説明

ビルの監視システム

【課題】多数の建物及びエレベータに取付けられた振動センサの振動データを収集し解析し、ユーザその他の公共機関で必要とする情報を作成し提供することにある。
【解決手段】建物1の各エレベータ2の乗りかご7に設置される振動センサ10と、この振動センサ10から出力される振動信号を受信するビル監視装置20とを備え、このビル監視装置20は、振動センサ10からの振動データを収集し蓄積する実績データ蓄積手段22aと、この蓄積された時系列的な振動の加速度データからエレベータの位置情報を求めて、この情報と振動のデータの対のデータ群を統計解析するデータ解析手段22bと、この解析データから乗りかご7の正常運転時の正常振動と乗りかごを含むエレベータの故障・異常振動とに分離する正常・異常振動分離手段22cとを設け、建物の建築ユーザ等に故障・異常状態を提供可能とするビルの監視システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の建物に設置されるエレベータ内外のセンサデータを収集し、エレベータを含む建物の状況を予兆するビルの監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、昇降路や乗りかごなどに振動センサその他のセンサを取付け、これらセンサで検出されるセンサデータに基づき、例えば地震発生時に乗りかごを最寄階まで運転した後に停止させ、エレベータドアを開けて利用者を停止階に下ろすことにより、乗りかご内の人の安全を確保する人的安全技術は既に周知となっている。
【0003】
従来、振動センサなどのセンサデータを収集する技術としては、エスカレータの上下階床下部の機械室に設置される主要構成部材に振動センサを取付けるとともに、当該機械室の外部に振動センサの出力端子を取付ける。そして、データ収集時、センサ出力端子に携帯形データ収集器を接続し、各主要構成部材に取付けた振動センサのセンサデータを読み取り収集する。センサデータの収集後、センサ出力端子から携帯形データ収集器を切り離し、保守サービス拠点等に持ち込み、データファイルに保存する。そして、一定期間にわたる同一センサのセンサデータを分析し、主要構成部材における故障の前兆等を診断する構成である。
【0004】
すなわち、このセンサデータの収集技術は、人為的なデータ収集のミスをなくし、何れの保守員でも確実にセンサデータを収集することにある(特許文献1)。
【0005】
また、他の技術としては、エレベータの緊急時セキュリティ装置が提案されている。
この緊急時セキュリティ装置は、エレベータの乗りかごに音波センサ、振動センサ、タッチスイッチ等を取付け、かご内で暴漢に襲われたり、或いはエレベータが緊急停止したとき、危険な状況をセンサの出力データやタッチスイッチのタッチデータにより外部に告知する構成である(特許文献2)。
【特許文献1】特開平08−198567号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2005−67777号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術は、前述したように人為的なデータ収集ミスを無くすために、
機械室内部の主要構成部材に取付けられた各種センサにケーブルを接続し、当該ケーブルの端部を機械表面部の適宜な個所の出力端子まで敷設して接続する。そして、出力端子に対して、必要時にコネクタを介して携帯形データ収集器を接続し、センサのセンサデータを記録する。従って、この技術は、データ収集方法に関する技術であり、特にその現場にてデータを収集し、主要構成部材の現況を解析するものではない。
【0007】
また、特許文献1の技術は、多数のエスカレータの主要構成部材の状況を把握する場合、保守員がエスカレータごとにセンサの出力データを収集記録する必要があり、保守員の負担が増大する問題がある。
【0008】
一方、特許文献2の技術は、前述したようにエレベータの乗りかご内で暴漢に襲われた時や緊急停止した時の対策に限られる。よって、振動センサ等の出力データをそのまま利用し、緊急時の状況を把握するものであって、振動センサ等の出力データを解析し、エレベータの状況を予測する技術ではない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、全国に散在する多数の建物及びエレベータに取付けられた振動センサの振動データを収集し解析し、ユーザや公共機関で必要とする情報を作成し提供し、エレベータを含む建物の安全性,安心感を確保するビルの監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るビルの監視システムは、建物の各エレベータの乗りかごに設置される振動センサと、この振動センサから出力される振動センサの振動信号を受信し、エレベータ及び乗りかごの状況を監視するビル監視装置とを備え、このビル監視装置は、振動センサから送られてくる振動データを収集し時系列的に蓄積する実績データ蓄積手段と、この実績データ蓄積手段により蓄積される時系列的な振動の加速度データからエレベータの位置情報を求めて、この情報と振動のデータの対のデータ群を統計解析するデータ解析手段と、このデータ解析手段で得られる解析データから前記乗りかごの正常運転時の正常振動と前記乗りかごを含むエレベータの故障・異常振動とに分離する正常・異常振動分離手段とを設けた構成である。
【0011】
また、前記ビル監視装置としては、振動センサから送られてくる振動データを収集し時系列的に蓄積する実績データ蓄積手段と、この実績データ蓄積手段により蓄積される時系列的な振動の加速度データから、予め前記乗りかごの乗り心地を表す複数段階の快適性データの振幅レベルを統計的に解析するデータ解析手段と、この振幅レベルを設定する手段と、前記振動データと前記解析データである加速度の変化と複数段階の振幅レベルとを比較し、前記乗りかごの乗り心地に関する快適性を判断する快適性判断手段と、乗りかご内にも現在の乗り心地表示を行う手段とを設けた構成であってもよく、或いは、前記正常・異常振動分離手段により、前記乗りかごを含むエレベータの故障・異常振動と診断されたとき、前記ビル監視装置が設置される監視センタや該当エレベータを設置する建物の監視室に自動通報する監視通報手段を設けた構成であってもよい。
【0012】
(2) また、本発明に係るビルの監視システムは、各建物が建っている地面固定部に設置される振動センサと、この多数の建物の地面固定部に設置される振動センサから出力される振動センサの振動信号を受信し、各建物位置における地震状況を監視するビル監視装置とを備え、このビル監視装置は、各振動センサから送られてくる振動データを収集し蓄積する実績データ蓄積手段と、地震発生時、当該実績データ蓄積手段により蓄積された振動データの揺れから地震震度に変換する地震震度解析手段と、この地震震度解析手段で得られた地震震度データを前記各建物の地面固定部の経緯度地点データに書き込む地震震度分布生成手段と、この地震震度分布生成手段で生成された各経緯度地点の地震震度データを契約機関に配信する情報サービス配信手段とを設けた構成である。
【0013】
(3) さらに、本発明に係るビルの監視システムは、各建物の複数の固定部位に設置される振動センサと、多数の建物の各固定部位に設置される振動センサから出力される振動センサの振動信号を受信し、建物の状況を監視するビル監視装置とを備え、このビル監視装置は、各振動センサから送られてくる振動データを収集し蓄積する実績データ蓄積手段と、地震発生時、前記各振動センサの振動データから該当建物の揺れを求める建物揺れ解析手段と、新たに地震が発生した時、前記建物揺れ解析手段で求めた今回の地震の揺れと同一建物の過去の同じ震度時の揺れのデータを比較し、当該同一建物の劣化度の評価や建物の補修・建替え時期を推定する建物強度判定手段と、この建物強度判定手段で推定された建物の劣化度の評価や建物の補修・建替え時期情報を建物のオーナや居住者等のユーザに提供する情報サービス配信手段とを設けた構成である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、全国に散在する多数の建物及びエレベータに取付けられた振動センサの振動データを収集し解析し、ユーザその他の公共機関で必要とする情報を作成し提供でき、エレベータを含む建物の安全性及び安心感を確保できるビルの監視システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
先ず、本発明に係るビルの監視システムにおける実施の形態を説明するに先立ち、本発明を理解する上で必要な基礎的な資料について説明する。
【0016】
従来、広域にわたる地震震度分布を把握するために、気象庁のホームページによれば、関東地域では図7に示すように、公共機関の地震震度分布観測点が設けられている。この広域地図を見たとき、東京都都区内の観測点が密であるように見えるが、観測点のマークが大きいことから、実際には観測されていない地点が多く存在する。
【0017】
一方、地震発生時に実際に観測されるデータの波形例は図8に示す通りである。図8は、防災科学技術研究所が運用しているK−NETホームページから引用したものであって、2005年07月23日に千葉県北西部で起きた地震に関し、横浜の観測点で観測された波形である。なお、地震観測に当たっては、3軸加速度計を用いて観測したものであり、上段の波形はN−S方向、中段の波形はE−W方向、下段の波形はU−D方向の波形である。
【0018】
さらに、建築基準法に準拠して必要な建物強度の要求性能例は、図9(a)、(b)に示す通りである。同図(a)は重要な建物に関する要求性能例であり、同図(b)は一般の建物に関する要求性能例である。
【0019】
通常、建物を建設する場合、構造計算段階、その構造計算結果に基づく設計段階、実際の建物の施行段階ごとに図9に示す要求性能は考慮されているはずである。しかし、建物の竣工後、地震発生時に各震度に対応した実際の建物の揺れ,ひいては建物の状況等について、センサのセンサデータから確認していない。つまり、建物の安全上から実際の建物の揺れの変化は非常に重要となるが、従来はその確認がなされていない。
【0020】
以下、本発明に係るビルの遠隔監視システムの実施の形態について、前述した基礎的な資料を前提とし、図面を参照して説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明に係るビルの監視システムの実施の形態1を示す構成図である。
関東地域を含む全国地域には多数の建物(ビル)1が建てられ、各建物1にはそれぞれエレベータ2が設置されている。各エレベータ2は、建物1内に昇降路3が設けられ、エレベータ制御盤4による運転制御のもとに巻上機5が回転駆動し、当該巻上機5に巻き掛けられた鋼索6を介して乗りかご7に乗せたエレベータ利用者を目的階に運ぶ構成である。8はつり合いおもりである。
【0022】
ビルの監視システムは、以上のように全国的に展開される各エレベータ2の乗りかご7に3軸加速度計などの無線タグ形式の振動センサ10を設置するとともに、各昇降路3を含む建物1の適宜な個所にアンテナ11を設置する。なお、昇降路3ではなく、建物1の適宜な個所にアンテナ11を設置すれば、同一建物1内に設置される複数号機のエレベータ2に設置される振動センサ10の振動データを受信することができる。
【0023】
すなわち、本発明に係るビルの遠隔監視システムは、無線タグ形式の振動センサ10と、送受信アンテナ11と、通信制御機器12と、この通信制御機器12に公衆通信回線やインターネット等の通信ネットワーク13を介して接続される遠隔監視センタ内の遠隔エレベータ監視装置(ビル監視装置、以下同じ)20とで構成される。
【0024】
各振動センサ10は、それぞれ固有識別情報とともに乗りかご7のかご振動データを通信制御機器12に送出する。
【0025】
通信制御機器12は、該当建物1に設置され、アンテナ11で受信された固有識別データを含む乗りかご7のかご振動データを受け取り、通信ネットワーク13を中継して遠隔ビル監視装置(以下、エレベータ監視装置と呼ぶ)20に送信する。なお、アンテナ11を含む通信制御機器12は、エレベータ制御盤4内に設けた構成であってもよい。
【0026】
通信ネットワーク13は、他の多数の建物1,…内のエレベータ2に設置される無線タグ形式の振動センサ10で検知される固有識別データを含む乗りかご7のかご振動データを中継し、遠隔エレベータ監視装置20に送信する役割を持っている。
【0027】
遠隔エレベータ監視装置20は、データベース21と、CPUを中心に構成される監視処理制御部22と、キーボードその他マウスなどのポインティングデバイスなどからなる指示データ入力手段23と、データバッフア記憶部24と、表示部25とで構成される。
【0028】
データベース21には、実績データ蓄積領域21a、解析データ蓄積領域21b、設定データ領域21c及びその他のデータ記憶領域21dが設けられている。
【0029】
監視処理制御部22は、実績データ蓄積手段22aと、データ解析手段22bと、正常・異常振動分離手段22cとが設けられている。
【0030】
実績データ蓄積手段22aは、各建物1,…の通信制御機器12から送られてくる固有識別データを含む乗りかご7のかご振動データを受信し、固有識別データのもとに実績データ蓄積領域21aに3軸方向のかご振動データである実績データを時系列的に蓄積する機能を有する。
【0031】
データ解析手段22bは、データベース21の実績データ蓄積領域21aから時系列的な各軸成分(方向)の実績データを読み出し、各軸成分ごとの実績データから例えば縦軸を加速度(時間)、横軸を高さ位置(時間)に変換する演算処理を実施し、その演算結果データをデータベース21の解析データ蓄積領域21bに保存する。
【0032】
また、データ解析手段22bは、解析データ蓄積領域21bに保存される演算結果データを表示部25に表示し、統計解析等に基づき、エレベータ2の乗りかご7の正常運転時の揺れ値(上下加速度値)を決定し、データベース21の設定データ領域21cに保存する。
【0033】
従って、データ解析手段22bは、演算結果データ及びかご正常運転時の揺れ値(上下加速度値)等の解析結果データを取得する。
【0034】
正常・異常振動分離手段22cは、解析結果データを用いて、エレベータ2及び乗りかご7内の状況,つまり正常と異常(故障を含む)とを分離し、異常時に解析データ蓄積領域21bに固有識別データと対応付けてエレベータ2の故障・かご7内の異常データを格納するとともに、表示部25に表示する。
【0035】
次に、以上のようなビルの監視システムの動作について説明する。
【0036】
各建物1に設置される通信制御機器12は、アンテナ11で受信される無線タグ形式の振動センサ10の固有識別データを含む乗りかご7の時系列的な振動データを、通信ネットワーク13を介して遠隔エレベータ監視装置20に送信する。
【0037】
ここで、遠隔エレベータ監視装置20の監視処理制御部22は、実績データ蓄積手段22aを実行する。実績データ蓄積手段22aは、固有識別データを含む乗りかご7の3軸方向の時系列的なかご振動データを受信すると、固有識別データのもとにかご振動データである実績データを順次時系列的に実績データ蓄積領域21aに蓄積していく。
【0038】
なお、かご振動データである実績データの中には、乗りかご7への利用者の乗降,ドア開閉,走行等の正常振動の他、エレベータの機械的故障,かご7内の人の動き,例えば人が暴れている等の異常による異常振動も含まれている。
【0039】
そこで、監視処理制御部22は、所定の周期ごとにデータ解析手段22bを実行する。データ解析手段22bは、データベース21の実績データ蓄積領域21aから3軸(x,y,z)成分(方向)の時系列的な実績データを読み出してデータバッフア記憶部24に一次的に格納する。なお、実績データは、3軸(x,y,z)の加速度Ax,Ay,Azと時間とが対となっている。つまり、実績データは、図8に示すような地震発生時の波形と同様に3軸分の振動波形(横軸時間)が各振動センサ10から取得されている。
【0040】
そこで、データ解析手段22bは、振動センサ10から取得された3軸成分の中のz成分(U-D=高さ方向)だけの実績データを抽出し、下式にごとく積分し、速度v(時間)を演算処理する。
∫Azdt=∫(dv/dt)dt=v ……(1)
さらに、速度を積分すると、下式に示すように高さ方向の位置(時間)hが求まる。
∫vdt=∫(dh/dt)dt=h ……(2)
以上のようにして得られた演算結果データはデータベース21の解析データ蓄積領域21bに保存される。ちなみに、この演算結果データから、縦軸を加速度Az、横軸を高さ方向の位置hとし、グラフ化したとき、図2に示すようになる。
【0041】
図2は乗りかご7の走行時及び各階停止時における加速度の変化(揺れの大きさ)を表している。なお、図2の例ではエレベータは各階で停止している。実線はかご運転正常時の振動波形であって、実線波形のうち、隣接する各階の間の小さい揺れ(イ)は正常走行中(一定速度)の揺れ、各階の比較的大きな揺れ(ロ)はドアの開閉、乗りかご7への人の乗降時の揺れの大きさである。破線は、異常発生時の振動波形であって、地下1階(B1)と地上1階(1F)との間で正常時とは異なる揺れ(ハ)が発生していることが分る。
【0042】
さらに、データ解析手段22bは、前述した実績データ演算結果データ等を用いて、かご運転正常時における隣接階の間の小さな揺れを伴う加速度から乗りかご7の正常運転時の揺れしきい値(上下加速度値)±Aを統計的に決定する。同様に、乗りかご7の正常運転時の各階での比較的大きな揺れしきい値(上下加速度値)±Bを統計的に決定し、それぞれ固有識別データごとに設定データ領域21cに保存する。
【0043】
監視処理制御部22は、以上のようにして正常運転時の揺れしきい値±A,±Bを決定した後、正常・異常振動分離手段22cを実行する。正常・異常振動分離手段22cは、データ解析手段22bで解析された図2に示すかご正常時の走行時、各階時のドア開閉等の加速度データと該当する揺れしきい値(上下加速度値)±A,±Bとを比較し、加速度データが各揺れしきい値±A,±B内にあれば正常と判断し、加速度データが各揺れしきい値±A,±Bを越えたとき機械的な故障や人が暴れている等の何らかの異常が発生したと判断する。そして、その他のデータ記憶領域21dに固有識別データごとにどの高さの位置で異常が発生したかを記憶するとともに、表示部25に表示する。
【0044】
遠隔監視センタのオペレータは表示部25の表示内容から建物1の名称等を特定し、保守サービス拠点に異常状態を通報するか、建物1の監視室等に通報する。
【0045】
従って、この実施の形態によれば、各建物1のエレベータ2に取付けられた振動センサ10で検出された個別識別データを含む時系列的に振動データを無線にて送信し、アンテナ11にて受信した後、遠隔エレベータ監視装置20に送信する。遠隔エレベータ監視装置20の監視処理制御部22は、受け取った振動データを順次データベース21に時系列的に保存するとともに、この保存された振動データを解析し、加速度及び乗りかご7の高さ位置を求める。そして、実績データから得られた加速度と予め設定される乗りかご正常時の揺れしきい値とから正常と異常の振動に分離し、異常時に表示部25に表示する。
【0046】
なお、上記実施の形態では、振動センサ10で検出されたz軸成分の縦軸となる加速度について述べたが、x軸及びy軸成分に対応する縦軸となる加速度及び揺れしきい値を求めれば、エレベータの異常故障・異常前兆・かご内の異常を精度よく判断することが可能である。但し、x軸及びy軸成分に対応する横軸となる高さ位置は前述したz軸成分からのみ求められる。
【0047】
また、x軸、y軸、z軸成分における各加速度をAx,Ay,Azとしたとき、下記式に基づいて各軸加速度全体の大きさ(2乗和の平方根)を求める。
【0048】
A=(Ax2 +Ay2 +Az21/2 ……(3)
そして、Aに対して図2と同様の処理を行い走行中及び停止中の乗りかご正常時の該当揺れしきい値とを比較し、正常と異常(故障を含む)との振動に分離する構成であっても構わない。
【0049】
さらに、実績データ蓄積手段22aとデータ解析手段22bとをそれぞれ独立可能なソフトで実現すれば、実績データ蓄積手段22aとデータ解析手段22bとが個別並列的に所定の処理を実行できる。
【0050】
(実施の形態2)
図3は本発明に係るビルの監視システムの実施の形態2を説明する図である。
この実施の形態は、監視処理制御部22には、新たに快適性判断手段22e及びサービス情報提供手段22fが設けられる。快適性判断手段22eは、データ解析手段22bまたは正常・異常振動分離手段22cの出力側に設けられ、エレベータ2の乗りかご7が正常走行時にデータ解析手段22bで解析された例えば図2に示す加速度データから乗りかご7の快適性を判断する機能を持っている。サービス情報提供手段22fは、快適性判断手段22eで判断された乗りかご7に関する乗り心地の快適性データを該当建物1の該当エレベータ乗りかご内や監視室または管理人室に提供する機能を有する。
【0051】
また、この実施の形態では、データベース21の設定データ領域21cに乗りかご7の乗り心地を表す快適性データを設定する。乗り心地を表す快適性データは、多くのエレベータ2におけるから正常走行時の図2に示す加速度データから統計解析を実施し、加速度(振動)の振幅レベルを複数段階例えばa,b,c,dに分類し、最も小さい振幅レベルaを非常に快適、振幅レベルaよりも大きい振幅レベルbを快適,振幅レベルbよりも大きい振幅レベルcを少々快適,振幅レベルcよりも大きい振幅レベルdを不快とする乗り心地の快適性データを設定する。
【0052】
その他の構成は実施の形態1と同様であるので、実施の形態1に譲る。
【0053】
以上のように設定データ領域21cに乗り心地を表す快適性データを設定した後、遠隔エレベータ監視装置20の監視処理制御部22は、データ解析手段22bまたは正常・異常振動分離手段22cの実行後、快適性判断手段22eを実行する。快適性判断手段22eは、データ解析手段22bで解析された例えば図2に示す乗りかご7の正常走行時の加速度(振動)データから振動振幅レベルを算出する。そして、この算出された振動振幅レベルに基づき、図4に示す乗り心地を表す快適性データを参照し、乗りかご7の快適性を判断する。この快適性判断結果は、データベース21の例えばその他のデータ記憶領域21dに固有識別データごとに保存される。
【0054】
サービス情報提供手段22fは、乗りかご内にも乗客に対し現在の乗り心地表示を行うとともに、所定の期間経過ごとに、その他のデータ記憶領域21dから固有識別データで特定される例えば建物1ごとに該当する乗り心地を表す快適性データを読み出して表示部25に表示し、監視室や管理人室等のユーザに提供する。
【0055】
従って、以上のような実施の形態によれば、定期的に乗りかご7の乗り心地を確認し、保守点検の必要性を提示することができる。
【0056】
(実施の形態3)
図5は本発明に係るビルの監視システムの実施の形態3を説明するための遠隔エレベータ監視装置の構成図である。
この実施の形態は、エレベータ2の乗りかご7内のセキュリティの安全性を確保するエレベータの監視システムである。
【0057】
通常、乗りかご7内のセキュリティの確保は、乗りかご7内に監視カメラを設置し、例えば建物1の監視室等で監視するとか、あるいは監視カメラで撮影された画像データを記憶装置に記憶し、乗りかご7で犯罪が行われた際に記憶装置から画像データを読み出し、解析することが行われている。
【0058】
しかし、監視カメラによる監視は、監視室の監視員による監視項目が多いことから、見落として発見が遅れるケースが多い。また、記憶装置に画像データを記憶する例は、暴漢に襲われた後の事故処理であり、安全性を確保することが難しい。
【0059】
そこで、本発明に係るエレベータの監視システムは、次のように構成される。本発明に係るエレベータの遠隔監視システムは、実施の形態1と同様の構成であるので、当該実施の形態1の説明に譲り、特に異なる点について図5を参照して説明する。
【0060】
すなわち、遠隔エレベータ監視装置20の監視処理制御部22としては、機能的には、正常・異常振動分離手段22cの出力側に監視通報処理手段22gが設けられている。
【0061】
実施の形態1では、正常・異常振動分離手段22cにより、エレベータ2の正常運転と故障・異常とに分離された後、異常時に表示部25の表示する構成である。
【0062】
そこで、監視通報処理手段22gは、前記固有識別データから建物1の名称等を特定し、保守員を現場に派遣する保守サービス拠点または該当建物1の監視室等に故障・異常の発生を通報すると同時にベル音や声で異常を知らせる機能をもっているので、オペレータに確実に認識させることができる。
【0063】
よって、この実施の形態によれば、実施の形態と同様の効果を奏する他、加速度データと予め設定される乗りかご正常時の揺れしきい値とから正常と故障・異常とに分離し、故障・異常時には保守サービス拠点や該当する建物1の監視室に通報するので、例えば監視カメラによる監視の場合に見落とすことがあったとしても、確実に通報できる。よって、この通報に基づき、乗りかご7内の監視カメラにより人が暴漢に襲われているか確認でき、より安全性の高いセキュリティを確保できる。
【0064】
(実施の形態4)
この実施の形態は、前述した正常・異常振動分離手段22cにおいて異常振動と分離された場合、さらに個別的に異常内容を判別する例である。従って、この実施の形態は、異常時に個別的な異常内容を判別する点を除けば、その他の構成は前述し各実施の形態1,2,3と同様であるので、ここでは図1,図3及び図5を参照して説明する。
【0065】
通常、エレベータ2の異常内容と乗りかご7の振動との間に密接な関係を有している。例えば機械系の異常が発生した場合、エレベータ2の走行中のほぼ同じ場所(例えば高さ位置)で比較的規則的に異常振動が発生する。また、異常振動は発生場所や機械系の構成部材の異常によっても異なる。また、乗りかご7内で人が暴漢に襲われたり、人が倒れたりした場合、偶発的、かつ、特徴的な異常振動が発生する。例えばかご内で暴漢に襲われた場合、乗りかご7が比較的短い周期で前後・左右・上下に大きく揺れる異常振動が発生し、また人が倒れた場合には走行中に突発的に大きな揺れを伴った後に正常走行の振動に戻る。よって、機械系の場合には、当該建物や他の建物で過去に発生した、種々の機械的故障時の振動センサ10で検出された振動パターンを蓄積し、また後者の場合の人が暴漢に襲われたり、人が倒れたりした場合は、予め人を使って模擬的に事象を作り、振動センサ10で検出される振動を収集することにより、特徴的な振動パターンを得ることができる。
【0066】
そこで、本発明システムにおいては、予めデータベース21の設定データ領域21cに異常内容と特徴振動パターンとを記憶する。また、遠隔エレベータ監視装置20の監視処理制御部22において、正常・異常振動分離手段22cの出力側に、新たに異常内容判別手段が設けられる。その他の構成は、前述した各実施の形態と同様であるので、それらの実施形態の説明に譲る。
【0067】
次に、以上のような実施の形態における作用について説明する。監視処理制御部22は、前述した実績データ蓄積手段22a及びデータ解析手段22bを実行した後、正常・異常振動分離手段22cは、解析結果データ(例えば乗りかご7の走行時の例えば図2に示す加速度)などを用い、当該加速度と予め取得されて設定データ領域21cに格納されるかご正常運転時の揺れしきい値とを比較し、乗りかご7の運転時や停止時の振動の正常と異常とを判断し、異常と判断された場合には当該異常に関連する加速度データないし異常振動を新たに付加した異常内容判別手段に送出する。
【0068】
異常内容判別手段は、正常・異常振動分離手段22cで分離された加速度データないし異常振動に基づき、データベース21の設定データ領域21cに格納される特徴振動パターンを参照し、分離された例えば異常振動が何れかの特徴的な振動パターンとほぼ等しい振動パターンを検索する。そして、当該振動パターンに対応する異常内容データに基づいて異常内容を判別し、実施の形態1のように表示部25に表示するか、実施の形態3のように監視通報手段22gを介して保守サービス拠点または建物1の監視室に通報する。
【0069】
従って、この実施の形態によれば、異常振動からエレベータ2及びかご7内の異常内容を容易に判別でき、判別精度の高い異常内容を速やかに遠隔監視センタで把握することができ、またユーザ等に対して的確、かつ、迅速に異常内容を通報できる。
【0070】
(実施の形態5)
図6は本発明に係るビルの監視システムの実施の形態5を示す構成図である。
ビルの遠隔監視システムとしては、各建物1のエレベータ2内だけでなく、各建物1が建っている地面固定部に無線タグ形式の振動センサ31、建物自体の複数部位にも無線タグ形式の振動センサ32a,32b,32cが設置され、振動センサ10を含む他の振動センサ31,32a,32b,32cから固有識別データとともに各部位の振動データを送信する。同一の建物1内に設置されるアンテナ11は各振動センサ10,31,32a,32b,32cから送信されるデータを受信し、通信制御機器12に送出する。
【0071】
通信制御機器12は、各振動センサ10,31,32a,32b,32cから送信されてくる固有識別データを含む振動データを、周期的、かつ、交互に取り込み、通信ネットワーク13を介して遠隔監視センタ内の遠隔エレベータ監視装置20に送信する。
【0072】
遠隔エレベータ監視装置20としては、公共機関で管理する地震震度分布観測点(図7参照)以外の多数の地点に建てられる多くの建物1のエレベータ2を管理するだけでなく、当該エレベータ2を設置する各建物1の地面固定部や建物自体の複数部位の振動データを収集し監視する構成である。
【0073】
遠隔エレベータ監視装置20は、データベース33と、CPUで構成される監視処理制御部34と、キーボードその他マウスなどのポインティングデバイスなどからなるデータ入力手段35と、データバッフア記憶部36と、表示部37とで構成される。
【0074】
データベース33には、実績データ蓄積領域21a、地震震度データ記憶領域33a、建物強度参照データ記憶領域33b及び各建物強度データ記憶領域33cが設けられている。地震震度データ記憶領域33aには、例えば各建物1の地面固定部に設置される振動センサ31の固有識別データ、各建物1の地面固定部の経緯度データ及び各建物1の地面固定部の震度データ格納領域が設けられている。建物強度参照データ記憶領域33bcには、建築基準法に準拠(図9参照)した地震震度、建物用途ごとに定められる建物各部位の構造強度要求性能及び建物各部位の構造強度要求性能に対する揺れしきい値等が格納されている。
【0075】
監視処理制御部34は、機能的には,地震震度サービス提供系と建物強度サービス提供系とに分けられる。地震震度サービス提供系と建物強度サービス提供系との何れか一方または両方を用いるか任意である。
【0076】
地震震度サービス提供系は、実績データ蓄積手段34aと、地震震度解析手段34bと、地震震度分布生成手段34cと、予め契約関係に公共機関等に対して各建物1の地震震度情報または地震震度分布情報を配信する情報サービス配信手段34dとで構成される。
【0077】
建物強度サービス提供系は、実績データ蓄積手段34aと、建物揺れ解析手段34eと、建物強度判定手段34fと、各建物1を管理するユーザに管理建物の強度判定結果を提供する情報サービス配信手段34dとで構成される。
【0078】
(A) 次に、遠隔エレベータ監視装置20を構成する監視処理制御部34の地震震度サービス提供系の作用について説明する。
【0079】
監視処理制御部34の実績データ蓄積手段34aは、各建物1に設置される通信制御機器12から伝送されてくる各振動センサ10,振動センサ31,32a,32b,32cの固有識別データを含む振動データを順次受信し、データベース33の実績データ記憶領域21aに時系列的に記憶し蓄積していく。
【0080】
地震震度解析手段34bは、各建物1の地面固定部に設置される振動センサ31の振動データ(加速度)から気象庁震度階に基づく9段階の中の1つの震度を決定し、前記地震震度データ記憶領域33aの該当建物1の地面固定部の経緯度データに対応する地面固定部の震度データ格納領域に記憶する。以前は震度観測は体感で行われていたが、現在は器械により観測され、計測震度と呼ばれる。計測震度は加速度波形から計算され、計測震度の計算には、加速度の大きさの他にも、揺れの周期や継続時間が考慮される。地震震度の求め方は下記の気象庁ホームページを参照。
【0081】
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/kyoshin/kaisetsu/comp.htm
以下、地震震度解析手段34bは、順次、各建物1の地面固定部に設置される振動センサ31の振動データから1つの震度を求めて地震震度データ記憶領域33aに記憶する。
【0082】
地震震度分布生成手段34cは、地震震度解析手段34bで求めた多数の建物1,…の震度に関し、建物1の地面固定部の経緯度データを用いて、編集処理を実施し、例えば要求地域の地図上の経緯度地点に決定され震度データを書き込む処理を実施する。そして、該当地域の全地域の管理対象とする地域の多数の建物1の経緯度地点に震度データを書き込み終了した後、情報サービス配信手段34dに移行する。
【0083】
情報サービス配信手段34dは、予め契約されている例えば公共機関にアクセスし、ネットワーク回線の確立後、前述した地震震度解析手段34bで取得された経緯度地点の震度データまたは地震震度分布生成手段34cで取得された地図上の経緯度地点に震度データをプロットした震度情報を提供する。
【0084】
これにより、公共機関等においては、当該公共機関で管理する地震震度分布観測点以外の多数の地点の震度情報を迅速に取得でき、また広域にわたって細かい詳細な地震震度分布情報が得られるので、各家庭で知りたい該当周辺地域の地震震度情報も提供できる。
【0085】
(B) 次に、遠隔エレベータ監視装置20を構成する監視処理制御部34の建物強度サービス提供系の作用について説明する。
【0086】
監視処理制御部34の実績データ蓄積手段34aは、前述したように各建物1に設置される通信制御機器12から伝送されてくる各振動センサ10,振動センサ31,32a,32b,32cの固有識別データを含む振動データを順次受信し、既にデータベース33の実績データ記憶領域21aに時系列的に蓄積されている。
【0087】
そこで、建物揺れ解析手段34eは、実績データ蓄積手段34aから各建物1の複数部位に設置される振動センサ32a〜32cの振動データを抽出し、データバッフア記憶部36に記憶する。
【0088】
しかる後、データバッフア記憶部36から1つの振動センサ32aの時系列的な振動データを読み出し、その加速度の大きさ,つまり揺れを解析する。他の振動センサ32b,32cの時系列的な振動データについても同様に揺れを解析し、次の建物強度判定手段34fに移行する。
【0089】
建物強度判定手段34fは、地震震度解析手段34bで得られた当該建物が建っている地点の震度情報と建物強度参照データ33bを用いて、下記に示す方法で建築基準法に準拠した耐震強度をもっているかを判定する。ここでは、図9(b)一般ビルの場合で説明するが、重要ビルの場合も同様である。地震震度が5弱であれば、建物各固定部位の揺れがその部位の構造強度の揺れ許容値以内か否か判定する。地震震度が5強から6弱であれば、建物各固定部位の揺れがその部位の構造強度の揺れ限界値以内か否か判定する。地震震度が6強以上であれば、建物各固定部位の揺れが倒壊・崩壊限界値以内か否か判定する。このようにして、地震が発生する毎に建築基準法に準拠した耐震強度を保っているか否かを判定し、各建物1、・・・ごとに各建物強度データ記憶領域33cに格納するとともに、情報サービス配信手段34dに移行し、建物オーナや居住者等のユーザに提供する。
【0090】
これにより、建物オーナや居住者等のユーザは、自身が所有する建物が建築基準法に準拠した耐震強度以上か、否か、つまり、建物の安全性を実際の計測データに基づいて検証することができる。
【0091】
(B−1) 前記(B)の他の適用例1について説明する。
前述した建物揺れ解析手段34eにより、地域に点在する多数の建物1の揺れを解析されている。
【0092】
そこで、建築強度判定手段34fは、地震発生時、該当建物が建っているところと地震震度が同じ地域の類似の建物の揺れの平均値を算出し、この平均揺れ値と該当建物の揺れとを比較し、相対的な差の数値を付し、情報サービス配信手段34dを介してオーナや居住者等のユーザに提供することも可能である。
【0093】
(B−2) さらに、前記(B)の他の適用例2について説明する。
データベース33の実績データ蓄積領域21aには、前述したように実績データ蓄積手段34aの実行により、地震発生時の各建物1,…の各部位の振動センサ32a〜32cの振動データが蓄積され、かつ、地震震度データ記憶領域33aに各建物1,…に立っている場所のその時の地震震度が格納されている。
【0094】
そこで、このシステムでは、建物強度判定手段34fは、新たに地震が発生した時、データベース33から過去の同じ震度時の建物1の揺れを抽出し、今回発生した地震の揺れとを比較し、前回と同じか、或いは前回よりも大きく揺れているかを判定し、その数値の差により建物の劣化度の評価や建物の劣化度の評価に基づく既に記憶される建物の専門家の知識や経験データのもとに定められる補修・建替え時期を推定し、各建物1,…ごとに建物強度データ記憶領域33cに格納するとともに、情報サービス配信手段34dを介して建物オーナや居住者等のユーザに提供することも可能である。
【0095】
(B−3) 前記(B)の他の適用例3について説明する。
大地震の発生時、実績データ蓄積手段34a及び建物揺れ解析手段34eの実行に基づき、各振動センサ31,32a〜32cの振動データ及び各建物の揺れが求められている。そこで、建物強度判定手段34fは、これら建物1,…の振動データ及び各建物の揺れと、建物強度参照データ記憶領域33bに格納される建築基準法に準拠した地震震度及び建物各部位の構造強度に対する揺れしきい値とを考慮し、各建物1,…の倒壊等の被害状況を推定し、大きな被害が出ていそうな建物1,…に対し、予め定める被害推定情報の中から最適な被害推定情報を取り出し、救助する際の優先順位等の参考情報として、情報サービス配信手段34dを介して適切な公共機関に提供する。
【0096】
これにより、適切な公共機関は、何れの地域に救助を必要とする多くの建物が存在するかを把握でき、救助の際の対策を立てやすくなる。
【0097】
(その他の実施の形態)
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できるものである。
【0098】
上記実施の形態1では、複数の建物1、…に対するエレベータ2及び乗りかご7内の状況を遠隔エレベータ監視装置20で監視する構成であるが、例えば単独の建物1に対する複数の振動センサ10,31,32a〜32cに適用しても構わない。このような場合には、遠隔監視ではなく、その建物自体に本願発明を設置することになる。
【0099】
また、上記実施の形態では、正常・異常振動の分離やエレベータ2の機械故障による異常振動と人が暴れたり、人が倒れたりした時の振動とを自動分離する手法としては、例えば振動センサ例えば10に関する加速度信号Ax,Ay,Az軸成分を個別に解析するのではなく、現象を多次元的に扱うため主成分分析した信号に対し、ウェーブレット解析を行っても構わない。
【0100】
その他、各実施の形態は、可能な限り組み合わせて実施することも可能であり、その場合には組み合わせによる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に係るビルの監視システムの実施の形態1を示す構成図。
【図2】エレベータ2に設置された振動センサの出力を、図1に示す遠隔エレベータ監視装置でデータ解析して得られた1軸方向成分の加速度と高さ位置との関係を示す図。
【図3】本発明に係るビルの監視システムの実施の形態2を説明するための遠隔エレベータ監視装置の構成図。
【図4】図3に示すデータベースに形成される乗り心地を表す快適性データの配列図。
【図5】本発明に係るビルの監視システムの実施の形態3を説明するための遠隔エレベータ監視装置の構成図。
【図6】本発明に係るビルの監視システムの実施の形態5を示す構成図。
【図7】公共機関が管理する関東地域の震度観測点を示す図。
【図8】2005年07月23日に千葉県北西部で発生した地震に関する横浜の観測点で観測された波形図。
【図9】建築基準法に準拠した地震震度と建物強度の要求性能との関係を説明する図。
【符号の説明】
【0102】
1…建物、2…エレベータ、7…乗りかご、10…振動センサ、11…アンテナ、12…通信制御機器、13…通信ネットワーク、20…遠隔エレベータ監視装置(ビル監視装置)、21…データベース、22…監視処理制御部、22a…実績データ蓄積手段、22b…データ解析手段、22c…正常・異常振動分離手段、22e…快適性判断手段、22f…サービス情報提供手段、22g…監視通報手段、25…表示部、31,32a〜32c…振動センサ、33…データベース、34…監視処理制御部、34a…実績データ蓄積手段、34b…地震震度解析手段、34c…地震震度分布生成手段、34d…情報サービス配信手段、34e…建物揺れ解析手段、34f…建物強度判定手段、37…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の各エレベータの乗りかごに設置される振動センサと、
この振動センサから出力される振動センサの振動信号を受信し、エレベータ及び乗りかごの状況を監視するビル監視装置とを備え、
このビル監視装置は、振動センサから送られてくる振動データを収集し時系列的に蓄積する実績データ蓄積手段と、この実績データ蓄積手段により蓄積される時系列的な振動の加速度データからエレベータの位置情報を求めて、この情報と振動のデータの対のデータ群を統計解析するデータ解析手段と、このデータ解析手段で得られる解析データから前記乗りかごの正常運転時の正常振動と前記乗りかごを含むエレベータの故障・異常振動とに分離する正常・異常振動分離手段とを設けたことを特徴とするビルの監視システム。
【請求項2】
前記データ解析手段は、振動センサの高さ方向の加速度信号を、時間で2回積分し、位置情報を求めて、正常時の振動と位置のデータの対を蓄積し、統計解析による分析データに基づいて前記エレベータの乗りかごの正常走行時における小さな上下限揺れしきい値及び当該乗りかごの各階停止時の大きな上下限揺れしきい値とを決定し、
前記正常・異常振動分離手段は、前記データ解析手段で解析された解析データ値と前記上下限揺れしきい値とを比較し、当該分析データが当該上下限揺れしきい値を超えたとき、前記乗りかごを含むエレベータが故障・異常であると判断することを特徴とする請求項1に記載のビルの監視システム。
【請求項3】
建物の各エレベータの乗りかごに設置される振動センサと、
この振動センサから出力される振動センサの振動信号を受信し、エレベータ及び乗りかごの状況を監視するビル監視装置とを備え、
このビル監視装置は、振動センサから送られてくる振動データを収集し時系列的に蓄積する実績データ蓄積手段と、この実績データ蓄積手段により蓄積される時系列的な振動の加速度データから、予め前記乗りかごの乗り心地を表す複数段階の快適性データの振幅レベルを統計的に解析するデータ解析手段と、この振幅レベルを設定する手段と、前記振動データと前記解析データである加速度の変化と複数段階の振幅レベルとを比較し、前記乗りかごの乗り心地に関する快適性を判断する快適性判断手段と、乗りかご内にも現在の乗り心地表示を行う手段とを設けたことを特徴とするビルの監視システム。
【請求項4】
請求項1、請求項2、請求項4の何れか一項に記載のビルの監視システムにおいて、
前記ビル監視装置は、前記正常・異常振動分離手段により、前記乗りかごを含むエレベータの故障・異常振動と診断されたとき、前記ビル監視装置が設置される監視センタや該当エレベータを設置する建物の監視室に自動通報する監視通報手段を付加したことを特徴とするビルの監視システム。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のビルの監視システムにおいて、
前記ビル監視装置は、エレベータの機械系の故障・異常に関する特徴振動パターン及び前記乗りかご内で人が暴漢に襲われたり、人が倒れたときの特徴振動パターンを予め収集し分類して記憶設定する設定手段と、前記正常・異常振動分離手段で異常振動と診断されたとき、前記振動センサの振動データまたは前記データ解析手段で解析された加速度の変化が前記特徴振動パターンとほぼ類似しているとき、この類似する特徴振動パターンから異常内容を判別する異常内容判別手段と、この異常内容判別手段で判別された異常内容を保守サービス拠点や該当建物の監視室に通報する監視通報手段とを付加したことを特徴とするビルの監視システム。
【請求項6】
各建物が建っている地面固定部に設置される振動センサと、
この多数の建物の地面固定部に設置される振動センサから出力される振動センサの振動信号を受信し、各建物位置における地震状況を監視するビル監視装置とを備え、
このビル監視装置は、各振動センサから送られてくる振動データを収集し蓄積する実績データ蓄積手段と、地震発生時、当該実績データ蓄積手段により蓄積された振動データの揺れから地震震度に変換する地震震度解析手段と、この地震震度解析手段で得られた地震震度データを前記各建物の地面固定部の経緯度地点データに書き込む地震震度分布生成手段と、この地震震度分布生成手段で生成された各経緯度地点の地震震度データを契約機関に配信する情報サービス配信手段とを設けたことを特徴とするビルの監視システム。
【請求項7】
各建物の複数の固定部位に設置される振動センサと、
これらの振動センサから出力される振動センサの振動信号を受信し、建物の揺れの状況を監視するビル監視装置とを備え、
このビル監視装置は、各振動センサから送られてくる振動データを収集し蓄積する実績データ蓄積手段と、地震発生時、前記各振動センサの振動データから該当建物の揺れを求める建物揺れ解析手段と、該当建物の複数固定部位ごとの揺れに対し、建築基準法に準拠して地震震度に対応して、定められた建物要求強度性能を満足しているかを、予め定めた振動しきい値のもとに各建物の構造強度を判定する建物強度判定手段と、この建物強度判定手段で求めた建物構造強度を該当建物のオーナや居住者等のユーザに提供する情報サービス配信手段を設けたことを特徴とするビルの監視システム。
【請求項8】
各建物の複数の固定部位に設置される振動センサと、
多数の建物の各固定部位に設置される振動センサから出力される振動センサの振動信号を受信し、建物の状況を監視するビル監視装置とを備え、
このビル監視装置は、各振動センサから送られてくる振動データを収集し蓄積する実績データ蓄積手段と、地震発生時、前記各振動センサの振動データから該当建物の揺れを求める建物揺れ解析手段と、該当建物が建っているところと地震震度が同じ地域の類似の各建物の揺れの平均値を算出し、この算出された平均揺れ値と該当建物の揺れとの相対的な差の数値データを求める建築強度判定手段と、この手段で求めた判定結果を建物のオーナや居住者等のユーザに提供する情報サービス配信手段とを設けたことを特徴とするビルの監視システム。
【請求項9】
各建物の複数の固定部位に設置される振動センサと、
多数の建物の各固定部位に設置される振動センサから出力される振動センサの振動信号を受信し、建物の状況を監視するビル監視装置とを備え、
このビル監視装置は、各振動センサから送られてくる振動データを収集し蓄積する実績データ蓄積手段と、地震発生時、前記各振動センサの振動データから該当建物の揺れを求める建物揺れ解析手段と、新たに地震が発生した時、前記建物揺れ解析手段で求めた今回の地震の揺れと同一建物の過去の同じ震度時の揺れのデータを比較し、当該同一建物の劣化度の評価や建物の補修・建替え時期を推定する建物強度判定手段と、この建物強度判定手段で推定された建物の劣化度の評価や建物の補修・建替え時期情報を建物のオーナや居住者等のユーザに提供する情報サービス配信手段とを設けたことを特徴とするビルの監視システム。
【請求項10】
各建物の複数の固定部位に設置される振動センサと、
多数の建物の各固定部位に設置される振動センサから出力される振動センサの振動信号を受信し、建物の状況を監視するビル監視装置とを備え、
このビル監視装置は、各振動センサから送られてくる振動データを収集し蓄積する実績データ蓄積手段と、地震発生時、前記各振動センサの振動データから該当建物の揺れを求める建物揺れ解析手段と、この建物揺れ解析手段で求めた該当建物の揺れと建築基準法に準拠した地震震度及び建物各部位の構造強度に対する揺れしきい値とを考慮し、各建物の倒壊・崩壊等の被害推定情報を作成する建物強度判定手段と、この建物強度判定手段で作成された各建物の被害推定情報を契約機関に提供する情報サービス配信手段とを設けたことを特徴とするビルの監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−150186(P2008−150186A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341857(P2006−341857)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】