説明

ビニルアミドポリマーのグリオキサール化

本発明は、ポリビニルアミドのセルロース反応性付加物を製造するための方法、及び該方法によりもたらされる組成物に関する。セルロース反応性付加物の製造は、本明細書で定義される臨界濃度に近づけて実施する。反応をこの臨界濃度に近づけて行うと、ゲル化の危険性が最小限に抑えられ、消費されるグリオキサールが最小限に抑えられ、保存寿命が増大する。さらに、本発明のグリオキサール化ビニルアミドは、既に記載の技術において開示されている付加物に比べたとき、改善した湿式及び乾式強化効率を紙及び板紙に付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により全体が本明細書に組み入れられる、2006年9月7日出願の米国仮出願第60/843,156号、及び2006年10月12日出願の米国仮出願第60/851,188号の恩典を主張する。
【0002】
本発明は、ポリビニルアミドのセルロース反応性付加物を製造するための方法、及び該方法により得られる組成物に関する。
【0003】
本発明の方法により得られるポリビニルアミドセルロース反応性付加物は、紙又は板紙用の乾式及び湿式強化助剤として使用され、ウェットエンドにおいてセルロースに適用するか、又は湿紙若しくは板紙に直接適用することができる。
【背景技術】
【0004】
紙及び板紙の強化用のウェットエンド添加剤としての合成水溶性ポリマーの使用は広く実践されている。紙強化剤としてのセルロース反応性水溶性ビニルアミドコポリマーの使用も一般的である。ビニルアミドポリマー強化助剤の1つの特定のクラスは、熱硬化するようにグリオキサール又はセルロース反応性剤で改質されているビニルアミドポリマーを含む。
【0005】
米国特許第3,556,392号には、紙強化剤として使用されるグリオキサールと反応した水溶性ビニルアミドポリマーの合成が記載されている。ビニルアミドポリマーは、セルロースに対する親和性を向上させるためにポリマーに具体的な官能基を付与する、イオン性コモノマー又は他のコモノマーを含むことができる。主鎖ビニルアミドポリマーは、熱硬化性付加物を形成するために十分なグリオキサールと反応する。反応液のpHを約8に上昇させることで反応を触媒し、溶液粘度のわずかな上昇に気づいた際に、pHを約7に低下させることで反応の進行を遅延させる。所定の粘度標的に達した際に、pHを約3.5〜4に低下させることで反応をクエンチする。ガードナー−ホルト気泡粘度計を用いて反応液の粘度上昇を測定することで、グリオキサールによるビニルアミドポリマーの官能化の程度を監視する。米国特許第3,556,392号は、最終の酸クエンチの後で、所望の反応の程度に達した際に、最初のグリオキサールの約半分が、最終生成物中で未反応のままであり、強化助剤としては機能しないことを教示している。
【0006】
米国特許第3,556,392号は、先行技術の最終生成物が、73°F及び固形分濃度9パーセントで8日間エージングした際に不溶性ゲルを形成するであろうことを教示している。
【0007】
米国特許第4,217,425号には、アクリルアミドホモポリマー、ポリDADMAC(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、及びグリオキサールの水性ブレンドから製造される強化助剤が開示されている。弱アルカリ性条件を援用することで反応混合物を触媒し、所定の粘度上昇に達するまで溶液粘度を監視する。その時点で、pHを約4に低下させることで反応を「停止させる(killed)」。米国特許第4,217,425号の実施例1では、アクリルアミドポリマー、DADMACポリマー、及びグリオキサールをアルカリ性条件下で溶液中で混合する。360分後、溶液粘度が17cpsとして測定され、400分後、粘度が32cpsとして測定され、415分後、粘度が55cpsとして測定される。分子量の増加を溶液粘度の増加として測定する。
【0008】
500〜6000の範囲の分子量を有するカチオン性アクリルアミドポリマーのグリオキサール化により製造される紙強化剤は、米国特許第4,605,702号により教示される。この特許は、以前の開示と比較して、経時的な湿潤強度の損失が改善しているとされる。粘度計を使用して、グリオキサール化反応の進行に従う溶液粘度の増加を測定する。
【0009】
グリオキサールの複数回の添加、及びアルデヒド捕捉剤の添加により得られる、増大した保存安定性を有するとされるグリオキサール化ポリビニルアミドは、米国特許出願公開第20050187356号において教示されている。粘度が12cpsに達するまでpH8で主鎖ポリマーをグリオキサール化し、その時点で反応pHを7.1〜7.2に低下させる。54cpsの粘度に達するまで中程度の速度で反応を続け、その時点で硫酸を加えてpHを約3.5に低下させることで反応をクエンチする。
【0010】
PCT出願公開第2006/016906号は、紙に強度を付与するためにグリオキサールなどのセルロース反応性剤で処理されるカチオン性ビニルアミド架橋ポリマーを記載する。
【0011】
米国特許第4,954,538号、第5,041,503号、及び第5,320,711号は、逆相マイクロエマルジョン重合により調製される架橋性グリオキサール化ポリビニルアミドの微粒子を教示しており、マイクロエマルジョンポリマーにグリオキサールを加えてグリオキサール化ポリマーを形成することが記載されている。
【0012】
上記の方法及び生成物は明らかな不利益を有する。公知技術に記載の水性グリオキサール化ポリビニルアミド付加物の形成を、反応の進行に従う溶液粘度の増加を追跡することで監視する。反応が妨害なく進行可能である場合、水溶性ゲルが最終的に形成されるであろう。グリオキサール化マイクロエマルジョン(米国特許第4,954,538号、第5,041,503号、及び第5,320,711号)は、高価でかつ高揮発性有機化合物(VOC)を与える、相当量の有機キャリアオイルを含む。高VOCの量によって使用が制限される多くの用途が存在する。
【0013】
現在市販されている各種グリオキサール化ポリビニルアミド付加物は、保存時のpH、付加物ポリマー溶液の濃度、及び温度に依存して、約4〜6週間のおおよその保存寿命の範囲を有することが一般に知られている。
【0014】
所望のグリオキサール化の程度に達した際に、最初のグリオキサールの約半分は、最終生成物中で未反応のままであり、強化助剤としては機能しない。
【0015】
本発明者は、グリオキサール及びビニルアミドポリマーの水性反応液から、予想外に改善された付加物が、下記で定義される反曲点を決定する臨界濃度にビニルアミドポリマーの濃度が近い場合に形成されることを発見した。
【0016】
さらに、本発明の方法により形成される付加物は、低い保存安定性という制約により限定されず、ゲル化の危険を冒すことがなく、先行技術の方法の生成物よりも少ない未消費のグリオキサールを含み、本質的に油を含まない。さらに、本発明のグリオキサール化ビニルアミドは、既に記載の技術において開示されている付加物に比べて改善した湿式及び乾式強化効率を紙及び板紙に付与する。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、熱硬化性セルロース反応性ポリビニルアミド付加物を製造するための新規の方法に関する。具体的には、本発明は:
セルロース反応性官能化ポリビニルアミド付加物を製造するための方法であって、ビニルアミドポリマー及びセルロース反応性剤の実質的に水性の反応混合物を反応させることにより付加物を形成する工程を含む方法を包含する。
【0018】
上記反応混合物に関するビニルアミドポリマーの濃度は、下記の通り様々に定義される:
【0019】
ビニルアミドポリマーの濃度は、反応混合物の臨界濃度未満であるか、それと等しいか、又はそれを最大で1パーセントポイント(1%)超える。臨界濃度を超える濃度では、付加物形成の進行によって反応混合物の粘度が増加し、臨界濃度未満の濃度では、付加物形成の進行によって反応混合物の粘度が低下する。
【0020】
明確にするために、「臨界濃度を約1%超える反応混合物」の意味は、例えば、臨界濃度が5重量%である場合、1%超えるとは6重量%を意味するであろうということである。
【0021】
第二に、ビニルアミドポリマーの濃度は、触媒された付加物反応中の任意の段階において、反応混合物の約5重量%未満と定義することができる。
【0022】
例えば、ビニルアミドポリマーの濃度は、グリオキサール化反応の10、20、30、40、又は50%完了の時点で、反応混合物の約4重量%未満と定めることができる。例えば、ビニルアミドポリマーの濃度は、開始時に約10重量%とした後、グリオキサール化反応の10%完了の時点で4重量%未満に希釈することができる。
【0023】
濃度は、ビニルアミドポリマーの官能化の開始時に約4重量%未満であることが好ましい。
【0024】
よって、実質的に水性のグリオキサール化ポリビニルアミド熱硬化性ポリマー組成物は、ビニルアミドポリマー及びグリオキサールの反応生成物を含み、ビニルアミドポリマーは、少なくとも約30,000〜少なくとも約500,000、さらには分子量5,000,000程度に大きい平均分子量を有する。例えば、分子量は、少なくとも約50,000、70,000、100,000、又はそれ以上でありうる。一般に、全グリオキサールの少なくとも40重量%、好ましくはグリオキサールの50%超が反応中に消費されており、反応生成物は実質的に有機液体を含有しない。反応中のビニルアミドポリマー上のアミド官能基とグリオキサールとのモル比は2:1と12:1との間であり、反応中にセルロース反応性剤の少なくとも40%が消費される程度に反応を触媒する。好ましくは、ビニルアミドポリマーとセルロース反応性剤とのモル比は3:1と8:1との間であり、セルロース反応性剤の少なくとも50%が、触媒された反応中に消費される。
【0025】
あるいは、反応混合物は、反応前粘度、及び全セルロース反応性剤の少なくとも50重量%が消費される程度に反応が進行した時点で測定される第2の粘度を有し、反応前粘度と第2の粘度との差は、粘度の低下、粘度変化がないこと、又は反応前粘度の約50%未満の増加により特徴づけられる。例えば、反応前粘度(バルク粘度)が20センチポイズである場合、第2の粘度は30センチポイズ以下となるであろう。
【0026】
本発明はさらに、紙又は板紙の湿潤又は乾燥強度を増加させるための方法であって、
a)セルロース繊維の水性スラリーを与える工程;
b)本発明に従う方法により得られる付加物を水性スラリーに加える工程;
c)工程b)で形成される水性スラリーからウェブを形成する工程;及び
d)ウェブを乾燥する工程
を含む方法を具現化する。
【0027】
紙又は板紙の湿潤又は乾燥強度を増加させるための方法は、セルローススラリーに付加物を加える以外の手段、例えば、
a)本発明の方法に従って得られる付加物を、湿紙又は板紙に噴霧、コーティング、さもなければ適用する工程;及び
b)コーティングされた湿紙又は板紙を乾燥させる工程
を含む、紙又は板紙上での組み込みなどにより達成することもできる。
【0028】
組成上の実施態様は:
上記方法により得られる付加物が組み込まれている紙又は板紙;
上記方法により得られるグリオキサール化ポリビニルアミド熱硬化性樹脂;
ビニルアミドポリマーが、少なくとも25,000、好ましくは少なくとも30,000、最も好ましくは70,000の重量平均分子量(Mw)を有し、触媒された反応中に消費されるグリオキサールの量が、全供給グリオキサールの少なくとも約40重量%、好ましくは50重量%超である、ビニルアミドポリマー及びグリオキサールの反応生成物を含む実質的に水性のグリオキサール化ポリビニルアミド熱硬化性ポリマー組成物を含む。アミドとグリオキサールとのモル比は、2:1〜12:1の範囲、好ましくは2.5〜8:1の範囲である。さらに、水性組成物は実質的に有機液体を含有しない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
基本的用語の定義
本発明において、ビニルアミドポリマーのペンダントアミド基とグリオキサールとの反応を、本出願では「グリオキサール化反応」又は単に「グリオキサール化」と呼ぶ。前記グリオキサール化の生成物を、グリオキサール化ポリビニルアミド、又はグリオキサール化ポリビニルアミド付加物若しくは単に付加物と呼ぶ。
【0030】
「ビニルアミドポリマー」という用語は、グリオキサール化前の出発ポリマーを意味する。ホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーでありうる。出発ビニルアミドポリマー、又は形成されるビニルアミドポリマー付加物は、カチオン性、潜在的にカチオン性、アニオン性、潜在的にアニオン性、非イオン性、又は両性でありうる。出発ビニルアミドポリマーは、ビニルアミドポリマー及び別の混和性の非ビニルアミドポリマーのブレンドでありうる。
【0031】
本発明におけるコポリマーとは、2種以上のモノマーから形成されるポリマーである。
【0032】
「触媒されたグリオキサール化反応」という用語は、物理的又は化学的条件が反応を中程度の速度から加速された速度で進行させる環境で行われるグリオキサール化反応を意味し、所望の反応は約12時間以内、より好ましくは6時間以内、3時間以内、さらには約1時間以内で得られる。好ましくは、グリオキサール化は、アルカリ性条件下で、又は塩基若しくは塩基性緩衝液を加えることで生じさせる。
【0033】
本発明における「実質的に水性の反応混合物」という用語は、付加物形成が実質的に有機油の非存在下で実施されることを意味する。例えば、油相と水相の両方を含む逆マイクロエマルジョン中でビニルアミドポリマーをグリオキサール化することが知られている。油相は少なくとも1種の炭化水素を含む。典型的には、油相は、鉱油、トルエン、燃料油、灯油、無臭ミネラルスピリット、又は同種のものの混合物であろう。これらの先行技術の方法における油の重量は、形成されるポリマーの重量をしばしば超える。よって、本発明において、付加物形成は、有機油の存在がビニルアミドポリマーの重量を超えず、好ましくは油がビニルアミドポリマーの50重量%を超えず、最も好ましくは付加物形成中に有意量の油が存在しない、「実質的に水性の反応混合物」中で実施される。実質的に水性とは、油がビニルアミドポリマーの約20重量%未満、好ましくは10重量%未満、又は約5重量%未満、又は約1重量%未満となることを意味する。
【0034】
ビニルアミドポリマーの重量%は、反応混合物の全重量を基準とする。
【0035】
消費グリオキサールの重量%は、供給グリオキサールの全重量を基準とする。
【0036】
本発明における分子量とは重量平均分子量(M)を意味する。
【0037】
分子量は、GPCなどの標準的方法により決定する。例えば、平均分子量は、酢酸緩衝液及びカラムTSK PWXL(Guard+G6000+G3000)を用いる従来の較正技術により決定することができる。カラムセットを較正するためにポリエチレンオキシド及びポリエチレングリコール標準物質を使用できる。
【0038】
水溶性又は水混和性の他の材料が反応混合物中にさらに存在していてもよい。キレート剤、塩化ナトリウムなどの電解質、界面活性剤、及びメタノールなどの極性溶媒が反応混合物中に存在していてもよい。低分子量カチオン性ポリマー、例えば多糖、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(ポリDADMAC)、及びポリアミンが反応混合物中に存在していてもよい。無機カチオン性凝集剤、例えば塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、及びアルミニウムクロロハイドレートなどが存在していてもよい。
【0039】
ビニルアミドポリマー又は形成される付加物を、カチオン性、アニオン性、非イオン性、又は両性でありうる第2のポリマー(ビニルアミドポリマーとは異なる)とさらに組み合わせてもよい。例えば、グリオキサール化ポリビニルアミドポリマーを、ポリアミン又はポリアミノポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)と組み合わせてもよい。
【0040】
例えば、第2のポリマーは、カチオン性であり、かつ、本明細書に記載のカチオン性又は潜在的にカチオン性のモノマーから形成することができる。第2のポリマーは、マンニッヒ塩基、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン/エピクロロヒドリン、ポリアミンエピクロロヒドリン生成物、ポリアミン−ジシアンジアミド及びポリジシアンジアミドホルムアルデヒドポリマーを含むジシアンジアミドポリマー、又はカチオン性デンプンでありうる。さらなる例は、やはり紙の湿潤強度を増加させるために使用されるカチオン性熱硬化性材料である、ポリアミノポリアミド−エピハロヒドリン樹脂などのポリアミン−エピハロヒドリン樹脂である可能性がある。
【0041】
ビニルアミド
ビニルアミドという用語は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、又は任意の他の置換アクリルアミドを含むがそれらに限定されない、アミド官能基を含有する任意のビニルモノマーを意味する。
【0042】
主鎖ビニルアミドポリマーの合成
本発明の方法により続いてグリオキサール化される主鎖ビニルアミドポリマーは、ビニルアミドモノマー、及び場合によって1種以上のイオン性コモノマー又は非イオン性コモノマーのフリーラジカル又は酸化還元触媒重合により合成することができる。複数の重合可能なビニル官能基を有する架橋剤を、主鎖ポリマーに構造を付与するために調合物に含めることもできる。次亜リン酸ナトリウムなどの連鎖移動剤を、ポリマー分子の分子量を制御するために、かつ分岐を導入するために使用できる。
【0043】
水溶性ビニルアミドポリマーは、任意の好適な重合方法により形成することができる。例えば、ポリマーは、溶液重合、油中水懸濁重合、又は油中水乳化重合により、ゲルポリマーとして調製することができる。ポリマーは、懸濁重合によりビーズとして、又は油中水乳化重合により油中水エマルジョン若しくは分散液として、例えば欧州特許出願第150933号、欧州特許出願第102760号、又は欧州特許出願第126528号により定義される方法に従って製造することができる。
【0044】
あるいは、水溶性ポリマーを、水性媒体中の分散液として与えることもできる。これは、例えば、欧州特許出願第170394号で示される平衡剤を含む水性媒体中の少なくとも20ミクロンのポリマー粒子の分散液でありうる。これは、例えば、溶解した低固有粘度ポリマー、例えばポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、並びに場合によって他の溶解した材料、例えば、電解質、及び/又は国際公開公報第9831749号若しくは国際公開公報第9831748号に示されるマルチヒドロキシ化合物、例えばポリアルキレングリコールを含む水性媒体の存在下での水性モノマーの重合により調製される、ポリマー粒子の水性分散液も含みうる。
【0045】
ビニルアミドポリマーの分子量、構造、及び組成
本発明の方法によりグリオキサール化されるビニルアミドポリマーは、当業者に公知のポリマー合成の方法により得られる任意の分子量のものでありうる。ビニルアミドポリマーは、非イオン性、カチオン性、アニオン性、又は両性でありうる。ビニルアミドポリマーは架橋していても構造化されていてもよい。
【0046】
ビニルアミドポリマーの平均分子量は、500〜約5,000,000、さらには10,000,000ダルトンの範囲でありうる。
【0047】
出発ビニルアミドポリマーは、少なくとも500の平均分子量を有するが、好ましくは少なくとも約10,000〜約5,000,000の平均分子量を有する。例えば、50,000〜2,000,000、70,000〜1,000,000が想定される。本発明の方法は、約50,000以上、約70,000以上、さらには約85,000又は100,000以上のビニルアミドポリマーのグリオキサール化を可能にする。好ましい平均分子量の範囲は、例えば5,000〜約150,000、10,000〜約150,000、又は25,000〜約150,000である。
【0048】
好適なビニルアミドモノマーは、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミドなどのC1−4モノ置換(メタ)アクリルアミドである。最も好ましいビニルモノマーは、アクリルアミド及びメタクリルアミドである。
【0049】
(メタ)アクリルアミドという用語はアクリルアミドとメタクリルアミドの両方を含む。
【0050】
本発明のポリマーのビニルアミド分は、セルロース反応性剤又はグリオキサール置換基が結合する部位を与える。存在すべきビニルアミド単位の最小割合は、水溶液としてガラス板上に適用し、約105℃で5分間加熱した際に、グリオキサール化ポリマーが水不溶性フィルムを形成するほど、グリオキサール化ポリマーが熱硬化性であるために十分なものであるべきである。
【0051】
したがって、ビニルアミドポリマー(グリオキサール化前)は、少なくとも約10重量%のビニルアミドモノマーから形成されるべきである。好ましくは、ビニルアミドポリマーは、少なくとも約20〜約100重量%のビニルアミドモノマーから形成される。例えば、ビニルアミドポリマーは、少なくとも約20〜約99重量%、少なくとも約25〜約90重量%のビニルアミドモノマー、又は少なくとも約50重量%、最も好ましくは少なくとも約70重量%のビニルアミドモノマーから形成される。重量%は、ビニルアミドポリマーを形成するために供給されるモノマーの全重量を基準とする。
【0052】
モノマーは、重合した時点でポリマー中に組み込まれる単位となる。
【0053】
よって、ポリマーにイオン性を与えることができるか、又は希釈剤又はスペーサーとして作用するか、又は特殊な特性、例えば改善若しくは減少した水溶性を与える、本発明のポリマー中の単位が存在しうる。
【0054】
ビニルアミドモノマーと併用できるイオン性コモノマーは、カチオン性、潜在的にカチオン性、アニオン性、潜在的にアニオン性、又は両性でありうる。カチオン性コモノマーを使用する場合、1種以上のカチオン性モノマーを使用でき、カチオン性コモノマーの全量は、ビニルアミドコポリマーのグリオキサール付加物が水性懸濁液中のセルロース繊維に対して自己直接性を有するような量にすべきである。
【0055】
カチオン性電荷がセルロース繊維に対する直接性を与えるため、カチオン性コモノマーが特に好ましい。
【0056】
好適なカチオン性モノマー又は潜在的にカチオン性のモノマーは、その酸付加塩及び四級アンモニウム塩を含む、ジアリルジアルキルアミン、2−ビニルピリジン、2−(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを含む。そのようなカチオン性モノマー又は潜在的にカチオン性のモノマーの具体例は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートメチルクロリド四級塩)、2−ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、(p−ビニルフェニル)−トリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリレート2−エチルトリメチルアンモニウムクロリド、1−メタクリロイル−4−メチルピペラジン、マンニッヒポリアクリルアミド、すなわち、ジメチルアミンホルムアルデヒド付加物と反応してN−(ジメチルアミノメチル)及び(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを与えるポリアクリルアミドである。
【0057】
潜在的にカチオン性のモノマーは、例えば、酸性条件下で、例えば、潜在的にカチオン性のモノマー上のアミン官能基をプロトン化する際にカチオン性電荷を与えるモノマーでありうる。
【0058】
カチオン性コモノマーの量は、約0%〜約90重量%、約0.1〜約50重量%、約0.1〜約40、約0.1〜約30、約0.1〜約25重量%、又は約0.1〜約15若しくは約10重量パーセントの範囲でありうる。重量%は、ビニルアミドポリマーを形成するために供給されるモノマーの全重量を基準とする。
【0059】
さらに、ビニルアミドモノマーは、ジメチルアミノエチルアクリレート又はビニルピリジンなどのビニル三級アミンと共重合することができる。次に、三級アミン基を、メチルクロリド、硫酸ジメチル、又はベンジルクロリドとの反応により四級アンモニウム基に変換することで、カチオン性ポリマーを製造することができる。さらに、ポリアクリルアミドを、グリシジルジメチルアンモニウムクロリドとの反応により部分的にカチオン性にすることができる。
【0060】
好適なアニオン性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、イタコン酸、フマル酸などのビニル酸性物質、無水マレイン酸及び無水イタコン酸、並びにそのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、スチレンスルホン酸ナトリウムなどの潜在的にアニオン性のモノマーから選択することができる。あるいは、出発ビニルアミドポリマーがポリアクリルアミドである場合、それを部分的に加水分解してある種のアニオン的性質を達成した後、セルロース反応性剤で官能化することができる。
【0061】
潜在的にアニオン性のモノマーは、例えば、部分的に加水分解された際に、塩基性条件下でポリマーにアニオン的性質を与えることができる酸を形成するアクリルアミドでありうる。あるいは、潜在的にアニオン性のモノマーは、例えば、加水分解されることで対応する酸を形成することができる、無水マレイン酸又は無水イタコン酸などの無水物モノマーでありうる。
【0062】
上記で述べたように、ビニルアミドポリマーは両性でありうる。すなわち、ポリマーは、アニオン性官能基及びカチオン性官能基を含むことができる。両性ビニルアミドポリマーは、アニオン性モノマーとカチオン性モノマーの両方から、あるいは両性イオン性モノマーから形成することができる。様々なモノマー(アニオン性、カチオン性、及び/又は両性イオン性)を任意の重量比で反応させて両性ビニルアミドポリマーを形成することができる。形成される両性ビニルアミドポリマー上の優勢な電荷はカチオン性であることが好ましい。したがって、カチオン性モノマーのモル%は、両性ビニルアミドポリマーに取り込まれるアニオン性モノマーのモル%に対して優勢である。
【0063】
ビニルアミド以外の好適な非イオン性モノマーは、オクタデシル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;N−アルキルアクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N’−ジメチルアクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド;スチレン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート及びメタクリレート、並びにアクリロニトリルからなる群から選択することができる。
【0064】
出発ビニルアミドポリマー、又は形成されるビニルアミドポリマー付加物は、架橋しているか、分岐しているか、さもなければ構造化しているか、又は線状でありうる。例えば、出発ビニルアミドポリマー、又は形成されるビニルアミドポリマー付加物は、線状であるか、架橋しているか、連鎖移動しているか、又は架橋かつ連鎖移動している(構造化している)ことがありうる。
【0065】
架橋剤は、通常、ポリエチレン性不飽和架橋剤である。例は、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアンモニウムクロリド;テトラアリルアンモニウムクロリド、ポリエチレングリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジメタクリレート;N−ビニルアクリルアミド;ジビニルベンゼン;テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート;ジメチルアリルアミノエチルアクリレートアンモニウムクロリド;ジアリルオキシ酢酸Na塩;ジアリルオクチルアミド;トリメチルプロパンエトキシレートトリアクリレート;N−アリルアクリルアミド、N−メチルアリルアクリルアミド、ペンタエリスリトールトリアクリレート、及びその組み合わせである。架橋用の他の系をこれの代わりに、又はこれに加えて使用することができる。例えば、ペンダント基を介した共有架橋を、例えば、エチレン性不飽和エポキシ若しくはシランモノマーの使用、又はシラン、エポキシ、多価金属化合物、若しくは他の公知の架橋系などの多官能性架橋剤の使用により達成することができる。
【0066】
出発ビニルアミドポリマーを合成するために、連鎖移動剤を使用することができる。好適な連鎖移動剤は、2−メルカプトエタノール;乳酸、ギ酸、リンゴ酸、又は酪酸などの低分子量有機酸;イソプロピルアルコール;チオ酸、及び次亜リン酸塩である。
【0067】
セルロース反応性剤
セルロース反応性剤は、2個以上のアルデヒド官能基を含むであろう。
【0068】
セルロース反応性試薬は、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フランジアルデヒド、2−ヒドロキシアジパルデヒド、スクシンアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、ジエポキシ化合物、及びその組み合わせからなる群から選択される。
【0069】
グリオキサールが好ましいセルロース反応性試薬である。
【0070】
(ビニルアミドポリマー上の)アミドとセルロース反応性剤とのモル比は、約12:1〜約2:1、例えば、約10:1〜約2.5:1、約6:1〜約2.5:1、及び約6:1〜約3:1の範囲で異なるであろう。
【0071】
ビニルアミドポリマー上のアミドのモル含量は、当技術分野で周知の方法により経験的に決定することができるか、又は公知のモノマー組成から計算することができる。
【0072】
反応条件
塩基の添加
塩基の添加、又はpHを7超に変えることは、グリオキサール化反応を触媒する最も一般的な方法である。好ましくは、7〜13のpH範囲が、反応用の触媒環境であると一般的に考えられる。例えば、8〜12のpH範囲が特に適切である。
【0073】
あるいは、濃縮pH緩衝液を加えることでpHを維持してもよい。
【0074】
ビニルアミドポリマーの濃度
本発明において、ビニルアミドポリマーの濃度は、セルロース反応性剤との反応前、又はグリオキサール化前のポリマービニルアミドを指す。
【0075】
ビニルアミドポリマーはグリオキサール化前に形成することができる。
【0076】
本発明の方法は、触媒された反応の混合物のビニルアミドポリマー濃度が特定の範囲内にある際にビニルアミドのグリオキサール化反応において観察される、予期しない流動学的挙動を組み込み、それを利用するように開発された。本発明の方法に由来する1つの重要な利点は、先行技術において開示されるセルロース反応性付加物を製造するための方法により可能になるMwよりも著しく大きいMwの出発ビニルアミドポリマーから、セルロース反応性付加物を形成できるということである。
【0077】
さらに、臨界濃度が任意の所与のビニルアミドポリマーについて存在し、ビニルアミドポリマーの臨界濃度は、グリオキサール化反応中のそのビニルアミドポリマーの溶液の流動学的挙動における反曲点と一致している。この流動学的反曲点は、グリオキサール化により得られる反応混合物の粘度の変化に対するビニルアミドポリマー濃度のプロット上の点として定義することができる。反曲点、したがって臨界濃度は、プロット線の勾配がそこで方向を反転させる理論上の点である。
【0078】
特定のビニルアミドポリマーのグリオキサール化に関する臨界濃度は、ビニルアミドポリマーのグリオキサール化を包含する経験的研究を通じて決定する。ビニルアミドポリマーの複数回のグリオキサール化を、多数の独立した反応液中で行うべきであり、ここで、各溶液は、全反応混合物に対する重量%として表される、公知のかつ異なるビニルアミドポリマー濃度を有する。反応混合物の流動学的挙動又は粘度変化は、グリオキサール化反応の進行に従って測定し、この粘度変化は、反応の進行に従う粘度の連続的増加又は粘度の連続的低下のいずれかであるか、さらには反応の進行に従って粘度が著しく変化しないことでありうる。反応の進行に従って粘度傾向が増加する場合、反応混合物中のビニルアミドポリマーの濃度は、そのビニルアミドポリマーの臨界濃度を超えるといわれる。反応の進行に従って粘度傾向が減少する場合、反応混合物中のビニルアミドポリマーの濃度は、そのビニルアミドポリマーの臨界濃度未満になる。反応の進行に従って粘度の著しい変化が測定されない場合、反応液中のビニルアミドポリマーの濃度は、そのビニルアミドポリマーの臨界濃度であるか、又はそれに非常に近い。
【0079】
特定のビニルアミドポリマーの臨界濃度の経験的に導かれる値を確認しようとする際には、実際のビニルアミドポリマー濃度がその特定のビニルアミドポリマーの理論上の臨界濃度に近づくに従って、各種反応混合物の反応の程度に対する粘度変化の規模が減少することを理解することが、実験者にとって有益である。
【0080】
特定のビニルアミドポリマーの臨界濃度は、ビニルアミドポリマーの分子量に強く影響を受け、したがって、具体的な分子量及び他の同等の特徴を有するビニルアミドポリマーに特有のものである。架橋、分岐、又は他の構造化、モノマー組成、ポリマーのイオン性、及び反応液のイオン強度を含むがそれに限定されない他の要因も、臨界濃度に影響を与える。しかしながら、分子量が、臨界濃度の値に対してはるかに重大な影響を有する。分子量を除くすべての変数が一定に保持される具体的なビニルアミドポリマー組成物について考える際に、分子量に対する反応混合物のビニルアミドポリマー濃度のプロットは、分子量と臨界濃度との逆比例関係を表す。ビニルアミドポリマーの分子量が増加するに従って、臨界濃度の値は減少する。
【0081】
したがって、臨界濃度は、異なる平均分子量のビニルアミドポリマーの間で相当に異なりうる。例えば、臨界濃度は、ビニルアミドポリマーの0.2%〜約4.5重量%、ビニルアミドポリマーの約0.3重量%〜4.0重量%未満、約0.5〜約3.5、又は1.0〜約3.0、又は約1.5〜約2.5重量%の間で異なりうる。紙の強度を向上させるための最も高い効率を有するビニルアミドポリマーは、約1.0%〜約3.0%の範囲の臨界濃度を有することがわかった。
【0082】
ビニルアミドポリマーの重量平均分子量によってどのように臨界濃度が異なるかの例として、また、アクリルアミド90重量パーセント及びジアリルジメチルアンモニウムクロリド10重量パーセントからなり、反応混合物中にビニルアミドポリマー、グリオキサール、脱イオン水、及び触媒量の水酸化ナトリウム以外の化合物が存在しない具体的なビニルアミドポリマーについて考えると、約4,000,000のMwを有するポリマーは、反応混合物の約0.35重量%の臨界濃度を有し、約13,000のMwを有するポリマーは、反応混合物の約3.5重量%の臨界濃度を有する。
【0083】
組成上の、及び方法に関連する利点は、グリオキサール化方法を臨界濃度以下で実施する際にみられた。ビニルアミドポリマー濃度が臨界濃度をわずかに超える場合にも、方法の利点を達成可能である。例えば、濃度は臨界濃度を約1パーセントポイント超えることができ、製造されるグリオキサール化ポリビニルアミド付加物は、既知のより高い濃度(典型的には8〜12重量%)で製造されるその付加物と比べて効率的なグリオキサール反応物の消費及び優れた紙上での性能による利点を享受するであろう。
【0084】
本発明の方法の利点の1つは、グリオキサール化付加物の早期のゲル化なしに比較的大きい平均分子量のビニルアミドポリマーをグリオキサール化する能力である。例えば、文献の多くは、出発ビニルアミドポリマーが、8〜12重量%の範囲のビニルアミドポリマー濃度で5,000〜約10,000の範囲の平均分子量を有する、グリオキサール化反応を例示している。これらの濃度(8〜12)で、比較的大きい平均分子量の出発ビニルアミドポリマー(25,000以上)のグリオキサール化反応によって、早期にゲル化し、それにより出発ポリマーの不完全なグリオキサール化が生じ、不溶性ゲルが生成される。本発明の方法を使用することで、比較的大きい分子量(25,000以上)の出発ポリビニルアミドをグリオキサール化し、それにより紙又は板紙上でより優れた性能を与えるための手段が今や利用可能である。
【0085】
グリオキサール化ポリアクリルアミドの様々なサンプルを、アルデヒド−アミド結合を破壊する条件に付することで、出発又は「主鎖」ポリマーのMwを決定することが可能になる。これは、グリオキサール化ビニルアミドポリマーを塩基性条件にある期間付することで行うことができる。
【0086】
本発明の範囲内で、ビニルアミドポリマーの濃度は相当に異なりうるものであり、例えば、4重量%未満、約0.1〜4未満、3.5未満、0.5〜約3.5重量%のビニルアミドポリマー、約1.0〜約3.5、又は1.0〜約3.0、又は約1.5〜約3.0重量%のビニルアミドポリマーである。
【0087】
さらに、ビニルアミドポリマーの臨界濃度は、一般に、分子量が2000を超える際のグリオキサール化反応液の全重量に対して5.0重量パーセント以下のビニルアミドポリマーであることがわかった。
【0088】
さらなる例は、ビニルアミドポリマーの臨界濃度と重量平均分子量との関係を例示するであろう。
【0089】
約1,000,000〜約4,000,000の範囲の分子量のビニルアミドポリマーは、1.0〜約0.2重量%の間で変わる臨界濃度を示すであろう。約25,000〜約175,000の範囲では、約2.5〜約1.1重量%の間で変わる臨界濃度を示すであろう。約2,000〜約15,000の範囲では、約5.0〜約3.5重量%の間で変わるであろう。
【0090】
消費グリオキサールのパーセント
実質的に水性の環境で実施される先行技術の方法は、グリオキサール反応物の効率的使用が達成できておらず、典型的には全供給グリオキサールの約50重量%しか消費されない。
【0091】
消費グリオキサールは、グリオキサール化反応混合物中に残存する残存グリオキサール(非結合グリオキサール)を測定することで決定する。全グリオキサールの少なくとも約50重量%が消費されるまで反応を続けるが、全グリオキサールの90重量%以上も反応時に消費されるまで反応を有用に続けることもできる。分析法は実施例の節に記載されている。
【0092】
さらに、グリオキサール化ビニルアミドポリマー付加物中の結合グリオキサールの量を決定するための手順は、Analytical Biochemistry, Vol. 81, pp. 47-56に記載されている。
【0093】
触媒された反応事象中のグリオキサールの消費は反応物グリオキサールの少なくとも約40重量%、さらには少なくとも60、65、75、85、又は90重量%である。
【0094】
反応物グリオキサールは、触媒された反応の前、途中、又は後に供給される全グリオキサールの量である。
【0095】
グリオキサールは、反応前又は反応中に任意の増分数で供給することができる。
【0096】
付加物形成の監視
先行技術の方法では、ビニルアミドポリマーとグリオキサールとの間の付加物形成は、経時的な反応生成物の粘度を測定することで監視する。特定のビニルアミドポリマーについてある種の粘度増加が実現した時点で、希釈及び/又は酸の添加により反応をクエンチする。
【0097】
しかしながら、本発明に係る方法は、粘度の中程度の増加、粘度のわずかな増加、又は全く増加がないことしか示さない。本発明者は、本発明の方法においてビニルアミドポリマーのグリオキサール化が進行するに従って、反応液の濁度が増加することを認めた。したがって、本発明の本方法では、濁度計又は粘度計でグリオキサール化反応を追跡することができる。
【0098】
したがって、付加物形成は、反応開始時又はTと所定の終点Tとの、水性反応液の濁度又は粘度の変化(T−T)を測定することで決定できる。
【0099】
所定の終点とは、例えば、特定のビニルアミドポリマーの濁度(グリオキサール化の程度)の所望の増加のことである。したがって、例えば、平均分子量100,000のビニルアミドポリマーは、反応開始時(T)に0〜5NTU(比濁分析単位)の濁度を与え、所定の終点において2〜1000NTUの濁度変化を与えうる。反応混合物の濁度が約2〜1000NTU増加した時点で、さらなる反応を防ぐために反応をクエンチすることができる。
【0100】
反応が臨界濃度以下で行われる場合、濁度測定は特に重要である。
【0101】
粘度計及び濁度計は当技術分野において周知である。例えば、SURFACE SCATTER 7SC濁度計は、流体中の濁度測定用に設計された連続監視装置である。装置設計は、流体中に懸濁している粒子により散乱する光を測定することで流体中の粒子状物質の相対量を決定するという、比濁分析の原理に基づいている。
【0102】
粘度の変化(増加又は低下)が生じる本発明の方法では、反応の程度を粘度変化により監視することができる。
【0103】
典型的には、粘度は、BROOKFIELD LVシリーズ粘度計用のULアダプターを用いて測定する。ULアダプターはスピンドル数を有さない。1つの設定のみが可能である。アダプターカップのベースを取り外し、組立体を反応混合物中に直接配置する。触媒された反応の期間中の毎秒、粘度測定値を自動的に記録する。粘度計を60rpmの速度に設定し、反応混合物の温度を25℃に維持する。
【0104】
バッチ式又は連続式
セルロース反応性ポリビニルアミドポリマーは、バッチ式又は連続式で合成することができる。本発明の方法は、製紙現場でのpH測定能力を有する連続式反応器での実施のために特に好ましい。
【0105】
連続式反応器は管形反応器でありうる。
【0106】
グリオキサール化速度に影響を与える他の変数は、pH、温度、ビニルアミドポリマーの分子量、反応混合物濃度、ビニルアミドポリマーとグリオキサールとのモル比、ビニルアミドポリマーのモルアミドコンスティチュエンシー、及び反応に干渉する物質の存在を含むがそれに限定されない。
【0107】
通常、反応は周囲温度で実施する。しかしながら、広範な温度範囲にわたって本発明の方法により反応を行うことができる。
【0108】
反応期間は、濃度、温度、及びpH、並びに他の要因に応じて異なるであろう。
【0109】
グリオキサール反応生成物に加えることができる他の従来の添加剤は、重合阻害剤を除去するためのキレート剤、pH調整剤、開始剤、緩衝剤、界面活性剤、及び他の慣習的添加剤である。
【0110】
ビニルアミドポリマー付加物の適用
本発明の方法により製造されるポリマーは、希釈水溶液として紙の製造において使用することができる。予め形成された紙に対する水溶液の適用は、タブ法若しくは含浸法により、又は、湿式及び乾式強化樹脂が普通に適用される製紙プロセスにおける任意の時点で製紙用繊維懸濁液に該溶液を直接加えることにより行うことができる。
【0111】
本発明のセルロース反応性ポリビニルアミド付加物は、製紙プロセスのウェットエンドに適用若しくは組み込むか、又は湿紙に適用することができる。
【0112】
グリオキサール化付加物は、厚い又は薄い紙料に加えることができる。薄い紙料に加える際には、ファンポンプの前に加えることができる。
【0113】
完成紙料の乾燥繊維重量に対してわずか約0.05重量%のグリオキサール化ポリビニルアミドを完成紙料に加える際に、有意量の湿潤又は乾燥強度が付与される。
【0114】
例えば、乾燥完成紙料1トン当たり約0.1〜約20(0.05〜10kg/メートルトン)ポンドの乾燥ポリマー、乾燥完成紙料1トン当たり約1〜約12(0.5〜6kg/メートルトン)、約1〜約9(0.5〜4.5kg/メートルトン)、約1〜約8(0.5〜4kg/メートルトン)ポンドの乾燥ポリマーの量が想定される。より典型的には、乾燥完成紙料1トン当たり1.5〜約6(1.0〜3kg/メートルトン)ポンドの乾燥ポリマーの範囲が想定される。
【0115】
湿紙又は板紙に対する付加物の適用は、任意の従来手段により実行することができる。例は、サイズプレス、パジング、吹付、浸漬、印刷、又はカーテンコーティングを含むが、それに限定されない。
【0116】
本発明のポリマーは、約3.5〜約8の範囲のpH値で製紙用繊維により吸収される。
【0117】
以下の実施例には、本発明のある種の実施態様が記載されているが、本発明はそれらに限定されない。
【0118】
実施例
種々なMwのポリビニルアミドの臨界濃度の決定
異なる重量平均分子量を有する7種の組成上同等のビニルアミドポリマーのセットを合成した。7種のポリマーはいずれも、90重量パーセントのアクリルアミド及び10重量パーセントのDADMACのコポリマーである。これら7種のポリマーの重量平均分子量を下記表に示す。
【0119】
サンプルA、B、C、及びDは不均一懸濁重合により合成し、サンプルE、F、及びGは水溶液重合により合成した。
【0120】
サンプルA及びBについて平均分子量を、DAWN多角度光散乱検出器と示差屈折率検出器とを併用して測定した。光散乱実験において、所与の角度で散乱する光の量は、重量平均モル質量及び濃度に直接比例している。二次ジムプロットを使用して、0.1800のdn/dc(比屈折率増分)値(角度4〜15)でモル質量データを生成した。
【0121】
サンプルC〜Gについて平均分子量を、酢酸緩衝液及びカラムTSK PWXL(Guard+G6000+G3000)を用いる従来の較正技術により決定した。ポリエチレンオキシド及びポリエチレングリコール標準物質を使用してカラムセットを較正した。
【0122】
【表1】

【0123】
臨界濃度を決定するための異なる濃度でのグリオキサール化
3種のビニルアミドポリマー「B」、「E」、及び「G」のそれぞれについて3つの別個の水性反応混合物を、ポリマーのそれぞれについて期待される臨界濃度に非常に近い濃度で製造した。9つのポリマー溶液のそれぞれに十分なグリオキサールを、4:1のアミド:グリオキサールのモル比がそれぞれについて確立されるように加えた。各ポリマー溶液について、水酸化ナトリウムの5重量%水溶液を滴下し、溶液のpHが9.2に達するまで続けた。必要に応じて水酸化ナトリウムの少量添加を行うことにより、ほぼ一定のpH9.2を30分間維持した。ゼロ時点を含む30分の反応時間中、5分間隔で、サンプル20mlを反応ビーカーから回収し、希硫酸でpHを4.0に低下させることで直ちにクエンチした。各ポリマー反応混合物について全部で7つのサンプルを回収した。各反応混合物からの7つのサンプルの粘度を、Type 2 SCHOTT懸濁レベル粘度計を用いて測定し、センチストークで報告する。
【0124】
3種のポリマーすべての場合で、表2の結果は、臨界濃度が3つの試験された濃度のうち2つの間にあることを示す。
【0125】
【表2】

【0126】
臨界濃度は:
サンプルBについて0.6%と0.8%との間;
サンプルEについて1.50%と1.75%との間;
サンプルGについて3.20%と3.6%との間の、反応混合物の全重量に対するビニルアミドポリマー濃度であった。
【0127】
上記の本発明の方法によりグリオキサール化された、それぞれ0.6%、1.25%、及び3.2%(いずれも臨界濃度未満)の水性ビニルアミドポリマー濃度のグリオキサール化ビニルアミドポリマー「B」、「E」、及び「G」のサンプルを、乾式強化効率について試験した。市販のグリオキサール化ポリビニルアミド生成物が基準点として分析に含まれる。表3の結果は、紙1乾燥トン当たり付加物6乾燥ポンドの割合(3kg/メートルトン)で加えた際の各付加物の乾式強化効率を示していた。
【0128】
試験に使用したセルロース基材は、ライナーボードマシンから100%消費済み紙料流を用いて得た。1平方メートル重量あたり140グラムのハンドシートをこの試験用に調製した。
【0129】
【表3】

【0130】
比較例
米国特許第3,556,932号の実施例1のグリオキサール化手順に従った。ビニルアミドポリマーは10,000のMwであった。主鎖ポリマーは、アクリルアミド91重量%、及びジアリルジメチルアンモニウムクロリド9重量%であった。気泡粘度計スケール上、30℃での11重量%溶液として、粘度が「C」のレベル(Cのガードナー−ホルト粘度)に達した後で、「1」とラベル付けされたサンプルを反応混合物から除去し、サンプルのpHを3.5に低下させて反応をクエンチした。ゲル化が生じるまで反応混合物をさらに反応させた。「2」とラベル付けしたゲル化材料のサンプルを実験用ブレンダー中で加工することでサンプルを液化し、サンプルをクエンチしてpH3.5にした。「1」とラベル付けしたサンプルを先行技術により製造されたサンプルと考え、「2」とラベル付けしたサンプルを、このサンプルがゲル化点に達したため、先行技術により実現可能な実際のグリオキサール反応の絶対的な限界と考えた。
【0131】
本発明のグリオキサール化方法を、上記比較例で使用する同一の主鎖ポリマーに対して2.0%の固形分濃度で実施した。
【0132】
25NTUの濁度レベルになるまで反応した後、本発明のグリオキサール化方法から、「3」とラベル付けしたサンプルを回収し、pH3.5にクエンチした。
【0133】
NTU単位は、HACH 2100P濁度計を用いて決定した。
【0134】
消費グリオキサールのパーセントの決定
すべてのサンプルを残存グリオキサールの分析前に2.0%濃度に調整し、グリオキサール化反応の開始前に、各サンプル「1」、「2」、及び「3」は、この2%固形分に対して等量のグリオキサールを含んでいた。
【0135】
残存グリオキサールの分析に関して、他のサンプルと共に市販のグリオキサール化ポリビニルアミドが含まれる。これは市販のサンプルであるため、本発明者らは、グリオキサール化反応の前にこの生成物に加えられたグリオキサールの実際の量を知らない。したがって、反応したグリオキサールの%を決定できなかった。
【0136】
残存グリオキサールのパーセントを、グリオキサール化ポリビニルアミドの2重量%水溶液から決定した。3500 MWCO膜チューブを通じた透析によりグリオキサール化ポリマーから残存グリオキサールを除去した。o−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル)−ヒドロキシアミン塩酸塩(6.6mgs/ml)2.0mlを約2時間かけて加えることにより、透析されたサンプル10mlを誘導体化した。次に、1:1ヘキサン−ジエチルエーテルを用いて透析溶液からグリオキサールを抽出した。抽出液の分析を、DB 5 15 M 0.53 mm i.d 1.5 um dfカラムを用いるHP 5890 GC #6装置上でのガスクロマトグラフィーにより完了した。残存グリオキサールを決定し、反応前グリオキサールの量が判明した時点で、消費グリオキサールのパーセントを下記表4の通り計算することができた。
【0137】
【表4】

【0138】
サンプル「3」は、サンプル「1」と比べてほぼ2倍の消費グリオキサールの重量パーセントを示した。
【0139】
表5の結果は、紙1乾燥トン当たり付加物6乾燥ポンドの割合(3kg/メートルトン)で加えた際の付加物「1」及び「3」の乾式強化効率を示している。試験に使用したセルロース基材は、ライナーボードマシンから100%消費済み紙料流を用いて得た。1平方メートル重量あたり140グラムのハンドシートをこの試験用に調製した。
【0140】
【表5】

【0141】
抄紙機試験比較
実施例1
アクリルアミド及びジアリルジメチルアンモニウムクロリドから90/10重量比で形成されるMw100,000のビニルアミドポリマーを、本発明に従ってグリオキサール化した。ビニルアミドポリマー濃度を約1.7重量%とし、固形分2重量%でグリオキサール化反応を実施した。グリオキサール化反応用のアミド:グリオキサールのモル比は4:1であった。グリオキサール化前の出発粘度は4.05cpsであった。グリオキサール後の粘度は4.75cpsであった。反応の後に濁度の監視を行った。出発濁度は4.4NTUであり、最終濁度は13.1NTUであった。
【0142】
実施例2
実施例2は、BAYSTRENGTH 3000の名称で販売されているグリオキサール化ポリビニルアミドである。
【0143】
公知のグリオキサール化ビニルアミドポリマー(実施例6)に対する、本発明の方法により製造されるグリオキサール化生成物(実施例5)の有効性を実証するために、完成紙料に両方の生成物を乾式強化剤として適用し、得られた紙の特性を下記表6の通り試験した。
【0144】
2層長網抄紙機上で、Bellbond(上部層15%:下部層85%)を用いて、リール速度2100ft/分で紙を製造した。完成紙料は、バージンクラフト繊維80%及びOCC20%、固形分1%、1リットル当たり完成紙料供給量−350ミリ当量、導電率3000マイクロジーメンス、及びヘッドボックス中pH5.1であった。
【0145】
本発明の方法により形成されたグリオキサール化ビニルアミドポリマー(実施例1)、及び従来のグリオキサール化ビニルアミドポリマー(実施例2比較)を、ファンポンプの前に薄い紙料としての完成紙料に別々に加えた。グリオキサール化付加物サンプルを、(完成紙料の乾燥重量に対して)それぞれ1lb/トン及び3lb/トンで適用した。得られた紙を、引張強度、リングクラッシュ、コンコーラ測定値、及び圧縮STFIにより特徴づけた。
【0146】
実施例1はグリオキサール化ポリビニルアミドである。グリオキサール化前のベースポリビニルアミドは、平均分子量約100,000であり、90/10(全ポリマー重量に対する重量%)のアクリルアミド及びジアリルジメチルアンモニウムクロリドから形成されている。
【0147】
表6の結果では、本発明の生成物(実施例1)及び公知生成物(実施例2)を用いて紙の特性を比較した。
【0148】
【表6】

【0149】
1.リングクラッシュは、TAPPI T 822法に従ってMESSMER BUCHEL CRUSH TESTERモデルK440を用いて決定した。リングクラッシュは紙の強度の物理試験である。(高いほどよい)
2.MD引張は、PATPAC D34法に従ってINSTRONモデル5565を用いて決定した。
3.圧縮STFIは、TAPPI T 826法に従ってMESSMER-BUCHELモデルK455を用いて決定した。
4.コンコーラは、TAPPI T 809に従ってMedium FluterモデルNo. JKBを用いて決定した。
【0150】
本発明の方法により製造される生成物は、より効率的なグリオキサール化ポリアクリルアミドの使用をもたらした。
【0151】
実施例3
ポリビニルアミドポリマーの出発分子量を決定するための実験的技術
下記の実験は、グリオキサール化ポリアクリルアミドの各種サンプルを、アルデヒド−アミド結合を破壊し、出発又は「主鎖」ポリマーと同一のMwを有するポリマーを生じる条件に供することを目的とした。
【0152】
Mw=100,561のアクリルアミド91%/DADMACポリマー9%(サンプルAとしてラベル付けした)を使用することで、本発明の方法によりグリオキサール化付加物を形成した。ポリマーを水及びグリオキサールで希釈することで4:1のアミドとグリオキサールとのモル比を達成し、反応混合物の全固形分を2.0%にした。希水酸化ナトリウムを加えて溶液のpHを9.5に上昇させることで反応を触媒した。反応液の濁度を監視し、50NTUの濁度の純増が達成した後で、十分な硫酸を加えて溶液のpHを3.5に低下させることで反応をクエンチした。この形成される付加物をサンプルBとラベル付けした。
【0153】
サンプルBに十分な希水酸化ナトリウムを加えることで溶液のpHを12.6に上昇させ、pHをこのレベルに30分間維持した。30分後、希硫酸を加えることでpHを3.5に戻し、この溶液をサンプルCとラベル付けした。サンプルA〜CのMw決定値を表7に示す。
【0154】
【表7】

【0155】
上記サンプルA、B、及びCに関する結果は、グリオキサール化付加物のpHを12.6に30分間維持することで、付加物のMwが、付加物形成前に出発ポリマーのそれに逆戻りすることを示していた。
【0156】
先行技術の方法により製造され、Raisabond Plus 7118の商品名で販売されているグリオキサール化ポリアクリルアミドのサンプルをサンプルDとラベル付けした。サンプルDの一部を水と混合して固形分2%を有する溶液を形成した。希水酸化ナトリウムを溶液に加えてpHを12.6に増加させた。pHを12.6に30分間維持した後、希硫酸を加えることでpHを3.5に低下させた。この溶液をサンプルEとラベル付けした。
【0157】
【表8】

【0158】
サンプルD及びEに関する結果は、Raisabond Plus 7118の出発ポリマーMwが約10,000であることを示していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース反応性官能化ポリビニルアミド付加物を製造するための方法であって、
ビニルアミドポリマー及びセルロース反応性剤の実質的に水性の反応混合物を反応させることにより付加物を形成する工程を含み、
ビニルアミドポリマーの濃度が、臨界濃度未満であるか、それと等しいか、又はそれを最大で1%超え、臨界濃度が、それを超える場合、付加物形成の進行により得られる反応混合物について粘度が増加し、それ未満である場合、付加物形成の進行により得られる反応混合物について粘度が低下する、ビニルアミドポリマーの濃度として定義される、方法。
【請求項2】
セルロース反応性官能化ポリビニルアミド付加物を製造するための方法であって、
ビニルアミドポリマー及びセルロース反応性剤を含む実質的に水性の反応混合物を反応させることにより付加物を形成する工程を含み、
ビニルアミドポリマーの濃度が、付加物反応中の任意の段階において、反応混合物の約4重量パーセント未満である、方法。
【請求項3】
セルロース反応性官能化ポリビニルアミド付加物を製造するための方法であって、
ビニルアミドポリマー及びセルロース反応性剤を含む実質的に水性の反応混合物を反応させることにより付加物を形成する工程を含み、アミドとセルロース反応性剤とのモル比が、約2:1〜約12:1の範囲であり、
反応混合物が、反応前粘度及び第2の粘度を有し、全セルロース反応性剤の少なくとも50重量%が消費される程度に反応が進行した時点で、第2の粘度を測定し、反応前粘度と第2の粘度との差が、粘度の低下、粘度変化がないこと、又は反応前粘度の約50%未満の増加により特徴づけられる、方法。
【請求項4】
ビニルアミドポリマー及びグリオキサールの反応生成物を含む、実質的に水性のグリオキサール化ポリビニルアミド熱硬化性ポリマー組成物であって、全グリオキサールの少なくとも50重量%が消費され、有機液体を実質的に含有しない組成物。
【請求項5】
ビニルアミドポリマー及びグリオキサールの反応生成物を含む、実質的に水性のグリオキサール化ポリビニルアミド熱硬化性ポリマー組成物であって、ビニルアミドポリマーが、少なくとも約30,000〜少なくとも約5,000,000の平均分子量を有し、全グリオキサールの少なくとも40重量%が消費され、有機液体を実質的に含有しない組成物。
【請求項6】
ビニルアミドポリマー上のアミド官能基とグリオキサールとのモル比が約2:1と約12:1との間である、請求項5記載の実質的に水性のグリオキサール化ポリビニルアミド熱硬化性ポリマー組成物。
【請求項7】
グリオキサール化ポリビニルアミドに加えて第2のポリマーをさらに含む、請求項5記載の実質的に水性のグリオキサール化ポリビニルアミド熱硬化性ポリマー組成物。
【請求項8】
請求項2記載の方法により得られる水溶性グリオキサール化ポリビニルアミド熱硬化性樹脂。
【請求項9】
セルロース反応性剤が2個以上のアルデヒド官能基を含む、請求項2記載の方法。
【請求項10】
セルロース反応性剤が、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フランジアルデヒド、2−ヒドロキシアジパルデヒド、スクシンアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、ジエポキシ化合物、及びその組み合わせである、請求項2記載の方法。
【請求項11】
ビニルアミドポリマーが、(メタ)アクリルアミド又は置換(メタ)アクリルアミドから形成されるホモポリマー又はコポリマーである、請求項2記載の方法。
【請求項12】
ビニルアミドポリマーが、非イオン性、カチオン性、潜在的にカチオン性、アニオン性、潜在的にアニオン性、及び/又は両性である、請求項2記載の方法。
【請求項13】
ビニルアミドポリマーが、カチオン性であり、モノマー又は潜在的にカチオン性のモノマーから形成され、カチオン性モノマーが、その酸付加塩及び四級アンモニウム塩を含む、ジアリルジアルキルアミン、(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、(ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、(p−ビニルフェニル)−トリメチルアンモニウムクロリド、及び1−メタクリロイル−4−メチルピペラジンからなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ビニルアミドポリマーが、約0.1〜約40重量パーセントの(メタ)アクリルアミド又は置換(メタ)アクリルアミドモノマーから形成される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ビニルアミドポリマー又はポリビニルアミド付加物が、線状であるか、架橋しているか、連鎖移動しているか、又は架橋かつ連鎖移動している(構造化している)、請求項2記載の方法。
【請求項16】
ビニルアミドポリマー又はポリビニルアミド付加物が、メチレンビス(メタ)アクリルアミド;トリアリルアンモニウムクロリド;テトラアリルアンモニウムクロリド;ポリエチレングリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジメタクリレート;N−ビニルアクリルアミド;ジビニルベンゼン;テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート;ジメチルアリルアミノエチルアクリレートアンモニウムクロリド;ジアリルオキシ酢酸;Na塩;ジアリルオクチルアミド;トリメチルプロパンエトキシレートトリアクリレート;N−アリルアクリルアミド;N−メチルアリルアクリルアミド;ペンタエリスリトールトリアクリレート、及びその組み合わせからなる群から選択される二官能性モノマーを少なくとも用いて架橋している、請求項15記載の方法。
【請求項17】
ビニルアミドポリマーに加えてカチオン性ポリマーをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項18】
ビニルアミドが、部分的に加水分解されているか、又は部分的にマンニッヒ塩基に変換されている、請求項2記載の方法。
【請求項19】
ビニルアミドポリマーが、(メタ)アクリルアミド及びハロゲン化ジアリルジメチルアンモニウムのコポリマーである、請求項2記載の方法。
【請求項20】
グリオキサールを、反応を触媒する前に加えてもよいか、又は、触媒された反応の前、途中、若しくは後に2回以上別々に加えてもよい、請求項2記載の方法。
【請求項21】
反応を連続式又はバッチ式で行う、請求項2記載の方法。
【請求項22】
ビニルアミドポリマーの平均分子量が500〜約5,000,000である、請求項2記載の方法。
【請求項23】
付加物形成を、水性反応液の濁度又は粘度の変化を測定することにより決定し、濁度又は粘度の変化が、反応開始時と所定の終点との、水性反応液の濁度又は粘度の差である、請求項2記載の方法。
【請求項24】
ビニルアミド濃度が全反応混合物の約4重量パーセント未満であり、出発ビニルアミドポリマーの重量平均分子量が1,000と30,000との間である、請求項2記載の方法。
【請求項25】
請求項2記載の方法により得られる付加物が組み込まれた紙又は板紙。

【公表番号】特表2010−502800(P2010−502800A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527120(P2009−527120)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059096
【国際公開番号】WO2008/028865
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】