説明

フェンダカバー構造及び車体前部構造

【課題】エンジンルーム内における側面の見栄えを向上させながら、歩行者保護性能の確保とNV性能の向上との両立を図ることができるフェンダカバー構造及び車体前部構造を得る。
【解決手段】フェンダカーテン50は、隠蔽用のカバー部54から延設された傾斜壁部56が、フロントフェンダパネル20の外側壁部22とカバー部54との間の空隙部44に配置されるので、エンジンルーム12内から空隙部44へ伝達される空気振動が抑制される。傾斜壁部56は、カバー部54に支持される第1基部56Aに脆弱部56Cが設けられると共に車体前後方向に対して車体下方側に傾斜しているので、車体上方側からの所定値以上の荷重作用時には、傾斜壁部56が低荷重で変形し、フロントフェンダパネル20は傾斜壁部56から大きな反力を受けずに変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンダパネルの内側端部と車体骨格部材との間を隠蔽するためのフェンダカバー構造、及びフェンダカバーを備えた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歩行者保護対策の一環としてフロントフェンダパネルの内側端部とエプロンアッパメンバの頂壁部との間に一定の間隙を設けた構造が知られている。このような構造では、前記間隙を残しながらエンジンルーム内における側面の見栄えを向上するために、フロントフェンダパネルの内側端部側からエプロンアッパメンバの頂壁部側へ樹脂カバーを垂下させている場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この従来構造では、エンジンルーム内の騒音によって樹脂カバーとフロントフェンダパネルとの間の車体前後方向に延びる空間が空気振動して車室内に騒音が伝わる可能性、すなわち、NV(ノイズ・バイブレーション)性能を悪化させる可能性がある。
【特許文献1】特開2005−254947公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、エンジンルーム内における側面の見栄えを向上させながら、歩行者保護性能の確保とNV性能の向上との両立を図ることができるフェンダカバー構造及び車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明のフェンダカバー構造は、車体骨格部材から車体上方側に離間して配置されるフェンダパネルの内側端部に取り付けられる上壁部と、前記上壁部の車幅方向内側の端部側から車体下方側へ延出し、略車体前後方向に延在して前記フェンダパネルの内側端部と前記車体骨格部材との間を隠蔽するカバー部と、前記上壁部及び前記カバー部の少なくともいずれか一方から、前記フェンダパネルにおける車体前部の側面を構成する外側壁部と前記カバー部との間の空隙部に延設され、車体前後方向に対して車体下方側に傾斜した傾斜壁部と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明のフェンダカバー構造によれば、フェンダパネルの内側端部に上壁部が取り付けられてカバー部がフェンダパネルの内側端部と車体骨格部材との間を隠蔽するので、例えば、フードを開いた際には、フェンダパネルの内側端部と車体骨格部材との間の隠蔽された部分が使用者によっては視認されない。また、上壁部及びカバー部の少なくともいずれか一方からは傾斜壁部が、車体前部の側面を構成するフェンダパネルの外側壁部とカバー部との間の空隙部に延設されているので、エンジンルーム内の騒音による空気振動が傾斜壁部によって抑制される。さらに、傾斜壁部は、車体前後方向に対して車体下方側に傾斜しているので、車体上方側からの所定値以上の荷重作用時には、傾斜壁部が大きな反力を発生させることなく変形する。
【0007】
請求項2に記載する本発明のフェンダカバー構造は、請求項1記載の構成において、前記傾斜壁部に連続して前記カバー部から延設されかつ前記傾斜壁部の傾斜方向に対して交差する方向に沿って形成された中間壁部が設けられ、前記傾斜壁部における前記上壁部及び前記カバー部の少なくともいずれか一方に支持される第1基部、及び前記中間壁部における前記カバー部に支持される第2基部の少なくともいずれか一方に脆弱部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明のフェンダカバー構造によれば、中間壁部が傾斜壁部に連続してカバー部から延設されかつ当該傾斜壁部の傾斜方向に対して交差する方向に沿って形成されているので、フェンダカバーの搬送時や組付時に、傾斜壁部が他部材に当る等して荷重を受けても傾斜壁部への荷重の一部が中間壁部側に支持され、傾斜壁部が変形しにくい。また、傾斜壁部における上壁部及びカバー部の少なくともいずれか一方に支持される第1基部、及び中間壁部におけるカバー部に支持される第2基部の少なくともいずれか一方に脆弱部が設けられているので、車体上方側からの所定値以上の荷重作用時には、中間壁部が設けられても大きな反力を発生させることなく変形する。
【0009】
請求項3に記載する本発明のフェンダカバー構造は、請求項2記載の構成において、前記中間壁部は、前記フェンダパネルの内側端部を前記上壁部との間に車体上下方向に挟む位置にて当該上壁部と略平行に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明のフェンダカバー構造によれば、中間壁部は、フェンダパネルの内側端部を上壁部との間に車体上下方向に挟む位置にて当該上壁部と略平行に形成されているので、車幅方向内側からのフェンダカバーの取付時には該フェンダカバーの位置決めが容易になり、また、車体上方側からの所定値以上の荷重作用時には、上壁部からフェンダパネルの内側端部を介して中間壁部へと荷重が伝達され、さらに、中間壁部から傾斜壁部へ変形荷重が伝達される。前記荷重作用時に傾斜壁部を支持する上壁部及びカバー部の少なくともいずれか一方から傾斜壁部に荷重が伝達されるのみならず、中間壁部からも傾斜壁部に荷重が伝達されるため、傾斜壁部は、効率良く変形する。
【0011】
請求項4に記載する本発明の車体前部構造は、車体前部の車幅方向両側において略車体前後方向を長手方向として配置される車体骨格部材と、前記車体骨格部材の車幅方向外側に配置されて車体前部の側面を構成する外側壁部を備えると共に、内側端部が前記車体骨格部材から車体上方側に離間して配置されたフェンダパネルと、前記フェンダパネルの内側端部と前記車体骨格部材とを連結し、車体上方側からの荷重作用に対して潰れる方向へ変形可能な衝撃吸収部材と、前記フェンダパネルの内側端部に取り付けられる上壁部と、前記上壁部の車幅方向内側の端部側から車体下方側へ延出し、略車体前後方向に延在して前記フェンダパネルの内側端部と前記車体骨格部材との間を隠蔽するカバー部と、前記上壁部及び前記カバー部の少なくともいずれか一方から、前記フェンダパネルの外側壁部と前記カバー部との間の空隙部に延設され、車体前後方向に対して車体下方側に傾斜した傾斜壁部と、を含んで構成されたフェンダカバーと、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載する本発明の車体前部構造によれば、フェンダパネルの内側端部に上壁部が取り付けられてカバー部がフェンダパネルの内側端部と車体骨格部材との間を隠蔽するので、例えば、フードを開いた際には、フェンダパネルの内側端部と車体骨格部材との間の隠蔽された部分が使用者によっては視認されない。また、上壁部及びカバー部の少なくともいずれか一方からは傾斜壁部が、車体前部の側面を構成するフェンダパネルの外側壁部とカバー部との間の空隙部に延設されているので、エンジンルーム内の騒音による空気振動が傾斜壁部によって抑制される。
【0013】
また、衝撃吸収部材がフェンダパネルの内側端部と車体骨格部材とを連結し、車体上方側からの荷重作用に対して潰れる方向へ変形可能となっているので、車体上方側からの所定値以上の荷重作用時には、フェンダパネルと共に衝撃吸収部材が変形することにより衝突時のエネルギーが吸収される。ここで、傾斜壁部は、車体前後方向に対して車体下方側に傾斜しているので、前記荷重作用時には、傾斜壁部が低荷重で変形し、フェンダパネルは傾斜壁部から大きな反力を受けずに変形する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のフェンダカバー構造によれば、エンジンルーム内における側面の見栄えを向上させながら、歩行者保護性能の確保とNV性能の向上との両立を図ることができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項2に記載のフェンダカバー構造によれば、フェンダカバーの搬送時や組付時における傾斜壁部の形状保持性能を確保しながら、車体上方側からの荷重作用時における歩行者保護性能をも確保することができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項3に記載のフェンダカバー構造によれば、フェンダカバーの組付けが容易になり、かつ、車体上方側からの所定値以上の荷重作用時に傾斜壁部を効率良く変形させることで、フェンダパネルの変形ストロークをより安定的に確保することができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項4に記載の車体前部構造によれば、エンジンルーム内における側面の見栄えを向上させながら、歩行者保護性能の確保とNV性能の向上との両立を図ることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施形態の構成)
本発明におけるフェンダカバー構造及び車体前部構造の実施形態を図面に基づき説明する。図中の矢印UPは車体の上方向、矢印FRは車体の前方向、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示す。なお、図6〜図10では、フェンダカーテン(フェンダカバー)50を示しているが、便宜上、フェンダカーテン50の取付状態における方向を、前記矢印UP、矢印FR、及び矢印INで示す。
【0019】
図1に示されるように、車体前部10におけるエンジンルーム12の車体上方側には、エンジンルーム12を開閉可能に覆う金属製のフード14が配設されている。フード14は、フード14の外板を構成するフードアウタパネル16と、このフードアウタパネル16に対してフード下方側へ離間して配置されてフード14の内板を構成するフードインナパネル18(図8参照)と、を含んで構成されている。フードアウタパネル16の外周部はフードインナパネル18(図8参照)にヘミング加工によって結合されている。
【0020】
図1に示されるフードアウタパネル16の側方、すなわち、車体前部10の側面にはフロントフェンダパネル20の外側壁部22が配設されている。フード14の外板を構成するフードアウタパネル16と車体前部10の側面を構成するフロントフェンダパネル20との境界となる見切り部26は、フード14の車幅方向両端部(車体側面上端部)において、略車体前後方向に沿って延びている。
【0021】
図8に示されるように、フロントフェンダパネル20は、前輪19(図1参照)の上方側を覆い意匠面を構成する外側壁部22と、フードアウタパネル16との見切り部26にて車幅方向内側に屈曲されてフード14の下方側に配設された内側端部(内側フランジ部であるフェンダ取付部)24と、を含んで構成されている。フロントフェンダパネル20の内側端部24の車体下方側には、車体前部10の車幅方向両側において略車体前後方向を長手方向とする車体骨格部材としてのエプロンアッパメンバ(アンダーS/M)30が配置されている。換言すれば、フロントフェンダパネル20の外側壁部22は、エプロンアッパメンバ30の車幅方向外側に配置されており、フロントフェンダパネル20の内側端部24は、エプロンアッパメンバ30から車体上方側に離間して配置されている。フロントフェンダパネル20の内側端部24とエプロンアッパメンバ30との間の一定隙は、衝突時におけるフロントフェンダパネル20の変形可能空間を形成し、歩行者保護に対する要求性能を確保するための隙間となっている。
【0022】
フード14を開いた状態のエンジンルーム12内の側部における半断面の概略斜視図である図2に示されるように、フロントフェンダパネル20の内側端部24とエプロンアッパメンバ30とは、略車体前後方向の一部において所定間隔で配置された複数(本実施形態では2個)の衝撃吸収部材としての衝撃吸収ブラケット(フェンダブラケット、エネルギー吸収ブラケットともいう)32によって連結されている。これによって、フロントフェンダパネル20の内側端部24は、衝撃吸収ブラケット32を介してエプロンアッパメンバ30側に支持されている。
【0023】
図2及び図3に示されるように、衝撃吸収ブラケット32は、車体側面視で略ハット形状を成しており、エプロンアッパメンバ30の頂壁部30Aと平行に配置されてフロントフェンダパネル20の内側端部24が固定されるブラケット頂壁部34と、エプロンアッパメンバ30の頂壁部30Aに面接触状態で載置されてスポット溶接等によって該頂壁部30Aに固定される前後一対の取付基部36と、平板状のブラケット頂壁部34と平板状の取付基部36とを車体上下方向に繋ぐと共に車体上方側からの荷重作用に対して潰れる方向へ変形可能な前後一対の支持脚部38と、によって構成されている。すなわち、衝撃吸収ブラケット32は、フロントフェンダパネル20の内側端部24とエプロンアッパメンバ30とを連結すると共に、車体上方側からの荷重作用に対して潰れる方向へ変形可能とされている。
【0024】
ここで、衝撃吸収ブラケット32のブラケット頂壁部34には、ボルト挿通孔(図示省略)が貫通形成されており、さらにその裏面側にはウエルドナット40が予め溶着されている。衝撃吸収ブラケット32のブラケット頂壁部34の上面に、フロントフェンダパネル20の内側端部24が載置された状態で、ボルト42が内側端部24の上方側から挿入されて、ウエルドナット40に螺合されることにより、フロントフェンダパネル20の内側端部24が衝撃吸収ブラケット32を介してエプロンアッパメンバ30の頂壁部30Aに取り付けられている。
【0025】
また、フロントフェンダパネル20の内側端部24の上面には、略車体前後方向に連続して延在するフェンダカバーとしてのフェンダカーテン(フェンダプロテクタともいう)50が取り付けられている。フェンダカーテン50は、樹脂材料(例えば、PP(ポリプロピレン))を用いて成形することにより一体に形成されており、比較的剛性が低く、弾性変形可能とされている。なお、フェンダカーテン50の配設は、見栄えの観点から高級車に分類される車両等、多くの車種でなされている。
【0026】
フェンダカーテン(フェンダカバー構造)50は、フロントフェンダパネル20の内側端部24の上面側に取り付けられて略車体前後方向に延在する上壁部52と、上壁部52の車幅方向内側の端部側から屈曲されて車体下方側へ延出し、略車体前後方向に延在してフロントフェンダパネル20の内側端部24とエプロンアッパメンバ30との間(隙間)を隠蔽するカバー部54と、カバー部54からフロントフェンダパネル20の外側壁部22とカバー部54との間の空隙部(スペース)44(図8(B)参照)に延設されて車体前後方向に対して車体下方側に傾斜したNV対策用の傾斜壁部56と、カバー部54から延設されて傾斜壁部56における上部(上壁部52に近接した部分)に連続しかつ傾斜壁部56の傾斜方向(矢印X方向)に対して交差する方向に沿って形成されて中間壁部58と、を含んで構成されている。
【0027】
図6及び図7に示されるように、フェンダカーテン50の上壁部52の下面側には、車体前後方向の所定位置に複数(本実施形態では2個)の取付爪60が形成されている。図8(B)及び図9(B)に示されるように、取付爪60は、フロントフェンダパネル20の内側端部24の所定位置に形成された取付孔24Aに車体上方側から挿入されて係止されている。
【0028】
図6及び図7に示されるように、フェンダカーテン50の上壁部52の上面側には、車体前後方向の所定位置に複数(本実施形態では2個)の係止片62が形成されており、この係止片62には、フェンダカーテン50の上壁部52の車体上方側に配設されるシール材28が係止されている。シール材28は、弾性材料(ゴム)によって構成され、図8(B)及び図9に示されるように、フード14の外周部における幅方向両端部に弾性変形した状態で圧接されるようになっている。
【0029】
図3に示されるように、カバー部54の車体前方側の下端部には、車体側への取付用とされる下部取付部64が設けられており、図8(A)に示されるように、この下部取付部64は、エプロンアッパメンバ30に固定されたパネル31に締結具66によって取り付けられている。
【0030】
また、図2に示されるように、傾斜壁部56及び中間壁部58は、車体前後方向にて衝撃吸収ブラケット32の間に配設されており、車体上方側からの荷重作用による変形時に変形状態の衝撃吸収ブラケット32と干渉しないように設定されている。また、図7に示されるように、傾斜壁部56及び中間壁部58は、上壁部52よりも車幅方向外側まで張り出している。
【0031】
図10に示されるように、傾斜壁部56にてカバー部54に支持される第1基部56A(カバー部54の一般面に対する接合部ともいえる部分)には、スリット56Bの形成によって車体上方側からの荷重に対して剛性が低く設定された脆弱部56Cが設けられている。スリット56Bは、傾斜壁部56の傾斜方向(矢印X方向)の中間部にて傾斜方向(矢印X方向)に沿って延びており、傾斜壁部56は、傾斜方向(矢印X方向)の両端部のみでカバー部54に接続されている。これによって、傾斜壁部56は、衝撃時に脆弱部56Cから折れ易く壊れ易い構造となっており、車体上方側からの荷重作用時における傾斜壁部56の反力は、小さく設定されている。
【0032】
中間壁部58は、傾斜壁部56の上端部から所定角度で屈曲されて形成されており、図2に示されるように、フロントフェンダパネル20の内側端部24を上壁部52との間に車体上下方向に挟む位置にて上壁部52と略平行に形成されてフェンダカーテン50の位置決め手段としても機能している。また、中間壁部58は、略車体前後方向(換言すれば、車体上方側からの荷重作用時に反力が小さく設定される方向)に沿って配置されており、図10に示されるように、中間壁部58にてカバー部54に支持される第2基部58Aには、スリット58Bの形成によって車体上方側からの荷重に対して剛性が低く設定された脆弱部58Cが設けられている。これらによって、本実施形態では、中間壁部58は、車体上方側からの荷重作用時の反力が当該荷重作用時の傾斜壁部56の反力に比べて小さくなるように設定されている。
【0033】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果を説明する。
【0034】
図2に示されるように、フロントフェンダパネル20の内側端部24に上壁部52が取り付けられてカバー部54がフロントフェンダパネル20の内側端部24とエプロンアッパメンバ30との間を隠蔽するので、フード14(図1参照)を開いた際には、フロントフェンダパネル20の内側端部24とエプロンアッパメンバ30との間の隠蔽された部分が車体前方側の作業者によっては視認されない。
【0035】
また、カバー部54からは傾斜壁部56が、車体前部10の側面を構成するフロントフェンダパネル20の外側壁部22とカバー部54との間の空隙部44に延設されているので、エンジンルーム12内の騒音による空隙部44の空気振動が傾斜壁部56によって抑制され、車両室内の乗員に騒音や振動が伝わりにくい。補足すると、傾斜壁部56が形成されていない対比構造では、エンジンルーム12内の騒音(空気振動)は、フロントフェンダパネル20の外側壁部22の裏部側(エンジンルーム12側)にて車体前後方向に形成される空隙部44に沿って伝達され、フロントピラー(Aピラー)68(図1参照)を介して車室内の乗員の耳に届くことになるが、本実施形態では、傾斜壁部56が空隙部44に伝わる空気振動を抑えるので、乗員の耳には、エンジンルーム12内の騒音(空気振動)が届きにくくなる。
【0036】
また、図5の二点鎖線に示されるように、衝突体70による車体上方側からの所定値以上の荷重Fの作用時には、フロントフェンダパネル20が車体下方側へ変形することになるが、本実施形態では、図2に示されるように、衝撃吸収ブラケット32がフロントフェンダパネル20の内側端部24とエプロンアッパメンバ30とを連結し、車体上方側からの荷重作用に対して潰れる方向へ変形可能となっているので、図4に示されるように、衝突体70による車体上方側からの所定値以上の荷重Fの作用時には、フロントフェンダパネル20と共に衝撃吸収ブラケット32が変形することにより衝突時のエネルギーが吸収される。
【0037】
ここで、図2に示されるように、傾斜壁部56は、車体前後方向に対して車体下方側に傾斜している(換言すれば、荷重F(図4参照)によってフロントフェンダパネル20が変形する方向に対して角度をもたせている)うえに、さらにカバー部54に支持される第1基部56Aに脆弱部56Cが設けられているので、図4に示されるように、前記荷重作用時には、傾斜壁部56が低荷重で変形し、フロントフェンダパネル20は傾斜壁部56から大きな反力を受けずに変形する。すなわち、例えば、フェンダカーテン(フェンダカバー)の車幅方向外側に車体上下方向に直立した縦壁部を形成して空隙部(44)における空気振動を抑えるような対比構造の場合には、衝突体による車体上方側からの所定値以上の荷重作用時にフェンダパネルは、縦壁部から大きな反力を受ける可能性があり、フェンダパネルの変形が妨げられて変形ストロークが短くなる可能性もあるが、本実施形態では、前記荷重作用時にフロントフェンダパネル20が十分に変形する。
【0038】
また、図6に示されるように、中間壁部58が傾斜壁部56に連続してカバー部54から延設されて当該傾斜壁部56の傾斜方向(矢印X方向)に対して交差する方向に沿って形成されているので、フェンダカーテン50の搬送時や組付時に、傾斜壁部56が他部材に当る等して荷重を受けても傾斜壁部56への荷重の一部が中間壁部58側に支持され、傾斜壁部56が変形しにくい(壊れにくい)ので、傾斜壁部56の形状保持性能が確保される。
【0039】
一方、図2に示されるように、中間壁部58は、カバー部54に支持される第1基部56Aに脆弱部56Cが設けられているので、図4に示されるように、車体上方側からの所定値以上の荷重Fの作用時には、中間壁部58が大きな反力を発生させることなく変位及び変形する。このため、当該荷重Fの作用時には、フェンダカーテン50、ひいてはフロントフェンダパネル20の変形は、中間壁部58の反力によっては殆ど妨げられない。
【0040】
また、図2に示されるように、中間壁部58は、フロントフェンダパネル20の内側端部24を上壁部52との間に車体上下方向に挟む位置にて当該上壁部52と略平行に形成されているので、車幅方向内側からのフェンダカーテン50の取付時には該フェンダカーテン50の位置決めが容易になり(又は組付けの目安として利用でき)、また、車体上方側からの所定値以上の荷重F(図4参照)の作用時には、上壁部52からフロントフェンダパネル20の内側端部24を介して中間壁部58へと荷重が伝達され、さらに、中間壁部58から傾斜壁部56へ変形荷重が伝達される。前記荷重F(図4参照)の作用時に傾斜壁部56を支持するカバー部54から傾斜壁部56に荷重が伝達されるのみならず、中間壁部58からも傾斜壁部56に荷重が伝達されるため、傾斜壁部56は、効率良く変形する。これによって、フロントフェンダパネル20の変形ストロークをより安定的に確保することができる。また、中間壁部58の設定によって傾斜壁部56の倒れ方向(車体上下方向)の荷重調整が可能になる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態のフェンダカバー構造を備えた車体前部構造によれば、エンジンルーム12内における側面の見栄えを向上させながら、歩行者保護性能の確保とNV性能の向上との両立を図ることができる。
【0042】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、傾斜壁部56がカバー部54からフロントフェンダパネル20の外側壁部22とカバー部54との間の空隙部44に延設されているが、傾斜壁部は、例えば、フェンダパネルの内側端部の車体下方側に一部が配置された上壁部から、車体前部の側面を構成するフェンダパネルの外側壁部と、カバー部との間の空隙部に延設されてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、傾斜壁部56の第1基部56Aにスリット56Bを形成することで脆弱部56Cを設け、中間壁部58の第2基部58Aにスリット58Bを形成することで脆弱部58Cを設けているが、第1基部又は第2基部のいずれか一方にのみ脆弱部を設ける構成としてもよい。また、例えば、上壁部及びカバー部の少なくともいずれか一方に支持される傾斜壁部の第1基部や、カバー部に支持される中間壁部の第2基部を、薄肉状や(間隔をおいて支持部を設けた)櫛歯状にすることで、第1、第2基部に脆弱部を設けてもよい。
【0044】
また、第1基部や第2基部に脆弱部を設ける代わりに又は併設して、例えば、カバー部の車幅方向外側の一般面において、第1基部との接合部及び第2基部との接合部の少なくともいずれか一方の近傍部位に(例えば、薄肉状等に形成した)脆弱部分を設けてもよい。
【0045】
さらに、上記実施形態では、中間壁部58が傾斜壁部56に連続してカバー部54から延設されており、フェンダカーテン50の搬送や組付けを考慮すれば、このような構成がより好ましいが、フェンダカバー構造及び車体前部構造は、中間壁部を設けない構成としてもよい。
【0046】
さらにまた、上記実施形態では、中間壁部58は、フロントフェンダパネル20の内側端部24を上壁部52との間に車体上下方向に挟む位置にて当該上壁部52と略平行に形成されており、フェンダカーテン50の組付けや衝突体70(図4参照)の衝突を考慮すれば、このような構成がより好ましいが、中間壁部は、フェンダパネルの内側端部を上壁部との間に車体上下方向に挟む位置に形成されていなくてもよく、また、上壁部と非平行に形成されていてもよい。
【0047】
なお、上記実施形態では、図8等に示されるように、フロントフェンダパネル20の内側端部24がフードアウタパネル16との見切り部26にて車幅方向内側に屈曲されて見切り部26が車体前部10の側面上端側に形成されているが、フェンダパネルの内側端部は、フードアウタパネルとの見切り部にて略車体下方側に屈曲されてからさらに車幅方向内側に屈曲されていてもよく、見切り部が車体前部の上面両サイド側に形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係るフェンダカバー構造及び車体前部構造が適用された車両を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフェンダカバー構造及び車体前部構造を示す半断面の概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフェンダカバー構造及び車体前部構造を衝突体の衝突による変形前の状態で示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るフェンダカバー構造及び車体前部構造を衝突体の衝突による変形後の状態で示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るフェンダカバー構造及び車体前部構造を示す図3の5−5線に沿う拡大断面図である。衝突体の衝突による変形後の状態を二点鎖線で示す。
【図6】本発明の実施形態におけるフェンダカーテンを図である。図6(A)は、エンジンルーム側に配置される側から見た図である。図6(B)は、図6(A)の6B線矢視図である。
【図7】図6(A)の7線矢視図である。
【図8】本発明の実施形態におけるフェンダカーテンを示す断面図であり、周辺構造を二点鎖線で示す。図8(A)は、図6(A)の8A−8A線断面図である。図8(B)は、図6(A)の8B−8B線断面図である。
【図9】本発明の実施形態におけるフェンダカーテンを示す断面図であり、周辺構造を二点鎖線で示す。図9(A)は、図6(A)の9A−9A線断面図である。図9(B)は、図6(A)の9B−9B線断面図である。
【図10】本発明の実施形態におけるフェンダカーテンの要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
10 車体前部
20 フロントフェンダパネル
22 外側壁部
24 内側端部
30 エプロンアッパメンバ(車体骨格部材)
32 衝撃吸収ブラケット(衝撃吸収部材)
44 空隙部
50 フェンダカーテン(フェンダカバー)
52 上壁部
54 カバー部
56 傾斜壁部
56A 第1基部
56C 脆弱部
58 中間壁部
58A 第2基部
58C 脆弱部
X 傾斜壁部の傾斜方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体骨格部材から車体上方側に離間して配置されるフェンダパネルの内側端部に取り付けられる上壁部と、
前記上壁部の車幅方向内側の端部側から車体下方側へ延出し、略車体前後方向に延在して前記フェンダパネルの内側端部と前記車体骨格部材との間を隠蔽するカバー部と、
前記上壁部及び前記カバー部の少なくともいずれか一方から、前記フェンダパネルにおける車体前部の側面を構成する外側壁部と前記カバー部との間の空隙部に延設され、車体前後方向に対して車体下方側に傾斜した傾斜壁部と、
を有することを特徴とするフェンダカバー構造。
【請求項2】
前記傾斜壁部に連続して前記カバー部から延設されかつ前記傾斜壁部の傾斜方向に対して交差する方向に沿って形成された中間壁部が設けられ、
前記傾斜壁部における前記上壁部及び前記カバー部の少なくともいずれか一方に支持される第1基部、及び前記中間壁部における前記カバー部に支持される第2基部の少なくともいずれか一方に脆弱部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のフェンダカバー構造。
【請求項3】
前記中間壁部は、前記フェンダパネルの内側端部を前記上壁部との間に車体上下方向に挟む位置にて当該上壁部と略平行に形成されていることを特徴とする請求項2記載のフェンダカバー構造。
【請求項4】
車体前部の車幅方向両側において略車体前後方向を長手方向として配置される車体骨格部材と、
前記車体骨格部材の車幅方向外側に配置されて車体前部の側面を構成する外側壁部を備えると共に、内側端部が前記車体骨格部材から車体上方側に離間して配置されたフェンダパネルと、
前記フェンダパネルの内側端部と前記車体骨格部材とを連結し、車体上方側からの荷重作用に対して潰れる方向へ変形可能な衝撃吸収部材と、
前記フェンダパネルの内側端部に取り付けられる上壁部と、前記上壁部の車幅方向内側の端部側から車体下方側へ延出し、略車体前後方向に延在して前記フェンダパネルの内側端部と前記車体骨格部材との間を隠蔽するカバー部と、前記上壁部及び前記カバー部の少なくともいずれか一方から、前記フェンダパネルの外側壁部と前記カバー部との間の空隙部に延設され、車体前後方向に対して車体下方側に傾斜した傾斜壁部と、を含んで構成されたフェンダカバーと、
を有することを特徴とする車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−222170(P2008−222170A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67337(P2007−67337)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】