説明

ヒートポンプサイクル

【課題】除霜運転時に外部熱源から供給される熱量を有効に利用可能なヒートポンプサイクルを提供する。
【解決手段】ヒートポンプサイクルにて冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する室外熱交換器16の冷媒用チューブ16aおよび外部熱源である走行用電動モータMGの冷却水を放熱させるラジエータ43の冷却媒体用チューブ43aに、同一のアウターフィン50を接合し、このアウターフィン50を介して冷却媒体用チューブ43aを流通する冷却水の有する熱量を室外熱交換器16の冷媒用チューブ16aへ伝熱可能としておく。これにより、ラジエータ43に冷却水を流通させて室外熱交換器16の除霜を行う除霜運転時に、冷却水の有する熱量を室外熱交換器16に伝熱する際の伝熱ロスを抑制して、走行用電動モータMGから供給される熱量を室外熱交換器16の除霜のために有効に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発器として機能する熱交換器に着いた霜を取り除く除霜運転を行うヒートポンプサイクルに関し、例えば、走行用駆動源から暖房用の熱源を確保しにくい車両用の空調装置に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する熱交換器に着いた霜を融解させて取り除く除霜運転を行う蒸気圧縮式の冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)が開示されている。
【0003】
この特許文献1のヒートポンプサイクルは、ハイブリッド車両用の空調装置に適用されており、熱交換対象流体である車室内送風空気を加熱して車室内を暖房する暖房運転と、暖房運転時に蒸発器として機能する室外熱交換器に着いた霜を取り除く除霜運転とを切替可能に構成されている。
【0004】
より具体的には、この除霜運転では、室外熱交換器の着霜が検出された際に、車両走行用の駆動力を出力する内燃機関(エンジン)を始動させ、エンジン冷却水を放熱させるラジエータから吹き出される温風を室外熱交換器へ向けて送風することによって、室外熱交換器の除霜を行っている。
【0005】
換言すると、特許文献1のヒートポンプサイクルでは、外部熱源であるエンジンの廃熱を熱源として、室外熱交換器についた霜を融解させて取り除いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−221997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、冷却水がエンジンから吸熱した熱を空気を介して蒸発器へ伝える構成では、ラジエータにて加熱された空気(温風)が周囲の空気に放熱してしまうことによる伝熱ロスが生じやすい。このため、外部熱源であるエンジンの廃熱を蒸発器の除霜のために有効に利用できないことがある。
【0008】
このようにエンジンの廃熱を蒸発器の除霜のために有効に利用できないことは、除霜時間の長時間化を招き、その間、エンジンを作動させ続けなければならないことから、車両燃費の悪化を招く原因にもなる。さらに、除霜運転中に暖房運転を停止させてしまうと、乗員の暖房感が不充分になってしまう。
【0009】
本発明は、上記点に鑑み、除霜運転時に外部熱源から供給される熱を有効に利用可能なヒートポンプサイクルを提供することを第1の目的とする。
【0010】
また、本実施形態では、車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルにおいて、除霜運転時における外部熱源から供給される熱の有効利用、および、乗員の暖房感が不充分になってしまうことの抑制の両立を図ることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、圧縮機(11)吐出冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させる利用側熱交換器(12)と、利用側熱交換器(12)から流出した冷媒を減圧させる減圧手段(13、83)と、減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を外気と熱交換させて蒸発させる室外熱交換器(16)とを備え、室外熱交換器(16)の着霜時に、室外熱交換器(16)についた霜を取り除く除霜運転を行うヒートポンプサイクルであって、
外部熱源(MG)を冷却する冷却媒体を循環させる冷却媒体循環回路(40)に配置されて、冷却媒体を外気とを熱交換させて放熱させる放熱用熱交換器(43)と、冷却媒体を放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路、および冷却媒体を放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路を切り替える冷却媒体回路切替手段(42)とを備え、
室外熱交換器(16)は、減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を流通させる冷媒用チューブ(16a)を有し、冷媒用チューブ(16a)の周囲には、外気を流通させる吸熱用空気通路(16b)が形成されており、放熱用熱交換器(43)は、冷却媒体を流通させる冷却媒体用チューブ(43a)を有し、複数の冷却媒体用チューブ(43a)の周囲には、外気を流通させる放熱用空気通路(43b)が形成されており、吸熱用空気通路(16b)および放熱用空気通路(43b)には、双方の熱交換器(16、43)における熱交換を促進するとともに、冷媒用チューブ(16a)と冷却媒体用チューブ(43a)との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50)が配置され、冷却媒体回路切替手段(42)は、少なくとも除霜運転時に、冷却媒体を放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替えることを特徴とする。
【0012】
これによれば、除霜運転時に冷却媒体回路切替手段(42)が、冷却媒体を放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替えることで、冷却媒体用チューブ(43a)を流通する冷却媒体の有する熱を室外熱交換器(16)に伝熱して、室外熱交換器(16)の除霜を行うことができる。
【0013】
この際、吸熱用空気通路(16b)および放熱用空気通路(43b)に冷媒用チューブ(16a)と冷却媒体用チューブ(43a)との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50)が配置されているので、このアウターフィン(50)を介して冷却媒体の有する熱を室外熱交換器(16)に伝熱することができる。
【0014】
従って、本請求項に記載の発明によれば、従来技術のように空気を介して冷却媒体の有する熱を室外熱交換器(16)に伝熱する場合に対して伝熱ロスを抑制でき、除霜運転時に外部熱源から供給される熱を室外熱交換器(16)の除霜のために有効に利用することができる。延いては、除霜運転時間の短縮化を図ることもできる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のヒートポンプサイクルにおいて、さらに、室外熱交換器(16)下流側の冷媒を熱交換対象流体と熱交換させて蒸発させる室内蒸発器(20)と、圧縮機(11)吐出冷媒を利用側熱交換器(12)へ流入させて熱交換対象流体を加熱する加熱運転時の冷媒流路、および、室外熱交換器(16)にて放熱させた冷媒を室内蒸発器(20)へ流入させて熱交換対象流体を冷却する冷却運転時の冷媒流路とを切り替える冷媒流路切替手段を備え、加熱運転時に冷媒用チューブ(16a)を流通する冷媒の流れ方向は、冷却運転時に冷媒用チューブ(16a)を流通する冷媒の流れ方向と同一であることを特徴とする。
【0016】
これによれば、利用側熱交換器(12)にて熱交換対象流体を加熱できるだけでなく、室内蒸発器(20)を備えているので、室内蒸発器(20)にて熱交換対象流体を冷却することもできる。
【0017】
さらに、加熱運転時に冷媒用チューブ(16a)を流通する冷媒の流れ方向と冷却運転時に冷媒用チューブ(16a)を流通する冷媒の流れ方向が同一となっているので、外気の流れ方向から見たときに、加熱運転時および冷却運転時における室外熱交換器(16)の冷媒入口側の熱交換領域と冷媒出口側の熱交換領域との位置関係が変化しない。
【0018】
従って、室外熱交換器(16)および放熱用熱交換器(43)を1つの熱交換器として巨視的に見たとき、室外熱交換器(16)にて冷媒を放熱させる冷却運転時には、過熱度を有し比較的高温となる冷媒が流れる室外熱交換器(16)の冷媒入口側の熱交換領域と比較的高温の冷却媒体が流れる放熱用熱交換器(43)の冷却媒体入口側の熱交換領域とを外気の流れ方向に重ね合わせ、過冷却度を有し比較的低温となる冷媒が流れる室外熱交換器(16)の冷媒出口側の熱交換領域と比較的低温の冷却媒体が流れる放熱用熱交換器(43)の冷却媒体出口側の熱交換領域とを外気の流れ方向に重ね合わせる配置態様を実現することで、双方の熱交換器を流れる冷媒と冷却媒体とを並行流とすることができる。
【0019】
さらに、この配置態様を実現することで、室外熱交換器(16)にて冷媒を蒸発させる暖房運転時には、室外熱交換器(16)のうち比較的低温となる冷媒が流れる冷媒入口側の熱交換領域と放熱用熱交換器(43)のうち比較的高温の冷却媒体が流れる冷却媒体入口側の熱交換領域とを外気の流れ方向に重ね合わせることができ、室外熱交換器(16)のうち比較的低温となる冷媒が流れる冷媒入口側の熱交換領域に生じる着霜を効率的に抑制できる。
【0020】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のヒートポンプサイクルにおいて、除霜運転時には、室外熱交換器(16)へ流入する流入冷媒流量を除霜運転へ移行する前よりも減少させるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
これにより、除霜運転時に、アウターフィン(50)を介して室外熱交換器(16)に伝熱される熱が室外熱交換器(16)の冷媒用チューブ(16a)を流通する冷媒に吸熱されてしまうことを抑制でき、より一層、除霜運転時に外部熱源から供給される熱を室外熱交換器(16)の除霜のために有効に利用することができる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明のように、減圧手段(83)を、絞り開度を変更可能に構成された可変絞り機構で構成し、除霜運転時に、減圧手段(83)が絞り開度を増加させてもよい。これにより、除霜運転時に、圧縮機(11)から吐出された高温の冷媒を室外熱交換器(16)へ流入させやすくして、室外熱交換器(16)の除霜を促進できる。
【0023】
さらに、請求項5に記載の発明のように、室外熱交換器(16)から流出する流出冷媒流量を調整する流出流量調整弁(84)を備え、除霜運転時に、流出流量調整弁(84)が流出冷媒流量を低下させてもよい。
【0024】
また、請求項6に記載の発明にように、流出流量調整弁(84)は、室外熱交換器(16)の冷媒流出口に一体的に構成されていてもよい。これにより、圧縮機(11)吐出口側から流出流量調整弁(84)入口側へ至る冷媒通路容積を縮小して、速やかに室外熱交換器(16)へ流入する冷媒流量を減少させることができる。
【0025】
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6に記載のヒートポンプサイクルにおいて、室外熱交換器(16)および放熱用熱交換器(43)の双方に向けて外気を送風する室外送風手段(17)を備え、室外送風手段(17)は、圧縮機(11)を停止させた際に、送風能力を圧縮機(11)を停止させる前よりも増加させることを特徴とする。
【0026】
これによれば、圧縮機(11)を停止させた際に、室外送風手段(17)の送風能力を増加させて、室外熱交換器(16)の温度を速やかに外気温と同程度まで上昇させることができるので、より一層、除霜時間の短縮化を図ることができる。なお、本請求項の「圧縮機(11)を停止させた際」とは、除霜運転時に限定されず、通常運転時に圧縮機(11)を停止させた際も含む意味である。
【0027】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルにおいて、除霜運転時には、利用側熱交換器(12)における熱交換対象流体の加熱能力を除霜運転へ移行する前よりも低下させるように構成されていることを特徴とする。
【0028】
これによれば、利用側熱交換器(12)における熱交換対象流体の加熱能力を低下させることで、室外熱交換器(16)における冷媒の吸熱量を低下させることができるので、除霜を促進することができる。なお、利用側熱交換器(12)における熱交換対象流体の加熱能力を低下させる具体的な手段としては、サイクルを循環する循環冷媒流量を低下させてもよいし、利用側熱交換器(12)における冷媒圧力を低下させてもよい。
【0029】
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし8のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルにおいて、除霜運転時には、吸熱用空気通路(16b)および放熱用空気通路(43b)へ流入する外気の風量を減少させるように構成されていることを特徴とする。
【0030】
これにより、除霜運転時に、アウターフィン(50)を介して室外熱交換器(16)に伝熱される熱が吸熱用空気通路(16b)および放熱用空気通路(43b)を流通する外気に吸熱されてしまうことを抑制でき、より一層、除霜運転時に外部熱源から供給される熱を室外熱交換器(16)の除霜のために有効に利用することができる。
【0031】
具体的には、室外熱交換器(16)および放熱用熱交換器(43)の双方に向けて外気を送風する室外送風手段(17)を備え、除霜運転時には、室外送風手段(17)の送風能力を低下させることによって、吸熱用空気通路(16b)および放熱用空気通路(43b)へ流入する外気の風量を減少させるようになっていてもよい。
【0032】
他にも、吸熱用空気通路(16b)および放熱用空気通路(43b)へ外気を流入させる流入経路の開閉を行うシャッター手段(通路遮断手段)を備え、除霜運転時には、シャッター手段が外気の流入経路の通路面積を縮小させることによって、吸熱用空気通路(16b)および放熱用空気通路(43b)へ流入する外気の風量を減少させるようになっていてもよい。
【0033】
なお、本請求項における「外気の風量を減少させる」とは、現在の流入している風量よりも少ない風量にすることのみを意味するものではなく、風量を0とする(外気を流入させないこと)ことも含む意味である。
【0034】
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし9のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルにおいて、さらに、室外熱交換器(16)および放熱用熱交換器(43)の双方に向けて外気を送風する室外送風手段(17)を備え、放熱用熱交換器(43)は、室外熱交換器(16)に対して、室外送風手段(17)によって送風された外気の流れ方向(X)風上側に配置されていることを特徴とする。
【0035】
これによれば、放熱用熱交換器(43)にて吸熱した外気が室外熱交換器(16)へ流入するので、アウターフィン(50)のみならず、空気を介して冷却媒体の有する熱を室外熱交換器(16)に伝熱することができるので、少なくとも除霜運転時に、外部熱源から供給される熱を室外熱交換器(16)の除霜のために、より一層有効に利用することができる。
【0036】
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし10のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルにおいて、複数の冷媒用チューブ(16a)のうち少なくとも1つは、複数の冷却媒体用チューブ(43a)間に配置され、複数の冷却媒体用チューブ(43a)のうち少なくとも1つは、複数の冷媒用チューブ(16a)間に配置され、吸熱用空気通路(16b)および放熱用空気通路(43b)のうち少なくとも1つは、1つの空気通路として形成されていることを特徴とする。
【0037】
これによれば、放熱用熱交換器(43)と室外熱交換器(16)とを外気の流れ方向(X)に対して直列的に配置する場合に対して、冷却媒体用チューブ(43a)と冷媒用チューブ(16a)とを近接配置することができる。換言すると、冷媒用チューブ(16a)に生じた霜の近くに冷却媒体用チューブ(43a)を配置することができる。従って、除霜運転時に、外部熱源から供給される熱を室外熱交換器(16)に効率的に伝熱して除霜を行うことができる。
【0038】
請求項12に記載の発明では、車両用空調装置に適用される請求項1ないし11のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルであって、さらに、車室内の内気温を検出する内気温検出手段と、室外熱交換器(16)の着霜を判定する着霜判定手段とを備え、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、冷却媒体は、車載機器(MG)を冷却する冷却水であり、冷却媒体回路切替手段(42)は、着霜判定手段によって室外熱交換器(16)の着霜が判定され、かつ、車室内の内気温(Tr)が予め定めた基準内気温(KTr)以上となっている際に、冷却媒体を放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替えることを特徴とする。
【0039】
これによれば、着霜判定手段によって着霜が判定され、かつ、車室内の内気温(Tr)が予め定めた基準内気温(KTr)以上となっている際に除霜運転が行われるので、車室内の内気温(Tr)をある程度までウォームアップさせた後に除霜運転を行うようにすることができる。従って、除霜運転時に利用側熱交換器(12)における送風空気の加熱能力を低下させる手段等を採用しても、乗員の暖房感が不充分になってしまうことを抑制できる。
【0040】
請求項13に記載の発明では、車両用空調装置に適用される請求項1ないし12のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルであって、さらに、室外熱交換器(16)の着霜を判定する着霜判定手段を備え、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、冷却媒体は、車載機器(MG)を冷却する冷却水であり、利用側熱交換器(12)は、内部に送風空気の空気通路を形成するケーシング(31)内に配置されており、ケーシング(31)には、ケーシング(31)内へ導入させる外気と内気との導入割合を変化させる内外気切替手段(33)が配置され、冷却媒体回路切替手段(42)は、着霜判定手段によって室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、冷却媒体を放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替え、内外気切替手段(33)は、着霜判定手段によって室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、外気に対する内気の導入割合を除霜運転へ移行する前よりも増加させることを特徴とする。
【0041】
これによれば、除霜運転時に利用側熱交換器(12)における送風空気の加熱能力を低下させる手段等を採用しても、外気対して温度の高い内気の導入割合を増加させるので、乗員の暖房感が不充分になってしまうことを抑制できる。
【0042】
請求項14に記載の発明では、車両用空調装置に適用される請求項1ないし13のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルであって、さらに、室外熱交換器(16)の着霜を判定する着霜判定手段を備え、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、冷却媒体は、車載機器(MG)を冷却する冷却水であり、利用側熱交換器(12)は、内部に送風空気の空気通路を形成するケーシング(31)内に配置されており、ケーシング(31)には、車室内へ送風空気を吹き出す複数の吹出口の開閉状態を変化させて吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段(37a〜37c)が配置され、吹出口として、少なくとも乗員の足下に向けて送風空気を吹き出すフット吹出口が設けられており、冷却媒体回路切替手段(42)は、着霜判定手段によって室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、冷却媒体を放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替え、吹出口モード切替手段(37a〜37c)は、着霜判定手段によって室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、フット吹出口から送風空気を吹き出す吹出口モードに切り替えることを特徴とする。
【0043】
これによれば、除霜運転時に利用側熱交換器(12)における送風空気の加熱能力を低下させる手段等を採用しても、送風空気をフット吹出口から吹き出す吹出口モードに切り替えるので、例えば、送風空気を乗員の顔に向けて吹き出す場合に対して、乗員の暖房感が不充分になってしまうことを抑制できる。
【0044】
請求項15に記載の発明では、車両用空調装置に適用される請求項1ないし14のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルであって、さらに、室外熱交換器(16)の着霜を判定する着霜判定手段を備え、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、冷却媒体は、車載機器(MG)を冷却する冷却水であり、利用側熱交換器(12)は、内部に送風空気の空気通路を形成するケーシング(31)内に配置されており、ケーシング(31)内には、車室内へ向けて送風空気を送風する送風手段(32)が配置され、着霜判定手段は、室外熱交換器(16)出口側冷媒温度が0℃以下のときに、室外熱交換器(16)に着霜が生じていると判定し、除霜運転は、着霜判定手段によって室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に行われ、送風手段(32)は、着霜運転が行われている際に、その送風能力を着霜が判定される前よりも低下させることを特徴とする。
【0045】
これによれば、除霜運転時に利用側熱交換器(12)における送風空気の加熱能力を低下させる手段等を採用しても、送風手段(32)がその送風能力を低下させるので、乗員の暖房感が不充分になってしまうことを抑制できる。
【0046】
請求項16に記載の発明では、車両用空調装置に適用される請求項1ないし15のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルであって、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、冷却媒体は、車載機器(MG)を冷却する冷却水であり、さらに、室外熱交換器(16)の着霜を判定する着霜判定手段を備え、着霜判定手段は、車両の車速が予め定めた基準車速以下であって、かつ、室外熱交換器(16)出口側冷媒温度が0℃以下のときに、室外熱交換器(16)に着霜が生じていると判定し、冷却媒体回路切替手段(42)は、着霜判定手段によって室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、冷却媒体を放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替えることを特徴とする。
【0047】
これによれば、具体的に、室外熱交換器(16)に着霜が生じた際に、車載機器(MG)の有する熱を有効に利用しながら室外熱交換器(16)の除霜を行うことができる。さらに、着霜判定手段が、車両の車速が予め定めた基準車速以下であって、かつ、室外熱交換器(16)出口側冷媒温度が0℃以下のときに、室外熱交換器(16)に着霜が生じていると判定するので、車速を考慮した適切な着霜判定を行うことができる。
【0048】
請求項17に記載の発明では、請求項16に記載のヒートポンプサイクルにおいて、着霜判定手段が、走行中の車両の車速が予め定めた基準車速以下であって、かつ、室外熱交換器(16)出口側冷媒温度が0℃以下のときに、室外熱交換器(16)に着霜が生じていると判定するようになっていてもよい。なお、本請求項の「走行中の車両」とは、車速が0となっている車両、すなわち停止している車両は含まれない意味である。
【0049】
請求項18に記載の発明では、請求項12ないし17のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルにおいて、車載機器(MG)へ流入する冷却水温度を検出する冷却水温度検出手段(52)を備え、冷却媒体回路切替手段(42)は、冷却水温度検出手段(52)によって検出された冷却水温度(Tw)が予め定めた基準温度以上になった際に、冷却媒体を放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替えることを特徴とする。
【0050】
これによれば、冷却水の有する熱を放熱用熱交換器(43)にて放熱させて、車載機器(MG)をオーバーヒートから保護することができる。さらに、放熱用熱交換器(43)にて放熱された熱を室外熱交換器(16)に伝熱させて冷媒に吸熱させることができるので、ヒートポンプサイクルの通常運転時に、室内送風空気を効率的に加熱することができる。その結果、車両用空調装置の暖房性能を向上させることができる。
【0051】
請求項19に記載の発明では、請求項1ないし18のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルにおいて、冷却媒体循環回路(40)は、冷却媒体回路切替手段(42)が冷却媒体を放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えた際に、外部熱源の有する熱を蓄熱するように構成されていることを特徴とする。
【0052】
これによれば、除霜運転を行う必要がない場合に、冷却媒体回路切替手段(42)が冷却媒体を放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えておくことで、外部熱源の有する熱を蓄熱することができる。その結果、除霜運転時に蓄熱された熱を利用して、短時間で除霜を完了させることができる。
【0053】
具体的には、請求項20に記載の発明のように、車両用空調装置に適用される請求項19に記載のヒートポンプサイクルであって、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、冷却媒体は、車載機器(MG)を冷却する熱媒体であり、冷却媒体循環回路(40)は、冷却媒体回路切替手段(42)が冷却媒体を放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えた際に、車載機器(MG)から放熱される熱を、熱媒体に蓄熱するように構成されていてもよい。
【0054】
さらに、請求項21に記載の発明のように、車両用空調装置に適用される請求項19に記載のヒートポンプサイクルであって、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、外部熱源は、電力を供給されることによって発熱を伴う発熱体であり、冷却媒体は、発熱体が放熱した熱を吸熱する熱媒体であり、冷却媒体循環回路(40)は、冷却媒体回路切替手段(42)が冷却媒体を放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えた際に、発熱体から放熱される熱を、熱媒体に蓄熱するように構成されていてもよい。
【0055】
さらに、請求項22に記載の発明のように、車両用空調装置に適用される請求項19に記載のヒートポンプサイクルであって、車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、外部熱源として、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)および電力を供給されることによって発熱を伴う発熱体が設けられ、冷却媒体は、車載機器(MG)を冷却するとともに発熱体が放熱した熱を吸熱する熱媒体であり、冷却媒体循環回路(40)は、冷却媒体回路切替手段(42)が冷却媒体を放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えた際に、車載機器(MG)および発熱体の少なくとも一方から放熱される熱を、熱媒体に蓄熱するように構成されていてもよい。
【0056】
また、請求項23に記載の発明のように、請求項21または22に記載のヒートポンプサイクルにおける発熱体の発熱量は、外気温に基づいて制御されていてもよい。これにより、発熱体が不必要な電力を消費してしまうことを抑制できる。
【0057】
請求項24に記載の発明では、請求項1ないし23のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルにおいて、さらに、減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を室外熱交換器(16)を迂回させて、室外熱交換器(16)の冷媒流出口側へ導く室外器迂回通路(64)と、減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を室外熱交換器(16)側へ導く冷媒回路と、減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を室外器迂回通路(64)側へ導く冷媒回路とを切り替える室外器迂回通路切替手段(15c)を備え、室外器迂回通路切替手段(15c)は、除霜運転時に、減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を室外器迂回通路(64)側へ導く冷媒回路に切り替えることを特徴とする。
【0058】
これによれば、除霜運転時に、室外器迂回通路切替手段(15c)が、減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を室外器迂回通路(64)側へ導く冷媒回路に切り替えるので、除霜運転時に、アウターフィン(50)を介して室外熱交換器(16)に伝熱される熱が室外熱交換器(16)を流通する冷媒に吸熱されてしまうことを防止できる。
【0059】
従って、請求項3に記載の発明と同様に、除霜運転時に外部熱源から供給される熱を室外熱交換器(16)の除霜のために、より一層有効に利用することができる。さらに、例えば、車両用空調装置に適用した際に、利用側熱交換器(12)にて送風空気を加熱して車室内暖房を実現できる。
【0060】
請求項25に記載の発明では、請求項1ないし24のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルにおいて、さらに、室外熱交換器(16)下流側の冷媒を熱交換対象流体と熱交換させて蒸発させる室内蒸発器(20)と、室外熱交換器(16)下流側の冷媒を室内蒸発器(20)を迂回させて、室内蒸発器(20)の冷媒流出口側へ導く蒸発器迂回通路(20a)と、室外熱交換器(16)下流側の冷媒を室内蒸発器(20)側へ導く冷媒回路と、室外熱交換器(16)下流側の冷媒を蒸発器迂回通路(20a)側へ導く冷媒回路とを切り替える蒸発器迂回通路切替手段(15b)とを備え、蒸発器迂回通路切替手段(15b)は、除霜運転時に、室外熱交換器(16)下流側の冷媒を蒸発器迂回通路(20a)側へ導く冷媒回路に切り替えることを特徴とする。
【0061】
これによれば、除霜運転時に、蒸発器迂回通路切替手段(15b)が、室外熱交換器(16)下流側の冷媒を室内蒸発器(20)側へ導くので、室内蒸発器(20)にて、冷媒を蒸発させる際の吸熱作用によって、熱交換対象流体を冷却することができる。従って、例えば、車両用空調装置に適用した際に、室内蒸発器(20)にて冷却された送風空気を利用側熱交換器(12)にて再加熱する除湿暖房運転を実現できる。
【0062】
請求項26に記載の発明では、車両用空調装置に適用される請求項1ないし25のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルであって、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、利用側熱交換器(12)は、内部に送風空気の空気通路を形成するケーシング(31)内に配置されており、さらに、ケーシング(31)内には、作動時に発熱を伴う車載機器によって加熱された熱媒体および電力を供給されることによって発熱する発熱体(85)の少なくとも一方を熱源として送風空気を加熱する補助加熱手段が配置されていることを特徴とする。
【0063】
これによれば、除霜運転時に、圧縮機(11)の冷媒吐出能力を低下させること等によって利用側熱交換器(12)における送風空気の加熱能力を低下させたとしても、補助加熱手段によって送風空気を加熱することができる。従って、車室内に吹き出される送風空気の温度低下を抑制して、乗員が暖房感を損なってしまうことを抑制できる。
【0064】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1実施形態のヒートポンプサイクルの暖房運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図2】第1実施形態のヒートポンプサイクルの除霜運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図3】第1実施形態のヒートポンプサイクルの廃熱回収運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図4】第1実施形態のヒートポンプサイクルの冷房運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図5】第1実施形態の室内空調ユニットの詳細構成図である。
【図6】第2実施形態のヒートポンプサイクルの暖房運転時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図7】第3実施形態のヒートポンプサイクルの除霜運転時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図8】第4実施形態のヒートポンプサイクルの除霜運転時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図9】第5実施形態のヒートポンプサイクルの除霜運転時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図10】第6実施形態の熱交換器構造体の外観斜視図である。
【図11】第6実施形態の熱交換器構造体の分解斜視図である。
【図12】図10のA−A断面図である。
【図13】第6実施形態の熱交換器構造体における冷媒および冷却水の流れを説明する模式的な斜視図である。
【図14】第7実施形態の車室内連係制御の制御フローを示すフローチャートである。
【図15】第7実施形態の車室内連係制御の制御フローの要部を示すフローチャートである。
【図16】第7実施形態の車室内連係制御の制御フローの別の要部を示すフローチャートである。
【図17】第7実施形態の車室内連係制御の制御フローの別の要部を示すフローチャートである。
【図18】第8実施形態のヒートポンプサイクルの除霜運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図19】第9実施形態のヒートポンプサイクルの除霜運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図20】第10実施形態のヒートポンプサイクルの除霜運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図21】第11実施形態のヒートポンプサイクルの除霜運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
(第1実施形態)
図1〜5により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明のヒートポンプサイクル10を、内燃機関(エンジン)および走行用電動モータMGから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両の車両用空調装置1に適用している。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図である。
【0067】
ハイブリッド車両は、車両の走行負荷等に応じてエンジンを作動あるいは停止させて、エンジンおよび走行用電動モータMGの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータMGのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、ハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力をエンジンのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させることができる。
【0068】
ヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される車室内送風空気を加熱あるいは冷却する機能を果たす。従って、このヒートポンプサイクル10は、冷媒流路を切り替えることによって、通常運転として熱交換対象流体である車室内送風空気を加熱して車室内を暖房する暖房運転(加熱運転)、車室内送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房運転(冷却運転)を実行できる。
【0069】
さらに、このヒートポンプサイクル10では、暖房運転時に冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する室外熱交換器16に着いた霜を融解させて取り除く除霜運転、暖房運転時に外部熱源として走行用電動モータMGの有する熱を冷媒に吸熱させる廃熱回収運転を実行することもできる。なお、図1〜4のヒートポンプサイクル10に示す全体構成図では、各運転時における冷媒の流れを実線矢印で示している。
【0070】
また、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0071】
まず、圧縮機11は、エンジンルーム内に配置されて、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機である。固定容量型圧縮機11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
【0072】
電動モータ11bは、後述する空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、本実施形態では、電動モータ11bが圧縮機11の吐出能力変更手段を構成する。
【0073】
圧縮機11の冷媒吐出口には、利用側熱交換器としての室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、車両用空調装置1の室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、その内部を流通する高温高圧冷媒と後述する室内蒸発器20通過後の車室内送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット30の詳細構成については後述する。
【0074】
室内凝縮器12の冷媒出口側には、暖房運転時に室内凝縮器12から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房運転用の減圧手段としての暖房用固定絞り13が接続されている。この暖房用固定絞り13としては、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用できる。暖房用固定絞り13の出口側には、室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。
【0075】
さらに、室内凝縮器12の冷媒出口側には、室内凝縮器12から流出した冷媒を、暖房用固定絞り13を迂回させて室外熱交換器16側へ導く固定絞り迂回用通路14が接続されている。この固定絞り迂回用通路14には、固定絞り迂回用通路14を開閉する開閉弁15aが配置されている。開閉弁15aは、空調制御装置から出力される制御電圧によって、その開閉作動が制御される電磁弁である。
【0076】
また、冷媒が開閉弁15aを通過する際に生じる圧力損失は、固定絞り13を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、室内凝縮器12から流出した冷媒は、開閉弁15aが開いている場合には固定絞り迂回用通路14側を介して室外熱交換器16へ流入し、開閉弁15aが閉じている場合には暖房用固定絞り13を介して室外熱交換器16へ流入する。
【0077】
これにより、開閉弁15aは、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態の開閉弁15aは、冷媒流路切替手段としての機能を果たす。なお、このような冷媒流路切替手段としては、室内凝縮器12出口側と暖房用固定絞り13入口側とを接続する冷媒回路および室内凝縮器12出口側と固定絞り迂回用通路14入口側とを接続する冷媒回路を切り替える電気式の三方弁等を採用してもよい。
【0078】
室外熱交換器16は、内部を流通する低圧冷媒と送風ファン17から送風された外気とを熱交換させるものである。この室外熱交換器16は、エンジンルーム内に配置されて、暖房運転時には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能し、冷房運転時には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する熱交換器である。
【0079】
また、送風ファン17は、空調制御装置から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。さらに、本実施形態の室外熱交換器16は、走行用電動モータMGを冷却する冷却水と送風ファン17から送風された外気とを熱交換させる後述するラジエータ43と一体的に構成されている。
【0080】
このため、本実施形態の送風ファン17は、室外熱交換器16およびラジエータ43の双方に向けて外気を送風する室外送風手段を構成している。なお、一体化された室外熱交換器16およびラジエータ43(以下、熱交換器構造体70という)の詳細構成については後述する。
【0081】
室外熱交換器16の出口側には、電気式の三方弁15bが接続されている。この三方弁15bは、空調制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御されるもので、上述した開閉弁15aとともに、冷媒流路切替手段を構成している。
【0082】
より具体的には、三方弁15bは、暖房運転時には、室外熱交換器16の出口側と後述するアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、冷房運転時には、室外熱交換器16の出口側と冷房用固定絞り19の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。
【0083】
冷房用固定絞り19は、冷房運転時に室外熱交換器16から流出した冷媒を減圧膨張させる冷房運転用(冷却運転用)減圧手段であり、その基本的構成は、暖房用固定絞り13と同様である。冷房用固定絞り19の出口側には、室内蒸発器20の冷媒入口側が接続されている。
【0084】
室内蒸発器20は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12よりも空気流れの上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と車室内送風空気とを熱交換させ、車室内送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。室内蒸発器20の冷媒出口側には、アキュムレータ18の入口側が接続されている。
【0085】
従って、暖房運転時の冷媒が流通する三方弁15bからアキュムレータ18の入口側へ至る冷媒流路は、室外熱交換器16下流側の冷媒を室内蒸発器20を迂回させて流す蒸発器迂回通路20aを構成している。さらに、三方弁15bは、室外熱交換器16下流側の冷媒を室内蒸発器20側へ導く冷媒回路と、室外熱交換器16下流側の冷媒を蒸発器迂回通路20a側へ導く冷媒回路とを切り替える蒸発器迂回通路切替手段を構成している。
【0086】
アキュムレータ18は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える低圧側冷媒用の気液分離器である。アキュムレータ18の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入側が接続されている。従って、このアキュムレータ18は、圧縮機11に液相冷媒が吸入されてしまうことを抑制して、圧縮機11の液圧縮を防止する機能を果たす。
【0087】
次に、図5を用いて、室内空調ユニット30について説明する。図5は、図1〜図4に記載された室内空調ユニット30を拡大して表した詳細構成図である。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内凝縮器12、室内蒸発器20等を収容したものである。
【0088】
ケーシング31は、車室内に送風される車室内送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の車室内送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
【0089】
この内外気切替装置33は、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気と外気との導入割合を連続的に変化させて吸込口モードを切り替える内外気切替手段である。
【0090】
内外気切替装置33には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替装置33の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。この内外気切替ドアは、空調制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しない電動アクチュエータによって駆動される。
【0091】
内外気切替装置33によって切り替えられる吸込口モードとしては、内気導入口を全開とするとともに外気導入口を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口を全閉とするとともに外気導入口を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気導入口および外気導入口を同時に開く内外気混入モードがある。
【0092】
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入された空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0093】
送風機32の空気流れ下流側には、室内蒸発器20および室内凝縮器12が、車室内送風空気の流れに対して、この順に配置されている。換言すると、室内蒸発器20は、室内凝縮器12に対して、車室内送風空気の流れ方向上流側に配置されている。
【0094】
さらに、室内蒸発器20の空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器12の空気流れ上流側には、室内蒸発器20通過後の送風空気のうち、室内凝縮器12を通過させる風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。また、室内凝縮器12の空気流れ下流側には、室内凝縮器12にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気と室内凝縮器12を迂回して加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間35が設けられている。
【0095】
ケーシング31の空気流れ最下流部には、混合空間35にて合流した送風空気を、冷却対象空間である車室内へ吹き出す開口穴が設けられている。具体的には、この開口穴としては、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ開口穴36a、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス開口穴36b、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット開口穴36cが設けられている。
【0096】
また、デフロスタ開口穴36a、フェイス開口穴36bおよびフット開口穴36cの空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたデフロスタ吹出口、フェイス吹出口およびフット吹出口に接続されている。
【0097】
従って、エアミックスドア34が室内凝縮器12を通過させる風量の割合を調整することによって、混合空間35にて混合された空調風の温度が調整され、各吹出口から吹き出される空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア34は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整手段を構成している。
【0098】
換言すると、エアミックスドア34は、利用側熱交換器を構成する室内凝縮器12において、圧縮機11吐出冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整する熱交換量調整手段としての機能を果たす。なお、エアミックスドア34は、空調制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0099】
さらに、デフロスタ開口穴36a、フェイス開口穴36bおよびフット開口穴36cの空気流れ上流側には、それぞれ、デフロスタ開口穴36aの開口面積を調整するデフロスタドア37a、フェイス開口穴36bの開口面積を調整するフェイスドア37b、フット開口穴36cの開口面積を調整するフットドア37cが配置されている。
【0100】
これらのデフロスタドア37a、フェイスドア37bおよびフットドア37cは、送風空気を車室内へ吹き出す各吹出口の開閉状態を変化させる吹出口モード変更手段を構成するものであって、空調制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しない電動アクチュエータによって駆動される。
【0101】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード等がある。
【0102】
さらに、乗員が、後述する操作パネルのスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0103】
次に、冷却水循環回路40について説明する。この冷却水循環回路40は、作動時に発熱を伴う車載機器の一つである前述の走行用電動モータMGの内部に形成された冷却水通路に、冷却媒体としての冷却水(例えば、エチレングリコール水溶液)を循環させて、走行用電動モータMGを冷却する冷却媒体循環回路である。
【0104】
この冷却水循環回路40には、冷却水ポンプ41、電気式の三方弁42、ラジエータ43、ラジエータ43を迂回させて冷却水を流すバイパス通路44等が配置されている。
【0105】
冷却水ポンプ41は、冷却水循環回路40において冷却水を走行用電動モータMGの内部に形成された冷却水通路へ圧送する電動式のポンプであり、空調制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。従って、冷却水ポンプ41は、走行用電動モータMGを冷却する冷却水の流量を変化させて冷却能力を調整する冷却能力調整手段としての機能を果たす。
【0106】
三方弁42は、冷却水ポンプ41の入口側とラジエータ43の出口側とを接続して冷却水をラジエータ43へ流入させる冷却媒体回路、および、冷却水ポンプ41の入口側とバイパス通路44の出口側とを接続して冷却水をラジエータ43を迂回させて流す冷却媒体回路を切り替える。この三方弁42は、空調制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御されるもので、冷却媒体回路切替手段を構成している。
【0107】
つまり、本実施形態の冷却水循環回路40では、図1等の破線矢印に示すように、冷却水ポンプ41→走行用電動モータMG→ラジエータ43→冷却水ポンプ41の順に冷却水を循環させる冷却媒体回路と、冷却水ポンプ41→走行用電動モータMG→バイパス通路44→冷却水ポンプ41の順に冷却水を循環させる冷却媒体回路とを切り替えることができる。
【0108】
従って、走行用電動モータMGの作動中に、三方弁42が、冷却水をラジエータ43を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えると、冷却水はラジエータ43にて放熱することなく、その温度を上昇させる。つまり、三方弁42が、冷却水をラジエータ43を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えた際には、走行用電動モータMGの有する熱(発熱)が冷却水に蓄熱されることになる。
【0109】
ラジエータ43は、エンジンルーム内に配置されて冷却水と送風ファン17から送風された外気とを熱交換させる放熱用熱交換器である。前述の如く、ラジエータ43は、室外熱交換器16と一体的に構成されて、熱交換器構造体70を構成している。
【0110】
ここで、熱交換器構造体70の詳細構成について説明する。本実施形態の室外熱交換器16およびラジエータ43は、それぞれ冷媒または冷却水を流通させる複数本のチューブ、この複数本のチューブの両端側に配置されてそれぞれのチューブを流通する冷媒または冷却水の集合あるいは分配を行う一対の集合分配用タンク等を有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器として構成されている。
【0111】
より具体的には、室外熱交換器16は、内部に冷媒を流通させる複数本の冷媒用チューブ16aを有している。さらに、この冷媒用チューブ16aとしては、長手方向垂直断面形状が扁平形状の扁平チューブが採用されており、各冷媒用チューブ16aは、その外表面のうち平坦面同士が互いに平行に、かつ対向するように所定の間隔を開けて積層配置されている。
【0112】
これにより、冷媒用チューブ16aの周囲、すなわち隣り合う冷媒用チューブ16aの間には、送風ファン17から送風された外気を流通させる吸熱用空気通路16bが形成されている。
【0113】
また、ラジエータ43は、内部に冷却水を流通させる長手方向垂直断面形状が扁平形状の複数本の冷却媒体用チューブ43aを有している。この冷却媒体用チューブ43aも、冷媒用チューブ16aと同様に、所定の間隔を開けて積層配置されており、冷却媒体用チューブ43aの周囲、すなわち隣り合う冷却媒体用チューブ43aの間には、送風ファン17から送風された外気を流通させる放熱用空気通路43bが形成されている。
【0114】
さらに、本実施形態では、室外熱交換器16およびラジエータ43の集合分配用タンクの一部を同一部材にて形成するとともに、吸熱用空気通路および放熱用空気通路に同一部材で形成されたアウターフィン50を配置し、このアウターフィン50を双方のチューブ16a、43aに接合することによって、室外熱交換器16およびラジエータ43を熱交換器構造体70として一体化している。
【0115】
このアウターフィン50としては、伝熱性に優れる金属の薄板を波状に曲げ成形したコルゲートフィンが採用されている。このアウターフィン50のうち、吸熱用空気通路に配置された部位は冷媒と外気との熱交換を促進する機能を果たし、放熱用空気通路に配置された部位は冷却水と外気との熱交換を促進する機能を果たす。
【0116】
さらに、このアウターフィン50は、冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aの双方に接合されていることにより、冷媒用チューブ16aと冷却媒体用チューブ43aとの間の熱移動を可能とする機能も果たす。
【0117】
また、上述した本実施形態の室外熱交換器16の冷媒用チューブ16a、ラジエータ43の冷却媒体用チューブ43a、集合分配用タンクおよびアウターフィン50はいずれもアルミニウム合金で形成されており、ろう付け接合されることにより一体化されている。さらに、本実施形態では、ラジエータ43が、室外熱交換器16に対して、送風ファン17によって送風された外気の流れ方向Xの風上側に配置されるように一体化されている。
【0118】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器11、15a、15b、17、41、42等の作動を制御する。
【0119】
また、空調制御装置の入力側には、車室内温度を検出する内気温検出手段としての内気センサ、外気温を検出する外気センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、室内蒸発器20の吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度センサ、圧縮機11吐出冷媒温度を検出する吐出冷媒温度センサ、室外熱交換器16出口側冷媒温度Teを検出する出口冷媒温度センサ51、走行用電動モータMGへ流入する冷却水温度Twを検出する冷却水温度検出手段としての冷却水温度センサ52等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
【0120】
なお、本実施形態では、冷却水温度センサ52によって、冷却水ポンプ41から圧送された冷却水温度Twを検出しているが、もちろん冷却水ポンプ41に吸入される冷却水温度Twを検出してもよい。
【0121】
さらに、空調制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、車両用空調装置の作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ、運転モードの選択スイッチ等が設けられている。
【0122】
なお、空調制御装置は、圧縮機11の電動モータ11b、開閉弁15a等を制御する制御手段が一体に構成され、これらの作動を制御するものであるが、本実施形態では、空調制御装置のうち、圧縮機11の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が冷媒吐出能力制御手段を構成し、冷媒流路切替手段を構成する各種機器15a、15bの作動を制御する構成が冷媒流路制御手段を構成し、冷却水の冷却媒体回路切替手段を構成する三方弁42の作動を制御する構成が冷却媒体回路制御手段を構成している。
【0123】
さらに、本実施形態の空調制御装置は、上述した空調制御用のセンサ群の検出信号に基づいて、室外熱交換器16に着霜が生じているか否かを判定する構成(着霜判定手段)を有している。具体的には、本実施形態の着霜判定手段では、走行中の車両の車速が予め定めた基準車速(本実施形態では、20km/h)以下であって、かつ、室外熱交換器16出口側冷媒温度Teが0℃以下のときに、室外熱交換器16に着霜が生じていると判定する。
【0124】
もちろん、着霜判定手段による判定は、これに限定されることなく、例えば、車両システムの作動状態であって、車両が停止しており(具体的には、車速=0km/h)、かつ、室外熱交換器16出口側冷媒温度Teが0℃以下のときに、室外熱交換器16に着霜が生じていると判定してもよい。
【0125】
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、車室内を暖房する暖房運転、車室内を冷房する冷房運転を実行することができるとともに、暖房運転時に、除霜運転、廃熱回収運転を実行することができる。以下に各運転における作動を説明する。
【0126】
(a)暖房運転
暖房運転は、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって暖房運転モードが選択されると開始される。そして、暖房運転時に、着霜判定手段によって室外熱交換器16の着霜が生じていると判定された際には除霜運転が実行され、冷却水温度センサ52によって検出された冷却水温度Twが予め定めた基準温度(本実施形態では、60℃)度以上になった際には廃熱回収運転が実行される。
【0127】
まず、通常の暖房運転時には、空調制御装置が、開閉弁15aを閉じるとともに、三方弁15bを室外熱交換器16の出口側とアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、さらに、冷却水ポンプ41を予め定めた所定流量の冷却水を圧送するように作動させるとともに、冷却水循環回路40の三方弁42を冷却水がラジエータ43を迂回して流れる冷却媒体回路に切り替える。
【0128】
これにより、ヒートポンプサイクル10は、図1の実線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられ、冷却水循環回路40は、図1の破線矢印に示すように冷媒が流れる冷却媒体回路に切り替えられる。
【0129】
この冷媒流路および冷却媒体回路の構成で、空調制御装置が上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込む。そして、検出信号および操作信号の値に基づいて車室内へ吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。さらに、算出された目標吹出温度TAOおよびセンサ群の検出信号に基づいて、空調制御装置の出力側に接続された各種空調制御機器の作動状態を決定する。
【0130】
例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、以下のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置に記憶された制御マップを参照して、室内蒸発器20の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。
【0131】
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと蒸発器温度センサによって検出された室内蒸発器20からの吹出空気温度との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて室内蒸発器20からの吹出空気温度が目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号が決定される。
【0132】
また、エアミックスドア34のサーボモータへ出力される制御信号については、目標吹出温度TAO、室内蒸発器20からの吹出空気温度および吐出冷媒温度センサによって検出された圧縮機11吐出冷媒温度等を用いて、車室内へ吹き出される空気の温度が車室内温度設定スイッチによって設定された乗員の所望の温度となるように決定される。
【0133】
なお、通常の暖房運転時、除霜運転時、および廃熱回収運転時には、送風機32から送風された車室内送風空気の全風量が、室内凝縮器12を通過するようにエアミックスドア34の開度を制御してもよい。
【0134】
また、内外気切替装置33の電動アクチュエータへ出力される制御信号については、予め空調制御装置に記憶された制御マップを参照して決定される。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、目標吹出温度TAOが極高温域となって高い暖房性能を得たい場合や除霜運転時等に内気を導入する内気モードが選択される。
【0135】
また、吹出口モード変更手段37a〜37cの電動アクチュエータへ出力される制御信号については、予め空調制御装置に記憶された制御マップを参照して決定される。本実施形態では、目標吹出温度TAOが低温域から高温域へと上昇するに伴って、吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。従って暖房運転時には、フットモードが選択されやすい。
【0136】
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種空調制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調制御機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンの繰り返しは、他の運転時にも基本的に同様に行われる。
【0137】
通常の暖房運転時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が室内凝縮器12へ流入する。室内凝縮器12へ流入した冷媒は、送風機32から送風されて室内蒸発器20を通過した車室内送風空気と熱交換して放熱する。これにより、車室内送風空気が加熱される。
【0138】
室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、開閉弁15aが閉じているので、暖房用固定絞り13へ流入して減圧膨張される。そして、暖房用固定絞り13にて減圧膨張された低圧冷媒は、室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した低圧冷媒は、送風ファン17によって送風された外気から吸熱して蒸発する。
【0139】
この際、冷却水循環回路40では、冷却水がラジエータ43を迂回して流れる冷却媒体回路に切り替えられているので、冷却水が室外熱交換器16を流通する冷媒に放熱することや、冷却水が室外熱交換器16を流通する冷媒から吸熱することはない。つまり、冷却水が室外熱交換器16を流通する冷媒に対して熱的な影響を及ぼすことはない。
【0140】
室外熱交換器16から流出した冷媒は、三方弁15bが、室外熱交換器16の出口側とアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替えられているので、アキュムレータ18へ流入して気液分離される。そして、アキュムレータ18にて分離された気相冷媒が、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0141】
以上の如く、通常の暖房運転時には、室内凝縮器12にて圧縮機11から吐出された冷媒の有する熱によって車室内送風空気が加熱されて、車室内の暖房を行うことができる。
【0142】
(b)除霜運転
次に、除霜運転について説明する。ここで、本実施形態のヒートポンプサイクル10のように、室外熱交換器16にて冷媒と外気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる冷凍サイクル装置では、室外熱交換器16の温度(具体的には、室外熱交換器16の外表面温度、あるいは、室外熱交換器16)における冷媒蒸発温度が着霜温度(具体的には、0℃)以下になってしまうと室外熱交換器16に着霜が生じるおそれがある。
【0143】
このような着霜が生じると、室外熱交換器16の吸熱用空気通路16bが霜によって閉塞されてしまうので、室外熱交換器16の熱交換能力が著しく低下してしまう。そこで、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、暖房運転時に、着霜判定手段によって室外熱交換器16の着霜が生じていると判定された際に除霜運転を実行する。
【0144】
この除霜運転では、空調制御装置が圧縮機11の作動を停止させるとともに、送風ファン17の作動を停止させる。従って、除霜運転時には、通常の暖房運転時に対して、室外熱交換器16へ流入する冷媒流量が減少し、室外熱交換器16の吸熱用空気通路16bおよびラジエータ43の放熱用空気通路43bへ流入する外気の風量が減少することになる。
【0145】
さらに、空調制御装置が冷却水循環回路40の三方弁42を、図2の破線矢印に示すように、冷却水をラジエータ43へ流入させる冷却媒体回路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル10に冷媒は循環することはなく、冷却水循環回路40は、図2の破線矢印に示すように冷媒が流れる冷却媒体回路に切り替えられる。
【0146】
従って、ラジエータ43の冷却媒体用チューブ43aを流通する冷却水の有する熱がアウターフィン50を介して、室外熱交換器16の吸熱用空気通路16bに伝熱されて、室外熱交換器16の除霜がなされる。つまり、走行用電動モータMGの廃熱を有効に利用した除霜が実現される。
【0147】
(c)廃熱回収運転
次に、廃熱回収運転について説明する。ここで、走行用電動モータMGのオーバーヒートを抑制するためには、冷却水の温度は所定の上限温度以下に維持されるとともに、走行用電動モータMGの内部に封入された潤滑用オイルの粘度増加によるフリクションロスを低減するためには、冷却水の温度は所定の下限温度以上に維持されることが望ましい。
【0148】
そこで、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、暖房運転時に、冷却水温度Twが予め定めた基準温度(本実施形態では、60℃)度以上になった際に廃熱回収運転が実行される。この除霜運転では、ヒートポンプサイクル10の三方弁15bについては、通常の暖房運転時と同様に作動させ、冷却水循環回路40の三方弁42については、除霜運転時と同様に、冷却水を図3の破線矢印に示すようにラジエータ43へ流入させる冷却媒体回路に切り替える。
【0149】
従って、図3の実線矢印に示すように、圧縮機11から吐出された高圧高温冷媒は、通常の暖房運転時と同様に、室内凝縮器12にて車室内送風空気を加熱し、暖房用固定絞り13にて減圧膨張されて16へ流入する。
【0150】
室外熱交換器16へ流入した低圧冷媒は、三方弁42が冷却水をラジエータ43へ流入させる冷却媒体回路に切り替えているので、送風ファン17によって送風された外気の有する熱とアウターフィン50を介して伝熱される冷却水の有する熱との双方を吸熱して吸熱して蒸発する。その他の作動は、通常の暖房運転時と同様である。
【0151】
以上の如く、廃熱回収運転時には、室内凝縮器12にて圧縮機11から吐出された冷媒の有する熱によって車室内送風空気が加熱されて、車室内の暖房を行うことができる。この際、冷媒が外気の有する熱のみならず、アウターフィン50を介して伝熱される冷却水の有する熱を吸熱するので、走行用電動モータMGの廃熱を有効に利用した車室内の暖房を実現できる。
【0152】
(d)冷房運転
冷房運転は、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって冷房運転モードが選択されると開始される。この冷房運転時には、空調制御装置が、開閉弁15aを開くとともに、三方弁15bを室外熱交換器16の出口側と冷房用固定絞り19の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル10は、図4の実線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。
【0153】
この際、冷却水循環回路40の三方弁42については、冷却水温度Twが基準温度以上になった際には、冷却水をラジエータ43へ流入させる冷却媒体回路に切り替え、冷却水温度Twが予め定めた基準温度未満になった際には、冷却水がラジエータ43を迂回して流れる冷却媒体回路に切り替えられる。なお、図4では、冷却水温度Twが基準温度以上になった際の冷却水の流れを破線矢印で示している。
【0154】
冷房運転時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が室内凝縮器12へ流入して、送風機32から送風されて室内蒸発器20を通過した車室内送風空気と熱交換して放熱する。室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、開閉弁15aが開いているので、固定絞り迂回用通路14を介して室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した低圧冷媒は、送風ファン17によって送風された外気にさらに放熱する。
【0155】
室外熱交換器16から流出した冷媒は、三方弁15bが、室外熱交換器16の出口側と冷房用固定絞り19の入口側とを接続する冷媒流路に切り替えられているので、冷房用固定絞り19にて減圧膨張される。冷房用固定絞り19から流出した冷媒は、室内蒸発器20へ流入して、送風機32によって送風された車室内送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内送風空気が冷却される。
【0156】
室内蒸発器20から流出した冷媒は、アキュムレータ18へ流入して気液分離される。そして、アキュムレータ18にて分離された気相冷媒が、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。上記の如く、冷房運転時には、室内蒸発器20にて低圧冷媒が車室内送風空気から吸熱して蒸発することによって、車室内送風空気が冷却されて車室内の冷房を行うことができる。
【0157】
以上、説明したように、本実施形態の車両用空調装置1では、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路および冷却水循環回路40の冷却媒体回路を切り替えることによって、種々の運転を実行することができる。さらに、本実施形態の除霜運転では、以下のように、走行用電動モータMGの廃熱を室外熱交換器16の除霜のために有効に利用することができる。
【0158】
より詳細には、本実施形態では、室外熱交換器16の吸熱用空気通路16bおよびラジエータ43の放熱用空気通路43bに、同一の金属部材で構成されたアウターフィン50を配置して、冷媒用チューブ16aと冷却媒体用チューブ43aとの間の熱移動を可能としている。これにより、除霜運転時に、アウターフィン50を介して冷却水の有する熱を室外熱交換器16に伝熱することができる。
【0159】
従って、従来技術のように空気を介して冷却水の有する熱を室外熱交換器16に伝熱する場合に対して伝熱ロスを抑制でき、走行用電動モータMGの廃熱を室外熱交換器16の除霜のために有効に利用することができる。延いては、除霜運転時間の短縮化を図ることもできる。
【0160】
さらに、除霜運転時に、圧縮機11の作動を停止させて室外熱交換器16へ流入する冷媒流量を除霜運転へ移行する前より減少させる(具体的には、0とする)ので、アウターフィン50を介して室外熱交換器16に伝熱される熱が冷媒用チューブ16aを流通する冷媒に吸熱されてしまうことを抑制でき、除霜運転時に走行用電動モータMGの廃熱を室外熱交換器16の除霜のために、より一層有効に利用することができる。
【0161】
換言すると、除霜運転時に、圧縮機11の作動を停止させて室内凝縮器12における送風空気を加熱する加熱能力を低下させて(本実施形態では、加熱能力を発揮させないようにして)、室外熱交換器16における冷媒の吸熱量を低下させているので、除霜運転時に走行用電動モータMGの廃熱を室外熱交換器16の除霜のために、より一層有効に利用することができる。
【0162】
さらに、除霜運転時に、送風ファン17の作動を停止させて吸熱用空気通路16bおよび放熱用空気通路43bへ流入する外気の風量を減少させる(具体的には、0とする)ので、アウターフィン50を介して室外熱交換器16に伝熱される熱が吸熱用空気通路16bおよび放熱用空気通路43bを流通する外気に吸熱されてしまうことを抑制でき、除霜運転時に走行用電動モータMGの廃熱を室外熱交換器16の除霜のために、より一層有効に利用することができる。
【0163】
さらに、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、通常の暖房運転時に、冷却水循環回路40の三方弁42が、冷却水をラジエータ43を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えることによって、走行用電動モータMGの有する熱(発熱量)を冷却水に蓄熱させている。従って、除霜運転時に蓄熱された熱によって、短時間で除霜を完了させることができる。
【0164】
さらに、本実施形態の熱交換器構造体70では、ラジエータ43を、室外熱交換器16に対して、送風ファン17によって送風された外気の流れ方向Xの風上側に配置している。換言すると、熱交換器構造体70では、ラジエータ43→室外熱交換器16の順で外気が流れるように、室外熱交換器16およびラジエータ43を直列的に配置している。
【0165】
これにより、アウターフィン50のみならず、空気を介して冷却水の有する熱を室外熱交換器16に伝熱することができる。つまり、送風ファン17が停止していても、走行する車両の進行方向から受ける風圧(ラム圧)によって熱交換器構造体70を通過する外気を介して冷却水の有する熱を室外熱交換器16に伝熱することができる。従って、除霜運転時に、走行用電動モータMGから供給される熱を室外熱交換器16の除霜のために、より一層有効に利用することができる。
【0166】
さらに、本実施形態の空調制御装置が構成する着霜判定手段は、車両の車速が基準車速以下であって、かつ、室外熱交換器16出口側冷媒温度Teが0℃以下のときに、室外熱交換器16に着霜が生じていると判定するので、車速を考慮した適切な着霜判定を行うことができる。
【0167】
つまり、低車速時には、ラム圧が小さくなり、エンジンルーム内に流入する外気の風量が少なくなる。そのため、室外熱交換器16およびラジエータ43へ流入する外気の風量も少なくなる。従って、除霜運転時に、アウターフィン50を介して室外熱交換器16に伝熱される熱が、外気に吸熱されてしまうことを抑制した効果的な除霜を実現できる。
【0168】
さらに、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、冷却水温度センサ52によって検出された冷却水温度Twが基準温度以上になった際に、三方弁42が冷却水をラジエータ43へ流入させる冷却媒体回路に切り替えて廃熱回収運転を行うので、冷却水の有する熱をラジエータ43に放熱させて走行用電動モータMGをオーバーヒートから保護することができる。
【0169】
これに加えて、廃熱回収運転では、ラジエータ43にて放熱された熱量を室外熱交換器16に伝熱させて冷媒に吸熱させることができるので、ヒートポンプサイクル10の成績係数(COP)を向上させて室内送風空気を効率的に加熱することができる。その結果、車両用空調装置1の暖房性能を向上させることができる。
【0170】
ここで、本実施形態では、三方弁42が冷却水をラジエータ43へ流入させる冷却媒体回路に切り替えて廃熱回収運転を行う基準温度を60℃としているが、この基準温度は、室外熱交換器16の熱交換器の熱交換性能等によって決定することができる。
【0171】
例えば、冷却水循環回路40内の冷却水の重量をWW(g)とし、室外熱交換器16の着霜量をWG(g)とし、室外熱交換器16から吹き出される空気の温度をTR(℃)とすると、冷却水循環回路40内の冷却水に貯えられた蓄熱量Qstは、以下数式F1で表され、除霜に必要な熱量(以下、除霜熱量という)Qdfは、以下数式F2で表される。
Qst=WW×冷却水の比熱×(Tw−TR)…(F1)
Qdf=WG×水の蒸発潜熱−水の比熱×TR+室外熱交換器16×熱容量×TR+空気への放熱量…(F2)
ここで、室外熱交換器16の除霜を確実に行うためには、蓄熱量Qstが除霜熱量Qdfを上回っている必要がある。
【0172】
さらに、式F2における室外熱交換器16の熱容量と、空気への放熱量を無視できるものとして、室外熱交換器16の霜を融解させるために必要な最小限の除霜熱量Qdf2は、以下式F3で表される。
Qdf2=WG×水の蒸発潜熱−水の比熱×TR…(F3)
従って、少なくとも以下式4の関係を満足しなければ、除霜を行うことができない。
Qst>Qdf2…(F4)
そして、上記式F4に式F1および式F3を代入して整理すると、以下式F5のように変形することができる。
Tw>TR+(WG×水の蒸発潜熱−水の比熱×TR)/(WW×冷却水の比熱)…(F5)
従って、上記式F5を満足するTwを基準温度と決定すればよい。
【0173】
換言すると、本実施形態では、作動時に発熱を伴う車載機器(走行用電動モータMG)へ流入する冷却水温度Twを検出する冷却水温度検出手段(冷却水温度センサ52)と、室外熱交換器16から吹き出される空気温度TRを検出する室外吹出空気温度検出手段とを備え、冷却媒体回路切替手段(三方弁42)は、冷却水温度検出手段(冷却水温度センサ52)によって検出された冷却水温度(Tw)および室外吹出空気温度検出手段によって検出された空気温度TRが、
Tw>TR+(WG×水の蒸発潜熱−水の比熱×TR)/(WW×冷却水の比熱)
を満たした際に、冷却媒体(冷却水)を放熱用熱交換器(ラジエータ43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替えるようになっていてもよい。
【0174】
さらに、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、暖房運転時(加熱運転時)における室外熱交換器16の冷媒用チューブ16aを流通する冷媒の流れ方向が、冷房運転時(冷却運転時)における流れ方向と同一となっているので、外気の流れ方向から見たときに、室外熱交換器16の冷媒入口側の熱交換領域と冷媒出口側の熱交換領域との位置関係が変化しない。従って、室外熱交換器16の熱交換領域の温度分布と放熱用熱交換器43の熱交換領域の温度分布の位置関係も変化しない。
【0175】
つまり、室外熱交換器16および放熱用熱交換器43を1つの熱交換器構造体70として巨視的に見たとき、室外熱交換器16にて冷媒を放熱させる冷却運転時には、過熱度を有し比較的高温となる冷媒が流れる室外熱交換器16の冷媒入口側の熱交換領域と比較的高温の冷却媒体が流れる放熱用熱交換器43の冷却媒体入口側の熱交換領域とを外気の流れ方向に重ね合わせることができ、過冷却度を有し比較的低温となる冷媒が流れる室外熱交換器16の冷媒出口側の熱交換領域と比較的低温の冷却媒体が流れる放熱用熱交換器43の冷却媒体出口側の熱交換領域とを外気の流れ方向に重ね合わせることができる。これにより、室外熱交換器16を流れる冷媒と放熱用熱交換器43を流れる冷却媒体とを並行流として効率的な熱交換を実現できる。
【0176】
さらに、室外熱交換器16にて冷媒を蒸発させる暖房運転時には、室外熱交換器16のうち比較的低温となる冷媒が流れる冷媒入口側の熱交換領域と放熱用熱交換器43のうち比較的高温の冷却媒体が流れる冷却媒体入口側の熱交換領域とを外気の流れ方向に重ね合わせることができ、室外熱交換器16のうち比較的低温となる冷媒が流れる冷媒入口側の熱交換領域に生じる着霜を効率的に抑制できる。
【0177】
(第2実施形態)
本実施形態では、図6の全体構成図に示すように、第1実施形態に対して、室内凝縮器12を廃止して、加熱媒体を循環させるブラインを循環させるブライン回路60を設けた例を説明する。なお、図6は、本実施形態における暖房運転時の冷媒流路等を示す全体構成図であり、ヒートポンプサイクル10における冷媒の流れを実線で示し、冷却水循環回路40における冷却水の流れを破線矢印で示している。
【0178】
また、図6では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
【0179】
本実施形態におけるブラインは、圧縮機11吐出冷媒の有する熱量を車室内送風空気へ伝達させる加熱媒体であり、冷却媒体である冷却水と同様に、エチレングリコール水溶液等を採用できる。また、ブライン回路60には、ブラインポンプ61、ブライン−冷媒熱交換器62、ヒータコア63が配置されている。
【0180】
ブラインポンプ61は、ブライン−冷媒熱交換器62のヒータコア63へブラインを圧送する電動式のポンプであり、その基本的構成は、冷却水循環回路40の冷却水ポンプ41と同様である。ブライン−冷媒熱交換器62は、冷媒通路62bを流通する圧縮機11吐出冷媒とブライン通路62aを流通するブラインとを熱交換させる熱交換器である。
【0181】
このブライン−冷媒熱交換器62の具体的構成としては、ブライン通路62aを形成する外側管の内側に冷媒通路62bを形成する内側管を配置する二重管方式の熱交換器構成を採用できる。もちろん、冷媒通路62bを内側管として、ブライン通路62aを外側管としてもよい。さらに、冷媒通路62bとブライン通路62aとを構成する冷媒配管同士をろう付け接合して熱交換させる構成等を採用することができる。
【0182】
ヒータコア63は、車両用空調装置1の室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、その内部を流通するブラインと室内蒸発器20通過後の車室内送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器である。従って、本実施形態のヒータコア63は、室内凝縮器12と同等の利用側熱交換器としての機能を果たす。その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0183】
従って、本実施形態の車両用空調装置1を作動させても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、ブライン回路60を設けているので、ブラインポンプ61の冷却水圧送能力を変化させることによって、ヒータコア63の加熱能力を容易に調整することができる。
【0184】
また、ブラインポンプ61のブラインについても、冷却水と同様に、通常の暖房運転時に、圧縮機11吐出冷媒の有する熱量を蓄熱することができる。従って、除霜運転時に、圧縮機11を停止させても、ブラインポンプ61を作動させることで、車室内の補助的な暖房を行うことができる。
【0185】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態のヒートポンプサイクル10に対して、図7の全体構成図に示すように、暖房用固定絞り13あるいは固定絞り迂回用通路14から流出した冷媒を、さらに、室外熱交換器16を迂回させて流す室外器迂回通路64、および、この室外器迂回通路64を開閉する開閉弁15cを追加した例を説明する。
【0186】
なお、図7は、本実施形態における除霜運転時の冷媒流路等を示す全体構成図であり、ヒートポンプサイクル10における冷媒の流れを実線で示し、冷却水循環回路40における冷却水の流れを破線矢印で示している。
【0187】
また、開閉弁15cの基本的構成は、固定絞り迂回用通路14に配置された開閉弁15aと同様である。また、開閉弁15cが開いた際に、開閉弁15cを通過する際に冷媒に生じる圧力損失は、室外熱交換器16を通過する際に冷媒に生じる圧力損失に対して極めて小さい。
【0188】
そのため、開閉弁15cを開くと、暖房用固定絞り13あるいは固定絞り迂回用通路14から流出した冷媒の殆どが室外器迂回通路64側へ流入し、室外熱交換器16へは殆ど流入しない。
【0189】
さらに、本実施形態では、除霜運転時に、空調制御装置が圧縮機11の作動を停止させることなく開閉弁15cを開き、その他の運転時には開閉弁15cを閉じる。これにより、除霜運転時に、室外熱交換器16へ流入する流入冷媒流量を減少させている。その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0190】
従って、本実施形態の車両用空調装置1を作動させても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、除霜運転時に圧縮機11の作動を停止させないので、室内凝縮器12にて圧縮機11から吐出された冷媒の有する熱によって送風空気を加熱する加熱能力を発揮させることができるので、車室内の暖房を行うことができる。
【0191】
この際、除霜運転時における室外熱交換器16の冷媒用チューブ16aを流通する冷媒の流れ方向が、暖房運転時(通常運転時)における流れ方向と同一となっているので、通常運転から除霜運転へ、あるいは、除霜運転から通常運転へ速やかに移行させることができる。従って、より一層、除霜時間の短縮化を図ることができる。
【0192】
さらに、外気の流れ方向から見たときに、室外熱交換器16の冷媒入口側の熱交換領域と冷媒出口側の熱交換領域との位置関係がラジエータ43の熱交換領域に対して変化しないので、室外熱交換器16の冷媒用チューブ16aを流れる冷媒とラジエータ43の冷却媒体用チューブ43aを流れる冷却媒体との熱移動量の大幅な変動を抑制できる。
【0193】
つまり、アウターフィン50を介して室外熱交換器16の冷媒用チューブ16aとラジエータ43の冷却媒体用チューブ43aとの間で熱交換をさせる際に、室外熱交換機16における全体的な冷媒の流れとラジエータ43における全体的な冷却水の流れとの関係が、対向流から並行流へ、あるいは、並行流から対向流へ変化してしまうことを回避できる。
【0194】
その結果、冷媒用チューブ16aを流れる冷媒と冷却媒体用チューブ43aを流れる冷却媒体との間の熱移動量の大幅な変動を抑制でき、室外熱交換器16およびラジエータ43の設計自由度を向上させることができる。
【0195】
(第4実施形態)
本実施形態では、第3実施形態のヒートポンプサイクル10と同様のサイクル構成で、除霜運転時の空調制御装置による制御態様を変更した例を説明する。
【0196】
具体的には、本実施形態では、除霜運転時に、空調制御装置が圧縮機11の作動を停止させることなく開閉弁15aおよび開閉弁15cを開き、さらに、三方弁15bを室外熱交換器16の出口側(具体的には、室外器迂回通路64の出口側)と冷房用固定絞り19の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。
【0197】
従って、本実施形態では、除霜運転時に、図8に示すように、ヒートポンプサイクル10が圧縮機11→室内凝縮器12(→室外器迂回通路64)→冷房用固定絞り19→室内蒸発器20→アキュムレータ18→圧縮機11の順に冷媒が循環するサイクルに切替られる。
【0198】
これにより、冷房用固定絞り19から流出した冷媒が室内蒸発器20にて蒸発する際に送風空気から気化潜熱を奪うことによって送風空気が冷却され、さらに、圧縮機11吐出冷媒が室内凝縮器12にて放熱する際に冷却された送風空気が再加熱される。その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0199】
従って、本実施形態の車両用空調装置1を作動させても、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、除霜運転時に室内蒸発器20にて冷媒を蒸発させることによって冷却された送風空気を室内凝縮器12にて再加熱できるので、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0200】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1実施形態のヒートポンプサイクル10に対して、図9の全体構成図に示すように、ラジエータ43へ外気を流入させる流入経路の開閉を行うシャッター手段(通路遮断手段)を追加した例を説明する。なお、図9、本実施形態における除霜運転時の冷媒流路等を示す全体構成図であり、ヒートポンプサイクル10における冷媒の流れを実線で示し、冷却水循環回路40における冷却水の流れを破線矢印で示している。
【0201】
具体的には、このシャッター手段65は、複数の片持ち式の板ドアを組み合わせて構成されており、ドアの板面を送風ファン17の空気流れに平行方向に変位させることで、ラジエータ43へ外気を流入させる流入経路を開き、さらに、ドアの板面を送風ファン17の空気流れに交差させる方向に変位させることで、ラジエータ43へ外気を流入させる流入経路を閉じる。
【0202】
ここで、ラジエータ43は、室外熱交換器16に対して、送風ファン17によって送風された外気の流れ方向Xの風上側に配置されているので、シャッター手段65がラジエータ43へ外気を流入させる流入経路を閉じることによって、室外熱交換器16へ外気を流入させる流入経路も遮断されることになる。
【0203】
もちろん、シャッター手段65をスライド式のドア等によって構成してもよい。また、このシャッター手段65は、空調制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0204】
さらに、本実施形態では、除霜運転時に、ラジエータ43へ外気を流入させる流入経路を閉じるようにシャッター手段65を作動させ、その他の運転時にはラジエータ43へ外気を流入させる流入経路を開くようにシャッター手段65を作動させる。これにより、除霜運転時に、吸熱用空気通路16bおよび放熱用空気通路43bへ流入する外気の風量を減少させている。その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0205】
従って、本実施形態の車両用空調装置1を作動させても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、除霜運転時に、ラジエータ43へ外気を流入させる流入経路を閉じるようにシャッター手段65を作動させるので、車両走行時にラム圧の影響で吸熱用空気通路16bおよび放熱用空気通路43bへ外気が流入してしまうことを抑制できる。
【0206】
(第6実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、熱交換器構造体70の具体的構成を変更した例を説明する。この熱交換器構造体70の詳細構成については、図10〜図13を用いて説明する。なお、図10は、本実施形態の熱交換器構造体70の外観斜視図であり、図11は、熱交換器構造体70の分解斜視図であり、図12は、図10のA−A断面図であり、図13は、熱交換器構造体70における冷媒流れおよび冷却水流れを説明するための模式的な斜視図である。
【0207】
まず、図11の分解斜視図に示すように、本実施形態の熱交換器構造体70では、室外熱交換器16の冷媒用チューブ16aおよびラジエータ43の冷却媒体用チューブ43aが、それぞれ送風ファン17によって送風された外気の流れ方向Xに沿って2列配置されている。さらに、冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aは、互いに交互に積層配置されている。
【0208】
従って、本実施形態では、吸熱用空気通路16bおよび放熱用空気通路43bが、1つの空間として形成されている。そして、1つの空間として構成された吸熱用空気通路16bおよび放熱用空気通路43bに、第1実施形態と同様のアウターフィン50が配置され、このアウターフィン50がそれぞれのチューブ16a、43aに接合されている。
【0209】
さらに、冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aの長手方向一端側(図10〜図13では、下方側)には、複数本の冷媒用チューブ16aを流通する冷媒の集合あるいは分配を行う冷媒側タンク16cが配置され、長手方向他端側(図10〜図13では、上方側)には、複数本の冷却媒体用チューブ43aを流通する冷媒の集合あるいは分配を行う冷却媒体側タンク43cが配置されている。
【0210】
冷媒側タンク16cおよび冷却媒体側タンク43cの基本的構成は同様である。まず、冷媒側タンク16cは、2列に配置された冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aに接続される冷媒側接続用プレート部材161、冷媒側接続用プレート部材161に固定される冷媒側中間プレート部材162、並びに、冷媒側タンク部材163を有している。
【0211】
冷媒側中間プレート部材162には、図12の断面図に示すように、冷媒側接続用プレート部材161に固定されることによって、冷媒側接続用プレート部材161との間に冷却媒体用チューブ43aに連通する複数の空間を形成する複数の凹み部162bが形成されている。この空間は、外気の流れ方向Xに2列に並んだ冷却媒体用チューブ43a同士を互いに連通させる冷却媒体用の連通空間としての機能を果たす。
【0212】
なお、図12では、図示の明確化のため、冷却媒体側中間プレート部材432に設けられた凹み部432b周辺の断面を図示しているが、前述の如く、冷媒側タンク16cおよび冷却媒体側タンク43cの基本的構成は同様なので、冷媒側接続用プレート部材161および凹み部162b等にカッコを付して示している。
【0213】
また、冷媒側中間プレート部材162のうち冷媒用チューブ16aに対応する部位にはその表裏を貫通する貫通穴162aが設けられ、この貫通穴には冷媒用チューブ16aが貫通している。従って、冷媒側タンク16c側の端部では、冷媒用チューブ16aが冷却媒体用チューブ43aよりも、冷媒側タンク16c側へ突出している。
【0214】
冷媒側タンク部材163は、冷媒側接続用プレート部材161および冷媒側中間プレート部材162に固定されることによって、その内部に冷媒の集合を行う集合空間163aおよび冷媒の分配を行う分配空間163bを形成するものである。具体的には、冷媒側タンク部材163は、平板金属にプレス加工を施すことにより、その長手方向から見たときに、二山状(W字状)に形成されている。
【0215】
そして、冷媒側タンク部材163の二山状の中央部が冷媒側中間プレート162に接合されることによって、集合空間163aおよび分配空間163bが区画されている。なお、本実施形態では、外気の流れ方向Xの風上側に集合空間163aが配置され、さらに、外気の流れ方向Xの風下側に分配空間163bが配置されている。
【0216】
また、冷媒側タンク部材163の長手方向一端側には、分配空間163bへ冷媒を流入させる冷媒流入配管164が接続されるとともに、集合空間163aから冷媒を流出させる冷媒流出配管165が接続されている。さらに、冷媒側タンク部材163の長手方向他端側は、閉塞部材によって閉塞されている。
【0217】
一方、冷却媒体側タンク43cについても、同様の構成の冷却媒体側接続用プレート部材431、冷却媒体側接続用プレート部材431に固定される冷却媒体側中間プレート部材432、並びに、冷却媒体側タンク部材433を有している。
【0218】
冷却媒体側接続用プレート部材431と冷却媒体側中間プレート部材432との間には、図12の断面図に示すように、冷却媒体側中間プレート部材432に設けられた凹み部432bによって、外気の流れ方向Xに2列に並んだ冷媒用チューブ16a同士を互いに連通させる冷媒用の連通空間が形成されている。
【0219】
また、冷却媒体側中間プレート部材432のうち冷却媒体用チューブ43aに対応する部位にはその表裏を貫通する貫通穴432aが設けられ、この貫通穴には冷却媒体用チューブ43aが貫通している。従って、冷却媒体側タンク43c側の端部では、冷却媒体用チューブ43aが冷媒用チューブ16aよりも、冷却媒体側タンク43c側へ突出している。
【0220】
さらに、冷却媒体側タンク部材433は、冷却媒体側接続用プレート部材431および冷却媒体側中間プレート部材432に固定されることによって、その内部に冷却媒体の集合を行う集合空間433aおよび冷却媒体の分配を行う分配空間433bを形成するものである。なお、本実施形態では、外気の流れ方向Xの風上側に分配空間433bが配置され、外気の流れ方向Xの風下側に集合空間433aが配置されている。
【0221】
また、冷却媒体側タンク部材433の長手方向一端側には、分配空間433bへ冷却媒体を流入させる冷却媒体流入配管434が接続されるとともに、集合空間433aから冷却媒体を流出させる冷却媒体流出配管435が接続されている。さらに、冷却媒体側タンク43cの長手方向他端側は、閉塞部材によって閉塞されている。
【0222】
従って、本実施形態の熱交換器構造体70では、図13の模式的な斜視図に示すように、冷媒流入配管164を介して冷媒側タンク16cの分配空間163bへ流入した冷媒が、2列に並んだ冷媒用チューブ16aのうち、外気の流れ方向Xの風下側に配列された各冷媒用チューブ16aへ流入する。
【0223】
そして、風下側に配列された各冷媒用チューブ16aから流出した冷媒が、冷却媒体側タンク43cの冷却媒体側接続用プレート部材431と冷却媒体側中間プレート部材432との間に形成された空間を介して、外気の流れ方向Xの風上側に配列された各冷媒用チューブ16aへ流入する。
【0224】
さらに、風上側に配列された各冷媒用チューブ16aから流出した冷媒は、図13の実線矢印で示すように、冷媒側タンク16cの集合空間163aにて集合して、冷媒流出配管165から流出していく。つまり、本実施形態の熱交換器構造体70では、冷媒が、風下側の冷媒用チューブ16a→冷却媒体側タンク43c→風上側の冷媒用チューブ16aの順にUターンしながら流れる。
【0225】
同様に、冷却水については、図13の破線矢印で示すように、風上側の冷却媒体用チューブ43a→冷媒側タンク16c→風下側の冷却媒体用チューブ43aの順にUターンしながら流れる。その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。本実施形態の車両用空調装置1を作動させても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0226】
さらに、本実施形態では、熱交換器構造体70の冷媒用チューブ16aと冷却媒体用チューブ43aとを交互に積層配置しているので、除霜運転時に室外熱交換器16を効率的に除霜することができる。
【0227】
つまり、本実施形態の熱交換器構造体70では、冷媒用チューブ16aを冷却媒体用チューブ43aの間にし、逆に、冷却媒体用チューブ43aを冷媒用チューブ16aの間に配置して、吸熱用空気通路16bおよび放熱用空気通路43bを、1つの空気通路としている。
【0228】
これにより、ラジエータ43と室外熱交換器16とを外気の流れ方向Xに対して直列的に配置する場合に対して、冷却媒体用チューブ43aと冷媒用チューブ16aとを近接配置することができる。従って、冷媒用チューブ16aに生じた霜の近くに冷却媒体用チューブ43aを配置することができる。その結果、除霜運転時に室外熱交換器16を効率的に除霜することができる。なお、本実施形態の熱交換器構造体70は、第2〜第5実施形態のヒートポンプサイクル10に適用してもよい。
【0229】
(第7実施形態)
上述の第1実施形態では、空調制御装置が除霜運転時に圧縮機11の作動を停止させる例を説明したが、除霜運転時に圧縮機11の作動が停止してしまうと、室内凝縮器12にて送風空気を加熱することができず、車室内に乗員の所望の温度よりも温度の低い送風空気が送風されてしまう。従って、除霜運転が行われると乗員の暖房感が不充分になってしまうことが懸念される。
【0230】
これに対して、本実施形態では、除霜運転時に、室内凝縮器12にて送風空気を加熱することができない場合であっても、乗員の暖房感が大きく損なわれてしまうことを抑制するための車室内連係制御を行う。この車室内連係制御については、図14〜図17のフローチャートを用いて説明する。
【0231】
まず、図14は、車室内連係制御の基礎制御フローを示すフローチャートであり、この基礎制御フローは、車両用空調装置1が実行するメインルーチンに割り込み処理されるサブルーチンとして実行される。従って、この基礎制御フローの実行時間として割り当てられた所定時間内に除霜運転を実行することを示す除霜フラグdeffgが1にならなければメインルーチンへ戻る。
【0232】
基礎制御フローのステップS100では、室外熱交換器16に着霜が生じ、除霜を行うか否かを判定する除霜実施判定処理が実行される。この除霜実施判定処理の詳細については、図15を用いて説明する。図15のステップS101では、除霜フラグdeffg等の初期化を行う。
【0233】
続く、ステップS102では、室外熱交換器16に着霜が生じているか否かが判定される。具体的には、室外熱交換器16の外表面温度が0℃以下になっていると判定された場合には、着霜が生じているものとして、deffg=1としてステップS103へ進み、室外熱交換器16の外表面温度が0℃以下になっていないと判定された場合には、着霜が生じていないものとして、deffg=0が維持され再びステップS102へ戻る。
【0234】
ステップS103では、エンジンが作動しているか否かが判定される。ステップS103にてエンジンが作動していると判定された場合には、deffg=1を維持してステップS104へ進み、エンジンが作動していないと判定された場合には、図14のステップS200に示す空調モード変更制御へ進む。
【0235】
ステップS104では、ステップS102と同様に、室外熱交換器16に着霜が生じているか否かの判定を行う。具体的には、室外熱交換器16の外表面温度が0℃以下になっていると判定された場合には、着霜が生じているものとして、deffg=1を維持してステップS105へ進み、室外熱交換器16の外表面温度が0℃以下になっていないと判定された場合には、着霜が生じていないものとして、再びステップS102へ戻る。
【0236】
ステップS105では、冷却水温度Twが予め定めた除霜基準温度KTwdefに到達しているか否かが判定される。ステップS105にて、冷却水温度Twが予め定めた除霜基準温度KTwdef(本実施形態では、10℃)に到達していると判定された場合は、冷却水をラジエータ43へ流入させることによって、室外熱交換器16を除霜することができるので、deffg=1を維持してステップS106へ進む。
【0237】
一方、ステップS105にて、冷却水温度Twが予め定めた除霜基準温度KTwdefに到達していないと判定された場合は、冷却水をラジエータ43へ流入させても、室外熱交換器16を除霜することができないので、再びステップS102へ戻る。
【0238】
ステップS106では、内気センサによって検出された内気温(車室内温度)Trが予め定めた基準内気温KTr(本実施形態では、15℃)以上となっているか否かが判定される。ステップS106にて、内気温Trが基準内気温KTr以上となっていると判定された場合は、一般的な乗員が寒さに対して不快感を感じない程度まで車室内の温度が上昇した状態(以下、ウォームアップ状態という)になっているので、deffg=1を維持してステップS107へ進む。
【0239】
一方、ステップS106にて、内気温Trが基準内気温KTr以上となっていないと判定された場合は、内気温Trがウォームアップ状態となるまで上昇していないので、除霜運転に対して車室内暖房を優先させるために、再びステップS102へ戻る。
【0240】
ステップS107では、走行中の車両の車速が予め定めた基準車速(本実施形態では、20km/h)以下であるか否かが判定される。ステップS107にて、車速が予め定めた基準車速以下である場合には、第1実施形態と同様に、ラム圧の減少に伴う効率的な除霜を実現することができるので、deffg=1を維持して図14のステップS200に示す空調モード変更制御へ進む。
【0241】
以上の説明から明らかなように、本実施形態の制御ステップS100は、室外熱交換器16の着霜を判定する着霜判定手段を有する制御手段であり、より詳細には制御ステップS102およびS104が着想判定手段を構成している。
【0242】
次に、ステップS200にて実行される空調モード変更制御については、図16を用いて説明する。この空調モード変更制御は、ステップS100の除霜実施判定処理にて除霜フラグdeffgが1に決定された場合に実行される。
【0243】
まず、ステップS201では、圧縮機11が冷媒吐出能力を発揮しないように、すなわち圧縮機11を停止させるように、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号を決定する。続くステップS202では、送風機32の送風能力を現在の能力よりも所定能力分低下させるように、送風機32に出力される制御信号を決定する。
【0244】
続くステップS203では、吸込口モードを内気モードとする。つまり、外気に対する内気の導入割合を除霜運転へ移行する前よりも増加させる。さらに、ステップS204では、吹出口モードをフットモードとする。つまり、主に、フット吹出口から送風空気を吹き出す吹出口モードに切り替えて、図14のステップS300に示す除霜開始完了制御へ進む。
【0245】
ステップS300にて実行される除霜開始完了制御については、図17を用いて説明する。まず、ステップS301では、第1実施形態で説明したように、冷却水がラジエータ43へ流入するように冷却水循環回路40の三方弁42を切り替える。さらに、冷却水ポンプ41の冷却水圧送能力を最大とし、タイマーを起動させてステップS302へ進む。
【0246】
ステップ302では、走行中の車両の車速が予め定めた基準車速(本実施形態では、20km/h)以下であるか否かが判定される。ステップS302にて、車速が基準車速以下である場合には、効率的な除霜ができるものとして、ステップS303へ進み、車速が基準車速以下になっていない場合には、効率的な除霜が行えないものとして、ステップS304へ進む。
【0247】
ステップS303では、ステップS301にて始動させたタイマーを用いて、除霜運転の継続時間が予め定めた基準除霜時間を経過したか否かを判定し、基準除霜時間を経過したことが判定されるとステップS304へ進む。ステップS304では、冷却水がバイパス通路44へ流入するように三方弁42を切り替える。
【0248】
さらに、除霜運転の開始前と同等の圧送能力となるように冷却水ポンプ41の冷却水圧送能力を変更し、タイマーをリセットし、図14のステップS400に示す空調モード復帰制御へ進む。このステップS400の空調モード復帰制御では、送風機32の送風能力、吸込口モードおよび吹出口モードを除霜運転の開始前と同等の状態に戻してステップS500へ進む。
【0249】
ステップS500では、車両システムの停止が要求されているか否かを判定し、車両システムの停止が要求されていない場合には、ステップS100へ戻り、車両システムの停止が要求されている場合には、制御処理を停止させる。その他の構成および作動は第1実施形態と同様である。
【0250】
従って、本実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ることができるだけでなく、除霜運転時に、空調制御装置が圧縮機11の作動を停止させて、室内凝縮器12にて加熱能力を発揮できない場合であっても、上述した車室内連係制御を実行することによって、乗員の暖房感が不充分になってしまうことを抑制できる。
【0251】
すなわち、本実施形態では、制御ステップS106にて説明したように、ウォームアップ状態を待って除霜運転を行うので、乗員の暖房感が不充分になってしまうことを抑制できる。さらに、制御ステップS203にて説明したように、除霜運転時に吸込口モードを内気モードとするので、外気対して温度の高い内気を循環送風することで、乗員の暖房感が不充分になってしまうことを抑制できる。
【0252】
さらに、制御ステップS202にて説明したように、除霜運転時に送風機32の送風能力を低下させるので、車室内に吹き出される送風空気の温度が低下しても、乗員の暖房感が不充分になってしまうことを抑制できる。この際、制御ステップS204にて説明したように吹出口モードをフットモードとするので、例えば、送風空気を乗員の顔に向けて吹き出す場合に対して、乗員の暖房感が不充分になってしまうことを効果的に抑制できる。
【0253】
なお、上述の説明から明らかなように、本実施形態は、ヒートポンプサイクル10を適用した車両用空調装置1について説明したものと表現することができる。
【0254】
すなわち、本実施形態は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、前記圧縮機吐出冷媒と車室内に送風される送風空気とを熱交換させる利用側熱交換器(室内凝縮器12)、前記利用側熱交換器から流出した冷媒を減圧させる減圧手段(暖房用固定絞り13)、前記減圧手段にて減圧された冷媒を外気と熱交換させて蒸発させる室外熱交換器、作動時に発熱を伴う車載機器(走行用電動モータMG)を冷却する冷却媒体を循環させる冷却媒体循環回路に配置されて前記冷却媒体を外気とを熱交換させて放熱させる放熱用熱交換器(ラジエータ43)、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路、および、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路を切り替える冷却媒体回路切替手段(42)を有するヒートポンプサイクルと、車室内の内気温を検出する内気温検出手段と、前記室外熱交換器の着霜を判定する着霜判定手段とを備え、
前記室外熱交換器は、前記減圧手段にて減圧された冷媒を流通させる冷媒用チューブを有し、前記冷媒用チューブの周囲には、外気を流通させる吸熱用空気通路が形成されており、前記放熱用熱交換器は、前記冷却媒体を流通させる冷却媒体用チューブを有し、前記複数の冷却媒体用チューブの周囲には、外気を流通させる放熱用空気通路が形成されており、前記吸熱用空気通路および前記放熱用空気通路には、双方の熱交換器における熱交換を促進するとともに、前記冷媒用チューブと前記冷却媒体用チューブとの間の熱移動を可能とするアウターフィンが配置され、
前記冷却媒体回路切替手段は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器の着霜が判定され、かつ、前記車室内の内気温Trが予め定めた基準内気温KTr以上となっている際に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器へ流入させる冷却媒体回路に切り替えることを特徴とする車両用空調装置について説明したものと表現することができる。
【0255】
また、本実施形態は、上記のヒートポンプサイクルと、前記室外熱交換器の着霜を判定する着霜判定手段と、内部に前記利用側熱交換器を収容するとともに、前記送風空気の空気通路を形成するケーシングとを備え、
前記ケーシングには、前記ケーシング内へ導入させる外気と内気との導入割合を変化させる内外気切替手段(内外気切替装置33)が配置され、
前記冷却媒体回路切替手段は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器の着霜が判定された際に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器へ流入させる冷却媒体回路に切り替え、前記内外気切替手段は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器の着霜が判定された際に、前記外気に対する前記内気の導入割合を前記除霜運転へ移行する前よりも増加させることを特徴とする車両用空調装置について説明したものと表現することができる。
【0256】
また、本実施形態は、上記のヒートポンプサイクルと、前記室外熱交換器の着霜を判定する着霜判定手段と、内部に前記利用側熱交換器を収容するとともに、前記送風空気の空気通路を形成するケーシングとを備え、
前記ケーシングには、前記車室内へ前記送風空気を吹き出す複数の吹出口の開閉状態を変化させて吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段が配置され、前記吹出口として、少なくとも乗員の足下に向けて前記送風空気を吹き出すフット吹出口が設けられており、
前記冷却媒体回路切替手段は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器の着霜が判定された際に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器へ流入させる冷却媒体回路に切り替え、前記吹出口モード切替手段は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器の着霜が判定された際に、前記フット吹出口から前記送風空気を吹き出す吹出口モードに切り替えることを特徴とする車両用空調装置について説明したものと表現することができる。
【0257】
また、本実施形態は、上記のヒートポンプサイクルと、前記室外熱交換器の着霜を判定する着霜判定手段と、前記室外熱交換器の着霜を判定する着霜判定手段と、内部に前記利用側熱交換器を収容するとともに、前記送風空気の空気通路を形成するケーシングと、前記ケーシング内に配置されて車室内へ向けて前記送風空気を送風する送風手段(送風機32)とを備え、
前記冷却媒体回路切替手段は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器の着霜が判定された際に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器へ流入させる冷却媒体回路に切り替え、前記送風手段は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器の着霜が判定された際に、その送風能力を前記着霜が判定される前よりも低下させることを特徴とする車両用空調装置について説明したものと表現することができる。
【0258】
また、本実施形態は、上記のヒートポンプサイクルと、前記室外熱交換器の着霜を判定する着霜判定手段とを備え、
前記着霜判定手段は、走行中の車両の車速が予め定めた基準車速以下であって、かつ、前記室外熱交換器出口側冷媒温度が0℃以下のときに、前記室外熱交換器に着霜が生じていると判定し、前記冷却媒体回路切替手段は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器の着霜が判定された際に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器へ流入させる冷却媒体回路に切り替えることを特徴とする車両用空調装置について説明したものと表現することができる。
【0259】
(第8実施形態)
上述の第1、第7実施形態では、除霜運転時に圧縮機11の作動を停止させた例を説明したが、本実施形態では、図18に示すように、ヒートポンプサイクル10のサイクル構成を変更し、第3実施形態と同様に、除霜運転を行いながら車室内の暖房を実現する例を説明する。なお、図18は、本実施形態のヒートポンプサイクル10の除霜運転時における全体構成図であって、第1実施形態の図2に対応する図面である。
【0260】
具体的には、本実施形態では、第1実施形態に対して、暖房運転用の減圧手段として絞り開度を変更可能に構成された暖房用可変絞り83を採用している。暖房用可変絞り83は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有し、空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0261】
さらに、本実施形態では、空調制御装置が、暖房運転時および廃熱回収運転時に暖房用可変絞り83の弁開度を予め定めた所定開度に制御するとともに、除霜運転時に暖房運転時および廃熱回収運転時よりも暖房用可変絞り83の弁開度を増加させる。これにより、除霜運転時に、除霜運転へ移行する前よりも圧縮機11から吐出された高い温度の高圧冷媒を室外熱交換器16へ流入しやすくなる。
【0262】
その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1では、除霜運転時に暖房用可変絞り83の絞り開度を増加させることによって、室外熱交換器16へ高い温度の高圧冷媒を流入させて室外熱交換器16の除霜を促進できる。さらに、除霜運転時に室内凝縮器12にて送風空気を加熱する加熱能力を発揮させることができるので、車室内の暖房を行うことができる。
【0263】
さらに、外気の流れ方向から見たときに、室外熱交換器16の冷媒入口側の熱交換領域と冷媒出口側の熱交換領域との位置関係がラジエータ43の熱交換領域に対して変化しないので、第3実施形態と同様に、冷媒用チューブ16aを流れる冷媒と冷却媒体用チューブ43aを流れる冷却媒体との熱移動量の大幅な変動を抑制できる。
【0264】
(第9実施形態)
本実施形態では、図19の全体構成図に示すように、ヒートポンプサイクル10のサイクル構成を変更し、第8実施形態と同様に、除霜運転を行いながら車室内の暖房を実現する例を説明する。なお、図19は、本実施形態のヒートポンプサイクル10の除霜運転時における全体構成図であって、第1実施形態の図2に対応する図面である。
【0265】
具体的には、本実施形態では、第1実施形態に対して、室外熱交換器16から流出する流出冷媒流量を調整する流出流量調整弁84を追加している。この流出流量調整弁84の基本的構成は、第8実施形態の暖房用可変絞り83と同様であり、室外熱交換器16の冷媒流出口に一体的に構成されている。
【0266】
さらに、本実施形態では、空調制御装置が、暖房運転時、廃熱回収運転時および冷房運転時に流出流量調整弁84の弁開度を全開にするとともに、除霜運転時に、暖房運転時、廃熱回収運転時および冷房運転時よりも流出流量調整弁84の弁開度を縮小させる。これにより、除霜運転時に、除霜運転へ移行する前よりも室外熱交換器16へ流入する流入冷媒流量が減少する。その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0267】
従って、本実施形態の車両用空調装置1では、除霜運転時に流出流量調整弁84の弁開度を縮小させることによって、室外熱交換器16へ流入する流入冷媒流量を減少させることができ、第8実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0268】
さらに、流出流量調整弁84が室外熱交換器16の冷媒流出口に一体的に構成されているので、圧縮機11吐出口側から流出流量調整弁84入口側へ至る冷媒通路容積を縮小して、速やかに室外熱交換器16へ流入する冷媒流量を減少させることができる。
【0269】
(第10、第11実施形態)
上述の第3、第8、第9実施形態では、除霜運転時に圧縮機11の作動を停止させることなく室外熱交換器16にて加熱能力を発揮させて車室内の暖房を実現する例を説明したが、第9実施形態では、図20に示すように、室内空調ユニット30のケーシング31内に電力を供給されることによって発熱する発熱体であるPTCヒータ85を配置している。
【0270】
このPTCヒータ85は、室内凝縮器12の送風空気流れ下流側に配置されて、除霜運転時に空調制御装置から電力が供給されて発熱する。これにより、除霜運転時に空調制御装置が圧縮機11の作動を停止させても、PTCヒータ85を補助加熱手段として機能させ、送風空気を加熱して車室内の暖房を実現することができる。
【0271】
また、第11実施形態では、図21に示すように、熱媒体としてのエンジン冷却水と送風空気とを熱交換させるヒータコア86を設けている。このヒータコア86の基本的構成は第2実施形態のヒータコア63と同様であり、室内凝縮器12の送風空気流れ下流側に配置されて、除霜運転時にエンジン冷却水が流入する。
【0272】
これにより、除霜運転時に空調制御装置が圧縮機11の作動を停止させても、ヒータコア86を補助加熱手段として機能させ、送風空気を加熱して車室内の暖房を実現することができる。もちろん、ヒータコア86にて送風空気を加熱する熱源となる熱媒体はエンジン冷却水に限定されることなく、走行用電動モータMG、インバータ等、作動時に発熱を伴う車載機器を冷却する冷却水等を採用してもよい。
【0273】
また、第10実施形態のPTCヒータ85および第11実施形態のヒータコア86の双方を室内凝縮器12の送風空気流れ下流側に配置して補助加熱手段として機能させてもよい。なお、図20、図21は、それぞれ、第9、第11実施形態のヒートポンプサイクル10の除霜運転時における全体構成図であって、第1実施形態の図2に対応する図面である。
【0274】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0275】
(1)上述の実施形態では、作動時に発熱を伴う車載機器(外部熱源)として、走行用電動モータMGを採用した例を説明したが、外部熱源はこれに限定されない。例えば、ヒートポンプサイクル10を車両用空調装置1に適用する場合は、エンジン、走行用電動モータMGに電力を供給するインバータ等の電気機器を外部熱源として採用できる。
【0276】
また、エンジンを外部熱源とする際には、エンジン冷却水のみならず、エンジン排気の有する熱量を除霜に用いてもよい。さらに、ヒートポンプサイクル10を据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用する場合は、ヒートポンプサイクル10の圧縮機の駆動減としてのエンジン、電動モータおよびその他の電気機器を外部熱源として採用できる。
【0277】
(2)上述の実施形態では、冷却水循環回路40の冷却媒体回路を切り替える回路切替手段として、電気式の三方弁42を採用した例を説明したが、回路切替手段はこれに限定されない。例えば、サーモスタット弁を採用してもよい。サーモスタット弁は、温度によって体積変化するサーモワックス(感温部材)によって弁体を変位させて冷却媒体通路を開閉する機械的機構で構成される冷却媒体温度応動弁である。従って、サーモスタット弁を採用することで、冷却水温度センサ52を廃止することもできる。
【0278】
(3)上述の実施形態では、室外熱交換器16の冷媒用チューブ16a、ラジエータ43の冷却媒体用チューブ43aおよびアウターフィン50をアルミニウム合金(金属)で形成し、ろう付け接合した例を説明したが、もちろん、アウターフィン50を、他の伝熱性に優れる材質(例えば、カーボンナノチューブ等)で形成して、接着等の接合手段によって接合してもよい。
【0279】
(4)上述の実施形態では、通常の暖房運転時に、冷却水をラジエータ43を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えることによって、走行用電動モータMGから放熱される熱を冷却水に蓄熱させているが、さらに、冷却水循環回路40にパラフィン等の蓄熱材料を収納した蓄熱容器(蓄熱装置)を配置して、通常の暖房運転時に走行用電動モータMGから放熱される熱を蓄熱容器内に蓄熱させてもよい。
【0280】
さらに、冷却水循環回路40に電力を供給されることによって発熱する発熱体(具体的には、PTCヒータ)を配置して、通常の暖房運転時に発熱体から放熱される熱を冷却水に蓄熱させてもよいし、走行用電動モータMGを含む作動時に発熱を伴う車載機器と発熱体の少なくとも一方から放熱される熱を冷却水に蓄熱させてもよい。この際、発熱体の発熱量は、不必要な電力消費を回避するために外気温の低下に伴って増加させるように制御されることが望ましい。
【0281】
(5)上述の第1実施形態では、車両の車速が予め定めた基準車速(本実施形態では、20km/h)以下であって、かつ、室外熱交換器16出口側冷媒温度Teが0℃以下のときに、室外熱交換器16に着霜が生じていると判定する着霜判定手段を採用した例を説明したが、着霜の判定条件はこれに限定されない。
【0282】
例えば、室外熱交換器16のアウターフィン50の温度を検出する温度検出手段を設け、この温度検出手段によって検出された温度が予め定めた着霜判定基準温度(例えば、−5℃)以下になったときに、着霜しているものと判定するようにしてもよい。
【0283】
(6)上述の実施形態では、除霜運転時に送風ファン17の作動を停止させる等の手段によって、吸熱用空気通路16bおよび放熱用空気通路43bへ流入する外気の風量を減少させた例を説明したが、通常運転時および除霜運転時を問わず、圧縮機11を停止させた際に、予め定めた所定時間が経過するまで、送風ファン17の送風能力を増加させてもよい。これによれば、圧縮機11を停止させた際に、送風ファン17の送風能力を増加させて、室外熱交換器16の温度を速やかに外気温と同程度まで上昇させることができる。
【0284】
(7)上述の各実施形態にて説明した構成は、その他の実施形態に適用してもよい。例えば、第2〜第5、第8〜第11実施形態のヒートポンプサイクル10が適用された車両用空調装置にて、第7実施形態で説明した車室内連係制御を実行してもよい。
【0285】
例えば、第3実施形態のヒートポンプサイクル10に第7実施形態の車室内連係制御を適用する場合は、制御ステップS200の空調モード変更制御にて、空調制御装置が圧縮機11の作動を停止させることなく開閉弁15cを開くようにすればよい。第4実施形態に適用する場合は、制御ステップS200の空調モード変更制御にて、開閉弁15aおよび開閉弁15cを開くようにすればよい。
【0286】
同様に、第8実施形態に適用する場合は、制御ステップS200の空調モード変更制御にて、暖房用可変絞り83の弁開度を縮小させればよい。第9実施形態に適用する場合は、制御ステップS200の空調モード変更制御にて、流出流量調整弁84の弁開度を縮小させればよい。
【0287】
(8)上述の実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を採用してもよい。さらに、ヒートポンプサイクル10が、圧縮機11吐出冷媒が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
【符号の説明】
【0288】
11 圧縮機
12 室内凝縮器
13 暖房用固定絞り
16 室外熱交換器
16a 冷媒用チューブ
16b 吸熱用空気通路
17 送風ファン
32 送風機
33 内外気切替装置
37a〜37c 吹出口モード切替手段
40 冷却水循環回路
42 三方弁
43 ラジエータ
43a 冷却媒体用チューブ
43b 放熱用空気通路
50 アウターフィン
52 冷却水温度センサ
83 暖房用可変絞り
84 流出流量調整弁
MG 走行用電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機(11)吐出冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させる利用側熱交換器(12)と、
前記利用側熱交換器(12)から流出した冷媒を減圧させる減圧手段(13、83)と、
前記減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を外気と熱交換させて蒸発させる室外熱交換器(16)とを備え、
前記室外熱交換器(16)の着霜時に、前記室外熱交換器(16)についた霜を取り除く除霜運転を行うヒートポンプサイクルであって、
外部熱源(MG)を冷却する冷却媒体を循環させる冷却媒体循環回路(40)に配置されて、前記冷却媒体を外気とを熱交換させて放熱させる放熱用熱交換器(43)と、
前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路、および前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路を切り替える冷却媒体回路切替手段(42)とを備え、
前記室外熱交換器(16)は、前記減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を流通させる冷媒用チューブ(16a)を有し、
前記冷媒用チューブ(16a)の周囲には、外気を流通させる吸熱用空気通路(16b)が形成されており、
前記放熱用熱交換器(43)は、前記冷却媒体を流通させる冷却媒体用チューブ(43a)を有し、
前記複数の冷却媒体用チューブ(43a)の周囲には、外気を流通させる放熱用空気通路(43b)が形成されており、
前記吸熱用空気通路(16b)および前記放熱用空気通路(43b)には、双方の熱交換器(16、43)における熱交換を促進するとともに、前記冷媒用チューブ(16a)と前記冷却媒体用チューブ(43a)との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50)が配置され、
前記冷却媒体回路切替手段(42)は、少なくとも前記除霜運転時に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替えることを特徴とするヒートポンプサイクル。
【請求項2】
さらに、前記室外熱交換器(16)下流側の冷媒を前記熱交換対象流体と熱交換させて蒸発させる室内蒸発器(20)と、
前記圧縮機(11)吐出冷媒を前記利用側熱交換器(12)へ流入させて前記熱交換対象流体を加熱する加熱運転時の冷媒流路、および、前記室外熱交換器(16)にて放熱させた冷媒を前記室内蒸発器(20)へ流入させて前記熱交換対象流体を冷却する冷却運転時の冷媒流路とを切り替える冷媒流路切替手段を備え、
前記加熱運転時に前記冷媒用チューブ(16a)を流通する冷媒の流れ方向は、前記冷却運転時に前記冷媒用チューブ(16a)を流通する冷媒の流れ方向と同一であることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項3】
前記除霜運転時には、前記室外熱交換器(16)へ流入する流入冷媒流量を前記除霜運転へ移行する前よりも減少させるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項4】
前記減圧手段(83)は、絞り開度を変更可能に構成された可変絞り機構であり、
前記減圧手段(83)は、前記除霜運転時に、前記絞り開度を前記除霜運転へ移行する前よりも増加させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項5】
さらに、前記室外熱交換器(16)から流出する流出冷媒流量を調整する流出流量調整弁(84)を備え、
前記流出流量調整弁(84)は、前記除霜運転時に、前記流出冷媒流量を前記除霜運転へ移行する前よりも低下させることを特徴とする請求項1ないし4に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項6】
前記流出流量調整弁(84)は、前記室外熱交換器(16)の冷媒流出口に一体的に構成されていることを特徴とする請求項5に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項7】
さらに、前記室外熱交換器(16)および前記放熱用熱交換器(43)の双方に向けて外気を送風する室外送風手段(17)を備え、
前記室外送風手段(17)は、前記圧縮機(11)を停止させた際に、送風能力を前記圧縮機(11)を停止させる前よりも増加させることを特徴とする請求項1ないし6に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項8】
前記除霜運転時には、前記利用側熱交換器(12)における前記熱交換対象流体の加熱能力を前記除霜運転へ移行する前よりも低下させるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項9】
前記除霜運転時には、前記吸熱用空気通路(16b)および前記放熱用空気通路(43b)へ流入する外気の風量を減少させるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項10】
さらに、前記室外熱交換器(16)および前記放熱用熱交換器(43)の双方に向けて外気を送風する室外送風手段(17)を備え、
前記放熱用熱交換器(43)は、前記室外熱交換器(16)に対して、前記室外送風手段(17)によって送風された外気の流れ方向(X)風上側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項11】
前記複数の冷媒用チューブ(16a)のうち少なくとも1つは、前記複数の冷却媒体用チューブ(43a)間に配置され、
前記複数の冷却媒体用チューブ(43a)のうち少なくとも1つは、前記複数の冷媒用チューブ(16a)間に配置され、
前記吸熱用空気通路(16b)および前記放熱用空気通路(43b)のうち少なくとも1つは、1つの空気通路として形成されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項12】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
さらに、車室内の内気温を検出する内気温検出手段と、
前記室外熱交換器(16)の着霜を判定する着霜判定手段とを備え、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、
前記冷却媒体は、前記車載機器(MG)を冷却する冷却水であり、
前記冷却媒体回路切替手段(42)は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器(16)の着霜が判定され、かつ、前記車室内の内気温(Tr)が予め定めた基準内気温(KTr)以上となっている際に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替えることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項13】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
さらに、前記室外熱交換器(16)の着霜を判定する着霜判定手段を備え、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、
前記冷却媒体は、前記車載機器(MG)を冷却する冷却水であり、
前記利用側熱交換器(12)は、内部に前記送風空気の空気通路を形成するケーシング(31)内に配置されており、
前記ケーシング(31)には、前記ケーシング(31)内へ導入させる外気と内気との導入割合を変化させる内外気切替手段(33)が配置され、
前記冷却媒体回路切替手段(42)は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替え、
前記内外気切替手段(33)は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、前記外気に対する前記内気の導入割合を前記除霜運転へ移行する前よりも増加させることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項14】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
さらに、前記室外熱交換器(16)の着霜を判定する着霜判定手段を備え、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、
前記冷却媒体は、前記車載機器(MG)を冷却する冷却水であり、
前記利用側熱交換器(12)は、内部に前記送風空気の空気通路を形成するケーシング(31)内に配置されており、
前記ケーシング(31)には、前記車室内へ前記送風空気を吹き出す複数の吹出口の開閉状態を変化させて吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段(37a〜37c)が配置され、
前記吹出口として、少なくとも乗員の足下に向けて前記送風空気を吹き出すフット吹出口が設けられており、
前記冷却媒体回路切替手段(42)は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替え、
前記吹出口モード切替手段(37a〜37c)は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、前記フット吹出口から前記送風空気を吹き出す吹出口モードに切り替えることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項15】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
さらに、前記室外熱交換器(16)の着霜を判定する着霜判定手段を備え、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、
前記冷却媒体は、前記車載機器(MG)を冷却する冷却水であり、
前記利用側熱交換器(12)は、内部に前記送風空気の空気通路を形成するケーシング(31)内に配置されており、
前記ケーシング(31)内には、車室内へ向けて前記送風空気を送風する送風手段(32)が配置され、
前記冷却媒体回路切替手段(42)は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替え、
前記送風手段(32)は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、その送風能力を前記着霜が判定される前よりも低下させることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項16】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
さらに、前記室外熱交換器(16)の着霜を判定する着霜判定手段を備え、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、
前記冷却媒体は、前記車載機器(MG)を冷却する冷却水であり、
前記着霜判定手段は、車両の車速が予め定めた基準車速以下であって、かつ、前記室外熱交換器(16)出口側冷媒温度が0℃以下のときに、前記室外熱交換器(16)に着霜が生じていると判定し、
前記冷却媒体回路切替手段(42)は、前記着霜判定手段によって前記室外熱交換器(16)の着霜が判定された際に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替えることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項17】
前記着霜判定手段は、走行中の車両の車速が予め定めた基準車速以下であって、かつ、前記室外熱交換器(16)出口側冷媒温度が0℃以下のときに、前記室外熱交換器(16)に着霜が生じていると判定することを特徴とする請求項16に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項18】
前記車載機器(MG)へ流入する冷却水温度を検出する冷却水温度検出手段(52)を備え、
前記冷却媒体回路切替手段(42)は、前記冷却水温度検出手段(52)によって検出された冷却水温度(Tw)が予め定めた基準温度以上になった際に、前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)へ流入させる冷却媒体回路に切り替えることを特徴とする請求項12ないし17のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項19】
前記冷却媒体循環回路(40)は、前記冷却媒体回路切替手段(42)が前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えた際に、前記外部熱源の有する熱量を蓄熱するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし18のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項20】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記外部熱源は、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)であり、
前記冷却媒体は、前記車載機器(MG)を冷却する冷却水であり、
前記冷却媒体循環回路(40)は、前記冷却媒体回路切替手段(42)が前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えた際に、前記車載機器(MG)から放熱される熱を、前記冷却水に蓄熱するように構成されていることを特徴とする請求項19に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項21】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記外部熱源は、電力を供給されることによって発熱を伴う発熱体であり、
前記冷却媒体は、前記発熱体を冷却する冷却水であり、
前記冷却媒体循環回路(40)は、前記冷却媒体回路切替手段(42)が前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えた際に、前記発熱体から放熱される熱を、前記冷却水に蓄熱するように構成されていることを特徴とする請求項19に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項22】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記外部熱源として、作動時に発熱を伴う車載機器(MG)および電力を供給されることによって発熱を伴う発熱体が設けられ、
前記冷却媒体は、前記車載機器(MG)および前記発熱体を冷却する冷却水であり、
前記冷却媒体循環回路(40)は、前記冷却媒体回路切替手段(42)が前記冷却媒体を前記放熱用熱交換器(43)を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えた際に、前記車載機器(MG)および前記発熱体の少なくとも一方から放熱される熱を、前記冷却水に蓄熱するように構成されていることを特徴とする請求項19に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項23】
前記発熱体は、その発熱量が外気温に基づいて制御されることを特徴とする請求項21または22に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項24】
さらに、前記減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を前記室外熱交換器(16)を迂回させて、前記室外熱交換器(16)の冷媒流出口側へ導く室外器迂回通路(64)と、
前記減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を前記室外熱交換器(16)側へ導く冷媒回路と、前記減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を前記室外器迂回通路(64)側へ導く冷媒回路とを切り替える室外器迂回通路切替手段(15c)を備え、
前記室外器迂回通路切替手段(15c)は、前記除霜運転時に、前記減圧手段(13、83)にて減圧された冷媒を前記室外器迂回通路(64)側へ導く冷媒回路に切り替えることを特徴とする請求項1ないし23のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項25】
さらに、前記室外熱交換器(16)下流側の冷媒を前記熱交換対象流体と熱交換させて蒸発させる室内蒸発器(20)と、
前記室外熱交換器(16)下流側の冷媒を前記室内蒸発器(20)を迂回させて、前記室内蒸発器(20)の冷媒流出口側へ導く蒸発器迂回通路(20a)と、
前記室外熱交換器(16)下流側の冷媒を前記室内蒸発器(20)側へ導く冷媒回路と、前記室外熱交換器(16)下流側の冷媒を前記蒸発器迂回通路(20a)側へ導く冷媒回路とを切り替える蒸発器迂回通路切替手段(15b)とを備え、
前記蒸発器迂回通路切替手段(15b)は、前記除霜運転時に、前記室外熱交換器(16)下流側の冷媒を前記室内蒸発器(20)側へ導く冷媒回路に切り替えることを特徴とする請求項1ないし24のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項26】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記利用側熱交換器(12)は、内部に前記送風空気の空気通路を形成するケーシング(31)内に配置されており、
さらに、前記ケーシング(31)内には、作動時に発熱を伴う車載機器によって加熱された熱媒体および電力を供給されることによって発熱する発熱体(85)の少なくとも一方を熱源として前記送風空気を加熱する補助加熱手段が配置されていることを特徴とする請求項1ないし25のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−17092(P2012−17092A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123199(P2011−123199)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】