説明

ピストンシリンダ装置のピストンおよび製造方法

本発明は、ピストンシリンダ装置用のピストン(10)、特に緩衝ピストンに関し、周面(13)を有するピストン本体(11)と、外周面(15)と内周面(16)と第1周囲面(17)と第1封止リップ(19)とを有する封止カラー(12)とを備え、前記ピストン本体の前記周面(13)の周囲に延び、前記周面の少なくとも一部を軸方向に覆うピストンであって、前記第1周囲面は、前記2つの周面を封止カラーの第1端において互いに接続し、前記第1封止リップは、前記第1周囲面および前記外周面により規定され、前記第1封止リップは、周方向に均一に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンシリンダ装置のピストン、特に緩衝ピストンに関し、また、ピストン特にこのようなピストンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EP1121544B1には、請求項1のプリアンブルにかかる、周面と封止カラーとを有するピストン本体を備えるピストンシリンダ装置のピストン、特に緩衝ピストンが記載されている。封止カラーは外周面、内周面、第1周囲面、および第1封止リップを有し、ピストン本体の周面に延びて周面の少なくとも一部を軸方向に覆う。第1周囲面は封止カラーの第1端で2つの周面を互いに接続する。封止リップは第1周囲面と外周面とで規定されて外周面から外側に向かって径方向に突出する。EP1121544B1には、また、請求項13のプリアンブルにかかるピストンの製造方法であって、封止ブランクとピストン本体とを設け、その後封止ブランクがピストン本体を押し、封止ブランクとピストン本体に押し付けられる方法が記載されている。
【0003】
この公知のピストンおよび封止カラーは、熱可塑性プラスチック材料、好ましくはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなり、この公知の方法によれば、封止カラーは、ピストン本体の周面に、封止ブランクである円形ワッシャから熱成形により成形される。このため、円形ワッシャまたは封止ブランクはピストン本体の一端に取り付けられ、このようにして得られたピストン本体は熱形成される較正シリンダに押し込まれ、円形ワッシャはピストン本体の周面に帯状に配され、熱影響下で実質的にピストン本体の周面に押し付けられる。この時、ピストン本体には、封止カラーとピストン本体との理想的かつ信頼性の高い接続を確保するために、少なくとも1つの周辺ウェブが設けられている。最後に、押さえられた封止カラーを有するピストンは、冷却管に導入される。封止カラーのプラスチック材料の「バックメモリー」現象により、形成後、円形ワッシャの内縁部により形成された封止カラーの一方の縁部が内側に向かってに収縮し、円形ワッシャの外縁部により形成された封止カラーの他方の反対側縁部が再び外部に配され、この時には封止リップと同じく封止カラーの残りの周面よりも突出している。
【0004】
したがって、この公知のピストンの封止リップは、封止カラーが円形ワッシャのもとの形状を記憶する公知のプロセスにより生じる。この公知のピストンおよび方法によれば、円形ワッシャを封止カラーに形成する製造の結果生じる内部応力によって、比較的封止リップにしわができやすく、封止機能を損なう恐れがあるという問題がある。
【0005】
DE19513727B4にもまた、請求項1のプリアンブルに記載のピストンと請求項13のプリアンブルのこのピストンの製造方法が記載されている。この公知のピストンは、支持要素と少なくとも一部が支持要素の外部を取り囲むガイドリングとを有し、ガイドリングは、ポリマー材料、好ましくはPTFEからなる。支持要素は周に沿ってガイドリングの方向に開口する少なくとも1つの径方向の溝を有し、溝はガイドリングの組み立て用の突起に係合し、突起は支持要素に向かって径方向に突出する。ガイドリングは、両側に、径方向に延びる一体に成形された組み立て用の封止リップを有する。封止リップは支持要素の接触面に軸方向にはみ出る。この公知の方法によれば、ガイドリングのブランクは支持要素の外側に向かって押され、その後もっぱら径方向にかつ全周に均一に、ガイドリング材料の流動性の条件を超えて圧縮される。こうした状況でガイドリングの材料が流動し始めるため、支持要素の溝はガイドリングの材料で完全に満たされる。支持要素の溝にはガイドリングの材料が徐々に流れ込んでこれを満たすが、この材料の一部は径方向圧縮の結果、軸方向に支持要素の周面に沿って流れて封止リップを形成する。このように封止リップは径方向圧縮の際に軸方向に流れを変えられたガイドリング材料によって形成される。
【0006】
この公知のピストンおよび公知の方法は、その製造により、軸方向径方向圧縮の際、ガイドリングの材料が自由に流れるので封止リップの製作精度が比較的低いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ピストンシリンダ装置のピストン、特に緩衝ピストン、また、ピストン、特にこのようなピストンの製造方法を改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、請求項1にかかるピストン、および請求項13にかかるピストンの製造方法により実現される。さらなる実施形態が従属請求項に記載される。
【0009】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の封止リップが周方向に均一に構成されるピストンを提案する。言い換えると、封止リップは、周方向に一様にもしくは連続して、つまり周方向の角度とは独立して形成され、またはピストンの縦軸に対して軸に対して対称であり、または規定のもしくは所定の縦断面輪郭形状を有することを意味する。これは例えば、公知のピストンの封止リップが適切な方法で完成されて所望の形状を得ることによって実現される。公知のピストンに比べて、本発明のピストンでは封止機能が向上している。
【0010】
ピストン本体は必要があれば一体に構成することができ、少なくとも2つの部分からなるようにしてもよい。必要があれば、その周面に、少なくとも部分的に周方向および/もしくは軸方向および/もしくはこれに対して斜めに走る少なくとも1つの溝、ならびに/または少なくとも1つの他方の下降部ならびに/もしくは少なくとも部分的に周方向ならびに/もしくは軸方向ならびに/もしくはこれに対して斜めに走る少なくとも1つのウェブ、ならびに/または少なくとも1つの他方の上昇部とを備えてもよい。
【0011】
封止リップは外周面から外側に向かって径方向にはみ出てもよい。その結果、ピストンシリンダ装置の封止リップとシリンダの内壁との間が可能な限り隙間なく確実に接触するようにできる。また、「メモリー効果」とも呼ばれる封止カラーの「バックメモリー」の発生を補うことができる。
【0012】
封止カラーはその第1端が拡大されていてもよい。これは封止カラーの内周面の直径がこの領域で大きくなっていることを意味する。これにより、メモリー効果の発生を補うことができる。
【0013】
封止リップの形状は必要に応じて選択可能である。したがって、例えば、縦断面において、第1封止リップは第1周囲面の隣接する周辺部と外周面の隣接する周辺部との間で鋭角、直角、鈍角のいずれかをなす輪郭形状であってもよい。また角度のついた輪郭形状のかわりに、第1封止リップは円状またはさらに別の輪郭形状であってもよい。
【0014】
ピストン本体またはシリンダに対する第1封止リップの配置もまた必要に応じて選択可能である。したがって、例えば、縦断面において、第1周囲面はピストンの縦軸に対して鋭角、直角、鈍角のいずれかをなしてもよい。同様に、第1周囲面は所望の任意の形状であってもよく、例えば、縦断面が凹状もしくは凸状の曲面またはさらに別の形状であってもよい。
【0015】
ピストン本体に対する封止カラーの長さおよび位置は必要に応じて選択可能である。したがって、例えば、ピストン本体が封止カラーの第1端に位置する第1フェイスを備え、封止カラーの第1端が第1フェイスを超えて軸方向に突出してもよい。これは、必要ならば、反対側のピストン本体の第2フェイスおよび反対側の封止カラーの第2端についても同様に当てはまる。ただし、例えば、ピストン本体は封止カラーの第1端から軸方向に突出してもよい。これは、必要ならば、封止カラーの第2端についても同様に当てはまる。さらに、例えば、封止カラーは、第1端および/または第2端において、軸方向に、ピストン本体よりも、短くても、長くても、また同じ長さであってもよい。
【0016】
封止カラーは、必要があれば、第1封止リップに加えてさらに封止リップを備えてもよい。したがって、封止カラーは実際に第2周囲面と第2封止リップとを備え、第2周囲面が2つの周面を封止カラーの第2端で互いに接続し、第2封止リップは第2周囲面および外周面により規定される。このため、第1および第2封止リップは同一にまたは異なるように構成されてよい。第1周囲面、第1封止リップ、封止カラーの第2端、ピストン本体の第2フェイスとの関連で記載した上記の特徴は、必要があれば、個別に、または任意の組合せで、第2周囲面、第2封止リップ、封止カラーの第2端、ピストン本体の第2フェイスにも同様に当てはめることができる。この封止カラーの材料は必要に応じて選択することができる。したがって、封止カラーは、例えば、熱可塑性プラスチック材料、好ましくはフッ化炭化水素、さらに好ましくはPTFEからなってよい。
【0017】
ピストン本体は必要に応じてどのような方法で製造されてもよい。例えば、粉末冶金、好ましくは焼結により製造することができる。
【0018】
本発明は、請求項13のプリアンブルに記載の方法であって、ステップd)において封止ブランクをその第1端でカットし、ステップe)において所望の輪郭形状を有する封止リップを第1端に形成する方法を提案する。このため、ステップd)およびe)は、必要があれば連続してまたは同時に行うことができる。例えば、もし所望の輪郭形状の第1封止リップがすでにステップd)のカットにより形成されている場合、ステップe)はステップd)により行われる。
【0019】
封止ブランクは、必要に応じてどのような方法で形成されてもよく、例えば、円形ワッシャ、またはスリーブ、またはカップの形状をしていてもよい。
【0020】
ステップd)におけるカットは、必要に応じてどのような方法で行われてもよく、例えば、機械的におよび/またはレーザによって行われてもよい。
【0021】
ステップf)において封止ブランクを第1端において拡大してもよい。このため、ステップf)はステップd)の前もしくは後に行われてもよく、ならびに/またはステップe)およびf)連続してもしくは同時に行われてもよい。
【0022】
第1の代替例として、必要があれば、第1封止リップに加えて少なくとも1つのさらなる封止リップを製造してもよい。例えば、ステップg)において、封止ブランクを第2端においてカットし、ステップh)において、所望の輪郭形状を有する第2封止リップを第2端に形成してもよい。ステップd)およびe)、ならびに封止ブランクの第1端との関連で記載した上記の特徴は、必要があれば、ステップg)およびh)ならびに封止ブランクの第2端にも同様に当てはめることができる。ステップg)および/もしくはh)は、必要に応じて、ステップd)および/もしくはe)および/もしくはf)の後、または同時、または前に行ってもよい。
【0023】
第2の代替例として、ステップi)において、封止ブランクの第2端をピストン本体の周面に形成される環状溝に少なくとも部分的に押し込んでもよい。このステップi)は、必要に応じて、ステップc)および/もしくはd)および/もしくはe)および/もしくはf)の後、または同時、または前に行ってもよい。
【0024】
実施形態のさらなる利点は、図面を参照して以下に詳細に説明される。しかしながら、図面に示す個別の特徴は個別の実施形態に限定されるものではなく、本明細書に先に説明した個別の特徴またはそのほかの実施形態の個別の特徴と組み合わせて、さらなる実施形態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、第1実施形態の緩衝ピストンの縦断面図である。
【図2】図2は、図1の緩衝ピストンのピストン本体の縦断面図である。
【図3】図3は、図1の部分IIIの拡大図である。
【図4】図4は、図1のピストンを製造する第1実施形態の方法の概略図である。
【図5】図5は、図4の方法の第2ステップを示す模式図である。
【図6】図6は、第2実施形態の緩衝ピストンを有するピストンシリンダ装置の縦断面図である。
【図7】図7は、図6の部分VIIの拡大図である。
【図8】図8は、封止ブランクがカットされている、方法ステップにおける図6のピストンの縦断面図である。
【図9】図9は、カットされた封止ブランクが拡大されて2つの封止リップが形成されている、方法ステップにおける図8のピストンの縦断面図である。
【図10】図10は、別の輪郭形状を有する封止リップの拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、緩衝ピストンとして構成される第1実施形態のピストン10を示す。ピストン10は、ピストン本体11および封止カラー12を備える。図2に示すように、ピストン本体11は5つの環状溝14が構成される周面13を有する。封止カラー12は、外周面15と、内周面16と、図1の上部に位置する第1周囲面17と、図1の下部に位置する第2周囲面18と、図3の拡大図で示す第1封止リップ19とを有する。封止カラー12は、周面13の周囲に軸方向に延びて周面13の上部を覆う。第1周囲面17は、図1および3における封止カラー12の第1の上端で外内周面15,16を互いに接続し、外周面15とともに第1封止リップ19を規定する。第2周囲面18は、図1における封止カラー12の下端で外内周面15,16を互いに接続する。封止カラー12は、第2周囲面18が5つの環状溝14の最も下に位置するように、第2端で径方向に内側を向いている。内周面16は、各2つの環状溝14の間で周面13に対して密接するように支持され、環状溝14の領域でこれらに係合する。
【0027】
第1実施形態のピストン10において、第1封止リップ19は図3に示すように外周面15の外側に向かって径方向に突出する。また、封止カラー12は、この領域のピストン本体11に対して支持されないように第1端において拡大されている。さらに、図示される縦断面において、ここで、第1封止リップ19は、第1周囲面17の隣接する周辺部と外周面15の隣接する周辺部との間に鋭角をなす輪郭形状を有している。また図示される縦断面において、第1周囲面17はピストン10の縦軸に直角をなす。
【0028】
第1実施形態において、ピストン本体11は、それぞれ封止カラー12の第1および第2端に配される第1および第2フェイス20,21を有し、封止カラー12の第1および第2端から軸方向に突出する。このように、封止カラー12はピストン本体11よりも短い。また、ここで、封止カラー12は熱可塑性プラスチック材料であるPTFEからなり、ピストン本体11は焼結により製造される。
【0029】
図4および5は、図1のピストン10を製造する第1実施形態の方法を示す。
【0030】
第1ステップ101において、本第1実施形態の方法ではPTFEの円形ワッシャ供給された封止ブランク22が、上から取り付け円錐体23の小端側に向かって押される。また、取り付け円錐体23は、ピストン本体11の第1フェイス20が下方を向き、取り付け円錐体23の広端側がピストン本体11の第2フェイス21に接触するようように、供給されたピストン本体11に配される。
【0031】
図5の拡大図においてより詳細に示す第2ステップ102において、プラスチックの拡張シャフト24が取り付け円錐体23の小端側の上に配され、ピストン軸の方向に沿って押し下げられて、円形ワッシャ状の封止ブランク22が一方が拡大されてもう一方がピストン本体11の周面13の所望の位置に取り付けられるまで取り付け円錐体23に向かって移動する。
【0032】
図5は、第2ステップ102の個々の段階を上から下に時系列に示したものであり、この段階の終了時のピストン10を下に示している。第2ステップ102において、最初に封止ブランク22は開口部とともに図5上に示す取り付け円錐体23の小端側に押され、拡張シャフト24により取り付け円錐体23の広端側に向かって連続的に押され、こうして図5下に示すようになる。同時に、図5下に示す最初は円形ワッシャ形状の封止ブランク22の下面が取り付け円錐体23の円錐状の円筒表面に密接に取り付けられるまで、封止ブランク22の外縁部が次第に下に傾く。この状態で、この下面と図5では反対側のもともとの封止ブランク22の上面が、数ステージ後にそれぞれ完成した封止カラー12の内外周面16,15となることがわかる。また、外周囲面ともともとの円形状の封止ブランク22の開口部を形成する内周囲面が、数ステージ後にそれぞれ完成した封止カラー12の第1および第2周囲面17,18となることがわかる。今やファンネル型の封止ブランク22が取り付け円錐体23の広端側に到達すると、図5の第1周囲面17が第1フェイス20の真上の所望の位置および第2周囲面18が一番上の環状溝14の上縁部の高さに来るまで、図5に示すように拡張シャフト24により上からさらにピストン本体11の第2フェイス21へと押される。この場合、封止ブランク22自体はピストン本体11周辺に位置する。
【0033】
第3のステップ103において、ローラ29を用いて、図4の封止ブランク22の第2上端が一番上の環状溝14に押し込まれる。このようにして、封止ブランク22はピストン本体11に確実に取り付けられ、続くステップにおいて、封止ブランク22がピストン本体11に対して図4におけるさらに下方に移動することを防ぐことができる。
【0034】
第4ステップ104において、封止ブランク22が取り付けられたピストン本体11は、第2フェイス21を正面にして下から上まで加熱冷却された円筒形状の円形装置31に押し込まれる。図4における、円形装置31の第1下加熱領域において、封止ブランク22は、熱供給と軸方向および径方向圧縮により、完成したピストン10の外周面15の領域における所望の外径に正確に較正され、図4における円形装置31の第2上冷却領域において、封止ブランク22は熱放散による制御の下で冷却される。このような円形装置は先行技術において公知であり、ここでは詳細は記述しない。
【0035】
第5ステップ105において、押さえつけられた封止ブランク22を有するピストン本体11が、第1フェイス20が上を向き、ピストン軸を中心として回転して、このため回転する円錐状のローラ28がピストン本体11の周面13と封止ブランク22の内周面16の間で上から押さえられ、その結果封止ブランク22の第1端が拡大する。
【0036】
第6ステップ106において、ブレード27を外側から径方向に封止ブランク22の第1端に押し付けながら、拡大された封止ブランク22を有するピストン本体11がピストン軸を中心として回転して、その結果封止ブランク22が第1端でカットされ、これによりカットがピストン10の縦軸に直角に行われる。この切断は、例えばここで行われるようにブレード27を用いた機械的なものであってもよく、および/またはここには示さないが少なくとも1つのレーザを用いてもよい。こうして、第1封止リップ19は周方向に一様な所望の輪郭形状に形成され、第1実施形態のピストン10が完成する。
【0037】
図6および7は、シリンダ25とピストン10とを備える第2実施形態のピストンシリンダ装置を示すが、これは第1実施形態に類似しており、以下ではその違いのみを詳細に説明する。本第2実施形態では、ピストン10は、図7に示すように、封止カラー12が第1封止リップ19に加えて第2周囲面18および外周面15に規定される第2封止リップ26を有するよう、径方向の中央面に対して対称に設計される。
【0038】
ここで第1および第2封止リップ19,26は同一の構成を有し、それぞれ外周面15から外側に向かって径方向に突出し、それぞれ縦断面において第1および第2周囲面17,18それぞれの隣接する領域と外周面15の隣接する周辺部との間に鋭角をなす輪郭形状を有する。ここで第1および第2周囲面17,18のいずれも、縦断面においてピストン10の縦軸に鋭角をなしている。
【0039】
図8および9は、図6の第2実施形態のピストン10の製造方法の2つのステップを示すが、これは第1実施形態に類似しており、以下ではその違いのみを詳細に説明する。本第2実施形態において、封止ブランク22の第2端を径方向に内側に向かって押し付ける第1実施形態の第2ステップは省略するが、これはこの第2端に第2封止リップ26を形成するためである。本第2実施形態において、第3のステップの較正後、図8に示す第4ステップにおいて、封止ブランク22の両端がカットされ、このカットはそれぞれピストンの縦軸に直角に切断する2つのブレード27によって機械的に行われる。ここで切断は機械的な回転、つまりピストン本体11が押さえられた封止ブランク22とともにピストン軸を中心に回転しているときに2つのブレード27が径方向に内側にピストン本体11に押し付けられることによって行われる。
【0040】
図9に示す第5ステップにおいて、一方では、第1および第2封止リップ19,26は、封止ブランク22の2つのカット端に所望の輪郭形状で形成される、他方では、封止ブランク22はその両端が拡大される。この場合、これは,2つの円錐状のローラ28によって機械的な回転により行われ、2つの円錐状のローラ28が、それぞれピストン軸を直角に切断する軸を中心に回転し、ピストン軸から離れる径方向つまり図9の左に向かって細くなる円筒表面を有し、それぞれ、押さえられた封止ブランク22を有するピストン本体11がピストン軸を中心に回転しているときに封止ブランク22の第1および第2カット端に上下から押さえつけられる。こうして、封止ブランク22の2端に2つの封止リップ19,26が形成され、第2実施形態のピストン10が完成する。
【0041】
図10は、第1周囲面17が径方向斜め内側および軸方向下向きに延びて、外周面15の隣接する周辺部に直角をなし、ピストン軸に鈍角をなす、別の縦輪郭形状を有する第1封止リップ19を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンシリンダ装置用のピストン(10)、特に緩衝ピストンであって、
周面(13)を有するピストン本体(11)と、
外周面(15)、内周面(16)、第1周囲面(17)、および第1封止リップ(19)を有し、前記ピストン本体(11)の前記周面(13)の周囲に延び、前記周面(13)の少なくとも一部を軸方向に覆う封止カラー(12)とを備え、
前記第1周囲面(17)は前記2つの周面(15,16)を封止カラー(12)の第1端で互いに接続し、
前記第1封止リップ(19)は前記第1周囲面(17)および前記外周面(15)により規定され、
前記第1封止リップ(19)が周方向に均一に構成されることを特徴とするピストンシリンダ装置用のピストン。
【請求項2】
前記第1封止リップ(19)が前記外周面(15)から外側に向かって径方向に突出することを特徴とする、請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
前記封止カラー(12)が前記第1端において拡大されていることを特徴とする、請求項1から2のいずれか1つに記載のピストン。
【請求項4】
前記第1封止リップ(19)が、縦断面において、前記第1周囲面(17)の隣接する周辺部と、前記外周面(15)の隣接する周辺部との間で鋭角、直角、鈍角のいずれかをなす輪郭形状を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載のピストン。
【請求項5】
前記第1周囲面(17)が、縦断面において、前記ピストン(10)の縦軸に対して鋭角、直角、鈍角のいずれかをなすことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載のピストン。
【請求項6】
前記ピストン本体(11)が前記封止カラー(12)の第1端に位置する第1フェイス(20)を備え、
前記封止カラー(12)が前記第1端の前記第1フェイス(20)を超えて軸方向に突出することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1つに記載のピストン。
【請求項7】
前記ピストン本体(11)が前記封止カラー(12)の第1端から軸方向に突出することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1つに記載のピストン。
【請求項8】
前記封止カラー(12)が、その第1端において、軸方向に、前記ピストン本体(11)よりも短いか、または前記ピストン本体(11)よりも長いか、または前記ピストン本体(11)と同じ長さであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1つに記載のピストン。
【請求項9】
前記封止カラー(12)が第2周囲面(18)と第2封止リップ(26)とを備え、
前記第2周囲面(18)が前記2つの周面(15,16)を前記封止カラー(12)の第2端で互いに接続し、
前記第2封止リップ(26)が前記第2周囲面(18)および前記外周面(15)により規定されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1つに記載のピストン。
【請求項10】
前記第1および前記第2封止リップ(19,26)が同様にまたは異なるように構成されていることを特徴とする、請求項9に記載のピストン。
【請求項11】
前記封止カラー(12)が、熱可塑性プラスチック材料、好ましくはフッ化炭化水素、さらに好ましくはPTFEからなることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1つに記載のピストン。
【請求項12】
前記ピストン本体(11)が、粉末冶金、好ましくは焼結により製造されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1つに記載のピストン。
【請求項13】
ピストン(10)、特に請求項1から11のいずれか1つに記載のピストン(10)の製造方法であって、
a)封止ブランク(22)とピストン本体(11)とを設け、
b)その後、前記封止ブランク(22)を前記ピストン本体(11)に向かって押し、
c)前記封止ブランク(22)を前記ピストン本体(11)に押し付ける製造方法において、
d)前記封止ブランク(22)を第1端でカットし、
e)所望の輪郭形状を有する第1封止リップ(19)を前記第1端に形成するステップを含むことを特徴とするピストン(10)の製造方法。
【請求項14】
前記ステップd)およびe)が連続してまたは同時に行われることを特徴とする、請求項13に記載のピストン(10)の製造方法。
【請求項15】
前記封止ブランク(22)が、円形ワッシャ、またはスリーブ、またはカップの形状をしていることを特徴とする、請求項13から14のいずれか1つに記載のピストン(10)の製造方法。
【請求項16】
前記ステップd)におけるカットが機械的におよび/またはレーザによって行われることを特徴とする、請求項13から15のいずれか1つに記載のピストン(10)の製造方法。
【請求項17】
f)前記封止ブランク(22)を前記第1端において拡大させるステップを含むことを特徴とする、請求項13から16のいずれか1つに記載のピストン(10)の製造方法。
【請求項18】
前記ステップf)が前記ステップd)の前または後に行われることを特徴とする、請求項17に記載のピストン(10)の製造方法。
【請求項19】
前記ステップe)およびf)が連続してまたは同時に行われることを特徴とする、請求項17または18に記載のピストン(10)の製造方法。
【請求項20】
g)前記封止ブランク(22)を第2端でカットし、
h)所望の輪郭形状を有する第2封止リップ(26)を前記第2端に形成するステップを含むことを特徴とする、請求項13から16のいずれか1つに記載のピストン(10)の製造方法。
【請求項21】
i)前記封止ブランク(22)の第2端を、前記ピストン本体(11)の前記周面(13)に構成された環状溝(14)に、少なくとも部分的に押し込むステップを含むことを特徴とする、請求項13から19のいずれか1つに記載のピストン(10)の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2010−534812(P2010−534812A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518508(P2010−518508)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003127
【国際公開番号】WO2009/015710
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(510025016)ゲーカーエン シンター メタルズ ホールディング ゲーエムベーハー (5)
【氏名又は名称原語表記】GKN SINTER METALS HOLDING GMBH
【Fターム(参考)】