説明

ファイル共有システム、ファイル共有方法ならびにファイル共有プログラム

【課題】 ファイル共有サービス上で利用状況に即してファイルの所有権限を利用者間で移転させることを目的とするファイル共有システム、ファイル共有方法ならびにファイル共有プログラムの提供。
【解決手段】 ファイル共有サービス上でファイルのアクセス頻度を履歴として管理し、所有権限を有する利用者とアクセス頻度の高い利用者間で予め設定された移転条件を満たした場合は所有者権限をアクセス頻度の高い利用者に移転することを特徴とするファイル共有システム、ファイル共有方法ならびにファイル共有プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書ファイルを複数の利用者間で共有するためのファイル共有システム、ファイル共有方法ならびにファイル共有プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子文書ファイルを共有することは広く普及しているが、セキュリティ確保の必要性が高まるとともに、個々のファイルのアクセス権限を細かくメンテナンスすることが求められている。しかしファイル共有の利用規模が拡大するにつれてそのメンテナンス負荷も増大しており、負荷軽減のために一括でアクセス権限を変更する機能も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−21450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら一括ではなく、個々のファイル毎にそのファイルの利用状況に応じたアクセス権限の変更が必要な場合も多い。
【0004】
ファイルの新規作成者が自動的にファイルの所有者権限を持ち、所有者権限でなければできないファイル操作権限が与えられるシステムは多く見られる。例えば多くのUNIX(登録商標) OS環境での標準的な初期設定では所有者のみ書込み権限を有し、所有者が所属するユーザグループ、さらに第三者に対しては読み込み権限のみが与えられる。さらにその権限の変更は所有者か管理者権限を持つ利用者しかできないように制限されている。
【0005】
このようなファイル共有システムでは所有者自身がその必要性を認識していないが、他の利用者からアクセス権限の変更を望まれていることがある。例えば、部下に作成させた資料ファイルを上司が使用する場合、繰り返し使用していくうちに微少な修正や加筆が必要になってくることは現実的によく見られる状況である。わざわざファイルの所有者である部下やシステム管理者に頼むほどでもないとの意識が働き、ファイルの複製を作成して複製の方を修正することが回避策として取られることが多い。
【0006】
こうした複製が無秩序に行われると、そもそもアクセス権限の管理をしている意義や実効が失われ、更新管理・版管理といった文書管理も行えず、記憶領域の浪費にも繋がるといった問題がある。しかしながらアクセス権限の変更作業はその必要に迫られていないファイルの所有者側が行わねばならず、所有者側の負荷増大に繋がるという問題もある。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するために、ファイルの所有者やシステム管理者の負荷を増やすことなく、ファイルの所有者権限を該ファイルの利用状況に応じて移転するファイル共有システム、ファイル共有方法ならびにファイル共有プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために、
ファイル共有サービスを実現するファイル共有手段と、
ファイル共有サービス上でのファイルのアクセス履歴を収集・保存・検索・取得する履歴管理手段と、
を持つファイル共有システムであって、
ファイルがアクセスされた際にアクセスした利用者情報を履歴に保存する手段と、
前記アクセスされたファイルのアクセス頻度情報を前記履歴管理手段から取得する手段と、
前記取得したアクセス頻度情報を予め設定された条件に基づき比較判断する手段と、
前記判断結果に基づいて該ファイルの所有権限を移転する手段、
ないし、複数の利用者に所有権限の移転を実施するように通知し、予め設定された期間に限り前記複数の利用者に対して該ファイルの所有権限の変更権限を付与する手段と、
該ファイルのアクセス頻度情報をクリアする手段と、
から構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、電子文書ファイルの共有システムにおいて、ファイルの所有権限を有する利用者とそのファイルを頻繁に利用する利用者が時間の経過などとともに乖離した場合に、ファイルの所有権限が現在の主たる利用者に元の所有者やシステム管理者の関与なく移転されるので、元の所有者や管理者の負荷を増やすことなくファイルの所有権限とそれに付随する管理権限が適切な利用者に移管される。
【0010】
また、複数の利用者が所有者よりも頻繁に利用する場合にはシステム管理者、所有者、上位複数名の利用者に対して所有権の移転先候補が示され、期間限定の所有権移転権限が与えられることにより、システム管理者に依頼することなく、当事者間で移転先を決定し、移転することが可能になる。
【0011】
これらによりファイル共有システム全体で利用者・管理者の負荷を増やすことなくファイルの所有権限・管理権限が常に適切な利用者に移管されることになり、適切なアクセス権限が維持されることによるセキュリティの維持が図られるとともに、文書管理の適正化、記憶容量の浪費の削減といった副次的効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施に好適なファイル共有システムのシステム構成図である。
【0014】
ファイル共有サーバ100、クライアント130aならびに130bがネットワーク150を介して相互に接続される。
【0015】
サーバ100ならびにクライアント130a、130bはそれぞれ情報処理装置(コンピュータ)で構成される。それぞれの詳細については後述する。なおクライアント130a、130bは同一構成のものであり、明示的に区別する必要のない場合にはクライアント130と総称する。また使用形態によってはクライアント130a、130bと分けずに1台のクライアント130としてもよい。逆にサーバ100はその機能を分割し、複数台の情報処理装置で機能を構成してもよい。
【0016】
ネットワーク150はEthernet(登録商標)等の通信規格を満足する複数のルータ、スイッチ、ケーブル等から構成される。本発明においては各サーバ・クライアント間の通信が支障なく行えるものであればその通信規格、規模、構成を問わない。故にインターネットからLAN(Local Area Network)にまで適用可能である。
【0017】
図2は上述のサーバ100ならびにクライアント130に好適な情報処理装置(コンピュータ)の詳細ブロック図である。
【0018】
CPU 200、1次記憶装置210、2次記憶装置220、ユーザ入出力I/F 230、ネットワークI/F 250が内部バス260を介して相互に接続されている。
【0019】
ここで1次記憶装置210はRAMに代表される書込み可能な高速の記憶装置で、OSや各種プログラム及び各種データがロードされ、またOSや各種プログラムの作業領域としても使用される。
【0020】
2次記憶装置220はFDDやHDD、フラッシュメモリ、CD−ROMドライブ等に代表される不揮発性を持った記憶装置で、OSや各種プログラム及び各種データの永続的な記憶領域として使用される他に、短期的な各種データの記憶領域としても使用される。サーバ100ならびにクライアント130の1次記憶装置210及び2次記憶装置220に置かれる各種プログラム等の詳細については後述する。
【0021】
ユーザ入出力I/F 230は、ディスプレイ、キーボード、マウス等に代表されるユーザ入出力機器240を接続するためのI/Fである。なお、サーバ100においてはユーザ入出力I/F 230及びユーザ入出力機器240は必須なものではない。
【0022】
ネットワークI/F 250は上述のネットワーク150と接続するためのI/Fであり、Ethernet(登録商標)等の通信媒体を介して他の情報処理装置との通信を担う。
【0023】
図3は上述のファイル共有サーバ100の1次記憶装置210及び2次記憶装置220に置かれる各種プログラム等の詳細を示したものである(CPU 200等については図示を省略した)。
【0024】
ここで1次記憶装置210上にはOS 300、HTTPサーバ310、ファイル共有管理プログラム320、履歴管理プログラム330がロードされ、2次記憶装置220上には利用者の共有対象になる電子文書ファイル340と履歴データ350が保存される。
【0025】
HTTPサーバ310は後述のクライアント130上のブラウザ410(図4参照)とのネットワーク150を介した通信を司り、クライアント130とのデータをファイル共有管理プログラム320に受け渡す。本実施例ではサーバ・クライアント間の通信プロトコルをHTTPとしているが、後述するデータのやり取りに支障がなければHTTP以外の通信プロトコルを用いてもよい。
【0026】
ファイル共有管理プログラム320は本発明の根幹を成すプログラムであり、クライアント130とのファイル340のやり取り、それに伴う認証やアクセス権限・所有者権限の管理を司るとともに、履歴管理プログラム330とアクセス履歴情報のやり取りを行う。詳細な動作については後述する。
【0027】
履歴管理プログラム330は、ファイル340の利用者毎のアクセス履歴を前記ファイル共有管理プログラム320からのデータに基づいて履歴データ350に記録するとともに、ファイル共有管理プログラム320からの履歴データ350に関する問合せに回答する。詳細な動作については後述する。また操作履歴データ350の詳細についても後述する。
【0028】
図4は上述のクライアント130の1次記憶装置210及び2次記憶装置220に置かれる各種プログラム等の詳細を示したものである(CPU 200等については図示を省略した)。
【0029】
ここで1次記憶装置210上にはOS 400、Webブラウザ410がロードされ、2次記憶装置220上にはファイル共有サーバ100とやり取りする電子文書ファイル430が保存される。
【0030】
Webブラウザ410は上述のサーバ100上のHTTPサーバ310とのネットワーク150を介した通信を司りデータをやり取りするとともに、利用者とのユーザインタフェースとして機能する。即ち、上述のHTTPサーバ310から受信したHTML等で表現されたページデータ420を解析し利用者に表示するとともに、ページデータ420の内容に基づいて利用者が選択した操作を要求する入力を受付け、所定のHTTPサーバ310に要求データを送信する。本実施例ではサーバ・クライアント間の通信プロトコルをHTTPとしているが、後述するデータのやり取りに支障がなければHTTP以外の通信プロトコルを用いてもよいし、汎用のWebブラウザではなくユーザインタフェースを持った専用のアプリケーションプログラムであってもよい。なお、ページデータ420やサーバ100との通信の詳細についてはサーバ100の動作の詳細説明の中で触れるので、個別の詳細説明は省略する。
【0031】
以下、本実施例の動作について、図5、図6、図7を用いながら説明する。なお以下の説明においてはファイル共有システムに第1の利用者User_1から第5の利用者User_5まで5人の利用者が設定され、ファイル共有サーバ100上のファイル340には第1の利用者に所有者権限が設定され、read権限、write権限、権限変更権限が、第2から第5の利用者にはread権限のみが与えられているものとする。
【0032】
まず、図6と図7を用いて履歴管理プログラム330の動作を説明する。
【0033】
図6は履歴管理プログラム330の動作の流れを示したフローチャートである。
【0034】
履歴管理プログラム330はファイル共有管理プログラム320から処理要求とそれに付帯するデータを受信する(ステップs600)。ファイル共有管理プログラム320との通信にはソケット通信やRPC(Remote Procedure Call)等のプロセス間通信が用いられる。
【0035】
履歴管理プログラム330は受信した要求を解析し、それが履歴保存要求であった場合には(ステップs605)、受信したデータを履歴データ350に記録する(ステップs615)。
【0036】
ここで履歴データ350の例を図7に示す。
【0037】
データ700はアクセスがあったファイル名を記録するフィールド710、アクセスした利用者を記録するフィールド720、その利用者毎のアクセス回数を記録するフィールド730、その利用者が最後にアクセスした時刻情報を記録するフィールド740から構成される。2次記憶装置220上の履歴データ350はこのデータ700を記憶する任意の形式でよく、例えばテキストファイル形式やデータベース形式を取ることができる。
【0038】
ファイル共有管理プログラム320からはアクセスされたファイルのファイル名、アクセスした利用者識別情報、アクセス時刻情報が付帯データとして送られる。ステップs615ではファイル名と利用者の組み合わせからなるエントリがデータ700内に既に存在するかどうかを調べ、存在しなかった場合には新たなエントリを追加し、該当エントリのアクセス回数をインクリメントし、最終アクセス時刻情報を更新する。履歴保存要求であった場合の処理は以上で終了する。
【0039】
履歴保存要求ではなく、履歴問合せであった場合には(ステップs610)、履歴データ350からアクセス回数情報を取得する(ステップs620)。具体的には付帯するデータからファイル名と利用者情報を得て、その組み合わせから決定されるエントリのアクセス回数データを読み出し、そのデータをファイル共有管理プログラム320に返信して(ステップs630)処理を終了する。
【0040】
履歴問合せでもなかった場合にはアクセス回数データのリセット要求であるかどうかを調べ(ステップs625)、リセット要求でなかった場合にはエラーとして処理を終了する。リセット要求であった場合にはステップs635に進み、履歴データ350のアクセス回数情報を0にリセットする。具体的には付帯するデータからファイル名を得て、そのファイル名に該当するすべてのエントリのアクセス回数データを0に更新して処理を終了する。
【0041】
以上で履歴管理プログラム330の動作説明を終える。
【0042】
続いて、図5を用いてファイル共有管理プログラム320の動作を説明する。
【0043】
図5は履歴管理プログラム320の動作の流れを示したフローチャートである。
【0044】
ファイル共有管理プログラム320はHTTPサーバ310からクライアント130の処理要求と付帯するデータを受信する(ステップs500)。付帯するデータから利用者の識別情報と認証情報、操作対象のファイル情報を取得し、利用者の認証処理と対象ファイルへのアクセス権限の確認を行う(ステップs505)。利用者認証に失敗するか、アクセス権限が与えられていなかった場合にはエラーとして処理を終了する。
【0045】
認証・権限の確認に成功した場合はステップs510に進み、要求されたファイル操作を行い、その結果をページデータ420として生成し、HTTPサーバ310に送信することでクライアント130に返信する。次にそのファイルアクセス履歴を履歴データ350に保存する(ステップs515)。これは上述したように履歴管理プログラム330に履歴保存要求を、付帯データとしてアクセスされたファイルのファイル名、アクセスした利用者識別情報、アクセス時刻情報とを合わせて送ることによる。
【0046】
次に操作を行ったファイルの所有者権限を持つ利用者を調べ、これが処理要求を行った利用者と同じかどうかを調べる(ステップs520)。ここで同じ利用者であった場合には処理を終了し、異なる場合はステップs525に進み、履歴管理プログラム330に履歴問合せを行う。具体的には付帯データとしてアクセスされたファイルのファイル名と処理要求を行った利用者の利用者識別情報の組と、アクセスされたファイルのファイル名と該ファイルの所有者権限を持つ利用者の識別情報の組とでそれぞれ問合せを行い、処理要求を行った利用者と該ファイルの所有権限を持つ利用者それぞれの該ファイルへのアクセス回数情報を取得する。
【0047】
次に前記取得した処理要求を行った利用者と該ファイルの所有権限を持つ利用者それぞれの該ファイルへのアクセス回数情報を、予め定められた比較条件によって比較し、所有権限の移転を行うかどうかを判断する(ステップs530)。ここで比較条件は例えば、処理要求を行った利用者のアクセス回数が10回以上で、かつ所有権限を持つ利用者のアクセス回数の10倍を上回ること、のように定義される。データ700に示した例では、ファイルfoo.txtに対して所有権限を持つ利用者User_1と処理要求を行った利用者User_2のアクセス回数の間でこの条件が成立する。条件が成立しなかった場合にはそのまま処理を終了する。
【0048】
条件が成立した場合にはファイル共有管理プログラム320は該ファイルの所有権限を処理要求を行った利用者に移転する(ステップs535)。これにより所有権限に付随する該ファイルのwrite権限、権限変更権限も処理要求を行った利用者、上述の例では利用者User_2に移転する。
【0049】
次に、その移転結果を予め定められた方法(例えば、電子メール)で、当事者である利用者User_1とUser_2に通知し(ステップs540)、比較条件を一旦クリアするために履歴管理プログラム330にアクセス履歴リセット要求を送る(ステップs545)。具体的には所有権限が移転されたファイルのファイル名を付帯データとしてリセット要求を送り、該ファイルのアクセス回数をすべて0にリセットし、処理を終了する。
【0050】
以上でファイル共有管理プログラム320および履歴管理プログラム330の動作の説明を終えるが、所有権限移転判断にはファイルのアクセス回数以外の条件を加えることも可能である。例えば、回数条件に加えて所有権限を有する利用者が該ファイルに3ヶ月以上アクセスをしていない等の最終アクセス時刻情報を加えることも可能であり、この場合は履歴管理サーバ330が履歴問合せ要求を受けた際にアクセス回数に加えて最終アクセス時刻情報も返すようにすればよい。
【0051】
以上で本実施例の説明を終える。
【実施例2】
【0052】
続いて本発明を実施する別の実施形態について説明する。
【0053】
本実施例はファイルの所有権限を有する利用者以外の複数の利用者が該ファイルに対してより多くのアクセスを行っており、かつそのアクセス回数が拮抗している場合に好適な形態である。
【0054】
本実施例の構成は実施例1と多くを共通する。そのため一部図面を読み替えながら、相違点を中心に説明を行う。
【0055】
本発明に好適なシステム構成は実施例1で説明した図1から図4に示すものとほぼ同じである。図3のファイル共有管理プログラム330と履歴管理プログラム340が本実施例に特有のものとなるので、その説明を行う。
【0056】
本実施例に特有な履歴管理プログラム340の動作も実施例1で説明した履歴管理プログラムの動作の流れとほぼ同じであるので、図6を読み替えることで相違点のみ説明する。
【0057】
ステップs600で受信した要求が履歴保存要求ではなく、履歴問合せであった場合には(ステップs610)、実施例1のステップs620ではなく、本実施例特有のステップs620’に進む。ステップs620’では履歴データ350から予め設定された条件に合致するすべての利用者とその利用者のアクセス回数情報、所有権限を持つ利用者のアクセス回数情報を取得する。具体的には付帯するデータからファイル名を得て、そのファイル名に該当するすべてのエントリのアクセス回数データを予め設定された条件で比較を行う。ここで条件は例えば、アクセス回数の上位3名の利用者(図7に示したデータ700の例でfoo.txtの場合はUser_2、User_3、User_4が合致)、または最大アクセス回数の70%以上のアクセス回数を持つ利用者(同様に、User2、User_4が合致)、等である。これに該ファイルの所有権限を持つ利用者のアクセス回数情報を合わせたデータをファイル共有管理プログラム320に返信して(ステップs630)処理を終了する。
【0058】
以上で説明した以外の部分の動作は実施例1の履歴管理プログラムの動作と同じである。
【0059】
続いて本実施例に特有なファイル共有管理プログラム330の動作について、図8Aならびに図8Bを用いて説明する。本実施例特有のファイル共有管理プログラム330の動作の流れの途中までは実施例1のファイル共有管理プログラムと同じである。具体的にはステップs800からs820までの動作はそれぞれステップs500からs520の動作と同じであるので説明を省略する。
【0060】
ステップs820で操作を行ったファイルの所有者権限を持つ利用者と処理要求を行った利用者とが異なる場合はステップs825に進み、履歴管理プログラム330に履歴問合せを行う。この履歴問合せは上述したように本実施例に特有のもので、具体的には付帯データとしてアクセスされたファイルのファイル名で問合せを行い、条件に合致するすべての利用者とその利用者のアクセス回数情報、所有権限を持つ利用者のアクセス回数情報を取得する。
【0061】
次に前記条件に合致した利用者のアクセス回数のうちの最大のものと該ファイルの所有権限を持つ利用者のアクセス回数を、予め定められた比較条件によって比較し、所有権限の移転を行うかどうかを判断する(ステップs830)。ここで比較条件は例えば、条件に合致した利用者のアクセス回数が10回以上で、かつ所有権限を持つ利用者のアクセス回数の10倍を上回ること、のように定義される。条件が成立しなかった場合にはそのまま処理を終了する。
【0062】
条件が成立した場合にはステップs835に進み、多重実行防止フラグがセットされているかどうかを調べる。このフラグは例えば2次記憶装置220上のテキストファイル(図示せず)に該ファイル名を記録することで実現され、ステップs845以降の処理が該ファイルに対して既に実行中であるかどうかを示す。フラグがセットされていた場合には処理を終了し、セットされていなかった場合にはフラグをセットする(ステップs840)。
【0063】
次に条件に合致したすべての利用者と該ファイルの所有権限を持つ利用者に予め設定された方法(例えば、電子メール)で該ファイルの所有者権限の移転を推奨し、その準備が整ったことを通知し、付帯情報として通知の宛先となった利用者リストを提示する(ステップs845)。この付帯情報によって利用者は所有権限の移転協議を行うべき他の利用者を知ることができる。
【0064】
次に予め設定された移転作業許容時間を現在時刻に加算することで移転期限時刻を設定し、記録する(ステップs850)。これは例えば上述の2次記憶装置220上でフラグを実現するテキストファイルを用い、該ファイル名に前記移転期限時刻を追記することで実現される。
【0065】
次に条件に合致したすべての利用者に該ファイルの所有者権限の変更権限を付与し(ステップs855)、ステップs850で設定した移転期限が来るまで待つ(ステップs860)。即ちこの間、条件に合致したすべての利用者は該ファイルの所有者権限を変更することができる。
【0066】
移転期限になったならばステップs865に進み、その時点で所有者権限を持つ利用者以外から所有者権限の変更権限を削除し、ステップs845で通知を送った利用者に所有者権限の移転が所有者と管理者以外にも可能な期間が終了したことを通知する(s870)。
【0067】
次に比較条件を一旦クリアするために履歴管理プログラム330にアクセス履歴リセット要求を送る(ステップs875)。具体的には該ファイルのファイル名を付帯データとしてリセット要求を送り、該ファイルのアクセス回数をすべて0にリセットし、ステップs840でセットしたフラグをクリアして(ステップs880)、処理を終了する。
【0068】
以上でファイル共有管理プログラム320および履歴管理プログラム330の動作の説明を終えるが、所有権限移転判断にはファイルのアクセス回数以外の条件を加えることも可能である。例えば回数条件に加えて、アクセス回数上位の利用者が該ファイルに最近1ヶ月以内にアクセスをしている、または最終アクセス時刻が現在から近い順に3名等の最終アクセス時刻情報を加えることも可能であり、この場合は履歴管理サーバ330が履歴問合せ要求を受けた際にアクセス回数に加えて最終アクセス時刻情報も返すようにすればよい。
【0069】
またステップs845の説明で述べた通知先は必要最小限のものであり、ファイル共有サーバ100の管理者等を含めてもよい。この場合管理者には同時期に複数の通知が送られることもあるので、管理者に所有権限の移転が推奨されているファイルの一覧を提供するようにしてもよい。これは例えば2次記憶装置220上のテキストファイル(図示せず)を用いて、ステップs845の開始通知処理でファイル名と移転作業期限時刻情報を追記し、ステップs870の終了通知処理で該情報を削除することで実現される。このファイルは管理者以外の利用者にも提供可能である。
【0070】
以上で本実施例の説明を終えるが、本実施例は実施例1との併用も可能である。その場合はアクセス履歴問合せ処理で所有権限を持つ利用者以外のアクセス回数が多い利用者の多寡によって処理を切り替えればよい。
【0071】
また本発明はファイルだけではなく、ディレクトリに対して適用することも可能である。その場合は対象ディレクトリ階層以下に属するファイルの利用者毎の総アクセス回数、またはファイル毎のアクセス回数が最大である利用者を集計する等によって条件判断をすることができる。
【0072】
さらに本発明はファイル共有システムで管理されるファイル全体に対して同一条件で条件判断をするのではなく、ファイル毎に条件を設定できるようにすることも可能である。その場合は例えばファイル毎に所有権限移転に関する属性を持たせ、条件判断の際に参照するようにする。
【0073】
図9にファイル毎の属性フィールドの例900を示す。ここでフィールド910には所有権限移転の可否を示す属性値、フィールド920には所有権限を移転する候補として予め設定した利用者リストを示す属性値、フィールド930には所有権限の移転を禁止する利用者として予め設定したリストを示す属性値、フィールド940には所有権限移転判断を行う際の条件、例えば5倍以上のアクセス回数であること、を示す属性値がそれぞれ収められる。これらの属性を適宜組み合わせて設定することにより、ファイル毎に詳細な条件判断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明を実施するファイル共有システムのシステム構成図
【図2】ファイル共有システムを構成する情報処理装置の構成図
【図3】ファイル共有サーバのプログラム及びデータ構成図
【図4】クライアントのプログラム及びデータ構成図
【図5】第1の実施例ファイル共有管理プログラムの動作の流れを示すフローチャート
【図6】第1の履歴管理プログラムの動作の流れを示すフローチャート
【図7】履歴データの例を示す図
【図8A】第2の実施例ファイル共有管理プログラムの動作の流れを示すフローチャート
【図8B】第2の実施例ファイル共有管理プログラムの動作の流れを示すフローチャート
【図9】ファイル属性フィールドの例を示す図
【符号の説明】
【0075】
100 ファイル共有サーバ
130a クライアント
130b クライアント
150 ネットワーク
200 CPU
210 1次記憶装置
220 2次記憶装置
230 ユーザ入出力I/F
240 ユーザ入出力機器
250 ネットワークI/F
310 HTTPサーバ
320 ファイル共有管理プログラム
330 履歴管理プログラム
350 履歴データ
410 ブラウザ
420 ページデータ
700 履歴データ
900 ファイル属性フィールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイル共有サービスを実現するファイル共有手段と、
ファイル共有サービス上でのファイルのアクセス履歴を収集・保存・検索・取得する履歴管理手段と、
を持つファイル共有システムであって、
ファイルがアクセスされた際にアクセスした利用者情報を履歴に保存する手段と、
前記アクセスされたファイルのアクセス頻度情報を前記履歴管理手段から取得する手段と、
前記取得したアクセス頻度情報を予め設定された条件に基づき比較判断する手段と、
前記判断結果に基づいて該ファイルの所有権限を移転する手段と、
該ファイルのアクセス頻度情報をクリアする手段と、
を有することを特徴とするファイル共有システム。
【請求項2】
前記比較判断手段は、該ファイルの所有権限を持つ利用者の該ファイルアクセス回数と、該ファイルのアクセス回数が最大である利用者のアクセス回数との間で予め設定された条件に基づいて比較判断し、条件が成立した場合には前記所有権限移転手段が該ファイルの所有権限を該ファイルのアクセス回数が最大である利用者に移転することを特徴とする請求項1に記載のファイル共有システム。
【請求項3】
前記アクセスした利用者情報を履歴に保存する手段はさらにアクセスが行われた時刻情報も保存し、前記履歴取得手段はアクセス頻度情報に加えてアクセスされた時刻情報も取得し、前記比較判断手段は予め設定された条件に基づきアクセス頻度情報に加えてアクセス時刻情報も比較条件とすることを特徴とする請求項1または2に記載のファイル共有システム。
【請求項4】
ファイル共有サービスを実現するファイル共有手段と、
ファイル共有サービス上でのファイルのアクセス履歴を収集・保存・検索・取得する履歴管理手段と、
を持つファイル共有システムであって、
ファイルがアクセスされた際にアクセスした利用者情報を履歴に保存する手段と、
前記アクセスされたファイルのアクセス頻度情報を前記履歴管理手段から取得する手段と、
前記取得したアクセス頻度情報を予め設定された条件に基づき比較判断する手段と、
複数の利用者に所有権限の移転を実施するように通知し、予め設定された期間に限り前記複数の利用者に対して該ファイルの所有権限の変更権限を付与する手段と、
該ファイルのアクセス頻度情報をクリアする手段と、
を有することを特徴とするファイル共有システム。
【請求項5】
前記通知・権限付与対象である複数の利用者は該ファイルの所有権限を持つ利用者と、該ファイルのアクセス回数が上位である利用者から予め設定された条件に基づいて選抜された利用者であることを特徴とする請求項4に記載のファイル共有システム。
【請求項6】
さらにファイル共有システム全体の管理権限を持つ利用者にも通知されることを特徴とする請求項5に記載のファイル共有システム。
【請求項7】
さらに利用者毎に前記通知・権限付与されたファイルの一覧を提供する手段を有することを特徴とする請求項5または6に記載のファイル共有システム。
【請求項8】
さらにファイル毎に所有権限の移転に関する個別条件を設定・取得する手段を有し、前記比較判断手段はファイル毎の個別条件も加味して判断することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のファイル共有システム。
【請求項9】
前記ファイル毎の個別条件は所有権限の移転の可否を示すものであることを特徴とする請求項8に記載のファイル共有システム。
【請求項10】
前記ファイル毎の個別条件は所有権限の移転先候補である利用者のリストであることを特徴とする請求項8または9に記載のファイル共有システム。
【請求項11】
前記ファイル毎の個別条件は所有権限の移転を禁止する利用者のリストであることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載のファイル共有システム。
【請求項12】
ファイルに加えてディレクトリも処理対象とすることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のファイル共有システム。
【請求項13】
ファイル共有サービスを実現するファイル共有工程と、
ファイル共有サービス上でのファイルのアクセス履歴を収集・保存・検索・取得する履歴管理工程と、
を持つファイル共有方法であって、
ファイルがアクセスされた際にアクセスした利用者情報を履歴に保存する工程と、
前記アクセスされたファイルのアクセス頻度情報を前記履歴管理工程から取得する工程と、
前記取得したアクセス頻度情報を予め設定された条件に基づき比較判断する工程と、
前記判断結果に基づいて該ファイルの所有権限を移転する工程と、
該ファイルのアクセス頻度情報をクリアする工程と、
を有することを特徴とするファイル共有方法。
【請求項14】
ファイル共有サービスを実現するファイル共有ステップと、
ファイル共有サービス上でのファイルのアクセス履歴を収集・保存・検索・取得する履歴管理ステップと、
を持つファイル共有を実行するファイル共有プログラムであって、
ファイルがアクセスされた際にアクセスした利用者情報を履歴に保存するステップと、
前記アクセスされたファイルのアクセス頻度情報を前記履歴管理ステップから取得するステップと、
前記取得したアクセス頻度情報を予め設定された条件に基づき比較判断するステップと、
前記判断結果に基づいて該ファイルの所有権限を移転するステップと、
該ファイルのアクセス頻度情報をクリアするステップと、
を実行することを特徴とするファイル共有プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−11844(P2007−11844A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193573(P2005−193573)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】