ピリミジン合成インヒビターに関する組成物および方法
本明細書で提供されるのは、ピリミジン合成インヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物である。この種の組成物が、肺上皮細胞によるNa+依存性流体クリアランスを増加させる方法;被験体における肺疾患を処置する方法;被験体におけるRSウイルス感染の一つ以上の症状または身体的徴候を減らす方法;RSウイルス感染の危険がある被験体を同定し、そして有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する方法;RSウイルス感染を有する被験体を同定し、そしてこの被験体におけるNa+依存性肺胞流体を減らすのに有効な量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する方法;ならびに肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法において使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2004年5月21日に出願された米国仮出願第60/573,558号の利益を主張する。米国仮出願第60/573,558号は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(謝辞)
本発明は、国立衛生研究所から助成金番号RR17626、HL31197、HL075540、HL51173およびHL72817の下で政府支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
RSウイルス(RSV)は、世界中の乳児および小児の下気道(LRT)疾患の最も一般的な原因であり、成人における市中感染性LRT感染の原因と過小診断されることもある。
【0004】
1980年〜1996年の間に、推定165万人の細気管支炎による入院患者が5年より若い小児で発生し、700万の入院日数を占めた。これらの入院の57パーセントは6ヵ月より若い小児に発生し、そして81%は1歳より若い小児に発生した。1歳より若い小児では、毎年の細気管支炎入院率は、1996年の1000人につき12.9人から、1980年の1000人につき31.2人まで、2.4倍増加した。細気管支炎と関連した1歳より若い小児の中の下気道疾患による入院の比率は、1980年の22.2%から1996年の47.4%まで増加した;入院全体では、この比率は、5.4%から16.4%まで増加した。1歳より若い小児での推定51,240〜81,985の毎年の細気管支炎入院は、RSV感染に関連していた。肺炎を有する細気管支炎による入院も考慮される場合、RSV感染は、米国単独において、1年当たりの126,000までの入院の原因である。現在、RSVに関する有効な処置がない。
【0005】
鼻漏、肺うっ血および低酸素血症は、RSV感染を含め、大部分の呼吸器感染の重要な構成要素であるが、この種の疾患における変化した肺流体力学の基礎をなしている機構はほとんど理解されていない。さらに、疫学研究は、乳児期における重篤なRSウイルス(RSV)誘発性細気管支炎とアレルギー疾患との強い関連を示唆する。ウシにおけるRSV感染もまた、主に重要な感染であり、ここで、この種の感染は重篤な呼吸器疾患をもたらし得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当該分野において必要なのは、RSV感染を含め、呼吸器感染を予防および処置するための改善された方法および組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本明細書において提供されるのは、ピリミジン合成インヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物である。この組成物は、被験体の肺上皮細胞への局所投与に適している。本明細書においてまた提供されるのは、治療量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を少なくとも1測定用量(metered dose)含むデバイスである。各測定用量は、被験体における肺疾患を処置するための治療量またはその一部のピリミジン合成インヒビターを含む。
【0008】
本明細書においてさらに提供されるのは、肺上皮細胞によるNa+依存性流体クリアランスを増加させる方法、被験体における肺疾患を処置する方法、被験体におけるRSウイルス感染の一つ以上の症状または身体的徴候を減らす方法、RSウイルス感染の危険がある被験体を同定し、そして有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する方法、RSウイルス感染を有する被験体を同定し、そしてこの被験体におけるNa+依存性肺胞流体を減らすのに有効な量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する方法、ならびに肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法である。
【0009】
さらなる利点は、以下に続く記載に部分的に示されており、そしてこの記載から部分的に明らかであるか、または下記の局面の実施により学ばれ得る。後述する利点は、添付の請求の範囲において、特に指摘される要素および組合せにより理解されて、実現および獲得される。前述の一般的説明および以下の詳細な説明が例示および説明にすぎず、限定的ではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書に組み込まれて、その一部を構成する、添付の図面は、下記のいくつかの局面を例示する。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明およびその中に含まれる実施例、ならびに図面およびそれらの上記および下記の説明を参照することでより容易に理解され得る。
【0012】
本願全体を通して、さまざまな刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本願が関係する技術水準をより完全に記載するために、その全体が本願において本明細書中に参考として援用される。開示される参考文献はまた、この参考文献を記載する文章で考察される参考文献に含まれる主題が、個々に、そして、具体的に本明細書中に参考として援用される。
【0013】
明細書および添付の請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数系の言及を含む。従って、例えば、「ピリミジン合成インヒビター」の言及は、一つ以上のピリミジン合成インヒビターの混合物を含む、などである。同様に、「肺上皮細胞」の言及は、一つ以上の肺上皮細胞を含む。従って、例えば、「肺上皮細胞」への投与に適した組成物は、一つ以上のこの種の細胞への投与に適している。
【0014】
略号が、全体に使われることができ、これは、以下の意味を有し得る。この種の略号としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:AFC(肺胞の流体クリアランス)、ALF(気腔の内側を覆う流体;Airspace lining fluid)、BALF(気管支肺胞洗浄液)、ΔNPD(鼻の電位差の変化)、DHOD(ジヒドロ−オロト酸デヒドロゲナーゼ)、HXA(ヒポキサンチン)、HRSTART(換気期間開始時の心拍数)、HREND(換気期間終了時の心拍数)、LEF(レフルノミド)、MPA(ミコフェノール酸)、6−MP(6−メルカプトプリン)、NPD(鼻の電位差)、NPDAMIL(鼻の電位差のアミロライド感受性成分)、NRte(鼻の経上皮抵抗)、%ΔHR30(30分の換気期間にわたる心拍数の変化%)、P2YR(P2Yプリン作動性ヌクレオチドレセプター)、RSV(RSウイルス)、SmO2(平均ヘモグロビンO2飽和)およびVRAC(体積が調整された陰イオンチャネル)。さらに、他の略号もまた使用され得る。そして、それは当業者に明らかであり、そして/または所定の略号が使われる文脈から明白である。
【0015】
範囲は、「約」1つの特定の値から、そして/または「約」別の特定の値までとして本明細書において表現され得る。この種の範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、そして/または他の特定の値までを含む。同様に、値を近似値として表現する場合、先行詞「約」を用いることにより、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。範囲の各々の終点が、他の終点に関して、そして、他の終点とは独立して、の両方において重要であるとさらに理解される。
【0016】
全体で使用される場合、「被験体」によって、個体が意味される。従って、「被験体」は、家庭用動物(例えば、ネコ、イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)および鳥類を含むことができる。一つの局面では、被験体は、ウシ種(例えば、Bos taurus、Bos indicusまたはその交配種)である。別の局面においては、被験体は、哺乳類(例えば、霊長類またはヒト)である。
【0017】
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、その後に記載されている事象または環境が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、この記載は、この事象または環境が起こる例とそれが起こらない例とを包含する。例えば、語句「必要に応じて、この組成物は、組合せを含み得る」は、この組成物が、異なる分子の組合せを含んでもよく、または組合せを含まなくてもよく、この記載が、組合せおよび組合せが存在しない(すなわち、組合せの個々のメンバー)ことの両方を包含することを意味する。
【0018】
用語「より高い」、「増加する」、「上昇する」または「上昇」とは、コントロール値(例えば、基底レベル)を上回る増加を言及する。用語「低い」、「より低い」、「減少する」または「減少」とは、コントロール値(例えば、基底レベル)未満への減少を言及する。例えば、基底レベルは、薬剤(例えば、レフルノミド、A77−1726または他のピリミジン合成インヒビター)の添加前または添加なしでの正常なインビトロレベルである。コントロールレベルはまた、疾患状態の非存在下の被験体またはサンプルからのレベルを含み得る。コントロール値は、疾患または処置の前または後に、同じ被験体またはサンプルから決定され得る。コントロール値は、疾患または処置が存在しない、異なる被験体またはサンプルに由来し得る。
【0019】
本明細書において提供されるのは、ピリミジン合成インヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物である。この種の組成物は、以下の方法において使用され得る:肺上皮細胞によるNa+依存流体クリアランスを増加させる方法;被験体における肺疾患を処置する方法;被験体におけるRSウイルス感染の一つ以上の症状または身体的徴候を減らす方法;RSウイルス感染の危険がある被験体を同定し、そして有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する方法;RSウイルス感染を有する被験体を同定し、そしてこの被験体におけるNa+依存性肺胞流体を減らすのに有効な量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する方法;ならびに肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法。これらの方法は、以下でより詳細に記載される。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「処置」は、被験体における所定の呼吸器感染の症状または身体的徴候の減少を包含する。従って、開示された組成物および方法は、被験体における呼吸器感染の一つ以上の症状または身体的徴候を減らすために用いられ得る。この種の症状および身体的徴候としては、鼻漏、低酸素血症、肺水腫、減少した心機能、咳、体重減少、喘鳴、悪液質および肺うっ血が挙げられるがこれらに限定されない。
【0021】
開示された組成物および方法を用いた処置が有用な1つの例示的な疾患は、RSウイルス(RSV)感染である。RSVは、BALB/cマウスにおけるNa+依存性肺胞流体クリアランス(AFC)を阻害する。そして、P2Yヌクレオチドレセプターアンタゴニストおよびピリミジノ溶解性酵素はAFCの阻害を防止する。RSV感染は、ALFへのUTPおよびATPの両方の放出をもたらし、そしてAFCにおける減少は、結果として宿主の重要な生理学的障害をもたらすRSV感染の初期相と関係している。
【0022】
重篤なRSV感染のために肺換気が行われる乳児の肺において、サーファクタントタンパク質SP−AおよびSP−Dのレベルは低下し、主要なサーファクタントリン脂質であるジパルミトイルホスファチジルコリンの量が減少し、そして回収されたサーファクタントの生物物理学的界面活性は、コントロールの乳児と比較して損なわれる(KerrおよびPatton,1999)。βアドレナリン作用性レセプターアゴニスト(βARA)気管支拡張剤は、細胞内サイクリックAMPを上昇させることによって成人呼吸窮迫症候群において肺胞流体クリアランスを改善するために用いられているが、呼吸上皮におけるβアドレナリン作用性レセプターによって媒介されるシグナル伝達は、RSV感染後に異常であり、これは、RSV治療におけるβARAの乏しい効力を説明し得る。従って、RSV感染の場合、開示された方法および組成物は、乳児においてジパルミトイルホスファチジルコリンのようなサーファクタントリン脂質のレベルを上昇させるために、またはβアドレナリン作用性レセプターアゴニスト(βARA)気管支拡張剤の効力を高めるために用いられる。
【0023】
さらに、疫学研究は、乳児期の重篤なRSウイルス(RSV)誘発性細気管支炎とアレルギー疾患との強い関連を示唆する。本明細書において提供される組成物および方法は、RSV誘発性気道過敏およびその後の喘息発症への素因を低減するために、RSV感染の間、有用である。RSV感染はまた、ウシ(すなわち、Bos taurusおよびBos indicus、またはその交配種)においても主に重要であり、そして重篤な呼吸器疾患をもたらし得る。
【0024】
肺胞流体クリアランスは、肺上皮細胞におけるイオン輸送と関連する。例えば、肺胞上皮の壁は、2種類の細胞からなる:I細胞およびII型細胞。I型細胞は、肺胞上皮のうちの最も大きい割合をカバーする(約95%)。II型細胞は、サーファクタントを生成する。I型細胞およびII型細胞の両方が能動的な様式でナトリウムイオンを輸送すると現在考えられている。上皮細胞の基底外側表面に位置するナトリウム−カリウムポンプは、先端膜をまたがる電気化学的勾配を設定し、このことは、ナトリウムイオンが肺胞腔から細胞質へと入るのに有利である。ナトリウムは、主にチャネルと呼ばれているタンパク質によって肺胞上皮を越える。細胞質において、それらは、一旦、ATPを利用するナトリウム−カリウムポンプによって基底外側膜を越えて押し出される。電気的中性を保存するために、塩化物イオンは、細胞間に位置する経路を通って、または細胞チャネルによってのいずれかによるナトリウムイオンの動きに続く。イオンの動きは、流体の再吸収に有利な間質腔と肺胞腔との間に浸透圧差を生じる。
【0025】
ナトリウム能動輸送は、多くの病的状態(ウイルス感染、肺炎、急性肺傷害など)の肺胞腔の流体の量を制限することにおいて、重要な役割を果たす。基底状態では、気道上皮の主なイオン輸送プロセスは、内腔流体から上皮の基礎をなす間質腔への、能動的なアミロライド感受性のNa+イオン輸送である。肺の内側を覆う流体(ALF)におけるNa+イオンは、主に、先端膜におけるカチオンおよびNa+選択的なアミロライド感受性の上皮Na+チャネル(ENaC)を通して、気管支肺胞上皮細胞へと受動拡散する。Cl−イオンは、傍細胞経路を介して、または、おそらく嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)を介して、Na+の動きを追って、電気的中性を維持する。NaClの輸送は、上皮を経た浸透圧勾配を生じる。呼吸上皮の経上皮透水性が高いので、この勾配により、水は気腔から間隙へと受動的に移動し、それによって、気腔流体がクリアランスされる。
【0026】
AFCのRSV媒介性阻害は、低酸素血症、心機能障害、ならびに気管支肺胞洗浄液のUTP含有量およびATP含有量の増加と関係している。さらに、肺中のRSV複製に対する直接の抗ウイルス効果がないにもかかわらず、レフルノミドを用いたデノボピリミジン合成の全身阻害は、AFCおよび肺水分含有量だけでなく、RSV感染マウスにおける生理学的障害(体重減少、SmO2低下および心機能低下、ならびに鼻の電位差の変化を含む)を改善する。そのデノボUTP合成およびVRACによる放出はAFCのRSV媒介性阻害が生じるために必要であることを示しており、そしてデノボピリミジン合成および放出経路が、RSV感染または他の呼吸器感染の症状を緩和するように設計されたインヒビター療法についての魅力的な標的であることを証明している、体積が調整された陰イオンチャネル(VRAC)の薬理学的遮断により、AFCのRSV媒介性阻害が防止され得る。
【0027】
図1は、ピリミジン生合成経路およびプリン生合成経路を例示している概略図である。UTPは、グルタミン、ATPおよびHCO3−からデノボ合成される。UTPはまた、サルベージ経路を介してウリジンから合成されることもできる。レフルノミドおよびその活性代謝産物(A77−1726)は両方ともジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼの活性を阻害する。ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼは、ジヒドロオロテートをオロテートに変換する。両方の薬剤は、デノボでのピリミジン合成を妨害するが、ピリミジンサルベージ経路にもプリン合成にも影響を及ぼすわけではない。
【0028】
必要に応じて、この組成物は、レフルノミドであるピリミジン合成インヒビターを含む。必要に応じて、この組成物は、A77−1726であるピリミジン合成インヒビターを含む。必要に応じて、この組成物は、レフルノミドとA77−1726との組合せおよび/または別のピリミジン合成インヒビターとレフルノミドまたはA77−1726との組合せを含む。取引名ARAVA(登録商標)(Aventis Pharmaceuticals,Bridgewater,NJ)の下で、レフルノミド(活性な代謝産物がA77−1726であるプロドラッグ)は、関節リウマチの処置のために使われる。レフルノミドおよびA77−1726は両方とも、酵素ジヒドロオロト酸レダクターゼ(ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼまたはジヒドロオロターゼとしても公知)のインヒビターとして働く。ジヒドロオロト酸レダクターゼは、デノボピリミジン合成経路の中心的な構成要素である三機能性酵素複合体CAD(カルバミルリンシンテターゼ、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼおよびジヒドロオロターゼ)の構成要素である。従って、レフルノミドおよびA77−1726と同様に、この組成物は、ジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビターであり得る。
【0029】
この組成物は、薬学的に受容可能なキャリアにおいて、インビボで投与され得る。「薬学的に受容可能な」によって、生物学的にも他の点でも望ましくない点がない物質を意味する。従って、望ましくない生物学的影響を引き起こすもなく、それが含まれる医薬組成物中の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用することもなく、この物質は、被験体に投与され得る。キャリアは当然、当業者にとって周知であるように、活性成分のいかなる分解も最小化して、被験体におけるいかなる有害な副作用も最小にするように選択される。この物質は、溶液、懸濁液中に存在してもよい(例えば、微粒子、リポソームまたは細胞に組み込まれる)。これらは、抗体、レセプターまたはレセプターリガンドを介して特定の細胞型へと標的化され得る。
【0030】
適切なキャリアおよびそれらの処方物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版)A.R.Gennaro編,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に記載されている。代表的には、適切な量の薬学的に受容可能な塩が、処方物を等張にするために、処方物において使われる。薬学的に受容可能なキャリアの例としては、生理食塩水、リンゲル液およびブドウ糖溶液が挙げられるがこれらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは約5〜約8.5、より好ましくは、約7.8〜約8.2である。さらなるキャリアとしては、抗体を含んでいる固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリクス(このマトリックスは、成形品(例えば、フィルム、リポソームまたは微粒子)の形態である)のような徐放性調製物が挙げられる。例えば、投与経路および投与される組成物の濃度によって、特定のキャリアがより好適であり得ることは、当業者にとって明らかである。例えば、吸入性投与および/もしくは鼻腔内投与または肺上皮細胞に対する局所投与に適している組成物のために適している特定のキャリアを選択することは、当該分野の従来範囲内にある。
【0031】
この組成物はまた、この組成物およびキャリアに加えて、増粘剤、希釈液、緩衝剤、保存剤、界面活性剤などを含み得る。この組成物はまた、一つ以上の活性成分(例えば、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤など)を含み得る。
【0032】
開示された組成物は、被験体の肺上皮細胞への局所投与に適している。従って、ピリミジン合成インヒビターを含む組成物は、必要に応じて、吸入による投与に適している(すなわち、組成物は吸入剤である)。さらに、この組成物は、必要に応じてエアロゾル化される。そしてさらに、この組成物は、必要に応じて霧状にされる。吸入によるこの組成物の投与は、スプレー機構または液滴機構による送達によって、鼻または口を通してであり得る。送達はまた、挿管法を介して呼吸器系の任意の領域(例えば、肺)に直接的に行われ得る。必要に応じて、組成物が投与される肺上皮細胞は、被験体の鼻腔、鼻の通路、鼻咽頭、咽頭、気管、気管支、細気管支または肺胞に位置する。必要に応じて、組成物が投与される肺上皮細胞は、気管支肺胞上皮細胞である。さらに、組成物が複数の肺上皮細胞に投与される場合、細胞は、上記の解剖学位置のどこかもしくは全てに、またはこのような位置の組合せに、必要に応じて配置され得る。
【0033】
従って、肺上皮細胞に対する局所投与は、噴霧化、エアロゾル化または直接の肺滴下注入による肺送達によって行われ得る。それゆえ、被験体の肺上皮細胞に対する局所投与に適した組成物は、例えば、霧状にされたか調製物またはエアロゾル化調製物としての、吸入剤投与に適した組成物を含む。例えば、この組成物は、吸入器(例えば、計量吸入器または乾燥粉末吸入器)、注入器、ネブライザまたは吸入可能な薬物を投与する従来公知の方法の他の任意のものによって個体に投与され得る。
【0034】
本発明の組成物は、吸入可能な溶液であり得る。吸入可能な溶液は、噴霧化による投与に適していてもよい。この組成物はまた、水性懸濁液として提供され得る。必要に応じて、本発明の処方物は、水性懸濁液中に治療有効量のピリミジン合成インヒビターを含む。
【0035】
必要に応じて、この組成物は、ピリミジン合成インヒビターまたはその塩もしくはエステルを、少なくとも1つの適切なプロペラントまたはサーファクタントまたはサーファクタント混合物と別々に含んでいる加圧エアゾールによって投与され得る。任意の従来公知のプロペラントが用いられ得る。
【0036】
また本明細書において提供されるのは、本明細書において提供される組成物およびネブライザを含む組合せである。また本明細書において開示されるのは、本明細書において教示される薬剤および組成物を含む容器である。この容器は、例えば、鼻用スプレヤ、ネブライザ、吸入器、瓶または粘膜表面への投与のための形態の組成物を含む他の任意の手段であり得る。必要に応じて、この容器は、測定用量の組成物を送達し得る。
【0037】
開示された組成物および方法を含む任意のネブライザを使用し得る。特に、本明細書において使用するためのネブライザは、本明細書において提供される組成物を含め、プロペラントを含まない液状処方物を霧状にする。ネブライザは、圧縮空気、超音波または振動を含むがこれらに限定されない当業者に公知の任意の方法によって、霧状にされた霧を生成し得る。ネブライザは、内部バッフルをさらに有し得る。内部バッフルは、ネブライザのハウジングと共に、密着によって霧から大きい液滴を選択的に除去して、液滴が貯蔵部に戻るのを可能にする。このように生成される微細なエーロゾル液滴は、空気/酸素を吸入することによって、肺に入る。
【0038】
従って、プロペラントを含まない液状処方物を霧状にするネブライザは、本明細書において提供される組成物を用いた用途に適している。この種のネブライザの例は当該分野において公知であり、市販されている。本明細書にでの使用のためのネブライザとしてはまた、ジェットネブライザ、超音波ネブライザなどが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なジェットネブライザは、当該分野で公知であり、そして市販されている。
【0039】
この組成物は、濾過滅菌されてバイアル(ネブライザにおいて使用される、適切には霧状にされる、無菌の単位用量処方物を提供する単位用量バイアルを含む)に充填され得る。各単位用量バイアルは、無菌であり得、そして、他のバイアルまたは次の用量を汚染せずに適切に霧状にされ得る。
【0040】
必要に応じて、開示された組成物は、鼻腔内投与に適した形態である。この種の組成物は、鼻孔の一方または両方を通る鼻および鼻の通路への送達に適しており、スプレー機構もしくは液滴機構による、または、エアロゾル化による送達を含み得る。
【0041】
組成物が局所肺投与を使わない方法で使用される場合、この組成物は、当該分野で公知の他の手段により(例えば、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内に)、筋肉内投与によって、腹腔内投与によって、そして経皮的に)投与され得る。
【0042】
本明細書においてさらに提供されるのは、治療量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を少なくとも1測定用量含むデバイスであり、ここで、各測定用量は、被験体における肺疾患を処置するための治療量またはその一部のピリミジン合成インヒビターを含む。このピリミジン合成インヒビターは、本明細書中に開示される通りのピリミジン合成インヒビターまたはその組合せを含み得る。
【0043】
本明細書においてさらに提供されるのは、肺上皮細胞によるNa+依存性流体クリアランスを増加させる方法であり、この方法は、この細胞と有効量のピリミジン合成インヒビターとを接触させる工程を包含する。この接触により、この細胞によるNa+依存性流体クリアランスの増加が引き起こされる。必要に応じて、この肺上皮細胞を、インビボで接触させる。必要に応じて、この肺上皮細胞を、インビトロで接触させる。
【0044】
さらに提供されるのは、被験体における肺疾患を処置する方法であり、この方法は、この被験体における複数の肺上皮細胞と有効量のピリミジン合成インヒビターとを接触させる工程を包含する。この有効量のピリミジン合成インヒビターは、この被験体におけるNa+依存性肺胞流体クリアランスの増加を引き起こす。この方法が用いられ得、ここで、この被験体はRSウイルス感染を有するかまたはRSウイルス感染を発症する危険がある。開示された方法が用いられ得る疾患を引き起こす他の肺病原体としては、パラミクソウイルス(RSウイルス[ヒトおよびウシ]、メタニューモウイルス(metapneumovirus)、パラインフルエンザ、麻疹ウイルス)、オルトミクソウイルス(インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルスおよびインフルエンザC型ウイルス)、ポックスウイルス(痘瘡ウイルス、サル痘ウイルス)、新世界ハンタウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群因子)、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス)、Streptococcus pneumoniae、Hemophilus influenzae、Pseudomonas aeruginosa、Mycobacterium tuberculosis、Mycoplasma pneumoniae、Bacillus anthracis、Legionella pneumophila、Klebsiella pneumoniae、Chlamydi、Listeria monocytogenes、Pasteurella multocidaおよびBurkholderia cepaciaが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
さらに提供されるのは、RSウイルス感染の危険がある被験体におけるRSウイルス感染の一つ以上の症状または身体的徴候を減らす方法であり、この方法は、有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する工程を包含する。上述の通り、この種の症状または身体的徴候としては、鼻漏、低酸素血症、肺水腫、減少した心機能、咳、体重減少、喘鳴、悪液質および肺うっ血が挙げられるが、これらに限定されない。RSウイルス感染の危険がある被験体は、当業者によって直ちに決定され得る。例えば、この種の決定は、症状/身体的徴候、身体検査、診断試験またはそれらの任意の組み合わせを提示する、被験体の病歴に基づいて医師または獣医師によってなされ得る。
【0046】
また提供されるのは、RSウイルス感染の危険がある被験体を同定する工程、および有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する工程を包含する方法である。さらに提供されるのは、RSウイルス感染を有する被験体を同定する工程、およびこの被験体におけるNa+依存性肺胞流体を減らすのに有効な量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する工程を包含する方法である。
【0047】
開示された方法において、ピリミジン合成インヒビターは、必要に応じて、レフルノミド、A77−1726またはそれらの組み合わせである。さらに、レフルノミドおよび/またはA77−1726が、一つ以上の他のピリミジン合成インヒビターと結合して、開示された方法において使用され得る。
【0048】
用語「有効量」および「有効投与量」または「治療量」は、交換可能に使用される。用語「有効量」は、所望の生理学的応答を生じるのに必要な任意の量と定義される。開示された方法で使用される組成物を投与するための有効な量およびスケジュールは、経験的に決定され得、そしてこの種の決定をすることは当該分野の技術範囲内である。開示された方法で使用される組成物の投与のための有効な投与量範囲は、障害の症状が影響を受ける、所望の効果を生じるのに十分大きな投与量である。投与量は、有害な副作用(例えば、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応など)を引き起こすほど大きくてはならない。
【0049】
一般に、治療量または投与量は、年齢、状態、性別および被験体における疾患の程度、投与経路、または他の薬物がレジメンに含まれるかどうかによって変化し、そして当業者によって決定され得る。投与量は、任意の反対指示(counterindication)の場合には、個々の医師または獣医師により調整され得る。投与量は変化し得、そして1日または数日間にわたって毎日一つ以上の用量の投与において投与され得る。必要な開示された方法で使用される組成物の有効量は、使用される方法、ならびに処置される気道疾患、特定のピリミジン合成インヒビターならびに/または使用されるキャリアおよび投与様式などに応じて変化し得る。従って、すべての組成物についての正確な量を特定することは可能でない。しかし、適切な量は、従来技術において、本明細書における教示を考慮して単なる慣用実験を使用して、当業者によって決定され得る。例えば、インビボで使用されるジヒドロオロト酸レダクターゼまたはピリミジン合成インヒビターは、約10〜50mg/kgの用量で、約25〜45mg/kgの用量で、または約30〜40mg/kgの用量で投与され得る。
【0050】
A77−1726、レフルノミドおよび/または他のピリミジンインヒビターの治療量、有効量または有効投与量は、合理的な間隔で、有効なまま、エアゾールにより投与され得る。例えば、本明細書において記載される組成物の有効用量は、1日、数日間、1週間以上にわたって、1日1回、1日2回、1日4回、または1時間に1回以上投与され得る。従って、例えば、この組成物は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、または1週間以上の持続期間にわたって、1時間毎、2時間毎、4時間毎、8時間毎、12時間毎もしくは24時間毎またはそれらの任意の組合せまたは間隔毎に1回投与され得る。間隔によって、提供された値の範囲内の任意の時間増分を意味する。従って、この組成物は、例えば、12時間にわたって3時間毎に投与され得るなどである。必要に応じて、この組成物は、一度に投与される。この種の時間経過は、例えば、有効用量を決定するために上記のパラメータを使用して、当業者によって決定され得る。
【0051】
本明細書において記載される方法による組成物の特定の用量の投与の効力は、病歴、徴候、症状、および肺感染(例えば、RSV感染)を有する被験体またはこの種の感染に罹る危険がある被験体の状態を評価することに有用であることが公知である客観的な実験室試験の特定の局面を評価することにより決定され得る。これらの徴候、症状および客観的な実験室試験は、この種の患者を処置する任意の臨床医またはこの分野の実験を行っている研究者に公知の通り、処置または予防される特定の疾患または状態によって変化する。例えば、適切なコントロール群および/または一般集団または特定の個体の疾患の通常の進行についての知識を有する比較に基づいて:1)被験体の身体状態が改善されることが示される(例えば、肺うっ血が減らされるかまたは除去される);(2)この疾患(感染)の進行が安定するか、遅くなるか、または、逆転することが示される、または(3)この疾患または状態を処置するための他の薬物の必要が少なくされるかまたは取り除かれるならば、特定の処置レジメンは有効であると考えられる。この種の効果は、集団中の単一の被験体において、例えば、疫学研究を用いて決定され得る。
【0052】
本明細書における教示はまた、スクリーニング方法で用いられ得る。例えば、本明細書において提供されるのは、肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法であり、この方法は、肺上皮細胞とこの試験化合物とを、過剰のUTPの存在下で接触させる工程、この肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを検出する工程、を包含し、コントロールと比較したNa+依存性流体取り込みの増加は、肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す。必要に応じて、この細胞をインビボで接触させる。必要に応じて、この細胞をインビトロで接触させる。この方法は、UTPを除去する工程、およびNa+依存性流体取り込みの増加の可逆性を検出する工程を必要に応じてさらに含むことができる。
【0053】
別のスクリーニング方法の例では、Na+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法は、この試験化合物と、ピリミジン合成遺伝子をコードする異種核酸を発現する細胞とを接触させる工程、およびこの細胞によるNa+依存性流体取り込みを検出する工程、を包含し、コントロールレベルと比較したNa+依存性流体取り込みの増加は、Na+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す。必要に応じて、この細胞をインビボで接触させる。必要に応じて、この細胞をインビトロで接触させる。
【0054】
細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする別の方法は、H441細胞またはH441細胞株にRSウイルスを感染させる工程、この感染した細胞または細胞株と試験化合物とを接触させる工程、およびこの感染した細胞またはこの感染した細胞株の細胞を越えるイオン輸送を測定する工程を包含する。コントロールと比較した場合の、この感染した細胞またはこの感染した細胞株の細胞を越えるイオン輸送の増加は、Na+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す。イオン輸送はコントロール細胞またはコントロール細胞株を越えるイオン輸送と比較され得る。このコントロールの細胞または細胞株は、必要に応じて、RSVに感染していないH441細胞株であってもよく、または試験化合物が存在しない、感染したH441細胞またはH441細胞株であってもよい。必要に応じて、試験化合物は、ピリミジン合成インヒビターを含む。必要に応じて、細胞をインビボで接触させる。必要に応じて、細胞をインビトロで接触させる。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は、本明細書において請求される方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために示されており、そして、純粋に本発明の例示を意図しており、添付の特許請求の範囲に含まれるものを除いて、そしてその程度まで、本発明者らが発明と考える範囲を制限することは意図していない。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を確実にする努力を行ったが、何らかの誤差および偏差が考慮されるべきである。
【0056】
(方法)
(ウイルス接種物の調製およびマウスの感染)
ウイルスストックの調製およびいずれかの性別の8〜12週齢の病原体を含まないBALB/cマウスの、RSV A2株(100μl中106 PFU)による鼻腔内感染を、Davisら,「Nucleotide−mediated inhibition of alveolar fluid clearance in BALB/c mice after respiratory syncytial virus infection」,Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.286:L112−L120(2004)に記載の通りに行った。各実験群についてのデータは、最低2つの独立感染に由来した。
【0057】
(平均末梢血酸素飽和の測定)
末梢血酸素飽和を、TUFFSATTMパルスオキシメータ(Datex−Ohmeda,Inc.,Madison,WI)に接続したPREEMIE OXYTIP(登録商標)センサ(Datex−Ohmeda,Inc.,Madison,WI)を使用して意識のあるマウスにおいて測定した。マウスの極めて急速な脈拍数のため、酸素測定値は、動脈血および静脈血からの平均ヘモグロビンO2飽和(SmO2)値である。
【0058】
心拍数の測定は、換気によって変化する。ECG追跡を用いて、AFCアッセイの開始時(HRSTART)および終了時(HREND)において心拍数(QRS群数/cm)を測定した。30分間の換気期間にわたる心拍数の変化%(ΔHR30%)を、(HRSTART − HREND)/HRSTARTとして算出した。
【0059】
(鼻の電位差の測定)
麻酔したマウスの外鼻孔にまたがる電位差(尾部を参照として用いる)を、Grubbら,(1994)「Hyperabsorption of Na+ and raised Ca(2+)−mediated secreti,on in nasal epithelia of CF mice」,Am.J.Physiol 266:C1478−C1483に以前に記載された通りに測定した。ベースラインNPDを、乳酸加リンゲル溶液を用いた鼻上皮の灌流の間、記録した。NPDのアミロライド感受性成分(NPDAMIL)を、100μMアミロライドを含む乳酸加リンゲル溶液を用いた灌流によって測定した。±60nAの電流パルスを、200MΩのレジスタと直列にした12Vの電池によって、上皮にまたがって印加した。(鼻の経上皮抵抗(NRte)と比例する)電流パルスに応答したNPDの変化を記録した(ΔNPD)。
【0060】
(気管支肺胞洗浄液)
気管支肺胞洗浄液(BALF)を、サイトカインELISA用の無菌正常生理食塩溶液lmlまたはヌクレオチドアッセイ用の無菌生理食塩水0.3mlを用いて、Davisら(2004)に以前に記載されたとおりに集めた。洗浄液を遠心分離して細胞を除去し、そして上清を−80℃で保存した。
【0061】
(BALF中のヌクレオチドの測定)
BALF中の内因性ヌクレオチダーゼを熱変性(100℃、3分間)し、そしてUTP/ATP含有量を、それぞれ、UDP−グルコースピロホスホリラーゼおよびルシフェリン−ルシフェラーゼアッセイを使用して測定した。
【0062】
(BALF中のヘムの測定)
BALFヘム含有量を、Drabkinsアッセイを使用して、分光光度学的に測定した。
【0063】
(デノボのピリミジン合成およびプリン合成の全身阻害)
レフルノミド(5−メチルイソキサゾール−4−[4−トリフルオロメチル]カルボキシアニリド、1%のメチルセルロースを含んでいる蒸留水中35mg/kg)を、感染前8日間にわたって、次いで感染期間全体を通して、300μl/マウスの体積の経口栄養法によって、1日1回投与した。ビヒクルコントロールを、等しい体積の蒸留水中の1%メチルセルロースとして栄養法により与えた。ウリジン(0.9%NaCl中1g/kg)を、100μlの体積で12時間毎に、腹腔内注入により投与した(8)。6−MP(1N NaOH中35mg/kg、2M Na2HPO4を用いてpHを7.9に調整した)を、感染前5日間にわたって、次いで感染期間全体を通して、100μlの体積で24時間毎に注入することにより腹腔内投与した。
【0064】
(BALF中の炎症誘発性サイトカインの測定)
サイトカインレベルを、製造業者の指示に従ってQuantikine M ELISAキット(R & D Systems)を使用して決定した。
【0065】
(統計解析)
記述統計を、Instatソフトウェア(GraphPad,San Diego,CA)を使用して算出した。群平均間の差を、適切な事後検定を用いて、ANOVAまたはスチューデントt検定により解析した。すべてのデータ値を、平均±SEで示す。
【0066】
(結果)
(末梢血酸素化に対するRSV感染の影響)
d2における基底AFCの減損は、偽感染動物と比較した、末梢血SmO2の小さいが、重要な減少と関係していた(図2A)。SmO2の低下は、他の時点では見出されなかった。
【0067】
低酸素血症のさらなる指標として、3−リードECG記録は、AFC測定過程の間での心拍数の変化(ΔHR30%)の証拠について、d2における偽感染マウスおよびRSV感染マウスから評価した。RSVによる感染は、d2でのΔHR30%における有意な増加と関連していた(図2Bおよび図2C)。2群間で麻酔の持続時間の差はなかった。
【0068】
(鼻の電位差に対するRSV感染の影響)
偽感染動物と比較すると、2日間のRSV感染は、BALB/cマウスにおける基底NPD(鼻の電位差)にもNPDAMIL(鼻の電位差のアミロライド感受性成分)にも影響を及ぼさなかった。しかし、基底NPDおよびNPDAMILは、d4およびd8において著しく減少した(図3A〜図3C)。
【0069】
RSV感染後のNRte(鼻の経上皮抵抗)の評価として、±60nAのパルスを鼻上皮に印加することによって惹起されるNPDの変化(ΔNPD)を測定した。ΔNPDは、d4およびd8において偽感染コントロールよりも有意に大きかった(図3D〜図3E)。
【0070】
(BALFヌクレオチドに対するRSV感染およびヌクレオチド合成阻害の影響)
未感染マウスからのBALFは、等しいレベルのATPおよびUTPを含んでいた。これらは偽感染によって影響を受けなかった。しかし、RSV感染は、BALFヘム含有量の付随した増加を伴わずに(未感染マウスにおいて7.3±0.7μMであるのに対して、d2にて7.3±1.4μM)、d2においてUTPレベルおよびATPレベルの倍加をもたらした。BALFヌクレオチドは、d6においてコントロールレベルに戻った(表1)。
【0071】
BALFヌクレオチドレベルの上昇は、レフルノミド処置を受けたRSV感染マウスにおいてd2にて検出されなかった。事実、レフルノミド処置は、両方のヌクレオチドのBALF含有量を、未処置の非感染性マウスにおけるBALF含有量未満のレベルまで引き下げた(表1)。ウリジンの併用処置は、BALFのUTPレベルおよびATPレベルに対するレフルノミドの効果を逆転させるだけでなく、未処置RSV感染マウスにおけるBALFヌクレオチド含有量を越えるBALFヌクレオチド含有量の有意な増加を引き起こした。
【0072】
【表1】
(マウスの体重に対するヌクレオチド合成阻害の影響)
前処置期間の間に、メチルセルロース処置マウスまたは未処置マウスと比較して、レフルノミドは、体重の有意な低下を引き起こさなかった。さらに重要なことに、感染期間の間、レフルノミド処置は、Dlおよびd2において通常見られるBALB/cマウスの体重減少の程度を有意に減少させた(図4)。レフルノミド処置期間全体にわたるウリジンの併用投与は、この影響を妨げなかった。
【0073】
この知見とは対照的に、6−MPでの処置は、未処置のRSV感染マウスおよびレフルノミドで処置されたRSV感染マウスと比較して、前感染期間全体にわたる体重の有意な減少失、麻酔に対する乏しい寛容性(散発的な死をもたらす)およびDlおよびd2における体重減少の有意な増加をもたらした(図4B)。
【0074】
(AFCのRSV媒介性阻害に対するヌクレオチド合成阻害の影響)
RSV感染マウスのレフルノミド前処置は、d2におけるAFCのRSV誘発性阻害を遮断した(表2)。この影響は、メチルセルロース単独を栄養法で与えることによって模倣されず、併用ウリジン処置によって逆転された。ウリジン処置単独は、AFCに影響を及ぼさなかった。レフルノミド処置はまた、AFCに正常なアミロライド感受性の回復をもたらした:d2における未処置マウスでは61%であり、未感染性マウスでは−8%であるのに対して、d2にてレフルノミド処置マウスのAFCの57%はアミロライド感受性であった。
【0075】
レフルノミド治療の有益な効果とは対照的に、デノボプリン合成インヒビター6‐メルカプトプリン(6−MP)を用いた全身前処置の類似のレジメンは、d2においてAFCに影響を及ぼさなかった(表2)。最後に、レフルノミドを用いた未感染性マウスの処置は、AFCの有意な阻害をもたらした。
【0076】
【表2】
デノボピリミジン合成を全身的に遮断するために、マウスに、感染前に、次いで感染後0時間および24時間において、300ml/マウスのジヒドロオロト酸レダクターゼ(DHOR)インヒビターレフルノミド(1%メチルセルロース中に懸濁された5mg/kg)またはビヒクルを1日1回8日間にわたって栄養法により与えた。感染後48時間において、AFC滴注物(instillate)への添加なしで、AFC研究を行った。
【0077】
示される場合、レフルノミド処置期間(1mg/kgのI.P.、ql2h)の全体を通して、ウリジンの併用投与により、レフルノミド(LEF)の影響を逆転させる試みを行った。図5に示すように、レフルノミド(LEF)をマウスへ栄養法により与えることにより、感染後2日目におけるAFCのRSV媒介性阻害が逆転された。LEFの影響は、ウリジンの併用投与により防止される。LEFは、正常マウスにおけるAFCに対して影響を及ぼさなかった。
【0078】
LEF処置はまた、感染後1日目および2日目の体重減少の、そして、肺胞洗浄液の炎症誘発性サイトカイン(IFN−a、Il−1b、TNF−a、KC)濃度の有意な減少をもたらした。図6に示すように、レフルノミド(LEF)をマウスに栄養法により与えることにより、感染後2日目に肺の水分含量におけるRSV誘発性増加を逆転させた。レフルノミドの影響は、ウリジンの併用投与により防止された。重要なことに、LEFおよび/またはウリジンを用いたマウスの処置は、感染後2日目に肺組織におけるウイルス複製に影響を及ぼさなかった。
【0079】
図7に示すように、AFC滴注物中への体積を調整した陰イオンチャネル(VRAC)の広い範囲のインヒビターの添加は、感染後2日目のAFCのRSV媒介性阻害を逆転させた。使用したいくつかのインヒビターはまた、様々な他の細胞機能に対して別の影響を及ぼしたが、これらの薬剤は共通の影響としてVRAC阻害のみを有する。しかし、NPPB(100mM)は、比較的VRAC特異的である。この知見は、UTPが初期RSV感染間、VRACを介して細胞から放出されることを証明した。フルオキセチン(10mM)は、選択的セロトニン再取り込みインヒビターとしても作用する。ベラパミル(10mM)は、Ca++チャネル遮断剤としても作用する。タモキシフェン(25mM)は、抗エストロゲンでもある。
【0080】
RSウイルスは、重大な呼吸上皮細胞病理を誘発することなく、BALB/cマウスモデルの感染の後の初期の時点でアミロライド感受性AFC(能動的なNa+輸送を表す)を阻害する。さらに、AFCに対するRSVの阻害効果は、肺のP2Yプリン作用性レセプターに対するその作用によって、UTPにより媒介される。
【0081】
感染後2日目のAFCのRSV誘発性阻害を媒介するUTPは、デノボ合成に由来し、そして、この経路の阻害はAFCのRSV誘発性減少を防止し、ウイルス複製を変えることなく肺水分含量を増加させる。さらに、感染後2日目にAFCのRSV誘発性阻害を媒介するUTPは、体積が調整された陰イオンチャネルを介して放出される。
【0082】
感染後2日目のAFCのRSV誘発性阻害に対するレフルノミドの影響を実証した。マウスを、経口栄養法によって8日間、レフルノミド(5mg/kg、1%メチルセルロース中に懸濁、1日1回)を用いて前処置し、次いでRSVに感染させ、そして感染後24時間目に再びレフルノミドで処置した。このレジメンにより、感染後2日目にAFCのRSV誘発性阻害が防止された。この影響は、メチルセルロースを単独で栄養法により与えることによって模倣されず、レフルノミド処置期間全体を通してのウリジンの併用投与(10日間の1mg/kgのi.p.ql2h)によって逆転された。さらに、ウリジン処置単独は、AFCに影響を及ぼさなかった。レフルノミド処置も、正常な(偽感染)マウスのAFCに対して有害な影響を有さなかった。
【0083】
【表3】
レフルノミドの阻害効果は、単なる抗ウイルス効果の結果でなかった。ウイルス複製は、メチルセルロース、レフルノミドまたはウリジンでの処置によって影響を受けなかった。それゆえ、AFCのRSV誘発性阻害の抑制は、ウイルス複製を防止することの単純な結果ではなく、デノボピリミジン合成に対するレフルノミドの特異的阻害効果の結果であった。
【0084】
レフルノミド治療は、肺の湿重量:乾燥重量の比率(肺の水分含量および水腫形成の指標)の正常化と関係していた。この比率は、RSV感染後2日目に増加する。ウリジンの併用処置は、この影響を逆転させ、湿重量:乾燥重量の比率を(偽感染マウスと比較して)増加させた。レフルノミド治療は、感染後1日目および2日目のBALB/cマウスに通常見られる体重減少の程度を有意に減少させた。このことは、食欲(おそらく抗炎症効果に関連がある)に対する有益な効果を示唆する。これはまた、この用量での非常に限られたレフルノミド毒性を示唆した。ある程度の低酸素血症が通常明白である場合、レフルノミド治療は、感染後2日目の平均血中O2飽和度を改善した。レフルノミド治療は、肺胞洗浄液の炎症誘発性サイトカイン(インターフェロン−α、インターロイキン−1β、KC[ヒトインターロイキン8のネズミホモログ]および腫瘍壊死因子−α)のレベルを有意に低下させた。これは、併用ウリジン治療によって、ほんの部分的に逆転された(従って、この薬物による非特異的チロシンキナーゼ阻害の結果で一部あり得る)効果である。
【0085】
まとめると、これらのデータは、レフルノミドが、直接的な抗ウイルス効果を有せずに、RSV疾患に対していくつかの有益な効果を有することを証明した。これらの効果は、低酸素血症および肺水腫の排除、体重の改善および肺の炎症の減少を含んでいた。
【0086】
(肺水分含量に対するヌクレオチド合成阻害の影響)
レフルノミドを用いた全身治療は、2日目の正常な肺湿重量:乾燥重量の比率を回復させ、一方、レフルノミド処置期間の全体を通してのウリジンの併用投与はこの効果を防止した(図8A)。しかし、6−MP(これは、2日目にAFCに対して有益な効果を有さなかった)を用いた全身治療は、2日目の正常な肺湿重量:乾燥重量の比率を変化させなかった(図8B)。
【0087】
(炎症誘発性サイトカインに対するヌクレオチド合成阻害の影響)
レフルノミドは、免疫抑制剤として臨床的に使われる。治療レジメンの効力を確認するために、BALF中の炎症誘発性サイトカインのレベルに対するその効果を分析した。IL−4もIL−10も、感染後のいかなる時点でも検出可能ではなかった。ほんの少量のIL−1βおよびKC(ヒトIL−8のネズミホモログ)は、偽感染マウスからのBALF中で検出された(表4)。IFN−γ以外の他の全てのサイトカインの有意な量がd2に存在したが、IL−1β、KCおよびTNF−γのレベルは、d4〜d8で減少した。有意な量のIFN−γが、d6およびd8においてBALF中でのみ見出された。
【0088】
レフルノミド治療は、d2におけるBALF中のIFN−α、IL−1β、KCおよびTNF−αのレベルを顕著に低下させた(表4)。IFN−αを除いて、この効果は、併用ウリジン治療によってほんの部分的に逆転された。
【0089】
重要なことに、6−MP治療は、レフルノミド治療によって引き起こされるレベルに匹敵する、BALF中のIFN−α、IL−1β、KC、およびTNF−αのレベルの低下をもたらした(表4)。d2においていずれかの薬剤で処置しマウスにおいて、IFN−α、IL−1β、KC、およびTNF−αのレベルの間に有意差は存在しなかった。
【0090】
【表4】
(マウス肺におけるRSV複製に対するヌクレオチド合成阻害の影響)
d2でのウイルス複製は、レフルノミド処置でもウリジン処置でも影響を受けなかった(図9A)。同様に、6−MP前処置は、d2においてマウス肺のウイルス複製に対して有意な阻害効果を有しなかった(図9B)。レフルノミド処置を8日間の感染期間全体を通して続けた場合、ウイルス複製はd8において高レベルで維持された(図9C)。しかし、d2においてレフルノミド処置を中断した場合、ウイルス複製はd8において最小限増加するだけであった(図9D)。
【0091】
(RSV感染後の低酸素血症に対するレフルノミド治療の影響)
レフルノミド治療は、d2においてSmO2読み取り値の正常化をもたらした(図10A)。同様に、レフルノミド治療は、d2においてAFC手順の間にRSV感染マウスに見られるΔHR30%の増加を防止した(図10B)。
【0092】
(RSV感染後の鼻の電位差に対するレフルノミド治療の影響)
感染期間全体を通してのレフルノミドを用いた処置は、基底NPDおよびNPDAMIL(図11A〜11C)のRSV誘発性低下を防止した。
【0093】
(AFCのRSV媒介性阻害に対する陰イオンチャネル遮断の影響)
d2でのAFCのRSV媒介性阻害は、いくつかの構造的に無関係なVRACインヒビターの各々のAFC滴注物への添加により遮断された:フルオキセチン、タモキシフェン、クロミフェン、ベラパミル、NPPBまたはIAA−94(表5)。この効果は、500nM UTPの滴注物への併用添加によって逆転された。対照的に、d2でのAFCは、それぞれ、グリベンクラミドおよびニフルム酸による、嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質およびCa2+活性化Cl−チャネル活性の阻害によって影響を受けなかった。
【0094】
【表5】
(AFCのRSV媒介性阻害のA77−1726の影響)
以前から公知のように、RSウイルス(RSV)A2株を用いたBALB/cマウスの鼻腔内感染は、感染後(p.i.)2日目および4日目での基底AFCおよびアミロライド感受性AFCの減少をもたらし、この阻害は、UTPにより媒介され、P2Yレセプター(AJPLCMP,2004)を経て作用した。感染後2日目でのAFCのRSV媒介性阻害は、AFC滴注物への25mMのA77−1726(これは、デノボピリミジン合成を遮断した)の添加により防止されるが、25mMのミコフェノール酸または6‐メルカプトプリン(両方とも、デノボプリン合成を遮断する)のいずれによっても防止されないことがさらに示された。A77−1726により媒介される遮断は、50mMウリジン(これは、サルベージ経路を介するピリミジン合成を許容する)の添加によって逆転されたが、25mMゲニステイン(これは、A77−1726の非特異的チロシンキナーゼインヒビター効果を模倣する)によっては再現されなかった。このことは、A77−1726の遮断効果がデノボピリミジン合成経路により媒介されたことを示す。同様に、デノボピリミジン合成インヒビターレフルノミド(1%メチルセルロース中5mg/kgのp.o.を10日間)を用いたマウスの処置は、AFCに対するRSVの阻害効果を逆転させた。さらに、体積を調整した陰イオンチャネル(VRAC)機能のインヒビター(例えば、フルオキセチン(10mM)、ベラパミル(10mM)およびタモキシフェン(25mM))はまた、感染後2日目にAFCのRSV媒介性阻害を遮断した。まとめて考えると、これらのデータは、RSV感染の間にAFCを阻害するUTPがデノボピリミジン合成に由来するとともにVRACを介して放出されることを実証した。これらの経路は、AFCのUTPによって誘導される減少を防止する新しい治療アプローチを提供する。これは、RSV感染後の、体積が増加した流体粘液、気道うっ血および鼻漏の形成に寄与する。
【0095】
図12に示すように、RSVでの感染は、感染後(p.i.)2日目および4日目での基底肺胞流体クリアランス(AFC)を有意に阻害する。非感染マウス(U)と比較して、偽感染(M)は、AFCに影響を及ぼさない。基底AFCは、2日目において(偽感染値から)43%阻害され、4日目において26%阻害された。AFCのアミロライド感受性もまた、1日目に減少しており、2日目および4日目には存在しなかった。
【0096】
感染後2日目でのAFCのRSV媒介性阻害は、アピラーゼ(これはUTPおよびATPの両方を分解する)またはUDP−グルコースピロホスホリラーゼ(これは、グルコース一リン酸および無機ピロホスファターゼの存在下でUTPを分解する)をAFC滴注物に添加することによって逆転されたが、ヘキソキナーゼ(これは、ブドウ糖の存在下でATPを分解する)の添加によっては逆転されなかった。P2Yレセプター特異的アンタゴニスト(200mM XAMR0721)を滴注物に添加することによっても、感染後2日目にてAFCのRSV媒介性阻害が逆転した。
【0097】
5%脂肪酸非含有BSAを含む0.3mlの等モル量の(isosmolar)NaClの気管内滴注後30分間の期間にわたって、正常な体温および血中ガスを有する、麻酔をかけ、通気されたBALB/cマウスについて、AFC研究を行った。1群あたりで分析したマウス数を、各グラフの関連した棒に列挙する。
【0098】
図13に示すように、AFC滴注物にジヒドロオロト酸レダクターゼインヒビター(25μM A77−1726)を添加することにより、感染後2日目にてAFCのRSVり媒介性阻害が逆転した。A77−1726の効果は、AFC滴注物への50mMウリジンの併用添加によって完全に逆転されたが、25mMゲニステイン(非特異的なチロシンキナーゼインヒビター)によっては再現されない。従って、A77−1726の効果は、デノボピリミジン合成経路に特異的である。
【0099】
図14に示すように、AFC滴注物に対するIMPデヒドロゲナーゼインヒビター(25μMの6−MPまたはMPA)の添加は、感染後2日目でのAFCのRSV媒介性阻害に対してごく軽微な影響しか及ぼさなかった。IMPデヒドロゲナーゼインヒビターの影響が小さいのは、ATPの枯渇の結果であった。ATPは、デノボピリミジン合成のために必要な前駆体である。MPAの影響は、プリンサルベージ経路を介したATPの合成を許容する、AFC滴注物への50mMヒポキサンチン(HXA)の併用添加によって完全に逆転された。この知見は、RSV感染注のATP貯蔵が少ないことを実証した。
【0100】
(感染後2日目でのAFCのRSV誘発性阻害は、デノボピリミジン合成のインヒビターであるA77−1726によって防止される)
A77−1726の影響は、外因性ウリジンの添加により遮断された。外因性ウリジンは、サルベージ経路を介したUTP合成を促進する。そして、A77−1726の影響は、ゲニステインによって再現されない。ゲニステインは、A77−1726の非特異的チロシンキナーゼ阻害効果を模倣する。おそらくATP合成(ATPは、デノボでのピリミジン合成のために必要な前駆体である)の減少の結果として、デノボプリン合成のインヒビター(例えば、ミコフェノール酸(MPA)および6‐メルカプトプリン(6−MP)は、AFCのRSV媒介性阻害に対してごくわずかな遮断効果を有した。さらに、この影響は、外因性ヒポキサンチンの添加により遮断された。外因性ヒポキサンチンは、サルベージ経路を介したATP合成を促進する。興味深いことに、感染後2日目のAFCのRSV誘発性阻害はまた、体積を調整された陰イオンチャネル(VRAC)(これは、ATPおよびUTPについて放出機構と提唱されている)の様々な異なるインヒビターによって防止され、そしてRhoキナーゼ(これは、RSVにより活性化されることが公知であり、VRACを活性化することもまた公知である)の阻害により防止された。
【0101】
【表6】
(感染後2日目でのAFCのRSV誘発性阻害に対する感染後でのA77−1726処置)
マウスを、A77−1726の鼻腔内投与(100μl正常生理食塩水中50μM、両方の鼻孔に分けた)によって感染後24時間にて処置した場合、感染後24時間でのAFCに対するRSVの阻害効果は完全に遮断された。このことは、肺に局所的に投与した場合、A77−1726がデノボピリミジン合成に対して長期にわたる阻害効果を有したことを実証する。A77−1726の鼻腔内前処置はまた、RSV感染の翌日に増加する肺の湿重量:乾燥重量の比率(肺の水分含量および水腫形成の指標)の正常化とも関係していた。
【0102】
【表7】
さまざまな改変および変更は、本明細書において記載されている化合物、組成物および方法になされ得る。本明細書において記載されている化合物、組成物および方法の他の局面は、明細書を考慮することにより、そして本明細書において開示される化合物、組成物および方法を実施することにより、明らかである。明細書および実施例が例示とみなされることが意図される。
【0103】
【表8−1】
【0104】
【表8−2】
【0105】
【表8−3】
【0106】
【表8−4】
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、ピリミジン生合成経路およびプリン生合成経路を図示している概略図である。
【図2A】図2は、末梢酸素化に対するRSV感染の影響を示す。(A)意識のあるBALB/cマウスにおけるSmO2(混合酸素飽和)に対するRSV感染の影響の時間経過(1日につきn=10〜36)。*偽感染したマウスと比較して、p<0.05。
【図2B】図2は、末梢酸素化に対するRSV感染の影響を示す。(B)d2での偽感染したマウスおよびRSV感染したマウスについての肺胞流体クリアランス(AFC)期間の始めと終わりのサンプル3−リードECG(心電図)トレース。
【図2C】図2は、末梢酸素化に対するRSV感染の影響を示す。(C)d2でのΔHR30%でのRSV感染の影響(偽感染したマウスについてn=17、RSV感染したマウスについてn=11)。
【図3A】図3は、BALB/cマウスにおける鼻の電位差(NPD)に対するRSV感染の影響を示す。(A)d4での偽感染したマウスおよびRSV感染したマウスにおけるNPDの代表的トレース。すべてのグループについてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、矢印は、100μMアミロライド添加の時間を示す。*偽感染した動物と比較して、p<0.05、**偽感染した動物と比較して、p<0.005。
【図3B】図3は、BALB/cマウスにおける鼻の電位差(NPD)に対するRSV感染の影響を示す。(B)基底NPDに対するRSV感染の影響。すべてのグループについてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、矢印は、100μMアミロライド添加の時間を示す。*偽感染した動物と比較して、p<0.05、**偽感染した動物と比較して、p<0.005。
【図3C】図3は、BALB/cマウスにおける鼻の電位差(NPD)に対するRSV感染の影響を示す。(C)NPDのアミロライド感受性成分(NPD AMIL)に対するRSV感染の影響。すべてのグループについてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、矢印は、100μMアミロライド添加の時間を示す。*偽感染した動物と比較して、p<0.05、**偽感染した動物と比較して、p<0.005。
【図3D】図3は、BALB/cマウスにおける鼻の電位差(NPD)に対するRSV感染の影響を示す。(D)d4にて偽感染したマウスおよびRSV感染マウスの鼻上皮に対して±60nAパルスを印加したNPDにおける変化の中でサンプルトレース。すべてのグループについてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、矢印は、100μMアミロライド添加の時間を示す。*偽感染した動物と比較して、p<0.05、**偽感染した動物と比較して、p<0.005。
【図3E】図3は、BALB/cマウスにおける鼻の電位差(NPD)に対するRSV感染の影響を示す。(E)鼻上皮に対して±60nAパルスを印加したΔNPDに対するRSV感染の影響。すべてのグループについてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、矢印は、100μMアミロライド添加の時間を示す。*偽感染した動物と比較して、p<0.05、**偽感染した動物と比較して、p<0.005。
【図4A】図4は、RSV感染後の、体重に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(A)BALB/cマウスにおけるRSV感染後の急な体重減少に対するレフルノミド(UTP合成のインヒビター)の影響(未処置マウスについてn=35、レフルノミド処置したマウスについてn=19)。*各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.05、**各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.005、***各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.0005。
【図4B】図4は、RSV感染後の、体重に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(B)BALB/cマウスにおけるRSV感染後の急な体重減少に対する6−MP処置の影響(未処置マウスについてn=35、6−MP処置マウスについてn=30)。*各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.05、**各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.005、***各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.0005。
【図5】図5は、レフルノミド(LEF)をマウスに栄養法で与えることの効果により、感染後2日目でのAFCのRSV媒介性阻害を逆転させることを示す。LEFの影響は、ウリジンの併用投与により防止される。
【図6】図6は、レフルノミド(LEF)をマウスに栄養法で与えることの効果により、感染後2日目での肺水含量におけるRSV誘導性増加を逆転させることを示す。レフルノミドの影響は、ウリジンの併用投与により防止される。重要なことに、LEFおよび/またはウリジンを用いたマウスの処置は、感染後2日目に肺組織のウイルス複製に対して影響を及ぼさない。
【図7】図7は、AFC滴注物に対する体積を調整した陰イオンチャネル(VRAC)のの広範囲のインヒビターの添加の影響により、感染後2日目でのAFCのRSV媒介性阻害を逆転させることを示す。
【図8A】図8は、RSV感染後の肺水分含量に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(A)d2での肺水分含量に対するレフルノミドおよびウリジン処置の影響(すべての群についてn=7〜8)。***未感染マウスにおける湿重量:乾燥重量比率と比較して、p<0.0005。
【図8B】図8は、RSV感染後の肺水分含量に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(B)d2での肺水分含量に対する6−MPの影響(未感染マウスについてn=8;未処置のRSV感染マウスについてn=7;6−MP処置マウスについてn=15)。肺水分含量を、湿重量:乾燥重量比率によって測定した。***未感染マウスにおける湿重量:乾燥重量比率と比較して、p<0.0005。
【図9A】図9は、マウス肺におけるRSV複製に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(A)d2でのウイルス複製に対するレフルノミドおよびウリジン処置の影響(未処置のウリジン処置マウスおよびレフルノミドおよびウリジン処置マウスについてn=6;レフルノミド処置マウスについてn=12)。破線は、アッセイの検出限界を示す。***未処置マウスにおけるウイルス力価と比較して、p<0.0005。
【図9B】図9は、マウス肺におけるRSV複製に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(B)d2でのウイルス複製に対する6−MPの影響(未処置マウスについてn=6;6−MP処置マウスについてn=12)。破線は、アッセイの検出限界を示す。***未処置マウスにおけるウイルス力価と比較して、p<0.0005。
【図9C】図9は、マウス肺におけるRSV複製に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(C)d8でのウイルス複製に対する継続したレフルノミド処置の影響(未処置マウスについてn=6;レフルノミド処置マウスについてn=12)。破線は、アッセイの検出限界を示す。***未処置マウスにおけるウイルス力価と比較して、p<0.0005。
【図9D】図9は、マウス肺におけるRSV複製に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(D)d8でのウイルス複製に対するd2へのレフルノミド処置の影響(両群についてn=6)。破線は、アッセイの検出限界を示す。***未処置マウスにおけるウイルス力価と比較して、p<0.0005。
【図10A】図10は、RSV感染後の低酸素血症に対するレフルノミド処置の影響を示す。(A)d2でのマウスのSmO2に対するレフルノミド処置の影響(未処置のRSV感染マウスについてn=8;レフルノミド処置したRSV感染マウスについてn=7)。*未処置の値と比較して、p<0.05。
【図10B】図10は、RSV感染後の低酸素血症に対するレフルノミド処置の影響を示す。(B)RSV感染およびd2でのΔHR30%でのレフルノミド処置の影響(未処置のRSV感染マウスについてn=11;レフルノミド処置したRSV感染マウスについてn=9)。*未処置の値と比較して、p<0.05。
【図11A】図11は、BALB/cマウスにおけるNPDに対するレフルノミド処置の影響を示す。(A)d4でのレフルノミド処置したRSV感染マウスにおけるNPDのサンプルトレース。すべての群についてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、そして矢印は100μMアミロライド添加時間を示す。*未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.05、**未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.005。
【図11B】図11は、BALB/cマウスにおけるNPDに対するレフルノミド処置の影響を示す。(B)RSV感染マウスにおける基底NPDに対するレフルノミド処置の影響。すべての群についてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、そして矢印は100μMアミロライド添加時間を示す。*未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.05、**未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.005。
【図11C】図11は、BALB/cマウスにおけるNPDに対するレフルノミド処置の影響を示す。(C)RSV感染マウスにおけるNPDAMILに対するレフルノミド処置の影響。すべての群についてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、そして矢印は100μMアミロライド添加時間を示す。*未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.05、**未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.005。
【図12】図12は、RSVでの感染が、感染後(i.p.)2日目および4日目の基底肺胞流体クリアランス(AFC)を有意に阻害することを示す。偽感染(M)は、非感染マウス(U)と比較して、AFCに影響を及ぼさない。基底AFCは、2日目に(偽感染の値から)43%阻害され、そして4日目に26%阻害された。AFCのアミロライド感受性はまた、1日目に減少しており、そして感染後2日目および4日目には存在しなかった。
【図13】図13は、AFC滴注物に対するジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビター(25mμ A77−1726)の添加が、感染後2日目にAFCのRSV媒介性阻害を逆転させることを示す。A77−1726の影響は、50mMウリジンのAFC滴注物への併用添加によって完全に逆転されるが、25mMゲニステイン(非特異的チロシンキナーゼインヒビター)により再現されない。
【図14】図14は、AFC滴注物に対するIMPデヒドロゲナーゼのインヒビター(25μMの6−MPまたはMPA)の添加が感染後2日目のAFCのRSV媒介性阻害に軽微な影響しか及ぼさないことを示す。IMPデヒドロゲナーゼインヒビターの小さい効果はATP枯渇の結果であり、そしてそれはデノボピリミジン合成のために必要な前駆体である。MPA効果は50mMヒポキサンチン(HXA)のAFC滴注物への併用添加によって完全に逆転され、プリンサルベージ経路を介するATP合成を許容した。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2004年5月21日に出願された米国仮出願第60/573,558号の利益を主張する。米国仮出願第60/573,558号は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(謝辞)
本発明は、国立衛生研究所から助成金番号RR17626、HL31197、HL075540、HL51173およびHL72817の下で政府支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
RSウイルス(RSV)は、世界中の乳児および小児の下気道(LRT)疾患の最も一般的な原因であり、成人における市中感染性LRT感染の原因と過小診断されることもある。
【0004】
1980年〜1996年の間に、推定165万人の細気管支炎による入院患者が5年より若い小児で発生し、700万の入院日数を占めた。これらの入院の57パーセントは6ヵ月より若い小児に発生し、そして81%は1歳より若い小児に発生した。1歳より若い小児では、毎年の細気管支炎入院率は、1996年の1000人につき12.9人から、1980年の1000人につき31.2人まで、2.4倍増加した。細気管支炎と関連した1歳より若い小児の中の下気道疾患による入院の比率は、1980年の22.2%から1996年の47.4%まで増加した;入院全体では、この比率は、5.4%から16.4%まで増加した。1歳より若い小児での推定51,240〜81,985の毎年の細気管支炎入院は、RSV感染に関連していた。肺炎を有する細気管支炎による入院も考慮される場合、RSV感染は、米国単独において、1年当たりの126,000までの入院の原因である。現在、RSVに関する有効な処置がない。
【0005】
鼻漏、肺うっ血および低酸素血症は、RSV感染を含め、大部分の呼吸器感染の重要な構成要素であるが、この種の疾患における変化した肺流体力学の基礎をなしている機構はほとんど理解されていない。さらに、疫学研究は、乳児期における重篤なRSウイルス(RSV)誘発性細気管支炎とアレルギー疾患との強い関連を示唆する。ウシにおけるRSV感染もまた、主に重要な感染であり、ここで、この種の感染は重篤な呼吸器疾患をもたらし得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当該分野において必要なのは、RSV感染を含め、呼吸器感染を予防および処置するための改善された方法および組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本明細書において提供されるのは、ピリミジン合成インヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物である。この組成物は、被験体の肺上皮細胞への局所投与に適している。本明細書においてまた提供されるのは、治療量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を少なくとも1測定用量(metered dose)含むデバイスである。各測定用量は、被験体における肺疾患を処置するための治療量またはその一部のピリミジン合成インヒビターを含む。
【0008】
本明細書においてさらに提供されるのは、肺上皮細胞によるNa+依存性流体クリアランスを増加させる方法、被験体における肺疾患を処置する方法、被験体におけるRSウイルス感染の一つ以上の症状または身体的徴候を減らす方法、RSウイルス感染の危険がある被験体を同定し、そして有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する方法、RSウイルス感染を有する被験体を同定し、そしてこの被験体におけるNa+依存性肺胞流体を減らすのに有効な量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する方法、ならびに肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法である。
【0009】
さらなる利点は、以下に続く記載に部分的に示されており、そしてこの記載から部分的に明らかであるか、または下記の局面の実施により学ばれ得る。後述する利点は、添付の請求の範囲において、特に指摘される要素および組合せにより理解されて、実現および獲得される。前述の一般的説明および以下の詳細な説明が例示および説明にすぎず、限定的ではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書に組み込まれて、その一部を構成する、添付の図面は、下記のいくつかの局面を例示する。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明およびその中に含まれる実施例、ならびに図面およびそれらの上記および下記の説明を参照することでより容易に理解され得る。
【0012】
本願全体を通して、さまざまな刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本願が関係する技術水準をより完全に記載するために、その全体が本願において本明細書中に参考として援用される。開示される参考文献はまた、この参考文献を記載する文章で考察される参考文献に含まれる主題が、個々に、そして、具体的に本明細書中に参考として援用される。
【0013】
明細書および添付の請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数系の言及を含む。従って、例えば、「ピリミジン合成インヒビター」の言及は、一つ以上のピリミジン合成インヒビターの混合物を含む、などである。同様に、「肺上皮細胞」の言及は、一つ以上の肺上皮細胞を含む。従って、例えば、「肺上皮細胞」への投与に適した組成物は、一つ以上のこの種の細胞への投与に適している。
【0014】
略号が、全体に使われることができ、これは、以下の意味を有し得る。この種の略号としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:AFC(肺胞の流体クリアランス)、ALF(気腔の内側を覆う流体;Airspace lining fluid)、BALF(気管支肺胞洗浄液)、ΔNPD(鼻の電位差の変化)、DHOD(ジヒドロ−オロト酸デヒドロゲナーゼ)、HXA(ヒポキサンチン)、HRSTART(換気期間開始時の心拍数)、HREND(換気期間終了時の心拍数)、LEF(レフルノミド)、MPA(ミコフェノール酸)、6−MP(6−メルカプトプリン)、NPD(鼻の電位差)、NPDAMIL(鼻の電位差のアミロライド感受性成分)、NRte(鼻の経上皮抵抗)、%ΔHR30(30分の換気期間にわたる心拍数の変化%)、P2YR(P2Yプリン作動性ヌクレオチドレセプター)、RSV(RSウイルス)、SmO2(平均ヘモグロビンO2飽和)およびVRAC(体積が調整された陰イオンチャネル)。さらに、他の略号もまた使用され得る。そして、それは当業者に明らかであり、そして/または所定の略号が使われる文脈から明白である。
【0015】
範囲は、「約」1つの特定の値から、そして/または「約」別の特定の値までとして本明細書において表現され得る。この種の範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、そして/または他の特定の値までを含む。同様に、値を近似値として表現する場合、先行詞「約」を用いることにより、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。範囲の各々の終点が、他の終点に関して、そして、他の終点とは独立して、の両方において重要であるとさらに理解される。
【0016】
全体で使用される場合、「被験体」によって、個体が意味される。従って、「被験体」は、家庭用動物(例えば、ネコ、イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)および鳥類を含むことができる。一つの局面では、被験体は、ウシ種(例えば、Bos taurus、Bos indicusまたはその交配種)である。別の局面においては、被験体は、哺乳類(例えば、霊長類またはヒト)である。
【0017】
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、その後に記載されている事象または環境が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、この記載は、この事象または環境が起こる例とそれが起こらない例とを包含する。例えば、語句「必要に応じて、この組成物は、組合せを含み得る」は、この組成物が、異なる分子の組合せを含んでもよく、または組合せを含まなくてもよく、この記載が、組合せおよび組合せが存在しない(すなわち、組合せの個々のメンバー)ことの両方を包含することを意味する。
【0018】
用語「より高い」、「増加する」、「上昇する」または「上昇」とは、コントロール値(例えば、基底レベル)を上回る増加を言及する。用語「低い」、「より低い」、「減少する」または「減少」とは、コントロール値(例えば、基底レベル)未満への減少を言及する。例えば、基底レベルは、薬剤(例えば、レフルノミド、A77−1726または他のピリミジン合成インヒビター)の添加前または添加なしでの正常なインビトロレベルである。コントロールレベルはまた、疾患状態の非存在下の被験体またはサンプルからのレベルを含み得る。コントロール値は、疾患または処置の前または後に、同じ被験体またはサンプルから決定され得る。コントロール値は、疾患または処置が存在しない、異なる被験体またはサンプルに由来し得る。
【0019】
本明細書において提供されるのは、ピリミジン合成インヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物である。この種の組成物は、以下の方法において使用され得る:肺上皮細胞によるNa+依存流体クリアランスを増加させる方法;被験体における肺疾患を処置する方法;被験体におけるRSウイルス感染の一つ以上の症状または身体的徴候を減らす方法;RSウイルス感染の危険がある被験体を同定し、そして有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する方法;RSウイルス感染を有する被験体を同定し、そしてこの被験体におけるNa+依存性肺胞流体を減らすのに有効な量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する方法;ならびに肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法。これらの方法は、以下でより詳細に記載される。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「処置」は、被験体における所定の呼吸器感染の症状または身体的徴候の減少を包含する。従って、開示された組成物および方法は、被験体における呼吸器感染の一つ以上の症状または身体的徴候を減らすために用いられ得る。この種の症状および身体的徴候としては、鼻漏、低酸素血症、肺水腫、減少した心機能、咳、体重減少、喘鳴、悪液質および肺うっ血が挙げられるがこれらに限定されない。
【0021】
開示された組成物および方法を用いた処置が有用な1つの例示的な疾患は、RSウイルス(RSV)感染である。RSVは、BALB/cマウスにおけるNa+依存性肺胞流体クリアランス(AFC)を阻害する。そして、P2Yヌクレオチドレセプターアンタゴニストおよびピリミジノ溶解性酵素はAFCの阻害を防止する。RSV感染は、ALFへのUTPおよびATPの両方の放出をもたらし、そしてAFCにおける減少は、結果として宿主の重要な生理学的障害をもたらすRSV感染の初期相と関係している。
【0022】
重篤なRSV感染のために肺換気が行われる乳児の肺において、サーファクタントタンパク質SP−AおよびSP−Dのレベルは低下し、主要なサーファクタントリン脂質であるジパルミトイルホスファチジルコリンの量が減少し、そして回収されたサーファクタントの生物物理学的界面活性は、コントロールの乳児と比較して損なわれる(KerrおよびPatton,1999)。βアドレナリン作用性レセプターアゴニスト(βARA)気管支拡張剤は、細胞内サイクリックAMPを上昇させることによって成人呼吸窮迫症候群において肺胞流体クリアランスを改善するために用いられているが、呼吸上皮におけるβアドレナリン作用性レセプターによって媒介されるシグナル伝達は、RSV感染後に異常であり、これは、RSV治療におけるβARAの乏しい効力を説明し得る。従って、RSV感染の場合、開示された方法および組成物は、乳児においてジパルミトイルホスファチジルコリンのようなサーファクタントリン脂質のレベルを上昇させるために、またはβアドレナリン作用性レセプターアゴニスト(βARA)気管支拡張剤の効力を高めるために用いられる。
【0023】
さらに、疫学研究は、乳児期の重篤なRSウイルス(RSV)誘発性細気管支炎とアレルギー疾患との強い関連を示唆する。本明細書において提供される組成物および方法は、RSV誘発性気道過敏およびその後の喘息発症への素因を低減するために、RSV感染の間、有用である。RSV感染はまた、ウシ(すなわち、Bos taurusおよびBos indicus、またはその交配種)においても主に重要であり、そして重篤な呼吸器疾患をもたらし得る。
【0024】
肺胞流体クリアランスは、肺上皮細胞におけるイオン輸送と関連する。例えば、肺胞上皮の壁は、2種類の細胞からなる:I細胞およびII型細胞。I型細胞は、肺胞上皮のうちの最も大きい割合をカバーする(約95%)。II型細胞は、サーファクタントを生成する。I型細胞およびII型細胞の両方が能動的な様式でナトリウムイオンを輸送すると現在考えられている。上皮細胞の基底外側表面に位置するナトリウム−カリウムポンプは、先端膜をまたがる電気化学的勾配を設定し、このことは、ナトリウムイオンが肺胞腔から細胞質へと入るのに有利である。ナトリウムは、主にチャネルと呼ばれているタンパク質によって肺胞上皮を越える。細胞質において、それらは、一旦、ATPを利用するナトリウム−カリウムポンプによって基底外側膜を越えて押し出される。電気的中性を保存するために、塩化物イオンは、細胞間に位置する経路を通って、または細胞チャネルによってのいずれかによるナトリウムイオンの動きに続く。イオンの動きは、流体の再吸収に有利な間質腔と肺胞腔との間に浸透圧差を生じる。
【0025】
ナトリウム能動輸送は、多くの病的状態(ウイルス感染、肺炎、急性肺傷害など)の肺胞腔の流体の量を制限することにおいて、重要な役割を果たす。基底状態では、気道上皮の主なイオン輸送プロセスは、内腔流体から上皮の基礎をなす間質腔への、能動的なアミロライド感受性のNa+イオン輸送である。肺の内側を覆う流体(ALF)におけるNa+イオンは、主に、先端膜におけるカチオンおよびNa+選択的なアミロライド感受性の上皮Na+チャネル(ENaC)を通して、気管支肺胞上皮細胞へと受動拡散する。Cl−イオンは、傍細胞経路を介して、または、おそらく嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)を介して、Na+の動きを追って、電気的中性を維持する。NaClの輸送は、上皮を経た浸透圧勾配を生じる。呼吸上皮の経上皮透水性が高いので、この勾配により、水は気腔から間隙へと受動的に移動し、それによって、気腔流体がクリアランスされる。
【0026】
AFCのRSV媒介性阻害は、低酸素血症、心機能障害、ならびに気管支肺胞洗浄液のUTP含有量およびATP含有量の増加と関係している。さらに、肺中のRSV複製に対する直接の抗ウイルス効果がないにもかかわらず、レフルノミドを用いたデノボピリミジン合成の全身阻害は、AFCおよび肺水分含有量だけでなく、RSV感染マウスにおける生理学的障害(体重減少、SmO2低下および心機能低下、ならびに鼻の電位差の変化を含む)を改善する。そのデノボUTP合成およびVRACによる放出はAFCのRSV媒介性阻害が生じるために必要であることを示しており、そしてデノボピリミジン合成および放出経路が、RSV感染または他の呼吸器感染の症状を緩和するように設計されたインヒビター療法についての魅力的な標的であることを証明している、体積が調整された陰イオンチャネル(VRAC)の薬理学的遮断により、AFCのRSV媒介性阻害が防止され得る。
【0027】
図1は、ピリミジン生合成経路およびプリン生合成経路を例示している概略図である。UTPは、グルタミン、ATPおよびHCO3−からデノボ合成される。UTPはまた、サルベージ経路を介してウリジンから合成されることもできる。レフルノミドおよびその活性代謝産物(A77−1726)は両方ともジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼの活性を阻害する。ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼは、ジヒドロオロテートをオロテートに変換する。両方の薬剤は、デノボでのピリミジン合成を妨害するが、ピリミジンサルベージ経路にもプリン合成にも影響を及ぼすわけではない。
【0028】
必要に応じて、この組成物は、レフルノミドであるピリミジン合成インヒビターを含む。必要に応じて、この組成物は、A77−1726であるピリミジン合成インヒビターを含む。必要に応じて、この組成物は、レフルノミドとA77−1726との組合せおよび/または別のピリミジン合成インヒビターとレフルノミドまたはA77−1726との組合せを含む。取引名ARAVA(登録商標)(Aventis Pharmaceuticals,Bridgewater,NJ)の下で、レフルノミド(活性な代謝産物がA77−1726であるプロドラッグ)は、関節リウマチの処置のために使われる。レフルノミドおよびA77−1726は両方とも、酵素ジヒドロオロト酸レダクターゼ(ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼまたはジヒドロオロターゼとしても公知)のインヒビターとして働く。ジヒドロオロト酸レダクターゼは、デノボピリミジン合成経路の中心的な構成要素である三機能性酵素複合体CAD(カルバミルリンシンテターゼ、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼおよびジヒドロオロターゼ)の構成要素である。従って、レフルノミドおよびA77−1726と同様に、この組成物は、ジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビターであり得る。
【0029】
この組成物は、薬学的に受容可能なキャリアにおいて、インビボで投与され得る。「薬学的に受容可能な」によって、生物学的にも他の点でも望ましくない点がない物質を意味する。従って、望ましくない生物学的影響を引き起こすもなく、それが含まれる医薬組成物中の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用することもなく、この物質は、被験体に投与され得る。キャリアは当然、当業者にとって周知であるように、活性成分のいかなる分解も最小化して、被験体におけるいかなる有害な副作用も最小にするように選択される。この物質は、溶液、懸濁液中に存在してもよい(例えば、微粒子、リポソームまたは細胞に組み込まれる)。これらは、抗体、レセプターまたはレセプターリガンドを介して特定の細胞型へと標的化され得る。
【0030】
適切なキャリアおよびそれらの処方物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版)A.R.Gennaro編,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に記載されている。代表的には、適切な量の薬学的に受容可能な塩が、処方物を等張にするために、処方物において使われる。薬学的に受容可能なキャリアの例としては、生理食塩水、リンゲル液およびブドウ糖溶液が挙げられるがこれらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは約5〜約8.5、より好ましくは、約7.8〜約8.2である。さらなるキャリアとしては、抗体を含んでいる固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリクス(このマトリックスは、成形品(例えば、フィルム、リポソームまたは微粒子)の形態である)のような徐放性調製物が挙げられる。例えば、投与経路および投与される組成物の濃度によって、特定のキャリアがより好適であり得ることは、当業者にとって明らかである。例えば、吸入性投与および/もしくは鼻腔内投与または肺上皮細胞に対する局所投与に適している組成物のために適している特定のキャリアを選択することは、当該分野の従来範囲内にある。
【0031】
この組成物はまた、この組成物およびキャリアに加えて、増粘剤、希釈液、緩衝剤、保存剤、界面活性剤などを含み得る。この組成物はまた、一つ以上の活性成分(例えば、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤など)を含み得る。
【0032】
開示された組成物は、被験体の肺上皮細胞への局所投与に適している。従って、ピリミジン合成インヒビターを含む組成物は、必要に応じて、吸入による投与に適している(すなわち、組成物は吸入剤である)。さらに、この組成物は、必要に応じてエアロゾル化される。そしてさらに、この組成物は、必要に応じて霧状にされる。吸入によるこの組成物の投与は、スプレー機構または液滴機構による送達によって、鼻または口を通してであり得る。送達はまた、挿管法を介して呼吸器系の任意の領域(例えば、肺)に直接的に行われ得る。必要に応じて、組成物が投与される肺上皮細胞は、被験体の鼻腔、鼻の通路、鼻咽頭、咽頭、気管、気管支、細気管支または肺胞に位置する。必要に応じて、組成物が投与される肺上皮細胞は、気管支肺胞上皮細胞である。さらに、組成物が複数の肺上皮細胞に投与される場合、細胞は、上記の解剖学位置のどこかもしくは全てに、またはこのような位置の組合せに、必要に応じて配置され得る。
【0033】
従って、肺上皮細胞に対する局所投与は、噴霧化、エアロゾル化または直接の肺滴下注入による肺送達によって行われ得る。それゆえ、被験体の肺上皮細胞に対する局所投与に適した組成物は、例えば、霧状にされたか調製物またはエアロゾル化調製物としての、吸入剤投与に適した組成物を含む。例えば、この組成物は、吸入器(例えば、計量吸入器または乾燥粉末吸入器)、注入器、ネブライザまたは吸入可能な薬物を投与する従来公知の方法の他の任意のものによって個体に投与され得る。
【0034】
本発明の組成物は、吸入可能な溶液であり得る。吸入可能な溶液は、噴霧化による投与に適していてもよい。この組成物はまた、水性懸濁液として提供され得る。必要に応じて、本発明の処方物は、水性懸濁液中に治療有効量のピリミジン合成インヒビターを含む。
【0035】
必要に応じて、この組成物は、ピリミジン合成インヒビターまたはその塩もしくはエステルを、少なくとも1つの適切なプロペラントまたはサーファクタントまたはサーファクタント混合物と別々に含んでいる加圧エアゾールによって投与され得る。任意の従来公知のプロペラントが用いられ得る。
【0036】
また本明細書において提供されるのは、本明細書において提供される組成物およびネブライザを含む組合せである。また本明細書において開示されるのは、本明細書において教示される薬剤および組成物を含む容器である。この容器は、例えば、鼻用スプレヤ、ネブライザ、吸入器、瓶または粘膜表面への投与のための形態の組成物を含む他の任意の手段であり得る。必要に応じて、この容器は、測定用量の組成物を送達し得る。
【0037】
開示された組成物および方法を含む任意のネブライザを使用し得る。特に、本明細書において使用するためのネブライザは、本明細書において提供される組成物を含め、プロペラントを含まない液状処方物を霧状にする。ネブライザは、圧縮空気、超音波または振動を含むがこれらに限定されない当業者に公知の任意の方法によって、霧状にされた霧を生成し得る。ネブライザは、内部バッフルをさらに有し得る。内部バッフルは、ネブライザのハウジングと共に、密着によって霧から大きい液滴を選択的に除去して、液滴が貯蔵部に戻るのを可能にする。このように生成される微細なエーロゾル液滴は、空気/酸素を吸入することによって、肺に入る。
【0038】
従って、プロペラントを含まない液状処方物を霧状にするネブライザは、本明細書において提供される組成物を用いた用途に適している。この種のネブライザの例は当該分野において公知であり、市販されている。本明細書にでの使用のためのネブライザとしてはまた、ジェットネブライザ、超音波ネブライザなどが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なジェットネブライザは、当該分野で公知であり、そして市販されている。
【0039】
この組成物は、濾過滅菌されてバイアル(ネブライザにおいて使用される、適切には霧状にされる、無菌の単位用量処方物を提供する単位用量バイアルを含む)に充填され得る。各単位用量バイアルは、無菌であり得、そして、他のバイアルまたは次の用量を汚染せずに適切に霧状にされ得る。
【0040】
必要に応じて、開示された組成物は、鼻腔内投与に適した形態である。この種の組成物は、鼻孔の一方または両方を通る鼻および鼻の通路への送達に適しており、スプレー機構もしくは液滴機構による、または、エアロゾル化による送達を含み得る。
【0041】
組成物が局所肺投与を使わない方法で使用される場合、この組成物は、当該分野で公知の他の手段により(例えば、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内に)、筋肉内投与によって、腹腔内投与によって、そして経皮的に)投与され得る。
【0042】
本明細書においてさらに提供されるのは、治療量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を少なくとも1測定用量含むデバイスであり、ここで、各測定用量は、被験体における肺疾患を処置するための治療量またはその一部のピリミジン合成インヒビターを含む。このピリミジン合成インヒビターは、本明細書中に開示される通りのピリミジン合成インヒビターまたはその組合せを含み得る。
【0043】
本明細書においてさらに提供されるのは、肺上皮細胞によるNa+依存性流体クリアランスを増加させる方法であり、この方法は、この細胞と有効量のピリミジン合成インヒビターとを接触させる工程を包含する。この接触により、この細胞によるNa+依存性流体クリアランスの増加が引き起こされる。必要に応じて、この肺上皮細胞を、インビボで接触させる。必要に応じて、この肺上皮細胞を、インビトロで接触させる。
【0044】
さらに提供されるのは、被験体における肺疾患を処置する方法であり、この方法は、この被験体における複数の肺上皮細胞と有効量のピリミジン合成インヒビターとを接触させる工程を包含する。この有効量のピリミジン合成インヒビターは、この被験体におけるNa+依存性肺胞流体クリアランスの増加を引き起こす。この方法が用いられ得、ここで、この被験体はRSウイルス感染を有するかまたはRSウイルス感染を発症する危険がある。開示された方法が用いられ得る疾患を引き起こす他の肺病原体としては、パラミクソウイルス(RSウイルス[ヒトおよびウシ]、メタニューモウイルス(metapneumovirus)、パラインフルエンザ、麻疹ウイルス)、オルトミクソウイルス(インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルスおよびインフルエンザC型ウイルス)、ポックスウイルス(痘瘡ウイルス、サル痘ウイルス)、新世界ハンタウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群因子)、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス)、Streptococcus pneumoniae、Hemophilus influenzae、Pseudomonas aeruginosa、Mycobacterium tuberculosis、Mycoplasma pneumoniae、Bacillus anthracis、Legionella pneumophila、Klebsiella pneumoniae、Chlamydi、Listeria monocytogenes、Pasteurella multocidaおよびBurkholderia cepaciaが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
さらに提供されるのは、RSウイルス感染の危険がある被験体におけるRSウイルス感染の一つ以上の症状または身体的徴候を減らす方法であり、この方法は、有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する工程を包含する。上述の通り、この種の症状または身体的徴候としては、鼻漏、低酸素血症、肺水腫、減少した心機能、咳、体重減少、喘鳴、悪液質および肺うっ血が挙げられるが、これらに限定されない。RSウイルス感染の危険がある被験体は、当業者によって直ちに決定され得る。例えば、この種の決定は、症状/身体的徴候、身体検査、診断試験またはそれらの任意の組み合わせを提示する、被験体の病歴に基づいて医師または獣医師によってなされ得る。
【0046】
また提供されるのは、RSウイルス感染の危険がある被験体を同定する工程、および有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する工程を包含する方法である。さらに提供されるのは、RSウイルス感染を有する被験体を同定する工程、およびこの被験体におけるNa+依存性肺胞流体を減らすのに有効な量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物をこの被験体に投与する工程を包含する方法である。
【0047】
開示された方法において、ピリミジン合成インヒビターは、必要に応じて、レフルノミド、A77−1726またはそれらの組み合わせである。さらに、レフルノミドおよび/またはA77−1726が、一つ以上の他のピリミジン合成インヒビターと結合して、開示された方法において使用され得る。
【0048】
用語「有効量」および「有効投与量」または「治療量」は、交換可能に使用される。用語「有効量」は、所望の生理学的応答を生じるのに必要な任意の量と定義される。開示された方法で使用される組成物を投与するための有効な量およびスケジュールは、経験的に決定され得、そしてこの種の決定をすることは当該分野の技術範囲内である。開示された方法で使用される組成物の投与のための有効な投与量範囲は、障害の症状が影響を受ける、所望の効果を生じるのに十分大きな投与量である。投与量は、有害な副作用(例えば、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応など)を引き起こすほど大きくてはならない。
【0049】
一般に、治療量または投与量は、年齢、状態、性別および被験体における疾患の程度、投与経路、または他の薬物がレジメンに含まれるかどうかによって変化し、そして当業者によって決定され得る。投与量は、任意の反対指示(counterindication)の場合には、個々の医師または獣医師により調整され得る。投与量は変化し得、そして1日または数日間にわたって毎日一つ以上の用量の投与において投与され得る。必要な開示された方法で使用される組成物の有効量は、使用される方法、ならびに処置される気道疾患、特定のピリミジン合成インヒビターならびに/または使用されるキャリアおよび投与様式などに応じて変化し得る。従って、すべての組成物についての正確な量を特定することは可能でない。しかし、適切な量は、従来技術において、本明細書における教示を考慮して単なる慣用実験を使用して、当業者によって決定され得る。例えば、インビボで使用されるジヒドロオロト酸レダクターゼまたはピリミジン合成インヒビターは、約10〜50mg/kgの用量で、約25〜45mg/kgの用量で、または約30〜40mg/kgの用量で投与され得る。
【0050】
A77−1726、レフルノミドおよび/または他のピリミジンインヒビターの治療量、有効量または有効投与量は、合理的な間隔で、有効なまま、エアゾールにより投与され得る。例えば、本明細書において記載される組成物の有効用量は、1日、数日間、1週間以上にわたって、1日1回、1日2回、1日4回、または1時間に1回以上投与され得る。従って、例えば、この組成物は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、または1週間以上の持続期間にわたって、1時間毎、2時間毎、4時間毎、8時間毎、12時間毎もしくは24時間毎またはそれらの任意の組合せまたは間隔毎に1回投与され得る。間隔によって、提供された値の範囲内の任意の時間増分を意味する。従って、この組成物は、例えば、12時間にわたって3時間毎に投与され得るなどである。必要に応じて、この組成物は、一度に投与される。この種の時間経過は、例えば、有効用量を決定するために上記のパラメータを使用して、当業者によって決定され得る。
【0051】
本明細書において記載される方法による組成物の特定の用量の投与の効力は、病歴、徴候、症状、および肺感染(例えば、RSV感染)を有する被験体またはこの種の感染に罹る危険がある被験体の状態を評価することに有用であることが公知である客観的な実験室試験の特定の局面を評価することにより決定され得る。これらの徴候、症状および客観的な実験室試験は、この種の患者を処置する任意の臨床医またはこの分野の実験を行っている研究者に公知の通り、処置または予防される特定の疾患または状態によって変化する。例えば、適切なコントロール群および/または一般集団または特定の個体の疾患の通常の進行についての知識を有する比較に基づいて:1)被験体の身体状態が改善されることが示される(例えば、肺うっ血が減らされるかまたは除去される);(2)この疾患(感染)の進行が安定するか、遅くなるか、または、逆転することが示される、または(3)この疾患または状態を処置するための他の薬物の必要が少なくされるかまたは取り除かれるならば、特定の処置レジメンは有効であると考えられる。この種の効果は、集団中の単一の被験体において、例えば、疫学研究を用いて決定され得る。
【0052】
本明細書における教示はまた、スクリーニング方法で用いられ得る。例えば、本明細書において提供されるのは、肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法であり、この方法は、肺上皮細胞とこの試験化合物とを、過剰のUTPの存在下で接触させる工程、この肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを検出する工程、を包含し、コントロールと比較したNa+依存性流体取り込みの増加は、肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す。必要に応じて、この細胞をインビボで接触させる。必要に応じて、この細胞をインビトロで接触させる。この方法は、UTPを除去する工程、およびNa+依存性流体取り込みの増加の可逆性を検出する工程を必要に応じてさらに含むことができる。
【0053】
別のスクリーニング方法の例では、Na+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法は、この試験化合物と、ピリミジン合成遺伝子をコードする異種核酸を発現する細胞とを接触させる工程、およびこの細胞によるNa+依存性流体取り込みを検出する工程、を包含し、コントロールレベルと比較したNa+依存性流体取り込みの増加は、Na+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す。必要に応じて、この細胞をインビボで接触させる。必要に応じて、この細胞をインビトロで接触させる。
【0054】
細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする別の方法は、H441細胞またはH441細胞株にRSウイルスを感染させる工程、この感染した細胞または細胞株と試験化合物とを接触させる工程、およびこの感染した細胞またはこの感染した細胞株の細胞を越えるイオン輸送を測定する工程を包含する。コントロールと比較した場合の、この感染した細胞またはこの感染した細胞株の細胞を越えるイオン輸送の増加は、Na+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す。イオン輸送はコントロール細胞またはコントロール細胞株を越えるイオン輸送と比較され得る。このコントロールの細胞または細胞株は、必要に応じて、RSVに感染していないH441細胞株であってもよく、または試験化合物が存在しない、感染したH441細胞またはH441細胞株であってもよい。必要に応じて、試験化合物は、ピリミジン合成インヒビターを含む。必要に応じて、細胞をインビボで接触させる。必要に応じて、細胞をインビトロで接触させる。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は、本明細書において請求される方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために示されており、そして、純粋に本発明の例示を意図しており、添付の特許請求の範囲に含まれるものを除いて、そしてその程度まで、本発明者らが発明と考える範囲を制限することは意図していない。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を確実にする努力を行ったが、何らかの誤差および偏差が考慮されるべきである。
【0056】
(方法)
(ウイルス接種物の調製およびマウスの感染)
ウイルスストックの調製およびいずれかの性別の8〜12週齢の病原体を含まないBALB/cマウスの、RSV A2株(100μl中106 PFU)による鼻腔内感染を、Davisら,「Nucleotide−mediated inhibition of alveolar fluid clearance in BALB/c mice after respiratory syncytial virus infection」,Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.286:L112−L120(2004)に記載の通りに行った。各実験群についてのデータは、最低2つの独立感染に由来した。
【0057】
(平均末梢血酸素飽和の測定)
末梢血酸素飽和を、TUFFSATTMパルスオキシメータ(Datex−Ohmeda,Inc.,Madison,WI)に接続したPREEMIE OXYTIP(登録商標)センサ(Datex−Ohmeda,Inc.,Madison,WI)を使用して意識のあるマウスにおいて測定した。マウスの極めて急速な脈拍数のため、酸素測定値は、動脈血および静脈血からの平均ヘモグロビンO2飽和(SmO2)値である。
【0058】
心拍数の測定は、換気によって変化する。ECG追跡を用いて、AFCアッセイの開始時(HRSTART)および終了時(HREND)において心拍数(QRS群数/cm)を測定した。30分間の換気期間にわたる心拍数の変化%(ΔHR30%)を、(HRSTART − HREND)/HRSTARTとして算出した。
【0059】
(鼻の電位差の測定)
麻酔したマウスの外鼻孔にまたがる電位差(尾部を参照として用いる)を、Grubbら,(1994)「Hyperabsorption of Na+ and raised Ca(2+)−mediated secreti,on in nasal epithelia of CF mice」,Am.J.Physiol 266:C1478−C1483に以前に記載された通りに測定した。ベースラインNPDを、乳酸加リンゲル溶液を用いた鼻上皮の灌流の間、記録した。NPDのアミロライド感受性成分(NPDAMIL)を、100μMアミロライドを含む乳酸加リンゲル溶液を用いた灌流によって測定した。±60nAの電流パルスを、200MΩのレジスタと直列にした12Vの電池によって、上皮にまたがって印加した。(鼻の経上皮抵抗(NRte)と比例する)電流パルスに応答したNPDの変化を記録した(ΔNPD)。
【0060】
(気管支肺胞洗浄液)
気管支肺胞洗浄液(BALF)を、サイトカインELISA用の無菌正常生理食塩溶液lmlまたはヌクレオチドアッセイ用の無菌生理食塩水0.3mlを用いて、Davisら(2004)に以前に記載されたとおりに集めた。洗浄液を遠心分離して細胞を除去し、そして上清を−80℃で保存した。
【0061】
(BALF中のヌクレオチドの測定)
BALF中の内因性ヌクレオチダーゼを熱変性(100℃、3分間)し、そしてUTP/ATP含有量を、それぞれ、UDP−グルコースピロホスホリラーゼおよびルシフェリン−ルシフェラーゼアッセイを使用して測定した。
【0062】
(BALF中のヘムの測定)
BALFヘム含有量を、Drabkinsアッセイを使用して、分光光度学的に測定した。
【0063】
(デノボのピリミジン合成およびプリン合成の全身阻害)
レフルノミド(5−メチルイソキサゾール−4−[4−トリフルオロメチル]カルボキシアニリド、1%のメチルセルロースを含んでいる蒸留水中35mg/kg)を、感染前8日間にわたって、次いで感染期間全体を通して、300μl/マウスの体積の経口栄養法によって、1日1回投与した。ビヒクルコントロールを、等しい体積の蒸留水中の1%メチルセルロースとして栄養法により与えた。ウリジン(0.9%NaCl中1g/kg)を、100μlの体積で12時間毎に、腹腔内注入により投与した(8)。6−MP(1N NaOH中35mg/kg、2M Na2HPO4を用いてpHを7.9に調整した)を、感染前5日間にわたって、次いで感染期間全体を通して、100μlの体積で24時間毎に注入することにより腹腔内投与した。
【0064】
(BALF中の炎症誘発性サイトカインの測定)
サイトカインレベルを、製造業者の指示に従ってQuantikine M ELISAキット(R & D Systems)を使用して決定した。
【0065】
(統計解析)
記述統計を、Instatソフトウェア(GraphPad,San Diego,CA)を使用して算出した。群平均間の差を、適切な事後検定を用いて、ANOVAまたはスチューデントt検定により解析した。すべてのデータ値を、平均±SEで示す。
【0066】
(結果)
(末梢血酸素化に対するRSV感染の影響)
d2における基底AFCの減損は、偽感染動物と比較した、末梢血SmO2の小さいが、重要な減少と関係していた(図2A)。SmO2の低下は、他の時点では見出されなかった。
【0067】
低酸素血症のさらなる指標として、3−リードECG記録は、AFC測定過程の間での心拍数の変化(ΔHR30%)の証拠について、d2における偽感染マウスおよびRSV感染マウスから評価した。RSVによる感染は、d2でのΔHR30%における有意な増加と関連していた(図2Bおよび図2C)。2群間で麻酔の持続時間の差はなかった。
【0068】
(鼻の電位差に対するRSV感染の影響)
偽感染動物と比較すると、2日間のRSV感染は、BALB/cマウスにおける基底NPD(鼻の電位差)にもNPDAMIL(鼻の電位差のアミロライド感受性成分)にも影響を及ぼさなかった。しかし、基底NPDおよびNPDAMILは、d4およびd8において著しく減少した(図3A〜図3C)。
【0069】
RSV感染後のNRte(鼻の経上皮抵抗)の評価として、±60nAのパルスを鼻上皮に印加することによって惹起されるNPDの変化(ΔNPD)を測定した。ΔNPDは、d4およびd8において偽感染コントロールよりも有意に大きかった(図3D〜図3E)。
【0070】
(BALFヌクレオチドに対するRSV感染およびヌクレオチド合成阻害の影響)
未感染マウスからのBALFは、等しいレベルのATPおよびUTPを含んでいた。これらは偽感染によって影響を受けなかった。しかし、RSV感染は、BALFヘム含有量の付随した増加を伴わずに(未感染マウスにおいて7.3±0.7μMであるのに対して、d2にて7.3±1.4μM)、d2においてUTPレベルおよびATPレベルの倍加をもたらした。BALFヌクレオチドは、d6においてコントロールレベルに戻った(表1)。
【0071】
BALFヌクレオチドレベルの上昇は、レフルノミド処置を受けたRSV感染マウスにおいてd2にて検出されなかった。事実、レフルノミド処置は、両方のヌクレオチドのBALF含有量を、未処置の非感染性マウスにおけるBALF含有量未満のレベルまで引き下げた(表1)。ウリジンの併用処置は、BALFのUTPレベルおよびATPレベルに対するレフルノミドの効果を逆転させるだけでなく、未処置RSV感染マウスにおけるBALFヌクレオチド含有量を越えるBALFヌクレオチド含有量の有意な増加を引き起こした。
【0072】
【表1】
(マウスの体重に対するヌクレオチド合成阻害の影響)
前処置期間の間に、メチルセルロース処置マウスまたは未処置マウスと比較して、レフルノミドは、体重の有意な低下を引き起こさなかった。さらに重要なことに、感染期間の間、レフルノミド処置は、Dlおよびd2において通常見られるBALB/cマウスの体重減少の程度を有意に減少させた(図4)。レフルノミド処置期間全体にわたるウリジンの併用投与は、この影響を妨げなかった。
【0073】
この知見とは対照的に、6−MPでの処置は、未処置のRSV感染マウスおよびレフルノミドで処置されたRSV感染マウスと比較して、前感染期間全体にわたる体重の有意な減少失、麻酔に対する乏しい寛容性(散発的な死をもたらす)およびDlおよびd2における体重減少の有意な増加をもたらした(図4B)。
【0074】
(AFCのRSV媒介性阻害に対するヌクレオチド合成阻害の影響)
RSV感染マウスのレフルノミド前処置は、d2におけるAFCのRSV誘発性阻害を遮断した(表2)。この影響は、メチルセルロース単独を栄養法で与えることによって模倣されず、併用ウリジン処置によって逆転された。ウリジン処置単独は、AFCに影響を及ぼさなかった。レフルノミド処置はまた、AFCに正常なアミロライド感受性の回復をもたらした:d2における未処置マウスでは61%であり、未感染性マウスでは−8%であるのに対して、d2にてレフルノミド処置マウスのAFCの57%はアミロライド感受性であった。
【0075】
レフルノミド治療の有益な効果とは対照的に、デノボプリン合成インヒビター6‐メルカプトプリン(6−MP)を用いた全身前処置の類似のレジメンは、d2においてAFCに影響を及ぼさなかった(表2)。最後に、レフルノミドを用いた未感染性マウスの処置は、AFCの有意な阻害をもたらした。
【0076】
【表2】
デノボピリミジン合成を全身的に遮断するために、マウスに、感染前に、次いで感染後0時間および24時間において、300ml/マウスのジヒドロオロト酸レダクターゼ(DHOR)インヒビターレフルノミド(1%メチルセルロース中に懸濁された5mg/kg)またはビヒクルを1日1回8日間にわたって栄養法により与えた。感染後48時間において、AFC滴注物(instillate)への添加なしで、AFC研究を行った。
【0077】
示される場合、レフルノミド処置期間(1mg/kgのI.P.、ql2h)の全体を通して、ウリジンの併用投与により、レフルノミド(LEF)の影響を逆転させる試みを行った。図5に示すように、レフルノミド(LEF)をマウスへ栄養法により与えることにより、感染後2日目におけるAFCのRSV媒介性阻害が逆転された。LEFの影響は、ウリジンの併用投与により防止される。LEFは、正常マウスにおけるAFCに対して影響を及ぼさなかった。
【0078】
LEF処置はまた、感染後1日目および2日目の体重減少の、そして、肺胞洗浄液の炎症誘発性サイトカイン(IFN−a、Il−1b、TNF−a、KC)濃度の有意な減少をもたらした。図6に示すように、レフルノミド(LEF)をマウスに栄養法により与えることにより、感染後2日目に肺の水分含量におけるRSV誘発性増加を逆転させた。レフルノミドの影響は、ウリジンの併用投与により防止された。重要なことに、LEFおよび/またはウリジンを用いたマウスの処置は、感染後2日目に肺組織におけるウイルス複製に影響を及ぼさなかった。
【0079】
図7に示すように、AFC滴注物中への体積を調整した陰イオンチャネル(VRAC)の広い範囲のインヒビターの添加は、感染後2日目のAFCのRSV媒介性阻害を逆転させた。使用したいくつかのインヒビターはまた、様々な他の細胞機能に対して別の影響を及ぼしたが、これらの薬剤は共通の影響としてVRAC阻害のみを有する。しかし、NPPB(100mM)は、比較的VRAC特異的である。この知見は、UTPが初期RSV感染間、VRACを介して細胞から放出されることを証明した。フルオキセチン(10mM)は、選択的セロトニン再取り込みインヒビターとしても作用する。ベラパミル(10mM)は、Ca++チャネル遮断剤としても作用する。タモキシフェン(25mM)は、抗エストロゲンでもある。
【0080】
RSウイルスは、重大な呼吸上皮細胞病理を誘発することなく、BALB/cマウスモデルの感染の後の初期の時点でアミロライド感受性AFC(能動的なNa+輸送を表す)を阻害する。さらに、AFCに対するRSVの阻害効果は、肺のP2Yプリン作用性レセプターに対するその作用によって、UTPにより媒介される。
【0081】
感染後2日目のAFCのRSV誘発性阻害を媒介するUTPは、デノボ合成に由来し、そして、この経路の阻害はAFCのRSV誘発性減少を防止し、ウイルス複製を変えることなく肺水分含量を増加させる。さらに、感染後2日目にAFCのRSV誘発性阻害を媒介するUTPは、体積が調整された陰イオンチャネルを介して放出される。
【0082】
感染後2日目のAFCのRSV誘発性阻害に対するレフルノミドの影響を実証した。マウスを、経口栄養法によって8日間、レフルノミド(5mg/kg、1%メチルセルロース中に懸濁、1日1回)を用いて前処置し、次いでRSVに感染させ、そして感染後24時間目に再びレフルノミドで処置した。このレジメンにより、感染後2日目にAFCのRSV誘発性阻害が防止された。この影響は、メチルセルロースを単独で栄養法により与えることによって模倣されず、レフルノミド処置期間全体を通してのウリジンの併用投与(10日間の1mg/kgのi.p.ql2h)によって逆転された。さらに、ウリジン処置単独は、AFCに影響を及ぼさなかった。レフルノミド処置も、正常な(偽感染)マウスのAFCに対して有害な影響を有さなかった。
【0083】
【表3】
レフルノミドの阻害効果は、単なる抗ウイルス効果の結果でなかった。ウイルス複製は、メチルセルロース、レフルノミドまたはウリジンでの処置によって影響を受けなかった。それゆえ、AFCのRSV誘発性阻害の抑制は、ウイルス複製を防止することの単純な結果ではなく、デノボピリミジン合成に対するレフルノミドの特異的阻害効果の結果であった。
【0084】
レフルノミド治療は、肺の湿重量:乾燥重量の比率(肺の水分含量および水腫形成の指標)の正常化と関係していた。この比率は、RSV感染後2日目に増加する。ウリジンの併用処置は、この影響を逆転させ、湿重量:乾燥重量の比率を(偽感染マウスと比較して)増加させた。レフルノミド治療は、感染後1日目および2日目のBALB/cマウスに通常見られる体重減少の程度を有意に減少させた。このことは、食欲(おそらく抗炎症効果に関連がある)に対する有益な効果を示唆する。これはまた、この用量での非常に限られたレフルノミド毒性を示唆した。ある程度の低酸素血症が通常明白である場合、レフルノミド治療は、感染後2日目の平均血中O2飽和度を改善した。レフルノミド治療は、肺胞洗浄液の炎症誘発性サイトカイン(インターフェロン−α、インターロイキン−1β、KC[ヒトインターロイキン8のネズミホモログ]および腫瘍壊死因子−α)のレベルを有意に低下させた。これは、併用ウリジン治療によって、ほんの部分的に逆転された(従って、この薬物による非特異的チロシンキナーゼ阻害の結果で一部あり得る)効果である。
【0085】
まとめると、これらのデータは、レフルノミドが、直接的な抗ウイルス効果を有せずに、RSV疾患に対していくつかの有益な効果を有することを証明した。これらの効果は、低酸素血症および肺水腫の排除、体重の改善および肺の炎症の減少を含んでいた。
【0086】
(肺水分含量に対するヌクレオチド合成阻害の影響)
レフルノミドを用いた全身治療は、2日目の正常な肺湿重量:乾燥重量の比率を回復させ、一方、レフルノミド処置期間の全体を通してのウリジンの併用投与はこの効果を防止した(図8A)。しかし、6−MP(これは、2日目にAFCに対して有益な効果を有さなかった)を用いた全身治療は、2日目の正常な肺湿重量:乾燥重量の比率を変化させなかった(図8B)。
【0087】
(炎症誘発性サイトカインに対するヌクレオチド合成阻害の影響)
レフルノミドは、免疫抑制剤として臨床的に使われる。治療レジメンの効力を確認するために、BALF中の炎症誘発性サイトカインのレベルに対するその効果を分析した。IL−4もIL−10も、感染後のいかなる時点でも検出可能ではなかった。ほんの少量のIL−1βおよびKC(ヒトIL−8のネズミホモログ)は、偽感染マウスからのBALF中で検出された(表4)。IFN−γ以外の他の全てのサイトカインの有意な量がd2に存在したが、IL−1β、KCおよびTNF−γのレベルは、d4〜d8で減少した。有意な量のIFN−γが、d6およびd8においてBALF中でのみ見出された。
【0088】
レフルノミド治療は、d2におけるBALF中のIFN−α、IL−1β、KCおよびTNF−αのレベルを顕著に低下させた(表4)。IFN−αを除いて、この効果は、併用ウリジン治療によってほんの部分的に逆転された。
【0089】
重要なことに、6−MP治療は、レフルノミド治療によって引き起こされるレベルに匹敵する、BALF中のIFN−α、IL−1β、KC、およびTNF−αのレベルの低下をもたらした(表4)。d2においていずれかの薬剤で処置しマウスにおいて、IFN−α、IL−1β、KC、およびTNF−αのレベルの間に有意差は存在しなかった。
【0090】
【表4】
(マウス肺におけるRSV複製に対するヌクレオチド合成阻害の影響)
d2でのウイルス複製は、レフルノミド処置でもウリジン処置でも影響を受けなかった(図9A)。同様に、6−MP前処置は、d2においてマウス肺のウイルス複製に対して有意な阻害効果を有しなかった(図9B)。レフルノミド処置を8日間の感染期間全体を通して続けた場合、ウイルス複製はd8において高レベルで維持された(図9C)。しかし、d2においてレフルノミド処置を中断した場合、ウイルス複製はd8において最小限増加するだけであった(図9D)。
【0091】
(RSV感染後の低酸素血症に対するレフルノミド治療の影響)
レフルノミド治療は、d2においてSmO2読み取り値の正常化をもたらした(図10A)。同様に、レフルノミド治療は、d2においてAFC手順の間にRSV感染マウスに見られるΔHR30%の増加を防止した(図10B)。
【0092】
(RSV感染後の鼻の電位差に対するレフルノミド治療の影響)
感染期間全体を通してのレフルノミドを用いた処置は、基底NPDおよびNPDAMIL(図11A〜11C)のRSV誘発性低下を防止した。
【0093】
(AFCのRSV媒介性阻害に対する陰イオンチャネル遮断の影響)
d2でのAFCのRSV媒介性阻害は、いくつかの構造的に無関係なVRACインヒビターの各々のAFC滴注物への添加により遮断された:フルオキセチン、タモキシフェン、クロミフェン、ベラパミル、NPPBまたはIAA−94(表5)。この効果は、500nM UTPの滴注物への併用添加によって逆転された。対照的に、d2でのAFCは、それぞれ、グリベンクラミドおよびニフルム酸による、嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質およびCa2+活性化Cl−チャネル活性の阻害によって影響を受けなかった。
【0094】
【表5】
(AFCのRSV媒介性阻害のA77−1726の影響)
以前から公知のように、RSウイルス(RSV)A2株を用いたBALB/cマウスの鼻腔内感染は、感染後(p.i.)2日目および4日目での基底AFCおよびアミロライド感受性AFCの減少をもたらし、この阻害は、UTPにより媒介され、P2Yレセプター(AJPLCMP,2004)を経て作用した。感染後2日目でのAFCのRSV媒介性阻害は、AFC滴注物への25mMのA77−1726(これは、デノボピリミジン合成を遮断した)の添加により防止されるが、25mMのミコフェノール酸または6‐メルカプトプリン(両方とも、デノボプリン合成を遮断する)のいずれによっても防止されないことがさらに示された。A77−1726により媒介される遮断は、50mMウリジン(これは、サルベージ経路を介するピリミジン合成を許容する)の添加によって逆転されたが、25mMゲニステイン(これは、A77−1726の非特異的チロシンキナーゼインヒビター効果を模倣する)によっては再現されなかった。このことは、A77−1726の遮断効果がデノボピリミジン合成経路により媒介されたことを示す。同様に、デノボピリミジン合成インヒビターレフルノミド(1%メチルセルロース中5mg/kgのp.o.を10日間)を用いたマウスの処置は、AFCに対するRSVの阻害効果を逆転させた。さらに、体積を調整した陰イオンチャネル(VRAC)機能のインヒビター(例えば、フルオキセチン(10mM)、ベラパミル(10mM)およびタモキシフェン(25mM))はまた、感染後2日目にAFCのRSV媒介性阻害を遮断した。まとめて考えると、これらのデータは、RSV感染の間にAFCを阻害するUTPがデノボピリミジン合成に由来するとともにVRACを介して放出されることを実証した。これらの経路は、AFCのUTPによって誘導される減少を防止する新しい治療アプローチを提供する。これは、RSV感染後の、体積が増加した流体粘液、気道うっ血および鼻漏の形成に寄与する。
【0095】
図12に示すように、RSVでの感染は、感染後(p.i.)2日目および4日目での基底肺胞流体クリアランス(AFC)を有意に阻害する。非感染マウス(U)と比較して、偽感染(M)は、AFCに影響を及ぼさない。基底AFCは、2日目において(偽感染値から)43%阻害され、4日目において26%阻害された。AFCのアミロライド感受性もまた、1日目に減少しており、2日目および4日目には存在しなかった。
【0096】
感染後2日目でのAFCのRSV媒介性阻害は、アピラーゼ(これはUTPおよびATPの両方を分解する)またはUDP−グルコースピロホスホリラーゼ(これは、グルコース一リン酸および無機ピロホスファターゼの存在下でUTPを分解する)をAFC滴注物に添加することによって逆転されたが、ヘキソキナーゼ(これは、ブドウ糖の存在下でATPを分解する)の添加によっては逆転されなかった。P2Yレセプター特異的アンタゴニスト(200mM XAMR0721)を滴注物に添加することによっても、感染後2日目にてAFCのRSV媒介性阻害が逆転した。
【0097】
5%脂肪酸非含有BSAを含む0.3mlの等モル量の(isosmolar)NaClの気管内滴注後30分間の期間にわたって、正常な体温および血中ガスを有する、麻酔をかけ、通気されたBALB/cマウスについて、AFC研究を行った。1群あたりで分析したマウス数を、各グラフの関連した棒に列挙する。
【0098】
図13に示すように、AFC滴注物にジヒドロオロト酸レダクターゼインヒビター(25μM A77−1726)を添加することにより、感染後2日目にてAFCのRSVり媒介性阻害が逆転した。A77−1726の効果は、AFC滴注物への50mMウリジンの併用添加によって完全に逆転されたが、25mMゲニステイン(非特異的なチロシンキナーゼインヒビター)によっては再現されない。従って、A77−1726の効果は、デノボピリミジン合成経路に特異的である。
【0099】
図14に示すように、AFC滴注物に対するIMPデヒドロゲナーゼインヒビター(25μMの6−MPまたはMPA)の添加は、感染後2日目でのAFCのRSV媒介性阻害に対してごく軽微な影響しか及ぼさなかった。IMPデヒドロゲナーゼインヒビターの影響が小さいのは、ATPの枯渇の結果であった。ATPは、デノボピリミジン合成のために必要な前駆体である。MPAの影響は、プリンサルベージ経路を介したATPの合成を許容する、AFC滴注物への50mMヒポキサンチン(HXA)の併用添加によって完全に逆転された。この知見は、RSV感染注のATP貯蔵が少ないことを実証した。
【0100】
(感染後2日目でのAFCのRSV誘発性阻害は、デノボピリミジン合成のインヒビターであるA77−1726によって防止される)
A77−1726の影響は、外因性ウリジンの添加により遮断された。外因性ウリジンは、サルベージ経路を介したUTP合成を促進する。そして、A77−1726の影響は、ゲニステインによって再現されない。ゲニステインは、A77−1726の非特異的チロシンキナーゼ阻害効果を模倣する。おそらくATP合成(ATPは、デノボでのピリミジン合成のために必要な前駆体である)の減少の結果として、デノボプリン合成のインヒビター(例えば、ミコフェノール酸(MPA)および6‐メルカプトプリン(6−MP)は、AFCのRSV媒介性阻害に対してごくわずかな遮断効果を有した。さらに、この影響は、外因性ヒポキサンチンの添加により遮断された。外因性ヒポキサンチンは、サルベージ経路を介したATP合成を促進する。興味深いことに、感染後2日目のAFCのRSV誘発性阻害はまた、体積を調整された陰イオンチャネル(VRAC)(これは、ATPおよびUTPについて放出機構と提唱されている)の様々な異なるインヒビターによって防止され、そしてRhoキナーゼ(これは、RSVにより活性化されることが公知であり、VRACを活性化することもまた公知である)の阻害により防止された。
【0101】
【表6】
(感染後2日目でのAFCのRSV誘発性阻害に対する感染後でのA77−1726処置)
マウスを、A77−1726の鼻腔内投与(100μl正常生理食塩水中50μM、両方の鼻孔に分けた)によって感染後24時間にて処置した場合、感染後24時間でのAFCに対するRSVの阻害効果は完全に遮断された。このことは、肺に局所的に投与した場合、A77−1726がデノボピリミジン合成に対して長期にわたる阻害効果を有したことを実証する。A77−1726の鼻腔内前処置はまた、RSV感染の翌日に増加する肺の湿重量:乾燥重量の比率(肺の水分含量および水腫形成の指標)の正常化とも関係していた。
【0102】
【表7】
さまざまな改変および変更は、本明細書において記載されている化合物、組成物および方法になされ得る。本明細書において記載されている化合物、組成物および方法の他の局面は、明細書を考慮することにより、そして本明細書において開示される化合物、組成物および方法を実施することにより、明らかである。明細書および実施例が例示とみなされることが意図される。
【0103】
【表8−1】
【0104】
【表8−2】
【0105】
【表8−3】
【0106】
【表8−4】
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、ピリミジン生合成経路およびプリン生合成経路を図示している概略図である。
【図2A】図2は、末梢酸素化に対するRSV感染の影響を示す。(A)意識のあるBALB/cマウスにおけるSmO2(混合酸素飽和)に対するRSV感染の影響の時間経過(1日につきn=10〜36)。*偽感染したマウスと比較して、p<0.05。
【図2B】図2は、末梢酸素化に対するRSV感染の影響を示す。(B)d2での偽感染したマウスおよびRSV感染したマウスについての肺胞流体クリアランス(AFC)期間の始めと終わりのサンプル3−リードECG(心電図)トレース。
【図2C】図2は、末梢酸素化に対するRSV感染の影響を示す。(C)d2でのΔHR30%でのRSV感染の影響(偽感染したマウスについてn=17、RSV感染したマウスについてn=11)。
【図3A】図3は、BALB/cマウスにおける鼻の電位差(NPD)に対するRSV感染の影響を示す。(A)d4での偽感染したマウスおよびRSV感染したマウスにおけるNPDの代表的トレース。すべてのグループについてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、矢印は、100μMアミロライド添加の時間を示す。*偽感染した動物と比較して、p<0.05、**偽感染した動物と比較して、p<0.005。
【図3B】図3は、BALB/cマウスにおける鼻の電位差(NPD)に対するRSV感染の影響を示す。(B)基底NPDに対するRSV感染の影響。すべてのグループについてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、矢印は、100μMアミロライド添加の時間を示す。*偽感染した動物と比較して、p<0.05、**偽感染した動物と比較して、p<0.005。
【図3C】図3は、BALB/cマウスにおける鼻の電位差(NPD)に対するRSV感染の影響を示す。(C)NPDのアミロライド感受性成分(NPD AMIL)に対するRSV感染の影響。すべてのグループについてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、矢印は、100μMアミロライド添加の時間を示す。*偽感染した動物と比較して、p<0.05、**偽感染した動物と比較して、p<0.005。
【図3D】図3は、BALB/cマウスにおける鼻の電位差(NPD)に対するRSV感染の影響を示す。(D)d4にて偽感染したマウスおよびRSV感染マウスの鼻上皮に対して±60nAパルスを印加したNPDにおける変化の中でサンプルトレース。すべてのグループについてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、矢印は、100μMアミロライド添加の時間を示す。*偽感染した動物と比較して、p<0.05、**偽感染した動物と比較して、p<0.005。
【図3E】図3は、BALB/cマウスにおける鼻の電位差(NPD)に対するRSV感染の影響を示す。(E)鼻上皮に対して±60nAパルスを印加したΔNPDに対するRSV感染の影響。すべてのグループについてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、矢印は、100μMアミロライド添加の時間を示す。*偽感染した動物と比較して、p<0.05、**偽感染した動物と比較して、p<0.005。
【図4A】図4は、RSV感染後の、体重に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(A)BALB/cマウスにおけるRSV感染後の急な体重減少に対するレフルノミド(UTP合成のインヒビター)の影響(未処置マウスについてn=35、レフルノミド処置したマウスについてn=19)。*各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.05、**各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.005、***各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.0005。
【図4B】図4は、RSV感染後の、体重に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(B)BALB/cマウスにおけるRSV感染後の急な体重減少に対する6−MP処置の影響(未処置マウスについてn=35、6−MP処置マウスについてn=30)。*各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.05、**各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.005、***各時点の未処置マウスにおける体重と比較して、p<0.0005。
【図5】図5は、レフルノミド(LEF)をマウスに栄養法で与えることの効果により、感染後2日目でのAFCのRSV媒介性阻害を逆転させることを示す。LEFの影響は、ウリジンの併用投与により防止される。
【図6】図6は、レフルノミド(LEF)をマウスに栄養法で与えることの効果により、感染後2日目での肺水含量におけるRSV誘導性増加を逆転させることを示す。レフルノミドの影響は、ウリジンの併用投与により防止される。重要なことに、LEFおよび/またはウリジンを用いたマウスの処置は、感染後2日目に肺組織のウイルス複製に対して影響を及ぼさない。
【図7】図7は、AFC滴注物に対する体積を調整した陰イオンチャネル(VRAC)のの広範囲のインヒビターの添加の影響により、感染後2日目でのAFCのRSV媒介性阻害を逆転させることを示す。
【図8A】図8は、RSV感染後の肺水分含量に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(A)d2での肺水分含量に対するレフルノミドおよびウリジン処置の影響(すべての群についてn=7〜8)。***未感染マウスにおける湿重量:乾燥重量比率と比較して、p<0.0005。
【図8B】図8は、RSV感染後の肺水分含量に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(B)d2での肺水分含量に対する6−MPの影響(未感染マウスについてn=8;未処置のRSV感染マウスについてn=7;6−MP処置マウスについてn=15)。肺水分含量を、湿重量:乾燥重量比率によって測定した。***未感染マウスにおける湿重量:乾燥重量比率と比較して、p<0.0005。
【図9A】図9は、マウス肺におけるRSV複製に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(A)d2でのウイルス複製に対するレフルノミドおよびウリジン処置の影響(未処置のウリジン処置マウスおよびレフルノミドおよびウリジン処置マウスについてn=6;レフルノミド処置マウスについてn=12)。破線は、アッセイの検出限界を示す。***未処置マウスにおけるウイルス力価と比較して、p<0.0005。
【図9B】図9は、マウス肺におけるRSV複製に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(B)d2でのウイルス複製に対する6−MPの影響(未処置マウスについてn=6;6−MP処置マウスについてn=12)。破線は、アッセイの検出限界を示す。***未処置マウスにおけるウイルス力価と比較して、p<0.0005。
【図9C】図9は、マウス肺におけるRSV複製に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(C)d8でのウイルス複製に対する継続したレフルノミド処置の影響(未処置マウスについてn=6;レフルノミド処置マウスについてn=12)。破線は、アッセイの検出限界を示す。***未処置マウスにおけるウイルス力価と比較して、p<0.0005。
【図9D】図9は、マウス肺におけるRSV複製に対するヌクレオチド合成阻害の影響を示す。(D)d8でのウイルス複製に対するd2へのレフルノミド処置の影響(両群についてn=6)。破線は、アッセイの検出限界を示す。***未処置マウスにおけるウイルス力価と比較して、p<0.0005。
【図10A】図10は、RSV感染後の低酸素血症に対するレフルノミド処置の影響を示す。(A)d2でのマウスのSmO2に対するレフルノミド処置の影響(未処置のRSV感染マウスについてn=8;レフルノミド処置したRSV感染マウスについてn=7)。*未処置の値と比較して、p<0.05。
【図10B】図10は、RSV感染後の低酸素血症に対するレフルノミド処置の影響を示す。(B)RSV感染およびd2でのΔHR30%でのレフルノミド処置の影響(未処置のRSV感染マウスについてn=11;レフルノミド処置したRSV感染マウスについてn=9)。*未処置の値と比較して、p<0.05。
【図11A】図11は、BALB/cマウスにおけるNPDに対するレフルノミド処置の影響を示す。(A)d4でのレフルノミド処置したRSV感染マウスにおけるNPDのサンプルトレース。すべての群についてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、そして矢印は100μMアミロライド添加時間を示す。*未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.05、**未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.005。
【図11B】図11は、BALB/cマウスにおけるNPDに対するレフルノミド処置の影響を示す。(B)RSV感染マウスにおける基底NPDに対するレフルノミド処置の影響。すべての群についてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、そして矢印は100μMアミロライド添加時間を示す。*未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.05、**未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.005。
【図11C】図11は、BALB/cマウスにおけるNPDに対するレフルノミド処置の影響を示す。(C)RSV感染マウスにおけるNPDAMILに対するレフルノミド処置の影響。すべての群についてn=5〜9。サンプルトレース上の破線は、チャート上の0mVを示し、そして矢印は100μMアミロライド添加時間を示す。*未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.05、**未処置動物におけるNPDと比較して、p<0.005。
【図12】図12は、RSVでの感染が、感染後(i.p.)2日目および4日目の基底肺胞流体クリアランス(AFC)を有意に阻害することを示す。偽感染(M)は、非感染マウス(U)と比較して、AFCに影響を及ぼさない。基底AFCは、2日目に(偽感染の値から)43%阻害され、そして4日目に26%阻害された。AFCのアミロライド感受性はまた、1日目に減少しており、そして感染後2日目および4日目には存在しなかった。
【図13】図13は、AFC滴注物に対するジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビター(25mμ A77−1726)の添加が、感染後2日目にAFCのRSV媒介性阻害を逆転させることを示す。A77−1726の影響は、50mMウリジンのAFC滴注物への併用添加によって完全に逆転されるが、25mMゲニステイン(非特異的チロシンキナーゼインヒビター)により再現されない。
【図14】図14は、AFC滴注物に対するIMPデヒドロゲナーゼのインヒビター(25μMの6−MPまたはMPA)の添加が感染後2日目のAFCのRSV媒介性阻害に軽微な影響しか及ぼさないことを示す。IMPデヒドロゲナーゼインヒビターの小さい効果はATP枯渇の結果であり、そしてそれはデノボピリミジン合成のために必要な前駆体である。MPA効果は50mMヒポキサンチン(HXA)のAFC滴注物への併用添加によって完全に逆転され、プリンサルベージ経路を介するATP合成を許容した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピリミジン合成インヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物であって、該組成物は、被験体の肺上皮細胞への局所投与に適している、組成物。
【請求項2】
前記組成物が吸入剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物がエアロゾル化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が霧状にされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ピリミジン合成インヒビターがジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビターである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が鼻腔内投与に適した形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記肺上皮細胞が、前記被験体の鼻腔、鼻の通路、鼻咽頭、咽頭、気管、気管支、細気管支または肺胞に位置する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記肺上皮細胞が気管支肺胞上皮細胞である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
治療量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を少なくとも1測定用量含むデバイスであって、各測定用量は、被験体における肺疾患を処置するための治療量またはその一部のピリミジン合成インヒビターを含む、デバイス。
【請求項12】
組成物が、被験体の肺上皮細胞への局所投与に適応可能な形態である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記組成物が吸入剤である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記組成物がエアロゾル化される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記組成物が霧状にされる、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドである、請求項11に記載のデバイス。
【請求項17】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項18】
前記ピリミジン合成インヒビターがジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビターである、請求項11に記載のデバイス。
【請求項19】
前記組成物が鼻腔内投与に適した形態である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項20】
前記肺疾患がRSウイルス感染である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項21】
肺上皮細胞によるNa+依存性流体クリアランスを増加させる方法であって、該細胞と有効量のピリミジン合成インヒビターとを接触させる工程を包含し、該接触により、該細胞によるNa+依存性流体クリアランスの増加が引き起こされる、方法。
【請求項22】
前記肺上皮細胞をインビボで接触させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記肺上皮細胞をインビトロで接触させる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記ピリミジン合成インヒビターがジヒドロオロト酸レダクターゼインヒビターである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
被験体における肺疾患を処置する方法であって、該被験体における複数の肺上皮細胞と有効量のピリミジン合成インヒビターとを接触させる工程を包含し、該有効量のピリミジン合成インヒビターは、該被験体におけるNa+依存性肺胞流体クリアランスの増加を引き起こす、方法。
【請求項28】
前記肺上皮細胞が鼻腔、鼻の通路、鼻咽頭、咽頭、気管、気管支、細気管支または肺胞に位置する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記肺上皮細胞が気管支肺胞上皮細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記肺疾患がRSウイルス感染である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記有効量のピリミジン合成インヒビターがジヒドロオロト酸レダクターゼインヒビターを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
RSウイルス感染の危険がある被験体におけるRSウイルス感染の一つ以上の症状または身体的徴候を減らす方法であって、有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項35】
前記ピリミジン合成インヒビターが、ジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビターである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
RSウイルス感染の危険がある被験体を同定する工程、および有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項39】
前記ピリミジン合成インヒビターが、ジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビターである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドである、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
RSウイルス感染を有する被験体を同定する工程、および該被験体におけるNa+依存性肺胞流体を減らすのに有効な量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項43】
RSウイルス感染を有する被験体を処置する方法であって、請求項1に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項44】
RSウイルス感染を有する被験体を処置する方法であって、請求項2に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項45】
RSウイルス感染を有する被験体を処置する方法であって、請求項5に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項46】
RSウイルス感染を有する被験体を処置する方法であって、請求項8に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項47】
肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法であって、肺上皮細胞と該試験化合物とを、過剰のUTPの存在下で接触させる工程、該肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを検出する工程、を包含し、コントロールと比較したNa+依存性流体取り込みの増加は、肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す、方法。
【請求項48】
前記細胞をインビボで接触させる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞をインビトロで接触させる、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記UTPを除去する工程、および前記Na+依存性流体取り込みの増加の可逆性を検出する工程をさらに包含する、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法であって、該試験化合物と、ピリミジン合成遺伝子をコードする異種核酸を発現する細胞とを接触させる工程、および該細胞によるNa+依存性流体取り込みを検出する工程、を包含し、コントロールレベルと比較したNa+依存性流体取り込みの増加は、Na+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す、方法。
【請求項52】
前記細胞をインビボで接触させる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞をインビトロで接触させる、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
呼吸上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法であって、H441細胞またはH441細胞株にRSウイルスを感染させる工程、該感染した細胞または細胞株とピリミジン合成インヒビターとを接触させる工程、および該感染した細胞または該感染した細胞株の細胞を越えるイオン輸送を測定する工程を包含し、コントロールレベルと比較したイオン輸送の増加は、Na+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す、方法。
【請求項55】
前記細胞をインビボで接触させる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記細胞をインビトロで接触させる、請求項54に記載の方法。
【請求項1】
ピリミジン合成インヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物であって、該組成物は、被験体の肺上皮細胞への局所投与に適している、組成物。
【請求項2】
前記組成物が吸入剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物がエアロゾル化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が霧状にされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ピリミジン合成インヒビターがジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビターである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が鼻腔内投与に適した形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記肺上皮細胞が、前記被験体の鼻腔、鼻の通路、鼻咽頭、咽頭、気管、気管支、細気管支または肺胞に位置する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記肺上皮細胞が気管支肺胞上皮細胞である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
治療量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を少なくとも1測定用量含むデバイスであって、各測定用量は、被験体における肺疾患を処置するための治療量またはその一部のピリミジン合成インヒビターを含む、デバイス。
【請求項12】
組成物が、被験体の肺上皮細胞への局所投与に適応可能な形態である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記組成物が吸入剤である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記組成物がエアロゾル化される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記組成物が霧状にされる、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドである、請求項11に記載のデバイス。
【請求項17】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項18】
前記ピリミジン合成インヒビターがジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビターである、請求項11に記載のデバイス。
【請求項19】
前記組成物が鼻腔内投与に適した形態である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項20】
前記肺疾患がRSウイルス感染である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項21】
肺上皮細胞によるNa+依存性流体クリアランスを増加させる方法であって、該細胞と有効量のピリミジン合成インヒビターとを接触させる工程を包含し、該接触により、該細胞によるNa+依存性流体クリアランスの増加が引き起こされる、方法。
【請求項22】
前記肺上皮細胞をインビボで接触させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記肺上皮細胞をインビトロで接触させる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記ピリミジン合成インヒビターがジヒドロオロト酸レダクターゼインヒビターである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
被験体における肺疾患を処置する方法であって、該被験体における複数の肺上皮細胞と有効量のピリミジン合成インヒビターとを接触させる工程を包含し、該有効量のピリミジン合成インヒビターは、該被験体におけるNa+依存性肺胞流体クリアランスの増加を引き起こす、方法。
【請求項28】
前記肺上皮細胞が鼻腔、鼻の通路、鼻咽頭、咽頭、気管、気管支、細気管支または肺胞に位置する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記肺上皮細胞が気管支肺胞上皮細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記肺疾患がRSウイルス感染である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記有効量のピリミジン合成インヒビターがジヒドロオロト酸レダクターゼインヒビターを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
RSウイルス感染の危険がある被験体におけるRSウイルス感染の一つ以上の症状または身体的徴候を減らす方法であって、有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項35】
前記ピリミジン合成インヒビターが、ジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビターである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
RSウイルス感染の危険がある被験体を同定する工程、および有効量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項39】
前記ピリミジン合成インヒビターが、ジヒドロオロト酸レダクターゼのインヒビターである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ピリミジン合成インヒビターがレフルノミドである、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記ピリミジン合成インヒビターがA77−1726である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
RSウイルス感染を有する被験体を同定する工程、および該被験体におけるNa+依存性肺胞流体を減らすのに有効な量のピリミジン合成インヒビターを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項43】
RSウイルス感染を有する被験体を処置する方法であって、請求項1に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項44】
RSウイルス感染を有する被験体を処置する方法であって、請求項2に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項45】
RSウイルス感染を有する被験体を処置する方法であって、請求項5に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項46】
RSウイルス感染を有する被験体を処置する方法であって、請求項8に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項47】
肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法であって、肺上皮細胞と該試験化合物とを、過剰のUTPの存在下で接触させる工程、該肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを検出する工程、を包含し、コントロールと比較したNa+依存性流体取り込みの増加は、肺上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す、方法。
【請求項48】
前記細胞をインビボで接触させる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞をインビトロで接触させる、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記UTPを除去する工程、および前記Na+依存性流体取り込みの増加の可逆性を検出する工程をさらに包含する、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法であって、該試験化合物と、ピリミジン合成遺伝子をコードする異種核酸を発現する細胞とを接触させる工程、および該細胞によるNa+依存性流体取り込みを検出する工程、を包含し、コントロールレベルと比較したNa+依存性流体取り込みの増加は、Na+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す、方法。
【請求項52】
前記細胞をインビボで接触させる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞をインビトロで接触させる、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
呼吸上皮細胞によるNa+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物についてスクリーニングする方法であって、H441細胞またはH441細胞株にRSウイルスを感染させる工程、該感染した細胞または細胞株とピリミジン合成インヒビターとを接触させる工程、および該感染した細胞または該感染した細胞株の細胞を越えるイオン輸送を測定する工程を包含し、コントロールレベルと比較したイオン輸送の増加は、Na+依存性流体取り込みを増加させる試験化合物を示す、方法。
【請求項55】
前記細胞をインビボで接触させる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記細胞をインビトロで接触させる、請求項54に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−500393(P2008−500393A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527516(P2007−527516)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017939
【国際公開番号】WO2006/001961
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(506387487)ザ ユーエービー リサーチ ファンデーション (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017939
【国際公開番号】WO2006/001961
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(506387487)ザ ユーエービー リサーチ ファンデーション (4)
【Fターム(参考)】
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