説明

ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグ

【課題】嗜好性飲料抽出用バッグの生産工程において、抽出用バッグの生産原価全体の中で相当大きな比率を占めている、抽出用バッグの成形後の抽出原料のバッグへの挿入及び、挿入口シール工程の加工費及び設備費の合理化を図る。特に工程や設備が複雑となるテトラパックの場合にその効果が顕著である。
【解決手段】抽出用バッグの原料シートに予めプラスチックファスナーを取り付け、ファスナーの部分をシールせずに製袋し、それ以降の抽出原料のバッグへの挿入及び、挿入口シール工程はバッグの使用者に任せることによって、加工費及び設備費の合理化を図る。バッグの使用者は好みに従って適宜抽出原料及び充填量を選択できるメリットがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
嗜好性飲料抽出用バッグに、プラスチックファスナーからなる挿入口を設けたものである。使用時に抽出原料の挿入量の調節が可能となると共に、生産工程において抽出用バッグの製袋後の抽出原料の挿入とバッグを封止する工程が不要となるため、工程を合理化できる効果がある。特に抽出用バッグがテトラパックの形態を有する場合には、製袋及び抽出原料充填等の加工工程が複雑となるためその効果が大きい。
【背景技術】
【0002】
嗜好性飲料の抽出原料が充填された抽出用バッグは、従来から紙、不織布、または織物のような濾過性を有するシートからつくられている。従来の抽出バッグは一枚の濾過性シートを半折して重ね合わせ、その両サイドを融着して表裏2面を有する袋状体を形成し、その袋状体の上側の開口部から抽出原料を充填した後、上側開口部を底部の折り返し線と平行となるようにシールして得られる。
【0003】
或いは上側開口部を底部の折り返し線と一定の空間を隔てて直交する形状となるようにシールすれば、四面体状の抽出用バッグ(テトラパック)が得られる。このような形状を有する抽出用バッグは例えば、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平7−61465号公報
【0004】
このようなコーヒー、紅茶等の嗜好性飲料抽出用バッグの生産工程では、通常第一段階として抽出原料の挿入口を開けた状態のバッグを作成し、第二段階として抽出原料をバッグの原料の挿入口より挿入した後、開口された状態の原料挿入口をシールすることによって、嗜好性飲料抽出用バッグが生成される。すなわち、2段階の加工工程及びそれぞれの設備が必要となる。
【0005】
ここで、特にテトラパックを生産する場合には、前述のように開口部から抽出原料をパックの内部に挿入した後、上側開口部を底部の折り返し線と一定の間隔を隔てて直交する形状となるようにシールする必要がある。このため操作も複雑となり設備費も嵩むことは避けられない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のようにコーヒー、紅茶等の嗜好性飲料抽出用バッグの生産工程では、通常第一段階として抽出原料の挿入口を開けた状態として残されているバッグを作成し、第二段階として抽出原料をバッグの原料挿入口より挿入した後、開口された状態の原料挿入口を融着・閉止することによって、嗜好性飲料抽出用バッグが生成される。ここで、第二段階のバッグへの抽出原料の挿入と、原料挿入後バッグの開口部を融着・シールする迄の後半の工程の、設備費及び抽出原料の購入・保存等も含めた加工費は、抽出用バッグの生産原価全体の中で相当大きな比率を占めている。特に工程や設備が複雑となるテトラパックの場合には顕著である。
【0007】
一方、コーヒー、紅茶等の嗜好性飲料抽出用バッグの使用者にとっては、コーヒー、紅茶等の種類或いは使用量は適宜選択できる方が好ましい場合も多い。このような場合には使用者に抽出用バッグを抽出原料の挿入口を開けた状態で提供し、使用者がその好みに応じてコーヒー、紅茶等を選択してバッグに挿入した後、使用者自身でバッグを容易に閉止できるようにすれば、従来から使用されている嗜好性飲料抽出用バッグと同様に使用することができるため好ましい。
【0008】
本発明はこれらの2つの課題を解決するためになされたものである。これらの課題の中、抽出用バッグにコーヒー、紅茶等の抽出用原料を挿入後、使用者自身が如何にしてバッグを閉止するかが最も大きな技術的課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は抽出用バッグの原料シートである「濾過性及び熱融着性を有する紙または不織布或いは織物」の物性を考慮して、そのシートと容易に、且つ抽出原料粒子が漏れないように取り付け可能であり、抽出原料を抽出用バッグの内部に挿入した後、外部と容易にシールができること、更に熱湯中に保持しても有害な成分が溶け出さないこと、焼却時に有害ガス等が発生しないこと等の機能性について検討した。その結果、これに適した素材として細巾のプラスチックファスナーが好ましいことを見出した。
【0010】
プラスチックファスナーの構造及び材質は特に限定しないが、可塑剤を含まないポリエチレンまたは、ポリプロピレン等ポリオレフィン系のポリマーがより好ましい。またファスナーの噛み合わせ構造は特に限定しないが、例えば、一方がプラスチック棒状の縞で棒の断面が円形であり、他方はプラスチックの細長い溝状の縞で、溝の断面の入り口が絞られたU字形で、対向して圧着すると気密にシールできる構造を有するプラスチックファスナーも好ましい。これらの知見に基づいて本発明に到達した。
【0011】
すなわち、濾過性及び熱融着性を有する紙または不織布或いは織物からなる長尺シート(1) の両側に、それぞれプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′を融着し、長尺シート(1) を巾方向の中心線で折り返し、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を重ねて筒状とした(プラスチックファスナー(2) 、(2) ′は対向して重ねられているのみで、ファスナー(2) 、(2) ′は圧着されていない。このような状態の長尺シートを以下、「仮筒状シート」という。)。
【0012】
仮筒状シート(1) の巾方向の線(4) の位置で筒状のシートを融着・溶断すると、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′の下端(5) は融着・溶断線(4) の一端に連結される。また巾方向(4) ′の位置においてプラスチックファスナー(2) 、(2) ′の上端(6) が、筒状シートの融着・溶断線(4) ′の中点に連結されるように融着・溶断線(4) ′を形成すると、融着・溶断線(4) ′は一定の空間を隔てて融着・溶断線(4) と直交する形状となって、テトラパック(7) が形成される。テトラパック(7) のプラスチックファスナーの部分から内部に嗜好性飲料の原料を充填した後、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を圧着・シールして熱湯中に浸漬して使用する、ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグである。
【0013】
また、濾過性及び熱融着性を有する紙または不織布或いは織物からなる長尺シート(1) の両側に、それぞれプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′を融着し、長尺シート(1) を巾方向の中心線(3) で折り返してプラスチックファスナー(2) 、(2) ′を重ねて仮筒状シートとした。仮筒状シート(1) の巾方向の線(9) 及び(9) ′の位置において、融着・溶断して、一辺にプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′が取り付けられた矩形のバッグ(10)を形成した。プラスチックファスナーの部分からバッグの内部に嗜好性飲料の原料を充填した後、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を圧着・シールして熱湯中に浸漬して使用する、ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグである。
【0014】
或いは、濾過性及び熱融着性を有する紙または不織布或いは織物からなる長尺シート(1) の両側に、それぞれプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′を融着し、長尺シート(1) を中心線(3) で折り返しプラスチックファスナー(2) 、(2) ′を重ねて仮筒状シートとした。
【0015】
仮筒状シート(1) の巾方向の線(11)及び(11)′の位置において、融着・溶断してその一辺にプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′が取り付けられた矩形のバッグ(10)を形成した。そのバッグのプラスチックファスナーの部分から内部に嗜好性飲料の原料を充填した後、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′をそれぞれの中点(12)及び(12)′から折り曲げて互いに内側へ対向するように重ね合せて、圧着・シールする。
【0016】
プラスチックファスナー(2) 及び(2) ′の圧着・シール線は、一定の空間を隔てて、長尺シート(1) を中心線で折り返して生成した折返し線(3) と直交する形状となって、テトラパック(13)が形成される。このようにして得られた熱湯中に浸漬して使用される、ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグ(13)である。
【0017】
本発明のファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグには更に、プラスチックファスナー(2) 及び(2) ′の中点(12)及び(12)′に切れ込みを設けた、請求項3記載のファスナー付嗜好性飲料抽出用テトラパックが含まれている。プラスチックファスナーの中点に切れ込みを設けることによって、ファスナーの折り曲げが容易となるため形状が整ったテトラパックが容易に形成される。
【0018】
また、テトラパックの濾過性及び熱融着性を有する紙または不織布或いは織物からなる長尺シート(1) には、予めテトラパック形成用の折り目(14)を設けた、請求項1、3及び4記載のファスナー付嗜好性飲料抽出用テトラパックも本発明に含まれている。ここで、テトラパック形成用の折り目とは、仮筒状シートを巾方向に一定の間隔を隔てて、融着・溶断する場合に、両者の融着・溶断線が、一定の空間を隔てて直交する形状となって、テトラパックが形成される。この場合テトラパックを形成するシートの折り畳み線が形成され易いように、折り畳み線となる部分に予め例えば直線状または破線状にプレスした線をいう。このような機能を有する線であれば、それ以外の形状及び構造のものでもよい。
【0019】
本発明のファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグには図1、3及び5に示すように、通常一定間隔毎に先端にタグを付したタグ糸(8) を取り付けた長尺シートからつくられる。抽出用バッグの使用時タグを摘んで液中へ浸漬して抽出用原料の抽出を容易にするためである。しかし、大型の抽出用バッグを使用する場合等には、タグ糸が取り付けられてないバッグが好ましい場合もある。本発明にはこのようなタグ糸が取り付けられてない態様の抽出用バッグも含まれている。
【0020】
本発明のファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグの素材としては、濾過性及び熱融着性を有する材質で紙または不織布或いは織物であれば、広範囲の素材が使用可能である。テトラパックの場合には高い抽出性を保持するためには、熱湯中に浸漬して使用する間その立体的形状を保持できるものが好ましく、例えば、ナイロン紗等が好適である。また、ファスナーは可塑剤を含まないポリエチレンまたは、ポリプロピレン等ポリオレフィン系のポリマーがより好ましい。
【発明の効果】
【0021】
前述のように嗜好性飲料抽出用バッグの生産工程は、一部開口部を残した製袋工程と、抽出原料をバッグに充填し開口部を融着・シールする工程からなっている。本発明のバッグを使用すれば、後半の抽出原料充填及び開口部シール操作が不要となり、原料充填及び開口部のシール装置も不要となる。これらの費用は抽出用バッグの原価全体の中で相当大きな比率を占めているため、大幅な合理化が可能となる。特に抽出用バッグがテトラパックの形態を有する場合には、製袋及び抽出原料充填等の加工工程が複雑となるため、この合理化の効果が大きい。また、抽出用バッグの使用者にとっても適宜好みの種類の嗜好性飲料及びその濃度の選択が可能となるので好ましい。更にバッグの再使用も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1に本発明の嗜好性飲料抽出用バッグの原料となる長尺シート(1) の正面図を示す。長尺シート(1) は薄いナイロン紗からなり、長さ方向の一定間隔毎に先端にタグを付したタグ糸(8) が取り付けられている。シートの表面にはシートを折り畳んでテトラパックを形成する時その稜線となる部分が、折り畳み易いようにプレスされた破線(14)が1区画に4本づつ形成されている。また、長尺シート(1) の両側には細巾のプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′が融着されている。
【0024】
長尺シート(1) をその長さ方向の中心線(3) で折り返して、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を重ねて仮筒状シートの状態とする。プラスチックファスナー(2) 、(2) ′をその状態で圧着すればそのままの状態で密着してシールされるが、仮筒状シートの状態ではプラスチックファスナー(2) 、(2) ′は重ね合わされているのみで密着されず、長尺シート(1) は筒状に形成されていない。
【0025】
仮筒状シートの巾方向の線(4) の位置で筒状のシートを融着・溶断すると、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′の下端(5) 、(5) ′は重ね合わされた状態のままで、融着・溶断線(4) の一端に連結された状態となる。次ぎに巾方向(4) ′の位置において、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′の上端(6) が、筒状シートの融着・溶断線(4) ′の中点に連結されるようにするため、仮筒状シートを図1の左右両側から挟むように折りたたむことによって、融着・溶断線(4) ′を形成すると、図2に示す形状を有するテトラパック(7) が形成される。
【0026】
この際、長尺シート(1) の表面にはテトラパックを形成する時その稜線となる部分が、折り畳み易いように予め破線状にプレスされているので、前記のような操作によって容易に形が整ったテトラパック(7) が形成される。このテトラパック(7) では、融着・溶断線(4) ′は一定の空間を隔てて融着・溶断線(4) と直交する形状となっている。
【0027】
この状態ではテトラパック(7) の一辺である、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を重ねた部分は密着されず開口された状態となっている。この開口部分からテトラパック(7) の内部に、嗜好性飲料の原料を充填した後、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を圧着・シールすることによってテトラパック状を有する、本発明のファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグが形成される。
【0028】
このようにして生成されたテトラパックを熱湯中に浸漬して抽出原料を抽出すれば、嗜好性飲料が調製される。この際、テトラパック(7) のプラスチックファスナー(2) 、(2) ′の圧着線の中点にはタグ糸(8) が取り付けられているため、タグを摘んで液中へ浸漬するとテトラパック(7) の下端は三角錐の頂点となるため、液切れが良好となる。
【0029】
或いは紗織物の原料繊維として、融点が異なる複数ポリマーが不均一に混合した単繊維であり、例えばその構造が内層がポリプロピレン、外層がポリエチレンからなる芯−鞘構造を有する繊維を使用した場合には、抽出原料充填後テトラパックを折りたたんだ状態で保管しても、使用時熱湯中に浸漬すればかなり原形に復する形状記憶性を付与することができる。
【0030】
テトラパックの内部に充填する抽出原料の種類及び充填量は使用者の好みに従ってが適宜選択することが可能となる。この際従来方法による抽出原料の充填及び充填後のバッグのシールに要する加工費及び設備費は、抽出用バッグの生産原価全体の中で相当大きな比率を占めている。このため本発明のファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグを使用すれば、これらの加工費及び設備費の節約が可能となる。特に、工程及び設備が複雑となりコストが嵩むテトラパックの場合に一層その効果が大きい。
【実施例2】
【0031】
図3に本発明の嗜好性飲料抽出用バッグの原料となる長尺シート(1) の正面図を示す。長尺シート(1) は熱融着性及び濾過性を有する紙からなり、長さ方向の一定間隔毎に先端にタグを付したタグ糸(8) が取り付けられている。また、長尺シート(1) の両側には細巾のプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′が融着されている。
【0032】
長尺シート(1) をその長さ方向の中心線(3) で折り返して、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を重ねて仮筒状シートの状態とする。仮筒状シートの状態では、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′は重ね合わされているのみで密着またはシールはされていない。
【0033】
長尺シート(1) の巾方向の線(9) 及び(9) ′の位置において、融着・溶断すると、一辺にプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′が取り付けられた矩形のバッグ(10)が形成される。プラスチックファスナー(2) 及び(2) ′が取り付けられた部分は開口された状態となっている。
【0034】
開口されているプラスチックファスナーの部分から、バッグの内部に嗜好性飲料の原料を充填した後、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を圧着・シールすることによって、図4に示すような形状を有する、本発明のファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグが形成される。プラスチックファスナー(2) 及び(2) ′の中点(12 、12) ′にはタグ糸(8) が取り付けられているので、そのタグを摘んで熱湯中に浸漬し抽出原料を抽出すれば容易に嗜好性飲料が調製される。
【0035】
この際、抽出原料の種類及び充填量は使用者が適宜選択することができる。この際従来方法による抽出原料の充填及び充填後のバッグのシールに要する加工費及び設備費は、抽出用バッグの生産原価全体の中で相当大きな比率を占めている。本発明のファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグを使用すれば、これらの加工費及び設備費の節約が可能となる。
【実施例3】
【0036】
図5に本発明の嗜好性飲料抽出用バッグの原料となる長尺シート(1) の正面図を示す。長尺シート(1) は濾過性が高い不織布からなり、長さ方向の一定間隔毎に先端にタグを付したタグ糸(8) が取り付けられている。また、長尺シート(1) の両側には細巾のプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′が融着されている。不織布の素材は、融点が異なる複数のポリマーが不均一に混合した組織を有する単繊維からなる不織布である。「複数のポリマーが不均一に混合した組織を有する単繊維」とは例えば、内層と外層の融点が異なるポリマーからなる芯−鞘構造の単繊維或いはサイド・バイ・サイド構造を有する単繊維、または海島構造を有する単繊維等である。尚、繊維の太さは必ずしも単一である必要はなく、複数種類の太さの繊維が混合していてもよい。却って不織布の濾過性を高めるためには、複数種類の太さの繊維が混合している不織布がより好ましい。
【0037】
長尺シート(1) をその長さ方向の中心線(3) で折り返して、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を重ねて仮筒状シートの状態とする。プラスチックファスナー(2) 、(2) ′をその状態で圧着すればそのままの状態で密着してシールされるが、仮筒状シートの状態では、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′は重ね合わされているのみで密着またはシールはされていない。
【0038】
長尺シート(1) の巾方向の線(11)及び(11)′の位置において、融着・溶断してその一辺にプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′が取り付けられた矩形のバッグ(10)を形成する。開口されているプラスチックファスナーの部分から内部に嗜好性飲料の原料を充填する。
【0039】
プラスチックファスナー(2) 、(2) ′をそれぞれの中点(12)及び(12)′から折り曲げて、互いに内側へ対向するように重ね合せて圧着・シールすると、プラスチックファスナー(2) 及び(2) ′の圧着・シール線は、図6に示すように一定の空間を隔てて、長尺シート(1) を中心線で折り返した折返し線(3) と、直交する形状を有するテトラパック(13)が形成される。この際、プラスチックファスナー(2) 及び(2) ′の中点(12)及び(12)′に切れ込みを設けておけば、ファスナーが折り曲り易くなるため、形状が整ったテトラパックの形成が容易となる。
【0040】
このようにして形成されたテトラパックを熱湯中に浸漬して抽出原料を抽出すれば、嗜好性飲料が調製される。この際、テトラパック(7) のプラスチックファスナー(2) 、(2) ′の圧着・シール線の中点 (プラスチックファスナー(2) 、(2) ′の上端及び下端が収束された点) には、タグ糸(8) が取り付けられているためタグを摘んでバッグを液中へ浸漬すると、テトラパック(7) の下端の水平な稜線の断面が三角形となるため液切れが良好である。尚、長尺シート(1) を巾方向の線(11)及び(11)′の位置において、融着・溶断する時、タグ糸(8) をプラスチックファスナー(2) からシート巾で略4分の1離れた点に融着すれば、タグを摘んで液中へ浸漬した時テトラパック(7) の下端が三角錐の頂点となるため、液切れが一層良好となる。
【0041】
テトラパックの内部に充填する抽出原料の種類及び充填量は、使用者が適宜選択することができる。この際従来方法による抽出原料の充填及び充填後のバッグのシールに要する加工費及び設備費は、抽出用バッグの生産原価全体の中で相当大きな比率を占めている。このため本発明のファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグを使用すれば、これらの加工費及び設備費の節約が可能となる。特に、工程及び設備が複雑となりコストが嵩むテトラパックの場合に一層その効果が大きい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
通常のバッグまたはテトラパックの形態を有する嗜好性飲料抽出用バッグの生産において、バッグまたはテトラパックの一辺に相対向するファスナーを設けることによって、抽出原料の充填及び充填後のバッグのシールの加工費及び設備費の節約が可能である。特に、工程及び設備が複雑となりコストが嵩むテトラパックの場合に一層その効果が大きい。更にバッグの内部に充填する抽出原料の種類及び充填量は、使用者の好みに従ってが適宜選択することが可能となるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグの原料シートの一態様の正面図を示す。
【図2】ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグの一態様の斜視図を示す。
【図3】ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグの原料シートの一態様の正面図を示す。
【図4】ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグの一態様の正面図を示す。
【図5】ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグの原料シートの一態様の正面図を示す。
【図6】ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグの一態様の斜視図を示す。
【符号の説明】
【0044】
1 嗜好性飲料抽出用バッグの原料シート
2、2′プラスチックファスナー
3 原料シートの長さ方向の中心線(図4及び図6の態様では、抽出用バッグ形成時シートの折たたみ線となる)
4、4′ 原料シートの巾方向の線(抽出用バッグ形成時のシート融着・溶断線)
5、5 ′ プラスチックファスナー(2) 、(2) ′の下端(図2及び図4の態様では、抽出用バッグ形成時圧着されたプラスチックファスナーの一端となる)
6、6 ′ プラスチックファスナー(2) 、(2) ′の上端(図2及び図4の態様では、抽出用バッグ形成時圧着されたプラスチックファスナーの他の一端となる)
7 ファスナー付嗜好性飲料抽出用テトラパックの一態様
8 タグ糸
9、9′原料シートの巾方向の線(抽出用バッグ形成時、融着・溶断線となる)
10 ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグのその他の一態様
11、11′原料シートの長さ方向の中心線(抽出用バッグ形成時、融着・溶断線となる)
12、12′プラスチックファスナー(2) 、(2) ′の中点
13 ファスナー付嗜好性飲料抽出用テトラパックのその他の一態様
14 抽出用バッグ形成時のシート折りたたみ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過性及び熱融着性を有する紙または不織布或いは織物からなる長尺シート(1) の両側に、それぞれプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′を融着し、長尺シート(1) を巾方向の中心線で折り返し、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を重ねて筒状とした後、長尺シート(1) の巾方向の線(4) の位置で筒状のシートを融着・溶断すると、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′の下端(5) は融着・溶断線(4) の一端に連結され、また巾方向(4) ′の位置においてプラスチックファスナー(2) 、(2) ′の上端(6) が、筒状シートの融着・溶断線(4) ′の中点に連結されるように融着・溶断線(4) ′を形成すると、融着・溶断線(4) ′は一定の空間を隔てて融着・溶断線(4) と直交する形状となって、テトラパック(7) が形成され、プラスチックファスナーの部分から内部に嗜好性飲料の原料を充填した後、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を圧着・シールして熱湯中に浸漬して使用する、ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグ。
【請求項2】
濾過性及び熱融着性を有する紙または不織布或いは織物からなる長尺シート(1) の両側に、それぞれプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′を融着し、長尺シート(1) を巾方向の中心線(3) で折り返してプラスチックファスナー(2) 、(2) ′を重ねて筒状とした後、長尺シート(1) の巾方向の線(9) 及び(9) ′の位置において、融着・溶断して、一辺にプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′が取り付けられた矩形のバッグ(10)を形成し、プラスチックファスナーの部分からバッグの内部に嗜好性飲料の原料を充填した後、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′を圧着・シールして熱湯中に浸漬して使用する、ファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグ。
【請求項3】
濾過性及び熱融着性を有する紙または不織布或いは織物からなる長尺シート(1) の両側に、それぞれプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′を融着し、長尺シート(1) を中心線(3) で折り返してプラスチックファスナー(2) 、(2) ′を重ねて筒状とした後、長尺シート(1) の巾方向の線(11)及び(11)′の位置において、融着・溶断してその一辺にプラスチックファスナー(2) 及び(2) ′が取り付けられた矩形のバッグ(10)を形成し、プラスチックファスナーの部分から内部に嗜好性飲料の原料を充填した後、プラスチックファスナー(2) 、(2) ′をそれぞれの中点(12)及び(12)′から折り曲げて、互いに内側へ対向するように重ね合せて圧着・シールすると、プラスチックファスナー(2) 及び(2) ′の圧着・シール線は、一定の空間を隔てて、長尺シート(1) を中心線で折り返した折たたみ線(3) と、直交する形状を有するテトラパック(13)を形成してなる、ファスナー付嗜好性飲料抽出用テトラパック。
【請求項4】
プラスチックファスナー(2) 及び(2) ′の中点(12)及び(12)′に切れ込みを設けた、請求項3記載のファスナー付嗜好性飲料抽出用テトラパック。
【請求項5】
濾過性及び熱融着性を有する紙または不織布或いは織物からなる長尺シート(1) に、予めテトラパック形成用の折り目(14)を設けた、請求項1、3及び4記載のファスナー付嗜好性飲料抽出用テトラパック。
【請求項6】
長尺シート(1) に一定間隔毎にタグ糸(8) を取り付けた、請求項1ないし5のいずれかに記載のファスナー付嗜好性飲料抽出用バッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−246128(P2007−246128A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73094(P2006−73094)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000178882)山中産業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】