説明

フォトクロミック性基板収納容器

フォトクロミック性不要電磁放射線露光表示装置を含む半導体ウェハ、基板又はレチクルの保管及び輸送用収納容器(10,24)。フォトクロミック材料は収納容器の少なくとも一部を製造するために使用されるプラスチックに組み入れられる。フォトクロミック材料は選択された波長範囲の光の露光に呼応して色又は暗さを変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板を運搬、輸送及び保管するウェハ収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
加工の間において、半導体ウェハは様々な機械でまた様々な場所で、多くの加工工程にかけられる。ウェハはこれら様々な工程を行うために、作業ステーションから作業ステーションへ、また設備から設備へ運搬されなければならない。半導体ウェハの保管及び輸送に対処する、様々な種類の輸送機器が知られている。一般的に、このような機器はウェハを軸方向整列アレイで保持する。ウェハが設備から設備へ輸送される所では、ウェハは長時間に亘り太陽光に曝されてしまう。太陽光は紫外線波長の中に相当量の電磁放射線を含む。ウェハ収納容器はまた、他の源から紫外線に曝されてしまう。
【0003】
現用且つ最先端の半導体リソグラフィ製造加工では、130から150ナノメータ程度の寸法範囲にある主要構成を備えた回路を撮像するために、遠紫外線レーザを使用する。近い将来に、主要構成は約70ナノメータの寸法範囲まで縮小することが予想される。
【0004】
製造加工において、ウェハにはフォトレジストがスピンコートされる。次にフォトレジストはウェハに接着するように焼成される。次に電磁放射線を使用して、必要な回路の画像がウェハに写される。今日、この電磁放射線はレーザからの一般的な遠紫外線である。フォトレジスト材料は使用される加工に応じて、回路の陰像又は陽像のいずれかを形成するために、紫外線に曝されることにより化学変換される。次に不要なフォトレジスト材料がエッチングにより取り除かれて、ウェハ上には集積回路パターンが残される。
【0005】
上述したように、半導体加工において使用されるフォトレジストは紫外線波長の光を感知する。現代の集積回路の主要要素は寸法が小さいことから、制御されていない紫外線に非常に小さく露光されるだけで、ウェハは破損してしまう。その結果、製造加工において、フォトレジストは慎重に制御された状態にある光の紫外線波長に露光されることだけが望まれる。意図しない露光は、露光した後のウェハの有用性を損なう。
【0006】
従って、ウェハの取り扱い、保管及び輸送において用いられるウェハ輸送用収納容器は、フォトレジスト材料が被覆されたウェハへの光の影響を阻止するために、紫外線を遮断する材料、一般的にはプラスチックから形成される。また、ウェハ輸送用収納容器は、輸送用収納容器が空であるか或いは一杯であるかを作業者が判断し得るように、少なくとも部分的に可視光に対して透過的であることが望まれる。従って、輸送用収納容器は少なくとも一部が可視光に対して透過的であるが、紫外線に対しては相対的に透過的でない材料から構成されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それにも拘わらず、紫外線の遮断は決して絶対的ではなく、ウェハ収納容器を可能な限り少なく紫外線に露光させることが望ましい。従って、ウェハ収納容器自体が作業者に、ウェハ収納容器が目下紫外線に露光されていることを警告するならば、半導体業界にとって有益であろう。このウェハ搬送容器は作業者に、ウェハ収納容器を紫外線から保護された場所へ移動させるように警告する。
【0008】
また、同様な問題は、コンピュータハードドライブディスク及びリソグラフィ操作用のレチクルの保管及び加工に関しても存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は紫外線露光フォトクロミック表示装置を含む半導体ウェハ、基板、又はレチクルの保管及び輸送機器を提供することにより、上記の問題を解決する。
フォトクロミック材料は太陽光又は別の紫外線源に露光された時に暗くなる。フォトクロミック材料は2つの異なった状態の間で移行する。材料が透明無色な低エネルギ状態と、材料が着色される作動状態である。適切なエネルギレベルの電磁放射線がフォトクロミック材料に入射した時である。
【0010】
本発明は半導体ウェハ、ディスク、又はレチクル輸送及び保管用収納容器を製造するために使用されるプラスチックに、フォトクロミック材料を組み入れる工程を含む。
作用において、フォトクロミック性収納容器は他のいかなる半導体輸送用収納容器と同様に、半導体ウェハを運搬及び保管するために使用される。しかしながら、収納容器が紫外線を感知するフォトレジスト層に長時間で影響を与えかねない太陽光又は他の紫外線源に露光されたままであると、輸送用収納容器は色が暗くなる。この暗色化は、収納容器が紫外線に露光されており、フォトレジスト材料への悪影響を回避するために、可能な限り速やかにその状況から取り除かれるべきだということを輸送作業者へ即時に知らせる。
【0011】
従来技術では、フォトクロミック特性を呈する有機分子を多数の光透過体へ導入することが知られている。
フォトクロミック性高分子の製造は、高分子分野において知られている。色素をウェハキャリア等の高分子体へ導入するために利用可能な選択肢には、例えば(1)高分子表面と接触する流体媒体からの含浸又は吸収、(2)表面に塗布された樹脂塗膜の色素組み入れ、(3)高分子表面と接触する固体又はゲルからの含浸又は拡散移動、(4)高分子体が製造される単量体又はサーモプラスチックの色素分散。
【0012】
作用において、フォトクロミック性収納容器は、他の周知の基板収納容器と同様な方法で、半導体ウェハ、ディスク又はレチクルを運搬及び保管するために使用される。しかしながら、紫外線を感知するフォトレジスト層に長時間で影響を与えかねない太陽光又は他の紫外線源に収納容器が露光されたままであると、輸送用収納容器は色が暗くなる。この暗色化は、収納容器が紫外線に露光されており、フォトレジスト材料への悪影響を回避するために、可能な限り速やかにその状況から移動させられるべきだということを輸送作業者へ即時に知らせる。
【0013】
また、暗色化は収納容器に入射するUVを減少させる機能的効果を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照すると、一部分が透明なウェハ収納容器10は一般的に箱体12及びドア14を含む。箱体12はウェハ保持具18を持ち運ぶ際に使用するハンドル16を含むと共に、ウェハ保持具18を包囲する。ウェハ保持具18は多数のウェハを軸方向整列アレイ状態で支持するように構成される。
【0015】
この例では、箱体12は透明部20及び不透明部22を含む。好適には、透明部20は紫外線に露光されると色又は暗さを変化させるフォトクロミック材料から形成される。透明部20はドア14の一部、又はウェハ収納容器10へのより小さな窓であってもよい。
【0016】
次に図2を参照すると、大部分が透明なウェハ収納容器24は一般的に箱体26及びドア28を含む。ウェハ収納容器24は、軸方向に整列させられた複数のウェハを含むウェハアレイ30を包囲する。箱体26又はドア28のいずれかがハンドル32を支持する。この例証実施形態では、ウェハ収納容器24はその構造体の大部分に亘り実質的に透明で
ある。ウェハ収納容器24の少なくとも一部が、紫外線の露光に呼応して色又は暗さを変化させるフォトクロミック材料から形成される。
【0017】
作用において、一部が透明なウェハ収納容器10又は大部分が透明なウェハ収納容器24は、ウェハを作業場所間で運搬するために使用される。一部が透明なウェハ収納容器10又は大部分が透明なウェハ収納容器24のいずれかが長時間に亘り紫外線に露光されると、収納容器のフォトクロミック部分が暗くなり又は変色して、このことを収納容器を扱う作業者に警告する。従って、この紫外線の露光を知らせる直ちに明らかになる信号を受けた作業者は、ウェハに有害となる重大な紫外線露光を阻止するために収納容器の位置を変え、或いは暗色化自体によって入射UV放射線を減少させると共に基板又はレチクルの損傷を回避し又は最小にする。
【0018】
本発明はレチクルキャリアにフォトクロミック材料を含む。レチクルキャリアは米国特許第6,513,654号及び第6,216,873号に示されており、これらの特許は参照により組み入れられる。同様に、本発明は米国特許第4,557,382号及び第5,253,755号に示すようなディスク輸送容器を含む。これらの特許は参照によりここに組み入れられる。
【0019】
本発明はその中心特質から逸脱することなく、他の特定形状に具体化されてもよく、従って例証実施形態は全ての点において、例証的であって限定的ではないとみなされ、本発明の範囲を指示するためには、前述の記載よりもむしろ添付の請求の範囲が参照されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一部が透明な例証ウェハ収納容器を示す図。
【図2】大部分が透明な例証ウェハ収納容器を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハ、ディスク又はレチクルを含む物体を運搬するキャリアであって、
開閉可能な閉鎖容器を含む収納容器と、該収納容器は前記物体を支持し、包囲し且つ保護するように形成され、
選択された波長又は波長範囲の周囲の電磁放射線の露光に呼応して、低エネルギ状態から高エネルギ状態への移行のために色又は暗さを変化させるフォトクロミック材料から少なくとも部分的に形成される少なくとも部分的に透明な部分と
を含むことを特徴とするキャリア。
【請求項2】
前記収納容器は箱体及びドアを含むことを特徴とする請求項2に記載のキャリア。
【請求項3】
前記少なくとも部分的に透明な部分は前記箱体の一部であることを特徴とする請求項2に記載のキャリア。
【請求項4】
前記少なくとも部分的に透明な部分は前記ドアの一部であることを特徴とする請求項2に記載のキャリア。
【請求項5】
前記選択された波長又は波長範囲は紫外線を含むことを特徴とする請求項1に記載のキャリア。
【請求項6】
前記選択された波長又は波長範囲は遠紫外線を含むことを特徴とする請求項1に記載のキャリア。
【請求項7】
前記ドアの略全体が前記フォトクロミック材料から形成されることを特徴とする請求項2に記載のキャリア。
【請求項8】
前記箱体の略全体が前記フォトクロミック材料から形成されることを特徴とする請求項2に記載のキャリア。
【請求項9】
前記キャリアの窓は前記フォトクロミック材料から形成されることを特徴とする請求項1に記載のキャリア。
【請求項10】
半導体ウェハ、ディスク又はレチクルを含む物体を運搬するキャリアが不要な電磁放射線に露光されたか否かを判定する方法であって、
開閉可能な閉鎖容器及び少なくとも部分的に透明な部分を含む収納容器に前記物体を置く工程と、該収納容器は該物体を支持し、包囲し且つ保護するように形成され、該少なくとも部分的に透明な部分は選択された波長又は波長範囲の周囲の電磁放射線の露光に呼応して、低エネルギ状態から高エネルギ状態への移行のために色又は暗さを変化させるフォトクロミック材料から形成され、
前記収納容器を運搬する工程と、
色又は暗さの変化を識別するために前記フォトクロミック材料を観察する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
紫外線を含むように前記波長を選択する工程を更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
遠赤外光を含むように前記波長を選択する工程を更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記収納容器は箱体およびドアを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記透明な部分は前記箱体の一部であることを特徴とする請求項13に記載のキャリア。
【請求項15】
前記透明な部分は前記ドアの一部であることを特徴とする請求項13に記載のキャリア。
【請求項16】
半導体ウェハ、ディスク又はレチクルを含む物体を不要な電磁放射線の露光から保護する方法であって、
前記物体を開閉可能な閉鎖容器を含む収納容器に置く工程と、
前記物体を支持し、包囲し且つ保護するように前記収納容器を形成する工程と、
選択された波長又は波長範囲の周囲の電磁放射線の露光に呼応して、低エネルギ状態から高エネルギ状態への移行のために色又は暗さを変化させるフォトクロミック材料から少なくとも部分的に形成される少なくとも部分的に透明な部分を含むように前記収納容器を形成する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記フォトクロミック材料が不要な電磁放射線を吸収し又は反射させるべく色又は暗さを変化させるように、該フォトクロミック材料を選択する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
色又は暗さの変化を識別するために前記フォトクロミック材料を観察する工程と、
前記収納容器を不要な電磁放射線の露光から移すように実行する工程と
を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
紫外線を含むように前記波長を選択する工程を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
遠紫外線を含むように前記波長を選択する工程を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記収納容器は箱体及びドアを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも部分的に透明な部分は前記箱体の一部であることを特徴とする請求項21に記載のキャリア。
【請求項23】
前記少なくとも部分的に透明な部分は前記ドアの一部であることを特徴とする請求項21に記載のキャリア。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−509013(P2007−509013A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536868(P2006−536868)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/035217
【国際公開番号】WO2005/040011
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(505307471)インテグリス・インコーポレーテッド (124)
【Fターム(参考)】