌しながら30分間加熱還流した。別の1.31g(12.34ミリモル)のNaCOを反応混合物に加え、還流を30分間続行した。別に、12mgのCuBrおよび24mgのラセミ−トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(配位子F)を窒素下に2mLのHOと組み合わせた。生じた混合物を、CuBrが溶解して深紫色溶液を与えるまで空気雰囲気下に撹拌した。この溶液を、撹拌される反応混合物に窒素下に80℃でシリンジによって加え、80℃で20時間撹拌した。25℃に冷却した後、反応混合物をHCl(濃)で酸性化し、暗黄色沈殿を生み出した。黄色沈殿を濾過し、水で洗浄した。乾燥後に、合計1.59g(8.03ミリモル、94%収率)の2,5−ジヒドロキシテレフタル酸が得られた。純度は95%であるとH NMRによって測定された。
【0092】
実施例29
窒素下に、2.00g(9.95ミリモル)の3−ブロモ安息香酸を10gのHOと組み合わせた。1.11g(10.45ミリモル)のNaCOを次に加えた。混合物を、窒素雰囲気下のままで、撹拌しながら30分間加熱還流した。別の1.58g(14.92ミリモル)のNaCOを反応混合物に加え、還流を30分間続行した。別に、14mgのCuBrおよび28mgのラセミ−トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(配位子F)を窒素下に2mL水と組み合わせた。生じた混合物を、CuBrが溶解して青色溶液を与えるまで空気雰囲気下に撹拌した。この溶液を、撹拌される反応混合物に窒素下に80℃でシリンジによって加えた。温度を上げて安定した還流を与え、25時間撹拌し続けた。25℃に冷却した後、反応混合物を15%HClで酸性化し、白色沈殿を生み出した。白色沈殿を濾過し、水で洗浄した。1H NMR分析は、100%の3−ヒドロキシ安息香酸の選択率で78%の転化率を示した。全収率は78%であると測定された。
【0093】
実施例30〜32
窒素下に、10ミリモルの2−ブロモ安息香酸を10mLのHO中の12.5ミリモルNaCOの溶液と、ハロゲン置換安息香酸の全てが溶解するまで50〜75℃で撹拌した。その後、空気と共に撹拌しながら1mL脱イオン水に溶解した、0.01ミリモル銅源(表7に示されるようなCuBrまたはCuSO)および0.02ミリモルの配位子Fか配位子Rかのどちらか(表7に示されるような)を加え、反応混合物を表7に示される温度および時間加熱した。周囲温度に冷却した後、反応混合物を35%水性HClで酸性化した。生成物を濾過によって単離し、水で洗浄し、減圧下に乾燥させた。粗反応生成物を1H NMR(d6−dmso)によって分析した。結果を表7にまとめる。
【0094】
【表7】

【0095】
実施例33〜48、実施例49(比較)
窒素雰囲気下に、磁気撹拌バー入り2mLバイアルに25mg(0.077ミリモル)の2,5−ジブロモテレフタル酸(「DBTA」)、引き続いて0.308mL(0.308ミリモル)の1.0M水性水酸化ナトリウムおよび0.169mL(0.169ミリモル)の1.0M水性酢酸ナトリウムを加えた。混合物を次に、0.003mL(0.00077ミリモル、1モル%)のアセトニトリル中0.23M臭化銅(I)および0.003mL(0.00154ミリモル、2モル%)の表8で下に示されるようなジアミン配位子で処理した。実施例49(比較)については、配位子を全く使用しなかった。反応器バイアルを次に窒素下に密封し、密封した反応器ブロックに入れた。90℃で3時間後に、反応混合物を室温に放冷した。反応混合物を15%水性HClで酸性化し、沈殿を生み出した。沈殿を濾過し、HOで洗浄し、乾燥生成物をH NMRによって分析した。各配位子についてのDBTA(II)のパーセント転化率を表8に提示する。DHTA(I)および中間体2−ブロモ−5−ヒドロキシテレフタル酸(VII)についての選択率もまた表8に提示する。
【0096】
【表8】

【0097】
【表9】

【0098】
本発明の実施態様が、ある種の特徴を含む、包含する、含有する、有する、それらからなるまたはそれらによって構成されるとして記述されるかまたは記載される場合、その記述または記載がそれとは反対を明確に提供しない限り、明確に記述されるかまたは記載されるものに加えて1つ以上の特徴がその実施態様に存在してもよいことは理解されるべきである。しかしながら、本発明の代わりの実施態様は、ある種の特徴から本質的になるとして記述されてもまたは記載されてもよく、その実施態様において実施態様の操作の原理または特徴的な特性を実質的に変えるであろう実施態様特徴はそれには存在しない。本発明のさらなる代わりの実施態様は、ある種の特徴からなるとして記述されてもまたは記載されてもよく、その実施態様において、またはそれのごくわずかな変形において、具体的に記述されるかまたは記載される特徴が存在するにすぎない。
【0099】
不定冠詞「a」または「an」が本発明の方法における工程の存在についての記述または記載に関して用いられる場合、その記述または記載がそれとは反対を明確に提供しない限り、かかる不定冠詞の使用は本方法における工程の存在を数で1つに限定しないことは理解されるべきである。
【0100】
数値の範囲が本明細書に列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、その終点、その範囲内の全ての整数および分数を含むことを意図される。本発明の範囲は、ある範囲を定義するときに列挙される具体的な値に限定されることは意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、ArはC〜C20アリーレンラジカルであり、nおよびmはそれぞれ独立してゼロではない値であり、そしてn+mは8以下である)
の構造で一般に記載されるヒドロキシ芳香族酸の製造方法であって、
(a)式II
【化2】

(式中、各Xは独立して、Cl、BrまたはIであり、そしてAr、nおよびmは上述の通りである)
の構造で一般に記載されるハロゲン化芳香族酸を水中で塩基と接触させて水中で前記ハロゲン化芳香族酸の相当するm−塩基性塩をそれから形成する工程と、
(b)前記ハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩を水中で塩基と、および銅に配位するアミン配位子の存在下に銅源と接触させて、少なくとも約8の溶液pHでヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩を前記ハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩から形成する工程であって、前記配位子のモル当量対ヒドロキシ芳香族酸のモル当量の比が約0.1以下であり、そして前記配位子が、それがテトラアミンであるとき、少なくとも1つの第一級または第二級アミノ基を含む工程と、
(c)場合により、前記ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩を、それが生じている反応混合物から分離する工程と、
(d)前記ヒドロキシ芳香族酸のm−塩基性塩を酸と接触させてn−ヒドロキシ芳香族酸をそれから形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(a)において、ハロゲン化芳香族酸を、ハロゲン化芳香族酸の1当量当たり少なくとも約2規定当量の水溶性塩基と接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)において、ハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩を、前記ハロゲン化芳香族酸のm−塩基性塩の1当量当たり少なくとも約2規定当量の水溶性塩基と接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)および(b)において、ハロゲン化芳香族酸の1当量当たり合計約n+m+1規定当量の水溶性塩基を、反応混合物に加える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
銅源がCu(0)、Cu(I)塩、Cu(II)塩、またはそれらの混合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
銅源がCuCl、CuBr、CuI、CuSO、CuNO、CuCl、CuBr、CuI、CuSO、Cu(NO、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
配位子がモノアミン、ジアミン、トリアミンまたはテトラアミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
配位子がN,N’−置換ジアミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
配位子がN,N’−ジ−n−アルキルエチレンジアミンまたはN,N’−ジ−n−アルキルシクロヘキサン−1,2−ジアミンを含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
配位子がN,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’ジ−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジアミン、およびN,N’−ジブチルシクロヘキサン−1,2−ジアミンからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
配位子がシクロヘキシルジアミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
配位子が環式アミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
配位子がピペリジン、ビピリジル、1,10−フェナントロリン、および1,2−ビス(4−ピリジル)エタンからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
銅源を配位子と、それらを反応混合物に加える前に組み合わせる工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
銅源がCuBrを含む請求項8に記載の方法。
【請求項16】
銅がハロゲン化芳香族酸のモルを基準として約0.1〜約5モル%の量で提供される請求項1に記載の方法。
【請求項17】
配位子が銅の1モル当たり約1〜約2モル当量の量で提供される請求項1に記載の方法。
【請求項18】
n−ヒドロキシ芳香族酸をn−アルコキシ芳香族酸に転化する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
n−ヒドロキシ芳香族酸を、式R10SO(式中、RおよびR10はそれぞれ独立して、置換または非置換C1-10アルキル基である)のジアルキル硫酸と塩基性条件下に接触させる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
n−ヒドロキシ芳香族酸を、それから化合物、モノマー、オリゴマーまたはポリマーが製造される反応に供する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
製造されたポリマーがピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)ポリマーを含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
n−アルコキシ芳香族酸を、それから化合物、モノマー、オリゴマーまたはポリマーが製造される反応に供する工程をさらに含む請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2010−511043(P2010−511043A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539292(P2009−539292)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/024466
【国際公開番号】WO2008/066820
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】