説明

フィルム部材およびその製造方法

【課題】 酸素、水蒸気およびアウトガスを透過しにくいガスバリア性に優れたフィルム部材、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 フィルム部材は、樹脂フィルムからなる基材と、該基材の表裏少なくとも一方側に配置される酸窒化アルミニウム(AlON)膜と、を有し、該酸窒化アルミニウム膜の組成は、Al:39〜55at%、O:7〜60at%、N:1〜50at%である。当該フィルム部材の製造方法は、スパッタ成膜装置1のチャンバー8内に、基材20をアルミニウム製のターゲット30に対向するように配置し、チャンバー8内を所定の真空度に保持する減圧工程と、チャンバー8内に、窒素を含む原料ガスとキャリアガスとを導入し、所定の真空度で、チャンバー8内の窒素ガス圧に対する酸素ガス圧の比率が20%以下の雰囲気において、基材20の成膜面に酸窒化アルミニウム膜を形成する成膜工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムからなる基材とガスバリア膜とが積層されてなり、酸素や水蒸気、並びに樹脂フィルムに含まれるガスや揮発性成分を透過しにくいフィルム部材、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキタス社会の到来に向け、スマートフォンなどの携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、タブレットPC(Personal Computer)、モバイルノートPC等の携帯情報端末、小型ゲーム機器、電子ペーパー等のモバイル機器が普及拡大している。また、これらのモバイル機器に対して、軽量化、薄型化、フレキシブル化、落下、衝撃等による破損抑制等のニーズが高まっている。このため、現在多用されているガラス製の表示部に代わり、樹脂フィルムからなる基材に機能性薄膜を積層した機能性樹脂フィルムを用いたタッチパネル、有機EL(Electro Luminescence)デバイス等の需要が増加している(例えば、特許文献1、2参照)。さらに、太陽電池市場においても、機能性樹脂フィルムを用いた、フレキシブルで軽量、薄型の有機系薄膜太陽電池が脚光を浴びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−238474号公報
【特許文献2】特開2009−178956号公報
【特許文献3】特開2005−197371号公報
【特許文献4】特開2003−301268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機能性樹脂フィルムを用いた製品においては、従来のガラス基板品と比較して、寿命が短いという課題がある。この原因として、空気中の酸素や水蒸気が、基材を通して機能性薄膜へ進入したり、基材に含まれるガスや揮発性成分がアウトガスとして出てくることにより、機能性薄膜が劣化することが挙げられる。また、基材等、機能性薄膜下の薄膜の凹凸が大きい場合、凹部に酸素や水分等が吸着したり、凸部に電解が集中して、機能性薄膜が劣化することも考えられる。
【0005】
一例として、フレキシブル有機ELデバイスについて説明する。図7に、有機ELデバイスの断面図を示す。図7に示すように、有機ELデバイス7は、前方から後方に向かって、基材71と、前面ガスバリア膜72と、陽極73と、ホール輸送層74と、電子輸送性発光層75と、陰極76と、後面ガスバリア層77と、を備えている。
【0006】
有機ELデバイス7の発光原理について簡単に説明する。陽極73、陰極76に電圧を印加すると、陽極73からホール(正孔)が、陰極76から電子が、各々、発生する。ホールは、陽極73から、ホール輸送層74を通過し、電子輸送性発光層75に進入する。一方、電子は、陰極76から、電子輸送性発光層75に進入する。電子輸送性発光層75においてホールと電子とが結合することにより、発光する。ここで、電子輸送性発光層75の前方に配置されている基材71、前面ガスバリア膜72、陽極73、ホール輸送層74は透明である。このため、当該発光は、有機ELデバイス7の前方から視認することができる。
【0007】
有機ELデバイス7において、空気中の酸素や水蒸気が、基材71を通ってホール輸送層74、電子輸送性発光層75へ進入すると、ホール輸送層74や電子輸送性発光層75が劣化する。これにより、輝度が低下したり、発光しなくなるおそれがある。このため、基材71の後面に、前面ガスバリア膜72を形成し、基材71を通過した酸素や水蒸気が、ホール輸送層74や電子輸送性発光層75へ進入することを、抑制している。
【0008】
ガスバリア膜としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜等が知られている。しかしながら、これらの膜においては、ガスバリア性(酸素、水蒸気およびアウトガスの低透過性)が充分ではなく、粒子径のばらつきにより表面の凹凸も大きい。このため、実用に耐えられる製品寿命を達成することは難しい。したがって、よりガスバリア性に優れたフィルム部材の開発が待たれている。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、酸素、水蒸気およびアウトガスを透過しにくいガスバリア性に優れたフィルム部材を提供することを課題とする。また、当該フィルム部材を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明者は、比較的安価なアルミニウム(Al)をターゲットとして、樹脂フィルムからなる基材へのスパッタ成膜を試みた。そして、実験を重ねた結果、当該基材に、ある組成範囲の酸窒化アルミ膜(AlON膜)を形成すると、非常に高いガスバリア性を達成できるという知見を得た。このような知見に基づいてなされた本発明のフィルム部材は、樹脂フィルムからなる基材と、該基材の表裏少なくとも一方側に配置される酸窒化アルミニウム(AlON)膜と、を有し、該酸窒化アルミニウム膜の組成は、Al:39〜55at%、O:7〜60at%、N:1〜50at%(アルミニウム原子が39at%以上55at%以下、酸素原子が7at%以上60at%以下、窒素原子が1at%以上50at%以下)であることを特徴とする。
【0011】
樹脂フィルムからなる基材に、上記組成範囲のAlON膜を積層させることにより、酸素、水蒸気およびアウトガスの低透過性が、格段に向上する。したがって、本発明のフィルム部材を用いると、例えば有機ELデバイスにおいて、ホール輸送層や電子輸送性発光層への酸素、水蒸気およびアウトガスの進入を、抑制することができる。よって、ホール輸送層や電子輸送性発光層の劣化を抑制することができる。その結果、製品寿命を延ばすことができる。
【0012】
(2)また、上記(1)の構成のフィルム部材を製造するための本発明のフィルム部材の製造方法は、スパッタ成膜装置のチャンバー内に、前記基材をアルミニウム製のターゲットに対向するように配置し、該チャンバー内のガスを排気して該チャンバー内を所定の真空度に保持する減圧工程と、該チャンバー内に、窒素を含む原料ガスとキャリアガスとを導入し、所定の真空度で、該チャンバー内の窒素ガス圧に対する酸素ガス圧の比率が20%以下の雰囲気において、該キャリアガスの電離により生成したプラズマで該ターゲットをスパッタすることにより、該基材の成膜面に前記酸窒化アルミニウム膜を形成する成膜工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明のフィルム部材の製造方法においては、スパッタによる成膜を、チャンバー内の窒素ガス圧に対する酸素ガス圧の比率が20%以下の雰囲気にて行う。すなわち、チャンバー内に導入する原料ガスの流量ではなく、成膜時に実際にチャンバー内に存在する原料ガスの組成が重要である。チャンバー内のガス組成は、例えば、差動排気付きの四重極型質量分析計により分析することができる。そして、窒素ガス圧(PN2)に対する酸素ガス圧(PO2)の比率(PO2/PN2×100)が20%以下の雰囲気にて、スパッタを行えばよい。より好適な酸素ガス圧の比率は、19.1%以下である。こうすることにより、樹脂フィルムからなる基材の成膜面に、Al:39〜55at%、O:7〜60at%、N:1〜50at%の組成範囲のAlON膜を形成することができる。
【0014】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記スパッタ成膜装置は、前記ターゲットと、該ターゲットの表面に磁場を形成するための磁場形成手段と、を備え、マグネトロン放電により前記プラズマを生成する構成とする方がよい。
【0015】
スパッタによる成膜方法としては、二極スパッタ法や、マグネトロンスパッタ法等がある。なかでも、マグネトロンスパッタ法によると、ターゲット表面に発生した磁場により、ターゲットから飛び出した二次電子が捕らえられる。このため、基材の温度が上昇しにくい。また、捕らえた二次電子でガスのイオン化が促進されるため、成膜速度を速くすることができる。本構成のスパッタ成膜装置は、マグネトロンスパッタ法を採用する。したがって、本構成のスパッタ成膜装置によると、熱による基材の変形が小さく、比較的速やかにAlON膜を形成することができる。なお、本構成のスパッタ成膜装置においては、DC(直流)マグネトロンスパッタ法(DCパルス方式を含む)を採用することが、望ましい。
【0016】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記スパッタ成膜装置は、さらに、ECRプラズマ生成装置を備え、該ECRプラズマ生成装置は、マイクロ波を伝送する矩形導波管と、該矩形導波管の一面に配置され、該マイクロ波が通過するスロットを有するスロットアンテナと、該スロットアンテナの該スロットを覆うように配置され、プラズマ生成領域側の表面は該スロットから入射する該マイクロ波の入射方向に平行である誘電体部と、該誘電体部の裏面に配置され該誘電体部を支持する支持板と、該支持板の裏面に配置され該プラズマ生成領域に磁場を形成する永久磁石と、を備え、該誘電体部から該磁場中に伝播する該マイクロ波により電子サイクロトロン共鳴(ECR)を発生させながらプラズマを生成し、前記成膜工程において、前記基材と前記ターゲットとの間にECRプラズマを照射しながらスパッタを行う構成とする方がよい。
【0017】
DCマグネトロンスパッタ法により成膜を行うスパッタ成膜装置においては、生成するプラズマを安定化させ、成膜速度を速くするために、ターゲットに数百ボルトの負の高電圧を印加する必要がある。このため、マグネトロン放電で生成したアルゴンイオンが、より加速され、ターゲットに衝突する。そして、比較的粒子径の大きい中性粒子がターゲットから飛び出し、基材へ成膜される。特に、印加電圧が高い場合、ターゲットから、クラスター粒子のような粒子径の非常に大きな粒子が飛び出す頻度が高くなる。粒子径が大きく、そのばらつきも大きい粒子が基材に成膜されると、形成されたAlON膜の表面に凹凸が生じてしまう。AlON膜の表面の凹凸が大きいと、凹部に酸素等が吸着しやすくなる。このため、AlON膜自身が劣化したり、AlON膜と接する相手材を劣化させるおそれがある。また、凸部により、相手材を劣化させるおそれもある。例えば有機ELデバイスにおいて、AlON膜の表面の凹凸が大きいと、その表面に形成される陽極についても、凹凸が大きくなる。すると、陽極の凸部に電界が集中し、その影響で電子輸送性発光層が劣化して、発光しなくなるおそれがある。
【0018】
このような問題を解決すべく、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、マグネトロン放電で生成したプラズマ(以下、適宜「マグネトロンプラズマ」と称す)による成膜を、マイクロ波プラズマを照射しながら行えば、印加電圧を下げることができると共に、飛び出した中性粒子をイオン化若しくは微細化して粒子径を整えることができる、という見地に至った。しかしながら、通常、マグネトロンスパッタは、不純物の侵入を抑制して膜質を維持するために、マグネトロンプラズマが安定な一定の低圧下で行われる。成膜時の圧力としては、0.5〜1.0Pa程度が望ましい。一方、一般的なマイクロ波プラズマ生成装置は、5Pa以上の比較的高圧下でマイクロ波プラズマを生成する(例えば、特許文献3参照)。このため、従来のマイクロ波プラズマ生成装置を用いた場合、マグネトロンスパッタを行う1Pa以下の低圧下では、マイクロ波プラズマを生成することが難しい。また、マイクロ波プラズマの指向性にも欠ける。この理由は、次のように考えられる。
【0019】
図4に、従来のマイクロ波プラズマ生成装置におけるマイクロ波プラズマ生成部の斜視図を示す。図4に示すように、マイクロ波プラズマ生成部9は、導波管90と、スロットアンテナ91と、誘電体部92と、を有している。スロットアンテナ91は、導波管90の前方開口部を塞ぐように配置されている。すなわち、スロットアンテナ91は、導波管90の前壁を形成している。スロットアンテナ91には、複数の長孔状のスロット910が形成されている。誘電体部92は、スロット910を覆うように、スロットアンテナ91の前面(チャンバー側)に配置されている。導波管90の右端から伝送されたマイクロ波は、図中前後方向の白抜き矢印Y1で示すように、スロット910を通過して、誘電体部92に入射する。誘電体部92に入射したマイクロ波は、図中左右方向の白抜き矢印Y2で示すように、誘電体部92の前面920に沿って伝播する。これにより、マイクロ波プラズマPが生成される。
【0020】
ここで、スロット910から誘電体部92へ入射するマイクロ波の入射方向(矢印Y1)と、誘電体部92の前面920と、は直交する。このため、誘電体部92に入射したマイクロ波は、生成したマイクロ波プラズマPに遮られ、進行方向を90°変えて、誘電体部92の前面920を伝播する(矢印Y2)。このように、生成したマイクロ波プラズマPに対して垂直にマイクロ波が入射するため、プラズマソースであるマイクロ波がマイクロ波プラズマPに伝播しにくい。このため、低圧下でのプラズマ生成が難しいと考えられる。
【0021】
そこで、本発明者は、生成するマイクロ波プラズマに対するマイクロ波の入射方向に着目し、さらには電子サイクロトロン共鳴(ECR)を利用することにより、1Pa以下の低圧下でも高密度なプラズマを生成することができるECRプラズマ生成装置を開発した。すなわち、本発明のECRプラズマ生成装置は、マイクロ波を伝送する矩形導波管と、該矩形導波管の一面に配置され、該マイクロ波が通過するスロットを有するスロットアンテナと、該スロットアンテナの該スロットを覆うように配置され、プラズマ生成領域側の表面は該スロットから入射する該マイクロ波の入射方向に平行である誘電体部と、該誘電体部の裏面に配置され該誘電体部を支持する支持板と、該支持板の裏面に配置され該プラズマ生成領域に磁場を形成する永久磁石と、を備え、該誘電体部から該磁場中に伝播する該マイクロ波によりECRを発生させながらプラズマを生成する。なお、本発明のECRプラズマ生成装置においては、プラズマ生成領域側の面を「表面」とし、表面に背向する面を「裏面」と称する。
【0022】
図3に、本発明のECRプラズマ生成装置におけるマイクロ波プラズマ生成部の斜視図を示す。なお、図3は、マイクロ波プラズマ生成部の一実施形態を示す図である(後述する実施形態参照)。図3は、本発明のECRプラズマ生成装置を、何ら限定するものではない。
【0023】
図3に示すように、マイクロ波プラズマ生成部40は、導波管41と、スロットアンテナ42と、誘電体部43と、支持板44と、永久磁石45と、を有している。導波管41の左端後方には、マイクロ波を伝送する管体部51が接続されている。スロットアンテナ42は、導波管41の上方開口部を塞ぐように配置されている。すなわち、スロットアンテナ42は、導波管41の上壁を形成している。スロットアンテナ42には、複数の長孔状のスロット420が形成されている。誘電体部43は、スロット420を覆うように、スロットアンテナ42の上面に配置されている。
【0024】
管体部51から伝送されたマイクロ波は、図中上下方向の白抜き矢印Y1で示すように、スロット420を通過して、誘電体部43に入射する。誘電体部43に入射したマイクロ波は、図中左右方向の白抜き矢印Y2で示すように、主に誘電体部43の前面430に沿って伝播する。これにより、マイクロ波プラズマが生成される。ここで、スロット420から誘電体部43に入射するマイクロ波の入射方向は、誘電体部43の前面430(プラズマ生成領域側の表面)に平行である。生成したマイクロ波プラズマに沿ってマイクロ波が入射するため、プラズマソースであるマイクロ波がマイクロ波プラズマに伝播しやすい。
【0025】
また、誘電体部43の後方には、支持板44を介して、永久磁石45が八つ配置されている。八つの永久磁石45は、いずれも前側がN極、後側がS極である。各々の永久磁石45から前方に向かって、磁力線Mが生じている。これにより、誘電体部43の前方(プラズマ生成領域)には、磁場が形成されている。
【0026】
生成したマイクロ波プラズマ中の電子は、サイクロトロン角周波数ωceに従って、磁力線M方向に対して右回りの旋回運動を行う。一方、マイクロ波プラズマ中を伝播するマイクロ波は、電子サイクロトロン波と呼ばれる右回りの円偏波を励起する。電子サイクロトロン波が前方に伝播し、その角周波数ωがサイクロトロン角周波数ωceに一致すると、電子サイクロトロン波が減衰し、波動エネルギーが電子に吸収される。すなわち、ECRが生じる。例えば、マイクロ波の周波数が2.45GHzの場合、磁束密度0.0875Tで、ECRが生じる。ECRによりエネルギーが増大した電子は、磁力線Mに拘束されながら、周辺の中性粒子と衝突する。これにより、中性粒子が次々に電離する。電離により生じた電子も、ECRにより加速され、さらに中性粒子を電離させる。このようにして、誘電体部43の前方に、高密度のECRプラズマP1が生成される。
【0027】
このように、本発明のECRプラズマ生成装置によると、生成するマイクロ波プラズマに沿ってマイクロ波を入射させると共に、ECRを利用してプラズマ密度を大きくすることにより、1Pa以下の低圧下、さらには0.1Pa以下の極低圧下においても、プラズマを生成することができる。したがって、本発明のECRプラズマ生成装置を用いると、低圧下でECRプラズマを照射しながら、マグネトロンプラズマによる成膜を行うことが可能になる。
【0028】
以上説明したように、本構成のスパッタ成膜装置においては、マグネトロンプラズマによる成膜を、ECRプラズマを照射しながら行う。基材とターゲットとの間にECRプラズマを照射することにより、印加電圧を下げても、マグネトロンプラズマを安定に維持することができる。これにより、クラスター粒子のような粒子径の非常に大きな粒子のターゲットからの飛び出しを、抑制することができる。その結果、スパッタ粒子の粒子径のばらつきが抑制され、形成されるAlON膜の表面の凹凸を、小さくすることができる。また、ECRプラズマを照射すると、スパッタ粒子が微細化される。このため、より小さな粒子でAlON膜を形成することができ、きめ細やかなAlON膜を形成することができる。
【0029】
また、上述したように、本発明のECRプラズマ生成装置によると、1Pa以下の低圧下、さらには0.1Pa以下の極低圧下においても、プラズマを生成することができる。したがって、より低圧下でマグネトロンスパッタを行うことにより、不純物の侵入を抑制すると共に、ターゲット粒子の平均自由行程を長くすることができる。これにより、形成されるAlON膜の膜質が向上する。
【0030】
なお、上記特許文献4には、ECRを利用したマグネトロンスパッタ成膜装置が開示されている。特許文献4のマグネトロンスパッタ成膜装置においては、成膜する基材の裏側に、磁石を配置して、基材の表面近傍にECRプラズマを生成している。しかしながら、基材の裏側に磁石を配置すると、形成される薄膜の厚さにばらつきが生じやすい。加えて、薄膜が着色しやすいという問題もある。また、特許文献4のマグネトロンスパッタ成膜装置においては、ヘリカルアンテナからマイクロ波を放射している。このため、マイクロ波が、プラズマ生成領域の全体に均一に伝播しにくい。また、磁場による、アンテナからプラズマ生成領域への指向性もなく、マイクロ波により基材が加熱され、熱変形するおそれがある。
【0031】
この点、上記本発明のECRプラズマ生成装置においては、誘電体部の裏面側に永久磁石を配置して、マイクロ波を誘電体部の表面に沿って伝播させる。つまり、基材の近傍には、永久磁石を配置しない。したがって、特許文献4のマグネトロンスパッタ成膜装置における上記問題は生じない。
【0032】
(4−1)好ましくは、上記(4)の構成において、前記支持板は、前記永久磁石の温度上昇を抑制するための冷却手段を有する構成とする方がよい。
【0033】
永久磁石は、支持板を介して誘電体部の裏面側に配置される。このため、プラズマを生成する際、永久磁石の温度が上昇しやすい。永久磁石の温度がキュリー温度以上になると、磁性が著しく低下してしまう。本構成によると、支持板の冷却手段により、永久磁石の温度上昇が抑制される。このため、永久磁石の磁性が低下するおそれは小さい。したがって、本構成によると、安定した磁場を形成することができる。
【0034】
(4−2)好ましくは、上記(4)の構成において、前記成膜工程は、0.05Pa以上3Pa以下の圧力下で行う構成とする方がよい。
【0035】
チャンバー内を0.05Pa以上3Pa以下の高真空度にすることにより、生成したプラズマが安定すると共に、不純物の侵入を抑制し、ターゲット粒子の平均自由行程を長くすることができる。これにより、形成されるAlON膜の膜質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】マグネトロンスパッタ成膜装置の左右方向断面図である。
【図2】同マグネトロンスパッタ成膜装置の前後方向断面図である。
【図3】同マグネトロンスパッタ成膜装置を構成するECRプラズマ生成装置におけるマイクロ波プラズマ生成部の斜視図である。
【図4】従来のマイクロ波プラズマ生成装置におけるマイクロ波プラズマ生成部の斜視図である。
【図5】実施例1のフィルム部材におけるAlON膜のSPM写真である。
【図6】参考例のフィルム部材におけるAlON膜のSPM写真である。
【図7】有機ELデバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明のフィルム部材およびその製造方法の実施の形態について説明する。
【0038】
<フィルム部材>
本発明のフィルム部材は、樹脂フィルムからなる基材と、該基材の表裏少なくとも一方側に配置され、Al:39〜55at%、O:7〜60at%、N:1〜50at%の組成のAlON膜と、を有する。
【0039】
基材は、用途に応じて、適宜選択すればよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリアミド(PA)6フィルム、PA11フィルム、PA12フィルム、PA46フィルム、ポリアミドMXD6フィルム、PA9Tフィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、フッ素樹脂フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィンフィルム等が挙げられる。なかでも、耐吸湿性、無色透明性、耐熱性、経済性等の観点から、PETフィルム、PENフィルムが好適である。さらに、上記フィルムの表裏面の少なくとも一方に、アクリル樹脂等のコーティングにより形成されるハードコート層を有するものでもよい。ハードコート層により、フィルム自身の表面の凹凸の影響を、小さくすることができる。例えば、ハードコート層を有するPETフィルム(HC−PETフィルム)が好適である。
【0040】
AlON膜は、基材の表裏両側のうち、一方だけに配置されてもよく、両側に配置されてもよい。AlON膜を、機能性薄膜側に配置すると、酸素、水蒸気およびアウトガスの低透過性を高めることができる。さらに、AlON膜を、基材の表裏両側に配置すると、酸素および水蒸気の低透過性を、より向上させることができる。なお、AlON膜の厚さは、特に限定されない。例えば、有機ELデバイスに用いる場合には、AlON膜の厚さを、10nm以上1μm以下にすることが望ましい。AlON膜の厚さが10nm未満の場合には、所望のガスバリア性を得ることが難しくなる。一方、1μmを超えると、AlON膜が割れやすくなり、経済性にも劣る。AlON膜を、基材の表裏両側に配置する場合、表側と裏側とにおいて、AlON膜の厚さを変えてもよい。
【0041】
AlON膜は、基材の表面、裏面に直接的に配置されてもよく、接着層等の中間層を介して間接的に配置されてもよい。基材とAlON膜との間に中間層を介在させることにより、基材とAlON膜との密着性やガスバリア性、AlON膜の平滑性等が向上する。中間層は、一層でも二層以上でもよい。中間層は、例えば、アクリル樹脂、イソシアネート等を基材に塗工して、形成することができる。また、アルコキシシラン、チタネート等の金属アルコキシド、シランカップリング剤、クロロシラン、シラザン等を塗工あるいはCVD(化学気相成長法)により成膜して、形成することができる。また、アセチレン、メタン、トルエン等の炭化水素を、CVDにより成膜して、形成することができる。なかでも、チタネート、シラザンの塗工や、アルコキシシラン、アセチレン、メタン等のCVD成膜が、平滑性や耐熱性を向上させ、ガスバリア性も付与することができるため、好適である。
【0042】
AlON膜の組成は、Al:39〜55at%、O:7〜60at%、N:1〜50at%である。例えば、酸素原子(O)の数の割合が60%を超えると、酸素、水蒸気およびアウトガスの低透過性が悪化する。一方、酸素原子の数の割合が7%未満になると、柔軟性が低下し、AlON膜が割れやすくなると共に、有色になる。同様に、アルミニウム原子(Al)の数の割合が55%を超えると、灰色若しくはメタル色を呈する。一方、アルミニウム原子の数の割合が39%未満になると、酸素、水蒸気およびアウトガスの低透過性が悪化する。
【0043】
AlON膜を構成するAlONの粒子径は、特に限定されない。しかし、AlONの粒子径が大きいと、AlON膜の表面に凹凸が生じやすい。この場合、凹部に酸素等が吸着して、AlON膜や相手材を劣化させるおそれがある。また、凸部により、相手材を劣化させるおそれもある。したがって、AlONの粒子径は、150nm以下であることが望ましい。
【0044】
AlONの粒子径は、AlON膜の表面または断面を、走査型プローブ顕微鏡(SPM)で観察して、測定すればよい。すなわち、本明細書においては、撮影されたSPM写真におけるAlON粒子の最大長さを、粒子径として採用する。
【0045】
同様に、AlON膜の表面の凹凸は小さい方がよいという理由から、AlON膜の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)が3nm以下、最大高さ(Rz)が30nm以下であることが望ましい。表面粗さは、JIS B0601:2001に準じて測定すればよい。
【0046】
<フィルム部材の製造方法>
[装置構成]
まず、本発明のフィルム部材を製造するための、スパッタ成膜装置の一実施形態を説明する。図1に、本実施形態のマグネトロンスパッタ成膜装置の左右方向断面図を示す。図2に、同マグネトロンスパッタ成膜装置の前後方向断面図を示す。図3に、同マグネトロンスパッタ成膜装置を構成するECRプラズマ生成装置におけるマイクロ波プラズマ生成部の斜視図を示す。
【0047】
図1〜図3に示すように、マグネトロンスパッタ成膜装置1は、チャンバー8と、基材支持部材21と、スパッタ部3と、ECRプラズマ生成装置4と、を備えている。
【0048】
チャンバー8は、アルミニウム製であって、直方体箱状を呈している。チャンバー8の左壁には、キャリアガス供給孔80およびガス分析孔84が穿設されている。キャリアガス供給孔80には、アルゴン(Ar)ガスをチャンバー8内に供給するためのガス供給管(図略)の下流端が接続されている。ガス分析孔84には、チャンバー8内のガス分析を行う差動排気付き(ターボ分子ポンプとロータリーポンプとを配置)の質量分析計85が接続されている。チャンバー8の右壁には、第一ガス供給孔81および第二ガス供給孔82が穿設されている。第一ガス供給孔81には、窒素(N)ガスをチャンバー8内に供給するためのガス供給管(図略)の下流端が接続されている。同様に、第二ガス供給孔82には、酸素(O)ガスをチャンバー8内に供給するためのガス供給管(図略)の下流端が接続されている。チャンバー8の下壁には、排気孔83が穿設されている。排気孔83には、チャンバー8の内部のガスを排出するための真空排気装置(図略)が接続されている。
【0049】
基材支持部材21は、テーブル部210と一対の脚部211とを有する。テーブル部210は、ステンレス鋼製であって、中空の長方形板状を呈している。テーブル部210の内部には、冷却液が充填されている。テーブル部210は、冷却液が循環することにより、冷却されている。一対の脚部211は、テーブル部210の上面に、左右方向に離間して配置されている。一対の脚部211は、各々、ステンレス鋼製であって、円柱状を呈している。一対の脚部211の外周面は、絶縁層で被覆されている。テーブル部210は、一対の脚部211を介して、チャンバー8の上壁に取り付けられている。
【0050】
スパッタ部3は、ターゲット30と、バッキングプレート31と、永久磁石32a〜32cと、カソード33と、を備えている。カソード33は、ステンレス鋼製であって、上方に開口する直方体箱状を呈している。カソード33、ターゲット30、およびバッキングプレート31の周囲には、アースシールド34が配置されている。カソード33は、アースシールド34を介して、チャンバー8の下面に配置されている。カソード33は、直流パルス電源35に接続されている。
【0051】
永久磁石32a〜32cは、カソード33の内側に配置されている。永久磁石32a〜32cは、各々、長尺直方体状を呈している。永久磁石32a〜32cは、前後方向に離間して、互いに平行になるように配置されている。永久磁石32aおよび永久磁石32cについては、上側がS極、下側がN極である。永久磁石32bについては、上側がN極、下側がS極である。永久磁石32a〜32cにより、ターゲット30の上面に磁場が形成される。永久磁石32a〜32cは、本発明における磁場形成手段に含まれる。
【0052】
バッキングプレート31は、銅製であって、長方形板状を呈している。バッキングプレート31は、カソード33の上部開口を覆うように配置されている。
【0053】
ターゲット30は、アルミニウム製であり、長方形薄板状を呈している。ターゲット30は、バッキングプレート31の上面に配置されている。ターゲット30は、テーブル部210と対向して配置されている。
【0054】
ECRプラズマ生成装置4は、マイクロ波プラズマ生成部40と、マイクロ波伝送部50と、を備えている。マイクロ波伝送部50は、管体部51と、マイクロ波電源52と、マイクロ波発振器53と、アイソレータ54と、パワーモニタ55と、EH整合器56と、を有している。マイクロ波発振器53、アイソレータ54、パワーモニタ55、およびEH整合器56は、管体部51により連結されている。管体部51は、チャンバー8の後壁に穿設された導波孔を通って、マイクロ波プラズマ生成部40の導波管41の後側に接続されている。
【0055】
マイクロ波プラズマ生成部40は、導波管41と、スロットアンテナ42と、誘電体部43と、支持板44と、永久磁石45と、を有している。図3に示すように、導波管41は、アルミニウム製であって、上方に開口する直方体箱状を呈している。導波管41は、左右方向に延在している。導波管41は、本発明における矩形導波管に含まれる。スロットアンテナ42は、アルミニウム製であって、長方形板状を呈している。スロットアンテナ42は、導波管41の開口部を上方から塞いでいる。すなわち、スロットアンテナ42は、導波管41の上壁を形成している。スロットアンテナ42には、スロット420が四つ形成されている。スロット420は、左右方向に伸びる長孔状を呈している。スロット420は、電界が強い位置に配置されている。
【0056】
誘電体部43は、石英製であって、直方体状を呈している。誘電体部43は、スロットアンテナ42の上面前側に配置されている。誘電体部43は、スロット420を上方から覆っている。前述したように、誘電体部43の前面430は、スロット420から入射するマイクロ波の入射方向Y1に対して平行に配置されている。前面430は、誘電体部におけるプラズマ生成領域側の表面に含まれる。
【0057】
支持板44は、ステンレス鋼製であって、平板状を呈している。支持板44は、スロットアンテナ42の上面において、誘電体部43の後面(裏面)に接するように配置されている。支持板44の内部には、冷媒通路440が形成されている。冷媒通路440は、左右方向に延在するU字状を呈している。冷媒通路440の右端は、冷却管441に接続されている。冷媒通路440は、冷却管441を介して、チャンバー8の外部において、熱交換器およびポンプ(共に図略)に接続されている。冷却液は、冷媒通路440→冷却管441→熱交換器→ポンプ→冷却管441→再び冷媒通路440という経路を循環している。冷却液の循環により、支持板44は冷却されている。冷媒通路440および冷却液は、本発明の冷却手段に含まれる。
【0058】
永久磁石45は、ネオジム磁石であり、直方体状を呈している。永久磁石45は、支持板44の後面(裏面)に八つ配置されている。八つの永久磁石45は、左右方向に連続して直列に配置されている。八つの永久磁石45は、いずれも前側がN極、後側がS極である。各々の永久磁石45から前方に向かって、磁力線Mが生じている。これにより、誘電体部43の前方のプラズマ生成領域に、磁場が形成されている。
【0059】
[製造方法]
次に、マグネトロンスパッタ成膜装置1を用いたフィルム部材の製造方法について説明する。本実施形態のフィルム部材の製造方法は、減圧工程と成膜工程と、を有している。減圧工程においては、まず、基材20を、チャンバー8内のテーブル部210の下面に配置する。基材20は、HC−PETフィルムであり、長方形状を呈している。この際、基材20の成膜面を下方に向ける。すなわち、基材20の成膜面は、ターゲット30の上面に対向している。次に、真空排気装置(図略)を作動させて、チャンバー8の内部のガスを排気孔83から排出し、チャンバー8の内部を約0.015Paの減圧状態にする。
【0060】
成膜工程においては、まず、キャリアガスのArガスをチャンバー8内へ供給する。続いて、原料ガスのNガスをチャンバー8内へ供給する。これにより、チャンバー8内の圧力を、約0.7Paにする。この際、チャンバー8内のガス組成を、質量分析計85によりモニタリングする。そして、Nガス圧(PN2)に対するOガス圧(PO2)の比率(PO2/PN2×100)が18.1%になるよう、適宜、Nガスの流量を調整する。また、必要に応じて、原料ガスのOガスをチャンバー8内へ供給する。
【0061】
次に、マイクロ波電源52をオンにする。マイクロ波電源52をオンにすると、マイクロ波発振器53が、周波数2.45GHzのマイクロ波を発生する。発生したマイクロ波は、管体部51内を伝播する。ここで、アイソレータ54は、マイクロ波プラズマ生成部40から反射されたマイクロ波が、マイクロ波発振器53に戻るのを抑制する。パワーモニタ55は、発生したマイクロ波の出力と、反射したマイクロ波の出力と、をモニタリングする。EH整合器56は、マイクロ波の反射量を調整する。管体部51内を通過したマイクロ波は、導波管41の内部を伝播する。導波管41の内部を伝播するマイクロ波は、スロットアンテナ42のスロット420に進入する。そして、図3中白抜き矢印Y1で示すように、スロット420を通過して、誘電体部43に入射する。誘電体部43に入射したマイクロ波は、同図中白抜き矢印Y2で示すように、主に誘電体部43の前面430に沿って伝播する。このマイクロ波の強電界により、チャンバー8内のアルゴンガスが電離して、誘電体部43の前方にマイクロ波プラズマが生成される。
【0062】
生成したマイクロ波プラズマ中の電子は、サイクロトロン角周波数に従って、磁力線M方向に対して右回りの旋回運動を行う。一方、マイクロ波プラズマ中を伝播するマイクロ波は、電子サイクロトロン波を励起する。電子サイクロトロン波の角周波数は、磁束密度0.0875Tで、サイクロトロン角周波数に一致する。これにより、ECRが生じる。ECRによりエネルギーが増大した電子は、磁力線Mに拘束されながら、周辺の中性粒子と衝突する。これにより、中性粒子が次々に電離する。電離により生じた電子も、ECRにより加速され、さらに中性粒子を電離させる。このようにして、誘電体部43の前方に、高密度のECRプラズマP1が生成される。
【0063】
次に、直流パルス電源35をオンにして、カソード33に電圧を印加する。これにより生じたマグネトロン放電で、アルゴンガスが電離して、ターゲット30の上方にマグネトロンプラズマP2が生成される。そして、マグネトロンプラズマP2(アルゴンイオン)によりターゲット30をスパッタし、ターゲット30からスパッタ粒子を叩き出す。ターゲット30から飛び出したスパッタ粒子は、NガスおよびOガスと反応しながら基材20に向かって飛散して、基材20の下面に付着することにより、AlON膜を形成する。この際、基材20とターゲット30との間(マグネトロンプラズマP2生成領域を含む)には、ECRプラズマP1が照射される。このようにして、フィルム部材を製造する。
【0064】
[作用効果]
次に、本実施形態のフィルム部材の製造方法の作用効果について説明する。本実施形態の製造方法によると、スパッタによるAlON膜の形成を、チャンバー8内のNガス圧に対するOガス圧の比率が20%以下の雰囲気にて行う。これにより、基材20の下面に、組成Al:39〜55at%、O:7〜60at%、N:1〜50at%のAlON膜を容易に形成することができる。
【0065】
マグネトロンスパッタ成膜装置1によると、熱による基材20の変形が小さく、比較的速やかにAlON膜を形成することができる。また、マグネトロンスパッタ成膜装置1においては、マグネトロンプラズマP2によるスパッタ成膜を、ECRプラズマP1を照射しながら行う。基材20とターゲット30との間にECRプラズマP1を照射することにより、印加電圧を下げても、マグネトロンプラズマP2を安定に維持することができる。これにより、クラスター粒子のような粒子径の非常に大きな粒子のターゲット30からの飛び出しを、抑制することができる。その結果、スパッタ粒子の粒子径のばらつきが抑制され、形成されるAlON膜の表面の凹凸を、小さくすることができる。また、ECRプラズマP1を照射すると、スパッタ粒子が微細化される。このため、より小さな粒子でAlON膜を形成することができ、きめ細やかなAlON膜を形成することができる。したがって、マグネトロンスパッタ成膜装置1によると、AlONの粒子径が150nm以下であり、Raが3nm以下、Rzが30nm以下の表面粗さを有するAlON膜を、形成することができる。
【0066】
また、ECRプラズマ生成装置4によると、生成するマイクロ波プラズマに沿ってマイクロ波を入射させると共に、ECRを利用してプラズマ密度を大きくすることにより、1Pa以下の低圧下においても、ECRプラズマP1を生成することができる。このため、チャンバー8内を0.7Paの高真空状態にした状態で、ECRプラズマP1の生成およびマグネトロンスパッタによる成膜を行うことができる。これにより、マグネトロンプラズマP2が安定すると共に、不純物の侵入を抑制し、ターゲット粒子の平均自由行程を長くすることができる。よって、形成されるAlON膜の膜質が向上する。
【0067】
ECRプラズマ生成装置4において、導波管41は、左右方向に延びる長尺の箱状を呈している。スロット420は、左右方向に直列に配置されている。したがって、ECRプラズマ生成装置4によると、長尺状のECRプラズマP1を生成することができる。よって、マグネトロンスパッタ成膜装置1によると、長尺状の大面積のAlON膜を形成することができる。また、八つの永久磁石45は、誘電体部43の後方に配置されている。そして、誘電体部43の前方に形成された磁場中に、マイクロ波を伝播させる。このため、マイクロ波が、プラズマ生成領域の全体に均一に伝播しやすい。また、八つの永久磁石45は、支持板44の後面に配置されている。支持板44の内部には、冷媒通路440が形成されている。冷却液が冷媒通路440を通って循環することにより、支持板44は冷却されている。このため、永久磁石45の温度が上昇しにくい。したがって、温度上昇により、永久磁石45の磁性が低下するおそれは小さい。よって、プラズマ生成時においても、安定した磁場が形成される。
【0068】
[その他]
以上、本発明のフィルム部材の製造方法の一実施形態について説明した。しかしながら、本発明のフィルム部材の製造方法の実施の形態は上記形態に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態においては、スパッタ成膜装置として、マグネトロンスパッタ成膜装置を用いた。しかし、スパッタ成膜装置は、磁場を形成せずにスパッタを行う装置(二極スパッタ装置等)でもよい。また、成膜の際、必ずしもECRプラズマを照射する必要はない。つまり、ECRプラズマ生成装置を用いずにスパッタ成膜装置を構成してもよい。
【0070】
上記実施形態においては、チャンバー内のガス組成を、Nガス圧に対するOガス圧の比率が18.1%になるように調整した。しかし、チャンバー内のガス組成は、Nガス圧に対するOガス圧の比率が20%以下であればよい。また、原料ガスとしてOガスを供給してもよい。上記実施形態においては、0.7Paの圧力下で成膜を行った。しかし、成膜処理の圧力は、当該圧力に限定されない。成膜処理は、適宜最適な圧力下で行えばよい。
【0071】
例えば、基材の表裏両側にAlON膜を配置する場合には、基材の表面および裏面に対して、スパッタ成膜を各々一回ずつ行えばよい。また、基材とAlON膜との間に中間層を介在させる場合には、基材に予め中間層を形成しておけばよい。
【0072】
マグネトロンスパッタ成膜装置を用いる場合、スパッタ部のバッキングプレート、およびカソードの材質や形状については、特に限定されない。例えば、バッキングプレートには、非磁性の導電性材料を用いればよい。なかでも、導電性および熱伝導性が高い銅等の金属材料が望ましい。カソードには、ステンレス鋼の他、アルミニウム等の金属を用いることができる。また、ターゲットの表面に磁場を形成するための磁場形成手段の構成は、上記実施形態に限定されない。磁場形成手段として永久磁石を用いる場合、永久磁石の種類や配置形態については、適宜決定すればよい。例えば、各々の永久磁石のN極とS極とが、上記実施形態と逆でもよい。チャンバーの材質や形状についても、特に限定されない。例えば、チャンバーは金属材料で形成されていればよい。溶接、切削等の加工性、耐食性、経済性の観点から、上記実施形態におけるアルミニウムや、ステンレス鋼が望ましい。
【0073】
ECRプラズマ生成装置において、スロットアンテナの材質、スロットの数、形状、配置等は、特に限定されない。例えば、スロットアンテナの材質は、非磁性の金属であればよく、アルミニウムの他、ステンレス鋼や真鍮等でも構わない。また、スロットは、一列ではなく、二列以上に配置されていてもよい。スロットの数は、奇数個でも偶数個でもよい。また、スロットの配置角度を変えて、ジグザグ状に配置してもよい。誘電体部の材質、形状についても、特に限定されない。誘電体部の材質としては、誘電率が低く、マイクロ波を吸収しにくい材料が望ましい。例えば、石英の他、酸化アルミニウム(アルミナ)等が好適である。
【0074】
上記実施形態においては、ECRプラズマの生成に、周波数2.45GHzのマイクロ波を用いた。しかし、マイクロ波の周波数は、2.45GHz帯に限定されるものではなく、300MHz〜100GHzの周波数帯であれば、いずれの周波数帯を用いてもよい。この範囲の周波数帯としては、例えば、8.35GHz、1.98GHz、915MHz等が挙げられる。
【0075】
また、支持板の材質や形状は、特に限定されない。上記実施形態においては、支持板の冷却手段として、冷媒通路および冷却液を配置した。しかし、支持板の冷却手段の構成は、特に限定されない。支持板は、冷却手段を有していなくてもよい。
【0076】
また、誘電体部の前方(プラズマ生成領域)に磁場を形成する永久磁石は、ECRを発生させることができれば、その形状、種類、個数、配置形態等は特に限定されない。例えば、永久磁石を一つだけ配置してもよく、複数個を二列以上に配置してもよい。
【0077】
また、これとは別の永久磁石を、プラズマ生成領域を挟んでマイクロ波プラズマ生成部に対向するように、配置してもよい。具体的には、前出図2における真空容器8の前壁に、八つの永久磁石45と向かい合うように、永久磁石を配置すればよい。この際、追加する永久磁石は、前側がN極、後側がS極になるように配置される。こうすることにより、八つの永久磁石45のN極と、追加する永久磁石のS極と、が対向する。したがって、より指向性を有するECRプラズマP1を生成することができる。また、追加される永久磁石についても、温度上昇を抑制するため、冷却手段を備えることが望ましい。この場合、例えば、冷媒通路および冷却液を有する上記実施形態の支持板を、永久磁石の後側(プラズマ生成領域側)に配置すればよい。
【実施例】
【0078】
次に、図1、図2を援用しながら、上記実施形態のマグネトロンスパッタ成膜装置1および製造方法を用いて製造したフィルム部材の、透過性実験について説明する。以下の部材の符号は、図1、図2に対応している。表1および表2に、各フィルム部材の製造条件、実験および分析結果をまとめて示す。
【表1】


【表2】

【0079】
ガスバリア膜の成膜に関しては、まず、減圧工程において、上記表記載の到達圧力となるように、チャンバー8内を真空排気した。次に、成膜工程において、Arガスを供給し、チャンバー8内を上記表記載の圧力にした後、基材20表面のクリーニング等のため、マイクロ波発振器53の出力を1.2kWにして、マイクロ波プラズマ処理を0.5分間行った。その後、一旦、マイクロ波発振器53の出力をOFFとし、スパッタ成膜時の反応圧力、およびNガス圧(PN2)に対するOガス圧(PO2)の比率が、上記表記載の圧力となるように、NガスとOガスとを流量調整しながら供給した。そして、マイクロ波発振器53の出力を1.2kWとし、直流パルス電源35(日本MKS(株)製「RPG−100、Pulsed DC Plasma Generator」)の出力2kW、周波数100kHz、パルス幅3056nsの条件にてカソード33に電圧を印加して、上記表記載の膜厚になるまで基材20上にスパッタ成膜した。なお、比較例7については、スパッタ成膜時に、ECRプラズマP1を照射せずに成膜を行った。ECRプラズマP1を照射しながら成膜した場合、成膜時の電圧は、190Vとなり(電圧は、直流パルス電源35により自動的に制御されている)、ECRプラズマP1を照射せずに成膜した比較例7の場合と比較して、印加電圧を約20%低減することができた。
【0080】
表1および表2の各項目について説明する。表1および表2中、「Oガス圧の比率」とは、成膜時のチャンバー8内における、Nガス圧(PN2)に対するOガス圧(PO2)の比率(PO2/PN2×100)である。「He透過比率」とは、Heガスを透過させた場合における、PENフィルムの透過率を100%とした時の各フィルム部材の透過比率である。Heガスの透過率については、JIS K7126−1:2006、附属書2に準じて測定した。He透過比率の値が小さいほど、ガスバリア性が高いことを示す。
【0081】
膜厚の測定は、次のようにして行った。まず、予めポリイミドテープで一部をマスクしたガラス板に、ガスバリア膜を成膜したサンプルを用意する。次に、ポリイミドテープを剥がし、成膜部分および成膜されていない部分を、段差計(SLOAN TECHNOLOGY社製「DEKTAK 3030」)にて測定し、当該測定値をガスバリア膜の厚さとした。
【0082】
基材のHC−PETフィルムは、(株)きもと製「KBフィルムGSAB(厚さ188μm)」であり、PENフィルムは、帝人デュポンフィルム(株)製「テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムQ65FA(厚さ200μm)」であり、PETフィルムは、東レ(株)製「ルミラー(登録商標)T60(厚さ200μm)」である。また、実施例6においては、ガスバリア膜を基材の両面に成膜した。実施例6以外の、ガスバリア膜を片面成膜する場合には、何れも基材の平滑面側に成膜した。
【0083】
比較例4は、HC−PETフィルムそのものであり(ガスバリア膜無し)、比較例5は、PENフィルムそのものであり(ガスバリア膜無し)、比較例6は、PETフィルムそのものである(ガスバリア膜無し)。比較例7は、PENフィルムに酸窒化シリコン(SiO)膜が積層された従来のフィルム部材に相当する。
【0084】
また、実施例8においては、基材として、平滑面側にハイドロカーボン膜を形成したPENフィルムを用いた。AlON膜は、当該ハイドロカーボン膜の表面に成膜した。ちなみに、ハイドロカーボン膜は、図1、図2に示したマグネトロンスパッタ成膜装置1を用いて(スパッタ部3は不使用)、プラズマCVD成膜を行うことにより形成した。具体的には、まず、チャンバー8内の圧力が0.02Pa以下になるように、真空排気した。次に、Arガスを供給して、チャンバー8内の圧力を0.5Paに調整した後、マイクロ波発振器53の出力を1.0kWにして、PENフィルムのマイクロ波プラズマ処理を0.5分間行った。その後、一旦、マイクロ波発振器53の出力をOFFとし、チャンバー8内の圧力が0.6Paとなるように、等量のアセチレンガスと水素ガスとを供給した。そして、マイクロ波発振器53の出力を1.0kWにして、マイクロ波プラズマCVD成膜を1分間行った。
【0085】
実施例9においては、基材として、平滑面側にSiO膜を形成したPENフィルムを用いた。AlON膜は、当該SiO膜の表面に成膜した。SiO膜は、実施例8と同様に、プラズマCVD成膜により形成した。反応ガスとしては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、東京化成工業(株)製)を用いた。
【0086】
実施例10においては、基材として、平滑面側にシラザン膜を形成したPENフィルムを用いた。AlON膜は、当該シラザン膜の表面に成膜した。シラザン膜の形成は、次のようにして行った。まず、実施例8と同様に、0.5Paの圧力下でPENフィルムのマイクロ波プラズマ処理を0.5分間行った。次に、処理後のPENフィルムを、空気に曝し、処理面に水酸基を形成させた。それから、スピンコータにて、シラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製「アクアミカ(登録商標)NAX120−20」)を塗工し、80℃下で1日乾燥させて、厚さ0.3μmのシラザン膜を形成した。
【0087】
表1、表2に示すように、Oガス圧の比率が20%を超える雰囲気で成膜した比較例1〜3のHe透過比率は、基材のみの比較例4のHe透過比率と、ほとんど変わらなかった。これに対して、Oガス圧の比率が20%以下の雰囲気で成膜した実施例1〜10のHe透過比率は、比較例1〜3、および基材のみの比較例4〜6と比較して、大幅に小さくなった。また、従来のフィルム部材の比較例7と比較しても、実施例1〜10のHe透過比率は、小さくなった。基材にPENフィルムを用いた実施例5、6、8〜10のHe透過比率は、基材にHC−PETフィルム、またはPETフィルムを用いた実施例1〜4、7のHe透過比率よりも、小さくなった。なかでも、基材の表裏両面にAlON膜を形成した実施例6、シラザン膜の上にAlON膜を形成した実施例10においては、He透過比率がさらに小さくなった。このように、実施例1〜10のフィルム部材は、Heガスを極めて透過させにくい、つまり、高いガスバリア性を有することがわかった。
【0088】
また、実施例1〜10および比較例1〜3のフィルム部材におけるAlON膜を、X線光電子分析装置(ESCA)により分析した。その結果、実施例1〜10のAlON膜は、いずれも組成Al:39〜55at%、O:7〜60at%、N:1〜50at%を満足していた。これに対して、比較例1〜3のAlON膜は、いずれもOの含有割合が60at%を超え、Nの含有割合が1at%未満であった。
【0089】
また、上記実施形態のマグネトロンスパッタ成膜装置1において、ECRプラズマ生成装置4を作動させずに、AlON膜を形成した。すなわち、ECRプラズマP1を照射せずに、AlON膜を形成した。それ以外の製造条件については、実施例1と同様にした。得られたフィルム部材を、参考例のフィルム部材とした。そして、実施例1および参考例のAlON膜の表面を、走査型プローブ顕微鏡(SPM)で観察した。図5に、実施例1のSPM写真を示す。図6に、参考例のSPM写真を示す。
【0090】
図5、図6を比較すると、ECRプラズマP1を照射しながら成膜したAlON膜(図5)の方が、ECRプラズマP1を照射せずに成膜したAlON膜(図6)よりも、膜質がきめ細やかで均一であることがわかる。具体的には、実施例1のAlON膜の粒子径は、40nm前後であり、表面粗さについては、Ra=1.7nm、Rz=21.7nmであった。一方、参考例のAlON膜の粒子径は、90〜350nm程度とばらつきが大きく、表面粗さについては、Ra=2.7nm、Rz=53.0nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のフィルム部材は、例えば、タッチパネル、ディスプレイ、LED(発光ダイオード)照明、太陽電池、電子ペーパー等に用いられる機能性樹脂フィルムとして有用である。
【符号の説明】
【0092】
1:マグネトロンスパッタ成膜装置(スパッタ成膜装置)。
20:基材、21:基材支持部材、210:テーブル部、211:脚部。
3:スパッタ部、30:ターゲット、31:バッキングプレート、32a〜32c:永久磁石(磁場形成手段)、33:カソード、34:アースシールド、35:直流パルス電源。
4:ECRプラズマ生成装置、40:マイクロ波プラズマ生成部、41:導波管(矩形導波管)、42:スロットアンテナ、43:誘電体部、44:支持板、45:永久磁石、420:スロット、430:前面、440:冷媒通路(冷却手段)、441:冷却管、50:マイクロ波伝送部、51:管体部、52:マイクロ波電源、53:マイクロ波発振器、54:アイソレータ、55:パワーモニタ、56:EH整合器。
8:チャンバー、80:キャリアガス供給孔、81:第一ガス供給孔、82:第二ガス供給孔、83:排気孔、84:ガス分析孔、85:質量分析計。
M:磁力線、P1:ECRプラズマ、P2:マグネトロンプラズマ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムからなる基材と、該基材の表裏少なくとも一方側に配置される酸窒化アルミニウム(AlON)膜と、を有し、
該酸窒化アルミニウム膜の組成は、Al:39〜55at%、O:7〜60at%、N:1〜50at%であることを特徴とするフィルム部材。
【請求項2】
前記酸窒化アルミニウム膜を構成する酸窒化アルミニウムの粒子径は、150nm以下である請求項1に記載のフィルム部材。
【請求項3】
前記酸窒化アルミニウム膜の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)が3nm以下、最大高さ(Rz)が30nm以下である請求項1または請求項2に記載のフィルム部材。
【請求項4】
前記酸窒化アルミニウム膜は、前記基材の表裏両側に配置される請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のフィルム部材。
【請求項5】
前記基材は、ポリエチレンナフタレートフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムからなる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のフィルム部材。
【請求項6】
前記基材と前記酸窒化アルミニウム膜との間に、アクリル樹脂、イソシアネート、シランカップリング剤、金属アルコキシド、クロロシラン、シラザン、および炭化水素から選ばれる一種以上から形成された少なくとも一層以上の中間層を有する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のフィルム部材。
【請求項7】
請求項1に記載のフィルム部材を製造する方法であって、
スパッタ成膜装置のチャンバー内に、前記基材をアルミニウム製のターゲットに対向するように配置し、該チャンバー内のガスを排気して該チャンバー内を所定の真空度に保持する減圧工程と、
該チャンバー内に、窒素を含む原料ガスとキャリアガスとを導入し、所定の真空度で、該チャンバー内の窒素ガス圧に対する酸素ガス圧の比率が20%以下の雰囲気において、該キャリアガスの電離により生成したプラズマで該ターゲットをスパッタすることにより、該基材の成膜面に前記酸窒化アルミニウム膜を形成する成膜工程と、
を有することを特徴とするフィルム部材の製造方法。
【請求項8】
前記スパッタ成膜装置は、前記ターゲットと、該ターゲットの表面に磁場を形成するための磁場形成手段と、を備え、マグネトロン放電により前記プラズマを生成する請求項7に記載のフィルム部材の製造方法。
【請求項9】
前記スパッタ成膜装置は、さらに、ECRプラズマ生成装置を備え、
該ECRプラズマ生成装置は、
マイクロ波を伝送する矩形導波管と、
該矩形導波管の一面に配置され、該マイクロ波が通過するスロットを有するスロットアンテナと、
該スロットアンテナの該スロットを覆うように配置され、プラズマ生成領域側の表面は該スロットから入射する該マイクロ波の入射方向に平行である誘電体部と、
該誘電体部の裏面に配置され該誘電体部を支持する支持板と、
該支持板の裏面に配置され該プラズマ生成領域に磁場を形成する永久磁石と、
を備え、該誘電体部から該磁場中に伝播する該マイクロ波により電子サイクロトロン共鳴(ECR)を発生させながらプラズマを生成し、
前記成膜工程において、前記基材と前記ターゲットとの間にECRプラズマを照射しながらスパッタを行う請求項8に記載のフィルム部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−108118(P2013−108118A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252458(P2011−252458)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】