説明

フィルタ付きエアブリーザ

【課題】建設車両の作動油タンクや燃料タンクにおいて、油ミストによるフィルタの詰まりを防止し、フィルタの掃除間隔を長くし、延命化することが可能となる構成のフィルタ付きエアブリーザを提供する。
【解決手段】油タンク内部と外気とを連通させる空気通路を吸気通路と排気通路とに分離する。吸気通路にフィルタ22および吸気用逆止弁17を設け、排気通路に排気用逆止弁35を設ける。排気管10を排気口42に接続し、その排気管の出口を油タンクの上面より下に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラックや油圧ショベル等の建設車両において、作動油タンクや燃料タンク等の油タンクの上部に設けられるエアブリーザに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧式アクチュエータを使用する建設車両においては、車体に作動油タンクを搭載し、この作動油タンクに溜める作動油を油圧ポンプから吐出して油圧式アクチュエータを作動させる構成を有する。また、エンジン駆動の建設車両においては、燃料タンクが車体に搭載される。これらの油タンクのうち、作動油タンクは、油圧式アクチュエータの作動に伴う油面の上昇、下降に伴い、油面より上に収容された空気層の圧力が一定の正圧、負圧内に収まるように、吸気用逆止弁および排気用逆止弁を有するエアブリーザがタンク上部に取付けられる。
【0003】
油圧ショベルやダンプトラック等の建設車両は、塵埃が舞う掘削現場や道路等において使用されることがある。また、ダンプトラックの作動油タンクは、車体側部の前後の車輪の間のスペースに搭載され、車輪によって巻き上げられる粉塵や土砂が多い箇所に搭載される。これらの理由から、作動油タンクに塵埃が混入することを防止する必要があり、塵埃防止のため、エアブリーザに塵埃除去用のフィルタが取付けられる。
【0004】
また、エンジン駆動の建設車両においては、エンジンに過剰の燃料を供給し、残った燃料を戻し回路に還流させ、戻し回路に設けた燃料クーラで冷却して燃料タンクに戻す制御が行なわれる。このため、燃料タンクにおいても、タンク内油面の上昇、下降が起こるので、同様にエアブリーザを設ける必要がある。建設車両においては、この燃料タンクの場合も塵埃の侵入を防止するためのフィルタが設けられる。
【0005】
従来のフィルタ付きエアブリーザは、特許文献1に開示されているように、空気の出入口と油タンクの内部空間とを連通させる空気通路にフィルタを設け、フィルタと油タンクとの間の空気通路に、吸気の際に開く逆止弁と、排気の際に開く逆止弁とを設けている。
【0006】
また、前記特許文献1には、油タンクの内部からフィルタを通して外部に漏れる油ミストがタンク上面に落下してタンク上面を汚すことを防止するため、エアブリーザの空気出入口の下に油受けを設け、この油受けに溜まる油を油タンク内に戻すように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平4−110276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来のフィルタ付きエアブリーザにおいて、油タンク内の油面が下がり、吸気を行なう際には、乾いた空気がフィルタを通して油タンク内に入る。しかしながら、排気の際には、油タンク内の空間に存在する油ミストが含まれた空気がフィルタを通過する。このため、油ミストがフィルタに付着する。この油ミストはフィルタの空気通過孔を塞ぐと共に、この油ミストの持つ接着作用により、外部からの塵埃をフィルタに付着させて目詰まりを促進し、フィルタの掃除間隔を短くしたり、フィルタの寿命を短くするという問題点があった。また、このようにフィルタが油ミストによって塞がれやすいことから、従来のエアブリーザにおいては、通気面積の大きなフィルタが必要になるという問題点があった。
【0009】
また、前記特許文献1に記載のエアブリーザは、エアブリーザの空気出入口の下に油受けを設け、この油受けに溜まる油を油タンク内に戻すように構成している。しかしながら、この構成によると、塵埃の付着した油が油タンク内に混入され、油が汚染されるという不具合がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、油ミストによるフィルタの詰まりを防止し、フィルタの掃除間隔を長くし、延命化することが可能となる構成のフィルタ付きエアブリーザを提供することを目的とする。また本発明は、塵埃が油に混入することによる汚染を防止することが可能となるフィルタ付きエアブリーザを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のフィルタ付きエアブリーザは、建設車両の車体に搭載される油タンクの上部に設置されるフィルタ付きエアブリーザにおいて、
油タンク内部と外気とを連通させる空気通路を吸気通路と排気通路とに分離し、
前記吸気通路にフィルタおよび吸気用逆止弁を設け、前記排気通路に排気用逆止弁を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2のフィルタ付きエアブリーザは、請求項1に記載のフィルタ付きエアブリーザにおいて、
前記エアブリーザを、油タンクの上面に固定する下部部材とこの下部部材に着脱可能に取付ける上部部材とに分離し、
前記上部部材内に前記吸気通路と前記排気通路とを設けると共に、前記吸気通路にフィルタおよび吸気用逆止弁を設け、かつ前記排気通路に排気用逆止弁を設け、
前記下部部材に前記吸気通路と前記排気通路に連通する通路を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項3のフィルタ付きエアブリーザは、請求項1に記載のフィルタ付きエアブリーザにおいて、
前記エアブリーザを、油タンクの上面に固定する下部部材とこの下部部材に着脱可能に取付ける上部部材とに分離し、
前記上部部材内に前記吸気通路を設けると共に、前記吸気通路にフィルタおよび吸気用逆止弁を設け、
前記下部部材に前記吸気通路に連通する通路を設けると共に、この通路から分岐した排気通路を設け、かつこの排気通路に排気用逆止弁を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項4のフィルタ付きエアブリーザは、建設車両の車体に搭載される油タンクの上部に設置されるフィルタ付きエアブリーザにおいて、
油タンク内部と外気とを連通させる空気通路を吸気通路と排気通路とに分離し、
前記吸気通路にフィルタを設け、前記排気通路に排気用逆止弁を設けると共に、排気の際の前記フィルタにおける流動損失圧力より、前記排気用逆止弁のクラッキング圧を低く設定したことを特徴とする。
【0015】
請求項5のフィルタ付きエアブリーザは、請求項1から4までのいずれか1項に記載のフィルタ付きエアブリーザにおいて、
前記排気通路の排気口に接続する排気管を設け、この排気管の排気出口を、前記油タンクの上面より下方に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、吸気の際には空気はフィルタおよび吸気用逆止弁を通して油タンク内に導入される。一方、排気の際には油ミストを含んだ空気はフィルタを通らず、排気通路および排気用逆止弁を通してタンク外部に排出される。このため、油ミストがフィルタに付着することを防ぐことができ、油ミストの付着によるフィルタの目詰まりを防止するのみならず、付着した油ミストによるフィルタへの塵埃付着の助長を防止することができる。このため、フィルタ掃除の時間間隔を長くすることが可能になると共に、フィルタを延命化することができる。また、フィルタの機能を長期にわたって維持できるため、フィルタの機能を維持するためにフィルタ
を大型とする必要がなく、フィルタを小型化したエアブリーザを実現できる。
【0017】
請求項2の発明によれば、上部部材として従来より下部部材に取付けられていた上部部材と同様の取付け構造を採用すれば、下部部材として従来のものを使用してもよく、上部部材のみを交換するだけで本発明の作用を得ることができ、交換部分の規模が小さくてすむ。
【0018】
請求項3の発明によれば、下部部材として従来より作動油タンクに取付けられていた下部部材と同様の取付け構造を採用すれば、上部部材として従来のものを使用してもよく、下部部材のみを交換するだけで本発明の作用を得ることができ、交換部分の規模が小さくてすむ。
【0019】
請求項4の発明によれば、吸気の際には空気はフィルタおよび吸気用逆止弁を通して油タンク内に導入される。一方、排気の際にはフィルタにおける通常流量時の流動損失圧力が排気用逆止弁のクラッキング圧より高いため、油ミストを含んだ空気はフィルタを通らず、排気通路および排気用逆止弁を通してタンク外部に排出される。このため、請求項1と同様の効果が得られる。また、吸気用逆止弁を省くことができるので、構成が簡略化され、コストダウンが図れる。
【0020】
請求項5の発明によれば、排気管を設けると共に、その排気出口を油タンクの上面より下方に設けたので、油ミストを含む空気がエアブリーザの吸気口から離れ、油ミストの回り込みによるフィルタへの油ミストの付着が防止される。また、特許文献1に記載のように排気中の油ミストや塵埃が油タンク内に導入されることがなく、油の汚染が生じない。また、油ミストの油タンク上面への蓄積が防止され、油タンク上面の汚れが防止されると共に、メンテナンス作業の際の掃除が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のフィルタ付きエアブリーザを適用した建設車両の一例であるダンプトラックを示す側面図である。
【図2】本発明のフィルタ付きエアブリーザの一実施の形態を示す油タンクの側面図である。
【図3】本発明のフィルタ付きエアブリーザの一実施の形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明のフィルタ付きエアブリーザの他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図5】本発明のフィルタ付きエアブリーザの他の実施の形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明のフィルタ付きエアブリーザを適用する油タンクを備えた建設車両の一例であるダンプトラックを示す側面図である。このダンプトラックは、車体1の前後の前輪2、後輪3を取付け、車体の前部に運転室4を設置し、車体1の後部の枢支軸5を中心として油圧シリンダ6によりベッセル7が起伏可能に取付けられる。車体1の左側には作動油タンク8が搭載される。なお、車体1の右側には燃料タンクが搭載されるが、図示されていない。これらの作動油タンク8や燃料タンクは前輪2や後輪3の間にあり、塵埃の多い掘削現場や道路等において、塵埃にさらされると共に、前輪2や後輪3により巻き上げられる塵埃にさらされるため、後述のように、作動油タンク8内への塵埃の侵入を防止するフィルタ付きエアブリーザ9が作動油タンク8の上面に取付けられる。
【0023】
図2はフィルタ付きエアブリーザ9を備えた作動油タンク8を示す側面図である。この実施の形態のエアブリーザ9は、作動油タンク8の上面に取付けられる下部部材9aとその上に取付けられる上部部材9bとからなる。10は排気管であり、この排気管10はその排気出口10aは作動油タンク8の上面よりも下方に固定されている。
【0024】
図3はこの実施の形態のエアブリーザの縦断面図である。図3において、下部部材9aはボルト12によって作動油タンク8の上板部13に取付けられ、この下部部材9aには、上板部13に設けた開口部13aに連通する通気孔14を有する。15は作動油タンク8の上板部13と下部部材9aとの間に介在させた気密材である。
【0025】
上部部材9bは、吸気用逆止弁17とこの吸気用逆止弁17を覆って取付けられるフィルタ22およびそのフィルタケース23を含む。吸気用逆止弁17は、弁ケース17aと、弁体17bと押しばね17cとを備える。この吸気用逆止弁17は、下部部材9a内に弁ケース17aの下部を嵌め、後述のフィルタケース23の下板部23bにより上面開口部を押さえて取付けられる。19は弁ケース17aと下部部材9aとの間に介在させた気密材である。弁ケース17aの下板部20には前記通気孔14に連通する通気孔20aを有する。また、弁ケース17aの下板部20と下部部材9aとの間に排気通路の一部となる隙間21を形成する。
【0026】
フィルタ22は筒状をなし、このフィルタ22を収容したフィルタケース23は、筒状部23aと、下板部23bと、上板部23cとを有する。上板部23cの筒状部23aに対する取付けは、筒状部23aの上部に設けた鍔部23dと上板部23cの端部とを合わせ、これらに設けたボルト挿通孔に挿通したボルト24をナット25に螺合し締結することにより行なう。26は筒状部23aと上板部23cとの間に介在させた気密材である。
【0027】
このフィルタケース23の下部部材9aへの取付けは、筒状部23aの下部に設けた鍔部23fを下部部材9aに設けた鍔部11に合わせ、これらに設けたボルト挿通孔に挿通したボルト27をナット28に螺合し締結することにより行なう。フィルタケース23の筒状部23aの下部には吸気口29を設けるとともに、下板部23bにもこの吸気口29から導入される空気をフィルタ22の外周と筒状部23aとの間の空間30に導入する通気孔31を設ける。
【0028】
前述のように、下板部23bは吸気用逆止弁17の弁ケース17aの上面開口部に当接して吸気用逆止弁17の一部を構成する役目を果たす。この下板部23bには吸気用逆止弁17の弁口となる通気孔32を設ける。また下板部23bと弁体17bとの間には気密材33を介在させる。
【0029】
この上部部材9bにおいて、フィルタケース23の吸気口29、通気孔31、フィルタ22の外周と筒状部23aとの間の空間30、フィルタ22、フィルタ22内の空間34、吸気用逆止弁17、弁ケース17aの下板部20に設けた通気孔20aとにより吸気通路を構成する。
【0030】
35は排気用逆止弁であり、この弁35の弁ケースは、フィルタケース23の筒状部23aから外方に延出させて形成した延出部36と、フィルタケース23の上板部23cを延出させて形成した延出部37とにより構成する。筒状部23aの延出部36には弁口となる通気孔38を設けると共に、この通気孔38に装着する弁体35aと延出部36との間に気密材39を介在させる。また、上板部23cの延出部37と弁体35aとの間に押しばね35bを介在させる。
【0031】
この上部部材9aにおいて、排気通路は、吸気用逆止弁17の下板部20と下部部材9aとの間に形成した隙間21と、吸気用逆止弁17の弁ケース17aとフィルタケース23aにおける前記延出部36の下方に形成した排気通路形成部40との間に形成した排気用空間41と、吸気用逆止弁17と、延出部36に形成した排気口42とにより構成する。排気口42には排気管10を接続するための接続金具44を取付け、この接続金具44に継手45を介して排気管10を接続する。
【0032】
この構成によれば、吸気の際には空気はフィルタ22および吸気用逆止弁17を通して作動油タンク8内に導入される。一方、排気の際には油ミストを含んだ空気はフィルタ22を通らず、前記隙間21、排気用空間41、排気通路排気用逆止弁35、排気口42おおよび排気管10を通してタンク外部に排出される。このため、油ミストがフィルタ22に付着することを防ぐことができ、油ミストの付着によるフィルタ22の目詰まりを防止するのみならず、付着した油ミストによるフィルタ22への塵埃付着の助長を防止することができる。このため、フィルタ22の掃除の時間間隔を長くすることが可能になると共に、フィルタ22を延命化することができる。また、フィルタ22の機能を長期にわたって維持できるため、フィルタ22の機能を維持するためにフィルタ22を大型とする必要がなく、フィルタ22を小型化したエアブリーザを実現できる。
【0033】
また、この実施の形態においては、上部部材9bを既存の下部部材9aに取付け可能な構成とすることにより、上部部材9bのみを交換するだけで本発明の作用を得ることができるので、交換部分の規模が小さくてすむ。また、排気管10の排気出口10aを作動油タンク8の上面より下方に設けたので、油ミストを含む空気がエアブリーザ9の吸気口29から離れ、油ミストの回り込みによるフィルタへの油ミストの付着が防止される。また、特許文献1に記載のように排気中の油ミストや塵埃が作動油タンク8内に導入されることがなく、油の汚染が生じない。また、油ミストの作動油タンク8上面への蓄積が防止され、作動油タンク8の上面の汚れが防止されると共に、メンテナンスの際の掃除が容易となる。
【0034】
図4は本発明によるエアブリーザの他の実施の形態を示す縦断面図である。この実施の形態は、上部部材9aに排気通路を設けるのではなく、下部部材9aに排気通路および排気用逆止弁を設けたものである。図4において、図3と同じ符号は等価の機能を発揮する部分であり、上部部材9bには、前記フィルタ22と吸気用逆止弁17を有する吸気通路を設ける。
【0035】
一方、下部部材9aにおいて、50は下部部材9aの側面から側方に延出させて設けた排気通路形成用の延出部であり、この延出部50は下板部50aと筒状部50bとからなる上面開口の容器状をなし、この延出部50の上面開口部にボルト51、ナット52により上板53を設けて上面開口部を閉塞することにより、排気通路54を形成する。56は延出部50の下板部50aに設けた排気の入口および弁口となる通気孔、57は筒状部50bに設けた排気口である。
【0036】
59はこの延出部50と上板53とを弁ケースとして構成される排気用逆止弁である。この排気用逆止弁59は、弁体59aを下板部50aの通気孔56の形成部に装着し、下板部50aと弁体59aとの間に気密材60を介在させ、弁体59aと上板53との間に押しばね59bを設けて排気用逆止弁59を構成する。排気口57には前記実施の形態と同様に接続金具44と継手45により排気管10を接続する。この実施の形態においては、作動油タンク8の上板部13に設けた通気孔13aに、下部部材9aに設けた通気孔14を対面させている。また、延出部50に設けた通気孔56を、作動油タンク8の上板部13に設けた別の通気孔13bに対面させている。
【0037】
この実施の形態においても、作動油タンク8から排出される油ミストを含んだ空気は延出部50の下板部50aに設けた通気孔56、排気用逆止弁59、排気口57、および排気管10を通して排出されるから、フィルタ22の油ミストの付着が防止され、前記実施の形態と同様の効果を奏することができる。また、下部部材9aとして従来より作動油タンク8に取付けられていた下部部材と同様の取付け構造を採用すれば、上部部材として従来のものを使用してもよく、下部部材9aのみを交換するだけで本発明の作用を得ることができ、交換部分の規模が小さくてすむ。
【0038】
図5は本発明のエアブリーザの他の実施の形態を示す図である。図5において、63はフィルタケース、64はこのフィルタケース63内に嵌合したブロックであり、このブロック64の下部に雄ねじ部65を有し、この雄ねじ部65を作動油タンク8の上板部13に設けたねじ孔13cに螺合してエアブリーザを取付ける。66はフィルタケース63とブロック64との間に挟持して取付けた筒状のフィルタである。67はブロック64に設けた吸気口であり、この吸気口67はブロック64に設けた吸気通路68を通してフィルタ66の外周の空間69に連通し、フィルタ66の内部はブロック64の中心に設けた通気孔70に連通する。
【0039】
71は排気用逆止弁であり、この弁71はブロック64に設けた弁収容空間に収容して取付けられる。71aはこの弁71の弁体、71bは押しばねである。この弁の弁口73は、通気孔74を通してブロック64の中心の通気孔70に連通させる。75は排気口である。この排気口75にも前記排気管10を接続することが好ましい。
【0040】
このエアブリーザは、フィルタ66の通常の空気の流動損失圧力より排気用逆止弁71のクラッキング圧を低く設定することにより、吸気は実線76で示すように、吸気口67、吸気通路68、フィルタ外周の空間69、フィルタ66、通気孔70を通して作動油タンク8内に導入される。一方、排気は、点線77で示すように、通気孔70、通気孔74、弁口73、排気用逆止弁71、排気口75を通して外部に排出される。
【0041】
このように、この実施の形態においても、排気の際には油ミストを含んだ空気はフィルタ66を通らず、通気孔74からなる排気通路および排気用逆止弁71を通してタンク外部に排出される。このため、油ミストがフィルタ66に付着することを防ぐことができ、油ミストの付着によるフィルタの目詰まりを防止するのみならず、付着した油ミストによるフィルタ66への塵埃付着の助長を防止することができ、フィルタ66の掃除の時間間隔を長くすることが可能になると共に、フィルタ66を延命化することができる。また、図3、図4の実施の形態における吸気用逆止弁17を省くことができるので、構成が簡略化され、コストダウンが図れる。
【0042】
本発明を実施する場合、上記実施の形態に限らず、種々の変更、付加が可能である。例えば吸気通路構成部品と排気通路構成部品をそれぞれ組み合わせることなく独立の部品として構成し、各部品をそれぞれ作動油タンク8の上板部13の別々の取付け孔に取付ける構造としてもよい。また、この場合、排気通路構成部品を取付ける孔として、作動油タンク洗浄液を導入する孔を用いることができる。この洗浄液を導入する孔は通常は栓により閉塞されているが、この栓の代わりに排気通路構成部品を取付ける構造とすれば、排気通路構成部品用の取付け孔を設ける必要がなくなる。
【0043】
また本発明のエアブリーザは、建設車両の作動油タンクのみならず、燃料タンクにも適用可能である。また、建設車両もダンプトラックのみならず、油圧ショベルやクレーンあるいはこれらの作業具を別の作業具に交換した応用車両等の他の建設車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1:車体、2:前輪、3:後輪、4:運転室、6:油圧シリンダ、7:ベッセル、8:作動油タンク、9:エアブリーザ、9a:下部部材、9b:上部部材、10:排気管、10a:排気出口、13:上板部、13a,13b:開口部、13c:ねじ孔、14:通気孔、17:吸気用逆止弁、21:隙間、22:フィルタ、23:フィルタケース、29:吸気口、30:フィルタ外周空間、31,32:通気孔、35:排気用逆止弁、36:延出部、37:延出部、38:通気孔、40:排気通路形成部、41:排気用空間、42:排気口、50:延出部、53:上板、54:排気通路、56:通気孔、57:排気口、59:排気用逆止弁、63:フィルタケース、64:ブロック、65:雄ねじ部、66:フィルタ、67:吸気口、68:吸気通路、69:フィルタ外周空間、70:通気孔、71:排気用逆止弁、74:通気孔、75:排気口、76:吸気の流れ、77:排気の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設車両の車体に搭載される油タンクの上部に設置されるフィルタ付きエアブリーザにおいて、
油タンク内部と外気とを連通させる空気通路を吸気通路と排気通路とに分離し、
前記吸気通路にフィルタおよび吸気用逆止弁を設け、前記排気通路に排気用逆止弁を設けたことを特徴とするフィルタ付きエアブリーザ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ付きエアブリーザにおいて、
前記エアブリーザを、油タンクの上面に固定する下部部材とこの下部部材に着脱可能に取付ける上部部材とに分離し、
前記上部部材内に前記吸気通路と前記排気通路とを設けると共に、前記吸気通路にフィルタおよび吸気用逆止弁を設け、かつ前記排気通路に排気用逆止弁を設け、
前記下部部材に前記吸気通路と前記排気通路に連通する通路を設けたことを特徴とするフィルタ付きエアブリーザ。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルタ付きエアブリーザにおいて、
前記エアブリーザを、油タンクの上面に固定する下部部材とこの下部部材に着脱可能に取付ける上部部材とに分離し、
前記上部部材内に前記吸気通路を設けると共に、前記吸気通路にフィルタおよび吸気用逆止弁を設け、
前記下部部材に前記吸気通路に連通する通路を設けると共に、この通路から分岐した排気通路を設け、かつこの排気通路に排気用逆止弁を設けたことを特徴とするフィルタ付きエアブリーザ。
【請求項4】
建設車両の車体に搭載される油タンクの上部に設置されるフィルタ付きエアブリーザにおいて、
油タンク内部と外気とを連通させる空気通路を吸気通路と排気通路とに分離し、
前記吸気通路にフィルタを設け、前記排気通路に排気用逆止弁を設けると共に、排気の際の前記フィルタにおける流動損失圧力より、前記排気用逆止弁のクラッキング圧を低く設定したことを特徴とするフィルタ付きエアブリーザ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のフィルタ付きエアブリーザにおいて、
前記排気通路の排気口に接続する排気管を設け、この排気管の排気出口を、前記油タンクの上面より下方に設けたことを特徴とするフィルタ付きエアブリーザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36533(P2013−36533A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172794(P2011−172794)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】