説明

ヒータチップ

【課題】長細形状の被接合領域を一度に接合するための長細形状の押圧面を有するヒータチップにおいて、押圧面全域が均一な温度となるようなヒータチップを提供する。
【解決手段】電源から加熱電流が給電され、被接合領域に当接し、自身の抵抗発熱により被接合物を加熱すると共に押圧するヒータチップ1であって、側面を見て上辺部がスリット4で切断された略矩形の枠状に成形されたヒータチップ1は、押圧面2Aを有する下辺部2と、この下辺部2の両端から上方に延出するシャンク部3と、この一対のシャンク部3の上端からスリット4までに設けられた一対の給電端子部5とを有し、前記加熱電流の流路の断面積を流路断面積としたとき、下辺部2の最少流路断面積と比較してシャンク部3の最少流路断面積を小さく成形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予めめっき等によって半田をプリコートしたり異方性導電膜を形成したプリント配線板等の多数の接続部に、集積回路等の多数のリード線を瞬間加熱により一度に半田付けするためのヒータチップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数のリード線を接続部に一度に接続するヒータチップが公知である。このヒータチップが用いられる様子の一例を図3に基づいて説明する。図3において、符号51は基台、52は基台51から上方に立設された支柱、53は支柱52に対して上下動可能に支持された接合ヘッド、54は接合ヘッド53の下方に延出して下方への付勢力が調節可能に支持された押圧シャフト、55は押圧シャフト54の下端に固定された絶縁ブロック、56は絶縁ブロック55に互いに離隔して一対設けられた給電ブロック、57は一対の給電ブロック56の夫々に給電端子部が固定されたヒータチップである。
【0003】
このような構成で接合ヘッド53が下降することで、ヒータチップ57も矢印アの方向に移動し、ヒータチップ57の下方にセットした図示しないワークに当接する。そしてヒータチップ57の下面である押圧面でワークを押圧すると共に加熱を行なう。加熱は一対の給電ブロック56に接続されたヒータチップ57の一方の給電端子部から他方の給電端子部へ流れる電流による抵抗発熱が利用される。また、両給電端子部への給電は、図示しないパルスヒート電源からの出力が、図示しない給電ケーブルを介して前記一対の給電ブロック56に供給されることで行なわれる。さらに、ヒータチップ57には図示しない熱電対が設けてあり、加熱時の温度情報を前記パルスヒート電源にフィードバックする。そして電源はこの情報に基づき出力電流を制御する。
【0004】
このように使用されるヒータチップは、その加熱温度が押圧面全域にわたって均一であることが求められる。そこで特許文献1では図4で示すような技術が開示されている。図4において、符号58および59が開示されたヒータチップ、60は給電端子部、61はシャンク部、62は押圧面、63および64は押圧面の背面側である。特許文献1の技術は、図4(a)および(b)のように、その形状は異なるが、押圧面の背面側63、64に突起を持たせ、この部分からの放熱を高めるというものである。押圧面62の長手方向の両端近傍は給電端子部60に近くシャンク部61を介して熱が多く流れるが、押圧面62の中央近傍は給電端子部60から遠く、熱の逃げ場がないため両端近傍よりも高温になる。そこで、この部分に突起を形成して自らの放熱を増加させようというものである。
【0005】
また、特許文献2では図5のような技術が開示されている。図5において符号65および66が開示されたヒータチップであり、68は給電端子部、69はシャンク部、70は押圧面、71は押圧面の背面側である。ここで図5(a)で示すヒータチップ65の押圧面の背面側71には切り溝72が、図5(b)で示すヒータチップ66の押圧面の背面側71には有底の穴73が設けられている。そしてこれら切り溝72および穴73は押圧面の背面側71の中央から長手方向両端へと順次その容積が大きく形成された温度制御用開口部となるように成形されている。
【0006】
特許文献2では、押圧面70の中央近傍が長手方向の両端近傍よりも高温となり、押圧面70の温度の均一性に問題があるとして、前記両端部近傍の温度が給電端子部方向への熱の流れで下がり過ぎないように、電流の流路の断面積を制限することで発熱を大きくし、前記中央近傍の温度に近づくようにしたものである。このように特許文献1と2とは、その技術思想は異なるものの、押圧面を構成する棒状部分の形状に変化を持たせることで押圧面の温度の均一化を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭57−53638号公報(第1頁、図4、6)
【特許文献2】特開平8−227918号公報(第6頁、図3、4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、押圧面の温度の均一化を図るのに、押圧面を構成する棒状部分の形状を変化させ、その放熱作用や抵抗発熱作用を調節した場合、ある加熱電流値又はある加熱温度ではバランスが取れていても、それが変化した場合には温度の均一性が崩れてしまいやすい。つまり特許文献1の技術では、押圧面の背面側の突起が外界に放熱する現象と押圧面の長手方向両端部近傍の熱が熱伝導で給電端子部に流れる現象は物理的にも異なる作用であり、これをもってバランスをとろうとすることに問題がある。特許文献2の技術では、押圧部の長手方向端部近傍の発熱が中央部近傍の熱の流れを阻止し、中央部近傍をさらに高温にしてしまうという問題がある。
【0009】
そこで発明者はこれらの課題に対し、押圧面を構成する棒状部分を自身の抵抗発熱で直接加熱するという考え方から一歩脱して、上記課題を解決するヒータチップを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は第1の態様として、電源から加熱電流が給電され、細長形状の被接合領域に細長形状の押圧面を当接し、自身の抵抗発熱により被接合物を加熱すると共に押圧するヒータチップであって、側面を見て上辺部がスリットで切断された略矩形の枠状に成形された前記ヒータチップは、前記押圧面を有する下辺部と、この下辺部の両端から上方に延出するシャンク部と、この一対のシャンク部の上端から前記スリットまでに設けられた一対の給電端子部とを有し、前記加熱電流の流路の断面積を流路断面積としたとき、前記下辺部の最少流路断面積と比較して前記シャンク部の最少流路断面積を小さく成形することを特徴とするヒータチップを提供する。
【0011】
また本発明は第2の態様として、前記下辺部の最少流路断面積は前記シャンク部の最少流路断面積の2倍以上であることを特徴とする第1の態様として記載のヒータチップを提供する。
【0012】
さらに本発明は第3の態様として、前記下辺部における前記シャンク部との連結部を除いた棒状部分の流路断面積は、この棒状部分の全長にわたって一定であることを特徴とする第1又は第2のいずれかの態様として記載のヒータチップを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、押圧面を有する下辺部よりもシャンク部の流路断面積が小さいので、シャンク部が抵抗発熱により下辺部よりも高温となり、その熱が熱伝導で下辺部に流れる。したがって、給電端子に近い下辺部の両端近傍が中央部近傍よりも低温になることがなく、押圧面の温度均一性が良好となる。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、下辺部の最少流路断面積をシャンク部の最少流路断面積の2倍以上にすることで、より下辺部全体の熱伝導が良好になり、押圧面の温度均一性が一層高まる。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、下辺部の流路断面積が棒状部分の全長にわたって一定であることから、下辺部自身の抵抗発熱の条件も全長にわたって均一になり、シャンク部からの熱伝導に対する影響が少なくなる。したがって押圧面の温度均一性が一層高まる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示すヒータチップの斜視図
【図2】本発明の実施形態を示すヒータチップの側面図
【図3】従来の技術を示す接合装置の斜視図
【図4】従来の技術を示すヒータチップの斜視図
【図5】従来の他の技術を示ヒータチップの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付図面を参照して本発明に係るヒータチップの実施形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明に係るヒータチップの斜視図である。ここで、符号1は略矩形の枠状に成形されたヒータチップ、符号2は下面に押圧面2A、上面に押圧面の背面側2Bを有する下辺部、符号3は下辺部2の両端から上方に向かって延出するシャンク部、符号4は上辺部を中央で切断するスリット、符号5はシャンク部の上端からスリット4までに設けられた給電端子部であり、図示しない給電ブロックに螺設するための貫通孔6が穿設されている。
【0019】
このヒータチップ1は、線膨張率が小さく熱伝導率が大きいモリブデン製の板材をワイヤーカット加工して成形したものであり、そのため押圧面2Aは当該板材の板厚を短辺、下辺部2の全長を長辺とした細長形状の長方形となっている。また給電端子部5の貫通孔6もワイヤーカット加工で成形されているので、その逃げとしてスリット6Aが設けられている。また、表面処理は加工時の酸化被膜を除去するのみで、特に押圧面2Aは、滑らかにそして平面度を高く仕上げてある。
【0020】
次にヒータチップ1の側面図である図2を用いてその形状の特長を説明する。なお、このヒータチップの形状は左右対称であるので、片側のみを指して説明する。図2において、本実施形態ではシャンク部3の幅寸法Lを2mmとし、下辺部2の押圧面2Aから押圧面の背面側2Bまでの間隔寸法Mを4.5mmとしている。ここで寸法Mを寸法Lの2倍以上にすることで断面積も2倍以上となり、シャンク部3で発生した熱が下辺部2の全域に熱伝導しやすくなっている。
【0021】
つまり、図2において一点鎖線の円イで示す部分は、このヒータチップ1の中で抵抗発熱が最も大きくなる部分なので、これが比較的幅広の下辺部2に熱伝導するようにしたものである。また下辺部2において、押圧面2Aと押圧面の背面側2Bとの間隔寸法Mを下辺部2の棒状部分全長にわたって一定にしているので、その断面積も一定となり、下辺部2自体の抵抗発熱の条件も一定となる。したがって、前記熱伝導での下辺部2の温度上昇に影響を与えないようになっている。
【符号の説明】
【0022】
1 ヒータチップ
2 下辺部
2A 押圧面
2B 押圧面の背面側
3 シャンク部
4、6A スリット
5 給電端子部
6 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から加熱電流が給電され、細長形状の被接合領域に細長形状の押圧面を当接し、自身の抵抗発熱により被接合物を加熱すると共に押圧するヒータチップであって、側面を見て上辺部がスリットで切断された略矩形の枠状に成形された前記ヒータチップは、前記押圧面を有する下辺部と、この下辺部の両端から上方に延出するシャンク部と、この一対のシャンク部の上端から前記スリットまでに設けられた一対の給電端子部とを有し、前記加熱電流の流路の断面積を流路断面積としたとき、前記下辺部の最少流路断面積と比較して前記シャンク部の最少流路断面積を小さく成形することを特徴とするヒータチップ。
【請求項2】
前記下辺部の最少流路断面積は前記シャンク部の最少流路断面積の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載のヒータチップ。
【請求項3】
前記下辺部における前記シャンク部との連結部を除いた棒状部分の流路断面積は、この棒状部分の全長にわたって一定であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のヒータチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−225819(P2010−225819A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71060(P2009−71060)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】