説明

ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩

【課題】効果、薬物動態、または作用持続時間の点で適切な薬理学的プロフィールを有し、吸入経路による投与に特に適した、改良されたM3受容体拮抗薬の提供。
【解決手段】ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩の水和物、溶媒和物、および多形体で、実質的に結晶質である新規なM3受容体拮抗薬ならびに医薬品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩、ならびに前記化合物の調製方法、前記化合物の調製で使用される中間体、前記化合物を含有する組成物、および前記化合物の使用に関する。本発明はまた、ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩の水和物、溶媒和物、および多形体に関する。
【背景技術】
【0002】
コリン作動性ムスカリン受容体は、Gタンパク質共役受容体スーパーファミリーのメンバーであり、さらに5種のサブタイプ、M〜Mに分けられる。ムスカリン受容体のサブタイプは、身体内で広く差動的に発現される。遺伝子は、5種のサブタイプすべてに関してクローン化されており、これらのうちM、M、およびM受容体は、動物およびヒトの組織において広く薬理学的に特性決定されている。M受容体は、脳(皮質および海馬)、腺において、ならびに交感神経および副交感神経の神経節において発現される。M受容体は、心臓、後脳、平滑筋において、および自律神経系のシナプスにおいて発現される。M受容体は、脳、腺、および平滑筋において発現される。気道では、M受容体の刺激は気管支収縮をまねく気道平滑筋の収縮を誘発するが、唾液腺では、M受容体刺激は、唾液分泌亢進をまねく流動性および粘液分泌を増加させる。平滑筋上で発現されるM受容体は収縮促進性(pro−contractile)があると理解されているが、シナプス前M受容体は、副交感神経からのアセチルコリン放出を調節する。心臓内で発現されるM受容体の刺激は、徐脈を生じる。
【0003】
短時間および長時間作用性のムスカリン拮抗薬は、喘息およびCOPDの処置に使用され、これらには、短時間作用性薬剤のAtrovent(登録商標)(臭化イプラトロピウム)およびOxivent(登録商標)(臭化オキシトロピウム)、ならびに長時間作用性薬剤のSpiriva(登録商標)(臭化チオトロピウム)が挙げられる。これらの化合物は、吸入投与後に気管支拡張を生じる。肺活量測定値の向上に加えて、慢性閉塞性肺疾患(COPD)での抗ムスカリンの使用は、健康状態および生活の質の点数の向上に関連する。身体におけるムスカリン受容体の広範な分布の結果、ムスカリン拮抗薬への顕著な全身的曝露には、口渇、便秘、散瞳、尿閉(すべてM受容体の遮断によって主に媒介される)、頻脈(M受容体の遮断によって媒介される)などの結果が伴う。現在臨床的に使用される非選択性ムスカリン拮抗薬を治療量吸入投与した後によく報告される副作用は、口渇であり、これは軽度としてしか報告されていないが、投与する吸入薬剤の用量を制限するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願公開WO91/11172号
【特許文献2】国際特許出願公開WO94/02518号
【特許文献3】国際特許出願公開WO98/55148号
【特許文献4】国際特許出願公開WO2005/002654号
【特許文献5】米国特許出願第2006/205779号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Handbook of Pharmaceutical Salts,Properties,Selection and Use、Wiley−VCH刊、2002、P.Heinrich Stahl、Camille G Wermuth著、ISBN3−906390−26−8
【非特許文献2】J Pharm Sci、64(8)、1269〜1288、Haleblian(1975年、8月)
【非特許文献3】J Pharm Sci、88(10)、955〜958、FinninおよびMorgan(1999年、10月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、例えば、効果、薬物動態、または作用持続時間の点で適切な薬理学的プロフィールを有し、吸入経路による投与に特に適した、改良されたM受容体拮抗薬が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この状況において、本発明は、次式のビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩である新規なM受容体拮抗薬に関する。
【0008】
【化1】

【0009】
好ましくは、本発明は、ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩の実質的な結晶形に関する。
【0010】
好ましくは、本発明の塩酸塩は、CuのKα線(波長=1.5406Å)を使用して測定したとき、次の2θ角(±0.1°2θ)で表される4つの独自のX線回折パターンピークを特徴とするX線回折パターンを有する。
【0011】
【表1】

【0012】
本発明の塩酸塩は、CuのKα線(波長=1.5406Å)を使用して測定したとき、以下の2θ角(±0.1°2θ)で表される7つの固有のX線回折パターンピークを特徴とすることもできるX線回折パターンを有する。
【0013】
【表2】

【0014】
またはさらに、CuのKα線(波長=1.5406Å)を使用して測定したとき、以下の2θ角(±0.1°2θ)で表される10の固有のX線回折パターンピークを特徴とすることもできるX線回折パターンを有する。
【0015】
【表3】

【0016】
別の実施形態によれば、本発明の塩酸塩はまた、29.5ppmの外試料の固相アダマンタンを基準とする、以下の主要な炭素化学シフトを有する固体13C NMRパターンを特徴とすることができる。
【0017】
【表4】

【0018】
別の実施形態によれば、本発明の塩酸塩はまた、−76.54ppmの外部標準のトリフルオロ酢酸水溶液(50%体積/体積)を基準とする、以下の主要なフッ素化学シフトを有する固体19F NMRパターンを特徴とすることができる。
【0019】
【表5】

【0020】
今回、本発明の塩酸塩が、M受容体の拮抗薬であり、M媒介疾患および/または病態の治療に特に有用で、良好な効能を示すことが分かった。さらに、本発明の塩酸塩は、実質的に結晶質であり、したがって、固体状態安定特性、およびある種の製薬用賦形剤、例えば、ラクトースなど、具体的には、α−ラクトース一水和物との適合特性を包含する特性を示し、これらの特性はこの塩酸塩を結晶質ではないその対応する遊離塩基より優れているようにする。したがって、本発明の塩酸塩は、例えば、乾燥粉末用吸入器を使用する吸入経路での投与に特に適している。
【0021】
誤解を排除するために、本発明による「実質的に結晶質」とは、本発明の塩酸塩が、少なくとも70%が結晶質、より好ましくは、少なくとも80%が結晶質、さらに好ましくは、少なくとも85%が結晶質、さらに好ましくは、少なくとも90%が結晶質、さらにより好ましくは、少なくとも95%が結晶質であることを意味する。
【0022】
本発明の塩酸塩は、「Handbook of Pharmaceutical Salts,Properties,Selection and Use、Wiley−VCH刊、2002、P.Heinrich Stahl、Camille G Wermuth著、ISBN3−906390−26−8」に開示されるものなど従来の塩調製方法に従って、ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステルから調製され得る。例として、本発明の塩酸塩は、適切な溶媒中で、遊離塩基としてのビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステルに塩酸水溶液を添加することによって調製することができる。
【0023】
こうして得たビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩をさらに、例えばアセトンなどの他の溶媒から再結晶して、より高結晶性の材料を得ることができる。
【0024】
本発明によるビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩は、溶媒和していない形態と溶媒和した形態のどちらでも存在することができる。本明細書では、「溶媒和物」という用語は、本発明の塩酸塩と化学量論量の1種または複数の薬学的に許容できる溶媒分子、例えばエタノールとを含む分子複合体の説明に使用される。「水和物」という用語は、前記溶媒が水のとき使用される。これらの非溶媒和/非水和および溶媒和/水和形態は、本発明の範囲内に包含される。
【0025】
また、包接化合物、薬物−ホスト包接複合体などの複合体も、本発明の範囲に包含されるが、前述の溶媒和物とは対照的に、薬物およびホストは、化学量論量または非化学量論量で存在する。また、化学量論量でも非化学量論量でもよい2種以上の有機および/または無機成分を含有する薬物の複合体も包含される。得られた複合体は、イオン化されていても、部分的にイオン化されていても、イオン化されていなくてもよい。こうした複合体の概説に関しては、J Pharm Sci、64(8)、1269〜1288、Haleblian(1975年、8月)を参照されたい。
【0026】
本発明の塩酸塩の多形体および結晶形態/晶癖もまた、本発明の範囲に包含される。
【0027】
「本発明の塩酸塩」という用語は、ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩ならびにその溶媒和物および/または多形体を包含する。
【0028】
本発明の塩酸塩は、有益な薬学的有効化合物であり、ムスカリン受容体Mが関与する、またはこの受容体の拮抗作用が利益を生じさせることができる多数の障害の治療および予防に適している。本発明の塩酸塩は、M受容体と相互作用することができ、それによって、さらに以下に説明するように、この塩酸塩がすべての哺乳動物の生理機能において果たす本質的な役割のために広範囲の治療用途を有する。誤解を排除するために、本明細書における「治療」という言及は、治療的、姑息的、および予防的治療という言及を包含する。
【0029】
したがって、本発明の塩酸塩は、特に、アレルギー性および非アレルギー性の気道疾患(例えば、喘息、COPDなど)の治療および予防に、また、炎症性腸疾患、過敏性腸疾患、憩室疾患、動揺病、胃潰瘍、腸の放射線検査、BPH(前立腺肥大症)の対症療法、NSAID誘発胃潰瘍、尿失禁(尿意切迫、頻尿、急迫性尿失禁、過活動膀胱、夜間頻尿、および下部尿路症状を含む)、毛様体筋麻痺、散瞳、およびパーキンソン病など他の疾患の治療に有用である。
【0030】
本発明の好ましい一態様によれば、本発明の塩酸塩は、M受容体が関与する疾患、障害、および病態の治療での使用に適している。より詳細には、本発明はまた、以下からなる群から選択される疾患、障害、および病態の治療に使用される本発明の塩酸塩に関する、
・慢性または急性の気管支収縮、慢性気管支炎、末梢気道閉塞、および肺気腫、
・閉塞性または炎症性の気道疾患、具体的には、慢性好酸球性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎を包含するCOPD、COPDに関連するまたは関連しない肺気腫または呼吸困難、不可逆的進行性気道閉塞を特徴とするCOPD、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、他の薬物治療の結果生じる気道反応亢進の悪化、および肺高血圧症に関連する気道疾患、
・気管支炎、具体的には、急性気管支炎、急性喉頭気管気管支炎、アラキジン酸性気管支炎(arachidic bronchitis)、カタル性気管支炎、クループ性気管支炎、乾性気管支炎、感染性の喘息性気管支炎、増殖性気管支炎、ブドウ球菌または連鎖球菌性気管支炎、および小胞性気管支炎、
・喘息、具体的には、アトピー性喘息、非アトピー性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性気管支IgE媒介喘息、気管支喘息、本態性喘息、真性喘息、病態生理学的障害によって引き起こされる内因性喘息、環境要因によって引き起こされる外因性喘息、未知または不顕性の原因の本態性喘息、非アトピー性喘息、気管支炎性喘息、気腫性喘息、運動誘発性喘息、アレルゲン誘発性喘息、冷風誘発性喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原生動物、またはウイルス感染によって引き起こされる感染性喘息、非アレルギー性喘息、初発喘息、喘鳴幼児症候群(wheezy infant syndrome)、および細気管支炎、
・急性肺障害、
・気管支拡張症、具体的には、円柱状気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、紡錘状気管支拡張症、毛細管気管支拡張症、嚢状気管支拡張症、乾性気管支拡張症、および濾胞性気管支拡張症。
【0031】
さらに具体的には、本発明はまた、慢性または急性の気管支収縮、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支炎、喘息、急性肺障害、および気管支拡張症からなる群から選択される疾患、障害、および病態の治療に使用される本発明の塩酸塩に関する。
【0032】
本発明のさらに別の態様はまた、M拮抗薬活性を有する医薬品を製造するための本発明の塩酸塩の使用に関する。特に、本発明は、M受容体媒介疾患および/または病態、具体的には上に挙げた疾患および/または病態の治療用医薬品を製造するための本発明の塩酸塩の使用に関する。
【0033】
結果として、本発明は、本発明の塩酸塩を有効量用いて、ヒトを包含する哺乳動物を治療する特に興味深い方法を提供する。より正確には、本発明は、ヒトを包含する哺乳動物においてのM受容体媒介疾患および/または病態、具体的には上に挙げた疾患および/または病態の治療のために、前記哺乳動物に本発明の塩酸塩を有効量投与することを含む特に興味深い方法を提供する。
【0034】
本発明の塩酸塩を、治療および/または予防用薬剤として、動物、好ましくは哺乳動物、特にヒトに本発明に従って投与することができる。本発明の塩酸塩を、それ自体、互いの混合物で、または通常薬学上無害な賦形剤および/または添加剤に加えて、有効成分として本発明の塩酸塩を効果的な用量含有する医薬調製物の形で投与することができる。
【0035】
本発明の塩酸塩は、凍結乾燥、噴霧乾燥、または蒸発乾燥して、結晶質または非晶質材料の固形プラグ(plug)、粉末、もしくはフィルムを提供することができる。マイクロ波または高周波乾燥を、この目的に使用することができる。
【0036】
本発明の塩酸塩は、単独で、または他の薬物と組み合わせて投与され得、一般に、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤と共に製剤として投与される。本明細書では、「賦形剤」という用語は、本発明の塩酸塩以外のいずれの成分の説明にも使用される。賦形剤の選択は、大抵、特定の投与法に依存する。
【0037】
本発明の塩酸塩を、血流、筋肉、または内部器官内に直接投与することができる。非経口投与に適した手段としては、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、および皮下が挙げられる。非経口投与に適した装置としては、有針(顕微針を含む)注射器、無針注射器、および注入技術が挙げられる。
【0038】
非経口製剤は、一般に、塩、炭水化物、緩衝剤(好ましくはpHが3〜9)などの賦形剤を含有することができる水溶液であるが、いくつかの適用では、これらは、より適切には、無菌の発熱性物質を含まない水などの適切なビヒクルと共に使用する、無菌の非水溶液としてまたは乾燥形態として製剤化され得る。
【0039】
例えば凍結乾燥による無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的製薬技術を使用して容易に実施され得る。
【0040】
非経口投与用製剤を、即時および/または調節放出になるように製剤化することができる。調節放出製剤としては、遅延、持続、パルス、制御、標的、および計画放出が挙げられる。したがって、本発明の塩酸塩を、有効化合物の調節放出を提供する埋込みデポ(implanted depot)として投与するために、固体、半固体、またはチキソトロピー液体として製剤化することができる。こうした製剤の例としては、薬物をコーティングしたステントおよびPGLAポリ(dl−乳酸−コグリコール酸)(PGLA)マイクロスフェアが挙げられる。
【0041】
本発明の塩酸塩はまた、皮膚または粘膜に局所的に、すなわち皮膚的または経皮的に投与することもできる。この目的のための典型的な製剤としては、ゲル、ヒドロゲル、ローション、液剤、クリーム、軟膏、散布剤、包帯、フォーム、フィルム、皮膚パッチ、ウエハ、インプラント、スポンジ、ファイバ、包帯、およびマイクロエマルジョンが挙げられる。リポソームもまた使用することができる。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールが挙げられる。浸透促進剤を組み込むことができ、例えば、J Pharm Sci、88(10)、955〜958、FinninおよびMorgan(1999年、10月)を参照されたい。
【0042】
局所投与の他の手段としては、エレクトロポレーション、イオン導入法、音波泳動法、超音波導入法、および顕微針または無針(例えば、Powderject(商標)、Bioject(商標)など)注射による送達が挙げられる。
【0043】
局所投与用製剤を、即時および/または調節放出になるように製剤化することができる。調節放出製剤としては、遅延、持続、パルス、制御、標的、および計画放出が挙げられる。
【0044】
本発明の塩酸塩を、例えば、坐剤、膣坐剤、または浣腸剤の形で直腸または経膣投与することができる。カカオ脂は従来の坐剤基剤であるが、必要に応じて様々な代替品を使用することができる。
【0045】
直腸/膣投与のための製剤を、即時および/または調節放出になるように製剤化することができる。調節放出製剤としては、遅延、持続、パルス、制御、標的、および計画放出が挙げられる。
【0046】
本発明の塩酸塩はまた、一般に、等張のpH調整した無菌生理食塩水において微細化された懸濁液または溶液の液滴の形で、眼または耳に直接投与することもできる。眼および耳への投与に適した他の製剤としては、軟膏、生分解性(例えば、吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(例えば、シリコーン)インプラント、ウエハ、レンズ、ならびにニオソームやリポソームなどの粒状または小胞状システムが挙げられる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸などのポリマー、セルロースポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはメチルセルロース、またはヘテロ多糖ポリマー、例えばジェランガムを、塩化ベンザルコニウムなどの保存剤と一緒に組み込むことができる。こうした製剤をまた、イオン導入法によって送達することもできる。
【0047】
眼/耳の投与のための製剤を、即時および/または調節放出になるように製剤化することができる。調節放出製剤としては、遅延、持続、パルス、制御、標的、または計画放出が挙げられる。
【0048】
本発明の塩酸塩を、シクロデキストリン、適切なその誘導体、ポリエチレングリコール含有ポリマーなど可溶な巨大分子体と組み合わせて、前述の投与法のいずれかで使用されるこれらの溶解性、溶解速度、味覚遮蔽、生体利用能、および/または安定性を改善することができる。
【0049】
薬物−シクロデキストリン複合体は、例えば、ほとんどの剤形および投与経路に一般に有用であることが分かっている。包接複合体と非包接複合体はどちらも使用することができる。薬物との直接複合体化の代わりに、シクロデキストリンを、補助添加剤として、すなわち、担体、希釈剤、または可溶化剤として使用することができる。α、β、およびγ−シクロデキストリンが、これらの目的に最も一般的に使用され、これらの例は、国際特許出願公開WO91/11172号、WO94/02518号、およびWO98/55148号に見ることができる。
【0050】
最後に、本発明の塩酸塩はまた、一般に、乾燥粉末用吸入器からの乾燥粉末(単独で、例えばラクトース、好ましくはαラクトース一水和物との乾燥ブレンドでの混合物として、または例えばホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合した混合成分粒子として)の形で、または1,1,1,2−テトラフルオロエタンや1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどの適切な噴霧剤を使用するまたは使用しない、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザ(好ましくは細かい霧を生じる電気流体力学法を使用するアトマイザ)、もしくはネブライザからのエアロゾルスプレーとして鼻腔内にまたは吸入によって投与され得る。鼻腔内使用では、粉末は、生体接着剤、例えば、キトサンまたはシクロデキストリンを含むことができる。
【0051】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザ、またはネブライザは、例えば、エタノール、エタノール水溶液、または有効物の分散、可溶化、もしくは拡張放出に適した代替薬剤、溶媒としての噴霧剤、およびトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、オリゴ乳酸など任意の界面活性剤を含む本発明の化合物の溶液または懸濁液を含有する。
【0052】
乾燥粉末または懸濁製剤での使用の前に、原薬は、吸入による送達に適した大きさに微小化する(一般に5ミクロン未満)。これは、例えば、スパイラルジェットミル法、フルイドベッドジェットミル法、ナノ粒子を形成する超臨界流体プロセス法、高圧ホモジナイズ法、スプレー乾燥法など、任意の適切な粉砕法によって実現され得る。
【0053】
吸入器または注入器において使用されるカプセル(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから作製)、ブリスター、およびカートリッジは、本発明の塩酸塩と、ラクトースやデンプンなどの適切な粉末基剤と、l−ロイシン、マンニトール、ステアリン酸マグネシウムなどの性能調節剤との粉末混合物を含有するように製剤化され得る。ラクトースは、無水でも一水和物の形態でもよく、好ましくは後者である。他の適切な賦形剤としては、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、ショ糖、およびトレハロースが挙げられる。
【0054】
メントールやレボメントールなどの適切な香料、またはサッカリンやサッカリンナトリウムなどの甘味料を、吸入/鼻腔内投与のための本発明のこれらの製剤に添加することができる。
【0055】
吸入/鼻腔内投与のための製剤を、即時および/または調節放出になるように、例えば、PGLAを使用して、製剤化することができる。調節放出製剤としては、遅延、持続、パルス、制御、標的、および計画放出が挙げられる。
【0056】
ヒトの患者への投与では、本発明の塩酸塩の1日当たりの全用量は、一般に、範囲0.001mg〜5000mgにあるが、もちろん投与様式に依存する。したがって、本発明はまた、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤と共に、0.001mg〜5000mgの本発明の塩酸塩を含む医薬組成物に関する。場合により、これらの医薬組成物はさらに、1種または複数の他の治療剤を含むことができる。
【0057】
例えば、1日当たりの静脈内投与量は、0.001mg〜40mgしか必要とされない可能性がある。1日当たりの全用量は、1回量または分割量で投与され得、医師の裁量で本明細書に示される典型的な範囲に入らない可能性がある。
【0058】
電気流体力学法を使用して細かい霧を生成するアトマイザで使用される適切な溶液製剤は、1回の操作につき本発明の塩酸塩を1μg〜20mg含有することができ、操作量は、1μl〜100μlの範囲で変動し得る。典型的な製剤は、本発明の塩酸塩、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、および塩化ナトリウムを含むことができる。プロピレングリコールの代わりに使用することができる代替溶媒としては、グリセロールおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0059】
乾燥粉末用吸入器およびエアロゾルの場合、用量単位は、予め薬剤が充填されたカプセル、ブリスター、もしくはポケットによって、または重量測定法による供給投薬チャンバーを利用するシステムによって決定される。本発明による単位は、一般に、本発明の塩酸塩を0.001mg〜10mg含有する測定用量または「パフ(puff)」を投与するように整えられる。1日当たりの全用量は、典型的には、1回量で、またはより一般には1日を通しての分割量として投与することができる、範囲0.001mg〜40mgとする。
【0060】
本発明の塩酸塩は、特に、吸入による投与に適している。具体的には、本発明の塩酸塩は、ラクトース、好ましくはラクトース一水和物を含む、乾燥粉末としての製剤に適しており、したがって、乾燥粉末用吸入器、例えば国際特許出願公開WO2005/002654号に記載される乾燥粉末用吸入器を使用して投与し得る。したがって、本発明はまた、ラクトース一水和物とブレンドした、0.001mg〜40mgのビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩を含む医薬乾燥粉末に関する。場合により、これらの医薬製剤はさらに、1種または複数の他の治療剤を含むことができる。
【0061】
これらの用量は、体重が約65kg〜70kgの平均的なヒト対象に基づくものである。医師は、幼児や高齢者など、体重がこの範囲に入らない対象に関して用量を容易に決定することができる。
【0062】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の塩酸塩またはその組成物をまた、患者に同時投与する1種または複数の追加治療剤との組合せとして使用して、(i)気管支収縮、(ii)炎症、(iii)アレルギー、(iv)組織破壊、(v)息切れ、咳などの徴候および症状を包含するがそれらだけに限らない病態生理学に関連する疾患過程の治療など、いくつかの特に望ましい治療最終結果を得ることもできる。
【0063】
本明細書では、本発明の塩酸塩および1種または複数の他の治療剤に関して、「同時投与」、「同時投与された」、および「との組合せで」という用語は、以下を意味するものとし、以下を参照し、以下のことが包含される:
・治療が必要な患者に本発明の塩酸塩と治療剤とのこうした組合せを同時に投与し、その際、こうした成分は、前記患者に実質上同時に前記成分を放出する単一剤形に一緒に製剤化される、
・治療が必要な患者に本発明の塩酸塩と治療剤とのこうした組合せを実質上同時に投与し、その際、こうした成分は、個々の剤形に互いに別個に製剤化され、これらが前記患者によって実質上同時に摂取されると、前記成分は前記患者に実質上同時に放出される、
・治療が必要な患者に本発明の塩酸塩と治療剤とのこうした組合せを順次投与し、その際、こうした成分は、個々の剤形に互いに別個に製剤化され、これらが各投与間の有意な時間間隔をおいて前記患者によって連続的に摂取されると、前記成分は前記患者に実質上異なる時間に放出される、
・治療が必要な患者に本発明の塩酸塩と治療剤とのこうした組合せを順次投与し、その際、こうした成分は、制御された方法で前記成分を放出する単一剤形に一緒に製剤化されると、それらは前記患者によって同時および/または異なる時間に、同時に、連続的に、および/または重複して投与される、
ここでは、各器官は、同じまたは異なる経路によって投与され得る。
【0064】
本発明の塩酸塩と組み合わせて使用することができる他の治療剤の適切な例としては、
(a)5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害剤または5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)拮抗薬、
(b)LTB、LTC、LTD、およびLTEの拮抗薬を包含するロイコトリエン拮抗薬(LTRA)、
(c)H1およびH3拮抗薬を包含するヒスタミン受容体拮抗薬、
(d)うっ血除去薬使用のためのαおよびα−アドレナリン受容体作動性血管収縮性交感神経様作用薬、
(e)PDE3、PDE4、およびPDE5阻害剤を包含するPDE阻害剤、
(f)β2受容体作動薬、
(g)テオフィリン、
(h)クロモグリク酸ナトリウム、
(i)COX阻害剤、非選択的および選択的両方のCOX−1またはCOX−2阻害剤(NSAID)、
(j)プロスタグランジン受容体拮抗薬およびプロスタグランジン合成酵素の阻害剤、
(k)経口および吸入グルココルチコステロイド、
(l)コルチコイド受容体の解離性作動薬(DAGR)、
(m)内因性炎症性要素に対して活性なモノクローナル抗体、
(n)抗腫瘍壊死因子(抗TNF−α)薬剤、
(o)VLA−4拮抗薬を包含する接着分子阻害剤、
(p)キニン−BおよびB受容体拮抗薬、
(q)IgE経路およびシクロスポリンの阻害剤を包含する免疫抑制剤、
(r)マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害剤、
(s)タキキニンNK、NK、およびNK受容体拮抗薬、
(t)プロテアーゼ阻害剤、例えば、エラスターゼ阻害剤など、
(u)アデノシンA2a受容体作動薬およびA2b拮抗薬、
(v)ウロキナーゼ阻害剤、
(w)ドーパミン受容体に作用する化合物、例えば、D2作動薬など、
(x)NFκβ経路のモジュレーター、例えば、IKK阻害剤など、
(y)サイトカインシグナル伝達経路のモジュレーター、例えば、p38MAPキナーゼ、PI3キナーゼ、JAKキナーゼ、sykキナーゼ、EGFR、またはMK−2など、
(z)粘液溶解薬または鎮咳薬として分類することができる薬剤、
(aa)吸入コルチコステロイドに対する応答を増強する薬剤、
(bb)気道にコロニーを形成することができる微生物に対して有効な抗生剤および抗ウイルス剤、
(cc)HDAC阻害剤、
(dd)CXCR2拮抗薬、
(ee)インテグリン拮抗薬、
(ff)ケモカイン、
(gg)上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)遮断薬または上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)阻害剤、
(hh)P2Y2作動薬および他のヌクレオチド受容体作動薬、
(ii)トロンボキサン阻害剤、
(jj)PGD合成およびPGD受容体(DP1およびDP2/CRTH2)の阻害剤、
(kk)ナイアシン、ならびに
(ll)VLAM、ICAM、およびELAMを包含する接着因子。
【0065】
本発明によれば、本発明の塩酸塩を、H3拮抗薬、長時間作用性β作動薬を包含するβ作動薬、PDE4阻害剤、吸入グルココルチコステロイドを包含するステロイド、アデノシンA2a受容体作動薬、p38MAPキナーゼもしくはsykキナーゼを包含するサイトカインシグナル伝達経路のモジュレーター、ならびに/またはLTB、LTC、LTD、およびLTEの拮抗薬を包含するロイコトリエン拮抗薬(LTRA)と組み合わせて含む医薬組成物が好ましい。
【0066】
本発明によれば、本発明の塩酸塩を、グルココルチコステロイド、特に、全身性副作用を低減した吸入グルココルチコステロイド、および/またはβ2作動薬と組み合わせて含む医薬組成物がさらに好ましい。
【0067】
適切なグルココルチコステロイドの例として、プレドニゾン、プレドニゾロン、フルニソリド、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルチカゾン、シクレソニド、モメタゾン、およびそれらの塩が挙げられるが、それらだけに限らない。
【0068】
適切なβ2作動薬の例として、サルブタモール、テルブタリン、バンブテロール、フェノテロール、サルメテロール、ホルモテロール、ツロブテロール、およびそれらの塩が挙げられるが、それらだけに限らない。
【0069】
別の好ましい態様によれば、本発明の医薬組成物は、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤と共に、「三重組合せ」を形成するように、グルココルチコステロイド、例えば上記で列挙したもの、およびβ2作動薬、例えば上記で列挙したものと組み合わせた本発明の塩酸塩を含む。
【0070】
さらに好ましい一態様によれば、本発明の医薬組成物としては、ラクトース一水和物と共に、本発明の塩酸塩、グルココルチコステロイド、および長時間作用性β2作動薬を包含するβ2作動薬を含む乾燥粉末が挙げられる。
【0071】
例えば特定の疾患または病態を治療するために有効化合物の組合せを投与することが望ましいので、少なくとも1種が本発明の塩酸塩を含有する2種以上の医薬組成物を、組成物の同時投与に適したキットの形で好都合に組み合わせることができることは本発明の範囲に含まれる。
【0072】
したがって、本発明のキットは、少なくとも1種が本発明による本発明の塩酸塩を含有する2種以上の別個の医薬組成物と、前記組成物を別個に保持するための容器、分割されたボトル、または分割されたホイルポケットなどの手段とを含む。こうしたキットの例は、錠剤、カプセルなどの包装に使用されるよく知られたブリスターパックである。
【0073】
本発明のキットは、特に、様々な剤形、例えば非経口剤を投与すること、別個の組成物を様々な投与間隔で投与すること、または別個の組成物を相互に用量調整することに適している。コンプライアンスを補助するのに、キットは、一般に、投与に関する説明書を含み、いわゆる記憶補助物(memory aid)を備えてもよい。
【0074】
以下の実験の詳細は、本発明の塩酸塩をどのように調製することができるかを具体的に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1および2のDSCサーモグラムを示す図である。
【図2】実施例1のPXRDパターンを示す図である。
【図3】実施例2の炭素CPMASスペクトルを示す図である。
【図4】実施例2のフッ素MASスペクトルを示す図である。
【実施例】
【0076】
調製1:9−メチルアミノ−ノナン−1−オール
【0077】
【化2】

9−ブロモノナノール(25g)にメチルアミン(エタノールでの33%溶液、200ml)を添加し、溶液を窒素下、室温で18時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、得られた無色固体をジクロロメタン(200ml)に溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液(2M、100ml)、水(100ml)で洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、真空下で濃縮して、黄色オイルとして表題化合物14.95gを得、静置すると固化した。前記化合物は、調製2でそのまま使用した。
【0078】
調製2:(9−ヒドロキシ−ノニル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【0079】
【化3】

9−メチルアミノ−ノナン−1−オール(調製1、14.95g)を、ジクロロメタン(250ml)とトリエチルアミン(17.6g)の混合物中に懸濁させ、撹拌しながら氷浴で冷却した。Boc無水物(18.8g)を5分かけて少しずつ添加し、反応物を氷浴で1時間、次いで室温で4時間撹拌した。反応物を、水(150ml)、10%のクエン酸水溶液(50ml)、および飽和ブライン(50ml)で洗浄し、次いで、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、真空下で濃縮して、黄色液体として表題化合物22.95g、97%を得た。
1H NMR
(400MHz, CDCl3) δ =
1.20-1.38 (m, 10H), 1.47 (s, 9H), 1.47-1.60 (m, 4H), 2.80 (s, 3H), 3.10-3.22
(t, 2H), 3.78-3.83 (t, 2H) ppm.
【0080】
調製3:メタンスルホン酸9−(tert−ブトキシカルボニル−メチル−アミノ)−ノニルエステル
【0081】
【化4】

5℃のジクロロメタン(230mL)およびトリエチルアミン(18mL)中の(9−ヒドロキシ−ノニル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(調製2、22.95g)溶液に、メタンスルホニルクロリド(7.2mL)を滴下し、粘性のある濁った溶液を室温で1時間撹拌した。混合物を、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を乾燥させ(硫酸マグネシウム)、真空下で蒸発させて、淡黄色オイルとして表題化合物29.30gを得た。
1H NMR
(400MHz, CDCl3) δ =
1.20-1.45 (m, 10H), 1.44 (s, 9H), 1.44-1.52 (m, 2H), 1.70-1.79 (m, 2H), 2.82
(s, 3H), 2.98 (s, 3H), 3.14-3.24 (m, 2H), 4.20-4.4.24 (t, 2H) ppm.
【0082】
調製4:ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−[9−(tert−ブトキシカルボニル−メチル−アミノ)−ノニル]−ピペリジン−4−イルエステル
【0083】
【化5】

4−ピペリジニル−N−(2−ビフェニリル)−カルバメート塩酸塩(米国特許出願第2006/205779号、29.3g)を、炭酸カリウム(46g)と共にジメチルホルムアミド(250ml)中で0.5時間撹拌した。次いで、メタンスルホン酸9−(tert−ブトキシカルボニル−メチル−アミノ)−ノニルエステル(調製3、27.7g)およびヨウ化カリウム(277mg)を添加した。反応混合物を65℃で24時間撹拌し、次いで、撹拌を促進させるために追加のジメチルホルムアミド(100mL)を添加し、65℃でさらに24時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣を水と酢酸エチル(各500ml)の間で分配した。水層をさらに酢酸エチル(200ml)で分離し、抽出した。一緒にした有機層を飽和ブラインで洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、真空下で濃縮した。粗残渣(46.46g)を、溶離液として酢酸エチル:ヘプタン:880アンモニア(体積で80:20:0.5)を使用した順相シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、無色オイルとして表題化合物30g、65%を得、静置すると結晶化した。
1H NMR
(400MHz, CDCl3) δ =
1.22-1.38 (m, 12H), 1.44 (s, 9H), 1.44-1.56 (m, 2H), 1.61-1.73 (m, 2H),
1.88-1.97 (m, 2H), 2.12-2.24 (t, 2H), 2.23-2.30 (t, 2H), 2.64-2.72 (m, 2H),
2.82 (s, 3H), 3.16-3.24 (m, 2H), 4.63- 4.78 (m, 1H), 6.60 (s, 1H), 7.08-7.56
(m, 8H), 8.03-8.15 (d, 1H) ppm.
【0084】
調製5:ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−(9−メチルアミノ−ノニル)−ピペリジン−4−イルエステル;二塩酸塩
【0085】
【化6】

ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−[9−(tert−ブトキシカルボニル−メチル−アミノ)−ノニル]−ピペリジン−4−イルエステル(調製4、18.5g)を、塩酸のジオキサン溶液(85ml、4M)中で室温で18時間撹拌した。溶媒および過剰の酸を真空下で除去し、残渣をジクロロメタン(100ml)で2回共沸させて、白色固体として表題化合物18.0gを得た。
1H NMR
(400MHz, CDCl3) δ =
1.22-1.38 (m, 10H), 1.54-2.10 (m, 8H), 2.78-2.97 (m, 4H), 3.29-3.42 (m, 2H),
3.53-3.65 (m, 2H), 3.57 (s, 3H), 4.57- 4.67 (m, 1H), 4.74 (bs, 1H), 7.30-7.45
(m, 8H), 8.80-8.90 (m, 3H) 10.71-10.87 (m, 1H) ppm.
【0086】
調製6:ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル
【0087】
【化7】

ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−(9−メチルアミノ−ノニル)−ピペリジン−4−イルエステル二塩酸塩(調製5、4.47g、9.90mmol)のテトラヒドロフラン(150ml)溶液に、3−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸(1.85g、11.9mmol)、トリエチルアミン(2.07ml、14.8mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジン(484mg、3.96mmol)、および(3−(ジメチルアミノ)プロピル)エチルカルボジイミド塩酸塩(2.66g、13.9mmol)を添加した。混合物を室温で15分、次いで60℃で18時間撹拌した。さらに、3−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸(308mg、2.0mmol)を添加し、反応物を60℃でさらに18時間加熱した。溶媒を真空下で除去し、残渣を酢酸エチル(200ml)と水(150ml)の間で分配した。さらに、水層を酢酸エチル(200ml)で抽出し、一緒にした有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣をメタノール/水(115ml/23ml)中に溶解させ、炭酸カリウム(12.9g、93.2mmol)で処理し、50℃で18時間加熱した。溶媒を真空下で除去し、残渣をジクロロメタン(200ml)と水(200ml)の間で分配した。有機層をブライン(100ml)で洗浄し、真空下で濃縮した。残渣を、ジクロロメタン:メタノール:880アンモニア(体積で100:0:0〜95:5:0.5)で溶離するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製して、油状の泡として表題化合物3.01g、収率52%を得た。
LCMS: APCI ESI m/z 590 [M+H]+
1H NMR (400
MHz, メタノール-d4) δ = 1.12-1.40 (m, 10H), 1.45-1.54 (m, 2H),
1.56-1.68 (m, 4H), 1.81-1.91 (m, 2H), 2.29-2.40 (m, 4H), 2.64-2.75 (m, 2H),
3.01 (s, 3H), 3.34-3.53 (m, 2H), 4.58-4.65 (m, 1H), 6.92-6.96 (m, 1H), 7.05 (d,
1H), 7.12 (d, 1H), 7.23-7.44 (m, 8H), 7.55 (d, 1H) ppm.
【0088】
(実施例1)
ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩
【0089】
【化8】

ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル(調製6、118mg、0.2mmol)のエチルアルコール(1ml)溶液に、塩酸水溶液(2Mを0.1ml、0.2mmol)を添加し、溶液を一晩蒸発させて、低バルクにした。残渣にtert−ブチルメチルエーテル(4ml)を添加し、予め作製した種結晶の存在下で混合物を室温で撹拌した。生成した無色の結晶質固体をろ過し、真空下で乾燥させて、表題化合物65mg、収率55%を得た。
1H NMR
(DMSO-d6) δ =1.0-2.05 (m, 18H),
2.74-3.00 (m, 4H), 2.84 (s, 3H), 3.21-3.43 (m, 4H), 4.56-4.68 (m), 4.70-4.74
(m) (1H, 回転異性体), 6.94-7.04 (m,
2H), 7.10-7.20 (d, 1H), 7.25-7.44 (m, 9H), 8.74 (s), 8.82 (s) (1H, 回転異性体), 10.05-10.30 (m, 1H), 10.27 (s, 1H)
ppm.
【0090】
種結晶は以下の通りに調製した:
ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル遊離塩基(調製6、15mg、0.025mmol)のエタノール(0.5ml)溶液に、エタノール(0.1ml)および塩酸水溶液(2Mを0.012ml、0.024mmmol)におけるフマル酸(1.5mg、0.0125mmol)溶液を添加し、溶液を大気に晒して室温で蒸発させて、ゴム状物にした。そのゴム状物をメチルtert−ブチルエーテル(1ml)で処理し、6週間静置した。結晶を1つ加え、スパチュラでの操作後、残りのゴム状物を2時間にわたって結晶化させ、ろ過し、真空下で乾燥させて、必要とされる種結晶9mg、収率60%を得た。
【0091】
DSCデータ
実施例1で得た材料の融点を、TA instrumentsのQ1000示差走査熱量計を使用して、示差走査熱量測定法(DSC)で決定した。試料を標準アルミニウムパンにおいて10℃から250℃に20℃/分で加熱した。DSCサーモグラムから得られた、平らなベースラインおよび融解に対応する鋭い吸熱を有するトレースを図1に示す。実施例1で得た材料2.072mgの融点は、開始温度が111.2℃の強い吸熱によって証明された。
【0092】
CHNデータ
3545FClの分析:C67.13、H7.24、N6.71。実測値:C66.79、H7.23、N6.62。
【0093】
粉末X線回折データ
実施例1の粉末X線回折パターンを、自動試料交換器、θ−θゴニオメータジオメトリ、自動ビーム発散スリット、およびPSD Vantec−1検出器を取り付けたBruker−AXS Ltd.のD4 ENDEAVOR粉末X線回折計を使用して決定した。試料を0.5mmのキャビティを有する低バックグラウンドシリコンウェーハ標本マウント上に載置して分析準備した。X線管を35kV/40mAで操作して、標本を、銅のKα1X線(波長=1.5406Å)で照射しながら回転させた。分析は、データ収集に関して、室温で2°〜55°の2θ範囲にわたって0.018°ステップサイズにつき0.2秒の連続モード設定とした。ピーク検索は、閾値と幅のパラメータをそれぞれ1と0.3に設定したものを使用して、Bruker−AXSから発売されたEvaソフトウェアを用いて行った。機器の較正は、コランダム標準品(NIST:SRM 1976 XRD平板強度標準)を使用して確認した。実測パターンを図2に示す。得られた粉末X線回折パターンの強度およびピーク位置(角2θ誤差は±0.1度)を表1に示す。
【0094】
【表6】

【0095】
(実施例2)
実施例1の化合物のアセトンからの再結晶
ビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩(実施例1、100mg)を、乾燥アセトン(約1ml)中において還流下で溶解させた。溶液を一晩放冷し、結晶質の生成物をろ過で単離し、真空下で乾燥させて、高結晶性のビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩60mg、収率60%を得た。
【0096】
DSCデータ
実施例2で得た材料2.027mgの融点は、実施例1に記載したのと同様の方法を使用して決定し、開始温度が118.1℃の強い吸熱によって証明された。DSCサーモグラムから得られた、平らなベースラインおよび融解に対応する鋭い吸熱を有するトレースを図2に示す。アセトンから生じた材料のこのより高い融点は、より高レベルな結晶性およびより大きな粒径に起因する可能性がある。
【0097】
粉末X線回折データ
PXRDによって特性決定したとき、実施例1に記載したのと同様の方法を使用して、実施例2の材料で同様の無水多形体を得た。
【0098】
固体NMRデータ
上の実施例2に記載したのと同様の方法で得た材料の試料2gのうちの約80mg(前記試料はPXRDによる同様の形態および結晶性を有する)を、4mmのZrOローターに密に充填した。スペクトルは、周囲温度および圧力で、大口径Bruker−Biospin DSX 500MHz(H周波数)NMR分光計内に位置するBruker−Biospin 4mm BL CPMASプローブで収集した。充填したローターをマジック角に配向させ、15.0kHzで回転させた。13C固体スペクトルは、プロトンデカップリング交差分極マジック角回転法(CPMAS)を使用して収集した。交差分極接触時間を2.0ミリ秒に設定した。約85kHzのプロトンデカップリング界を適用した。4096スキャンを8.5秒のリサイクル遅延で収集した。外部標準の結晶アダマンタンを使用し、そのアップフィールド共鳴を29.5ppmに設定して、炭素スペクトルを基準とした。フッ素固体スペクトルは、プロトンデカップリングマジック角回転実験(MAS)を使用して収集した。約85kHzのプロトンデカップリング界を適用した。8スキャンを420秒のリサイクル遅延で収集した。外部標準のトリフルオロ酢酸(H2Oにおいて50%体積/体積)を使用し、その共鳴を−76.54ppmに設定して、フッ素スペクトルを基準とした。
【0099】
観察された炭素化学シフトは、以下の通りである。
【0100】
【表7】

【0101】
観察された4つの特有の炭素化学シフトは、以下の通りである。
【0102】
【表8】

【0103】
対応する炭素CPMASスペクトルを図3に示す。
【0104】
観察されたフッ素化学シフトは、以下の通りである。
【0105】
【表9】

【0106】
対応するフッ素MASのスペクトルを図4に示す。
【0107】
(実施例3)
ヒト組換えMムスカリン受容体の結合親和性評価
膜標品
ヒトムスカリンM受容体を組換え発現するCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞からの細胞ペレットを、20mMのHEPES(pH7.4)中でホモジナイズし、48000xgで4℃にて20分間遠心分離にかけた。ペレットを緩衝液に再懸濁させ、ホモジナイズステップおよび遠心分離ステップを繰り返した。得られたペレットを、最初の充填細胞量1ml当たり緩衝液1mlに再懸濁させ、ホモジナイズステップを繰り返した。タンパク質の評価は、懸濁液、および−80℃で凍結させた約1mg/mlのアリコート1mlに対して行った。
【0108】
hM競争結合アッセイプロトコル
1ml容のポリスチレン96ウェル深型ウェルブロックにおいて、メンブラン(5μg/ウェル)をH−NMS(濃度5×K)+/−試験化合物と共にRT(室温)で24時間インキュベートした。最終アッセイ容量は、+/−試験化合物20μlとH−NMS(Perkin Elmer NEN 636)20μlとメンブラン溶液160μlとからなる200μlとした。全結合は0.1%DMSOで定義し、非特異的結合は1μMのアトロピンで定義した。アッセイ緩衝液は、20mMのHepes(pH7.4)とした。
【0109】
すべてのアッセイ成分を添加した後、プレートを覆い、振とうしながら室温で24時間インキュベートした。Packard filtermateハーベスターを使用して、0.5%ポリエチレンイミンを用いて予備浸漬したGF/B Unifilterプレートで素早くろ過することによって、アッセイを停止させ、次いで、フィルタプレートを4℃のアッセイ緩衝液1mlで3回洗浄した。フィルタプレートは、45℃で1時間乾燥させた。フィルタプレートの下面を密封し、50μl/ウェルのMicroscint「0」を添加し、プレートの上面をTopsealで密封した。90分後、NXT Topcountでプレートを読み取った(読取り時間は1ウェルにつき1分)。
【0110】
得られたデータは、特異的結合のパーセンテージとして表した(特異的結合=全結合−非特異的結合)。試験化合物の濃度に対して特異的結合の%をプロットして、S字形曲線から当組織内(in−house)のデータ分析プログラムを使用してIC50を決定した。IC50値は、Cheng−Prussoff式を適用してKi値に修正した。
【0111】
【数1】

式中、IC50は、特異的放射性リガンド結合を50%阻害する非標識薬剤の濃度である。[L]は、遊離放射性リガンドの濃度であり、KおよびKは、それぞれ放射性リガンドおよび非標識薬剤の平衡解離定数である。
【0112】
したがって、上記のアッセイで試験したビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩は、0.615nMのhM受容体拮抗薬活性を示すことが分かった。
【0113】
(実施例4)
モルモット気管アッセイ
体重350〜450gの雄のDunkin−Hartleyモルモットを、CO濃度を増加させて選別し、続いて大静脈から放血させる。気管を喉頭から胸腔への入口点まで切り出し、次いで室温において新鮮な酸素化改良クレブス緩衝液(10μMプロプラノロール、10μMグアネチジン、および3μMインドメタシンを含有するクレブス)に入れた。気管筋の対側の軟骨を切り離して、気管を開く。およそ3〜5個の軟骨輪の幅の片に切断する。フォーストランスデューサに取り付けるためにこの片の一端の軟骨に綿糸を取り付け、器官槽中に組織を固定するのに綿糸の輪をもう一端に作製する。各片を、通気した温かい(37℃)改良クレブスを満たした5mlの器官槽に載置する。ポンプの流速を1.0ml/分に設定し、組織を絶え間なく洗浄する。組織を初張力1000mg下に配置する。15分および30分後に組織を再度伸張し、次いでさらに30〜45分間平衡に放置する。
【0114】
組織を次のパラメータ:2分毎に10秒連続(train)、0.1ミリ秒パルス幅、10Hz、および10〜30Vの電場刺激(EFS)にかける。各組織の最大収縮応答が観察されるまで、電圧を前述の範囲内で10分毎に5Vずつ上昇させる。次いで、各組織に関して、このちょうど最大の電圧を残りの実験全体に使用する。EFSを20分間平衡にした後、ポンプを停止させ、15分後に8〜10分間(4〜5応答)にわたってコントロール読取り値を得る。次いで、化合物をボーラス用量30×Ki(ろ過結合アッセイでCHO細胞に発現したヒトM受容体にて決定)として各組織に添加し、インキュベートを2時間行う。次いで、化合物を、改良クレブスを用いた1分間の急速洗浄を使用して組織から洗浄し、残りの実験のために流れを1ml/分に回復させる。実験終了時、生存度を決定するのに、組織をヒスタミン(1μM)に曝露させる。実験中に得た読取り値を、Notocord(登録商標)ソフトウェアを使用して自動収集する。生データを、EFS応答阻害の測定値を考慮してパーセント応答に変換する。洗い流し開始後、誘発された阻害から25%回復するのに組織が要した時間を記録し、化合物の作用持続時間の尺度として使用する。組織の生存度によって、実験期間は化合物洗い流しの16時間後に制限される。化合物を一般にn=2〜5にて試験し、作用持続時間を推定する。
【0115】
別法として次のモルモット気管アッセイもまた使用され得る:
雄のDunkin−Hartleyモルモット(体重350〜450g)から気管を取り外し、付着結合組織を除去した後、気管筋の対側の軟骨を切開し、気管片を3〜5個の軟骨輪の幅に整える。気管片を、5mlの組織浴において同長性(isometric)ストレインゲージと固定された組織用フックとの間に筋肉を水平にして初張力1g下で吊し、3μMインドメタシンおよび10μMグアネチジンを含有する(95%O/5%CO)クレブス液を満たした温かい槽(37℃)に浸す。組織を平行な白金線電極間(間隔約1cm)に配置する。新鮮なクレブス液(上記組成物)の1ml/分の一定な流れを、ぜん動ポンプを使用して組織浴全体に維持する。平衡期間開始から15分および30分で再度1gの張力をかけながら、組織を1時間平衡に放置する。平衡終了時、組織を次のパラメータ:10V、10Hz、0.1ミリ秒パルス幅、2分毎に10秒連発を使用して、電場刺激(EFS)にかける。各組織において、電圧応答曲線を10v〜30Vの範囲にわたって作図して(他のすべての刺激パラメータは一定に維持)、ちょうど最大な刺激を決定する。これらの刺激パラメータを使用すると、EFS応答は、1μMテトロドトキシンまたは1μMアトロピンによる遮断で確認されるように、神経媒介が100%、コリン作動性が100%である。次いで、応答が再現可能になるまで、組織を2分間隔で繰り返し刺激する。ぜん動ポンプを20分停止させた後、試験化合物を添加し、平均単収縮をコントロール応答として最後の10分間にわたって記録する。試験化合物を組織浴に添加し、各組織に単一濃度の化合物を受けさせ、2時間平衡に放置する。添加2時間後、EFS応答の阻害を記録し、同じ動物の気管片に関する一連の化合物濃度を使用して、IC50曲線を作図する。次いで、組織を急速洗浄し、クレブス液による1ml/分の灌流を回復させる。組織をさらに16時間刺激し、EFS応答の回復を記録する。16時間終了時、10μMヒスタミンを浴槽に添加して、組織の生存度を確認する。拮抗薬のちょうど最大の濃度(阻害が>70%であるが100%未満の応答を生じる試験濃度)を、IC50曲線から特定し、誘発された阻害が25%回復する時間(T25)を、この濃度を受ける組織において計算する。化合物を一般にn=2〜5にて試験して、作用持続時間を推定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式のビフェニル−2−イル−カルバミン酸1−{9−[(3−フルオロ−4−ヒドロキシ−ベンゾイル)−メチル−アミノ]−ノニル}−ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩である化合物。
【化1】

【請求項2】
実質的に結晶質であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
CuのKα1線(波長=1.5406Å)を使用して測定したとき、以下の2θ角(±0.1°2θ)で表される主要なX線回折パターンピークを特徴とするX線回折パターンを有する、請求項2に記載の化合物。
【表1】

【請求項4】
29.5ppmの外部標準の固相アダマンタンを基準とする、ppm単位で表される次の主要な化学シフト(±0.2ppm)、30.9、49.1、124.5、および140.0を特徴とする固体13C核磁気共鳴を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
−76.54ppmの外部標準のトリフルオロ酢酸水溶液(50%体積/体積)を基準とする、ppm単位で表される次の主要な化学シフト(±0.4ppm)、−133.5を特徴とする固体19F核磁気共鳴を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤と共に、0.001mgから5000mgの請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項7】
0.001mgから40mgの請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物とラクトース一水和物とを含む医薬乾燥粉末。
【請求項8】
医薬品として使用される請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
慢性または急性の気管支収縮、慢性気管支炎、末梢気道閉塞、肺気腫、慢性好酸球性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎を包含するCOPD、COPDに関連するまたは関連しない肺気腫または呼吸困難、不可逆的進行性気道閉塞を特徴とするCOPD、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、他の薬物治療の結果生じる気道反応亢進の悪化、肺高血圧症に関連する気道疾患、気管支炎、急性気管支炎、急性喉頭気管気管支炎、アラキジン酸性気管支炎、カタル性気管支炎、クループ性気管支炎、乾性気管支炎、感染性の喘息性気管支炎、増殖性気管支炎、ブドウ球菌または連鎖球菌性気管支炎、小胞性気管支炎、喘息、アトピー性喘息、非アトピー性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性気管支IgE媒介喘息、気管支喘息、本態性喘息、真性喘息、病態生理学的障害によって引き起こされる内因性喘息、環境要因によって引き起こされる外因性喘息、未知または不顕性の原因の本態性喘息、非アトピー性喘息、気管支炎性喘息、気腫性喘息、運動誘発性喘息、アレルゲン誘発性喘息、冷風誘発性喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原生動物、またはウイルス感染によって引き起こされる感染性喘息、非アレルギー性喘息、初発喘息、喘鳴幼児症候群、細気管支炎、急性肺障害、気管支拡張症、円柱状気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、紡錘状気管支拡張症、毛細管気管支拡張症、嚢状気管支拡張症、乾性気管支拡張症、および濾胞性気管支拡張症からなる群から選択される疾患、障害、および病態の治療に使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物と、
(a)5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害剤または5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)拮抗薬、
(b)LTB、LTC、LTD、およびLTEの拮抗薬を包含するロイコトリエン拮抗薬(LTRA)、
(c)H1およびH3拮抗薬を包含するヒスタミン受容体拮抗薬、
(d)うっ血除去薬使用のためのαおよびα−アドレナリン受容体作動性血管収縮性交感神経様作用薬、
(e)PDE3、PDE4、およびPDE5阻害剤を包含するPDE阻害剤、
(f)β2受容体作動薬、
(g)テオフィリン、
(h)クロモグリク酸ナトリウム、
(i)COX阻害剤、非選択的および選択的両方のCOX−1またはCOX−2阻害剤(NSAID)、
(j)プロスタグランジン受容体拮抗薬およびプロスタグランジン合成酵素の阻害剤、
(k)経口および吸入グルココルチコステロイド、
(l)コルチコイド受容体の解離性作動薬(DAGR)、
(m)内因性炎症性要素に対して活性なモノクローナル抗体、
(n)抗腫瘍壊死因子(抗TNF−α)薬剤、
(o)VLA−4拮抗薬を包含する接着分子阻害剤、
(p)キニン−BおよびB受容体拮抗薬、
(q)IgE経路およびシクロスポリンの阻害剤を包含する免疫抑制剤、
(r)マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害剤、
(s)タキキニンNK、NK、およびNK受容体拮抗薬、
(t)プロテアーゼ阻害剤、例えば、エラスターゼ阻害剤など、
(u)アデノシンA2a受容体作動薬およびA2b拮抗薬、
(v)ウロキナーゼ阻害剤、
(w)ドーパミン受容体に作用する化合物、例えば、D2作動薬など、
(x)NFκβ経路のモジュレーター、例えば、IKK阻害剤など、
(y)サイトカインシグナル伝達経路のモジュレーター、例えば、p38MAPキナーゼ、PI3キナーゼ、JAKキナーゼ、sykキナーゼ、EGFR、またはMK−2など、
(z)粘液溶解薬または鎮咳薬として分類することができる薬剤、
(aa)吸入コルチコステロイドに対する応答を増強する薬剤、
(bb)気道にコロニーを形成することができる微生物に対して有効な抗生剤および抗ウイルス剤、
(cc)HDAC阻害剤、
(dd)CXCR2拮抗薬、
(ee)インテグリン拮抗薬、
(ff)ケモカイン、
(gg)上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)遮断薬または上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)阻害剤、
(hh)P2Y2作動薬および他のヌクレオチド受容体作動薬、
(ii)トロンボキサン阻害剤、
(jj)PGD合成およびPGD受容体(DP1およびDP2/CRTH2)の阻害剤、
(kk)ナイアシン、ならびに
(ll)VLAM、ICAM、およびELAMを包含する接着因子
から選択される1種または複数の治療剤との組合せ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−153136(P2011−153136A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−289296(P2010−289296)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(597014501)ファイザー・リミテッド (107)
【氏名又は名称原語表記】Pfizer Limited
【住所又は居所原語表記】Ramsgate Road, Sandwich, Kent, England
【Fターム(参考)】