説明

フォトリソグラフィ方法および現像液組成物

【課題】架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物を使用したフォトリソグラフィ方法において、感度、解像度、パターン形状、残膜率などの現像性を向上させることができる現像液組成物を提供する。
【解決手段】架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物を使用したフォトリソグラフィ方法において、前記ポリアリーレン樹脂に対する良溶媒および貧溶媒を含有する現像液組成物を用いて現像を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物を使用したフォトリソグラフィにおいて特定の現像液組成物を用いるフォトリソグラフィ方法、およびその方法に使用される現像液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス分野において、低誘電率の絶縁材料の開発が進んでいる。特に半導体素子の層間絶縁膜、再配線層の応力緩和層等への適用に優れた材料としてポリアリーレン樹脂が提案されている(特許文献1〜3参照。)。
【0003】
さらにポリアリーレン樹脂に感光性を持たせた光硬化性組成物が提案されている(特許文献4、5参照)。感光性を有していると、例えばレジストと同様に、フォトリソグラフィ方法による微細加工が可能である。したがって、例えばポリアリーレン樹脂からなる層間絶縁膜にコンタクトホールを容易に形成できる等の利点がある。
【0004】
なお、本明細書等においてフォトリソグラフィ(Photolithography)方法とは、基板表面に形成した感光性膜をパターン状に露光(パターン露光)することで、露光された部分と露光されていない部分からなる潜像パターンを生成させ、次に、露光されていない部分(非露光部分)[または露光された部分]を除去(現像ともいう)し、露光された部分(露光部分)[または露光されていない部分]からなるパターンを形成する方法をいう。非露光部分を除去するタイプの感光性材料はネガ型、露光部分を除去するタイプの感光性材料はポジ型と呼ばれている。
【0005】
従来、フォトリソグラフィ方法において、例えばネガ型の感光性材料からなる感光性膜を露光して潜像パターンを生成させると(潜像パターンを有する感光した感光性膜を、以下感光膜ともいう)、露光により光が照射された部分の感光性材料が不溶化する。現像液の有機溶媒により感光膜の可溶な部分(非露光部分)を良溶媒で除去し、感光膜の不溶化部分(露光部分)からなるパターンが形成される(たとえば特許文献6〜9)。しかし、良溶媒を用いた現像液の場合、樹脂の溶解速度に依存して現像速度を調整する必要があり、かかる調整は困難であった。すなわち、良溶媒により非露光部の前記ポリアリーレン樹脂が溶解するが、樹脂の特性上、現像速度の調整次第では必要以上の溶解が生じ、露光部分のパターン形状の乱れや残膜率の低下などの不具合が生じ易くなるなどの問題があった。このため、フォトリソグラフィ方法に求められる良好なパターン形状を実現する上で難点があった。一方、貧溶媒を用いた場合には、露光部が白濁するなどの膜質低下や、非露光部分の樹脂の溶解性が下がることによる現像残、解像度の低下などが起こり易くなるなどの不具合が生じた。そして、これら感光膜の現像においては、より高度な解像度が求められており、感度、解像度、パターン成形性などの向上が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6361926号明細書
【特許文献2】国際公開第03/8483号パンフレット
【特許文献3】特開平10−74750号公報
【特許文献4】特表平7−503740号公報
【特許文献5】国際公開第2007/119384号パンフレット
【特許文献6】特公昭55−030207号公報
【特許文献7】特公昭55−041422号公報
【特許文献8】特開昭54−145794号公報
【特許文献9】特開昭59−160140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フォトリソグラフィ方法による微細加工の一般的な手順としては、溶剤を含む感光性組成物を基板上に塗布して感光性組成物からなる感光性膜を形成した後、露光により潜像を形成し、該潜像を現像液で現像して画像等のパターンを形成する。しかしながら、かかるフォトリソグラフィ方法による微細加工の解像度は現像条件に大きく依存する。架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物を使用して得られる感光膜を現像するための現像液として現像条件に過度に依存せずにフォトリソグラフィ方法による良好な微細加工が可能となる現像液組成物は未だ知られていない。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、解像度の向上、残膜性の向上の観点から、ポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物用の現像液組成物、およびこれを用いたフォトリソグラフィ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフォトリソグラフィ方法は、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物からなる感光性膜を露光して得られる露光パターンの露光されていない部分を特定の現像液組成物を用いて溶解除去して現像することを特徴とする。特定の現像液組成物とは、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂に対する良溶媒および貧溶媒を含有する組成物である。
【0010】
さらに、前記目的を達成するため、本発明は、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物を使用したフォトリソグラフィ方法に使用する、上記現像液組成物を提供する。
【0011】
すなわち本発明は、以下の要旨を有するものである。
(1)架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物を使用したフォトリソグラフィ方法であって、前記ポリアリーレン樹脂に対する貧溶媒と良溶媒とを含有する現像液組成物を用いて現像を行うことを特徴とする方法。
(2)前記ポリアリーレン樹脂が含フッ素ポリアリーレン樹脂である、(1)に記載の方法。
(3)前記ポリアリーレン樹脂が数平均分子量が1×10〜5×10の樹脂である、(1)または(2)に記載の方法。
(4)良溶媒が、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−メチルブチルアセテート、からなる群から選ばれる1種または2種以上の溶媒であり、貧溶媒が、乳酸エチル、乳酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−プロパノールからなる群から選ばれる1種または2種以上の溶媒である、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)良溶媒と貧溶媒の使用割合が、質量比で90:10〜10:90である、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の方法。
(6)前記現像液組成物が、さらに界面活性剤を含有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記現像液組成物が、良溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、貧溶媒として乳酸エチルを含有する、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記フォトリソグラフィ方法が、露光エネルギーが10〜2000mJ/cmの範囲の光線を用いて前記感光性組成物を光硬化させる工程を含む、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記フォトリソグラフィ方法が、前記現像液組成物をリンス液として使用する工程を含む、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物を使用したフォトリソグラフィ方法に使用する、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂に対する貧溶媒と良溶媒とを含有する現像液組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物を使用したフォトリソグラフィ方法において、露光後の感光膜を現像するにあたり、前記ポリアリーレン樹脂に対する良溶媒および貧溶媒を組み合わせて含有する現像液組成物を用いることにより、感度、解像度、パターン成形性、残膜率などの現像性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<現像液組成物>
本発明の現像液組成物は、上述の架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂に対する良溶媒および貧溶媒を含有する。
【0014】
本発明における良溶媒とは、非露光部の前記ポリアリーレン樹脂(露光前の前記ポリアリーレン樹脂に同じ)が可溶な溶媒である。また、本発明における貧溶媒とは、非露光部の前記ポリアリーレン樹脂が完全には可溶でない溶媒である。ここで非露光部の前記ポリアリーレン樹脂が可溶であるか完全に可溶ではないかは、具体的には以下のように判断する。
【0015】
すなわち、使用するポリアリーレン樹脂5gに溶媒を添加して50gとし、25℃で2時間攪拌後、同温度にて30分間平衡させる。平衡後の溶媒を、呼び径0.2μm、47mm径のPTFE製メンブランフィルター(アドバンテック社製)を用いてろ過する。ろ過前のメンブランフィルターの重量を測定し、ろ過後のメンブランフィルターを150℃で30分間乾燥させた乾燥重量と比較する。かかる比較を行った重量差が0.05g未満のものを、非露光部の前記ポリアリーレン樹脂が可溶であるとする。また、かかる比較を行った重量差が0.05g以上あるものを非露光部の前記ポリアリーレン樹脂が完全には可溶でないとする。本発明においては前者を良溶媒と呼び、後者を貧溶媒と呼ぶ。
【0016】
現像液として好ましい良溶媒の具体的な例としては、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−メチルブチルアセテート等が挙げられる。
【0017】
また、現像液として好ましい貧溶媒の具体的な例としては、乳酸エチル、乳酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−プロパノール等が挙げられる。
【0018】
本発明の現像方法においては、良溶媒と貧溶媒の使用割合は、95:5〜5:95(質量比)で用いることが好ましい。貧溶媒の使用割合が上記範囲を下回ると露光部のパターン形状の乱れや残膜率の低下などの不具合が生じやすくなる。貧溶媒の使用割合が上記範囲を上回ると、露光部が白濁するなどの膜質低下や、非露光部の樹脂の溶解性が下がることによる現像残、解像度の低下が起こりやすくなる。
【0019】
また、適切な感度、解像度、パターン成形性、残膜率を得るためには前記ポリアリーレン樹脂の数平均分子量によって良溶媒と貧溶媒の使用割合を調整することが好ましい。前記ポリアリーレン樹脂の数平均分子量が高い場合には貧溶媒の比率を低くすることが好ましく、前記ポリアリーレン樹脂の数平均分子量が低い場合には逆に貧溶媒の比率を高くすることが好ましい。
【0020】
本発明の現像方法においては、数平均分子量が1×10〜5×10の範囲の樹脂を使用する場合、良溶媒と貧溶媒の使用割合は、90:10〜10:90(質量比)で用いることが好ましい。また、この範囲で使用割合を調整することで、所望の感度を得られることから、膜厚やフォトリソグラフィ条件によって使用割合を使い分けることができる。
【0021】
本発明の方法に用いる現像液組成物においては、良溶媒および貧溶媒はそれぞれ2種類以上を組み合わせて用いても良い。また、本発明の方法に用いる感光性現像液組成物においては、良溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と貧溶媒として乳酸エチル(EL)とを含むことが好ましく、任意の添加剤を含むことがさらに好ましい。
【0022】
本発明における現像液組成物はさらに、界面活性剤を含んでもよい。
【0023】
このような界面活性剤としてはポリエーテル部位を有するポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、フッ素変性ポリマー、シリコン変性ポリアクリル、アルコールアルコキシレート等が挙げられる。
【0024】
このような界面活性剤の添加量としては、現像液組成物100質量%に対して0.001〜5質量%が好ましく、0.001〜1質量%がより好ましい。
【0025】
<架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂>
本発明の方法に用いる感光性組成物は、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含む感光性組成物である。
【0026】
本発明の方法に用いる現像液組成物の特徴は、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂に対して良溶媒と貧溶媒とを組み合わせて含有することである。本発明において、現像する対象となる感光膜は、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂の光硬化物(露光部分に存在)と硬化していない架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂(非露光部分に存在)とを含む。
【0027】
本発明において、ポリアリーレン樹脂は、複数の芳香族環が単結合または連結基を介して結合している構造を有する樹脂である。該連結基は、例えばエーテル結合(−O−)、スルフィド結合(−S−)、カルボニル基(−CO−)、スルホン酸基から水酸基を除いた二価基(−SO−)等が挙げられる。該ポリアリーレン樹脂のうち、特に芳香族環どうしがエーテル結合(−O−)を含む連結基で結合されている構造を有する樹脂をポリアリーレンエーテル樹脂という。本発明における「ポリアリーレン樹脂」はポリアリーレンエーテル樹脂を含む概念である。
【0028】
該エーテル結合を含む連結基の具体例としては、エーテル性酸素原子のみからなるエーテル結合(−O−)、炭素鎖中にエーテル性酸素原子を含むアルキレン基等が例示される。
【0029】
本発明におけるポリアリーレン樹脂は架橋性官能基を有する。該架橋性官能基の少なくとも一部は、感光剤の存在下で光照射されることにより、架橋反応または鎖延長反応を引き起こし、ポリアリーレン樹脂を硬化させる反応性官能基である。
【0030】
架橋性官能基の具体例としては、ビニル基、アリル基、アリルオキシ基、メタクリロイル(オキシ)基、アクリロイル(オキシ)基、ビニルオキシ基、トリフルオロビニル基、トリフルオロビニルオキシ基、エチニル基、1−オキソシクロペンタ−2,5−ジエン−3−イル基、シアノ基、アルコキシシリル基、ジアリールヒドロキシメチル基、ヒドロキシフルオレニル基、シクロブタレン環、オキシラン環等が挙げられる。反応性が高く、高い架橋密度が得られる点で、ビニル基、メタクリロイル(オキシ)基、アクリロイル(オキシ)基、トリフルオロビニルオキシ基、エチニル基、シクロブタレン環、オキシラン環が好ましく、得られる硬化物の耐熱性が良好となる点から、ビニル基、エチニル基が最も好ましい。
【0031】
なおメタクリロイル(オキシ)基とは、メタクリロイル基またはメタクリロイルオキシ基を意味する。アクリロイル(オキシ)基も同様である。
【0032】
架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂は、芳香族環を有するため、耐熱性が良好であり、例えば半導体素子の構成部材に用いた場合に高い信頼性が得られる。
【0033】
架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂のうちでも、特に、ポリアリーレンエーテル樹脂は、エーテル性酸素原子を有するため、分子構造が柔軟性を有し、樹脂の可とう性が良好である点で好ましい。
【0034】
架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂はフッ素原子を有する含フッ素ポリアリーレン樹脂が好ましい。フッ素原子を有すると、該樹脂の硬化物の誘電率が低くなりやすいため、絶縁膜を形成する樹脂として好ましい。絶縁膜の誘電率が低いと誘電損失を低く抑えることができ、信号伝播速度の遅延を抑制でき、電気特性に優れた素子が得られる。
【0035】
またフッ素原子を有すると、該樹脂の硬化物の吸水率が低くなるため、接合電極およびその周辺の配線部分等における接合状態の変化が抑制できる点、または金属の変質(錆等)が抑制できる点等において優れ、素子の信頼性向上という点で効果が大きい。
【0036】
架橋性官能基を有する含フッ素ポリアリーレンエーテル樹脂の好適な例としては、ペルフルオロ(1,3,5−トリフェニルベンゼン)、ペルフルオロビフェニル等の含フッ素芳香族化合物と;1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のフェノール系化合物と;ペンタフルオロスチレン、アセトキシスチレン、クロルメチルスチレン等の架橋性化合物と;を炭酸カリウム等の脱ハロゲン化水素剤の存在下で反応させて得られるポリマーが挙げられる。
【0037】
また架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂は、数平均分子量1×10〜5×10の範囲の樹脂であることが好ましく、1.5×10〜1×10の範囲の樹脂であることがさらに好ましい。数平均分子量が1×10を超える場合、現像の際に未露光部の樹脂の溶解性が下がることにより、解像度が低下する。数平均分子量が1×10を下回る場合、現像の際、露光部のパターン形状の乱れや残膜率の低下などの不具合が生じやすくなる。
【0038】
なお、本発明における架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂の数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定したものであり、検量線としてスチレンの標準サンプルを用いて算出した値である。
【0039】
架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂は、樹脂1g当たり0.2mmol以上の前記架橋性官能基を有することが好ましい。さらに好ましくは、樹脂1g当たり0.5〜3.0mmolの前記架橋性官能基を有する。また、前記含フッ素ポリアリーレン樹脂の場合、含フッ素芳香族化合物とフェノール系化合物と架橋性化合物の合計に対し架橋性化合物を樹脂1g当たり0.2mmol以上使用して得られる含フッ素ポリアリーレン樹脂が好ましい。より好ましい架橋性化合物の割合は樹脂1g当たり0.5〜3.0mmolである。
【0040】
<感光性組成物>
本発明の方法で現像を行う対象の感光性組成物は、感光性(すなわち、本発明では、光が照射されると架橋反応や鎖延長反応によりポリアリーレン樹脂が架橋や高分子量化して溶媒溶解性が低下する性質)を有する。具体的には、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂と光重合開始剤を含有する。さらに接着性向上剤、触媒、光増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱架橋剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤等、公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0041】
これらの光重合開始剤および添加剤は、一般的な感光性組成物において公知のものを適宜用いることができる。
【0042】
なお、感光性膜は溶剤を含む感光性組成物を基板等に塗布して得られる、感光性組成物からなる膜である。
【0043】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、光照射により分解してラジカルを発生する化合物などの、光感受性でかつ前記架橋性官能基の反応を開始させる化合物をいう。このような化合物としては公知の化合物を使用でき、特に感光性樹脂の硬化用に市販されている光重合開始剤が好ましい。
【0044】
光重合開始剤の具体例としては、IRGACURE 907(α−アミノアルキルフェノン系)、IRGACURE 369(α−アミノアルキルフェノン系)、DAROCUR TPO(アシルホスフィンオキサイド系)、IRGACURE OXE01(オキシムエステル誘導体)、IRGACURE OXE02(オキシムエステル誘導体)(いずれもチバスペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられる。これらのうちで、DAROCUR TPO、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02が特に好ましい。
【0045】
感光性組成物中の光重合開始剤の割合は0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0046】
<添加剤>
本発明において現像後に基材上でパターンを形成している感光性組成物の硬化物の膜(以下硬化物膜という)は、基材上に接着したままの状態で絶縁膜等として用いることができる。この場合、硬化物膜と基材との接着性の向上のため、接着促進剤を感光性組成物に含有させることができる。接着促進剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられ、エポキシシラン類、アミノシラン類、ビニルシラン類、メタクリロキシシシラン類、アクリロキシシラン類、スチリルシラン等、メルカプトシラン類等のシラン系カップリング剤が好ましい。
【0047】
エポキシシランとしては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが例示される。
【0048】
アミノシラン類としては、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等の脂肪族アミノシラン類;アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の含芳香族基アミノシラン類が例示される。
【0049】
ビニルシラン類としてはビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが例示される。
【0050】
メタクリロキシシシランとしては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が、アクリロキシシランとしては3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が、スチリルシランとしてはp−スチリルトリメトキシシラン等が、メルカプトシランとしては3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
【0051】
接着促進剤の含有量は、感光性組成物に対して0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。接着促進剤の配合量が少ないと接着性向上効果が充分でなく、多すぎると電気特性や耐熱性が低下する。
【0052】
なお、接着促進剤の適用方法としては、感光性組成物の溶液を塗布する前に基材表面を接着促進剤で処理する方法を採用することもできる。基材を接着促進剤で処理する方法としては、シランカップリング剤を0.01〜3質量%含有するアルコール系溶液を基材表面にスピンコートして乾燥する方法が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、2−プロパノールが好ましい。
【0053】
接着促進剤は単独あるいは2種以上を併用しても良い。またこれらをオリゴマー化して用いても良い。
【0054】
触媒は前記架橋性官能基の反応を促進する化合物であり、必要により感光性組成物に配合することができる。触媒としては、アニリン、トリエチルアミン等のアミン類;モリブデン、ニッケル等を含有する有機金属化合物等が例示できる。なお、前記のアミノフェニルトリアルコキシシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン等のアミノシラン類は触媒としての作用効果を有することより、感光性組成物にアミノシラン類が配合されている場合は、架橋性官能基の反応も促進されていると考えられる。
【0055】
感光性組成物における上記接着促進剤や触媒などの添加剤の含有量は、感光性組成物に対して0.05〜20質量%が好ましく0.1〜10質量%がより好ましい。
【0056】
<溶剤>
本発明における感光性組成物は、基材に塗布するために、溶剤に溶解して使用することが好ましい。溶剤としては感光性組成物の大部分を溶解しうる溶剤を使用する。ただし、触媒などの微量成分は溶解せずに分散することがあってもよい。このため、溶剤としては、感光性組成物中の前記ポリアリーレン樹脂を溶解しうる良溶媒と同じないし同類の溶剤を使用することが好ましい。さらに、所望の方法で所望の膜厚、均一性、または埋め込み平坦性を有する感光膜が得られれば溶剤としては特に制限は無い。
【0057】
溶剤としては、例えば芳香族炭化水素類、非プロトン性極性溶媒類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類が挙げられる。前記ポリアリーレン樹脂を製造する際に溶媒を使用した場合、感光性組成物の溶解に使用する溶剤はポリアリーレン樹脂を製造する際に使用した溶媒と同一の溶剤であっても、異なる溶剤であってもよい。異なる溶剤を使用する場合には、製造したポリアリーレン樹脂を再沈殿法などで一旦反応溶液より回収し、異なる溶剤に溶解若しくは分散させるか、またはエパポレーション法、限外濾過法等の公知の手法を用いて溶剤置換を行うことができる。
【0058】
芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、キュメン、メシチレン、テトラリン、メチルナフタレン等が挙げられる。
【0059】
非プロトン性極性溶媒類としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0060】
ケトン類としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルアミルケトン等が挙げられる。
【0061】
エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジフェニルエーテル、アニソール、フェネトール、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。
【0062】
エステル類としては、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0063】
ハロゲン化炭化水素類としては、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0064】
感光性組成物の溶液における感光性組成物の含有割合(通常、感光性組成物の大部分の成分は前記ポリアリーレン樹脂であるので、溶液中の前記ポリアリーレン樹脂の含有割合にほぼ等しい)は、1〜70質量%が好ましい。より好ましい感光性組成物の含有割合は、1〜50質量%である。
【0065】
<フォトリソグラフィ方法>
フォトリソグラフィ方法による微細加工の手順としては、例えば、まず感光性組成物の溶液をスピンコート法等の塗工方法で基材上に塗布し乾燥して、基材表面に感光性膜を形成し、続いて露光により潜像を形成した感光膜とする(露光部は光硬化し、非露光部は未硬化のままである。)。露光には紫外線が多く採用される。該潜像を有する感光膜を現像液で現像して、非露光部の感光性組成物を除去して硬化物膜(パターンを形成した膜)を形成する。
【0066】
本発明のフォトリソグラフィ方法において、まず基材表面に感光性組成物の溶液の膜を形成し、基材表面に感光性組成物の膜(感光性膜)を形成する。
【0067】
感光性膜の形成方法としては、コーティング方法を採用することが好ましい。例えば、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ダイコート法、バーコート法、ドクターコート法、押し出しコート法、スキャンコート法、はけ塗り法、ポッティング法等の公知のコーティング方法が挙げられる。電子デバイス用絶縁膜として用いる場合には、膜厚の均一性の観点からスピンコート法またはスキャンコート法が好ましい。
【0068】
感光性組成物の溶液により形成される感光性膜の厚さは、製造する目的の硬化膜の形状に合わせて適宜設定できる。例えば絶縁膜やフィルムを製造する目的においては、基板上に0.01〜500μm程度の感光性膜を成膜することが好ましく、0.1〜300μmがより好ましい。
【0069】
感光性膜を形成後、溶剤を揮散させるために感光性膜を必要に応じて加熱する(プリベーク工程とも呼ばれる)。加熱条件は溶剤が揮散し、前記ポリアリーレン樹脂の架橋性官能基や光重合開始剤等が実質的には反応しない温度が望ましく、50〜250℃で30秒〜10分位が望ましい。
次に感光性膜を露光して潜像を有する感光膜とする。
【0070】
感光性膜の露光では、マスクなどを使用して所望のパターン形状に化学線を感光性膜に照射する。化学線としてはX線、紫外線、可視光線等の光線が使用できるが、200〜500nmの波長の光線が望ましい。光線以外に電子線などの化学線も使用できる。より好ましい光線は、紫外光および可視光であり、もっとも好ましい光線源は、超高圧水銀アークを光源とする紫外線である。線量は膜厚および使用される光重合開始等の種類に応じて変更する。10μmの厚さの膜の場合、適切な線量は10〜2,000mJ/cmである。アライナーやステッパー等の露光装置を用い、プレッシャーモード、バキュームコンタクトモード、プロキシミティーモード等においてマスクを通して露光することにより、感光性膜に露光部と非露光部のパターンを形成することができる。
【0071】
本発明における前記現像液組成物を用いた現像を採用することにより、低い露光エネルギー領域の露光においても高い解像度が得られる。本発明における露光エネルギーとしては10μmの厚さの膜の場合、具体的には10〜2000mJ/cmの範囲が好ましく、50〜1000mJ/cmの範囲がより好ましい。露光エネルギーが10mJ/cmを下回るとパターン形状が乱れやすく、2000mJ/cmを上回ると高解像度が得られにくい。
【0072】
露光後かつ現像前に、必要に応じて、感光膜を加熱処理する工程(ベーク工程とも呼ばれる)を適用することができる。この工程は、光化学的に発生した寿命の長い中間体の反応速度を高める。これらの中間体は、この工程の間は移動性を増すので、移動して反応部位との接触確率を高め、反応率を上げることができる。これらの反応性中間体の移動性を増加させる他の方法として、露光中に加熱することができる。このような手法は光重合開始等の感度を増す。加熱する温度は中間体の種類により異なるが、50〜250℃が望ましい。
次に潜像を有する感光膜を、前記現像液組成物を用いて現像する。
【0073】
現像においては、現像液組成物を感光膜に接触させ、感光膜の非露光部分を現像液組成物に溶解させ、非露光部分を溶解した現像液組成物を感光膜の露光部分から除去して乾燥する。
【0074】
感光膜に現像液組成物を接触させる方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波照射浸漬等の方法が挙げられる。その後、感光膜から現像液組成物を分離し、感光膜やそれが形成されている基材から現像液組成物を除去する。例えば、液からの引き上げや遠心分離を行い、その後加熱等で乾燥する。例えば、ウエハ上に形成した感光膜を現像する場合、スプレー等で感光膜に現像液組成物を接触させて非露光部分を溶解し、その後ウエハを高速回転して現像液組成物を分離し、乾燥することができる。
【0075】
感光膜の非露光部分を現像液組成物に溶解させた後、必要により感光膜の露光部分(硬化物膜)を洗浄(以下、リンスという)する工程を行うことができる。リンスは、現像液組成物を感光膜の露光部分から除去した後、または、現像液組成物の乾燥後に行うこともできる。リンスに使用する洗浄液(以下、リンス液という)としては、露光部分を溶解しない溶媒が使用される。さらに、前記現像液組成物と相溶性がある溶媒が好ましい。リンス液としては、特に前記現像液組成物が好ましい。
【0076】
リンスを行う場合、上記現像方法と同様の方法で感光膜にリンス液を接触させ、分離し、乾燥することによってリンスを行うことができる。例えば、現像液組成物が付着している感光膜にリンス液を接触させてリンスを行うことができ、また、大部分の現像液組成物が除去された感光膜にリンス液を接触させてリンスを行うことができる。リンスは必要によって複数回行うことができる。
【0077】
リンス液としては、具体的には、アルコール類、前述のケトン類、前述のエステル類が挙げられる。
【0078】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。
【0079】
現像後、必要により硬化物膜(感光膜の露光部分からなる膜)を加熱処理することができる。以下、現像後の加熱処理をポストベーク工程という。
【0080】
ポストベークの目的の一つは現像に使用した溶媒(現像液組成物やリンス液)の更なる除去である。ポストベークの主目的は、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂の感光後に残存する架橋性官能基の反応をさらに進めて耐熱性の良好な硬化物膜を得ることにある。感光したポリアリーレン樹脂の架橋性官能基の最終的な反応率は30〜100%が好ましい。反応率を30%以上とすることで硬化物膜の耐熱性および耐薬品性が良好となる。この観点から、反応率は40%以上がさらに好ましく、特に50%以上であることが最も好ましい。ポストベークによりこの反応率を高めることができる。さらに、硬化物膜の表面平滑性を確保したり、硬化物膜の微細スペース埋込性を向上させたりする目的でポストベークを行うこともできる。
【0081】
ポストベークの条件としては、溶媒除去を主目的とする場合は、80〜200℃で0.5〜60分間の加熱が望ましい。架橋性官能基の反応性を高めるためには、150〜450℃で1〜300分程度の加熱が好ましく、160〜400℃で2〜180分程度の加熱がより好ましい。硬化物膜の表面平滑性向上等を目的とする場合は、50〜250℃程度の加熱を行うことが好ましく、上記ポストベークに追加して実施することが好ましい。このようにポストベーク工程では、加熱処理を何段階かに分けて実施することが好ましい。
【0082】
ポストベークは、ホットプレート、オーブン、ファーネス(炉)等の加熱装置内で実施するが好ましく、加熱雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、空気、酸素等の雰囲気、減圧等が例示でき、不活性ガス雰囲気または減圧が好ましい。
【0083】
半導体デバイス分野で本発明のフォトリソグラフィ方法を利用した場合、基材上にパターン化した絶縁膜を形成できる。絶縁膜の厚さは0.5〜100μm程度が好ましく、1〜50μmがより好ましい。さらに素子の設計に応じて、該絶縁膜の上に配線層を形成することができる。配線層に用いられる金属としては、銅、アルミニウム、チタン、金等が例示できる。絶縁膜を形成する工程と、配線層を形成する工程は、必要に応じて複数回繰り返される。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、分子量および厚膜形成性の各測定項目は下記の方法により測定した。また、%は特に言及しない限り質量%をいう。
【0085】
[分子量]
実施例に示すポリアリーレン樹脂の数平均分子量とは、真空乾燥したプレポリマー粉末をゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。キャリア溶媒はテトラヒドロフランを使用し、検量線としてスチレンの標準サンプルを用いて算出した。
【0086】
[厚膜形成性]
真空乾燥したポリアリーレン樹脂粉末をシクロヘキサノンに溶解させて得た40%溶液をシリコンウェハ上にスピンコートし、続いてホットプレートによる250℃×180秒のベークを行うことにより、厚さ約10μmの硬化膜を形成した。硬化膜欠陥の有無を目視および金属顕微鏡観察を行うことにより評価した。
【0087】
(調製例1)
含フッ素ポリアリーレンエーテル樹脂を含有する感光性組成物(I)を調製した。
すなわち、ペルフルオロビフェニルと、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンと、ペンタフルオロスチレンとを炭酸カリウムの存在下に反応させて得られた数平均分子量8,000の含フッ素ポリアリーレンエーテル樹脂を含むPEGMEA溶液に、光重合開始剤としてIRGACURE OXE01(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を添加して感光性組成物(I)を得た。
【0088】
調整例1で使用した含フッ素ポリアリーレンエーテル樹脂に対する良溶媒および貧溶媒を以下に示す(表中で使用した溶媒の略称も併記する。)。7種の溶媒について前述した定義に従い分類したところ、良溶媒・貧溶媒は以下のように分類された。
【0089】
良溶媒:
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MBA:2−メチルブチルアセテート
GBL:γ−ブチロラクトン
貧溶媒:
EL:乳酸エチル
ML:乳酸メチル
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
IPA:2−プロパノール。
【0090】
(調製例2)
含フッ素ポリアリーレンエーテル樹脂を含有する感光性組成物(II)を調製した。
すなわち、ペルフルオロビフェニルと、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンと、ペンタフルオロスチレンとを炭酸カリウムの存在下に反応させて得られた数平均分子量11,000の含フッ素ポリアリーレンエーテル樹脂を含むPEGMEA溶液に、光重合開始剤としてIRGACURE OXE01(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を添加して感光性組成物(II)を得た。
【0091】
調整例2で使用した含フッ素ポリアリーレンエーテル樹脂に対する良溶媒および貧溶媒を、前述した定義に従い分類したところ、調整例1で使用した含フッ素ポリアリーレンエーテル樹脂に対する良溶媒および貧溶媒と同じ分類となった。
【0092】
(実施例1)現像液組成物
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と乳酸エチル(EL)を20:80の質量比で混合して現像液組成物(D1)を得た。
【0093】
(実施例2〜3)
実施例1と同様にして、表1に示す組成の現像液組成物(D2〜D3)を得た。
【0094】
(実施例4)現像液組成物
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と乳酸エチル(EL)を80:20の質量比で混合した。この混合溶液100%に対して界面活性剤としてBYK−330(シリコン系界面活性剤:ビックケミー・ジャパン社製)を0.20%添加して現像液組成物(D4)を得た。
【0095】
(実施例5〜10)現像液組成物
実施例4と同様にして、表1に示す組成の現像液組成物(D5〜D10)を得た。
【0096】
(比較例1〜4)現像液組成物
実施例1と同様にして、表1に示す組成の現像液組成物(D11〜D14)を得た。
【0097】
【表1】

【0098】
ここで、比較例1(D11)は現像液組成が良溶媒のみの例を示し、以下、比較例2(D12)は貧溶媒のみの例を、比較例3(D13)は良溶媒のみの組み合わせの例を、比較例4(D14)は貧溶媒のみの組み合わせの例を示す。
【0099】
(実施例11)現像方法
感光性組成物(I)をシリコンウェハ上にスピンコーターで塗布し、70℃90秒ホットプレートで加熱して、膜厚約5μmの感光性を得た。これにライン&スペース(L/S)マスクを使用して照射エネルギーが500mJ/cmの露光を行った。続いてD1の現像液を用いてパドル現像を30秒行い、毎分2,000回転で30秒のスピンドライを行う工程を2回繰り返した後、同現像液を用いて60秒間リンスを行い、毎分2,000回転で30秒のスピンドライを行った。その後100℃で90秒のホットプレートによる加熱を行った。尚、露光はUL−7000(Quintel社製)を用い、超高圧水銀灯の光を照射して行った。また、現像はAD−1200(滝沢産業社製)を用いて行った。
【0100】
(実施例12〜20)現像方法
実施例11と同様にして、表2に示した現像液および現像条件にて現像を行った。
【0101】
(比較例5〜8)現像方法
実施例11と同様にして、表2に示した現像液および現像条件にて現像を行った。
【0102】
(実施例21)現像方法
感光性組成物(II)をシリコンウェハ上にスピンコーターで塗布し、100℃90秒ホットプレートで加熱して、膜厚約20μmの感光性を得た。これにライン&スペース(L/S)マスクを使用して照射エネルギーが100mJ/cmの露光を行った。続いてD1の現像液を用いてパドル現像を20秒行い、毎分2,000回転で30秒のスピンドライを行う工程を2回繰り返した後、同現像液を用いて60秒間リンスを行い、毎分2,000回転で30秒のスピンドライを行った。その後100℃で90秒のホットプレートによる加熱を行った。尚、露光はUL−7000(Quintel社製)を用い、超高圧水銀灯の光を照射して行った。また、現像はAD−1200(滝沢産業社製)を用いて行った。
【0103】
(実施例22)現像方法
実施例21と同様にして、表2に示した現像液および現像条件にて現像を行った。
【0104】
(比較例9〜10)現像方法
実施例21と同様にして、表2に示した現像液および現像条件にて現像を行った。
【0105】
【表2】

【0106】
(評価)
実施例11〜22および比較例5〜10で得られたサンプルを光学顕微鏡にて観察した。結果を表3、表4および表5に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
表3に示したとおり、良溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)単体(D11)あるいは貧溶媒である乳酸エチル(EL)単体(D12)で現像を行った場合では20μmL/S解像性の評価が不良であったのに対し、良溶媒であるPGMEAと貧溶媒であるELとを組み合わせた本発明の現像液D1〜D4を用いて現像を行った場合は良好な結果が得られた。また良溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と貧溶媒である乳酸エチル(EL)の比率の変更により、簡便に感度の調整が可能となり、現像条件を選択する際の幅ができた(表2参照)。
【0109】
なお、残膜率および20μmL/S解像性の評価は、現像後にパターンを光学顕微鏡(キーエンス社製デジタルマイクロスコープ 倍率450倍)で写真撮影して行った。現像の際のラインアンドピッチの良否の判断は、現像後の硬化物膜の形状の目視観察による判断が最も有効であるためである。膜の白濁が観察されたものを現像残り有りとし、膜の白濁が観察されなかったものを現像残りなしとした。また、パターンにシワまたはラインの乱れが観察されたものをパターン乱れ有りとした。パターンにシワまたはラインの乱れが観察されなかったものは、パターン乱れなしとした。表中、シワの観察されたものは(シワ)と記載し、ラインの乱れが観察されたものは(ライン乱れ)と記載した。現像残り有りまたはパターン乱れ有りのいずれかの観察がされた場合の評価を不良(×)とした。20μmのL/Sパターンがきれいに現像されていたものについては評価を良好(○)とした。
また、残膜率は、現像後の膜厚と現像工程を行っていない参照膜厚との比で表わした。
残膜率が高く、評価が○のものは、現像性が良い結果とみなす。
【0110】
【表4】

【0111】
表4に示したとおり、良溶媒同士の組み合わせ(D13)、あるいは、貧溶媒同士の組み合わせ(D14)からなる現像液組成物で現像を行った場合では20μmL/S解像性の評価が不良であったのに対し、良溶媒と貧溶媒を組み合わせた本発明の現像液組成物(D4〜D10)で現像を行った場合は良好な結果が得られた。
【0112】
20μmL/S解像性の評価の基準および残膜率の測定方法は、前述の基準と方法に準ずる。
【0113】
【表5】

【0114】
感光性組成物(II)を用い、照射エネルギーが100mJ/cmの低露光量で露光を行った結果を表5に示した。表5に示したとおり、100mJ/cmの低露光量では、貧溶媒比率が高いもの(D1)が、より解像性の良い結果が得られた。なお、貧溶媒の組成比率が高い現像液において、残膜率が高い傾向が観察された。
【0115】
10μmL/S解像性および20μmL/S解像性の評価の基準および残膜率の測定方法は、前述の基準と方法に準ずる。
【0116】
以上の結果からも明らかであるように、本願発明の現像液組成物は、10μmL/S解像性および20μmL/S解像性ならびに残膜率の評価から、良溶媒と貧溶媒がバランスしており、現像液組成物として好適であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のフォトリソグラフィ方法によれば、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物からなる感光性膜を露光後に現像するにあたり、前記ポリアリーレン樹脂に対する特定の溶媒の組み合わせからなる現像液組成物を使用することにより、感度、解像度、パターン形状、残膜率などの現像性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物を使用したフォトリソグラフィ方法であって、前記ポリアリーレン樹脂に対する貧溶媒と良溶媒とを含有する現像液組成物を用いて現像を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポリアリーレン樹脂が含フッ素ポリアリーレン樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリアリーレン樹脂が数平均分子量が1×10〜5×10の樹脂である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
良溶媒が、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−メチルブチルアセテート、からなる群から選ばれる1種または2種以上の溶媒であり、貧溶媒が、乳酸エチル、乳酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−プロパノールからなる群から選ばれる1種または2種以上の溶媒である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
良溶媒と貧溶媒の使用割合が、質量比で90:10〜10:90である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記現像液組成物が、さらに界面活性剤を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記現像液組成物が、良溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、貧溶媒として乳酸エチルを含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記フォトリソグラフィ方法が、露光エネルギーが10〜2000mJ/cmの範囲の光線を用いて前記感光性組成物を光硬化させる工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フォトリソグラフィ方法が、前記現像液組成物をリンス液として使用する工程を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂を含有する感光性組成物を使用したフォトリソグラフィ方法に使用する、架橋性官能基を有するポリアリーレン樹脂に対する貧溶媒と良溶媒とを含有する現像液組成物。

【公開番号】特開2010−217545(P2010−217545A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64654(P2009−64654)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】