説明

ビデオカメラ

【課題】 巡回型3D−NRを搭載した従来のビデオカメラでは、三原色のうち赤色や青色はノイズが目立つので、赤色や青色のノイズを低減しなければならないが、緑色は、残像が視覚上特に目立つのであまりノイズ低減効果を上げられない。
【解決手段】 三原色信号に対してノイズ低減処理を行うNR回路6は、三原色信号R、G、Bがそれぞれ別々に供給され、制御係数Kに応じたノイズ低減処理を行う3D−NR61R、61G、61Bと、3DーNR61Gの出力緑色信号Gが供給され、その信号レベルを検出するレベル検出部62と、レベル検出部62からの検出信号に応じた制御係数Kを生成する制御回路63とより構成されている。制御回路63はGレベルが大きいほど視覚上の残像が目立つのでNR効果を小さくし、Gレベルが小さいほど視覚上の残像が目立たないのでNR効果を大きくするような制御係数Kを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビデオカメラに係り、特にノイズリデューサによりノイズ低減を行うビデオカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラで映像情報を記録するときは、CCD(charge coupled device;電荷結合素子)などの光電変換素子を用いて、映像情報を電気信号に変換して得た映像信号をメモリやテープなどの磁性体に記録する。この記録の際にノイズリデューサ(NR)を通してノイズ低減を行う場合がある。
【0003】
上記のノイズ低減を行うために、撮像素子により得られた撮像信号をディジタル撮像信号に変換するA/D変換器と、上記ディジタル撮像信号に対してノイズ低減処理以外の各種信号処理を行う信号処理部との間に、ディジタル撮像信号に対してノイズ低減処理を行うノイズリダクション部(ノイズリデューサ)を設けたビデオカメラが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。上記のノイズリデューサとしては、3次元の巡回型NR(以下、「3D−NR」とも記す)を用いると、大きなノイズ低減効果が得られる。
【0004】
ここで、ビデオカメラに巡回型3D−NRを搭載する場合、マトリクス処理により輝度信号(Y)や色差信号(B−Y、R−Y)に変換される前の三原色信号に対して、3D−NRを実施することが考えられる。つまり、マトリクス回路の入力側に巡回型3D−NRが設けられる。ここで、NRは静止画を前提に時間軸上の相関を利用してノイズ低減を行うものであるから、動画部分を含んだ自然画に対しては、ノイズ低減度合いを落とし不自然さを無くした設定を行っている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−101815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ビデオカメラの視覚上の性質として、三原色のうち赤色や青色はノイズが目立つので、画面全体の画質印象を向上させるためには、赤色や青色のノイズを低減しなければならない。しかし、三原色の残りの一つの緑色は、残像が視覚上特に目立つのであまりノイズ低減効果を上げられない。
【0007】
しかしながら、上記の巡回型3D−NRを搭載した従来のビデオカメラでは、三原色信号中の緑色信号に関係なく3D−NRを実施するようにしているため、ノイズ低減効果が大きいと緑色の残像が視覚上目立ってしまう。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、緑色信号の信号レベルに応じてノイズ低減量を制御することにより、視覚上の残像をできるだけ目立たせることなくノイズ低減効果を向上し得るビデオカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するため、撮像した光学像を光電変換して得た映像信号を3原色R,G,B信号に分離出力するR,G,B分離回路と、R,G,B分離回路から出力する3原色R,G,B信号を入力して、3原色R,G,B信号のそれぞれの時間軸方向のノイズ低減処理を行うノイズ低減処理回路と、ノイズ低減処理回路から出力するノイズ低減処理された3原色R,G,B信号をマトリクス処理するマトリクス処理回路とを備え、マトリクス処理回路の出力側にて、光学像に係る残像を増大することなくノイズ低減した輝度信号を少なくとも出力するビデオカメラにおいて、
ノイズ低減処理回路は、R,G,B分離回路の出力側から得たG信号の振幅データ値、マトリクス処理回路の入力側から得たG信号の振幅データ値、マトリクス処理回路から出力する輝度信号の振幅データ値のいずれか一つを検出する検出部を備えており、検出部は、その検出結果に応じて、ノイズ低減処理回路を構成するG信号ノイズ低減処理部のノイズ低減係数を大又は小に可変調整する機能を有しており、いずれか一つの振幅データが予め設定してある基準データ値に対して大であることを検出したときは、G信号ノイズ低減部に対して、ノイズ低減係数を次第に小とするように可変調整し、いずれか一つの振幅データが基準データ値に対して小であることを検出したときには、G信号ノイズ低減部に対して、ノイズ低減係数を次第に大とするように可変調整することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、残像が視覚上特に目立つG信号の信号レベルに対応したノイズ低減効果が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、残像が視覚上特に目立つG信号の信号レベルに対応したノイズ低減効果が得られるようにしたため、残像が視覚上目立たない被写体画像のときにはノイズ低減効果を大きくし、残像が視覚上目立つ被写体画像のときにはノイズ低減効果を小さくすることで、ノイズが目立ちやすい赤色や青色に対して多く、残像が目立ちやすい緑色に対して少ないノイズ低減効果が期待でき、これにより画面全体のノイズ及び残像が少ないビデオカメラを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明になるビデオカメラの第1の実施の形態のブロック図、図7は図1の要部であるNRの一実施の形態のブロック図、図3は図7中の3DーNRの一例のブロック図を示す。図1に示す実施の形態は、単板式のビデオカメラで、レンズ1を通った被写体からの光は、撮像素子2により電気信号に変換されてAGC回路3に供給され、ここで自動利得制御により振幅が一定に制御された後、A/D変換器4によりディジタル信号に変換される。
【0013】
単板式ビデオカメラの場合、撮像素子2の入射面側に設けられている色フィルタが、画素毎に格子状に配置されているので、これに対応して上記のディジタル信号はRGB分離回路5にてR(赤)、G(緑)、B(青)の三原色信号に分けられる。この三原色信号は後述する回路構成のNR回路6によりノイズ低減処理が適切に施された後、RGB同時化回路7にて全部の画素の三原色信号が同時化されてからマトリクス回路8に供給され、ここで輝度信号Y、2種類の色差信号R−Y信号及びB−Y信号に変換される。これらの輝度信号Y、2種類の色差信号R−Y信号及びB−Y信号は後段の記録ブロック(図示せず)に送られる。
【0014】
ここで、上記のNR回路6は図2のブロック図に示す構成とされている。すなわち、NR回路6は、赤色信号R、緑色信号G、青色信号Bがそれぞれ別々に供給され、制御係数Kに応じたノイズ低減処理を行う巡回型の3次元ノイズリデューサ(3D−NR)61R、61G、61Bと、3DーNR61Gの出力緑色信号Gが供給され、その信号レベルを検出するレベル検出部62と、レベル検出部62からの検出信号に応じた制御係数Kを生成して3D−NR61R、61G、61Bに供給する制御回路63とより構成されている。
【0015】
すなわち、このNR回路6は緑色信号Gのみレベル検出部62で信号レベルが検出され、制御回路63は緑色信号Gの信号レベルに対応して、3D−NR61R、61G及び61Bをコントロールする制御係数Kを作成している。
【0016】
上記の3D−NR61R、61G及び61Bの各回路構成は同一であり、それぞれ図3のブロック図に61で示すような公知の構成とされている。すなわち、巡回型3次元ノイズリデューサ(3D−NR)61は、入力原色信号を(1−K)倍する乗算器611と、乗算器611の出力信号と入力信号をK倍する乗算器614の出力信号とを加算する加算器612と、加算器612から出力される出力原色信号を1フレーム分記憶するフレームメモリ613と、フレームメモリ613から出力された原色信号をK倍する乗算器614とから構成されている(ただし、Kは制御回路63から供給される制御係数(ノイズ低減係数))。
【0017】
この3DーNR61(61R、61G及び61B)によれば、制御係数Kによりノイズ低減効果を変えられる。制御係数Kは”0”から”1”までの値であるが、”0”に近づくほど、フレームメモリ613からの過去の信号加算が少なくなるので、ノイズ低減効果(NR効果)は小さい。逆に、制御係数Kが”1”に近づくとNR効果は高い。制御回路63は、動的にマイクロコンピュータでコントロールしたり、単に設定する場合もある。
【0018】
本実施の形態では、制御回路63は、図4に示すように、3DーNR61Gから供給される緑色信号Gの信号レベル(Gレベル)が大きい場合は、制御係数Kの値を”0”以上で中間値より小さな値とし、Gレベルが小さい場合は、制御係数Kの値を中間値より大きく”1”以下の値とする。
【0019】
これを実現する制御回路63の構成としては、図5(A)に示すGレベルと第1のスレッショルドレベルTh1とを比較して図5(B)にCOMP1で示す比較結果を出力する第1のコンパレータと、図5(A)に示すGレベルと第2のスレッショルドレベルTh2とを比較して図5(B)にCOMP2で示す比較結果を出力する第2のコンパレータと、これら第1及び第2のコンパレータの出力比較結果の論理値の組み合わせに基づいて、図5(C)に示す3段階の信号を出力する論理回路とからなる構成がある。
【0020】
この構成の制御回路63では、図5(A)、(C)から分かるように、Gレベルが第1のスレッショルドレベルTh1以下の小レベルの場合は、制御係数Kを大なる第1の値としてNR効果を高くし、Gレベルが第2のスレッショルドレベルTh2以上の大レベルの場合は、制御係数Kを小なる第3の値としてNR効果を小さくし、GレベルがTh1からTh2の範囲内のレベルのときには、制御係数Kを中間値の第2の値として、所期のNR効果を得るようにすることができる。すなわち、この構成の制御回路63は、制御係数Kは3段階に制御され、NR効果を3段階のいずれかに制御する。
【0021】
また、制御回路63の別の構成としては、図6(A)に示す緑色信号Gを最大値1に反転増幅する反転増幅器が考えられる。この場合は、図6(A)に示す緑色信号Gが入力されると、反転増幅器の出力信号は図6(B)に示すようになり、この信号が制御係数Kとして出力される。この構成の制御回路63の場合は、制御係数KはGレベルに反比例した値となるため、Gレベルが大きいほど視覚上の残像が目立つのでNR効果を小さくし、Gレベルが小さいほど視覚上の残像が目立たないのでNR効果を大きくする、無段階のNR効果の制御ができる。
【0022】
一方、輝度信号Yは図1のマトリクス回路8により三原色信号から生成されるが、この場合の計算式は次式がよく使用される。
【0023】
Y=0.3R+0.59G+0.11B
上式から分かるように、赤色信号レベルR、青色信号レベルBに対して緑色信号レベルGの係数が大きいので、Y≒G と考えられ、図2中のレベル検出部62に入力されるG信号を輝度信号Yに置き換えて、輝度信号レベルを制御回路63に供給することも考えられる。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、緑色信号レベルに応じて3D−NRのノイズ低減効果を制御することで、ノイズが目立ち易い赤色や青色に多く、残像が目立ち易い緑色に少ないNR効果が期待でき、画面全体のノイズ及び残像を共に少なくできる。
【0025】
図7は本発明になるビデオカメラの第2の実施の形態のブロック図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図7に示す実施の形態は、3板式のビデオカメラで、レンズ1を通った被写体からの光はプリズム10により三原色光に分けられ、各原色光R、G、Bは各原色光専用の撮像素子2R、2G、2Bにより電気信号に変換される。
【0026】
撮像素子2R、2G、2Bから出力された各原色光信号は、専用のAGC回路3R、3G、3Bを経てA/D変換器4R、4G、4Bにより互いに独立してディジタル信号に変換された後、NR回路6に共通に入力され、ここで図2乃至図6と共に説明したノイズ低減処理が施される。NR回路6から出力された各原色信号はマトリクス回路8によりY、B−Y、R−Y信号に変換される。
【0027】
本実施の形態も、第1の実施の形態と同様のNR回路6を用いているので、第1の実施の形態と同様に、ノイズが目立ち易い赤色や青色に多く、残像が目立ち易い緑色に少ないNR効果が期待でき、画面全体のノイズ及び残像を共に少なくできる。
【0028】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、例えば、制御回路63はマイクロコンピュータにG信号を取り込み、4段階以上に分けて制御係数Kを出力する方法でもよい。更に発展させて、三原色信号から生成した特定の色相(例えば、肌色)に対して、制御係数Kの特定の値を出力して、全ての色に対してNR効果を変えることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態のブロック図である。
【図2】本発明の撮像装置で用いるNR回路の一実施の形態のブロック図である。
【図3】図2中の3D−NR回路の一例のブロック図である。
【図4】図2中の制御回路の入力Gレベルと出力制御係数Kとの関係を示す図である。
【図5】図2及び図3中の制御回路の一例の構成を説明する波形図である。
【図6】図2及び図3中の制御回路の他の例の構成を説明する波形図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態のブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
2、2R、2G、2B 撮像素子
5 RGB分離回路
6 NR回路(ノイズリデューサ)
7 RGB同時化回路
8 マトリクス回路
61 巡回型3次元ノイズリデューサ(3D−NR)
62 レベル検出回路
63 制御回路
611、614 乗算器
612 加算器
613 フレームメモリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像した光学像を光電変換して得た映像信号を3原色R,G,B信号に分離出力するR,G,B分離回路と、
前記R,G,B分離回路から出力する3原色R,G,B信号を入力して、3原色R,G,B信号のそれぞれの時間軸方向のノイズ低減処理を行うノイズ低減処理回路と、
前記ノイズ低減処理回路から出力するノイズ低減処理された3原色R,G,B信号をマトリクス処理するマトリクス処理回路とを備え、
前記マトリクス処理回路の出力側にて、前記光学像に係る残像を増大することなくノイズ低減した輝度信号を少なくとも出力するビデオカメラにおいて、
前記ノイズ低減処理回路は、
前記R,G,B分離回路の出力側から得たG信号の振幅データ値、前記マトリクス処理回路の入力側から得たG信号の振幅データ値、前記マトリクス処理回路から出力する前記輝度信号の振幅データ値のいずれか一つを検出する検出部を備えており、
前記検出部は、その検出結果に応じて、前記ノイズ低減処理回路を構成するG信号ノイズ低減処理部のノイズ低減係数を大又は小に可変調整する機能を有しており、前記いずれか一つの振幅データが予め設定してある基準データ値に対して大であることを検出したときは、前記G信号ノイズ低減部に対して、前記ノイズ低減係数を次第に小とするように可変調整し、前記いずれか一つの振幅データが前記基準データ値に対して小であることを検出したときには、前記G信号ノイズ低減部に対して、前記ノイズ低減係数を次第に大とするように可変調整することを特徴とするビデオカメラ。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−254131(P2006−254131A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68304(P2005−68304)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】