説明

ビフェニルジメチルジカルボキシレート及びシリビンを含む経口用マイクロエマルション組成物

【課題】 本発明の目的は活性成分としてビフェニルジメチルジカルボキシレート(BDD)及びシリビン又は、シリビン誘導体、又はシリビン及びその誘導体を含むカルドゥスマリアナス(Carduus marianus)抽出物;共界面活性剤;界面活性剤;及びオイルを含むマイクロエマルション組成物を提供する。
【解決手段】 本発明によるマイクロエマルション組成物は他の何ら副作用又は拮抗作用を誘発することなく互いに異なる作用機能を有する二種の活性成分の補完作用によって肝疾患に対する向上した治療効果を提供し、経口投与された際に前記活性成分二つとも高い生体内生体利用率を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビフェニルジメチルジカルボキシレート(BDD)及びシリビン又はその誘導体を活性成分として含有する、肝疾患を治療するための経口用マイクロエマルション組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シザンドラチネシス(Shizandra chinesis)から分離した活性成分の一つであるシザンドリンC(Shizandrin C)の合成誘導体であるビフェニルジメチルジカルボキシレート(BDD)はこれが投与された患者の血清グルタミンピルベート転移酵素(SGPT)の濃度を減少させると知られており、従って、ウイルスによる急性/慢性肝炎、慢性肝疾患及び薬物毒性による肝損傷を含む肝疾患の治療に有用である(H.S. Lee, M.D., Y.T. Kim, M.D. et al、慢性活動性肝疾患患者においてビフェニル−ジメチル−ジカルボキシレート(biphenyl-dimethyl-dicarboxylate)を用いた前向的無作為選定研究;血清アラニンアミノ転移酵素(alanine aminotransferase)を低下させる効果、内科学部及び肝研究所、ソウル大学校、医科大学、ソウル、韓国)。
【0003】
また、カルドゥスマリアナス(Carduus marianus)抽出物の主成分であるシリビンは喫煙、飲酒、過労、環境汚染、ストレス又は肝−損傷誘発薬物から引き起こされる有害効果から肝細胞を保護し、肝細胞を再生させると知られている。しかし、経口投与されたBDD又はシリビンの生体利用率は、その水に対する溶解度が非常に低いため十分でない。
【0004】
肝疾患は多くの他の要因の組み合わせによって引き起こされ、従って、特定作用機作を有する薬物を単独で用いる場合は満足できる治療効果を期待できない。それにもかかわらず、二つ以上の薬物の組み合わせの投与は、前記薬物間の物理的又は化学的相互作用によって誘導される好ましくない副作用又は拮抗作用を引き起こし得る。
【0005】
従って、全く異なる作用機能を有する二種以上の薬物を含むが、前記薬物の高い生体内生体利用率を示し、何ら有害な副作用も誘発しない肝疾患を治療するための改善された経口投与用組成物の開発が要求されている。
【非特許文献1】H.S. Lee, M.D., Y.T. Kim, M.D. et al、慢性活動性肝疾患患者においてビフェニル−ジメチル−ジカルボキシレート(biphenyl-dimethyl-dicarboxylate)を用いた前向的無作為選定研究;血清アラニンアミノ転移酵素(alanine aminotransferase)を低下させる効果、内科学部及び肝研究所、ソウル大学校、医科大学、ソウル、韓国
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、活性成分としてビフェニルジメチルジカルボキシレート(BDD)及びシリビンを含む経口用マイクロエマルション組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は活性成分としてビフェニルジメチルジカルボキシレート(BDD)及びシリビン、シリビン誘導体、又はシリビンとその誘導体を含むカルドゥスマリアナス抽出物;共界面活性剤;界面活性剤;及びオイルを含む、肝疾患治療用経口用マイクロエマルション組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマイクロエマルション組成物は、活性成分としてBDDとシリビン、シリビン誘導体、又はシリビンとその誘導体を含むカルドゥスマリアナス抽出物を安定したマイクロエマルション状態で含み、これらの活性成分のそれぞれを単独で或いは単純混合して経口投与する場合に比べて顕著に向上された肝疾患治療効果及び活性成分の生体内吸収率を示し、肝疾患治療に非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の組成物はビフェニルジメチルジカルボキシレート(BDD)及びシリビン、シリビン誘導体、又はシリビンとその誘導体を含むカルドゥスマリアナス抽出物を活性成分として安定したエマルション形態で含み、前記活性成分全部が非常に高い生体内生体利用率を示すことを特徴とする。
【0010】
以下、本発明のマイクロエマルション組成物の製造に用いられる各成分の特性及び種類を説明する。
【0011】
(1)活性成分
本発明では、水難溶性(water−insoluble)ビフェニルジメチルジカルボキシレート、及びカルドゥスマリアナス抽出物、又はこれから精製されたシリビン又はその誘導体が活性成分として用いられる。代表的なシリビン誘導体としてはシリクリスチン(silycristin)、シリジアニン(silydianin)及びイソシリビン(isosilybin)を含む。商業的に利用可能なカルドゥスマリアナス抽出物は、通常30重量%以上の量のシリビンを含有する。例えば、IVAX社(チェコ)のカルドゥスマリアナス抽出物は42重量%のシリビンを含む反面、Zhejiang Hengdian社(中国)のカルドゥスマリアナス抽出物は33重量%のシリビンを含む。
【0012】
(2)共界面活性剤
本発明の組成物は両親媒性、即ち親水性と親油性を共に有する有機溶媒を共界面活性剤として含む。前記共界面活性剤は、水に対する溶解度が非常に低い活性成分を乳化させ、保管する間に前記活性成分が乳化された安定な形態で保持できるようにする。代表的な共界面活性剤の例としては、エタノール、プロピレングリコール(1,2−ジヒドロキシプロパン)、ポリエチレングリコール(好ましくは、分子量200〜600)、プロピレンカーボネート(4−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン)、トランスキュトール(transcutol:ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、グリコフロール(glycofurol:テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)、ジメチルイソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−2,5−ジメチル−D−グルシトール)及びこれらの混合物を含み、トランスキュトールが好ましい。
【0013】
(3)界面活性剤
本発明に用いられる界面活性剤は安定したマイクロエマルションを形成するために共界面活性剤の作用で水中でオイル成分を乳化させる役割をし、薬剤学的に許容可能な陰イオン系、陽イオン系、非イオン系又は両性界面活性剤のいずれか一つであってもよい。
【0014】
界面活性剤の代表的な例としては次のものを含む:
(i)ポリオキシエチレングリコール化された天然又は水素化植物性オイル、例えばポリオキシエチレングリコール化された天然又は水素化ヒマシ油(Cremophor,BASF;及びHCO,Nikkol)、
(ii)脂肪酸がモノ−又はトリ−ラウリル、パルミチル、ステアリル又はオレイルであるポリオキシエチレン−ソルビタン−脂肪酸エステル類(Tween,ICI)、
(iii)ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、例えばポリオキシエチレンステアリン酸エステル(Myrj,ICI)、
(iv)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(Pluronic,BASF)、
(v)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体(Poloxamer,BASF)、
(vi)ソジウムジオクチルスルホサクシネート又はソジウムラウリルスルホネート、
(vii)リン脂質類、
(viii)プロピレングリコールモノ−又はジ−脂肪酸エステル類、例えばプロピレングリコールジカプリレート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールイソステアレート、プロピレングリコールラウレート、プロピレングリコールリシノレエート又はプロピレングリコールカプリル酸−カプリン酸ジエステル(Miglyol 840,Huls)、
(ix)天然植物性オイルトリグリセリドとポリアルキレンポリオールのトランス−エステル化反応生成物(Labrafil M,Gattefosse)、
(x)モノ−、ジ−又はモノ/ジ−グリセリド、例えばカプリル/カプリン酸モノ−又はジ−グリセリド(Imwitor,Huls)、
(xi)ソルビタン脂肪酸エステル類、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート又はソルビタンモノステアレート(Span,ICI)、及び
(xii)ステロール又はその誘導体、例えばコレステロール、ピトステロール又はシトステロール
上記の界面活性剤は単独で又は混合して用いられ得、ポリオキシエチレングリコール化された天然又は水素化植物性オイル、ポリオキシエチレン−ソルビタン−脂肪酸エステル類及びこれらの混合物が好ましい。
【0015】
(4)オイル
本発明で用いられるオイルは共界面活性剤及び界面活性剤との作用によって、水中で乳化されて安定したマイクロエマルションを形成できる、薬剤学的に許容可能なオイル類の一つであり得る。前記オイルの代表的な例としては次のものを含む:
(i)脂肪酸トリグリセリド類、好ましくは中級脂肪酸トリグリセリド、例えば分別されたココナッツオイル(Miglyol 812N,Huls)、
(ii)モノ−、ジ−又はモノ/ジ−グリセリド類、好ましくはオレイン酸のモノ−又はジ−グリセリド類、
(iii)脂肪酸と一価アルカノールのエステル化合物、好ましくは炭素数8〜20個の脂肪酸と炭素数2〜3個の一価アルカノールのエステル化合物、例えばイソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、エチルリノレエート及びエチルオレエート、
(iv)天然植物性又は動物性オイル、例えばコーンオイル、オリブ油、大豆油(soybean oil)及び魚油(fish oil)、
(v)炭化水素類、例えばスクアレン又はスクアラン、及び
(vi)遊離脂肪酸類、好ましくは液状のオレイン酸及びリノール酸
上記のオイルは単独で又は他のオイルと共に混合物の形態で用いられ得、中級脂肪酸トリグリセリド、モノ−、ジ−又はモノ/ジ−グリセリド類、脂肪酸と一価アルカノールのエステル化合物及びこれらの混合物が好ましい。
【0016】
本発明のマイクロエマルション組成物の製造において、ビフェニルジメチルジカルボキシレート、カルドゥスマリアナス抽出物(シリビン又はその誘導体)、共界面活性剤、界面活性剤及びオイルは1:1〜100(0.3〜33):10〜150:5〜100:1〜50、好ましくは1:5〜60(1.7〜20):20〜100:10〜80:5〜20の重量比に相応する量で用いられ得る。
【0017】
また、本発明の組成物は経口投与のための薬剤学的に許容可能な添加剤、例えば粘度調節剤、芳香剤、抗酸化剤(例えば、エリトルビン酸及びD−α−トコフェロール)又は防腐剤などを含み得る。
【0018】
本発明の組成物は、前記構成成分を混合して、均質に溶解させて製造でき、水溶性媒質と接触すると平均粒径1μm以下の乳化された微細粒子を形成する。
【0019】
本発明のマイクロエマルション組成物は通常の薬剤学的製造工程によって硬質カプセル又は軟質カプセルに充填して製剤化し得る。
【0020】
ビフェニルジメチルジカルボキシレート及びカルドゥスマリアナス抽出物の1日投与量はそれぞれ3〜120mg/kg及び25〜175mg/kg、好ましくは3〜60mg/kg及び25〜175mg/kg範囲であってもよく、1回投与又は分割投与で投与され得る。しかし、実質的に投与される活性成分の量は患者個人の治療条件、年齢、性別及び体重と患者症状の深刻性を含む多様な関連要因に照らして決定しなければならず;従って、前記投与量はいずれの方式であれ本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0021】
下記実施例は本発明をさらに詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲を制限しない。
【0022】
[実施例1]:マイクロエマルション組成物を含む軟質カプセルの製造
下記成分を用いて軟質カプセルを製造した:
量(mg/カプセル)
カルドゥスマリアナス抽出物(シリビンで) 120(36)
BDD 3
トランスキュトール 315
HCO(登録商標)50 170
ツイーン(登録商標)20 130
エリトルビン酸 8
ミグリオール(登録商標)812N 12
エチルリノリエート 45
グリセリルモノ−オレエート 20
D−α−トコフェロール 7。
【0023】
ビフェニルジメチルジカルボキシレート(BDD)及びカルドゥスマリアナス抽出物(IVAX社、チェコ、シリビン含量:42%)をトランスキュトールに均質に溶解させ、さらに他の成分をこれに溶解させてマイクロエマルションの予備濃縮液(pre−concentrate)を製造した。次いで、この予備濃縮液を大韓薬典(Korean Pharmacopoeia)の一般的調剤規定(General Preparation Rule)に記載された通常の方法によって軟質カプセル内に充填して製剤化した。前記軟質カプセルはコハク酸、ゼラチン、グリセリン及び純水を用いて通常の方法で製造した。
【0024】
[実施例2]:マイクロエマルション組成物を含む軟質カプセルの製造
下記成分を用いて実施例1と同様な方法で軟質カプセルを製造した:
量(mg/カプセル)
カルドゥスマリアナス抽出物(シリビンで) 60(18)
BDD 3
トランスキュトール 315
HCO(登録商標)50 150
ツイーン(登録商標)20 100
エリトルビン酸 8
ミグリオール(登録商標)812N 10
エチルリノリエート 30
グリセリルモノ−オレエート 10
D−α−トコフェロール 5。
【0025】
[実施例3]:マイクロエマルション組成物を含む軟質カプセルの製造
下記成分を用いて実施例1と同様な方法で軟質カプセルを製造した:
量(mg/カプセル)
カルドゥスマリアナス抽出物(シリビンで) 175(52.5)
BDD 3
トランスキュトール 460
HCO(登録商標)50 246
ツイーン(登録商標)20 188
エリトルビン酸 10
ミグリオール(登録商標)812N 17
エチルリノリエート 65
グリセリルモノ−オレエート 29
D−α−トコフェロール 10。
【0026】
[実施例4]:マイクロエマルション組成物を含む軟質カプセルの製造
下記成分を用いて実施例1と同様な方法で軟質カプセルを製造した:
量(mg/カプセル)
カルドゥスマリアナス抽出物(シリビンで) 175(52.5)
BDD 25
トランスキュトール 600
HCO(登録商標)50 220
ツイーン(登録商標)20 1170
ミグリオール(登録商標)812N 20
エチルリノリエート 20
グリセリルモノ−オレエート 50
D−α−トコフェロール 10。
【0027】
[実施例5]:マイクロエマルション組成物を含む軟質カプセルの製造
下記成分を用いて実施例1と同様な方法で軟質カプセルを製造した:
量(mg/カプセル)
カルドゥスマリアナス抽出物(シリビンで) 120(36)
BDD 3
ジメチルイソソルビド 310
HCO(登録商標)50 160
ポロキサマー 130
ミグリオール(登録商標)812N 40
オレイン酸 20
グリセリルモノ−オレエート 50
D−α−トコフェロール 6。
【0028】
[実施例6]:マイクロエマルション組成物を含む軟質カプセルの製造
下記成分を用いて実施例1と同様な方法で軟質カプセルを製造した:
量(mg/カプセル)
カルドゥスマリアナス抽出物(シリビンで) 120(36)
BDD 7.5
トランスキュトール 340
HCO(登録商標)50 180
ツイーン(登録商標)20 150
エリトルビン酸 9
ミグリオール(登録商標)812N 18
エチルリノリエート 60
グリセリルモノ−オレエート 20
D−α−トコフェロール 10。
【0029】
[試験例1]:四塩化炭素によって損傷された肝に対する治療効果
四塩化炭素(CCl)によって損傷された肝に対する本発明の経口マイクロエマルション組成物の治療効果を下記のように調査した。
【0030】
36匹の4〜5週齢の雄性スプラグ−ドウリー系ラットを各群が平均体重202±5gである6匹のラットからなるように6グループに分けた。前記ラットを温度23±2℃及び相対湿度55±5%に設定された実験動物室に適応させた。次いで、コーンオイルに混合された四塩化炭素の50%(v/v)溶液を5グループの実験群(グループ1〜5)の各ラットに0.75ml/kgの量で1週間に2回(月曜日及び金曜日)腹腔内に投与して肝毒性を誘発した。
【0031】
第1群のラット(陰性対照群)に対しては、四塩化炭素を投与した後、どのような治療薬物も投与しなかった。第2群のラット(陽性対照群)に対しては、四塩化炭素を投与した後に1%(w/v)CMC(カルボキシメチルセルロース)溶液に懸濁されたBDDを25mg/kg BDDに相応する量で1日1回、1週間に6回経口投与し;第3群のラットには、1%(w/v)CMC溶液に懸濁されたカルドゥスマリアナス抽出物を175mg/kgのカルドゥスマリアナス抽出物に相応する量(シリビンで52.5mg/kg)で経口投与し;第4群のラットには、1%(w/v)CMC溶液に懸濁されたBDD及びカルドゥスマリアナス抽出物の単純混合物を25mg/kgのBDD及び175mg/kgのカルドゥスマリアナス抽出物に相応する量で経口投与した。第5群のラットに対しては、3mg/kgのBDD及び175mg/kgのカルドゥスマリアナス抽出物に相応する量で実施例3で製造された製剤を1日1回、1週間に6回経口投与し;第6群のラット(正常群)は四塩化炭素に露出させず、どのような治療薬物も投与しなかった。
【0032】
以上の薬物投与を4週間持続した後、ラットを致死させて血清試料を既設定されたスケジュールによって取った。血清中のALT(alanine aminotransferase, GPT)及びAST(aspartate aminotransferase, GOT)濃度を通常の方法によって測定し、その結果をそれぞれ下記表1及び2に示す。
【表1】

【表2】

【0033】
前記表1及び2から、BDD及びシリビンが同時に投与された第4群(BDD+シリビン)及び第5群(実施例3)の場合、四塩化炭素によって誘導されたALT及びAST濃度の上昇は第2群(BDD)又は第3群(シリビン)に比べて2〜3倍程低かった。
【0034】
特に、前記2種の活性成分をマイクロエマルション状態で含む本発明のマイクロエマルション製剤(第5群)は第5群に投与されたBDDの量が第4群より少ないにもかかわらず、BDD及びシリビンの単純混合物が投与された場合に比べてより非常に高い抑制効果を表わした。
【0035】
本発明のマイクロエマルション製剤は、その二つの含有活性成分が共に高い生体利用率を示すので四塩化炭素−誘導性肝損傷に対して優れた治療効果を有するという事実を上記結果が証明している。
【0036】
[試験例2]:四塩化炭素−誘導性の肝損傷に対する容量−依存性治療効果
活性成分の含量による経口用マイクロエマルション組成物の治療効果の変化を調査するために、四塩化炭素−誘導性の肝損傷に対する実験を次のように行った。
【0037】
各々6匹ずつからなるスプラグ−ドウリー系ラット5グループを用いたことを除いては、試験例1と同様な方法で四塩化炭素の投与によってラットに肝毒性を誘発した。
【0038】
第1群のラット(陰性対照群)に対しては四塩化炭素を投与した後にどのような治療薬物も投与せず;第2群〜第4群のラットには四塩化炭素を投与した後にそれぞれ実施例2、1及び3で製造された製剤を体重1kg当り1カプセルの容量で1日1回、1週間に6回経口投与した。第5群のラット(正常群)に対しては四塩化炭素も治療薬物も投与しなかった。
【0039】
4週間の薬物投与後、血清中のALT及びAST濃度を測定し、その結果をそれぞれ下記表3及び4に示す。
【表3】

【表4】

【0040】
前記表3及び4に示したように、血清中のALT及びAST濃度に対する本発明のマイクロエマルション製剤の抑制効果は活性成分であるBDD及びカルドゥスマリアナス抽出物の量によって変わる。カルドゥスマリアナス抽出物/BDDの割合(w/w)が40以上である場合、ALT及びAST濃度の上昇抑制率には大きな変化はなかった。
【0041】
[試験例3]:dl−エチオニン(dl−ethionine)−誘導脂肪肝に対する治療効果
本発明による経口用マイクロエマルション組成物の治療効果を調査するために、dl−エチオニンによって誘導された脂肪肝を回復させる活性を測定するために次のような実験を行った。
【0042】
試験例1と同様な方法で各群が6匹ずつからなる6グループのラットを用意した。2%(w/v)dl−エチオニン食塩水溶液を五つの実験グループの各々のラットに200mg/kgの量で1週間に2回皮下注射して脂肪肝を誘発した。
【0043】
第1群のラット(陰性対照群)対してはエチオニン投与後にどのような治療薬物も投与しなかった。第2群のラット(陽性対照群)にはエチオニン投与後に25mg/kgのBDDに相応する量で1%(w/v)CMC溶液に懸濁されたBDDを1日1回、1週間に5回経口投与し;第3群のラットには175mg/kgのカルドゥスマリアナス抽出物に相応する量(シリビンで52.5mg/kg)で1%(w/v)CMC溶液に懸濁されたカルドゥスマリアナス抽出物を経口投与し;第4群のラットには25mg/kgのBDD及び175mg/kgのカルドゥスマリアナス抽出物に相応する量で1%(w/v)CMC溶液に懸濁されたBDD及びカルドゥスマリアナス抽出物の単純混合液を経口投与した。第5群のラットにはエチオニン投与後に3mg/kgのBDD及び175mg/kgのカルドゥスマリアナス抽出物に相応する量で実施例3で製造された製剤を1日1回、1週間に5回経口投与し;第6群のラット(正常群)に対してはエチオニンも治療薬物も投与しなかった。
【0044】
以上の薬物投与を1週間持続した後、各々のラットを致死させて肝を摘出した。
【0045】
摘出した肝を生理食塩水で洗浄し、4倍体積のリン酸塩緩衝溶液(pH7.5)に浸してテフロン(登録商標)−ガラス(teflone(登録商標)−glass)ホモジナイザーを用いて均質化させた。均質化した肝を600×gで10分間遠心分離して上澄液を回収し、これをさらに10,000×gで20分間遠心分離して上澄液のみを回収した後、さらに10,000×gで1時間遠心分離して得た上澄液を分離した。
【0046】
その後、通常の方法によって前記分離上澄液を用いてそれぞれの肝試料の総コレステロール及びトリグリセリド(triglyceride)濃度を測定し、その結果を下記表5及び6に示す。
【表5】

【表6】

【0047】
前記表5及び6に記載されたように、BDD及びシリビンが共に投与された第4群(BDD+シリビン)及び第5群(実施例3)の場合、脂肪肝でコレステロール及びトリグリセリド濃度における上昇に対する抑制効果が第2群(BDD)又は第3群(シリビン)の場合より遥かに高い。
【0048】
特に、前記2種の活性成分を含む本発明のマイクロエマルション製剤(第5群)は第5群に投与されたBDDの量が第4群より少ないにもかかわらず、BDDとシリビンとの単純混合物(第4群)より遥かに高い抑制効果を示した。
【0049】
このような結果は本発明のマイクロエマルション製剤がその含有活性成分全ての向上した生体利用率に起因し、dl−エチオニン−誘導性脂肪肝に対して遥かに優れた治療効果を達成することを証明するものである。
【0050】
[試験例4]:dl−エチオニン−誘導性脂肪肝に対する容量−依存性治療効果
活性成分の容量別に経口用マイクロエマルション組成物の治療効果における変化を調査するために、dl−エチオニン−誘導性脂肪肝に対する実験を次のように行った。
【0051】
各々6匹ずつからなるスプラグ−ドウリー系ラット5グループを用いたことを除いては、試験例3と同様な方法でdl−エチオニン投与によってラットに肝毒性を誘発した。
【0052】
第1群のラット(陰性対照群)に対してはエチオニン投与後にどのような治療薬物も投与せず;第2群〜第4群のラットには四塩化炭素を投与した後にそれぞれ実施例2、1及び3で製造された製剤を体重1kg当り1カプセルの容量で1日1回、1週間に6回経口投与した。第5群のラット(正常群)にはエチオニンも治療薬物も投与しなかった。
【0053】
1週間の薬物投与後、血清中の総コレステロール及びトリグリセリド濃度を測定し、その結果をそれぞれ下記表7及び8に示す。
【表7】

【表8】

【0054】
前記表7及び8から、血清中のコレステロール及びトリグリセリド濃度に対する本発明のマイクロエマルション製剤の抑制効果は、活性成分であるBDD及びカルドゥスマリアナス抽出物の量によって変わる。カルドゥスマリアナス抽出物/BDDの割合(w/w)が40以上の場合は、コレステロール及びトリグリセリド濃度の上昇抑制率に大きな変化はなかった。
【0055】
[試験例5]:急性毒性試験
BDDとシリビンの両方とも含む経口投与された製剤の急性毒性を平均体重20〜25gのICR系マウスを用いて下記のように調査した。
【0056】
下記表9に示すような多様な重量比でBDD及びシリビンを混合して試験薬剤を製造し、それぞれを0.1、0.2、0.5、1及び2g/kgの量で10匹のラットからなる群に経口投与した。投与してから1週間後に、死亡したマウス数を数えて致死率を測定し、その結果を表9に示す。
【表9】

【0057】
前記表9に表わされたように、BDDとシリビンの両方とも含む製剤の2g/kgの量はどのような致死毒性反応も表わさなかった。従って、本発明の組成物は毒性がなくて安全であることを確認した。
【0058】
[試験例6]:吸収率試験
本発明による経口用製剤の活性成分の生体利用率を調査するために、実施例4で製造された製剤(実験群)を25mgのBDDと175mgのカルドゥスマリアナス抽出物と単純混合して製造した製剤(比較群)を用いて生体内吸収率の比較試験を次のように行った。
【0059】
10匹の14−〜15−週齢の雄性スプラグ−ドウリー系ラット(体重約250g)を4日以上適応させながら飼料と水を自由に摂取するようにした。次いで、これらのラットを48時間絶食させた後に試験に用い、絶食間に水は自由に摂取するようにした。
【0060】
前記レットを五匹のラットからなる二つのグループに分け、25mg/kgのBDD及び175mg/kgのカルドゥスマリアナス抽出物(シリビンで58mg/kg)に相応する量で実験群及び比較群製剤のそれぞれを経口投与した。血液試料を投与前及び投与後に0.5時間、1時間、1.5時間、4時間、8時間及び24時間経過した時に採血し、これから血漿試料を得た。
【0061】
血漿BDD濃度の分析は次のように行った。
【0062】
血漿100μlにメタノール200μlを添加し、その混合物を振盪した。前記混合物を3,000rpmで10分間遠心分離して上澄液を取った後、0.22μmろ過紙でろ過し、下記条件下でLC−MSを用いて分析した。
【0063】
カラム:Waters MS C18(2.1×150mm with guard column)
移動相:50%メタノール
注入容量:10μl
流速:0.2ml/分
検出器:SIR mode m/z:441.2(Na adduct)。
【0064】
前記結果を下記表10に示す。
【表10】

【0065】
一方、血漿シリビン濃度の分析は次のように行った。
【0066】
内部標準溶液50μl(2.0μg/mlのナリンゲニンを含むメタノール溶液)、0.5M酢酸ナトリウム溶液(pH5.0)900μl、及び酵素溶液(β−グルクロニダーゼ13.48単位/スルファターゼ4.5単位の0.5M酢酸ナトリウム溶液(pH5.0))100μlをそれぞれの血漿試料500μlに添加して5分間混合した後、この混合物を37℃で4時間反応させた。次いで、1M炭酸ナトリウム溶液(pH8.5)1.5mlを添加して10分間振盪した後、これにエーテル5mlを添加し15分間振盪して抽出液を得た。前記抽出液を2,000rpmで10分間遠心分離して上澄液を分離し、この上澄液4.2mlを30℃窒素気流下で蒸発濃縮した。得た残留物にメタノールと10mMリン酸二水素ナトリウム(sodium dihydrogen phosphate)の混合液(50:50)250μlを添加して溶解させた後、下記条件下で高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。
【0067】
カラム:イナルトシル(Inertsil)ODS2(5μm、4.6×250mm)
移動相:メタノール:10mMリン酸二水素ナトリウム=50:50(v:v、リン酸でpH3.0に調整)
注入量:50μl
流速:1.0ml/分
検出器:285nm。
【0068】
前記結果を下記表11に示す。
【表11】

【0069】
前記表10及び11に示すように、本発明の製剤で観察されるBDD及びシリビンは比較群製剤のそれより各々15倍及び10倍以上という遥かに高い生体利用率を示した。
【0070】
本発明を前記具体的な実施例と関連して記述しましたが、添付された特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内で当分野の熟練者が本発明を多様に変形及び変化させ得ることを理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてビフェニルジメチルジカルボキシレート(BDD)及びシリビン、シリビン誘導体、又はシリビン及びその誘導体を含むカルドゥスマリアナス(Carduus marianus)抽出物;共界面活性剤;界面活性剤;及びオイルを含む、肝疾患治療のための経口用マイクロエマルション組成物。
【請求項2】
前記シリビン誘導体がシリクリスチン(silycristin)、シリジアニン(silydianin)又はイソシリビン(isosilybin)であることを特徴とする請求項1に記載の経口用マイクロエマルション組成物。
【請求項3】
前記ビフェニルジメチルジカルボキシレート:カルドゥスマリアナス抽出物:共界面活性剤:界面活性剤:オイルの重量比が1:1〜100:10〜150:5〜100:1〜50であることを特徴とする請求項1に記載の経口用マイクロエマルション組成物。
【請求項4】
前記ビフェニルジメチルジカルボキシレート:シリビン又はシリビン誘導体:共界面活性剤:界面活性剤:オイルの重量比が1:0.3〜33:10〜150:5〜100:1〜50であることを特徴とする請求項1に記載の経口用マイクロエマルション組成物。
【請求項5】
前記共界面活性剤がエタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンカーボネート、トランスキュトール(transcutol)、グリコフロール(glycofurol)、ジメチルイソソルビド及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の経口用マイクロエマルション組成物。
【請求項6】
前記共界面活性剤がトランスキュトールであることを特徴とする請求項5に記載の経口用マイクロエマルション組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤がポリエチレングリコール化された天然又は水素化植物性オイル類、ポリオキシエチレン−ソルビタン−脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体類;ソジウムジオクチルスルホサクシネート;ソジウムラウリルスルフェート;リン脂質類;プロピレングリコールモノ−又はジ−脂肪酸エステル類;天然植物性オイルトリグリセリド類とポリアルキレンポリオール類のトランス−エステル化反応生成物;モノ−、ジ−又はモノ/ジ−グリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル類、ステロール類又はその誘導体;及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の経口用マイクロエマルション組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤がポリエチレングリコール化された天然又は水素化植物性オイル類、ポリオキシエチレン−ソルビタン−脂肪酸エステル類及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項7に記載の経口用マイクロエマルション組成物。
【請求項9】
前記オイルが中級脂肪酸トリグリセリド類;モノ−、ジ−又はモノ/ジ−グリセリド類;脂肪酸の一価アルカノールエステル類;天然植物性又は動物性オイル類;スクアレン;スクアラン;オレイン酸;リノール酸;及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の経口用マイクロエマルション組成物。
【請求項10】
前記オイルが中級脂肪酸トリグリセリド類、モノ−、ジ−又はモノ/ジ−グリセリド類、脂肪酸と一価アルカノールのエステル化合物及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項9に記載の経口用マイクロエマルション組成物。
【請求項11】
水溶性媒質と接触する際に1μm以下の平均粒径を有する微細粒子を形成することを特徴とする請求項1に記載の経口用マイクロエマルション組成物。

【公表番号】特表2007−509136(P2007−509136A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536451(P2006−536451)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002698
【国際公開番号】WO2005/037249
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】