説明

ヒートシンク

【課題】風の流れを阻害する壁面に面して空気取り入れ側が配置されても、放熱面積を犠牲にすることなく、放熱フィン間に十分な空気を導き、低コスト、小型化が可能なヒートシンクを提供する。
【解決手段】上面部5と、垂直面部7と、底面部6とが一体的に形成された断面コの字形の薄板部材からなる放熱フィン4が所定の間隔で複数個並列配置された放熱フィン部と、一方の面に発熱部品が熱的に接続され、他方の面に放熱フィンの底面部が熱的に接続されるベースプレート3とからなるヒートシンクであって、放熱フィンの垂直面部の少なくとも一部に、機械的加工によって形成された開口部8を備え、開口部が所定間隔で、垂直面部の上下方向に沿って形成された複数個からなり、開口部のそれぞれの上端部および下端部の少なくとも一方に、上面部と平行に垂直面部の一部が折り曲げられて一体的に形成された水平面部9,10を備えているヒートシンクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベースプレートと、薄板状の放熱フィンを備えたヒートシンク、特に、風の流れを阻害する壁面に面して空気取り入れ側が配置されるヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲーム機器、パソコン等の電気・電子機器の小型化、高性能化が著しく進み、それに搭載される各種機能を備えた部品が狭い空間に配置されている。その中に、MPU等の発熱部品が含まれ、これらを冷却するための冷却装置も配置される。
【0003】
MPUは、集積度が極めて高くなり、高速で演算、制御等の処理を行うので、多量の熱を放出する。高速で高出力な高集積の部品であるチップ等を冷却するために、ベースプレートおよびベースプレートの面に熱的に接続された複数の放熱フィンを備えたヒートシンクが、放熱フィン間に冷却用の空気を送り込む電動ファンと共に用いられている。
【0004】
上述したように、電気・電子機器の小型化が進むと、その中に搭載される各種機能を備えた部品の配置によって、ヒートシンクの配置に制限を受けることが多くなってくる。
例えば、ベースプレートの上に並列配置された複数の薄板状放熱フィンが熱的に接続されたヒートシンクの、空気取り入れ側に、風の流れを阻害する壁面、または、他の部品が配置されることがある。このような状態においても、ヒートシンクの高い放熱効率が期待される。
【0005】
図9は、従来のヒートシンクを説明する図である。図9(a)は、従来のヒートシンクの平面図である。図9(b)は、従来のヒートシンクの側面図である。図9に示すように、電子部品104の壁面105に面して、ベースプレート上に薄板状の複数の放熱フィン101が熱的に接続されたヒートシンク100が配置されている。即ち、放熱フィン101の空気取り入れ側が電子部品104の壁面に面して配置されている。電子部品104の反対側には、空気を吸引するファン103が取り付けられている。上述したように、このような配置に制限を受けながら、発熱量の多い部品の効率的な冷却が要求される。
【0006】
このような配置で、ファン103を回転させると、電子部品104の壁面105に沿って、空気が矢印で示すように流れて放熱フィン間を通って、ファン103を通過する。複数の放熱フィン101はベースプレート102に垂直に所定間隔で配置されている。従って、放熱フィン101をそのままの状態で配置すると、電子部品104の壁面105に沿った狭い空間を通過する空気は、放熱フィン101間に入り難く、放熱フィンとの間の熱交換が十分に行われることなく、冷却効果が期待できない。
【0007】
そこで、図9(b)に示すように、電子部品104の壁面105に面した側の放熱フィン101の一部を切り取って短くして、放熱フィン101と電子部品104の壁面105の間の空間を広げている。即ち、壁面105に沿って流れる空気は、広がった空間を通って、短くなった放熱フィン間に入りやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−179190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図9を参照して説明した従来のヒートシンクでは、電子部品104の壁面105に沿った空気を、放熱フィン間に導くために放熱フィンの長さを短くしているので、放熱面積が小さくなり、放熱効率が低下するという問題点がある。更に、放熱フィンの放熱面積を犠牲にしても、電子部品104の壁面105に沿って横方向に流れる空気を、縦方向に流れる放熱フィン101間に十分に導くことが難しい。従って、集積度が極めて高くなり、高速で演算、制御等の処理を行い、多量の熱を放出するMPU等を効果的に冷却することが難しくなるという問題点がある。同時に、ヒートシンクは高い放熱効率と共に低コスト、小型化が期待されている。
【0010】
従って、この発明の目的は、従来の問題点を解決して、風の流れを阻害する壁面に面して空気取り入れ側が配置されても、放熱面積を犠牲にすることなく、放熱フィン間に十分な空気を導き、低コスト、小型化が可能な放熱効率に優れたヒートシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上述した従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、電子部品の壁面に面する側の放熱フィンの一部に、押し出し、または、機械加工によって、開口部を形成し、開口部の上端および下端に(折り曲げによって)一体的に形成された水平面を設けると、ベースプレートに垂直方向に複数の板状フィンが積層された積層フィンと実質的に同じ効果が得られる放熱フィンを形成することが出来、放熱フィン間に十分な空気を導くことができることが判明した。
【0012】
即ち、1つの態様として、上面部と、垂直面部と、底面部とが一体的に形成された断面コの字形の薄板部材からなる放熱フィンの垂直面部に、機械的加工によって、所定間隔で、垂直面部の上下方向に沿って形成された複数個の開口部を形成し、開口部のそれぞれの上端部および下端部に、上面部と平行に垂直面部の一部が折り曲げられて一体的に形成された上部水平面部および下部水平面部を備えると、ベースプレートと平行な複数の水平面部が形成されて、実質的に積層フィンと同じものが形成される。このように形成された複数の水平面部が、電子部品の壁面に面する側に配置されると、壁面に沿った空気が容易に水平面部の間を通り、それに引き続いて、垂直に配置された放熱フィンの間を通過して、発熱部品から伝わった熱との間で熱交換をさせることができる。
【0013】
この発明は、上記研究結果に基づいてなされたものであって、この発明のヒートシンクの第1の態様は、垂直に配置された複数の放熱フィンを備えたヒートシンクであって、
前記放熱フィンの端部に開口部を備えたことを特徴とするヒートシンクである。
【0014】
この発明のヒートシンクの第2の態様は、複数の放熱フィンの中央に位置する放熱フィンを除いて前記開口部を備えていることを特徴とする、ヒートシンクである。
【0015】
この発明のヒートシンクの第3の態様は、前記放熱フィンが、前記垂直面部と、前記底面部とが一体的に形成された断面L字形の部材からなり、
前記放熱フィンの前記垂直面部の少なくとも一部に、開口部を備え、前記開口部が所定間隔で、前記垂直面部の上下方向に沿って形成された複数個からなり、前記開口部のそれぞれの上端部および下端部の少なくとも一方に、前記上面部と平行に前記垂直面部の一部が折り曲げられて一体的に形成された水平面部を備えていることを特徴とする、ヒートシンクである。
【0016】
この発明のヒートシンクの第4の態様は、前記放熱フィンが、上面部と、垂直面部と、底面部とが一体的に形成された断面コの字形の部材からなり、
前記放熱フィンの前記垂直面部の少なくとも一部に、開口部を備え、前記開口部が所定間隔で、前記垂直面部の上下方向に沿って形成された複数個からなり、前記開口部のそれぞれの上端部および下端部の少なくとも一方に、前記上面部と平行に前記垂直面部の一部が折り曲げられて一体的に形成された水平面部を備えていることを特徴とする、ヒートシンクである。
【0017】
この発明のヒートシンクの第5の態様は、前記放熱フィンの前記上面部および前記底面部のそれぞれの先端部が、隣接する前記放熱フィンの対応する前記上面部および前記底面部の後端部と接触して複数個並列配置されて、前記放熱フィン部の平らな底面および上面を形成していることを特徴とする、ヒートシンクである。
【0018】
この発明のヒートシンクの第6の態様は、前記放熱フィンの前記開口部の上端部および/または下端部に形成された前記水平面部のそれぞれの先端部が、隣接する前記開口部の対応する前記水平面部の後端部と接触して、前記放熱フィン部の前記平らな底面と平行な平らな水平面を形成していることを特徴とする、ヒートシンクである。
【0019】
この発明のヒートシンクの第7の態様は、前記放熱フィンの前記垂直面の少なくとも一部に形成された前記開口部が、壁面に面して配置される側の、前記放熱フィンの端部に設けられて、前記開口部の前記水平面部に沿って、前記垂直面と直交する方向からの空気流路を形成することを特徴とする、ヒートシンクである。
【0020】
この発明のヒートシンクの第8の態様は、前記開口部のそれぞれの上端部および下端部に、前記上面部と平行に前記垂直面部の一部が折り曲げられて一体的に形成された上部水平面部および下部水平面部を備えていることを特徴とする、ヒートシンクである。
この発明のヒートシンクの第9の態様は、前記放熱フィンの前記上面に先端部に突起部を、前記上面の後端部に前記突起部と対応する切り欠き部をそれぞれ備え、前記放熱フィンの前記突起部が隣接する前記放熱フィンの前記切り欠き部に嵌合して、前記複数の放熱フィンが並列配置されることを特徴とする、ヒートシンクである。
【0021】
この発明のヒートシンクの第10の態様は、前記開口部は、前記壁面に面する側の端部から約1/2の部分に形成され、前記開口部の面積は、前記放熱フィンの全面積の1/10以上であることを特徴とする、ヒートシンクである。
【発明の効果】
【0022】
この発明の1つの態様によると、上面部と、垂直面部と、底面部とが一体的に形成された断面コの字形の薄板部材からなる放熱フィンの垂直面部に、機械的加工によって、所定間隔で、垂直面部の上下方向に沿って形成された複数個の開口部を形成し、開口部のそれぞれの上端部および下端部に、上面部と平行に垂直面部の一部が折り曲げられて一体的に形成された上部水平面部および下部水平面部を備えているので、ベースプレートと平行な複数の水平面部が形成されて、実質的に積層フィンと同じものが形成される。このように形成された複数の水平面部が、電子部品の壁面に面する側に配置されると、壁面に沿った空気が容易に水平面部間を通り、引き続いて、垂直に配置された放熱フィン間を通過して、効果的に熱交換を行うことができる。
【0023】
この発明によると、放熱フィンの垂直面部に形成された開口部によって、垂直面部と一体的に形成された上部水平面部および下部水平面部に、垂直面部から直接熱が伝導されるので、従来の積層フィンのように、別部材である伝熱柱を必要としない。しかも同一部材であるので、垂直面部から上部水平面部9および下部水平面部10への熱の移動は容易である。従って、熱効率に優れた積層フィンを提供することができる。
【0024】
この発明によると、風の流れを阻害する壁面に面して空気取り入れ側が配置されても、放熱面積を犠牲にすることなく、放熱フィン間に十分な空気を導き、低コスト、小型化が可能な放熱効率に優れたヒートシンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1はこの発明のヒートシンクの1つの態様を説明する斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す態様のこの発明のヒートシンクの側面図である。
【図3】図3は、この発明の放熱フィンの1つの態様を説明する斜視図である。
【図4】図4は、開口部の形成方法の一例を説明する図である。
【図5】図5は、図4を参照して説明した、上部片15および下部片16が折り曲げられて形成された開口部を説明する側面図である。
【図6】図6は、図1および図2を参照して説明したこの発明のヒートシンクの1つの態様の平面図である。
【図7】図7は、図6に示すこの発明のヒートシンクを説明する正面図(空気取り入れ側)である。
【図8】図8は、図6に示すこの発明のヒートシンクのA−A断面図である。
【図9】図9は、従来のヒートシンクを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のヒートシンクについて図面を参照しながら詳細に説明する。 この発明のヒートシンクの1つの態様は、垂直に配置された複数の放熱フィンを備えたヒートシンクであって、前記放熱フィンの端部に開口部を備えたことを特徴とするヒートシンクである。上述した複数の放熱フィンの中央に位置する放熱フィンを除いて開口部を備えていてもよい。
【0027】
この発明の放熱フィンは、押し出し材で形成されたフィンであっても、板材を加工して形成されたフィンであってもよい。例えば、放熱フィンが、垂直面部と、底面部とが一体的に形成された断面L字形の部材からなっていても、上面部と、垂直面部と、底面部とが一体的に形成された断面コの字形の部材からなっていてもよい。 上述した放熱フィンの垂直面部の少なくとも一部に形成された開口部を備え、開口部が所定間隔で、垂直面部の上下方向に沿って形成された複数個からなり、開口部のそれぞれの上端部および下端部の少なくとも一方に、上面部と平行に垂直面部の一部が折り曲げられて一体的に形成された水平面部を備えている。
【0028】
以下、断面コの字形の放熱フィンについて説明するが、断面L字形の放熱フィンであっても、押し出し材で成形した放熱フィンであってもよい。
図1はこの発明のヒートシンクの1つの態様を説明する斜視図である。図1に示すように、この発明のヒートシンク1は、熱伝導性に優れた銅、アルミニウム、またはこれらの合金からなる板材によって形成されたベースプレート3と、ベースプレート3の、発熱部品と熱的に接続される面と反対側の面に熱的に接続される、上面部5と、垂直面部7と、底面部6とが一体的に形成された断面コの字形の薄板部材からなる放熱フィン4が所定の間隔で複数個並列配置された放熱フィン部2とからなっている。即ち、放熱フィン4は、ベースプレートの面に垂直に配置されている。
【0029】
更に、この発明のヒートシンクには、放熱フィン4の垂直面部7に、機械的加工によって形成された開口部8を備えている。開口部8は、所定間隔で、垂直面部7の上下方向に沿って形成された複数個からなっている。開口部のそれぞれの上端部および下端部の何れか一方またはそれぞれに、上面部5と平行に垂直面部の一部が折り曲げられて一体的に形成された水平面部9、10(上部水平面部9および下部水平面部10)を備えている。
【0030】
上述した、折り曲げて一体的に形成した水平面部9、10を備えた開口部8は、放熱フィン4の空気取り入れ側における垂直面部に形成される。それ以外の部分は、通常の、上面部5と、垂直面部7と、底面部6とが一体的に形成された断面コの字形の薄板部材からなる放熱フィンである。
【0031】
更に、上面部5と、垂直面部7と、底面部6とが一体的に形成された断面コの字形の薄板部材からなる放熱フィン4の上面部5の前端部に突起部11が一体的に設けられ、後端部には、突起部11に対応する切り欠き部12が設けられている。突起部および切り欠き部はそれぞれ対応する形状および寸法を備えている。放熱フィンを並列配置するとき、放熱フィンの突起部が隣接する放熱フィンの対応する切り欠き部に嵌合わされて、相互に密着して熱的に接続された状態で固定される。
【0032】
図1に示す態様のヒートシンク1では、ベースプレート3の四隅の外側に、それぞれ固定用の孔部17が設けられている。なお、ベースプレートの四隅に固定用の孔部17を設けて、その近傍の放熱フィン4を除去してもよい。放熱フィン4の形状、孔部17の形状および配置は、図1に示すものに限定されることなく、ヒートシンク1の固定方法に従って、適宜変更が可能である。なお、図1に示すように、複数の放熱フィンの中央に位置する放熱フィンを除いて開口部が設けられている。複数の放熱フィンの全てのフィンに開口部を設けてもよい。
【0033】
図2は、図1に示す態様のこの発明のヒートシンクの側面図である。図2に示すように、複数の放熱フィン4の垂直面部7に、折り曲げによって、上部水平面部9および下部水平面部10が一体的に形成された開口部8が縦方向に2個並んで設けられている。なお、四隅の放熱フィンを除去した態様では、手前側の複数の放熱フィン4の垂直面部7に、折り曲げによって、上部水平面部9および下部水平面部10が一体的に形成された開口部8が縦方向に2個並んで設けられ、奥側の複数の放熱フィン4の垂直面部7に、折り曲げによって、上部水平面部9および下部水平面部10が一体的に形成された開口部8が縦方向に2個並んで設けられている。開口部8の上方には、水平面部を伴わない開口部13が設けられている。開口部は全ての放熱フィンに設けられてもよく、複数の放熱フィンの中央に位置する放熱フィンを除いて開口部を設けてもよい。
【0034】
ベースプレート3の固定用の孔部17が設けられて、その近傍の放熱フィン4が除去され、手前側の放熱フィン4の開口部8の大きさと奥側の開口部8の幅は同一であるが長さが異なっている。即ち、奥側の放熱フィン4の開口部8の右側(図中における)の端部は、手前側の放熱フィン4の開口部8の右側の端部と同一位置にあるが、奥側の放熱フィン4の開口部8の左側(図中における)の端部は、一部が除去されている放熱フィン4の左側の端部から更に左側に延伸して、その分だけ、長さが大きくなっている。これに対応して、手前側の放熱フィン4の開口部8に一体的に形成された上部水平面部9および下部水平面部10よりも、奥側の放熱フィン4の開口部8に一体的に形成された上部水平面部9および下部水平面部10の方が、長さが大きくなっている。
開口部は、壁面に面する側の端部から約1/2の部分に形成され、開口部の面積は、放熱フィンの全面積の1/10以上であることが好ましい。
【0035】
図3は、この発明の放熱フィンの1つの態様を説明する斜視図である。図1および図2に示す態様では、製造を容易にするために、放熱フィンの上面部5の一部が切り取られているが、この態様では、放熱フィンの上面部は、切り取り部が無く、平らな面からなっている。図3(a)に示すように、上面部5と、垂直面部7と、底面部6とが一体的に形成された断面コの字形の薄板部材からなる放熱フィン4の垂直面部7に、開口部8が縦方向に2個形成されている。開口部8のそれぞれの上端部および下端部には、折り曲げによって一体的に形成された上部水平面部9および下部水平面部10が設けられている。上部水平面部9および下部水平面部10は、上面部および底面部と平行である。
【0036】
更に、図3に示すように、上面部5の前端部に一体的に突起部11が形成され、上面部5の後端部には、突起部11に対応する切り欠き部12が形成されている。このような突起部11および切り欠き部12を備えた放熱フィン4を、隣接する放熱フィン4との間で対応する切り欠き部12、および、突起部11を嵌合させながら、並列配置して放熱フィン部2を形成する。
【0037】
放熱フィン部2においては、開口部8の上部水平面部9および下部水平面部10のそれぞれの先端部が隣接する放熱フィン4の垂直面部に接触して、実質的に平らな上部水平面部列および下部水平面部列が形成される。このようにして形成された上部水平面部列および下部水平面部列は、実質的に平らな薄板フィンを垂直方向に積層した積層フィンと実質的に同一機能を有している。
【0038】
従って、放熱フィン部2は、電子部品の壁面に面する側に実質的に積層フィン部を備えて、上部水平面部列および下部水平面部列の間を通って空気が導かれ、それ以外の部分は垂直に配置された断面コの字形の放熱フィン4が複数配置された放熱フィン部を備えて、相対する垂直面部の間を通って空気が導かれる。図3(b)に示すように、放熱フィンは、垂直面部7と、底面部6とが一体的に形成された断面L字形の部材からなっていてもよい。
【0039】
図4は、開口部の形成方法の一例を説明する図である。図4に示すように、放熱フィン4の垂直面部7に、H字形の切り込み14を入れ、上部片15および下部片16をそれぞれ点線部で、垂直面部7に直角に折り曲げる。このようにして形成された上部片15が上部水平面部9となり、下部片16が下部水平面部10となり、開口部8が形成される。
【0040】
図5は、図4を参照して説明した、上部片15および下部片16が折り曲げられて形成された開口部を説明する側面図である。図5に、矢印で示すように、上部片15および下部片16を、垂直面部7に直角に折り曲げて(所謂観音開き)、上部水平面部および下部水平面部が一体的に形成された開口部が設けられる。
【0041】
図6は、図1および図2を参照して説明したこの発明のヒートシンクの1つの態様の平面図である。図6に示すように、並列配置された、上面部5と、垂直面部7と、底面部6とが一体的に形成された断面コの字形の薄板部材からなる放熱フィン4の、複数個の上面部5が接続されて平らな面を形成している。上面部5の一部は除去されて、放熱フィン4の底面部6が、ベースプレート3に機械的加工によって形成された凸部18にカシメられて、固定されているのが、上から見える。
【0042】
更に、上述したように、上面部5の前端部に一体的に突起部11が形成され、上面部5の後端部には、突起部11に対応する切り欠き部12が形成されている。このような突起部11および切り欠き部12を備えた放熱フィン4を、隣接する放熱フィン4との間で対応する切り欠き部12、および、突起部11を嵌合させながら、並列配置して放熱フィン部2を形成する。
【0043】
図7は、図6に示すこの発明のヒートシンクを説明する正面図(空気取り入れ側)である。図7に示すように、ベースプレート3の表面に機械的加工によって形成された凸部18に、上面部5と、垂直面部7と、底面部6とが一体的に形成された断面コの字形の薄板部材からなる放熱フィン4の底面部6が固定されている。垂直面部7に形成された開口部8の上端部および下端部には、図4および図5を参照して説明したように、折り曲げによって形成された上部水平面部9および下部水平面部10が一体的に形成されている。放熱フィン部2には、このようにして形成された複数の上部水平面部9および下部水平面部10によって、実質的に薄板の積層フィンと同じものが形成されている。
【0044】
薄板の積層フィンと同じもの(上部水平面部9および下部水平面部10)には、放熱フィンの垂直面部7によって、発熱部品の熱が伝導される。即ち、従来の積層フィンにおいては、積層フィンを貫通する伝熱柱が別部材で設けられているが、この発明のヒートシンク1では、放熱フィン4の垂直面部7に形成された開口部8によって、垂直面部7と一体的に形成された上部水平面部9および下部水平面部10に、垂直面部7から直接熱が伝導されるので、別部材である伝熱柱を必要としない。しかも同一部材であるので、垂直面部7から上部水平面部9および下部水平面部10への熱の移動は容易である。従って、全面にわたって、一体的に形成された上部水平面部9および下部水平面部10を備えた開口部8を設けると、熱効率に優れた改良型積層フィンを提供することができる。
【0045】
更に、上述したように、複数の上部水平面部9および下部水平面部10によって、実質的に薄板の積層フィンと同じものが形成されているので、積層フィン(接続された複数の上部水平面部9、および、接続された複数の下部水平面部10)間を空気が容易に流れる。従って、たとえ、電子部品の壁面に面して、空気取り入れ側が配置されても、壁面に沿った方向から、ヒートシンク内に多量の空気が導かれる。
【0046】
図8は、図6に示すこの発明のヒートシンクのA−A断面図である。図8に示すように、ベースプレート3の表面に機械的加工によって形成された凸部18に、上面部5と、垂直面部7と、底面部6とが一体的に形成された断面コの字形の薄板部材からなる放熱フィン4の底面部6が固定されている。この部分においては、開口部8、上部水平面部9および下部水平面部10が形成されていないので、空気は2つの垂直面部7、上面部5および底面部6に挟まれた空間を通って導かれる。
【0047】
上述したように、発熱部品の壁面に面して、空気取り入れ側を配置し、発熱部品の壁面と反対側にファンを取り付けると、ファンの回転によって、冷却用の空気が放熱フィン4の開口部8の上部水平面部9および下部水平面部10に沿って放熱フィン内に取り込まれ、次いで、放熱フィンの垂直面部間を通ってファンから、例えば筺体外に排出される。ベースプレート3の裏面に熱的に接続された発熱部品の熱は、ベースプレート3に伝わり、ベースプレート3によって広く拡散される。
【0048】
ベースプレート3に拡散された熱は、ベースプレート3の表面に熱的に接続された放熱フィンの底面部から垂直面部に伝わり、開口部8の上部水平面部9および下部水平面部10に移動する。ファンによって取り込まれた冷却用空気と上部水平面部9および下部水平面部10の間で、熱交換が行われ、引き続いて、垂直面部との間で熱交換が行われる。このようにして、空気取り入れ側が、たとえ、電子部品の壁面と面した状態での配置しか取れない場合においても、優れた放熱効率を備えたヒートシンクが得られる。更に、上述したように、薄板状フィンを加工するだけで、積層フィンと実質的に同一の機能を備えたヒートシンクができるので、低コスト化が可能になり、小型化にも対応することが出来る。
【0049】
上述したように、この発明によると、風の流れを阻害する壁面に面して空気取り入れ側が配置されても、放熱面積を犠牲にすることなく、放熱フィン間に十分な空気を導き、低コスト、小型化が可能な放熱効率に優れたヒートシンを得ることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ヒートシンク
2 放熱フィン部
3 ベースプレート
4 放熱フィン
5 上面部
6 底面部
7 垂直面部
8 開口部
9 水平面部(上部水平面部)
10 水平面部(下部水平面部)
11 突起部
12 切り欠き部
13 開口部
14 H字形の切り込み
15 上部片
16 下部片
17 固定用孔部
18 凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に配置された複数の放熱フィンを備えたヒートシンクであって、
前記放熱フィンの端部に開口部を備えたことを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記複数の放熱フィンの中央に位置する放熱フィンを除いて前記開口部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記放熱フィンが、前記垂直面部と、前記底面部とが一体的に形成された断面L字形の部材からなり、
前記放熱フィンの前記垂直面部の少なくとも一部に、前記開口部を備え、前記開口部が所定間隔で、前記垂直面部の上下方向に沿って形成された複数個からなり、前記開口部のそれぞれの上端部および下端部の少なくとも一方に、前記上面部と平行に前記垂直面部の一部が折り曲げられて形成された水平面部を備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記放熱フィンが、上面部と、垂直面部と、底面部とが一体的に形成された断面コの字形の部材からなり、
前記放熱フィンの前記垂直面部の少なくとも一部に、開口部を備え、前記開口部が所定間隔で、前記垂直面部の上下方向に沿って形成された複数個からなり、前記開口部のそれぞれの上端部および下端部の少なくとも一方に、前記上面部と平行に前記垂直面部の一部が折り曲げられて形成された水平面部を備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記放熱フィンの前記上面部および前記底面部のそれぞれの先端部が、隣接する前記放熱フィンの対応する前記上面部および前記底面部の後端部に対して、複数個並列配置されて、前記放熱フィン部の平らな底面および上面を形成していることを特徴とする、請求項4に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記放熱フィンの前記開口部の上端部および/または下端部に形成された前記水平面部のそれぞれの先端部が、隣接する前記開口部の対応する前記水平面部の後端部に対して位置して、前記放熱フィン部の前記平らな底面と平行な平らな水平面を形成していることを特徴とする、請求項3または4に記載のヒートシンク。
【請求項7】
前記放熱フィンの前記垂直面の少なくとも一部に形成された前記開口部が、壁面に面して配置される側の、前記放熱フィンに設けられて、前記開口部の前記水平面部に沿って、前記垂直面と直交する方向からの空気流路を形成することを特徴とする、請求項6に記載のヒートシンク。
【請求項8】
前記開口部のそれぞれの上端部および下端部に、前記上面部と平行に前記垂直面部の一部が折り曲げられて一体的に形成された上部水平面部および下部水平面部を備えていることを特徴とする、請求項6に記載のヒートシンク。
【請求項9】
前記放熱フィンの前記上面に先端部に突起部を、前記上面の後端部に前記突起部と対応する切り欠き部をそれぞれ備え、前記放熱フィンの前記突起部が隣接する前記放熱フィンの前記切り欠き部に嵌合して、前記複数の放熱フィンが並列配置されることを特徴とする、請求項6に記載のヒートシンク。
【請求項10】
前記開口部は、前記壁面に面する側の端部から1/2の部分に形成され、前記開口部の面積は、前記放熱フィンの全面積の1/10以上であることを特徴とする、請求項6に記載のヒートシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−228324(P2011−228324A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93724(P2010−93724)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】