説明

ピストン清浄性を強化した潤滑油

【課題】触媒変換装置類や微粒子除去装置類を効率的に働かせて汚染源を減らし、より良い環境を作り出すとともに、例えば、エンジン内部の摩擦を低減して燃費を向上させるような低SAPS潤滑剤組成物および添加剤を提供すること。
【解決手段】内燃機関に用いるのに適した下記の成分の混合物を含む潤滑剤組成物:(a)潤滑粘度を有する主要量の基油、(b)一以上の無灰分散剤、(c)一以上の金属含有清浄剤、および(d)ピストンの清浄性を向上させることのできる量の、ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との少なくとも一つの反応生成物、ただし、該ポリイソブチレンの数平均分子量は約200から約5000ドルトンである;ただし、潤滑剤組成物の総質量に対する潤滑剤組成物中のイオウ含有量は約0.3質量%以下、リン含有量は約0.09質量%以下、硫酸灰分含有量は約1.6質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑剤組成物に関する。より詳しくは、本発明は硫酸灰分、リン含有量、イオウ含有量が低レベル(低SAPS)であるにもかかわらず、内燃機関の潤滑を向上させる潤滑剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境問題についての関心が高まるにつれて、圧縮点火型(ディーゼル燃料)およびスパーク点火型(ガソリン燃料)内燃機関が排出する一酸化炭素(CO)、炭化水素およびチッ素酸化物(NOx)の量を低減させようとする努力が続けられている。また、同時に圧縮点火型ディーゼル燃料内燃機関が排出する微粒子を低減させようとする努力も続けられている。乗用車や他の自動車に対する最近の排出ガス基準に適合させるため、製造業者は排気ガス後処理装置を利用している。この排気ガス後処理装置としては、例えば、触媒変換装置や微粒子除去装置がある。
【0003】
典型的な触媒変換装置は、一つまたは複数の酸化触媒、NOx保持触媒、および/またはNH3還元触媒を有している。装置に内蔵される触媒は、一般に、白金のような触媒金属と金属酸化物の組合せで構成される。触媒変換装置は、排気システム、例えば、自動車の排気管に装着して有毒ガスを無毒化する。触媒変換装置を用いることは、地球温暖化を防ぐためにも、他の環境問題に対するためにも重要であると考えられている。しかしながら、触媒は、ある種の元素や化合物、特にリン化合物に接すると被毒したり、無力にはならないまでも、効力が低下する場合がある。多くの場合、排気ガス中にリン化合物が含まれるのは、添加剤中のリン含有添加剤が劣化していることが原因である。リン含有添加剤の例としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛類などが挙げられる。ジアルキルジチオリン酸亜鉛類は、潤滑油組成物中での性能と費用−効果の両面から最も有効で、従来から使用されてきた酸化防止剤および耐磨耗剤の一つである。しかし、ジアルキルジチオリン酸亜鉛類は効果的な酸化防止剤および耐磨耗剤ではあるが、これらがエンジン内にもたらすリン、イオウ、灰が触媒と反応し、触媒変換装置の稼働寿命を短くする可能性がある。実際、潤滑油を配合する際に用いられる基油とイオウ含有潤滑添加剤の両方が劣化することで生じる排気ガス中のイオウおよびイオウ化合物によって、還元触媒は容易に劣化する。イオウ含有潤滑添加剤の例としては、スルホン酸マグネシウムや他の硫酸塩またはスルホン酸塩清浄剤を挙げることが出来る。
【0004】
通常、微粒子除去装置類は、特にディーゼルエンジンの排気システムに装着してカーボンブラック粒子、その凝縮微粒子または凝集物(すなわち、ディーゼル煤)が環境中に排出されることを防止する。ディーゼル煤は空気、水および他の環境要素を汚染するだけでなく、発ガン物質として知られている。しかし、除去装置は、一般灰を生じる清浄添加剤などの金属含有潤滑添加剤の劣化によって生じる金属灰によって機能が損なわれることがある。
【0005】
後処理装置が長期にわたって稼働できるように、装置に及ぼす悪影響が最少であるような潤滑油添加剤を見出すことが望まれている。このため、製造業者は、しばしば「新規の」潤滑剤について、イオウ分、リン分および/または硫酸灰分に様々な上限を設けている。例えば、低負荷乗用車エンジン用には、イオウ分は約0.30質量%以下、リン分は約0.08質量%以下、硫酸灰分は約0.8質量%以下であることが一般的に求められる。ただし、潤滑剤組成物を高負荷エンジンに用いる場合は、イオウ分、リン分および/または硫酸灰分の上限はこれらと異なることもある。例えば、高負荷エンジン用では硫酸灰分の上限が1.0質量%にもなることがある。いずれにせよ上記のような潤滑油組成物はガソリン機関および/または低負荷ディーゼル機関用「低SAPS (sulfated ash[硫酸灰分], phosphorus[リン分], sulfur[イオウ分])」潤滑油組成物、あるいは高負荷ディーゼル機関用「低SAPS」または「LEDL (low emission diesel lubricant[低排出ディーゼル潤滑]」油組成物とも呼ばれる。いかなる潤滑油組成物に対してもSAPSレベルが測定できるように、様々な試験法が確立され、一般化されてきた。例えば、ヨーロッパにおいては、ACEA(欧州自動車工業会)のガソリンおよびディーゼル・エンジン用低SAPS規格に適合するためには、特に、ターボチャージャー付き直噴型フォルクスワーゲン・ディーゼルエンジンを長期にわたってアイドリングから最大出力までくり返し稼働させて、ピストンリングの膠着の程度と清浄性を測定する「CECL−78−T−99」試験に合格しなければならない。同様な規格や様々な厳格さを持った試験基準は、日本、カナダ、アメリカなど他の国々や地域にも存在する。
【0006】
もちろん、低SAPS環境基準を満たすだけでなく、適切な潤滑性能を示すことも必要である。自動車用スパーク点火型エンジンやディーゼルエンジンには、バルブ、カム、ロッカーアームなどからなるバルブ系があり、これらの部品はすべて潤滑して磨耗から保護する必要がある。さらに、エンジンオイルにはエンジンの清浄性を確保し、炭化水素燃料の不燃成分、不完全燃焼成分あるいはエンジンオイルの劣化によって生じる析出物の発生を抑制するために、充分な清浄性能が求められる。
【0007】
内燃機関のピストンを清浄にするものとして、数々の低SAPS添加剤および潤滑剤組成物が知られている。例えば、特許文献1にはXUD−IIBTE(CEL−L−56−T−98)試験において良好なピストン清浄性を与える低SAPS潤滑剤組成物が開示されている。この潤滑油組成物はイオウ分が最大0.3質量%、リン分が最大0.08質量%、硫酸灰分が最大0.80質量%で、組成物1kg当たりのサリチル酸金属塩の量は5ミリモル未満である。また特許文献2にも同様の長所をもつ低SAPS潤滑油組成物が開示されている。この組成物は(a)潤滑粘度を有する主成分オイル;(b)チッ素分が少なくとも0.075質量%になるような量の、分子量が約900から3000ドルトンのポリアルケニル骨格を有する少なくとも一つのチッ素含有分散剤;(c)チッ素:ホウ素の質量比が約3:1から約5:1になるような量の、油溶性もしくは油分散性ホウ素源;(d)酸化防止剤;および(e)ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛からなっている。さらに特許文献3に開示されている低SAPS潤滑油組成物は、(1)潤滑粘度を有する主成分オイル;(2)全塩基価(TBN)200から500を有し、得られる組成物のTBNを5.3から7.3にする過塩基性マグネシウム含有潤滑油清浄剤;および(3)2.5から4質量%の無灰分散剤からなっていて、ピストンの性能を向上させるとされている。
【0008】
低SAPS潤滑油組成物には、他にも所望の性質を付与できることが知られている。例えば、特許文献4では、この種のエンジンオイルで高い全塩基価(TBN)を有するものが報告されている。この組成物の硫酸灰分は0.9質量%以下で、リン分は0.04から0.1質量%である。この組成物は、基油;TBN値がそれぞれ独立に30から350mgKOH/gであるようなフェネート系清浄剤、サリシレート系清浄剤、スルホネート系清浄剤から選ばれる一以上の清浄剤;および少なくとも3.5質量%の、アミン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤からなる群より選ばれる一つまたは二つ以上の酸化防止剤からなっている。
【0009】
さらに、特許文献5では圧縮点火型ディーゼルエンジンにおけるMack T10スクリーニング・テストによる潤滑性能、特に、耐磨耗性に優れた低SAPS潤滑油組成物が開示されている。この低SAPS潤滑油組成物は、(1)潤滑粘度を有する主成分オイル;(2)少量のカルシウムサリシレート清浄剤;(3)少量の過塩基性マグネシウム清浄剤;(4)少量の、数平均分子量が1100ドルトン以下のポリマーから導かれる塩基性低分子量チッ素含有分散剤、からなっている。
【0010】
ところで、ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物は、その非カルボキシル化イソブチレン前駆体から得るのが一般的である。ポリイソブチレン類は、当業者にはポリイソブテン類として知られ、「ブチルゴム」と呼ばれ多用されている。潤滑剤および/または燃料添加剤の分野では、ポリイソブチレン類は分散剤、粘度向上剤、増粘剤などとして幅広く使用されてきた。ポリイソブチレン類の一般的な利用については非特許文献1、2にまとめられている。有用なポリイソブチレンは、一般にポリマー鎖のどこかに、ポリマー鎖1本当たり約1個の不飽和残基を有している。しかし、ポリイソブチレンは純粋なイソブチレン蒸気またはラフィネートI流から得て、末端にビニリデン・オレフィンを有する反応性イソブチレン・ポリマーになっていることが好ましい。このようなビニリデン・オレフィンを末端に有するポリイソブチレンは、しばしば「高反応性ポリイソブチレン」と呼ばれる。特に有用で好ましい高反応性ポリイソブチレンは、末端のビニリデンの量が少なくとも約50%で、例えば、約55%以上、約65%以上、約70%以上、あるいは約80%以上で、さらに好ましくは約85%以上である。このような高反応性ポリイソブチレンは、例えば、特許文献6、7などで述べられている公知の技術で得ることができる。これらの特許に記載された関連事項は、本明細書の開示や請求項に反しない範囲で本発明に利用することができる。高反応性ポリイソブチレンのなかには、例えば、商品名「GLISSOPAL」(BASF社)のように市販されているものもある。
【0011】
ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物、特に、無水コハク酸誘導体、すなわちポリイソブチレン無水コハク酸は無灰分散剤を作る際の前駆体として用いられてきた。例えば、特許文献8、9には、ある種のポリイソブチレン無水コハク酸、ポリエチレン・アミン(例、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン)およびアミノアルコール(例、トリメチロールアミノメタン)から一連の好ましいチッ素含有無灰分散剤を作ることが記載されている。
【0012】
また、ポリイソブチレン無水コハク酸は、他の物質に誘導することなく、そのまま直接に分散剤として利用されてきた。例えば、特許文献10には、(1)ポリアルキレン無水コハク酸、好ましくは、ポリイソブチレン無水コハク酸;(2)ポリアルキレン無水コハク酸のチッ素を含有しない誘導体;(3)ポリアルキレン無水コハク酸類の混合物;(4)ポリアルキレン無水コハク酸のチッ素を含有しない誘導体類の混合物;および(5)一つまたは二つ以上のポリアルキレン無水コハク酸と一つまたは二つ以上のポリアルキレン無水コハク酸のチッ素を含有しない誘導体の混合物、からなる群より選ばれるポリアルキレン無水コハク酸分散剤を含む分散剤混合物が開示されている。この分散剤は、耐水性およびアルカリ金属ホウ酸塩に対する潤滑油の相溶性を向上させると言われている。
【0013】
【特許文献1】米国特許公開2006/0052254(米国特許出願番号11/217,674)
【特許文献2】米国特許公開2006/0058200(米国特許出願番号11/218,647)
【特許文献3】米国特許公開2006/0068999(米国特許出願番号11/226,793)
【特許文献4】米国特許公開2006/0014653(米国特許出願番号11/176,424)
【特許文献5】米国特許公開2006/0116300(米国特許出願番号11/288,600)
【特許文献6】米国特許4152499
【特許文献7】米国特許4605808
【特許文献8】米国特許5827806
【特許文献9】米国特許6245725
【特許文献10】米国特許6632781
【非特許文献1】Chemistry & Technology of Petroleum Chemical Industries (石油化学工業の化学と技術)、76巻、第3版、第3.3節(846頁)、N.Y. Marcel Dekker, Inc., (ニューヨーク、マーセル・デッカー社)、1999年
【非特許文献2】Ulmann(ウルマン)著、Encyclopedia of Industrial Chemistry (工業化学事典)、Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA(ワイリー−VCH・フェアラーク社)、2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、触媒変換装置を保全する必要から、リン酸塩およびリン含有添加剤の使用は控えられてきた。しかし、潤滑剤中の酸化により生じた酸や極性酸化残滓浮遊物を中和する必要から、金属スルホネート系清浄剤のような清浄剤の使用が避けられない場合が多く、このような清浄剤は硫酸灰の原因となる。実際、最近の環境基準の大部分で許容される灰分は、適切な潤滑性能を得るのに必要な金属スルホネート清浄剤よりはるかに少ない。過塩基性清浄剤のレベルを下げれば灰分のレベルを下げられるが、同時に潤滑剤組成物の酸中和力も下げてしまい、エンジンのピストンや他の部品の酸による腐食を招く恐れがある。
【0015】
従って、触媒変換装置類や微粒子除去装置類を効率的に働かせて汚染源を減らし、より良い環境を作り出すとともに、例えば、エンジン内部の摩擦を低減して燃費を向上させるような低SAPS潤滑剤組成物および添加剤を見出すことは、とても有用である。環境基準と必要とされるエンジンの潤滑の両方を満足させるようなバランスや新たなアプローチが必要とされていることは明白である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物は、少なくとも一つの無灰分散剤、少なくとも一つの金属含有清浄剤、少なくとも一つの耐磨耗剤および少なくとも一つの酸化防止剤とともに用いると、内燃機関のピストン清浄性を著しく向上させることを見出した。従って、本発明は、このようなポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物と一連の添加剤群もしくは添加剤濃縮物とからなる、低硫酸灰、低リン、低イオウの潤滑剤組成物を提供するものである。また、本発明は、このような潤滑油組成物の使用法および製造法をも提供するものである。
【0017】
本発明は、ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物および一連の添加剤群もしくは添加剤濃縮物とからなる、低硫酸灰、低リン、低イオウの潤滑剤組成物を提供するものである。本発明の潤滑添加剤組成物はピストンの清浄性を著しく向上させるとともに、低SAPSをも満たすものである。本発明は、この潤滑油組成物の使用法および製造法も提供する。
【0018】
本発明が提供する潤滑剤組成物は、特に、機械が高温下で運転される際に、ピストンの清浄性を向上させるとともに、内燃機関内のリン分、イオウ分、硫酸灰分を低レベルにするものである。本発明の潤滑剤組成物中におけるリンのレベルは、約0.09質量%以下が一般的であり、好ましくは約0.08質量%以下、さらに好ましくは約0.07質量%以下、特に好ましくは約0.05質量%以下である。本発明の潤滑剤組成物によって生じるイオウのレベルは、約0.30質量%以下が一般的であり、好ましくは約0.20質量%以下、特に好ましくは約0.10質量%以下である。本発明の潤滑剤組成物によって生じる硫酸灰分のレベルは、約1.60質量%以下が一般的であり、好ましくは約1.00質量%以下、さらに好ましくは約0.80質量%以下、またさらに好ましくは約0.50質量%以下であり、特に好ましくは約0.45質量%以下である。本発明の態様の一つでは、硫酸灰分のレベルは約0.50から約1.60質量%、好ましくは約0.5から約0.8質量%となる。
【0019】
第一に、本発明の潤滑油組成物は:
潤滑粘度を有する主要量の基油;
一つもしくは二つ以上の清浄剤;
一つもしくは二つ以上の分散剤;および
ピストンの清浄性を向上できる量の、ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との少なくとも一つの反応生成物を含み;
前記ポリイソブチレンの数平均分子量が約200から約5000ドルトン、好ましくは約500から約4500ドルトンであって;
組成物総質量に対するリン含有量が約0.09質量%以下、イオウ含有量が約0.3質量%以下、硫酸灰分含有量が約1.6質量%以下である潤滑剤組成物である。
【0020】
ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物は下記の式Aまたは式Bのいずれかの式で表せる。
【0021】
【化1】

【0022】
ただし、R1は数平均分子量が約200から約5000ドルトン、好ましくは約500から約4500ドルトンのポリイソブチレン鎖、R2はカルボキシル含有基である。
【0023】
この態様の潤滑油組成物は、さらに(1)耐磨耗剤、(2)摩擦調整剤、(3)酸化防止剤、(4)腐食防止剤、(5)消泡剤、(6)シール固定剤またはシール調整剤、(7)流動点降下剤、(8)粘度指数向上剤、および(9)多機能添加剤から選ばれる一以上の添加剤を含有していてもよい。
【0024】
第二に、本発明は、基油のような有機希釈液中に添加するための、ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との少なくとも一つの反応生成物からなる添加物組成物もしくは濃縮物を提供する。この態様の添加物組成物もしくは濃縮物は、さらに、無灰分散剤、金属含有清浄剤、耐磨耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、消泡剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤およびシール固定剤またはシール調整剤のような潤滑油に求められる他の様々な添加剤を含んでいることが好ましい。
【0025】
第三に、本発明は、一以上の排気ガス後処理装置を備えた内燃機関を運転する方法であって、上記の潤滑剤組成物または上記の添加物組成物もしくは濃縮物を用いて潤滑な稼働をさせることを特徴とする方法にある。
【0026】
第四に、本発明は、上記の潤滑油組成物または上記の添加物組成物もしくは濃縮物を製造する方法にもある。
【0027】
本発明の他の目的、利点、特徴は以下の記述を参照することで、当業者には容易に理解することができるであろう。
【発明の効果】
【0028】
本発明の潤滑剤組成物は、リン分、イオウ分、硫酸灰分の高い従来の内燃機関潤滑油よりも、環境的観点から、より望ましいものである。また、本発明の組成物は所望のピストンを清浄に保つ一方で、触媒変換装置や微粒子除去装置の稼働寿命をより長くするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の様々な特徴および態様を以下に記述するが、下記の説明は本発明を制限するものではない。
【0030】
本発明は上記のような潤滑油組成物を提供する。この組成物の一般的な態様では、総イオウ含有量は約0.30質量%以下であるが、約0.20質量%以下や約0.10質量%以下の態様もある。本発明の組成物における主なイオウ源は基剤もしくは添加剤類であることが多い。典型的な本発明の組成物として、組成物の総質量に対して約0.2質量%のイオウが含まれているものを挙げることができる。
【0031】
また、本発明の組成物の一般的な態様では、総リン含有量は約0.09質量%以下であるが、約0.08質量%以下や約0.07質量%以下あるいは約0.05質量%以下の態様もある。典型的な本発明の組成物として、組成物の総質量に対して約0.07質量%のリンが含まれているものを挙げることができる。
【0032】
さらに、総硫酸灰分は、ASTM D−874によって定められる含有量で約1.60質量%以下が一般的であるが、約1.00質量%以下や約0.80質量%以下、約0.50質量%以下あるいは約0.45質量%以下の態様もある。典型的な本発明の組成物として、組成物の総質量に対して約0.6質量%の硫酸灰分が含まれているものを挙げることができる。また、組成物の総質量に対して約0.8質量%の硫酸灰分が含まれる本発明の組成物も典型的なものである。
【0033】
[潤滑粘度を有するオイル]
本発明の低SAPS潤滑油組成物は主成分(例えば、約50質量%以上)として一以上の基油を含んでいる。一般に、基油の量は組成物の約60質量%以上または約70質量%以上あるいは約80質量%以上である。基油のイオウ含有量は1.00質量%未満が一般的で、約0.60質量%未満が好ましく、約0.40質量%未満がさらに好ましく、約0.30質量%未満が特に好ましい。
【0034】
本発明の低SAPS潤滑油組成物の粘度は100℃で最大約16.3mm2/sにまですることができ、約5から約16.3mm2/s(cSt)である態様や約6から約13mm2/s(cSt)である態様もある。また、ASTM D4683による方法で測定した150℃における高温/高ズリ粘度は最大約4mm2/s(cSt)であり、最大約3.7mm2/s(cSt)であるような態様や約2から約4mm2/s(cSt)である態様、約2.5から約3.7mm2/s(cSt)の態様あるいは約2.6から約3.5mm2/s(cSt)の態様もある。
【0035】
本発明の潤滑剤組成物に用いられる基油は、イオウ含有量が低SAPS潤滑油組成物に求められる上記のイオウ含有量の上限を越えなければ、天然油、合成油、あるいはそれらの混合物のいずれでもよい。好ましい天然油としては、動物性油や植物油(例、ヒマシ油、ラード)などが挙げられる。また、液体石油オイルやパラフィン系、ナフテン系あるいはパラフィン−ナフテン混合系の溶媒処理または酸処理鉱油潤滑油のような鉱油系潤滑油でもよい。石炭や頁岩から得られるオイルを用いることもできる。
【0036】
合成油の例としては、高分子オレフィンのような炭化水素(例、ポリブチレン類、ポリプロピレン類、プロピレン・イソブチレン・コポリマーなど);ポリ(1−ヘキセン)類、ポリ(1−オクテン)類、ポリ(1−デセン)類、およびこれらの混合物;アルキルベンゼン類(例、ドデシルベンゼン類、テトラデシルベンゼン類、ジノニルベンゼン類、ジ−(2−エチルヘキシル)ベンゼン類など);ポリフェニル類(例、ビフェニル類、テルフェニル類、アルキル化ポリフェニル類など);アルキル化ジフェニルエーテル類およびその誘導体、類似体、同族体などが挙げられる。また、公知のフィッシャー・トロプシュの気体−液体合成法によって得られたオイルを用いることもできる。
【0037】
他の公知の合成潤滑油としては、エステル化やエーテル化などによって末端の水酸基を修飾したアルキレンオキシドのポリマー、インターポリマーまたはその誘導体を挙げることができる。このような合成油の例としては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを重合させて得られるポリオキシアルキレン・ポリマーやポリオキシアルキレン・ポリマーのアルキルおよびアリルエーテル類(例、分子量1000ドルトンのメチル−ポリイソ−プロピレングリコールエーテルまたは分子量1000から1500ドルトンのポリ−エチレングリコールのジフェニルエーテル);および、それらのモノ−、ポリ−カルボキシルエステル類(例、酢酸エステル、C3からC8の脂肪酸の混合エステル、テトラエチレングリコールのC13のオキソ酸ジエステル)などを挙げることができる。
【0038】
また、他の好ましい合成潤滑油としては、ジカルボン酸(例、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノレン酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸類、アルケニルマロン酸類)と種々のアルコール(例、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール・モノエーテル、プロピレングリコール)とのエステル類を挙げることができる。このようなエステルの具体例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノレン酸ダイマーの2−エチルヘキシル・ジエステル、および、1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコール、2モルの2−エチルヘキサノン酸とを反応させて得られる複合エステルなどが挙げられる。
【0039】
さらに、C5からC12のモノカルボン酸とポリオールとのエステルやネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールおよびトリペンタエリトリトールのようなポリオールエステルなども合成油として有用なエステルである。
【0040】
合成油はポリ−α−オレフィンであってもよい。このポリ−α−オレフィンは、炭素数4から30または炭素数4から20、あるいは炭素数6から16のモノマーから誘導するのが一般的である。有用なポリ−α−オレフィンの例としては、オクテン、デセン、および、これらの混合物などから誘導されるものが挙げられる。これらのポリ−α−オレフィンの粘度は、100℃で約2から約15mm2/s(cSt)または約3から約12mm2/s(cSt)あるいは約4から約8mm2/s(cSt)である。一以上の上記ポリ−α−オレフィンに鉱油を混ぜて用いてもよい。
【0041】
本発明の潤滑剤組成物には、上記の(二種あるいは三種以上の混合物も含めて)天然または合成油の未精製、精製、再精製油を使うことができる。未精製(もしくは粗)油は天然もしくは合成素材から精製処理することなく、直接に得ることができる。精製油は、1回以上の精製処理を行う以外は未精製油と同様にして得ることができる。精製処理としては多くのものが公知であり、例えば、溶媒抽出、二次蒸留、酸またはアルカリ抽出、ろ過、パーコレーションなどがある。再精製油は、一度使用されたものを再度使用できるように処理した油である。ほとんどの使用済み油には失活した添加剤や劣化物質が含まれているので、通常の精製処理に加えて、失活した添加剤や劣化物質を除去する処理を行わなければならない。このような再精製油は、再生油あるいは再処理油として知られている。
【0042】
[ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物]
内燃機関のピストン清浄性を所望のレベルにするような低SAPS潤滑油は、ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物を基油に配合することで得られることが判った。本発明で用いるポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物は下記の式Aまたは式Bのいずれかの式で表せる。
【0043】
【化2】

【0044】
ここで、R1はポリイソブチレン鎖、R2はカルボキシル含有基である。これにより、従来より少ない清浄剤や耐磨耗剤で最高レベルのエンジン性能を得ることができる。
【0045】
式Aおよび/または式BのR1はポリイソブチレン鎖を表す。このポリイソブチレン鎖を構成する好ましいポリイソブチレンは、数平均分子量が約200から約5000ドルトン、好ましくは約500から約4500ドルトン、特に好ましくは約1000から約3500ドルトンであれば、どのようなポリイソブチレンでもよい。典型的な本発明の潤滑油組成物として、数平均分子量が約2300ドルトンのポリイソブチレンを含むものを挙げることができる。
【0046】
式Aおよび/または式BのR2は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、無水ジカルボン酸、無水物生成物質またはその誘導体から導かれるカルボキシル含有基を表す。無水物生成性物質は、例えば、酸、無水物あるいは酸エステルである。より詳しくは、この無水物生成性物質としては:(1)C4からC20のモノ不飽和ジカルボン酸であって(a)カルボキシル基がビシニルで(すなわち、隣接する炭素原子に位置していて)、さらに(b)その隣接する炭素原子の少なくとも一方、好ましくは両方がモノ不飽和結合の一部になっているもの;(2)無水物のような(1)の誘導体および/または(1)とC1からC10のアルコールとのモノエステルまたはジエステル;(3)C3からC20のモノ不飽和モノカルボン酸であって、炭素−炭素二重結合がカルボキシル基と共役して−C=C−CO−構造を有しているもの;および(4)上記(3)とC1からC10のアルコールとのモノエステルまたはジエステルのような(3)の誘導体、などを一つまたは二つ以上用いることができる。(1)から(4)の物質を二つ以上、任意の割合で混ぜた混合物から式Aおよび/または式BのR2を得るような態様もある。ここでは、このような物質も「モノ不飽和アシル化剤」と呼んでいる。ポリイソブチレン骨格との反応で、モノカルボン酸、ジカルボン酸、無水物およびこれらの誘導体のモノ不飽和結合は、それぞれ飽和結合になる。その結果、例えば、無水マレイン酸はポリイソブチレン骨格が置換した無水コハク酸になり;アクリル酸はポリイソブチレン骨格が置換したプロピオン酸になる。典型的なモノ不飽和カルボン酸反応物としては、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロロマレイン酸、無水クロロマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、および上記の低級あるいは中級アルキル(例、C1からC10のアルキル)酸エステルなどが挙げられる。好ましいアルキル酸エステルの例としては、マレイン酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸メチルなどが挙げられる。特に好ましいモノカルボン酸−、ジカルボン酸−あるいは無水物−生成物質としては、無水マレイン酸が挙げられる。従って、ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物としては、ポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)が好ましい。
【0047】
本発明で用いるポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物は、公知の方法で得ることができる。例えば、式Aおよび/または式Bの高反応性ポリイソブチレン前駆体は、ポリイソブチレン・オリゴマーの分子量に応じて予め定められた温度でカチオン重合反応によって合成できる。また、平均分子量が約2300ドルトンのポリイソブチレンは、約5°F(−15℃)で合成できる。重合を進めるためにBF3のような触媒がしばしば用いられる。この触媒は反応終了後に、例えば、熱い蒸留水相に溶解しているものを抽出するなどして除去するのが一般的である。反応器中にヘキサンやイソプロパノールなどの物質を供給するような態様の重合反応もある。未反応のイソブチレン単量体などの未反応の反応物残滓は、例えば、フラシュドラムによる気液分離および/または抽出カラムなどの公知の方法によってポリイソブチレン・オリゴマー類から分離、精製することが多い。また、例えば、商品名「グリッソパル(GLISSOPAL)」(BASF社)のように市販されている高反応性ポリイソブチレンもある。
【0048】
上記のような高反応性ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物は公知の方法によって得ることができる。例えば、ポリイソブチレンの無水コハク酸誘導体(すなわち、ポリイソブチレン無水コハク酸)は米国特許6,245,724、6,933,351、6,156,850などに記載されている方法で得ることができる。これらの特許に記載された関連事項は、本明細書の開示や請求項に反しない範囲で本発明に利用することができる。特に、ポリイソブチレンをスルホン酸あるいは他の一以上の強酸の存在下で、無水マレイン酸と高温で反応させる触媒「熱」もしくは「エン」反応によってポリイソブチレン無水コハク酸を合成することができる。この反応では、一定の範囲の見かけのコハク酸比でポリイソブチレン無水コハク酸を作ることができる。見かけのコハク酸比は、例えば、スルホン酸あるいは他の一以上の強酸を反応器に加えるのにかける時間、無水マレイン酸:ポリイソブチレンの電荷モル比、あるいは反応時間などの反応パラメーターを変更することで調整することができる。当業者であれば、見かけのコハク酸比は約1から約2の範囲であることが好ましく、より好ましくは約1.2から約1.6、さらに好ましくは約1.3から約1.4の範囲であることは理解できるであろう。様々なポリイソブチレン無水コハク酸が、シェブロン・オロナイト社のような業者によって市販されている。
【0049】
ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物は、ピストン清浄性を実質的に向上させ、内燃機関内の清浄性を維持するのに充分な量で本発明の潤滑油組成物中に含まれることが好ましい。ここで「実質的に向上」とは、ヨーロッパにおけるACEA規格や日本におけるJASO規格のような様々な国や地域の基準に照らしてピストンの清浄性が測定できる程度に向上していることを意味する。一以上のポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物の量は、好ましくは約0.01から約5.00質量%、より好ましくは約0.50から約4.00質量%、とくに好ましくは約1.00質量%から2.50質量%である。典型的な本発明の潤滑油組成物として、ポリイソブチレン鎖の数平均分子量が約2300ドルトンであるポリイソブチレン無水コハク酸を約2.00質量%含むものを挙げることができる。
【0050】
[金属含有清浄剤]
金属含有または灰生成性清浄剤は、清浄剤として機能して析出物を低減もしくは除去するだけでなく、酸中和剤もしくは防錆剤として機能して磨耗や腐食を低減させてエンジン寿命を延ばす働きもある。一般に、清浄剤は有機酸の金属塩からなる極性部分と長鎖の疎水部分とで構成されている。本発明の組成物は一つまたは二つ以上の清浄剤を含有しており、通常、その清浄剤は塩で、特には過塩基性塩である。過塩基性塩または過塩基性物質は、単相で、金属含量が特定の酸性有機化合物と化学量論的に結合する量よりも過剰に存在することを特徴とする均一ニュートン系をなしている。過塩基性物質は、酸性物質(無機酸もしくは低級カルボン酸が一般的で、好ましくは二酸化炭素)を酸性有機化合物と、化学量論的に過剰な金属塩基または促進剤の存在下で、少なくとも一つの不活性有機溶媒(鉱油、ナフサ、トルエン、キシレンなど)からなる反応媒体中で反応させることで得られる。
【0051】
本発明で用いる過塩基性組成物を得るのに有用な酸性有機化合物としては、カルボン酸類、スルホン酸類、リン含有酸類、フェノール類、および、これらの混合物などが挙げられる。酸性有機化合物は、カルボン酸類、スルホン基またはチオスルホン基を有するスルホン酸類(例、ヒドロカルビル置換ベンゼンスルホン酸)あるいはヒドロカルビル置換サリチル酸類であることが好ましい。
【0052】
サリシレートのようなカルボキシレート清浄剤は、酸化物あるいは水酸化物のような適当な金属化合物と芳香族カルボン酸とを反応させることで得ることができる。その後に公知の方法によって中性もしくは過塩基性生成物にしてもよい。芳香族カルボン酸の芳香族部分にはチッ素や酸素のようなヘテロ原子が含まれていてもよい。ただし、炭素原子のみからなっていることが好ましい。芳香族部分はベンゼンのような6個もしくはそれ以上の炭素原子からなっていることが、さらに好ましい。芳香族カルボン酸には、一以上のベンゼン環のような芳香族部分を有していてもよく、複数の芳香族部分は縮合していても、また、アルキレン基で連結していてもよい。芳香族カルボン酸の例としては、ヒドロカルビル置換サリチル酸やその誘導体のようなサリチル酸類やその硫化誘導体類を挙げることができる。例えば、ヒドロカルビル置換サリチル酸を硫化する方法は公知である。一般に、サリチル酸類はフェノキシドを、例えば、コルベ−シュミット反応によってカルボキシル化することで得られる。この場合、サリチル酸類は未カルボキシル化フェノールとの希薄混合物中から得られる。
【0053】
スルホネートは、石油の分留や芳香族炭化水素のアルキル化によって得られるようなスルホン酸アルキル置換芳香族炭化水素中にスルホン酸を加えることで得ることができる。スルホン酸アルカリールは、アルキル置換芳香族部分一つに対して、通常、約9個から約80個以上、好ましくは約16個から約60個の炭素原子を有する。
【0054】
フェノールおよび硫化フェノールの金属塩は、酸化物や水酸化物のような適当な金属化合物との反応で得ることができる。公知の方法によって中性もしくは過塩基性生成物を得てもよい。硫化フェノールは、例えば、イオウもしくは硫化水素、モノハロゲン化イオウあるいはジハロゲン化イオウのようなイオウ含有化合物とフェノールを反応させて得ることができる。この反応の生成物は、二つ以上のフェノールがイオウを含んだ連結基によって連結された化合物類の混合物である。
【0055】
過塩基性塩を作るのに有用な金属化合物は、一般に、元素周期律表の1族または2族金属化合物である。金属化合物の1族金属としては、1a族のアルカリ金属(例、ナトリウム、カリウム、リチウム)および銅のような1b族金属が挙げられる。1族金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムおよび銅が好ましく、ナトリウムまたはカリウムが好ましく、ナトリウムが特に好ましい。金属塩基の2族金属としては、2a族のアルカリ土類金属(例、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)および亜鉛やカドミウムのような2b族金属が挙げられる。2族金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムまたは亜鉛が好ましく、マグネシウムまたはカルシウムがより好ましく、カルシウムが特に好ましい。
【0056】
過塩基性清浄剤の例としては、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、カルシウムサリシレート、カルシウムステアレート、および、これらの混合物が挙げられるが、これらは本発明を制限するものではない。本発明の潤滑油に好適に用いられる過塩基性清浄剤は、低過塩基性(全塩基価TBNが約100未満)でもよい。このような低過塩基性清浄剤のTBNは、約5から約50、または約10から約30、あるいは約15から約20でもよい。一方、本発明の潤滑油に好適に用いられる過塩基性清浄剤は、高過塩基性(TBNが約100以上)でもよい。このような高過塩基性清浄剤のTBNは、約150から約450、または約200から約350、あるいは約250から約280でもよい。TBNが約17の低過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤およびTBNが約260の高過塩基性硫化カルシウムフェネート清浄剤は、本発明の潤滑剤組成物に用いられる二つの代表的な過塩基性清浄剤である。本発明の潤滑油組成物は、二つ以上の過塩基性清浄剤を含有していてもよく、それらはすべて低TBN清浄剤でも、すべて高TBN清浄剤でも、あるいはそれらの混合物でもよい。
【0057】
本発明の潤滑油組成物に過塩基性清浄剤を用いる場合、その量は約0.05から約16mM、または約3から約15mM、あるいは約4から約14mMでもよい。約4mMの低TBN清浄剤と約10mMの高TBN清浄剤含む潤滑油組成物は本発明の典型的な態様である。
【0058】
本発明の潤滑油組成物に用いられる清浄剤としては、フェネート/サリシレート、スルホネート/フェネート、スルホネート/サリシレート、スルホネート/フェネート/サリシレートなどの「ハイブリッド」清浄剤も好適である。ハイブリッド清浄剤については、例えば、米国特許6153565、6281179、6429178および6429179号明細書に記載されている。これらの特許に記載された関連事項は、本明細書の開示や請求項に反しない範囲で本発明に利用にすることができる。
【0059】
[無灰分散剤]
一般に分散剤は、運転中の酸化によって生じる不溶物の懸濁、浮遊状態を維持して、エンジンの金属部分にスラッジが凝集、沈殿、析出することを防止するために用いられる。チッ素含有無灰(金属不含有)分散剤は塩基性で、硫酸灰を増加させることなく、配合する潤滑剤組成物のTBNを増加させる。無灰分散剤は、一般に、分散させようとする粒子と結合できる官能基を有する油溶性高分子炭化水素骨格を持っている。多くのタイプの無灰分散剤が知られている。
【0060】
代表的な分散剤としては、アミン類、アルコール類、アミド類、および高分子骨格に極性部分が連結基によって結合したエステルなどが挙げられるが、これらは本発明を制限するものではない。本発明に用いられる無灰分散剤は、例えば、油溶性塩類、エステル類、アミノエステル類、アミド類、イミド類、長鎖炭化水素が置換したモノおよびジカルボン酸またはその無水物のオキサゾリン類;脂肪族炭化水素またはポリアミンが直接に結合した長鎖炭化水素のチオカルボン酸塩誘導体;およびホルムアルデヒドおよびポリアルキレンポリアミンと長鎖置換フェノールとを縮合することで得られるマンニッヒ縮合生成物から選んでもよい。
【0061】
「カルボン酸分散剤」は、34個以上、好ましくは54個以上の炭素原子からなるカルボン酸アシル化剤(酸、無水物、エステルなど)とチッ素含有化合物(例、アミン)、有機ヒドロキシ化合物(例、モノヒドロまたポリヒドロアルコール、フェノールまたはナフトール含有芳香族化合物)および/または塩基性無機物質との反応生成物である。このような反応生成物には、イミド類、アミド類およびエステル類などがある。
【0062】
コハク酸イミド分散剤はカルボン酸分散剤の一種であり、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤と、有機ヒドロキシ化合物またはチッ素原子に連結した少なくとも一つの水素を有するアミンあるいはこれらヒドロキシ化合物とアミンとの混合物とを反応させることで得られる。「コハク酸アシル化剤」とは、炭化水素置換コハク酸または酸それ自体を含むコハク酸生成化合物を意味する。このような物質としては、ヒドロカルビル置換コハク酸、無水物、エステル(半エステルを含む)およびハロゲン化物が代表的である。
【0063】
コハク酸系分散剤は様々な化学構造を有しているが、例えば、以下の様な式で表すことができる。
【0064】
【化3】

【0065】
ここで、R1はそれぞれ独立にポリオレフィン誘導基のようなヒドロカルビル基である。ヒドロカルビル基としてはポリイソブチル基のようなアルキル基が代表的である。換言すると、R1基は約40から約500個の炭素原子を有していてもよく、これらの炭素原子は脂肪族骨格を形成していてもよい。R2はアルキレン基であり、エチレン(C24)基が一般的である。コハク酸イミド分散剤については、米国特許4234435、3172892および6165235に詳細な記載がある。これらの特許に記載された関連事項は、本明細書の開示や請求項に反しない範囲で本発明に利用にすることができる。
【0066】
置換基が誘導されるポリアルケンとしては、炭素数2から16、好ましくは2から6の重合性オレフィンモノマーのホモポリマーまたはインターポリマーが代表的である。コハク酸系アシル化剤と反応してカルボン酸分散剤組成物を形成するアミンはモノアミンでもポリアミンでもよい。
【0067】
アミド官能性がアミン塩、アミド、イミダゾリンおよびそれらの混合物の形で発揮させるのに対して、コハク酸イミド分散剤は通常、大量のチッ素を含有してイミド官能性を持っているため、この名前で呼ばれている。コハク酸イミド分散剤を合成するためには、通常は液体の実質的に不活性な有機溶媒/希釈剤の存在下で一つまたは二つ以上のコハク酸生成化合物と一つまたは二つ以上のアミンとを加熱し、通常、水を除去する。反応温度は、一般に約80℃から、普通、約100℃から約300℃である反応混合物もしくは生成物の分解温度までの範囲である。本発明に用いるコハク酸イミド分散剤の合成については、例えば、米国特許3172892、3219666、3272746、4234435、6440905および6165235に詳細な記載がある。これらの特許に記載された関連事項は、本明細書の開示や請求項に反しない範囲で本発明に利用にすることができる。
【0068】
好ましい無灰分散剤としては、比較的高分子量の脂肪族ハロゲン化物およびアミン類、好ましくはポリアルキレンポリアミン類の反応生成物であるアミン分散剤も挙げられる。この例は、例えば、米国特許3275554、3438757、3454555および3565804などに記載されている。これらの特許に記載された関連事項は、本明細書の開示や請求項に反しない範囲で本発明に利用にすることができる。
【0069】
さらに、炭素数30以上のアルキル基を有するアルキルフェノールとアルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)およびアミン類(特に、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である「マンニッヒ分散剤」も好ましい無灰分散剤である。これらの分散剤については、例えば、米国特許3036003、3586629、3591598および3980569などに記載されている。これらの特許に記載された関連事項は、本明細書の開示や請求項に反しない範囲で本発明に利用にすることができる。
【0070】
また、カルボン酸、アミンあるいはマンニッヒ分散剤をジメルカプトチアゾール、尿素、チオ尿素、二硫化炭素、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸類、ニトリルエポキシド類、ホウ素化合物類などの試薬と反応させて得られる後処理分散剤も好ましい無灰分散剤である。後処理分散剤については、例えば、米国特許3329658、3449250および3666730などに記載されている。これらの特許に記載された関連事項は、本明細書の開示や請求項に反しない範囲で本発明に利用にすることができる。
【0071】
さらにまた、メタアクリル酸デシル、ビニルデシルエーテルおよび高分子量オレフィンなどの油溶性モノマーと極性置換基を有するモノマーとのインターポリマーである高分子分散剤も好ましい無灰分散剤である。高分子分散剤については、例えば、米国特許3329658、3449250および3666730などに記載されている。これらの特許に記載された関連事項は、本明細書の開示や請求項に反しない範囲で本発明に利用にすることができる。
【0072】
無灰分散剤として、エチレンカーボネートで処理したビスコハク酸イミドを用いたものも典型的な本発明の潤滑油組成物である。本発明で用いる無灰分散剤は高分子でないもの(例えば、モノ−またはビス−コハク酸イミド)が好ましい。
【0073】
無灰分散剤の量は、約0.5から約10.0質量%であり、約3.0から約7.0質量%が好ましい。数平均分子量が約2300ドルトンのポリイソブチレン鎖を有するポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA2300)から誘導されたビスコハク酸イミドをエチレンカーボネートで処理したものを約6.5質量%含む潤滑油組成物は、本発明の典型的な態様の一つである。また、他の典型的な本発明の潤滑油組成物として、数平均分子量が約1300ドルトンのポリイソブチレン鎖を有するポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA1300)から誘導されたホウ酸ビスコハク酸イミドを約6.0質量%の上記分散剤と組み合わせて用いたものも挙げることができる。潤滑油組成物中の分散剤由来チッ素量は全チッ素含有量の、好ましくは約0.01から約0.35質量%、より好ましくは約0.05から約0.25質量%、特に好ましくは約0.08から約0.12質量%である。
【0074】
[他の添加剤]
本発明の潤滑油組成物は、他の様々な添加剤を適宜に含有していてもよい。このような添加剤の例としては、耐磨耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤、粘度指数向上剤、および、内燃機関を潤滑するのに一般に用いられる他の添加剤を挙げることができるが、これらは本発明を制限するものではない。
【0075】
[耐磨耗剤]
耐磨耗剤および酸化防止剤としては、ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩がよく用いられる。金属としては、アルカリまたはアルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅などが挙げられる。潤滑油には亜鉛塩がもっとも一般的に用いられ、その量は潤滑油組成物の総質量に対して約0.1から約10質量%、好ましくは約0.2から約2質量%である。この亜鉛塩は公知の方法によって得られる。すなわち、まず一以上のアルコールまたはフェノールをP25と反応させてジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、得られたDDPAを亜鉛化合物で中和する。例えば、ジチオリン酸は第1級および第2級アルコールの混合物を反応させて得ることができる。あるいは、第2級アルコール上にあるヒドロカルビル基と第1級アルコール上にあるヒドロカルビル基とで多価ジチオリン酸を合成することもできる。亜鉛塩を作るためには、いかなる塩基性または中性亜鉛化合物を使用することもできるが、酸化物、水酸化物あるいは炭酸塩がもっともよく用いられる。中和のために過剰量の塩基性亜鉛化合物が使われるため、市販の添加剤には過剰量の亜鉛が含まれていることが多い。
【0076】
好ましい油溶性ジアルキルジチオリン酸亜鉛は下記の式で表されるジアルキルジチオリン酸類から得られる。
【0077】
【化4】

【0078】
ジアルキルジチオリン酸類は、一般にROHまたはR’OHで表されるヒドロキシアルキル化合物から誘導することができる。ここでRまたはR’はアルキルもしくは置換アルキルで、好ましくは炭素数3から30の分鎖または非分鎖アルキルで、さらには炭素数3から8の分鎖または非分鎖アルキルであることがより好ましい。
【0079】
ヒドロキシアルキル化合物類の混合物を用いてもよい。これらのヒドロキシアルキル化合物類はモノヒドロキシアルキル化合物でなくてもよい。すなわち、ジアルキルジチオリン酸類はモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−および他のポリヒドロキシアルキル化合物、もしくはこれらの二つあるいはそれ以上の化合物の混合物から得てもよい。ジアルキルジチオリン酸亜鉛を第1級アルキルアルコール類のみから誘導する場合、単一の第1級アルキルアルコールから得ることが好ましい。このような第1級アルキルアルコールとしては2−エチルヘキサノールが好ましい。ジアルキルジチオリン酸亜鉛を第2級アルキルアルコール類のみから誘導する場合は、第2級アルキルアルコールの混合物から得ることが好ましい。このような第2級アルキルアルコールの混合物としては2−ブタノールと4−メチル−2−ペンタノールの混合物が好ましい。
【0080】
ジアルキルジチオリン酸を合成する際に用いる五硫化リン反応物は、P23、P43、P47あるいはP49などを少量含んでいてもよい。また、このような組成物には遊離のイオウが含まれていてもよい。
【0081】
本発明の潤滑油組成物は、多量のリンを発生するかなりの量のジアルキルジチオリン酸亜鉛の存在下でも優れた耐磨耗性を実現できるが、低SAPS配合、すなわち、リン成分が約0.08質量%以下であることが特に優れた点である。従って、本発明の潤滑油組成物ではリン含有量は約0.08質量%以下、好ましくは約0.03から約0.075質量%の範囲にある。典型的な本発明の潤滑油組成物として、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の量が約11.5mMのものを挙げることができる。
【0082】
[粘度指数調整剤]
粘度指数調整剤(VM)もしくは粘度指数向上剤(VII)として機能するある種の高分子物質を配合すると基油の粘度は増加もしくは向上する。粘度指数調整剤として有用な高分子物質は、一般に数平均分子量(Mn)が約5000から約250000、好ましくは約15000から約200000、さらに好ましくは約20000から約150000ドルトンのものである。このような粘度調整剤は、例えば、無水マレイン酸のようなグラフト剤でグラフト重合されていてもよい。グラフト剤は、例えば、アミン類、アミド類、チッ素含有ヘテロ環化合物、アルコールなどと反応して多機能性粘度調整剤(分散−粘性調整剤)を形成することができる。
【0083】
典型的な本発明の潤滑油組成物には様々なポリアルキルメタアクリレート共重合体が利用されるが、この共重合体は無水マレイン酸でグラフト重合されていても、いなくてもよい。共重合体は潤滑油組成物の約0.1から約10質量%の範囲で用いることができる。
【0084】
[摩擦調整剤]
さらに、本発明の潤滑油組成物にはイオウ含有モリブデン化合物が配合されていてもよい。ある種のイオウ含有有機モリブデン化合物は潤滑油組成物中で摩擦調整剤として機能し、場合によっては酸化防止や耐磨耗作用もあることが知られている。このような油溶性有機モリブデン化合物の例としては、ジチオカルバミン酸塩類、ジチオリン酸塩類、ジチオホスフィン酸塩類、キサンテート類、チオキサンテート類、硫化物類、およびこれらの混合物などを挙げることができる。
【0085】
油溶性または油分散性の三核モリブデン化合物は、適当な液体/溶媒中で(NH42Mo313n(H2O)[ただし、nは0から2の間の数で、非化学量論的な数を含む]のようなモリブデン源をテトラアルキルチウラムジスルフィドのような適当な配位子源と反応させて得ることができる。また、適当な溶媒中で(NH42Mo313n(H2O)のようなモリブデン源、テトラアルキルチウラムジスルフィドやジアルキルジチオカルバミン酸塩あるいはジアルキルジチオリン酸塩のような配位子源、およびシアン化物イオン、硫化物イオンあるいは置換ホスフィンのようなイオウ引き抜き試薬とを反応させて油溶性または油分散性三核モリブデン化合物を得ることができる。あるいは、[M’]2[Mo376](M’は対イオン、AはCl、BrあるいはIのようなハロゲン)のような三核モリブデン−イオウハロゲン化物塩を適当な液体/溶媒中でジアルキルジチオカルバミン酸塩やジアルキルジチオリン酸塩のような配位子源と反応させて油溶性または油分散性三核モリブデン化合物を形成してもよい。適当な液体/溶媒中としては、例えば、水性もしくは有機溶剤が挙げられる。
【0086】
ここで用いられる「油溶性」または「油分散性」とは、必ずしも、化合物や添加剤が任意の比率で油中に溶解する、溶解しない、混和する、あるいは懸濁することを意味するものではなく、油を使用する環境下で化合物や添加剤が充分に意図した作用を発揮できる程度に溶解もしくは安定に分散することを意味している。さらに、所望により他の添加物を追加的に加えて、特定の添加物がさらに高レベルで含まれるようにしてもよい。
【0087】
典型的な本発明の潤滑油組成物としては、モリブデンコハク酸イミドを摩擦調整剤として用いたものを挙げることができる。モリブデン錯体の量は、潤滑油組成物の約0.15から約0.55質量%、好ましくは約0.28から約0.45質量%の範囲である。
【0088】
[酸化防止剤]
酸化防止剤または酸化阻害剤は、鉱油が使用中に劣化するのを防止する。このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、好ましくはC5からC12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、油溶性フェニル酸塩または硫化フェニル酸塩、ホスホ硫化もしくは硫化炭化水素またはエステル類、リン酸エステル、チオカルバミン酸金属塩、および、例えば、米国特許4867890に記載の油溶性銅化合物などを挙げることができる。
【0089】
また、少なくとも二つの芳香族基がチッ素原子に直接に連結している芳香族アミン類も、抗酸化作用を持つ化合物としてよく用いられる。少なくとも二つの芳香族基がチッ素原子に直接に連結している芳香族アミン類としては、炭素数6から16のものが典型的である。このようなアミン類は2個以上の芳香族基を有していてもよい。芳香族環は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、水酸基およびニトロ基から選ばれる一つまたは二つ以上の基によって置換されていることが多い。
【0090】
本発明の潤滑油組成物は、組成物の総質量に対して、好ましくは約0.05から約5.00質量%、さらに好ましくは約0.10から約3.00質量%、特に好ましくは約0.20から約0.80質量%のフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤あるいはこれらの混合物を含有していてもよい。典型的な本発明の潤滑油組成物としては、酸化防止剤としてジ−C8−ジフェニルアミンを約0.40質量%含むものを挙げることができる。また、酸化防止剤としてジノニルジフェニルアミンを約0.30質量%含む潤滑油組成物も典型的である。
【0091】
本発明の組成物に追加的な添加剤を加えることで、内燃機関で使用する際に低SAPS性に加えて求められる性能を得ることもできる。そのような追加的な添加剤としては、例えば、防錆剤、消泡剤、およびシール固定剤またはシール調整剤などを挙げることができる。
【0092】
防錆剤または腐食防止剤としてはノニオン性ポリオキシエチレン界面活性剤を用いることができる。ノニオン性ポリオキシエチレン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートおよびポリエチレングリコールモノオレエートを挙げることができるが、これらは本発明を制限するものではない。さらに、例えば、ステアリン酸および他の脂肪酸類、ジカルボン酸類、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステルおよびリン酸エステル類も、防錆剤または腐食防止剤として用いることができる。典型的な本発明の潤滑油組成物としては、ステアリン酸カルシウム塩を用いたものを挙げることができる。
【0093】
消泡剤としては、アルキルメタクリレートポリマー類やジメチルシリコーンポリマー類が典型的である。典型的な本発明の潤滑油組成物としては、シリコン系消泡剤を組成物の総質量に対して約5から約40ppm、好ましくは約8から約35ppm、さらに好ましくは約10から約25ppmの範囲で含むものを挙げることができる。
【0094】
シール固定剤は、シール膨潤剤あるいはシール調整剤とも呼ばれる。シール固定剤はエラストマーによる封止を確保して、漏れや滲み出しを防止するために潤滑剤や添加剤組成物によく用いられる。シール膨潤剤としては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレートのような油溶性飽和脂肪族または芳香族炭化水素エステル、トリデシルアルコールのような脂肪族アルコールと鉱油の組合せ、ヒドロカルボニル置換フェノールとトリホスファイトエステルとの組合せ、およびジ−2−エチルヘキシルセバケートなどを挙げることができる。
【0095】
上記の添加剤の中には、例えば、一つの添加剤が分散剤としても酸化防止剤としても働くような、多機能性を有するものもある。このような多機能性添加剤はよく知られている。
【0096】
潤滑剤組成物が一つまたは複数の上記の添加剤を含有する場合、それぞれの添加剤は目的とする機能が発揮できる量で基油に配合されるのが一般的である。必ずしも必須ではないが、加える添加剤類を含む添加剤濃縮物(しばしば添加剤パッケージとよばれる濃縮物)を調製することで、複数の添加剤を同時に基油に加えて潤滑油組成物が得られるようにすることが好ましい。最終的に得られる組成物中の添加剤類の濃度は、約5から約30質量%、好ましくは約5から約25質量%、典型的には約10から約20質量%であり、これら以外は潤滑粘度を有するオイルである。上記の成分はどのような順序で配合してもよく、組み合わせて配合してもよい。
【0097】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらは本発明を限定するものではない。すなわち、以下に特定の態様を用いて本発明を説明するが、本出願は特許請求の範囲と精神から逸脱しない限り、当業者による様々な変更や置き換えを包含するものである。
【実施例】
【0098】
[実施例1]
下記オイルAを調製し、欧州自動車工業会(ACEA)が2004年に発表したACEA−B規格の一部であるヨーロッパ乗用車用ディーゼルエンジン試験(CEL−L−78−T−99)、すなわちフォルクスワーゲン・ターボチャージャー付きDI試験によってピストンの清浄性およびピストンリング膠着性をテストした。この試験によって、高速運転とアイドリングとのくり返しをシュミレーションした。まず、フォルクスワーゲン社製1.9リットル直列4気筒ターボチャージャー付き直噴型自動車ディーゼルエンジン(VW TDI)をエンジン動力計装置に設置し、油だめ温度40℃のアイドリング状態30分間と油だめ温度145℃のフルパワー状態(4150rpm)150分間とからなる2つの運転をオイル補給することなく54時間くり返した。その後、ピストンに析出した炭素やラッカーおよびリング溝に堆積した炭素によって評価した。ピストンリングについてはリングの膠着で評価した。このVW TDIエンジンのピストン清浄性とリング膠着についての試験は、比較用のオイルBにも行った。結果は表1に示した。
【0099】
VW TDIエンジンのピストン清浄性とリング膠着性試験において、オイルAは比較例のオイルBよりも飛躍的に改良されている。
【0100】
オイルA:数平均分子量が約2300ドルトンのポリイソブチレンから誘導されたポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA2300)を1.50質量%と、エチレンカーボネート処理ビスコハク酸イミド分散剤、低過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤、過塩基性硫化および炭酸化カルシウムフェネート、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛、モリブデンコハク酸イミド、ジ−C8−ジフェニルアミン酸化防止剤、シリコン系消泡剤、エチレンポリマー、防錆剤および鉱油系基油からなる潤滑油組成物を調製した。このオイルAの硫酸灰分は約0.78質量%、チッ素含有量は約0.092質量%、イオウ含有量は約0.183質量%、そしてリン含有量は約0.071質量%であった。
【0101】
比較用のオイルB:PIBSA2300を配合しなかった以外は、上記のオイルAと同様にして潤滑油組成物を調製した。このオイルBの硫酸灰分は約0.78質量%、チッ素含有量は約0.092質量%、イオウ含有量は約0.183質量%、そしてリン含有量は約0.071質量%であった。
【0102】
表1 VW TDIエンジンによる試験 SAE:5W30
────────────────────────────────────
成分 オイルA オイルB
────────────────────────────────────
PIBSA2300 1.50質量% 無配合
ビスコハク酸イミド分散剤 6.50質量% 6.50質量%
低TBNカルシウムスルホネート 4mM 4mM
カルシウムステアレート 35mM 35mM
高TBN硫化&炭酸化カルシウムフェネート 10mM 10mM
ジアルキルジチオリン酸亜鉛 11.5mM 11.5mM
モリブデンコハク酸イミド 0.37質量% 0.37質量%
ジ−C8−ジフェニルアミン 0.40質量% 0.40質量%
シリコン系消泡剤 25ppm 25ppm
エチレンポリマー 0.84質量% 0.82質量%
希釈油 0.71質量% 0.71質量%
────────────────────────────────────
試験時間 54時間 54時間
ピストン清浄性メリット評点 63 57
(G1−3およびL1−2の平均)
RL206における平均ピストン清浄性 66 66
VWピストン清浄性平均 67 67
平均リング膠着性 0.62 0.93
(8R−4P)/ASF(0−10)
最大リング膠着性 2.5 5
(1Rg)/ASF(0−10)
第1リング溝の膠着性 1.25 1.88
(平均値、ASF)
第1リング溝の膠着性 2.5 5
(最大値、ASF)
第2リング溝の膠着性 0 0
(最大値、ASF)
ASFが2.5以上だったリングの数 2 3
────────────────────────────────────
ACEA B4またはB5規格 適合 不適合
に対する適否(
────────────────────────────────────
)ACEA B4およびB5規格は下記の表1.1の通りである。
【0103】
表1.1
────────────────────────────────────
ACEAでの限界値 B4規格 B5規格
────────────────────────────────────
平均ピストン清浄性メリット評点 63 66
(=RL206−3) (=RL206)
ASF=2.5の平均リング数 1.2 1.2
第1リング溝の膠着性 2.5 2.5
(最大値、ASF)
第2リング溝の膠着性 0.0 0.0
(最大値、ASF)
────────────────────────────────────
【0104】
[実施例2]
下記オイルCを調製し、上記のフォルクスワーゲン・ターボチャージャー付きDI試験によってピストンの清浄性およびピストンリング膠着性をテストした。このVW TDIエンジンのピストン清浄性とリング膠着についての試験は、比較用のオイルDにも行った。結果は表3に示した。この結果はピストン清浄性メリット評点の最低値が65である、より厳しい日本のピストン清浄性規格(JASO C2試験規格)にも適合していた。
【0105】
VW TDIエンジンのピストン清浄性とリング膠着性試験において、オイルCは比較例のオイルDよりも飛躍的に改良されている。
【0106】
オイルC:数平均分子量が約2300ドルトンのポリイソブチレンから誘導された無水コハク酸(PIBSA2300)を2.00質量%と、PIBSA2300から誘導されたものとPIBSA1300(数平均分子量が約1300ドルトンのポリイソブチレン前駆体)から誘導されたものとの混合物であるエチレンカーボネート処理ビスコハク酸イミド分散剤、低過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤、過塩基性硫化および炭酸化カルシウムフェネート、第1級および第2級ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛混合物、モリブデンコハク酸イミド、トリホウ酸塩耐磨耗剤、粘度向上剤、ジ−C8−ジフェニルアミン酸化防止剤、シリコン系消泡剤、および鉱油系基油からなる潤滑油組成物を調製した。このオイルCの硫酸灰分は約0.59質量%、チッ素含有量は約0.113質量%、イオウ含有量は約0.213質量%、そしてリン含有量は0.074質量%であった。
【0107】
比較用のオイルD:PIBSA2300を配合しなかった以外は、上記のオイルCと同様にして潤滑油組成物を調製した。このオイルDの硫酸灰分は約0.59質量%、チッ素含有量は約0.113質量%、イオウ含有量は0.213質量%、そしてリン含有量は0.074質量%であった。
【0108】
表3 VW TDIエンジンによる試験 SAE:0W30
────────────────────────────────────
成分 オイルC オイルD
────────────────────────────────────
PIBSA2300 2.00質量% 無配合
PIBSA2300から誘導したビスコハク酸イミド分散剤
6.00質量% 6.00質量%
PIBSA1300から誘導したビスコハク酸イミド分散剤
1.80質量% 1.80質量%
低TBNカルシウムスルホネート 7.5mM 7.5mM
高TBN硫化&炭酸化カルシウムフェネート
17.5mM 17.5mM
第1級および第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛混合物
12.0mM 12.0mM
モリブデンコハク酸イミド 0.30質量% 0.30質量%
ジノニルジフェニルアミン 0.30質量% 0.30質量%
シリコン系消泡剤 10ppm 10ppm
トリホウ酸塩耐磨耗剤/酸化防止剤 0.20質量% 0.20質量%
粘度向上性ポリマー 5.80質量% 7.0質量%
希釈油 0.71質量% 0.71質量%
────────────────────────────────────
試験時間 54時間 54時間
ピストン清浄性メリット評点 73 65
(G1−3およびL1−2の平均)
RL148における平均ピストン清浄性 62 62
RL206における平均ピストン清浄性 65 65
VWピストン清浄性平均 66 66
平均リング膠着性 0 0
(8R−4P)/ASF(0−10)
第1リング溝の膠着性 0 0
(最大値、ASF)
第2リング溝の膠着性 0 0
(最大値、ASF)
ASFが2.5以上だったリングの数 0 0
────────────────────────────────────
JASO C2規格 適合 かろうじて適合
に対する適否(**
────────────────────────────────────
**)JASOピストン清浄性規格C2による適合性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に用いるのに適した下記の成分の混合物を含む潤滑剤組成物:
(a)潤滑粘度を有する主要量の基油、
(b)一以上の無灰分散剤、
(c)一以上の金属含有清浄剤、および
(d)ピストンの清浄性を向上させることのできる量の、ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との少なくとも一つの反応生成物、ただし、該ポリイソブチレンの数平均分子量は約200から約5000ドルトンである;
ただし、潤滑剤組成物の総質量に対する潤滑剤組成物中のイオウ含有量は約0.3質量%以下、リン含有量は約0.09質量%以下、硫酸灰分含有量は約1.6質量%以下である。
【請求項2】
ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との反応生成物が下記のいずれかの式で表わされる請求項1に記載の潤滑剤組成物:
【化1】


ただし、R1は数平均分子量が約200から約5000ドルトンのポリイソブチレン鎖、R2はカルボキシル含有基である。
【請求項3】
さらに、耐磨耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤、粘度指数向上剤、消泡剤、シール固定剤、流動点降下剤およびその他の多機能添加剤から選ばれる一以上の添加剤を含有する請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
イオウ含有量が潤滑剤組成物の総質量に対して約0.2質量%以下である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
イオウ含有量が潤滑剤組成物の総質量に対して約0.1質量%以下である請求項4に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
リン含有量が潤滑剤組成物の総質量に対して約0.08質量%以下である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
リン含有量が潤滑剤組成物の総質量に対して約0.07質量%以下である請求項6に記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
リン含有量が潤滑剤組成物の総質量に対して約0.05質量%以下である請求項7に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
硫酸灰分含有量が潤滑剤組成物の総質量に対して約1.0質量%以下である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
硫酸灰分含有量が潤滑剤組成物の総質量に対して約0.8質量%以下である請求項9に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
硫酸灰分含有量が潤滑剤組成物の総質量に対して約0.5質量%以下である請求項10に記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
硫酸灰分含有量が潤滑剤組成物の総質量に対して約0.45質量%以下である請求項11に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との少なくとも一つの反応生成物の量が潤滑剤組成物の総質量に対して約0.01から約5.0質量%である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との少なくとも一つの反応生成物の量が潤滑剤組成物の総質量に対して約0.5から約4.0質量%である請求項13に記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との少なくとも一つの反応生成物の量が潤滑剤組成物の総質量に対して約1.0から約2.5質量%である請求項14に記載の潤滑剤組成物。
【請求項16】
ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との少なくとも一つの反応生成物中のポリイソブチレンが約500から約4500ドルトンの数平均分子量を有する請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項17】
ポリイソブチレンが約1000から約3500ドルトンの数平均分子量を有する請求項16に記載の潤滑剤組成物。
【請求項18】
ポリイソブチレンが約2300ドルトンの数平均分子量を有する請求項17に記載の潤滑剤組成物。
【請求項19】
ポリイソブチレンが約1300ドルトンの数平均分子量を有する請求項17に記載の潤滑剤組成物。
【請求項20】
ポリイソブチレンとモノ不飽和アシル化剤との少なくとも一つの反応生成物中のポリイソブチレンが高反応性ポリイソブチレンである請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項21】
モノ不飽和アシル化剤が無水物または無水物生成性物質から誘導されるものである請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項22】
モノ不飽和アシル化剤が無水マレイン酸から誘導されるものである請求項21に記載の潤滑剤組成物。
【請求項23】
一以上の金属含有清浄剤が約0.05から約16mMの量で存在する請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項24】
無灰分散剤が一以上のポリイソブチレン無水コハク酸から誘導されたビスコハク酸イミドである請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項25】
無灰分散剤が、ポリイソブチレン鎖の数平均分子量が約2300ドルトンであるポリイソブチレン無水コハク酸から誘導されたビスコハク酸イミドである請求項24に記載の潤滑剤組成物。
【請求項26】
無灰分散剤が、ポリイソブチレン鎖の数平均分子量が約2300ドルトンである第一のポリイソブチレン無水コハク酸とポリイソブチレン鎖の数平均分子量が約1300ドルトンである第二のポリイソブチレン無水コハク酸との混合物から誘導されたビスコハク酸イミドである請求項24に記載の潤滑剤組成物。
【請求項27】
ビスコハク酸イミドが約0.5質量%から約10質量%の量で存在する請求項24に記載の潤滑剤組成物。
【請求項28】
耐磨耗剤が金属のジカルビルジチオリン酸塩である請求項3に記載の潤滑剤組成物。
【請求項29】
金属のジカルビルジチオリン酸塩がジアルキルチオリン酸亜鉛である請求項28に記載の潤滑剤組成物。
【請求項30】
潤滑剤組成物中のリン含有量の約0.03から約0.075質量%がジアルキルチオリン酸亜鉛によるものである請求項29に記載の潤滑剤組成物。
【請求項31】
潤滑剤組成物中のチッ素含有量の約0.08から約0.12質量%が無灰分散剤によるものである請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項32】
金属含有清浄剤がカルシウム過塩基性清浄剤である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項33】
カルシウム過塩基性清浄剤がカルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、カルシウムサリシレート、カルシウムステアレートおよび、これらの混合物から選ばれる請求項32に記載の潤滑剤組成物。
【請求項34】
酸化防止剤がジフェニルアミンである請求項3に記載の潤滑剤組成物。
【請求項35】
ジフェニルアミンが潤滑剤組成物の総質量に対して約0.05質量%から約5.00質量%の量で存在する請求項34に記載の潤滑剤組成物。
【請求項36】
摩擦調整剤がモリブデン・コハク酸イミド錯体である請求項3に記載の潤滑剤組成物。
【請求項37】
モリブデン・コハク酸イミド錯体が潤滑剤組成物の総質量に対して約0.15から約0.55質量%の量で存在する請求項36に記載の潤滑剤組成物。
【請求項38】
粘度指数向上剤がエチレンポリマーまたはポリアルキルメタクリレート・コポリマーである請求項3に記載の潤滑剤組成物。
【請求項39】
内燃機関内のピストン清浄性を向上させる方法であって、上記請求項のいずれかの項に記載の、リン含有量、イオウ含有量および硫酸灰分含有量のいずれもが低い潤滑剤組成物を用いて内燃機関を運転することを特徴とする方法。
【請求項40】
排気ガス後処理装置を備えた内燃機関を運転する方法であって、請求項1から38のいずれかの項に記載の潤滑剤組成物を用いて内燃機関の潤滑をすることを特徴とする方法。
【請求項41】
内燃機関が、(1)低負荷ディーゼル燃料内燃機関、(2)高負荷ディーゼル燃料内燃機関、そして(3)ガソリン燃料内燃機関から選ばれる内燃機関である請求項40に記載の方法。
【請求項42】
排気ガス後処理装置が微粒子除去装置または触媒変換装置から選ばれる一以上の装置である請求項40に記載の方法。

【公開番号】特開2008−202028(P2008−202028A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−326438(P2007−326438)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】