説明

フェンダーライニング

【課題】 フェンダーパネルの塗装を損傷せずに支持剛性を確保でき、成形性に優れ、組付けラインへの運搬や梱包を容易に行えるフェンダーライニングを提供する。
【解決手段】 ホイールアーチ10に沿ってフェンダーパネル2の内面側に装着されるフェンダーライニング8であって、ライニング本体81と、前記ライニング本体の前記ホイールアーチに沿った縁部80から立設され前記フェンダーパネル内面を支持する少なくとも1つの支持面とを備えるものにおいて、前記支持面が、前記ライニング本体81から膨出しかつ一体成形された中空の箱形状部82の側壁面821で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイールアーチに沿ってフェンダーパネルの内面側に装着されるフェンダーライニングに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪の周囲を覆うフェンダーパネルの内面側には、走行時に回転する車輪によって巻き上げられた泥や雨水などがエンジンルームや車体パネル内側に侵入するのを防止するためにフェンダーライニングが装着されている。
【0003】
フェンダーライニングは、一般に樹脂成形品で構成され、防錆および軽量化が図られているが、ホイールアーチ部では、薄い鋼板製のフェンダーパネルの面剛性が不足する傾向にある。そこで、特許文献1、2では、フェンダーライニングのホイールアーチに沿った縁部にリブなどを設け、フェンダーパネル内面を支持してホイールアーチ部の面剛性を確保するようにしている。
【0004】
しかし、リブの細い縁端がフェンダーパネルの裏面に高い面圧で当接すると塗装が削れて錆の原因となることが懸念された。面圧を抑えるためにリブの数を増やしたり当接面を拡張したりすると、フェンダーライニングの成形性が低下するうえ、車体への組付けラインにフェンダーライニングを重ねて搬入する際にリブが邪魔になり、荷姿が嵩張り、梱包や輸送のコストが増加するばかりか、重ねる際にリブが変形する虞もある。
【0005】
【特許文献1】実開昭62−97888号公報
【特許文献2】特開平11−208514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、フェンダーパネルの塗装を損傷せずに支持剛性を確保でき、成形性に優れ、組付けラインへの運搬や梱包を容易に行えるフェンダーライニングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するため、本発明は、車両のホイールアーチに沿ってフェンダーパネルの内面側に装着されるフェンダーライニングであって、ライニング本体と、前記ライニング本体の前記ホイールアーチに沿った縁部から立設され前記フェンダーパネル内面を支持する少なくとも1つの支持面とを備えるものにおいて、前記支持面が、前記ライニング本体から膨出しかつ一体成形された中空の箱形状部の側壁面で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るフェンダーライニングは、上述の通り構成されているので、箱形状部の側壁面によって広く平滑な支持面が得られ、フェンダーパネルの塗装を損傷せずに充分な支持剛性を確保できる。しかも、箱形状部はそれ自体の剛性に優れるとともに、ライニング本体の剛性を高める補強構造にもなり、支持面を含めてホイールアーチに沿った広範囲の補強が達成されることになる。また、ライニング本体から膨出した中空の箱形状部は成形性に優れ、射出成形のみならず、真空成形やプレス成形によっても製造可能となり、製造コストを低減するうえでも有利である。
【0009】
本発明において、前記箱形状部が、前記ライニング本体の周方向の中間部に配設され、前記支持面を含む各側壁面が、前記箱形状部の下端開口に向かって広がる勾配を有している態様では、箱形状部を含めて多数のフェンダーライニングを比較的緊密に重ねた状態で梱包でき、車体への組付けラインに搬入できるため、梱包密度の向上による梱包コストおよび輸送コストの削減が見込めるとともに、成形後、梱包・輸送・組付けに至る過程での変形を防止できる利点もある。
【0010】
また、本発明において、前記ライニング本体の幅方向中間部に周方向に延在するビード形状部をさらに備え、前記箱形状部が、前記支持面と反対側で前記ビード形状部と会合している態様では、箱形状部およびその周囲の剛性が高まり、フェンダーパネル外面からホイールアーチ部に負荷される車幅方向の荷重に対して高い補強効果を得ることができる。
【0011】
さらに、本発明において、前記箱形状部の上壁面に、前記支持面から前記ビード形状部にかけて前記ライニング本体の幅方向に延在する溝形状部が設けられている態様では、車幅方向の荷重に対して一層高い補強効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両1の前輪11の周囲を覆うフェンダーパネル2付近を示す側面図である。図において、フェンダーパネル2の前下端は、車両前下部を覆うバンパーフェイシア3の側部上端に隣接しており、該バンパーフェイシア3の後部からフェンダーパネル2の下部にかけて前輪11に沿って円弧状に切欠され、ホイールアーチ10が画成されている。
【0013】
フェンダーパネル2の前端はヘッドランプを収容したグリル4の側端に隣接している。また、フェンダーパネル2の上端縁はフロントフード5の側縁に隣接し、フェンダーパネル2の上端縁の後部は、フロントピラー6の下端に隣接している。さらに、フェンダーパネル2の後縁は、フロントドア7の前縁に隣接し、その開口部を画成している。
【0014】
フェンダーパネル2は、鋼板をプレス加工して車体側面形状の一部を構成してなり、図3に示すように、ホイールアーチ部20の周囲は、ホイールアーチ部20に向けて車両側方に僅かに膨出し、さらに、ホイールアーチ部20に沿った縁部21には、ほぼ一定の幅の平坦面によりアーチ状のプロファイルが形成されている。
【0015】
フェンダーパネル2のホイールアーチ部20の内側には、図2および図3に示すように、略半円筒状のフェンダーライニング8が装着される。図3において、フェンダーパネル2のホイールアーチ部20に沿って内方に延出したフランジ22が設けられ、該フランジ22からさらに内方に延出した数カ所の延出部には固定孔27が穿設されている。
【0016】
フェンダーライニング8は、図5に示すように、車両外側に位置した縁部80を、フェンダーパネル2のフランジ22の裏側に掛けた状態で、図示しないクリップやスクリューを固定孔27、87に挿通して係止または螺着し、さらに、エンド部84を車体側に固定するとともに、車両中央側の縁部を図示しない車体パネル(エプロンサイドメンバアウタ)に固定することにより、車体に組付けられる。
【0017】
フェンダーライニング8は、全体が樹脂成形品で構成され、略部分円筒状(側面視においては逆U字状)をなすライニング本体81の幅方向中間部の車両外側寄りの部分には、図3に示すように、周方向に延在する補強用のビード形状部83が形成され、このビード形状部83により、ライニング本体81の剛性が確保されている。さらに、ライニング本体81の周方向中間部には、ビード形状部83の車両外側の側面から、ホイールアーチ部(10、20)に沿った縁部80にかけてバンク形状部86が設けられており、このバンク形状部86によって、ライニング本体81の中間部における曲げ剛性がさらに高められ、かつ、縁部80の剛性も高められている。
【0018】
上記バンク形状部86の車両後方側の起点部分には、ライニング本体81から上方に膨出した箱形状部82が設けられている。箱形状部82は、図4に示すように、ライニング本体81の縁部80から立ち上がる側壁面821と、その車両前後方向の両側でバンク形状部86から立ち上がり車幅方向(縁部80、ビード形状部83、バンク形状部86の延在方向と交差する方向)に延在する各側壁面822と、それらの上辺の間に画成された上壁面823とにより、下方にすなわち前輪11側に開口した中空の箱形状に形成される一方、車両中央側ではビード形状部83と会合し、箱形状部82の中空部は、ビード形状部83の中空部に連通している。
【0019】
箱形状部82の上記側壁面821は、図5に示すように、フェンダーパネル2の平坦な縁部21の裏面に当接する支持面を構成しており、箱形状部82は、ビード形状部83およびバンク形状部86からフェンダーパネル2の裏面に突き当てられる車幅方向の支持構造を構成している。さらに、箱形状部82の側壁面821および上壁面823の車両前後方向の中央部には、側壁面821からビード形状部83にかけて車幅方向に延在する溝形状部824が形成されており、この溝形状部824によって、上記支持構造の車幅方向の座屈強度および曲げ剛性が確保されている。
【0020】
上記のように構成されたフェンダーライニング8は、フェンダーパネル2に装着した状態では、図2に示すように、フェンダーパネル2のホイールアーチ部20のほぼ中央部に箱形状部82が配置されるように構成されている。フェンダーパネル2のホイールアーチ部20の中間部は、他の部材に連結されておらず、パネルに捩れや変形が生じ易いが、このような剛性を確保し難い部位に、比較的広い支持面(821)が配置され、かつ、箱形状部82によりライニング本体81の剛性が高められることで、フェンダーパネル2を効果的に補強することが可能となる。
【0021】
また、箱形状部82がフェンダーライニング8の中間部に配置されることにより、図2に示されるように、フェンダーライニング8の上下方向にアンダーカットを生じず、箱形状部82に膨出量を確保しても成形性が良好に維持される。特に、本発明のフェンダーライニング8は、支持面(821)が中空の箱形状部82で構成されているため、射出成形のみならずシート状の樹脂ブランクを用いた真空成形やプレス成形が可能となり、製造コスト面でも有利である。
【0022】
さらに、箱形状部82の各側壁面821、822が下端開口に向かって広がる勾配を有することにより、成形性がさらに良好になることは勿論、多数のフェンダーライニング8を、それらの箱形状部82を含めて重ねることができ、成形工場から車体への組付けラインに搬入する際に、フェンダーライニング8の荷姿をコンパクトにできる。また、多数のフェンダーライニング8を重ね合わせることにより、変形を防ぐこともできる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能である。
【0024】
例えば、上記実施形態では、本発明を、車両1の前輪11の周囲を覆うフェンダーパネル2のフェンダーライニング8として実施する場合を示したが、後輪などのフェンダーライニングとしても実施できる。また、バンク形状部86を省略して、ライニング本体81から膨出した箱形状部82を形成することもできるが、側壁面822が広がるうえ起伏が激しくなるので、真空成形やプレス成形を行う場合は、バンク形状部86を設定して箱形状部82の起伏を抑えることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が適用される車両前部のフェンダーパネル付近を示す側面図である。
【図2】本発明実施形態のフェンダーライニングの装着状態を示す側面図である。
【図3】本発明実施形態のフェンダーライニングのフェンダーパネルへの組付けを示す斜視図である。
【図4】箱形状部を示す要部拡大斜視図である。
【図5】図2のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 車両
2 フェンダーパネル
3 バンパーフェイシア
8 フェンダーライニング
10 ホイールアーチ
11 前輪
20 ホイールアーチ部
21 縁部
22 フランジ
80 縁部
81 ライニング本体
82 箱形状部
83 ビード形状部
86 バンク形状部
821 側壁面(支持面)
822 側壁面
823 上壁面
824 溝形状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のホイールアーチに沿ってフェンダーパネルの内面側に装着されるフェンダーライニングであって、ライニング本体と、前記ライニング本体の前記ホイールアーチに沿った縁部から立設され前記フェンダーパネル内面を支持する少なくとも1つの支持面とを備えるものにおいて、前記支持面が、前記ライニング本体から膨出しかつ一体成形された中空の箱形状部の側壁面で構成されていることを特徴とするフェンダーライニング。
【請求項2】
前記箱形状部が、前記ライニング本体の周方向の中間部に配設され、前記支持面を含む各側壁面が、前記箱形状部の下端開口に向かって広がる勾配を有していることを特徴とする請求項1に記載のフェンダーライニング。
【請求項3】
前記ライニング本体の幅方向中間部に周方向に延在するビード形状部をさらに備え、前記箱形状部が、前記支持面と反対側で前記ビード形状部と会合していることを特徴とする請求項1または2に記載のフェンダーライニング。
【請求項4】
前記箱形状部の上壁面に、前記支持面から前記ビード形状部にかけて前記ライニング本体の幅方向に延在する溝形状部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のフェンダーライニング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−280042(P2009−280042A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133110(P2008−133110)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】