説明

ヒートシンクの分離方法及びヒートシンク

【課題】基板に実装された発熱する電子部品の交換時に、電子部品に接着剤で取り付けられたヒートシンクを電子部品に損傷を与えずに除去する。
【解決手段】基板1上に実装された電子部品3に、熱伝導性の接着層5を介して取り付けられているヒートシンク10を、ヒートシンク10側から電子部品3側に作用する押圧部材20を移動させることにより、電子部品3の横方向にヒートシンク10を移動させ、ヒートシンク10の電子部品3に対する移動により、ヒートシンク10と電子部品3とを接着する接着層5に剪断力を作用させて、接着層5の接着力を低減させることによってヒートシンク10を電子部品3から引き剥がすヒートシンクの分離方法である。押圧部材20には、回転させてヒートシンク10から突出させて先端の亜先細部21を電子部品3に当接するイモネジ20が使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はヒートシンクの分離方法及びヒートシンクに関する。以下に説明される実施の形態では、実施例として電子機器に内蔵されたプリント回路基板(以後単にプリント基板という)の上に実装されたICパッケージの放熱用のヒートシンクをICパッケージから取り外すヒートシンクの分離方法及びヒートシンクの構造が説明される。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に内蔵されるプリント基板に実装される電子部品、特にパワートランジスタやICパッケージは動作時に発熱するので、この熱を放熱して電子部品を冷却するためにヒートシンクが取り付けられる。ヒートシンクは電子部品の発熱量に合わせて必要な冷却が得られるサイズが選択されるので、ヒートシンクはこれが取り付けられる電子部品の外形サイズよりも大きくなることがある。
【0003】
ヒートシンクは、良好な放熱効果を得るために発熱する電子部品の上に密着させて取り付けられる。このようなヒートシンクの電子部品への取り付け方法として、電子部品の上にヒートシンクを載置し、ヒートシンクを電子部品が実装されたプリント基板上にネジやクリップ、或いはワイヤで引っ張って固定する方法がある(特許文献1,2参照)。しかし、この方法では、プリント基板上にネジ孔やクリップの挿通孔を設けたり、ワイヤを張設するための留め具が必要であり、プリント基板上の電子部品の実装スペースが小さくなるという問題点があった。そこで、ヒートシンクの電子部品への取り付け方法として、特許文献3に発熱体(電子部品)の上面に熱伝導性の接合剤(接着剤)を用いて直接放熱体(ヒートシンク)を取り付ける方法が提案されている。
【0004】
ところで、電子部品はプリント基板上に実装後、不具合により交換を余儀なくされることがある。電子部品の交換は、電子部品の実装部分を局部的にリフロー加熱することにより半田を溶融し、電子部品を基板から取り外すリワーク工法によって行われる。この場合、電子部品にヒートシンクが接着されていると、交換対象の電子部品の熱容量が大きくなってリフロー加熱で半田が溶融し難く、リワーク工法による交換作業が困難になる。
【0005】
そこで、特許文献3では、接合剤を介して発熱体の上に放熱体が接合されている放熱装置において、放熱体に設けられた発熱体まで貫通するネジ孔に分離用治具を挿入し、回転進入させて放熱体の底から突出させることによって放熱体を分離している。ネジ孔は放熱体の放熱フィンと放熱フィンの間の部分に設けられており、ネジ孔に挿入された分離用治具はねじ回しによって回転させられてネジ孔に進入するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−186752号公報(第2図)
【0007】
【特許文献2】特開2000−220595号公報(図1)
【0008】
【特許文献3】特開2007−142294号公報(図1、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、放熱体を発熱体に接合する接合剤の接合力が強力であると、放熱体の接合面に大きな引き剥がし力を印加する必要があり、特許文献3に開示の分離方法のように垂直方向に引き剥がす形態では、部品側に傷を付ける可能性があった。即ち、特許文献3に開示の分離方法では、接合剤が強力な場合に過大な機械的ストレスを電子部品に与えることになり、電子部品が破壊する可能性があるという問題点があった。
【0010】
そこで、放熱体の接合面に対して横方向から押圧力を加えて、放熱体を電子部品から引き剥がすことも考えられる。しかしながら、プリント基板上には多くの電子部品が実装されており、電子部品が並んで実装されている場合には、放熱体の接合面に対して横方向から押圧力を加えることは困難であった。
【0011】
本出願は、回路基板上に実装された電子部品にヒートシンクが接着剤によって強固に固着されている場合でも、電子部品に垂直方向の引き剥がし力を印加することなく、電子部品からヒートシンクを分離可能な分離方法を提供することを目的としている。更に詳しくは、ヒートシンクの上方向からアクセスして、電子部品とヒートシンクの接着層に剪断力を印加して分離可能な分離方法を提供する。また、この分離方法に使用することができるヒートシンクを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するヒートシンクの電子部品からの分離方法は、基板上に実装された電子部品に、熱伝導性の接着層を介して取り付けられているヒートシンクを、電子部品から分離する方法であって、ヒートシンク側から電子部品側に作用する押圧部材により、電子部品の横方向にヒートシンクと電子部品を相対移動させる第1の工程と、ヒートシンクと電子部品の相対移動により、接着層に剪断力を作用させて接着層の接着力を低下させる第2の工程とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、ヒートシンクの電子部品からの分離方法に使用するヒートシンクとしては、以下の4つの形態が考えられる。
第1の形態のヒートシンクは、電子部品の上に接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、隣接する放熱フィンの間の放熱板の少なくとも1箇所に、放熱板の電子部品への取付面まで貫通するネジ孔が設けられており、ネジ孔は、該ネジ孔の軸線に垂直な方向の断面を軸線方向に電子部品に投影した時に、断面の一部が電子部品に重なると共に、軸線の延長線が電子部品の上端部の外側に達するように開けられており、押圧部材として、先端部が先細に形成されたネジを、ネジ孔に対して回転進入させると、先細部が電子部品の上端部に当接するように構成されていることを特徴としている。
【0014】
第2の形態のヒートシンクは、電子部品の上に接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、隣接する放熱フィンの間の放熱板の少なくとも1箇所に、放熱板の電子部品への取付面まで貫通する丸孔が設けられており、丸孔は、該丸孔の軸線に垂直な方向の断面を軸線方向に電子部品に投影した時に、断面の一部が電子部品に重なると共に、軸線の延長線が電子部品の上端部の外側に達するように開けられており、押圧部材として、先端部が先細に形成されると共に基部にネジが形成されたロッドを、ヒートシンクの上部に装着可能で、装着状態で丸孔に軸線が一致するネジ孔を備えた治具に挿入して、ロッドの先端部を丸孔に挿入し、基部をネジ孔に螺着させ、ネジ孔に対してロッドを回転進入させると、先細部が電子部品の上端部に当接するように構成されていることを特徴としている。
【0015】
第3の形態のヒートシンクは、電子部品の上に前記接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、放熱板の短手方向の幅は電子機器の幅よりも小さく形成されており、放熱板の長手方向の側面であって、電子部品の端部の近傍の少なくとも1箇所に、軸穴が設けられており、押圧部材として、軸穴に挿入される回転軸を備えたカムを、回転軸を軸穴に挿入して回転させると、カムが電子部品の側面に当接するように構成されていることを特徴としている。
【0016】
第4の形態のヒートシンクは、電子部品の上に接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、押圧部材として、放熱板側に押出部、放熱フィン側に操作部が形成されたロッドを、ヒートシンクの上部に装着可能な治具に設けられた、軸線が垂直方向の軸孔に回転可能に取り付け、治具を前記ヒートシンクに装着状態でロッドを操作部によって回転させると、押出部が電子部品の側面に当接するように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本出願によれば、回路基板上に実装された電子部品にヒートシンクが接着剤によって強固に固着されている場合でも、接着剤に剪断力を印加することによって接着力を弱めることができるので、容易にヒートシンクを電子部品から分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は基板上に実装された2つの形態の電子部品の上に接着層を介してヒートシンクを取り付ける状態を示すものであり、左側は電子部品の上に固着されたヒートスプレッダに接着層を介してヒートシンクが取り付けられる第1の取付形態であり、右側は電子部品が全面樹脂モールドされて樹脂モールドの上にヒートシンクが接着層を介して直接取り付けられる第2の取付形態であり、(b)は第1の取付形態の側面図、(c)は第2の取付形態の側面図である。
【図2】本出願の第1の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンクを示すものであり、(a)は一実施例の側面図、(b)は(a)の要部拡大断面図、(c)は(a)の一実施例の平面図、(d)は第1の実施例のヒートシンクの分離方法に使用するイモネジの斜視図である。
【図3】本出願の第1の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンクを示すものであり、(a)は別の実施例の平面図、(b)は第1の変形例の側面図、(c)は(b)の一要部拡大断面面である。
【図4】本出願の第1の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンクを示すものであり、(a)は第2の変形例の側面図、(b)は(a)の状態からイモネジが回転挿入された状態を示す(a)の要部拡大断面図である。
【図5】本出願の第1の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンクを示すものであり、(a)は第3の変形例の側面図、(b)は(a)の要部拡大断面図である。
【図6】本出願の第1の実施例のヒートシンクの分離方法に使用するイモネジの先端部の形状と電子部品側への水平方向の押圧力の関係を説明するものであり、(a)はイモネジが電子部品に対して垂直で先端部の先細部のなす角度が90°の場合、(b)はイモネジが電子部品に対して垂直で先端部の先細部のなす角度が120°の場合、(c)はイモネジが電子部品に対して45°で進入し、先端部の先細部のなす角度が90°の場合、(d)はイモネジが電子部品に対して60°で先端部の先細部のなす角度が120°の場合の押圧力を示すものである。
【図7】本出願の第2の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンクを示すものであり、(a)は治具装着前のヒートシンクの側面図、(b)は治具装着後のヒートシンクの側面図である。
【図8】本出願の第3の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンクを示すものであり、(a)はカム型押圧子の取り付け前の斜視図、(b)は(a)の側面図、(c)はカム型押圧子の動作を示す側面図である。
【図9】(a)は図8(a)〜(c)に示したカム型押圧子の拡大斜視図、(b)は図8(a)に示したヒートシンクの一実施例の平面図である。
【図10】本出願の第4の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンクを示すものであり、(a)は第4の実施例の方法を実施するのに使用する治具の第1の形態の斜視図、(b)は(a)に示した押し出しアームの長さの異なるものをロッドに取り付ける様子を説明する組立斜視図、(c)は(a)の治具をヒートシンクに取り付けた状態の平面図である。
【図11】本出願の第4の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンクを示すものであり、(a)は第4の実施例の方法を実施するのに使用する治具の第2の形態の斜視図、(b)は(a)の治具をヒートシンクに取り付けた状態の平面図である。
【図12】1本出願の第4の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンクを示すものであり、(a)は第4の実施例の方法を実施するのに使用する治具の第3の形態の要部斜視図、(b)は(a)の治具をヒートシンクに取り付けた状態の部分平面図、(c)は治具の第3の形態によって接着層に印加される剪断力と引っ張り力を説明する部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。
【0020】
まず、図1を用いてプリント基板1上に実装された発熱する電子部品にヒートシンク10が取り付けられる状態について説明する。電子回路部品、例えばICパッケージに、ヒートシンク10を取り付ける形態としては、図1(a)に示されるように2種類の形態がある。第1の取付形態は、図1(a)の左側に示されるように、電子部品3の上にヒートスプレッダ4が固着されており、このヒートスプレッダ4の上に接着剤や接着シートなどの接着層5を介してヒートシンク10が取り付けられる形態である。第2の取付形態は、図1(a)の右側に示されるように、全面が樹脂モールドされた電子部品6の上に、接着剤や接着シートなどの接着層5を介してヒートシンク10が直接取り付けられる形態である。接着層5は熱伝導性を備えており、両形態とも、ヒートシンク10は二点鎖線で示す位置に取り付けられる。
【0021】
図1(b)は第1の取付形態の側面図であり、電子部品3は金ボールなどの導電部材や接合端子ランド(パッド)によってプリント基板1の配線パターンに接続されている。また、図1(c)は第2の取付形態の側面図であり、この場合も電子部品6は金ボールなどの導電部材や接合端子ランド(パッド)によってプリント基板1の配線パターンに接続されている。ヒートシンク10は、放熱性の高いアルミニウムもしくは銅を材料とし、表面積を広くするために、ベース板11の上に薄板を多数突設させた平行フィン12を備えている。ベース板11の上に溝を切ってピン状の突起が多数並んだピンフィン形状のヒートシンクもある。どちらの形状においても、電子部品3,6と密着するベース板11は、密着面の平面度を保つために剛性があると共に、ある程度の厚みがある。
【0022】
図2は、本出願の第1の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンクを示すものである。なお、以下に説明する実施例では、図1(b)に示した第1の取付形態の電子部品3からヒートシンク10を分離する方法について説明する。第2の取付形態の電子部品6からヒートシンク10を分離する方法については、以下に説明するヒートスプレッダ4を全面樹脂モールドされた電子部品6に置き換えれば良いだけであるので、その説明を省略する。
【0023】
図2(a)は、プリント基板1に実装された電子部品3に固着されたヒートスプレッダ4に接着層5を介して、一実施例のヒートシンク10が取り付けられた状態を示すものである。ヒートシンク10には、フィン12の部分にたて孔13が設けられており、このたて孔13に連通するネジ孔14がベース板11に設けられている。たて孔13には、押圧部材として、図2(d)に示すような頭部に六角穴22が設けられたイモネジ20が挿入される。イモネジ20の先端部は先細部21となっている。なお、フィン12の間隔が大きい場合には、たて孔13が設けられない場合もある。
【0024】
図2(b)は、図2(a)の要部を拡大して示すものである。ヒートシンク10に設けるネジ孔14は、このネジ孔14の軸線CLに垂直な方向の断面を、軸線CL方向にヒートスプレッダ4に投影(第2の取付形態では電子部品3に投影)した時に、この断面の一部がヒートスプレッダ4に重なる。更に、ネジ孔14の軸線CLの延長線はヒートスプレッダ4の上端部4aの外側(第2の取付形態では電子部品3の上端部の外側)に達するように、ネジ孔14は開けられている。
【0025】
この結果、先細部21を有するイモネジ20をネジ孔14に挿入し、六角レンチを六角孔22に差し込んで回転させ、先細部21をネジ孔14から突出させていくと、先細部21がヒートスプレッダ4の上端部4aに当接する。この状態が図2(b)に示される状態である。この状態から更にイモネジ20を回転させて先細部21を矢印F方向に移動させると、ヒートスプレッダ4は先細部21に押されて矢印L方向に移動させられあ、ベース板11は矢印L方向とは逆の矢印R方向に移動する。このようなヒートスプレッダ4とベース板11の移動により、接着層5には剪断力が作用する。
【0026】
一般に、接着層5の接着強度は、引っ張り強度より剪断強度の方が低い場合が多い。そして、電子部品3に接着されたヒートスプレッダ4は、水平方向に面が広く上下方向に厚みが少ない。このため、接着層5は水平の剪断方向に外力を印加した方が、ヒートスプレッダ4への機械的ストレスの影響を抑制しつつ、より安全に接着層5による接着力を低下上げさせてヒートシンク10を分離することが可能と考えられる。
【0027】
ヒートシンク10に設けるたて孔13とネジ孔14の組は1箇所でも良いが、この実施例では図2(c)に示すように、ヒートシンク10の1つの辺に対して2箇所にたて孔13とネジ孔14の組を設けている。たて孔13とネジ孔14の組を2箇所に設ければ、接着層5に平行な大きな剪断力を作用させることができる。また、図3(a)に示す別の実施例のように、ヒートシンク10の対向する辺に対して対角線方向の2箇所にたて孔13とネジ孔14の組を設ければ、接着層5に回転方向の剪断力を作用させることができる。
【0028】
図3(b)は、図2(a)から図3(a)で説明した第1の実施例の第1の変形例のヒートシンク10Aを示すものである。第1の実施例のヒートシンク10では、フィン12の部分にたて孔13が設けられており、このたて孔13に連通するネジ孔14がベース板11に設けられていた。一方、第1の変形例のヒートシンク10Aでは、フィン12の部分に斜行孔15が設けられており、この斜行孔15に連通するネジ孔16がベース板11に設けられている。斜行孔15に、押圧部材として、図2(d)に示すような頭部に六角穴22が設けられたイモネジ20が挿入されるのは同様である。
【0029】
図3(c)は、図3(b)の要部を拡大して示すものである。ヒートシンク10Aに設ける斜行孔15は、この斜行孔15の軸線CLに垂直な方向の断面を、軸線CL方向にヒートスプレッダ4に投影(第2の取付形態では電子部品3に投影)した時に、この断面の一部がヒートスプレッダ4に重なる。更に、斜行孔15の軸線CLの延長線はヒートスプレッダ4の上端部4aの外側(第2の取付形態では電子部品の外側)に達するように、斜行孔15は開けられている。
【0030】
この結果、先細部21を有するイモネジ20を斜行孔15に挿入し、六角レンチを六角孔22に差し込んで回転させ、先細部21を斜行孔15から突出させていくと、先細部21がヒートスプレッダ4の上端部4aに当接する。そして、更にイモネジ20を回転させて先細部21を矢印F方向に移動させると、ヒートスプレッダ4は先細部21に押されて矢印L方向に移動させられ、ベース板11は矢印L方向とは逆の矢印R方向に移動する。このようなヒートスプレッダ4とベース板11の移動により、接着層5には剪断力が作用する。
【0031】
図4(a)は本出願の第1の実施例の第2の変形例のヒートシンク10Bの構成を示すものである。第2の変形例のヒートシンク10Bにおいても、第1の実施例のヒートシンク10と同様に、フィン12の部分にたて孔13が設けられており、このたて孔13に連通するネジ孔14がベース板11に設けられている。第2の変形例のヒートシンク10Bが第1の変形例のヒートシンク10と異なる点は、ネジ孔14の電子部品側の開口部に、開口部を塞ぐように薄板部材17が設けられている点である。薄板部材17の形状は正方形でも円形でも良く、その面積は開口部の数倍程度あれば良い。薄板部材17の設置は、電子部品が再利用される場合を想定したものであり、ヒートスプレッダ4にイモネジ20による擦過傷が付かないようにするためのものである。
【0032】
薄板部材17は柔らかい金属で構成されており、たて孔13に押圧部材として前述のイモネジ20が挿入され、六角レンチによって回転させてネジ孔14内を移動させると、薄板部材17はイモネジ20の先細部21が当接によって変形する。イモネジ20を更に回転させて先細部21をネジ孔14から突出させていくと、先細部21によって変形した状態の薄板金属17がヒートスプレッダ4の上端部4aに当接する。この状態が図4(b)に示される。この状態から更にイモネジ20を回転させて先細部21を矢印F方向に移動させると、ヒートスプレッダ4は薄板金属17に押されて矢印L方向に移動させられ、ベース板11は矢印L方向とは逆の矢印R方向に移動する。このようなヒートスプレッダ4とベース板11の移動により、接着層5には剪断力が作用する。このように、イモネジ20の先端部21とヒートスプレッダ4の上端部4aとの間に薄板金属17を挟むと、薄板金属17がクッション材となり、ヒートスプレッダ4へのイモネジ20の当たりが柔らかくなって、ヒートスプレッダ4の損傷が防止される。
【0033】
図5(a)は本出願の第1の実施例の第3の変形例のヒートシンク10Cの構成を示すものであり、図5(b)は(a)の要部断面を示している。第3の変形例のヒートシンク10Cにおいても、第1の実施例のヒートシンク10と同様に、フィン12の部分にたて孔13が設けられており、このたて孔13に連通するネジ孔14がベース板11に設けられている。第3の変形例のヒートシンク10Cが第1の変形例のヒートシンク10と異なる点は、ネジ孔14の電子部品側の開口部の周囲にテーパ部18が形成されている点である。第3の変形例では、ヒートスプレッダ4の上面部とベース板11との間にテーパ部18があるので、このテーパ部18に楔などを挿入することによりヒートシンク10Cを分離し易くなる。
【0034】
図6(a)〜(d)は本出願の第1の実施例のヒートシンクの分離方法に使用するイモネジ20の先細部21の形状とヒートスプレッダ4への水平方向の押圧力の関係を説明するものである。まず、図6(a)は、イモネジ20がヒートスプレッダ4に対して垂直に移動し、先細部21のなす角度が90°の場合に、イモネジ20からヒートスプレッダ4に与えられる押圧力を示している。また、図6(b)は、イモネジ20がヒートスプレッダ4に対して垂直に移動し、先細部21のなす角度が120°の場合に、イモネジ20からヒートスプレッダ4に与えられる押圧力を示している。このように、ネジ孔14がヒートシンク10に対して垂直な場合は、先細部21のなす角度が小さいほどヒートスプレッダ4を水平方向に押す力が大きい。
【0035】
次に、イモネジ20がヒートスプレッダ4に対して斜めに移動する場合について説明する。図6(c)はイモネジ20がヒートスプレッダ4に対して45°で移動し、先細部21のなす角度が90°の場合に、イモネジ20からヒートスプレッダ4に与えられる押圧力を示している。また、図6(d)はイモネジ20がヒートスプレッダ4に対して60°で移動し、先細部21のなす角度が120°の場合に、イモネジ20からヒートスプレッダ4に与えられる押圧力を示している。このように、先細部21のなす角度が大きい場合は斜行孔16の水平方向からの傾斜角度を小さくすれば、イモネジ20からヒートスプレッダ4に与えられる押圧力を大きくすることができる。なお、イモネジ20の先細部21は球面状とすることも可能である。
【0036】
通常のイモネジは、標準締めつけトルクにおいて約200MPa(N/mm2)の軸応力を発生する。また、一般に接着剤の接着強度は、引張強度より剪断強度の方が低い場合が多く、想定する接着層の剪断強度は、数MPa〜数十MPa程度であるのでイモネジによる押圧力も十分である。例えば、一液性室温硬化または加熱硬化型の熱伝導接着剤のカタログ値の例で、引張強度5.1〜5.4MPaに対して剪断強度は2.0〜2.6MPa相当である(東レ・ダウコーニングおよび信越シリコーンのカタログデータより)。かなり強固な接着層の剥離のためには、押圧子であるイモネジの配置位置を、図2(c)や図3(a)に示すように複数箇所にして、それぞれねじ込む形態とすることもできる。この場合、接着層剥離のための力点を分散して印加することで大面積の接着層をより簡単に剥離できる効果をもたらす。
【0037】
図7(a)は、本出願の第2の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンク110を示すものである。ヒートシンク110は図2(a)に示した第1の実施例のヒートシンク10と同様に、プリント基板1に実装された電子部品3に固着されたヒートスプレッダ4に接着層5を介して取り付けられている。第2の実施例のヒートシンク110が第1の実施例のヒートシンク10と異なる点は、フィン12の部分に設けられたたて孔13が、そのまま連続してベース板11にも設けられている点のみである。
【0038】
第1の実施例のヒートシンク10には、たて孔13に押圧部材としてイモネジ20が挿入されたが、第2の実施例のヒートシンク110には、押圧子としてイモネジ20の代わりに、クランプ治具30に回転自在に取り付けられたロッド35が挿入される。クランプ治具30は、ヒートシンク110の全長と同じ長さを有するフレーム31、フレーム31の両端部に取り付けられた可撓性を備えた取付脚32、及びフレーム31に設けられたネジ孔34に挿入されて回転により下降するロッド35とを備えている。取付脚32の先端部にはフック部33がある。ロッド35は、六角穴付のヘッド部36、ヘッド部36に隣接するネジ部37、及び先端部にある先細部38から構成され、ネジ部37がネジ孔34に螺着されており、先細部38がヒートシンク110のたて孔13に挿入されるようになっている。ヘッド部36にはボルト状の頭部を与えて六角穴を省略しても良い。
【0039】
図7(b)は、クランプ治具30がヒートシンク110に装着された状態を示すものである。クランプ治具30をヒートシンク110に取り付ける際には、ロッド35の先細部38をフィン12のたて孔13に挿入した状態で押し下げる。すると、可撓性を有する取付客が破線で示すように広がり、フレーム31がフィン12の上に載置されると、フック部33がベース板11の底部に噛み合って、クランプ治具30がヒートシンク110に固定される。この状態でロッド35のヘッド部36を回転させると、ロッド35が下降し、ロッド35の先細部38がヒートスプレッダ4の状端部4aに当接し、ヒートスプレッダ4に押圧力を加える。
【0040】
ロッド35の先細部38がヒートスプレッダ4の状端部4aに当接し、接着層5に剪断力が印加される状態は、図2(b)に示したイモネジ20をロッド35に置き換えた状態と同じであるので、これ以上の説明を省略する。2つのクランプ治具30を同じ向きに使用して、ロッド35の位置を図2(c)に示したイモネジ20の位置と同じにする分離方法や、反対向きに使用して、ロッド35の位置を図3(a)に示したイモネジ20の位置と同じにする分離方法も可能である。クランプ治具30を用いれば、ヒートシンク110にはたて孔13だけの加工で済むのでヒートシンク110への加工を最小限とできる。また、たて孔13の加工はリワーク交換が必要になった際に後加工することもできる。
【0041】
図8(a)は、本出願の第3の実施例のヒートシンクの分離方法及びこれに使用する第1の取付形態のヒートシンク210を示すものである。この実施例でもヒートシンク210は、ベース板11の上にフィン12が突設されて構成されている。ヒートシンク210は、電子部品3の上に固着されたヒートスプレッダ4に接着層5を介して取り付けられるが、ベース板11の短手方向の幅WSは電子機器3の幅WLより小さく形成されている。なお、電子機器3とヒートスプレッダ4とは同じ幅WLを有するものとする。また、ヒートシンク210のベース板11の長手方向の側面には、ヒートスプレッダ4の端部の近傍の少なくとも1箇所に、軸穴19が設けられており、軸穴19に押圧部材としてカム型押圧子40が挿入されるようになっている。
【0042】
カム型押圧子40は、図9(a)に示すように回転軸41とカム部42とを備えている。カム部42には回転軸41と同軸の六角穴43があり、カム部42の外周部にはカム軸41の軸線に対して垂直な押圧面を有する押し出し部44がある。カム型押圧子40は、ヒートシンク210を電子部品3から取り外す時に図8(a)に示すように、カム軸41が軸穴19に挿入される。図8(b)は、軸穴19にカム型押圧子40が取り付けられた状態のヒートシンク210を側面から見たものである。軸穴19は、カム型押圧子40を取り付けた時にカム部42がヒートスプレッダ4に当接せず、カム型押圧子40を回転させた時に、押し出し部44がヒートスプレッダ4に当接するように、ベース板11に設けられる。
【0043】
図8(c)は、カム型押圧子40の動作を示すものである。カム型押圧子40は、ベース板11に取り付けた時には、例えば二点鎖線で示す位置にあり、六角穴43に六角レンチを差し込んでカム型押圧子40を回転させると、押し出し部44がヒートスプレッダ4の上端部4aに当接する。この状態からカム型押圧子40を更に回転させると、ヒートスプレッダ4は押し出し部44に押されて矢印M方向に移動しようとし、ベース板11は矢印M方向とは逆の矢印N方向に移動しようとする。このようなヒートスプレッダ4とベース板11の移動により、接着層5には剪断力が作用する。ベース板11には軸穴19を複数個所に設けておき、必要に応じてカム型押圧子40を取り付けて接着層5には剪断力を作用させることができる。図9(b)は、ヒートスプレッダ4の対角線方向にカム型押圧子40を取り付けて接着層5に回転方向の剪断力を作用させる例を示すものである。
【0044】
図10(a)から(c)は、本出願の第4の実施例のヒートシンクの分離方法に使用するクランプレバー治具50の第1の形態を示すものである。第4の実施例の分離方法に使用するヒートシンク310は、図8(a)に示したヒートシンク210をそのまま使用することもできるが、ヒートシンク210に軸穴19を設けない状態のものを使用することができる。第4の実施例に使用するヒートシンク310は、第3の実施例に使用するヒートシンク210と同様に、電子部品3の上に固着されたヒートスプレッダ4に接着層5を介して取り付けられる。また、ベース板11の寸法には特に制約はなく、ヒートスプレッダ4の外形よりも大きければ良い。
【0045】
クランプレバー治具50は、ヒートシンク310の全長と同じ長さを有するフレーム51、フレーム51の一方の端部に取り付けられた可撓性を備えた取付脚52と他方の端部に取り付けられた筒状部54、及び筒状部54に保持されるロッド55とを備えている。取付脚52の先端部にはフック部53がある。ロッド55は、その上端部に操作レバー56が設けられており、下端部に押し出しアーム57が取り付けられている。押し出しアーム57は、図10(b)に示すように、ロッド55の下端部にネジ7によって着脱可能に構成すれば、ヒートシンク310の端部からヒートスプレッダ4の端部までの距離に応じて最適の長さのものを取り付けることができる。
【0046】
図10(c)は、本出願の第4の実施例のヒートシンクの分離方法を説明するものであり、クランプレバー治具50がヒートシンク310に装着された状態を示している。クランプレバー治具50をヒートシンク310に取り付ける際には、ロッド55の押し出しアーム57の側面を、ヒートシンク310の一方の端部に沿わせた状態で押し下げる。すると、可撓性を有する取付脚52が湾曲し、フレーム51がフィン12の上に載置されると、フック部53がベース板11の底部に噛み合って、クランプレバー治具50がヒートシンク310に固定される。この状態でロッド55の操作レバー56を回転させると、押し出しアーム57が回転して、押し出しアーム57の先端部がヒートスプレッダ4の側面に当接する。押し出しアーム57は、ヒートシンク310の端部からヒートスプレッダ4の端部までの距離よりも長いものをロッド55に取り付けておく。
【0047】
押し出しアーム57の先端部がヒートスプレッダ4の側面に当接した状態から更に操作レバー56を回転させると、ヒートスプレッダ4の側面が押し出しアーム57の先端部によって押され、接着層5に剪断力が印加される。2つのクランプレバー治具50を同じ向きに使用して、押し出しアーム57の先端部がヒートスプレッダ4の側面に当接する位置を図2(c)に示したイモネジ20の位置と同じにする分離方法や、反対向きに使用して、押し出しアーム57の先端部がヒートスプレッダ4の側面に当接する位置を図3(a)に示したイモネジ20の位置と同じにする分離方法も可能である。
【0048】
図11(a)は、本出願の第4の実施例のヒートシンクの分離方法に使用するクランプレバー治具50の第2の形態を示すものであり、ロッド55に取り付ける押し出しアーム57の代わりに押し出しカム58を取り付けたものである。また、図11(b)は図11(a)のクランプレバー治具50をヒートシンク310に取り付けた状態を示すものである。押し出しカム58は、半径が連続的に変化する円板の一部として形成し、最小の半径RSは、ロッド55からヒートスプレッダ4の側面までの距離Dに等しくし、最大の半径RLは、ロッド55に取り付ける最適長さの押し出しアーム57の長さALと同程度とする。
【0049】
第2の形態のクランプレバー治具50は、第1の形態と同様に、押し出しカム58の最小の半径RSの部分をヒートシンク310の一方の端部に沿わせた状態で押し下げてヒートシンク310に取り付ける。そして、ロッド55の操作レバー56を回転させると、押し出しカム58が回転して、押し出しカム58の最小の半径RSの部分がヒートスプレッダ4の側面に当接する。この状態から更に操作レバー56を回転させると、ヒートスプレッダ4の側面が、次第に半径が大きくなる押し出しカム58の外周部に押され、接着層5に剪断力が印加される。第2の形態のクランプレバー治具50も複数個使用して、接着層に平行な剪断力や回転方向の剪断力を印加することができる。
【0050】
図12(a)は、本出願の第4の実施例のヒートシンクの分離方法に使用するクランプレバー治具50の第3の形態を示すものであり、ロッド55に取り付ける押し出しカム59として、第2の形態の押し出しカム58の、半径の長い側の肉厚を大きくしたものである。第2の形態の押し出しカム58は図12に二点鎖線で示す。この実施例では押し出しカム59の肉厚一定部59aの肉厚Tに対して、肉厚拡大部59bの最大の肉厚を2Tとしている。
【0051】
第3の形態の押し出しカム59における肉厚拡大部59bは、図12(b)に示すように、ラインPより後ろの半径が大きい側の部分である。ラインPは、クランプレバー治具50をヒートシンク310に取り付けて操作レバー56を回転させ、押し出しカム59の最小の半径部分59Sがヒートスプレッダ4の側面に当接した時に、まだヒートシンク310に重なっていない部分の先端部を通る半径である。ラインPより前側の半径が小さい部分は肉厚一定部59aである。
【0052】
図12(b)に示す状態から更に操作レバー56を回転させると、図12(c)に示すように、ヒートスプレッダ4の側面が、次第に半径が大きくなる押し出しカム59の肉厚一定部59aの外周部59Eに押される。この結果、ヒートスプレッダ4は外周部59Eに押されて矢印L方向に移動させられ、ベース板11は矢印L方向とは逆の矢印R方向に移動する。また、同時に、ベース板11の底面が、次第に肉厚が大きくなる押し出しカム59の肉厚拡大部59bによって押し上げられ、矢印Uで示す方向に移動させられる。このようなヒートスプレッダ4とベース板11の移動により、接着層5には剪断力と上下方向の引っ張り力が作用するので、ヒートシンクを容易に分離させることができる。第3の形態のクランプレバー治具50も複数個使用して、接着層に平行な剪断力や回転方向の剪断力を印加することができる。
【0053】
更に、第2、第3の形態の押し出しカム58、59も、第1の形態の押し出しアーム57と同様にロッド55に対して着脱可能に構成し、ヒートシンク310の端部からヒートスプレッダ4の端部までの距離に応じた最適の最小半径と最大半径の円板を用意できる。
【0054】
以上、本出願を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本出願の容易な理解のために、本出願の具体的な形態を以下に付記する。
【0055】
(付記1) 基板上に実装された電子部品に、熱伝導性の接着層を介して取り付けられているヒートシンクを、前記電子部品から分離する方法であって、
前記ヒートシンク側から前記電子部品側に作用する押圧部材により、前記電子部品の横方向に前記ヒートシンクと前記電子部品を相対移動させる第1の工程と、
前記ヒートシンクと前記電子部品の相対移動により、前記接着層に剪断力を作用させて前記接着層の接着力を低下させる第2の工程とを備えることを特徴とするヒートシンクの分離方法。
(付記2) 付記1に記載のヒートシンクを電子部品から分離する方法に使用するヒートシンクであって、
前記電子部品の上に前記接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、
隣接する前記放熱フィンの間の放熱板の少なくとも1箇所に、前記放熱板の前記電子部品への取付面まで貫通するネジ孔が設けられており、
前記ネジ孔は、該ネジ孔の軸線に垂直な方向の断面を前記軸線方向に前記電子部品に投影した時に、前記断面の一部が前記電子部品に重なると共に、前記軸線の延長線が前記電子部品の上端部の外側に達するように開けられており、
前記押圧部材として、先端部が先細に形成されたネジを、前記ネジ孔に対して回転進入させると、前記先細部が前記電子部品の上端部に当接するように構成されていることを特徴とするヒートシンク。
(付記3) 付記1に記載のヒートシンクを電子部品から分離する方法に使用するヒートシンクであって、
前記電子部品の上に前記接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、
隣接する前記放熱フィンの間の放熱板の少なくとも1箇所に、前記放熱板の前記電子部品への取付面まで貫通する丸孔が設けられており、
前記丸孔は、該丸孔の軸線に垂直な方向の断面を前記軸線方向に前記電子部品に投影した時に、前記断面の一部が前記電子部品に重なると共に、前記軸線の延長線が前記電子部品の上端部の外側に達するように開けられており、
前記押圧部材として、先端部が先細に形成されると共に基部にネジが形成されたロッドを、前記ヒートシンクの上部に装着可能で、装着状態で前記丸孔に軸線が一致するネジ孔を備えた治具に挿入して、前記ロッドの先端部を前記丸孔に挿入し、前記基部を前記ネジ孔に螺着させ、前記ネジ孔に対して前記ロッドを回転進入させると、前記先細部が前記電子部品の上端部に当接するように構成されていることを特徴とするヒートシンク。
(付記4) 前記ネジ孔が前記放熱板の垂直方向に設けられていることを特徴とする付記2又は3に記載のヒートシンク。
(付記5) 前記ネジ孔が前記放熱板に対して斜め方向に設けられていることを特徴とする付記2又は3に記載のヒートシンク。
【0056】
(付記6) 前記ネジ孔が前記電子部材の1つの辺方向に複数個設けられていることを特徴とする付記2から5の何れかに記載のヒートシンク。
(付記7) 前記ネジ孔が前記電子部材の対角線方向に複数個設けられていることを特徴とする付記2から5の何れかに記載のヒートシンク。
(付記8) 前記放熱板は、前記ネジ孔よりも内部側から外部側に向かって、その肉厚が次第に小さくなるように形成されていることを特徴とする付記2から7の何れかに記載のヒートシンク。
(付記9) 前記先細部が円錐形状になっていることを特徴とする付記2から8の何れかに記載のヒートシンク。
(付記10) 前記先細部が半球状になっていることを特徴とする付記2から8の何れかに記載のヒートシンク。
【0057】
(付記11) 前記ネジ孔の前記電子部品側の開口部及び該開口部の周辺部に、前記開口部を塞ぐ柔軟な材料で構成された薄板部材が取り付けられていることを特徴とする付記1から10の何れかに記載のヒートシンク。
(付記12) 付記1に記載のヒートシンクを電子部品から分離する方法に使用するヒートシンクであって、
前記電子部品の上に前記接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、
前記放熱板の短手方向の幅は前記電子機器の幅よりも小さく形成されており、
前記放熱板の長手方向の側面であって、前記電子部品の端部の近傍の少なくとも1箇所に、軸穴が設けられており、
前記押圧部材として、前記軸穴に挿入される回転軸を備えたカムを、前記回転軸を前記軸穴に挿入して回転させると、前記カムが前記電子部品の側面に当接するように構成されていることを特徴とするヒートシンク。
(付記14) 前記カムは、180°回転した時に前記電子部品の端面に当接する爪を備えた爪付きカムであることを特徴とする付記13に記載のヒートシンク。
(付記15) 前記回転軸にはその軸線方向に多角形の駆動穴が開けられており、前記カムは前記駆動穴に外部からレンチを差し込んで回転させられることを特徴とする付記13又は14に記載のヒートシンク。
【0058】
(付記16) 付記1に記載のヒートシンクを電子部品から分離する方法に使用するヒートシンクであって、
前記電子部品の上に前記接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、
前記押圧部材として、前記放熱板側に押出部、前記放熱フィン側に操作部が形成されたロッドを、前記ヒートシンクの上部に装着可能な治具に設けられた、軸線が垂直方向の軸孔に回転可能に取り付け、前記治具を前記ヒートシンクに装着状態で前記ロッドを前記操作部によって回転させると、前記押出部が前記電子部品の側面に当接するように構成されていることを特徴とするヒートシンク。
(付記17) 前記押出部が、前記ロッドに垂直方向に設けられた所定長さを有するレバーであることを特徴とする付記16に記載のヒートシンク。
(付記18) 前記押出部が、前記ロッドに垂直方向に突設された板状部材から構成され、前記板状部材は前記ロッドに対して半径が次第に大きくなる円板の一部であることを特徴とする付記16に記載のヒートシンク。
(付記19) 前記板状部材は、前記半径が次第に大きくなるにつれて、前記板状部材の底面からの高さが高くなることを特徴とする付記18に記載のヒートシンク。
(付記20) 前記電子部品の上面部にヒートスプレッダが一体的に固着されており、前記ヒートシンクは前記ヒートスプレッダに前記接着層を介して取り付けられており、前記電子部品の上端部が前記ヒートスプレッダの上端部となっていることを特徴とする付記2から19の何れかに記載のヒートシンク。
【符号の説明】
【0059】
1 プリント基板
3 電子部品
4 ヒートスプレッダ
5 接着層
6 全面樹脂モールドの電子部品
10,110,210,310 ヒートシンク
11 ベース板
13 たて孔
14,16 ねじ孔
15 斜行孔
17 薄板部材
18 テーパ部
19 軸穴
20 イモネジ
21 先細部
30 クランプ治具
35 押圧子(ロッド)
36 六角穴付ヘッド部
38 先細部
40 カム型押圧子
41 回転軸
42 カム部
44 押し出し部
50 クランプレバー治具
57 押し出しアーム
58 押し出しカム
59 押し出しカム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に実装された電子部品に、熱伝導性の接着層を介して取り付けられているヒートシンクを、前記電子部品から分離する方法であって、
前記ヒートシンク側から前記電子部品側に作用する押圧部材により、前記電子部品の横方向に前記ヒートシンクと前記電子部品を相対移動させる第1の工程と、
前記ヒートシンクと前記電子部品の相対移動により、前記接着層に剪断力を作用させて前記接着層の接着力を低下させる第2の工程とを備えることを特徴とするヒートシンクの分離方法。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートシンクを電子部品から分離する方法に使用するヒートシンクであって、
前記電子部品の上に前記接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、
隣接する前記放熱フィンの間の放熱板の少なくとも1箇所に、前記放熱板の前記電子部品への取付面まで貫通するネジ孔が設けられており、
前記ネジ孔は、該ネジ孔の軸線に垂直な方向の断面を前記軸線方向に前記電子部品に投影した時に、前記断面の一部が前記電子部品に重なると共に、前記軸線の延長線が前記電子部品の上端部の外側に達するように開けられており、
前記押圧部材として、先端部が先細に形成されたネジを、前記ネジ孔に対して回転進入させると、前記先細部が前記電子部品の上端部に当接するように構成されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項3】
請求項1に記載のヒートシンクを電子部品から分離する方法に使用するヒートシンクであって、
前記電子部品の上に前記接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、
隣接する前記放熱フィンの間の放熱板の少なくとも1箇所に、前記放熱板の前記電子部品への取付面まで貫通する丸孔が設けられており、
前記丸孔は、該丸孔の軸線に垂直な方向の断面を前記軸線方向に前記電子部品に投影した時に、前記断面の一部が前記電子部品に重なると共に、前記軸線の延長線が前記電子部品の上端部の外側に達するように開けられており、
前記押圧部材として、先端部が先細に形成されると共に基部にネジが形成されたロッドを、前記ヒートシンクの上部に装着可能で、装着状態で前記丸孔に軸線が一致するネジ孔を備えた治具に挿入して、前記ロッドの先端部を前記丸孔に挿入し、前記基部を前記ネジ孔に螺着させ、前記ネジ孔に対して前記ロッドを回転進入させると、前記先細部が前記電子部品の上端部に当接するように構成されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項4】
請求項1に記載のヒートシンクを電子部品から分離する方法に使用するヒートシンクであって、
前記電子部品の上に前記接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、
前記放熱板の短手方向の幅は前記電子機器の幅よりも小さく形成されており、
前記放熱板の長手方向の側面であって、前記電子部品の端部の近傍の少なくとも1箇所に、軸穴が設けられており、
前記押圧部材として、前記軸穴に挿入される回転軸を備えたカムを、前記回転軸を前記軸穴に挿入して回転させると、前記カムが前記電子部品の側面に当接するように構成されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項5】
請求項1に記載のヒートシンクを電子部品から分離する方法に使用するヒートシンクであって、
前記電子部品の上に前記接着層を介して取り付けられる放熱板と、該放熱板上に突設された放熱フィンとを備え、
前記押圧部材として、前記放熱板側に押出部、前記放熱フィン側に操作部が形成されたロッドを、前記ヒートシンクの上部に装着可能な治具に設けられた、軸線が垂直方向の軸孔に回転可能に取り付け、前記治具を前記ヒートシンクに装着状態で前記ロッドを前記操作部によって回転させると、前記押出部が前記電子部品の側面に当接するように構成されていることを特徴とするヒートシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−33523(P2012−33523A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169067(P2010−169067)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】