説明

フォトマスクブランクス及びフォトマスク

【課題】高感度で硬化し、且つ、保存安定性に優れたフォトマスクブランクス、及び、該フォトマスクブランクスを用いて作製された高解像度で画像形成可能であり、画像エッジ部の直線性の高いフォトマスクを提供することを目的とする。
【解決手段】基板上に、(A)分子内に下記一般式(I)で表される部分構造を有する増感色素と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含む感光性組成物層を有するフォトマスクブランクス。式(1)中、Yは隣接する窒素原子および炭素原子と共に含窒素ヘテロ環を形成する非金属原子団を表す。Xは一価の非金属原子団を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトマスクブランクス及びフォトマスクに関する。より詳細には、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いうるフォトマスクを作製しうるフォトマスクブランクス、それにより得られたフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いられるフォトマスクとしては、金属クロム層(Cr層)を設けたCrマスク、ハロゲン化銀乳剤層を設けたEmマスク(エマルションマスク)が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
Crマスクは、石英やガラス等の透明基材上にクロム層をスパッタリング法により形成後、この上にエッチングレジストを塗布などにより設け、HeCdレーザー(442nm)などによる露光、アルカリ水溶液などでの現像によるエッチングレジストのパターニング、クロムのエッチング、及びエッチングレジストの剥離を行って作製される。Crマスクは、ピンホール等の欠陥修正可能で、高解像度、高耐久性(耐傷性)、高洗浄性にも優れるというメリットを有する。その一方、Crマスクは、作製工程が煩雑なため高価であり、また、製造プロセスにおいてクロムエッチングが行われることに起因する廃液処理等の環境面の問題も有している。
【0004】
Emマスクは、ハロゲン化銀乳剤層(感光性組成物層)を石英やガラス等の透明基材上に設け、YAGレーザーなどにより露光、現像、定着処理で作製されるものである。Emマスクの作製に用いられるハロゲン化銀乳剤は、光に対する感度が高いため、露光エネルギーが小さくてもよく(〜0.1mJ/cm)、また、環境にも優しく、安価なフォトマスクブランクスである。この反面、Emマスクは、感光性材料としてハロゲン化銀を用いるため、解像度が余り高くなく(3μm程度)、極微細なパターンを作製するには不向きであり、また感光性組成物層がゼラチン膜であるため耐久性に乏しい。また、Emマスクは、欠陥修正が実質的に困難であるという欠点を有している。
【0005】
また、他のタイプのフォトマスクとして、黒色顔料等の黒色材料を含有し、かつ近紫外光ないし可視光で画像形成が可能な感光性組成物層を有するフォトマスクブランクスを用いて作製されるものが知られている(特許文献1、2参照。)。該フォトマスクブランクスが有する感光性組成物層は、フォトマスク作製時に照射される近紫外ないし可視領域における吸光度が小さいため高感度であり、一方、フォトマスク使用時に照射される紫外領域の光の吸収特性が良好なため、感光性組成物層を露光・現像することにより、解像度に優れたフォトマスクを得ることができる。また、このフォトマスクは、金属膜を必要とせず、レリーフ画像であるため欠陥修正を簡便に行うことができ、感度や解像度等のバランスがよく、安価で環境への負荷も小さいという特徴も有する。
【0006】
ところで、フォトマスクの作製に遮光材料を感光性組成物層に含有するフォトマスクブランクスを用いる場合、露光により画像形成を行う際に遮光材料が露光光を吸収してしまうために、感光性組成物層の深部である基板近傍では、十分な硬化が行われにくいという問題があった。さらに、通常、光ラジカル重合系は高感度であるが、空気中の酸素による重合阻害により感度低下するため、感光性組成物層の上に酸素遮断性の層を設ける手段が取られている。しかし、酸素遮断性を高くしすぎると、保存時暗重合反応によるカブリが発生しやすくなり長期保存適性が劣化する。また高濃度に遮光材料を含有した系においては露光光が感光層表面付近までしか到達しないため、感光層表面部のみ硬化が進み、それより深い領域はほとんど硬化しなくなるために、現像時に感光性組成物層の基板近傍部分が側面からえぐり取られて断面が逆台形のようになり、形成された画像の解像度、画像エッジ部の直線性が劣化するという問題があることがわかった。
【0007】
レーザーに関しては、近年、例えばInGaN系の材料を用い、350nmから450nm域で連続発振可能な半導体レーザーが実用段階となっている。このような短波光源を用いた走査露光システムは、半導体レーザーが、構造上、安価に製造できるため、充分な出力を有しながらも、経済的なシステムを構築できるといった長所を有する。さらに、短波光源を用いた走査露光システムは、従来のFD−YAGレーザー(532nm)やArレーザー(488nm)を使用するシステムに比較して、より明るいセーフライト下での作業が可能な、短波長領域に感光性を有する感光材料が使用できる。
【0008】
このようなレーザーによる走査露光に供されるフォトマスクブランクスは、レーザー光照射部と未照射部において、形成される画像のオン−オフを拡大する、さらには感光性組成物層を構成する光硬化性組成物における高感度と保存安定性の両立、という課題がある。
露光により重合硬化する感光性組成物について、高感度化するという観点からは、例えば、高感度の開始剤を用いる方法、或いは、画像形成に用いる各種のレーザーの波長領域に対応した感光性を持たせたり、感度を改良したりする目的で、当該波長領域に吸収領域を持つ増感色素を使用する手段などが検討されている。
【0009】
具体的には、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が、特に紫外領域において好適な光重合開始剤として古くから知られている。ヘキサアリールビイミダゾール系化合物と、ケトクマリン系化合物(例えば、特許文献3参照。)やジアルキルアミノベンゼン系化合物(例えば、特許文献4参照。)等の増感色素と、を組合せることにより高感度化する技術が提案されている。また、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物と、ジアルキルアミノベンゼン系化合物等の増感色素と、エチレン性不飽和結合を側鎖に有する特定の(メタ)アクリル系重合体の高分子結合材等を組み合わせた感光性組成物も提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0010】
しかしながら、これらにおける感光性組成物においても、青紫色領域における感度に、依然として不充分であり改良の余地を残すものであった。特にジアルキルアミノベンゼン系化合物は塗布溶剤による溶解性が低く、例えば光重合性組成物を支持体に塗布する際の溶媒が限定されたり、塗布後に時間が経過すると、増感色素が結晶化して感度が低下したりするなどの問題があり改良が必要であった。
【0011】
一方、カルボニル基を持つ複素環化合物を増感色素として用いることで、高感度かつセーフライト適性に優れた平板印刷版原版の作製方法が提案されている(特許文献6参照)。
【0012】
なお高感度と保存安定性を両立し、さらに得られるフォトマスクが高解像度であり画像エッジ部の直線性を満たすフォトマスクブランクスは未だ提供されておらず、従来にはない新たな技術が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−283914号公報
【特許文献2】特開2001−343734号公報
【特許文献3】特公平5−88244号公報。
【特許文献4】特公平6−29285号公報。
【特許文献5】欧州特許出願公開第1148387号明細書。
【特許文献6】特開2007−206216号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】教育文科会編、「フォトファブリケーション」、日本フォトファブリケーション協会発行、67〜80ページ、1992年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、遮光材料を大量に含む場合であっても露光により高感度で硬化し、且つ、保存安定性に優れたフォトマスクブランクス、及び、該フォトマスクブランクスを用いて作製された高解像度で画像形成可能であり、画像エッジ部の直線性の高いフォトマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、鋭意検討した結果、前記一般式(I)で表される部分構造を有する特定の増感色素を用いることで、上記課題を課題しうることを見出し、本発明を完成した。
本発明の構成は、以下に示す通りである。
【0017】
<1>基板上に、(A)分子内に下記一般式(I)で表される部分構造を有する増感色素(以下適宜、特定増感色素と称する。)と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含む感光性組成物層を有するフォトマスクブランクス。
【0018】
【化1】

【0019】
一般式(1)中、Yは隣接する窒素原子および炭素原子と共に含窒素ヘテロ環を形成する非金属原子団を表す。Xは一価の非金属原子団を表す。
【0020】
<2>前記感光性組成物層上に、さらに、25℃における酸素透過性が1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下である酸素遮断性層を有する前記<1>に記載のフォトマスクブランクス。
<3>前記基板が、厚み0.1mm以上20mm以下である透明なガラスである前記<1>または<2>に記載のフォトマスクブランクス。
【0021】
<4>前記(B)重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物である前記<1>から<3>のいずれかに記載のフォトマスクブランクス。
<5>前記<1>から<4>のいずれかに記載のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を有するフォトマスク。
【0022】
<6>前記露光が、波長350nm以上450nm以下の光により行われる前記<5>に記載のフォトマスク。
<7>前記遮光層の膜厚が0.8μm以上2.0μm以下であり、かつ、波長365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上である前記<5>または<6>に記載のフォトマスク。
【0023】
<8>前記遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が0.1μm以上20μm以下である前記<5>から<7>のいずれかに記載のフォトマスク。
【0024】
本発明のフォトマスクブランクスが発揮する高感度及び優れた保存安定性は、感光性組成物層が特定増感色素を必須成分として含有することに依拠するものである。その作用機構は明らかではないが、以下のように推測される。
まず、特定増感色素が高感度化に寄与する一つの要因としては、特定増感色素は、高強度の発光(ケイ光及び/又はリン光)スペクトルを示すことから、該特定増感色素は励起状態の寿命が比較的長いため、重合開始剤との反応の効率化に作用していることが推測される。また特定増感色素が高感度化に寄与するその他の要因としては、特定増感色素の分子構造が、増感反応初期過程(電子移動等)の効率化や、さらに、重合開始剤分解にいたる後に引き続き進行する反応の効率化に寄与している可能性が考えられる。
次に、特定増感色素が保存安定性の向上に寄与する要因としては、該特定増感色素は自然経時条件下における色素凝集、会合等が少ないことから、増感効率の低下が抑制されるものであることが影響しているものと推測される。増感色素は、光開始反応において重要な役割を果たしており、感光性組成物中での凝集又は会合は、露光によるラジカル発生量の減少(感度減少)、即ち保存安定性の減少に大きく影響する。したがって色素凝集、会合等が少ない本発明に係る特定増感色素は、感光性組成物層、即ちフォトマスクブランクスの保存安定性の向上に大きく寄与しているものと考えられる。
【0025】
さらに本発明のフォトマスクブランクスを用いて作製されたフォトマスクは、高解像度で画像形成が可能であり、驚くべきことに、画像エッジ部の直線性に優れたものである。
その作用機能は明らかでないが、遮光材料を含み、フィルター効果により十分な露光がなされない場合でも効果的に増感色素から開始剤への増感がなされ、フィルター効果による直線性低下効果を低減できたと考えられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、遮光材料を大量に含む場合であっても露光により高感度で硬化し、且つ、保存安定性に優れたフォトマスクブランクスを提供することができる。
さらに、本発明のフォトマスクブランクスを用いることで、高解像度で画像形成可能であり、画像エッジ部の直線性の高いフォトマスクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
[フォトマスクブランクス]
本発明のフォトマスクブランクスは、基板上に、(A)分子内に下記一般式(I)で表される部分構造を有する増感色素(特定増感色素)と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物(以下、適宜、エチレン性不飽和化合物と称する。)と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含む感光性組成物層を有することを特徴とする。また、目的に応じて、感光性組成物層上には、酸素遮断性層を設けることもできる。
【0028】
【化2】

【0029】
一般式(1)中、Yは隣接する窒素原子および炭素原子と共に含窒素ヘテロ環を形成する非金属原子団を表す。Xは一価の非金属原子団を表す。
【0030】
(感光性組成物層)
フォトマスクブランクスが有する感光性組成物層は、少なくとも遮光性材料を含有し且つ紫外光ないし可視光で画像形成が可能な層である。即ち、感光性組成物層は、近紫外光ないし可視光による像様の露光後、現像液を用いて現像処理することにより、画像形成が可能な層である。
感光性組成物層は、環境問題上アルカリ現像型が好ましく、本発明においては、露光部分が硬化してアルカリ現像液に不溶化するネガ型の層を用いている。
【0031】
ネガ型の感光性組成物層は、露光により硬化して、遮光層を形成する層であり、少なくとも、(A)分子内に一般式(I)で表される部分構造を有する増感色素(特定増感色素)と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含む感光性組成物により形成される層である。
まず、本発明の特徴的成分である(A)特定増感色素について述べる。
【0032】
<(A)分子内に一般式(I)で表される部分構造を有する増感色素(特定増感色素)>
本発明の感光性組成物層に用いられる(A)特定増感色素は、特に波長390〜430nmの青紫色領域に分光感度の吸収極大を有するものが好ましく、その領域の光を効率よく吸収すると共に、その光励起エネルギーを感光性組成物中に含有される種々の(B)重合開始剤に伝え、その分解を効率良く引き起こし、非常に高い感光性を示す。
該(B)重合開始剤は分解して、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物の重合を生起、進行させる活性ラジカルを発生させる。(A)特定増感色素はこのような増感機能を有する色素であり、下記一般式(I)で表される部分構造を有する化合物が用いられる。
【0033】
一般に、増感色素/重合開始剤からなる光開始系の増感機構は(a)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物への電子移動反応に基づく、開始剤化合物の還元的分解、(b)開始剤化合物から増感色素の電子励起状態への電子移動に基づく、開始剤化合物の酸化的分解、(c)増感色素の電子励起状態から開始剤化合物へのエネルギー移動に基づく、開始剤化合物の電子励起状態からの分解、といった経路が知られるが、(A)特定増感色素は、これら何れのタイプの増感反応をも優れた効率で引き起こすものである。
【0034】
本発明に係る(A)特定増感色素は分子内に下記一般式(1)で表される部分構造を有する増感色素である。
【0035】
【化3】

【0036】
一般式(1)中、Yは隣接する窒素原子および炭素原子と共に含窒素ヘテロ環を形成する非金属原子団を表す。Xは一価の非金属原子団を表す。
【0037】
前記一般式(1)について詳しく説明する。
Yは隣接する窒素原子および炭素原子と共に含窒素ヘテロ環を形成する非金属原子団を表す。好ましい含窒素ヘテロ環の例としては、例えば、F.M. Hamer著、 The Chemistry of Heterocyclic Compounds18巻 "The Cyanine Dyes and Related Compounds" (1964),JohnWilley & Sons(New York)に記載されている様な、シアニンベース(Base)化合物群を構成する含窒素ヘテロ環群を挙げることができる。
【0038】
含窒素ヘテロ環群の具体例としては、チアゾール類(例えば、チアゾール、4−メチルチアゾール、4ーフェニルチアゾール等)、ベンゾチアゾール類(例えば、ベンゾチアゾール、4−クロロベンゾチアゾール、5−クロロベンゾチアゾール等)、
【0039】
ナフトチアゾール類(例えば、ナフト[1,2]チアゾール、ナフト[2,1]チアゾール、5−メトキシナフト[2,1]チアゾール等)、チアナフテノ−7’,6’,4,5−チアゾール類(例えば、4’−メトキシチアナフテノ−7’,6’,4,5−チアゾール等)、オキサゾール類(例えば、4−メチルオキサゾール、5−メチルオキサゾール等)、ベンゾオキサゾール類(ベンゾオキサゾール、5−クロロベンゾオキサゾール等)、
【0040】
ナフトオキサゾール類(例えば、ナフト[1,2]オキサゾール、ナフト[2,1]オキサゾール、等)、セレナゾール類(例えば、4−メチルセレナゾール、4−フェニルセレナゾール、等)、ベンゾセレナゾール類(例えば、ベンゾセレナゾール、5−クロロベンゾセレナゾール等)、ナフトセレナゾール類(例えば、ナフト[1,2]セレナゾール、ナフト[2,1]セレナゾール、等)、チアゾリン類(例えば、チアゾリン、4−メチルチアゾリン、等)、2−キノリン類(例えば、キノリン、3−メチルキノリン等)、4−キノリン類(例えば、キノリン、6−メトキシキノリン等)、1−イソキノリン類(例えば、イソキノリン、3,4−ジヒドロイソキノリン、等)、3−イソキノリン類(例えば、イソキノリン等)、イミダゾール類(例えば、イミダゾール等)、
【0041】
ベンズイミダゾール類(例えば、1,3−ジエチルベンズイミダゾール等)、3,3−ジアルキルインドレニン類(例えば、3,3−ジメチルインドレニン、3,3,5,−トリメチルインドレニン等)、2−ピリジン類(例えば、ピリジン、5−メチルピリジン、等)、4−ピリジン(例えば、ピリジン等)等が挙げられ、さらに、ジアゾール類(例えば、1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール等)、トリアゾール類(例えば、1,2,4−トリアゾール等)、の他、ピラジン類、キノキサリン類、トリアジン類(例えば1,3,5−トリアジン等)、フェナントリジン、2Hピロール類、ピラゾール類、イソチアゾール類、イソオキサゾール類、ピリミジン類、ピリダジン類、インダゾール類、フタラジン類、ナフチリジン類、キナゾリン類、シンノリン類、プテリジン類、β−カルボリン類、ペリミジン類、フラザン類等も好適に用いられる。
なかでもナフトオキサゾール類、ナフトチアゾール類、ベンゾオキサゾール類、ベンゾチアゾール類が好ましい。
【0042】
これらのYが隣接する窒素原子および炭素原子と共に形成する含窒素ヘテロ環類は、それを構成する水素原子を任意の置換基に置き換えることもできる。そのような置換基の好ましい例としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基
【0043】
スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、ホスフォノ基(−PO32)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(aryl)2)及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、
【0044】
ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
これらの各置換基は、導入可能な場合にはさらに置換基を有していてもよい。
【0045】
このように、一般式(1)における含窒素ヘテロ環は、それを構成する水素原子を任意の置換基に置き換えることができ、導入しうる置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、または2−ノルボルニル基等を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0046】
一般式(1)における含窒素ヘテロ環に導入しうる置換基としての置換アルキル基としては、上述したアルキル基の水素原子のいずれか少なくとも1つをさらに置換したものが挙げられる。
置換アルキル基の置換基は任意であるが、好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基等を挙げることができる。
【0047】
一般式(1)における含窒素ヘテロ環に導入しうる置換基としてのアリール基の具体例としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、またはフルオレニル基等を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基またはナフチル基がより好ましい。
【0048】
一般式(1)における含窒素ヘテロ環に導入しうる置換基としての置換アリール基の具体例としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが用いられる。置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、等を挙げることができる。
【0049】
一般式(1)における含窒素ヘテロ環に導入しうる置換基としてのヘテロアリール基としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環、または多環芳香族環が挙げられ、好ましくは、フラン、ピロール、ピリジン等の5員または6員環芳香族置換基である。
【0050】
一般式(1)における含窒素ヘテロ環に導入しうる置換基としてのアルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられる。
一般式(1)における含窒素ヘテロ環に導入しうる置換基としてのアルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0051】
また一般式(1)における含窒素ヘテロ環に導入しうる置換基としてはアシル基が挙げられるが、アシル基(G1 CO−)におけるG1 としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0052】
一般式(1)における含窒素ヘテロ環に導入しうる置換基の内、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0053】
また高い増感能を有し、保存安定性にも非常に優れた光開始系を与える観点から、一般式(1)における含窒素ヘテロ環は、下記部分構造式(A−1)で表されるものが更に好ましい。
【0054】
【化4】

【0055】
部分構造式(A−1)中、X1 およびX2 はそれぞれ独立に、置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。X1 およびX2 が互いに結合して5員、6員もしくは7員の脂肪族または芳香族環を形成してもよい。
【0056】
部分構造式(A−1)において、X1 およびX2 が互いに結合して形成する5員、6員または7員の脂肪族または芳香族環のなかで、より好ましい構造は下記構造のものである。
【0057】
【化3】

【0058】
1 およびX2 は、前記一般式(1)におけるYが隣接する窒素原子および炭素原子と共に形成する含窒素ヘテロ環類に導入可能な置換基として挙げた、置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0059】
次に、一般式(1)中のXについて説明する。
Xは一価の非金属原子団を表す。ここで非金属原子団には、水素原子、ハロゲン原子等の一つの原子で構成される官能基も包含される。
例えば、一般式(1)中のYが隣接する窒素原子および炭素原子と共に形成する含窒素ヘテロ環類に導入可能な置換基の例として挙げた各置換基や、水素原子等を何れも好適に用いることができる。これらの置換基の内、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいヘテロアリール基、置換されてもよいアルケニル基を用いる場合、増感色素の製造において、比較的安価な原料から、短工程での合成が可能となるため、経済的である。
また、特に前記一般式(1)におけるXが、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいヘテロアリール基、または置換されてもよいアルケニル基であるような増感色素の場合は、吸収波長的に有利でかつ、保存安定性に非常に優れる。
【0060】
一般式(1)におけるXとしてのアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、を挙げることができる。
一般式(1)におけるXとしての置換アリール基の具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、
【0061】
N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイ
ルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基、ジエチルホスフォノフェニル基、ジフェニルホスフォノフェニル基、メチルホスフォノフェニル基、メチルホスフォナトフェニル基、トリルホスフォノフェニル基、トリルホスフォナトフェニル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、または3−ブチニルフェニル基、等を挙げることができる。
【0062】
一般式(1)におけるXとしてのヘテロアリール基の例としては、例えば、一般式(1)中のYが隣接する窒素原子および炭素原子と共に形成する含窒素ヘテロ環類の例として挙げたものが何れも好適に使用できる。その他、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジン等が挙げられ、これらは、さらにベンゾ縮環してもよく、また置換基を有していてもよい。
【0063】
一般式(1)におけるXとしてのアルケニル基の例としては、先に述べた一般式(1)における含窒素ヘテロ環に導入しうる置換基としてのアルケニル基として挙げられた各置換基に加え、特に下記部分構造式(A−2)で表されるものが好ましい。部分構造式(A−2)におけるX、および、−(M=M)n−Xが一般式(1)におけるXに該当する。
【0064】
【化5】

【0065】
部分構造式(A−2)中、M1 およびM2 はそれぞれ独立に、置換されてもよいメチン炭素を表し、X3 は置換もしくは非置換のアリール基またはヘテロアリール基を表す。nは0または1〜2の整数である。
【0066】
1 およびM2 がそれぞれ独立に、CHまたはCCH3 である場合、特に色素の製造が容易であり、nが1または2の場合、吸収特性と安定性の両方に優れた色素が得られる。X3 で表される置換もしくは非置換のアリール基またはヘテロアリール基は、前記一般式(1)におけるYが隣接する窒素原子および炭素原子と共に形成する含窒素ヘテロ環類に導入可能な置換基として既に例示した各置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0067】
以下に、本発明に係る(A)特定増感色素の具体例(D1)〜(D54)を示すが、本発明に用いられる(A)特定増感色素は、上述の構造用件を満たすものをいずれも好適に使用でき、以下の化学構造式によって制限を受けるものではない。
【0068】
【化6】

【0069】
【化7】

【0070】
【化8】

【0071】
【化9】

【0072】
【化4】

【0073】
【化5】

【0074】
【化6】

【0075】
上記(A)特定増感色素の具体例の中でも、化合物D1、D5、D9、およびD30がより好ましく、D1およびD5が更に好ましい。
【0076】
これら一般式(1)で表される部分構造を有する(A)特定増感色素は、公知の合成法およびその関連合成法を用いて容易に合成することができる。より具体的な合成法は、例えば、特公平6−97339号公報に詳しく記載されている。
【0077】
本発明の特定増感色素は、フォトマスクブランクスの感光性組成物層において用いる場合、その特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素と、付加重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを、共有結合、イオン結合、水素結合等の方法により結合させることで、露光膜の高強度化や、露光後の膜からの色素の不要な析出抑制を行うことができる。また、増感色素とチタノセン化合物やその他のラジカル発生パート(例えば、ハロゲン化アルキル、オニウム、過酸化物、ビイミダゾール、オニウム、ビイミダゾール等の還元分解性部位や、ボレート、アミン、トリメチルシリルメチル、カルボキシメチル、カルボニル、イミン等の酸化解裂性部位)との結合により、特に開始系の濃度の低い状態での感光性を著しく高めることができる。さらに、本発明の感光性組成物層の好ましい使用様態である、(アルカリ)水系現像液への処理適性を高める目的に対しては、親水性部位(カルボキシル基並びにそのエステル、スルホン酸基並びにそのエステル、エチレンオキサイド基等の酸基もしくは極性基)の導入が有効である。特にエステル型の親水性基は、感光性組成物層中では比較的疎水的構造を有するため相溶性に優れ、かつ、現像液中では、加水分解により酸基を生成し、親水性が増大するという特徴を有する。その他、例えば、感光性組成物層中での相溶性向上、結晶析出抑制のために適宜置換基を導入することができる。例えば、ある種の感光系では、アリール基やアリル基等の不飽和結合が相溶性向上に非常に有効である場合があり、また、分岐アルキル構造導入等の方法により、色素π平面間の立体障害を導入することで、結晶析出が著しく抑制できる。また、ホスホン酸基やエポキシ基、トリアルコキシシリル基等の導入により、金属や金属酸化物等の無機物への密着性を向上させることができる。そのほか、目的に応じ、増感色素のポリマー化等の方法も利用できる。
【0078】
(A)特定増感色素としては、前記一般式(1)で表される部分構造を有する増感色素を少なくとも一種用いればよく、この一般式(1)で示される部分構造を有する限りにおいて、例えば、先に述べた修飾を施したものなど、どのような構造の色素を用いるか、単独で使用するか2種以上併用するか、添加量はどうか、といった使用法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて適宜設定できる。例えば、特定増感色素を2種以上併用することで、感光性組成物層への相溶性を高めることができる。
特定増感色素の選択は、それ事態が有する感光性の他、使用する光源の発光波長でのモル吸光係数が重要な因子である。モル吸光係数の大きな色素を使用することにより、色素の添加量は比較的少なくできるので、経済的であり、かつ感光性組成物層の膜物性の点からも有利である。
【0079】
一般式(1)で表される部分構造を有する増感色素としては、波長320〜450nmの青紫色領域の光を効率よく吸収し、波長405nmでのモル吸光係数(ε)が100以上、好ましくは1,000以上、更に好ましくは10,000以上で、100,000以下であり、その光励起エネルギーを(B)重合開始剤に伝え、該光重合開始剤を分解し、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物の重合を生起、進行させる活性ラジカルを発生しうる増感機能を有する光吸収色素であることが好ましい。
【0080】
(A)特定増感色素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明においては、(A)特定増感色素に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて公知の増感色素を併用することができる。その場合、本発明の効果を確実に得る上で、感光性組成物中に含有される増感色素の総量に対して、(A)特定増感色素の含有量が10質量%以上、特に60質量%以上であることが好ましい。
【0081】
感光性組成物層の感光性、解像度や、露光膜の物性は光源波長での吸光度に大きな影響を受けるので、これらを考慮して増感色素の添加量を適宜選択する。例えば、吸光度が0.1以下の低い領域では感度が低下する。また、ハレーションの影響により低解像度となる。但し、例えば5μm以上の厚い膜を硬化させる目的に対しては、このような低い吸光度の方がかえって硬化度を上げられる場合もある。
【0082】
(A)特定増感色素の添加量は、感光性組成物層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
【0083】
<(B)重合開始剤>
本発明における(B)重合開始剤としては、特許、文献等で公知である種々の光重合開始剤、あるいは2種以上の光重合開始剤の併用系(光重合開始系)を適宜選択して使用することができる。本発明においては、単独で用いる光重合開始剤、2種以上の光重合開始剤を併用した系を総括して単に光重合開始剤という。
【0084】
本発明における重合開始剤には特に制限はなく、露光波長に応じて適宜選択され、例えば400nm付近の光を光源として用いる場合には、光重合開始剤として、ベンジル、ベンゾイルエーテル、ミヒラーズケトン、アントラキノン、チオキサントン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物、有機硼素酸塩等の公知の光重合開始剤から広く選択して使用される。
【0085】
なかでも、(B)重合開始剤としては、(A)増感色素との共存下で光照射されたときに、増感色素の光励起エネルギーを受け取って活性ラジカルを発生し、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物を重合に到らしめるラジカル発生剤である、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、チタノセン系化合物、メタロセン化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体、ジアリールヨードニウム塩、有機硼素酸塩、及び有機過酸化物等が好ましく挙げられ、さらに、露光感度、基板に対する感光性組成物層の密着性、及び保存安定性等の面から、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、メタロセン化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、及びアルキルフェノン系化合物が好ましく、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が特に好ましい。これらの重合開始剤については、特開2004−317652号、特開2005−47947号、特開2005−91618号、特開2005−134893号、特開2005−250158号、特開2005−300650号、特開2006−267289号、特開2007−47742号、特開2007−99836号、特開2007−206216号、特開2007−248863号、特開2007−249036号、特開2008−242093号、特開2008−276167号の各公報に記載の重合開始剤が使用できる。
【0086】
本発明における光重合開始剤であるアルキルフェノン系化合物について説明する。アルキルフェノン系化合物としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル-プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等を挙げることができる。
【0087】
本発明における好ましい光重合開始剤であるヘキサアリールビイミダゾール化合物について説明する。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、欧州特許第24629号、欧州特許第107792号、米国特許第4410621号、欧州特許第215453号及び西独国特許出願公開第3211312号等の各明細書に記載の種々の化合物を使用することが可能である。好ましいものとしては、例えば、2,4,5,2’,4’,5’−ヘキサフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3−メトキシフェニル)−ビスイミダゾール、2,5,2’,5’−テトラキス(2−クロロフェニル)−4,4’−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ニトロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ジ−o−トリル−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、及び2,2’−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール等を挙げることができる。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物は2種以上併用してもよい。
【0088】
光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール化合物を用いる場合、該ヘキサアリールビスイミダゾール化合物の使用量は、後述する(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物の総量100質量部に対し、0.05〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜30質量部である。ヘキサアリールビイミダゾール化合物とともに、他の光重合開始剤を併用してもよい。
【0089】
光重合開始剤は、必要に応じ、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等のチオール化合物、N−フェニルグリシン、N,N−ジアルキルアミノ芳香族アルキルエステル等のアミン化合物等の水素供与性化合物と併用することにより更に光開始能力が高められることが知られている。
特に、光開始能力が高く本発明に好適な水素供与性化合物としては、メルカプト基含有化合物が上げられる。
【0090】
感光性組成物層中における(B)光重合開始剤の含有量は、感光性組成物層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量部、さらに好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0091】
<(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物(エチレン性不飽和化合物)>
本発明に係る感光性組成物層は、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物(エチレン性不飽和化合物)を含有する。
エチレン性不飽和化合物とは、エチレン性不飽和結合を分子内に少なくとも一つ有する化合物であり、感光性組成物層が活性光線の照射を受けた時、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋、硬化に寄与する。
【0092】
エチレン性不飽和化合物は、例えば、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2〜6個有する化合物の中から任意に選択することができる。モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
【0093】
エチレン性不飽和化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸とアルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸とアミン化合物とのアミド類が用いられ、具体的には、特開2001−343734号公報の〔0012〕、特開2003−107697号公報の〔0020〕〜〔0025〕、特開2003−186176号公報の〔0029〕〜〔0038〕、特開2006−259558号公報の〔0126〕〜〔0140〕、特開2007−47742号公報の〔0173〕〜〔0187〕、特開2007−86165号公報の〔0140〕〜〔0149〕に記載の化合物が使用される。
【0094】
本発明において好ましく用いられるエチレン性不飽和化合物は、イソシアネート基を複数有する化合物と水酸基を有するアクリレートまたはメタクリレートとの付加反応によって得られるウレタン結合を複数有する重合性化合物であり、例えば、特公昭56−17654号公報に記載されている。
【0095】
なお、これらエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性組成物層に対し、5〜80質量%が好ましく、より好ましくは30〜70質量%の範囲である。
【0096】
<(D)バインダーポリマー>
本発明に係る感光性組成物層は、(D)バインダーポリマーを含有する。高分子バインダーとしては、高分子化合物であれば特に限定されず利用することができるが、現像性の観点から、アルカリ可溶性であることが好ましい。このようなバインダーポリマーとしては、側鎖にアルカリ可溶性基を有する高分子化合物が好ましい。アルカリ可溶性基としては、酸基又はその塩が挙げられる。特に、カルボン酸基を有する高分子化合物が好ましく用いられる。
【0097】
バインダーポリマーの骨格としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子骨格が好ましく、これらの中でも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂等のビニル共重合体、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。具体的には、特開2001−343734号公報の〔0011〕、特開2003−107697号公報の〔0017〕〜〔0019〕、特開2003−186176号公報の〔0022〕〜〔0027〕、特開2006−259558号公報の〔0143〕〜〔0147〕、特開2007−86165号公報の〔0152〕〜〔0154〕に記載のバインダーポリマーが好ましく用いられる。
【0098】
上記の中でも、感光性組成物層が含有する高分子バインダーとしては、側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂、及び、側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。
【0099】
本発明で特に好ましく用いられる側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂は、例えば、(i)ジイソシアネート化合物、(ii)少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物、(iii)架橋性基を有するジイソシアネート化合物及び必要であれば(iv)カルボキシル基を有さないジオール化合物、を重付加反応させることにより得ることができる。これらの具体例は、特開2007−57597号公報の〔0050〕〜〔0137〕に挙げられ、好ましく用いられる。
【0100】
高分子バインダーとしては、ポリウレタン合成時に側鎖に架橋性基を導入して得られる上記のポリウレタン樹脂のほかに、特開2003−270775号公報に記載されるようなカルボキシル基を有するポリウレタンに高分子反応で架橋性基を導入して得られるポリウレタン樹脂を用いることもできる。
本発明では、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開2001−109139号、特開2001−117217号、特開2001−312062号、特開2003−131397号の各公報に記載のポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。
【0101】
本発明に用いることができるバインダーポリマーとして好適な材料の具体例としては、下記(a)カルボン酸(その塩を含む。)を含有するモノマー単位を有する重合体、(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位を有する重合体、または(a)カルボン酸を含有するモノマー単位と(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位とを有する共重合体が挙げられる。
本発明に用いることができるバインダーポリマーとして好適な材料の一例は、下記(a)カルボン酸(その塩を含む。)を含有するモノマー単位を有する重合体、(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位を有する重合体、または(a)カルボン酸を含有するモノマー単位と(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位とを有する共重合体が挙げられる。
(a)カルボン酸を含有するモノマー単位としては特に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、および下記構造が好ましく用いられる。
【0102】
【化7】

【0103】
式(I)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は単結合又は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子よりなる群から選択される2以上の原子を含んで構成され、その原子数が2〜82である連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR3−を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。
【0104】
式(I)においてR2で表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含んで構成され、その総原子数は、2〜82であることが好ましく、2〜50であることがより好ましく、2〜30であることがさらに好ましい。R2で表される連結基は置換基を有していてもよい。ここで示す
総原子数とは、当該連結基が置換基を有する場合には、その置換基を含めた原子数を指す。より具体的には、R2で表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30である
ことが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることがさらに好ましく、5〜10であることが最も好ましい。
なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、式(I)におけるAと末端COOHと
を連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
【0105】
式(I)においてR2で表される連結基として、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレン、あるいはこれらの基を構成する任意の炭素原子上の水素原子を除き(n+1)価の基としたものなどが挙げられ、これらの基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有するものが好ましい。特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
2で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を
挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基が挙げられる。
式(I)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であること
が好ましい。
なお(a)カルボン酸を含有するモノマー単位としては、特開2004−318053号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0106】
共重合体における繰り返し単位(a)〔カルボン酸(その塩を含む。)を含有するモノマー単位〕の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの5〜50、好ましくは5〜25、より好ましくは5〜15である。
【0107】
(b)ラジカル架橋性を付与するモノマー単位はとしては特に限定されないが、ラジカル架橋性基としてエチレン性不飽和基が好ましく用いられる。
【0108】
ラジカル架橋性基は、具体的には、置換基を有してもよいアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基など)、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、アルキニル基(エチニル基、プロパギル基など)、プロピオロイル基などが挙げられる。
【0109】
共重合体における繰り返し単位(b)(ラジカル架橋性を付与するモノマー単位)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの5〜90、好ましくは20〜85、より好ましくは40〜80である。
【0110】
また、本発明における(D)バインダーポリマーは、特に限定されないが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(1)とも云う)を有してもよい。
【0111】
【化8】

【0112】
一般式(1)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−NH−基を表し、Yは、水素原子、炭素数1から12のアルキル基、炭素数5から12の脂環式アルキル基、又は炭素数6から20の芳香環を有する基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、又は−NH−基を表し、R1は、炭素数1から18のアルキル基、炭素数5から20の脂環構造を有するアルキル基又は炭素数6から20の芳香環を有する基を表す。
【0113】
上記繰り返し単位(1)の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの1〜40、好ましくは3〜25、より好ましくは、5〜15である。
【0114】
本発明における(D)バインダーポリマーには、繰り返し単位(1)の他にも、モノマー単位として側鎖にエステル基、アミド基を有するアクリル樹脂、メタクリル樹脂またはウレタン樹脂が好ましく用いられている。
【0115】
これらのモノマー単位の含有量は、総繰り返し単位数を100とした場合、そのうちの1〜40、好ましくは3〜25、より好ましくは、5〜15である。
【0116】
感光性組成物層の現像性を維持する観点からは、(D)バインダーポリマー分子量としては、重量平均分子量で、5000〜300000の範囲であることが好ましく、より好ましい範囲は20000〜150000である。
【0117】
(D)バインダーポリマーは、感光性組成物層中に任意の量で含有させることができるが、画像強度等の観点からは、感光性組成物層の全固形分中、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。
【0118】
<(E)遮光材料>
本発明のフォトマスクブランクスにおける感光性組成物層は、(E)遮光材料を含有する。
本発明における遮光材料とは、250nm〜400nmの光を吸収し、好ましくは塗膜形成時のオプティカルデンシティー(O.D.)が2.5以上になる光吸収剤を指す。
本発明における遮光材料とは、フォトマスクが適用される活性光線の波長の光を反射、吸収することにより透過させない機能を有する材料であり、具体的には、マスクとして使用する際の露光光源(水銀灯、メタルハライド灯キセノン灯等)が発する波長域200〜450nm、好ましくは250〜400nm程度、の光を実質遮光できるものであり、塗膜形成時のオプティカルデンシティー(O.D.)が2.5以上であることを要し、好ましくは、3.0以上であるものを指す。
【0119】
本発明における遮光材料は、フォトマスクブランクスにより作製されたフォトマスクの使用目的等に応じて適宜選択すればよい。
遮光材料としては、特に限定されないが、具体的には、特開2001−343734号公報の〔0015〕〜〔0016〕、特開2003−107697号公報の〔0027〕、〔0035〕〜〔0038〕、特開2003−186176号公報の〔0041〕〜〔0043〕、特開2004−302012号の段落〔0038〕〜〔0040〕に記載の着色剤に記載の金属粒子(金属化合物粒子、複合粒子、コア・シェル粒子などを含む)、顔料その他の粒子、フラーレンなどが好適に用いられる。
【0120】
顔料は一般に有機顔料と無機顔料とに大別されるが、本発明で用いる(E)遮光材料としては有機顔料が好ましい。好適に使用される顔料の例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料を挙げることができる。そのような有機顔料の色相は、例えば、黄色顔料、オレンジ顔料、赤色顔料、バイオレット顔料、青色顔料、緑色顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等が挙げられる。
また、「顔料便覧、日本顔料技術協会編、誠文堂新光社、1989」、「COLOUR
INDEX、THE SOCIETY OF DYES & COLOURIST、THIRD EDITION、1987」に記載の顔料を参照して、適宜用いることもできる。
本発明に用いうる(E)遮光材料としては、青色顔料や黒色材料であることが好ましく、該黒色材料としては、黒色顔料及び金属微粒子の少なくとも1種であることが好ましい。
【0121】
本発明における(E)遮光材料として特に好ましくは、カーボンブラックである。
遮光材料としてカーボンブラックを用いる場合、感光性組成物層は、カーボンブラックのみを含有してもよいし、カーボンブラックと、他の色材(例えば、他の着色剤)を併用してもよい。カーボンブラックと他の色材を併用する場合には、感光性組成物層に含有される全着色剤中50質量%以上がカーボンブラックであると、感光性組成物層の色濃度を高濃度にする点で好ましい。
【0122】
顔料を遮光材料として用いる場合、100nm以下の平均粒径を有する顔料が好ましく、1nm以上60nm以下のものがより好ましい。なお、顔料は、感光性組成物層の形成に用いる感光性組成物中において、分散剤により分散されていることが好ましい。
【0123】
感光性組成物層固形分中の(E)遮光材料の含有量は、フォトマスクブランクスにより作製されるフォトマスクの濃度や、膜厚、フォトマスクを作製する際の感度、解像性等を考慮して決められ、その種類によっても異なるが、10質量%〜50質量%が好ましく、より好ましくは15質量%〜35質量%である。
【0124】
<(F)その他の成分>
本発明における感光性組成物層には、前記(A)成分〜(E)成分の必須成分に加えて、目的に応じて種々の化合物を併用することができ、例えば、特開平9−25360号公報に記載のUV吸収剤や特開2004−302012号公報の段落0047に記載の熱重合禁止剤を添加することができる。さらに、本発明で使用する感光性組成物には必要に応じて公知の添加剤、例えば可塑剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0125】
<感光性組成物層の形成>
感光性組成物層は、前述した各必須成分及び任意成分を含有する塗布液(感光性組成物層形成用塗布液)を、適切な基板上にスピンコーター、スリットスピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、あるいはカーテンコーター等を用いて直接塗布により設けることが可能である。
【0126】
感光性組成物層の膜厚は、膜厚の均一性、解像度及び感度の観点から、0.3μm〜7μmの範囲が好ましい。特に好ましい膜厚は、0.5μm〜3μmである。
【0127】
(基板)
前記感光性組成物層を適切な基板上に形成することにより、本発明のフォトマスクブランクスとなる。基板は目的に応じて適宜選択されるが、基板ごとフォトマスクを形成し、そのまま繰り返し使用するという観点からは、フォトマスクが用いられる露光光源の波長に対して吸収のないもの、例えば、可視光に用いる場合には、透明な基板を用いることが好ましい。ここで、透明な基板とは、350〜750nmの波長領域に極大吸収を有さない基板を意味する。
−透明基板−
本発明のフォトマスクブランクスにおける透明基板としては、ガラス板(例えば、石英ガラス、ソーダガラス、無アルカリガラスなど)、透明プラスティックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)のごとき透明基板を適用することができる。透明基板の厚さは、フォトマスクブランクスによって適宜設定することができるが、0.1mm〜20mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1mm〜7mmの範囲であり、更に好ましくは1mm〜5mmの範囲である。
【0128】
(酸素遮断性層)
本発明のフォトマスクブランクスは、感光性組成物層上に酸素の透過性を適切に制御するための酸素遮断性層を有することが好ましい。
酸素遮断性層は、25℃、1気圧下における酸素透過性が、1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下であることがより好ましく、2.0ml/m・day・atm以上1500ml/m・day・atm以下が更に好ましく、5.0ml/m・day・atm以上1000ml/m・day・atm以下が更に好ましく、10ml/m・day・atm以上800ml/m・day・atm以下が最も好ましい。
酸素遮断性層が有する酸素透過性が、上記範囲内であることで、フォトマスクブランクスの製造時及び生保存時に、不要な重合反応が生じることがなく、また、フォトマクスを作製する際の画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生ずるという問題もない。したがって、かかる特徴を有する本発明のフォトマスクブランクスにより、高い解像性と良好な画像エッジ部の直線性とを有するフォトマスクを得ることができる。
【0129】
このような特性を有する保護層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
【0130】
本明細書において、酸素遮断性層が有する酸素透過性は、以下の測定方法(モコン法)により測定した酸素透過率である。
−酸素透過性の測定方法−
酸素透過性の高いポリエチレンフィルム(富士フイルム(株)製「エバービュティーペーパー」の表面ゼラチン層を溶解除去することで作製したポリエチレンラミネート紙)に、感光性層上に形成する酸素遮断性層と同様の組成の塗膜を塗布乾燥し、測定用のサンプルを作製する。JIS−K7126B及びASTM−D3985に記載の気体透過度試験方法に則り、モコン社製OX−TRAN2/21を用い、25℃60%RHの環境下で酸素透過率(ml/m・day・atm)を測定する。
【0131】
<水溶性高分子化合物>
酸素遮断性層は、酸素遮断性及び現像性の観点から、水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。
水溶性高分子としては、比較的結晶性に優れた化合物を用いることが好ましく、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドポリエステル、ポリウレタンなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いる事が、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0132】
酸素遮断性層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、酸変性ポリビニルアルコールなど、ポリビニルアルコール誘導体を用いてもよい。
また、同様に、ビニルアルコール単位以外の重合単位を有する共重合体であってもよく、そのような共重合体としては、例えば、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体等が挙げられる。
【0133】
ポリビニルアルコールの具体例としては、特開2006−259558号公報の〔0179〕に記載の化合物が好適に用いられる。
好ましい態様としてはポリビニルアルコールの保護層中の含有率が20〜95質量%、より好ましくは、30〜90質量%である。
【0134】
<酸素遮断性層の形成>
酸素遮断性層は、酸素遮断性層を形成するための塗布液を調製し、該塗布液を前記感光性組成物層上に塗布することにより形成することができる。酸素遮断性層の塗布方法に関しては、逐次に塗設する方法と、一気に重層塗布する方法とを適用できるが、いずれであっても構わない。
【0135】
酸素遮断性層の膜厚は、0.05μm以上1.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。
【0136】
〔密着性下塗り層〕
本発明のフォトマスクブランクスにおいては、基板(透明基板)上に密着性下塗り層を設けることが好ましい。密着性下塗り層が設けられるときは、感光性組成物層は密着性下塗り層の上に設けられる。密着性下塗り層は、フォトマスクを作製する際に、露光部においては基板と感光性組成物層との密着性を強化し、また、未露光部においては、感光性組成物層の基板からの剥離を生じやすくさせ、現像性を向上させることができる。
【0137】
密着性下塗り層は、透明基材との密着性を向上させるために、シリル基を有する化合物を含むことが好ましい。
また、密着性下塗り層としては、感光性組成物層との密着性を上げるために、重合性基を有していることが好ましい。重合性基としては、特にエチレン性不飽和結合を有する基が好ましく、具体的には前記「エチレン性不飽和化合物(特定重合性化合物、多官能性アクリレート化合物などのエチレン性不飽和結合を有する化合物)」に記載の化合物に含まれる重合性基が好ましく用いられる。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリルエーテル基が好ましく用いられる。
特に、前記エチレン性不飽和結合を有する基とシリル基を有する化合物とが好ましく用いられる。
【0138】
密着性下塗り層に含まれる化合物としては、具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]トリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、3−アクリロイルオキシ−1−トリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランを好適な化合物として挙げることができる。
【0139】
密着性下塗り層の塗設量は、乾燥質量として、2mg/m〜200mg/mが好ましく、5mg/m〜100mg/mが更に好ましい。
【0140】
このようにして、基板上に、(A)〜(E)の各成分を含む感光性組成物層を形成し、好ましくは、その表面に酸素遮断性層や基板と感光性組成物層の間に密着性下塗り層を形成して、本発明のフォトマスクブランクスを得る。
【0141】
[フォトマスク及びフォトマスクの製造方法]
本発明のフォトマスクは、既述した本発明のフォトマスクブランクスを用い、フォトマスクブランクスが有する感光性組成物を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を有することを特徴とする。
具体的には、既述のフォトマスクブランクスを、近紫外光ないし可視光で画像様露光した後(露光工程)、露光後のフォトマスクブランクスを、現像液を用いて現像することにより感光性組成物層の未露光部を除去する(現像工程)により、画像様の遮光層(露光部)を有するフォトマスクを得ることができる。
【0142】
本発明のフォトマスクブランクスを用いて作製されるフォトマスク(本発明のフォトマスク)としては、該フォトマスクブランクスを、350nm以上450nm以下の光を放射するレーザー(より好ましくは、390nm以上450nm以下を放射するレーザー)を用いて画像様露光した後、現像することにより作製されたものが好適な態様である。
【0143】
〔露光工程〕
露光工程は、フォトマスクブランクスを、線画像、網点画像、等を有する透明原画を通して画像様に露光するか、デジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光することにより行うことが好ましい。本発明のフォトマスクブランクスの画像形成には、レーザーによる露光が好適に用いられる。
【0144】
露光光源としては、350nmから450nmの範囲が好ましく、390nm〜420nmの範囲がより好ましい。例えば、以下のものが挙げられる。ガスレーザーとしては、Arイオンレーザー(364nm、351nm)、Krイオンレーザー(356nm、351nm)、He−Cdレーザー(441nm、325nm)などが挙げられ、固体レーザーとしては、Nd:YAG(YVO)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm)などが挙げられ、半導体レーザー系では、KNbOリング共振器(430nm)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm)、AlGaInN(350nm〜450nm)などが挙げられ、その他のレーザーとして、Nレーザー(337nm)、XeF(351nm)などが挙げられる。
これらの中でも、特に、AlGaInN半導体レーザー(InGaN系半導体レーザー400nm〜410nm)が、波長特性、コストの面で好適である。
【0145】
露光エネルギーは、用いられるフォトマスクブランクスの特性により適宜選択されるが、一般的には、1〜150mJ/mの範囲であることが好ましく、10〜100mJ/mの範囲であることがより好ましい。この露光により、感光性層中の光重合開始剤から発生したラジカルを活性種として、エチレン性不飽和化合物が重合し、露光領域が硬化して画像形成される。
【0146】
〔現像工程〕
現像工程は、前記露光工程における未露光部、即ち、未硬化の感光性層を、現像液を用いて除去する工程である。
現像液としては、特に制限はなく、公知の現像液などが例示できるが、特公昭57−7427号公報に記載されているような現像液が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミン又はジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなアルカリ剤は、これを含有するアルカリ性水溶液の濃度が0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、最も好ましくは1〜12重量%になるように添加される。
【0147】
また、現像液として用いられるアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号及び同第3615480号に記載されているものを挙げることができる。さらに、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号の各公報に記載されている現像液も優れている。
【0148】
特に好ましい現像液としては、特開2002−202616号公報に記載の非イオン性化合物を含有し、pHが11.5〜12.8であり、かつ3〜30mS/cmの電導度を有する現像液が挙げられる。
また、炭酸イオン及び炭酸水素イオンを含む現像液におけるpHとしては、8.5〜10.8の範囲であることが好ましく、pH9.0〜10.5であることがより好ましく、pH9.5〜10.3であることが特に好ましい。このpH範囲内であると、非画像部の現像性が低下せず、また、空気中の炭酸ガスの影響により処理能力が変動しないので好ましい。
【0149】
現像工程において、露光後のフォトマスクブランクスに、現像液を接触させる態様としては、手処理、浸漬処理、及び機械による処理などが挙げられる。
【0150】
手処理としては、例えば、スポンジや脱脂綿に充分現像液を含ませ、全体を擦りながら処理し、処理終了後は充分に水洗する態様が挙げられる。
【0151】
浸漬処理としては、例えば、露光後のフォトマスクブランクスを、現像液の入ったバットや深タンクに浸して撹拌する方法である。浸漬時間は、10〜600秒程度であることが好ましく、30〜300秒であることがより好ましい。浸漬処理の場合には、その後、現像液や感光性層、酸素遮断性層の現像残渣などを除去するため、後述するように、水洗工程に付すが、その場合、脱脂綿やスポンジなどで擦りながら充分に水洗することが好ましい。
【0152】
機械処理には、自動現像機を用いることができる。自動現像機を用いる場合としては、例えば、現像槽に仕込んだ現像液をポンプで汲み上げて、露光後のフォトマスクブランクスにスプレーノズルから吹き付けて処理する方式、現像液が満たされた槽中に液中ガイドロールなどによって、露光後のフォトマスクブランクスを浸漬搬送させて処理する方式、実質的に未使用の現像液を、一枚毎の露光後のフォトマスクブランクスに必要な分だけ供給して処理するいわゆる使い捨て処理方式のいずれの方式も適用できる。どの方式においても、高圧洗浄、ブラシやモルトンなどの機構があるものがより好ましい。また、レーザー露光部と自動現像機部分とが一体に組み込まれた装置を利用することもできる。
【0153】
また、現像する際における現像液の温度としては、20℃〜35℃の範囲が好ましく、25℃〜30℃の範囲がより好ましい。
【0154】
〔その他の工程〕
また、フォトマスクブランクスに対しては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面に加熱処理を施してもよい。加熱処理を施すことにより、感光性層中の画像形成反応が促進され、感度の向上、感度の安定化といった利点が生じ得る。さらに、画像強度の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱または、全面露光を行うことも有効である。
【0155】
通常、現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。一方、現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は150〜500℃の温度範囲加熱処理を行う。
【0156】
また、フォトマスクブランクスに対する画像形成後においては、画像上に熱硬化型のエポキシ樹脂等の保護膜を設けてもよい。画像上に保護膜を設けることにより、更に膜強度を向上させることもできる。
【0157】
以上のようにして、本発明のフォトマスクブランクスを用いてフォトマスク(本発明のフォトマスク)が得られる。
【0158】
本発明のフォトマスクにおける遮光層の膜厚は、0.8μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以上1.8μm以下がより好ましい。
また、本発明のフォトマスクにおける遮光層は、365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上であることが好ましく、4.0以上がより好ましい。
本発明のフォトマスクにおける遮光層の最も好適な態様は、遮光層の膜厚及び365nmにおけるO.D.の双方が、上記の範囲を満たす態様である。
【0159】
また、本発明のフォトマスクブランクスは高解像度の画像形成が可能であるために、微細な線幅の画像をエッジ直線性が良好な状態で形成することができる。このようなフォトマスクブランクスを用いて形成されるフォトマスクの好適な態様の一つは、遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が、好ましくは0.1μm以上20μm以下である態様である。形成されるL/Sは、より好ましくは0.1μm以上10μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上8μm以下のものであり、前記本発明のフォトマスクブランクスにより、このような微細な線幅のL/Sを有する遮光層の形成が可能となった。
【0160】
本発明のフォトマスクブランクスを用いて得られたフォトマスクは、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において好適に用いることができる。
本発明で用いるフォトマスクを、紫外感光性のレジストのパターニング用に用いる際には、超高圧水銀灯などの紫外線露光機にバンドパスフィルターを組み入れて、露光波長を選択することも可能である。
【実施例】
【0161】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0162】
[実施例1〜5および比較例1〜3]
1.フォトマスクブランクスの作製
(下塗り層の塗布)
ガラス基板(10cm×10cm)上に、下記下塗り層組成物を乾燥後の塗布層の質量が0.005g/mとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、下塗り層を形成した。
(下塗り層組成物)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製) 3.60g
メチルエチルケトン 32.40g
(感光性組成物層の形成)
下塗り層を形成したガラス基板(10cm×10cm)上に、下記組成の感光性組成物層用塗布液組成物(P−1)を乾燥塗布質量が1.4g/mとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光性組成物層を形成した。
【0163】
<感光性組成物層用塗布液組成物(P−1)>
・カーボンラック分散液[下記組成の分散液] 16.0質量部
・エチレン性不飽和結合を有する化合物[下記構造の化合物(C−1)] 4.2質量部
・バインダーポリマー[下記構造の化合物(D−1)] 3.6質量部
(下記構造の高分子バインダー、Mw:50000)
・特定増感色素又は比較増感色素(表1記載の化合物) 表1記載の量
・重合開始剤(表1記載の化合物) 0.81質量部
・連鎖移動剤[(下記構造の化合物(F−1)] 0.3質量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤 0.05質量部
(メガファックF780、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 58質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 53質量部
【0164】
感光性組成物層用塗布液組成物(P−1)の調製に用いたカーボンブラック分散液の組成は、以下の通りである。
【0165】
<カーボンラック分散液の組成>
・カーボンブラック 12g
(Degussa社製 Special Black350(DBP=45ml/100g、窒素吸着比表面積=65m2/g))
・分散剤(Bykchemie社製 Disperbyk182) 6g
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) 42g
DBPとは、カーボンブラック100gが吸収するジブチルフタレート(DBP)量を表す。
【0166】
上記<カーボンブラック分散液の組成>の成分を、モーターミルM−50(アイガー社製)で、粒子径0.5mmのジルコニアビーズ200gを加え、周速9m/sで6時間分散して、カーボンブラックの分散液を得た。この分散液を1000倍に希釈し、レーザードップラー法により測定した粒子径分布は0.01〜0.5μmの範囲内であった。
【0167】
【表1】

【0168】
上記表1における増感色素D1、D2およびD5は特定増感色素の例示化合物として前記した各化合物である。
重合開始剤:B−1は下記構造のロフィン系重合開始剤である。
重合開始剤:Irg651は、市販の開始剤〔チバ・ガイギー社製、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〕である。
重合開始剤:CGI7460は、市販の開始剤〔チバ・ガイギー社製、有機硼素酸塩系光重合開始剤〕である。
またエチレン性不飽和化合物(C−1)、バインダーポリマー(D−1)、連鎖移動剤(F−1)および重合開始剤(B−1)の構造式を以下に示す。
【0169】
【化9】

【0170】
(酸素遮断性層の形成)
この感光性組成物層上に、下記組成の酸素遮断性層塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥して酸素遮断性層を形成した。酸素遮断性層の膜厚(μm)を、「SURFCOM130A、東京精密(株)製」にて直接膜厚測定したところ0.2μmであった。また、前記の方法によりこの酸素遮断性層の酸素透過性を測定したところ、170ml/m・day・atmであった。
<酸素遮断性層塗布液>
・水 87g
・PVA−405((株)クラレ製) 6g
・PVP−K30(BASF社製) 6g
・EMALEX710(日本エマルジョン(株)製、界面活性剤) 1g
【0171】
以上のようにして、透明基板上に感光性組成物層と酸素遮断性層とを備えた実施例1〜5のフォトマクスブランクス(1)〜(5)、及び比較例1〜3のフォトマスクブランクス(C1)〜(C3)を得た。
【0172】
2.フォトマスクブランクスの評価
(1)感度評価
以上のようにして得られた実施例及び比較例の各フォトマスクブランクス(10×10cm)を、レーザープロッターとして、VIOLD(大日本スクリーン製造(株)製)(レーザー出力350mW、光源は405nmバイオレットレーザー)により露光した。次いで、露光後の各フォトマスクブランクスを、下記組成のアルカリ現像液1Lに30℃、15秒間浸漬して現像、水洗した後、乾燥した。更に、180℃・30分加熱処理を行い、所望のフォトマスクを得た。露光感度は、露光量を変化させながら、このフォトマスクのライン/スペース20μm/20μmを再現しうる露光量を最適露光量と定めて評価した。この数値が小さいほど高感度で画像形成しうると評価する。結果を下記表2に示す。
なお、現像、加熱処理後のフォトマスクの365nmの吸光度は、約4.0であった。
また、東京精密(株)社製サーフコム480Aにより測定した遮光層の膜厚は、1.5μmであった。
【0173】
<アルカリ現像液組成>
下記組成からなるpH11.95の水溶液
・水酸化カリウム 0.2g
・1Kケイ酸カリウム 2.4g
(SiO/KO=1.9)
・下記化合物 5.0g
・エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩 0.1g
・水 91.3g
【0174】
【化10】

【0175】
(2)解像度測定、画像エッジ部直線性評価
実施例及び比較例の各フォトマスクブランクス(10×10cm)を、レーザープロッターとして、VIOLD(大日本スクリーン製造(株)製)(レーザー出力350mW、光源は405nmバイオレットレーザー)により露光した。次いで、露光後の各フォトマスクブランクスを、下記組成のアルカリ現像液1Lに30℃、15秒間浸漬して現像、水洗した後、乾燥した。更に、180℃・30分加熱処理を行い、所望のフォトマスクを得た。露光量は、露光量を変化させながら画像形成し、フォトマスクのライン/スペース20μm/20μmが再現する際の露光量を最適露光量と定め、その際併せて同条件で4,6,8、15、20、25,30μmのライン/スペースも描画し、再現できているうちで最も細い線を解像度とした。
加えて20μmのラインのエッジ部を(株)キーエンス社製 マイクロスコープにて撮影し、エッジ部の直線性のバラツキを標準偏差σで表した。σ値が小さいほど直線性に優れていることを表す。結果を表2に示す。
【0176】
(3)保存安定性評価(露光量変化率評価)
実施例及び比較例の各フォトマスクブランクスを、高温条件下(60℃)で3日間保存した後に、前記(1)感度評価と同様にして、露光光量を振り、ライン/スペース20μm/20μmが再現する際の露光量を求めた。前記(1)感度評価の結果として示される初期の最適露光量(X)と、3日間保存後の露光量(X)との差(X−X)の値が小さく、下記式で示す露光量変化率(%)が10%以内であれば保存安定性が良好であると評価する。結果を表2に示す。
露光量変化率(%)=(X−X)/X×100
【0177】
(4)黄色灯下でのセーフライト適性
実施例及び比較例の各フォトマスクブランクスを黄色灯照明(約470nm以下の波長の光を遮断した条件)下に、1分間、2分間、5分間、10分間、20分間、30分間放置した後、前記(1)感度評価と同様にして、走査露光及び現像処理を行い、形成されたL/Sの画像を目視で評価し、前記(1)感度評価で形成された画像と比較して目視にて画像に変化が生じるまでの放置時間を求め、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
A:放置時間が20分以上で画像に変化が生じた
B:放置時間が10分以上20分未満で画像に変化が生じた
C:放置時間が1分以上10分未満で画像に変化が生じた
D:放置時間が1分未満で画像に変化が生じた
【0178】
【表2】

【0179】
表2から明らかなように、各実施例のフォトマスクブランクスは、高感度であり且つ、セーフライト性、保存安定性にも優れており、これにより得られた各フォトマスクは、解像度が高く、画像エッジ部の直線性に優れていることがわかる。
他方、特定構造を有しないクマリン系増感色素を用いた比較例のフォトマスクブランクスでは、感度、保存安定性が極めて悪く、セーフライト性も劣っており解像度が低いため、20μmの直線は生成されなかった。また感度を向上させる為クマリン系増感色素の量を増加した比較例3は、直線性が低いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、(A)分子内に下記一般式(I)で表される部分構造を有する増感色素と、(B)重合開始剤と、(C)エチレン性不飽和結合を有する化合物と、(D)バインダーポリマーと、(E)遮光材料と、を含む感光性組成物層を有するフォトマスクブランクス。
【化1】


(一般式(1)中、Yは隣接する窒素原子および炭素原子と共に含窒素ヘテロ環を形成する非金属原子団を表す。Xは一価の非金属原子団を表す。)
【請求項2】
前記感光性組成物層上に、さらに、25℃における酸素透過性が1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下である酸素遮断性層を有する請求項1に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項3】
前記基板が、厚み0.1mm以上20mm以下である透明なガラスである請求項1または請求項2に記載のフォトマスクブランクス
【請求項4】
前記(B)重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を有するフォトマスク。
【請求項6】
前記露光が、波長350nm以上450nm以下の光により行われる請求項5に記載のフォトマスク。
【請求項7】
前記遮光層の膜厚が0.8μm以上2.0μm以下であり、かつ、波長365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上である請求項5または請求項6に記載のフォトマスク。
【請求項8】
前記遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が0.1μm以上20μm以下である請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のフォトマスク。

【公開番号】特開2010−237316(P2010−237316A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83304(P2009−83304)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】