説明

ファックス送信システム

【課題】ファックス送信時のユーザの待ち時間の短縮化が図られたファックス送信システムを提供すること。
【解決手段】ファックス送信システム100は,PC10にてファックス送信用データが作成され,ファックス機能を有する複合機20に送られる。ファックス送信用データには,送信先情報の他,ファックス送信が指示された原稿の画像に対応する第1ファックスデータと,原稿の加工画像に対応する第2ファックスデータとが含まれている。第2ファックスデータとしては,例えば,原稿の分割画像に対応するファックスデータや原稿の縮小画像に対応するファックスデータがある。その後,複合機20では,送信先FAX30に能力を問い合わせ,その結果を基に送信するファックスデータを選択する。そして,選択されたファックスデータをFAX30に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,パーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置上のアプリケーションのデータをファクシミリ装置(FAX)に送信するファックス送信システムに関する。さらに詳細には,送信先FAX装置の能力に適したファックスデータを送信するファックス送信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,PCとFAXとを組み合わせたファックス送信システムがある。これは,PCにファックス送信装置が接続されている環境で,あるいはPCにファックス送信機能が組み込まれている環境で,PCがファックスデータを作成し,そのファックスデータをファックス送信装置を介してファックス送信するものである。
【0003】
上記のファックス送信システムでは,送信先FAXの能力に合わせてファックス送信を行う必要がある。例えば,PC上のアプリケーションで作成された画像には様々なサイズがある。すなわち,A3サイズ,A4サイズ,B5サイズといった用紙サイズである。通常,FAXはA4サイズまで送受信可能なものが多く,A3サイズの送受信可能なものは一般的ではない。そこで,ファックス送信システムでは,ファックスデータを送信する前に,送信先FAXとの通信回線を確立させた上で送信先FAXの能力を取得し,送信先FAXの能力に合致するデータを作り直してから送信する必要がある。
【0004】
このように,送信先FAXの能力に応じてデータを変換する技術としては,例えば特許文献1として,カラーデータあるいはモノクロデータに変換する機能を有し,送信先FAXの能力に合致するようにファックスデータを変換し,変換後のデータを送信するカラーFAXの通信方式が開示されている。
【特許文献1】特開2002−57906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来のファックス送信システムには,次のような問題があった。すなわち,ファックス送信処理では,送信先FAXの能力を確認するために通信回線を確立させることになるが,この通信回線の確立には時間がかかる。従来のファックス送信システムは,送信先FAXの能力を確認した後に,ファックスデータを作成している。このファックス送信の一連の処理中,PCとしてはファックスデータを作成し終えるまで次の処理を受け付けない。従って,ユーザは,ファックス送信を指示してからファックスデータの作成が終了するまでの長い間,PCに対する次の処理を待たされることになる。この待ち時間の問題は,一度に送信する送信先FAXの数が多いほど顕著になる。
【0006】
本発明は,前記した従来のファックス送信システムが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,ファックス送信時のユーザの待ち時間の短縮化が図られたファックス送信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされたファックス送信システムは,送信先ファックスの宛先情報を取得する情報取得部と,ファックス送信が指示された画像に対応する第1ファックスデータと,当該画像の加工画像に対応する第2ファックスデータを作成するファックスデータ作成部と,第1ファックスデータ,第2ファックスデータ,および宛先情報を併せ持ったファックス送信用データを作成する送信データ作成部と,ファックス送信用データの宛先情報を基に送信先ファックスに問い合わせ,当該送信先ファックスの能力を取得する能力取得部と,能力取得部にて取得した能力を基に,ファックス送信用データの中から送信するファックスデータを選択する選択部と,選択部が選択したファックスデータを送信先ファックスに送信する送信部とを有することを特徴としている。
【0008】
本発明のファックス送信システムでは,送信データ作成部にて,ファックス送信用データを作成する。ファックス送信用データには,宛先情報の他,ファックス送信が指示された原稿の画像に対応する第1ファックスデータと,原稿の加工画像に対応する第2ファックスデータとが含まれている。第2ファックスデータとしては,例えば,原稿の分割画像に対応するファックスデータや原稿の縮小画像に対応するファックスデータがある。その後,能力取得部が送信先ファックスに能力を問い合わせ,選択部がその結果を基に第1ファックスデータと第2ファックスデータとのいずれか一方を選択する。送信部は,選択部にて選択されたファックスデータを送信する。
【0009】
すなわち,本発明のファックス送信システムでは,送信先ファックスに能力を問い合わせる前に送信用のファックスデータを作成し終える。このファックスデータの作成終了の段階で,ユーザは次の動作を行うことが可能になる。そのため,ユーザの待ち時間は短い。また,加工したファックスデータを通信回線の接続前にあらかじめ用意していることから,送信先FAXの能力の取得後は,既に作成済みのファックスデータを選択するだけである。このことから,通信回線の接続後にファックスデータを作成する必要はなく,通信回線の接続時間は短い。
【0010】
また,本発明のファックス送信システムは,ファックスデータ作成部が,第2ファックスデータとして少なくとも2種類のファックスデータの作成が可能であり,ファックスデータ作成部が作成する第2ファックスデータの種類を指定する指定部を有し,ファックスデータ作成部は,指定部にて指定された種類に応じて第2ファックスデータを作成することとするとよりよい。
【0011】
すなわち,本発明のファックス送信システムは,第2ファックスデータとして,複数種類のファックスデータの作成が可能である。これにより,相手先によってそれぞれに適した形で送信できるようになる。さらに,本発明のファックス送信システムは,指定された種類に応じてファックスデータを作成する。そのため,指定されていないファックスデータは作成されず,処理の無駄が少ない。
【0012】
また,本発明のファックス送信システムは,送信先ファックスの宛先と第2ファックスデータの種類とを対応させて記憶する記憶部を有することとするとよりよい。これにより,ファックス送信の度に第2ファックスデータの種類を設定する手間を省くことができ,ユーザの利便性の向上に資する。
【0013】
また,本発明のファックス送信システムのファックスデータ作成部は,ファックス送信が指示された画像の画像データを加工し,その加工された画像データをファックスデータに変換することで第2ファックスデータを作成することとするとよりよい。すなわち,画像データを加工した後にファックスデータに変換するため,良質な画像を維持することができる。
【0014】
また,本発明のファックス送信システムの送信データ作成部は,複数の送信先の宛先情報と第1ファックスデータと第2ファックスデータとを1つのファックス送信用データとして作成することとするとよりよい。すなわち,送信先1件ごとにファックスデータを作成する場合と比較して,ファックスデータを作成する手間が少ない。また,ファックスデータの作成とファックスデータの送信とが別体である場合,ファックスデータを送信データ作成部から送信部に転送する際の,データの転送が容易である。
【0015】
また,本発明のファックス送信システムのファックスデータ作成部は,ファックス送信が指示された画像の用紙サイズを取得し,その用紙サイズが所定のサイズ以下の場合には,所定の種類の加工を制限することとするとよりよい。すなわち,例えば原稿の画像がA4以下では加工したファックスデータを送信する必要がない。そのため,用紙サイズが所定のサイズ以下では,分割,縮小等のサイズ調節に関する加工は行わない。これにより,処理の無駄を省き,待ち時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,ファックス送信時のユーザの待ち時間の短縮化が図られたファックス送信システムが実現している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,本発明にかかるファックス送信システムを具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,ファックス機能を有する複合機を介して,PCで作成したデータの送信を行うファックス送信システムに本発明を適用したものである。
【0018】
[ファックス送信システムの構成]
本形態のファックス送信システム100は,図1に示すように,画像読取機能および画像形成機能を有する複合機20と,各種のアプリケーションが組み込まれたPC10とを備えている。複合機20は,ファックス機能を備え,電話回線5を介してFAX30とのファックスデータのやり取りが可能である。また,ファックス送信システム100では,複合機20と,PC10とがインターネットあるいはLAN等のネットワーク4を介して接続されている。なお,ファックス送信システム100を構成する複合機,PCは1台に限るものではなく,複数台接続されてもよい。
【0019】
本ファックス送信システム100における複合機20は,PC10からファックスデータと宛先情報とを併せ持ったファックス送信用データを受信するとともに,送信先として指定されたFAX30にファックスデータを送信する。また,ファックス機能の1つとして,ファックスデータを送信する前に,送信先のFAX30と通信を行い,FAX30の能力を取得する。なお,この能力には,例えばA3サイズ以上の出力が可能であるか否かや,カラー印刷に対応しているか否か等が該当する。
【0020】
具体的に,PC10は,図2に示すように,各種演算処理を実行するCPU11(情報取得部,ファックスデータ作成部,送信データ作成部,および指定部の一例)と,当該PC10の起動時にCPU11が行う起動処理のプログラム(BIOS)等を記憶したROM12と,CPU11が各種処理を行う際に一時的な記憶領域として利用されるRAM13と,各種のプログラムやデータを記憶したハードディスクドライブ(HDD)14(記憶部の一例)とを有している。
【0021】
また,PC10は,キーボードやマウス等からなる操作部15と,液晶ディスプレイ等からなる表示部16と,他の情報機器との間で信号のやりとりを行うシリアルポートインターフェース17と,LAN,インターネット等のネットワークを介して信号のやりとりを行うネットワークインターフェース18とを有している。
【0022】
また,PC10のHDD14には,ファックス送信用データを作成するアプリケーションが組み込まれている。アプリケーションは,ファックス送信を行う原稿データ(画像やドキュメント)を取得し,その原稿データを基にファックス送信用のファックスデータを作成する機能を有している。さらには,ファックスデータと送信先情報とが対応付けられたファックス送信用データを作成する機能を有している。また,HDD14には,送信先の電話番号のリストを記録するアドレス帳が記憶されている。
【0023】
複合機20は,各種演算処理を実行するCPU21(能力取得部,選択部,および送信部の一例)と,当該複合機20の起動時にCPU21が行う起動処理のプログラム(BIOS)等を記憶したROM22と,CPU21が各種処理を行う際に一時的な記憶領域として利用されるRAM23と,各種のプログラムやデータを記憶したハードディスクドライブ(HDD)24とを有している。
【0024】
また,複合機20は,タッチパネルやスイッチ等からなる操作部25と,液晶ディスプレイ等からなる表示部26と,LAN,インターネット等のネットワークを介して信号のやりとりを行うネットワークインターフェース28と,電話回線を介して信号のやりとりを行う電話回線インターフェース29とを有している。さらに,複合機20は,画像読取機能を実現するためのスキャナ部201と,画像形成機能を実現するための画像形成部202とを有している。
【0025】
また,複合機20のHDD24には,ファックス送信用のアプリケーションが組み込まれている。アプリケーションは,PC10からファックス送信用データを取得するとともに,送信先FAXの能力を取得し,その能力を基に送信するファックスデータを選択する機能を有している。
【0026】
[ファックス送信の動作]
続いて,ファックス送信システム100のファックス送信動作について説明する。本ファックス送信システム100では,PC10にてファックスデータを作成し,そのファックスデータを複合機20を介してFAX30に送信する。なお,PC10では,PC10がファックス送信を行うための中継用のFAXとして,複合機20が選択済みであるものとする。以下の説明では,PC10側の動作,複合機20側の動作の順に説明する。
【0027】
[PCの動作]
始めに,PC10側の処理について,図3のフローチャートを参照しつつ説明する。PC10にてファックス送信が指示されると,まず,送信先FAXを設定するための送信先選択画面が表示される(S101)。図4は,送信先選択画面の一例を示している。送信先選択画面61では,アドレス帳に登録されているメンバーのリストが全メンバー表示部62に表示される。そして,送信先として選択されたメンバーのリストが送信先メンバー表示部63に表示される。
【0028】
送信先選択画面61では,送信先メンバー表示部63のリストに追加したい場合に,追加したいメンバーを全メンバー表示部62から選択し,追加ボタン64を押下する。反対に,送信先メンバー表示部63のリストから削除したい場合に,削除したいメンバーを送信先メンバー表示部63から選択し,削除ボタン65を押下する。また,全メンバーのアドレス帳から削除したい場合に,削除したいメンバーを全メンバー表示部62から選択し,削除ボタン65を押下する。
【0029】
また,名前やFAX番号を変更したい場合や新規にメンバーを登録したい場合には,新規ボタン66や編集ボタン67を押下して,送信先編集画面を起動させる。図5は,送信先編集画面の一例を示している。送信先編集画面71では,メンバーの名前の入力ができるテキストボックス72と,そのメンバーのFAX番号の入力ができるテキストボックス73とを備え,名前およびFAX番号を編集することができる。
【0030】
また,送信の際に自動的に行われる処理として,原稿のサイズがA4サイズよりも大きい場合の処理を選択することができる。本形態では,原稿を分割して送信(分割送信)するか,原稿を縮小して送信(縮小送信)するかのいずれか一方をラジオボタン74,75によって選択する。すなわち,本形態では,原稿のサイズがA4サイズよりも大きい場合の送信オプションとして,「分割送信」と「縮小送信」とのいずれか一方が必ず選択される。
【0031】
また,送信先編集画面71の決定ボタン76を押下することにより,新規のメンバーの登録であれば,アドレス帳に当該メンバー用の新しいレコードが追加される。また,既存のメンバーの編集であれば,アドレス帳に当該メンバー用のレコードの情報が更新される。すなわち,アドレス帳のレコードには,図6に示すように,少なくとも,メンバーの名前,FAX番号,および送信オプション(本形態では,「原稿のサイズがA4サイズよりも大きい場合の処理」)が記憶される。このように,メンバー名,FAX番号および送信オプションを対応させて記憶することにより,ファックス送信の度に送信オプションの種類を設定する手間を省くことができる。
【0032】
このように,送信先選択画面61や送信先編集画面71を使用して送信先が選択される。送信先を選択し終えると,送信先選択画面61中の送信ボタン68を押下される。これにより,送信先メンバー表示部63に表示されているメンバーを送信先に決定する(S102)。このとき,送信先となるメンバー,そのメンバーのFAX番号,およびそのメンバーの送信オプションとが関連付けられた送信先情報が作成される。例えば,図4に示すように,送信先のメンバーとして「メンバーA」,「メンバーC」が選択されていると,図7に示すように,アドレス帳から「メンバーA」および「メンバーC」のレコードが抽出される。この抽出されたデータが,送信先情報として作成される。
【0033】
次に,送信先が有るか否かを判断する(S103)。送信先として1件も登録されていない場合には(S103:NO),S104の処理以降の処理をバイパスして本処理を終了する。一方,送信先が登録されている,すなわちファックス送信を行う場合には(S103:YES),ファックス送信用データを作成する(S104)。S104の処理の詳細については後述する。ファックス送信用データの作成後は,そのデータを複合機20に送信する(S105)。
【0034】
S105の処理後,PC10側の処理を終了する。本処理の終了によって,ユーザはPC10に対して次の動作を行うことが可能になる。すなわち,ユーザに対する処理待ちが解除される。
【0035】
続いて,S104のファックス送信データ作成処理の詳細について,図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0036】
まず,ファックス送信を行う原稿データ(画像やドキュメント)を取得し,画像データを作成する(S201)。原稿データは,各種のアプリケーションによって作成あるいは取得される。S201の処理では,原稿データを基に,フルカラーあるいはグレースケールのラスタグラフィックデータである画像データを作成する。その後,その画像データを基にファックスデータを作成する(S202)。具体的にファックスデータは,画像データが2値化されたモノクロデータである。
【0037】
次に,画像サイズが用紙のA4サイズより大きいか否かを判断する(S203)。画像サイズがA4より大きい場合には(S203:YES),S204の処理に移行し,画像の加工処理を行う。画像サイズがA4以下の場合には(S203:NO),画像の加工処理(S204〜S209)をバイパスし,S208の処理に移行する。すなわち,原稿の画像がA4以下では画像の加工処理の必要がない。そこで,A4サイズ以下では,画像の加工処理をバイパスして,処理の無駄を省く。
【0038】
画像の加工処理としては,まず,送信先として指定されているメンバーのデータに分割送信設定が有効になっているものがあるか否かを確認する(S204)。例えば,送信先の設定として,図7に示したような設定がなされているならば,「メンバーA」の分割送信設定が有効であるため,S204の処理は“YES”となる。分割送信設定が1つも有効になっていない場合には(S204:NO),画像の分割加工処理(S205〜S206)をバイパスし,S207の処理に移行する。すなわち,画像の分割加工処理をバイパスして,処理の無駄を省く。
【0039】
分割送信設定が有効であるものがあれば(S204:YES),S201で作成した画像データを分割し,それぞれがA4サイズに収まるような画像データを作成する(S205)。例えば,分割元となる画像データとして図9に示すような画像データ(P)があるとすると,図10に示すような図9の画像データが2分割された2つの画像データ(P1),(P2)を作成する。その後,各画像データに対応するファックスデータを作成する(S206)。
【0040】
次に,送信先として指定されているメンバーのデータに縮小送信設定が有効になっているものがあるか否かを確認する(S207)。例えば,送信先の設定として,図7に示したような設定がなされているならば,「メンバーC」の縮小送信設定が有効であるため,S207の処理は“YES”となる。縮小送信設定が1つも有効になっていない場合には(S207:NO),画像の縮小加工処理(S208〜S209)をバイパスし,S210の処理に移行する。すなわち,画像の縮小加工処理をバイパスして,処理の無駄を省く。
【0041】
縮小送信設定が有効であるものがあれば(S207:YES),S201で作成した画像データを縮小し,A4サイズに収まるような画像データを作成する(S208)。例えば,縮小元となる画像データとして図9に示すような画像データ(P)があるとすると,図11に示すような図9の画像データが縮小された画像データ(p)を作成する。その後,その画像データに対応するファックスデータを作成する(S209)。
【0042】
なお,縮小したファックスデータを作成するには,ファックスデータの作成を行った後,そのファックスデータを縮小することとしてもよいが,本形態のように画像データの縮小を行った後,その画像データをファックスデータに変換する方が好適である。すなわち,モノクロ2値画像であるファックスデータを縮小すると,画像のがたつきが強調されてしまう。一方,カラー多値画像である画像データを縮小すると,均一な縮小が行われ,画像のがたつきが抑えられる。そのため,本形態の順序が高画質を維持する上で好適である。
【0043】
加工処理後は,加工元の画像に対応するファックスデータ(以下,「第1ファックスデータ」とする)および加工後の各ファックスデータ(以下,「第2ファックスデータ」とする)に,送信先情報を付加したデータを作成し,当該データをファックス送信用データとする(S210)。S210の処理後は,本ファックス送信用データ作成処理を終了する。
【0044】
[複合機の動作]
続いて,複合機20側の処理について,図12のフローチャートを参照しつつ説明する。複合機20では,まず,ファックス送信用データを受信する(S301)。その後,カウンタiに1を代入する(S302)。
【0045】
次に,カウンタiと,ファックス送信用データに含まれている宛先情報(送信先情報)から,送信先として選択されているメンバーの数とを比較する(S303)。カウンタiが送信先数より大きくない場合には(S303:NO),未送信となっているメンバーがいると判断でき,未送信となっているメンバーを抽出し,そのメンバーに対してファックス送信を行う(S304)。ファックス送信の詳細については後述する。S304の処理後は,カウンタiに1を加え(S305),S303の処理に戻って未送信のメンバーがいればファックス送信を繰り返す。
【0046】
一方,カウンタiが送信先数より大きい場合には(S303:YES),未送信となっているメンバーがいないと判断でき,本処理を終了する。
【0047】
続いて,S304のファックス送信処理の詳細について,図13のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0048】
まず,選択されているメンバーのFAX(送信先FAX)に当該FAXの能力を問い合わせる(S401)。このとき,送信先FAXとの通信回線を確立させる。そして,通信回線を確立させた上で,送信先FAXに能力を問い合わせて回答を得る。具体的に本形態では,A4サイズより大きいサイズの出力が可能か否かの回答を得る。
【0049】
次に,通信回線を確立させた状態のままで,原稿画像の画像サイズが用紙のサイズのA4より大きいか否かを判断する(S402)。画像サイズがA4より大きくない場合には(S402:NO),原寸大の画像に対応する第1ファックスデータをファックス送信する(S407)。すなわち,一般的なFAXであればA4サイズの用紙に対応しており,A4サイズ以下の画像であれば出力可能である。そのため,原稿の画像に対応した第1ファックスデータをファックス送信する。
【0050】
一方,画像サイズがA4より大きい場合には(S402:YES),送信先FAXがA4サイズより大きいサイズの出力が可能か否かを判断する(S403)。大サイズに対応可能である場合には(S403:YES),原寸大の画像に対応する第1ファックスデータをファックス送信する(S407)。大サイズに対応可能であるか否かは,S401の処理での回答を基に判断する。
【0051】
一方,大サイズに対応できない場合には(S403:NO),原稿のサイズがA4サイズよりも大きい場合の送信オプションの設定内容について判断する。具体的には,当該送信オプションが分割送信であるか否かについて判断する(S404)。
【0052】
送信オプションが分割送信であれば(S404:YES),第2ファックスデータの中から,S206の処理で作成した分割画像の各ファックスデータをファックス送信する(S405)。送信オプションが分割送信でなければ(S404:NO),つまり縮小送信であれば,第2ファックスデータの中から,S209の処理で作成した縮小画像のファックスデータをファックス送信する(S406)。
【0053】
S405,S406,あるいはS407の処理によるファックス送信後は,送信先FAXとの回線を切断し,本ファックス送信処理を終了する。
【0054】
図14は,本形態のファックス送信システム100の待ち時間および通話時間を示している。なお,図14中の(A)が本形態(ファックスデータ作成,送信先FAXの能力確認,ファックス送信の順)を示し,(B)が従来の一例(送信先FAXの能力確認,ファックスデータ作成,ファックス送信の順)を示している。
【0055】
図14に示すように,本形態のファックス送信システム100では,PC10でファックスデータを作成し,そのファックスデータを複合機20に送信した段階でPC10が解放される。一方,従来の形態では,送信先FAXの能力確認を待ってPC10が解放されることになる。この送信先FAXの能力確認のための時間は,送信先が多くなるほど長くなる。そのため,本形態のファックス送信システム100は,送信先FAXの能力を確認した後にファックスデータを作成する形態と比較して,PC10が解放されるタイミングが早い。従って,ユーザの待ち時間が短い。
【0056】
また,本形態のファックス送信システム100では,ファックスデータを作成した後に通信回線の接続を開始する。一方,従来の形態では,ファックスデータの作成前から通信回線の接続を開始する。そのため,本形態のファックス送信システム100は,ファックスデータを作成する前に通信回線の接続が開始される形態と比較して,通話時間が短い。
【0057】
以上詳細に説明したように本形態のファックス送信システム100は,送信先FAXに能力を問い合わせる前にファックスデータを作成し終える。そのため,このファックスデータの作成終了の段階で,ユーザはPC10での次の動作を行うことが可能になる。つまり,ユーザは,送信先FAXの能力を問い合わせるための回線確立を待つ必要がない。よって,ユーザの待ち時間は短い。また,送信先FAXの能力の取得後は,既に作成済みのファックスデータを選択するだけであることから,能力の取得後にファックスデータを作成する従来の形態と比較して,通信回線の接続時間も短い。
【0058】
また,ファックス送信システム100は,ファックスデータとして,第1ファックスデータと第2ファックスデータとの少なくとも2種類のファックスデータをあらかじめ作成した上で,複合機20にそれらファックスデータを送信している。そのため,複合機20側では,送信先FAXの能力によって改めてPC10側にファックスデータの作成を要求する必要はない。
【0059】
また,ファックス送信システム100は,複数種類のファックスデータに対応している。これにより,相手先によってそれぞれに適した形で送信できるようになる。例えば,視力が十分ではないユーザへは原稿を複数分割したファックスデータを送信し,その他のユーザには原稿を縮小したファックスデータを送信する等の,ユーザに配慮したファックス送信を行うことができる。
【0060】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,実施の形態では,複合機を利用してファックス送信を行っているが,複合機に限るものではない。すなわち,ファックス送信機能を有するものであればよく,例えばファックス専用機であってもよい。また,実施の形態では,PCを利用してファックスデータの作成を行っているが,PCに限るものではない。例えばワークステーション,携帯電話であってもよい。
【0061】
また,実施の形態では,ファックスデータを作成する機能とファックス送信を行う機能とを,PCと複合機とで別体として設けているが,これに限るものではない。すなわち,ファックス機能を内蔵するPCであれば,当該PCのみであっても本発明を適用可能である。
【0062】
また,実施の形態では,送信オプションとして,原稿のサイズがA4サイズよりも大きい場合に,分割送信あるいは縮小送信を行っているが,送信オプションはこれに限るものではない。例えば,縮小スケールを1/N(Nは自然数)に選択できるようにしてもよい。また,画像サイズが用紙サイズのA4より小さい場合(例えば,用紙サイズのB5)に,拡大した画像のファックスデータを作成してもよい。
【0063】
また,実施の形態では,送信先FAXが大サイズの出力が可能であるか否かによって送信するファックスデータを振り分けているが,これに限るものではない。例えば,原稿がカラー画像であった場合に,図15に示すように,カラー画像をファックス送信するのかモノクロ画像に変換した画像をファックス送信するのかを送信オプションとしてあらかじめ選択しておき,アドレス帳に記憶しておく。さらにPC10では,カラー画像に対応した第1ファックスデータと,そのカラー画像をモノクロ画像に変換した第2ファックスデータとを作成しておく。そして,両ファックスデータをファックス送信用データに含ませ,複合機20に送信する。複合機20では,送信先FAXの能力としてカラー印刷に対応しているか否かを取得し,その結果によっていずれか一方のファックスデータを送信するとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施の形態に係るファックス送信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係るファックス送信システムを構成するPCおよび複合機の詳細を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係るPCの動作(メイン処理)を示すフローチャートである。
【図4】送信先選択画面の一例を示す図である。
【図5】送信先編集画面の一例を示す図である。
【図6】アドレス帳に設定されているメンバーおよびそのメンバーの設定の一例を示す図である。
【図7】送信先情報に設定されているメンバーおよびそのメンバーの設定の一例を示す図である。
【図8】実施の形態に係るPCの動作(ファックス送信用データ作成処理)を示すフローチャートである。
【図9】画像データの元データの一例を示す図である。
【図10】画像データの元データを分割した後の画像データのイメージを示す図である。
【図11】画像データの元データを縮小した後の画像データのイメージを示す図である。
【図12】実施の形態に係る複合機の動作(メイン処理)を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態に係る複合機の動作(データ送信処理)を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態に係るファックス送信システムの待ち時間および通話時間の概略を示すタイミングチャートである。
【図15】応用例のアドレス帳に設定されているメンバーおよびそのメンバーの設定の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
4 ネットワーク
5 電話回線
10 PC
20 複合機
30 FAX
100 ファックス送信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信先ファックスの宛先情報を取得する情報取得部と,
ファックス送信が指示された画像に対応する第1ファックスデータと,当該画像の加工画像に対応する第2ファックスデータを作成するファックスデータ作成部と,
前記第1ファックスデータ,前記第2ファックスデータ,および前記宛先情報を併せ持ったファックス送信用データを作成する送信データ作成部と,
前記ファックス送信用データの宛先情報を基に送信先ファックスに問い合わせ,当該送信先ファックスの能力を取得する能力取得部と,
前記能力取得部にて取得した能力を基に,前記ファックス送信用データの中から送信するファックスデータを選択する選択部と,
前記選択部が選択したファックスデータを送信先ファックスに送信する送信部とを有することを特徴とするファックス送信システム。
【請求項2】
請求項1に記載するファックス送信システムにおいて,
前記ファックスデータ作成部は,第2ファックスデータとして少なくとも2種類のファックスデータの作成が可能であり,
前記ファックスデータ作成部が作成する第2ファックスデータの種類を指定する指定部を有し,
前記ファックスデータ作成部は,前記指定部にて指定された種類に応じて第2ファックスデータを作成することを特徴とするファックス送信システム。
【請求項3】
請求項2に記載するファックス送信システムにおいて,
送信先ファックスの宛先と第2ファックスデータの種類とを対応させて記憶する記憶部を有することを特徴とするファックス送信システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載するファックス送信システムにおいて,
前記ファックスデータ作成部は,ファックス送信が指示された画像の画像データを加工し,その加工された画像データをファックスデータに変換することで第2ファックスデータを作成することを特徴とするファックス送信システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載するファックス送信システムにおいて,
前記送信データ作成部は,複数の送信先の宛先情報と第1ファックスデータと第2ファックスデータとを1つのファックス送信用データとして作成することを特徴とするファックス送信システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載するファックス送信システムにおいて,
前記ファックスデータ作成部は,ファックス送信が指示された画像の用紙サイズを取得し,その用紙サイズが所定のサイズ以下の場合には,所定の種類の加工を制限することを特徴とするファックス送信システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載するファックス送信システムにおいて,
前記ファックスデータ作成部は,第2ファックスデータとして,ファックス送信が指示された画像を分割した画像を記憶することを特徴とするファックス送信システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載するファックス送信システムにおいて,
前記ファックスデータ作成部は,第2ファックスデータとして,ファックス送信が指示された画像を縮小した画像を記憶することを特徴とするファックス送信システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載するファックス送信システムにおいて,
前記ファックスデータ作成部は,第2ファックスデータとして,ファックス送信が指示されたカラー画像をモノクロ化した画像を記憶することを特徴とするファックス送信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−182568(P2009−182568A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18718(P2008−18718)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】