説明

フィレット検査のための検査基準データの設定方法、およびこの方法を用いた基板外観検査装置

【課題】実際のフィレットの形状に適した検査基準データを、自動的に設定する。
【解決手段】部品種毎に、その部品種の部品に発生するフィレット形状を複数のタイプに分類し、タイプ毎にしきい値導出ルールなどの検査基準データが登録された検査基準データベースを作成する。このデータベースの各フィレットタイプには、それぞれフィレット形成前のクリームはんだの高さ範囲が対応づけられる。ティーチングの際には、教示対象の部品に対応するランド毎に、ランドウィンドウを設定するとともに、CADデータや部品形状データを用いてランドに塗布されるクリームはんだの高さを算出する。さらに、算出されたはんだ高さに対応するフィレットタイプの検査基準データを検査基準データベースから読み出し、ランドウィンドウの設定情報に対応づけて、検査装置のメモリに登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、はんだ付け処理によってフィレットが形成された基板を、所定方向から照明しつつ撮像し、生成された画像中のフィレットの正反射光像を用いて各フィレットの形状を自動検査する基板外観検査装置(以下、単に「検査装置」という場合もある。)に関する。特にこの発明は、フィレットの検査に必要な検査基準データを検査装置に設定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の外観検査を自動で実行するタイプの検査装置は、一般に、カメラやラインセンサなどの撮像手段と、コンピュータが組み込まれたコントローラとを具備する。コントローラは、撮像手段により生成された検査対象の基板の画像を取り込んで、フィレットなどの被検査部位の位置や大きさを計測し、得られた計測値を所定の判定基準値と比較することにより、被検査部位の良否を判定する。
【0003】
この種の基板外観検査装置として、出願人は、「カラーハイライト方式」と呼ばれる光学系が導入された自動外観検査装置を開発している。カラーハイライト方式とは、赤、緑、青の3種類の色彩光をそれぞれ異なる仰角方向から基板に照射して、被検査部位(一般にはんだ付け部位)からの正反射光を撮像し、赤、緑、青の各色の分布によって被検査部位の傾斜状態を表した画像を生成するものである(特許文献1参照。)。このカラーハイライト方式の光学系を有する検査装置では、2値化処理によって各色領域を検出し、その位置や大きさなどを計測して判定基準値と比較することにより、フィレットが正常に形成されているかを判定する。
【0004】
【特許文献1】特公平6−1173号公報
【0005】
基板外観検査装置による自動検査を行うには、検査に先立ち、種々の検査基準データを設定して、検査装置のメモリに登録する必要がある。
この明細書でいうところの「検査基準データ」は、検査対象部位であるフィレットを、どのような方法を用いて、どのような手順で検査するかを示すものである。いわば、検査に関する一連の処理(画像の生成、被検査部位の検出、計測、判定など)を行う上で守るべき各種の基準を表すデータである、と考えてもよい。
【0006】
検査基準データには、たとえば、検査対象領域の設定に要するデータ(領域の位置および大きさ)、被検査部位の検出のために実行される処理の種類(2値化処理、エッジ抽出処理、投影処理など)、検査対象領域に対する計測処理の方法、計測結果の良否を判定するための判定基準値などが含まれる。また、被検査部位の検出を2値化により行う場合には、その処理に用いられる2値化しきい値も検査基準データに含められる。
【0007】
従来の検査基準データの設定処理(いわゆる「ティーチング」)では、一般に、各被検査部位の状態が良好なモデルの基板(以下、「良品モデル」という。)を撮像して表示し、その表示された画像を係員が確認しながら、部品毎に必要な検査基準データを設定するようにしている。
【0008】
また検査基準データの設定にかかる労力を軽減するために、あらかじめ部品の種毎に標準的な検査基準データ(ライブラリデータ)を登録しておき、該当するライブラリデータを読み出して設定する場合もある。たとえば、下記の特許文献2には、CADデータから読み出した部品の位置情報とライブラリデータとを組み合わせて、検査基準データ(特許文献2には「検査データ」と記載)を作成することが記載されている。
【0009】
また、下記の特許文献3には、部品の形状情報に基づいて、フィレット検査用の検査パラメータ(判定用しきい値)を自動作成し、この検査パラメータをライブラリデータとして登録することが記載されている。具体例として、リード幅の1/2の長さを最小のフィレット長さにするなど、部品の寸法データを用いた計算式によって、フィレット検査の判定用しきい値を求めることが記載されている。
【0010】
【特許文献2】特開2004−71781号公報
【特許文献3】特開平11−311508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3では、部品毎に具体的な判定用しきい値をライブラリデータとして登録しているが、これに代えて、しきい値を導き出すためのルール(特許文献3で「検査パラメータ算出方法」と呼ばれているもの)をライブラリデータとして登録し、ティーチング時に、実際に基板に実装される部品の形状データとライブラリデータとを用いて、具体的な判定用しきい値を算出することも可能である。このようにすれば、1つの部品種について、その部品種に属する各部品に共通の検査基準データを登録することが可能になるから、判定用しきい値の設定ルールを変更したり、サイズの異なる新たな部品を追加する場合にも、容易に対応できると考えられる。
【0012】
しかし、フィレットの形状は、はんだ付け前のランドに印刷されたクリームはんだの高さによって変化する場合があるため、画一的な検査基準データをそのまま使用すると、検査の精度を確保するのが困難になる可能性がある。
【0013】
クリームはんだの高さがばらつく要因の1つは、はんだ印刷工程で使用されるメタルマスクの構成(特にマスクの厚み)にある。マスクは、基板の構成に合わせて設計されるから、同じ部品であっても、実装される基板によって、はんだの高さが異なるものになる可能性がある。
【0014】
また、フィレットは、部品側電極とランドとの間に形成されるものであるから、部品のサイズのばらつきが大きい部品種の場合には、部品の高さに対するはんだの相対的な高さの違いが、フィレット形状に影響を及ぼすことがある。
たとえば、同じ基板に部品高さの異なる2つの角チップが実装される場合に、各部品が搭載されるランドの形状や大きさが同一であり、これらのランドに対し、クリームはんだ印刷に使用するマスクの開口部の形状や大きさが同一に設定されているものとする。このマスクを用いて各ランドにクリームはんだを印刷した後に、上記2つの角チップを実装し、リフロー工程を実行すると、部品高さが高い方の角チップについては、溶融したはんだが部品側の電極の上面に近い高さまで盛り上げられて、急峻なフィレットが形成されるが、部品高さが低い方の角チップについては、フィレットの傾斜が緩やかになることがある。
【0015】
この発明は上記の問題点に着目してなされたもので、はんだの高さによってフィレットの形状が異なるものになる場合でも、実際のフィレットの形状に適した検査基準データを、自動的に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明にかかる方法は、フィレットが形成された基板を所定方向から照明しつつ撮像し、生成された画像中のフィレットの反射光像を用いて当該フィレットの形状を自動検査する検査装置に、検査基準データを設定する方法である。この方法では、部品種毎に、互いに異なるフィレット形状に対応する複数とおりの検査基準データが、それぞれ対応する形状のフィレットの形成に関わるはんだの高さ範囲に対応づけて登録されたデータベースを、あらかじめ作成する。そして、基板の設計データを用いて、フィレット検査の対象となる部品を特定し、特定した各部品を処理対象として、それぞれ、以下のステップA,B,C,Dを実行する。
【0017】
ステップAでは、特定された部品に対応するランドの位置および大きさを特定する。ステップBでは、位置および大きさが特定されたランド毎に、その特定内容に基づきフィレット検査用の検査対象領域を設定する。ステップCでは、検査対象領域が設定されたランドについて、フィレットの形成に関わるはんだの高さを示す情報を取得し、データベースに登録されている処理対象の部品に対応する部品種の検査基準データの中から取得した情報(はんだの高さを示す情報)に対応する検査基準データを読み出す。ステップDでは、ステップBで設定された検査対象領域について、その設定に要する情報とステップCで読み出された検査基準データとを対応づけて、検査装置のメモリに登録する。
【0018】
ステップAでは、基板の設計データから、特定された部品に対応するランドの位置および大きさを直接読み出すようにしても良いが、これに限定されるものではない。たとえば、クリームはんだの印刷前のベアボードを撮像して得られた画像から基板上の各ランドを検出し、その中で処理対象の部品の位置に最も近いランドについて、位置および大きさを計測してもよい。この処理を行う場合の部品の位置は、基板の設計データから求めても良いし、ユーザーによる座標の入力を受け付けてもよい。
【0019】
上記方法により使用されるデータベースには、少なくとも、フィレットに対して実行すべき計測処理の内容や、この計測処理により求められた計測値の適否を判定するための判定用しきい値について、熟練者の知識や経験に基づく検査基準データを登録するのが望ましい。また、部品の種毎に、その部品種において発生し得る複数とおりのフィレット形状に対応する検査基準データを登録するのが望ましい。
【0020】
上記の方法によれば、基板の設計データに基づいて検査対象領域が設定されるとともに、この検査対象領域内のランドのはんだの高さに基づき、そのはんだによって形成されるフィレットの形状に適した検査基準データを設定することが可能になる。
【0021】
上記方法では、「フィレットの形成に関わるはんだの高さ」として、たとえば、部品の実装前にランドに塗布されたクリームはんだの高さを使用する。この場合、はんだの高さを示す情報は、たとえば、クリームはんだの印刷工程において印刷状態が良好であった基板を用いて、クリームはんだの高さを計測する方法によって取得することができる。
【0022】
より好ましくは、リフロー工程によって溶融したときのはんだの高さを「フィレットの形成に関わるはんだの高さ」とする。同じ基板であれば、マスクの開口部の厚みはほぼ同一であるから、クリームはんだの高さもほぼ同一になるが、リフロー工程が実行されると、ランドの大きさ、部品の高さ、はんだの表面張力等の要因によって、はんだの高さが変化するからである。この場合のはんだの高さを計測するのは困難であるが、以下の態様に示すような演算によって、およその値を求めることは可能である。
【0023】
上記方法の一態様においては、ステップCにおいて、はんだ印刷用のマスクの開口部の大きさを表す情報が含まれる基板の設計データからランドの大きさaおよびマスクの開口部の大きさbを読み出し、あらかじめ入力された前記マスクの厚みcと上記bとの乗算値をaにより除算する演算((b×c)/a)により、フィレットの形成に関わるはんだの高さを算出する。
【0024】
より好ましい態様では、ステップCにおいて、基板の設計データからマスクの開口部の大きさbを読み出すとともに、同じ設計データおよび処理対象の部品の形状データを用いて、ランドの部品が搭載されていない部分の大きさa1を求め、あらかじめ入力された前記マスクの厚みcと上記bとの乗算値をa1により除算する演算((b×c)/a1)により、はんだの高さを算出する。
【0025】
上記2つの態様における演算は、マスクの開口部に埋め込まれたクリームはんだが溶融し、ランドに均一に広がったと仮定して、その溶融時のはんだの高さを求めたものに相当する。 これらの態様によれば、実際の基板がなくとも、計算によってクリームはんだの高さを求めることができるから、検査基準データの設定が容易になる。
なお、いずれの態様とも、クリームはんだが溶融する際にフラックスが蒸発して体積が減少する点を考慮し、上記の演算により得た値に所定の収縮率を乗算した値をもって、はんだ高さとしてもよい。
【0026】
特定の部品種の部品を処理対象とする場合の好ましい態様では、ステップCにおいて、この部品種に含まれる各部品の高さが登録された部品データベースからステップAで特定された部品の高さを読み出し、フィレットの形成に関わるはんだの高さを示す情報として、読み出した部品の高さに対するはんだの相対的な高さを取得する。
この態様によれば、角チップのようなサイズのばらつきが大きい部品種についても、実装される部品に対するはんだの相対的な高さに基づき、適切な検査基準データを設定することが可能になる。
【0027】
さらに、この発明では、フィレットの形成に関わるはんだの高さがほぼ同じであっても、他の要因によって異なる検査基準データを設定する必要がある場合にも、対応できるようにしている。
この設定を行う場合の一態様では、フィレットの反射光像中に隣の部品のフィレットからの二次反射による光像が含まれる可能性のある部品種について、はんだの同一の高さ範囲に、二次反射が生じた場合と生じていない場合のそれぞれに対応する検査基準データが、データベースに登録される。また、ステップCでは、二次反射の有無毎に検査基準データが登録された部品種に属する部品を処理対象とし、かつ取得したフィレットの高さに対応する検査基準データが複数存在するとき、基板の設計データを用いて処理対象の部品のランドと当該ランドに対向する隣の部品のランドとの間の距離を算出する。そして、算出した距離と所定のしきい値との大小関係によって、データベースから読み出す検査基準データを決定する。
【0028】
上記の態様によれば、実際のフィレットの形状に問題はないが、二次反射のためにフィレットの反射光像が通常とは異なる状態になる可能性がある部品種(たとえば角チップ)に対し、二次反射による影響を考慮した検査基準データを自動的に設定することが可能になる。
【0029】
また、他の態様においては、データベースには、電極部分のぬれ性によってフィレットの形状が変わる可能性のある部品種について、はんだの同一の高さ範囲に、ぬれ性が良好な場合と良好でない場合とのそれぞれに対応する検査基準データが登録される。また、ステップCでは、ぬれ性の良・不良毎に検査基準データが登録された部品種に属する部品を処理対象とし、かつ取得したフィレットの高さに対応する検査基準データが複数存在するとき、この部品のぬれ性の良・不良に関する情報を入手して、その入手した情報に対応する検査基準データをデータベースから読み出すようにしている。
【0030】
上記の態様によれば、はんだの高さに大きな差異がなくとも、電極部分のぬれ性によってフィレットの形状が変化するような部品種(たとえばIC)に対し、ぬれ性の良否によって設定する検査基準データを切り替えることができる。
ぬれ性の良・不良に関する情報を入手する方法としては、ユーザーの手入力を受け付ける方法がある。また、あらかじめ、部品毎の電極材料が登録された電極材料データベースと、各種の電極材料とぬれ性の関係とを対応づけた照合用テーブルとを作成しておき、処理対象の部品について、電極材料データベースを用いて電極材料を特定した後、その特定した電極材料により照合用テーブルを照合する方法によって、ぬれ性の良・不良に関する情報を入手することも可能である。
【0031】
上記の検査基準データの設定方法を実行する基板外観検査装置は、部品種毎に、互いに異なるフィレット形状に対応する複数とおりの検査基準データが、それぞれ対応する形状のフィレットの形成に関わるはんだの高さ範囲に対応づけて登録されたデータベースと、検査対象の基板の設計データとを用いて、検査対象の基板上の各部品に適合する検査基準データを設定する検査基準データ設定手段と、検査基準データ設定手段により設定された検査基準データを保存するためのメモリとを備える。検査基準データ設定手段は、フィレット検査の対象となる部品およびその部品種を特定する部品特定手段;部品特定手段が特定した部品について、当該部品に対応するランドの位置および大きさを特定するランド特定手段;位置および大きさが特定されたランド毎に、その特定内容に基づきフィレット検査用の検査対象領域を設定する領域設定手段;検査対象領域が設定されたランドについて、フィレットの形成に関わるはんだの高さを示す情報を取得し、前記データベースに登録されている処理対象の部品の検査基準データの中から取得した情報に対応する検査基準データを読み出すデータ抽出手段;領域設定手段により設定された検査対象領域について、その領域の設定に要する情報とデータ抽出手段が読み出した検査基準データとを対応づけてメモリに登録する登録手段;の各手段を備えている。
【0032】
上記の外観検査装置において、検査基準データが登録されたデータベースは、基板検査装置のメモリ内に保存されるのが望ましいが、これに限らず、CD−ROMなどのリムーバブル記憶媒体を用いて、または外部機器との通信により、基板外観検査装置に提供されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0033】
上記の検査基準データの設定方法およびこの方法が適用された基板外観検査装置によれば、データベースを用いて検査基準データを自動設定する場合に、フィレットの形成に関わるはんだの高さに基づいて、フィレットの形状に適した検査基準データを設定することが可能になる。よって、検査基準データの自動設定処理の能力が大幅に高められ、設定された検査基準データを用いて精度の高い検査を実行することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、この発明が適用された基板外観検査装置の構成を示す。
この基板外観検査装置(以下、単に「検査装置」という。)は、リフロー工程を経た基板を処理対象として、各部品のはんだ付け部(フィレット)を検査するもので、コントローラ1、カメラ2、照明装置3、基板ステージ4、入力部5、モニタ6などにより構成される。
【0035】
基板ステージ4には、基板8を支持するためのテーブル部41や、X軸ステージおよびY軸ステージ(いずれも図示せず。)を含む移動機構42などが含まれる。
【0036】
カメラ2および照明部3は、特許文献1に開示されたのと同様に、カラーハイライト方式の光学系を構成する。カメラ2は、カラー静止画像を生成するもので、基板ステージ41の上方に撮像面を下方に向け、かつ光軸を鉛直方向に合わせた状態で配備される。照明部3は、基板ステージ4とカメラ2との間に配置された3個の円環状光源3R,3G,3Bにより構成される。これらの光源3R,3G,3Bは、それぞれ、赤色、緑色、青色の色彩光を発するもので、各中心部をカメラ4の光軸に位置合わせした状態で配備されている。また、各光源3R,3G,3Bは、基板4に対しそれぞれ異なる方向から光を照射できるように、互いに異なる大きさの径を有するように設定される。
【0037】
コントローラ1には、コンピュータによる制御部10のほか、画像入力部11、撮像制御部12、照明制御部13、XYステージ制御部14、メモリ15、CD−ROMドライブ16、通信用インターフェース17などが設けられる。
画像入力部11には、カメラ2に対するインターフェース回路などが含まれる。撮像制御部12は、カメラ2に対し、撮像を指示するタイミング信号を出力するためのものである。
【0038】
照明制御部13は、前記照明部3の各光源3R,3G,3Bの点灯・消灯動作の制御や光量の調整などを行う。XYステージ制御部14は、基板ステージ4の移動タイミングや移動量を制御する。
【0039】
メモリ15には、検査用のプログラムのほか、後記する検査基準データベース101、部品形状データベース102、これらのデータベース101,102を用いて生成された検査データファイル103などが格納される。検査データファイル103には、部品毎に、その部品のフィレットの検査に必要な検査基準データが登録される。さらに、基板8を複数の領域に分けて撮像する場合には、検査データファイル103には、各撮像対象位置にカメラ2の視野を合わせるのに必要なデータ(基板ステージの移動量など)も登録される。
【0040】
制御部10は、XYステージ制御部14を介して基板ステージ42の移動を制御することにより、カメラ2と基板8とを位置合わせし、撮像する。この撮像により生成されたカラー画像は画像入力部11を介して制御部10に入力され、その内部のメモリ(RAMなど)に格納される。制御部10は、このRAMに格納されたカラー画像の各部品に対し、それぞれ検査データファイル103に登録された検査基準データを用いて、フィレットに対する検査を順に実行する。
【0041】
さらに、制御部10は、各部品に対する計測結果や判定結果、ならびに検査に使用された画像を、通信用インターフェース17を用いて情報処理装置2に送信する。
【0042】
この種の検査装置では、ティーチング処理として、各部品のフィレットが良好な状態にあるモデルの基板を撮像し、その撮像により生成された画像を用いて検査基準データを作成する場合が多い。しかし、この実施例の検査装置では、検査基準データベース101、各種部品の形状が登録された部品形状データベース102、基板のCADデータなどを用いて、モデルの基板を撮像することなしに、各種検査基準データを自動設定するようにしている。この設定のために、検査装置のコントローラ1には、図2に示すような検査基準設定システム100が組み込まれている。
【0043】
この検査基準設定システム100には、上記した検査基準データベース101、部品形状データベース102、検査データファイル103のほか、CADデータ記憶部104、部品・ランド認識部105、ウィンドウ設定部106、はんだ高さ算出部107、検査基準データ検索部108、しきい値算出部109、検査基準登録部110、判定基準テーブル111などが含まれる。
【0044】
上記の検査基準設定システム100のうち、CADデータ記憶部104、検査基準データベース101、部品形状データベース102、検査データファイル103、および判定基準テーブル111は、それぞれコントローラ1のメモリ15内に設定される。その他の部分は、メモリ15にインストールされたプログラムによって制御部10に設定される機能である。
【0045】
この検査基準設定システム100に読み込まれるCADデータは、基板に搭載される各部品およびその部品種を特定する処理や、各部品に対応するランドの位置および大きさを特定する処理に用いられる。具体的には、各部品について、実装位置、部品種名(角チップ、IC、コンデンサなどの一般名称)、品番などを示す情報が設定され、さらにランドの位置および大きさを表す情報(以下、「ランド情報」という。)が設定される。また、はんだ印刷工程で使用されるメタルマスクの開口部の位置および大きさを表す情報(以下、「マスク情報」という。)も設定される。このマスク情報は、本来はクリームはんだの印刷工程で使用されるものであるが、この実施例では、はんだ高さ算出部107により使用される。
【0046】
上記のCADデータは、CD―ROMドライブ16にセットされたCD―ROMから読み出されるか、または、図示しない外部装置から送信され、通信用インターフェース17によって取り込まれ、CADデータ記憶部104に格納される。
【0047】
検査基準データベース101および部品形状データベース102は、検査装置にプリインストールされたものである。ただし、いずれのデータベース101,102も、適宜、CD−ROMや外部との通信によって更新することができる。
【0048】
検査基準データベース101には、詳細は後記するが、部品種毎に、その部品種において発生し得る複数とおりのフィレット形状に対応する検査基準データが登録されている。データベース中の部品種は、CADデータの部品種に整合するように分類されており、各部品種には、CADデータで使用されるのと同一の部品種名が付与されている。
【0049】
1つのフィレット形状に対応する検査基準データには、フィレットの画像から検出する色彩を指定するデータ、計測や判定において実行するプログラムを指定するデータ(たとえば、プログラムのファイル名や格納場所を示すアドレスなど)、判定用しきい値を求めるためのルール(以下、「しきい値導出ルール」という。)などが含められる。
【0050】
部品形状データベース102は、個々の部品毎に、品番、部品種名、メーカー名、型式など、その部品を特定するための情報と、部品の形状データとが格納される。形状データは、部品のサイズや形を具体的な数値により表すもので、いずれの部品についても、部品本体の縦横の幅や部品の高さが格納される。さらに、部品種に特有のデータが格納される場合もある。たとえば、「IC」に属する部品であれば、リード間のピッチ、個々のリードの幅、対向するリードの端縁間の距離、リードの高さなどが格納される。
【0051】
部品・ランド認識部105は、CADデータ中の部品種名や品番(以下、これらを「部品情報」という。)に基づき、基板に実装される部品を1つずつ切り分けて認識する。さらに、部品毎に、その部品に対応するランドを特定し、各ランドのランド情報を取得する。ウィンドウ設定部106は、部品・ランド認識部105から部品毎に対応するランド情報を取り込み、この情報に基づき、ランドを包含する大きさの検査対象領域(以下、「ランドウィンドウ」という。)を設定する。
【0052】
検査基準データ検索部108には、部品・ランド認識部105から部品情報およびランド情報が供給される。検査基準データ検索部108は、これらの情報から教示対象の部品の部品種やランドの大きさを認識すると、ランド毎に、検査基準データベース101に登録されている複数とおりの検査基準データの中から、そのランドに形成されるフィレットの形状に適合するデータを特定し、そのデータを読み出す。この検査基準データを特定する処理には、判定基準テーブル111が使用される。また、一部の部品を除き、はんだ高さ算出部107にランド上のはんだの高さを算出する処理を実行させる。
【0053】
検査基準データ検索部108は、特定した検査基準データを検査基準データベース101から読み出すと、そのデータ中のしきい値導出ルールをしきい値算出部109に供給する。しきい値算出部109は、このしきい値導出ルールに部品の形状データをあてはめた演算処理により、教示対象の部品に特化したフィレット検査用の判定用しきい値を算出する。
【0054】
検査基準登録部110は、上記の判定用しきい値を含む各種検査基準データを、それぞれ取り込むとともに、ウィンドウ設定部106から、ランドウィンドウの設定に要する情報(ウィンドウの位置および大きさを示す情報である。以下では、「ランドウィンドウの設定情報」という。)の供給を受け、これらを対応づけて、検査データファイル103に格納する。
【0055】
なお、この検査データファイル103には、各部品に共通の検査基準データとして、赤、緑、青の各色彩を検出するための2値化しきい値も格納される。この2値化しきい値も、検査基準データベース101に登録されており、図示しない処理部により読み出されて検査データファイル102に格納される。
【0056】
また、上記の例では、CADデータに部品種を示す情報が含まれているものとしたが、部品種情報が含まれないCADデータを使用する場合には、別途、ユーザーにより部品種情報が入力され、その入力情報が部品・ランド認識部105に供給されることになる。
【0057】
以下、主要な部品種である「角チップ」および「IC」を例に、検査基準データの具体的内容や設定のための処理について説明する。
【0058】
図3は、上記2つの部品種について、検査基準データベース101に登録されるデータの構成例を示す。この例では、各部品種について、その部品種で発生するフィレット形状を複数のタイプに分類し(以下、「フィレットタイプ」という。)、各フィレットタイプにそれぞれ個別の検査基準データを設定している。
【0059】
この実施例では、ユーザーの便宜のために、「角チップA」「IC_A」など、部品種名を含む名称で各フィレットタイプを表しているが、フィレットタイプは部品を分類するためのものではなく、フィレット形状を分類するためのものである。すなわち、同じ部品種に属するいずれの部品にも、その部品種に対応する全てのフィレットタイプのフィレットが形成される可能性がある。また、後記するように、同じ部品であっても、ランドによってフィレットタイプが異なる場合がある。
【0060】
検査基準データには、前記した複数種のデータが含まれるが、図3では、しきい値導出ルールに限定して図示している。また、近年のカラーハイライト方式の検査装置では、青色領域は必ず検出するが、緑、赤の色領域は必要に応じて検出しているので、この例でも、便宜上、青色領域の計測のみを行うものとして、青色領域の計測値に対するしきい値の導出ルールを示している。
【0061】
図3に示したデータのうち、検査基準データベース101にとって必須のデータは、フィレットタイプの名称としきい値導出ルールである。「フィレット形状」や「画像」は、各タイプの具体的内容を表すもので、必ずしも検査基準データベース101に登録する必要はない。たとえば、ユーザーが適宜参照できるように、検査基準データベース101以外のファイルに保存してもよい。
【0062】
「フィレット形状」は、フィレットの断面形状の模式図である。「画像」は、カラーハイライト方式の光学系により得られる画像中のフィレットの模式図であって、フィレットに対応する部分が、実際の色彩分布に合わせて、青や赤に着色されている(図3では、青色領域を斜線のパターンにより、赤色領域を網点のパターンによりそれぞれ示す。緑色領域は小さいので着色表示は省略されている。)。
【0063】
「しきい値導出ルール」として、この実施例では、フィレットの幅および長さ(以下、「フィレット幅」「フィレット長」という。)の計測値に対するしきい値を求めるためのルールを設定する。また一部のタイプを除き、部品幅またはリード幅に所定の係数を掛け合わせるルールが設定されているので、部品によって、異なるしきい値が設定される。
【0064】
図4は、角チップにおけるフィレット幅およびフィレット長の概念を示す。
角チップの場合の「部品幅」とは、電極の並び方向に直交する方向(図中の縦方向)における幅である。フィレット幅は、部品幅方向における青色領域の長さの最大値aであり、フィレット長は、部品幅方向に直交する方向における青色領域の長さの最大値bである。ICの場合については図示しないが、同様に、リードの幅に沿う方向における青色領域の長さの最大値をフィレット幅とし、リードの長さ方向に沿う方向における青色領域の長さの最大値をフィレット長とする。
【0065】
ここで、各部品種のフィレット形状としきい値導出ルールとの関係について説明する。
まず、「角チップ」については、4つのフィレットタイプが設定されているが、角チップAとCとのフィレット形状は、ほぼ同一である。これらのタイプでは、部品の比較的高い位置(図示例では上端縁)を起点にして急峻なフィレットが形成される。
【0066】
角チップBは、フィレット長については、角チップAやCとほぼ同一であるが、フィレットの起点が部品の比較的低い位置にあるため、角チップA,Cよりもフィレットの傾斜が緩やかになる。このためフィレットの画像では、先端側に赤色領域が現れる。
【0067】
角チップA,Cは、二次反射の有無によって切り分けられる。二次反射とは、フィレットに、対向関係にある隣の部品のフィレットからの反射光が照射されて、その照射光に対する反射が発生した状態をいう。フィレットが急峻であって、隣のフィレットとの距離が短い場合に、二次反射が起こりやすいことが知られている。この実施例では、二次反射が生じていないタイプを角チップAとし、二次反射が生じているタイプを角チップCとしている。角チップAに対応するフィレットの画像は、ほぼ全体が青色になるが、角チップCに対応するフィレットの画像では、青色領域の内部に二次反射による赤色領域が現れる。
【0068】
上記の3タイプに対し、角チップDは、ランドが極端に小さいため、短く、かつ急峻に形成されたフィレットに対応する。このタイプのフィレットの画像は、角チップAと同様に、ほぼ全体が青色となる。ただし、フィレット長は、角チップAよりもはるかに小さなものとなる。
【0069】
各タイプのしきい値導出ルールには、上記の画像の違いが反映されている。具体的には、角チップAでは、部品幅の0.5倍にあたる数値がフィレット幅のしきい値に設定され、部品幅の0.6倍にあたる数値がフィレット長のしきい値に設定される。これに対し、角チップBでは、フィレット幅のしきい値は角チップAと同一になるように設定されるが、フィレット長のしきい値については、赤色領域の存在を考慮して、角チップAより小さな値になるように設定されている。また、角チップCについては、二次反射の発生を考慮して、フィレット幅、長さとも、角チップAより小さなしきい値になるようにしている。
【0070】
フィレットが急峻で短い角チップDについては、フィレット幅のしきい値については角チップAと同じになるように設定されるが、フィレット長のしきい値は、一定値(20μm)に固定される。この種のフィレットについては、フィレットになる前のクリームはんだの高さに関わらず、ほぼ同様の形状になることが経験上わかっているためである。
【0071】
つぎに「IC」では、3タイプのうちのIC_Aが、急峻なフィレットに相当する。このタイプでは、角チップAと同じように、フィレットのほぼ全体が青になる画像が生成される。
【0072】
これに対し、IC_Bに対応するフィレットは、電極の比較的低い位置を起点に、緩やかに傾斜する。このタイプのフィレットの画像では、赤色領域が顕著になる。特に、フィレットの先端縁に対応する部分では、幅方向の殆どが赤色となる。
【0073】
IC_Cに対応するフィレットは、中央部が平坦で傾斜部分が少ない形状に変形されている。このようなフィレットの変形は、リード表面にパラジウムによるメッキ層が形成されるなどして、リードのぬれ性(リードに対するはんだの装着状態をいう。)が悪くなった場合に発生する。このタイプのフィレットの画像には、長さ方向に沿って赤色領域が現れる。
【0074】
「IC」用のしきい値導出ルールでも、上記のような画像の違いに応じて、タイプ毎に判定用しきい値が異なるものになるようにしている。具体的には、IC_BやIC_Cについては、フィレット幅の判定用しきい値がIC_Aのものより小さくなるようにしている。また、フィレット長のしきい値について、IC_AやIC_Bでは固定値(50μm,30μm)が設定されるが、IC_Cについては、ランドの長さに応じてしきい値が変化する。
【0075】
判定基準テーブル111には、教示対象の部品のフィレットが上記のどのタイプに該当するかを判定するために、図5に示すような内容のデータが格納されている。ただし、「画像」欄の模式図は、参考のための表示であり、実際のテーブルには格納しなくともよい。
【0076】
この判定基準テーブル111には、検査基準データベース101に設定されたフィレットタイプを、フィレットの形成に関するはんだの高さ(以下、単に「はんだ高さ」という。)に対応づけたデータが設定されている。角チップA,B,Cのはんだ高さは、それぞれ部品高さに対するはんだの高さの比率による数値範囲として表され、IC_A,B,Cのはんだ高さは具体的な数値の範囲として表される。一方、はんだ高さを考慮しなくてもよい角チップDについては、はんだ高さにnull値が格納される。
【0077】
さらに、角チップの4タイプのデータには、対応するランドの長さ(ランド長)が含まれる。また、角チップAおよびCのデータには、2次反射の有無を判別するためのパラメータ(フィレットが形成されるランドとこれに対向する隣の部品のランドとの距離)が含まれる。また、ICでも、IC_AおよびIC_Cのデータに、リードのぬれ性の良・不良を示すデータが含まれる。
【0078】
図3に示した検査基準データベース101と図5に示した判定基準テーブル111とは、フィレットタイプの名称を介してリンクしている。このリンクにより、角チップDを除く各タイプの検査基準データは、それぞれ対応する形状のフィレットの形成に関わるはんだの高さ範囲に対応づけされている。よって、実際のランドに形成されるはんだ高さがわかれば、その高さに対応する検査基準データを特定することが可能である。
【0079】
また角チップAとC、およびICのAとCには、同一の高さ範囲が対応づけられているが、図5によれば、角チップAと角チップCとは、対向ランドとの距離によって切り分けることができ、IC_AとIC_Cとは、ぬれ性の良・不良によって切り分けることができる。また、はんだ高さが対応づけられていない角チップDも、ランド長によって、他の3つのタイプと切り分けることができる。
【0080】
図6は角チップのフィレットタイプを判定する場合の処理の手順を、図7はICのフィレットタイプを判定する場合の処理の手順を、それぞれ示す。以下、図5を参照しつつ、各図の流れに沿って、判定処理の詳細を説明する。なお、各図および以下の説明では、各処理のステップを「ST」と略す。
【0081】
図6の角チップ用の判定処理では、まず、着目中のランドについて、CADデータ中のランド情報からランド長を取得し、これが100μm以上であるかどうかをチェックする(ST101,102)。
図5によれば、角チップA,B,Cは、いずれも100μm以上のランド長に対応するが、角チップDが対応するランド長は100μm未満である。よって、ST102の判定が「NO」の場合には、ST108に進み、フィレットタイプは角チップDであると判定する。
【0082】
一方、ランド長が100μm以上である場合には、ST102からST103に進み、はんだ高さ算出部107の機能を用いて、以下の演算処理によりはんだ高さを算出する。
まず、CADデータ中のランド情報や部品情報を用いてランドの面積や部品の中心位置などを求めるとともに、部品形状データベース102から部品本体や電極のサイズなどの情報を読み出し、これらの情報を用いて、ランド上のはんだ印刷対象領域(電極に重なっていない部分である。)の面積Sを求める。さらに、CADデータからマスクの開口部の面積Sを抽出するとともに、別途、ユーザーからマスクの厚みδの入力を受け付け、これらを用いて、下記の演算式(1)を実行する。
はんだ高さ=(S×δ)/S ・・・・(1)
【0083】
上記の(1)式は、マスクの開口部に埋め込まれたクリームはんだが溶融し、ランドの電極に重なっていない部分全体に均等に広がったと仮定して、その溶融したはんだの高さを求めたものである。ただし、クリームはんだは、粒状のはんだをフラックスに入れたものであり、溶融後は、フラックスの蒸発によって体積が減少するので、その減少分に応じたはんだの収縮率を(1)式の演算結果に乗じたものを、はんだの高さとしてもよい。
【0084】
つぎのST104では、部品形状データベース102から教示対象の部品の高さを読み出し、ST103で算出したはんだ高さが部品高さの1/3以上になるかどうかをチェックする。図5によれば、角チップA、Cに対応するはんだ高さは、部品高さの1/3以上であるが、角チップBに対応するはんだ高さは、部品高さの1/3未満である。よって、ST104の判定が「NO」となれば、ST109に進み、フィレットタイプは角チップBであると判定する。
【0085】
はんだ高さが部品高さの1/3以上である場合には、ST105に進む。ST105では、CADデータ中のランド情報を用いて、対向関係にある隣の部品のランドとの距離を算出する。さらにST106では、算出した距離を所定値LMと比較する。
図5によれば、二次反射の生じない角チップAでは、対向ランドとの距離はLM以上となるが、二次反射が生じる角チップCでは、この距離はLM未満となっている。よって、ST103で算出した距離がLM以上であれば、ST106が「YES」となってST107に進み、フィレットタイプは角チップAであると判定する。他方、算出した距離がLM未満であれば、ST110に進み、フィレットタイプは角チップCであると判定する。
【0086】
つぎに、IC用の判定処理では、はんだ高さを算出した後、この高さが0.05mm以上であるかどうかチェックする(ST201,202)。図5によれば、IC_AおよびIC_Cは、0.05mm以上のはんだ高さに対応するが、IC_Bに対応するはんだ高さは0.05mm未満である。よって、ST202が「NO」の場合にはST205に進み、フィレットのタイプはIC_Bであると判定する。
【0087】
はんだ高さが0.05mm以上であれば、ST203に進み、ぬれ性の良・不良をチェックする。このチェックに必要なデータは、ユーザーによりあらかじめ入力される。たとえば、基板に搭載されるICに、パラジウムのメッキ処理が施されているかどうかの判定を問う画面を表示し、その問いに対して入力された回答をST203の判定に使用する。ここで、ぬれ性が良好と判定された場合には、ST204に進み、フィレットのタイプはIC_Aであると判定する。ぬれ性が不良であると判定された場合にはST206に進み、フィレットのタイプはIC_Cであると判定する。
【0088】
続いて、ティーチング処理の全手順について、図8に基づき説明する。
まず最初のST1では、教示対象の基板のCADデータを読み込む。つぎにST2において、この基板について、はんだ印刷工程で使用されたマスクの厚みや、ICのリードのぬれ性の良否に関する情報の入力を受け付ける。
【0089】
ST3では、検査データファイル103を作成する。ただし、この段階の検査データファイル103は、ファイル名が設定されただけの空のファイルである。つぎのST4では、部品数を数えるためのカウンタnを初期値の1に設定し、以下、ST5〜14のループを実行する。
【0090】
ST5では、カウンタnにより特定される部品(以下、「着目部品」という。)について、CADデータを用いて、部品種名や品番を特定する。またST6では、ST5で特定された品番に基づき、部品形状データベース102から着目部品の部品形状データを読み出す。読み出された部品形状データは、制御部10内の作業メモリ(RAM)に保存される。
【0091】
つぎに、ST7では、再びCADデータを用いて、着目部品に対応するランドの位置や大きさを特定する。図8には明記していないが、通常、ST7では、複数のランドが特定されるので、以下のST8〜12は、特定されたランド毎に実行される。
【0092】
ST8では、特定されたランド毎に、そのランドを包含する大きさのランドウィンドウを設定する。ST9では、各ランドにつき、着目部品の部品種に応じたフィレットタイプの判定処理(角チップであれば図6の処理、ICであれば図7の処理)を実行する。ST10では、各ランドにつき、ST9において判定されたフィレットタイプに対応する検査基準データを読み出す。
【0093】
ST11では、各ランドについて、部品形状データから部品幅やリード幅の数値を読み出し、これらをST9で読み出された検査基準データ中のしきい値導出ルールにあてはめて、具体的な判定しきい値を算出する。ST12では、この判定しきい値を含む検査基準データを、ランドウィンドウの設定情報に対応づけて、検査データファイル102に登録する。この段階では、特定されたランド毎に、検査基準データとランドウィンドウの設定情報とを組み合わせ、各組み合わせデータの集合を1つの部品に対応する最終形態の検査基準データを作成し、検査データファイル102に登録する。
【0094】
この後、ST13でカウンタnをインクリメントする。以下、このnが部品全数の値を上回るまで、ST5〜12の処理を繰り返す。
【0095】
上記の手順において、ST8〜11の各ステップは、特定されたランド毎に実行されるので、同一部品であっても、ランドによって適用される検査基準データが異なる場合にも対応することができる。たとえば、角チップについて、一方のフィレットには二次反射が生じるが、他方のフィレットには二次反射が生じない場合には、前者には角チップCの検査基準データが設定され、後者には角チップAの検査基準データが設定される。
【0096】
以上、説明した検査基準データの設定方法によれば、部品サイズの大小やランドの形状・大きさの差違などによって、部品に対するはんだの相対的な高さが変化し、その変化により異なる複数のフィレット形状が想定される部品種について、教示対象の部品のランド毎に、そのランドに形成されるフィレット形状に応じた検査基準データを自動で設定することが可能になる。また、同じ部品であっても、搭載される基板によってフィレット形状が異なれば、その形状に応じた検査基準データを設定することができる。
【0097】
さらに、上記の方法では、はんだ高さに差異はないが、二次反射によってフィレットの画像に差異が生じたり、電極のぬれ性によってフィレット形状に差異が生じる場合にも、それぞれのフィレットの状態に応じた検査基準データを設定することができる。よって、設定された検査基準データを用いて高精度のフィレット検査を実行することが可能になる。
【0098】
なお、上記の実施例では、はんだ高さを演算により算出するようにしたが、クリームはんだの印刷工程において、各ランドに塗布されたクリームはんだの検査を行う場合には、全てのランドのはんだ塗布状態が良好であった基板について、はんだ印刷検査で計測されたはんだ高さを入力し、この入力値または入力値に所定の係数を掛け合わせて得られる数値を、フィレットの形成に関するはんだ高さとして使用してもよい(係数は、前記したフラックスの蒸発に伴う収縮率等に基づいて決めることができる。)。
【0099】
また、上記の実施例では、フィレット部分の色彩を検出するための2値化しきい値を、共通の検査基準データとして設定するようにしたが、部品によっては、フィレット部分に隣接部品の影が発生し、共通の2値化しきい値では対応できない場合もある。このような状況が起こり得る場合には、各部品間の距離や位置関係から影が発生する可能性の高いフィレットを特定し、そのフィレットには、別の2値化しきい値を設定するようにするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】この発明の一実施例にかかる基板外観検査装置の構成を示す図である。
【図2】検査基準設定システムの機能ブロック図である。
【図3】検査基準データベースの構成例を示す説明図である。
【図4】部品幅、フィレット幅、およびフィレット長の概念を説明する図である。
【図5】判定基準テーブルの構成例を示す説明図である。
【図6】角チップ用のフィレットタイプの判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】IC用のフィレットタイプの判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】1つの基板に対するティーチング処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
1 コントローラ
2 カメラ
3 照明部
10 制御部
15 メモリ
100 検査基準データベース
102 部品形状データベース
103 検査データファイル
104 CADデータ記憶部
105 部品・ランド認識部
106 ウィンドウ設定部
107 はんだ高さ算出部
108 検査基準データ検索部
110 検査基準登録部
111 判定基準テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィレットが形成された基板を所定方向から照明しつつ撮像し、生成された画像中のフィレットの反射光像を用いて当該フィレットの形状を自動検査する検査装置に、検査基準データを設定する方法であって、
部品種毎に、互いに異なるフィレット形状に対応する複数とおりの検査基準データが、それぞれ対応する形状のフィレットの形成に関わるはんだの高さ範囲に対応づけて登録されたデータベースを、あらかじめ作成しておき、
前記基板の設計データを用いて、フィレット検査の対象となる部品を特定し、
特定された一部品に対応するランドの位置および大きさを特定するステップA;前記位置および大きさが特定されたランド毎に、その特定内容に基づきフィレット検査用の検査対象領域を設定するステップB;前記検査対象領域が設定されたランドについて、フィレットの形成に関わるはんだの高さを示す情報を取得し、前記データベースに登録されている処理対象の部品に対応する部品種の検査基準データの中から取得した情報に対応する検査基準データを読み出すステップC;ステップBで設定された検査対象領域について、その設定に要する情報とステップCで読み出された検査基準データとを対応づけて検査装置のメモリに登録するステップD;の各ステップを、フィレット検査の対象として特定された部品毎に実行するようにした、
フィレット検査のための検査基準データの設定方法。
【請求項2】
前記基板設計データには、はんだ印刷用のマスクの開口部の大きさを表す情報が含まれており、
前記ステップCでは、前記基板の設計データからランドの大きさおよび前記マスクの開口部の大きさを読み出し、あらかじめ入力された前記マスクの厚みとマスクの開口部の大きさとの乗算値を前記ランドの大きさにより除算する演算により、フィレットの形成に関わるはんだの高さを算出する請求項1に記載されたフィレット検査のための検査基準データの設定方法。
【請求項3】
前記基板設計データには、はんだ印刷用のマスクの開口部の大きさを表す情報が含まれており、
前記ステップCでは、前記基板の設計データから前記マスクの開口部の大きさを読み出すとともに、同じ設計データおよび処理対象の部品の形状データを用いて、ランドの部品が搭載されていない部分の大きさを求め、あらかじめ入力された前記マスクの厚みとマスクの開口部の大きさとの乗算値を前記ランドの部品が搭載されていない部分の大きさにより除算する演算により、フィレットの形成に関わるはんだの高さを算出する請求項1に記載されたフィレット検査のための検査基準データの設定方法。
【請求項4】
特定の部品種の部品を処理対象とする場合の前記ステップCでは、この部品種に含まれる各部品の高さが登録された部品データベースから前記ステップAで特定された部品の高さを読み出し、前記フィレットの形成に関わるはんだの高さを示す情報として、読み出した部品の高さに対するはんだの相対的な高さを取得する請求項1〜3のいずれかに記載されたフィレット検査のための検査基準データの設定方法。
【請求項5】
前記データベースには、フィレットの反射光像中に隣の部品のフィレットからの二次反射による光像が含まれる可能性のある部品種について、はんだの同一の高さ範囲に、二次反射が生じた場合と生じていない場合のそれぞれに対応する検査基準データが登録されており、
前記ステップCでは、前記二次反射の有無毎に検査基準データが登録された部品種に属する部品を処理対象とし、かつ取得したフィレットの高さに対応する検査基準データが複数存在するとき、前記基板の設計データを用いて処理対象の部品のランドと当該ランドに対向する隣の部品のランドとの間の距離を算出し、その距離と所定のしきい値との大小関係によって、データベースから読み出す検査基準データを決定する請求項1に記載されたフィレット検査のための検査基準データの設定方法。
【請求項6】
前記データベースには、電極部分のぬれ性によってフィレットの形状が変わる可能性のある部品種について、はんだの同一の高さ範囲に、ぬれ性が良好な場合と良好でない場合とのそれぞれに対応する検査基準データが登録されており、
前記ステップCでは、前記ぬれ性の良・不良毎に検査基準データが登録された部品種に属する部品を処理対象とし、かつ取得したフィレットの高さに対応する検査基準データが複数存在するとき、この部品のぬれ性の良・不良に関する情報を入手して、その入手した情報に対応する検査基準データをデータベースから読み出すようにした請求項1に記載されたフィレット検査のための検査基準データの設定方法。
【請求項7】
フィレットが形成された基板を所定方向から照明しつつ撮像し、生成された画像中のフィレットの反射光像を用いて当該フィレットの形状を自動検査する検査装置であって、
部品種毎に、互いに異なるフィレット形状に対応する複数とおりの検査基準データが、それぞれ対応する形状のフィレットの形成に関わるはんだの高さ範囲に対応づけて登録されたデータベースと、検査対象の基板の設計データとを用いて、検査対象の基板上の各部品に適合する検査基準データを設定する検査基準データ設定手段と、検査基準データ設定手段により設定された検査基準データを保存するためのメモリとを備え、
前記検査基準データ設定手段は、
フィレット検査の対象となる部品およびその部品種を特定する部品特定手段;部品特定手段が特定した部品について、当該部品に対応するランドの位置および大きさを特定するランド特定手段;位置および大きさが特定されたランド毎に、その特定内容に基づきフィレット検査用の検査対象領域を設定する領域設定手段;検査対象領域が設定されたランドについて、フィレットの形成に関わるはんだの高さを示す情報を取得し、前記データベースに登録されている処理対象の部品の検査基準データの中から取得した情報に対応する検査基準データを読み出すデータ抽出手段;領域設定手段により設定された検査対象領域について、その領域の設定に要する情報とデータ抽出手段が読み出した検査基準データとを対応づけて、前記メモリに登録する登録手段;の各手段を備えている、基板外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−45952(P2008−45952A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220689(P2006−220689)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】