説明

ヒートシンク

【課題】冷却水の流れ圧力損失を最小化するとともに、放熱効果を増大できるだけでなく、発熱部の全体面積の温度偏差を最小化することができるヒートシンクを提供する。
【解決手段】本発明のヒートシンク100は、冷却水の流入部分に連結され、第1フィン101が多数個配列された第1領域と、冷却水の排出部分に連結され、第1フィン101より表面積が大きい第2フィン103が多数個配列された第2領域とを含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
パワー制御ユニット(Power Control Unit;PCU)は、電池から供給されるDC電流をモータを駆動するためのAC電流に変換するインバータと、これを効率的に変換するための制御装置とを含む、電気自動車になくてはならない必須要素である。
【0003】
近年、自動車の効率を向上するために、パワー制御ユニット(PCU)の軽量化、小型化及び高集積化が進められており、それとともにパワー素子の高集積化に伴う放熱問題が注目されている。
【0004】
一方、特許文献1には、従来方式のヒートシンクが開示されている。
【0005】
前記特許文献1に開示されているように、従来方式のヒートシンクは、薄いフィン(fin)型のカラムまたは一定直径を有するピン(pin)型のカラムを一定間隔で配列した構造で製造される。
【0006】
しかし、このような構造を有するヒートシンクは、冷却水が注入される部分の発熱部の温度は減少される反面、冷却水が排出される方向に向かって発熱部の温度が増加するという短所がある。
【0007】
また、フィン(fin)型のカラムが配列されたヒートシンクは、冷却水の流れ圧力を損失させるため、相対的に高いポンピングパワー(pumping power)が要求されるという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第0598516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためのものであり、冷却水の流れ圧力損失を最小化するとともに、放熱効果を増大できるヒートシンクを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、発熱部の全体面積の温度偏差を最小化することができるヒートシンクを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施例によるヒートシンクは、冷却水の流入部分に連結され、第1フィンが多数個配列された第1領域と、冷却水の排出部分に連結され、前記第1フィンより表面積が大きい第2フィンが多数個配列された第2領域と、を含む。
【0012】
この際、前記第1領域と前記第2領域との間には、前記第1フィンより表面積が大きく、前記第2フィンよりは表面積が小さいフィンが多数個配列された一つ以上の領域をさらに含むことができる。
【0013】
ここで、前記第1領域に配列された前記第1フィン間の間隔は、前記第2領域に配列された前記第2フィン間の間隔より広くてもよい。
【0014】
また、前記第2領域で前記冷却水が垂直に面する面の総面積は、前記第1領域で前記冷却水が垂直に面する面の総面積より広くてもよい。
【0015】
また、前記第1領域及び第2領域をカバーするカバー部材をさらに含むことができる。
【0016】
また、前記ヒートシンクは、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)からなってもよい。
【0017】
また、本発明の他の実施例によるヒートシンクは、第1フィンが多数個配列された第1領域と、前記第1フィンより表面積が大きい第2フィンが多数個配列され、前記第1領域に隣接して形成された第2領域と、前記第2フィンより表面積が大きい第3フィンが多数個配列され、前記第2領域に隣接して形成された第3領域と、を含む。
【0018】
この際、前記第1領域は冷却水の流入部分に連結され、前記第3領域は冷却水の排出部分に連結され、前記第2領域で前記冷却水に面する面の総面積は、前記第1領域で前記冷却水に面する面の総面積より広くてもよい。
【0019】
また、前記第1領域は冷却水の流入部分に連結され、前記第3領域は冷却水の排出部分に連結され、前記第3領域で前記冷却水に面する面の総面積は、前記第2領域で前記冷却水に面する面の総面積より広くてもよい。
【0020】
また、前記第1領域、第2領域及び第3領域における前記第1フィン、第2フィン及び第3フィンは、それぞれ一定間隔で配列形成されることができる。
【0021】
また、前記第1領域に配列された第1フィン間の間隔は、前記第2領域に配列された第2フィン間の間隔より広くてもよい。
【0022】
また、前記第2領域に配列された第2フィン間の間隔は、前記第3領域に配列された第3フィン間の間隔より広くてもよい。
【0023】
ここで、前記ヒートシンクは、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)からなってもよい。
【0024】
また、前記ヒートシンクは、前記第1領域、第2領域及び第3領域をカバーするカバー部材をさらに含むことができる。
【0025】
本発明の特徴及び利点は、添付図面に基づいた以下の詳細な説明によってさらに明らかになるであろう。
【0026】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に解釈されてはならず、発明者が自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、流入された冷却水が移動する際に面する総面積が、流入された部分から排出された部分に向かって徐々に増加する構造を有しているため、冷却水の流れに対抗して発生する抵抗が減少され、これにより冷却水の流れ圧力損失を減少できるという効果を有する。
【0028】
また、本発明は、上記のように、冷却水の流れ圧力損失を減少させることにより、消費されるポンプパワー(pump power)の量を減少できるという効果を有する。
【0029】
更に、本発明は、フィンの表面積を徐々に増加させる構造を有することにより、発熱部の最大温度を減少させるとともに、全体発熱面積の温度偏差を減少できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例によるヒートシンクの内部構造を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施例によるヒートシンクの内部構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例によりヒートシンク内に流入された冷却水の流速分布を示す写真である。
【図4】本発明の一実施例によるヒートシンクの全体面積の温度分布を示す写真である。
【図5】従来方式のヒートシンク内に流入された冷却水の流速分布を示す写真である。
【図6】従来方式のヒートシンクの全体面積の温度分布を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付図面に係る以下の詳細な説明及び好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。また、「第1」、「第2」などの用語は、一つの構成要素を他の構成要素と区分するために用いられるものであって、構成要素が前記用語により制限されるものではない。また、本発明を説明するにあたり、係わる公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0032】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施例によるヒートシンクの内部構造を示す平面図であり、図2は、本発明の一実施例によるヒートシンクの内部構造を示す斜視図であり、図3は、本発明の一実施例によるヒートシンク内に流入された冷却水の流速分布を示す写真であり、図4は、本発明の一実施例によるヒートシンクの全体面積の温度分布を示す写真である。
【0034】
図1を参照すると、本実施例によるヒートシンク100は、多数個の第1フィン101が配列された第1領域Aと、多数個の第2フィン103が配列された第2領域Bと、多数個の第3フィン105が配列された第3領域Cとを含む。
【0035】
図1では、本実施例によるヒートシンク100が、第1領域A、第2領域B及び第3領域Cの三つの領域を含んでいると図示しているが、冷却水の流入部分107に連結された第1領域Aと、冷却水の排出部分109に連結された第3領域Cとの間に2つ以上の領域を形成することも可能である。
【0036】
ここで、第2領域Bは、第1領域Aに隣接して形成することができ、第3領域Cは、第2領域Bに隣接して形成することができる。即ち、第1領域A、第2領域B及び第3領域Cは、図1のように順に形成される。
【0037】
また、第2領域Bに配列された第2フィン103の表面積は、第1領域Aに配列された第1フィン101の表面積より大きくてもよく、第3領域Cに配列された第3フィン105の表面積もまた第2領域Bに配列された第2フィン103の表面積より大きくてもよい。
【0038】
万が一、第2フィン103が形成された第2領域Bと、第3フィン105が形成された第3領域Cとの間に、第4フィン(不図示)が設けられた第4領域(不図示)が形成された場合、第4フィン(不図示)の表面積は、第2フィン103の表面積よりは大きく、第3フィン105の表面積よりは小さくてもよい。
【0039】
即ち、冷却水の流入部分107に連結された第1領域Aから冷却水の排出部分109に連結された第3領域Cに向かって、放熱性能を向上させるために、フィンの表面積を増加させる。
【0040】
図1及び図2では、第1領域Aに配列された第1フィン101を六角形のカラム状で示したが、これは一つの実施例に過ぎず、フィンの形状は、特にこれに限定されるものではない。例えば、フィンの断面は、円形、三角形、四角形などであってもよい。
【0041】
本実施例では、図1の平面図を参照すると、第1領域Aに配列された第1フィン101の縦方向の直径は、第2領域Bに配列された第2フィン103の縦方向の直径より大きく、第2フィン103の縦方向の直径は、第3領域Cに配列された第3フィン105の縦方向の直径より大きくてもよい。
【0042】
一方、図1を参照すると、第1領域Aに配列された第1フィン101の横方向の直径は、第2領域Bに配列された第2フィン103の横方向の直径より小さく、第2フィン103の横方向の直径は、第3領域Cに配列された第3フィン105の横方向の直径より小さくてもよい。
【0043】
即ち、図1を参照すると、第1フィン101から第3フィン105の方向に向かって、フィンの縦方向の直径が減少されるとともに横方向の直径は増加して、フィンは、ピン(pin)形状からフィン(fin)形状を有するように形成される。
【0044】
これは、第1領域A、第2領域Bを経て第3領域Cに向かって、フィンの表面積、即ち、熱伝逹面積を増大して熱伝導度を増加させることにより、放熱効率を高めるためである。
【0045】
また、本実施例では、図1及び図2に図示したように、第1領域Aで冷却水が垂直に面する面(これは、第1フィン101と第1フィン101との間、即ち、冷却水が移動する部分の垂直断面を意味する。)の面積を合計した総面積より、第2領域Bで冷却水が垂直に面する面の面積を合計した総面積が大きい。
【0046】
また、第2領域Bで冷却水が垂直に面する面の面積を合計した総面積より、第3領域Cで冷却水が垂直に面する面の面積を合計した総面積がより大きくてもよい。
【0047】
即ち、冷却水が流入される部分から冷却水が排出される部分に向かって、冷却水が移動する総面積が大きくなることである。
【0048】
上記のように、冷却水が流入される部分から冷却水が排出される部分に向かって、フィンの表面積と冷却水が移動する面の総面積が増加することにより、表面熱伝逹効率が増加して放熱特性を向上することができる。
【0049】
また、本実施例では、図1及び図2に図示したように、第1領域Aに配列された第1フィン101間の間隔aは、第2領域Bに配列された第2フィン103間の間隔bより広く、第2領域Bに配列された第2フィン103間の間隔bは、第3領域Cに配列された第3フィン105間の間隔cより広くてもよい。
【0050】
このように、第1フィン101間の間隔が広いため、第1領域Aを移動する冷却水の流速は、第2領域Bを移動する冷却水の流速より速く、第2領域Bを移動する冷却水の流速は、第3領域Cを移動する冷却水の流速より速い。従って、第2領域Bを通過して第3領域Cに移動する冷却水の流れ圧力(flow pressure)損失を最小化することができるため、消費するポンプパワー(pump power)の量を低減することができる。
【0051】
即ち、本実施例によるヒートシンク100は、第1領域Aが冷却水の流入部分107に直結された領域であり低温の冷却水が流れるため、第1フィン101の表面積が相対的に小さく流速が速くても、第1フィン101から流入された冷却水への熱伝逹を比較的容易に行うことができ、前記流入された冷却水の温度が第2領域Bを通過して第3領域Cに向かって徐々に増加しても、フィンの表面積及び冷却水の移動面積を増加させて熱伝逹を難なく容易に行うように具現したものである。
【0052】
本実施例によるヒートシンク100の内部に流入された冷却水の流速分布に対する実験結果及びヒートシンク100の全体面積の温度分布に対する実験結果を、図3及び図4に示した。
【0053】
先ず、図3を見ると、第1領域Aの第1フィン101の間を移動する流速は速く、第2領域Bの第2フィン103の間を移動する流速は、第1領域Aを移動する流速よりは多少遅く、第3領域Cの第3フィン105の間を移動する流速は、第2領域Bを移動する流速よりさらに遅いことが分かる。
【0054】
これに比べて、従来方式のヒートシンクの内部に流入された冷却水の流速分布を示す図5を見ると、全体的に流速が遅いことが分かる。
【0055】
また、図4を見ると、本実施例によるヒートシンク100の第1領域A、第2領域B及び第3領域C全体に亘り温度が均一に分布されていることが分かる。
【0056】
これに比べて、従来方式のヒートシンクの温度分布を示す図6を見ると、冷却水が排出される方向(矢印方向)に行く程、温度が増加することが分かる。
【0057】
また、図1及び図2では、ヒートシンク100の内部構造を説明するために内部が露出された構造に図示したが、第1領域A、第2領域B及び第3領域Cをカバーするカバー部材(不図示)をさらに備えることができることは、当業者であれば誰でも認識することができる。
【0058】
また、本実施例によるヒートシンク100は、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)からなってもよく、特にこれに限定されず、伝導性(conductive)に優れた材質であれば何れも使用することができる。
【0059】
また、本実施例によるヒートシンク100は、該当形状を有する金型を利用する射出成形により製造することができ、特にこれに限定されるものではない。
【0060】
以上、本発明を好ましい実施例に基づいて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明によるヒートシンクは、これに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。
【0061】
本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、ヒートシンクに適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
100 ヒートシンク
101 第1フィン
103 第2フィン
105 第3フィン
107 冷却水の流入部分
109 冷却水の排出部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水の流入部分に連結され、第1フィンが多数個配列された第1領域と、
冷却水の排出部分に連結され、前記第1フィンより表面積が大きい第2フィンが多数個配列された第2領域と、
を含むヒートシンク。
【請求項2】
前記第1領域と前記第2領域との間には、前記第1フィンより表面積が大きく、前記第2フィンよりは表面積が小さいフィンが多数個配列された一つ以上の領域をさらに含む請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記第1領域に配列された前記第1フィン間の間隔は、前記第2領域に配列された前記第2フィン間の間隔より広い請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記第2領域で前記冷却水が垂直に面する面の総面積は、前記第1領域で前記冷却水が垂直に面する面の総面積より広い請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記第1領域及び第2領域をカバーするカバー部材をさらに含む請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記ヒートシンクは、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)からなる請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項7】
第1フィンが多数個配列された第1領域と、
前記第1フィンより表面積が大きい第2フィンが多数個配列され、前記第1領域に隣接して形成された第2領域と、
前記第2フィンより表面積が大きい第3フィンが多数個配列され、前記第2領域に隣接して形成された第3領域と、
を含むヒートシンク。
【請求項8】
前記第1領域は冷却水の流入部分に連結され、前記第3領域は冷却水の排出部分に連結され、
前記第2領域で前記冷却水に面する面の総面積は、前記第1領域で前記冷却水に面する面の総面積より広い請求項7に記載のヒートシンク。
【請求項9】
前記第1領域は冷却水の流入部分に連結され、前記第3領域は冷却水の排出部分に連結され、
前記第3領域で前記冷却水に面する面の総面積は、前記第2領域で前記冷却水に面する面の総面積より広い請求項7に記載のヒートシンク。
【請求項10】
前記第1領域、第2領域及び第3領域における前記第1フィン、第2フィン及び第3フィンは、それぞれ一定間隔で配列形成される請求項7に記載のヒートシンク。
【請求項11】
前記第1領域に配列された第1フィン間の間隔は、前記第2領域に配列された第2フィン間の間隔より広い請求項10に記載のヒートシンク。
【請求項12】
前記第2領域に配列された第2フィン間の間隔は、前記第3領域に配列された第3フィン間の間隔より広い請求項10に記載のヒートシンク。
【請求項13】
前記ヒートシンクは、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)からなる請求項7に記載のヒートシンク。
【請求項14】
前記ヒートシンクは、前記第1領域、第2領域及び第3領域をカバーするカバー部材をさらに含む請求項7に記載のヒートシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−98530(P2013−98530A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92603(P2012−92603)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】